Everlasting Love☆
あたしは
今あたしの隣りで
スヤスヤ眠るこの男に
何度 傷つけられ
何度 泣かされてきたか………。
「終わりにしなきゃ」
そう思う度、
離れられないのはあたしだった。
この暖かくて綺麗な手を
離したくないのはあたしだった。
…◇◆…………………………………◆◇…
小説と言える程、上手く書ける自信もありません。
読んで辛くなる方や不快に思う方がいると思います(*_ _)m
そんな方は是非スルーしてくださいm(_ _;)m
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>> 50
27歳の時…
ある事がきっかけであたしは一時期 出逢い系サイトの様なものにハマった。
そのサイトはここで言う
【仲間専用掲示板】みたいな物があって 仲間になった数名で専用スレッドで楽しむ。
1人で逢うのは怖いから そう言った大勢のスレッドで楽しんでいた。ある日みんなで飲み会をしようと言う事になり 偶然 近所だった同じバツイチママと先に友達になって逢った事があった為 一緒に参加した。
そこで知り合った陵君。
この仲間の飲み会で何度か逢った後に付き合った。
付き合い始めて半年もしない頃………
「陵の妻です。
あなた騙されてますよ。
陵には妻子がいますから」
やはり知らないアドレスから
真夜中の突然のメールだった。
そう…あたしは『独身』の陵君と付き合っていたんだ。
あの時は何が何だか分からず、すぐ陵君にメールした。電話もした。既に繋がらなかった。何日も何日も…繋がらなかった。
騙されてたんだ。
そして…バレた瞬間に逃げられた。バレたその瞬間から音信不通になる。
あの時はいっぱい泣いた。
もう恋愛なんてしない!出逢い系なんてやめた。やっぱり所詮 出逢い系。こんな酷い男しかいないんだ。絶望感でやりきれなかった。
もう諦めて忘れよう!と思った矢先。突然メールがきた。
陵君だった。
携帯を見られ、バレてモメた際に携帯の取り合いになり 携帯を折った………データが全部分からなくなった…と。あたしのアドレスを必死に思い出し何度もメールしたが返ってきてしまい 必死に少しづつ変えてみながら送ってた、やっと繋がった…と。
「一言、謝りたかった」
あの日と同じ。
織田さんに連絡するのはやめとこう。今頃きっとモメてる………。
明日も仕事だ。朝になれば何かしらの連絡はあるはず。
祈るように朝を待つ。
>> 54
朝礼で辺りを見渡しても織田さんの姿はない。
来てない?
ずっとモメてる?
あたしはどうしたらいい?
どうするべき?
みんなはこんな時どうするんだろう。誰かに相談したくても瞬時に物事を理解してくれる人はいない。
友達…と言っても最初から話さなければならない。
誰にも言えない恋愛は全て自分で解決しなければならないんだ。
そして当たり前の様に仕事が始まる。
結局、織田さんは『体調不良の為、欠勤』だった。
仕事はミスは許されない。冷静でいられる訳もないが、連絡が来るのを待つしかない。
そう思いながら仕事した。今日は外に出る。今にも溢れ出そうな涙を必死にこらえ仕事に励む。
午後になって電話がきた!
織田さんだ!
>> 56
今度はメールが来た!
織田さんからだ。
終わるにしてもメールなんて嫌…。
「今、少し話せるか?」
冷静でいたつもりだったが…内心 動揺していたんだろう。
あたしは織田さんだと思い込み返信する。
「場所移るから少しだけ待って」
慌てて公園を探し移動したが「大丈夫だよ」とメールをしても、一向に連絡が来ない。
どのくらい待ったかは覚えていないが やっと気がついた。織田さんの携帯を使った奥さんからのメールだったんだね…。
まだ終わっていない仕事に戻り会社に帰社した。
明日は織田さん…来れるのかな?
普段、「ごめんなさい」と言う気持ちがあっても いざと言う時は自分達がどうなるのかと言う不安しかない。
奥さんに…子供達に…
ごめんなさいと言う気持ちはあるのに こんな時は『別れたくない』そんな勝手な事しか考えられないんだ。
自分勝手な女……………。
>> 57
夜…。
メールが来た。
「話したい事があるんだ。今、電話しても大丈夫かな?」
もう、どっちからのメールか分からない。でも、どっちからにしても話さなければ。あたしがしている事はそういう事なんだから………。
「大丈夫です」
返信すると電話が鳴った。
空気が…どんよりと伝わってくる。
織田さんだった。
不安に思った通りだった。
何かを読まされているかの様に棒読み状態で織田さんが話す。
「俺には家庭が大事だから…別れて欲しい。………携帯から凛のアドレスと番号を今から消すから…凛も消してくれ。……………これからは一切、連絡はしない。凛も…………しないで欲しい。
勝手でごめん」
最後まで棒読み状態だ。
心からそう思ってるの?
それが本心?
なぜか涙は出なかった。
どこか冷静なあたしがいた。
「少し話させてもらって平気?」
「うん」
ここから織田さんは
「うん」
「ううん」
しか言わなくなる。
「奥さんに言わされてるの?」
「うん」
「本当におしまい?別れるの?」
「ううん」
「言わされてるだけ?」
「うん」
「分かった!信じるね」
「うん…」
「ごめんね…辛い想いさせて」
「ううん…俺が悪いから…ごめん」
電話を切った。
切った途端に涙が溢れた。
一晩中泣いて整形に失敗した女のように顔が腫れた。こんな顔で仕事に行きたくない。この日 初めて社内不倫の現実を思い知らされる。
次の日、行きたくないが…織田さんの姿が見たい。あたしは出産するまでメイクアップアーチストの仕事をしていた。何とか腫れた顔をごまかして仕事に行った。やっぱり朝のメールはない。
昨日は信じたが段々と不安になる。
>> 58
織田さんは来た。
憔悴しきった姿だった。
一生懸命、普通に振る舞っているように見えるが笑顔が疲れきっている。
それはきっと あたしも同じだっただろう。
メールも電話も出来ない。
織田さんからも来ない。
不安で不安で仕方ない。
何か言いたそうに織田さんがあたしを見た。でも、用もないのに話しかけられない。
そばに行きたい………。
話がしたい。でも、術がない。
あたしは普段から必要以上に男性と話さない。織田さんがヤキモチ妬きだから尚更 話さないようにしている。それなのに織田さんと話してたら おかしい。
時間に任せるしかないのかな………。
このまま成す術もなく終わっちゃうのかな………。既婚者だと知っていて付き合った。結果は初めから分かっていたはず………。
織田さんもやっぱり「バレたら逃げる」そこら辺にいる不倫男と同じなのかな………。
モヤモヤしたまま仕事をした。会社では泣けない。早く1人になりたかった。
>> 60
「凛…ごめん」
そのまま黙っている。
ごめんってどういう意味………?
やっぱり別れる………の?
「終わりにしようって事…かな?」
泣いちゃダメ!
凛…泣いちゃダメだよ。
泣いたら困らせるだけ。
頑張れ、あたし!
「俺の考えが甘すぎてロックもかけてなかったし、カミさんが疑ってる事にも気づいてなくて…俺が風呂入ってる間に携帯見られた………メールも発着信も消してなかったし、完全にバレた…言い訳する余地もなくて…本当にごめん」
「それで…織田さんはどうしたいの?」
「情けないが、どちらも選べない…子供と離れるのが1番辛い。…けど、凛も失いたくないんだ…勝手ですまん」
この織田さんの言葉に答えは出ている。あたしを失いたくないとは言え『子供と離れるのが1番辛い』と言っているんだから。
あたしが「別れよう」と言うのが1番正しい事も分かっている。それでも言えない、一緒にいたい。織田さんが言わない限り あたしはまだ側にいたい。
どうしようもないバカな女。
「あたしはまだ…織田さんの側にいていい…の?」
織田さんは黙って頷く。
織田さんが重い口を開く。
>> 61
「カミさんにも散々 泣かれたよ。色々、考えさせられた1日だった。
凛はこんな俺でも付いて来てくれるか?
地獄だぞ!毎日、辛いぞ!
凛のアドレス、番号…全部カミさんは自分の携帯にデータを移した。俺は目の前で全部、消させられた
これからは毎日、携帯はチェックされる。しばらくメールも電話も出来ない。
仕事が終わったら早く帰るようになる。
………耐えられるか?」
耐えられる?
そんなの分からない。
完全に織田さんは『家庭』を選んでいるのにバカなあたしは それでも織田さんといられるなら………なんて自分の気持ちを最優先にして頷いた。
「泊まりたいね…。でも今日はこのまま帰らないと………。
帰り道もメール出来ないけど、ごめんな」
うっすら目を赤くした織田さんはそう言った。泣いちゃいけないと我慢していた涙が一気に溢れ出した。
そんなあたしを見て 帰るに帰れない織田さん。
「大丈夫だから帰りな!」
精一杯の強がりを言う。
「どんな困難も乗り越えような!凛…!」
頷いて織田さんの背中を押した。最後に1つだけ聞いた。
「織田さんは奥さんになんて言ったの?あたし達が付き合った事…」
「………性的な欲求が抑えられなかった。って言った…ごめん」
それが正直な気持ちだったんだろう。
>> 62
織田さんは恥ずかしがり屋で「好き」だの「愛してる」だのを言わない。
織田さんが帰って行く後ろ姿を見ながら「今日から織田さんと連絡出来ないんだ」…と思うと寂しくて寂しくてやりきれなかった。
それでも、織田さんがあたしとの「別れ」を選ばなかった事に少しホッとしたあたしがいた。
メールが鳴った。
織田さんからのメール。
たった1回だけのメールだったが………。
「凛…愛してる」
携帯チェックされるんでしょ?
大丈夫なの?
と思うと同時にこの言葉が嬉しくてたまらなかった。
初めて言われた。「愛してる」
返していいのか迷いながら
「あたしも愛してる」
このバカな女はこんなバカ男の甘い言葉にまんまとハマり、バレた事で辛さと戦う奥さんの事なんて「ごめんなさい」とは思いつつも結局は自分達優先で何にも考えてはいないんだろう。
考えられたら「別れ」を選んでいるはずなんだから………。
>> 63
この日から
連絡出来ないと言っていた織田さんは
朝の「おはよう」
帰りの「帰るね」
最後の「大好きだ!おやすみ」
片言の言葉のみメールをくれた。あたしは織田さんからメールが来るまでしなかった。
1度だけ偶然 会社のエレベーターで2人きりになれた。
「今日、逢えるか?」
「大丈夫なの?」
「しばらく大人しく帰ってたから大丈夫だろッ!」
嬉しかった。逢いたかった。
ほんの5分でも10分でも逢いたかった。
よく2人で行った居酒屋で逢った。あたしの目の前に久しぶりに織田さんがいる。途中であたしは席を移動し 織田さんの隣りに座った。手を繋いだ。
何日間も触れられずにいた織田さんの温もり。
あたしは織田さんの手が大好きだ。綺麗な手………。
この綺麗な手をずっと…ずーっと離したくない。強く感じた。
でも、そろそろ帰らせないと…。
「織田さん…。そろそろ帰らないとね!」
「……………。」
時計を見ながら織田さんは何も言わない。
>> 64
「…織田さん!」
「凛…。今日、泊まろう!」
帰らせなきゃいけないあたし。でも、帰って欲しくないあたし。織田さんは自分に甘い。
あたしがシッカリしないと…!
「大丈夫。あたしはずっと待ってるから。逃げたりしないから。今日は帰らなきゃダメだよ。…奥さんが待ってる。早くしないと終電なくなるよ」
「いや…今日は凛とくっついて寝る。ギュッとして寝たい」
ねぇ…織田さん。
あたしだっておんなじ気持ちだよ…。
でもね…次 バレたら今度こそ終わる。ここはグッと我慢しないと………。
「織田さん。あたしは織田さんが大好き。一緒に寝たい。
でも…バレて終わるのだけは嫌。今日は我慢しよう」
織田さんは渋々 帰った。
これでいいんだ………。
今はこうするしかないんだ。
>> 65
次の朝 織田さんからメールが来た。
「昨日カミさんに『まだメールしてんじゃねーか!』って言われたんだ。ちゃんと消去してんのに もうどうやって どこを見られてんだか分かんねー」
一度 裏切られ信頼を取り戻すには相当な時間がかかると言う。あたしもあまり携帯には詳しくない。
あ!そうだ!
あの子に聞いてみよう。
前の仕事で旦那の浮気が原因で離婚した友達がいる。
この子も苦労人で以前 サイトで知り合った男に騙された。友達には厳しい事も間違ってる事にもハッキリ言ってくれる子。 怒られてもいい。相談してみよう。あの子なら仕事にも関係ない人物。信頼できる。
連絡を取ると すぐに逢ってくれた。
織田さんには
「ちょっと信頼できる友達がいるから聞いてみる。旦那さんの浮気が原因で離婚してるから何か分かるかもしれない。
もちろん女の子だから安心して!
」
「………すまん。頼む」
織田さんはこの頃から
「ごめん」「すまん」ばかり言うようになった。
>> 66
一通り事情を説明した。
「智恵も大ちゃんの携帯見て浮気知ったって言ってたよね?」
「凛!どんなにメール消したってね…その日どんなメールをしたか分かるんだよ!なんでか分かんない?」
「なんで?」
「予測変換!
り…を打てば『凛』が出てくる。
だ…を打てば『大好き』が出てくる
あ…を打てば『逢いたい』『愛してる』
凛がよく逢うのはどこ?そこだってその内バレるよ!」
予測変換かぁ………
気づかなかったな。
「凛。離婚したい・離婚したいって言っても みんな『子供の為に離婚はしない』って言うじゃない?それってさ‥結局は『愛情』があるからなんだよね。『愛』も何もなくなったら『子供の為』なんて関係なく別れんだよ!その人だって結局、別れないって事は凛を好きかもしれないけど…でも奥さんを子供を愛してるからだよ」
分かってる。
分かってるよ…智恵。
だけどね、それでも「ただ一緒にいたい」
あたしはバカなんだ…。弱虫なんだ…。
「愛してる人の幸せを願って別れます」なんて 今のあたしには出来ない。
>> 67
「凛はどうしたいの?奥さんと別れて欲しいの?
ねぇ…凛。凛は綺麗なんだからさ!他に男なんていっぱいいるじゃん。
私から見たら その人…ズルい勝手な男にしか見えない。
家庭も壊したくない。
凛も手放したくない。
で、凛には寂しい想いさせて自分はバレるのが怖いからって必死になってる。
分からない?その人が大事なのは『凛』でも『奥さん』でもない。『自分』なんだよ!」
「…うん。分かってるの。智恵の言うとおり。
離婚して欲しいとも思ってない。ただ…好きだから一緒にいたい…それだけ。
間違った事してるのも分かってる。
智恵が苦しんでた時期もあたし知ってるのにごめんね…」
「…まぁね…夢中になってる間は何言ったって無理なんだよね…。私だって、ほら!カズの時。凛が何を言ったって私は聞かなかったもんね!
挙げ句、妊娠までして…おろして…玲奈とカズがデキてた!っていうね…
私はさ。凛にはそんな想いして欲しくない。
その時は死にたいくらい辛いよ。…でも私はちゃんと生きてる。必ず、乗り越えられる日が来るから…!」
智恵の言葉はものすごく理解できた。それでもあたしは織田さんといたい。一歩が踏み出せない。
>> 68
織田さんに予測変換の話をした。
「なるほど!『り』って打ったら『凛』、『す』って打ったら『好きだ』って出てきたよ…バレバレな訳だ…。
もうメールも簡単には出来ないな… 寂しい思いをさせてすまない」
これ以上 メールすら出来なくなるんだね…。職場で姿くらいは見れるけど…寂しいな…。
でも これ以上 織田さんに大変な思いをさせるのも………。
織田さんは自分が手を出した責任から あたしに「別れてくれ」と言えないだけかもしれない。
「頑張って乗り越えよう」と言うべきなのか迷いに迷い あたしは返信した。
「織田さん…。もう…無理しなくていいよ。………別れよう」
すぐに電話が鳴った。あたしはもう涙で声が出ない。
「勝手に決めんな!一緒に乗り越えようって約束しただろ。俺も極力、いい方法 考えるから…別れるなんて言うな!勝手な判断禁止だ!」
そんな事 言ったって………。
この頃から喧嘩をする度あたしは「別れる」と口走るようになる。いつでも織田さんは「別れない!」と言った。
>> 69
織田さんと他の人達は普通にメール出来るのに あたしはメール出来ない。仕事の事ですら電話もメールも出来ない。
織田さんは当たり障りのない「おはよう」「お疲れさん」など1日に1回くらいしかメールをくれなくなった。
あたしの寂しさも限界に近かった。織田さんが遠い…。ものすごく遠い人に感じた。
織田さんも何かを感じたのかメールが来た。
「凛が遠い…めちゃくちゃ遠い…凛に触れたい」
「あたしも…逢いたい」
「うん。今日、逢おう」
逢えるの?
この内容…大丈夫?
嬉しさと不安が混じり合う。
でも「逢おう」と言ってくれた。今日は素直に逢いに行きたい。織田さんは早く仕事を切り上げて来てくれた。
「やっと逢えたね」
「うん!」
この日 織田さんは帰らなかった。あたしもこの前の様には帰さなかった。
そばにいたい。
触れていたい。
次はいつ逢えるか分からない。思いっきり大好きな手を繋いでいたい。
何度も何度もキスをして
何度も何度も抱き合った。
次の日は休み。
これまで我慢していた思いがお互い一気に溢れ出したかの様に 一晩中 体を重ねた。
>> 70
「凛…ごめんな。我慢ばっかりさせるけど必ず乗り越えよう」
「うん」
離れたくなかった。うん…とは言ったものの もうこの瞬間から寂しかった。泣いたら織田さんが困るから…泣いちゃダメだよ、凛。
深く深く深呼吸をして
「バイバイ」
笑顔で言えた。
織田さんは心配そうに あたしの顔を覗き込む。
見ないで…。
何も言わないで…。
「放置ばかりしてすまん、必ずまた逢うから!どんな壁にぶつかっても頑張ろうな」
もう何も言わないで。
せっかく笑顔でバイバイ出来たのに泣き虫なあたしはまた涙が溢れ出す。
「大丈夫。織田さんも頑張ってるんだから…あたしも頑張る!もう行きな」
「泣かせてんのに行けないよ」
「大丈夫!」
織田さんを改札まで引っ張り背中を押した。1度振り返り あたしを見てから 吹っ切った様に足早に階段を下りて行った。
織田さんの姿がなくなったのを確認し あたしは歩いて帰った。
しばらくして
織田さんからメールが来た。
「ヤバい事になった!」
ヤバい事って……………何?
>> 71
「どうした?」
返事が来ない。
………何が起きたの?
待っても待っても返事が来ない。不安でいっぱいになる。
しばらくして電話が来た。
「凛にメール打ってる時にカミさんから電話が来てさ‥間違って通話になっちゃったんだ。ちょうど○○駅のホームでアナウンス聞かれた。
○○駅で何してんだ!って。
何とか ごまかせたから大丈夫だけど、焦ったよ…」
「大丈夫なの?」
「もう大丈夫だよ」
○○駅は会社から織田さんの最寄り駅には通らない駅。
この日から織田さんは奥さんからの電話やメールに『証拠』の写メを送らなければならなくなる。
「残業」と言えば会社の写メ、「先輩と飲む」と言えば「飲み屋」「相手」の写メ、「会社に泊まる」と言えば「仮眠室」の写メ。
益々、逢う事も厳しくなった。
>> 72
唯一の救いは会社に行けば顔だけは見れる事。でも、話せるチャンスはなかなかない。
織田さんは止めていた煙草をまた吸い始め 時々 喫煙所で逢うのがやっとだった。
目の前で「別れる」と電話で言った。消したはずのアドレスと番号。それでもまだメールしていた事実。まだ逢っているかもしれない不安。別れたとは言え お互い同じ職場にいる。
旦那が帰って来なければ疑わないはずはない。
あたしの辛さなんかより奥さんの方が何倍も何倍も苦しんでいるはずなのに………。
ごめんなさい…。
ごめんなさい…。
ごめんなさい…。
でもあたし、この手を…離したくないんです。
まだ一緒にいたいんです。
自分の事しか考えられない「自己中女」
そう言われても何も否定出来ない。
あたしは鬼だ。最低だ。
メールが普通に出来なくなって織田さんが遠くなって 寂しくて寂しくて…。1つだけ残っている手段がある!と考えてはいたが…言わずにいた事があった。
それを織田さんに伝えた。
>> 73
「織田さんは不便になると思うけど…あたしとだけの『専用携帯』持てる?
夜、駅に着いたらロッカーにしまって帰って…朝またロッカーから出せばいい。
『専用』だと、どんなに通話してもメールしても一定料金なんだって
だから月々1000円くらい!ロッカー代と携帯代はあたしが出すから」
「それがあれば嬉しいけど…そんな訳に行かないよ。凛に負担かけさせるのは嫌だ!それなら俺がそれ買えばいいんだろ?」
「ダメだよ!携帯もう1つ買ったのが分かれば疑うし、明細が家に届くとマズいでしょ!だから、あたしがあたし名義で買うから!
それで全部やり取りすれば携帯見られても何も怪しい物もなくなる
その代わり不便だよ。会社では隠し持たなきゃいけないし、朝と帰りも面倒臭くなるよ。どう思う?」
「…ありがとう。携帯代は俺が凛に払う!ありがとう」
すぐに携帯を見に行った。
織田さんが使っているメーカーの古い型なら使い方も同じはず。メール 電話だけなら機能なんて何も考えなくていい。
ちょうど¥0のがあった。
すぐに買った。
問題はこれをどうやって渡そう………。
>> 74
公衆電話から電話をした。
「あのね、携帯ゲットしたよ!」
…。
「凛…。公衆電話はダメだよ…。余計に怪しまれるんだ…。」
…。
「………そっか。ごめんなさい………。」
あたしはそう言ってすぐに電話を切った。電話の向こうで何か言っていたが、構わずに切った。
喜んでくれると思ってたのに………。やっぱりそこまでは望んでなかったのかもしれない。あたしはどちらかと言えばネガティブだから、織田さんの反応がやたらショックだった。
この携帯…どうしよっかな…。あたしの携帯も古いからコレに変えよっかな…。
折り返し電話をくれるわけでもメールをくれるわけでもないのが悲しくて…歩きながらポツリポツリと涙が出てきた。
あたしからはメールも電話も出来ない。織田さんは自分の都合で時々メールや電話をしてくる。公衆電話も登録外の携帯もダメ!って言うなら もう手段はない。
あたしが我慢するしかないんだ。
………いつまで?
………いつまでかも分からないのに我慢出来るの?あたし………。
>> 75
『専用携帯』を買う時…
訳があって家と携帯ショップを2往復した。閉店が迫ってた為、慌てて行ったら手続きに必要な物が1つ足りなかったのだ。隣町の携帯ショップに行ったから結構 疲れた。
それも…少しでも早く少しでも楽に連絡が取れる環境になりたかったから。
そう思っていたのは あたしだけだったのかな…。事実、織田さんは奥さんにバレてあたしの存在を隠そうと必死だ。
それは何故?
―離婚したくないから―
以外、どんな理由があるって言うの?
バレるまでは1日中メールして いっぱい逢えて いっぱい話せて………。今思えば楽しくて嬉しくてラブラブで幸せだった。
………今は?
今のあたしは………幸せ?
織田さんといれて幸せ?
………織田さんは?
こんな事してて幸せ?
織田さんの家族を裏切っていて本当に幸せ?
>> 76
こんな事を考えていると、やっとメールが来た。
…ん?
写メだけが送られてきた。
飲み屋で変顔をした織田さんと上司と同僚で映っている写メ…。
ものすごくバカにされた気分だった。
「今、飲んでるよ」と伝えたかったのだろう。
この人はあんな電話の切られ方をしても何も感じないのか!? 挙げ句こんなめでたい顔して飲んでやがる! 怒りがフツフツと込み上げた。でもこの怒りをぶつける手段もない。
今度は電話がきた。
小声すぎて良く聞こえないが
「今トイレ。携帯ありがとう!凛の好きな様にアドレス設定しといて!また連絡する」
そうだ。
織田さんはいつも忘れなかった。
飲みに行く時も必ず
「これから○○さんと飲みに行ってくる」
「今、解散したよ」
「○○さん達(女性)に○日に飲もうって誘われたんだけどいい?」
「もうそろそろお開きになりそうだからね」
あたしが心配しない様にマメに連絡をくれる人だった。あたしは単純バカだから こんな連絡が来ただけでホッとした。
アドレスかぁ…何がいいかな。
2人だけのなんだから何だって構わないのに…真剣に考えた。
あたしの願いを込めて………
【Everlasting love】
永遠の愛。
他人が聞いたらバカじゃねーか!と思うだろう。あたし達のしている事に永遠もクソもない。愛なんてアホか!と思われるだろう。
でも事実、あたしはバカでクソでアホなんだ…。いけない事をしていると分かっていて止められない。ただ、好きで大好きで一緒にいたい………。
>> 77
しばらくして また電話が鳴る。
「今、凛ん家の前。出て来れるかい?」
え?
前って………。
慌てて窓から外を見ると姿はない。
織田さんに家が分かる訳ないよな…。疑問に思いながら外へ出ると…隣りのマンションの下でアグラをかいて座っている。
思わず笑ってしまった。
「織田さん!残念、家違い(笑)」
「いや…とっさに恥ずかしくなって移動した。ちゃんと分かってるよ!凛ん家はこっちだって!」
「なんで知ってんの?」
「前に2ケツした時に凛が教えてくれただろ」
そうだったね…。
後ろに買い物カゴの付いたあたしの自転車に、無理やり2人乗りして走った事があったね。蓮の練習を見に行く時の距離が遠くて電動自転車を買ったあたしが、電動は慣れなくて怖いって話をした時だよね。
酔っ払った織田さんがしつこく「乗れ!」って言うから無理やり乗った時。股が痛くてスゴいスピードで走るから怖くて怖くて…。
でも、2人して無邪気にはしゃいで楽しかった思い出。
>> 78
「今日、キツい言い方して悪かった。
ずっと気になってたんだが連絡出来なくてさ…。ごめん」
あっ!携帯か!
突然すぎて忘れてた。
携帯を渡すと優しい顔で
「ありがとう…凛」と言って携帯を開く。
アドレスを確認した織田さんは…………。
「これは…。恥ずかしいな(〃∀〃照)」と苦笑いする。
「嫌だったら変えて(*´艸`*)」
あたしがそう言うと
「嫌じゃないよ。ありがとう」と織田さんは微笑んで軽く携帯をイジってみてた。
「今日はもう終電ないから会社に戻るね。今日からいっぱいメール出来るね!」
「うん!嬉しい」
そのまま一緒にいたかった。
帰っていく後ろ姿を見ながら追いかけて抱きつきたかった。
でも家の前だったからグッとこらえた。
織田さんの姿が見えなくなったら すぐにメールが来た。
「おっ♪俺の携帯と同じメーカーだから、すぐに使えるよ!ありがとう。これでやっと言える!………愛してるよ」
「うん…あたしも愛してる」
思う存分、寝るまでメールし続けた。お互い嬉しさでいっぱいだった。
この日からあたし達は『専用携帯』だけのやり取りが始まる。
これが良かったのか…悪かったのか…。
- << 81 織田さんは付き合い始めの浮ついた思うがままの織田さんから…慎重になりすぎなんじゃないか、と感じる程 慎重な慎重すぎる織田さんになっていった。 当たり前の事だが。 元々 嘘がつけないタイプで口も決して達者ではなく とっさに言い訳など器用に頭が回転する人じゃない。 自分が以前から使っている携帯の他にもう1つ携帯があるのを人に見られたら…間違いなく怪しいだろう。 だから、会社内ではほとんどメールはしない。朝晩のみがあたし達の『メールの時間』になった。 あたし達のいる課の人間がみんな帰った後でも ウチの会社は他の課にも大勢の社員がいる。織田さんは誰にも見られない様に慎重に携帯を使った。
>> 79
★読んで下さっている方がいるか分かりませんが…。
内容が内容なので自スレ設定にさせて頂きました。
読んで不快に思う方は読まないでくださいm(_ _)m
同じような想いをしている方や同じような経験をした方、ただ物語として読んで頂き感想を頂ける様であれば
http://mikle.jp/thread/1875174/
こちらにレスください。
ただ…勝手で申し訳ないのですが とても大切にしているスレなので非難中傷は控えてください。
すみませんが宜しくお願いします。
今 小説じゃなく日記の板に書けば良かったな…と後悔しています。
>> 79
「今日、キツい言い方して悪かった。
ずっと気になってたんだが連絡出来なくてさ…。ごめん」
あっ!携帯か!
突然すぎて忘れて…
織田さんは付き合い始めの浮ついた思うがままの織田さんから…慎重になりすぎなんじゃないか、と感じる程 慎重な慎重すぎる織田さんになっていった。
当たり前の事だが。
元々 嘘がつけないタイプで口も決して達者ではなく とっさに言い訳など器用に頭が回転する人じゃない。
自分が以前から使っている携帯の他にもう1つ携帯があるのを人に見られたら…間違いなく怪しいだろう。
だから、会社内ではほとんどメールはしない。朝晩のみがあたし達の『メールの時間』になった。
あたし達のいる課の人間がみんな帰った後でも ウチの会社は他の課にも大勢の社員がいる。織田さんは誰にも見られない様に慎重に携帯を使った。
>> 81
朝の「おはよう」が楽しみで
帰りの「おやすみ」が寂しい。
付き合い始めた頃は朝晩 織田さんが家にいる間以外は普通にメールしてた。ヒマさえあればメールしてた。当たり前の様に…。
「やっと前みたいにメール出来るんだ♪」
そう思っていたのも束の間だった。最初は織田さんも嬉しさ優先でマメにメールをくれたが…段々とメールは減っていく。
思っていた以上に携帯を出せる場所がないらしい。時々トイレでくれる以外はほとんどメールはない。
期待が大きすぎたあたしは、ほんの少し寂しさを感じ始めていた。
…そろそろ帰る頃だからメールくるかな♪
………。
………。
………。
メールが来ない。
飲んでるのかな?
飲んでるとしたら いつもならメールか電話がくる。
「ちょっと飲みに行ってくるね。必ず連絡する」
終電の時間は過ぎた。
まだメールは来ない。
ここからは時計とのにらめっこ。
………。
待たなきゃいいのに…待ってしまう。誰といるんだろう…。
連絡がないって事はもしかしたら…女の子?
気になって仕方ない。
時間ばかりが過ぎていく。
>> 82
深夜2時過ぎ。
ようやくメールが来た。
「待たせてごめん。寝てる…よね?」
「起きてる。待ってた」
「遅くなってごめん!……………」
言い訳が始まる。
段々とこういう日が増えていった。あたしは重い女。必ず待っている。付き合いもある「飲みに行くな」とは言えない。
せめて連絡がきてホッとしたいだけ。
あたし達の出逢いが出逢いなだけに不安なんだ………。
織田さんはあたし以上にヤキモチ妬きで心配性なのに、相手の気持ちには鈍感だ。言わないと気がつかない。
しばらくは我慢した。上司の誘いは断れないのも分かるし今まで行ってたのに行かないのも おかしいだろう。終電なんか気にもせず週の半分は会社に泊まってた人なんだから尚更。
ただ、コレが段々と普通の様になっていく。時には喧嘩になり逆ギレされる事もある。
「織田さんはトイレに行かないの?今日は朝メールくれたっきり1度もくれなかったよね」
「飲んでる時は凛携帯はカバンの中で音無しにしてるから。カバンの中だからトイレにも持ってけないんだ」
「気にはならないの?」
「…んな事 言ったってしょーがねーだろ!」
「………わかった」
「プーッ…プーッ…プーッ」
あれ?…もう切られてる…。
面倒くさいよね。
重いよね。
負担だよね…あたしの存在。
いつからか泣き虫になったな…あたし。
>> 84
すげー怒った顔してる( ̄○ ̄;)
帰り道のメール。
「お待たせ。浮気者!」
「お疲れ様。…で、あたし触ってないと思うんだけど…触ってたかな?」
「ちょっとぉぉぉ!!って肩バシッとしてただろ(-_-#)すげームカついた」
ん?
ソレ…NGか…。
「ごめん…」
「今日はメール無理だ…おやすみ」
「え…ごめん!もうしないから…ごめんね…」
もう返信は来ない。
織田さんは喧嘩になるとメールをしなくなる。電話にも もちろん出ないし、最悪な時は電源まで切られる。
あたしが1番悲しいパターン。
せっかく待ってた「楽しみな時間」は待った時間のたった何十分の1かの時間で終わる。
最近は「もうこうなったら何しても無理だな」と思えるようになってきたが それでもやっぱり落ち込む。
最初の頃こんな事が多々ある度あたしはよく泣いた。
男性は相手が誰!とか関係なく男性と絡むのが面白くない。特にこの人との絡みは要注意!って人が4人いる。
今日のバシッ!の相手はその4人の内の1人。元々あまり男性とは絡まないあたしはそれ以上に男性に近づかなくなっていた。
>> 85
あたしにも次々と後輩が出来始めた。
…とは言え、皆 年上ばかり。唯一、2人『年下の後輩』がいる。
蓮の保育園 小学校 中学校…いつでもあたしは1番年下だった。いつも「中川さんはまだ若いから…」と言われてきた。兄の同級生がいたりして可愛がってもらえたのもあったが。
あたしは前の職場で新人の教育もしてきた。「新人さん」には何故か目がいってしまう。ましてや この職場の雰囲気は独特。少しでも気楽に話せる人がいないと精神的に弱い人にはキツい職場。
なるべく気にかけて新人さんに接した。やはり歳が近い分お互いに気楽だから仲良くなるのは早かった。
2人共 独身の為 よくお茶したり飲みに行くようになった。そこに男性社員が時々、混ざるようになっていく。この子達が誘うからだ。数名の中にあたしと織田さんがいて嬉しいようなハラハラするような。
>> 86
ある時 終電がないから会社に戻ると言った織田さんに酔っ払った後輩が言った。
「私も終電ない( ̄○ ̄;)織田さんと会社に泊まるぅ~!!」
織田さんの腕にしがみつき離れない。織田さんはチラッとあたしを見て助けを求める。あたしは織田さんがどう対応するのか見ていた。
「会社はね、本来 宿直以外は泊まっちゃダメなんだ!俺も本来はダメなの!それに女性が泊まるとこじゃない!簡単に誰だって出入り出来るし、そこで寝る人も俺だけじゃないんだから」
酔っ払った後輩には通じない。
「今日だけなんだから大丈夫!バレない♪バレない♪」
更に強く腕にしがみつく。
周りは笑っている。
1人の男性が面白がって
「泊まっちゃえよヾ(≧∇≦*)ゝ」
なんて言い出した。
この言葉に調子に乗った後輩は強引に織田さんの手を引っ張り会社方面に歩き出す。
もう1人の後輩が
「中川さん!ヤバいですよね!?」とあたしに聞いた。
みんな終電が近づいている為イライラし始めた。
「おい!角田!タクシーで帰れ。お前んち近いだろ」
「私もうお金がなぁーい」
こんな状態が何分か続いた。
織田さんは離れようとしているが、離れようとする度 引っ張らてしがみつかれる。
無理にでも離れようとしない織田さんにあたしはイライラした。
あたしは普段、人前であまり感情を剥き出しにしない。
だが、………怒りマックス!
>> 87
あたしはタクシーを拾いに行き無理やり角田を乗せた。女のあたしには分かる。この子は完全に酔ってはいない。普段からこんな調子の子。また次回の飲みでこんな事態にならないように言った。
「次からはちゃんと終電の時間みて飲みな。みんな帰れなくて困ってるよ」
2000円置いてタクシーのおじさんに行かせた。
みんなヤレヤレと思い それぞれ帰っていく。織田さんはあたしの所に来て言う。
「悪かったね…」
悪かったじゃねぇよ。
ふざけんな!
でもここでは、2人の会話は出来ない。説教は後だ。
「情けないね…」
と、だけ言い あたしは歩き出す。織田さんは「ヤバい」って顔をして後ろから歩き出す。
情けない。
この言葉にはどんな意味があるか分かるかい?織田さん………。
>> 88
情けない。
この場にもし…
誰もいなくて…
角田と織田さん2人っきりだったら…
あなたはどうしてた?
その頃きっとあたしはまた鳴りもしない携帯を隣りに置いて、いつまでもいつまでも待っていただろう。
あたしは織田さんが好き。
大好き。
でも「織田さんの全てが好き」な訳じゃない。織田さんも…そうだよね…?
あたしは押しに弱くてハッキリ断れない織田さんが嫌い。誘われれば断れない織田さんが嫌い。………断れないんじゃない。この人は断らないだけ。
なんで
どうして
目の前にあたしがいるのに…
もっとちゃんと怒ればいいじゃねぇか!
なんでもっとハッキリ言えないの!?
あのまま引っ張られたまま どうするつもりだったの?
これが逆に
「あたしが織田さんの状態」だったら…あんたは何も思わない?
腹が立って仕方なかった。
>> 90
喧嘩になると織田さんはいつも「ごめん」と言う。織田さんはあまり怒らない。ヤキモチを妬く時だけはハンパなく怒るけど…。
ごめんと言ってもソレを改めるわけではない。その場しのぎの「ごめん」はもう聞き飽きた。
こんな事で怒るの?と思うかもしれないが「こんな事」はたくさんあった。今までも…。
「何がごめん?」
織田さんに聞いた。
「いつも泣かせてごめん」
「なんで泣くか分かる?」
「…」
もういーや。分からないならいい。黙って早足であたしは帰る。いつもこうやって織田さんを怒って…泣いて…当たり散らして…。時間が立って冷静になると自分のとった態度で織田さんに振られないか不安に襲われる。
織田さんを嫌いになれたら…
そう思うことはたくさんあるのに…
嫌われるのは怖い。
わがままなあたし。
>> 91
この頃はやたら飲み会が多かった。飲み会は1番の喧嘩の原因になる。お互いにヤキモチ妬きで心配性なあたし達は行かなきゃいいものの…どちらも「自分がいないところに他の異性がいること」が嫌だった。
ある日、2次会に流れる時にカラオケ派と帰りたい派がウダウダと話してる中 1人の女性と上司の男性と織田さんが消えた。
気づいた時には既に反対側の道を歩く3人の後ろ姿しか見えなかった。
織田さん…あたしを置いて どこへ行くの?
あたしはどうしたらいい?
懐かしい名前だが、木村さんは怒っている。木村さんはかなりの酒好き 男好き。飲み会は「自分が中心」的な考え方をするとこがある。黙って男性を取られた感でムカついたんだろう。
半分やけになって木村さんが言う。
「鈴木ぃー!カラオケ行くよ!あ!中川も!」
鈴木さんは要注意人物の中でもトップにいる織田さんが嫌いな人。
………織田さんも、あたしを置いて黙ってどっかに行っちゃった………。
あたしだってたまにはいいかな。
3人でカラオケに入った。
携帯が鳴る。
織田さんからだ…!
>> 92
「鈴木とカラオケか?」
こんな短い一言でもわかる。
完全に怒ってる。
「織田さん今どこ?…あたし…どうしたらいいか分からなくて…ごめん」
「俺は帰る!」
帰るって………。
もう電車ないのに。
そんな時 織田さんと一緒にいた上司がカラオケに来た。
「珍しく織田、帰るって」
ヤバいかな…
と思いつつもあたしはカラオケを出た。
織田さんがいた。
反対方向に歩いている。
追いかけた。
「織田さん!」
「戻れ」
「○○で待ってて。あたしもすぐ行くから!じゃなきゃ織田さんもカラオケ行こう」
織田さんはあたしの顔すら見ない。
「俺はいかねぇ。お前は戻れ」
「戻らない。あたしも織田さんと行く。でも…慌てて追いかけたからバックがカラオケにあるの…すぐ行くから待ってて」
「…」
怪しい行動だが、あたしも少しだけ戻り織田さんが待つ場所へ行った。
怒ってはいるが、あたしが来た事で織田さんの機嫌はほんの少しだけおさまった。
あたしは織田さんに
『お前』と言われるのが好き。飲み会の後はいつも、飲み会中そばに行ったり感づかれない為にあえて距離を置き、お互いに我慢してた分 2人になれた時が嬉しくてたまらなくて いつもイチャイチャしてた。
けれど この日は違った。
織田さんはやっぱり怒ってる。
この辺りから あたしは飲み会には行かないと決めた。
>> 93
行かないとは決めたものの…
飲み会のメンバーによって どんな雰囲気になるのか知っている。
織田さんは飲んでる間はメールはくれない。やっとメールが来た時は「解散」した後だ。
「待っている時間」は長い。
なぜ行かないと決めたか?
喧嘩になるのが嫌だから…。
でもこの決断が
また違った方向で喧嘩の元となる。
あたしさえ「我慢」すればいい話。
そう思った。
楽しいはずの飲み会で喧嘩になるくらいなら…あたしが行かずに我慢して待ってればいい。
そう思った。
実際にただ待つ事は
思っていたより辛かった。
ヤキモチ妬きで心配性…
寂しがり屋ですぐ不安になりやすいあたしには「ただ待つ事」は苦しかった。
でも、この想いは
織田さんにはなかなか届かない………。
>> 94
あたしと一緒にいる時は奥さんからどれだけ電話がかかって来ても、織田さんは決して電話に出ない。メールも返さない。
「出なくていいの?」
と聞くと
「出たらしつこいから…」
と言う。
この状態と同じ。
飲んでる間はいくらあたしがメールしても電話しても決して連絡がつく事はない。
男性ばかりの飲みなら問題ないが…女性がいると、信用はしてるがやはり不安。
織田さんの「終電」の時間があたしの中では1つの目安だった。今日は帰るのか、また会社に泊まるのか。
そしてこの時間が過ぎても連絡がないと… あたしの中の憂鬱な時間が始まる。
以前の織田さんは
「俺も早く連絡したくてしょーがなかった」と言わんばかりに隙があれば ちゃんと連絡をくれた。だからすごく「安心」出来る「信用」出来る人だった。
いつからか段々と変わってしまった織田さん。付き合いが長くなると、なーなーになってしまう?
あたしの唯一の相談相手。
智恵が言う。
「まぁ…飲んでる時くらい都合よく凛を忘れたいって事だよ!」
>> 95
そっか…。
忘れてるのかな…。
あたしが待ってる事なんて。
あたしがこうして憂鬱になってる間も飲んで歌って楽しんでるんだよね…。
時計を見ると深夜2時を過ぎる事も度々あった。それでも織田さんはどんだけベロベロに酔っていても必ず連絡をくれた。
ホッとする瞬間。
それが怒りに変わる瞬間の日もある。憂鬱な気持ちと不安な気持ちに駆られながら待ってたあたしに対して、酔っ払ってやたらテンションの高い電話が来るとカチンとくる。
織田さんに対しては気持ちを押さえられなくなる あたし。
「ねぇ…逆の立場になって考えてみて。織田さんがあたしだったらどんな気持ち?」
「ヤダ!凛は俺がいない飲みには行くな。絶対ダメ!」
「なんで?」
「○○が酔って凛に近づく」
「○○が凛を狙ってる」
「○○が……………」
「そういうの心配なんでしょ?だからあたしは行かないじゃん。あたしからしたら同じなんだよ‥織田さんが心配する事と」
「誰も近寄らないよ、こんなおじさんだぞ?」
「そんなの分かんないじゃない!」
「まったく余計な心配しすぎ!」
こんなやり取りから喧嘩になる。最終的には織田さんの逆ギレで終わる。
そして次の日。
「昨日はごめん」
もうお決まりのパターンになってきてしまった。
それでも、喧嘩しつつも この時はまだちゃんと連絡はくれてたんだ。
>> 96
しばらくして社内移動があった。織田さんは1つ昇格し、あたしは違うエリア担当への移動。
若干だが、環境が変わった。
織田さんの上にものすごくSっ気たっぷりの上司が移動してきた。この上司、かなりの酒好きな上にかなり酒が強くて女好き…バツイチ・独身。
織田さんが飲みに行く回数は益々 増えた。と同時に織田さんの仕事量もかなり増えた。
あたしも初めの3ヶ月位は新しい仕事を覚える為に必死だった。移動したのは数名でほとんどの人は今までと何も変わらない仕事。移動したメンバーばかりが残業の毎日。
遅くまでいると酒好き女好き上司・前島が
「飲み行くかぁ~!」と始まる。
織田さんは前島に接触する事をひどく嫌っている。あたしも前島は好きじゃない。だから あたしはいつも行かない。
1度だけ初めての時に行ったが前島の飲み方が嫌いで行きたくなくなった。
この前島が来てから…
織田さんは少しづつ変わっていったね…。
仕事にもある意味「責任」が増えた事によって織田さんの仕事に対するこだわり、仕事量も増え、織田さんは段々 気持ち的な余裕がなくなり仕事に追われる毎日になった。
織田さんは自分に甘い部分があり「今出来る事」を先延ばしにする癖が多少ある。期限が近づくと ようやくやり始める。その中で自分の仕事に対する自信とこだわりが強い分 妥協をしない為 会社に泊まり込みで仕事をする日も多くなった。
なかなか逢えない。
メールすら、気づけば ほとんどしてない日も。
あたしは徐々に仕事に慣れ自分にも余裕が出来てきた。
すれ違い。
織田さんは忙しさのあまり あたしを気遣える余裕もない。逆にあたしは仕事に慣れた分 寂しさを覚え始める。
織田さん…。
このままだとあたし達 すれ違っちゃうよ………。
>> 97
仕事で忙しい分には
「あたしが寂しがったらいけない」と思い 泊まり込みの日は気分転換の為に少し休憩させようと時々メールをする。
くたびれた織田さんは電話をくれる。だから寂しくない!
織田さんは朝が弱いから必ず朝は電話で起こす。織田さんが寝るまで あたしも家に持ち帰った仕事をする。
この「一緒に頑張ってるよ」的なのが好きだった。 ただの自己満なんだけど。
だが、織田さんは仕事の期限が近づいていても前島の誘いには断らない。断れない。
前なら
「ちょっと飲みに行ってくる」
と連絡があったのに
連絡がないまま
残業?
飲んでる?
分からないまま待ちぼうけなあたし。段々と飲み方が前島に染められていく。前島はヘロヘロになるまで飲ませて自分だけは必ず帰る。
連絡する事も出来ない程ベロンベロン酔って放置されるあたし…。朝になっても連絡がない。今はもう分かってるが、この頃のあたしには連絡がない理由が分からず、不安で不安で眠れない日もあった。
次の日はまた後回しにした仕事に追われる織田さん。もしくは二日酔いで早く帰る織田さん。
なんだか…寂しい。
>> 98
ある日 いつものごとく酔っ払った織田さんから電話がきた。
「凛!解散した!今から来い!!」
織田さんは酔うとこういう口調になる。普段は少しあたしに気を使うような優しい話し方だが酔うと素直と言うか若干『S』っぽくなる。
「そんな酔っ払いじゃ、あたしが着いた頃には寝てるでしょ!?」
「寝ねーよ!いいから来い!!」
こう言った強引な織田さんは珍しい。でも、かなり酔っている。迷っていると………
「嫌ならいい。来なくていい」
スネた。
「すぐ行く」
待ち合わせの場所まで行くと、途中まで織田さんが走ってきた。あたしを見つけた瞬間、ガバッと抱きしめられた。
今日はどうしたの?
いつもと違う気がした。
ホテルに入り あたしがシャワーを浴びようと服を脱ぎ始めた時…チラッと織田さんを見た。もうベッドで寝そうになっている。まだ全然 会話と言う会話もしていない。
絶対 寝るな!と思い
「寝るの?」
と聞くと
「寝ない!待ってる。ゆっくり入っといで」
と言う。
怪しいな、と思いつつ急いでシャワーを浴びて出ると…
ものすごいイビキをかいて寝ている。
あたしは何をしに来たの?
ため息が出た。
「織田さん!織田さん!」
起こしても起きない。
ただ同じベッドで寝ている織田さんの隣りで…寝るだけの為にあたしは来たの?
その為にあたしを呼んだの?
段々と怒りと虚しさが込み上げてきた。
>> 99
普段から ちゃんとコミュニケーションが取れているなら…
きちんと逢うなり電話なりメールなり…「会話」が出来ているなら…
あたしはこんなこと全然 構わないんだ。
でも違う。
今は違う。
「話したい事がある」
ってあたしが言ったって時間を作る努力はなかなかしてくれない。
泊まりじゃなくたって食事だってマックだっていいんだ。
あたしは織田さんと会話がしたかった。
今あたしが悩んでる事・葛藤してる事・寂しい事…
織田さんは何を知ってる?
今のあたしの何を分かってる?
飲みに行く日は早く仕事を切り上げて行くのに あたしと逢うのは残業で帰れなくなった日、飲んだ後……………。
そして すぐに寝るんだ。
我慢してた想いが爆発した。
1番最初の初めてした大喧嘩。
あたしはバスタオルで織田さんを叩いた。でも起きない。
そして、怒り狂った様にそこら中にある物を織田さんに投げた。さすがの寝坊助な織田さんも………起きた。
- << 101 寝起きの悪い織田さんも目をまん丸くして起きた。―そして―、あたしが投げつけた物をあたしに投げ返した。 初めて見る織田さんだった。 マジ切れしている。 お互いに興奮していたから何を言われたか、よく覚えていないが… 織田さんが自分の感情をむき出しに言葉を発する事はまず ない。 俺だってこれでも精一杯 努力してるんだ的な事を言われた気がする。 それでもあたしは納得出来なかった。 無言になったあたしを見る事もなく、織田さんはベッドに戻る。今までの興奮はどこへ?と思う位 また寝てしまった。 仕事が忙しくて疲れ果てて寝たならいい。けど、楽しく飲んで、酔っ払って寝る。あたしを呼んでおきながら。 あたしはずっと我慢してきた。嫌でも言わずに頑張って自分の気持ちをこれでも多少なり抑えてきたつもりだった。 あたしは1人ホテルを出た。
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