私の歴代彼氏
初めて彼氏が出来たのは 中学1年の冬☔
あの頃は恋愛に恋していたのかもしれない💦
私は明日26才の誕生日を迎える🎵
25才の最後の日に 今までの恋愛を思い出してみよぅかな😌
文章力に欠けますが…どうぞお付き合い下さい🌸
我慢の限界。
いつも会えないのは仕事の残業が長引き過ぎるからだ。
仕事さえ早く切り上げれば、会える。
その為には…職場の先輩や同僚の協力を得なければならない。
うちの会社は私以外の社員はみんな男だった。
だからと言って、あまり女扱いされていないのは少しイラつくが、仕事はしやすかった。
変に言葉を選んだりとか、気を使わなくていい。
私は会社の先輩達に、今、いい感じの人がいることを公表した。
「えっ!どんなヤツだよ!」
からかい始める先輩達を遮るように話を進める。
「ですから。私は今、大事な時期なんですよ。今夜会わなきゃ、人生のビックチャンスを逃しちゃうんです!!今日だけは早く帰らせて下さい!!」
そう言って、私はヒロさんに今夜会う約束をした。
ヒロさんのソフトの練習が終わった後に会う事になった。
この日の残業は先輩達のお蔭で、私だけ先に帰らせてくれた。
なんだかんだで、優しい人達と仕事できてるんだなと感じる。
会ったのはヒロさんのソフトが終わった夜10時だった。
久しぶりのヒロさんに緊張する。
お腹のペコペコだった私達は、さんざん店を選んだ挙げ句、いつも行かないような店に入った。
ヒロさんと向き合って座る。
夢みたい…!
プライベートのヒロさん…。
バーではみんなのヒロさんだけど、今夜は私が独り占め\(^o^)/
緊張する…。私とヒロさんは、お互いに口下手だと言いつつ会話は途絶えなかった(笑)
「緊張するねー。」
とか
「久しぶりに女の子とデートした。」
とか
ヒロさん言ってたけど…私は嘘だと思いながら笑っていた。
この後…帰りたくなるくらいの出来事が起こるなんて知りもしない私は…ただ笑って話していた。
そして…その時はきた。
私達のテーブルに頼んだ料理が運ばれる。
お腹ペコペコだったけど、私は上品にゆっくり食べた。
可愛く…出来るだけ、オシャレに見られたい!!
これって、女の子なら誰だって自分を好きになって欲しいと思う相手には抱く思い。
私は大好きな唐揚げに手をつけた。
唐揚げはオシャレに食べるには少し難関。
細心の注意をはらう。
パクり。
ん…んっ?!
か…かたい。
だけど…一度口に入れたのは出せない。
チクショー!かたいー!!!
カキーン!
ヒロさんの皿に…私の唐揚げの衣が飛んだ。
あまりの恥ずかしさに…言葉が出ない。
笑えない。
友達となら笑い話。
でも今は友達と食べてるんじゃない。
私はヒロさんと食べてる。
好きになって欲しい。可愛くみられたい。オシャレに見られたい。
その人の皿に私の口元から唐揚げが飛んだ。
笑えない。帰りたい。
無言の私。
「唐揚げ飛んだね(笑)」
ヒロさんが笑ってくれた。
「固かった…ごめんなさい。」
やっと謝れた。
「えりちゃん面白いね。大人しいコかと思ってたけど、楽しいよ。」
ヒロさんの言葉がうれしかった。
帰りたくなくなった。
今夜はヒロさんに何されてもいい。
私はヒロさんとどうにかなりたかった。
食事が終わると、ヒロさんの車に乗る。
「えりちゃんも明日仕事だっけ?どうする?
帰った方がいいよね。」
「帰りたくない。」
私は凄く帰りたくなくて、即座に返した。
夜中の12時を過ぎていた。
だって私はヒロさんと一緒にいたい。
何されてもいい。
てか、どうにかされたい。
「帰らなくて大丈夫?明日も仕事でしょ?」
「うん。いつも夜中まで起きてるから。…あ!ヒロさんも仕事だよね(汗)大丈夫?」
「俺は大丈夫だよ。まだ話したいし(笑)えりちゃんがそんな事言うなんて意外だな。」
「どうして?」
「いやぁ…。帰りたくないなんて、言うとは思わなかった。」
そうだよ。帰りたくないって言ってるんだから。私の気持ち分かりますよね。今夜はどうにかして下さい!
なんて言えない。
「とりあえずドライブしよっか。」
ヒロさんが車を走らせた。
私にとって、男の人の車でドライブするのは久しぶりだった。
ドキドキするし…ワクワクした♪
とりあえず私達は夜の公園に車を止めた。
寒いので車の中で話した。
今までの恋愛の話しや、バーのお客さんの話し、家族、兄弟の話し、沢山話した。
お互いをどう思っているか気になる。
私は我慢しきれずに聞いた。
「ヒロさんは私の事…恋愛対象になります?」
「なるに決まってるじゃん。ならなきゃ一緒に飯食いに行こうなんて誘わないよ。」
「私、ヒロさんとまたこうやって会いたいです!いいですか?」
「当たり前じゃん(笑)正直、俺、えりちゃんの事イイコだなぁって思ってるよ。」
「本当に?!」
「うん。まだお互い知り合ったばっかだし、これからも遊んだりしようよ。」
嬉しかった。
だけど何か物足りない。
どん欲な私…今夜はヒロさんとどうにかなりたいのだ。
早く深い仲になりたいのに…普通ならこんな夜中に暗い車内で二人っきりなら、キスくらいはするでしょ!
しかし…ヒロさんは指一本触れてこない。
私は話しながらも、わざとヒロさんの肩をタッチしたりアピールするが…腕を組んだまま体制を崩さない。
攻めモードの私も、さすがに初めてのデートで付き合ってもいないのにキスしてなんて自分から言えない。
夜中の3時になってしまった。
「えりちゃん。もう帰らなきゃね。
」
「え↓まだ帰りたくない。」
「ダメだよ。明日仕事だから。えりちゃんが寝不足で朝事故でもしたら大変だし。」
「分かった。まだ一緒にいたかったな。」
「そんな事言われたら、俺、勘違いしちゃうよ(笑)」
「本当にまだ帰りたくないんだもん(笑)」
そう言いながら、私のマンションの近くに着いてしまった。
あえて私は自分のマンションを教えずに近くのコンビニに降ろしてもらった。
いくら好きな人でも、知り合ったばかりの男の人には部屋を教えない事にしてる。
本当はこのまま一緒に部屋へ誘いたかったけど、この自分で勝手に作ったルールだけは守りたかった。
「本当にここでいいの?心配だからマンションまで送るよ?」
「いいよ。私、コンビニに用事あるから★」
「本当に大丈夫?」
「うん。ありがとう。」
「じゃあ帰ったら、必ず連絡してね。」
「うん。今日はありがとう。」
私は車を降りて、ヒロさんを見送った。
もぅ何もかもがカッコイイ。
一緒にいて理想の彼氏だった。
何もなかったのは残念だったけど…。
こんな時間まで一緒にいて何もされなかったのは初めてだった。
私に魅力がないから…?
どうしてキスすらしてくれなかったんだろう…やっぱり私の事はただの妹みたいに感じちゃったのかなぁ。
なんだか…自分に自信がなくなった。
元々、自信あるわけじゃないけど…ヒロさんには私を女として見れなかったのかな。
相手にされなかったんだ…。
何だか泣きたくなる。
部屋に着いた。
とりあえずヒロさんにメールする。
【帰り着いたよ♪今日はありがとうございました。】
すると、ヒロさんからすぐにメールが返ってきた。
【こちらこそありがとう。楽しかったよ。】
私は胸が苦しくなってくる。
ヒロさんに本気になっていくのが分かる。
今なら…今のうちなら、フラれても傷は浅くて済む。
私は恋愛が下手だ…。
好きになったら、すぐに当たって砕けろになってしまう。
すぐに答えを欲しがる。
すぐに答えの出ない恋愛はいらないって思ってしまう。
今思えば…すぐに答えの出ない恋愛でも、本当に好きなら、答えがでるまで待つのもいいのかもしれない。
だけど私には待つ恋愛って…今も無理だろうな。
~♪
着信で起こされる。
泣きながら寝てしまったみたいだ。
朝になっていた。
慌てて電話に出る。
「もしもし?」
「えりちゃん。おはよう。」
ヒロさんだった。
「ヒロさん?おはようございます。」
「今起きたね(笑)昨日遅かったから、寝坊してないように電話した。」
「ありがとう。危ないとこだった(笑)」
「あはは(笑)今日も仕事頑張ってね。」
「うん!ヒロさんも頑張ってね。」
電話を切る。
胸が熱くなる。
ヒロさんからの電話。
この人はどこまで私の心をわし掴みにするんだろう。
フラれたと思ってたけど…まだ脈アリ??
え…?昨日、フラれたから私…声出して泣いたんだよね。
あれってフラれてはなかったのかな。
良かった…。でも…。この先どうなるの?
また、しっかり告った方がいいのかなぁ…。
あやふやな関係が苦手な私……。
分からなくなる。
これは…相談だな…。
一人で考えても分からない時は誰かに相談するのが一番だ。
相談しながら自分の頭を整理する。
相談相手はあの人しかいない!!
仕事を終えると真っ先にサキへメールした。
サキはすぐにウチへ来てくれた。
「ヒロさんとデートしたんだねー!どうだった?!」
サキは興味津々に聞いてくる(笑)
私は全てを話した。
「ねぇ…どう思う?私、脈アリって思っていいと思う?」
そう私が最後に質問するとサキはキョトンとした顔になった。
「え?どう思っても私には付き合う前の話しにしか聞こえなかったけど。」
「そうかなぁ?私的に、今まで恥ずかしい話しだけど…すぐ深い仲になって、即付き合うみたいなのが多かったから…ヒロさんにからかわれてるょうな気がして…。」
「私もそこまでヒロさんを知ってるわけじゃないけど、少なくとも、からかって遊ぶような人じゃないよ。」
サキの言葉に私は不安が消えた気がした。
「じゃあ…私、また頑張ってみる。すごい好きなんだよね。久しぶりに自分から好きになったから…」
「いーなー。恋愛してるー!」
サキはそう言って笑った。
このサキと話してた時が一番ドキドキして楽しい時だったのかもしれない。
サキと恋愛について散々話した後、私の気持ちはヒロさんの事でいっぱいになって盛り上がっていた。
サキが帰るとヒロさんから電話がきた。
「もしもし?サキちゃん帰ったの?」
私はメールでサキが来ていた事をヒロさんに伝えていた。
「うん。明日も仕事だしね。ヒロさんとデートした事も話したよ(笑)」
「マジ?恥ずかしいなぁ。だけど、また会いたいね。」
ヒロさんの言葉に私のスイッチが入った。
「ヒロさん。今から会いたい。」
「え?もう夜遅いよ(笑)明日も仕事でしょ?」
「会いたいな…。」
「あはは(笑)本気で言ってるの?もう本当に遅いから、今度にしようよ。」
あ…会わない雰囲気だ。
私は何故か腹が立ってきた。
この時は寒い季節で、こたつを出していた。
「えりちゃん眠たい?」
「うん。少し。だけど帰って欲しくない。」
「あはは(笑)でも、俺仕事朝が早いよ。」
「私は大丈夫だけど、ヒロさん大丈夫?」
「俺は大丈夫だよ。早いの慣れてるから。」
さて…泊まる事が決まった。
いい感じだ。
このままキスしてこないかな~♪
でも…そんなムードでもない。
とりあえず、寝る場所を決めるか。
そうこう考えていると、ヒロさんがこたつに横になった。
「俺、こたつに寝るから、気にしないで♪」
え…?
別々に寝る?
私のレパートリーにそれはなかった。
あり得ない。
同じ部屋で別々に寝るなんて経験…私には御座いません。
だけど自分から誘えない。
いくら肉食女だとしても…23才にして、付き合う前の男をベッドへ誘えなかった。
まだ…清楚な女の子を演じたい。
なんだか泣きそうになってくる。
その時、ヒロさんが私を引き寄せた。
私もヒロさんに腕をまわした。
優しくキスされる。
もう限界。
覚えてないけど、次は私からキスしたらしい。
ヒロさんに触れられる度に、私は反応してしまう。
「えりちゃん…すげー濡れてる。こんなにエッチなんだ…」
憧れの人に触られるのって、こんなに気持ちいいんだ…。凄く感じてしまう。
私は喘ぎ声しか出せなかった。
次は私がヒロさんに気持ちよくなってもらいたい。
フェラしようとすると、ヒロさんが驚く。
「えりちゃん…してくれるの?」
「うん。」
ヒロさんも感じてくれた。
こんなに心も体も気持ちいいエッチは初めてだ。
久しぶりだったのに何度もイッてしまった。
いつの間にか眠ってしまった私達は、裸のまま朝を迎えた。
ヒロさんが帰る支度をする。
「ごめんね。起こした?」
支度に気づいた私にヒロさんが優しく声をかける。
「大丈夫だよ。気をつけて仕事行ってきてね。」
ヒロさんは部屋を後にした。
すぐに電話がくる。
「えりちゃん?二度寝して遅刻しないようにね。」
「うん。ヒロさん…私たち付き合ってるの?」
「いいの?」
「うん。付き合いたい。」
「良かった。好きだよ。」
「私も好き。気をつけてね!ありがとう。」
こうして私たちは付き合った。
幸せすぎる。
嬉しくて一人でにやける。
この時…これから色々な大きな出来事が待ち構えているなんて私には知る由もない。
その日から、ヒロさんは毎日来てくれるようになった。
私の仕事が忙しくて、休みが無いはもちろん、帰りも毎晩遅いので、私が毎日来るようにお願いした。
遠距離恋愛が多かった私が、毎日会いたいと思うのは初めてだった。
いや…今までは、遠距離だから我慢してただけだったのかも。
帰りが遅い私に、ヒロさんはお風呂を用意してくれたり、部屋の掃除までしてくれてる時もあった。
帰ったら、ヒロさんがいて、お風呂も用意できている★
仕事は忙しくて最悪だけど、夢のような生活だった。
そんな毎日が続き、私たちは同棲する事にした。
ただ私の部屋にヒロさんの荷物を持ってきただけの同棲。
あまりの早い同棲にまわりの友達もビックリしていたけど、仕事ですれ違いの多い私たちには同棲するのが一番だった。
初めての同棲の私。
今までは、部屋では一人になりたいって思ってたけど、ヒロさんとはずっと一緒でも平気だった。
ヒロさんは何度も同棲経験アリらしかった。
金曜と土曜の夜はバーにバイトへ行くヒロさん。
早ければ、夜中か2時に帰ってくる…。
その2日間の夜は寂しかった。
しかし、やっぱりバーの仕事をしていれば、女の子とエッチな話をしたり、仲良く〇〇ゲームとか…意味の分からないタッチの多い遊びをしたりする事も多かった。
そんな時は、私は一切、見ないし、嫌な顔もしない。
普通の客を装う。
ここで怒ってしまえば営業妨害だし、バーの店員を好きになってしまったからには、仕方ないと思っていた。さすがに、酔ったのか…酔ったマネなのか分からない女の客が、ゲームのバツゲームは、お互いキスとか言った時は、見ちゃったけど(--;)
その時は、逆にヒロさんが私を一切見ずに、
「そんなキスとかバッにならないでしょー。一気飲みにしようよ。」
って言った。
その夜、ヒロさんが、バーのバイトは辞めると言った。
私に辛い思いをさせたくないし、結婚を考えた時に、一つの仕事を仕事をしっかり頑張りたい。
という理由から。
確かに…バーはあまり儲かってる感じでもないし、収入も不安定。
結婚するなら、収入の安定した会社に勤めるべきだと私も思った。
それよりも、ヒロさんが、結婚を考えてくれてる事が嬉しかった。
私の中で、ヒロさんの存在がどんどん大きくなっていく。
ヒロさんを信じた。信用しきっていた。
絶対に、裏切らないって…勝手に思っていた。
信じてれば、それだけ裏切られた時の衝撃は大きい。
何もかも、私がバカで浅はかだった。
「ちょっと!ひーくん。携帯鳴ってる!うるさいよ!!」
ヒロさんを叩いて起こすが、全く起きない。
もう、着信音が鳴らなくなった。
イライラMAXの私は、ヒロさんの携帯を見る事にした。
人の携帯を見るのは初めてでドキドキしたが、今は見る事が正しい気がした。見るべきだと思った。
すると…ビンゴー。
着信は女の名前。
「かなこ」ばかりが並んでいた。
誰やねん…。かなこって聞いた事ない女。
イライラじゃなく、怒りに変わっていく。
携帯を持つ手が震える。怖いんじゃない。怒りで震えるのだ。
メールも見なければならない状況だと判断。
見る。
見た途端…唖然とした。
ハートだらけのメール。
【ひーくん(ハート)大好きだよ!】
一番ショックなのは、この女もメールで「ひーくん」と呼んでる。
ひーくん。って…私だけの呼び方だった。
大好きだよ!って…普通の知り合いなんかに言わない。
私はキレた。
初めて、彼氏という人に対してキレた。
「おいこら!!起きろ!」
ヒロさんの顔を叩く。
「う~ん。なに?」
寝ぼけたヒロさん。
「なに?じゃねーよ!かなこからの着信がうるせー!!浮気してるでしょ!」
「うん」
また寝るヒロさん。
うん?認めた?
「浮気してたの?」
「うん。うん。」
怒りというより殺意が芽生える。
「おい!起きろやぁ!くそったれぃ!!」
寝ているヒロさんを殴った。
「え?え?なに?」
マジで寝ぼけてるボケ男。
「なにじゃねーよ。浮気してただろ!」
「は?してないよ?」
「じゃあ!さっきから、着信音ガンガン鳴らすかなこって誰よ!!」
「は?かなこ?あぁ。こいつしつこいんだよね。」
「はぁ?メールも見たから!ひーくんって呼んでるし、大好きって言ってるじゃん!」
「なに?俺浮気してねーし、勝手に言ってるだけだよ。他のメールみればわかるから。俺、一切、その女に好きとか言った事ねーし。彼女いるって言ったよ。」
「じゃあ。メール見させてもらうわ。」
「うん。俺、この女から逃げてたから、疲れた。寝る。」
ヒロさんは寝た。
私はかなこって女のメールを順番に見ていく。
そして、ヒロさんの返信をみる。
そこには…私は見た事ない…しつこくて…めげない…どこか恐怖すら感じさせる女がいた。
かなこのメールは全てが一方的だった。
【ひーくん。彼女ができたって…ひどい。】
【どうして電話に出てくれないの?】
【私はこんなに思ってるのに…どうして分かってくれないの?】
【ずっと待ってるからね】
後は忘れたけど、色々ラブメールがきていた。
一方のヒロさんの返信は
【俺、彼女いるから。もう二度と店にも来なくていいよ。】
【しつこい。電話もしてくるな。】
ヒロさんにしては、かなり冷たいメール。
それでも【大好き】とメールする女。
かなりのMなのだろうか?
読んでいて、何となく浮気はしてないなと感じた。
よく事情を聞いてみると、かなこは大人しい性格で、ヒロさんの先輩の友達らしい。
かなこはヒロさんをずっと好きらしく、先輩からも
「こんなに積極的にかなこが好きになるのは珍しいから、付き合ってよ。」
と、頼まれていたらしい。
まぁ…全て、ヒロさんからの説明なので、本当かどうかは知らないけど。
とにかく、ヒロさんは興味なさそうだったので安心した。
逆にあんなにキレてしまった私に引いてないヒロさんにビックリというか…ホッとした。
普通なら、振られてもおかしくないくらい…言葉遣い悪かった。殴ったし。
ヒロさんが打たれ強い人で良かった。
あの出来事から、私はヒロさんに女の名前で電話がこようが、メールがこようが、気にしなくなった。
免疫力がついたのだろうか…。
嫌いになった訳でもないし、前と何も変わらない。
ただ、例え女と遊んだとしても、私のとこに帰って来たら、それでいい。
って考えになってた気がする。
バーで働いてる以上は仕方ないと思う。
それに、もうすぐヒロさんはバーを辞める事になっている。
友達のオーナーにそう話した。
これから昼の仕事に集中して、二人で結婚に向けて頑張ろうと話したりした。
色々あるけど、私はヒロさんが本当に大好きだった。
少しくらい辛い事があっても、ずっと一緒にいたいと思った。
そんな時、嫌な知らせ。
ヒロさんのお婆ちゃんが、危篤。
ガンだった。
回復に向かってるので、近くの病院に転院したと聞いて、今度、私を紹介するとヒロさんは喜んでいた。
結婚気分だった私たちも、一変。
婆ちゃんが転院したのは、回復したからじゃない。
もう、どうする事もできなくなったから。
ヒロさんの両親が、婆ちゃんっ子だったヒロさんに回復したと嘘をついていた。
幸い、この日、婆ちゃんは頑張って乗りきってくれた。
ヒロさんは凄く怒って泣いていた。
「えりちゃん。早く婆ちゃんに逢いに行こう。また危篤ってなったら、二度とえりちゃんを婆ちゃんに紹介できないかも。」
今度の休みに二人で病院へ行く事にした。
これから私の人生は180度変わる。
まだこの時、私は自分にどんな事が待ち受けているかなんて、知るよしもない。
そしてお見舞いの日。
私は緊張していた。
彼氏の家族にちゃんと会うのは初めての経験だった。
「もしかしたら日曜日だし、父ちゃんがいるかも。」
ヒロさんがサラっと言う。
「えっ!だ…よね。日曜日だしね…いたら緊張する(泣)」
「大丈夫だよ(笑)父ちゃん全然、気難しくないから。」
ヒロさんは笑うけど、私はそれどころじゃなかった。
そうこう緊張してる内に病室へ着いた。
扉が開きっぱなしになっていた。
静かに病室へ入る。
ベッドへ横になる婆ちゃんを覗くヒロさん。
「眠ってる。」
「そっか。」
「父ちゃんも来てないみたい。」
「うん。緊張するから良かったかも。」
「別に、緊張する必要ないのに(笑)」
一時、私たちは寝ている婆ちゃんを見ていた。
その時!
ヒロさんソックリな人が入ってきた。
「おぉ。来てたんだ。婆ちゃんの見舞いに来た。あと、えり。」
いきなり紹介されて、戸惑いながら挨拶する私。
「こんにちは。初めまして。えりです。」
「アハハ。初めまして。ヒロの弟です。」
…どう見てもお父さんだった。
「また…何言ってんだよ。」苦笑
ヒロさんがツっコむ。
「わざわざ彼女も来てくれてありがとうねぇ。婆ちゃんもあれから少し落ち着いてるよ。」
「そっか。良かった。」
ヒロさんが婆ちゃんを見つめながら言った。
「今日はな。ケン達も全員で帰ってくるんだ。」
「あぁ。この前言ってたね。今日だったんだ。何年ぶり?10年くらい?」
「うん。だよな。今回は全員一緒に帰ってくるから、大人だけで嫁とか旦那いるし6人だろ…子どもが合わせて7人って言ってたな。」
どんだけ帰ってくるねん…。
ひそかに心でツッコむ私。
ヒロさんから聞けば、ヒロさんのいとこが、兄弟全員で家族連れて帰ってくるらしい。
「今夜は、バーベキューでもしなきゃなあ。…お前たちも一緒に夜ウチにおいで。」
え?
お前たち?私も?
「うん。いいけど。」
ヒロさんが私を見ながら濁った返事をする。
「ん?二人でどっか出かけるのか?」
「いや。そうじゃないけど…えりちゃん大丈夫?」
いきなり私にふるヒロさん。
「えっ?はい!大丈夫です!」
あわてて敬語になる私(泣)
「アハハ。じゃあ夜に、来なさい♪」
笑顔のお父さん。
私は彼氏の実家なんて初めての経験。しかも…久々の親戚まで帰ってくる日に…そんな日に?しかも…お母さんもいるよね?えぇ?!??
頭がパニックの私。
気づいたら、ヒロさんが運転する車に乗っていた。
初めて実家行くのも大事なのに…久々に帰ってくる親戚までいる。何より緊張するのはお母さんに会う事。
私は夜になるのが億劫で仕方なかった。
しかし…嫌でも夜はやってくるのだ。
そしてヒロさんの実家に到着。
もうバーベキューは始まっていた。
沢山の人が座っている(>_<)
「こっちこっちぃー!!」
イトコらしいお姉さんが手招きする。
「おぉ!ヨウコ!久々やなぁ!!」
ヒロさんが懐かしい感じでテンションが上がる。
「えぇ!ヒロちゃんの彼女?!」
「あっどうも。初めまして。」
私はペコペコする。
そして、小柄で痩せた女の人の横に座らされた。
「あ。えりちゃん。隣は俺の母ちゃん。」
ヒロさんが紹介する。
「えぇ!?はっ初めまして!えりです。」
「どうも。ヒロの妹です。」
お父さんと同じ事言ってる(笑)
しかしビックリした。
想像と正反対。
ヒロさんは男4人兄弟。ヒロさんは、少しマッチョで、ガッチリした体つき。
きっとお母さんは大柄で肝っ玉母ちゃんだろうと思っていた。
実際のお母さんは、痩せて、160㎝の私より遥かに小さい。
ビックリしてしまった。
親戚のお姉さん達も私を凄くよくしてくれた。
お母さんは控えめな大人しい人だった。
というより、久々に帰ってきたイトコ達に圧倒されてる感じだった(笑)
ちょっと疲れたけど、なんとかクリアしたような感じだった。
「また、いつでも遊びにおいで。」
お母さんが言ってくれた。
嬉しかった。
この時には、既に私の体には変化が始まっていた。
何も知らない私とヒロさんはのん気に話ながら帰った。
これから、私にとって大変な出来事、沢山の試練が待っていた。
あれから私は何度か実家に招かれた。
ヒロさんの叔父さんや叔母さんにも紹介され、ほぼ近い親戚には挨拶した。
嫁になった気分だった(笑)
婆ちゃんの様態も安定していて、帰ってきていた親戚達も徐々に帰って行った。
そんな時、久々に中学時代から友達のキヨカとトモコから、一緒に飲みに行こうと誘われた。
彼氏が厳しいキヨカが飲みに出かけるのは本当に久しぶりだった。
「久しぶりに飲むから大丈夫かなぁ!?」
キヨカが嬉しそうにお酒を注文する。
もちろん、飲み放題。
色々話すけど、やっぱり行き着くのは、彼氏やH事情(笑)
キヨカも、トモコも、彼氏と付き合って、2年が過ぎていた。
私たちもこの時24才。結婚しても早くは
ない年齢だった。
「キヨカは結婚しないの?」
私が突拍子に聞く。
「したいんだけど、親が反対してるから、出来婚しかないかも。」
キヨカが、ため息まじりに答える。
「マジかよ!順番守ろうよー。」
ギャル系トモコが言うと説得力ない(笑)
「そう言うトモコは?」
「ないない。まだ私、彼氏と遊びたいもーん♪」
私の質問にソッコー答えるトモコ。
…デキ婚かぁ。
「そう言えば、私、生理遅れてるんだった。」
私は自分が生理が来ていない事に気づいた。
「ぷっ(笑)デキたんじゃないの?」
トモコが言う。
「大丈夫。もう腰が痛いし、胸も張ってきてるから。」
私は生理前よくそうなる。
「だけど、分からないよ。妊娠した時も、生理前と似たような感じになるみたいだから。」
産婦人科で勤めるキヨカが言う。
「そうなの?じゃあマジ生理こなかったら、調べなきゃ。」
私はペシェウーロンを一気飲みした。
ひーくんにも言わなきゃな。
実はこの時、私とヒロさんの同棲を知った私の両親が、一度、挨拶に来なさいと言っていた。
こんな時に妊娠なんてしてたら…大変だ。
挨拶どころの話じゃなくなる。
まぁでも、このまま待てば生理はくるだろう。
もう10年以上、毎月きてるんだから(-_-)
問題は、両親への挨拶だな。
初めて彼氏を親に紹介する。
今まで挨拶に来なさいなんて言われた事なかったのに。
こりゃ…ヒロさんの親戚にもほぼ会ったし、結婚の流れか(゜ロ゜)?
何だか、誰かにから繰られてるかの様な感じだった。
実家に挨拶へ行く日程も決まった。
父には、「一応、結婚前提で付き合ってますって事で挨拶くるから。」と伝えた。
しかし、母は何かしらを感じているのか…デキ婚でもいいとか、孫が早く見たいとか、電話する度に言ってくる。(-_-;)
「お母さん、まだひーくんの婆ちゃんも大変だし、結婚するのは来年だと思うよ?」
私はいつもそう言っていた。
確かに、私もヒロさんの赤ちゃんが欲しい。
ヒロさんも私との子供を望んでいたし、夢を語る感じで、妄想したりしていた。
きっと、ほとんどの恋人達は自分たちの将来を語ると思う。
そこには、子供の話しも出るだろうし、想像して、まだ見ぬ未来に幸せを感じる。
だけど、もし、それがいきなり現実になったら…夢のように結婚や子供の話をしていた恋人達はみんなどんな心境になるんだろう。
もちろん、喜んで、即、結婚?
実際、道徳には反するのかもしれないけど…違う道を選ぶ?
待てど暮らせど私に生理がこない。
挨拶の日程も近づいている。
少しずつ私は覚悟を決めていた。
「ひーくん。やっぱり生理こない。検査薬買ったんだけど、調べようかな。」
たまたま二人で休日だった為、私たちは部屋でまったりしていた。
「うん。もし出来てたら、今度の挨拶で伝えなきゃいけないし。」
ヒロさんは、出来てると思っているらしかった。
私は何度か検査した事はある。
ササッと検査薬にオシッコをかけて、しばし待つ。
だいたい1分も経たないうちに結果は出る。
2つ並んだ小窓。右側にだけ線が出て、陰性って事で、検査終了!
だったよね(-.-)?
…あれ?
オシッコをかけた途端に、サーっと素早く、両方の小窓に線が出た。
陰性って2本線だったっけ?
私は何度も説明を見る。
私の記憶は正しかった。
これは明らかに陽性だった…。
この私が妊娠?
私が…妊娠?
頭の中はポカーンとしていた。
「ひーくん。出来てた。」
「マジ!?」
ヒロさんが私に駆け寄り、抱きしめる。
「えりちゃん。結婚する!?結婚だ!!」
ヒロさんは喜んでくれた。
「う…うん…。」
私は上の空で返事をした。
「え?なに?その返事。」
ヒロさんが不安そうに聞いてくる。
「ひーくん。私、妊娠するの初めてだし…結婚も…まさか私が結婚するなんて…信じられない。混乱してる。」
「産みたくないの?」
「とりあえず、産婦人科行かなきゃ。産むよ。ただ、今はビックリしてる。」
覚悟してたはずなのに…混乱した。
まだ信じられなかった。
私はもう一度検査した。
間違いなかった。
だけど、嬉しい気持ちが確かにある。
そして、私たちは、あの時に出来た子供だと分かった。
あの時…。
ヒロさんと私は子供が欲しいと話して、そのままエッチをした。
ヒロさんの全てが欲しかった。
全てを受け入れたくて、なんだか、いつもより濃厚なエッチだった。
避妊は一切しなかった。
そしてエッチが終わると、私は嬉しくて泣いた。
自分でも分からなかったけど、何故か、
ヒロさんに「ありがとう。」って言って、涙が止まらなかった。
きっと、あの時、赤ちゃんが出来たんだ。
後日、病院で妊娠を確認した。
エコー写真に丸い小さな粒が写っている。
私の可愛い赤ちゃんの卵だ(*^^*)
先生が質問する。
「妊娠してますね。結婚はしてますか?」
「いいえ。」
「結婚の予定はあるのかな?」
「はい。その予定です。」
「じゃあ、出産はしますか?」
「はい。産みます。」
何が何でも、産みたい!
私が望んだ赤ちゃん。私にも赤ちゃんがお腹にきてくれたのだ。
幸せだった。
私はそのまま、ヒロさんの仕事の現場へ行き、昼休みを待ってエコー写真を見せた。
「ちっちゃ!なにこれ??」
ヒロさんは期待はずれみたいな顔だった。
どうして?私はこの粒チャンが可愛いくて嬉しいのに( ̄^ ̄)
やはり、男と女じゃ感じ方が違うのかなぁ?
とりあえず、ヒロさんも妊娠を喜んだ。
ただ…、この時、ヒロさんは、自分に子供が出来たのだと実感した様子だった。
二人とも、子供が出来た事を実感し、先を考え始めた。
これから、私とヒロさんの壮絶な日々が始まる。
私はこの時期を本当は思い出したくないし、今思い出しても、辛い。
母に電話した。
「もしもし。お母さん?あのね。言わなきゃいけない事がある。」
「なに?どうしたの?」
「あのね…。妊娠した。」
「やっぱりね。同棲したって聞いてから、そうなると思ってた。身体、大事にしなさいよ。」
意外な言葉だった。
妊娠を予感してた事じゃない。
母は、結婚もしていないのに妊娠してしまった娘に、怒らず、身体を気遣った。
なんなんだろう…。うちは、周りの家庭と比べると、少し、世間体を気にする家庭だった。
幼い頃から、厳しくて、嫌だった。
同棲も本当は黙っていたけど、話してるうちにバレた感じだった。
実際、この時も父には同棲してるのは話していない。
そんな家庭の娘が未婚で妊娠なんて絶対許されないはず…お母さん、そんなに孫欲しかったのかな?
まぁ…母はともかく、父は怒り狂うだろう。
ヒロさんは絶対殴られる。
私も父には悪い事や反抗するものなら、叩かれる事も多かったし、蹴られたりもした。(虐待とは違って、手加減してるのは痛いけど分かってました)
父には、挨拶の時に伝える事にした。
母が、そうしなきゃ絶対ダメだと言った。
そして、会社にも報告した。
みんなビックリしていた。
私に期待していた専務はガッカリしていた。
この専務は、女なのだが、私からすれば、悪魔のような女だ。
妊娠した私に堕ろせと言ってきた。
ヒロさんの事も、会った事もないのに、「バーで働いてたような男は…」とバカにした。
特に腹がたったのは、「結婚って、家系と家系の繋がりになるのよ。あなたの家系に、彼の血が混ざるのよ。そんな子供が生まれるのよ?あなたのご両親がそれを許すかしら。」
おい。お前、どんだけ人を馬鹿にして生きとんじゃ。
ヒロさんはそんな馬鹿にされるような家系じゃねーよ。
私は、この女には呆れた。
「専務。私の彼はそこまで言われるような人じゃありません。実家の両親もしっかりした方達です。もう産むと決めたんです。何も口出ししないで下さい。」
悪魔はキッパリと言った事のない私が言い返したのにビックリした様子だった。
他にも色々、悪魔には言われたが、省略します。
とにかく…私は話し飛びますが、つわりが酷かった。
つわりは…正直、妊娠と出産を合わせても、一番辛かった。
そんな私をヒロさんは、支えてくれた。
つわりの酷い女と一緒に暮らす人も凄く大変だと思う。
とにかく食べれない。食べても、吐きまくる。
出かける事もままならない。
出かけようとすれば、吐く。精神的にも参ってくる。泣きながら吐く。
ヒロさんの両親から食事に誘われても、行けない。両親にはまだ伝えていなかった。
っと言うより、ヒロさんが言えないでいた。
なかなかヒロさんは両親に話そうとしなかった。
「早く、お父さん達に話してよ。」
イライラしながら私は言った。
「あのさ。俺も、正直悩んでるわけ。一度、失敗して親には迷惑かけてるからさ…。」
そう。ヒロさんはバツイチだった。
前妻ともできちゃった婚だった。
子供も誕生したが、その3ヶ月後に離婚。たった11ヶ月の結婚だった。
それは付き合う前から知っていた。
ただ、離婚はヒロさんが望むものではなかった。
子供好きなヒロさん。
我が子と離れるのはどれだけ辛かっただろか…ヒロさんは、結婚が恐いと言った。
ヒロさんの気持ちも分からなくもない。
ただ…もう私のお腹にはヒロさんの赤ちゃんがいる。
「ひーくん。悩むのはいいよ。気持ちは分かるから。でもね。私はもう産むよ。産まなきゃいけない。」
「あのさ…。まだそんなに早く、決断しなくても、いいんじゃないかな。」
え…?この人何言ってんの?
殴ってやりたい。
「堕ろせって言いたいの?」
「違うよ!ただ…産まなきゃならないって…落ち着いて考えようよ。俺たち貯金もないんだよ?」
「私は、妊娠が分かってから、色々考えました。どうしても堕胎は無理。一生後悔する。会社にも、産休手当と育児手当の話しもしたし、最悪、ひーくんが私と赤ちゃんを見捨てても、私は赤ちゃんと生きていきたいって…。」
涙が溢れてきた。
私は、色々強くならなきゃいけなかった。
結婚しないで妊娠した自分は一人で母親になる覚悟も必要だと思っていた。
ただ…それを口に出して言うと、一人で母親なんて凄い覚悟なんだと急に現実になったような気がして、涙が止まらなかった。
「一人で育てるなんて無理だよ!そんな事、俺がさせない!」
「ひーくん。私は強くなる。もう、産むのは決まったの。エコー見たら、どんどん成長してるんだよ。可愛い。つわり辛いけど、頑張れるんだよ。」
後の生活を考えれば、産まない方が正しい場合もあるのかもしれない。
だけど、私にはそんな考えが全くなかった。
それから数日、ヒロさんは悩んでる様子だった。
そんな中、つわりの私をフォローする。
つわりで頭のイカれた私はヒロさんに当たる。
「いいよね。ひーくんは!こんな辛い事もないし、逃げようと思えば、簡単に逃げれるんだから!」
最低だ…。
「逃げねーよ!お前バカか!」
「じゃあ、いつまでも悩まずに、どうするのか決めれば?まさか、自分の親に伝えないまま、私の親に挨拶するつもり?!そんなの絶対ダメだからね!」
「言うよ!うるせーな」
私たちは喧嘩ばかりの日々が続いた。
私の両親への挨拶まで、後15日となったとき。
ヒロさんの婆ちゃんが、亡くなった。
私は一人でお通夜に行った。
ヒロさんの両親は妊娠を知らない。
私が来た事に、ビックリしていた。
爺ちゃんはわざわざ私のところまで歩み寄り、「来てくれてありがとう。」と頭を下げてくれた。
お母さんが、何か食べて帰りなさいと、控え室まで、案内してくれた。
ヒロさんもきた。
「えりちゃん。親族席に座らせられなくて、ごめん。」
小さな声でヒロさんが言った。
「どうかな…お葬式だもん。入籍してないんだから。当たり前だよ(^^;)」
私はそう言って、軽く食べてから、帰った。
葬儀は仕事だった為、出席できなかった。
父から、「ヒロ君のお婆さんが、亡くなったばかりなのだから、挨拶は先にしなさい。」との事。
私はヒロさんと相談したが、父は妊娠を知らない。
早く伝えなければならない。
「お父さん。やっぱり、挨拶は予定通り行くよ。」と返事をした。
ヒロさんは、葬儀の時に婆ちゃんに自分の子供が出来た事を伝えれなかったのを後悔したらしい。
離婚して落ち込むヒロさんを沢山の人が心配したが、婆ちゃんはずっと気にしてくれていたという。
「俺は二度と、子供を失いたくない。離婚は二度としたくない。もう、あんな思いをするのは恐いんだ。」
ヒロさんは涙目でそう言った。
「同じできちゃった婚だから、前回とかぶって恐いのかもしれないけど、私は離婚しない。どんなに嫌な事があっても、離婚は選ばないよ。」
私はそう言ってヒロさんを抱きしめた。
万が一、ヒロさんが浮気しても、ヒロさんが家に帰って来たらいい。
あとは、暴力意外は何が何でも我慢しようと決めた。
ヒロさんの両親にも妊娠を伝えた。
色々事情もあるだろうから、ヒロさん一人で報告に行かせた。
結果は、出来る事なら、産んで欲しいという事だった。
良かった。
あとは、うちの両親…いや…父だ。
しかし、私は、ヒロさんが結婚を決意してくれた事でホッとしていた。
正直、一人で出産なんて不安で仕方なかった。
だからと言って、子供を諦める事もできない私。
結婚を決意してから、私とヒロさんの喧嘩はなくなった。
ヒロさんも、両親に話せた事で、内心、ホッとしたのだと思う。
ようやく二人で微笑みながら赤ちゃんのエコー写真を見るようになり、早いけど、ベビー用品を見に行ったりもした。
そして…挨拶の日がきた。
実家に着く。庭木が綺麗に剪定されていた。
なんじゃこりゃ…。門の外壁まで綺麗にしてある…。
インターホンを押す。
母が出迎えてくれた。
父の姿がない。
父は台所で、魚を捌いていた。
「お父さん。ヒロさんだよ(*^^*)」
私が明るく紹介する。
「おぅ。どうも。」
無表情の父。
違う。明らかに違う!
いつもの父なら、ニコニコして、何かしら優しく声をかける。
まぁ…。こんなのは想定内。
しかし、ヒロさんは違った。
父は少し、強面な為、無表情だと明らかに怒った顔になる。
父、本人もそれを気にしているため、人前ではできるだけ笑顔を心がけている。
ヒロさんは緊張しすぎて、挨拶する声が震えていた(笑)
私たちは客間に案内された。
畳が新しくなっていた(゜ロ゜;
ヒロさんがスーツで正座する。
顔がひきつったままのヒロさん…ウケる。
ヒロさんは殴られる覚悟をしていたらしい。
「ひーくん。大丈夫。落ち着いて、見た目ほど恐い人じゃないから。」
私が話しかけるが…あまり反応しない。
そして父が客間に入ってきた。
「ごめん。待たせたねぇ。」
魚を捌き終えた父は少し笑顔で座った。
「いえ。あ…あの、神田ヒロです。」
ヒロさんがやっと発した言葉。
隣りの私も緊張しながらも、もっとしっかりした挨拶しろよ…と心の中でつぶやく。
「あぁ。えりの父です。いつもお世話になってるみたいで(笑)」
おっと…友好的(^_^;)
「あ…いえ…こちらの方がお世話になってます…」
汗だくのヒロさん。
私は思わずハンカチをヒロさんに渡した。
「ははは(笑)そんな緊張しないで、足を崩して下さい。まぁ、ビールでも飲みましょうや。」
父が母にビールを持ってくるよう呼んだ。
ビールを持ち入ってきた母はビールを置こうとしない。
「ねぇ。ちゃんと話したの?」
おっと…?
私は首を小さく振った。
「話してないなら、ビールは渡せません。」
そう言って、母はビールを持って台所へ行ってしまった。
そりゃそうか…。
父は微妙な表情をしている。気づいてるか…?
もしかしたら、聞きたくないから、ビールを早めにお願いしたのかもしれない。
沈黙になる…。
父の顔が何かを言われる覚悟をしたような表情になった。
汗だくヒロさんが口を開く。
「あの…実は、えりさんのお腹に子供ができました。」
い…いきなりかよっ( ̄▽ ̄;)
「あ…?」
父はポカーンとしている。
そして下を向いて黙りこむ。
「そっか…。そう…か。それなら仕方ない。反対も何もできないじゃないか。」
そう言って父は私を見て笑顔をみせた。
その笑顔は父にとって精一杯の笑顔だったのを私は後から知る。
「それで…今、何ヵ月なんだ?」
「3ヶ月です。」
私が答えた。
「そうか…。ヒロくん。えりを宜しくお願いします。」
「はい!大切にします!」
「そうだな。あまり出来のいい娘ではないが(笑)大切にしてもらわなきゃ困る(笑)」
父はそう言って笑った。
ヒロさんは汗だくで苦笑いだった。
ご馳走が並んだが、ヒロさんは緊張で食べれなかった。
食べるの大好きなヒロさんが食べないのは初めてだった。
色んな話しをしたが、覚えてない。
ただ、殴られずに済んで良かった。
これで私とヒロさんは結婚できる☆
そう喜ぶのも束の間。
結婚するのがここまで大変とは思わなかった。
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