恋愛人生
彼と知り合った当時、侑香には“恋人”と呼ぶべき相手が存在した。
知り合いの紹介で付き合い始めて、三ヶ月足らず。
世間で言う所の『ラブラブ』な期間であるべき相手。
しかし、侑香の中で疑問が消えなかった。
(本当にこの人を好きなのだろうか?)
元々、相手の熱烈なアプローチから始った関係だ。
付き合っていく内に、相手を本当に好きになれるだろうと考えていた。
侑香はその外見から、お高く留まっていると誤解を受ける事が少なくなかった。
ハーフの様な顔立ち。透き通る様な白い肌。整ったプロポーション。長い手足。
本人には至って悪気は無いのだが、思った事をハッキリ言う性格と外見から、彼女を遠巻きにする男性が殆どだった。
加えて仕事以外では、人見知りをするものだから、一向に恋愛の“れ”の字も無い生活を送ってきた。
そんな彼女を見兼ねた友人が紹介してくれた男性が
『柏木 尚之』だった。
大人な男性だ。
それが彼の第一印象だった。
侑香はその恋愛経験の薄さから、こんな人が自分を相手にするわけが無いと思っていた。
彼から初めてのデートに誘われるまでは。
新しいレスの受付は終了しました
――――side story――――
【Shiori】
人を好きになる事が
こんなに苦しいなんて
知らなかったんだ。
あなたと 出会うまでは――…
ねぇ。
大好きだよ。
一緒に居ようね。
居られるよね?
この手をずっと
離さないで ね。
>> 101
あなたに出会ってから
幸せの意味を知った。
同時に失う事の恐怖も。
それは、幸福だと思えば思う程強くなって
気持ちの深さに比例していく
深く早いスピードで
どこにいても
誰といても
逃げ出す事の出来ない感情。
涼に呼ばれた気がして振り返る。
空耳だったのだろうか?
最近そういう事が、増えた気がする。
余程 彼の事ばかり考えているのね。と母さんが笑う。
あながち否定 出来ない。
涼の自分を呼ぶ 声が好き。
触れられる手が好き。
彼を創る細胞の一つ一つが愛しい。
――――――――――――――
『詩織。』
前の席に座っている 平山 咲希が振り向いていた。
入学して三ヶ月程 出席番号順の席だ。
咲希とよく話す様になっていた。
『詩織はさぁ。
合コンとか行かないの?』
えっ? 合 コ ン?
聞き慣れ無い単語を 耳にしたかの様に、聞き返す。
『行った事 無いなぁ…。』
今時の女子高生なら 「当然」とでも言いた気に驚く。
『珍しいね。詩織ってお嬢?』
>> 102
中学の時に 両親が離婚した。
父は 厳しい人だった。
思春期 真っ盛りの詩織は、父親に反発し 母に非が、あると知りながらも母と一緒に家を出た。
最後まで父親は首を縦に振らず、出て行くなら この先 妹や弟に会う事は 許さないと言い渡された。
母親の気持ちも理解できる部分があり、
苦渋の決断を迫られた。
やはり放っておけず 母親を取ってしまった事に 妹達には罪悪感を感じている。
合コン どころの心境では無かったのだ。
そもそも 初めて会った相手同士で、何を話すというのだろうか?
イマイチよく 判らない。
楽しいとも思えない。
よって 合コンに行った事は無いのである。
『え~~。詩織 絶対カワイイんだから モテるよぉ~。』
と 咲希は 残念そうに言う。
『今度 4:4ぐらいで合コン…――っていうか 遊び行こっか?って話してんだ 詩織も行こうよ。 ね。』
曖昧な笑みを浮かべる詩織。
半ば強引に
その 集まりに参加する事となった―――…
>> 103
―小田 詩織― 母方の姓を 名乗っている。
もうすぐ 再婚して【橘】になる予定だ。
親の状況で こうも振り回される名前に 少し 滑稽な思いに駆られる。
――――――――――――――
その日は 快晴だった―――
まさに 雲一つ無い青空。梅雨の中休み。
初夏の清々しい空気。
朝の凜とした まだ少し涼しい 時間帯に目を覚ます。
何故だろう?
その日は朝から 特別な何かが起こる―――… そんな予感がしていた。
待ち合わせ場所に 15分前に着く。
昔から 時間に 遅れた事は無い。
それも 父親の影響かと思うと ほんの少し憂鬱になる。
勿論 時間に遅れ無いに越した事はない。
その正当性に反発して 遅刻するのは 詩織の性質が許さない。それだけである。
つまり DNA上に持って生まれた 切っても切れない血を感じさせる。
今は 父を嫌いではない。決して元々嫌いな訳では ない。
しかし 思春期の詩織にとって
彼の独善性は、耐え難い苦痛を伴っていたのだ。
携帯のメール受信音が鳴る。
現実に引き戻された。
『―――えっ…?…』
>> 104
『来れなくなった て―…そんなぁ…』
咲希から 急用が出来た事を 知らせるメールだ。
いっそ帰ってしまおうか?と考える。
咲希以外 知っている人は、来ないのだから。
『 あ あの ッ 』
振り返ると 少し困った顔をした男の子。
見覚えがある気が する。
『 小田 さんですよね?』
いきなり 名前を当てられて 知り合いかとアタフタしてしまう。
『 オレ あのっ「♪~♪♪………♪」
言葉を遮って 携帯の着信音が鳴り響く。
『えっ?? ちょっ お前ら まさか ッ!?』
意味不明な単語を発っして彼は、携帯を切った。
先程よりも 数段 困った顔をしている。
『 ……どうか されまし たか?』
『やら れ た…――――~』
ますます「?」顔の詩織。
『あっ!オレ河崎 河崎 涼って言いますっ。』
『 は ぁ 。』
曖昧な返事。
『今日 一緒に出掛ける約束してた んだけど……。』
困った様な 笑顔に見覚えがあった。
- << 108 目立つ人だった。 私服姿を 見る機会など 無かったのでピンと来なかった。 いつも【太陽の笑顔】が困り果てた顔。 加えて クラスが遠く 校舎が違う為 その人物と、結び付くのが遅れた。 『… ぁ の 』 咲希が、来れなくなった旨を告げようとする。 『 小田さんッ ごめん!!』 いきなり 90度姿勢のお辞儀。 面食らってしまう。 『 えっ。? ぇッ あッ ぁ の ?』 待ち合わせ場所に いる人々の視線が集中する。 『ゃ やめて下さ ぃッ。』 大慌て で、言う。 『あいつら 多分 グルなんです。』 『 は ? グ …ル?? 』 「グル」という単語が 頭の中をグルグル回る。 『 来ない です。』 『 は ぃ 』 確かに、咲希は来られない。 ぁ れ? あたし伝えた? 『 あいつら 最初から来ない つもり だったんです。』 言葉の意味を 理解するのに 数秒要する。 『 ど うして? あたし… 咲希に からか われたんでしょうか?』 どこか ズレた反応に 『 小田さんが 好きなんです。』 突然の告白―――…。
>> 105
『来れなくなった て―…そんなぁ…』
咲希から 急用が出来た事を 知らせるメールだ。
いっそ帰ってしまおうか?と考える。
…
目立つ人だった。
私服姿を
見る機会など 無かったのでピンと来なかった。
いつも【太陽の笑顔】が困り果てた顔。
加えて クラスが遠く 校舎が違う為
その人物と、結び付くのが遅れた。
『… ぁ の 』
咲希が、来れなくなった旨を告げようとする。
『 小田さんッ ごめん!!』
いきなり 90度姿勢のお辞儀。
面食らってしまう。
『 えっ。? ぇッ
あッ ぁ の ?』
待ち合わせ場所に いる人々の視線が集中する。
『ゃ やめて下さ ぃッ。』
大慌て で、言う。
『あいつら 多分
グルなんです。』
『 は ? グ …ル?? 』
「グル」という単語が 頭の中をグルグル回る。
『 来ない です。』
『 は ぃ 』
確かに、咲希は来られない。
ぁ れ?
あたし伝えた?
『 あいつら 最初から来ない
つもり だったんです。』
言葉の意味を 理解するのに 数秒要する。
『 ど うして?
あたし… 咲希に からか われたんでしょうか?』
どこか ズレた反応に
『 小田さんが
好きなんです。』
突然の告白―――…。
>> 108
『 咲希が あ たし を で すか??』
全く持って チンプンカンプンな回答。
肩を落とす。河崎クン。
しかし 詩織の その見事な ボケッぷりに、少しだけホッとする。
『……小田 さんって 天然さ んだったんだ…。』
『天然か 養殖かと 言われた ら 天然かと。』
大真面目に答える。
笑ってはイケナイ…と思いつつも 肩の震えは止まらない。
『あ~っ はっはっはっ…』
堪え切れずに爆笑。
『 ??? 』
相手の爆笑の意味が掴めない。
『~~ご ごめッ 苦し…笑い過ぎてーー…』
一通り落ち着くと
『お 小田さんさっ お腹 空いてない?』
『あいつらは来れないけど 昼飯一緒に 食べて貰えませんか?』
時刻は12:00に近い。
心なしか お腹が空いてきた様な 気すらしてくる。
会ったばっかりの人と?
しかも 二人で?
そう思うのに 首を縦に動かしていた。
彼の笑顔の引力に
負けていた。
>> 109
二人で 公園の
ベンチに腰掛けて
ファースト フードを頬張る。
晴天 初夏の心地良い風が吹
く中での 昼食は
ファースト フードをご馳走に変えていく。
小さな 犬が涼の足下によって来た。
首輪をしているところを 見ると飼い犬のようだ。
茶色くて 丸くて コロコロしている。
何とも可愛らしい瞳で、涼を見上げ 短い尻尾をフリフリ。
ハンバーガーを少し千切って差し出す。
嬉しそうに食べる。
『 ケンーーー』
遠くから男の子が走ってくる。
子犬の名前らしい。
呼ばれて 男の子の元へと走って行く。
こちらにペコリと頭を下げて 犬を抱えて手を振ってくれる。
詩織と 涼も振り返す。
涼の嬉しそうな笑顔。
この人が 周りに人を引き付ける理由が
理解出来た。
『 好きなんですね。 』
詩織に突然言われて
手にした ポテトを落としそうになってしまう。
『 子犬 』
ニッコリ 微笑む。
『 あっ あぁ。
好きですね。
犬も猫も 子供も。』
春の陽射しの 笑顔。
>> 110
その 笑顔は誰に対しても平等に 注がれているのだと 感じ
ふと 胸の奥が 苦しくなった
太陽は 誰に対しても平等な様に。
ザァ――――
突然の スコールも 誰の上にも 平等に降るらしい
さっきまで あんなに晴れて いたのに。
雨やどり出来る 屋根の下まで慌てて移動する。
涼に 握られた手。
雨音に交ざって 鼓動が 伝線してしまうんじゃないかと 思う程 うるさい―――…
遠くで轟きが 響く。
雷だ。
確実に近くなっている。
同時に 二人の距離も。
――――――ピカッ――――――
突然の 閃光に
涼にしがみつく。
地響きに 近い 音。
『 大丈夫?』
心底 心配そうな瞳。
口には出さなくても 隣にいるだけで 安心を与えてくれる。
『 雷 苦 手で
キャッ…』
再び 光る。
次の瞬間 彼の 胸に 優しい腕に 包まれていた。
『こうすれば 眩しく
ない か な? と
お 思って…』
少し 緊張の 込もった 声。
- << 115 教室に入ると 咲希に謝られた。 『ねぇ?昨日どうだった?』 興味津津の様子で尋ねられて、思わず困惑しながらも 少し省略して話す。 咲希が涼の親友と付き合っていると知るのは、少し後の事。 詰まり二人が協力して詩織と涼を引き合わせたのだ。 『 ね ね? どう思う?河崎 涼。良い奴でしょ?』 かなり判り易過ぎるプッシュだ。 『優しい人だね。』 曖昧な笑みを浮かべる詩織の姿に不安を覚える咲希。 涼は何かマズい事でもやらかしたのかと―――? 『河崎くんがね。グルって言ってたの‥‥』 ふむふむ。と話しを聞いている。 『あたし咲希に嫌われてるのかな?って‥・・・』 悲しそうに言う。思わず 頭を机に打ち付けそうになった。 ソコかよッ!?!? 河崎 涼の気持ちが、この鈍い少女に伝わる日が、程遠い事を不憫に思わずにいられなかった。
>> 111
その 笑顔は誰に対しても平等に 注がれているのだと 感じ
ふと 胸の奥が 苦しくなった
太陽は 誰に対しても平等な様に。
…
教室に入ると 咲希に謝られた。
『ねぇ?昨日どうだった?』
興味津津の様子で尋ねられて、思わず困惑しながらも 少し省略して話す。
咲希が涼の親友と付き合っていると知るのは、少し後の事。
詰まり二人が協力して詩織と涼を引き合わせたのだ。
『 ね ね? どう思う?河崎 涼。良い奴でしょ?』
かなり判り易過ぎるプッシュだ。
『優しい人だね。』
曖昧な笑みを浮かべる詩織の姿に不安を覚える咲希。
涼は何かマズい事でもやらかしたのかと―――?
『河崎くんがね。グルって言ってたの‥‥』
ふむふむ。と話しを聞いている。
『あたし咲希に嫌われてるのかな?って‥・・・』
悲しそうに言う。思わず 頭を机に打ち付けそうになった。
ソコかよッ!?!?
河崎 涼の気持ちが、この鈍い少女に伝わる日が、程遠い事を不憫に思わずにいられなかった。
新しいレスの受付は終了しました
お知らせ
小説・エッセイ掲示板のスレ一覧
ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。
- レス新
- 人気
- スレ新
- レス少
- 閲覧専用のスレを見る
-
-
人類最大の難問解明
2レス 136HIT なかお (60代 ♂) -
小説 嘘つきは北進のはじまり酉肉威張ってセクハラ
5レス 100HIT 小説家さん -
束の間の現実逃避 無意味な文字の羅列 幸せへの片道切符
4レス 99HIT 小説好きさん -
わたしはあなたたちがきらい
13レス 287HIT 瑠璃姫 (10代 ♀) -
勉強する皆、すとぷり、アイドリッシュセブン、嵐
0レス 40HIT 小説好きさん
-
小説 嘘つきは北進のはじまり酉肉威張ってセクハラ
酉肉威張ってセクハラ脇と肘の角度は90度など訳の分からない意味不明なこ…(小説家さん0)
5レス 100HIT 小説家さん -
北進
残業10時間未満とかどうやったらそう平気で嘘つけるんだろ恥知らず高恥の…(作家志望さん0)
29レス 624HIT 作家志望さん -
わたしはあなたたちがきらい
それを理解せず人を甚振るやつは「バカ」ということだ。 これを覚えてお…(瑠璃姫)
13レス 287HIT 瑠璃姫 (10代 ♀) -
満員電車とアタシとイケメン痴漢
おなか空いた… 餓死しそう… なんか……(匿名さん85)
99レス 2927HIT 修行中さん -
私の煌めきに魅せられて
ナンノハナシ? 「歌和井さん、モテるけどこういうの鈍いんだから」 …(瑠璃姫)
102レス 1310HIT 瑠璃姫
-
-
-
閲覧専用
🌊鯨の唄🌊②
4レス 152HIT 小説好きさん -
閲覧専用
人間合格👤🙆,,,?
11レス 175HIT 永遠の3歳 -
閲覧専用
酉肉威張ってマスク禁止令
1レス 215HIT 小説家さん -
閲覧専用
また貴方と逢えるのなら
16レス 493HIT 読者さん -
閲覧専用
今を生きる意味
78レス 552HIT 旅人さん
-
閲覧専用
また貴方と逢えるのなら
『貴方はなぜ私の中に入ったの?』 『君が寂しそうだったから。』 『…(読者さん0)
16レス 493HIT 読者さん -
閲覧専用
🌊鯨の唄🌊②
母鯨とともに… 北から南に旅をつづけながら… …(小説好きさん0)
4レス 152HIT 小説好きさん -
閲覧専用
人間合格👤🙆,,,?
皆キョトンとしていたが、自我を取り戻すと、わあっと歓声が上がった。 …(永遠の3歳)
11レス 175HIT 永遠の3歳 -
閲覧専用
酉肉威張ってマスク禁止令
了解致しました!(小説好きさん1)
1レス 215HIT 小説家さん -
閲覧専用
おっさんエッセイ劇場です✨🙋🎶❤。
ロシア敗戦濃厚劇場です✨🙋。 ロシアは軍服、防弾チョッキは支給す…(檄❗王道劇場です)
57レス 1435HIT 檄❗王道劇場です
-
閲覧専用
サブ掲示板
注目の話題
-
泣ける曲教えてください。
泣きたいです。
30レス 631HIT 匿名さん -
彼氏との関係にモヤモヤ
SNS一切やらない彼氏のことで愚痴です 大学生カップルです 最初はSNSやらない人のが浮…
20レス 390HIT おしゃべり好きさん -
恋人いない歴=年齢。アラフォー女子。
彼氏いない歴=年齢な女子です。 現在42歳、生まれてこの方、男女交際というものを一度たりとも経験し…
10レス 331HIT 匿名さん (40代 女性 ) -
知らない人から殺害予告
これは昨日の話です。 電話がかかってきました、だけど見覚えも無い電話番号。 気になったので返事を…
12レス 433HIT 匿名さん -
美人で仕事ができるのに
職場の女性で、美人で仕事も出来るのになんとなく男女共に全員にあまり好かれてない人がいます。 私…
7レス 239HIT 匿名さん - もっと見る