注目の話題
35歳以上は無理なのですか?
妊娠中から旦那が無理になった
義母との関わり方

恋愛人生

レス116 HIT数 7849 あ+ あ-

★匿名希望☆( mxeFh )
08/05/25 13:07(更新日時)

彼と知り合った当時、侑香には“恋人”と呼ぶべき相手が存在した。


知り合いの紹介で付き合い始めて、三ヶ月足らず。

世間で言う所の『ラブラブ』な期間であるべき相手。


しかし、侑香の中で疑問が消えなかった。



(本当にこの人を好きなのだろうか?)


元々、相手の熱烈なアプローチから始った関係だ。


付き合っていく内に、相手を本当に好きになれるだろうと考えていた。


侑香はその外見から、お高く留まっていると誤解を受ける事が少なくなかった。

ハーフの様な顔立ち。透き通る様な白い肌。整ったプロポーション。長い手足。


本人には至って悪気は無いのだが、思った事をハッキリ言う性格と外見から、彼女を遠巻きにする男性が殆どだった。


加えて仕事以外では、人見知りをするものだから、一向に恋愛の“れ”の字も無い生活を送ってきた。


そんな彼女を見兼ねた友人が紹介してくれた男性が
『柏木 尚之』だった。


大人な男性だ。


それが彼の第一印象だった。


侑香はその恋愛経験の薄さから、こんな人が自分を相手にするわけが無いと思っていた。

彼から初めてのデートに誘われるまでは。

タグ

No.925670 08/02/14 12:54(スレ作成日時)

新しいレスの受付は終了しました

投稿順
新着順
主のみ
付箋

No.1 08/02/14 14:36
詩人知らず ( mxeFh )

幾度かのデート、毎日のメールや電話を通して会話を重ねた。

ある夜、夜景の見える展望台で告白。

初めてと言って良い様な状況と、シュチュエーションに酔ってしまったと言えばそれまでだろう。
侑香は自分でも驚くほど素直に尚之の言葉に頷いていた。

彼とのデートはお洒落なレストランや夜景、映画、ドライブなどが主だった。
いつもさり気なくリードしてくれる。まるでお姫様扱いだ。
しかし侑香は勿論お姫様などではなく一般庶民だ。

ほんの少しだけ芽生えた小さな“疑問”を、初めて出来た彼氏というものを『こういう存在』だと思う事で否定する。

侑香はこの頃から彼との会話で、曖昧な笑みを浮かべる自分に言い知れない不安を抱き始めていた。

『……ん…』


『……福…ら…さん』

『福原さん?』

侑香は自分の名前が呼ばれた事に今更ながら気付く。

『えっと…、すいません。何度も呼んだんですけど。』

顔をあげる…………
名前が思い出せない。
それ程関わりはないが、顔ぐらいは見覚えがあるという認識程度の細身の男性が立っていた。

椅子に腰掛けた状態の侑香は、彼を見上げる姿勢になる。

勤務中に他の事を考ててしまった事に狼狽する。

『  名前 ? 』

No.2 08/02/14 15:38
詩人知らず ( mxeFh )

>> 1 『  はい?  』


相手が問われた事の意味が判らない様に、拍子抜けした声をだす。

『どうして、私の名前を?』


侑香は席から立ち上がり、もう一度聞いた。

身長はさほど高くない。
勤務用のヒールを履いている侑香より10cm程高い。
175cmぐらい。

キスするのに丁度好い身長差か……と考えて思わず失笑しそうになる。あたし、思春期の学生みたいだな。と顔を赤らめる。


『……有名ですから』

そんな侑香の心情を察する訳もなく。男は申し訳なさそうに発した。


『失礼ですが、お名前とご用件を。』


ここが職場である事を思い出し、
ようやく合点がいった侑香は、仕事モードに切り替えて

冷静に対応した。



『 プッ 』


堪えた様な噴出し方に何事かと思う。

『クッ クッ クッ……』


『なんですか?』

No.3 08/02/14 16:11
詩人知らず ( mxeFh )

>> 2 思わず詰問口調になってしまった事を後悔する。

まるで、今さっき自分が考えていた事を見透かされた様な気がしたからだ。



『すいません。』

慌ててフォローする男。

『噂に聞いていた人とは随分イメージが違うなと思って…』


『さっきから一人で、赤くなったり青くなったり。まるで百面相…いえ……

ランチtimeなのに座りっ放しで……。』

矢継早に言われて、時計に目を向ける。

もうそんな時間だったのか…気付かず仕事中に物思いに耽っていた自分に驚く。




『気付きませんでした。』

素直にそう言う。
周りを見渡すと殆どがランチや外回りに出て、目の前の男性と二人きりの様な状態だ。


『えっと、何か御用だったのでしょうか?』

自分ではなく他の人に、用があって立ち寄ったのかもと思い再び尋ねる。

百面相していた事については触れないままで。

No.4 08/02/14 16:48
詩人知らず ( mxeFh )

>> 3 『いえ。福原さんに。』
そう言って差し出した手には、見覚えのある定期券入れがあった。
『今朝、同じエレベーターで拾ったんですが…声掛けそびれてしまって。』


侑香は状況を飲み込めずにいた。
定期券を落とした事すら覚えがない。


『あっ…』

今朝エレベーターでハンカチを取り出した時に、落としたかもしれない…と思い当たる。

定期を確認する〈福原 侑香〉とある。

『あっ、ありがとうございます。』
慌てて礼を言うと同時にピョコンと頭を下げる。先程までの非礼が恥ずかしく、余計に深々と頭を下げてしまった。

実際、定期が無いと非常に厄介だ。

『やっぱり、違いますね。』

顔をあげると破顔している男と目があった。
『良かった。
じゃあ、私はこれで失礼します。』

『ちょっ……待って下さい。』
足早に立ち去ろうとする男の背中に、何故か侑香は声を掛けていた。

鉄面皮…彼女は職場でそう噂されている。

厳格な父に会社は働く場所、学校は学ぶ所だと教えられて育った。職場での侑香は感情を表に出さず、笑わない女として周りに捉えられていた。その事について自身も疑問を持たなかった。

稀に嫌な気持ちになる事もあったが、気に留める程では無かった。

No.5 08/02/14 17:57
詩人知らず ( mxeFh )

>> 4 『宜しければ、お名前を…そのっ…何か御礼を……ッ』

侑香のその言葉に足を留め振り向く。


『河崎 涼。』


侑香の慌て振りにまた笑顔になる。


『早く飯行かないと、食いっぱぐれちゃいますよ?』


ランチtimeは無情にも残り15分を切っていた。




『諦めます…。今日はお昼抜きで……。』


ガサガサ。


『河崎さん?あの、コレ??』



『あげます。おにぎり買い過ぎてしまったんで。』


コンビニのおにぎりが侑香のデスクに置かれている。
鮭と昆布。


『御礼は、ちゃんと飯を食べる事!良いですね?』


その言葉に思わず微笑んでしまった。


休み時間だから良いでしょ?

と心の中で父に言い訳した。



これが、河崎 涼と初めて交わして会話だった。

No.6 08/02/14 20:31
詩人知らず ( mxeFh )

>> 5 携帯の着信音で目覚めた。

液晶を見る。
ーー片杉 陶子ーー

中学時代からの友人だ。

友人の少ない侑香にとって唯一、親友と呼べる相手だ。


柏木 尚之を紹介してくれたのも陶子だった。


【最近どう?】


開口一番に聞いてくる。

『どうって?』

「おはよう。」や「起こして、ごめんね。」「もしもし」の前にいきなりコレである。

交際中の二人の進行状況に興味深々の様子だ。

陶子のこういう大雑把な所が侑香は好きだった。

その大胆な性格で、大学在籍中に結婚してしまった。

正確には尚之は陶子の旦那様の友人だ。


【あんた達、キスもまだらしいじゃない。】


思わず手に取ったばかりの、ペットボトルを落としそうになる。


『な な なんでそんな事、し 知って……まさか か 柏木さ 』



と言いかけて、引っ掛かった事に気付いた。
柏木 尚之は軽口で友人にその様な事を話す人ではないのだから。

【ちょっ… ホントに!?】

今度は陶子が驚く番だ。

【あんた達付き合って何ヶ月?…… 三ヶ月も何してた訳?】

まるで化石のカップルを嘆く様な口振りだ。


『人を引っ掛けておいて、そんな言い方しないでよぉ』

No.7 08/02/14 21:31
詩人知らず ( mxeFh )

>> 6 勿論、陶子に悪気が無い事は重々承知している。

あまりに進行の遅い二人を本気で心配しているのだろう。

『そういう雰囲気に…ならない事も無い事も無いんだけど……』

【侑香ちゃん…。何言ってるかサッパリ判んないんですけどぉ。このままじゃ、キスする前におじぃちゃん、おばぁちゃんだね。こりゃ。】

陶子が《ちゃん》付けする時は大概呆れている。

【あたしは別に、早くキスした方が良いと言ってる訳じゃないのね。】

思わず黙り込んでしまった侑香に、フォローを入れ出す。

『言ってるぢゃんッ……。』
気を許せる陶子相手だと、駄々っ子の様な一面を見せられる。

本当の侑香はこちらだろうと陶子は知っている。

【相性は大事なんだよ…。】


その言葉に一瞬で侑香の脳内は、ある妄想で沸騰した。

【今、変な事考えたっしょ? これだから妄想激しい子は困るよね…ふぅ。】

何かを言い返そうとしたが。未だキスの経験さえ無い侑香には想像もつかない。

【と~にかく、キスは大・切・な・の!!】

何だか分からないまま力説されて、頭を混乱させたまま電話は終わった。

これから、柏木に会う事を知ってか知らずか。
切れた携帯をつい見つめてしまう侑香であった。

No.8 08/02/14 23:38
詩人知らず ( mxeFh )

>> 7 柏木 尚之は真面目で、温厚を絵に描いた様な青年だった。

侑香みたいに交際経験が無い訳では無い。

しかし今だに侑香の手を握る事すら、ままならないのである。


目に見えない壁の存在を感じているからだ。


『お待たせしました。』

いつの間に現われたのか、侑香が目の前に立っていた。


待ち合わせ時刻の20分前。二人にとっていつもそのぐらいが、お互いを待たせない時間。

似た者同士の二人。


遅刻などは論外だ。



尚之は、心なしか侑香の顔が赤い事に気付いた。



『待ってないですよ。20分も前なので。

走って来られたんですか?』


心配そうに侑香の顔を覗き込む。


侑香は今朝方の陶子との会話を反芻し、益々顔を赤らめる。


『だっ、大丈夫です。』

知られたくないと反射的に顔を逸す。

見透かされそうで怖い。尚之に軽蔑されてしまいそうだから。

『さぁ、行きましょう。』

慌てて視線を進行方向に向ける。


侑香の細い指に視線を落とし、浅い溜息を付く尚之に気付く筈もないままに。

No.9 08/02/15 08:01
詩人知らず ( mxeFh )

>> 8 本日のデートコースは〔美術館〕だ。


侑香はその類い稀な美貌から、美術や芸術に興味があると勘違いされ易い事に気付いていた。


職場なら比較的思った意見をハッキリ述べられるのである。

しかし事プライベート、ましてや恋愛になると全くお手上げだ。

尚之に行きたい所を尋ねられても上手く告げられず、アタフタしてしまう始末。


そんな彼女を優しく見つめデートコースを提案する。

必然的に尚之の趣味が反映されてしまう事は致し方ない。


〔美術館〕


彼の絵画に関する造詣の深さを知り


その横顔を見つめてしまう。



何処かの国の、昔の巨匠が描いた絵よりも侑香の視線を釘付にした。


ある晴れた秋の午後…。

どこにでもある、一ページのように。

No.10 08/02/15 17:05
詩人知らず ( mxeFh )

一人暮らしのマンション。ワンルームの狭い部屋。


厳しい親元が窮屈で、就職と同時に半ば強引に始めた、一人の生活。


防音設備の整った空間は今、TVも音楽もかけなければ極めて静謐な世界だ。


ベッドに仰向けに寝転がる。

主人の鼓動だけがいつもの倍の速さで、響いている以外は。


侑香は尚之に送られてマンションに辿り着いた。

PM11 :00丁度。時間通りに。

シンデレラも真っ青な御行儀の良さだ。


別に門限など無いのに。

侑香はボーッとする頭で彼を見送った。

待ち合わせ時とは、比べ物にならない程に頬を染めている。




事の起こりは、一時間程前。



食事の後、夜景を見に行く運びになった。



土曜の夜だと言うのにタワー・ビルの展望台は驚く程、閑散としていた。


近くで有名な俳優が、ドラマのロケを行なっている為だろうか。


『この景色今だけ、二人占めですねぇ。』


薄暗い空間に。
思いがけず。
二人きりになってしまった動揺を隠す為、少しおどけた口調で侑香は笑う。


笑顔で尚之を振り返ったその瞬間……―――――――――――――

No.11 08/02/15 18:35
詩人知らず ( mxeFh )

>> 10 地面が大きく揺れた。



――――――地震――――――


そう気付いた時には、彼の腕の中にいた。


まだ少し揺れが残るタワー内。



知り合ってから初めてと言っても過言では無い程、尚之を近くに感じている。


早鐘の鼓動は確実に聞こえていただろう。


『大丈夫ですか?』


『  は   は ぃ…。』

蚊が鳴く様な声で途切れ途切れに答える。



抱き締めらてれている腕の力強さに、うまく呼吸が出来ない。


『!! すいませんッ!』


気付いて侑香の両肩を持ち、慌てて離そうとする。


予期せぬ出来事に思わず見つめ合う。



一瞬だった。



侑香の唇に柔らかな感触。


ほんの刹那の出来事が永遠に感じた。



目を見開いて驚いている侑香に


尚之はもう一度優しく唇を重ねた。

No.12 08/02/15 19:57
詩人知らず ( mxeFh )

>> 11 仕事中、普段なら考えられない様なミスを連発した。


気付くと動きが停まっている。

しばらくしてまた動き出す…。の繰り返し。


土曜の夜の出来事は、侑香にとって現実感を伴わなかった。


幸いと言っては語弊があるだろうが。
日曜は尚之が休日出勤の為、元々約束をしていなかった。


少しだけホッとした自分に、罪悪感に似た感情を覚える。


手が停まっていた。


公私の区別も付けられないなんて……。

侑香は小さく溜息を洩らす。



気分を換える為、社内自販機の前にいた。



ガコン…。



手に取って愕然とする。



〈おしるこ〉


コーヒーを買おうとして、何を思ったか〈おしるこ〉のボタンをpushしていた。


相当重症だ…。


なんで社内の自販機に〈おしるこ〉?
誰が何の為に買うの?


思わず自販機に八つ当たる。




『おしるこですか。』


聞き覚えのある声に振り返る。


『  あのッ  っと……~~~~ッ…』 


『河崎です。福原 侑香さん。

それ、好きなんですか?』


侑香の手にあるソレを見て微笑む。

眩しいぐらいの笑顔だ。

No.13 08/02/15 20:24
詩人知らず ( mxeFh )

>> 12 否定しようとして、思い当たる。


『あっ の、おにぎりありがとうございました。

私 定期を拾って頂いたうえに、お昼まで……』

失態を見られた様に、慌ててまくし立てる。

『私にも何か あのッ』

侑香は自販機に目を移す。

『じゃあ遠慮なく、コーヒーで。』


『はいっ。』

飛び切りの笑顔で、答えていた事に気付かない。


『じゃあ、コレ。』


『???』


『オレ〈おしるこ〉好きなんですよ。』


侑香の手から〈おしるこ〉を受け取る。


手に暖いコーヒーが残る。

まだ意味が掴めない。

『〈おしるこ〉

ホッとしますよね。

此処の自販機しか置いてなくて。



去っていく河崎の後ろ姿を見送りながら、
〈おしるこ〉に腹を立てた自分に、恥ずかしさを感じずにはいられなかった。

No.14 08/02/15 20:59
詩人知らず ( mxeFh )

>> 13 席に戻ってからも、コーヒーの缶をジッと見つめたまま飲む事が出来ずにいた。


先程まで煩悩にあれだけ振り回されていたのに、また違う感情に支配されようとしている。

河崎の手が〈おしるこ〉を取る際に、軽く触れた。


その部分が微熱を持った様に、冷めないままでいるのだ。


きっと〈おしるこ〉の暖かさだろうと、納得しながらも、しきりに気にしてしまう。



ふと、先程まで思考回路を占領していた出来事を思い出し混乱する。


パソコンの画面には、意味を成さない英数字の羅列が並んでいた。


頭を抱える。



いつもとは、明らかに異なる侑香の仕事振りに。

周りが奇異な視線を投げ掛けていた事など知る由もない。

No.15 08/02/16 01:48
詩人知らず ( mxeFh )

>> 14 『オッ!侑香ちゅゎ~ん。』

ニヤニヤして、酒癖の悪い親父の様な呼び方をする。


相談するんじゃなかった……と本気で自分を呪いそうになる。

会社を出てすぐ。お洒落な美容室の手前。


陶子は侑香を発見して、小走りに近付いてくる。


華奢な身体に、フワフワの栗色の髪。パッチリのお目め。
その外見の何処から、あの親父臭さが、発生するのか謎は深まるばかりだ。


『ごめんね。いきなり呼び出したりして…。』


一応、腐っても奥様の陶子だ。

夕飯時に誘った事を、しおらしく詫びておく。


『あ~っ。良いの。良いの。旦那なんか帰り遅いし。気にしない、気にしな~い。』

意味あり気に妖しく茶色がかった目が光る。


『で?

何があったのか、詳しく聞かせて貰おうじゃない。』


恐い…。まるで取り調べ室の刑事さながらに、凄む。

場所が場所なら[カツ丼]でも出てきそうな勢いだ。


思わず周りを見渡して、ここがパスタ専門店である事にホッとする。

No.16 08/02/16 08:08
詩人知らず ( mxeFh )

>> 15 『ふ~~~ん。』


ニヤニヤ。


『中々、やる時はやるねぇ。柏木さんも。』



『で、どっち?』


陶子の問い掛けに。

その意味を読み取れず。
運ばれてきたばかりのパスタを、皿に取り分ける手が止まる。


『ど  どっちって?』


これから恐らく…。
陶子の口から、とんでもない言葉が、発せられるであろう事は想像に難くない。



『ほぉ~っ、トボケルおつもりで?』



『おっしゃってる事の意味が判り兼ねます。』


わざと仕事口調然として言ったつもりだった。


が。



『だからぁ。その缶コーヒーの人と柏木さん。

どっちに


“感じた”か?って聞いてんの。』



『なっ!?  かっ 感じるってッ あ あたしは別に河崎さんとはっ 何も』


『河崎さんて言うんだぁ。』

益々、ニヤニヤする。

人選ミスだ。相談する相手を完全に間違った。


『侑香の口から、男の名前なんて初めて聞いたもん。 もち、柏木さん以外でね。』

先程まで散々茶化していたのに。

陶子の瞳はもう笑っていなかった。

No.17 08/02/16 16:05
詩人知らず ( mxeFh )

>> 16 『河崎さんとは、2回しか 会った事ないんだし…。
そんなんじゃ…な い ょ。』


動揺を悟られない様にする事で精一杯だった。語尾が消え入りそうだ。

『あのね。

男と女は会った回数や時間じゃないの。

現に出会ってニヶ月、お付き合いして三ヶ月。
柏木さんとのキスと。


出会って二回目の缶コーヒー……いや〈おしるこ〉男の事を。
同じ枠で話してるじゃない。』


『河崎 さん だもん…。』


少し嫌味な言い方の陶子にムッとして訂正する。


ニヤニヤ。


『ほらね。』



やられた。


またしても彼女の策略に嵌められてしまった。

『まぁ、ゆっくり考えれば良いじゃん。

あんた今まで恋愛しなさ過ぎたんだし。』


明るく笑う陶子に、申し訳なく感じる。



良く考えれば、
柏木さんは陶子の旦那様の紹介だ。



『あたしはね。侑香。
柏木さんでも河崎さんでも、どちらの味方でもないよ。

侑香の味方なんだから。』

不安な心中を察してくれる。



食後のコーヒーをブラックで優雅に飲む。
その洗練された大人の色香に。


やはり陶子は最強の親友だと、思わずにはいられなかった。

No.18 08/02/16 19:54
詩人知らず ( mxeFh )

>> 17 ――金曜日 夜―― 

【そりゃあ……味方って、言ったけどさぁ~。侑香ちゃん。

突然二人で家に。って、あんた…。】


電話の向こうに陶子の困り声。


【家、散らかってるんだけどなぁ~。


あっ!最近、駅前に出来たお肉屋さん。
すっっごく美味しいんだってぇ。

でも、ちょっとお高いんだよなぁ。コレが…。】



『ちゃんと、持って行かせて頂きますからぁ。

明日、部屋の掃除も手伝いますっ。


神様。仏様。陶子様。』

見える筈もないのに両手を合わせて拝む。



【柏木さんと、二人で会い辛いのは分かるけど…さ。

逃げだよ。それって。】

陶子の言葉に胸の奥が疼く。

自分の気持ちなんて、未だに全然判らないままだ。


【まぁ、今回は大目に見てあげましょう。特に予定も無かったし。


柏木さんだって、二人きりでは会い辛いかもしれないしね。


よしッ。日曜は《豪華な、すき焼き》で決まりッ♪】


はしゃいでいる。

間違いなく、はしゃいでいる。


思わず、前言を撤回したくなる侑香であった。

No.19 08/02/17 08:59
詩人知らず ( mxeFh )

>> 18 〈ピンポーン〉

チャイムが鳴り響く。


思わず、体が恐張る。

『何、緊張してんのよ。』

『だって… 』

『いくら柏木さんだって、
あたしらの前で、あんたを襲ったりしないわよ。』


『!!! お   襲ッ   』

尚之の名誉の為に申し上げておくと
二人きりだったとしても、その様な事は断じて、決して有り得ないだろう。たぶん…。


〈ピンポーン〉


再び鳴った。

『ダメだ。固まってるわ。
透。出て。』


『いやぁ。やっぱり。可愛いねぇ。侑香ちゃん。
女の子はこうでないとなぁ。うんうん。』

『早く 出る。』

しみじみ頷く旦那に厳しく、言い放つ。




部屋に通された尚之と、あの日以来で顔を合わせる。

『あっ  あの  こ こんばんは…。』

『 はっ は ぃ 。』
先程の陶子の言葉で、ますます顔があげられない。



中学生同士かよッ!と陶子は心の中で苦笑する。

『さぁ、柏木さん。座って下さい。
ほら、侑香も。』

そんな胸中をおくびにも出さず、笑顔で勧める。

昨日、侑香に掃除を手伝わせた 室内はピカピカ。

“高級すき焼き”の準備も万端だ。

食欲をそそる香りが部屋中を漂った。

No.20 08/02/19 16:23
詩人知らず ( mxeFh )

>> 19 帰りは、否応なく尚之に送ってもらう事になっている。


二人きりの車内。


ハンドルを握る尚之の端正な横顔を、時々盗み見る。



『僕の顔に 何か付いてますか?』


冗談っぽく言う。


彼にしては珍しい。


恐らく気を使わせている事は、想像に難くなかった…。


『尚之さん。

あのッ…』



『この間は すいませんでした。

突然 あんな事…。』

前を見ながら、言う。

改まって謝られると。
それはそれで、ショックだ…。


『安心して下さい。

もう暴走したりしませんから。』


その言葉に何故か、胸が締め付けられた。
『…そんな事。』


『えっ?』


『そんな事、勝手に決めないで下さいっ!』

感情を露にした、侑香の言葉に驚いている。

車が突然、路肩に停まる。


――――えっ?―――

マズイ事、言ってしまった???

と侑香が心配に思っていると

シュル。と音を立てて、
シートベルトが外れた――
次の瞬間

彼に優しく抱き締められていた。

『あなたを 傷つけたりしたくないんです…。』

『なのにッ。
理性が効かない。壊してしまう。

きっと。優しくなんて出来そうもない。』

No.21 08/02/23 00:48
詩人知らず ( mxeFh )

>> 20 尚之の本心に初めて触れた気がした。


段々、抱き締める腕に力が込められる。


『――――~~…ッ』

『あなたの総てを、僕のものにしたい。』



侑香が目を伏せる。






『フッ――――――参りましたね…。

少し意地悪が過ぎたようです。


あなたは警戒心が強いくせに、無防備過ぎます。』


言われている事の意味が掴めない。



『小羊は狼に、愛想を振り撒いてはいけません。』



今までと
違う人に見える。



『遊びの時間は終わりです。』





インテリ風の眼鏡を外す。



きっちり締められていたネクタイを緩め、ボタンを上から3つ軽く外す。




その慣れた細い指に。



異常なまでの色気を感じて、鼓動が激しく脈打つ。



乱した長めの前髪から垣間見えた、妖しく光る瞳に魅せられる。




優しい羊。




獲物を狙う狼。




どちらが本当の彼なんだろう?


こんな状況でも、浮かんでくるのはそんな事だなんて。


『本気にさせてみせますよ。あなたを。ね。』


不適に笑う唇に


優しい羊の姿は見えなかった。


  to be continued…

No.22 08/02/23 14:19
詩人知らず ( mxeFh )

>> 21 ――――side story――――

     【Nao】



ねぇ。 君は知らない。


こんな感情を 抱かれている事を。



潔癖なその身が



黒い欲望で、埋め尽くされていく事――――。



  焦がれる程に逃げ惑い



  追い詰められる度に
  狂おしく



  手に入れられないが故に
  愛おしい




    この心 は         あの日から           君に


――――囚われの身――――― 




――――――――――――――

『もぉ 尚之ぃ 朝早すぎぃ』


甘ったるい しゃべり方の女が
尚之のベッドを我が者顔で占領している。



女の言葉を無視して、サッサと身仕度を整える。



『あたしぃ この部屋に住んじゃおっかなぁあ~~?合鍵欲しいなぁ。』


それが可愛いと思っているのか、語尾が伸び放題だ。


『口動してる暇あるなら、早く服を着てくれないか。』


抑揚の無いしゃべり方は、感情を感じさせない。



アイロンのあたったスーツを着こなす。

どこからどう見ても真面目な会社員の出来上がりだ。

No.23 08/02/23 15:25
詩人知らず ( mxeFh )

>> 22 『えっ~~~?冷たぁあぁ~。

昨日の夜はぁ あんなに 燃えあが――――…んッ~~ンッ…ッ』


耳障りな音を立てる唇を塞ぐ。


コレ以上の雑音は聞くに耐えない。


しかし――


尚之の真意が、どこまで女に伝わったかは不明だ。


歪んだ意味で伝わった事だろうに――――。

彼にとってそんな事は別段、意に介さない。


極、普通によくある朝の風景だ。


ただ――


相手の女が『日替わり』である事を除いては。



元々、整ったルックスを擁している。
クールで知的な顔立ち、上品な立ち居振る舞い。


来る者は拒まず、去る者は追わない。


いつの間にか、好きでも無い女を。
普通に抱ける自分に、疑問すら持たなくなっていた。




そう、彼女に出会うまでは―――…。

No.24 08/02/23 17:25
詩人知らず ( mxeFh )

>> 23 今までの行いが悪いなら…「関係を持った女」一人一人に詫びを入れよう。


ビンタぐらいなら甘んじて受けたい。


土下座しても良い気分だった。


目の前には、大学の先輩で、仕事上での良き理解者でもある。


片杉 透が立っていた。


透は尚之の性格を良く把握している。


仕事は完璧にこなす。

友情を裏切ったりはしない。勿論信用はしている。


しかし。


事『女性関係』に関してだけは、事情が違う。


非情に クールに女を切っていく。

良く言えば後腐れがなく、悪く言えば情のカケラもない。


そんな男に、大切な妻の〈親友〉を紹介して欲しいと言われ
思わず考え込んでしまった。


『う~~~ん? お前 別に女に困ってないだろ? 』


『困ってますよ。』


『それは、自業自得と言うものだろ?』


はぐらかす為に、茶化して言う。


尚之の表情は微動打にしない。


『彼女は お前が今まで遊んできた女とは違う。

傷つけたら タダじゃおけない。

陶子に殺され兼ねない。』

それが一番怖い…。とでも言いた気に大袈裟に首を振る。


諦めて欲しいオーラを出しまくるが…
男でも参る瞳に、真剣に見つめられ降伏する。

No.25 08/02/23 18:45
詩人知らず ( mxeFh )

>> 24 建てられたばかりの先輩夫婦の【新居】を

かれこれ、一週間前に訪れた。


その日から 心に決めていた事を実行に移す。



一週間の間に思い付く限り 連絡の取れる女をきっちりと切っていった。


別にそんな必要性は無いかも知れない。

が………

唯一。目に見える誠意として、伝えてから『切る』と言う行為を初めて試みた。


泣かれたり、脅されたり、自殺を仄めかされたりと、大変だった。


一通りの「人員整理」を終えた後で。



片杉 透に申し出た。


勝算は無かったが、可能性が0ではない事も確かだった。


そして尚之は賭けに勝った。



片杉 先輩が首を縦に動かした瞬間。心の中でガッツポーズをキメた。


あの日、途切れてしまった細い糸が―――


繋がっていた事に少なからず
〔運命〕を感じずにはいられない。


そんな青臭い言葉を信じる自分に苦笑しながらも。



先輩と奥さん。何人かの友人が微笑んでいる写真立ての中に。


彼女の姿を認めた時から―――――。

No.26 08/02/23 23:12
詩人知らず ( mxeFh )

>> 25 ――福原 侑香――


彼女の名前だ。


その名を知った時から何故だろう。


狂おしい胸の高鳴りが止まない―。


     6月
―――――June―――――


雨の多い鬱陶しい季節。

電車で通勤している尚之。天気は欠かさずチエックしている。

帰りに改札を抜けると、生憎の涙模様。


傘をさす。


いつも近所の子供達が、遊ぶ公園も閑散としている。


小雨降る中。急いでいたにも関わらず、何故気になったのか自分でも説明出来ない。


一輪。花が咲いた様な赤い傘に魅入る。


気が付くと、その傘に近付いていた。


―…ミャ-ッ ミィ ミャオ…――


耳に届く子猫の鳴き声。

雨に濡れた段ボール。

初夏だと言うのに肌寒い夕暮れ刻。


棄て猫か…。


その傘の持ち主の女性は

『ごめんね。ウチ、ペット禁止だから………寒いよね?』


そう言って、自分の赤い傘を差し掛けて行こうとする。


仕事帰りらしいスーツ姿の女に…


目を向ける。


哀しそうな瞳に思わず追いかけて声を掛けた。

自分の傘を手渡す。

遠慮されたが。
家が近い事を話し、半ば強引に 手渡していた―――。

No.27 08/02/24 00:04
詩人知らず ( mxeFh )

>> 26 その日から 何故か…。


彼女の事が、頭の隅から離れなくなった。



ほんの一瞬、二言・三言、言葉を交わしただけの女。


気のせいだと誤魔化す為、一夜の情事を重ねる回数が増える。


だが、一向にその渇きが癒える事はない。




『わぁ~。可愛い子猫ちゃん。

名前はぁ?』


触れようとする女の手から奪い去る。


『まだ 付けてないんだ…。』


『抱かせてくれないのぉ?』


――触れて欲しくなどない――



『猫を抱くより オレに抱かせて貰えますかね?』


適当に甘い言葉を吐いて、冷たい口付けを重ねる――――――
――――――――――――――









やっと。見付けた。


もう。二度と会う事は無いと思っていた。



君は 覚えてなど いなかったけれど…―――


オレは忘れない。


あの日を鮮明に思い出せる。


君が差し掛けた傘の赤。


哀し気な瞳。


優しいその手の温もりを――。





         ~~Fin~~

No.28 08/02/24 06:57
詩人知らず ( mxeFh )

>> 27 ――――episode2――――


『涼 見てコレ。懐かしい…。』


響の声にその写真を眺める。


『もう 何年も昔の事みたいだね…。』


切な気な瞳を 河崎 涼に向ける。


本来なら、
この時は『あぁだった。』『こうだったね。』と、笑って話すべき光景…――。



栗原 響は


河崎 涼に長い間、想いを寄せていた。



学生時代から、常に人の輪の中心にいる。


太陽の様に明るく笑う。

その笑顔は人を惹き付けて止まない。



響はそんな彼を遠くから、見つめている事が好きだった。


自分の気持ちが決して伝わらない事を、苦しいけれど理解していたからだ。



そんな響を



幸運にも同じサークルに

誘ってくれた友人がいた。


2回生の頃、



初めて、涼と交わした言葉を


昨日の事の様に思い出せる。



あれから5年。


眩しい過去の記憶を辿りながら、



今、目の前にいる涼に

懸けるべき言葉が見付からない。


そんな自分が歯痒く、もどかしかった―――…。

  • << 32 妻が電話をしている。 横で聞き耳を立てている 透は気が気ではない。 妻の第一声が 柏木 尚之の豹変を告げるものだったからだーーー…。 『はぁ? 柏木さんが、別人みたいになったぁ??』 思わず食後に、陶子が淹れてくれた熱いコーヒーを 吹き出しそうになる。 ~~ドギマギする~~ 陶子には柏木の乱れた 過去の〈女性関係〉は当然の如く 秘密にしてある。 ドキドキ…。 電話の向こうの友人が、もし泣きだそうものなら…ーー恐ろしいッ!!!! 一体 何をやらかしたんだッ!!? 尚之ッッ!! 思わず 神様にお祈りする。 確かに あいつは人が変わったように 侑香ちゃんを大事にしていた……。 あれ程 節操の無かった男が、手すら繋げない有様だった…。 油断した…ーーーーーやはり人は そう簡単には変われないのか…… そう 自分を悔いた瞬間… 妻の高らかな笑い声が耳に届く。 『格好良いじゃないのっ。 柏木さん。 男なら少しくらい危険な香りがしないとね~。 いやぁ~。見たかったなぁ。ワイルドな柏木さん。』 そう言って、ソファに座る 忠犬ハチ公の様なオレを軽く睨む。

No.29 08/02/24 10:41
澪 ( 20代 ♀ ZnPK )

初めまして。
横レス失礼します。
詩人知らずさんの、お話とても面白くて読みやすくて、今お書きになられてる所まで一気に読ませて頂きました。

続きを楽しみにしております(^^)

No.30 08/02/24 11:41
詩人知らず ( mxeFh )

>> 29 澪さんへ。
ありがとうございますっ。

読んで下さる方がいらっしゃった事に、
凄く感激しております。

嬉しい限りのお言葉です
(*´∀`)


実は、何の構想もなくいきなり書き始めてしまいましてυ

性格が行き当たり ばったりなもので…(苦笑)


辻褄が合わないところや、お見苦しい点も多々あるかと思いますが…

広い御心で読んで頂けたら幸いですm(_ _)m

No.31 08/02/24 12:24
澪 ( ♀ ZnPK )

>> 30 見苦しいなんて、とんでも無い!

面白い作品ですよ😃
これからも「キミの手」同様 読ませて頂きますので頑張って下さいね😊

No.32 08/02/24 12:38
詩人知らず ( mxeFh )

>> 28 ――――episode2―――― 『涼 見てコレ。懐かしい…。』 響の声にその写真を眺める。 『もう 何年も昔の事みたいだね…。… 妻が電話をしている。


横で聞き耳を立てている 透は気が気ではない。


妻の第一声が


柏木 尚之の豹変を告げるものだったからだーーー…。



『はぁ?

柏木さんが、別人みたいになったぁ??』


思わず食後に、陶子が淹れてくれた熱いコーヒーを
吹き出しそうになる。


~~ドギマギする~~


陶子には柏木の乱れた 過去の〈女性関係〉は当然の如く 秘密にしてある。


ドキドキ…。


電話の向こうの友人が、もし泣きだそうものなら…ーー恐ろしいッ!!!!



一体 何をやらかしたんだッ!!? 尚之ッッ!!


思わず 神様にお祈りする。


確かに あいつは人が変わったように 侑香ちゃんを大事にしていた……。


あれ程 節操の無かった男が、手すら繋げない有様だった…。



油断した…ーーーーーやはり人は そう簡単には変われないのか……


そう 自分を悔いた瞬間…


妻の高らかな笑い声が耳に届く。


『格好良いじゃないのっ。

柏木さん。

男なら少しくらい危険な香りがしないとね~。
いやぁ~。見たかったなぁ。ワイルドな柏木さん。』

そう言って、ソファに座る 忠犬ハチ公の様なオレを軽く睨む。

No.33 08/02/24 14:05
詩人知らず ( mxeFh )

>> 32 電話越しに陶子の高笑いを耳にする。


『ワイルド……って

そんな人じゃなかったのに…

誠実で真面目で……ーーー』


【ーーんッ…で?】


呆れ顔が 目に浮かぶ様な声を出す。


【嫌いになったの?】

『そ んなん じゃ ナイけど…ーー』


歯切れの悪い言い方をする。


【侑香は 夢見る お嬢さん過ぎ…。

柏木さんだって 人間だよ?

好きな女に触れたいっ て、思うの当然でしょ?】

最もな意見だ。


でも…陶子は実際に見てないから……そんな風に言えるんだよぉ~~。
心の中で訴える。


侑香にだって分かっていた。

尚之の異常なまでの紳士的行動は
彼の本来の姿などでは、ない事ぐらいーーー。

だが。

あんな風に変わるとは、予想外だっただけだ。


【…何かされたの?】

されていない。

いつも通り。0時前にはマンションに送り届けられていたーーー。


それどころか あの後、指一本触れられていない。

そうーーーー。

仕草だけで心臓を。

鼓動を掻き乱された 自分が恥ずかしかった。

落ち着かない感情を沈めようと
気付いたら
 陶子に電話を掛けていたのだ。

No.34 08/02/24 19:04
詩人知らず ( mxeFh )

>> 33 電話を切った妻の視線を痛い程感じ。
その場から逃げようと画策するーーー……

が失敗に終わる…。

『 そこ。 座る。』

蛇に睨まれた蛙の如く。
浮かしかけた腰を再び沈める。


陶子がニッコリ笑顔で


『聞かせてくれる?』

瞳に鋭い光を灯す。

目が笑っていない…。
こうなったら隠し通す事は不可能だと
長年の付き合い上、嫌という程知っていた。

その冷静な怒りの矛先は。

尚之ではなく。

隠し事をしていた透に向けられている事も。




『ふ~~~ん。』

『あっ、怒らないんだ。』

あからさまにホッとしてみせる。

『ーーーだって。 柏木さんが侑香を大切にしてるのは、紛れもない事実でしょ?』


『じゃあ さ。 紹介する前に話したらOKした? 』

下らない質問だーーー
自覚しつつも訊いてしまう。


『あの子を 毒牙に懸けそうな男 近付けると 思う? 』

意味在り気に笑う。

陶子は余程 彼女が大事らしい。

少しだけヤキモチを焼く。そんな透に苦笑しつつ。

『まぁ、今更言っても 時は戻らないし。

問題はーーー。』

良い処で言葉を切る。
隠し事をした罰とでも言う様に。

『 さっ、寝よ。寝よ。』

続きは聞けそうもないーーー。

No.35 08/02/24 20:16
詩人知らず ( mxeFh )

>> 34 ーーーバサッーーー
ーーバサッーー


その女性が落とした、数枚の資料の様な紙を

侑香は風に飛ばされない様に 慌てて拾う。


『どうぞ。』



集めた書類を束ねて、

女性に手渡す。

『ーーー…?』


ショートカットが似合う、パンツスーツ姿の女性は

顔色があまり良く無い…。


『 あのッ 大丈夫ですか?』


侑香が心配そうに尋ねる。

その言葉が耳に届いていないかの様に。


『…あ ありがとう ござい ま す 。』

書類を拾ってくれた事に対する礼を

何呼吸も遅れて返す。


『もし宜しければ…近くに職場がーーー

医務室もありますので……』


通勤途中なら急いでいるかもしれない とは思ったが。

見て見ぬ振りをする訳にもいかない。

迷惑を承知で申し出る。


『だ 大丈夫で す。 す い ませーーー。』


明らかに、大丈夫そうでは無い。


フラフラと振らつく足取りで、
歩き出そうとする。



慌てて後を追う。



女は見覚えのあるビルの前で立ち止まった。



『 栗 原 ッ 』



ふと、声の主を見る。

彼女の到着を待っていたらしい 河崎 涼 と不意に目が合ったーーー。

  • << 38 河崎 涼の表情が 心無しか 恐張っている様に感じる。 侑香にその意味を知る事など 出来る筈も無かったーーー…。 『コ コレ 昨日  へ 部屋に忘れてた…。』 栗原と呼ばれた女性は、気分が悪いせいなのか 書類を手渡す手元が、小刻みに震えている。 『……ッーーー栗原…』 口を開きかけた涼を無視して おぼつかない足取りで、去って行こうとする。 まるでその場から、一刻も早く離れたいかの様に………。 追い掛けようとしない涼を見て取り お節介だと理解しつつも 堪らず声を懸けていた。 『彼女……体調が 悪そうでしたーーー。』 急に侑香に話し掛けられ 目の焦点が やっと合ったかの様に、ハッとする。 それでも尚、動こうとしない涼にーーー 『 追いかけて下さいッ! 早く!! 』 思わず大きな声を出していた。 何故 そんな事を言ったのか 自分でも判らない。 弾かれた様に、走り出した涼の背中にーーー 得も言われぬ、不安を感じ 足元が歪むような感覚に襲われたーーーーーーーーーーー。

No.36 08/02/24 20:30
澪 ( ♀ ZnPK )

今晩わ😃

ますます、今後の話が気になります(^^)
詩人知らずさんの作品は、つい引き込まれてしまいますよ。更新が楽しみ!


私も小説を書き始めました。… 永遠(とわ)に …
と言う話ですけど、詩人さんの様に文章が上手くなくて恥ずかしいです。


もし良ければ、気が向いた時でも覗いて下さいね。

No.37 08/02/24 21:51
詩人知らず ( mxeFh )

>> 36 早速、澪さんのスレにレスさせて頂きました🙇💮


その様に御褒めに預かり嬉しい🙌やら、恥ずかしい☺💦やらで。
戸惑ってしまいます🙈💫


初めて書くと言っても、過言ではない『小説』と言う分野。

思い入れは深いかもしれません。
ーーの割には、この先の展開が…😨💧

私自身も興冷めにならない様
努力したいと思っておりますm(_ _💧)m

もし気になった点等があれば、御指摘お願い致します
(*・人・*)


漢字や、打ち間違いは感覚で変換し 後で読み返して…

間違いに気付いたりします😱

削除は中々、出来ません…(涙)

No.38 08/02/24 22:49
詩人知らず ( mxeFh )

>> 35 ーーーバサッーーー ーーバサッーー その女性が落とした、数枚の資料の様な紙を 侑香は風に飛ばされない様に 慌てて拾う。 『どう… 河崎 涼の表情が


心無しか


恐張っている様に感じる。


侑香にその意味を知る事など


出来る筈も無かったーーー…。


『コ コレ 昨日  へ 部屋に忘れてた…。』


栗原と呼ばれた女性は、気分が悪いせいなのか

書類を手渡す手元が、小刻みに震えている。


『……ッーーー栗原…』



口を開きかけた涼を無視して


おぼつかない足取りで、去って行こうとする。


まるでその場から、一刻も早く離れたいかの様に………。


追い掛けようとしない涼を見て取り


お節介だと理解しつつも


堪らず声を懸けていた。


『彼女……体調が 悪そうでしたーーー。』

急に侑香に話し掛けられ

目の焦点が やっと合ったかの様に、ハッとする。


それでも尚、動こうとしない涼にーーー


『 追いかけて下さいッ! 早く!! 』


思わず大きな声を出していた。


何故 そんな事を言ったのか 自分でも判らない。


弾かれた様に、走り出した涼の背中にーーー


得も言われぬ、不安を感じ



足元が歪むような感覚に襲われたーーーーーーーーーーー。

No.39 08/02/25 00:05
詩人知らず ( mxeFh )

>> 38 透は尚之を見つけるや否や。


手招きした。


『お呼びですか?』


『いや 手首の運動だ。』


手首をクネクネ動かす。


『忙しいので 失礼します。』


正に慇懃無礼に告げる。


『待て 待て 待て 待て…』


『~~ッ待て待て…って、オレは犬ですか?

【待て】と言われなくても充分 お預け食らってます 』


饒舌な自分に嫌気がさす。


侑香と出会ってから。
創りあげた何かーーーが崩壊していく感覚を 心地良く感じていた。


『へぇ~。ほぉお。
お預け食らってる ワンちゃんが
 お姫様に 何したのかなぁ?』

興味深々だ。

昨日の奥さんの質問と良い。
この夫婦は、トコトン似た者同士だーーー。

腹を抱えて 笑いたい衝動に駆られる。


しかし、そこまでキャラを崩す気は無い。


冷静に

『何も……。

怯えるお姫様に 無防備に狼に近寄る、危険性を説いたダケです。』


『一番、危険性の高い男に言われても…なぁ?』


縁の無い眼鏡の

奥にある瞳を細めながら。


『 フッ 今のオレ

きっと動物園で餌付けされてる狼より、優しいですよ。』

時には 飼育員を襲う可能性も無い事は無いたろうが、敢えて口にはしないでおいた。

  • << 41 ーー訂正箇所ーー 此所まで読んで下さった方。 誠に有り難うございます m(_ _)m 今更ながら、打ち間違い部分を。 現在、気付いている範囲内で訂正させて頂きます。 漢字は自信が無い為、はっきり訂正はしきれませんυ 【5】最後の文章 「交わして」→「交わした」です。 【21】 『不適』→『不敵』かと思われます。 【22】 『我が者顔』→『我が物顔』かと思われます。 【39】最後の文章 「たろう」→「だろう」濁点が抜けています。 まだまだ沢山在るかと思いますが……本人が今気付ているのはこの辺りです。 何卒、ご了承下さいませ。

No.40 08/02/25 08:10
詩人知らず ( mxeFh )

>> 39 『ーーー~~ッ…!!』


涼にその華奢な腕を掴まれ


振り向いた響の顔に



息を飲むーーー。



今にも 泣き出しそうな 怒りとも 笑いとも尽かぬ……様々な感情が入り交じった「ソレ」を目の当たりにした。


涼は理解している。



彼女にそんな顔をさせてしまう要因を。



心の奥。


底の


底にーーーーー


閉じ込めた


傷口を


押し込める為に。


息を殺して。



『 栗原 』


凍ってしまった時間を動かそうと、
お日様の様な暖かさを持つ声を懸ける。


自分の名前を呼ばれた事に


今始めて 気付いた とでも言わんばかりの顔を上げ、


その潤んだ瞳を 目の前の男性に向ける。



一言でも口を開いた瞬間、


大粒の涙が零れ落ちる事は 本人にも容易に想像が付くーーー


例え それが相手を苦しめる行為だと知っていても………


『 あなたが  最近  変わった気がした の。』

放たれた言葉に。

決壊した瞳から

涙が落ちるーーー

『 変わって ないよ。』


そんな響を優しく抱き締め

涙を指で拭い。告げる。

『何も 変わったり しないーーー』

後ろめたさと言い聞かせる様なニュアンスが混じった言葉をーーー。

  • << 42 頭がガンガンしたーーー。 今朝方から 感じていた違和感は ここ数日で、自分の身に起こった 変化のせいだろうと思っていた。 本格的に体調を崩した事を認識したのは、 午後を回った辺りだった。 早目に 片付けられる範囲で仕事を切り上げる。 「早退」などは珍しい侑香に上司は 驚きを隠せない様子だ。 病院に寄ると 予想以上の混み具合で、数時間も取られる事になった。 風邪が流行っているらしい。 今朝の女性も風邪だったのかしら? 微熱で回らない思考を回転させようとする。 が、すぐに考える事を放棄した。 マンションに辿り着く頃には、いつもと変わらぬ帰宅時間になっていた。 ーーーー…………。 幻覚が見えるらしい。 微熱では なかったのだろうか? ボーッとする頭で、ヒンヤリと無機質なコンクリートに額を預ける。 幻影ではないらしい相手が、彼女の異変に気付いて近付いてくる。 オートロックの前。 約束を交わさずに待っている事など、今まで一度も無かったーーー。 嘘吐きな羊さんの姿を認めて、 ーーーあぁ 今夜 私は 《赤ずきんちゃん》になってしまうのだろうーーー と、途方もなくどうでも良い事を考えていた。

No.41 08/02/25 08:52
詩人知らず ( mxeFh )

>> 39 透は尚之を見つけるや否や。 手招きした。 『お呼びですか?』 『いや 手首の運動だ。』 手首をクネクネ動かす。 『忙しい… ーー訂正箇所ーー


此所まで読んで下さった方。

誠に有り難うございます
m(_ _)m


今更ながら、打ち間違い部分を。

現在、気付いている範囲内で訂正させて頂きます。

漢字は自信が無い為、はっきり訂正はしきれませんυ


【5】最後の文章

「交わして」→「交わした」です。


【21】

『不適』→『不敵』かと思われます。


【22】

『我が者顔』→『我が物顔』かと思われます。


【39】最後の文章

「たろう」→「だろう」濁点が抜けています。


まだまだ沢山在るかと思いますが……本人が今気付ているのはこの辺りです。

何卒、ご了承下さいませ。

No.42 08/02/25 09:34
詩人知らず ( mxeFh )

>> 40 『ーーー~~ッ…!!』 涼にその華奢な腕を掴まれ 振り向いた響の顔に 息を飲むーーー。 今にも 泣き出しそうな 怒りとも… 頭がガンガンしたーーー。


今朝方から 感じていた違和感は


ここ数日で、自分の身に起こった 変化のせいだろうと思っていた。


本格的に体調を崩した事を認識したのは、
午後を回った辺りだった。


早目に 片付けられる範囲で仕事を切り上げる。


「早退」などは珍しい侑香に上司は
驚きを隠せない様子だ。


病院に寄ると 予想以上の混み具合で、数時間も取られる事になった。


風邪が流行っているらしい。


今朝の女性も風邪だったのかしら?


微熱で回らない思考を回転させようとする。

が、すぐに考える事を放棄した。


マンションに辿り着く頃には、いつもと変わらぬ帰宅時間になっていた。


ーーーー…………。



幻覚が見えるらしい。

微熱では なかったのだろうか?


ボーッとする頭で、ヒンヤリと無機質なコンクリートに額を預ける。


幻影ではないらしい相手が、彼女の異変に気付いて近付いてくる。

オートロックの前。


約束を交わさずに待っている事など、今まで一度も無かったーーー。


嘘吐きな羊さんの姿を認めて、


ーーーあぁ 今夜 私は 《赤ずきんちゃん》になってしまうのだろうーーー


と、途方もなくどうでも良い事を考えていた。

No.43 08/02/25 12:27
詩人知らず ( mxeFh )

>> 42 『どうかされましたか?』

目の前の人物に醜態を晒す事は避けたい…

『 何 でも ありま せ 。今日は帰って下さーーー』

脱・羊宣言(?)した男に無防備な姿を見せる事は、その身の危険を意味するーーー


熱が上がったのだろうか?
意味不明な事を考えている自分に混乱を来たす。


『やれやれ 困った人だ…。』


インテリ眼鏡の好青年を装った男が
ホトホト呆れた声を出し首を振る。


『確かに、無防備である事は 注意しましたがーーー
無茶は感心しませんね。』


その口調は軽口であったが、瞳は決して笑っていない。

その無言の威圧に観念し、城の鍵を差し出した。


『安心して下さい。  同意の無い女性を貪るほど 不自由した覚えはありませんから。』

言葉の意味する処に思い当たり……。

考えを見透かされた気恥ずかしさからか。

熱が2~3度上昇するのを肌で感じていた。





エレベーターで7階に着く。

侑香は

部屋は、常に整理されていないと 落ち着かない。

几帳面で潔癖。

いつ異性が訪れようと慌て蓋めく理由は存在しないだろう。


しかし、

悲しいかな。

今までこの部屋に、足を踏み入れた異性と言えば

父親と弟ぐらいなものである。

No.44 08/02/25 13:27
詩人知らず ( mxeFh )

>> 43 足を踏み入れた途端。


彼の顔が不意に近くなった。


警戒したが……額に額を当てられ、目を円くする。


『んっ、少し 熱が高いかな?

病院行って来られたんですね。』


侑香の持つ 薬の入った袋を見て、爽やかに笑う。


『台所 お借りします。』

『えっ??

良いです!そん な 悪 い ですし…。』

『ダメです。薬飲むなら、何かお腹に入れないと。』


まるで、父親のようだ。

思わず笑ってしまう。

『パジャマに着替えて寝ていて下さい。』


『 心配 しなくても覗いたりしませんから。』


キッチンの扉から聞こえる声。


まるで心を 先読みされているかの如くだ。


ともすれば、

彼女の反応を楽しんでいる様な節すら見受けられる。

こうなってしまっては お手上げだーーー。


素直に言う事を聞いて、大人しく着替える。

何だか良く判らない状況だが、不思議と嫌では無かった。



ふと

冷蔵庫にある物に思いを馳せる……ロクな物が入っていなかった気がする。



果たして、何が出来上がるのか?


熱があるのすら忘れ
ワクワクしている自分に驚いた。



彼の人間らしい一面を垣間見て、安心した部分が大きいのかも知れないーーー。

  • << 46 言われた通り 素直にベッドに入る。 それは余りにも無防備かとも考えたが、 そこまで彼を警戒するのも失礼な気がした。 ―――――――――――――― 『あまり 言葉の意味を理解されてないようですね…』 クスリと笑って。小さく零す。 出来たばかりの「卵粥」と「卵酒」をテーブルにそっと置く。 ベッドの横のチェストに外した眼鏡を わざと音を立てて置いてみせる。 寝息を 不規則に立てるのは熱のせいだろうか? 『いけませんね。 薬も飲まないで 寝てしまうなんて…―――』 『―んッ―~ぅン――…ッ』 苦しそうに 喘ぐ。 ――はぁ~~―。 姫……あなたは………本当に私を 鬼畜にしたいんですか? ベッドを背もたれに 腰を下ろし天を仰ぐ。 寄りにもよって 同意していない処か、風邪で苦しんでる相手に…――。 その上気した頬に。 汗ばんだ首筋に――― どうしようもない劣情を催す自分は 最低最悪な男に墜ちた気分だった―――。 『はぁ~~…ケダモノ。』 『冷めちゃいますよぉ。』 まだ湯気を立てているテーブルを見やり ボソボソ独り言の様に呟く。

No.45 08/02/25 20:18
澪 ( ♀ ZnPK )

今晩わ💕
昨日📱レス有り難うございます😃


詩人さんのお話の中で、私が好きなキャラは「尚之さん」です。
これからも更新を楽しみにして読ませて頂きますね🎀

  • << 47 こちらこそ🙇💦 レスを頂けれると、励みになり 嬉しいです🎵 昨日と今日はお休みで。📱携帯を握りっ放しでした(笑) 好きと仰っしゃって頂ける人物が、いて良かったです✨💖✨ 『キミの手』をミクルバージョンで書き込みしました__✏ 御時間に余裕がある時にでも。 宜しければ、読んで見て下さいませ (*´ω`)

No.46 08/02/25 21:21
詩人知らず ( mxeFh )

>> 44 足を踏み入れた途端。 彼の顔が不意に近くなった。 警戒したが……額に額を当てられ、目を円くする。 『んっ、少し 熱が高いかな? … 言われた通り

素直にベッドに入る。

それは余りにも無防備かとも考えたが、

そこまで彼を警戒するのも失礼な気がした。



――――――――――――――




『あまり 言葉の意味を理解されてないようですね…』


クスリと笑って。小さく零す。


出来たばかりの「卵粥」と「卵酒」をテーブルにそっと置く。



ベッドの横のチェストに外した眼鏡を わざと音を立てて置いてみせる。



寝息を 不規則に立てるのは熱のせいだろうか?


『いけませんね。 薬も飲まないで 寝てしまうなんて…―――』

『―んッ―~ぅン――…ッ』


苦しそうに


喘ぐ。


――はぁ~~―。
姫……あなたは………本当に私を 鬼畜にしたいんですか?


ベッドを背もたれに 腰を下ろし天を仰ぐ。



寄りにもよって
同意していない処か、風邪で苦しんでる相手に…――。



その上気した頬に。


汗ばんだ首筋に―――



どうしようもない劣情を催す自分は

最低最悪な男に墜ちた気分だった―――。



『はぁ~~…ケダモノ。』




『冷めちゃいますよぉ。』

まだ湯気を立てているテーブルを見やり ボソボソ独り言の様に呟く。

  • << 48 ――AM 00:32―― どうしようもない喉の渇きを 覚えて目醒めた。 部屋の灯が光々と付いている。 身体が心無しか重い。 自分の置かれていた状況を思い出す。 ベッドの端に。 座ったままの態勢で――― 正確な寝息を立てている。男性。 長い睫毛。 今は閉じられている その瞳の裏で 果たして、どの様な夢を見ているのだろうか? フラフラとテーブルに近付く。 すっかり冷めてしまったらしい「卵粥」を口へ運ぶ。 ―――――――――――――― 自分でも 大胆な事をしようとしているのは、理解出来た。 相変わらず 寝息を立てている尚之に静かに近付く。 風邪を移すかも知れないとの考えが、頭をよぎったが―――。 眠るその唇に、そっと 自分のソレを重ねようと した―――――――――――― ――!!!? 閉じられていた瞳が パッチリ開く。 目が合ったまま固まる。 『 悪い人ですね。 男の寝込を襲おうとするなんて。。。』 『 お お 起きて???―――』 言葉が続かない。 『~~~~ッ―――酷ッ…いっ』 顔を真っ赤にして 精一杯の力で 男の胸を叩く。

No.47 08/02/25 21:39
詩人知らず ( mxeFh )

>> 45 今晩わ💕 昨日📱レス有り難うございます😃 詩人さんのお話の中で、私が好きなキャラは「尚之さん」です。 これからも更新を楽しみにして読ませ… こちらこそ🙇💦


レスを頂けれると、励みになり 嬉しいです🎵

昨日と今日はお休みで。📱携帯を握りっ放しでした(笑)


好きと仰っしゃって頂ける人物が、いて良かったです✨💖✨


『キミの手』をミクルバージョンで書き込みしました__✏

御時間に余裕がある時にでも。
宜しければ、読んで見て下さいませ
(*´ω`)

  • << 49 ☺「キミの手」読ませて頂きました😃 両作品を、手掛けられるなんて凄いですね✨👏✨💕 尚之さん👔👓何か、ええ味出してはって👍🌟ですよっ。 ☆☆ 詩人さんは、明日から お仕事ですか? お互い頑張りましょうね(^^)

No.48 08/02/25 23:32
詩人知らず ( mxeFh )

>> 46 言われた通り 素直にベッドに入る。 それは余りにも無防備かとも考えたが、 そこまで彼を警戒するのも失礼な気がした。 ――――――… ――AM 00:32――


どうしようもない喉の渇きを 覚えて目醒めた。


部屋の灯が光々と付いている。


身体が心無しか重い。

自分の置かれていた状況を思い出す。


ベッドの端に。


座ったままの態勢で―――


正確な寝息を立てている。男性。


長い睫毛。


今は閉じられている その瞳の裏で
果たして、どの様な夢を見ているのだろうか?


フラフラとテーブルに近付く。


すっかり冷めてしまったらしい「卵粥」を口へ運ぶ。



――――――――――――――


自分でも



大胆な事をしようとしているのは、理解出来た。



相変わらず
寝息を立てている尚之に静かに近付く。



風邪を移すかも知れないとの考えが、頭をよぎったが―――。



眠るその唇に、そっと
自分のソレを重ねようと
した――――――――――――

――!!!?


閉じられていた瞳が


パッチリ開く。


目が合ったまま固まる。


『 悪い人ですね。


男の寝込を襲おうとするなんて。。。』


『 お お 起きて???―――』


言葉が続かない。


『~~~~ッ―――酷ッ…いっ』


顔を真っ赤にして


精一杯の力で


男の胸を叩く。

  • << 50 非力な ましてや病人の拳は 全く 痛くなど無かった――。 恥かしさと熱のせいか真っ赤になって 今にも泣き出しそうな 彼女の潤んだ瞳に… 先程押さえ込んだばかりの 黒い欲望がせり上がってくるのを感じていた―――…。 幸い、背中にはベッドがある。 このまま 押し倒してしまえば 容易く、手に入れられただろうに…。 今 彼は「ソレ」を赦される立場にある筈だった。 しかし――― 真っ赤な顔をして 怒っている侑香の額に手を当てる。 『大人しくして下さい。 騙されました…。とんだ お姫様ですね。』 わざとらしく 大きく溜息を吐く。 『ちょっと 失礼。』 そう言って戻って来た彼の手から 温かいミルクと 水を手渡された。 『コレを飲んでから 薬を飲んで下さい。 お粥は冷めてしまったので…。』 侑香が無事 薬を飲んだ所を見届ける。 温かいミルクは精神を安定させてくれた様だ。 『 ごめん な さ ぃ。』 上目遣いの、涙目で見てくる。 そのあまりの可愛らしさに 自分の馬鹿紳士さ加減を 後悔した事は、言う迄も無い――。

No.49 08/02/26 00:02
澪 ( ♀ ZnPK )

>> 47 こちらこそ🙇💦 レスを頂けれると、励みになり 嬉しいです🎵 昨日と今日はお休みで。📱携帯を握りっ放しでした(笑) 好きと仰っしゃっ… ☺「キミの手」読ませて頂きました😃

両作品を、手掛けられるなんて凄いですね✨👏✨💕


尚之さん👔👓何か、ええ味出してはって👍🌟ですよっ。


☆☆
詩人さんは、明日から お仕事ですか?

お互い頑張りましょうね(^^)

  • << 51 ありがとうございます(>_<。) 仕事なのに不眠症で、困っております😿(涙) 取り敢えず『柏木 尚之さん』 始めに頭でイメージした人と今では、別人になってますね(笑) あれっ❓おかしいなぁ❓❓と頭を、捻っております。 作者が、いい加減なモノでキャラクターが暴走してしまいます💦

No.50 08/02/26 00:39
詩人知らず ( mxeFh )

>> 48 ――AM 00:32―― どうしようもない喉の渇きを 覚えて目醒めた。 部屋の灯が光々と付いている。 身体が心無しか重い。 自… 非力な

ましてや病人の拳は

全く 痛くなど無かった――。


恥かしさと熱のせいか真っ赤になって

今にも泣き出しそうな

彼女の潤んだ瞳に…

先程押さえ込んだばかりの 黒い欲望がせり上がってくるのを感じていた―――…。



幸い、背中にはベッドがある。



このまま 押し倒してしまえば


容易く、手に入れられただろうに…。


今 彼は「ソレ」を赦される立場にある筈だった。







しかし―――








真っ赤な顔をして 怒っている侑香の額に手を当てる。


『大人しくして下さい。

騙されました…。とんだ

お姫様ですね。』

わざとらしく 大きく溜息を吐く。


『ちょっと 失礼。』


そう言って戻って来た彼の手から


温かいミルクと 水を手渡された。

『コレを飲んでから 薬を飲んで下さい。

お粥は冷めてしまったので…。』

侑香が無事 薬を飲んだ所を見届ける。


温かいミルクは精神を安定させてくれた様だ。

『 ごめん な さ ぃ。』

上目遣いの、涙目で見てくる。

そのあまりの可愛らしさに

自分の馬鹿紳士さ加減を
後悔した事は、言う迄も無い――。

  • << 52 鼻腔をくすぐる何かに起こされた。 ベーコンが焼ける香ばしい薫りがする。 昨晩は結局 「粥」を一口ぐらいしか食べていなかった事に気付く。 彼は床で眠ったのだろうか? この部屋に寝具と呼べる物は侑香のベッドのみだ。 申し訳なく思う。 『お目覚めですか?』 床で一晩を過ごした事など、微塵も感じさせない 空気を纏う。 一糸、乱れのない 清廉潔白な人―――。 そんな筈無い事は 百も承知の上で 騙されそうになる―――。 騙されても良いとさえ 思わせる【オーラ】があるのだろうか…。 『ご気分は?』 思わず見惚れていた。 目を逸す。 『あ 昨日は ぁ ありがとうございましたッ…。 大分 楽になりました。』 思いっ切り 他人行儀な言い方をしてしまう。 『そうですか…。 でも 油断はいけません。今日はゆっくり休んで下さいね。』 『 …は ぃ―――。』 昨夜の出来事は まるで夢の中で、起きたかの様に感じる。 尚之が 『今度は冷めないうちに、食べませんか?』 と促す。
投稿順
新着順
主のみ
付箋

新しいレスの受付は終了しました

小説・エッセイ掲示板のスレ一覧

ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。

  • レス新
  • 人気
  • スレ新
  • レス少
新しくスレを作成する

サブ掲示板

注目の話題

カテゴリ一覧