話つく③ダンテスティン・サーガ~魔法のペンダント~
7つの惑星を舞台に登場人物たちが連合軍と言う巨大組織と闘うストーリーです👮是非、皆さん読んでみて下さい。
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話つく
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話つく②
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>> 150
ドゴオォォォォォ…
ミスチル「我らが楯となり、道を切り開け!!」
「うおぉ!!」
ミスチルを先頭に銀狼部隊の護衛を受け、一同は爆炎の間を抜けながら戦場を駆け抜けていた。
周りでは連合軍の最新車両が行き交い、宇宙海賊と連合兵との銃撃戦が繰り広げられている。
⑭「改めてみると凄い数ですね」
③「これでもまだ氷山の一角にしか過ぎませんよ」
進めば進む程、周りには味方の姿はなくなり、ただ向かってくる連合兵のみとなっていく。多勢に無勢、今のクリスたちは例えるならアリが像の群れに挑むような無謀な状態であった。
ラ・ドル「あの岩の上から強大な魔力が感じられます」
一同の正面、数km先に視界に入ってきた岩石をラ・ドルは指さしながら連合兵をその高速魔法でなぎ倒していく。
ミスチル「おおぉ!私に続けぇええ!」
ミスチルは遠くに見えた目標を確認すると舌打ちをし、悲鳴を上げる身体に鞭うち、手榴弾を投げる。
皆に疲労の色が伺える。連戦連日の戦いにクリスたちと言えど、疲労は隠せないようだ。
岩石までの距離は中々、縮まることはなく、集まってくる連合兵との闘いは熾烈化する一方であった。
>> 151
①クリス「そう言えばデビルはどうしたの?セロ?」
連合兵の銃撃から巧みに身をかわし、その豊かな髪を靡かせながら問いかける。近くで奮闘していたセロは連合兵を黄金銃で撃ち抜きながらクリスと背中を合わせ、絶え絶えの息を整える。
⑤セロ「デビル…なら…ほら」
服をめくり上げ、腹部を見せるとそこには腹巻きのように巻きついたデビルがいた。デビルはクリスが目を丸くして見つめると不機嫌そうに睨み返してくる。
①「デビルったら」
デビル「おれっち、セロに監禁されてんの…うう」
⑤「こうでもしないと勝手にいなくなるだろう」
連合兵のレザー砲が二人を襲う。
直ぐ様、別れる二人。
連合軍の重機兵器がクリスたちを襲っていた。少数のクリスの大胆な行動に後手に回っていた連合兵たちだったが、クリスたちを完全に包囲することに成功していた。
①「囲まれたか…」
連合兵は円形に周りを取り囲み、低姿勢となり銃を構える。
ミスチル「私が岩石まで一気に道をあける。あとは貴方たちに任せましたよ」
ミスチルは唐突にそう言うと剣を天へとかざした…
>> 152
ミスチル「うおぉぉ!!!」
ミスチルは己の出せるだけの全てのオーラを解放する。オーラは剣へと宿り、技となる。
ミスチル「時空暫」
周囲の空間がネジ曲がり、一瞬にして、連合兵が消し飛んでいく。その威力の強さに反して、音が全くしないその技に周りの者全てを黙らせる。
ミスチル「行け…」
周囲が消し飛び、岩石までの道は開かれ、連合兵たちは恐怖からか動きを止める。ミスチルは技の反動で膝をつくと、辛そうな表情で一言だけ言葉を発した。
⑭キック「行くぞ!」
⑫リオ「必殺・車」
リオは錬金の陣を空に描き、連合軍の砲台が車体へと変わる。そこへリオが飛び乗ると他の者も続く。
①「見えた」
クリスはその超高速の走りで、一気に岩石を登りきると杖を天に向ける魔法使いの後ろ姿を見て足を止める。少し遅れて、素早く宙を舞いながらキックがやってくる。
①「お前がリード将軍か」
二本の杖を携えた魔法使いはゆっくりとこちらに振り向く。
⑯リード「いかにも我は連合軍3大将軍、リード将軍である」
人気を感じさせない青白い肌、一切を拒否する冷たい眼、その冷気のような魔力にクリスは蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる。
>> 153
①「くっ…」
剣先が小刻みに震えているのを気づく。己が震えているとそれで初めて認識したクリスは額から冷たい汗が流れ出るのが分かった。
⑭キック「クリス、邪悪なる者と対峙する時は自分の光を失ってはいけない」
リード将軍に睨まれ、動けないクリスの手をそっと手にとったキックはそう力強く言い、リード将軍とクリスの間に入る。
⑭「私は竜王の子キック、竜族の長となるものだ」
竜剣を抜き、大きく回転させると竜人独特の構え、剣を背後に回し構える。
⑯「私の魔力を前にして、剣を向けるとは…流石は竜王の子か」
二本の杖をゆっくりと交差させ、キックへと呪文を唱え始める。
⑭「させるか!龍竜!」
剣を突き出す。放たれたオーラ渦となり、竜の形を形成し、リード将軍へと一直線に向かっていく。
>> 154
⑯リード「醜いな。弱者の足掻きとはなんとも醜い…」
リード将軍の杖から放たれた邪悪な魔力にキックの技はいとも簡単に相殺されてしまった。
⑭「予想以上か」
竜剣を構え、一歩後ろに下がる。キックの中では最上位の技である龍竜すら、リード将軍はまるで蝋燭の火を吹き消すかのように何ら苦もせず消し去ったのだ。
⑭「くそ…ッ」
今のキックの剣術では敵う相手ではないと瞬時にキックは把握するが、竜の力の解放をしようにも上手くはいかない。
⑤セロ「クリス!キック!」
ようやくリオの錬金術で岩石の上まで上がってきた四人が駆けつけてくる。
③セレナ「皆で闘えば勝てるわ」
ラ・ドル「そうです。個の力では勝てなくても皆で団結すれば!!」
リオ「このリオ様の力見せつけてやるよ」
リード将軍の邪魔な魔力はセレナとラ・ドルの聖なる力で打ち消され、場の空気は一気に浄られていく。
⑯リード「小癪な、小わっぱ共が」
凄まじい魔力が放たれる。
今まさに、クリスたちとリード将軍との闘いが始まろうとしていた…
>> 155
⑯リード「貴様らが閣下の志向を邪魔することなどできぬ」
リード将軍は二本の杖を天へと掲げる。天から無数の落雷が落ち、空を飛ぶ、連合艦隊が墜落していく。
ラ・ドル「な…なんという魔力」
①「ち…違い過ぎる」
リード将軍から発せられる魔力に吹き飛ばされそうになり、クリスたちは必死に岩石に掴まる。
⑯「死して、閣下に歯向かった償いとしよ。美しく死ぬがよい」
凄まじい衝撃波と同時に、強大なエネルギー、黒い雷が天から落ちる。
ゴオオオォォォォォ!!
轟音の後に…
静寂が辺りを包む。
大地に大きく盛上った岩石はその姿を変え、雷の衝撃で大きな窪みができていた。
⑯「圧倒的、力の前では全てが無力」
灰となり、辺りは黒一色へと変貌している中、一部、弱く淡い光があった。
そこには負傷したクリスたちと己を楯にして皆を守ったラ・ドルがいた。
ラ・ドルは灰となった杖を手からこぼすと力なく倒れた。
- << 170 ⑪リオ「ラ・ドル!!」 崩れ落ちるように倒れ込むラ・ドルへリオが駆け寄る。 ①クリス「リオ!危ない!」 無我夢中に走るリオにリード将軍が放った闇が襲いかかる。しかし、リオはそれには気づいていない。 ⑪「えッうわぁぁ」 クリスが咄嗟に助けに入るも間に合わず、闇はリオを飲み込み不気味な音を発する。 ③セレナ「あぁ…そんな…」 闇は暫くすると消えてなくなり、痛みつけられ、衣服や装備がずたぼろになったリオが倒れていた。 ⑭キック「くっ!うおぉぉぉ!」 リオの痛々しい姿を見たキックは怒りの余り、単身、リード将軍へと斬りかかる。 ⑯リード「愚民が。己らの力、どれほど無力か…思い知るがいい」 素早く杖を交差させ、光を発する。その光はキックを包み込み、一瞬にして、石へと変えてしまった。 ゴトッ 石となったキックはただ重い音を立てて虚しく地面を転がる。 ①「そんな」 ⑯「さぁ、次は…誰だ?愚かな者どもよ」 リード将軍は冷たい眼差しで、クリスを見つめた。 『圧倒的、力の前では全てが無力』 連合軍との闘いで、多くの敵が発した言葉。 それを覆す為に闘ってきた。 しかし…
>> 156
【タカ伝】
彼は孤独だ。
他とは交わらず、何者にも侵されない。
彼が携える剣にはエルフ族の紋章が絶えることなく光輝いている。
彼の強い意思と同じように…
「なに、賊を倒すことなど大した苦ではない。気にしなくてもいい」
村を荒らしていた盗賊20人を一掃し血塗れになった一人の剣士は、頭を下げる村人たちに言った。
村長らしき男はお礼を手渡そうとするが、剣士は「金の為にしたわけではない」と言って、受けとらず立ち去っていく。
そんな剣士を、物陰から見つめる少女がいた。
少女は目は恐怖を写していた。
剣士はそんな少女を一瞥するとその鍔の大きい帽子を深く被り直す。
「盗賊を見る目と私を見る目は同じか…」
そう独り言を呟いた剣士は斬り捨てた盗賊の死体を避けながら重い足を一歩また一歩と動かし、あてもなく先へと進むのであった。
>> 157
【タカ伝】
世界最強の名を手にした彼に休まる日はない。
その名を奪おうとする者が絶えることなく彼の命を狙ってくるのだ。
彼はそんな刺客たちに襲われながらも祖国であるシーラ星冬国に安らぎを求め、旅を続けていた。
頂点に立つ前は
闘うことが生きがいだった。
生きることは闘うことだった。
闘いの中が死に場所だった。
だが…
必死に目指した終着点、頂点に登ってしまった虚無感は彼を闘いの野獣から人へ変えていた。
世界最強の名すら今の彼には何の価値もなかった。
「災厄、巷では私はそう呼ばれているそうだ」
悪を滅すれば人々から感謝されはするが、けっして、受け入れられはしない。
彼は森の中、腰を下ろし肩に止まった小鳥に話かけるが、小鳥は直ぐに飛んでいってしまう。
「小鳥にも嫌われたか」
微笑む彼だが、目は笑っていない。
>> 158
【タカ伝】
生い茂る木々、葉の間から微かに漏れる太陽光はひんやりとした木の影をほのかに暖めている。
一面、緑一色、そんな中に皮製の衣服に身を包んだ茶色一色の剣士は古びた帽子を傍らに置き、一時の休息を楽しんでいた。
しかし・・・
「もう少しゆっくりしたかったが…」
心地よい小鳥のさえずりが突然と止む、木々はざわめき、小鳥たちが一斉に空へと舞い上がる。
足音もなく無音、気づけば剣士の周りには十数名の妖刀を持つ者たちが現れた。
その者たちは狐のような尻尾を携えた人間、ウマンダ星に住まう狐人と呼ばれる種族たちである。
「フォックス殿の差し金か」
「さよう、我ら族長からの刺客、貴殿の首頂きにきた」
木の影から6本の尻尾を靡かせながら一人の狐人が現れる。
「蟷螂(カマキリ)殿が、お出ましとは」
剣士は剣を抜く。刻まれたエルフ族の紋章は赤く輝いていた。
蟷螂と名指しされた狐族の実質、No2の狐人は微かに口元を緩める。
「確か、貴殿と剣を交えたのは100年ぐらい前でしたな」
「あの時は私も若かった」
二人は剣を交える。
凄まじい音と共に激しい火花が飛び散った。
>> 159
【タカ伝】
「老いを知らぬ、エルフ族の貴方がなぜそのような成りに?」
二人は凄まじい剣速で、剣を繰り出す。
お互いの剣圧で周りの木々を次々に吹き飛ばされていく。
「私にも分からない。ただ、老いていく以上はそう長くは闘えまい。この力、引導を渡すのも近いかもしれないな」
剣士はそう言うと鋭い眼光を蟷螂に向け、その腹部に強烈な剣撃を浴びせる。
「ぐっ…なにを言いなさる…これだけの力があるのに」
致命傷を何とか避けた蟷螂ではあるが、その腹部の軽鎧は裂け、血がにじんでいた。
「敗北して以来、剣術だけで貴殿を倒すため修行を積んだが…やはり剣術だけでは勝てませんな」
蟷螂は剣を口でくわえ、両手を巧みに動かし印を結ぶ、するとみるみる傷は塞がり、蟷螂の肉体は獣のように変化していく。
「妖術か…相変わらず、やっかいだ」
剣士は高く飛び上がる。その瞬間、巨大な狐の化物と化した蟷螂から咆哮が発せられ、それは衝撃波となり、辺り一帯を飲み込んだ。
>> 160
【タカ伝】
「マジかよ…教官(蟷螂)を斬りやがった…しかも教官に妖術を使わすなんてよ」
余りにレベルが違い過ぎる二人の闘いを見守る他の狐人たちの中に一人、狐の尻尾を持たぬ者がいた。
「凱、俺たちはこの闘いを見守るように命令を受けてるだけだ。手を出すんじゃねぇぞ」
尻尾を持たない少年の肩を一人の狐人が押さえつけ、物陰に隠れさせる。
「分かってる!俺だって実力の違いぐらい分かってら!離せよ!砦!」
「いや離さん。貴様のことだ。世界最強の男と一剣ぐらい交えようって考えてるんだろう!」
「あぁ!離せ!コノヤロー!」
「俺たちはペア組まされてる!お前が命令違反すれば!俺も叱られるんだぞ!」
『てめぇ~!!!』
激戦の傍ら言い争う二人はタカと蟷螂など眼中に無く、取っ組み合いを始めたのだった。
>> 161
【タカ伝】
「騒がしいな」
剣士は木から木へ飛び移り、蟷螂から発せられた衝撃波を軽い身のこなしで避けていく。
『逃げてばかりとはらしくない。しかし、何時までも逃げ切れると思うな』
身の毛も弥立つ、牙を携えた巨狐、蟷螂はその大きな口を開ける。その瞬間、前方が一瞬にして消し飛ぶ。
「ッ!!」
剣士は紙一重で破壊波から逃れが、その凄まじい衝撃、爆風に煽られ、バランスを崩す。
『狐妖術、鳳凰!!!』
大地は大きく揺れ、蟷螂から凄まじいオーラが発せられる。
その刹那、
口から放たれたのは炎、
業火の渦、
一帯の空気は
一瞬にして乾燥し
周りにある木々は
灰へと変わる!!
「これは!!狐族の伝わる古の奥義ッ…!!」
バランスを崩した剣士を火の鳥と変わった業火が呑み込む。
業火は剣士を捉えた後もその勢いは止まらず、地平の彼方へと強さを弱まることなく破壊の限りを尽くしていく。
「くっ…」
業火が見えなくなった後、残ったのは焼け野はらであった。
そして、その焼け野はらでただ一人立っていたのは技を放った蟷螂であった。
>> 162
【タカ伝】
「はぁはぁ…力不足か…ッ」
蟷螂は先程の技で体力を使い切ったのか、妖術は解け、狐人の身となりその場に倒れ込むが、直ぐ様、土中から現れた他の狐人たちが抱え上げる。
「世話がやける。鳥、砦!宇宙船まで運んでやれ!」
「はっ。鬼教官!」
鳥と砦と呼ばれた若い狐人は胸に手を当て、返事をすると意識を失った蟷螂を運んでいく。
「あれが、奥義(鳳凰)かよ。すげぇ…あれじゃひとたまりもないな」
「凱か…未熟者が、タカは生きとる!感知術の授業をまたサボったな!」
凱と呼ばれた少年は鬼教官に首を掴み上げられ、怒鳴られる。
「サボってねぇよ。あれは俺の性に合わねぇだけだ!そんなことより…タカの留めはささなくていいのかよ!」
「蟷螂の最高の技を受け、倒せなければ奴は我らには倒せまい。狐人は勝てぬ闘いはせぬ、奴に勝てぬと分かった以上、撤退するのみだ」
「ちぃー、これだから狐人はよぉ」
「うるさい!お前も帰るんだ!」
叫ぶ少年を抱えながら鬼教官は地平の彼方で、狐族の奥義を受けてもなお強いオーラを放つ世界最強の男に恐怖すら覚えるのであった。
>> 163
【タカ伝】
「ッ…無茶をする」
幾多の大木を薙ぎ倒しようやく技から解放されたタカは言った。技の威力は凄まじく、通り過ぎた後には木々の破片すら残っていない。
「また、この文字に救われたか」
身体に浮き上がる文字、世界最強に引き継がれし文字、失われし文字がダメージを軽減してくれたようだ。
加護の力が、全身を優しく包み込んでいる。
文字の加護が無ければタカとて、跡形もなく消し飛んでいたことだろう。
其ほどの技を受けた反動は予想以上に大きく、タカの身体に異変が起こっていた。
「灯台もと暗し…この文字のせいだったか。この力の代償で老いていたわけか」
大の字で天を仰ぎながら倒れているタカは深いしわが刻まれ、やつれた手を天へとかざす。
失われし文字の輝きは緩に消えていく。
そして、
身体が急激に変化していく。
まるで、長い年月が過ぎていくように、タカの身体が老いていく…
「これも定めか」
止めようにも止められない老い、それに一瞬にして襲われるとは一体どのような気分なのだろうか。
恐怖か?絶望か?
身体に刻まれてゆく深いシワ、細くやつれてゆく手足、
目を背けるように彼はゆっくりと目を瞑った・・・
>> 164
【タカ伝】
誇示していた力が抜けていくのを感じた。
永遠と言う言葉が手の届かないところへと遠のいていった。
彼は今、世界でたった一人のエルフの老人へと変わっていた。
鋭く何人も寄せつけない眼光は優しく、か弱い目へと変わっていた。
しかし、彼は絶望してはいない・・・
「この文字は世界の鍵、つまりは世界の希望、願望かッ!!」
震える声でタカは声をあらげた。その声は歓喜に満ちている。
「この文字は私の追い求めていた…やすらぎを与えてくれたのだな…」
彼は・・・
タカはこの時、全てを理解した。
この文字の意味、世界が失った理由、真の意味を・・・
世界が向かうであろう道すら今の彼には見えただろう。
「私は役目は終わったのか…?」
この空、世界に話しかけるようにささやくタカ。
それに答えるように背後から突風が吹きつける。
「いや、どうやら最後の仕事が残っているようだな」
タカはゆっくりと振り返ると、太陽の光できらめく木々の中で、一際、映える青年がいた。
青年の目はタカのその世界最強の名を捉えていた。
>> 165
【タカ伝】
「これからは俺の名が世界に語られるだろう」
青年はその金色の瞳を鋭く輝かせ、言い放った。
霹靂(ヘキレキ)、彼の言葉に答えるように天は厚い雲に覆われ、雷鳴が鳴り響く。
「世界最強の名、その首とともに頂戴する」
青年は背中に背負った大剣を鞘から抜く。
大男でも扱いきれないであろう大剣を青年は片手で持ち上げると、俊敏にそれを動かし、肩慣らしを始める。
「ほぅ。その年で、天下をとりにきたか…」
タカは目の前に現れた底知れぬ力を携えた青年に笑みを浮かべていた。
己の命を取りにきた敵であるにも関わらず、タカは青年のような者を心待ちにしていた。
気が遠くなるほどの年月、待ち焦がれていた…
彼のような強者を…
「名を…聞かせてくれないか?」
そう、次なる世代の王者を…
「雷だ」
>> 166
【タカ伝】
「その剣の紋章…神剣ダリル家の者か」
「父を知っているのか…」
タカは青年がもつ大剣に彫られた鮮やかな紋章を指差すと、昔の淡い記憶を脳裏に呼び起こす。
剣豪雷神ダリル。
タカの戦歴の中で最強であろう敵の名である。
「そうか…そうか。アヤツの子か、ダリルは元気か」
「父は…死んだ」
「なっ!あれほどの強者が!馬鹿な…まさか、数年前のダンテスティン星でのDOISU計画の被害者になったのか」
「お前には関係ない話。知ってどうなる。さぁ、剣を抜け…二度とは言わない」
「ふっ。よかろう。世界最強の名に恥じぬ闘いを見せよう」
タカは青年に急かされ剣を抜くと、青年とダリルの影を重ねた。
後に人々に語り継がれたタカ伝にはこの時の闘いはこう綴られている。
“神と神との闘いのごとく、両者が動けば大地が動く”
“雷鳴は万にも届き、風は刃ともなった”
“タカは翼を失い、雷はその勢いを増した”
と…
>> 167
【タカ伝】
闘いは終わった。
世界最強、唯一無二の強者が誕生したのだ。
「終わりと言う始まり、次は貴殿が背負ってゆくのだ」
「これは…」
男から失われし文字が浮かび上がり、文字が身体から離れていく。そして、新な宿主へと吸い込まれていった。
男は知った。
運命という決して砕くことはできない鎖の連鎖を・・・
男は悟っていた。
彼に負ける為に、今この時まで勝ち続け、生き長らえてきたのだと。
彼に斬られ死ぬのが己の役目であると。
「一思いに…やるがいい」
斬り捨てろと言わんばかりに、大きく両手を広げたタカを残し、雷は背を向け歩いていく。
「待て、情けなどいらぬ!」
タカは叫んだ。
「情けなどではない」
「!?」
「語り手がおられねば伝説は拡がらんだろう」
雷はそう言い残し姿を消す。
>> 168
【タカ伝】
「なっ…」
絶句するエルフの老人。
美しかった花が枯れるように、老人からは力と言う象徴が消えていた。
(死ぬ定めではなかったのか?)
老人は心の中で神に何度も問いかけた。
しかし、返事はあるわけもなく、ただ虚しく風が吹き抜けるだけである。
死ぬ時、それは敗北の時。
しかし、その考えは間違っていた。
何故なら、己は敗北した今もこうして生きているのだから。
理由は簡潔極まる。
闘いの中に生きてきた。しかし、闘いの中が死に場所ではなかっただけ。
「ふふ…ははははははッ」
葛藤の末、老人は何故か笑っていた。
そんな老人を取り残し、世界には新な風が吹き抜ける。しかし、そんなことは気にも止めずに老人は笑うのを止めようとはしない。
敗北をきっしたこの時から、老人は力よりも大切な何かを見つけたのかもしれない。
《完》
>> 156
⑯リード「貴様らが閣下の志向を邪魔することなどできぬ」
リード将軍は二本の杖を天へと掲げる。天から無数の落雷が落ち、空を飛ぶ、連合艦隊が墜…
⑪リオ「ラ・ドル!!」
崩れ落ちるように倒れ込むラ・ドルへリオが駆け寄る。
①クリス「リオ!危ない!」
無我夢中に走るリオにリード将軍が放った闇が襲いかかる。しかし、リオはそれには気づいていない。
⑪「えッうわぁぁ」
クリスが咄嗟に助けに入るも間に合わず、闇はリオを飲み込み不気味な音を発する。
③セレナ「あぁ…そんな…」
闇は暫くすると消えてなくなり、痛みつけられ、衣服や装備がずたぼろになったリオが倒れていた。
⑭キック「くっ!うおぉぉぉ!」
リオの痛々しい姿を見たキックは怒りの余り、単身、リード将軍へと斬りかかる。
⑯リード「愚民が。己らの力、どれほど無力か…思い知るがいい」
素早く杖を交差させ、光を発する。その光はキックを包み込み、一瞬にして、石へと変えてしまった。
ゴトッ
石となったキックはただ重い音を立てて虚しく地面を転がる。
①「そんな」
⑯「さぁ、次は…誰だ?愚かな者どもよ」
リード将軍は冷たい眼差しで、クリスを見つめた。
『圧倒的、力の前では全てが無力』
連合軍との闘いで、多くの敵が発した言葉。
それを覆す為に闘ってきた。
しかし…
>> 170
⑤セロ「お前の好きにはさせねぇ!!」
2丁の黄金銃を素早く抜くと、その銃口をリード将軍へと向けて叫んだ。
⑯リード「ほぅ。まだ私に牙を向けるか…」
セロの雄叫びを上げながら黄金銃の引き金を引く。金色に輝く光弾、今までにない強力な魔法弾がリード将軍を飲み込んだ。
③セレナ「すごいッ」
⑤「え…マジッ」
余りの威力に魔法弾を放った当人は大きく後ろに飛ばされる。
感情の高まりにより、黄金銃が反応したのであろうが、クリスやセレナはもちろんセロですらその威力に驚いた。
⑯「き…貴様ぁ…よくも私に傷を」
不覚にも一撃を受けたリード将軍は焦げ爛れたマントを破り捨て、怒りをあらわにし凄まじい魔力の矛先をセロへと向ける。
デビル「いただぁきぃ」
その時、地中から体毛が繰り出し、リード将軍の動きを封じる。
⑯「!?」
⑤「クリス!今だ!」
①「…あぁ!」
クリスはセロの言葉を受け、高く飛び上がった・・・
>> 171
①「全ての力をぶつける!」
砂埃を巻き上げながら華麗に宙に舞う。クリスは全身全霊の力を父ダリルから授かった愛剣へと注いだ。
『決して、困難に挫けるな。前を向いて生きるんだ』
父が死に際に残した言葉が頭に浮かぶ。
思えば、父が死んだあの日から、クリスは強大な闇との闘いを決意したのだ。
①「あきらめない!絶対に!」
その決心は変わらない。ドイスを倒すまで、クリスは戦い続けると決めた。だから亡き父の為にも、目の前のリード将軍程度の壁などに立ち止まってはいられないのだ。
⑯リード「無駄だ」
杖を刃に変化させ、デビルの体毛を斬り落としたリード将軍は宙に舞う恰好の的であるクリスを睨み付けた。
③セレナ「いきますよ」
⑤セロ「了解、うおぉぉ~!」
セレナが放った業火とセロの魔法弾が一つになり、凄まじい光源、灼熱のエネルギー波となってリード将軍を襲う。
⑯「なんだと」
咄嗟に防御魔法を唱えたリード将軍だったが、エネルギー波はいとも簡単に魔法壁は貫く。
>> 172
⑯リード「無駄だ。そんなものでは私は捉えられない」
エネルギー波を移動魔法で、避けたリード将軍は冷酷な表情で笑みを浮かべる。
①クリス「私を忘れてないか」
⑯「ッ!?」
エネルギー波を目眩ましに、近づいたクリスは剣を降り下ろした。リード将軍は移動魔法を唱える間もなく、二本の杖を交差させ、ガードしようとするも閃光を放ち光の刃となったクリスの剣は簡単に杖を叩き斬るとその勢いのまま、リード将軍の左腕を切り落とした。
⑯「私の腕を…あぁ…なんと醜い」
①「神剣、極めたり」
クリスの剣の輝きが更に増す。
剣は光となり、形を消しているので、光の刃のように見える。
神剣ダリルは光を自在に操り、刃にすることが出来たという。強敵を前にした極限状態で、まだ完全とまでは言えないがクリスはそれを会得したのである。
リード将軍「醜い…醜い」
将軍は移動魔法で移動しながら闇魔法を放つが、クリスは高速移動で直ぐに間を詰め、闇魔法は光で切り裂く。
①「覚悟しろ!はッ!」
⑯「……」
クリスの剣はリード将軍を捉え、腹部を真っ二つに斬り抜いた。
>> 173
リード将軍の二つに割れた身体は地面に力なく横たわる。しかし、クリスは剣を構えるのを止めることなく周りを見渡す。
⑤「クリス!やったな!」
①「馬鹿言ってないで、気を張りなさい。これは、幻覚よ」
近寄ってきたセロにクリスはあるところを指差す。セロの顔色は急に青白くなり、何もなくなっているリード将軍の身体があった場所を見つめた。
暫くすると辺りに闇がたち込め、不気味な甲高い無数の笑い声が響いてくる。
⑯リード「中々、楽しませて貰ったぞ。私の幻覚との闘いはどうであった?」
地中からすっと現れたリード将軍は健全な左腕を見せると不気味な笑みを見せた。
①「来い!今の私は誰にも止められない!」
光輝く剣を将軍へと向けるクリスだが、リード将軍の笑みは消えない。
⑯「美しい。確かに貴女の技、厄介だが…あとどれ程の時間使えるのだ?」
闇をも払い、全てのものを斬り裂く剣。しかし、その輝きは徐々に薄れてきていた。
⑯「いでよ。我が僕たちよ」
召喚魔法を唱える。リード将軍の周囲には、無数の魔法陣が現れ、そこから人形の黒い鬼が現れる。
>> 174
⑯「あの者共を…殺れ」
『御意』
リード将軍の命令を受け、黒鬼たちは一斉にクリスたちに襲いかかる。
デビル「化物だぁ不味そう」
⑤セロ「お前も化物だろ」
デビル「ちがうやい!おらっちは珍獣王なんだもんね!」
セロの肩に乗り、舌を出すデビル。セロは黄金銃をかまえ、黒鬼に向けて連射した。
①クリス「セレナ、援護お願い」
③セレナ「分かったわ。気をつけて」
魔法陣から次々に出現する黒鬼の群れにクリスは挑んでいく。
少し離れた上空ではシャドーmkⅢが巨大物体を操る術者を探していた。
⑦凱「あの岩の上、シャドー拡大してくれ」
「アイアイサー」
液晶画面に大きく窪んだ岩山が表示され、徐々にズームされていく。窪みの中央にはリード将軍、不気味な黒鬼たちがいるのが写し出された。
「アタリ ガイノヤマカンハヨクアタルネェ」
ローナ「クリスたちもいるわ」
液晶画面に小さく写っていたクリスを指差し、ローナが叫ぶ。するとシャドーmkⅢは一気に高度を落とし岩山へと一直線で向かっていく。
>> 175
ローナ「ちょ…ちょっと!?」
ゴオォォォォォ…
⑦凱「おし、突っ込むか。シャドー」
「アァ マタキズダラケダヨ シールドオープン」
地上までの距離がみるみる縮まっていき、警報音が響き激しく船体が揺れる。
ローナ「え!?え!?ちょッ…突っ込む?ウソでしょ?」
⑦「心配いらねぇ。俺は墜落し慣れてっから」
ローナ「墜落し慣れてるって…全然、安心できないんですけど!キャア~!」
轟音を上げながら岩山へとシャドーmkⅢが滑り込む。土砂や砂埃を巻き上げ、途中、黒鬼たちを薙ぎ倒しながらリード将軍へと突っ込んでいく。
⑯リード「なッ…馬鹿な」
ゴオォォォォォ!!!
流石のリード将軍も予想外の乱入者に困惑し、魔法を使う間もなく、ただ横へ飛びかろうじてシャドーmkⅢのタックルを避けた。シャドーmkⅢは勢いに逆らうことなく、岩山を滑り、暫くして静止する。
⑦凱「無事着陸。ナナの奴、中々いい仕事してんじゃねぇか!」
ローナ「あんた…いつもこんな無茶苦茶な運転…してるの…はぁはぁ」
「マダマシナホウダヨ」
冷や汗で背中がびっしょり濡れたローナは二人の会話を聞いて絶句するのであった。
>> 176
①クリス「凱の船だわ」
⑤セロ「相変わらず無茶するなぁ」
土煙が立ち込め視界が悪い中、シャドーmkⅢの銀色装甲が一際、輝いていた。
⑯リード「小癪な…魔法陣を…くっ」
砂埃まみれになったリード将軍は砂を払う。召喚獣の魔法陣はシャドーmkⅢにより破壊され、黒鬼たちは消え失せていた。
⑦凱「待たせたな」
シャドーmkⅢのハッチが開き、凱が颯爽と降りてくる。シャドーmkⅢは凱を降ろすと直ぐに空高く上昇していった。
⑦「さぁかかってきやがれ」
その手に握られた見慣れた二本剣から以前とは比べものにならないほどのオーラが満ちている。
⑯「貴様はあの時の剣士か…未熟児とは言えパーフェクトから生き延びていたとは驚いた。だが…また性懲りもなく私の前に現れるとは馬鹿者だな」
リード将軍は白髪の長髪を靡かせ、冷たい眼光で凱を睨み付けると二本の杖を交差させる。
⑯「へっ…宇宙ではお世話になったな。今度は俺様がお前にお返しする番だぜ」
⑯「少しは成長したようだが…貴様に果してできるかな?」
以前ならば刃向かうことすらできなかった凱だが、銀狼の力が目覚め始めた凱はリード将軍の強大な魔力に臆することはなかった。
>> 177
⑯リード「では、貴様の力、見せて貰おうか」
突如、青白く輝く魔法陣が凱の周りに現れ、魔法陣からは黒仮面を被った剣士達が召喚される。
⑦凱「1…3…7人か。面白れぇじゃねぇか」
現れた剣士7人を一瞥すると凱は俄然やる気を出し剣を構えた。
⑯「そやつらはキングへ送った軍義・戦義と同等の力がある者たち。貴様に倒せるかな?」
高みの見物とでも言いたいのか、リード将軍は浮遊魔法で宙を舞って見せる。
①クリス「凱!手伝うぞ!」
⑦「いや、いい。これはアイツからの挑戦だからな!引けねぇぜ!」
クリスを制止し、凱はオーラを剣へと集中させる。黒仮面の剣士たちは多方面から一斉に凱へと斬りかかってくる。
⑦「真・爆炎阿修羅斬り!!」
凱が動いた。
その瞬間、7人の剣士たちは次々に爆炎を上げ、倒れていく。
凱は少し離れた位置に着地する。凱が通った後には燃え盛る剣士たちで炎のロードが出来ていた。
⑯「馬鹿な…瞬殺だと。この短期間でどうやってこれ程の力をつけた…!?」
⑦「俺様にも分かんねぇんだがよぉ。最近、調子良いんだわ」
カチャ
炎を帯びた剣を鞘に戻し、笑みを見せた凱にリード将軍は自然と一歩後ろに下がるのであった。
>> 178
⑯リード「ふっふふ…中々、楽しめそうではないか」
凱の底知れぬ力に咄嗟に退いたリード将軍は自分のらしからぬ行動に、自然と笑いが起こる。
⑦凱「キック…リオ」
そんなリード将軍など凱は目もくれず、石となったキックや変わり果てたリオに駆け寄る。傷ついたリオ抱え上げた凱の眼は怒りの炎に燃えていた。
⑯「私が憎いか…ならば…かかってこぬか?どうした?」
空を舞うリード将軍は大げさに手を広げ、挑発的な態度をとる。
⑦「てめぇ…」
リオを優しく寝かせ、凱はゆっくりと立ち上がると血が出るほど、己の拳を握り締め、身体中の血管を浮き上がらせる。
⑯「なるほど…貴様のその急成長、たしか…銀狼とのハーフであったな。覚醒か…興味深いな」
⑦「ゆるさねぇ…ゆるさねぞ。お前…」
凱のオーラが爆発的に上がる。そして、髪が逆立ち、眼は金色へと変色した。
⑯「だが、所詮は…化物。下等生物よ、死ぬがよい」
③セレナ「危ない!!」
①クリス「くっ!!」
リード将軍から発せられた邪悪な魔力が、連鎖爆発を生む。一瞬にして、周囲一帯は爆炎に飲み込まれた・・・
>> 179
黒煙が辺りを包み、周囲一帯は破壊尽くされ荒地と化す。
⑯「無駄な足掻きを…醜いぞ」
そんな中、聖なる輝きを纏わせ、強力な魔法壁で仲間を守ったセレナは高らかと杖を掲げていた。
③セレナ「私は風の大賢者が認めた魔法使い。貴方になど負けないわ」
風の大賢者ハークから授かった銀色杖はセレナの力強い魔力に反応するように一層の輝きを放っていた。
⑯「大賢者ごときの公認だと?…笑わせてくれるな!!」
⑦凱「させねぇぜ」
再び、魔法を放とうとするリード将軍の目の前に凱が現れる。そして、凱は二刀の剣を交差させ、オーラを集中させる。
⑦「俺様の十八番くらいな!ガイブレード!」
身体を刃とするガイブレード。
その迅速の刃は有無を言わせず、リード将軍を切り裂いた。
>> 180
⑯リード「貴様ぁ…」
凱は確かな手応えを感じた。
ガイブレイドの反動が解け、直ぐにリード将軍へと目をやった。すると血を流しているはずのリード将軍は平然な表情でいるではないか。
⑦凱「お前…機械か!!」
⑯「私を傷つけた代償は大きいぞ」
衣服を剥ぎ取り、深く切り裂かれた腹部を見せる。銀白色の合金で出来た身体から傷口はみるみるうちに塞がっていった。
⑯「貴様らごときにこの力を使うのは少々気がひけるが…闇の帝王、魔王が従えていたという召喚獣を見せてやろう」
⑦「ちっ」
召喚魔法を唱え始める。阻止しようと凱は斬りかかるが、衝撃派を受け、遠方へと飛ばされてしまう。
どす黒い、邪悪な邪気が噴出し巨大な魔法陣が3つ出現する。
③セレナ「召喚させちゃだめ!!」
対抗呪文を唱えるセレナだったが、リード将軍の魔力に対抗することはできずにいた。
ゴオォォォォォ
⑯「闇より生まれし…邪竜よ。全てを飲み込み、全てを消せ」
泥の塊、竜の形は型どっているが竜とは異なる。
『ギャアアアアアアア』
この世にはいない異質な生き物が召喚される。
>> 181
『ギアァァァァ』
この世のモノとは思えない不気味な生き物。
三頭の竜たちは耳を塞ぎたくなるような悲鳴に似た雄叫びを上げた。
生気のない黒眼、茶褐色の泥のような身体は、かろうじて、竜のような形を維持しているが、皮膚は絶え間なく垂れ落ち、それに触れた岩は氷のように溶けてゆく。
①クリス「なんなんだアレは…」
邪竜と言うよりも泥竜、見た目も凄まじいが、臭いも凄まじい。当分はとれそうにない異臭が辺りに立ち込めている。
③セレナ「ダンテスティン国に伝わる伝説に出てくる邪竜…魔王軍の…全てを消し去る魔物…なんてこと…」
セレナはダンテスティン城で書物を読み漁っていた時のことを思い出した。ダンテスティン城には古くからの貴重な書籍が保管されている。そんな本を読むのが、つまらない城の生活の中でセレナの一番の楽しみであったのだ。
そんな中には、魔王軍に関することが綴られたものも多く、邪竜も取り上げられていたのだ。
死し者。
決して
滅ぶことのない生き物たち。
『邪竜とだけは儂も闘いたくありませんの。邪竜と渡り合えるのは剣の賢者ゴウ殿ぐらいじゃ』
邪竜について質問したセレナにハークがこう返答したのも覚えている。
>> 182
③セレナ「皆!避けて!」
セレナがそう叫んだ刹那、3頭の邪竜たちの口から濁流のごとく泥が吐き出される。泥は、全てを飲み込み、一瞬にしてあらゆるものを消し去る。
⑦凱「あの泥に触れるな!やべぇぜ!」
泥を吐き終えた邪竜が巨体を震わせ、咆哮を上げる。圧倒的な力、まさに連合軍が追い求めている力がそこにはあるようにすらみえる。
⑯リード「閣下はかつて…世界を闇から支配していたという魔王、その技すら子供騙しだとおしゃられる。連合軍は魔王すら超える力を求めているのだ」
将軍は杖を邪竜へと向けた。魔力を注ぎ込まれた邪竜たちは苦しみ始め、形を失っていく。
①クリス「なにをする気だ」
⑯「見よ、邪竜を超える恐怖の産物、ヒドラだ」
邪竜はお互い引き付け合うように融合し新な形を型どっていく。3つの頭を携えた巨大竜、真っ黒い液体のような身体は闇そのものをみるようである。
⑦「マジか…よ」
⑯「この星ごと、消し去ってくれるわ」
将軍が声はヒドラが発した破壊砲で遮られる…
ドキュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!
>> 183
地平線の彼方で、眩い閃光が発せられる。
数秒後、地平線の彼方でキノコ曇が上がると凄まじい破壊音と爆風がやってくる。
一瞬、何が起こったのか理解に苦しむほど、ヒドラが発した破壊砲は目にも止まらぬ速さであったのだ。
⑦凱「見えなかったぞ…ウソだろ」
地平線の先には星の一部が欠けて、大地が大きく変形したようすが見てとれる。想像を絶する力が星をも破壊したのだ。
⑯リード「ふっふふ…ははは。素晴らしい。これぞ絶対的な力だ!閣下、私めにこのような力、御貸し下さり感謝致します!」
リード将軍はヒドラのパワーに賞賛し、大げさに手を広げる。
①「世界が終わる…」
クリスの脳裏に世界の終焉が浮かぶ。だが、絶望からの想像ではない。連合軍の力を目の当たりにして、この力を止めなければならないと思う意思からだった。
①「止める。私の命に代えても…ドイス、お前の野望はな」
>> 184
⑦凱「真・ガイブレイド」
①クリス「風よ」
凱とクリスは連携し、山のように立ちはだかるヒドラに技を放つが、液体のようなボディは技を吸収しダメージは与えられない。ヒドラはクリスたちなど気にも止めず、第2波の破壊砲を放つため、生々しい口を大きく開け始める。
⑯リード「無駄だ。ヒドラは物理的な攻撃を全て無力と化す。星を破壊しつくすまで止めることはできないわ」
先ほどの破壊砲の影響で、黒の惑星には絶えず小さな地震が起こっていた。まるで星が悲鳴を上げているようかのようである。
③セレナ「こんな強大な力、私では止められない…」
⑤セロ「セレナ、一端、ここから離れよう!巻きぞいに合うぞ!」
傷ついたキック、リオ、ラ・ドルの三人を守るだけしか出来ないセレナは巨大なヒドラを見やげながら自分の無力さに唇を噛んでいた。
⑦「こいつは(ヒドラ)は止めれなくとも術者であるお前を倒せばいいだけだ!!」
⑯「ふっ、単細胞が…ヒドラは召喚魔法ではない、異空間移動魔法で本国より呼び寄せた本物の化物。私が死のが、ヒドラは滅びぬ。ヒドラを絶つ以外に方法などないわ」
⑦「なんだと…お…お前の話なんか信じるかよ!!」
>> 185
⑦凱「ッ…!?」
将軍に斬りかかろうとする凱の前に煙が立ち込め、煙は人形へと変っていく。
スモッグ「無闇に動くのは止めろ。奴の言うことは嘘ではない」
⑦「ちッ、俺の邪魔するのが好きな奴だぜ…」
そして、煙は最早、見慣れた霧の賢者スモッグとなっていた。白マントにくるまり、相変わらず、不健康そうな青白い顔である。
スモッグ「連合軍3大兵器、X砲に次ぐ…星破壊兵器ヒドラ。実物を見たのは初めてだが…想像以上だな」
①クリス「あれが連合軍3大兵器なのか?生物だぞ」
スモッグ「なに、兵器が皆、無機物とか限るまい」
マントを広げ、杖をかまえるスモッグは無表情のまま言った。だが、クリスは倒れたラ・ドルを一瞥したスモッグを見逃さなかった。彼の杖を握る力がいつにも増して強いのも感じとっていた。
⑯「終わりにしようか。ヒドラを呼び寄せた以上、私もここには長居できぬのでな」
将軍が魔法を放とうとしたその時、遠方より轟音が上がる…
>> 186
圧巻するほど巨漢である全長千メートル近いヒドラすら小さく見えてしまう。
超巨大戦艦キングが爆音と爆風を上げ、飛び立つ。周りでは連合軍の戦艦が容赦なく砲撃を浴びせているが、キングは怯むことなく高度を上げていた。
⑤セロ「やった!やっとチャージが終わったようだな!うひゅー!」
歓喜の声を上げるセロ。
連合艦隊のど真ん中を飛ぶキングは圧倒的存在で、戦場の光となって、クリスたちはもちろんのこと疲弊した宇宙海賊に希望・闘志を与える。
⑯「馬鹿な…連合艦隊が空から押さえこんでいたはず…飛び立てるはずがない…私の軍義・戦義はどうしたのだ??」
一番の驚きを見せるリード将軍は、召喚した巨大剣士を探す。先ほどまで、遠方からでもはっきり見てとれた巨大剣士は何処を探しても見当たらない。
⑯「…!?」
オジオン「将軍、どうやら風の向きが変わってきたようじゃの」
ナナ「よっと、金属で作ったモノなら俺様に任せなさいってな。この大錬金術師ナナ様にな」
銀色に輝く金属製の円盤に乗ってやってきたナナは地面に着地すると、地の大賢者オジオンに手を差しのべ、円盤から下ろす。
>> 187
オジオン「すまぬ」
オジオンが降りると円盤は目にも止まらぬ速さで変形、縮小しナナのローブの胸ポケットに収まる。
⑯「笑わせるな、私の魔法を一度打ち破ったぐらいで…状況は何も変わってなどいないのだぞ」
キングを指さす将軍。その瞬間、ヒドラが第2波の破壊砲を放つ。大地は大きく揺れ、またしても星の一部が消滅してしまう。
ゴオォォォォォ…
⑯「キングが動き出そうとも…圧倒的な軍勢の連合艦隊、それに加え、このヒドラまでいるのだ。貴様たちに万が一にも勝目はない」
将軍は誇らし気、ほくそ笑んだ。
オジオン「ヒドラ?そのコントロールすら出来ていない怪物のことか?」
キングとは正反対の場所へ歩み始めるヒドラを見つめる大賢人はそのご自慢の髭を撫でた。
⑯「…ッ。ヒドラと我らの目的は同じ、破壊だ!コントロールなど必要ないわ」
オジオン「ならば、この星ごとお前も滅びよ」
オジオンが動く。大地が割れ、そこから無数の岩石が将軍目掛けて飛んでいく。将軍はその岩石を杖一振りで消し去るが、背後から迫る金属線に絡みつかれてしまう。
⑯「醜い…」
ナナ「お相手、願うぜ」
だが、金属線は将軍を縛り上げる前に、腐食し砂へと変わる。
>> 188
⑦凱「手伝うぜ!ナナ!」
ナナ「邪魔だけはしてくれるなよ!凱!」
先程の円盤を再び出現させ、それに飛び乗ったナナは錬金により、作り出した長剣を構えた。その横を凱が駆け抜け、一目で将軍へと向かっていく。
⑯「遊びは終わりだ」
蛇のようにうねる闇魔法を近づく凱に放つ。しかし、魔法は大地から突如現れた鉄壁に防がれる。同時にナナが「世話がやけるぜ」と呟いた。
⑦「トルネード・真・ガイブレイド!!」
渦となり、剣となり、凱は将軍へ技を放った。しかし、凱は宇宙空間での無重力を味わうように、宙に浮き止まる。
⑯「消えよ!!」
凱に技を止められたと認識する間すら与えず、将軍は魔導の刃を放ち、凱を大きく後方へと飛ばす。
ナナ「凱!!…ッ!?」
冷酷な眼が次に捉えたのは、ナナであった。ナナは苦しみだすと、血を吐き出し倒れ込む。将軍の闇魔法が襲ったのだ。
⑯「無力。貴様らはな」
①クリス「どうかな。勝負はまだついてないぞ」
光輝く検筋が映えた。
⑯「なっ…」
光の剣は将軍の腹部を捉えていた。
>> 189
⑯リード「こ…娘が…ッ」
リード将軍の腹部は大きく裂けているが、凱が与えたダメージ同様、傷が塞がっていく。
⑯「私は不滅だ…ん!?」
腹部の再生が未完全のまま止まる。将軍は訳が分からない様子で、腹部を手で押さえた。
①「風よ!!」
隙だらけの将軍に追撃を加える。クリスの剣は、リード将軍の右腕を切り落とした。
⑯「…馬鹿な。な…なぜ、再生せんのだ」
クリスは狼狽える将軍に更に剣撃を浴びせ、将軍の胸に大きく傷をつける。流石の機械人間もこれには堪らず、よろめく。
⑯「くっ。美しいぞ。私をここまで追い詰めるとは!!」
①「逃がすか!!」
斬りかかるクリスに魔法を放なとうとする将軍に、地の大賢者オジオンが妨害呪文を唱える。
オジオン「くっ…誰じゃ!?」
ベンガル「み~つけた~ぁ。ぐふふ」
しかし、オジオンの杖に鞭が絡みつき、将軍の妨害を阻止される。すさかさず、将軍はクリスを魔法であし払い、移動魔法で天高く飛び上がった。
>> 190
ベンガル「将軍、ご無事なにより。ぐふふぅ」
全身に鞭を巻いた異質な鞭使いは舌を出しながらクリスを見つめる。
①クリス「お前…カリーナたちは…どうした…まさか」
普通の女性なら悲鳴を上げる不気味な男にクリスは言い寄った。
鞭使いは下品に笑うと…
ベンガル「死~んじゃったぁ…ぐふふ」
血のついた鞭を舐め回しながら挑発的に言う。その挑発にまんまと乗せられたクリスはベンガルへと斬りかかった。
ガシャン…
①「くっ」
ナナ「待て…はぁはぁ。安い挑発に乗るな。アイツらなら大丈夫だ。なんせ、この大錬金術師ナナ様の部下だからな」
口元に血を垂らしたナナがクリス前に割って入る。クリスの剣を受け止めたナナの剣は真っ二つ割れ、そのクリスの剣撃にナナは思わず眉毛を上げる。
ベンガル「あらら?残念…向かってきたら蜂の巣だったのにねぇ」
ベンガルが立つ周りの空間がねじれ、裂ける。
空間の狭間から現れた魔科(マカ)たちは銃をかまえ、クリスに標準を合わせる。おそらく、突っ込んでいたならば魔科たちの魔科具の前に倒れていただろう。
>> 191
⑯「ベンガル中将、ウマンダ星に常駐せよとの命令だったはずではないのか」
片腕を失い身体も傷だらけのリード将軍は精一杯、威厳を込めて言うが、ベンガル中将は高笑いで返す。
ベンガル「将軍。あんた…俺がいなけりゃ死んでたよ。今回は大目に見て下さいよ…ぐふふ」
⑯「私は不滅だ。貴様みたいな低俗の助けなどいらぬ」
将軍に吐き捨てられるように言われ、ベンガルは不満そうにそっぽを向く。
スモッグ「新手か…やっかいだな」
⑦「ちッ…クリスに美味しいとこ取られたぜ…あいたた」
輪としたたたずまいで立つスモッグの傍ら、胡座をかいて座り込み、頭をかく凱はため息をつく。
⑯「まぁよい。この者どもを一掃せよ…将軍命令だ。私はウマンダ星に帰還する」
ベンガル「了解しやしたよ…ぐふふ」
鞭を振るう。周囲一帯に乾いた破裂音が響いた。
>> 192
べンガル「そう言うことだ…将軍逃避行までの時間稼ぎ、しちゃいましょう。ぐふふ」
周囲の空間が裂け、至るところから魔科たちが現れる。
①クリス「こいつ恐ろしく強いぞ!気をつけろ!」
オジオン「将軍を逃がすでない。手負いの今が奴を倒す好機だぞ」
スモッグ「分かっております」
①「行くぞ」
オジオンは光弾を浴びせ、数名の魔科を吹き飛ばす。その隙にスモッグとクリスが将軍を追う。
⑦凱「おい!鞭使い!俺が相手になってやるぜ!」
ベンガル「ありゃ…また逃げられた」
駆けていくクリスを追おうとするベンガルに凱が立ちはだかるが、横から突飛ばされてしまう。
ナナ「俺の部下に手出したのはお前だな!凱、手だすんじゃねぇぞ!こいつぁ俺がやる!」
巨大なハンマーを錬金し、軽々と持ち上げたナナは眉間に皺を寄せながら叫んだ。
⑦凱「なにすんだ…ったく。ナナの奴、マジモードかよ…やべーぇな」
>> 193
重い金属音が響く。ナナの身体が銀白色へと変わり、今度は鉄を熱したように赤色へと変わっていく。
ベンガル「ぐふふ…切り刻んであげますよ」
湯気立つマグマのような身体をゆっくりと前に進める。何をするでもなく、真っ正面からベンガル中将へと向かってゆく。
それに反応し、ベンガル中将が身体を取り巻く、鞭を瞬時に標的へと浴びせた。その動き(速さ)を近くで観戦していた凱が短い口笛を吹いた。
鞭の猛攻を受けるナナ、だが、その鞭は溶け込むように蒸発してしまう。
⑦凱「金属人間。灼熱モード、今のナナは無敵だぜ。熱ち」
ナナから発せられる熱気に凱は思わず、距離をとる。
ゆっくりと歩きながらナナはついにベンガル中将の御前に立った。灼熱の身体でゆっくりと拳を握る。不思議なことに、衣服が燃え落ちることなく、ご自慢のマントが風でなびいている。
ベンガル「ぐふふ。きッ…きな」
ナナ「俺の拳は熱いぜ」
ナナが動く。と言ってもただ腹目掛けて目一杯の力で、拳を突き出すだけであった。
しかし、その拳の威力ときたら山の噴火にも似たパワーである。拳に触れたベンガルは言葉にならない声を上げ、炎に包まれる。
>> 194
ナナとベンガルとの一騎討ちの決着がついた頃、周囲にいた魔科たちはオジオン、凱の活躍により一掃されていた。
⑦凱「じいさんやるじゃねぇか」
オジオン「若いもんにはまだ負けぬわ。ふん」
陽気に腕を組み合わせ、勝利を祝う二人。堅物のイメージであったオジオンだったが、意外な一面もあるらしかった。
ナナ「こりゃ、2、3日は肩こりだわ」
普段の人肌に戻ったナナは炎に包まれ動かなくなったベンガル中将の横で、背筋を伸ばしながらぼやく。
③セレナ「オジオン殿!私たちの仲間を助けてくれませんか!」
闘いが終わり、セレナが大賢者に駆け寄る。その直ぐ後ろにキック、リオ、ラ・ドルの三人を台車に乗せて汗だくで運ぶセロが走る。
オジオン「闇の魔術か…やっかいだの」
石となったキックをこつこつ叩きながらオジオンは疲れた表情を見せる。だが、セレナの返答としてはOKそうだ。
オジオン「術を解くのに時間がかかる。ここではできまい。キングへ戻ろうぞ」
幾何学模様の魔法陣を出現させ、陣の中に入れるように促す。そこに傷ついた仲間をセロが運ぶ。
>> 195
③セレナ「私はクリスを追います。セロ、三人を頼みましたよ」
魔法陣が青白い光を放ち始める。
⑤セロ「セレナ、危険だぞ。一緒に来いよ」
連合艦隊に取り囲まれ、爆撃の中のキングだが、この戦場で一番の安全地帯であるのに違いない。
オジオン「何を言っても無駄だろう。姫よ。気をつけなさい。貴方は、国を背負っておるのだからな。では、また会おう皆の衆」
魔法陣が眩い光を放つ。その瞬間、セロの胸から黒い影が飛び出した。
⑤「あっ…おま…」
セロはそれを捕まえようとするが、魔法が発動しその場から姿を消してしまう。
デビル「にっしし。俺っちも手伝うもんねぇ」
⑦凱「おっ、デビルも参戦かよ。んじゃ、行くぜ。のりな!!」
甲高いブスター音が頭上で響く。暫くすると銀色に輝くシャドーmkⅢが地上へ舞い降りてきた。
⑦「お前はどうすんだ?」
ナナ「ここまできたら…最後まで付き合う。この大錬金術様がいれば百人力だろ」
シャドーmkⅢのハッチが開き、船内の奥から凱の悪口を叫ぶローナ声が響いてくる。
凱は頭をかきながら愛船へ乗り込むのであった…
>> 196
ヒドラの発する破壊砲により、黒の惑星はその生命を失いつつあった。大規模な地殻変動が起こり、星の機能が狂い始め、大気は荒れ、落雷と地鳴りが鳴り響いている。
スモッグ「この星もいずれ爆発する。もって一時間ぐらいだぞ」
①クリス「なら、早いとこすませないとな」
戦艦、戦闘機、戦車、砲弾、あらゆる兵器の残骸が地表を埋め尽くしていた。そんな片らをクリスたちは駆け抜けていく。
キングが飛び立った今、地上戦は大方の決着がついたようで、周囲には連合軍の姿は見当たらない。
戦場は再び、戦艦同士の空中へと変わっていた。キングに続き、キングジュニアを含む生き残っていた宇宙海賊艦隊が空へ飛び立っていく。その勢力は半数以下に減ってはいるが、連合軍の大空襲でまだこれ程の戦艦が残っていたとは驚きである。
対して、連合軍は数は減っているのではあろうが、まだ無数の戦艦が空を支配し、宇宙海賊を待ち構えていた。
>> 197
①クリス「浮遊魔法を!!」
スモッグ「私に命令するな…このような事態でなかったら消しさってやるところだが、今は特例だ」
リード将軍は左右に揺れながら上空を飛んでいた。どうやら思った以上にダメージは大きいようで、クリスたちが追いつくのはそう難しいことではなかった。将軍を捉えたクリスはスモッグの浮遊魔法を受け、空へと舞い上がる。
⑯リード「私に勝った気でいるなら間違いだぞ」
①「息のねを止めるまでは勝負は終わらないさ」
残った左腕で杖を構えた将軍は鋭い眼光で、魔導の衝撃波を放つ。クリスは剣を盾に魔法を防ぐが、第2波の衝撃波に耐えきれず、飛ばされる。
スモッグ「私を忘れてもらっては困る」
今度は、スモッグが杖の水晶から火花を出しながら将軍の前へ現れ、魔法で将軍の杖を弾くと、圧縮された空気の固まりを無防備な将軍へとぶつけ、金属がへしゃげる音を発しながら将軍を地上へと叩きつける。
⑯「ッ…無駄…だ」
スモッグ「ちっ」
しかし、スモッグが与えたダメージは直ぐに再生してしまう。地上で立ち上がった将軍は、笑みを浮かべた。
>> 198
スモッグ「ちっ…止めは貴様にやろう」
⑯リード「!?」
①クリス「風よ。悪を討つために私に力をお貸し下さい」
背後の気配に気付いた将軍は振り返るが、時は既に遅かった。
将軍へと剣を降り下ろされる。
⑯「なッ…」
将軍を切り抜いたクリスは勢い余って半回転すると、剣を鞘へと収めた。そして、軽く息を吐くと額の汗を拭う。
スモッグ「…ゴクリ」
黒煙を上げ、倒れた将軍を見つめ、スモッグは生唾を飲み込む。リード将軍を倒してしまったクリスに恐怖すら覚えていた。
クリスの光の剣撃、あらゆる切り裂き、魔法・能力の効果をも無効にする力を持つ最強の剣撃。名に恥じぬ、世界最強の剣術《神剣》である。
剣撃を目で追うことすらできなかったスモッグはクリスの成長に、末恐ろしいものを感じていたのだった。
スモッグ「ッ!!」
将軍の亡骸から突如、光が発せられ、小規模な爆発が起こる。
>> 199
スモッグ「だ…誰だ…!?」
らしくなく口を大きく開けながら、黒煙の中から現れた者へ問いかける。
⑯リード「何を言う。私はリード将軍だ」
①クリス「か…かわいい…」
黒煙が風で運ばれ姿を現した5、6歳の子供が胸を張り言った。
背丈には合わない大きな衣服着た子供は、ローブやマント引きずりながらその愛らしい顔立ちで、杖をかまえる。
①「将軍だと…」
⑯「貴女よ、その力、気にいったぞ。私の妃にしてやる。有り難く思うがよい…さぁ一緒に本国へ参ろう」
手を差しのべ、クリスにアプローチする子供はなんともおかしく見えた。
①「だ…誰か。お前の妻なんかになるかッ」
赤面するクリスはどうしていいのか分からず、不恰好に剣を抜き、かまえる。
⑯「おお、中々、よい顔をするではないか」
スモッグ「ま…まて。茶番劇はもういい。貴様がリード将軍ならば生かしておくわけにはいかん!!」
クリスを凝視する子供の前に現れたスモッグは杖を子供の額へ当てる。
- << 201 ⑯リード「私の邪魔をするな」 子供は己の杖をスモッグの杖を払うと、凄まじい魔力を発しスモッグを吹き飛ばす。 スモッグ「な…まだこんな力が残っているのか」 余りの魔力に、近づくことすらできないスモッグは後退しながら叫ぶ。 ⑯「さぁ、迎えもきた参ろう」 小さな身体ながら大人時以上の力を見せつけるリード将軍はクリスにゆっくり近づいていく。 ①「誰かいくか!!」 剣に再び、光を纏わせたクリスは低姿勢で、斬りかかる。しかし、将軍の影から出た触角ような魔法に掴まり、身体を締め付けられる。 ⑯「拒否する権利はない。暴れてもかまわんが、その魔法がよけいにくい込むだけだぞ」 ①「は…離せ!!」 空から連合軍の移送船が舞い降りる。ハッチが開き、数名の連合兵が降りてくると敬礼をして列をつくる。 将軍は魔法でクリスを宙に浮かせると、移送船へと歩き、それに従うようにクリスも成す術なく船へと運ばれていく。 スモッグ「待て!させぬ!」 ⑯「邪魔をするなと言ったろ」 鋭い闇魔法がスモッグに大きくな風穴を空け、スモッグは煙のように消えてしまう。
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