刺青少女
青春とは程遠く、がむしゃらに幸せになりたいと願う少女
幸せ=金 ?
友達って何?
ど素人の携帯小説なので、中傷は ご勘弁を…。中々スレ出来ない事もあるかと思いますが、お付き合いくれると嬉しいです。
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優しい目で なぎを見つめるのは武だった
なぎは自然と安心した
武は なぎを抱えたままタクシーに乗り込み、車が走り出した頃、なぎのお腹は少しずつ 痛みが 落ち着いてきた
「武さん…ありがとう。あのね…」
なぎは 今の状況を どう説明したらいいかと言葉を濁らせていた
「知ってる…マーチンから聞いてるから…」
…知ってるって
「俺の子供だろ?」
なぎは泣きたくもないのに目から涙が 溢れ出していた
そんな なぎを武は優しく抱き寄せた
「お前、やっぱスゲーよ。俺が惚れた女なだけあるな」
武は泣いているのか、声が いつもとは違い どもっていた
なぎは又腹痛に 襲われ、病院に着くまで 武と話す事は出来なかった
武も 黙って なぎの手を握りしめたまま離す事は無かった
それから2時間後 なぎは男の子を出産した
3240gの真っ赤な顔で泣く元気な姿に、なぎは 嬉しくて涙が止まらなかった
「頑張りましたね!お母さん、元気な男の子です」
…お母さん
それからお産の処置が始まり赤ちゃんに初乳をあげ、病室に戻ったのは2時間後だった
病室に戻ると 父と母の姿があったが、武の姿は 無かった
「なぎちゃん、よく頑張ったね。真澄さんも、今こっちに向かってるわよ」
母は 嬉しそうに赤ちゃんの居る‘ベビーステーション’に父と二人で 孫を見に病室を出ていき、入れ違いに看護婦が入ってきた
「変わりないですか?」
なぎは 思いきって武の事を聞いた
「あの、ここに来た時…男性が一緒だったのですが…」
看護婦はなぎの腕の脈を計りながら「あぁ、あの男性なら…先程お帰りになりましたよ」
…さっき?
きっと武の事だから子供の顔を見て帰ったのだろう
なぎは武がまだ外にいるかもしれないと着てきたカーディガンを羽織った。その時、病室の前で 楽しそうに会話をする声が聞こえてきた
その声に耳を澄ませると、声の主は母とマーチンだ
なぎは慌ててベッドに座り、扉が開くのを待った
「なぎ!頑張ったなっ!」
目に涙を浮かべ、嬉しそうに はしゃぐマーチン
父と母は 二人に気を使ってなのだろう、病室には入って来なかった
「名前…どうしようか」
…名前
「男の子だし…何が良いかな」
マーチンは興奮が収まりきれない様子で 次々と名前を上げていく
「ゆっくり決めようよ。出生届けまでには少し時間あるし…」
なぎは軽く言ったつもりだったが、マーチンは「どうしたの?調子悪い?」と心配そうに なぎの背中を擦った
「あのさ…」
なぎは武の事を聞こうとした
ガチャ…
「赤ちゃん連れて来ましたよ」
看護婦が 小さなベッドを運んできた
ベッドを覗き込むと、フカフカの白い布団の中では気持ち良さそうに眠っている可愛い我が子がいた
結局、武の話は出来なかった。タイミングが悪いのも、武の話はするべきでは無いのだと自分自身に言い聞かしていた。
息子の名前は‘空’と命名した
‘空’は、誰のものでも無く、誰にでも必要なものだから…
空が一歳になった頃には、マーチンとは週に一度会えればいい程 マーチンの仕事は忙しくなっていた
テレビの画面から見るマーチンは、いつも輝いていた。空も分かっているのか、マーチンが画面に映る度、テレビに指をさすようになっていた
どの雑誌を見ても、チャンネルを変えても、必ずと言ってもいいほどマーチンを見る事が出来る
「ごめん、いつも家にいれなくて…」
マーチンは帰ってくる度、変わらない優しい口調で抱き締めてくれていた
それでも、幸せだった
ある一本の電話が掛かってくるまでは…
その電話は突然だった
いつもの様に二人きりの夕飯を食べ、満足そうにミルクを飲んで空は寝ている
食器を洗おうと水道の蛇口に手をかけた時、携帯電話が鳴った
…マーチン?
時計を見ると7時を過ぎていた
携帯の画面には見覚えのない番号
「…はい」
電話の相手は前に一度だけ会った事のあるマーチンのマネージャーだった
「杉浦さん?マーチンに何かあったんですか?」
何か…事故でもあったのかと思った
「すいません、突然電話して。あの…とても言いにくい話なんですが、渚さんにも伝えておかないといけない事がありまして…」
それは、マーチンと別れて欲しいとの要望だった
マーチン本人にも伝えてあると…
「今が大事な時なんです。明日の、週刊誌を見て頂ければ僕の言いたい事は分かると思います。」
杉浦は、マーチンの所属事務所から手切れ金が出ると言った
「二人の問題に何で第三者が出てくるのですか?その話、お断りします」
電話を切った後は頭が真っ白になっていた。すぐにマーチンに電話をかけたが留守番電話に繋がってしまう
その夜は不安のまま、空にピッタリと くっつき朝を迎えた
朝早く目が覚め、昨晩の杉浦の言葉を思いだし、近くのコンビニへと走った
寝ている空を置いて家を開けるのは初めてだった。だが、マーチンとの、これからの人生が決められてしまうかもしれないという不安で なぎの胸は痛く苦しく必死だった
コンビニに並んでいる 全ての週刊誌を手に取りレジに向かった
家に帰り、まだ寝ている空の姿を見てホッとして 買ったばかりの雑誌を机に広げた
「なに…これ」
思わず息をのんだ…
『スクープ!あの人気グループのボーカルはレズ?』
雑誌の内容は 面白可笑しく書かれていた
ある雑誌にはマーチンと空と三人で近くのスーパーへ買い物をしている所だろうか、なぎと空の目には黒い棒が入ってあり『交際相手のAさん』と『その子供』と書かれていた
他の雑誌にも目を通したが どれも同じ様な内容だった
マーチンの事が心配になり、携帯電話を手にしたが ダイアルを押す事が出来なかった
投げ捨てた雑誌の開いたページにはファンへのインタビューの様子が写真と一緒に載っていた
写真は足元だけだったが『ショックでした』や『ファン辞めます』と 文字が刻まれていた
なぎは悔しくて、雑誌を引き裂いた
「何で?何が駄目なわけ?」
本当に悔しかった
「ふざけんな!」
その声に隣の部屋で寝ていた空が泣いた
なぎは すぐに空の元へと行き、泣いている空を抱き締めた
「ごめんね…しっかりしなくちゃね、ごめん…」
…とにかく、マーチンから連絡くるまで待っていよう
空の顔を見たら、冷静になれた自分がいた
―ピンポーン
玄関のチャイムが鳴り、モニターで誰なのか確認した
小さい画面では よく分からないが、そこに女性が映っていた
‘通話’を押し、女と繋がるが否や 女は一方的に喋り出した
『○テレビです。今日の週刊誌は見られましたか?真相はどうなんでしょうか。お子様は今何歳になられるんでしょう?お話伺えませんか?』
…うわっ、何?
驚いて何も答えずに 直ぐに切ったが、またチャイムが鳴った
何度も何度も家の中にチャイムの音が鳴り響き、さすがに空も泣き出してしまった
読んで下さった方 ありがとうございます🙇
そしてレスを下さった方々、本当にありがとうございます🙇
私情ではありますが、多忙が重なり ここに来る事が出来ませんでした。
少しづつではありますが、今まで通り最後まで頑張りたいと思っております。ご迷惑おかけしました事をここでお詫び申し上げます🙇
「工藤さん居る?」
睨み付けるような目に ゾッとした
「いません…」
「それならアンタに言っておけばいいかね?」
それは、苦情や退去の要請がマンション住人から出ているとの内容だった
「まぁ、あくまでも他の住人の方々からの声を伝えたまでなんですわ。工藤さんは、えらい有名らしいし中には静かに暮らしたい人もいるっていう事なんですがねぇ」
うつ向く私に管理人は続けた
「雑誌の相手っちゅうのはアンタなんだろ?」
ニヤニヤする管理人に私は 殴ってやりたい気持ちだったが、「考えておきます」とだけ言い扉を一方的に閉めた
扉を閉めた手は震えていた
…マーチン帰ってきてよ、私壊そうだよ
それから1週間経ったころ、マーチンから電話がきた
夜中の2時だった
「なぎ…ごめん」
マーチンは何度も何度も同じ言葉を繰り返す
言われる度に、何故マーチンが謝るのかを理解してしまった
「マーチン…この電話で最後にしようと思ってるんだね」
マーチンは また「ごめん」と言う
もう、どうする事も二人で進む事も出来ないんだ
確信した瞬間、私は気持ちとは逆に「さようなら」と言ってしまった
マーチンは泣いていたんだと思う
あの時、私が嫌と言っていたら 横にいてくれましたか?
あれから5年が経ちました
テレビで貴方の元気な姿を見る事が出来ています
正直辛いです
空は元気です…私も…
空は幼稚園に元気に通っています。本当に大きくなりました。
報告ですが家族が二人増えました。
新しい命と、貴方の よく知っている人です。
雅に買ったピアスは ‘お守り’の役目を果たしてくれた様です
どうか貴方も幸せになって下さい
[完]
蝶さん初めまして🌱更新されたと思ったら完結だったのでびっくりしました😲
これは、実話だったのですね。マーチが誰なのか気になってしまいます。その後タケシさんと結婚かれたんですね😃今が幸せでありますように…完結お疲れ様です💐🎉
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