話つく③ダンテスティン・サーガ~魔法のペンダント~

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カズ( 20代 ♂ wYw8h )
11/03/18 03:28(更新日時)

7つの惑星を舞台に登場人物たちが連合軍と言う巨大組織と闘うストーリーです👮是非、皆さん読んでみて下さい。

↓関連スレ

話つく
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話つく②
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📖✏🚀parallelworld🌏
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No.1158142 08/06/11 15:41(スレ作成日時)

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No.301 10/04/06 16:28
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 300 騒然とした外とは違い、まるで異世界にでもきたかのように本殿は静まりかえっていた。

パチンッ

ただ聞こえてくるのは扇子を開け閉める音だけである。

純白の着物に身を包み、二十代後半に見えるその顔は齢、数百歳とは到底思えない。金色の女が羨むほどの綺麗な長髪を靡かせ、分厚い毛の固まりの七本の尻尾を軽やかに動かしながら扇子を扇ぐ彼は、族長のフォックスである。魔族の中では一、二を争う実力者でもあり、その昔、あの竜王すらひれ伏せたという伝説をもつ男、最も神に近い者とまで言われている。

⑰フォックス「おもしろうなってきよった」

フォックスは攻め入られている側の将とは思えない暢気な表情で、一つ大きな欠伸をすると、頭上をみやげた。と同時に、轟音が響く。

銀色のメタリックボディ、大型戦艦が現れ颯爽と狐寺の上空を旋回すると、二人の剣士が天井に開いた天窓から本殿へと降り立つ。

鬼「連れて参りました。まさかこのような事態になっているとは…」

「いてぇな。無茶させやがって」

上空から飛び降りた衝撃で尻餅をついた漆黒の鎧剣士は頭をかきながら立ち上がった。

No.302 10/04/09 11:03
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 301 ⑰フォックス「相変わらずじゃのぅ。凱」

清楚な趣きに相反し、不気味に笑みを浮かべる。それは剣士に対する歪んだ愛情を表しているかのようだった。

⑦凱「フォックス、言っとくが俺はお前に下ったわけじゃねぇぞ。この戦いには、狐族の力が必要だからな」

そんな化狐の大将を見た凱の背筋には冷たい悪寒が走った。

神人とまで称えられるフォックスだが、凱に言わせれば、人の命をもて遊ぶのが大好きな鬼畜ヤロー、恩人であり、宿敵でもある狐人なのである。

⑰「ほぅ。いつから私にそんな口のきき方をできるようになったのじゃ?」

⑦「う゛…うっせぇ!もう昔の俺じゃねぇんだぜ!」

凱が狐寺にいた頃、それはそれは恐ろしい日々であった。

十数年前、十代を少し回った頃、凱はフォックスに拾われた。

当時、幼き身で生き抜く身を守る為、ただ力のみを追い求める刃のような存在であった。

賞金稼ぎを始め走り出した当初、子供ながらに野獣のような殺気を放ち、闘いに明け暮れる日々を過ごしていた。

無謀な毎日、命をまるで紙きれのように扱っていた。

だが、そんな若気の至りなど知れている・・・

No.303 10/04/09 11:41
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 302 ⑰フォックス「寺を出てもう10年以上になるかの。少しは成長したと思っていたのだが…私が送った刺客たちの頑張りも無駄だったか?」

⑦凱「あぁ?試してみるか?今の俺ならお前の首、とれるぜ」

幼き魔物、一時は闇社会でその名が通った時もあった。だが、そんな幼き狼が倒れるのは早かった。

大金欲しさに大物賞金首に手を出したのが不運の始まり、あっけなく闘いに敗れ、命からがら逃げ伸びた凱に賞金が掛けられ、自身も闇社会から追われる身となったのだ。

攻勢に出ていた者はめっぽう守りに弱い。ましてや強さでしか己を表せなかった幼き者に身を守る術などなかった。

そんな消えようとした命に、救いの手を差しのべたのがフォックスである。

狐人の戦士に囚われた凱に、慈悲を与え、寺に匿ったのだ。(狐人は賞金稼ぎで生計を立てる者が多い)

⑰「意気はよくなったな…そうだ覚えているか?寺にきた時のことを、お前は戦士に捕まり協会に売り渡されるところを私が拾ってやったのだったな」

⑦「『私の玩具としてここにいろ雑種』…よく覚えてるぜ、その一言は死ぬまで忘れねぇよ」

凱は昔を掘り返すフォックスの真意を探るのに躍起になっている。

No.304 10/04/09 12:08
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 303 ⑰フォックス「あの時は驚いた。銀狼と人間の混種、出生確率は極めて低い、生まれてきても死子が多いと聞いていたが…それが目の前に現れたからな。しかも…お前から感じたオーラにこの私が、未知の力を感じたのだ」

⑦凱「気色悪いこと言うんじゃねぇ、お前らしくねぇぜ」

今まで凱を認めようとしなかったフォックスから出た思わぬ言葉に動揺する。この会話を横で聞いていた鬼も驚いた。

鬼「族長…」

狐寺に狐人以外の者を招き入れるなど言語道断、凱が寺に住まうことになった当時は族長であるフォックスの指示であったが為に致し方なく鬼を含む他の狐人たちは了承せざる得なかったが、影では凱を拒む者は多かったのが事実である。そんな中、陰湿ないじめもあったが、凱の人柄は次第に理解者を増やしていき、多くの狐人が凱を仲間として認めようになった。

⑰「族の掟を変えてまで他族のお前を寺で修行させたのも…死に近い苦痛でしかなった私の試練も…砦などの刺客を送ったのも…全てこの未来の為」

フォックスは静かに目をつぶった。困惑を隠せない凱はたじろう。

No.305 10/04/09 12:45
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 304 ⑰フォックス「凱よ、お前は私のことが憎いであろうな。寺を飛び出た時のお前の目は今でも脳裏に焼きついて離れぬ」

野獣のような幼き凱は狐寺に住まうようになってから変わっていった。仲間に囲まれ、刺々しかった心も丸くなり、修行の毎日ながら笑顔を作るようになる。砦や鳥などの同年代の仲間と友に歩む過酷な修行は苦痛にはならなかっただろう。

⑦凱「あんたが出した最後の試練だけは…間違ってる。フォックス、お前は神でもなんでもねぇ…阿修羅の道をいく悪魔だ」

戦士への認定試験、フォックスが修行の最後の試練として出したのが、単純明快な一言であった。

『隣の者と斬り合え、生き残った方が戦士となる』、凱はその言葉を疑ったことだろう。

隣りにいた砦が斬りかかってくるその時までは・・・

言うまでもなく、凱は闘いを拒んだ。そして、決して後ろを振り返ることなく寺から逃げた。

それからは族の掟を破った者として、狐人に追われる日々を今日まで過ごしてきた。

⑰「あれが戦闘民族と呼ばれる族の生き方だ。強くなる為には殺さねばならぬもの(心)もある…砦が今も友であるお前の命を狙うのも戦士として必要な試練だと認めているからなのだ」

No.306 10/04/09 13:14
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 305 ⑦「間違ってる。本当の戦士はそんなんじゃねぇ…俺は寺を出てから本当の戦士たちに出会ってきた…今のかけがえのない仲間たちだ!フォックス!お前の考えじゃぁ真の戦士は作れねぇ!」

鬼「止めるんだ…過去を繰り返すのか!族長は変わられたのだ…」

⑦「!?」

剣に手をかけた凱を抱き込むように鬼が止めた。その手はとても暖かかった。

⑰フォックス「確かに…過ちかもしれない…お前を見てそう思った…」

⑦「フォックス…らしくねぇぜ」

⑰「私も老いたのかもな」

精一杯、手を広げ天をみやげるフォックスから涙がこぼれ落ちた。

⑰「寺を出る時にお前に言われた『間違ってる』の一言、私は否定し続けてきたが…連合軍を相手に闘うお前とその仲間たちを見守る内に否定できなくなっていた。お前をここに呼んだのは他でもない…」

袖で涙を拭うと、摺り足でゆっくり凱へと近づく。永く止まっていた時間が動き出すように、

⑰「ゆるせ…凱。我ら狐族、戦士、凱へ協力しようぞ」

⑦「らしくねぇっての。とりあえずここを囲ってる連合軍潰してからゆっくり話をしようぜ」

凱とフォックスの間にあった深き溝がなくなっていた・・・

No.307 10/04/09 13:45
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 306 トガッ

⑦凱「がはッ」

⑰「言っておくが調子にのるな。二度とは言わぬ」

凱は身体を大きくのけ反らせ、腹部に入った強烈な足蹴り受け飛ばされる。フォックスは腹を抱え、うずくまる凱を見下しながら言った。

⑦「くそヤロー、いきなりかますとはいい度胸じゃねぇか!!」

剣を抜き、地面を蹴り出した勢いを利用し間合いを詰めた凱、しかし、フォックスの繰り出した早業の右拳を顔面にくらい、剣を振る間を与えられず再び吹き飛ばされてしまう。

⑰「頭に血がのぼって周りが見えなくなるのは相変わらずか、成長しとらんな」

⑦「てめぇ、なめんなよ…爆炎阿ッ!?」

鬼「止めんか…言っとるだろう。痴話喧嘩をしてる場合ではない」

技を放とうとする凱の前に立ちはだかった鬼は腰に携えた剣に手をかけていた。凱はそれを見て思わず生唾を呑み込むと、大人しく剣を収める。

⑰「意気がいいのは結構だが、敵は雑魚ばかりではない気を引き締めよ。敵は強い、カラス中将、レイ少将は骨が折れる相手となろう。しかし問題なのはアンテ少将、奴は…」

『ドイスが出てくる以前は闇の帝王に位置していた闇魔術師だ』・・・フォックスの言葉に場の空気が凍った。

No.308 10/04/18 23:28
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 307 カラス中将「あれだな」

レイ少将「はっ、あそこにフォックスがおります」

本殿を目の前にしたカラス中将はその勢いを止めることなく、狐人の戦士たちの中を走り抜け、的確に首の動脈を切り抜く、カラス中将が剣を振るう度に一つの命が失われていった。

「悪鬼…まさに鬼だ…」

戦闘民族とまで呼ばれる狐人の戦士たちも全身を返り血に染めるカラス中将に恐怖し、逃げ出す者まで出ていた。

「ひ…怯むな!押さえつけてしまえ!数でいくぞ!」

本殿前を警護する狐人の戦士、百名近いその人数もさることながら四本尾の主力戦士たちが列を並べていた。しかし、その狐族の主力部隊すらカラス中将に傷一つ負わせることも出来ずにいるが事実であった。





カラス中将が本殿の入口、門へと目前に迫ったその時、本殿の門が開かれる。

カラス中将「誰だ?貴様は…」

堅く閉ざされた門が勢いよく開くと、ゆっくりした足取りで一人の剣士が出てくる。

「おッ、さっそく敵発見だぜ」

剣士は手慣れた動きで腰に携えた二本の剣を抜く、そして、血まみれのカラス中将を見て、にやりっと笑みを作った。

No.309 10/04/19 20:53
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 308 「えらく派手に暴れてくれたなぁ。狐人とは兄弟分みたいな俺には…この光景こたえるぜ」

多くの狐人が倒れ、残虐の限りを尽くされた光景、剣士は言葉とは裏腹に陽気な口調でそう言った。

カラス中将「貴様は…確か…」

剣士の登場に狐人の戦士たちにざわめきが起こる。カラス中将を囲んでいた戦士たちは剣士に道を開くように二つに別れ、カラスから距離を開けた。

分厚い漆黒の鎧を身に纏った剣士、その鎧に負けぬほどの大柄な身体は剣士の力を象徴するかのようである。二本の奇妙な刀を携え、禍々しいオーラを放つ彼は自信に満ちていた。

カラス中将「反乱組織の一味、賞金稼ぎ凱だな」

幼き少女にさえみえるカラス、そんな彼女が、大柄な剣士を睨み付ける。そんな光景はなんとも滑稽にみえた。

⑦凱「おっ、俺も有名になったもんだな。んじゃ~いっちょよ、手合わせ願うぜ!嬢ちゃん!」

カラス中将「!?」

凱の姿が歪む、それが残像であったことに気付いたカラスは咄嗟に後ろに跳んだ。こめかみに剣先が掠める。

⑦「俺は女だからって仲間を殺った奴に手加減できるほど人間できてねぇから覚悟しな」

カラス中将「ちッ…」

No.310 10/05/02 18:07
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 309 ⑦凱「いくぜ!ガイブレイド!!」

低姿勢からの突剣、大量のオーラを身に纏った凱はまさに巨大な一つの槍さながらである。銀狼の眠っていた力が覚醒した今、昔とは比べものにならない威力となっていた。

カラス「少しはできるようだな…こちらも出し惜しみはできないか」

黒装束の下に覗かせる女性ならではの丸みを帯びた身体、それを拒絶するように漆黒のオーラを物質化し、刺々しい鎧を身に纏わせる。幼き顔は、黒き鬼の兜で覆われた。

⑦「!?」

カラス「まだだ。私の真の力を見せてやろう」

二人のオーラが激突したその瞬間、凱は飲み込まれるようにカラス中将のオーラに覆い尽くされ、動きがとまる。

⑦「これは…ッ」

カラス「連合軍が開発した対剣士用の戦闘能力…影操り。私はその実験体だ」

カラス中将を中心に放たれた邪悪なオーラ、それは無数の手となって凱の身体を拘束すると、その勢いのまま締め上げる。骨が軋む音とともに凱は声にならない悲鳴を放つ。

カラス「オーラを物質化、つまり…私の周囲はオーラという物質(壁)があるということだ。私に貴様の刃は届かない」

No.311 10/05/03 18:43
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 310 希望が消えた。

周りで二人の戦いを見守る狐人の戦士たち、戦闘民族の彼らが完全に戦意を失っていた。

凱の昨今の活躍は狐人の戦士たち皆が知っている。寺を抜け出し、狐族では謀反者として扱われていた凱ではあったが、連合軍との闘いに勝ち続けた数多くの武勇伝は狐族に伝わり、多くの者が凱のその力を認め、尊敬する者までいた。

しかし、そんな存在が今、手も足もでず敵に捕まえている。

カラス中将の絶対的力の前では何もかも無力になってしまうのだろうか。

太陽の光は、分厚い雲で覆われる。湿った空気が風とともに運ばれてきた。

嵐が近い。

風の強さは増していく。

⑦「くっ、動けねぇ」

カラス「逃げれん。このオーラは、私そのもの…お前には破れん」

手を上げたカラス中将の動きに合わせ、物質化したオーラは凱を持ち上げる。

カラス「闇に堕ちろ」

オーラは徐々に凱を身体を侵食し、ものの数分で包み隠す。そして、円球へと形を変えた。

カラス「私の力の一部となるがいい」

オーラが爆発的に膨れ上がる。同時に物質化したオーラが広がり、周りにいた狐人を次々と飲み込んでいく。

No.312 10/05/12 14:36
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 311 黒く、巨大なオーラは四方へ広がり、濁流に呑まれるように周囲の狐人たちはオーラの闇に消えていく。

カラス「はははっ、いいぞ…潤沢なオーラだ!!」

他者のオーラを我が物とし、止まることがない。カラス中将のオーラは既に、本殿呑み込もうとする程、強大なものへと変わっている。

カラス「な…なんだ!?」

突然、膨れ上がるオーラが脈動する。オーラの中心に立つカラスは不安定となったオーラに煽られ身体がふらつく。

カラス「ッ…馬鹿な!制御がきかない!」

脈動が次第に大きくなり、オーラの膨らみ、動きが止まる。そして、風船が破裂するようにオーラは消し飛ぶ。その反動を受け、周囲に凄まじい風が駆け、カラスは耐えきれず崩れ落ちる。

カラス「くっ…お前…どうやって」

⑦凱「俺を倒した気になってたか?」

オーラを失って膝をつくカラスは、自分を包む人影を見やげる。そこには取り込んだはずの凱がいた。

No.313 10/05/28 17:07
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 312 銀狼の力を解放させた凱は凄まじいオーラを放つ。先程とは比べものにならないオーラの量にカラス中将は目を疑った。

カラス「貴様ぁ…一体…!?」

刹那、剣撃が走る。血がほとばしった己の身体に、カラスは目を見開いた。

⑦「仲間の仇だ」

カラス「ふッ…まさか…貴様のような輩にやられるとは…な…」

滴り落ちる血を止めようと傷口を手で押さえながら、一歩二歩、ふらつきながら歩き倒れる。それと同時に、カラスのオーラから解放された周りの狐人は歓声を上げる。

⑦凱「終わっちゃいねぇ!!」

その歓声を制止するように凱は声をあらげた。

レイ少将「中将殿を倒すとは驚きました…」

倒れたカラスを抱え上げる一人の魔法使い。凱はその者の気配を目視で捉えて初めて察知した。

レイ少将「取り込まれたはずの貴方がどうやって逃れたかは知りませんが…オーラを失い弱ったカラス中将に勝った、ただそれだけのこと、次、中将殿に会う時は貴方の死期となるでしょう」

⑦「てめぇ」

廃人のように枯れ果てた魔法使いの男の顔は不気味に笑み作り姿を消す。凱の剣はやり場を失い空を駆けた。

⑦「ちッ」

当然、カラス中将の姿もそこにはなかった。

No.314 10/06/09 17:17
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 313 敵をあっさり取り逃がしたことに落胆しながら剣を収める凱は勝利の余韻に浸ることは出来なかった。傍観していた狐人たちは凱の圧倒的力を目の当たりにして言葉を失っていたが、ざわざわとざわめき始めた。多くの者が本殿の方角を目を丸くして見つめている。

⑰フォックス「あそこまでいって逃がすとは…はやはや呆れるの。アヤツ(カラス)の力は残しておけば脅威となのろうに」

鬼「族長、今は戦時!ほ…本殿にお戻り下さい!」

本殿から神妙な赴きで現れたフォックスに本殿を警護していた狐人たちは膝をつき頭を下げる。

⑦凱「自由奔放だな。どうせ出てくるなら手を貸して欲しかったぜ」

⑰「ほぅ。一匹狼を名乗るお前が?手を貸して欲しいなら頼めばよいものを…のぅ?」

⑦「ちッ」

顔を真っ赤にして後ろから責め寄る鬼教官を気にも止めず、凱の御前に歩み寄ったフォックスは笑みを浮かべる。先程の戦いを見守っていたフォックスがどのような思いで、その笑み作ったのかは凱には判断しかねた。

⑰「鷲も立て籠るのは飽きてきたところじゃ。狐人の本当の力、あやつら(連合軍)に見せつけてやるとしようかの」

No.315 10/06/17 15:04
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 314 狐寺は本殿を中心に円形に広がる三重壁に覆われ、その障壁に守られるように寺のような建造物が並ぶ。そして、最も外側の壁、第一壁をフォックスの強力な結界が堅く狐寺を守っている。その防御力は、シーラ星のナタレー王女が守る冬国にも引きを取らないであろう。

しかし、その難攻不落の要塞が、結界は破られ第一壁までも落とされ、第二壁も最早、連合軍の手中に落ちようとしていた。

⑰フォックス「ふ~む。好きに暴れよって」

そんな光景を妖術で高く宙に舞い、見守る寺の主は心中穏やかではなかった。

③セレナ「フォックス様、私もお力添えします」

浮遊魔法で傍らにいるセレナにもそんな気持が伝わってくる。

⑰フォックス「ほぅ。頼もしいな」

詠唱を唱えるセレナの杖は眩い光を放つ。その瞬間、烈火の炎が連合軍へと降り注いだ。

⑰「ほぅ…流石は大戦の英雄か」

一瞬で燃え広がる炎に多くの連合兵が呑まれいく。

突然の空からの奇襲に、体勢を崩した連合軍、チャンスと見るや狐人の戦士が物陰から一斉に討って出る。

No.316 10/06/27 19:34
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 315 ③セレナ「貴方たちにこれ以上好きにはさせない」

燃えながら逃げまどう連合兵、そんな兵を押し退け後陣の連合兵が隊列を進める。戦場に現れた麗しき魔法使い、そんな彼女は木の葉が舞い落ちるように軽やかに地面に着地する。

血の匂いが鼻につき、思わずセレナは目を細めた。しかし、闇の手に落ちる狐人をこれ以上出さない為、セレナは再び杖を振るう。

⑰フォックス「炎と風を操るとは…」

駆ける狐人の戦士を後押しするように強風が吹いた。その風は先程の炎を巻き上げ、更に多くの連合兵が炎に包まれる。

⑰「おっと、娘一人に任せてばかりではおれんな」

思わず彼女の勇姿に見とれていたフォックスはたじろう連合兵に視線を移し、深く息を吸う。

その直後、狐人最高峰の狐火が火を吹いた・・・

No.317 10/07/18 18:59
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 316 周囲一面が閃光に包まれ、甲高い音を上げる。視界、聴力までもが奪われ、ようやく目を開けれるようになった時、誰もが目を疑った。

③セレナ「なんて…力なの…」

狐族の長にして、世界最高齢のフォックス、その力に誰もが生唾を飲んだ。

⑰フォックス「ちょいとやり過ぎたか」

押し寄せていた連合軍の一角が跡形もなく消し飛んでいた。それどころか、狐寺の第2壁・第1壁をも破壊し外で包囲網を築いていた連合軍をも綺麗さっぱり消えていた。数千もの兵が一瞬にして存在の形跡すらなったのだ。

重機、戦艦が結界の外で役立たずの連合軍、フォックスが戦場に出た今、狐寺での戦いは既に決していた。神人フォックスの絶対的力を前にし、連合軍の逆流が起こる。結界の亀裂から次々に連合兵が逃げ出していく。

⑰「ほほぅ。連合軍とは名ばかりよの、もう逃げ出すか…だが、私が簡単に逃がすと思うてか?」

悪巧みを企む子供のように笑みを浮かべたフォックスは躊躇することなく第2破を放つ、また閃光が辺りを包んだ。

しかし…

アンテ「そう慌てるな…フォックス殿」

狐火は突如現れた黒渦に飲み込まれる。

フォックス「出よったな…アンテ」

No.318 10/08/08 18:55
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 317 アンテ「ご機嫌如何か?」

ブラックローブに身を包み、姿や顔を覆い尽くし、赤い二つの眼光だけが、怪しげに光る。そんな魔法使いは、地を這うような低い声で、フォックスへ話しかける。

⑰フォックス「儂の城へ、いきなり攻め入るとは…無礼なやつよの」

アンテ「菓子の一つでも持って挨拶にとは思ったが、生憎、これは《戦争》だ」

⑰「ならば、その戦争を始めるまえに、儂の部下を返してもらおう」

おどけた様子でアンテに近寄っていたフォックスの目付きが変わる。9本の尻尾を広げ、燃えたぎる炎に包まれていく。

アンテ「どうやら…本気になってくれたようですな。ふふ…心配せずともまた息はある」

ローブの下から抱えていた蟷螂をアンテは投げ捨てた。変わり果てた姿となった同士にフォックスはらしくなく怒りを表に出しているようだ。

アンテ「私の闇魔術で存在を消していたのに…気づくとは流石だ。戦いの盾に使おうと隠し持っていたのだが、あてがくるった」

⑰「儂を怒らせて得することはないぞ!!」

No.319 10/09/01 12:44
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 318 ⑰フォックス「業火烈弾」

大気を一瞬にして乾燥させ、肌が焼けるほどの熱風が辺りを駆ける。先程の狐火も相当な威力であったが、あれがまで豆鉄砲に見えてしまう程、フォックスが放った炎は凄まじかった。

アンテ「ぬぅ!!これ程とは…ッ!!」

炎の塊、太陽とでも言おうか、その凄まじい熱量は軽々とアンテを飲み込み、地面へとめり込んでいく。それでもまだ勢いは止まることなく、炎の塊は地中深くへと消えていった。

③セレナ「凄い…」

思わず腰を抜かしそうになったセレナをいつの間にか隣にいたフォックスは支える。

⑰フォックス「セレナ姫よ。儂は破壊は得意なのだが…回復魔法は苦手でな。こやつを助けてやってくれ」

③「あっあ、すいません。私ったら動転してて」

はっと我に帰ったセレナは目の前に倒れた蟷螂に回復魔法の詠唱を唱える。狐人の回復能力もさることながらセレナの魔法も相まって、瀕死であったのが嘘のように、傷は塞がり、蟷螂の呼吸が正常に戻っていく。

蟷螂「族長、このような失態…弁解の言葉もありませぬ」

既に立ち上がれるようになった蟷螂は立ち上げるのが早いか膝をつき頭を下げ、自責の念に押し潰された顔を隠した。

No.320 10/09/22 00:22
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 319 ⑰フォックス「馬鹿者、今はそれどころではない。鬼と合流し隊を立て直すのだ」

蟷螂「はッ」

セレナに一礼すると蟷螂は姿を消す。フォックスは健在なその動きを見て安堵の息を吐く。

③セレナ「倒せたのでしょうか…」

⑰「分からぬ。しかし、手応えはあった。それ相応の傷は受けたはずじゃ」

土煙が舞う中、地面に開いた穴を見下ろすセレナ、真っ暗な穴の先はまるで奈落に通じているかのように途方もなく深く感じる。

⑰「もっともあの技は半日は燃え続ける。生きていたとしても暫くは動けまい。今の内、兵を片付けるとしよう」

フォックスの戦いに一先ずの決着がついた頃、狐族と連合軍の戦闘に動きがあった。

圧倒的に有利であった連合軍の指揮が乱れ、後退する部隊が後をたたない。

鬼「指揮官を狩れ!!雑魚など相手にするな!兜頭だ!」

鬼教官率いる主力部隊の参戦により、狐人の動きが格段と良くなかっていた。部隊の指揮官を的確に排除し、隊列が乱れた兵を確実に潰していく。

No.321 10/10/22 15:59
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 320 連合軍が押されていく様を塔の高台で見学する一人の剣士がいた。分厚い漆黒の鎧が黒光りし、携えた2刀の剣は鞘にしっかりと収められている。

⑦凱「どうやらここは時期に決着つきそうだな。しかっし、クリスたちが来るまでのんびり待つのも退屈だし…敵の本拠地に攻め込むか」

遠い眼差しで、ウマンダ星政府軍指令基地を見つめていた凱は笑みを浮かべ、塔から飛び降りる。


政府軍指令基地はウマンダ星で最も巨大な建造物であり、ウマンダ星の民にとっては象徴的な存在だ。

直径数kmの半円状のドーム、外壁は簡素なコンクリートで覆われ、均等に何万ものガラス窓が並んでいる。

政治、軍事の全てをここで賄い、国の機関全てがここに収められている。だが、そんな機関は全て連合軍の支配下に落ち、事実上、連合軍の指令部と化していた。

No.322 10/11/19 11:36
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 321 ワイングラスが握り潰される。赤ワインの濃厚な香りと混じり、鉄の臭いが辺りに広がった。

大理石の石畳、国宝級の数多の彫刻で飾りつけされ、平時ならば政府軍の重鎮たちが軒を連ねる政府軍指令基地の中央会議室である。しかし、政府軍の核ともいえるその部屋は照明が落とされ、窓から入る僅な月光に照らされるだけで大部分が闇に呑まれている。

キメラ将軍「コイル中将、ベンガル中将に続き…サム中将までもが戦死、カラス中将率いる軍も敗戦だと…ッ!!」

連合軍の主戦力である七大中将を3人も失ったとの報告を受けたキメラは怒りの余り、持っていたグラスを握り潰すと、人とは思えない形相を浮かべ、傍らに控えている3人の中将たちに底知れぬ圧力(魔力)を浴びせる。

グラカス「将軍、そうカッカきなさんな。サム、カラスが敗れたのは予想外だが…敵が強いほど楽しくなるってもんですよ」

常人なら死に値する程の魔力を受け、顔色一つ変えない紅の戦士は楽しそうに笑みを浮かべる。中将の中では別格の存在とは言え、我を失いつつある将軍にとる態度とは思えない。ジャッカル中将、ボリック中将はそんなやりとりを冷や汗もので眺めている。

No.323 11/01/16 00:56
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 322 キメラ将軍「グラカス、口だけ達者では困るぞ。英雄どもの首を私の前に持ってきてから大口を叩くのだな」

太陽すら呑み込みそうな漆黒のマントを翻し背を向けたキメラは周囲の空間をねじ曲げ、ノイズのような砂嵐を中へと消える。

グラカス中将「まぁ近いうちにそうさせてもらうよ。将軍様」

グラカスは残された割れたグラスを手から出した炎で跡形もなく消しさると、将軍が座っていた椅子へ腰かける。

ジャッカル中将「兄貴(アニジャ)、将軍に楯突くのはやめろよ。落ちぶれたといえ、元大賢者だぜ」

グラカス中将「ジャッカル、お前はいつまでたっても小心者だな」

弱口をたたく大男にため息をつきながらグラカスは傍らに控えるもう一人の中将へ視線を送る。

ボリック中将「分かっていますよ。雑魚の始末は私に任せて下さい」

不気味な虫人間は笑みを浮かべると姿を消す。同時に桁ましい警報音が響く。

グラカス中将「面白くなってきた。せいぜい、俺を飽きらせてくれるなよ」

警備モニターに映る漆黒の剣士にグラカスは心からの言葉を投げ掛けていた。

No.324 11/03/18 03:28
カズ ( 20代 ♂ wYw8h )

>> 323 白を基調とした軍服に身を包んだ兵士たちが慌ただしく、武器の保管庫へ走っていく。その表情には緊迫したものがあった。

「侵入者は1階北エリアD27から南に進行中だ!!」

怒鳴り声の簡素な指令を聞きながら武器を手に取り、兵士たちは保管庫からとんぼ返りしていく。政府軍の精鋭ホワイトレールガン、その連携された動きにはまったく無駄がない。











⑦凱「ちッ!!連合軍と違って、やるじゃねぇか!!流石は俺様の故郷だぜ」

漆黒の鎧剣士は頬に掠めた銃弾に笑みを浮かべながら物陰に隠れた。それを見た兵士たちは、ここぞとばかりに距離を縮めてくる。

⑦「連合軍とは違って…簡単にやるわけにもいかねぇしな。どうしたもんか…」

政府軍の中枢基地、外部からの侵入を許すなど前代未聞の事象であった。しかし、それほどの要塞であることに変わりはない。凱の動きに臆することなく、兵士たちは的確に攻撃をしかけてくる。対狐人・銀狼をシミュレーションしている彼らの動きは凱のスピードにすら対応していた。

⑦凱「とりあえず、姿を眩ませるか。数が集まっちまうと大変だしな。シャドー回線繋いどけ!お前の出番だ!」

凱は懐から煙玉を取り出すと床に投げつける。ナナ特性のそれはとても安全とは思えない爆発を上げ、また凱の鎧を焦がしながら黒煙を一瞬にして広げていく。

⑦凱(殺す気か~!!)

凱はそう心の中で吠えると咳き込みながら黒煙に身を隠した。流石のホワイトレールガン精鋭兵も爆発と勘違いし身を伏せながら黒煙に呑まれていた。

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