話つく③ダンテスティン・サーガ~魔法のペンダント~
7つの惑星を舞台に登場人物たちが連合軍と言う巨大組織と闘うストーリーです👮是非、皆さん読んでみて下さい。
↓関連スレ
話つく
http://mikle.jp/zatsudan1/dispthread.cgi?th=10434
話つく②
http://mikle.jp//zatsudan1/dispthread.cgi?th=22445
📖✏🚀parallelworld🌏
http://mikle.jp//friends/dispthread.cgi?th=10367
新しいレスの受付は終了しました
>> 50
ラ・ドル「ぎりぎりか…これなら大丈夫そうだ」
呼吸が乱れたハーク の胸に杖を当て、呪文を唱える。
②「手間をとらせてすまんのぅ」
ラ・ドル「何をおっしゃる。少しの間お休み下さい」
すると表情は急に穏やかなり、瞼がゆっくりと下がっていくとハークは眠りについた。
⑱「どうやら己の限界は越えていないようだな。流石はハーク殿か…」
魔法使いは己の器(魔力)に応じた力しか使うことが出来ない。だが、時として己の器を超え力を使うことがある。器を超えた力を使い続け限界を超えればマリーンのように再起不能となってしまうのだ。だが、今回のハークの場合は限界寸前であったようだ。
ラ・ドル「数時間もすれば魔力も戻り目を覚まされると思います」
セレナ「良かった」
その言葉を聞き、皆が安堵する。
しかし
それも束の間であった。
ドガアァァァァァン!!!
⑦「なんだ!?」
連鎖的に爆発が起こり、そして、白仮面を被った剣士が現れた。黒いボディスーツを身につけ、その下には鍛え抜かれた筋肉のラインが描かれている。
軍義「死んでもらうぞ」
剣士は骨のような白い剣を抜き、姿を消す。
>> 51
⑦凱「くるぞ!!気をつけろ!!」
凱も剣を抜き構える。
凱ですら先程の剣士の動きについていけず、見失った剣士を必死に探す。
ミスチル「敵襲!!」
叫ぶミスチルの背後に
軍義「私の高速移動についてこれるか」
ミスチル「な!?」
反応すらできないほど高速で放たれた剣撃を受け、ミスチルは血潮を出し吹き飛ばされた。
レッガ「うおおぉ!!貴様ぁ!!」
ミスチルを襲った剣士にレッガは技を繰り出す。だが、簡単に避けられると
軍義「その身体はお飾りのようだな」
剣撃を放ち、巨体のレッガを軽々と吹き飛ばす。スピードだけではなく威力も申し分ない剣撃のようだ。
⑱ドグロ「な…銀狼族のナンバー2を秒殺だと!?」
血を流し倒れているミスチル・レッガにセレナが駆けより、回復呪文を唱える。
軍義「ふん。無駄なことを」
①クリス「えらく余裕だな!」
軍義「うぬ!?」
風を纏わせ、突き出された剣を剣士はなんとか避けると追撃で繰り出されたクリスの剣を受け止める。
①「かわすのは止めたのか?」
軍義「くうう。生意気な女め!!」
交差する二人の剣からは凄まじいオーラが溢れ出ていく。
>> 52
⑱ドグロ「単身乗り込んでくるとは…」
黒マントを靡かせ、銃を剣士に向ける。
⑭キック「私たちもなめられたものだ」
⑦凱「大戦前の準備運動のお相手にリードがよこしてくれたのか?」
⑤セロ「今の俺は最強だぞ」
剣士はクリスの剣を振り払い、距離をあける。そして、剣を下げ、周りを取り囲むクリスたちを見渡す。仮面を被っているので剣士の表情は分からないが追い詰められた者の態度ではない。
⑪リオ「ラ・ドル!やっちゃってよ!」
ラ・ドル「はぁ…頑張りますね」
敵は一人。ここにはクリスたちを含め、嵐の賢者であるラ・ドル、銀狼の長ドグロもいるのだ。剣士に勝目はない。
軍義「お前たちここにいてもいいのか」
⑦凱「なんだと?」
ドガアァァァァァン!!
先程のような爆発があちこちで起こっているのが聞こえてくる。
⑭「新手か…くそ」
キックは慌てて、心臓部から飛び出していった。
軍義「ふふ」
剣士はまた消える。このメンバーで動きを追えているのはクリスかドグロくらいだろう。
①「ここは私に任せて皆は他の奴らをお願い!」
⑤「分かった。いくぞ、デビル!」
⑦「ちっ。しゃあねぇな!」
>> 53
軍義「私はターゲット以外は殺さぬ趣味でな。安心するがよい…女(おなご)よ」
剣士は白仮面に手をかけ、不気味な笑い声を上げる。
①「連合軍は数で圧倒的してるにも関わらず…奇襲を仕掛けてくるとは余程の臆病者の集まりだな」
クリスは怯むことなく、剣士に攻め寄っていく。
軍義「ふん。臆病者ほど戦いの中で生きぬくことができるものよ。お前のような命知らずの馬鹿…力の差も分からず、私に向かってくるとは!!身の程を知れ!!」
剣士が繰り出した剣をクリスは紙一重で避ける。冷や汗が自然と滴り落ちるクリスの表情には余裕はない。
軍義「私の速度についてこれるかッ!!」
クリス「くっ!!」
高速で繰り出される無数の剣撃にクリスは後退りしていく。スピードだけでなく剣術すらクリスの上をいっている。
>> 54
軍義「それ!!いった!!」
凄まじい速さで突き出された剣はクリスの髪、数本を切り落とし宙を斬り裂く。
軍義「ほほぅ。中々…」
①「なめるな!!と言っただろ!!」
身を翻し、回転した勢いで反撃に転じたクリスの剣を軽々と剣士は受け止める。
⑱ドグロ「下がってろ!俺様が殺ってやるよ!」
後少しで、追い詰められようとしていたクリスに助け船を出すように間に割って入ってきたドグロは肉体を変化させ、数秒で狼人間へと変化する。
軍義「獲物から向かってくるとは有難い」
⑱「兎でも狩りにきたつもりか!?俺様は狼だぜ」
鋭い爪を携えた太い腕を振るう。剣士のスピードに引きを取らない速さで放たれた打撃を受け、剣士は大きく後ろへ吹き飛ばされる。
軍義「ふん。えらくでかい鼠だ」
だが、ドグロの一撃をいなし、ダメージは負っていない。
⑱「俺様もなめられたもんだ」
生々しい牙を剥き出しにし、軋む筋肉を震わせ、身の毛を逆立たせる。
軍義「獣め」
体格差だけで言えば3倍以上ある狼人間化したドグロに剣士は怯む様子はない。
>> 55
⑱ドグロ「我狼拳!!」
強靭な肉体から放たれる幾多の攻撃を剣士は何事もないように避けていく。
軍義「力が強くても当たらねば意味がないぞ」
⑱「風脚!!」
回転し放つ強烈な蹴りは身を低くした剣士の真上を通る。
表情をひきつるドグロに対し剣士は仮面の下に意味深な笑みを浮かべる。
軍義「秘剣、神風」
剣を胸に当て、向かってくるドグロに剣を突き出す。
⑱「なっ!!」
凄まじい速さで繰り出された突きから放たれた強大なオーラはドグロの肉体を軽々と貫く。
軍義「貴様らは《我ら》には勝てん」
⑱「人間離れした…その動き…ま・さ・か…お前は…」
片言にそう言うと血を流している腹部を押さえ、ドグロは倒れる。
そして、緩やかな変化で狼人間から銀狼の姿へ戻り、意識を失う。
軍義「さぁ。あとはゴミ掃除だけ」
剣士は血のついた白剣を振り、血を飛ばすとクリスに目線を移す。
①「……」
ドグロすら秒殺。
③「そんな…」
圧倒的、力の前に…
リオ「……」
皆が声を失う。
だが、クリスだけは別の意味で声を失っていた。
剣士の技が自分の剣術のそれと瓜二つまったく同じだったのだ・・・
>> 56
①クリス「お前は何者なんだ…」
父に教わった《神剣》。
世界で扱えるのは兄以外はいないはずだ。
だが、目の前の剣士はそれを完璧なまでに扱っているではないか。
軍義「ふっふふ」
剣士は仮面に手をかける。
①「!?」
そして、仮面を放り投げる。
仮面の下に隠されていた剣士の素顔は無機質な配線が入れ組み、赤いランプが鈍く光っていた。
①「機械人間か」
軍義「さよう。だが…貴様らが言う機械ではない我は新たな生命体である」
従来のロボットとは根本から違う。
人に偽られ作られたロボット。
人に近づこうとしてきた機械たち。
だが、目の前の機械は違う。
人間と言う目標すら超え、その先を目指している。
私たちが言う機械とは異なる新たな機械たち。
軍義「か弱い物質の集まりである貴様ら生物が我らには勝てぬ!勝てぬ!」
剣士の肉体は変化し人とは駆け離れる姿へと変わっていく。
⑫リオ「なッ…なんなんだよコイツ」
ラ・ドル「世界には私の知らないことがまだまだありそうですね」
ドドドドドドッ
>> 57
「人間は我には勝てぬ。この船ごと闇に葬ってやるわ!!」
触手のように剣士の身体からは配線が無数に飛び出し、その場にいるクリスたちを一斉に襲う。
ラ・ドル「リオ!師匠を頼みます!」
⑫リオ「分かった!任せといてぇ」
向かってくる鋭い先端の配線の群れから鉄を変化させリオは壁を作る。そして、気絶しているハークをその後ろに運んだ。
ミスチル「く…セレナ姫…お世話をおかけしました」
③セレナ「お礼はまた今度!それより、レッガさんとドグロさんを助けないと!!」
癒しの魔法で傷ついたミスチルを完治させるとセレナは防御魔法を唱え、濁流のように迫ってくる配線束を防ぐ。
①クリス「こいつ…どう言うつもりだ!」
襲ってくる配線を斬り刻み、華麗な身のこなしで攻撃を回避していく。明らかに剣士であった時の攻撃からしたら生ぬるい。
ラ・ドル「クリス殿!奴の狙いは我々ではありません!」
そんなクリスの脇にラ・ドルが駆け寄ってきた。そして、キングの中心部であるこの部屋の内壁に配線が突き刺さっているのを指さす。
①「まさか」
ラ・ドル「奴はキングが狙いです!!」
>> 58
一方、銀狼の街では爆発の後、両方の激しい戦闘が始まっていた。
チカチカ
⑦凱「んっ!?」
ガギィーン
⑦「おっと。」
凱と同じ黒装束の上に漆黒の鎧を身に着けている目の部分だけ開いている黒い面を被った戦闘集団が津波のように押し寄せて来ている中、凱・セロ・デビルと銀狼の屈強の戦士が闘う。近くのライトが点いたり消えたりと点滅する。然し、キングの中枢を軍義が配線を使って攻撃している事までは知らない。
デビル「お腹減った~っ…コイツらのせいで全然食べられないじゃないか!プン!!」
ズサササッ
「ぐあ~っ」
「うぐっ」
「いぎっ」
全身の黒い体毛を硬化させウニのように成り敵の鎧ごと貫く。
ドシュドシュ
⑤セロ「ハア~然し、これじゃキリがない…。」
魔弾が撃てる黄金の魔法銃で壁に隠れながら応戦する。
⑦「デビル、退けてな。てぇめぇら、逝っちまいな!ガイ・ブレイド!!」
初めの数人は倒したものの相手もよりすぐりの連中死をも恐れず向かって来る。
>> 59
凱等が居る隣の区間ではキックが紫色のオーラを発し闘っていた。
⑭キック「こいつ等は、そうとう強いぞ。むんっ!」
ギチッ
三人がかりの敵兵の剣を竜剣で受け止めると、跳ね返し横に剣を凪いだ。
そこへ背後から襲いかかってくる。
「お前達をやれば、一生遊んで暮らせる賞金を貰える!俺の為に死んでくれ!」
ズバッ
⑭「うっ…」
かわしたつもりが背中を少し斬られキックは目をしかめた。
すると急に濃い霧が立ち込めキックの分身が沢山出来始めた。
「斬っても斬っても斬れねぇ!?」
この区間だけ霧に包まれた敵兵は混乱する。
ゆらっ
本体のキックに独りの人影が現れた。
⑭「むっ!」
シュキィーン
竜剣で切り裂く。が、斬れた筈がくっついた。
スモッグ「余り関わりたく無いのだが…余りにも多勢に無勢。助太刀しよう。」
そう言うと顎をさすりながら杖を掲げた。
>> 60
ブーン
ローブから何まで全身白一色でまとめている青白い顔をしたスモッグが二十人以上に分身する。
スモッグ「お主にさっき掛けた魔法はただの霧の幻影…これは、分身魔法全ての分身が我の意思を持って行動する高等魔法…」
どこからともなくスモッグの声が聞こえてくる。本体はどこにいるのかすら濃い霧の為に分からない。
⑭キック「流石は、霧の賢者様。助かります。」
スモッグ「ふん!礼を言う暇があったら戦え!」
⑭「怒号烈波あぁっ!!」
キックは頷くと竜剣を下に構え上に振り抜き技を繰り出した。
ズゴガガガッ
「うがっ!」
「ぶへっ」
「ぐう…」
衝撃波が敵兵を襲う。
スモッグ「我の力思い知れ!」
杖を掲げ呪文を唱える。
霧と霧を摩擦させ放電させる。
バリバリ バリバリ
敵兵の身に着けている漆黒の鎧はアンチマジックがかかっているにも関わらず、その上の魔力で抑え込まれ只の紙屑同然に兵士達は感電または燃え上がった。
>> 61
スモッグ「私という存在の前では全てが無力」
何処からともなくスモッグの分身が現れ、その数はもはや数え切れないほどになっていた。幾多のスモッグは黒装束の兵士を稲妻で貫いていく。
⑭「なんと頼もしい。流石はハーク殿の弟子だ」
⑦「ド派手にやりやがるな」
稲妻が霰(アラレ)のように辺りに降り注ぐ。その稲妻は赤い閃光となり、華麗に敵のみを襲っている。その強力な威力にも関わらず、キングには傷一つつけていない。
戦義「霧の賢者か…ピンタゴ星雲では1・2を争う魔法使い」
稲妻の魔法にも怯むことなく、移動魔法で次々に現れる黒装束の兵士団、そんな混乱とする中、兵士団とは別格のオーラを放つ剣士が舞い降りる。白仮面を被った剣士、先程の中心部での剣士と瓜二つである。
⑤「出やがった。ボスのお出ましだ」
デビル「アイツ食っても美味しそうじゃないぃ」
黒装束の兵士団は銀狼の戦闘員とスモッグが引き付け、凱・キック・セロ・デビルの四人は現れた剣士を取り囲む。
戦義「貴様らの顔に死相が見えるぞ」
⑦凱「俺にはそんなん関係ねぇよ!!」
戦義「笑止」
>> 62
交差する剣。
⑦「ぐっ」
凄まじいGを受け、剣は弾かれ凱もろとも吹き飛ばされる。
⑦「しゃらくせぇ!キック!ちょっと手伝ってくれ!」
⑭「んッ…私は運び屋じゃないんだぞ。まったく」
凱は直ぐ様、体勢を整え、高く飛び上がった。キックもまた羽を広げ、飛び上がり凱を掴む。
⑭キック「行くぞ」
⑦「ああ!」
直角に急上昇したキックは今度は一気に急降下した。そして、剣士に向け凱を放り投げた。
戦義「こしゃくな」
⑦「メテオショット!!」
金色に輝くオーラを纏い、隕石のごとく敵を呑み込む。
ゴオオォォォォォ!!!!!
⑦凱「やった…か」
戦義「ぐっ…我が鋼鉄の肉体を斬り裂くとは」
凱の技を受け、剣士の身体は二つ割れている。だが、剣士は何事もないように喋っているのだ。
⑤セロ「コイツ!ロボットかよ」
剣士の身体から配線が生物のように蠢(ウゴメ)き出し、裂かれた身体が結合していく。
⑭「再生能力もお持ちときたか…」
⑦「再生能力には慣れてるぜ!」
戦義「我らには勝てぬ!我らこそが究極の生命体!」
>> 63
⑦凱「キック、セロ、デビル!幾ら強いと言っても必ずどこかに弱点がある筈だ!」
⑭キック「行くぞ!竜人剣一閃…」
チャキ
紫のオーラを溜め居合いの構えをとる。
⑤セロ「魔弾速射砲をお見舞いしてやる。」
黄金に輝く銃を戦義に向けトリガーをひいた。
デビル「魔毛針!!」
体中の毛が硬化し指程の針に覆われシュンシュンと相手に飛び出して行く。
⑦「三重残像剣…ガイ・ブレイド!!」
ブーン
三人に分身すると漆黒の鎧に青白いオーラ溜め技を放った。
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
四人同時の威力は凄まじく近くの建物は吹き飛び土煙りが巻き起こる。
ゴゴゴゴ……
デビル「やった!食べ物、食べ物。」
ゆらり
その煙りの中から何事も無かったかのようにゆっくり歩いてくる。
⑭「!?」
⑦「何だと!?」
戦義「お前等はこの私に何をやっても、無駄!無駄!無駄!!」
⑤「そんな、馬鹿な…」
シュルシュルシュル
戦義の体中傷付いた箇所を配線が修復していく。
戦義「風よ…」
体が風に包まれ素早い剣撃を繰り出す。
ガキィーン
⑭「ウグッ…この技はクリスの…」
頭部ギリギリ竜剣で相手の剣で受け止めた。
- << 68 戦義「貴様らは我が剣の餌食となろう」 ⑭キック「なんて…ッ!力だ!」 徐々に凄まじい剣圧に押されていくキックを助けるように戦義を火炎弾が襲う。 戦義「か弱き者たちよ…束になろうと我らには敵わぬぞ」 なんなく避けてみせた戦義の身体は青白い風のオーラに包まれている。 ⑤セロ「こいつ、クリスの技を使ってる…何者なんだ」 ⑦凱「へっ。何者だろうと倒すだけだぜ」 ドガアァァァン!!! ⑭「なんだ!!」 背後から黒煙とともに漆黒の鎧部隊がぞろぞろとやってくると、一斉に銃を構える。見たこともない銃、だが、その銃には見慣れた《赤い十字架》のマークが刻まれていた。 ④バジリス「諸君、お元気かな?」 部隊が道を開け、バジリスが悠々と凱たちの前に現れた。 ⑤「お前は!!」 黄金銃を向けるセロに対し ④「まぁそう牙を向けるな。お互い文明人だ…ここは話合いで片をつけようではないか」 バジリスは右手を下ろすと同時に漆黒の鎧部隊は一斉に銃を下ろした。 ⑦凱「てめぇと一体どんな話ができるんだろうな!!」 ④「ふふ」
>> 64
キング心臓部…
ゴガァン
①クリス「ぐっ…しまった。」
キングの心臓部が爆発を起こした為、クリスは左腕で顔を覆った。
軍義「ふっふっふっ。もう少しでキングの中枢に浸食出来る。」
ラ・ドル「そうは、いきません!」
杖の先に乗っているドクロの彼女を優しく撫でながら呪文を唱え始めた。
「…サイクロン!!」
ピカッ
ドクロが虹色に輝きを放つと軍義だけ激しい雷が轟く竜巻の渦の中に閉じ込める。
グゴォオォォォ…
軍義「これ位、大したことない。」
キングの中枢に伸びかけている配線が千切れるが、直ぐまた違う配線が体から出てくる。
⑪リオ「これでも喰らえ!避雷針!!」
仲間を守っていたリオも参戦し腰にぶら下げている、拳大の鉄球を軍義の頭上に投げつけ印をかける。
すると、長く縦に伸び軍義の頭に突き刺さった。
軍義「ぐっ…だが、こんなもの抜いてしまえば、ただの棒だ。」
そう言った瞬間ラ・ドルは「スパーク!!」と呪文を唱えていた。
ビガッ!!バリバリバリ
軍義「何のこれしき…ウッ…体がおかしい…」
凄まじく太い稲妻が軍義の体を貫いた。
>> 65
軍義「制御回路…ガ…やら…レ…たか」
配線群と化していた軍義は中心部の内壁から剥がれ落ち、力なく床を這えずる。
⑫リオ「必殺・鉄檻」
空かさず、鉄球を変化させ、鉄格子を錬金し敵の動きを封じる。
①クリス「あきらめろ。お前の負けだ」
それでも逃げようとする配線群、奇怪なソレにクリスは言う。
軍義「コノ…身体…では…不足…我の…新の力見せて…ヤル…わ」
片言の言葉を残し、動かなくなる。
ラ・ドル「終わりましたね」
①「本当に…終わったならいいんだが」
力尽きた敵を前にしてもクリスは複雑な思いであった。
③セレナ「クリス。大丈夫?」
①「あぁ。私より、彼を…」
痛む身体を押さえ、傷ついたドグロを指さすクリスに回復魔法を唱え、セレナは微笑む。
③「無理しないで。私はこれぐらいしかできないんだから」
①「ありがとう。セレナ」
>> 66
④「回復魔法を…」
⑱「俺様はいい。それより、直に連合軍がここ(黒の惑星)に押し寄せてくる。」
回復魔法を断るとドグロは黒眼鏡の位置を直しながら中心に位置する操縦席に座る。
ミスチル「姫。ご好意には感謝します。ドグロ様はああ言う方ですから気にはなされませんように」
④セレナ「はい。お気をつかわないで下さいミスチルさん」
中心部に再び、外の映像が表示される。キングの機能が回復していっているようである。
⑱「レッガ…状況を報告しろ」
レッガ「はっ。キング全ブロック地区に漆黒の鎧を纏った侵入者確認、戦闘員が交戦中…」
映像を確認しながらレッガは状況を冷静に告知する。
そして、それに続き
ミスチル「おそらく…敵の狙いはキングに格納した戦艦を出させないため、奇襲部隊を仕掛けてきたかと」
ミスチルが敵の策略を言う…
⑱ドグロ「まとめて殺るってわけか…戦艦を出せるだけ、出撃させ…砂漠の中へ身を隠すように伝えろ!」
レッガ「はっ!!」
>> 64
⑦凱「キック、セロ、デビル!幾ら強いと言っても必ずどこかに弱点がある筈だ!」
⑭キック「行くぞ!竜人剣一閃…」
チャキ
紫のオーラを溜め居…
戦義「貴様らは我が剣の餌食となろう」
⑭キック「なんて…ッ!力だ!」
徐々に凄まじい剣圧に押されていくキックを助けるように戦義を火炎弾が襲う。
戦義「か弱き者たちよ…束になろうと我らには敵わぬぞ」
なんなく避けてみせた戦義の身体は青白い風のオーラに包まれている。
⑤セロ「こいつ、クリスの技を使ってる…何者なんだ」
⑦凱「へっ。何者だろうと倒すだけだぜ」
ドガアァァァン!!!
⑭「なんだ!!」
背後から黒煙とともに漆黒の鎧部隊がぞろぞろとやってくると、一斉に銃を構える。見たこともない銃、だが、その銃には見慣れた《赤い十字架》のマークが刻まれていた。
④バジリス「諸君、お元気かな?」
部隊が道を開け、バジリスが悠々と凱たちの前に現れた。
⑤「お前は!!」
黄金銃を向けるセロに対し
④「まぁそう牙を向けるな。お互い文明人だ…ここは話合いで片をつけようではないか」
バジリスは右手を下ろすと同時に漆黒の鎧部隊は一斉に銃を下ろした。
⑦凱「てめぇと一体どんな話ができるんだろうな!!」
④「ふふ」
>> 68
⑦「ガイブレイド!」
④バジリス「野蛮人め…」
躊躇もなく、凱はバジリスへ突進していく。
眩い閃光が辺りを包む・・・
⑦「な…誰だてめぇは…」
凱の剣はバジリスを捉える前に止まっていた。
いや、止められた。
⑦「くっ!びっくともしねぇ…ッ」
しかも、片手、素手で簡単に止められた。
グレー「名はグレー。協会クラスT(テラ)、魔科だ。君は確か…凱だったな」
銀色の鎧、多種の魔科具を身につけた白髪の男がバジリスとの間に割って入ってきたのだ。
⑭キック「凱!離れろ!そいつは前の奴らと同じだぞ」
⑦「くっ」
後方に飛び、距離を開けた凱は剣を構え、臨戦体勢をとる。
グレー「正しい判断だ」
④バジリス「では話合いといこうか?」
スモッグ「話合いなどする義理はない」
白いマントを翻し、天井から舞い降りた一人の魔法使いは冷たい眼でバジリスを睨み付ける。
④「これはこれは…名高い霧の賢者殿」
スモッグ「協会の最終兵器、魔科(マカ)を十名とは…協会も本腰なわけか」
そう言われ、グレーはため息をつく。すると凱たちの周りに突然、魔科が9人現れる。
>> 69
⑭「どこから!?気配はまったくなかったぞ…」
⑤「どうせ、十八番の魔科具だろうよ」
デビル「ふんふん」
周りを囲む魔科(マカ)たちを警戒しながら見渡す。
精気を感じない冷たい眼、汚れのない銀白色の鎧。
協会最強の兵器。
生きた死神たちだ。
④「貴方も大変だ…銀狼たちも守りながら我らを相手にしなければならないとは」
スモッグ「私は今…」
スモッグは凱の耳元で囁く・・・
スモッグ「258人になっている。今の分散した力では…魔科相手に十分に闘えぬ。貴様が奴らを倒せ、私が直々に援護してやる」
⑦凱「ふん。つまりは自分たちでどうにかしろってわざわざ言いにきてくれたわけか」
スモッグ「ふふふ…」
凱たちは各々の武器を構えた。
バジリスを含む、漆黒の鎧部隊。
魔科10人。
⑦「圧倒的に不利な状況にはなれっこだぜ!!」
グレー「君たちは選択肢を謝ったな。不正解だ」
>> 70
⑦凱「くらいやがれ、爆剣阿修羅斬り!!」
グレー「軽いわ」
激しく交差する両者の剣、そして激しい爆発が起こる。
⑦「協会の狙いはなんだ」
シュウゥゥゥゥ…
グレー「死ぬ者に教えたところで…冥土には役に立つまい」
うなりながら青く輝く機械剣を片手にグレーは魔科具を手にとり宙に放り投げる。
グレー「最先端の科学の結晶こそ我ら魔科(マカ)。お前ごときが私には勝てぬ」
投げられた魔科具は分裂し、鋭い刃先を持った無数の物体へと変化する。
⑦「俺をなめると痛いめにあうぜ」
グレー「ゆけ!!」
合図とともに魔科具は一斉に凱へと襲いかかる。
⑭キック「凱!!」
「他人の心配をしてる暇があるのか?」
魔科(マカ)の猛攻を受けながらキックは周りを見渡す。
グレーの攻撃に防戦一方な凱。
複数の魔科(マカ)を相手に徐々に押されていくセロ。
デビル・スモッグは漆黒鎧部隊を防ぐのに手一杯。
仲間いつやられてもおかしくないこの状況、だが、手助けしようにもキックも魔科(マカ)数人相手に闘いを強いられている。
>> 71
『今こそ…竜剣の新の力を目覚めさせる時』
⑭「竜王様!?」
鼓動する竜剣から竜王の声が響く。
⑭「しかし…私には竜剣を扱う力はまだありません」
『教えたであろう…竜剣は剣であって剣であらず…解放するのだ…内なる力を…』
⑭「竜王…」
『すでに時は満ちたお前は私を超える器だ…我が子よ…その力…見せてみよ…そして…仲間を救え…世界を救え…竜族の誇りを見せよ』
⑭「力の解放…」
竜剣は今までになく輝き、キックの身体も光に包まれていく・・・
目覚める時。
「なッ…」
キック同様、魔科(マカ)たちも光に包まれていく。
スモッグ「これは…稀有な…ふふ」
凱「なんだ」
辺り一帯は光に包まれてゆき、闘いが一瞬だけ静寂になった。
⑭『力の解放とはこう言うことだったのか…』
光が収まった時には
竜剣のような牙を幾多も携えた
巨大な黄金の竜となったキックがいた。
「バカな…捕獲魔科を使え」
「なっ…」
キックの鋭い牙に咬まれ、魔科二人が一瞬にして絶命する。
⑭『力がみなぎってくる!!ウオオオオォォォ!!!』
竜の咆哮は止むことなくキングに響いた・・・
>> 72
⑱「俺様はキングの復旧に全力を注ぐ…あとは任せるぞ」
ミスチル「はっ!指揮は私が、連合軍など恐れるに足りません」
レッガ「では、俺は部隊を率いて闘いに出る」
地鳴りのような音が響く。キングに再び、エネルギーが満ちてゆくのが分かる。
③セレナ「私たちも行きましょう」
①クリス「あぁ。キングが復帰するまで連合軍を防がないと」
⑪リオ「戦闘機の操縦は任せといて!!」
ラ・ドル「感じます…強大な敵の魔力を…おお…な…師匠よりも…」
砂に半身が埋もれたキングから戦艦が次々に出撃していく。
キング船内では連合軍の奇襲部隊との闘いが今だ沈静化されていない中、軍備を整えるのは安易なことではなかった。だが、なんとか戦艦を配備することが出来ていた。これもミスチルとレッガコンビの統率力のたわものだろう。
①「セレナ、闘いが始まったらもう後戻りはできない…今ならまだキングの中に…」
③「いえ、私もクリスと一緒に闘います」
クリスとセレナは砂に身を潜め、宇宙海賊の地上部隊を率い近づく連合軍を待ち受けていた。
周りには多くの銀狼、戦艦が砂に身を潜めている…
>> 73
ゴオオオオオオ…
③セレナ「急に空が…」
慌ただしく部隊が配置についていく中、辺りが急に暗くなる。
①クリス「これは…」
空を見やげるが、雲一つない。だが、太陽は顔を隠してしまっている。
『世界を埋め尽くす…希望の光すら地上には届かぬ。永遠の闇こそ、新の安住。空をも埋め尽くす、連合軍がやってきたのだよ』
何処からともなく声が響く・・・
③「この声は!!」
④バジリス「姫、お迎えに上がりました。ドイス閣下からの招待状を承っています」
①「貴様は!!」
砂の中から突如、漆黒の鎧兵が無数に現れる。クリスはもちろん、周りにいる銀狼も思わぬ敵襲に慌てて武器を構えた。
③「のこのこよくも顔が出せたものですね、バジリス」
④「姫。冷たいですな。私は貴方の身をあんじて、闘いの前にお助けしようと…ぬ!!」
①「ドイスにはお前の首を送り返してやるよ!」
一瞬にして距離を縮めたクリスは剣を振る。しかし、バジリスは軽々とその機械手で受け止めた。
④「女!昔の私と思わぬことだ!今の私には勝てぬ」
①「ふん。相変わらず口は達者だな」
④「くぅ。コイツは任せよ…お前たち姫を確保せよ!!」
漆黒兵「はっ」
>> 74
③「火の精霊よ…」
セレナは片手を掲げ長い呪文を唱え始めた。
同じくラ・ドルも彼女のドクロを撫でた後、「嵐の精霊よ…」と呪文を唱え杖を掲げた。
「無防備過ぎるよ、お姫様!」
数人の漆黒兵がセレナに襲い掛かる。
⑪「鉄壁!!」
リオは腰から下げているホルダーから鉄球を3個取るとセレナの前に投げつけた。
ズン
ズン
ズン
「ぐぼっ…」
「げぇぶぁ…」
壁が砂場から空に向かい、せり上がり漆黒兵に直撃する。
その間にセレナの手の上にスイカぐらいの火炎弾が出来上がる。
③「ラ・ドル!!」
セレナは合図した。ラ・ドルはセレナの火炎弾に合わせ雷槍を放った。
「ふん!アンチマジックがかかっている鎧に通用するものか!!」
更に数十人の漆黒兵が走って近づいて来る。
『コロナ・クレイジー』
2人は二つの魔法を融合させ敵の真上で爆発させた。
太陽の荒れ狂うコロナのように凄まじくその場の漆黒兵は言葉すら与えられないまま黒炭化した。
ラ・ドル「あまりにも鎧を過信するからこうなるのです。ネッ!」
彼女のドクロにキスをした。
>> 75
①クリス「いぃや~っ!!」
ガキッン
踏み込んだ一撃をバジリスの黒光りした左腕で弾かれる。
④バジリス「ふっ腕が落ちたんじゃ無いのか。いや、私がパワーアップしてお前が弱くなったのか。」
右手でクリスの懐を掴むと地面に叩きつけた。
①「ぐっ…」
立ち上がり口から滴る血を左手で拭うと剣を構え直した。
そして、オーラを漲らせると風を纏いバジリスに向かった。
④「何をやっても無駄だ。」
①「神剣奥義…風林火山。」
残像が残る超高速で四種類の剣技を一気に叩き込んだ。
シュギーン
クリスはバジリスの後方にすり抜けた。
④「うぐっ…」
①「やったか。」
④「…
…
ぐはははははっ!!!」
バジリスは何事も無かった様に大声で笑い出した。
①「!?」
④「魔科具を取り入れサイボーグ化した私の体に歯が立つまい。」
振り返りざま左腕からビームキャノンを撃ちクリスの右肩を貫いた。
>> 76
①クリス「痛ッ…」
肩を射ぬかれ、流血する右肩を押さえながらクリスは膝をつく。そして、厳しい表情でバジリスを見入った。
④バジリス「ふふ。私の今の力は魔科(マカ)のTクラス以上…この新な肉体、なかなか」
バジリスの不適な笑い声が辺りに響く。空を覆う影は一層濃くなり、連合軍の魔の手が近づいてきているのを示していた。
①「自分の身体を改造してまで…力を欲するとはな」
④「我が肉体など…ドイス閣下の思考のためならどうなってもかまわぬ。私の望みはドイス閣下と同じなのだよ」
キャノン飽を再び、クリスに向ける。
①「哀れな男だ。悪に心までも支配されるなんてな」
④「闇の支配こそ、永久の安息、闇は全てを覆いつくし…あらゆる苦悩、不安すら隠してくれる」
①「お前の見ているもの、いや見せられているもの全てはドイスの作った虚無だ」
剣を握る手に力が戻る。世界のため、ドイスを倒すために目の前の敵には負けてはいられない。
④「ふふふ、実に愚かな女よ。闇の力には足掻らえねぞ」
①「来い!!」
>> 77
レッガ「全艦、来るぞ!!砲台準備!!」
バジリスの乱入に地上部隊が混乱する中、レッガ隊長率いる戦艦は視界についに入ってきた連合艦隊を見やげていた。
「隊長、地上部隊の指揮が乱れています!また…キングからの部隊が敵の奇襲部隊に妨害されこれ以上は出撃出来ぬとのこと!!」
レッガ「くっ…ミスチルの奴は中で何をやっとるんだ!とにかく!敵の空爆の前に地上部隊の混乱を収め、戦艦のシールド区域に入るように伝えろ!なんなら艦から兵を出してもいい!」
「イエッサ!!」
④「リオ!ラ・ドルさん!ここはお願い!私はクリスを…」
リオ「了解!」
リオは鞭のように鉄を自在にうねらせ、漆黒鎧兵をその強靭な鎧ごと粉砕する。
ラ・ドル「リオ!姫を援護しますよ!」
杖を掲げたラ・ドルから眩い閃光が放たれ辺りを照らす。強烈な閃光で目を眩ませ隙に漆黒鎧兵の間をセレナは抜け出す。
③「クリス!!」
肩から流血するクリスの元にセレナは駆けていく。
「姫を逃がすな!」
リオ「邪魔したらダメでしょ。必殺鉄壁!」
「なっ…」
後を追おうとする漆黒鎧兵の進行を巨大な鉄壁が妨害する。
>> 78
③「クリス!!」
そう叫びながらセレナは走る。そして、手に強く握られた銀色杖は強く輝き、青々と燃える業火を放った。
①「セレナ!!」
④バジリス「おやおや…姫自らお出ましとは手間が省けたわ」
背中に搭載したジェットエンジンを点火させ、バジリスは高く飛び上がり業火から逃れるとセレナとクリスを見下ろしながら言う。
①「セレナ。なんで来たの!!ここは私に任せて直ぐに近くの戦艦に避難して」
③「いえ、ヤツは私が目当てです。私が逃げていてはいけないの」
セレナは強い眼差しでクリスを見つめる。清く澄んだ綺麗な目であった。
①「まったく…困った姫様ね…」
二人は見つめ合い。笑いが起こる。
④「戦場で油断は禁物だぞ」
そんな二人に上空からキャノン砲の嵐が襲った。
③「大地よ。悪なる者を飲み込みたまえ」
セレナは肉体強化の呪文を唱え、バジリスの攻撃を華麗にかわしていく。クリスはオーラを高めながら機を伺っていた。
④「アンチマジックの鎧は破れませんぞ」
③「アンチマジックに過信過ぎるんじゃない?」
巨大な砂嵐がバジリスを飲み込む。
- << 122 《前回までのあらすじ》 宇宙海賊と政府軍は宇宙空間にて壮絶な戦闘を繰り広げていた。しかし、そこに突如、連合艦隊からのX砲が両軍を襲った。 X砲に政府軍が呑まれていく中、援軍としてやってきた超巨大戦艦キングに宇宙海賊艦隊はどうにか収納され、艦隊の壊滅はまのがれたと思ったが、X砲の膨大なエネルギーにキングは押され、黒の惑星へと叩きつけられてしまった。 なんとか、ドグロの機転によりキングに大きな被害ができることなく、また、ハークの力により、船員の人命に被害もなかった。 しかし、キングが再び飛び立つには時間がかかる。連合艦隊が迫ってくる中、事態は刻一刻を争っていた。 状況は更に悪化する。バジリス率いる漆黒鎧部隊がキングへ奇襲攻撃を仕掛けてきたのだ。協会の最強兵器、魔科、リード将軍の部下である軍義・戦義を含む奇襲部隊にクリスたちは苦戦を強いられていた・・・
>> 79
【若き魔法人】
教卓に立つ一人の青年は今年から城の教育係りに着任した魔法使いである。
青年の手が動く度に生徒たちの視線が一緒に動く。
太陽が天の真上に登るお昼時、陽日が教室に燦燦(サンサン)と入ってきていた。
青年は時には厳しく、また時には笑顔を見せながら熱心に黒板に字を描いていく。生徒たちはそれを自分のノートに写していく。
生徒は皆、幼き子供たちである。しかし、ただの子供ではない王族や軍幹部のそれ相応の身分の子供たち。将来、この国を背負う者たちばかりだ。
「魔法使いはなぜ杖を使うか分かるかい?」
だが、教える青年は平民生まれである。ダンテスティン城内にある、この教室とは思えない豪華な部屋に一人場違いな者がいるとしたら教師である彼であろう。
「分かりません」
青年の問いに生徒の一人答えた。子供とは思えない口調であった。
そんな貴族出の子たちの子供らしくない一面を青年は好きにはなれなかった。だが子供たちのために毎日、熱心に授業を行っていた。
「杖は魔法をコントロールするのに使うんだ。銃でいう照準器ってとこかな」
>> 80
【若き魔法人】
「では、先生は杖がないと魔法を使うことができないのですか?」
「いいや、こう見えても賢者の端くれだからね。杖がなくても魔法は使えるよ。杖はあくまでも補助的な役割でしかないよ」
照れ笑いしながら頭をかく青年に微かな笑いが起こる。いつも冷静な貴族出の生徒たちから笑いとる度に青年は心の中でガッツポーズを取るのであった。
「おっと…話が長引いたね。本日の授業はこれで終わります。明日も同時刻から開始します」
「ありがとうございました」
生徒たちは丁寧に頭を下げながら教室から出ていく。青年は最後の一人が教室から出ると、大きく深呼吸をし背筋を伸ばす。
「師匠は今頃なにしてるんだろうな。まだ山に籠ってるんだろうか…」
この教師である青年の名はハーク。若くして風の賢者の称号を持つ、お偉い魔法使い様ではあるが本人にその自覚はなかった。
闇の軍を率いた魔王を葬り、ダンテスティン国を闇から救った英雄の一人でもある。その功績をたたえられ、こうして城のお抱え魔法使いとして仕事についているのだが、ハークは直ぐにでも仕事を辞めて師匠ラブのもとに戻りたいと思っていた。
>> 81
【若き魔法人】
しかし、辞めたいと言って辞めれるような状態ではなかった。
魔王が滅び、国の実権は王に戻ったのだが闇に侵された王の身体は日に日に弱っていくばかりであった。そんな王から実権を奪おうとする輩が出初めたのだ。ダンテスティン国は小規模な内戦が多発し魔王の時代より治安が悪化しているのは隠せない事実であった。
そんな状態でもし王に万が一のことが起これば国は崩れ落ちることなど安易に想像がついた。
実をいうと今だに王が生きられえいるのは何を隠そうハークの癒しの魔法のお陰に他ならなかった。日々、ハークの懸命な治療がなければ王は既にこの世にはいないだろう。
「国王、失礼します」
ハークが城から離れると同時に王は死に国は滅びると言っても過言ではなかった。ハークには選択肢すらなく城で働くしかないのだ。
「ハーク。毎日すまないな」
王座に座る王は本当に申し訳なさそうに言った。歳はハークと同じぐらいだろうか。身体は痩せてはいるが、その黄金に輝く目に強い力がある。
「これが私の仕事ですので」
ハークが王の胸に杖を当て呪文を唱えると王の顔には精気が戻っていく。
>> 82
「ハークよ。国は荒れておるようだな」
「はい。しかし国王の身体が良くなれば自然と不安も取り除かれ、治安も落ちつくでしょう」
ハークは王の傍らに控え、王の次の言葉を待った。
「これを見よハーク」
王は長い沈黙の後、話を一変させあるものを取り出した。王の国を思う心は誰よりも強いことだろう。
国では毎日多くの者が戦で死んでいるのだ。
しかし、皮肉なことに国の治安を回復しようにも王は自ら動ける身体ではなく、全て人に頼るしかない。実働派の王にとってこれ程辛いことはなかったはずである。
「なんでしょう」
そんな王の気持を一番察していたのはハークであった。だからこそ、彼(王)のためにも闇を打ち払ってあげたい一心で治療を行っているのだ。
「ペンダントだ。だが、ただのペンダントではないがな」
「国家の紋章ですね」
王の手には黄金に輝くペンダントが握られていた。
「これは地下道への封印を解く鍵なのだ」
「なんですって?」
地下道。
その言葉を聞いた瞬間、ハークの脳裏に魔王が浮かんだ・・・
>> 83
【若き魔法人】
王はペンダントをハークに手渡す。それには左右を向いた二匹の鷹が描かれている。それはダンテスティン国に伝わる王家の紋章であった。
「地下道が大賢者によって封印されたのはお前も知っておろう」
「は…はい」
記憶はまだ真新しかった。
闇の根源である魔王の復活を恐れた魔法界は七人の大賢者をダンテスティン国に遣わし、地下道を封印したのだ。
七人の大賢者が唯一集結し行った大魔法である。
その余りの魔力に天は割れ、星は激しく揺れた。おそらくハークの生涯であれ以上の魔法を拝めることはないだろう。
その大魔法により、決して破れない結界に地下道は覆われ封印されたはずだ。
「地下道は本来王家の墓だ。いくら闇を根絶するためとは言え私の父母も眠る墓を封印するのには迷った。しかし地下道を封印することは国のため…また世界のためだ。私は承諾せざる得なかった。だが、条件を一つだけつけた封印をいつでも解けるようするようにと」
ハークは驚いた。
慎重な王が封印をいつでも解けるようにするなど考えられなかったからだ。ましてや魔王である。再び、力が解放されれば止める手段はないのだから。
>> 84
【若き魔法人】
ハークは心の中で舌打ちをした。
王家の人間は皆、山より高いプライドを持っている。世界で自分たちが一番偉くなければならないのだ。
魔法界の意向に従うことは王のプライドを深く傷つけたことだろう。そんな王にとって王家の墓の封印を解けるようすることは魔法界に対する単なる当て付けに過ぎなかった。
王は良き人格者ではあるが、根っからの王族である彼の心は何処か異形な部分があるのは確かだった。
「国王。それをどうするおつもりです?悪人に知れればいつ狙われることか」
「セリス王女に渡すのだ。王女にはペンダントの事には触れず、私からの贈り物と言え」
「しかし…」
躊躇するハークに王は怪訝な顔をした。
「この事は魔法界以外には私とお前しか知らぬ。安ずることはあるまい」
王の有無を言わせぬ口調にハークは何も言い返すことができなかった。王のこういった人を従わせる能力は神憑り的なものがある。
「では、頼んだぞ。風の賢者よ」
「はっ…」
ハークは深く頭を下げ、ペンダントを懐にしまうのであった。
>> 85
【若き魔法人】
ダンテスティン城は雲にも届くかと思うほど天高く聳え建っている。その石造りの城の重量感に圧倒される者、また魅いられる者は多い。
また、そんな城を羨ましいそうに眺める民も多かった。そんな民の夢は城に仕えることである。それほど城に住まう王族は民の憧れなのである。
人間族だけからなるこの星は生まれながらに階級が与えられ、差別国家と他星から言われるほど貴族と民の暮らしは天と地ほど違っていた。
「どうしたものか」
そんな民の憧れの城で働いているハークだが、王族や貴族のドロドロとした人間関係に心も身体も疲れきっていた。
城にはハークのように雇われの身の者が数多くいる。彼らはその才能買われ、多種多様の仕事についていた。
飯使いと言えど城で働く者はこの国のエリートなのだ。
ハークを言えば、お抱えの魔法使いとして、魔法大国であるダンテスティン国の魔法の発展に貢献するため、日々研究を行なっていた。教師はあくまでも副業に過ぎない。
>> 86
【若き魔法人】
お抱えの魔法使いたちは城にそれぞれ個人部屋が与えられる。部屋が城のどこに位置するかで、その者の地位が分かる。
ハークは最上階にある王の間の直ぐ真下に部屋があった。王の真下に住まう権利がある与えられているハークの地位がどれ程のもの想像できるはずだ。
トントン拍子に今の地位に登りつめたハークを他の魔法使いたちは良くは思っていなかった。
当然、陰口は叩かれ、嫌がらせまで受けることもあった。だが、それだけに止まらず暗殺者に寝込みを襲われることまであった。
地位と権力に無縁だったハークがそんな争いに巻き込まれているとは余程、神様も物好きのようである。
「えらく、真剣に悩んでいるじゃないか」
「勝手に人の部屋に入るとは相変わらずですね。ファ」
ハークは溜め息混じりに部屋にいた先客に言う。
「お子ちゃまも立派になったもんだな。くっくく」
そこにいたのは闇の賢者ファ。魔法軍討伐の英雄の一人であった。黒いローブに身を包んだ彼は謎多き人物である。一体いつもどこで何をしているのか、ハークは名前以外は彼の事を何一つ知らない。
>> 87
【若き魔法人】
「何しに来たんです?」
ペンダントの件で動揺していた心を落ち着かせ、フォに悟られまいと冷静に装う。
「お前、顔色悪いぞ?なにかあったのか?」
だが、フォはハークの心の揺らぎを感じとったのかそんなことを言った。腐っても鯛。賢者である彼なら人の心を読むなど容易いなことだろう。
「情報通の貴方なら知ってるでしょう。私はこの前、寝込みを襲われたんですよ。顔色も悪くなりますよ」
「そうだったな」
ファはどこか納得いかない様子である。ペンダントのことは微かでも感ずかれるわけにはいかない。知る者が増えれば情報はおのずと漏洩するからだ。
「まぁ、気にすることはねぇ。お前なら暗殺者ぐらいじゃ殺せねぇからな」
何秒か後、ファは笑いながら言った。それを見たハークは胸を撫で下ろす。
「城に仕えるのを断ってから姿を見ませんでしたが、なにをされてたんです?」
ハークはそんなことを口にしながらポットに入れられた暖かい紅茶をカップに注ぐ。
ファは物珍しそうに部屋にある書物に見入っている。
>> 88
【若き魔法人】
「世界観光とでも言っておこう。今まで他星に行けるのは賢者ぐらいのもんだったが、宇宙船とかいうカラクリで普通の人間でも他星に行けるようになった時代だ」
「宇宙船ですか。最近は技術も確立され飛行距離も伸びたらしいですからね。惑星と惑星間の移動も可能になったんでしょう」
紅茶の入ったカップをファに手渡しながら窓の外で飛ぶ、飛行船を見つめる。
魔法大国と呼ばれるダンテスティン国ですら時代は魔法から科学に変わりつつあった。
「今じゃ…魔法使いより、科学者になりたがる子供の方が多いしな。他星ではカラクリ人間が町中を歩いてやがるくらい世もかわっちまったぜ」
「カラクリ人間ですか。まだこの国では見ませんね」
ハークは椅子に腰を下ろすと自ら入れた紅茶を飲む。
この城にもお抱えの科学者たちが増えているのは気づいていたが、いつか魔法使いが用なしの時代がやってくるのだろうか。
「この国もDOISU計画とかいう訳の分からん実験があるぐらいだ。カラクリが町中を歩くのも近いかもしれん」
「DOISU計画?」
初めて聞く言葉にハークは首を傾げた。
>> 89
【若き魔法人】
「カラクリに知能を持たせる研究だ。その研究者の代表の名前がドイスで…DOISU計画」
「カラクリに知能を!?」
「おっと。こんな話をしに来たんじゃなかった。今夜、この城に反逆軍が攻め込んでくるぞ」
「なんだって」
ファはローブにくるまり、突然、呪文を唱え始めた。
机の上に置かれた水晶に反乱軍の姿が映し出されていく。
「なんて数だ。先頭にいるのはトルコ将軍じゃないか!!」
長髪の白髪。独特の卑しい目つきの男が反乱軍らしき兵士団に指示を出している。男はトケイ隊長の殉職を受け、新たな軍の体制を整え将軍となったトルコであった。
「強き国王だったからこそ、今まで従ってきた連中がついに旗揚げを計画したようだぜ。くっくく」
まるで人事のようにファは言う。彼がなぜこんなことを知っているのか、また、なぜハークにそれを教えるのか。
「城には《千里眼の賢者》のゴン殿が居られるはず、こんな大規模な反乱を見過ごすわけが…」
「ふん。奴も反乱軍の首謀者の一人だ」
「そんな…」
城の中でも王が絶大な信頼をおいているゴン殿が反乱を企てている。ハークが思う以上に国は危機的状況であった。
>> 90
【若き魔法人】
「国王軍にも内通者が多くいる。城の内部から陽動され、その隙に反乱軍が攻め込んでくれば…難攻不落のダンテスティン城と言えど一晩で落城されるぞ」
「すっ直ぐに王に…」
慌てて、王のもとに行こうするハークをファは止めた。
「待て。今さら言ったところで何もできはしねぇよ。反乱軍は準備万端、対して国王軍は戦える状態にすらねぇ」
そう言われてやっと冷静になった。今更、騒ぎを起こしても事態が早まるだけで、日が暮れるのをただ待つだけの反乱軍にとってなんら影響はないだろう。
「ならどうしろと」
「反乱軍は俺とお前でどうにかすんだ」
ハークは目を丸くしファを見た。
本気で言っているのか。
反乱軍は一人二人ではない。賢者と言えどたった二人で何ができるというのだろうか。
「反乱軍には千里眼の賢者ゴンがいる。こちらが下手に動けば察知されるだけだ。だが、二人なら感ずかれることはない」
「勝てる勝算はあるんですか。失敗すれば国が滅びるんですよ!!」
愛国心がないと思っていたファが反乱軍と戦うと言ったことにハークは疑いを向けていた。何が目的なのだろうか。
>> 91
【若き魔法人】
「勝算なんてねぇねぇ。くっくく」
ファは窓の外に映る平和な風景を見て鼻で笑った。夜になればここも火の海のなっているかもしれない。
「軽率過ぎますよ発言が…ファ、国がどうなってもいいのならなぜに貴方が戦うんです?」
その質問でファの表情から笑みが消え、蔑んだ目でハークを見てきた。
「お前には分かるまい。俺の苦労など!!魔法界は俺の実力を認めようとしないのだ!欠けた炎の大賢者にキメラとか言う若造を任命しやがって!」
ファは激しい口調で続ける。
「老いぼれ共が!世界に一番、貢献してるのは俺様だ!俺が大賢者になる資格がある!だが…魔法界は俺を認めない!!くそっ!!」
感情的に机を叩きながら充血した目を擦る。
「俺は機会を探していた。一日の大半を使い水晶を覗き込んで、やっとこの反乱軍のことを突き止めた。これを食い止めれば俺様は魔法界に認めてもらえるぞ!!」
これ程まで大賢者に執着している者は珍しい。ハークは己のためにこの危機を今の今まで見過ごしていたファに怒りを感じた。だが、あえて口に出すことはなく、怒りに震える無様なファを見つめた。
>> 92
【若き魔法人】
すべての話に合点がいった。
ファは日々、ダンテスティン星を監視しチャンスを狙っていた。そして、ついに反乱軍のことを突き止めたんだろう。
しかし、賢者といえ一人ではどうすることも出来なかった。そこで、無害なハークに話を持ちかけてきたのだろう。何故、ファが大賢者に憧れるのかは分からないが、並みならぬ思い入れがあるようだ。
「今晩だ。お前は城の陽動作戦を妨害しろ」
「ファはなにを」
「俺様は反乱軍の頭を潰す。そして、指揮系統を失った反乱軍を皆殺しだ…城の周辺には魔法布石を張っているからな。くっくく」
黒煙を上げ、断末魔の叫び声と共にファは姿を消した。
※魔法布石:あらかじめ、魔力を物に込めること。魔法発動の際はその魔力を使い魔法を放つ。発動範囲が断定されることや魔力を溜めるのに時間を要するが、魔法発動の際は己の魔力を消費しない。
「災難はまとめてやってくるようですね」
ペンダントを片手に今は平和である城を朧気に見つめるハークは安眠できる夜は当分こないなと心の中で笑った・・・
>> 93
【若き魔法人】
今宵は満月であった。
月明かりに照らされたダンテスティン城は神秘的な趣きであった。だが、閑静とした夜の影では闇に紛れて、不穏な動きを見せる者たちがいた。
その者たちは生々しい武器を片手に闇に身を隠していた。合図があればいつでも彼らは城へ攻め込んでくるだろう。
「先行隊でこれ程の兵数か」
夜襲のプロであろう兵士団は茂みに隠れ気配を完全に消している。城の見張りの国王兵は反乱軍の存在にすら気づいていない。そんな中、ハークは闇に潜む兵士の動きを手にとるように察知していた。
「では、王の警護を頼んみましたよ」
「はっ。しかし、賢者殿、なぜに今夜はこれ程の重警護を?」
王と王女の眠る寝室を警護する近衛兵は若き賢者に聞いた。
「君達は何も心配する必要はないよ。王を頼む」
「はっ!!」
ハークは信頼できる古きから王に仕える兵士を集め、今夜かぎりの特別警護団を結成していた。一個大隊以上のただならぬ警備に兵士たちは疑問を抱いてはいるが、信頼をおくハークにそれ以上聞く者はいなかった。
警護団はあくまでも保険である。ハークは己の力だけでこの危機を乗り切る決心をしていた。
>> 94
【若き魔法人】
不穏な動きは城の外だけではなかった。城の内部では反乱分子が行動を開始していた。
「お疲れさん。交代だ」
「もう、そんな時間か?」
見張り番の兵士は交代要員できた兵士に笑顔で言う。だが、交代にきた兵士に笑みはなかった。
「ん?そう言えば…お前は今日は休暇じゃなかったか?」
「そうだったな」
そんな言葉を火種に突如、兵士の腹目掛けて突進してきた。
「なっ…」
兵士は眼を見開き、己の腹部に刺さった短剣から溢れ出る血を見て身体を奮わせる。
「悪いな。これも国のためだ」
「貴様…っ…」
兵士は最後の力を振り絞り剣を鞘から抜くが、そこで力尽き、床に倒れると二度と動くことはなかった。
「来い!片付いたぞ!」
戦友であった兵士の血で染まった男は物陰に隠れていた仲間を呼ぶ。
「行け!行け!行け!門を開けるんだ!」
その合図を受け、十数名の兵士たちが現れ、城門を開門するため鎖を巻き上げていく。
「開かん。なぜだ…」
だが、いくら開門しようとしても城門に変化はなかった。
「残念ですが、門は開けさせるわけにはいきません」
予想だにしなかった事態に困惑する兵士たちの背後から一人の青年が現れた。
>> 95
【若き魔法人】
「ハーク殿…」
突然の来客者に兵士たちの表情が凍りついた。歩み寄ってくる青年に対し、兵士たちは後退りしていく。
「武器を捨て、降伏しなさい」
「も…門を開くように命令を受けております」
「反乱の首謀者、トルコ将軍からですか?」
「くっ…全て承知の上ですか、ハーク殿」
兵士たちは鞘から剣を抜くとお互いに目で合図し、青年の周りを取り囲んだ。先程までの兵士とは違い、目には殺気が満ちていた。
「どうやら…闘いを避けることはできないようですね」
兵士たちは一斉に襲いかかる。青年は無数の剣筋を見切り、マントの下に隠していた短剣で一人の兵士を突きさす。
「なっ…」
そして、瞬く間に二人、三人と兵士が倒れていく。青年の動きに誰一人ついていけず、数秒後にはその場には青年以外に立っている者はいなくなった。
「愚かな…」
青年は血に染まった短剣を片手にそう呟いた。国王兵であり元は同士であった彼らに言ったのか、それとも彼らを殺めた己に言ったのか、それは悲しみに満ちた言葉であった。
「師匠、正義のために私は今夜どれ程の人を殺めなければならないのでしょうか」
>> 96
【若き魔法人】
「合図はまだか?」
「はっ!!城からの合間は見られません」
闇に潜む反乱兵たちは城からの合間を待っていた。しかし、予定時刻は過ぎても合間はない。
「どうやら…支障が生じたようだな。うむ」
長髪の白髪を風に靡かせながらダンテスティン城を静観する男がいた。腕を胸の前で組み、仁王立ちするその男からは焦りは微塵も感じられない。そんなトルコ将軍の脳裏には若き魔法人が浮かんでいた。
「若き獅子が牙を剥いておるようですなぁ」
「ゴン殿…」
トルコ将軍に囁くように一人の魔法使いが言った。千里眼の賢者の称号を持つ、ゴンであった。別名は銀色の監視屋、ローブが覆い隠れてしまうほど銀の装飾を身につけている。
「獅子?よくて猫だ。あの餓鬼に我が王道を止めることはできぬ」
「分からんですぞぉ。奴は若く強い…強い強い…私のコレクションにしとうてしゃあない」
「ならば獅子はゴン殿にお任せしようか。我々はその間に城を掌握する」
トルコ将軍は剣を抜く。燃え上がるように赤く、血のように濃い、赤き剣を天にかざす。
>> 97
【若き魔法人】
「計画変更だ。突撃せよ」
「はっ…しかし、門がまだ開門されておりません」
「どけ」
トルコ将軍はそう兵に告げると、一人、門へと近づいていく。
「燃え上がれ、そして、我が剣にひれ伏せ」
眼を見開き、剣を振る。一筋の光が城門を貫く。
ドガアアァァァンンン!!
門は爆音を上げ吹き飛び、破片は散乱し瞬く間に辺りは火の海となった。
「我が王道が開かれた。ゆけ」
炎で赤く染まっていく中、トルコ将軍の白髪はより一層際立って見える。その姿は鬼神のようである。
『うおおおおお』
それを合図に闇から無数の兵士たちが雄叫びを上げた。そして、火炎瓶を投げながら城へ雪崩のごとく突撃していく。騒ぎで飛び出してきた王国兵は突然の夜襲に狼狽し、なすすべなく反乱兵の手にかけられていく。
静寂な城は
赤々と炎を上げ、戦場と化していた・・・
そう、一人の男の野望の炎に燃やされて・・・
>> 98
【若き魔法人】
「敵襲!敵襲!」
「各員!配備につけ!」
城は一変して物々しい雰囲気となっていた。就寝していた国王兵は叩き起こされ、武装を整え、地上層で防衛する仲間のもとに援護に向かっていく。
「反乱軍が動き出したか」
ハークは窓越しに反乱兵が城に火をつけるのを見つめていた。地上層は多くの王国兵は倒れ、燃え上がる炎に覆われている。ハークが現在いる城の上層部はまだ反乱軍の火の手は届いていないが、それも時間の問題だろう。血相を変えた王国兵が慌ただし横を駆けていく。
ハークは内部工作兵を鎮圧していた。だが、強行に出た反乱軍は城の内部へと攻め込んできている。予定ではファが反乱軍を食い止めるはずなのだが、この様子だとファの身に何かあったのだろうか。
「ハーク殿。こんなところに居られては危険です。ここは我らに任せ、避難を」
一人の兵士が殺戮の風景に感慨していたハークに話かけてきた。聞けば、他の城のお抱え魔法使いたちは地下の避難所に逃げたらしい。城の窮地に、城の守護を任された魔法使いが真っ先に逃げ出すとは、ハークは怒りに似た感情を覚えた。
>> 99
【若き魔法人】
「いや、避難はしない。私も闘うよ」
「なにを!?なさいます!?ハーク殿!?」
ハークは突然、王国兵に杖を向け光を浴びせると兵の姿は歪み、その化けの皮が剥がされていった。
「正々堂々と闘ったらどうです?ゴン殿?」
今までいた兵士の姿はそこにはなく、目の前にいたのは千里眼の賢者ゴンであった。
「いやいや、戦とは卑怯な者が勝ち残るものじゃて」
正体を見破られたゴンは不敵な笑みを浮かべハークを見据える。黒のローブに銀の装飾を幾多もつけたこの男こそ、ダンテスティン国では三本の指には入る魔法使いである。
「私は少なからず、貴方のことを尊敬していたが…どうやらその考えを改めなければならないようです」
「なに、気にすることはないない。儂は寛大じゃ」
銀色の杖を取り出しながら不気味な笑い声をあげるゴンの姿はまるで魔物のようであった。
「若き獅子よ。永きに渡り、生きながらえた儂の力をなめるでないぞ」
「忠誠を誓った国を裏切り、地に落ちた賢人などに私は負けはしない」
ハークは周囲に竜巻のような風が起こり、マントは大きく舞い上がる。
- << 101 【若き魔法人】 「そう焦るな。若き者よ」 力強い魔力を放出し、威嚇するハークにゴンは言う。ハークの魔力を見てもなんら怯むような素振りはない。 「儂は銀色の監視屋。そなたらの企みを知らぬ訳があるまい」 「なにを言いたい」 ハークは杖を向け、魔力を高める。だが、それでもゴンは闘おうとすることなく話を続ける。 「闇の賢者とか言ったかの?あの若造は?はてはて…」 闇の賢者。 その言葉を聞きハークは心は微かに揺れた。 それをゴンは見過ごさなかった。ゴンは口元を吊り上げハークを見た。 「弱き者ほどよう吠えるとはまことよの。死ぬまで…うるさいうるさい、うるさくてしゃあないわい」 「お前…」 ハークの魔力は明らかに乱れた。 「ほれ、お仲間と再会させてやろうやろう」 ゴンは二言三言、呪文を唱えると血塗れになったファが目の前に現れた。 「なっ…なんてことを」 敵を目の前にしているのも忘れ、ハークはファに駆け寄り、抱きかかえた。既に顔色は真っ青となり脈も弱い。だが、かろうじで息はあった。
新しいレスの受付は終了しました
お知らせ
小説・エッセイ掲示板のスレ一覧
ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。
- レス新
- 人気
- スレ新
- レス少
- 閲覧専用のスレを見る
-
-
束の間の現実逃避 無意味な文字の羅列 幸せへの片道切符3レス 61HIT 小説好きさん
-
わたしはあなたたちがきらい7レス 188HIT 瑠璃姫 (10代 ♀)
-
勉強する皆、すとぷり、アイドリッシュセブン、嵐0レス 40HIT 小説好きさん
-
満員電車とアタシとイケメン痴漢52レス 1798HIT 修行中さん
-
君は私のマイキー、君は俺のアイドル9レス 198HIT ライターさん
-
満員電車とアタシとイケメン痴漢
イッテQに可愛い人が出てた…。 たに?まりあ?… すごく可…(修行中さん0)
52レス 1798HIT 修行中さん -
束の間の現実逃避 無意味な文字の羅列 幸せへの片道切符
酒姫に捧げる唄。 心に思い浮かぶことも 目に見える景色も 優しい…(小説好きさん0)
3レス 61HIT 小説好きさん -
仮名 轟新吾へ(これは小説です)
お互いに「Win-Winの関係」じゃないとね! 女性の行きたい所…(匿名さん72)
212レス 3158HIT 恋愛博士さん (50代 ♀) -
神社仏閣珍道中・改
本日は地元の方々の厚い信仰心で今日まで大切に守られ続けている、地図にも…(旅人さん0)
362レス 12384HIT 旅人さん -
私の煌めきに魅せられて
「凄いもの,,,ねぇ。。まぁまぁ、呑んじゃいなよ!」 ? 意味わか…(瑠璃姫)
91レス 1137HIT 瑠璃姫
-
-
-
閲覧専用
🌊鯨の唄🌊②4レス 151HIT 小説好きさん
-
閲覧専用
人間合格👤🙆,,,?11レス 170HIT 永遠の3歳
-
閲覧専用
酉肉威張ってマスク禁止令1レス 204HIT 小説家さん
-
閲覧専用
また貴方と逢えるのなら16レス 489HIT 読者さん
-
閲覧専用
今を生きる意味78レス 539HIT 旅人さん
-
閲覧専用
また貴方と逢えるのなら
『貴方はなぜ私の中に入ったの?』 『君が寂しそうだったから。』 『…(読者さん0)
16レス 489HIT 読者さん -
閲覧専用
🌊鯨の唄🌊②
母鯨とともに… 北から南に旅をつづけながら… …(小説好きさん0)
4レス 151HIT 小説好きさん -
閲覧専用
人間合格👤🙆,,,?
皆キョトンとしていたが、自我を取り戻すと、わあっと歓声が上がった。 …(永遠の3歳)
11レス 170HIT 永遠の3歳 -
閲覧専用
酉肉威張ってマスク禁止令
了解致しました!(小説好きさん1)
1レス 204HIT 小説家さん -
閲覧専用
おっさんエッセイ劇場です✨🙋🎶❤。
ロシア敗戦濃厚劇場です✨🙋。 ロシアは軍服、防弾チョッキは支給す…(檄❗王道劇場です)
57レス 1431HIT 檄❗王道劇場です
-
閲覧専用
サブ掲示板
注目の話題
-
昭和生まれ、集まれー!死語、何が浮かぶ?
死語。何か浮かぶこと、思い出すのは? 若い頃、「そうは問屋が卸さない!」と、たまに言うこと言わ…
110レス 2966HIT 匿名 ( 女性 ) -
彼氏が他人の子供を面倒みています
付き合って半年程の彼氏がいます。 お互いに同い年のアラサーです。 彼氏は以前から年3回ほどシ…
37レス 1856HIT 匿名さん (20代 女性 ) -
どうしても結婚したいです。
40代婚活男性です。55歳の相手とお見合いをしました。結果は、お断りです。自分よりどんなに年上や不細…
17レス 532HIT 恋愛好きさん (40代 男性 ) -
愛猫の病気で遠方の葬儀に参加しない件について
愛猫の事で遠方の葬儀、49日に参加しない私は非常識でしょうか? 旦那の父親のお兄さんが先日亡くなり…
45レス 2399HIT 結婚の話題好きさん (30代 女性 ) -
退職しようとしてる人がいるとして、どういう人なら引き止める?
諸々の理由があり、仕事を辞めることを決めました。 非常にお世話になった先輩(私は派遣なので、先輩と…
21レス 490HIT OLさん (20代 女性 ) 名必 年性必 1レス -
胸のサイズの相談
胸のサイズ、Gカップあると困ること多いと、女友達に言うと嫌味かと言われました。 困ることたくさんあ…
11レス 263HIT 美容に興味あるさん (20代 女性 ) - もっと見る