名前をつけて保存
過去の恋愛を…
男は名前をつけて保存
女は上書き保存
と例えられているが…
だとしたら私は
男っぽい思考回路なんだなと思う
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🍀1
初恋はいつ?
ときかれても答えられない
記憶にない…
覚えているのは小6のときの淡い気持ち
「お前さぁ去年の運動会のダンスで一番前にいたよなぁ?」
始業式…小6になって初めての日そう話しかけてきたのは出席番号が一つ前の坂井くん
同じクラスになるのは初めて
(え…っだれ?初対面なのになんでそんなこと覚えてるの…へんなの…でもすごいなぁ)
それが第一印象だった
🍀2
出席番号が一つ違い
日直や授業のグループはいっしょだった。
「榊は勉強もパソコンも家庭科も…なんでも得意だよなぁ」
坂井くんはそう私を褒めてくれた。
確かに学校の成績はよかったけど…
算数を除いて。
私の算数の不出来を心配した両親に、私は塾に入れられた。
私はほかに習い事をしていたし、これ以上忙しくなるのが嫌で反抗したが…結局行くこととなった。
しかも地域では有名な進学塾。
正直、「できない」子が行く塾ではない…
入塾テストもあった。
もちろん、算数のテストの出来はいまいちだったが…ほかの教科がそこそこだったので受かってしまった。
🍀3
一応納得はしたものの、憂鬱は憂鬱…
そうして私は塾に通い始めた。
「これからよろしくね、榊さん。」
「よろしくお願いします…」
塾講師の木村先生は私の憂鬱な心に気づいてか気づかずか、にこやかに挨拶してくれた。
(若い先生だなぁ…24か25歳くらいかな?)
そう考えながら、先生のあとをついて教室に入る。
「…あれっ!?榊!?」
教室の後ろから私に気づいたのは…坂井くんだった。
🍀4
坂井くん、この塾に通ってたんだ…
驚きながらもうれしく思う自分がいた。
週に一回、学校のあとに塾でも会えるんだぁ…
そう思うと、塾へ通う元気が出てきた。
しかしこの塾には、私のそんな淡い気持ちを邪魔する制度があったのだ。
それは…
2ヶ月月に1回のクラス変更
進学塾のため、クラスは学力別だった。
クラス分けは、同じく2ヶ月に1回行われる全塾テストの成績によって決められる。
🍀5
初めての全塾テスト
私の成績は散々だった…
坂井くんは以前から塾に通っていて、成績も結構よかった。
学校でしか会ってなかったときは、勉強ができるなんて知らなかった…
私は下のクラスにおろされてしまった。
坂井くんはもちろん上のクラス…
寂しかった。
坂井くんに追いつきたい…
それが私の勉強の原動力だった。
しかし努力も虚しく一向に成績は上がらず…
クラスはずっと別だった。
そしてある日…
私は考えてもいなかった現実を知る。
🍀6
学校の休み時間
友達の発言
「なゆちゃんはさぁ、中学どこ受けるの?」
「…えっ!?」
「えって…だって勉強できるし塾にも通ってるし…中学受験するんでしょ?」
「えぇ!?しないよぉ💦算数の成績が悪すぎて親に通わされただけで…」
「そうなのー?てっきり受験するんだと思ってた。だってなゆちゃんの塾に通ってる子たちってほとんど受験するでしょ?」
ほとんど…
そっか進学塾だもんね…
坂井くんも…?
🍀7
私は公立中学に通うつもりでいた。
親も受験はすすめてこないし…
でも…
坂井くんは受験するの?
中学…分かれちゃうの…?
それがたまらなく寂しくて…
やっと自分の気持ちに気づいた。
ほんとは…気づかないようにしてただけかもしれないけど。
だれかを好きになるって
楽しいこともあるけど…
それ以上に苦しいことなのかもしれない
そう思った小6の私…
坂井くんが受験するかどうか…なんとなく確認できないまま、季節は冬になってしまった。
そして、私に思いもよらなかった出来事が起きる…
🍀8
ある夜…
ふと目が覚めると…
リビングに明かりがついていた。
お父さんとお母さん…まだ起きてる…?
ねぼけながら私はリビングに向かって歩く
しかし私は急に歩みを止めることとなる
父と母の
「私たちもう無理よね」
という言葉が聞こえたからだ…
…え…?
私は頭が真っ白になった…
確かに…よく喧嘩はしてたけど…でも…え…?
私は…どうなるの?
🍀9
私は両親に気づかれないように部屋に戻り…
布団をかぶり声を殺して泣いた…
泣いたのなんて久しぶりで…
本当に久しぶりで…
小学校に入学したてのころ、同じクラスの男の子に筆箱を壊されて以来だった。
でも、同じ「泣く」という行為でも…気持ちがちがう。
痛い…とにかく痛かった。
🍀10
私は両親の前では何もしらないふりをして過ごした…
そして両親もまた、私に何かを告げることはなかった
両親のこと…
坂井くんのこと…
私は考えすぎて上の空だったんだと思う…
いつものように塾から帰ろうとしていると…
「榊!ちょっといいか?」
木村先生に呼び止められた。
「はい…」
木村先生に塾の面談室に連れていかれる。
「どうかしたか?最近元気ないぞ?」
「すみません」
「すみませんってことは…何かあったんだな?」
「……」
私は何て言ったらいいかわからなかった。
🍀11
「まぁ言いたくなかったらいいよ。でも生徒の心のケアも教室長の仕事だから。」
「えっ!?」
私は驚いて顔を上げた。
「えってなんだ」
「えっえっ…木村先生って教室長なんですか!?」
「おまっ…いまさらか!?」
先生は呆れているのか笑っているのかわからない表情を見せた。
「だって…先生若いし…」
塾には、40代50代の先生もいた。だれが教室長だなんて考えたこともなかったけど…
「若い…まぁ若いほうかもしれないけど、もう36だぞ?」
「ええぇっ!?」
私はさっきよりも大きな声を出した。
🍀12
「先生…すごく若く見える…24か25くらいだと思ってました…」
「よく言われる」
先生はにっと笑った。
「え、じゃあ結婚してるんですか?」
「してるよ。娘が二人いる」
そうだったんだぁ…
もう半年以上この塾に通っているのに…なにもしらなかったんだなぁ私…
🍀13
その日は結局
先生に私の話はしなかった
私は家に帰り、相変わらずのなにもしらないふり…
父はきょうも帰りが遅い。
父は私が起きる前に家を出て、私が寝てから帰ってくる…そんな毎日を送っていた。
🍀14
私の小学校卒業が近づいてきた…ある日曜日
休日出勤がザラだった父も家にいた。
両親が私を部屋まで呼びにきた。
「なゆ…話があるんだけど…」
私は直感的に感じた。
わかっていたからだと思うが…
こわい
いやだ
ききたくない…
「いや。」
私はそう言って部屋を出ようとはしなかった。
私のその態度を見て、両親も気づいたようだった。
反抗なんてしたことがなかったし…
「なゆ…気づいてるのね…?お父さんとお母さん、離婚するから…」
🍀15
私は両親が部屋の前から立ち去るまで待った。
一言も発さず…
両親の気配がなくなってから、また泣いた。
子はかすがいってことわざがあるけど…あんなの嘘なんだ…
私のことなんてかわいくないんだ…
家出でもしたい気分だったけれど、行くあてなんてなかったし、第一、家から出るためには両親と顔を合わさなければならなかった。
私はずっと部屋に閉じこもっていた。
🍀16
いよいよ卒業式…
両親には
「来なくていい」
と言ったのだが…
出席していた
「なゆが小学校を卒業したら、籍を抜く」
そう言われていた
私は母に引き取られることになった…
母との二人暮らし
中学校生活
私は不安だった…
そして…坂井くん
中学受験する子たちは、3学期は学校を休んで塾に行っている子が多かった。
そんななか、坂井くんは学校に来ていた。
…ということは…受験しなかったのかな…?
今となれば本人にきくなり周りにきくなり、確かめる方法もあっただろうと思うが…
当時はいっぱいいっぱいだった。
🍀17
春休みのある日
私は祖父母の家に預けられた
母が帰ってくると…
「今日、届だしてきたから」
と言われた
いつまでもうじうじしていられない…
私は新生活に向けて前向きになろうと努力した。
🍀19
やっと中学の入学式の日がやってきた
クラス分け表が配られると、私は自分の名前よりも先に坂井くんの名前を探す…
もし同じクラスなら、出席番号はほぼまた一つちがいなのだろうが…
あった!
いた!
よかったー…
安堵とうれしさが込み上げてきた。
ただ…クラスは別だった。
3組と6組…
でも、うれしかった。
🍀20
私は、塾もそのまま同じ塾の中学部に通うこととなった。
世帯主が父から母にかわり…
私は塾で手続きをしなければならなくなった。
現実を突き付けられる手続きに…
また憂鬱になった。
面談室で、木村先生の指示のもと書類を提出する…
大人なら、事情なんて話さなくても感づくんだろうなぁ…私はそう思いながら、木村先生の指示をきく。
先生は特になにも触れず…
「書類はこれでオッケー。授業が始まるから教室に行き」
とやさしく声をかけ出ていった。
🍀21
坂井くんも、同じ塾の中学部に通うことにしたようだった…
うれしかったけど、クラスはいっしょになれそうもない…
小学生のときは算数しか通ってなかった私だが、中学からは国語・数学・英語・理科・社会すべての教科を受けることにした。
一番苦手な算数じゃ、坂井くんと同じクラスになるのは難しい…でも、ほかの教科なら…とも考えた。
でも不純な動機だけでなく(笑)このころには塾が好きになり、中学生になったんだし勉強がんばろう!という気がしていた。
もちろん、坂井くんに追いつきたいという気持ちはあったが…
🍀22
全塾テストで成績がよかった者は、教室に名前が貼りだされる。
坂井くんの名前はいつもあったが、私は載ったことがなかった。
中学校最初の定期テスト…
私はかなり勉強をした。
全塾テストは難しい。
学校の定期テストのほうが簡単だというのはみんな思っていた。
とりあえず、定期テストだけでもいい成績を出そう…
私は必死だった。
🍀23
その結果…定期テストの順位は、学年で一桁だった。
数学は相変わらず悪かったが…あとの4教科でカバーしていた。
数学と国語以外の3教科は学年1位で…学校の先生からはかなり期待されるようになった。
そして、塾にも定期テストの結果を報告する…
木村先生に「すごい!よくがんばったな!塾に入りたては落ちこぼれだったのに…笑」と言われた。
褒められて、期待される…
初めての経験で、うれしかった。
ますます勉強をがんばろうと思った。
🍀24
そして全塾テストでも、成績が伸びていった。
中学部になると、全塾テストは毎月で…クラス分けも毎月行われた。
上位者一覧にも名前が載るようになり…
坂井くんと同じクラスになることができた。
学校ではクラスがちがうけど…
週4日の塾ではクラスがいっしょ。
坂井くんに会えるのがうれしくて…
木村先生の授業はおもしろくてわかりやすくて…
同じ学校の子はもちろん、ちがう学校の子たちとも仲良くなり…
勉強もがんばっただけ成果が出たし…
塾に通うのが楽しかった。
🍀25
勉強をがんばって…がんばって…
成績は伸びる一方
そして夏の全塾テストで…
私は坂井くんに勝ってしまった。
え…?うそ…
私は複雑な気分だった。
私の成績も上がったが、坂井くんの成績が下がったことも起因していた。
追いつきたかった…
坂井くんより少し下くらいの成績を目指していた…
私は坂井くんを抜いたことに、なぜかショックを受けた…
🍀26
坂井くんは、中学校に入ってから部活をがんばっていた。
私は部活には入らず、主に勉強、たまに友達と遊ぶ…そんな日々を送っていた。
成績が逆転してもおかしくない。
坂井くんの成績は落ちていき、秋には私が上のクラス、坂井くんが下のクラスになってしまった。
結局、クラスは離れ離れ…
私が勉強に手を抜けば、同じクラスになれる…なんて思ったこともあった。
でも私は勉強をがんばりつづけた。
周囲の期待に応えたくて…
坂井くんは
「榊はすごいな。こんなに成績よくて」と言っていた…
私があなたに対してずっと思っていたこと…
私はあなたに追いつきたくてがんばってきたの…
🍀27
塾でクラスが分かれてしまったからには、学校で同じクラスになりたかった…
はやく2年生になりたかった。
クラス替えが待ち遠しかった…
私が坂井くんを好きだということは、だれにも言っていなかった。
坂井くんは学校の成績は悪く…態度もあまりよくなく、不良寄りだった。
私は成績優秀・クラス委員長のみんなが認める優等生で…
「なんて坂井なのー!?」と言われることは目に見えていたからだ…
でも私は…
小学生のときに知った、彼のやさしさが忘れられず…
ずっと想いつづけていた。
🍀28
そして待ちに待った進級、クラス替え。
しかし…またもや坂井くんとはクラスが違った。
でも今回は1組と2組…
隣のクラス…1年生のときを考えれば近くなった。
塾での成績は開きが大きくなる一方で…
とうとう坂井くんは、上位者一覧に載ることもなくなってしまった。
このまま、成績は悪いままなのかな…
ということは、高校は分かれちゃうな…
坂井くんと同じ高校を受けるって言ったら、お母さんも学校の先生も塾の先生も…みんな必死になってとめるに決まってる…
🍀29
3年生こそ同じクラスになりたい…
私の願いは、またもや叶わなかった。
結局3年間、クラスはばらばら…
そして悲しむ私に追い討ちをかけるかのように…
坂井くんは塾をやめてしまった。
本当に、話す機会すら失ってしまった。
中学3年生…
私は高校受験をがんばろうと思った。
坂井くんとは高校が離れてしまうだろうけど…自分の行きたい高校に行こう。
私の志望校は、家から一番近い高校で、地域の二番手校。
塾の先生たちにはトップ校を受けるよう、親子そろって散々説得されたが…
私も母も折れることはなかった。
🍀30
私の行きたい高校へ行けばいいと言ってくれた母に感謝した。
坂井くんがやめたあとも、塾には楽しく通った。
友だちも先生たちも、大好きだったから。
塾は私の居場所…
そんなふうにさえ感じていた。
学校のない日は朝8時から夜11時まで塾にこもり…
木村先生には「もう塾に住んでるな笑」と言われた。
そして塾に“住む”ようになって気づいたことが一つ…
>> 30
🍀31
気づいたこと…
疑問に思ったこと
それは
塾の先生たちはいつ寝ていつごはん食べてるの?
ということ
特に教室長の木村先生は…
朝から夜までずっといて…
授業授業授業…
授業の合間にも生徒たちが質問にいく。
質問だけじゃなくてじゃれにいく。
木村先生の授業は本当におもしろくて、全塾きってのスター講師だった。
生徒からの人気も、塾本部からの期待も絶大だった。
私は当時、
私が出会った人のなかで一番、『人気者』って言葉が似合う人だなぁと思っていた
いや、今でも一番だ…
そんな木村先生は、教室が閉まったあとも、教室長会議や講師研修やらで、夜中の3時…ひどいときは朝方の5時まで本部で仕事をしていた。
🍀32
ほかの生徒たちは知らなかったが…
塾で一番塾に住んでいた私に、木村先生は愚痴なのか話してくれた。
私は先生が心配になった。
先生と…先生の家庭が。
うちの両親の離婚の原因の一つに、父の仕事が忙しすぎることがあった。
失礼だよなぁと思いつつも…
「先生…奥さんや娘さんたちと話す時間とかあるんですか?」ときいた。
「まぁ…ないね。もう見捨てられてるかんじかな…」
「でも…娘さんたちまだ小さいですよね?パパと遊べなくて寂しいんじゃ…」
先生…娘さんたちがかわいくないの?
子供がかわいくない親は家庭をかえりみずに仕事をするの?
🍀33
「先生…娘さんたちのお名前は?」
私の口からふと出た質問
「『みお』と『みき』だよ」
「…漢字は?」
「美しい桜で『美桜』、海が輝くで『海輝』…いい名前だろ」
そう言った先生の目は、とても優しく…今まで見たことがない穏やかな表情だった
あぁ…娘さんたちのことはちゃんと大事に思ってるんだな…
そんな顔するんだ…
そう思ったら安心して…
でも、安心以上の気持ちも感じていた。
🍀35
ばかだ…
私は本当にばかだ…
今でもそう思う。
娘さんたちのことを想う先生を見て、惹かれてしまったなんて…
先生は妻子持ち。
家庭を大切にしてほしい…
私は何も望まない。
ただ「かわいい生徒」でいられれば、それ以上何も望まない。
🍀36
塾に“住んでいた”だけあって、私はほかの生徒よりも先生と仲がよかった。
先生は私に、しょっちゅうちょっかいを出してきた。
それに私がつっこむ。
そんな私たちを見て、友達は「夫婦漫才みたい」だとか「どっちが年上かわかんない~」だとか言っていた。
そんな様子から…
先生のことを「かっこいい~」と騒ぐ女の子たちから、私はあまりよく思われていなかった。
でも私は、「かわいい生徒」ポジションを手放す気はなかった。
🍀38
受験が近づくと、塾講師の仕事はますます忙しくなる…
きのうも家に帰ったのは朝6時、そして8時には出勤…
そんな先生の体が心配だった。
そして、奥さんや娘さんたちとの仲も。
「先生…奥さんに愛想つかされたりしないんですか?」
私はまたこんな質問をした。
すると先生は
「…まぁ…みんなが思ってるとおりじゃないかな」
と言った。
…みんなが思ってるとおり…?
それって……
🍀39
それ以上はきけないままだった。
そのまま、私の高校入試が訪れ…一週間後には合格通知が届いた。
よかった…
でもこれでみんなの入試が終わるまで、塾にはもう行けない。
そしてこの塾には高等部はなかったため、塾も卒業になる…
先生に会えなくなる…
🍀40
みんなの入試が終わり、塾の卒業式がやってきた。
先生や友達に久しぶりに会えるのはうれしかったけど…
もう会えなくなる…
「久しぶり。合格おめでとう。」
「ありがとうございます…」
先生が話しかけてきてくれた。
「でも…もう塾に来れないと思うと…寂しいです…」
そう言う私に
「来たらいいよ。授業はないけど…自習しに。」
「…いいんですか?」
「みんなで来たらいいよ。あと、この春から個別指導も始まるんだ。大学生になったら、講師のアルバイトに来たらいいよ。」
アルバイト…先生といっしょに働ける…
私は
「必ず戻ってきます!」
と答えた。
🍀41
卒業式のあと…
先生に
「榊さん!ちょっと」
みんなに気づかれないように呼ばれ、視覚となる廊下に連れていかれた。
「ほんとは生徒には教えちゃだめなんだけど…」
そう言って手渡されたのは…
先生の携帯のメールアドレスが書かれたメモだった。
私は戸惑ったが、うれしくて受けとった。
主です。
すみません💦
🍀34が抜けていました…
まだタイトルの意味が通るまでには時間がかかりますが…よければお付き合いください🙇
名前をつけて保存
上書き保存
どちらが多いのか…
本当に男女でちがうのか…
最近考えていることです。
では、まだ続きます!
🍀43
結局…考えに考えた末…
「榊です。今までありがとうございました。志望校に合格できたのは、先生のおかげです。また遊びに行きますね。」
と…当たり障りのないメールを送った。
返信がきた。
「こちらこそありがとう。榊はがんばりやで、教えがいがあったし…いろいろ話したりするのも楽しかった。」
と…
メールは続いた。
入試が終わった直後は、一番仕事が落ち着いている。
また、高校に入るまえの春休み、友達と塾に遊びに行きもした。
友達にも先生とメールをしていることは黙っていた…
「ほんと生徒に教えちゃだめだけど…」
先生がそう言っていたからだ。
🍀44
ある日…
友達と塾にいると…
「ちょっと本部で仕事があるから」と言って、先生は塾をあとにした。
気にせず友達と高校から出された宿題をする。
入学前なのに宿題がある…進学校だから仕方ないか…
すると先生からメールがきた。
(さっき本部へ行くって言って出ていったのに…なんだろう?)そう思いながらメールを開くと…
メールの内容に目を疑った。
🍀46
だが、そのメールにはまだ続きがあった。
「実は離婚してるんだ」と…
「みんなの思ってるとおり」って…やっぱりそうだったんだ…
私はメールに返信できず、友達の前で平静を装うのに必死だった。
🍀47
先生が帰ってきた。
「先生おかえり~!」
友達は無邪気に言う。
私は顔を上げられない。
先生が講師室に戻る…
どうしよう
どうしよう
どうしよう
好きな人と両想い…?
私の頭の中はぐるぐるしすぎて、もう訳がわからなかった。
しばらくして、先生が廊下に出たのがわかった。
友達にはトイレに行くと言って、私も廊下へ出た。
私を見た先生は、例の視覚になっているところへ…
私もついていった。
🍀48
「ごめん…いきなりあんなメールして…」
「あ、いえ…」
「びっくりしたでしょ…」
「はい…」
私は小さな声で返事をする。
声が出ない…
「でも…本心だから」
どうしよう…
今ここで私が「好きです」って言ったら…
でも声にならず、私は倒れ込むように先生の胸に頭をのせた。
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