注目の話題: 家を綺麗にしたいんです。; 離婚した人と友達以上恋人未満。; この食生活を30年続けたらどうなりますか

人と心２。

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小説好きさん
22/04/03 13:32(更新日時)

未だに行き場を失った心たちが、この溜まり場に留(とど)まっている。

様々な理由を抱え、手放した人々と行き場をを失った心たち。

そんな心の姿は十人十色。

もう人の中に戻ることが出来ないほど、深く傷付いたものもいる。

そして、逃げ遅れた心は人の中で供に消える。

そう、あの者の様に…。

「珍しい、お客さんだな…」

そう呟いた私の目線の先には、人の魂に囚われた心がいた。

この心も元々、皆と同じ赤子の中に生まれた。

だが成長するに連れ、様々な環境下に晒され姿を変えてしまった。

一度、魂に囚われてしまった心は人の中に入り新たな人生を作ることは出来ない。

次第に魂が浄化され、この世から消えるのを待つことしか出来なくなる。

魂に囚われた心を私は囚心(しゅうしん)と呼んでいる。

この囚心には強烈な殺意と苦しみを感じる。

「可哀想に…。」

計り知れない怒りと悲しみ。

そして人の魂に囚われ、人を殺めて己も死んだというところか…。

囚心は溜まり場に訪れる人を眺めてはどこか羨ましそうに、震わした。

周りの心と違う己の姿を比べては寂しげに彷徨って。

月日が経ち、少し木々が葉を赤く染め始める。

「ああ、お前が来た時は桜が咲いていたな。」

私は囚心を眺めながら、その囚心がやって来た頃の事を思い出していた。

まだ浄化される気配のない囚心。

この魂は自ら命を絶ったにも関わらず、まだ心配事がある様だった。

10年の月日が経ち水面に氷が張る頃、囚心は魂と供に姿を消した。