名前をつけて保存
過去の恋愛を…
男は名前をつけて保存
女は上書き保存
と例えられているが…
だとしたら私は
男っぽい思考回路なんだなと思う
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🍀148
誘ってみたはいいものの…
予定が合わない。
というか、私に時間がない。
毎日部活なのはお互い様だけど、私はその上土日は夜までバイト。
12月になれば、部活がオフになる。
それまで待つしかない…
「ごめん、12月に入らなきゃ無理だけど…」
「わかった。それまで楽しみにしとく笑。どこ行きたい?」
どこ…かぁ…
考えてなかった。
普通は映画とか遊園地とか?
…先生とは行ったことなかったなぁ…
って、先生のことはもう考えない!忘れるんだから…!!
「あ、高橋くんの地元に行きたいなっ!高橋くんが生まれ育った街を見てみたい…」
高橋くんが住むのは隣の県。電車で1時間半くらい。
「いいけど…何もないよ?いいの?」
「うん!」
「じゃあ日決めたら言って。迎えに行くし」
「ありがとう」
🍀149
12月になった。
デート当日、授業があった私を大学まで迎えに来てくれた高橋くん。
すぐに地元にUターンで申し訳なかった。
いつも乗る電車の違う路線、乗り換え。
それだけで何だか新鮮だった。
最後に乗り換えた電車は4両編成だった。
8両編成、10両編成の電車しか見たことのなかった私は、それだけで
「かわいい~~❤」
と声を上げた。
「かわいい、ねぇ…笑」
あ、高橋くん呆れた?
まぁいいやかわいいものはかわいいし!
🍀150
4両編成の電車に揺られて、終点まで行く。
結構な田舎なのかなぁと思いながら電車を降りると、駅は近代的なデザインできれい…私の最寄り駅よりも駅ビルも大きい。
「これからどうする?」
「とりあえずお散歩しよ!」
私たちのお決まり、お散歩。
歩いていると、大きな公園を見つけて入る。
池には水鳥がたくさんいて、私はまた「かわいい~」を連呼していた。
そして写真撮影。
🍀151
12月、日暮れがはやい…
私たちは温かい飲み物を買って、ベンチに腰掛けた。
腰掛けるとほぼ同時に、高橋くんに手を握られた。
突然でびっくりしたけどうれしくて…私は高橋くんの肩に身を預けた。
落ち着く、穏やかな時間…
幸せだなって思った…
🍀152
家に帰ると、メールが届いた。
高橋くんからだった。
「今日はありがとう。寒かったし疲れただろうから、あったかくしてゆっくり休んでね。」
文面にくすっと笑いながら返信。
「こちらこそありがとう!楽しかったよ。高橋くんの地元はかわいいものがいっぱいだね!」
「電車に鳥?鳥はわかるけど電車は…」
「えーかわいいよー!」
家に帰ってからも他愛のない話。
こんなやり取りが楽しいって思ってた。
🍀153
私は、いわゆるカップルイベントにはあまり興味がない。
先生とも、誕生日やクリスマス、バレンタインは何もしていない。
もうすぐクリスマスだけど…
私は別に何も考えていなかった。
クリスマスイヴには授業もあったし、部活の集まりもあった。
部活の集まりのあと…
普通に帰ろうとした私を、高橋くんが引き止めた。
🍀154
「今日…このあとどうする?」
んん??
どうするって…別に約束とかしてないよね…?
あぁでも高橋くんにとっては、カップルがクリスマスイヴを共に過ごすのは『当たり前』なんだな…
高橋くんを傷つけたくはないし…私に用事はないし…
「あ…どうしよっか」
と当たり障りのない返事をした。
そしてまた…とりあえずお散歩に笑
🍀156
手はずっとつないでる。
けど…それだけ。
私が初めての彼女みたいだし…
奥手だなぁ…
私は…
自分から抱き着いた。
私は言葉よりも行動で気持ちを表すタイプだ。
抱き着いたのから一旦離れ…
私からキスをした。
🍀157
あ…ファーストキス奪っちゃった??
さすがに男として、初めては自分からしたかった??
まずいことしちゃったかな…
と思っていると
んん!?あれ初めてだよね!?
と思うようなキスに変わっていました…笑
🍀158
クリスマスイヴ、星空の下で初めてのキス…
意図せずに、とてもロマンチックな想い出ができてしまった笑
そんなロマンチックな一夜のあと…しばらくはバイト漬けの日々が始まる。
年明けまでほぼ休みなく、10時間働く日々…
🍀159
年末年始、主にシフトがかぶったのは三木さんだった。
「やっぱり接客は女の子のほうがいいね~。なんでこの店は野郎ばっかかな…」
…三木さんてばそればかり。
年末年始は想像を絶する忙しさで…走り回って、本当に目が回った笑
でも三木さんと働くのは楽しかった。
私の上がりと交代で、佐原さんが出勤する。
「榊お疲れ。忙しかった?」
「忙しかったですよ~。あとお願いします。」
佐原さんと入れ違いなのが…少し残念だなって思ったけど…
いろいろ考える余裕などなく、家はご飯とお風呂と寝るためだけの場所…
年が明けたけど…
高橋くんに年賀メールもしていない…
だめ…しんどい…
明日もバイトだし…
おやすみなさい…
🍀160
そんな日々を送っていて…
高橋くんにメールをしたのは、お正月ムードも消えかけたころだった。
「遅くなってごめんね💦いまさらかもだけど…あけましておめでとう!」
「あけましておめでとう。バイト忙しかったんだね。」
「冬休み…1回も会えなくてごめんね(>_<)」
「年末年始は忙しいんだもんね。また落ち着いたらどこか行こうね」
「うん…ありがとう」
冬休みは本当にあっという間…
冬休みが明ければ、すぐに大学のテストが始まる。
🍀161
バイト漬けの毎日から、テスト勉強とレポートに追われる毎日にかわる…
高橋くんとは合間合間にメールで励まし合った。
テストが終わったら会おうねって約束して…
テスト期間が終わると、部活のオフも明ける。
お互い、テスト期間の最終日までテストがあるわけではなかったから…
部活が再開するまでの、その隙間に会う約束をした。
🍀162
今回のデートは、繁華街をぶらぶらすることになった。
しかし…そこからどこへ行くかがなかなか決まらない。
私たちはお互い、かなりの優柔不断だ…
何となく歩き、いくつかお店を見てみたりしたが…
なんだか疲れてしまった。
私たちにはお散歩が合っている…と、また高橋くんの地元の公園に行くことになった。
水鳥たちに会いたいし!
🍀163
公園に着き、ベンチで寄り添いながら水鳥を眺める。
いきなり高橋くんが
「髪…ずっと長いの?」
と聞いてきた。
私の髪は、胸まである黒髪のストレート。
「ずっとセミロングかロングだなぁ…」
「そっか。俺は…短い髪のほうが好きなんだよね」
…それは、切ってほしいってことですか…!?
「まぁ別にただ単に俺の好みなんだけど」
🍀164
たまには髪型を変えてみるのもありかな…
そういえば先生は、長い髪がきれいだねって言ってたな…
今は高橋くんが彼氏だもん。
高橋くん色に染まって、先生のことを忘れてしまいたい…
よし!
髪切ろう!
私は決心した。
🍀166
「おはようございまーす」
部活のあとは、バイトへと出勤。
「おはよう榊…髪どうした?失恋か?笑」
そう話し掛けてきたのは…三木さんではなく佐原さん。
三木さんのほうがそういうこと言いそうなのにな…と思った。
「失恋じゃないですよっ」
そう返答だけして、仕事に取り掛かる。
後を追ってくる佐原さん。
「そっか…長いほうが似合ってたのに」
「な…っ佐原さんの好みなんて知りませんよっ!」
佐原さんを振り切り仕事をする。
どきどきしてるのが自分でもわかる…
このどきどきは一体何なのだろうか…
🍀167
佐原さんが隣から話し掛けてくる。
「榊、あの在庫ってまだあった?」
「倉庫の手前から2列目の棚の、右上にありますよ」
私は前を向いたまま返答する…
短くなった髪では、顔が隠れない…
早く倉庫へ行ってください…
しかし私の願いも虚しく…
「さっき見つからなかったんだよね…一緒に倉庫来て」
「…はい…」
そう返事するしかない。
🍀168
もので溢れた倉庫は狭い…
近いです佐原さん…
「…なぁ、榊はこの仕事好き?」
「へっ!?何ですかいきなり…。好きですよ?ほかのスタッフや社員さんもみんな好きですし…女一人はちょっと寂しいですけど」
「そっかぁ…まぁなら榊がいる間は俺も辞めないわ」
え…?
私が何を言う間もなく、目的のものを持って佐原さんは倉庫を出ていってしまった。
🍀169
佐原さん、仕事嫌なの…?
もやもやしたまま、部活はさらに忙しくなる…
しばらくバイトには行けなかった。
部活で高橋くんとのデートの時間もとれなかった。
でも毎日部活で会えるから、それでいいと思っていた。
🍀170
「おはようございます。お久しぶりです」
久々のバイト。
「お~榊!久しぶりだな」
チーフと三木さん。
「長らくお休みをいただいてすみませんでした」
「あ、そうそう、また三木と飲む約束してるんだけど、榊も来ないか?また佐原は無理なんだけどな…」
またまたこのメンバーで集まることとなりました。
🍀171
飲み会(?)当日。
「榊、お前まだ彼氏いないのか?」
いきなりの三木さんの発言に、意表をつかれてあわてふためいてしまった私…
「えっ、なに彼氏できたのか?」
チーフまでのってくる…
もう隠せないな…
ってか隠す必要もないし
「え~…あ、はい…」
そこからは質問攻めにあった。
🍀172
「どこで知り合ったん!?まぁどうせ部活だろうけど」
「…そのどうせですけど…」
「先輩か!?榊は年上彼氏が似合う!」
「いえ同い年です…」
「えっ意外!」
「告白はどっちから?…って榊は自分からするタイプじゃないよな」
「…まぁそうですねぇ…」
「名前は!?」
「聞いてどうするんですか!」
こんな感じでこの日は持ち切りだった。
チーフはまた、「俺だけ独り者」って嘆いていた…
🍀173
バイトを長く休んでいたため、春休みはまたバイト漬けの毎日。
高橋くんと会う時間はつくれなかった。
私は別に平気だった…
先生と滅多に会えなかったのに慣れていたためか…平気だった。
まだ先生を忘れられていないためでもあったのかな…
🍀174
会う時間はつくれなくとも、メールはしていた。
メールを送るのはいつも私からで…少し寂しかった。
でも、高橋くんはとにかく会いたがってくれていた。
「ごめん…バイトが忙しくて」
そうメールする。
週6で9時間入っていると、残り1日は休みたい…
それが私の本心だった。
すると…
「バイトと俺とどっちが大切なの?」
と返ってきた。
🍀175
どっちがって…
比べるものじゃないし…
このとき、自分は『仕事人間』なんだなって知った…
バイトは楽しい。
チーフも三木さんも佐原さんも好き。
3人と働くのが楽しい。
3人の掛け合いを見てるのが好き。
しかし…それが終わりに近づいていた…
🍀176
春休みも終わりに近づいたころ…
チーフに呼ばれた。
「まだここだけの話な。榊には言うけど…」
前置きで鼓動が速くなるのがわかる…
「三木がな、異動になった。あいつ、お前のこと本当にかわいがってたから…。最後まで楽しく働いてやって。あ、本人が言うまでは知らないふりな。俺のおせっかいだから。」
三木さんが…異動…
私を育ててくれて、いつも笑い合いながら仕事をしてきた、大好きな三木さん
悲しくないわけはない…けど
「どこのお店に異動なんですか?」
「あぁ…〇〇店だよ」
「じゃあ栄転ですね」
おめでとうございますって言わなきゃ…
🍀177
チーフに言われたとおり、三木さんの前では何も知らないふりをしなければ…
しかしやはり顔に出たのか…
「なに?今度こそ失恋か?」
佐原さんにそう話し掛けられた。
佐原さんには話してもいいのかな…
「…だって…三木さん…」
「あぁ、知ってるのか…。俺だってショックだよ。三木さんがいなくなるなら、俺もう辞めたい…」
えぇどんだけ~
そんなに三木さんが好きなのかっ!
「…私がいるうちは辞めないんじゃなかったんですか?」
「そうだな…」
そうだな なんだ…
🍀178
三木さんの異動は、今から2週間後…
もう2週間しか一緒に働けないんだ…
しかも来週からは部活の勧誘が始まるから、あまりバイトに来れない…
シフトかぶってるの、何日だろう…
「おはよう榊~」
三木さんが出勤してきた。
佐原さんには気づかれちゃったし…
元気にふるまわなきゃ!
「おはようございまーす!」
🍀179
部活の勧誘期間が始まった。
練習が厳しいため、部員は3分の1残ればいいほう…
だから、それを見据えて必死に勧誘しなければならない。
「あっなゆ見て見て!あのコ、イケメンじゃない??」
「じゃあ亜衣ちゃん勧誘してきなよ」
「イケメンには緊張するから無理ぃ~…」
「え~なにそれ~笑。私はあの女の子たち勧誘してくる!」
かわいい女の子を入れるんだ!
そう私は張り切っていた。
かわいい女の子…
後々悩まされることになるとは知らずに…
🍀180
この年、女の子がたくさん入ってくれた。
男の子は少ない…
私たちの学年と一緒。
さて何人残るかな…
私と高橋くんが付き合っていることは、すぐさま1年生たちに知れ渡ったようだった。
一緒に帰ったりしたからだろうな。
隠す気なんてないからいいんだけど。
🍀181
そして、あっという間に三木さんの最後の出勤日の前日になった。
社員とアルバイターとの関わりが深い職場で、アルバイターを動揺させないためか…
前日まで、三木さんの異動は公表されなかった。
ほかのアルバイターたちも、悲しんでいた…
私は三木さんに
「今日と明日、一緒に最高の仕事をしましょう!」
と誓った。
三木さんはすごく喜んでくれた。
🍀182
そして迎えた最終日…
寂しさでいっぱいだったが…
「他店に行かれるということは…これからライバルですね」
私なりの、さよならのかわりの言葉だった。
「おう。この店の成績は榊にかかってるからな。本当に榊には助けられたよ。チーフや佐原さんをよろしく頼むな笑」
この日は売上も上々で、三木さんを気持ち良く送り出すことができた…と思う。
🍀183
「どうした?元気ない」
「え…っ」
高橋くんと学校帰り。
「あ、ごめん…実はバイト先の社員さんが異動しちゃって…寂しいなって…」
「…社員って男だろ?そんな寂しがるなよ…。嫉妬しちゃう」
しちゃうって…
ぷっと笑ってしまった。
「いやいや社員さんとして好きなだけで…嫉妬する要素はどこにも…」
そう、三木さんには…
……でも佐原さんには…?
一瞬、頭をよぎった。
🍀184
チーフも三木さんも佐原さんも、社員さんとしては平等に好き。
だけど…それなのに
異動したのが三木さんじゃなくて佐原さんだったら、もっと寂しかった気がする…
三木さんに失礼だし!
と思って考えるのをやめたが…
この気持ち、この差は…
🍀185
三木さんが異動してからしばらくして…新入社員が来た。
男の人。
「はじめまして。新入社員の小松です。」
「あ…っはじめまして!榊です。よろしくお願いします!」
感じのいい人だなって思った。
よかった…この人とならうまく仕事できそう♪
佐原さんは、「後輩ができた」と喜んでいた。
🍀186
一方部活では…
後輩たちも打ち解けてくれて、ますます楽しくなってきていた。
中高時代に部活をやっていなかった私に、はじめてできた「部活の後輩」…私にはかわいくて仕方がなかった。
満たされた毎日…のはずなのに、心のひっかかりはとれないまま…まだ先生のことを忘れられずにいた。
高橋くんと付き合って半年以上が過ぎたし、高橋くんのことはちゃんと好き。
それなのに…どうして?
高橋くんへの罪悪感が、限界に達していた…
🍀187
そんなある日の帰り…
「今度同窓会やることになったんだよねー」
と高橋くん。
「そうなんだー。昔好きだった子に会えるかな笑」
と言ってみる。
「まぁ会ったところでなぁ笑」
「でもどんなふうになってるかは見てみたくない?」
「んー…まぁそうだなぁ。そっちは?元彼の話…実は聞いてみたいんだよね」
「えっ!?聞きたいの!?」
まさかの要望にびっくり…
🍀188
高橋くんは、私に過去に彼氏がいたことだけは知っていた。
裏を返せば、それしか知らない…
「いつからいつまで付き合ってたの?」
「んー…中3から高2まで」
「結構長いなぁ…。それだけ付き合ったらさ…忘れられるものなの?」
「え……」
私の心を見透かしたような質問…
うそでも「忘れたよ!今はあなたしか見えない」って言ったほうがいいのかな…
「…忘れてない?」
「あ…うん…ごめん。」
もう正直に答えるしかないなって思った…
🍀189
「どんな人だったの?中学の同級生?」
「ううん…塾の…先生…」
「じゃあ年上だ」
「うん…」
馬鹿正直に答えたら、傷つけてしまうのでは…と思ったが、真実を話すほうが心が軽かった。
「いくつ上だったの?」
「かなり…。その先生ね…離婚歴があってね…。実は…私…の両親も…私が中学入る前に離婚してて…だから…」
高橋くんへの申し訳なさや高橋くんの優しさ…いろんなものを感じて、私は泣き出してしまった。
人前では決して泣かなかった私なのに…
🍀190
両親の離婚のことは、だれにも一切言ってなかった。
だから高橋くんも
「そうだったんだ…」
と驚いていた。
「離婚する人のこと…やっぱり…悪く言う人…多い…から…だれにも言えなかった…」
「そんな差別とか、なくなればいいのにな…。俺は少なくとも、離婚家庭の子だからって気持ちは変わらないよ。…ていうか…何だろうと気持ちは変わらないよ。実は宇宙人でしたーとか言われてもね」
「元彼のこともさ…忘れさせられるような男になるから」
そう言って抱きしめてくれて…
私は人生ではじめて『嬉し泣き』をした…
🍀191
「ごめん…ごめんね…っ」
「もういいから。ってゆーか、次謝ったら怒るからっ。そして泣き止めっ」
「そんなこと言われたら余計に泣き止めない~~」
「えぇ!?そうなの…!?」
この日は本当に幸せだなって思った。
涙が出るほどのうれしい言葉をくれて…
高橋くんの腕の中は落ち着いて…
愛されてるって感じたし、私ももっと好きになったし好きになりたいって思った。
だけど…幸せは長くは続かなかった…
🍀192
私がバイトを初めて、もう1年以上。
後輩が何人も入っては辞め入っては辞めを繰り返していた。
しかし後輩とはいえ年上ばかりだった。
「榊、また新人入ったぞ」
出勤するなりチーフにそう話しかけられる。
「そうなんですか?今度の人は続けてくれたらいいですね~」
「今回はな、お前の同い年が二人」
「同い年ですか!?やった~」
「…二人とも男だけどな笑。まぁ研修頼むぞー」
この職場は、かなり入れ代わりが激しい。
100人入っても50人は数週間、残り50人のうち40人は数ヶ月で辞めてしまう。
1年続くのは100人中2、3人だ…
だから私は、もう立派な『ベテラン』扱いをされる…
🍀194
同い年なだけあって、3人で仲良くなり、バイトのあとにしゃべったりすることも多かった。
「榊は彼氏いるの?」
「いるよ」
「やっぱりかーくっそー」
と西野くん。
「2人は?彼女いないの?」
「…残念ながらいない」
「俺も」
「へー意外。2人ともいそうなのにー」
「榊の彼氏は年上っぽい~」
と西野くん。
「あ、ぽいぽい。榊には年上が似合うよな~」
と長井くんも。
「んー、それよく言われるなぁ。なんでだろう…。でも彼氏同い年だよ」
「まじで!?てか榊を落とせる同い年ってどんな男だよー」
「西野くん…なにそれ笑」
🍀195
仕事中…
「榊、西野と長井と仲いいらしいな」
話しかけてきたのは佐原さん。
「同い年ですからねー」
「…ふーん。たぶらかすなよ」
「はいっ!?なんですかそれっ」
……そういえば…
佐原さんは私に彼氏がいること知らない…よなぁ…
三木さんとチーフから聞いてないっぽいよね…
だって知ったら絶対からかってくるはず…
🍀196
季節は初夏になっていた。
今日は高橋くんの地元に遊びにきた。
「暑くなってきたねー。どこ行こう?」
「じゃあ家来ない?」
「えっ!?」
「親は仕事でいないし…」
「そんな、留守にお邪魔できないよ💦」
高橋くんの家の前までは行ったことがあるが、上がったことはない…
「暑いし行こっ」
半ば強引に手を引かれて、家まで連れていかれた。
🍀197
部屋に通され、エアコンをつけてくれた。
ものは少ないけど広くないため、ベッドに腰掛ける。
このとき…
本当に不思議なのだが、直感的に
「この部屋に来るのはこれが最初で最後だろう」と感じた…
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