話つく③ダンテスティン・サーガ~魔法のペンダント~
7つの惑星を舞台に登場人物たちが連合軍と言う巨大組織と闘うストーリーです👮是非、皆さん読んでみて下さい。
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話つく
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話つく②
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>> 200
⑯リード「私の邪魔をするな」
子供は己の杖をスモッグの杖を払うと、凄まじい魔力を発しスモッグを吹き飛ばす。
スモッグ「な…まだこんな力が残っているのか」
余りの魔力に、近づくことすらできないスモッグは後退しながら叫ぶ。
⑯「さぁ、迎えもきた参ろう」
小さな身体ながら大人時以上の力を見せつけるリード将軍はクリスにゆっくり近づいていく。
①「誰かいくか!!」
剣に再び、光を纏わせたクリスは低姿勢で、斬りかかる。しかし、将軍の影から出た触角ような魔法に掴まり、身体を締め付けられる。
⑯「拒否する権利はない。暴れてもかまわんが、その魔法がよけいにくい込むだけだぞ」
①「は…離せ!!」
空から連合軍の移送船が舞い降りる。ハッチが開き、数名の連合兵が降りてくると敬礼をして列をつくる。
将軍は魔法でクリスを宙に浮かせると、移送船へと歩き、それに従うようにクリスも成す術なく船へと運ばれていく。
スモッグ「待て!させぬ!」
⑯「邪魔をするなと言ったろ」
鋭い闇魔法がスモッグに大きくな風穴を空け、スモッグは煙のように消えてしまう。
>> 201
しかし、簡単にやられるスモッグではなかった。
移送船の周りを取り囲むように数百のスモッグが現れたのだ。霧の賢者の称号をもつ、スモッグ得意の分身魔法である。
スモッグ「ふふ、こちらも少し本気を出させてもらう」
⑯「死に急ぎたいようだな」
将軍は杖を天へとかざす。スモッグもそれを見て、同じく杖を天へかざした。魔力では将軍に軍配が上がるが、スモッグが引くことはなかった。
両者の闘いの火蓋がとられようとした時、風の向きが変わり、周囲の音が無くなり無音となる。
⑯「なんだ」
スモッグ「おお…主よ」
一握りの目映い光が現れ、数秒間周りを飛ぶとしだいに光は大きくなり、人形へと変わる。
②ハーク「どうやら間に合ったようじゃの」
光から現れたのはキングで一時の休息をとっていた風の大賢者ハークであった。
⑯「もうお身体は大丈夫なのかな」
②「心配無用、この通りピンピンしとるわ。お陰様での」
子供姿の将軍に少し驚いた様子のハークだったが、取り乱すこともなく淡々と話す。将軍はハークの出現に闘うことを止め、杖を下ろしている。
>> 202
柔らかい。穏やかな風が戦場を吹き抜ける。爆音の騒音しかなかった戦場に風の優しい音が駆けていた。
②ハーク「魔法界の魔法老も下界に干渉することを許可して下さっておる」
⑯リード「何が言いたい?大賢者よ?」
鮮烈な戦場は、一時の静寂となっていた。魔導の何もしらない連合軍の一般兵たちも銀狼たちも大賢者ハークの出現、全てを包み込む優しい力を潜在的に感じとっているのだろう。
②「連合軍は世界中の人々はもちろん魔法界を相手にすることになろうぞ。光はしだいに大きくなっておる」
大賢者ハークは穏やかな口調で言った。しかし、その言葉には殺意以上の意味が込められていた。
⑯リード「魔法界など、我が国家の前では敵にあらず。閣下の力は、貴様らが考える神をも超える」
将軍は小さな身体を目一杯、回転させマントを広げて見せた。将軍の影は人形ではなく、歪に歪んでいた。
②「ドイスは何を望んでおるのんじゃ…何を企てておるのじゃ…アヤツは…」
ハークは将軍の影に世界の行く先を垣間見、思わずそう口にした。量ることができないドイスという闇にハークすら恐れを隠せなかったのだ。
>> 203
⑯リード「世界の破滅、この世の破滅だ」
②ハーク「ぬう!?」
将軍は子供らしからぬ笑みを浮かべた。無表情にも似た笑み、形を成して形がない歪な虚無の笑いであった。と当時に、将軍の闇魔法である紺紫の光が辺りに広がっていく。ハークは対抗呪文で、金色の鳥のような光を無数に出現させる。お互いの魔法がぶつかり合い、相殺し合うと凄まじい衝撃波が発生した。
⑯「ふふ。流石は名高い風の大賢者。簡単には殺れぬか。この続きはウマンダ星でしようではないか。キメラ将軍も交えてな」
②ハーク「逃がすと思おとるのかのぅ」
マントを翻し背を見せた将軍にハークは杖を振るった。風は渦となり、大地を切り裂きながら将軍へ向かっていく。将軍は「ふっ」と軽く呟くと、魔法で抱え上げていたクリスをその渦へと投げ飛ばした。
②「くっ…卑怯な!!」
クリスを盾にした将軍に、ハークは致し方なく魔法を反らせた。その瞬間、将軍は姿を消したのだった。
スモッグ「追いますか…ご命令とあらば」
移動魔法で消えた将軍を追おうとしないハークの傍らに、白煙が立ち込め、将軍を迎えにきた一個大隊の移送船を破壊し終えたスモッグが現れる。
>> 204
②ハーク「よい、将軍は宇宙空間へ飛びよった。追って闘っても生身の我々では分がわるいじゃろう」
クリスを優しく淡い光で包み込み、そっと地面へとつけたハークは空を見つめながら言った。
スモッグ「あの者どもしか出来ぬ荒行ですか…油断しました。完全に退路をたったつもりでしたが…」
スモッグは周りを囲った数百の分身たち見渡し杖を振る。分身は風に運ばれ次々に煙となって消えていった。
①クリス「ハーク殿、申し訳ない。私のせいで…」
②「気にするでない。それより、将軍が居なくなろうともこの闘い続くじゃろう。なんとしても勝たねばならぬぞ。クリス」
再び、爆音が辺りに響き始めた。戦いがまた始まったのだ。
①「でも…どうやったら…戦力が違い過ぎます」
②「キングでウマンダ星へ向うのじゃ。あそこには狐族がおる。味方にできれば、このピンタゴ星雲の戦いに勝利できるじゃろう」
①「この連合艦隊と戦いながら行けと…そんなの無理です」
②「儂らが手伝おう。追い風に乗ってゆくのだ」
ハークが見つめる先に、2つの魔法陣が現れる。
>> 205
チャリン
七色の神秘的な輝きを放つ魔法陣から現れたのは、白いドレスを纏った美人であった。
チャリン
腰に紐で巻き付けた鈴が動く度に鳴り、聞き慣れた音を上げる。
マリーン「ご機嫌よう」
黒い肌、細い手足は彼女の可憐さをより一層引き立てている。羨むほどの容姿を備えた彼女こそ、女神とまで言われる雷の大賢者マリーンである。
マリーンの後ろにはアイシスがいた。彼女は、医者であり、爆弾使いと過激な側面もある銀狼である。
オジオン「待ちくたびれたぞ」
もう一つの魔法陣からは世界の監視者、地の大賢者オジオンが現れる。7大賢者のうち、またしても三人がここに揃う。
①クリス「マリーン殿、身体は大丈夫なんですか?」
マリーン「人間になって身体が弱くなるどころか、回復能力が逆に上がちゃて。この通り、完全回復…主治医付きで退院したわ。無理したら監禁再入院だって」
アイシス「凱も変な女に捕まったね」
冗談を入れたつもりで話すマリーンだが、後ろで見つめるアイシスの目はマジであった。
②「では、さっそくやるとしようかの」
①「!?」
>> 207
①クリス「なにを…」
訳が分からないといった様子のクリス。
スモッグ「飛ぶぞ」
スモッグは短く言葉を発すると、有無を言わせずクリスの手を握る。その瞬間、クリスの視界は閃光に包まれた。
①「っ…」
まるで空でも飛んでいるかのような浮遊感、上も下も分からない宙が回るような錯覚の後、訪れたのは吐き気であった。
クリスは口を押さえ、何とか吐き気に耐えながら横で仁王立ちするスモッグを軽く睨むと周りを一望する。
先ほどまでいた殺風景の戦場から、可愛いらしい花柄の壁紙、小物で溢れかえったこじんまりした部屋へと変わっていた。
スモッグ「ふん。空間移動は苦手か」
①「今ので苦手になったよ。ここは…何処なんだ?」
スモッグ「ふん。ここはキングの中だ。連合軍の爆撃を飛び越えたせいか…移動目標から少しずれてしまったが、キングには辿り着けたようだ」
不機嫌そうにそう言うと、スモッグは部屋にあった小窓から外の様子を伺う。
ゴオオオオオ…
①「今度はなんだ!?」
スモッグ「始まったな…ふっふふ…魔法界の歴史に刻まれる出来事になるぞ」
激しい振動が起こると、突風が吹き荒れる音が聞こえ始める…
>> 208
連合軍の主力艦隊が蔓延る空へ、キングは悠々と宇宙へ向け順調に高度を上げていた。
数百万にものぼる連合軍の大型艦隊の砲台からはおびただしい攻撃がキングへ放たれているが、その攻撃はキングを覆う青白い光に吸収されている。
フォースフィールド。
世界最強の軍隊、連合艦隊の総攻撃すら防ぐ、強力なバリアーである。
そのフォースフィールドの領域へ、生き残った宇宙海賊艦は次々に入っていき、今、宇宙海賊全軍はキングへと集結しようとしていた。
⑱ドグロ「キングジュニア、各戦艦への連絡は済んだか?」
ミスチル「はっ、総戦力をキングへ集結させております」
⑱「ふっ、いつでも良いぞ。大賢者ども…」
ミスチル「!?」
キングの中心部、宇宙海賊の総指揮官ドグロは、キングの舵取りの先をウマンダ星に向けていた…
>> 209
【あの人は今】
ダンテスティン星、一昔前までは世界で最も栄えた星であった。魔法大国とも呼ばれ、大賢者ハークを筆頭に多くの魔法使いがいた。
しかし、《あの事件》と呼ばれる惨事により、多くの人命が奪われ、国自体の存続すら危ぶまれる状態の中、国力は衰退する一歩であった。
そんな中、始まった連合軍の世界侵略の進軍、ダンテスティン星は戦火に見舞われる。力の源であった魔法使いを失った国に最早、戦をする力はなかった。
ダンテスティン国は今、連合軍によって占領されていた。優美なダンテスティン城も見る影もなく、瓦礫の山と変わっており、緑豊かな市街は、絶えることなく炎が上がり、戦車団が縦横無尽に駆け巡り、破壊の限りを尽くしていた。
アーム「総将軍、民のゲリラ攻撃も大分と大人しくなってきましたぜ」
軍服姿の肉付きのいい大男は、ご自慢の顎髭を触り、ハマチを吹かしながら言った。
連合軍雷部隊、隊長。特殊戦車乗り、アーム・ストロング少佐である。
⑫雷「そうか」
ダンテスティン城の玉座の間に立つ金色の甲冑に身を包んだ金髪の剣士はだだ一言そう言った。まだ、歳は20歳前半であろう幼い顔つきではあるが、その黄金の眼からは《恐怖》すら感じる。
>> 210
【あの人は今】
アーム「もっと嬉しそうにしたらどうです?う…あんたの為に死にものぐるいでこの国を乗っ取ったんだぜ」
アーム少佐は無反応の雷将軍に、ご立腹の様子で胡座を組んで座ってみせる。
⑫雷「……」
キルト「おい!おっさん!何を言いやがる!雷さんの身になってみな!ここは雷さんの故郷なんだぞ!ボケ!」
大小様々な円盤を腰にぶら下げた小汚ない青年が、柱の影から現れるとアーム少佐に罵声を浴びせる。
雷の側近、修道院からの仲であるキルトである。
アーム「ガキは黙ってろい。ひき殺すぞ」
キルト「ッ……」
アーム「将軍、いつまでも傷心に浸ってるわけにいきますまい?」
殺気に満ちた視線をキルトに浴びせ、黙らせるとアームは将軍を見据える。
⑫雷「我々は…時を待つだけだ。あちらからやってくるのをな。暫し待て命令だ」
雷総将軍の意味深な言葉にアームは頭をかく。
雷は会話も早々に、幼い頃、過ごした町が燃えゆく様を見つめ直した。
>> 211
【あの人は今】
キルト「あの野郎、兄貴に対してなんて態度だ。なんなら俺がアイツの首を落としてやりましょうか」
玉座の間を出て行ったアーム少佐に向けて、舌を出すキルトは生々しく輝きを放つ円盤を手に取って言った。
⑫雷「止めておけ、アイツは態度は悪いが、いざとなれば頼りになる男だ」
キルト「頼りになるねぇ…髭ずらのあのおっさんが?信じられねぇ」
⑫「……」
雷将軍は赤々と町を燃やす炎を見つめながら、父ダリルのことを想い出していた。
『お前たちだけでも逃げるんだ!私たちのことは気にするな!』
『行きなさい!雷!クリス!』
あの事件の時、雷の父と母は勇敢に闘った。自らの子たちを守るために…
そして、殺されたのだ。
あの事件
人々が語ろうとはしない事件の真相
あの事件とは
DOISU計画によって生み出された人口知能ロボットの暴走。
ロボットが暴走し人々を襲ったのだ。
知能を備え進化したロボットが選んだのは、人を襲うこと…
それも容赦なく…
そして、その殺戮ロボットたちは自らをドイスと名乗った…
>> 212
【あの人は今】
思い出したくもない過去の記憶。だが、あの事件の記憶は忘れることなどできはしないのだ。
夜な夜な悪夢となって事件が鮮明に蘇る。復讐を果たせと自分自身を罵り、苦しめるように…
悪夢となって…
あの事件は繰り返される。
ベネズエラ「将軍!?」
キルト「兄貴!!」
呼び声で、雷将軍は我にかえる。ただ事ではない将軍の顔色にやってきた闇魔法使いベネズエラが駆け寄ると癒し魔法を唱える。
⑫雷「すまない。もう大丈夫だ…何のようだ?ベネズエラ?」
手を貸そうとするキルトを制すると、雷将軍はしっかりとした口調で言った。
ベネズエラ「将軍お疲れのところ悪いのですが…」
⑫雷「気にするな」
ベネズエラ「例の探索の件です。流石は魔法大国のダンテスティン城、何重ものまやかし魔法がかけられ探すのに手間取りましたが、地下路への入口を発見しました。おそらく、ドイス閣下が追い求めてこられた地下路かと思われます」
歓喜を隠せないのか、ベネズエラは震える声を上げた。
⑫「そうか…案内しろ」
ベネズエラ「はっ。こちらで御座います」
>> 213
【あの人は今】
7人の大賢者が唯一過去に一度だけ、共同で放った大魔法がある。
それは、ダンテスティン城の地下深くに眠る魔王を封印する魔法であった。
強力な封印魔法は、破られることもなく現在も魔を封印している。
キルト「兄貴、例の探索?なんの話です?俺、知りませんよ」
⑫雷「お前には関わりのない話だ」
キルト「ちい…」
薄暗い地下へと続く階段をベネズエラを先頭に三人は降りていく。気味の悪い、冷たい冷気が吹きぬけていた。
ベネズエラ「あれです将軍」
階段の終わりには、重そうな鋼鉄の両開きの扉があった。ダンテスティン国、王家の紋章が扉には刻まれ、その中央には何かをはめ込むような小さな窪みがある。
⑫「間違いない…これだ…」
小さな窪みを指でなぞるように雷将軍は扉を触るとそう言った。
ベネズエラ「強力な…私では到底破ることができない封印魔法が施されており、この扉は開けることができません」
キルト「なんだよ。それ…じゃあ、兵器を使えよ」
キルトが扉を蹴とばすと、地鳴りと共に小さく地面揺れ始める。
キルト「な…なんだ!?」
⑫「……」
ベネズエラ「危険です!将軍!お下がりを!」
咄嗟に扉から離れる三人。
>> 214
【あの人は今】
暫くすると揺れは収まる。
キルト「なんだったんだ」
ベネズエラ「扉の封印魔法です。この封印魔法を破ろうとするなら反発してくるんです」
ゴオオオオオ…
⑫「……」
今度は、爆音が地上から聞こえてくる。爆音はしだいに大きくなり、その爆音を上げる正体が見えてくる。
ボディが白一色。手足が異常に長い赤い一つ目のロボットが飛んでくる。
ミスター「将軍。お出でになられていたとは」
ロボットは凄まじい着地音で着地すると、背中についた飛行用の羽を収納し、その3m以上の身体をゆっくり倒しお辞儀をする。
キルト「けっ…あのおっさんとこのロボットかよ」
アーム少佐を思い出しながらロボットを指さす。ミスターはまた軽くお辞儀をした。
ミスター「将軍。ありとあらゆる兵器を用い扉の破壊を試みましたが無理でありました。我が、連合軍艦隊の総攻撃でも破壊できる可能性は0.0015しかありません」
ベネズエラ「面目なく…魔法班、軍どちらもお手上げでありまして」
⑫「開け方なら分かっている」
ベネズエラ「本当ですか!?」
>> 215
【あの人は今】
⑫雷「ふッ。開け方どころか、中身もな…」
ベネズエラ「??」
意味深に囁いた雷将軍の口元は微かに震えていた。
将軍は扉の先にある見てはいけない何かを見てしまったかのように、おぞましい顔で扉から目を反す。だが、幸いにもそれに気づいた者はいなかった。
ベネズエラ「本国へ至急連絡致します。閣下もさぞかしお喜びになられることでしょう」
⑫雷「いい…私からドイス閣下に報告する」
ベネズエラ「はっ…将軍直々に…?よろしくので?」
⑫「何度も言わすな。それより…ここへの立ち入りは禁じよ。入口を私の直轄部隊に警護させる。お前はもう下がってよい、ベネズエラご苦労であったな」
ベネズエラ「…では、私めはこれで」
闇魔法使いは将軍のただらなぬ様子に疑問を抱きながらも姿を消す。
⑫「ミスター、城下町の雷部隊をここへ集結させよ。本国の連合兵は近づけさせるな…」
ミスター「かしこまりました。命令遂行上、障害になる者は抹消してもかまいませんか?」
⑫「かまわん。近づく者は殺せ。早くいけ…」
ミスター「了解」
>> 216
【あの人は今】
ミスター「発進!!」
その巨大をスピンさせ、ド派手な音を上げながらミスターは飛んで行った。その際、大量にブースター(ロケット式)から黒煙が吐き出され、キルトはロボットに向け、怒鳴り声を上げる。
キルト「まったく。近頃はCO2削減じゃねぇのか…なんだよ、あの燃料垂れ流しロボットは」
⑫「キルト。その何でもかんでも悪口を言う癖は直せ…お前は子供の頃からいつまで経っても成長せんな」
キルト「兄貴ぃ…痛いとこ突っ込みますね。
そんなことより」
キルトは軽快なステップで扉の前を何度か行き来すると
キルト「これなんです?隠し事は止めて下さいよ」
扉の前で立ち止まる。
⑫「お前に隠していたつもりはなかった。だが、知らせる必要もないと思っていたが」
雷は先程降りてきた古びた石作りの階段に腰を下ろすと、深い息をつく。
⑫「知ってしまった以上は仕方あるまい。これは…約50年前、大賢者7人が施した封印魔法。その扉の奥には《魔》が封印されていると言われている」
キルト「魔ですか?」
⑫「そうだ。この扉の先には魔の界。闇の力、無限の力があると言ってもいい」
キルト「魔界?冗談でしょ?」
>> 217
【あの人は今】
⑫「魔法界がこの事を公にしてはいないが、魔王と呼ばれる者がいたと言う書籍も残っている。大半は魔法界に焼き消されているがな」
鈍い光で魔法陣を浮かび上がらせる扉。
キルト「ドイスはその魔をどうするつもりなんです」
⑫「魔の王、つまりは魔王となれば世界を破滅させる力、無限の軍勢を得れるとも言われている。定かではないが、ドイスは…扉の先にいるであろう魔王を倒し、自らが王になり闇をも手に入れるつもりかもしれん」
キルト「魔王を…」
話も終盤にさしかかった頃、雷は急に立ち上がる。
キルト「ど…どうしました?兄貴?」
⑫「誰かくる」
雷が一言そう言った数秒後、階段を降りる足音が響いてくる。
キルト「足音からして一人ですね。それも相当な手練れ…長身…この足音…人じゃないな」
円盤を両手に構え戦闘体勢をとるキルトは冷静に敵を分析する。
⑫「招かざる客か…入口の警護はどうした」
雷は腕を胸前で組むと徐々に闇からあらわになってきた来客者を見つめた。
>> 218
【あの人は今】
「お初にお目にかかります。連合軍の雷将軍とお見受けしますが」
現れたのは、2メートルを越える人のようで人ではない、青黒い肌、頭には鹿のような長い角が生えた異様な者であった。
キルト「誰だ?てめぇ?」
⑫「キルト、お前は黙っていろ。貴様は珍獣族だな」
覇「流石は学識高い雷将軍。ご名答の通り、私は珍獣族の覇と申す者。世界の繋ぎめ…世界の橋ような存在です」
賢者すら子供騙しにみえる程、魔力を発する覇は、危害を加えるつもりはないと言いたげに膝をつき頭を下げた。
⑫「覇。どうやって入ってきた?」
剣の柄に手を掛けた将軍、覇は更に頭を下げる…
覇「世界最強の貴方様にきられれば私など跡形もなくなってしまいます。どうかお許しを…表の警護兵たちは一切手を出しておりませんゆえ」
⑫「なら、雷部隊の警護をどうやってすり抜けた?」
覇「こうやってで御座います…」
そう言った覇は姿を消す。
キルト「なっ!?」
>> 219
【あの人は今】
キルト「魔法か…」
⑫「ただの魔法ではない。存在が消えた」
慌てて、雷を守るキルトは周囲に円盤を投げるが、空を切るだけである。
覇「武器はお納め下さい」
キルト「てめぇ…」
覇は暫くして姿を現すと何事もなかったように頭を下げる。
⑫「時代を…時空間を移動する魔物がいると聞いたことがあるが…」
覇「その魔物は私で御座いましょう。昔はよく人前に出ていましたので」
⑫「本当に実在するとは…だが、そんな神物語の魔物が…私に何のようだ」
覇「未来・過去を行き来することができる唯一の存在。私の存在意義は世界の近郊を守ることで御座います。
その為にも貴方の本当の真意をお聞きしたいのです」
⑫「真意だと…何を…」
覇「貴方は分かっておられるはず。私が現在に直接的に干渉することはできませんが、思いをお伝えすることはできますぞ」
⑫「……」
意味深なやり取りながらも二人の中で会話は成立していた。
>> 220
【あの人は今】
覇「ご心配は監視の目で御座いますか?安心を…ここはドイスが長年探しても見つけることが出来なかった場所に御座います。大賢者の封印術は遠く離れたドイスの魔法など寄せ付けはしません」
キルト「本当かよ!兄貴!これで、クリスと…」
雷の妹の名前を出したキルトの目は潤んでいた。
兄弟同士、敵となった皮肉な運命を一番身近で見てきたキルトだからこそ出た涙であった。
⑫雷「私は恨みを忘れたことはない。父母の仇をとる為に私は生きてきた…」
復讐の為の近道と考え、連合軍に入り、ついに将軍の座までついた。
そして、今日まで期を伺ってきたのだ。
ドイス倒すその一心で彼は妹であるクリスと対峙してまで己を偽り続けた。
それが、両親の為になると信じ…
⑫「だが、目的はどうであれ、ドイスに近づく手段であれ、仇側につたのだ…一人で立ち上がり、今や連合軍すら脅かす仲間を得たクリスには、私のやり方は言い訳に過ぎないだろう」
キルト「兄貴…でも…クリスに兄貴の想い…本当は今でも味方だって伝えるぐらいは…いいじゃないですか!!」
⑫「いや、そんな資格はもう私にはない」
>> 221
【あの人は今】
⑫雷「取り返しはつかない。クリスとは別の道で復讐を遂げる。それが、私の想いだ。消えろ」
覇「分かりました。貴方の答え。最も辛い選択を選ばれた以上、私が出る幕はありませんな」
覇はそう言ってあっさり姿を消した。
キルト「兄貴…」
⑫「キルト、俺たちのやり方は間違っていた。だが、目的は果たすぞ」
雷は剣を鞘から抜くと地面と水平に一振り振り抜く。
父から授かった大剣が、雷の想いに答えるように輝いた。
⑫「いつまでも隠れてないで出てきたらどうだ?全て聞いていたんだろ?」
雷は大剣を頭上に放り投げ、背中の鞘へと収めると、上の方で隠れていた人物に問いかける。
アーム「けっ、ばれちまったか。でもよぅ俺ら(雷部隊)を呼んだのは将軍だろう?」
恰幅のいい見慣れた男が重い身体を動かし階段を降りてくると雷の前へやってくる。
⑫「アームか…」
アーム「将軍、あんたが閣下の首を狙ってるは薄々感づいてはいたぜ。だが…本国のあの警備の中じゃあんたでも中々行動には移せずにいたようだがな!ガハハハ!」
ハマチを吹かしながらアームは大声で笑う。
>> 222
【あの人は今】
キルト「てめぇ!分かってんのか!知っちまった以上、生かしておけねぇぜ!」
アーム「いいともよ。俺の首ぐらいやらぁ…お前らが狙ってるドイスの首と比べたら安いもんだがな。ガハハハ!!」
キルト「なッ…」
切りかかろうとする者を前に、笑うことを止めないアームに雷は微かに笑みをこぼす。
アーム「路上生活してた餓鬼のころの将軍が懐かしいぜ。そんなあんたを俺の部隊に引き入れて何年経つかなぁ…まぁ今やその部隊もあんたの指揮下なわけだがな」
⑫「アーム。軍人であるお前に君主を裏切れと無理を承知で頼む…私と友に闘ってくれないか?」
キルト「兄貴!?」
雷は軽く頭を下げると髭ずらの男を見つめた。
修道院を飛び出し、まだ幼なかった雷に働き口などあるわけもなく、盗みを働きなんとか食いつないでいたそんな時期に、この男、アームに拾われ、連合軍へ入ったのだ。
その時は、連合軍の事など知りもしなかったが、今思えば、連合軍への入隊は運命であったのかもしれない。
アーム「馬鹿いちゃいけねぇ…君主を裏切れだと…!?」
>> 224
シャードmkⅢは変わゆく戦況に困惑しながらも戦場を飛んでいた。キングに群がる連合艦隊は一見まるで蜂の大群のように見える。
⑦凱「連合艦隊のど真ん中じゃ、キングに近づきもできねぇな」
ローナ「そうね。あの爆撃の中をいくのは賢明とは言えないわ」
連合軍の戦闘機を巧みに撃墜しながら戦況を分析する二人。性格は正反対と言っていい二人だが、息の合った操作でシャードmkⅢを操縦する。
ローナ「シャード。宇宙海賊の指令部の命令はどうなってるの?」
「キングヘシュウケツセヨ クリカエシソノシレイガトンデルヨ」
ローナ「集中放火を受けているキングに集結?どういうことなの?」
ローナは何にを感じとったように船のAIであるシャードに問う。シャードの機械的な子供の声が返ってきた。
デビル「風がくるね。とてつもない大風」
⑪リオ「どういう意味だよ??」
デビル「そんなことより!リオっち!お菓子おくれ!」
⑪「ダメ。さっき飴やったろ!!」
リオは抱えるデビルが漏らした言葉に頭を傾げる。
⑦「風が強くなってきたな。シャード、左翼の出力上げてくれ」
黒の惑星に吹けぬける風は徐々に強さを増していた・・・
>> 225
②ハーク「では、詠唱を始めましょうかの」
オジオン「ふむ。そちに、術式は任せる。私らは補助にまわろう」
ヒドラのけたたましい雄叫びが響き、激しい揺れに見舞われる。
マリーン「あの子泣いてるわ…まるで子供みたいに…」
影のようなヒドラを見つめるマリーンの目から溢れるものがあった。
美しい女神は何を想って流した涙なのだろうか。
②「……」
そんな彼女を見つめながら、ハークも哀しみ心の中で喘いだ。
破壊するためだけに生命を与えられたヒドラに対しての哀れみであった。連合軍はなんと哀しい生き物を世に作り出したのだろうか。
彼らはこんなものまで生み出して何を得ようとしているのか。
オジオン「ハーク殿、時間がない。我らとて、そう長くはおれぬぞ」
哀しみに囚われ、手を止めていたハークに冷静に告げる。
周りでは、大地が割れ、至るところからマグマが吹き出し逃げ遅れた兵士たちが巻き込まれていく。赤々としたマグマはまるでこの星が流す血のように見える。
②「そうですな…彼女らを導く手助けをするとしましょう」
ハークは杖を三回地面に突き刺した。すると三人を中心にして、桁外れに巨大な魔法陣が大地に現れる―――
>> 226
キック「ッ…ここは?…」
痛みで目が覚めたキックは、起き上がろうとするが立ち上がることが出来ず、尻餅をつく。慌てて、近くにいたセロが駆け寄ってきた。
⑤セロ「安静にしとけって。将軍の闇魔法がまだ完全に抜けたわけじゃないんだから。それにここはキングの中だ。敵はいないから安心して休め」
淡く輝く魔法陣の中心に横たわらされているキックは石のように重い身体を上半身だけゆっくり起き上がらせた。
⑭キック「どうなったんだ…」
周りで同じく治療を受けているリオとラ・ドルはまだ夢の世界にいるようだ。
⑤「将軍は逃げた。今は、大魔法を待ちらしい」
⑭「大魔法?」
⑤「風を起こして、キングをウマンダ星へ運ぶんだとさ。俺には考えのスケールがデカ過ぎて想像すらできないけど」
⑭「そうか…楽しそうだな…」
キックは笑みを浮かべ再び、眠りにつく…
⑤「あら…寝ちゃうのね」
>> 227
⑱ドグロ「きたきた!取り舵いっぱい!」
風が吹いた。
優しい優しい風であった。
周りにはそよ風と何ら変わらないその風は巨大戦艦キングを悠々とそして一瞬にして宇宙空間へと運ぶ。
「何処へ消えた!?」
「どうなってるんだ!?」
一瞬の出来事、キングを取り囲んでいた連合艦隊は、各々が思うまま声を上げ、一瞬にして消えた巨大物に誰もが目を疑った。
②ハーク「行くのじゃ。未来を掴め」
まるで魔法、もちろんハークたちによる魔法なのだが、連合兵の多くは口を大きく開けそんなことを思っていた。
宇宙空間に飛び出たキングはその巨体からは想像も出来ないスピードで連合艦隊の包囲網を抜け出しウマンダ星へと一直線で進んでいく。キングを運ぶ風は宇宙空間でも衰えること吹き続けていた。
⑯リード「美しい。ふふッ次はウマンダ星で一戦交えようではないか」
宇宙ゴミと一緒に宇宙を漂っていた将軍は微笑みながら言った。将軍は宇宙の流れのまま身を任せ、太陽光を浴び強い輝きを放ち去っていくキングに目を奪われていた。
>> 228
④バジリス「逃げられたか…。惑星から離れるよう全艦隊に連絡しろ。全艦直ちにウマンダ星へ帰還するのだ」
「はっ!バジリス副将軍!」
バジリスの指令の元、連合艦隊は黒の惑星から離脱していく。キングを含む宇宙海賊の大半は取り逃がしたものの、宇宙海賊本拠地であった黒の惑星はヒドラにより、破壊されるのも時間の問題。連合軍はそれなりの収穫があったと言っても過言ではなかった。
「バジリス殿、お姿が見えなかったので心配しておりましたぞ」
④「なに、姫様に手厚い歓迎を受けましてな。時間を取られました」
バジリスは振り返り、背後に立つ老人に目をやる。白衣を着た白髪の老人からは精気と言うものをまったく感じない。
④「ハン・ディス博士のような方が、本国から出てこられるとは珍しいですな」
ハン「研究も大詰めでしてな…研究室に閉じ込もってばかりもいられませんよ」
④「ドイス博士の右腕とも言われる貴方がそう言うぐらいだ…パーフェクトの完成も近いのですかな?」
宇宙空間に出た連合艦隊は隊列を組んでいく、戦艦数は減ったものの、無数の連合艦隊は未だ健在であった。
ハン「まぁ近い内、ドイス博士ならやってのけましょうな」
>> 229
ハン「失礼、データを取らせて頂きますぞ」
人差し指と中指で指を鳴らすと、白衣を着た研究員たちが列となってやってくると燃え上がるように赤く染まった黒の惑星に見入る。
④バジリス「ヒドラのデータですか、研究熱心なことで」
ハン「ヒドラが惑星を破壊するのは滅多にない機会ですからな。しかし、バジリス殿…」
研究員たちが用紙に筆記する心地よい音、研究員の歓喜の声と共に黒の惑星がその命を終え、大爆発を起こす。
爆発の衝撃で、バジリスたちが乗る戦艦が小さく揺れた。
ハン「おっと…リード将軍はやられ…中将をも二人も失ったとなれば連合軍への影響は多大なものとなりましょうな。ましてや、宇宙海賊がウマンダ星に乗り込み、そこで我らが破れでもしたら…」
④「次は本国が戦の場になる…ですかな?」
バジリスは散りゆく惑星を見つめながらそう言った。
ハン「我らの研究の妨げになるようなことだけは避けて頂きたいものですな」
④「ふん。奴ら反乱分子がいくら頑張ろうともウマンダ星の連合軍は倒せません。中将率いる軍、キメラ将軍率いる大軍勢、魔法軍主力部隊…連合軍の軒並みの軍が勢ぞろいですからな」
>> 230
④バジリス「そして、ウマンダ星に我ら大艦隊が行けば、反乱分子は挟み込まれる形になりましょうぞ。唯一、心残りは雷将軍の軍がいないことだが…反乱分子を潰すのには十分過ぎる軍勢だ」
己の機械手を見つめながら笑みを浮かべるバジリス。
ハン「キングを逃がしたのも戦略の内と言うわけですか。連合軍が本腰で潰しにかかるとは、反乱分子も大きな脅威になったものだ」
④「本国も本気で彼らの駆除に乗り出したのも事実。セレナ姫だけではなく、反乱分子の主犯核、クリス一味に多額の賞金かけることを先日、発表した。彼らは連合軍だけでなく、世界の名だたる賞金稼ぎにもその命を狙われることになるでしょうな。万が一、生き延びたとしてもどの道、彼らに未来はない」
ハン「万が一の時も万全ですか。軍の考えは末おそろしい」
博士は呆れ気味にそう言葉を残し、データを取り終えた研究員と共に去っていった。
④「古だぬきめ…貴様らに比べたら軍などまだ可愛い方だ。さて、私も私事を進めなくてはな」
バジリスは再び、将軍の座に返り咲く為、動き出すのであった…
>> 231
黒の惑星は、最後にふさわしい大爆発でその生命の幕を下ろした。そんな大爆発から一隻の宇宙船が爆発風の煽りを受け、スピードを増して飛んでいく。
⑦凱「危なかったぜ。しかっし…キングには置いてかれちっまったな」
③セレナ「大丈夫です。行き先は分かってますから…ウマンダ星へ進路を向けて下さい」
「リョウカイ ヒメサマ」
シャードmkⅢは連合軍に気づかれることもなく、連合艦隊のレザー区域から抜けるとコスモワープの態勢に入る。
ローナ「頭、他のメンバーは大丈夫なんでしょうね」
ナナ「えッ?…どうだろうね…爆発に巻き込まれたかも?」
ローナ「どう言うことです!頭!」
ナナ「だって、た…戦いの中で連絡が途絶えちゃってさ…」
ローナに掴みかかられ、ナナはまるで小動物のように縮こまり弁解するが、ローナの小さな拳が容赦なく浴びせられる。
⑦凱「おいおい。暴れるんじゃねぇぞ。コスモワープに入るから揺れるぜ」
「キングヨリサキニツイテヤル」
光に包まれていくシャードmkⅢ、凱とシャードの掛け声が響いた瞬間、その姿を消した。
>> 232
重厚感のある石作りの廊下を甲冑を身に付けた兵士が走っていく。血相を変えた兵士は廊下の終着点にあった両開きの扉を勢いよく開くと、ウマンダ星政府軍議会の中枢部、大広間に入っていく。
いつもなら多くの政府議員が他愛ない話をして賑やかな大広間だが、今日は違った。
「将軍、で…伝令です」
静まりかえった大広間には血生臭い匂いが漂い、連合軍三大将軍の一人キメラ将軍が立っていた。兵士は荒い息を整え、将軍の前で膝をつく。
キメラ「政府軍に付き合うのも飽き飽きしてたところだ…なんだ?申してみよ?」
キメラは冷酷な表情で周りを見渡していた。周りに横たわる政府軍の議員たちから止まることなく血が垂れ流れている。黒の惑星で政府軍を捨てゴマに使った今、最早、政府軍に利用価値はなくなっていた。
「はっ、黒の惑星を攻めいっていた軍より連絡があり、巨大戦艦キングがこちらに向かってきているとのことで…宇宙海賊を打ちもらしたようです」
キメラ「そうか。閣下の予想通りとなったか…」
「どういう意味ですか?」
キメラ「なんでもない。下がってよいぞ」
「はっ、で…では」
逃げるように兵士は大広間を後にする。
>> 233
カラス「外の政府軍は粗方、片付いたよ」
いつからいたのか、天井の柱に座る黒装束の女剣士は言った。女剣士は果実にかぶり付き、赤い肉汁で口を真っ赤に染めながら将軍を見下ろす。顔には布を巻き付けている為、素顔を見ることは叶わないが、細身の女剣士は千人斬りの烏の異名を持つ忍者である。
キメラ「きたか。他の者は?カラス中将」
カラス「知らん。他の者のことなど。それより、コイルとベンガルは殺られちまったらしいな」
軽い身のこなしで、天井から飛び降りると果実の種をキメラ将軍の足元に吐き捨てた。
キメラ「らしいな。先程、連絡があった…うっ!?」
ボリック「まじかよ!!やってくれるなぁクリス一味とやらわ」
不気味な緑の肌をした男がやってくると議員の死体を払いのけ、腰を下ろす。すると、ボリック中将から無数のウジ虫が這い出てきた。
キメラ「うぅ…ボリック中将…私には近づくなよ」
ボリック「あいあい」
キメラ将軍は異臭に思わず、手で鼻を覆う。
カラス「クリス一味?クリスだと?」
カラスの脳裏に一人の人物が浮かんだ。ダンテスティン星で一時期、用心棒として一緒に働いたクリスのこと思い出していた。
>> 234
ジャッカル「ふん。軍備を整えている最中に呼び出すのは止めてほしいものだ」
続いて大広間にやってきたのは、骨でできた巨大なブーメラン二本を背負った大男であった。その豪腕で、巨大なブーメランを巧みに操り、破壊屋の異名を持つジャッカル中将である。
グラカス「おい、デカイずうたいで道塞いでるんじゃねぇぞ」
ジャッカル「でたな…ふん」
その後ろから紅の鎧に金の装飾で豪華に作られた甲冑をきた剣士が続く。勇者グラカス中将である。
キメラ「あとは…」
『来ておる』
低い声が広間に響く、その声主を探そうとキメラ将軍や中将たちは周りを見渡す。
サム「たるんどる。いくら下から二番の二人と言え、我ら中将が二人もかけるとはの」
グラカス「そう言うなよ。じいさん。これからが本番だ」
議長席にいつの間にか座っている老人剣士に全員の視線が注がれる。サム中将、かつて世界最強のタカと互角に渡り合ったと言われる剣士。
グラカス「全員揃いましたよ。将軍」
キメラ「では、会議を始めるとしよう」
キメラ将軍は杖が輝きを放ち、天井に映像が映し出されていく。
>> 235
宇宙空間が映しだされると、凄まじい轟音が鳴る。そして、映し出されたのは巨大戦艦キングであった。
グラカス「これが、世界一の戦艦キングか、でけぇな」
キメラ「さよう。これがこちらに向かっておる。連合軍を反乱分子ごときに割くことはしたくない。ウマンダ星に入る前にこれをどうにかしたいのだ」
将軍は映像のキングを爆発してみせると五人となった中将を見つめた。
ボリック「ほうほう。誰か先陣切ってコイツに挑めってわけね…ゲッホ!ゲッホ!」
喋る度に口からウジ虫を飛ばすボリックから皆、思わず距離をとる。
サム「儂が…」
カラス「!!」
ジャッカル「!!」
暫くの沈黙の後、口を開いたのは老人剣士サムであった。周りの者は意外な挙手者に驚いている。
サム「…いこう」
サムはゆっくりと立ち上がる。
グラカス「まてよ。あんたが行ったら何もかも終わっちまうぜ」
異論を唱えたグラカスはサムの前へ立ちはだかる。
サム「ならば、お前がいくか?」
グラカス「え!?…ヒーローは最後に出るもんでしょう。どうぞ、お先にご老体」
サム「ふん。若い者にはまだまだ負けん」
>> 236
キメラ「サム中将、お前ほどの適任者はあるまい。キングもろとも反乱分子を全滅せよ」
サム「はっ、将軍の御言葉のままに」
凄まじいオーラを放つサムに横で見ていたグラカスは口笛を吹いた。
キメラ「では、よい報告を待っておるぞ」
グラカス「じいさん。死ぬなよ」
砂嵐のような黒い煙が吹き荒れ、将軍を含むサム以外の中将はその場から姿を消した。
残されたサムは一呼吸おくと鞘から剣を抜いた。目にも止まらぬ脱刀、一筋の光が360度広がると政府軍の議事堂は音を立てて崩れ始める。
サム「銀角、金角!ゆくぞ!」
瓦礫の山に立つサムが叫んだ。
2つ人影が現れ、俊敏に動きサムの背後に止まった。
金角「戦ですか」
銀角「戦ですか」
金の着物を羽織った者と銀の着物を羽織った者、色だけが違う同じ着物を羽織った二人の顔は瓜二つであった。
金角少将。
銀角少将。
最強の双子である。
サム「うむ、戦だ」
>> 237
目映い閃光が走る。
メタリックな銀色のボディ、シャードmkⅢがコスモワープを明け出現する。
⑦凱「キングよりかは、大分と早くついちまったな」
「マァトウゼンノケッカダネ」
凱は減速レバーを引き、目視で捉えることができるほど近くなったウマンダ星への着陸態勢に入る。凱にとって、ウマンダ星は幼き頃の修行場、思い出深い星でもある。そんな星が戦場になろうとしている今、凱の心境は複雑であった。
ローナ「見つかったわ。3時の方角、連合軍の戦闘機よ」
警戒を示すランプが光ると同時に、連合軍の戦闘機数台がこちらに向かってくるのが、レザーに映しだされていた。
⑦凱「ナナ、出番だぜ」
ナナ「ふーまた仕事かぁ」
敵戦闘機はレザー砲を打ってくるが、凱は船体を反らし攻撃を避ける。
ナナ「運がないなお前ら、悪く思うな」
ナナは向かってくる戦闘機を握り潰すように手のひらを向け、握る。すると戦闘機はまるで紙のようにぐちゃぐちゃに丸まり、爆発した。
⑦「おおッ。いつ見ても便利な力だな」
ナナ「見せ物じゃねぇぞ」
爆発を突き抜け、シャードmkⅢは軽快にウマンダ星へ向かっていくのであった。
>> 238
火が天に向かってその勢いを増していた。
ウマンダ星の首都はあちこちで火の手が上がり、民衆は悲鳴を上げている。
駐在していた連合軍が侵略攻撃を始めたのである。しかし、国を守るはずの存在、政府軍は既に壊滅状態となっている為、銀狼は突然の反旗に抵抗することも出来ずにいた。
「中将殿、民衆の鎮圧は一時間もかからないかと」
重火器で民衆を炙り出しながら連合軍の戦闘車両が町中を駆け巡っていた。そんな光景を高台から見つめていた巨体の男の元へ、血塗れの兵士がやってくる。
ジャッカル「そうか。早くキングを迎え打つ準備をせねばならん。一時間もかけるな」
「はっ。もう一つお伝えしづらいご報告が…」
立ち去ろうとするジャッカル中将を呼び止めた兵士は、言葉を濁らし言った。
ジャッカル「なんだ」
「はっ。先程、宇宙防衛線を一隻の船に破れたのことで、こちら側の戦闘機が一瞬にして破壊されたらしくただ者ではないかと…」
ジャッカル「来よったか…反乱分子どもめが!!」
耳を塞ぎたくなるような声を上げ、背中の巨大ブーメランを手にとり、凄まじい風切り音を上げて投げると正面にあった建造物は一瞬にして細切れとなった。
>> 239
⑦凱「よっと!俺らは町に出るシャードはステルモードで待機しといてくれ」
「リョウカイ キヲツケテイッテラッシャイ」
シャードmkⅢはウマンダ星の町外れの森へと着地する。着地の衝撃で、軽く船体が揺れるが、無事に着陸を終えた。
ローナ「何もしかけてこなかったわね」
ヘルメットを脱ぎながらローナは言った。宇宙空間で戦闘機と遭遇したものの、それ以降は連合軍からの動きはなく上手くいき過ぎていると言っても良かった。
③セレナ「先程見た…町の光景…連合軍がウマンダ政府を攻撃しているように見えました…」
⑦凱「あぁ。奴らウマンダ政府を裏切りやがったようだ。おそらくウマンダ(首都)は壊滅状態だろうな…首都には俺らの味方になってくそうな奴も心当たりがあったが、その希望も今は薄いな」
凱は操縦席から離れると手慣れた動きで身支度を始める。
ナナ「凱、これからどうする?狐寺に行くのか?」
外の様子を伺いながらナナは身支度を終えた凱へ問いかけた。
凱は数秒、間を開けた後…
⑦「フォックスを味方につける…ウマンダ政府に手を出したんだ。狐寺も連合軍に攻撃されるのも時間の問題だ…早いとこ行かねぇと」
>> 240
ドカアァァァン!!!
デビル「うひょッ」
爆発が上がり、船体が激しく揺れる。衝撃で毛玉となったデビルが左右に転がった。
ナナ「敵だ。囲まれてるぞ」
ハッチを開き、ナナが船から飛び出す。重火器を持った連合兵が次々に現れ、シャードmkⅢに集中放火を浴びせる。
⑦凱「皆、船から降りろ!闘いだ!シャード、緊急浮上!後で落ち会おう!」
「イテテ シュウダンイジメダ ワカッタヨ」
デビルを掴み、凱も外へと飛び出す。セレナ・ローナもそれに続いた。
ナナ「無駄だ。相手が悪いぞ」
襲いかかってきた連合兵は一斉に凱たちに発泡する。しかし、その銃弾は空中で動きを止めた。ナナの金属を自在に操る力の前では銃など無力に等しい。
自分たちが持つ武器が使えない知り、躊躇する連合軍を尻目に、シャードmkⅢは空高く飛び上がっていく。
ジャッカル「逃がすかぁ!!」
しかし、そんな連合兵を薙ぎ倒しながら巨体の男が現れ、背中に背負ったブーメランをシャードmkⅢへと投げる。
巨大ブーメランの凄まじい風圧で周りの兵士たちは軽々と吹き飛ばされた。
ジャッカル「ちッ」
だが、幸いにもブーメランはシャードmkⅢをかすめ、持ち主の元へ戻ってくる。
>> 241
ジャッカル「反乱分子ども!覚悟しろ!」
ズサッ…
人一人分はある巨大ブーメランを両手に抱え、地面に突き刺す。その時になった音から相当な重さがあることが伺えた。
⑦凱「てめぇは…」
ジャッカル「連合軍7大中将、ジャッカルだ。貴様らの命貰いにきた」
凄まじい大声、その威圧に凱すら一歩退いた。
ナナ「凱!こいつとやり合うな!破壊屋ジャッカルだぞ!」
骨で出来たブーメランの為、成す術がないナナはジャッカル中将から距離をとる。
⑦「破壊屋?おもしれぇじゃねぇか」
ジャッカル「ワシが何故、破壊屋と呼ばれるか教えてやろう!!」
中将は大きくブーメランを振りがぶり、凱に向けて投げつけた。
⑦「くっ!!」
その大きさから想像できないスピードに反応が遅れた凱はかろうじてブーメランを避ける。しかしその風圧に足を取られ、バランスを崩す。
⑦「ぐお!くっ!」
第2のブーメランが凱を襲った。二刀の剣を交差させ、受け止めようとした凱だったが、ブーメランの凄まじいパワーに吹き飛ばされてしまう。
ジャッカル「脆いのぅ」
ブーメランは地面をえぐりながらジャッカルの元へ戻っていく。
>> 242
⑦凱「ぐっ…破壊屋と呼ばれるだけはあるなッ」
歪に曲がった右腕を押さえながら凱は苦笑いを見せた。
③セレナ「凱!見せて!」
手を見たセレナが直ぐ様、回復魔法を唱えた。折れた腕は直ぐに元通りとなったが、凱の苦痛染みた顔は元には戻らない。
ジャッカル「腕自慢の剣士が腕を折られたらおしまいだな。次は回復させる間すら与えぬぞ、覚悟すんだな」
⑦「くッ…てめぇーッ」
斬りかかろうとする凱だったが、ナナが止めに入る。
ナナ「待て!周りを見ろ!敵がどんどん集まってきてる…ここは一旦、逃げるんだ!」
⑦「やられっぱなしじゃおれねぇよ!」
ナナ「凱!!」
ナナの叫び声は近づくキャタピ音にかき消される。分厚い装甲、巨大な主砲を携えた戦車が木々を踏み倒しながらやってくると、それに続き、多くの兵士を乗せた車両が次々にやってくる。ジャッカル中将の指令の元、近隣の連合兵がここに集結しようとしていた。
ナナ「凱、仲間もいるんだぞ」
⑦「…分かった。二手に別れて逃げるぞ」
刻々と悪化する状況に凱も渋々頭を縦に振った。
ナナ「ローナ!俺と行くぞ!」
ローナ「分かりましたよ。頭」
>> 243
ローナ「サムリージュ、道を開きたまえ」
小人族であるローナは一見、愛らしい子供に見える。そんなローナに攻撃するのを躊躇っている連合兵などお構いなしにローナは鮮やかな光の魔法により精霊を召喚した。
ローナ「散りなさい!!」
ナナ「容赦ないねぇ」
そして、精霊が放った魔法により、連合兵は跡形もなく消し飛ぶ。
ジャッカル「おのれぇ一人足りとも逃がすでないぞ!!」
取り囲む連合団を突破したナナとローナを兵士たちは慌てて追いかけた。ジャッカル中将の注意がナナたちに逸れた隙を見計らって、セレナは魔法陣を描く。
③セレナ「凱!私の近くに!」
⑦凱「おう。デビルそんなの食ってねぇで早く行くぞ」
デビル「あぁ~俺っちの食事タイム邪魔したなぁ」
移動魔法の魔法陣を描き終えたセレナは精一杯の声を上げた。
凱は慌てて、キノコを貪るデビルを捕まえ、魔法陣に飛び込む。
ジャッカル「貴様らぁ!逃がさんぞ!」
それにやっと気づいたジャッカル中将は兵士に一斉射撃を命じた。直ぐ様、兵士たちは引金を引く。
⑦「首洗って待ってな。ジャッカル中将…じゃ」
シュッ
しかし、その無数の弾丸は標的を捉えることなく地面に当たる。
>> 244
ジャッカル「おのれぇええッ!!」
姿を消した凱たちに当たることも出来ず、ジャッカルは巨大ブーメランを力一杯に地面に突き刺した。その衝撃で、凄まじい地鳴りが起こり、大地が割れる。
ボリック「荒れてるねぇ…まぁそんな苛立ちなさんな」
荒立つジャッカルに近づく異質な男は言った。
丸坊主の青色の肌の男からは凄まじい臭気が漂ってくる。《虫人間》の異名をもつ、ボリック中将であった。
ジャッカル「ふん。お前か…反乱分子には逃げられたわ。だが、良いところに来てくれたな。お前なら直ぐに見つけられるだろう?」
ジャッカルの問いに昆虫のように目を回す、ボリック中将。
ボリック「もちろん。僕の僕(しもべ)たちから逃げられはしない」
そう言うと大きく両手を広げる。すると、空から無数の足と羽が生えた百足のように長い生物がやってくる。一匹だけではない、その生物は何処からともなく次々に現れ、辺り一面を覆い尽くす。
ジャッカル「相変わらず不気味な虫どもを連れてるな」
ボリック「この良さをいつか、あんたにも分かる時がくるさ」
「うわあぁあ」
次々と連合兵に食らいつく生物たちは無機質な声を上げる。
>> 245
③セレナ「着きました」
淡い光に包まれながら凱たちは荒野に降り立つ、遠くには狐寺が小さく見えている。
⑦凱「ここ町外れの訓練場だな」
凱は近くに落ちていた剣の刃を拾い、周りを見渡す。荒地ではあるが、凱にとってここは幼き頃の懐かしき修行の場の一つであった。
③「すいません。町に飛べれば良かったんですが…この星は闇の力が強すぎて魔法がどうしても不安定になってしまうんです」
杖の先についた水晶はいつもの透明度はなく、黒ずみ薄く濁っていた。それは闇の使い手であるキメラ魔法将軍が近いことを意味していた。
⑦「謝ることねぇよ。逃げられただけで十分だしな。それにこの距離なら狐寺までそう時間もかからねぇよ」
連合軍の追っ手が迫ってきているのを感じとった凱はデビルを肩に乗せると歩き始めた。
⑦「町には連合軍が山ほどいるはずだ。それにさっきの中将クラスの連合兵も集まってる…どうしたもんかなぁ」
③「警戒中の軍に気づかれずに行くのは私の魔法を使っても難しいと思います」
セレナの返答に凱はお手上げだと言わんばかりに溜め息をついた。対空砲を備えた町へはいくらシャードのステルモードが優秀でも使えはしない。
>> 246
⑦凱「だけどよ…運はこっちに向いてきたぜ」
デビル「にっしし。飯にもありつけるか?」
爆音が辺りに響く。三機の連合軍戦闘機が上空を過ぎていく。敵に襲来に慌てたセレナだったが、その戦闘機は何処からか放たれたレザーを受け爆発した。
③セレナ「何?何が起こったの?」
セレナは上空を見やげながら一瞬の出来事に困惑する。
⑦「出やがった。ステルス戦艦シャード!!」
バチバチ…
電磁波の波が雷のように何もなかった空に浮かび上がる。
そして、徐々にそこに隠れていたモノの姿を露にしていく。
戦艦並みに巨大なシャードmkⅢに似た銀色の船が姿を現す。
戦艦シャード
狐族の軍用機である。このサイズの戦艦を完璧なまでに姿を消すステルス機能は狐族だけが可能とする技術である。
⑦「あちらさんからのお招きだ。行こうぜ」
③「は…はいッ」
戦艦シャード船底の運搬入口が開くとそこから光線が出始める。光線に近づく凱に不安ながらも続くセレナであった…
>> 247
「よく来たな」
移動装置により船内に運ばれた凱たちを出迎えたのは6本の尻尾を生やした狐人であった。長身である狐人は、まだ青年のように見えるが、肉体的に歳をとらない種族である狐族、その実年齢は外形からは判断できない。
⑦凱「鬼教官。あんたが出迎えに来てくれるとは思わなかったぜ」
鬼教官と呼ばれた狐人はゆっくりと近づいてくる。凱は反射的に剣に手をかけた。
鬼「まて、手が早いのは相変わらずだな。喜べ、族長は昔のことは水に流そうとおっしゃっておるぞ」
鬼教官は近づくと凱の頭にそっと手を置いた。
⑦凱「な…なにすんだぁ!俺はもう餓鬼じゃねぇ!」
直ぐにその手を払った凱は顔を真っ赤にする。
鬼「すまんつい昔の癖が出た。私はお前の帰りを心待ちにしておったんだぞ。お前が船を奪い狐寺を出たと聞いたときは…どれだけ心配したことか…族長に禁じられ…後を追うことも出来なかったのだ」
⑦「いつも怒鳴られてばかりだったあんたに心配されてたとは意外だぜ」
鬼「できの悪い教え子ほど可愛いもんはおらん」
⑦「言いやがるな。ッたくよ」
鬼はニタッと笑う。そんな二人の会話を聞いていたセレナも自然と笑みをこぼしていた。
>> 248
凱と鬼が対面していた頃…
2手に別れて逃げた片方側、ナナとローナは窮地に陥っていた。
ナナ「くっ。見つかったか…」
ざわめく周りの木々たちから、時より見える不気味な影は徐々にナナたちを囲んでいく。
ローナ「なんなの!こいつら!」
そんな不気味な生物たちを見たローナが叫んだ。
ナナは金属を錬成し剣を整形すると向かってきた百足のような生き物を斬り裂き、加えて、地中より現れた巨大な幼虫の攻撃を避ける。
ナナ「改造された虫たちだな。連合軍の生物兵器の一つだ」
ローナ「こんな数…相手にできないわ」
倒しても倒しても空から地中から大小様々な虫たち次々と現れ、流石の二人も虫軍勢に押されていく。
ボリック「どうだ…私たちの力は…」
無数の虫たちが蠢く中、緑色の肌である僧のような人間が現れる。《虫人間》の異名を持つ、ボリック中将である。
ボリックは不気味な笑みを作り、嘔吐するとその排泄物が地面を侵食し形を形成していく。そして、瞬く間に昆虫のような不気味な生き物を産み出した。
ナナ「どうやらこの虫どもの根源はお前らしいな!!」
ナナは一目散に虫を斬り倒しながら現れたボリックに向かって駆け出す。
>> 249
ボリック「だったら?」
首を有らぬ方向に曲げながら向かってくるナナを見据える。装束の内側から不気味に何が蠢いていた。
ナナ「喜びな!鉄の錆びにしてやるよ!!」
ナナは巨大なハンマーを錬成し跳躍する。敵の能力も分からず、突っ込むとはまるで凱のようならしからぬ行動だが、これには訳があった。
ナナが不本意に事急ぐ理由、森の中と言う闘い条件である。ナナは地中の僅かな砂鉄でも高度な鉄を錬成することができるが、錬成できる鉄には限りあり、金属が多量にある町中と同じようにいかない。短期決戦にせざる負えないのである。
ボリック「中将の力、見せてやる」
ナナ「中将なんざ、しゃらくせぇ!この大錬金術者ナナ様の前ではな!」
巨大ハンマーをボリックの脳天から浴びせる。ハンマーは抵抗(ボリック)に勢いは止まらず、その重量を地面にめり込ませる。衝撃で大地が割れ、風圧で周囲の虫たちが一掃される。
ナナ「大したことなかったな」
ハンマーは赤く燃え上がり、マグマのように溶け出す。凄まじい高温、衝撃にボリックの姿はそこにはもうなくなっていた。
- << 251 ローナ「頭、やったわね」 大きい翼を持った鳥の精霊の背に乗り、ローナが天空から舞い降りる。空を舞っていた虫たちはローナにより、粗方かたずけられているようだ。 ナナ「ふぅ…今日は力を使い過ぎた…灼熱モードだけでもしんどいってのによ」 ローナ「普段からサボり癖のある頭にはちょうどいいわ。今日ぐらいの運動量がね。さぁ早くいきま…しょ…ッ!!」 ローナのにこやかな笑顔が崩れていく。 ナナ「ローナ!!」 召喚した精霊は消え、ローナは力なく地面に倒れた。その腹部は血で赤く染まっている。 ボリック「彼女の心配より、自分を守れ…この虫は触れたら死ぬぞ」 微粒子が集まり、ボリックの肉体が再び再生する。そして、ハエのような小さな昆虫が無数の群れでナナを襲う。 ナナ「お…お前!どうやって…!!」 壁を出現させ、虫の群れを遮る。しかし、虫は壁に触れると爆発し次々に連鎖爆発を起こしていく。 ナナ「な…ローナ!!」 最初は小さな爆発、しかし、一瞬にして周囲一帯を破壊する大爆発へと変わる。ナナは咄嗟に傷ついたローナを庇い、身をていして爆発の楯となった。 ドガアァァァァァ~!!
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7レス 188HIT 瑠璃姫 (10代 ♀) -
勉強する皆、すとぷり、アイドリッシュセブン、嵐
0レス 40HIT 小説好きさん -
満員電車とアタシとイケメン痴漢
50レス 1780HIT 修行中さん -
君は私のマイキー、君は俺のアイドル
9レス 198HIT ライターさん
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束の間の現実逃避 無意味な文字の羅列 幸せへの片道切符
酒姫に捧げる唄。 心に思い浮かぶことも 目に見える景色も 優しい…(小説好きさん0)
3レス 51HIT 小説好きさん -
満員電車とアタシとイケメン痴漢
Y社は通りそう…ただし、ブラック臭くて、給与も期待できなさそう… …(修行中さん0)
50レス 1780HIT 修行中さん -
仮名 轟新吾へ(これは小説です)
お互いに「Win-Winの関係」じゃないとね! 女性の行きたい所…(匿名さん72)
212レス 3158HIT 恋愛博士さん (50代 ♀) -
神社仏閣珍道中・改
本日は地元の方々の厚い信仰心で今日まで大切に守られ続けている、地図にも…(旅人さん0)
362レス 12384HIT 旅人さん -
私の煌めきに魅せられて
「凄いもの,,,ねぇ。。まぁまぁ、呑んじゃいなよ!」 ? 意味わか…(瑠璃姫)
91レス 1137HIT 瑠璃姫
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🌊鯨の唄🌊②
4レス 151HIT 小説好きさん -
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人間合格👤🙆,,,?
11レス 170HIT 永遠の3歳 -
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酉肉威張ってマスク禁止令
1レス 204HIT 小説家さん -
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また貴方と逢えるのなら
16レス 489HIT 読者さん -
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今を生きる意味
78レス 539HIT 旅人さん
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また貴方と逢えるのなら
『貴方はなぜ私の中に入ったの?』 『君が寂しそうだったから。』 『…(読者さん0)
16レス 489HIT 読者さん -
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🌊鯨の唄🌊②
母鯨とともに… 北から南に旅をつづけながら… …(小説好きさん0)
4レス 151HIT 小説好きさん -
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人間合格👤🙆,,,?
皆キョトンとしていたが、自我を取り戻すと、わあっと歓声が上がった。 …(永遠の3歳)
11レス 170HIT 永遠の3歳 -
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酉肉威張ってマスク禁止令
了解致しました!(小説好きさん1)
1レス 204HIT 小説家さん -
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おっさんエッセイ劇場です✨🙋🎶❤。
ロシア敗戦濃厚劇場です✨🙋。 ロシアは軍服、防弾チョッキは支給す…(檄❗王道劇場です)
57レス 1431HIT 檄❗王道劇場です
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