話つく③ダンテスティン・サーガ~魔法のペンダント~
7つの惑星を舞台に登場人物たちが連合軍と言う巨大組織と闘うストーリーです👮是非、皆さん読んでみて下さい。
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話つく
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話つく②
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>> 100
【若き魔法人】
「そう焦るな。若き者よ」
力強い魔力を放出し、威嚇するハークにゴンは言う。ハークの魔力を見てもなんら怯むような素振りはない。
「儂は銀色の監視屋。そなたらの企みを知らぬ訳があるまい」
「なにを言いたい」
ハークは杖を向け、魔力を高める。だが、それでもゴンは闘おうとすることなく話を続ける。
「闇の賢者とか言ったかの?あの若造は?はてはて…」
闇の賢者。
その言葉を聞きハークは心は微かに揺れた。
それをゴンは見過ごさなかった。ゴンは口元を吊り上げハークを見た。
「弱き者ほどよう吠えるとはまことよの。死ぬまで…うるさいうるさい、うるさくてしゃあないわい」
「お前…」
ハークの魔力は明らかに乱れた。
「ほれ、お仲間と再会させてやろうやろう」
ゴンは二言三言、呪文を唱えると血塗れになったファが目の前に現れた。
「なっ…なんてことを」
敵を目の前にしているのも忘れ、ハークはファに駆け寄り、抱きかかえた。既に顔色は真っ青となり脈も弱い。だが、かろうじで息はあった。
>> 101
【若き魔法人】
「若い若い。戦場で隙を作ることは命とりよのぅ」
ゴンは杖を繰り出し、呪文を唱える。どす黒い衝撃波のようなものがハークとファを襲った。
「くっ!!」
咄嗟に身を呈して、ファを守ったがハークはまともに衝撃波を受け、大きく後方へ飛ばされてしまう。
「どうした。ほれほれ」
移動魔法で一瞬にして倒れるハークの真上移動するとゴンは杖の先端を変化させ、鋭く槍のように尖った杖をハークの肩へと突き刺す。
「ぐわぁ…あ!!」
ハークは瞬きする間すら与えられず、容赦ない攻撃に声を上げ、あまり激痛に杖から手を放す。転がり落ちる杖を空かさず、手にとったのはゴンであった。
「こんな昔の杖(木製)をいつまで使うつもりじゃ?師匠に貰った大切な杖じゃからな」
倒れるハークに容赦もせず、衝撃波をまた放つ。ハークの身体は人形のように放物線を描き、激しく地面に叩きつけられる。
「どうじゃ。立てんじゃろう?まぁ魔力もろくに練れまいが」
踞(ウズクマ)るハークの様子は明らかにおかしく。息は荒く、言葉も上手く喋れないようである。
それを見てゴンは笑みを浮かべる。
>> 103
【若き魔法人】
「いつから王国兵は軟弱となった!いつからだ!」
烈火の如く剣を振る一人の鬼神がいた。感情さらけ出し、多くの王国兵をその赤き剣の餌食にしていく。
闘うトルコ将軍の眼は涙ぐんでいた。
今はこうして反乱軍を率い反逆者となった彼だが、昔は違った。国に忠誠を誓い、誰よりも国を想い、国を愛した。
「うおおお!!お前らでは国は守れん!!弱者は何一つ守れんのだ!!」
彼は国のためなら本気で死ねると思っていた。しかし、そんな彼を変えたのは俗に言う魔王事件がきっかけであった。
表では平和であった国は、実は裏では魔王の支配下にあった。忠誠を誓った王ですら魔王の操り人形だったのだ。
正義のため、国のためと想い、非道なこともやってきた。だが、全ては偽りであった。信頼していたトケイ隊長ですら魔王に踊らされ、守っていたはずの国は知らぬ間に魔王に支配されていたのだ。
ハークたちが魔王軍を壊滅させた魔王事件後、真実は国中に広がった。命すらかけてきた彼。真実を知った彼の脱力感は想像を絶するものだっただろう。
- << 106 【若き魔法人】 「烈火天上!ひれ伏すがよい!」 トルコ将軍は雄叫びを上げ、剣を振り上げる。業火のような炎が一瞬にして数十人の王国兵を飲み込み、跡形もなく灰へと変える。 「お主一人で、ここら一帯の兵を殺ってしもうたか」 荒い呼吸、浮かび上がる赤々とした血管、逆立つ白髪、話かければ殺されてしまうかのようなトルコ将軍に平然と話かける者がいた。 「城の内部で防衛しようと王国兵は中で守り堅めておるぞい」 「そうか…ゴン殿。そちらは片がついたのでしょうな?」 身につけた銀の装飾が擦れ合い、ジャラジャラと音を立てながら近づいてくる魔法使いにトルコ将軍は冷たい視線を送る。 「恐い恐い。儂まで殺されてしまうわい。心配無用じゃ若造はしばらく動けん動けん」 「止めをささなかったのか…敵を生かせばいつか痛い目を見るぞ」 忠告をゴンは不気味な笑い声で聞き流す。 「まぁよい。お前たち火攻めはもうよい」 火炎瓶を投げる反乱兵は命令を受け、動きを止める。訓練された忠実な兵士たちある。
>> 104
【若き魔法人】
全てを知った彼は国のために闘い死んでいった王国兵の墓碑の前で泣いた。
「俺はまだいい、だが、こいつらは何を誇りにすればいいんだ」と彼は墓碑の前で何度も何度も言った。声は渇れ、涙も渇れようと彼はその前から離れようとしなかった。
国のために命を捨てた戦友たちはあの世で何を想っているのだろうか。
トルコは三日三晩、戦友に詫びた。そして、墓碑の前から離れる時には黒く若々しかった髪の色は抜け、痩せこけ、鬼のような形相となっていた。
それからの彼はまるで何かにとり憑かれようであった。剣術は群を抜き、冷酷非道、まるで鬼神であった。彼が国で一目置かれる存在となるのに時間は要しなかった。そして、将軍となり、国家強化のために革命を起こしたのである。
そう、何者にも支配されることがない軍事国家にするために・・・
彼には騙され死んでいった王国兵の魂が宿っているのかもしれない。
>> 104
【若き魔法人】
「いつから王国兵は軟弱となった!いつからだ!」
烈火の如く剣を振る一人の鬼神がいた。感情さらけ出し、多くの王国兵をその赤…
【若き魔法人】
「烈火天上!ひれ伏すがよい!」
トルコ将軍は雄叫びを上げ、剣を振り上げる。業火のような炎が一瞬にして数十人の王国兵を飲み込み、跡形もなく灰へと変える。
「お主一人で、ここら一帯の兵を殺ってしもうたか」
荒い呼吸、浮かび上がる赤々とした血管、逆立つ白髪、話かければ殺されてしまうかのようなトルコ将軍に平然と話かける者がいた。
「城の内部で防衛しようと王国兵は中で守り堅めておるぞい」
「そうか…ゴン殿。そちらは片がついたのでしょうな?」
身につけた銀の装飾が擦れ合い、ジャラジャラと音を立てながら近づいてくる魔法使いにトルコ将軍は冷たい視線を送る。
「恐い恐い。儂まで殺されてしまうわい。心配無用じゃ若造はしばらく動けん動けん」
「止めをささなかったのか…敵を生かせばいつか痛い目を見るぞ」
忠告をゴンは不気味な笑い声で聞き流す。
「まぁよい。お前たち火攻めはもうよい」
火炎瓶を投げる反乱兵は命令を受け、動きを止める。訓練された忠実な兵士たちある。
>> 106
【若き魔法人】
「石造りの城だ、火はこれ以上役に立つまい。それに我が王になった時、城が灰になっていては困る」
「はっ!」
トルコ将軍は周囲を見渡した。周りでは多くの王国兵が倒れているが、反乱軍は殆どが無傷である。そして、外での闘いが不利とみた王国兵は皆、城の中へと退避していた。今は闘いは休戦状態であった。
「城壁の中に侵入し、王国兵を城の中に追いやった我ら先行隊は十分な成果を上げたと言えよう」
トルコ将軍は剣を突き上げ、炎の玉を天に向けて放つ。夜空に炎の玉は目立ち遠くからでもはっきり見てとれる。
「将軍からの合図だ!本隊出撃!」
その炎の玉を確認し、城から少し離れた林の中から雄叫びを上げ、数千人の反乱兵が城に向けて一目散に走り始めた。
「本隊は五分で到着する。合流しだい、城の108個の扉から一斉に突撃せよ。目指すは最上階の王の間だ」
『うおぉぉぉ!!』
トルコ将軍の指揮を受け、反乱兵たちは雄叫びを上げ、剣を高々と突き上げた。
>> 107
【若き魔法人】
「くっ…ファ!!」
ハークは力を振り絞り、這ってファの元にいく。血は乾き、既に息はしていなかった。
「くそっ!なんで!大賢者になるんじゃなかったのか!死ぬな!目を覚まして下さい!」
身体を揺するが、どんなに激しく揺すってもファが目を開けることはなかった。いつもなら憎たらしく暴言吐くファはそこにおらず、いるのは静かに眠るファ。穏やかな死に顔であった。
「私がもっとしっかりしていたら…」
いつも言い争ってばかりだったが、ハークにとって数少ない心許せる人物であったのは間違いない。
「ファ…」
大粒の涙がハークの頬を垂れる。しかし、哀しみは直ぐに打ち消され、ゴンへの憎しみで頭が一杯になった。そして、同時に己の不甲斐なさに苛立ちを感じていた。
「借りますよ…仇をとってきます」
ファの懐から杖を取り出し、強く握り締めると呪文を唱える。感情に高まりからか、毒の効力が弱まり、魔力を練ることもできるようになっていた。
「闇の賢者ファ。貴方は偉大な魔法使いでした」
浄化の魔法で毒を一掃したハークは力強く立ち上がると自分のマントをファに優しい被せてやる。
>> 108
【若き魔法人】
ウオオオオオオ!!
「どうやら本隊が到着したようだな」
開かれた城門から無数の兵士たちが雄叫びを上げ入ってくる。トルコ将軍は反乱兵に《待て》の合間を出し、ゴンにアイコンタクトを送る。
「さてさて。この国に幕を下ろすかのう」
ゴンは地鳴りのような呪文を唱え始める。するとゴンの周囲には黒い霧のような物が現れた。それは一息吸うだけで屈強な男が絶命するほどの毒の霧であった。
「ひょひょ。いくら扉を堅めようとて…毒霧の侵入は防げまい」
城では内側から全ての扉に杭を打ち、城中の物をかき集め、バリケードを築いていた。だが、ゴンの魔法の前では無力に等しいだろう。
「ほれ、たっぷり命を吸っておいで」
毒の霧は蜂の群れが攻撃する時のように大きく広がった。その瞬間、突如発生した強風に毒の霧は吹き飛ばされ、反乱兵のもとへ運ばれる。多くの反乱兵は訳も分からぬまま悲鳴を上げ倒れていく。
「なに!?」
ゴンは強風に煽られながらも棟の天辺に立つ一人の者に視線を送る。金色に輝く魔力を放ち、風がその者を宙に運ぶ。
「何者じゃ!何者じゃて!」
ゴンが激怒する中、その者は天高く登っていく・・・
>> 109
【若き魔法人】
「奴が術者か…だから殺しておけば良かったのだ」
月明かりに照され、その者の顔が明らかになる。そう風に生きる者、若き賢人、風の賢者ハークであった。
トルコ将軍は鼻で笑い、顔を真っ赤にするゴンを見た。
「うう…こんな短時間で儂の毒を克服するとは…予想以上にやり手かも知れぬ知れぬぞ」
ゴンは毒霧を再び発生させ、その上に乗るとハーク同様に天高く登っていく。
「お前たち、この国で1・2を争う魔法使いの闘いが始まるぞ。良い余興になろう…」
トルコ将軍はそう言うと天を見やげて腕を組んだ。反乱兵は微動だにせず、直立する。
「千里眼の賢者ゴン。覚悟されよ」
「儂の邪魔をしよって…それほどまで早く死にたいとはの!!」
賢者二人は杖を向け合う。お互いの魔力は衝突し、激しい魔力の渦が起こる。
「二度の敗北を味あわせやるわい」
移動魔法と分身魔法を連発し、ゴンは空一面に分身を作り、瞬時に移動していく。地上では反乱兵から小さな歓声が起こった。
「もう小細工は通用しない!!」
「なっなんと」
ハークはそう言うと無数のかまいたちを発生させ、分身を一掃する。
>> 110
【若き魔法人】
「こしゃくな」
ゴンは先程の毒霧より濃く巨大な霧を発生させる。
「無駄だ」
が、一瞬にしてかき消されてしまった。ハークは鋭い眼光でゴンを睨みつける。
「やりよるのぅ。国王が特別扱いするのもちた分かる分かる…」
意味深な笑みを浮かべ、天を仰ぐ。すると城の真上にはどす黒い雲が現れ、月は厚い雲に覆われてしまう。
「今、降伏するなら命まではとりません。どうしますか?」
突風が渦となり、ハークの周りを駆け巡る。
「若造が!!わしをなめるな!!」
眼を見開き、古の呪文を唱え始める。それの意味を素早く察知したハークは神経を集中する。
「呪い殺してやるわ!!」
「くっ」
心臓が激しい鼓動する。ハークは思わず、胸を押さえる。
「古の呪いか…術者とてただではすまないぞ」
「この老体、革命のために捨てても惜しくないわ」
両者の体力は徐々に蝕まれてゆく・・・
>> 111
【若き魔法人】
現代、使われている魔法は古の時代に築かれたほんの一部である。多くの魔法は時の流れとともに人々の記憶から消えてしまった。
世界に多くあっただろう古代魔法を記した書物は…なぜか世界から消えてしまっており、今や残っているのはほんの僅かだ。
しかし、その常識では考えられない強力な古代魔法を追い求める者は多い。
「死ね!死ね!貴様なぞ!!」
そんな者たちを『狂信者』と人々は言う。彼らは古代文字の魅力(魔力)に飲み込まれ、次第に精神が崩壊し自我を失っていくのだ。
「私は風の賢者!簡単にはやられはしないぞ!」
狂信者を見た人々は言った。
我らは古代魔法は失ったのではなく、我らが捨てたのだと。
決して、手を出してはならない。古代魔法は魔法の裏側、悪魔の力なのだと・・・・
>> 112
【若き魔法人】
「人は人を呪い、人々は人を恐れた。そして、世界は終末を迎えるだろう」
トルコ将軍は瞳を閉じて、そう口にした。それはダンテスティン国に古くから伝わる言葉であった。魔法人口最盛期、この時代の人々は魔法の発展のため研究を重ねた。失われた古代魔法が再び、世界に放たれたのもこの時代である。しかし、古代魔法を研究すればするほど世界の均衡が失われていった。もちろん魔法界が古代魔法の使用・研究を禁忌するのに時間は要しなかった。
そんな時代に詠われた言葉。
「儂は世界に再び、禁忌魔法を広げるのだ!そのために国を概念を改革せねばならん!邪魔するな!」
「私は屈することはない…ッ!私がこの国を守る!」
荒い息づかいで、両者は胸を押さえる。気を少しでも緩めた方が、命を失うだろう。
お互いに杖を向け会い動かない両者だが、確実に闘いの決着が近づいているのは確かだった。
>> 113
【若き魔法人】
「私は…悪に呑まれた者の末路を知っている。お前が手にしたい世界は破滅しかない」
魔力を使い果たしたゴンはもはや人の形相とは思えず、醜い化物と化していた。今のハークの言葉は聞こえていないのかもしれない。
「死ね…なぜ…儂が貴様のようなこわっぱに…」
「ゴン殿、貴方は魔王の誘惑に負けられた。そうですね?」
哀しそうに問うハークだったが、返事は返ってはこなかった。
ゴンの肉体は砂へ変わり、夜空へ舞っていく。哀れみの眼でハークはそれを見つめた。
千里眼の賢者、ゴン。王の信頼も厚く、国への忠誠心も強かった。だが、なぜ彼が反乱を起こしたのか。
地下に眠る魔王の誘惑に負けてしまったのかもれない。
「ほぅ。やるな」
「なっ!!」
一戦の終止も束の間、背後からトルコ将軍の斬撃が襲う。ハークはなんとか紙一重で避けることができたが、バランスを崩し、地上へと落下してしまう。
「今度は俺様じきじきに相手してやる」
天に舞うトルコ将軍。
背中には大きな黒い翼が羽ばたいていた・・・
>> 114
【若き魔法人】
「とらえよ」
黒き翼を携え、夜空に舞うトルコ将軍の指示を受け、反乱兵はハークを取り押えにかかる。
一斉に群がってくる反乱兵の群衆、ハークは衝撃波を放ち、向かってくる敵を片っ端から吹き飛ばす。しかし、数に圧倒的され、徐々にハークは取り囲まれていく。
多勢に無勢、まさに今のハークの状態であった。向かってくる槍・矢・剣から身を守りながら敵をねじ伏せていくが、反乱軍を全滅させる前に魔力・体力が底をつくのは明らかだった。
「己の存在が如何に無理か。分かっているのか?風の賢者よ」
反乱兵の叫び声の中、こだまするトルコ将軍の声はハークの耳に確かに届いていた。
「無駄なのだ。貴様の努力など…例え、我らを倒し、この国を救ってみせたところで何になる?」
「貴様はなにを得ると言うのだ?」
「国はお前に何をしてくれる?」
「本当に友を失ってまでするべきことだったか?」
「救うにあたいする国か?」
「考えてみろ…国を救っても救ったと言う栄光しか手に入らん、あってないようなものではないか」
「考えよ」
>> 115
【若き魔法人】
「救う価値があるかないか、見返りがなにかなんて、私には関係ない」
幾多の敵に囲まれ、敵の武器から逃れるだけでも精一杯であるはずなのに、ハークの闘志は決して消えてはいなかった。窮地に陥ろうとその眼の奧にある強い意思が揺らぐことはない。
「人を守るのに理由などいらない。信念に従い私は行動しているだけだ」
「笑止、貴様は所詮は偽善者よ。いや、国と共に滅びの道を選ぶ愚か者だな」
高らかにトルコ将軍は言い放った。その時であるダンテスティン城の周りに巨大な魔法陣が現れたのだ。金色に輝く魔法陣は城を取り囲む反乱兵すらすっぽりっと覆い、強大な魔力を放っている。
「こッこれは…」
上空にいたことで、唯一、魔法陣の全貌を傍観できたトルコ将軍は言葉を失っていた。
足元に突如現れた魔法陣に反乱兵は困惑し、どよめき上げ隊列を乱していく。
「時は満ちた。風と闇の斬撃をその身に受けられよ」
「貴様ぁ!!」
巨大なそれに圧倒されていたトルコ将軍はよくやく我にかえり、流星のごとくハークへと襲いかかった。しかし、時既に遅し、魔法陣は眩い光へと変わっていく。
>> 116
【若き魔法人】
「烈火天上!!」
炎の爆撃がハークを襲った。辺りが閃光に包まれていく中、迅速にかつ冷静に術士を捉えにかかったトルコ将軍。防御魔法で爆撃を受け止めたハークだったが、爆煙と閃光を隠れみのにし、目の前に現れたトルコ将軍の剣撃は避けきれなかった。
「くっ!!」
杖の水晶を砕かれ、喉元に赤々と燃えるような赤剣をつきつけられる。
「終わりだ。最後の反撃すらならんだな…う!?」
魔法の中枢を担う杖の水晶を破壊することは魔法自体を打ち消すも同然である。簡易魔法ならまだしも、このような大規模な魔法は杖(水晶)がなくては魔法すら成り立たないと言ってもよい。しかし、トルコ将軍の思惑には反し、水晶を打ち砕いたにも関わらず、魔法陣の輝きは消えない。
「なぜだ!!」
「貴方が水晶を狙ってくるのはよんでいました。ですから、この友人の杖をオトリに使いました。貴方を地上に引寄せるためにね」
トルコ将軍はまっけらかんとそう言うハークに呆気にとられ、またしても言葉を失う。
>> 117
【若き魔法人】
「アレが私の杖です。ゴン殿を倒した時、あそこに落ちたんですよ」
反乱兵の足元をハークが指差す。そこには眩い光を放つ木製の杖があった。
「貴様ぁ…魔法の発動をわざと遅らせ、私に襲う時間を作ったのか…?」
「えぇ。貴方が剣撃を放つ前に発動することはできました。しかし、この魔法を使えば私は魔力を使い果たすでしょう。そうなれば上空の貴方を仕留められない。だから貴方を仕留めるために貴方をこちらに引き込む必要があったんです」
「餓鬼と思っていたが…」
トルコ将軍は剣を突く。喉元を捉えていたはずの剣はハークの横に大きくそれる。
「くっ!貴様に国は救えん!この国は私が救うのだ…!」
鎌のような漆黒の刃が地表から現れ、トルコ将軍の剣を弾いたのだ。周りにも無数の刃が現れ、反乱兵を襲っている。
「貴方の負けです。トルコ将軍」
「うおぉぉぉ!!!」
一軍の将の雄叫びは悲鳴をかき消し、虚しく響いた。そして、漆黒の刃が重なり合い、また渦となり、城の周りを風のように駆け巡ったのだった・・・
>> 118
【若き魔法人】
「平和ぼけ…した…貴様らでは…国は守れん…非道…ぐらいの国の再構築が…ひ…必要なのだ」
辺りは静寂に包まれていた。ハークの大魔法は反乱兵を崩壊寸前までにし、トルコ将軍すら瀕死状態となっていた。
「私に…しか…できん…私が…く…に…を」
トルコ将軍は身体を無理矢理に動かし、血を垂らしながら魔力を使い果たし倒れ込むハークへと一歩ずつ近づいていく。
「貴様…の…ような…や…計画…を…つぶ…され…る…このま…ま…では…おわ…らさん」
意識が遠退く中、トルコ将軍は剣を振り上げる。そして、渾身の力を剣へと注ぎ込んでいく。
『今だ!反乱軍への追撃だ!撃ってでよ!』
『うおおぉぉぉ!!!』
静寂を破る国王兵の雄叫びが、王の号令により城内より起こった。トルコ将軍は驚き隠せないようすで、尻餅をつき、同時に城から王国兵が飛び出してきたのだ。
殆どの者が手傷をおった反乱軍の中を怒涛の勢いで王国の騎馬隊が駆ける。もはや、勝負にはならなかった反乱兵の抵抗も虚しく、一瞬のうちに決着はついた。
>> 119
【若き魔法人】
「王にまだ…兵を…率いる…力が…残っているとは」
トルコ将軍は倒れたまま、そう口にすると夜空に顔を出した太陽を見てこう呟いた。
「希望の光か…」
それを最後にトルコ将軍は動かなくなった。周りでは戦いは完全に決着し、降伏した多くの反乱兵が連行されていく。
「ハーク!大丈夫か!」
倒れたハークへと国王が駆け寄り、息があるのを確認すると安堵の息を吐く。直ぐ様、兵に命令し、回復魔法を唱えに魔法使いがやってくる。
「王、私は大事な友人を失ってしまいました…」
「国はその犠牲のお陰で、救われたのだ。悔やむことはない…」
国王に抱えられながら、ハークは虚ろな瞳で太陽を見つめた。
「お前は英雄だ。よくやった…ゆっくりと休むがよい」
ファが残した魔法布石がなければ反乱軍に勝利することはできなかった。国を救えなかったのだ。しかし、称えられるべき人物はここにはもういない。目的はなんであれ、あれほどまで人力を尽くした者が光を浴びることができないとは。
闇の賢者ファ。
栄光と言う光に当たれぬまま、その生涯を全うしたのだ。
「ファ…」
ハークは太陽の光を見ながら意識を失しなった・・・
>> 120
【若き魔法人】
ハークにとって魔王事件の次に印象に残っていると言っていい、この反乱の物語。屈指くもまた、この反乱も魔王が元凶となっていた。しかし、魔王の負の連鎖はこれで終わることはなく、これからもハークを苦しめることとなる。
「魔王という強大な力が城の地下にいるかぎり、魔王を取り巻く負の連鎖は断ち切れまい」
ハークは常日頃からこう言うようになったのもこの反乱の後である。魔王を滅ぼすまで、ハークは戦い続けるとそう決心したのもこの時である。
反乱の粛々後、大賢者の一角が無くなり、空いた空席の穴埋めとして、大賢者に任命されたハークは素直に受け入れたのだった。亡きファの意思を継ぎ、大賢者となることで少なからずの餞(ハナムケ)となると想ったからである。
風の大賢者ハークとして名を世界に知らしめた。若くして、大賢者の地位まで上りつめたハークを羨む者、嫉妬する者、反応は様々であった。
少し先に大賢者に就任した同年代キメラとは大賢者就任の儀式で初めて顔合わした。
ハークとキメラ。
出会うべきして、出会った。この二人の運命の歯車もまた、この時期から動き始めたのだった・・・
《完》
>> 79
③「クリス!!」
そう叫びながらセレナは走る。そして、手に強く握られた銀色杖は強く輝き、青々と燃える業火を放った。
①「セレナ!!」
…
《前回までのあらすじ》
宇宙海賊と政府軍は宇宙空間にて壮絶な戦闘を繰り広げていた。しかし、そこに突如、連合艦隊からのX砲が両軍を襲った。
X砲に政府軍が呑まれていく中、援軍としてやってきた超巨大戦艦キングに宇宙海賊艦隊はどうにか収納され、艦隊の壊滅はまのがれたと思ったが、X砲の膨大なエネルギーにキングは押され、黒の惑星へと叩きつけられてしまった。
なんとか、ドグロの機転によりキングに大きな被害ができることなく、また、ハークの力により、船員の人命に被害もなかった。
しかし、キングが再び飛び立つには時間がかかる。連合艦隊が迫ってくる中、事態は刻一刻を争っていた。
状況は更に悪化する。バジリス率いる漆黒鎧部隊がキングへ奇襲攻撃を仕掛けてきたのだ。協会の最強兵器、魔科、リード将軍の部下である軍義・戦義を含む奇襲部隊にクリスたちは苦戦を強いられていた・・・
>> 122
③セレナ「今は忙しいの貴方の相手はまた今度してあげるわ」
④「き……」
砂嵐に呑み込まれたバジリスは何かを言っているようだが、砂嵐の轟音にかき消されクリスたちのところには届かなかった。砂嵐は勢いを増し、明後日の方向へ進んでいく。
①クリス「考えたわね。いくら最新のアンチマジックの鎧をつけ、傷を負わなくてもあのブースターじゃ砂嵐からは逃れられないからね」
クリスは小さくなっていく砂嵐を見て笑った。
ラ・ドル「皆さん!!大変ですよ!連合艦隊がもう目の前に迫ってます」
漆黒鎧兵と高速魔法でなぎ倒しながら走ってくるラ・ドルは空を指差す。空には天を埋め尽くす、数万の連合艦隊が見てとれた。敵方の爆撃も最早、秒読み段階であろう。
「こやつらは我らにお任せを…貴方たちは直ぐに戦艦のシールド区域に入って下さい」
レッガの指示により戦艦から助けにやってきた戦闘員は漆黒鎧兵に向け発砲し、銃撃戦となっている。
⑪リオ「さぁ、皆これに乗って!!」
この隙に鉄を台車に変化させ、リオは手招きする。クリス、セレナ、ラ・ドルの三人は慌てて、飛び乗った。
>> 123
①「これ大丈夫なのか?」
⑪「問題な~し!いっくよ!しっかり捕まっててね!」
見た目は今にも潰れそうな頼りない台車は徐々にスピードを上げていく。
③「リオ…ちょっと、飛ばし過ぎじゃな…」
⑪「大丈夫!大丈夫さぁ~!」
ラ・ドル「スリリングなドライブです…はい」
凄まじいGを受けながら必死に台車にしがみつく三人とはうって変わって、リオは鼻歌を歌いながら軽快に台車を操作している。
①「リオ!前!前!」
突如、目の前に現れた漆黒鎧兵が「ここは通さぬ」と叫びながら立ちはだかった。
⑪「問題な~し」
しかし、避けるどころかスピード更に上げて漆黒鎧兵へ突っ込む。激しく音を上げ、漆黒鎧兵は跳ね飛ばされた。
台車は衝撃を受け、大きく右にそれたが直ぐに体勢を直す。
①「無茶し過ぎだ」
⑪「クリスには言われたくないなぁ」
①「なッ…」
③「ふふ」
台車は軽快に先を進んで行く・・・
>> 124
キングでは凱たちが奇襲部隊との死闘を繰り広げていた・・・
⑦凱「ガイブレイド」
全身にオーラを纏い、身体を一本の槍のように突撃する。向かってくる魔科具を破壊するが、グレーには軽くいなされてしまう。
グレー「軽いな」
凱「やるじゃねぇか」
お互い剣を繰り出す。凄まじい、剣撃の応酬に先に音を上げたのは凱であった。
⑦「っ。なんて剣速だ」
一旦、距離をあけた凱はオーラを剣に集中する。
グレー「そろそろ。止めをさしてやろう」
⑦「そりゃ、こっちの台詞だぜ」
黒魔剣を鞘から抜き、妖刀覇王と黒魔剣を交差させる。
凱「ブレイク」
二刀の剣から繰り出される剣撃を戦義は受け止める。
グレー「くらわ…ぬ!!」
受け止められたかと思われた剣撃だったが、その凄まじい剣圧に耐えかね、戦義は大きく後方へと飛ばされる。
⑦「まだまだ!地・水・火・風!」
黒魔剣からハイエント文字が浮かび上がり、地・水・火・風の精霊たちが凱のオーラへ取り込まれていく。
>> 126
⑤セロ「おいおい!マジかよ!」
剣撃を紙一重で避けたセロは慌てて、逃げる。
戦義「貴様は弱いな。相手をするのもつまらぬ」
セロは魔法弾を放つが、軽く受け止められてしまう。
⑤「全然、くらわないじゃん…」
黄金銃を構えるセロの手は震えていた。魔法弾は自由に撃てるようにはなってはいたが、ゼロ(魔科)を倒した時のような強力な魔法弾は放てないようだ。まだ、黄金銃の使い方をマスターしたとは言い難いセロには戦義はかなり無理な相手であった。
デビル「隙ありぃ」
戦義「ぬ!?」
セロが陽動している間に背後に回ったデビルが髪を伸ばし、戦義の四肢を封じる。
戦義「なんだ。この小動物は…」
デビル「い~だ!おれっちは珍獣王なんだもんねぇだ!」
戦義はそう言ったデビルに目もくれず、四肢を縛る触手のような髪を凄まじい力で切り払うとデビルに剣撃を浴びせる。
⑤「デビル!!」
真っ二つに斬られたデビルは力なくその場に倒れる。セロは慌てて駆けよろうとしたが、目の前に戦義が立ちはだかる。
戦義「次は貴様だ」
⑤「くっ…そ!!」
二丁の黄金銃を連射する。しかし、無数の魔法弾に剣撃を叩き込まれ、全て打ち消されてしまった。
>> 127
戦義「死ぬがよい。か弱き生物よ」
戦義が剣を振り上げる。その瞬間、戦義の全身は黒髪に覆われる。
デビル「おれっちを舐めるなよ!!」
⑤「デビル」
真っ二つにされたデビルは髪を伸ばし、戦義を覆うと締め付けていく。どうやら斬られたのは体毛であったようだ。
⑤「心配させやがって」
『あぁ。無事で良かった』
⑤「うわああぁ…」
セロの背後に黄金に輝く竜がいた。竜は図太い声で話かけてくると腰を抜かしたセロを見て、笑い声を上げる。
『ははは。驚くのも無理はない。私も自分が自分でないみたいで…なんとも不思議な感覚だからな』
⑤「その声は…まさか?キックか?」
竜は頷く。そして、イース星で見た竜の何倍もある身体を振るわせ、翼を広げる。
『デビル、そいつを上に持ち上げられるか?』
デビル「OK」
逃れようとする戦義を触手のような髪で丸め込む、デビルは言われた通りに毛玉のようになった戦義を頭上に持ち上げた。竜、キックは胸を膨らませる・・・
『少し熱いが我慢してくれ』
そうキックが言った瞬間、目を開けていられないような業火が毛玉を飲み込んだ。
その余りの火力に戦義は一瞬にしてその姿を消した。
>> 128
⑤「すげぇ…」
鋭い牙から漏れる火炎に生唾を飲み込むセロは苦笑いを見せる。
⑭「あちらも勝負がつきそうだな」
竜であったキックは一瞬のうちに竜人へと戻ると意味深に竜剣を数秒見つめるとゆっくりと鞘に戻した。
直ぐ近くでは凱とグレーが剣を交えている。
スモッグ「珍しいモノを見せて貰ったぞ。魔科は残すところアヤツだけか」
⑭「そのようで」
九人の魔科を圧倒的な力でねじ伏せたキックは横に現れたスモッグに言う。
スモッグ「奇襲部隊も撤退を始めた。連合艦隊の総攻撃ももう時期に始まるぞ」
⑭「そうですか。ならば我らは打って出るだけです」
スモッグ「ふふ。せいぜい頑張るがいい」
スモッグはそう言い残し、白煙を上げ姿を消した。
>> 129
「全艦、爆撃を開始せよ」
「了解。攻撃開始」
「3・2・1・0、投下」
数万の連合艦隊により、黒の惑星は光を閉ざされていた。
そして、今まさに艦隊からの幾多の爆撃弾が投下されてゆく。
「先行艦は高度を下げ、着陸・出撃に備えよ」
「了解、爆撃終了しだい、着陸体勢に入る」
連合艦隊では通信が行き交い、順次、爆弾の投下が始まっていった。
地上では激しく爆発が起こり、砂に潜む宇宙海賊艦隊を襲う。爆撃は砂を巻き上げ、全てを呑み込み、破壊のかぎりを尽くしていく。
ミスチル「っ…攻撃が始まりました」
⑱ドグロ「言わんでも分かるわ!爆撃が止めば、敵が一気に押し寄せてくるぞ」
激しく衝撃の中、総指令部であるキングの中心部には味方からの途切れ途切れの通信が入っていた。
ミスチル「爆撃に…やられている。艦が続出…です」
⑱「ふんばれ」
爆弾の雨、死の雨は何万人もの銀狼の人々の命を奪いながら一時間以上その猛威をふるったのだった・・・
>> 130
①クリス「なんて…爆撃だ」
キングのシールド圏に退避しているクリスは爆撃の衝撃で膝をつき、天災のような激しい地揺れに立つことすら出来ずにいた。
③「あぁ…ひどいわ…皆が…」
セレナはクリスの傍らで銀狼の戦闘員に支えられながら泣き崩れていた。この戦いの旅を通し、賢者並みの力手にしたセレナ、しかし、皮肉にもその力(魔力)のせいで、爆撃で死にゆく銀狼の人々の《死》が手にとるように分かってしまうのだ。悲鳴が頭の中で木霊(コダマ)し、人々の恐怖がセレナに入ってきていた。
①「セレナ、今は耐えるんだ。皆の死は無駄にはしない」
鞘から剣を抜き、胸に剣を当て誓いを立てるように言う。圧倒的な兵力の差など気にもせず、クリスは戦いの勝利を確信していた。己を信じ、仲間を信じる想いはクリスにその実力以上の力を引き出していた。
③「クリス…」
(クリスのように強くなりたい。強く、優しい彼女のように…恐怖に怯むことなく立ち向かう彼女のようになりたい…)
銀狼を指揮するクリスを見つめながらセレナはそんなことを想っていた。
>> 131
爆煙が辺りを包む中、先程までの爆撃は止み、一瞬の静寂となっていた。
①「くる…皆!戦闘準備をとれ!」
「はっ…」
クリスは冷静さを失い困惑する銀狼隊に指令を出す、と同時に夥(オビタダ)しい機械音が四方から響いてきた。 爆煙を切り裂くように現れたのは巨大な黒玉であった。
「なっなんだ!」
①「最新型の敵船だ!しっかり!銃をかまえろ!」
無数の敵船はただ重量に沿って、地表へ落下していく。そして、敵船のハッチが開き、物々しいマスクを装着した連合兵が続々と降りてくる。
①「連合兵をキングへ近づけるな!」
「おぉ~!!」
レザーが飛び交う中、クリスは先頭をきって、敵兵へと駆けていった・・・
>> 132
グレー「やるな…我々(協会)のデータ以上の力だった…ぞ」
凱の渾身の剣撃を受け、ついに倒れ込むグレーは最後にそう言って動かなくなった。
⑦凱「…」
凱は剣を垂れ下げ、力なく今まで、死闘を繰り広げていた敵を見下ろす。
凱は今…
不思議な感覚であった。
まるで自分の身体が変わってしまったのではないか不安すらよぎる。
戦う時点ではグレーに遠く及ばない実力であった。しかし、戦う内に気づけば凱が上回っていた・・・
銀狼の血が覚醒してから己の力が格段に上がっているのが分かる。しかし、余りの急成長に凱がついていけずにいた。自分の成長に置いていかれるなんとも不思議な感覚である。
⑭キック「やったな」
⑦「あぁ。まだこれからだけどな」
グレーとの決着がついた同時刻、外では無数の黒玉の敵船が落下してきていた。
⑭「私はクリスたち(地上部隊)と合流する。凱はどうする?」
⑦「俺はシャードで狩りに出るぜ。ナナの奴、ちゃんと整備してるといいんだがな」
⑤「俺らはキックについていくよ」
嫌がるデビルを抱っこしながら窓越しから外の戦慄する風景に生唾を呑むセロがそう言うと苦笑いをした。
⑦「まぁ皆、死なね~ようにな」
>> 133
爆撃から戦闘は銃撃戦となっていた。だが、相変わらず、一方的な戦況は変わっていない。
爆撃による被害は深刻であり、宇宙海賊の戦艦の大多数はバリヤーにエネルギーを使い込み、直ぐに飛び立つことができずにいた。
連合軍は動けぬ戦艦に幾万もの地上部隊を投入し、戦艦もろともキングの落城を考えていた。
「撃て!撃て!怯むな!」
「右方向から新たな敵兵」
「くそ…!!」
「上空から敵の援軍!」
「なんて…数だ…」
仲間が次々に撃ち抜かれていく中、銀狼部隊は疲弊し、戦艦へ後退を余儀なくされているが…
後退すれば袋の鼠である。戦艦のエネルギーチャージ完了まで時間を稼ぐ必要があった。
銀狼の地上部隊は全滅しようとその任務を遂行するため、誰一人と前に持ち場を離れることはなかった。
「おぉ。やってるやってる…ぐふふ。死んでる死んでるねぇ」
そんな戦況を見つめる男いた。腰には鞭を携えているが、あまりの長さのため鞭を全身に巻き、まるで包帯人間のようである。
>> 134
「コイル中将チャンは…あらら?オーラが感じられないねぇ。死んじゃったかなぁ…ぐふふ」
大げさな素振りで辺りを見渡す。この鞭男、ベンガル中将はウマンダ星より、今回の連合艦隊に配備された7大中将の一人である。7大中将はキメラ将軍より、ウマンダ星を死守することを命じられていたが、ベンガル中将のたっての希望により唯一、この星に派遣されたのであった。
「コイル中将、かってな行動して無駄死にとは…ぐふふ」
ベンガル中将は鞭を掴むと下で闘う兵士たちを見つめる。
「リード将軍にこの戦いの手柄はやらない。私一人で宇宙海賊など壊滅してくれるは…ぐふふ」
ベンガル中将が鞭を放った瞬間、一瞬にして辺りの兵士は細切れとなり、その場は血の海となった。
「さぁお山の大将を殺しにいきましょうか」
鞭がうねり、乾いた音が辺りに響く。ベンガル中将はただ真っ直ぐキングへと向かっていく。敵味方、関係なしになぎ倒しながら・・・
>> 135
⑪リオ「クリスの奴!またあんな無茶して!」
前線から飛び出し、敵軍に単身、突っ込んでいくクリスを心配するリオは溜め息混じりにそう漏らした。横で作業するラ・ドルはそれを見て笑う。
ラ・ドル「あれが彼女なりの戦い方なんでしょう」
⑪「まぁね。でもなぁ…」
豪腕の銀狼により、キングから鉄が山のように運ばれてくる。それにリオが錬金術を施し、バリケードへと変える。また、それをラ・ドルが魔法で銀狼の防衛線に移動させていた。この二人の作業に鉄を運ぶ、銀狼たちがついていけないほど息の合った動きである。
ラ・ドル「とにかく我々は、彼女たちをサポートするのに専念しましょう」
⑪「了解ッ!!」
ラ・ドル「よ!」
⑪「とお!」
妙な掛け声と機敏な動きにより、劣勢の銀狼隊にバリケードが送られいく。
>> 136
「なんだ!この女は!ぐぁ!」
①「神の怒りを知れ」
「なっ」
銃弾の嵐の中、クリスはその全ての動きを見切り、なんなく敵を斬り倒していく。連合兵は一瞬にして隊列の中に割って入ってくるクリスに成す術もない。もっともクリスの動きについていける一般兵など、この世界にはいないのだが・・・
①「連合軍も落ちたものだ。数だけで兵の統率すらとれていない」
的確に敵を仕留めていくクリスの動きには一片の無駄はない。悪く言えば、待ち受ける敵将との戦いに備え、無駄な力は一切使えないほど彼女には余裕がないのかもしれない。
①「あれは…」
クリスは前方の敵軍から悪寒とともに血の飛沫と悲鳴が、近づいてくるのを感じ咄嗟に身を引いた。
①「なんなの…この強大なオーラは…」
『恐れ』などクリスにとっては兄以外には抱かない感情であるにも関わらず、それが近づいてくるにつれ、身体が小刻みに震えるのであった。
>> 137
①「な…」
一瞬、乾いた破裂音が辺りに響き、暫くし、空から血の雨が降ってくる。クリスは訳が分からないまま、血まみれになり、呆然と周りを見渡す。周りにいた数多くの兵士たちは誰一人立っているものはおらず、ただ、その場に横たわっていた。
ベンガル「大戦の英雄、クリス殿。お初にお目にかかります。我、連合軍、7大中将ベンガルと申します」
そう言って、無表情で一人の男が戦場の中にできた無の空間を静かに歩いてくる。
①「中将…」
(これほどの力で…まだ中将だと!?)
ベンガル「また、通称は《血の死神》とも呼ばれているがね…ぐふふ」
血がついた鞭を全身に巻いているため、真っ赤に染まった男はまさに彼が言うように《死神》を連想させた。
①「コイル中将の仇討ちにでも…きたか」
剣を構え、コイル中将を倒した際の記憶をよび起こす。
ベンガル「仇討ち。おあいにく…ぐふふ…我らはそのような仲よしグループではないのでね。中将は野望の塊のような人間ばかり、我らはお互いが邪魔で仕方ないのですよ」
>> 138
①「風よ!!」
ベンガル「させませんよ」
ベンガルは鞭を振るう、クリスは咄嗟に後方へと身を避けるが、鞭は一瞬にしてクリスの四肢を封じる。
①「くっ…」
ベンガル「貴方は素早さが売りのようですが…私の鞭は音速をも超える。人では反応すらできませんよ」
鞭をしならせる。クリスはその衝撃を受け、その場に叩きつけられてしまう。
ベンガル「おやおや。無様な姿だ。英雄とちまたでは騒がれている貴方たちだが…その程度とは…」
①「私は負けるわけにはいない。こんなところで!」
ゆっくりと立ち上がるクリスはその身体に風を纏わせていく。
ベンガル「無駄です。私の鞭に捕まったが最後、手足引きちぎるまで離しませんよ!ぐふふ!」
>> 139
ベンガル「ぬ!!」
突如、無数の炎の弾丸が、ベンガルが襲う。ベンガルはクリスを鞭から解放し、鞭を束とし、全ての炎の弾丸を弾き飛ばすと不機嫌そうに舌打ちをした。
①「あなた…」
身体が自由となり、素早くベンガルから距離をとるクリスは天から舞い降りた女を見つめる。
カリーナ「大丈夫か。うちらが来たからにはもう安心やで」
賞金稼ぎ7のメンバー、カリーナは颯爽と着地するとベンガルに向かって、拳を突き付ける。そして、カリーナの横には狐人が現れ、クリスに一瞥の冷たい視線を送ると鞘から剣を抜く。
隼「頭(カシラ)からの命令だ。ここは我らに任せ、お前はキングへ戻れ」
①「コイツは私の敵だ。私も戦う」
カリーナ「隼、そんな言い方したあかんってば。クリス、敵方の大将がじきに仕掛けてくるさかい、あんたはキングの守備に回るんや、こないな雑魚はうちに任せな」
①「しかし…」
会話に割って入ってくるようにベンガルの鞭が三人を襲う、三人は素早く鞭から身をかわすと臨戦態勢をとる。
ベンガル「この私を雑魚扱いとは…貴方、いい死にかたはしませんよ」
カリーナ「早よ!いき!」
①「くっ。すまない」
>> 140
⑦凱「こりゃ…ひでぇな」
銀狼の戦闘員が行き交う中を凱は走っていた。周りでは爆音が響き、担架で負傷兵が絶え間なく運び込まれている。
⑦「シャドーの奴が無事だといいんだが」
凱がいる格納庫は幾つかのハッチが爆撃で吹き飛び、火災がいたるところに発生していた。消火活動をする銀狼は次から次へと広がる火の手にどうすることも出来ずにいる。
ナナ「凱!こっちだ!」
人混みの中、銀色のマントを身に付け、一際目立つナナは凱を見つけ、手を振っていた。ナナの傍らには巨漢のヤンとザックが控えており、混乱の中、行き交う人々からナナを守っている。
⑦「ナナ、今まで何処ほっつき歩いてたんだ」
ナナ「そう言うな。この短期間でパーツを揃えて、修理するのは大変だったんだぞ」
ナナは自慢気に笑うと、ある一点を指差した。そこには銀白色の輝きが一層、強さを増したシャドーmkⅢがいた。
>> 141
ナナ「代金はしっかり請求させて貰うからな」
⑦「ちッ、ちゃっかりしてる奴だぜ」
請求書をチラつかせるナナから請求書を手荒く奪うと、凱はシャドーmkⅢへと駆けていく。
ナナ「おい…あ…ちょっと待て。ったく」
言葉を交わす間もなく、シャドーmkⅢに駆け込んでいく凱にナナは呆れると両脇に控える二人の顔を見て、目を細めた。
ザック「……」
ヤン「ガハハハ」
三人は凱が乗り込むのを見届けると銀狼の人混みへと消えていった。
⑦「シャドー!発進だ!」
乗り込むやいなや座席に座る。しかし、普段ない違和感に横に目をやると、大げさなヘルメットを被ったローナが笑っていた。
⑦「な…なんでいるんだ?」
ローナ「あら?私がいると不満かしら?」
小人族であるローナは一見、少女のように見える。しかし、その実態は数百歳であり、召喚魔術の使い手、賞金稼ぎ7、随一の頭脳派である。
ローナ「頭(カシラ)が補助として付いてやれって、だからお供致しますわ。凱ッチ」
⑦「う…」
シャド「ガイノ ニガテナ タイプダネ」
⑦「うせぇ!怪我してもしらねぇぜ!」
ローナ「ふふ。御気遣いなく」
>> 142
戦況は連合軍に傾くばかりであった。
宇宙から膨大な連合戦艦が舞い降り、宇宙海賊艦隊は次々に撃墜されていた。最早、空は連合軍の戦艦で一色に染まっている。
爆撃に押さえ込まれ、離陸すら出来ない宇宙海賊艦隊は投下される数百万の連合部隊との地上戦をやむ無くされていた。
地上では本来の力の半分も発揮できない艦隊、キングすら、ただの良い的となっていた。
「強大な力の前では…希望の光すら見ることは出来ぬのか」
強大な連合艦隊に光は閉ざされ、地上は闇に覆われていた。
そんな中、戦況を眺める賢人がいた。地の大賢者、オジオンである。彼の老いて尚も凛々しさがある顔立ち、その力強く澄んだ瞳、汚れのない純白のローブに杖、まさに聖人を思わせる人物である。
「魔法界すら、お前を止まることは出来ぬ…彼らが最後の希望…しかし、その光もこの戦いで消えゆくのか」
しかし、そんなオジオンすら埋もれてしまう闇がいた。
一辺の光すら通さない、闇がいた。
リード「魔法界は成す術なく、消えゆく存在…」
風の流れが止まる。
オジオンは背後に現れた闇に目を背け、天を仰ぐ。
オジオン「超えるか我らを」
>> 143
⑯リード「見よ、見るがよい。これが我ら…これが新たな力」
リードはその両手に持った二本の杖を交差させ、呪文を唱える。
凄まじい魔力が辺りに立ち込め、四方の戦艦が握り潰されたようにへしゃげていく。そして、鉄屑と化した無数の戦艦がリードの頭上に集まり、形を成していく。それは人間のような形を形成し、キングすら真っ二つに出来てしまいそうな大剣を携えていた。
戦況に突如現れた強大な物体に両軍は混乱し、逃げまどう。
⑯「軍義、戦義よ。我が力、存分に使うがよい」
『このような肉体を与えられ、有り難き、幸せ。将軍の御意のままに』
戦艦の塊であるソレは声を発し、ゆっくりと歩を進め始める。一歩進む度に、地は揺れ、耳を塞ぎたくような轟音を上げながらキングへとソレは進んでいく。
⑯「さぁ、止めてみよ。我らを…新たな力を」
オジオン「この老体、世界の為なら惜しくはない。貴様のおもうようにはさせぬぞ」
オジオンは金色の光を放ち、一筋の閃光となり、巨大なソレに向かっていく。
その目は光を見つめていた。
>> 144
⑦アル「なんだ…ありゃ!うおぉ!」
戦場の中を飛ぶシャドーmkⅢは突如、現れた巨大な物体から紙一重で機体を反らす。
ローナ「きゃぁ!」
余りに巨大なその物体。それが一体、何んなのか近くにいるシャドーmkⅢからは知ることが出来ない。
⑦「ちッ、味方ではないのは確かだけどよぉ」
凱は素早くハンドルを切る、物体が動き出し、シャドーmkⅢが危うく巻き込まれるところであったが、凱の機転で船は物体から逃れる。
ローナ「これは魔法よ。この強大な力…おそらく敵将のリード将軍だわ」
激しく左右に振られながらローナは叫んだ。凱は歯を食いしばりながら物体からやっと距離をとると物体の全貌を見て驚愕する。
⑦「こいつは…」
それ(物体)は、キングで戦った白仮面の剣士と似た外貌であった。唯一、大きく違うのはその大きさだけである。
⑦「マジかよ。こんな化物とどうやって戦えってんだ…」
ローナ「ウソでしょう…これ…戦艦で出来てるわ…な…なんてこと」
物体は戦艦が重なり合った集合体であった。一体、これに何れだけの人々が犠牲になったのだろうか。
>> 145
物体は地上の戦闘車両・砲弾をまるで玩具でも壊すように踏み潰し、戦場を力任せに進んでいく。
そんな縦横無尽の物体にシャドーmkⅢもただ周りを旋回することしか出来ずにいた。そうこうしている間にも物体は確実にキングへと近づいていく。
ローナ「あれは…なに!?」
そんな中、激しい振動にやっとの思いで捕まっていたローナが指を指し叫んだ。
⑦凱「どうした?」
ローナ「三時の方角、レザーには映ってないけど…ほら!アレ!」
シャドーmkⅢの横を金色に輝く光が高速で通り過ぎていく。光は鳥のように飛び、同じく物体の周りを旋回し始める。
ローナ「敵船かしら」
⑦「あんな動きは戦闘機じゃできねぇよ。あれは魔導の技だ」
シャドーmkⅢは道を譲るように物体から離れる。
⑦「誰かはしらねぇが…どうやらコイツの相手をしてくれるようだぜ」
光は輝きを増し、物体へと突っ込んでいく。物体は悲鳴のよえな大きな音を上げる。そして、光は物体を貫通すると再び、物体へと突っ込んでいく。それを繰り返すうちに物体の歩みは止まっていた。
⑦「今のうちに術者を見つけだすぞ!!」
「リョウカイ」
>> 146
①「な…なんだ…アレは…」
キングへと戻った矢先に突如、遠方に現れた巨大な物体にクリスは目を奪われていた。
⑪リオ「あれは魔法だね。とんでもない大魔法だよ」
目を奪われるクリスに背後からリオが話しかけてくる。爆炎でススだらけになった衣服を叩きながら戦場から戻ったクリスを心配して駆け寄ってきたのだった。
①「ッ…」
そんなススだらけの小さな戦士を見て、クリスは頼もしいやら可笑しいやらでつい苦笑してしまう。
⑫「あ~ッ!なに笑ってんだよ!ったく」
ラ・ドル「仲がよろしくて、いいですねぇ」
頭蓋骨を愛撫でしながらやってきたラ・ドルはそんな二人を見て、微笑ましく笑う。
ラ・ドル「ここが戦場でなかったらなおのこと良いのですが…」
キングの外では爆撃が止むことはなく、キングにはおびただしい負傷兵が運ばれてきていた。そんな負傷兵たちに三人は哀しみの目を向ける。
>> 147
①「セレナ!」
負傷兵を治療する看護師たちの中に見馴れた顔があった。
そこには白衣が血で染まり真っ赤となったセレナがいた。
③セレナ「クリス…」
クリスたちに気づき、切りの良いところで治療を終えると、こちらに向け駆け寄ってくる。
ラ・ドル「セレナ姫…お…王女であられる貴方様が、負傷兵の治療など」
ラ・ドルは血塗れの白衣を魔法で、剥ぎ取り、魔導師らしい純白のローブへと変える。
③セレナ「戦場では王女も王も関係ありませんよ」
ラ・ドル「し…しかし」
ミスチル「頼もしいかぎり、気高き姫様。皆様、お集まり戴けたようですな」
銀狼が行き交い混沌する中、銀狼たちが道をあける。やってきたのはドグロの右腕であり、参謀のミスチルであった。傍らにはキックとセロもいる。
ミスチル「事態は深刻です。敵方の将軍が動いた以上、我らも何らかの行動をせぬばなりません」
⑭キック「キング始動には今暫く、時間がかかる。キングが戦場に加われば少しは風向きも変わるだろう。今は一刻でも時間を稼がねばならない…少数精鋭、戦場を駆け抜け、リード将軍を討ちにいくぞ」
キックは力強く言い放つ。
>> 148
ミスチル「つ…つまりはそう言うことです」
言いたいことキックに言われ、不意をつかれたミスチルは言葉を詰まらせながら言う。
ミスチル「姫、そして、嵐の賢者ラ・ドル殿、魔導に長けたお二人ならあの物体の魔法の根源が何処にあるかお分かりになるでしょう?」
③「えぇ…確かに術者の場所はおおよそなら」
物体が進む度に大地は揺れる。
其ほどの巨大な魔法を扱う術者がリード将軍に他ならないのは確かだ。しかし、それは其ほどの魔法を操ることのできる人物であることを裏付けている。
①「勝てる…だろうか。私たちで」
⑭「どのみち、いつかは対峙せねばならない。ハーク殿の回復を待つ時間はない」
力強い口調のキックだが、彼とて勝算があるとは思ってはいない。しかし、逃げだすことは出来ないのだ。戦うしか道は残っていない。
ミスチル「あの魔法はおそらくキングが狙い。キングが破壊されては宇宙海賊に勝利はない…我らがリード将軍の元へ命をかけて貴方たちを送り届ける!!」
ミスチルは屈強な銀狼たちが数十人を率い、戦場へと飛び出す。
③「いきましょう。皆!!」
⑭「勝利を我らの手に!」
①「神のご加護があらんことを」
>> 149
一方、不気味な影はその標的を定めていた…
ベンガル「どこ、いくのですかね。あの女は…ぐふふ」
ベンガル中将は戦場の中、はっきりとクリスの動きを察知していた。体中に巻きつけた鞭についた血を舐め、不気味に身体を震わす。
隼「まて…ま…」
ベンガル「あ?まだ生きてたか…ぐふふ」
力なく剣を支えに立ち上がる狐人は立ち去ろうとするベンガルを呼び止め、傷ついた身体ながら殺気の満ちた視線を送ってくる。
ベンガル「私はなぶり殺しが好きでね。死ぬ寸前で止め…自然と死にゆく様を見るのが好きなのです。この娘のようにね」
ベンガルの足元には全身に傷を負ったカリーナが、今にも絶えそうな息づかいで倒れていた。
隼「ここまで…とは…」
隼は意識を失う最後までベンガルを睨みつけながら倒れ込む。
ベンガル「ゲームオーバー…さようなら」
そんな隼を見て、ベンガルは笑みを浮かべ、手を振り、去っていった…
- << 151 ドゴオォォォォォ… ミスチル「我らが楯となり、道を切り開け!!」 「うおぉ!!」 ミスチルを先頭に銀狼部隊の護衛を受け、一同は爆炎の間を抜けながら戦場を駆け抜けていた。 周りでは連合軍の最新車両が行き交い、宇宙海賊と連合兵との銃撃戦が繰り広げられている。 ⑭「改めてみると凄い数ですね」 ③「これでもまだ氷山の一角にしか過ぎませんよ」 進めば進む程、周りには味方の姿はなくなり、ただ向かってくる連合兵のみとなっていく。多勢に無勢、今のクリスたちは例えるならアリが像の群れに挑むような無謀な状態であった。 ラ・ドル「あの岩の上から強大な魔力が感じられます」 一同の正面、数km先に視界に入ってきた岩石をラ・ドルは指さしながら連合兵をその高速魔法でなぎ倒していく。 ミスチル「おおぉ!私に続けぇええ!」 ミスチルは遠くに見えた目標を確認すると舌打ちをし、悲鳴を上げる身体に鞭うち、手榴弾を投げる。 皆に疲労の色が伺える。連戦連日の戦いにクリスたちと言えど、疲労は隠せないようだ。 岩石までの距離は中々、縮まることはなく、集まってくる連合兵との闘いは熾烈化する一方であった。
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独り言葉
カテ違い つぶやき、です なんなんでしょね こんな つまら…(通りすがりさん0)
33レス 587HIT 通りすがりさん -
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Tell me a bedtime story
宿にチェックインしてから2人でピアノを弾いた。感動して感動して涙が出た…(シェヘラザード)
500レス 1633HIT シェヘラザード (60代 ♀) -
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マインドゲームス~ジョンとヨーコのバラードのその後
最後のレス。例様と私に関するスレを立てよう(シェヘラザード)
500レス 3315HIT 涼夏 名必 年性必
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54レス 2286HIT 恋愛好きさん (40代 女性 ) -
覚醒剤とか何であるの?
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10レス 254HIT 匿名さん -
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アプリで知り合いあい付き合って1年の彼氏がいます。 お互いバツイチで子供もいますが子供も独立してま…
17レス 516HIT 知りたがりさん (40代 女性 ) -
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10レス 247HIT OLさん (20代 女性 ) -
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7レス 195HIT おしゃべり好きさん ( 女性 ) - もっと見る