生きる意味

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2010/10/26 03:12(更新日時)

今から二十数年前…
あたしの人生は始まった。




とても長い、出口の見えない辛い人生の始まりだった。

No.1162807 (スレ作成日時)

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No.201

>> 199 やばい…泣きそう😭 感想スレありますよ😅
感想は、
生きる意味感想スレにレスしませんか?😣

優さん、読者の皆様
横レスすみませんでした😣

  • << 203 ✨サクラさん✨ あたしの代わりに教えてあげてくれてありがとう✨✨助かりました❤❤

No.202

>> 199 やばい…泣きそう😭 ✨早紀さん✨

コメントありがとうございます🙇

泣かせてしまってごめんなさい💦


良かったらまた読んでコメント下さい✨
サクラさんが言ってくれた通りコメントは感想スレがあるのでそっちにいっぱい書いて下さいね✨

No.203

>> 201 感想スレありますよ😅 感想は、 生きる意味感想スレにレスしませんか?😣 優さん、読者の皆様 横レスすみませんでした😣 ✨サクラさん✨


あたしの代わりに教えてあげてくれてありがとう✨✨助かりました❤❤

No.204

美月はよくあたしをヘルプに呼んでくれた。

まだ入ったばかりで指名客のないあたしはヘルプに付きながら新規のお客様や指名の決まっていないお客様から指名を貰えるように頑張っていた。



美月の他にもよくヘルプに呼んでくれ色々教えてくれる先輩が出来た。


彼女は源氏名を
【小百合】
と、言い知的な感じの凄い美人だった。



小百合さんはみんなから慕われ店の女の子達のまとめ役のような人だった。



そんな小百合さんにあたしは憧れた。

No.205

美月や小百合さんから色々教わりながらあたしはホステスとして成長していった。



指名客も増えていき、同伴やアフターもこなし給料も上がっていた。



でも…


店が終わるとみんなはホストクラブやご飯を食べに街に繰り出すがあたしはいつもすぐに家に帰った。



ブランド物をもち私服もきらびやかな同僚に比べるとブランド一つ持たず私服も地味なあたしをみんなは
【ケチ】
【借金まみれ】
と、噂した。

No.206

あたしにはお金を貯めたい理由があった。





中学の時荒れていた修は自分で立ち直り地元を離れ板前として一人住み込みで修行をし、頑張っていた。





修は厳しい板前の仕事も弱音を吐く事なく頑張っていてあたしはとても嬉しかった。



連絡はお互い取り合い修にだけはあたしは自分の居場所を教えていた。



あたしが地元を離れた日の夜…



修から電話がきた。

No.207

『もしもし。』



『…………。』



何も言わない電話の向こう。



『修?どうしたの?』



電話の向こうから泣き声が聞こえてきた。



『優姉ちゃん…照美です。』



修の携帯から電話を掛けたのは彼女の照美ちゃんだった。



『照美ちゃん!どうしたの?修と喧嘩した?』



泣いてる照美ちゃんにあたしは単純に修と喧嘩でもして話を聞いて欲しいんだろう…くらいにしか思っていなかった。



でも照美ちゃんの口から出たのは



『修ちゃんが事故にあって…今病院だけど危ないかも知れないの!優姉ちゃんどうしょう!!』



修が事故…


危ない…


その言葉にあたしはすぐタクシーで病院に向かった。

No.208

修の住んでる所はあたしの居る街から車で20分ぐらいで修が運ばれた病院はちょうど中間くらいの場所だった。


病院につくと泣いてる照美ちゃんが駆け寄ってきた。



『修は?!』



照美ちゃんに案内されたのはICUと書かれた病室だった…



ガラス越しに見る修は色々な管が身体に付けられていた…



『照美ちゃん連絡くれてありがとう。心細かったね。ごめんね。お母さん達には連絡した?』



照美ちゃんはお母さんにも連絡したが、連絡が取れなかった事、誰か身内の人に先生が話がある事を教えてくれた。



先生に挨拶して修の状態を説明してもらった。

No.209

修は車にはねられ病院に運ばれた。


全身を強く打ち付けていて、骨折も数ヶ所…内臓も損傷…

頭も強く打っておりこれから脳の検査も詳しく行う事。


そして今はまだ予断の許さない状態だと告げられた。



先生の話しを聞いた後に今度は警察が話を聞きにきた。



警察の話しでは信号無視の車が修をはね、そして逃走したと…



つまり修はひき逃げされたのだった。



犯人が捕まらない限り保障もない。



生命保険にも入っていない。


見習い板前でまだまだ給料は安かったので貯金もない。



あたしに出来る事は修にキチンと治療をさせてあげる為にお金を稼ぐ事だった。

No.210

あたしは指名を取り少しでも給料が上がるように頑張った。



美月や小百合さん以外には【がめつい】と思われてたに違いない。

でも誰にどう思われても構わない。



あたしは必死だった。

No.211

店で着る服は露出の多いのを選んだ。



お客様は男。



何と言っても露出の多い服を着ると喜んでくれ指名も上がり、売上もあがる。




露出の多いドレスを着る為にダイエット、筋トレをしてスタイルを変えた。


少しポッチャリだったあたしは短期間に7キロ減量した。



化粧やヘアーセットも美月や小百合さんに教わりながら…


数ヶ月がたつ頃には入店した時とは別人のあたしがいた。




その姿は…


幼い頃から見ていた母親が自分と重なっていた。

No.212

幼い頃、いつもお酒臭く男に媚ながら生きていた母。



そんな母のようにはならない!



そう思っていた今のあたしは…



お酒を飲み…
肌を露出し…
男に甘え…



お金を得る…



そんな自分が大嫌いだった。



でも反面、ホステスという仕事をうまくこなしている自分がいて…



あたしは母の血を引いていると実感した。



あたしは家庭を持たない方がいい。


母みたいになって家庭を壊し、子供を傷つけてしまう…



この頃あたしはそう思っていた。

No.213

どんなに前の夜アフターで遅くなっても


お酒を飲み過ぎて二日酔いでも


あたしは修に会いに行った。



電車に乗り、駅からは歩きで病院に通った。


病室前に母やあいつが居ればそのまま帰る事もあった。



照美ちゃんも毎日修に会いに行ってくれた。あたしがどうしても行けない時は照美ちゃんが修の容態を教えてくれた。



様々な検査をし、手術や骨折の治療をして修は一般病棟に移れるようになった。

No.214

でも意識は戻らないまま…



明日、目を覚ますかも知れないし



十年後かも知れない。



医者にはそう告げらた。

No.215

照美ちゃんと二人で修の横に座り話をした。
あたしは
『やんちゃで喧嘩に明け暮れていた修とよく付き合ったね~。』

と、笑いながら言うと照美ちゃんは


『修ちゃん悪い事ばっかしてたけど本当は凄い優しいんです。今は本当に真面目で仕事場でも友達にも凄く好かれてるんですよ。だから好きで悪い事してたんじゃないと思います。』



本当は優しい修がグレたのには訳がある。
理由があってもグレたりするのは良くないけど…


グレた修をあたしは責めなかった。


責めれなかった。


照美ちゃんがこんなに修の事をよく見ていてくれ、分かってくれている事が嬉しかった。



『修の事分かってくれてありがとう。』

No.216

『優姉ちゃん…修ちゃんには絶対言うなよって言われてたけど…。』


と、話しだした照美ちゃん。


『何?どうした?』



『修ちゃん…姉ちゃんに迷惑かけっぱなしだから一生懸命仕事して金貯めて姉ちゃんも一緒に住める家を建てるって凄い仕事頑張ってたんです。』


『え…修が?』



『いつも言ってました。俺はずっと姉ちゃんに守られてきた。物心ついた時から姉ちゃんは自分を犠牲にしても俺を守ってくれた。今もあいつのせいで辛い人生を歩いてる姉ちゃんを今度は俺が守るんだ…そう言ってました。修ちゃんは本当に優姉ちゃんを守りたいんだと思います。』



あたしは照美ちゃんの話に胸がいっぱいになり涙がこぼれた。

No.217

修の手を握りしめた。


久しぶりに握った修の手はいつの間にかあたしより大きくなっていた。




あたしの後ろに隠れ、泣き虫で甘えん坊だった修はいつの間にか大人になっていた。



修がそんなふうにあたしの事を考えてくれてたなんて…



嬉しさと同時に



良太との事、流産などで悩み自分の事だけで精一杯だった自分が情けなかった。

No.218

だからこそ…


修の為に出来る事は精一杯やってあげよう…そう心に決めてた。



病院には一応自分の連絡先を伝え、誰にも内緒にしてもらう事と、何かあれば連絡をもらえるようにお願いしてから



すぐあたしの元に医療費の未払いの連絡がきた。


だからあたしはこうして仕事を頑張れた。

No.219

がむしゃらに仕事を頑張っていた頃



店によく通ってくれ指名をしてくれるお客様がいた。



彼は田中専務。


お父様の大きな会社に勤め、取り引きのある会社のお嬢様を奥様にもつ、あたしとはまったく違う人生を歩んできた人。



でも田中専務は穏やかで優しく気前のいい方でホステスのあたしにも紳士的に接してくれる素敵な人だった。


あたし以外のホステスも田中専務の指名を貰おうと頑張っていた。

No.220

でも何故か彼はあたしをよく指名してくれた。



修の病院と仕事で疲れきっていたあたしは彼の席についた途端に


『美優ちゃん疲れてる?』



そう言われてしまった。



『えぇ!あたし疲れてる顔してますぅ?』


慌てて笑って誤魔化した。



『何か疲れてる感じがしてね。無理したら駄目だよ。今日美味しい物でも食べに行く?』


優しく気遣ってくれた田中専務の気持ちが嬉しかった。

No.221

同伴やアフターを繰り返し、徐々に打ち解けてきたあたしはつい愚痴をこぼしてしまった。



修が事故にあい犯人が捕まらない苛立ちやホステスと言う仕事の難しさを田中専務にぶつけてしまった。



田中専務は黙って話を聞いてくれあたしは聞いて貰っただけで気持ちが軽くなった気がした。



『ごめんなさい。お客様に愚痴を聞いて貰うなんてホステス失格ですね。』



そう言うあたしに



『ホステスも人間。ストレスもあるし愚痴りたい時もあるよ。美優ちゃんが話してくれて嬉しいよ。』



笑いながら言ってくれた。



当時19歳のあたしに20も歳上の田中専務はとてつもない大人に思え、同時に理想としている父親像に田中専務を当てはめ



こんなお父さんが居たら幸せだろうな…


そう思っていた。

No.222

そんなある日、田中専務と同伴の約束で食事に行った。



ホテルの有名なレストランでのいつもと違う雰囲気の中で食事中に田中専務は話を切り出してきた。



『美優、僕に援助をさせてくれないか?月に30万なら自由に出来る。それで足りるなら店を辞め、弟君の看病に専念して欲しい。』



『えっ…!?』


あたしは驚き何て言えば良いのか分からず戸惑っていると



『援助と言っても誤解しないで欲しい。愛人になれとか、身体が目的とかじゃないから。』


田中専務は笑いながらそう言った。



田中専務のいつもの笑顔に少し安心しあたしもつられて笑った。

No.223

『ありがとうございます。でも田中様にそんな事して貰らう訳にはいきませんよ。でもお気持ちはとても嬉しいです。』


そう答えると



『ふっ…美優ならそう言うと思ったよ。でも遠慮はいらないんだよ。妻は実家に入り浸りでほとんど帰ってこないし、給料の中から彼女に必要なお金は渡してる。30万は誰にも文句を言われる事のない僕の稼ぎだ。』



でもあたしは丁寧にお断りすると、田中専務は自分の話をし始めた。

No.224

奥様とはお見合いで言わば政略結婚。



お父様の会社にはとてもプラスになる会社のお嬢様で会社の事を考えると断りきれなかったらしい。


田中専務の話では奥様は根っからのお嬢様気質でとてもワガママ。
家の事はもちろんお手伝いさん任せで自分は旅行や夜遊びに明け暮れ月の内ほとんどを実家で過ごし、


奥様の両親も娘を溺愛している為に何も言わなかった。



そんな結婚生活がもう13年になる…


そう話す田中専務は少し寂しそうか顔をしていた。

No.225

あたしは大手企業の次期社長で何不自由なく人生を送ってきていると思っていたので話を聞いて少し驚いた。



田中専務は話しを続けた。



『僕は子供が大好きで何人も欲しいと思っていたんだ。でも…妻は違った。
【子供なんて産んだら自分の時間が無くなるしスタイルも崩れる。それに子供は嫌い。汚いしうるさい。だから私は子供はいらないの。パパもママも私がいらないならそれでいいって言ってるから♪】

そう言い切り子供は作らなかった。』



その話をしている時の顔は今まで見たことのない顔だった。



とても切なく今にも田中専務が泣いてしまうんじゃないかと思った。

No.226

『だから…美優の事を歳の差もあるし女と言うより娘という目で見てるんだよ。接してる中で若いの思いやりがあり、知識も豊富でシッカリしている美優をこんな娘が居たら…全力で守ってやりたい。単純にそう思ってるだけなんだ。』



そう話す田中専務の目は真剣だった。



他の人ならこんな事言われても
【口だけでしょ】

と、思うけどこれまでの彼の態度などを思うと嘘ではないと思った。


あたしは
『その気持ちは嬉しいです。あたし色んな事情があり父が居なく父親というものに憧れてます。だから田中様があたしを娘のように思ってくれるのは正直すっごく嬉しいです。だからこれからはあたしも店の外ではお父さんのように甘えたり愚痴ったりしていいですか? でもお金はいりません。お気持ちだけいただきますね。』

と、伝えた。

No.227

田中専務は笑いながら

『本当に美優は立派だね。分かった。つまらない事を言ってすまなかったね。でも困った時は本当に言ってこなきゃ駄目だからね。俺は自分に出来る事を美優にするよ。これからは娘を守る為にちょくちょく店に行くから♪』


そう言い、いつもの田中専務の顔に戻った。



あたしは少しホッとし


『ありがとうございます。これからもよろしくお願いします♪』



と、頭を下げた。

No.228

それからは本当に今まで以上に気にかけ店にも通ってくれた。



大きな接待などの時は動くお金も大きく指名を受けてるあたしの給料ははね上がった。



メールもちょくちょく入れてくれて


『お腹すいてないか?同伴するからご飯行くか?』



『困った事ないか?弟に欲しい物はないか?』



『体調どう?無理したら駄目だからな。』



いつも心配してくれてるメールだった。



他にも好意を持ってくれたお客様はいたけれど…
当たり前だけど下心のある人ばかりで仕事とはいえ愛想笑いするのも疲れてる中で田中専務のメールにはとても癒された。

No.229

ホステスを始め半年が経ちあたしは田中専務のお陰もありナンバー3の中にランクインするようになっていた。


修は長引く入院で一度転院し少し遠くなったのであたしは美月の家を出て修の病院の近くのアパートを借りた。



そこそこ貰っている給料も修の治療費と自分の生活費で無くなっていった。



意識の戻らない修は床擦れや筋肉が固まるのを防ぐ為にベッドでのリハビリが始まった。


無意識の修にリハビリの先生が話しかけながら身体をほぐしていく様子を近くで見ていると、何故か修が人形のように見え涙が込み上げてきた。



事故から半年…


戻らない意識…



いつまで続くか分からないこの状況に急に不安になり、動悸と目眩があたしを襲いその場に倒れた。

No.230

目が覚めた時はベッドの上で点滴をしていた。



傍には心配そうに照美ちゃんが座っていた。



『あっ!優姉ちゃん!目が覚めた?気分はどう?今看護士さん呼ぶね。』



照美ちゃんはナースコールで看護士さんを呼んだ。



看護士さんが来てくれ血圧を計ったり、検温をしてくれた。


看護士さんは


『ちょっと無理しちゃったかな??疲れやストレス溜めすぎたら駄目よ。今日は点滴終わったら帰っていいけど調子悪いなら一度検査しに来てね。』


そう言われた。


確かにずっと体調はすぐれない…
でもあたしは病気になってる余裕はないからと、自分自身を奮い起たせた。

No.231

それから修の状態も変わらぬまま

あたしの生活や体調も変わる事なく2ヶ月が過ぎた頃…




田中専務には変化が起きていた。

No.232

田中専務はいつものように店に来てくれ、あたしは指名をもらい席に着いた。



何かいつもと違う雰囲気を感じたのを今も覚えている。



『やっちゃん、元気ないね?仕事忙しい?』


あたしは親しくなり田中専務の希望もあり彼をやっちゃんと呼ぶようになっていた。




『ん…?大丈夫だよ。ちょっと疲れてるだけ。美優に元気分けてもらおうかな。』



そう笑う笑顔も今思えばぎこちなかった。



変な雰囲気ではあったが、ヘルプの子も付きいつものようにたわいもない会話をした。



『美優、この後アフター行けるか?寿司でも食べに行こう。』



あたし達は店が終わった後、寿司屋へ向かった。

No.233

お寿司を食べながら話をしていると田中専務は急に改まり話を始めた。



『美優。話があるんだけど…聞いてくれる?』



いつもと違う様子に少し聞くのが怖かったが

『うん。いいよ。』


と、答えた。



田中専務は言い出しにくそうに話し始めた。


『しばらく店に顔も出せないし、美優に連絡も出来なくなる。
だから…美優に何かあったりしても俺は守ってやれなくなるんだ。
あれだけ偉そうに美優を守りたい…
何かあればすぐに駆けつけると言っといて情けないけど…


本当にごめんな。』



悲しそうな顔をし頭を下げる田中専務にあたしは慌てて


『いいよ!いいよ!やっちゃんそんなの気にしないでよ!
今まで充分過ぎるほど助けてもらったんだから。頭なんて下げないでよ…ねっ!』


そう言い顔を覗きこんだ。

No.234

顔をあげ悲しそうに微笑み


『でも絶対また店にも行くし、これまで以上に美優の事守れるようになるから!
だからしばらく許してくれよ…

美優に会えなくても俺の美優への気持ちは今まで変わってないからな。』


そう言ってくれる田中専務にあたしは



『そんなの分かってるよ!やっちゃんはあたしのお父さんだもん♪世界一あたしの事を考えてくれてる素敵な人だもん♪少しくらい離れてたって大丈夫!』


必要以上に明るく答えた。



あたしはその理由を知りたかったけどいつも何でも話してくれるのに話さないと言う事は聞かれたくない事だと思いあたしからは聞かなかった。

No.235

それからはまた違う話をし笑顔で寿司屋を後にした。



田中専務はあたしをタクシーに乗せてくれ運転手に場所を言いお金を渡した。



あたしは窓を開け


『やっちゃんありがとう。ごちそうさま。色々あると思うけど、無理は駄目だからね!
また会える日を楽しみにしてるね。』



そう、言うと


『美優。お前も無理は駄目だからな。すぐ無理するから心配だけど…俺が戻るまで今のままの美優で居てくれな。』



そう言いあたしのオデコにキスをした。



これまで一回もそういう事をしなかったのであたしは驚いたが、不思議といやらしさはなくむしろ温かい気持ちになり嬉しかった。



『うん!分かった。じゃあまたね♪』



『あぁ、またな。』



あたしは家へと向かった。

No.236

家に着き一人になると色々考え眠れなくなった。



【やっちゃんはどうして急にあんな事を言ったんだろう…】



【オデコだったけどキスしたのはどうしてだろう…】




分からない事だらけだった。




あたしは勝手に



あたしとやっちゃんは本当に身体の関係も無くやましい事は一切なかった。
けれどもホステスと言うあたしの立場から奥様が怪しみ疑われたのかも…



それとも…



会社の経営状態が悪化し経済的に店に来たりするのが厳しくなったのかも…



などと、色々考えてみたけれどしっくりくる答えは出なかった。

No.237

やっちゃんから連絡がなくなり1ヶ月近く経った頃に店のママから呼び出され待ち合わせのカフェに向かった。



ママから昼に呼び出されるのは始めての事であたしは内心ビクビクしていた。



あたし、何か失敗しちゃったのかな…



お客様からクレームでもきたのかな…


辞めてって言われたらどうしょう…
そうなったら修の治療費が…



そんな気持ちでママを待っていた。

No.238

『美優ちゃんおまたせ!遅くなってごめんね。』



待ち合わせに10分遅れ、謝りながらママが来た。



『あたしもさっき来たばかりだから大丈夫ですよ。』



そう話し飲み物を注文した。


しばらくは店の事や修の事などたわいもない会話が続いた。



すると、突然ママから話を切り出してきた。


『美優ちゃん。今日あなたをここに呼んだのはちょっと話があるのよ。田中さんの事なんだけれど…』



ママからやっちゃんの名前が出た時あたしはすぐに怒られると思った。



やっちゃんは店にとっても上得意客。



そのやっちゃんが一切来店しないのは指名ホステスのあたしと何かトラブルがあったからと店側に勘違いされていると直感で思った。



実際に客とホステスの間でトラブルがあり来なくなると言うのはよく聞く話。



ましてやっちゃんはお得意様…




【あぁ…誤解とけるかなぁ。あたし下手したらクビだね。】



そう思った。

No.239

でも、ママの話は違った。



ママはやっちゃんの話をし始めた。



ママとやっちゃんは実は同級生でしかも

【元カレ・元カノ】


だったらしい。



ビックリしすぎ言葉が出なかったあたしにママは



『驚かしてごめんね。でも付き合っていたのはずっと昔でお互い若い頃の思い出なのよ。でも泰人は本当にいい奴でね。頭もいいし、家柄も良いのに全然偉そうにしないし別れてからも恋愛感情抜きにいい友達として付き合っていたわ。』



店では誰が見てもお客様とママという感じでまさか昔からの知り合い…まして【元カレ・元カノ】とは思いもしなかった。



『私は店では泰人を一お客様として接していたわ。私はママだからね。他のお客様の手前もあるし泰人にだけ特別扱いは出来ないから。』


でもあたしはママのその言葉を聞き納得し、同時にママをホステスのプロだと尊敬した。

No.240

『あたし…ママとやっちゃ…田中様がそんな関係とは知らなかったから…』



何故かやましい事は無いけれど、やっちゃんとの事が急にママに対して悪い事したと思い、シドロモドロになりながら話すとママは笑いながら



『何言ってんの。だから、私達は今はただの友達よ。ううん…親友かな。
泰人から美優ちゃんの事は聞いていたのよ。ずいぶんあなたが可愛くて仕方ないみたいよ。』



そう言われ少し安心しあたしはママに聞いてみた。



『やっちゃん元気ですか?しばらくは連絡出来ないって言ってたのであたしも連絡してないんですけど気になっちゃって…。』

No.241

あたしのその質問にママは少し黙り込み重い口を開いた。



『その事でね、今日は美優ちゃんに来て貰ったんだ。』



ママのその言葉に変な緊張感があたしの周りに漂っていた。



『美優ちゃんには言うなって言われてたけど泰人…今入院してるのよ。』




『えっ!やっちゃん入院してるんですか!?どうして!?意識とかはあるんですか?』



あたしは思いもよらないママの言葉に入院中の修とやっちゃんが重なり驚きを隠せなかった。



『意識はあるよ。悪い所を手術して今は術後の経過を見ながらリハビリしてる状態よ。泰人は修君の事もあるし美優ちゃんにこれ以上心配を増やしたくなくて言わなかったのよ。』



あたしはやっちゃんが意識もあり、悪い部分を取り除きリハビリをしている…と、聞いて少し安心した。



『良かった…じゃあ術後経過が良かったら退院出来ますね。』


あたしは単純にそう思った。



やっちゃんのお見舞いに行きたい気持ちもあったが奥様の事を考え



ホステスのあたしがお見舞いに行くとやっちゃんが疑われたりしたら嫌だな…と思い諦めた。



何かあったら絶対教えて下さいとママに言いその日は別れた。

No.242

あたしは思いもよらないやっちゃんの状況に少しショックを受けながらも



【大丈夫。手術もしたし大丈夫。治ったらやっちゃんきっといつものように店に来てくれるよね。】



自分にそう言い聞かした。

No.243

ママと話をして1週間が経った頃店にやっちゃんが現れた。



指名をもらい席に行くとあたしはやっちゃんの変わりようにすぐに言葉が出なかった…




始めた見たラフな格好のやっちゃんはとても痩せていて



やっと出た言葉は


『やっちゃん…痩せたね。』
だった。



『美優、元気だったか?俺は中年太り気にしてダイエット頑張ったよ。』



そう笑うやっちゃんに


『痩せすぎでしょ!やっちゃん太ってなかったのにダイエットとかあたしに嫌味~!』



と、あたしも笑顔で答えた。



入院していた事、体調の事、聞きたい事は山ほどあったけどやっちゃんから話をしない以上…あたしは聞かない事にした。



たわいもない会話をし、やっちゃんは痩せてはいたけれど元気そうで今までと変わらない様子に少し安心した。


帰り際、店の外まで見送りに出たあたしにやっちゃんは



『美優、無理はするなよ。調子が悪かったりしたらすぐ医者に行かなきゃ駄目だそ。
この仕事は不規則だし酒も飲むから尚更、体調管理しっかりな。』


そう話した。

No.244

『うん。分かった。ありがとう。いつもあたしの事考えて、分かってくれるのはやっちゃんだけだよ。これからはまた前みたいに会えるの?』



あたしがそう言うとやっちゃんは



『美優は優しいし、自分より人の気持ちを一番に考える子だから辛い思いする事もあると思うけど、その優しさは美優の財産だよ。だから今のままの変わらない美優で居てくれな。また連絡するからね』



優しく微笑みあたしの頭を撫でやっちゃんはタクシーで帰って行った。




これが…


あたしがやっちゃんに会えた最後だった。

No.245

店に来てくれたのは退院したから…


調子も良くなったから…



あたしはそう信じて疑わなかった。




でもそれから1ヶ月…


やっちゃんは店に訪れる事も無く



あたしに連絡をくれる事も無かった。




でもあたしはやっちゃんに会えた事、痩せてはいたけど元気そうだった事で連絡が無くても



【仕事が忙しい人だったから入院していた分、仕事たまって大変なんだろうなぁ。】


くらいにしか思っていなかった。





それから1週間後…




何であの時



自分から連絡しなかったんだろう…





そう…後悔している自分がいた。

No.246

ママからの一本の電話。



それは…



やっちゃんの悲しい知らせだった。




信じられず、言葉の出ないあたしにママは
言った。




『今日、私はお通夜に行くから美優ちゃんも行こう。』





あたしは喪服に着替えママの迎えを待った。

No.247

車で向かってる途中にママは話をしてくれた。




やっちゃんはずっと体調が悪かったけど仕事も忙しく病院に行かずほっておいた事。




会社で倒れ病院に運ばれた時は手のほどこしようが無いくらい癌が転移していた事。




それをあたしには心配かけないように内緒にして入院した事。




余命1ヶ月を切った時に病院を抜け出しあたしに会いに来てくれた事。




そして…その時は座っているのも、喋るのも辛いはずの状態なのに本当に笑って楽しそうにしているやっちゃんを見て胸が痛かった事…



ママは


『最期にどうしても美優ちゃんに会いたかったのね。私は美優ちゃんを病院に連れて行くって言ったのに泰人は店に行きたい…病院では会いたくないって言うから体調も良くないし心配だったけど何も言わなかったの。でも店に来て美優ちゃんと話してる泰人は本当に病気が治ったのかも…って思うくらい顔つきもイキイキして別人みたいで私も嬉しかった…』


そう話してくれた。

No.248

やっちゃんのお葬式は大きな葬儀会館で行われた。



たくさんの花。



たくさんの弔問客。



大手企業の専務という立場はもちろんだけど、それだけではなくやっちゃんの人柄も弔問客の多さから垣間見えた。



会館に着いたとたんあたしは急に怖くなった。
やっちゃんの死を現実として認めなければならない…



そう思うと怖くて怖くて仕方なかった…



あたしとママはお焼香するのに並んで待っていた。
お焼香をするだけでも長い列が出来ていた。



あたしはとてつもなく長い時間に感じた。




自分の番になりやっちゃんの遺影が目に入った。




最後に会ったやっちゃんとは違いあたしが知っているいつもの笑顔のやっちゃんがそこには居た。

No.249

【やっちゃん…辛かったね。痛かったね。すごく頑張ったんだね。でもやっちゃん…頑張り過ぎだよ。もうゆっくり休んでね…
お疲れさま。
今までありがとう。】




あたしは遺影に向かいそう心の中で話しかけた。




悲しすぎてなのかな…


それとも…


まだやっちゃんの死を現実として受け入れられないからか…



やっちゃんの訃報を聞いても、お通夜に行ってもあたしは泣かなかった。




泣けなかった。

No.250

ママは

『今日はもう店は休んでいいからね。美優ちゃん取り乱したりしないで偉かったね。』

そう言い、あたしに手紙を渡した。


『これね、泰人から預かってたの。俺に何かあったら渡してくれって…。それから、美優ちゃんの口座に泰人から預かった50万振り込んだから。』



思いもよらぬ話を聞き

『50万!?そんなのあたし貰えません!あたしは前にもやっちゃんに金銭的援助を断っていたのに…やっぱりあたし…お金目当てと思われていたのかな…』

そう話しうつむいてしまった。



そんなあたしにママは優しく諭すように


『美優ちゃんそれは違うよ。泰人がそんな男じゃないのは美優ちゃんも分かってるでしょ…?泰人はそんな事少しも思っていなかったよ。逆に美優はもっと俺を利用して少しは楽すればいいのに…って笑っていたのよ。そんなあなただからこそ泰人は心配で愛しかったのよ。泰人からの最後の美優ちゃんへの気持ちと思って受け取りなさい。じゃないと泰人が可哀想よ。』


そうだった…やっちゃんはあたしをそんな目で見る人じゃなかったのに…


やっちゃんの事少しでも疑った自分が恥ずかしかった。

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