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売掛金回収

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しゃけ( kYyLh )
11/01/12 15:23(更新日時)

年商二千万

個人事業主


世の中
不景気不景気

しか~し
払うものは払って下さい

No.1406398 10/08/28 01:07(スレ作成日時)

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No.51 10/09/05 23:09
しゃけ ( kYyLh )

東氏は挑戦的な人間だ。

では、泣き落としは効くか試してみようとアイコは考えた。

『私、正直、東さんのこと信用していたので、裏切られたようで悲しいです。
取り敢えず、4日までに10万でもいいので入れて頂けたら、本当に助かるのですが。』

わざと、涙声で話し
東氏の反応を探る。


『すみません。
奥さん。なんとか10万集めてみます。また、連絡しますから。』

泣き落としが聞いたのか、案外すんなりと話が終わった。


残金45万一括で要求したとこで、払えないものは払えないと突っぱねるであろうことは今までのやり取りで感じ始めたので分割で攻め込む方向にした。

No.52 10/09/05 23:30
しゃけ ( kYyLh )

やり取りの流れをトシに報告し、分割への方向転換の話もした。

話の中でひとつの提案としてアイコは言った。

『少し割り引いたら払うかもよ。』

眼光鋭くトシが返す。

『あの現場は元々まけてくれって言われて割引してあるんだから、これ以上割引く必要は無いよ。』

優しい声ながら芯は曲げないと言う意思が伝わったのでアイコはそれ以上言うのを止めた。

トシは腕にプライドを持って仕事をしているので
価値を下げることをしたくないのだろう。
外注さんには大事な箇所は絶対に任せず、どんなに忙しくても調整し自分でこなすのがプライドの現れであり、そこが取引先に気に入られている要因らしい。

No.53 10/09/06 00:51
しゃけ ( kYyLh )

個人事業主といえキャッシュフローは重要である。

ST社の残金45万のうち30万はキャッシュフローになる予定だった。

しかし
入金なしだ。


松田氏の現場経費を鍋田氏の現場で賄い
鍋田氏の現場経費をST社でと予定していたが、この調子では鍋田氏の現場経費を違うところから払わなければならなくなると容易に想像出来てしまう。

我々個人事業主にとって
たとえ45万であっても
されど45万。
そのロスは大きい。


調整しなければ立ち回れなくなる。

No.54 10/09/06 08:15
しゃけ ( kYyLh )

日本政策金融公庫。
所謂、国からの貸付が出来る場所。
ここに事業者貸付がある。以前お世話になり、まだ残債はあるが借り換えが出来ないか検討しはじめた。

ここでは申込み時に申告書、収支内訳書、事業計画書等を提出し、後日、担当者と面接になる。
面接での話術がものをいう。

早速必要な書類を用意し
今年度分の売上表を担当者が見易いようにパソコンで作成した。

用意万端にし、日本政策金融公庫に電話をした。

穏やかな女性が電話に出たので、ホッとしながら
融資についての質問があることを伝えた。名前、生年月日を聞かれ融資担当者に取り付けてくれた。

No.55 10/09/06 08:27
しゃけ ( kYyLh )

『お電話かわりました。』
こちらも話しやすそうな男性だ。

『借り換えについてなんですが。』

『はい、どうぞ。』

『実は今、未払いがありまして、今年は売掛金の入金が遅れる会社さんが多く資金繰りが大変になっていまして、そのような理由でも融資は受けれますか?』

ダメかもしれない気持ちで電話をしたのだから
本当の話をした。

『返済に遅れも無いですし、一度お越し下さい。
ご相談に乗れると思いますので。』

『ありがとうございます。近いうちに
お伺いします。』

善は急げでトシに仕事の調整をしてもらい、明日申込みに行くことにした。

No.56 10/09/06 08:37
しゃけ ( kYyLh )

翌日の午前中に2人で
金融公庫に訪れた。

申込み受付の担当者は
眼鏡をかけた、いかにもきつそうなキャリアウーマンのような女性だ。

アイコはどうしよう嫌な人だったらと先入観で思ったが、話していくうちに、そんな先入観を吹き飛ばす程、良い人で親身になり話を聞いてくれた。

申込み担当者は

『実績があるから、大丈夫だと思いますよ。
面談担当者が決まったら連絡がいきますから。』

そう言って話を綴じた。

ここで大丈夫と言われても太鼓判が押された訳ではないが第一関門突破である。

No.57 10/09/06 17:47
しゃけ ( kYyLh )

金融公庫の第一関門通過は良いが、暗く暗く長いトンネルが残っている。

明日は約束の4日だ。

電話をしてこないということは10万用意出来ないということを意味しているのだろう。

だが、そんなことは知ったことないなのだ。
払うべきものは払ってもらうと言う姿勢を崩せば
あの2人は付け上がるからである。

No.58 10/09/06 19:17
しゃけ ( kYyLh )

話すことも嫌だが電話をしてみることにした。

しかし既に身体が拒否反応を起こし、動悸と手の震えが出始めた。

アイコは落ち着け落ち着けと念じながら、意を決して携帯のボタンを押す。

『東です。』

この甲高い声を耳にしただけで嫌な気分になっていく。

『猫田です。明日のお振込ですが、どうですか?』
静かに聞いた。

『やっぱり無理みたいなんです。五万ならなんとか6日に振り込めるんです。』

なに???


7月は振込ゼロで
やっと振り込むと思ったら五万だと?

No.59 10/09/06 19:20
しゃけ ( kYyLh )

子供の使いじゃあるまいしいい加減にしてほしいものだ。

自分達の甲斐性の無さで 他人に迷惑をかけるな バカヤロー…

アイコの心の声だ。

そのまま言ってやりたい衝動を抑えながら


『そうですか。そのあとはどうなりますか?』


『まだ、解りません。』

7月8月で五万しか払わないで、今後の予定を解らないと言ってのけるこの人間は何者だ?

詐欺師か?

詐欺師のほうがよっぽと 騙されたから警察へ行こうと諦めがつく。


どこまでも図々しい人間はどうしたら自分本位の考えを改めるのか。

東氏は振込したら連絡すると電話を切った。

アイコに怒りだけが残った。

No.60 10/09/06 20:05
しゃけ ( kYyLh )

この怒りをどうするか、
ST社にぶつけるのは簡単だが、こちらが不利なことはしてはならない。


鍋田氏が言っていた自宅訪問。
幸い、事務所を自宅にしている。
訪問した時に千川氏が在宅なら都合が良い。

ST社の代表でありながら
電話にも出ないで、かけなおしてさえもこない不届き者だ。

No.61 10/09/06 20:14
しゃけ ( kYyLh )

早速、持参する請求書と
留守だった時の事を考え、請求文をパソコンで作成しはじめた。

勿論、脅迫めいた文章にはしない。
こういう図々しくずる賢い人間は何を逆手にしてくるか解らないから文言は慎重に考えながら入力した。

次回入金予定の確定と
連絡がとれなくなることには非常に困惑することに関しては意思表示をはっきりさせた文章を作り上げた。

封筒に入れ封をし完了だ。

No.62 10/09/06 22:59
しゃけ ( kYyLh )

翌日、金融公庫から面談の日程の知らせの電話がきた。
電話をかけてきた方が担当者らしく、話した感じからして、とても丁寧で礼儀正しい好青年という印象である。

当たり前のことだがこちらも礼儀正しく低姿勢な対応をした。

面談は4日後に決まった。
こちらはトントン拍子に話が進み気持ちも穏やかにいられる話だ。

明日あたりに封書で知らせがくるらしい。

何が必要かは知人にリサーチ済みで用意してあるので大丈夫であろう。


さあ、ST社兼自宅に向かう心の準備をしなければ。

No.63 10/09/07 00:29
しゃけ ( kYyLh )

アイコは鏡を見るのが大好きだ。

顔、全身、後ろ姿、色々な角度から自分を観察する。
建築関係ということで
見栄で玄関はかなり広く
軽く全身を映せる大きな鏡が取り付けてある。

楽しくお出かけする時は
念入りにその鏡で
自分チェックをするアイコだが、今日は違う。


鏡をじっと見つめ、


敗けるな…アイコ

そう言って
目に力を込めた。



…行こう…

No.64 10/09/07 00:40
しゃけ ( kYyLh )

背筋を伸ばし、再度、鏡でチェックした後、
玄関の施錠をし車に乗り込んだ。


アイコはCDボックスから
ケツメイシのCDを取り出した。
何かに敗けたくない時や
ネガティブな時に必ず聴く曲だ。

タイトルは《上がる》

この曲を聴くと絶対負けないって気持ちになる。


一時間の道のり。
ケツメイシを聴きながら
気持ちを強くしていく。

No.65 10/09/07 08:06
しゃけ ( kYyLh )

ナビの指示通りに車を走らせている。
近づくにつれ鼓動が早くなっているのが解る。

車内に流れる曲のボリュームを上げ気持ちを下げないようにする。

事務担当のアイコは実際に千川氏に会ったことがない為か、余計緊張していた。

ナビの案内からすると
もうすぐ到着らしい。

近くのコンビニに入って
一息つこうかとも考えたが、テンションが下がってしまいそうな気がしたので
そのまま直行することにした。

No.66 10/09/07 08:19
しゃけ ( kYyLh )

【目的地周辺です】

ナビからの案内だ。

遂に到着である。

ナビが指した場所に建っている家には表札がない。
仕方なく車から降り、ポストに目を凝らすと
走り書きのように黒いマジックで
【千川】と書かれていた。

ここだ…


あまり新しくない家の駐車場らしきとこに古びた軽自動車と自転車がおいてある。

電気がついており人の居る気配を感じた。

車を千川氏自宅の塀側に
停車させ、少し様子を伺ってみたが、いつまでも車内にいても仕方ないので、封筒を持ち玄関へ向かった。

鼓動が最大限にドクドクし始めている。

そして玄関のチャイムに
手を伸ばした。

No.67 10/09/07 09:35
しゃけ ( kYyLh )

【ピンポーン】

極々
一般家庭のチャイム音。

玄関脇の部屋らしき場所は磨りガラスになっており
人が動くのが解った。

ガチャ。

ドアと言う名の長い長いトンネルの壁が開く。

顔を出したのは奥さん。

かなり怪訝そうだ。

『突然すみません。
猫田板金です。』

『ああ、どうも。』

変わらず怪訝そうだ。

No.68 10/09/07 15:01
しゃけ ( kYyLh )

『請求書を持参したのですが、ご主人はいらっしゃいますか?』


『いえ、わざわざ来られたのですか?』

迷惑だと言っているように聴こえるが、せっかく来たのだからこちらの言い分を伝えなければ。


奥さんはST社には籍のない人間だが、千川氏が不在の時にお客様から集金をすると息巻いていたので、仕事の話をしても良いだろうと判断し話始めた。

No.69 10/09/07 15:06
しゃけ ( kYyLh )

『こちらに伺ったのは、千川氏とご連絡が取れない為と、6日に東さんから五万の入金予定がありますが、7月8月で五万のみでは、こちらとしても困ってしまいまして。』

相手は ドアを半開きにしながら 早く帰ってくれと態度に出しながら、はぁと返事をしながら聞いている。

『仕事もあるみたいだし、大丈夫だと思いますよ。』
こちらとしては、そんな話をしたい訳ではない。 入金確定日を知りたいのだ。

『こちらとしては五万のみの入金ではどうにもなりませんので、今後の予定を連絡して頂きたいのですが』
『はあ、
伝えておきます。』

このままでは
何の進展も見えないただの立ち話で終わりそうだ。 アイコはあまり言いたくなかったが、このままの状態では、司法に委ねることになりかねないことを伝え、下げたくないが頭を下げ、 車に戻った。

わざわざ一時間かけて来たのにも関わらず反応の薄さに運転するのも面倒になったが、いつまでも路駐している訳にもいかずエンジンをかけ車を走らせた。

No.70 10/09/07 15:27
しゃけ ( kYyLh )

旦那が腐ってるなら嫁も同じなのか。

払うものを払わないから
わざわざ訪問しているのに、詫びるどころか開き直りに近い態度には呆れた。

何不自由無く育ったアイコはこれが人間の本質かと思った。

お金がないと心は貧しくなる。他人にも刃を向ける。その相手が取り立てに来たと思えば刃も鋭くなるのだろう。

誠意の無い相手を前に
その鋭い刃で心を斬られたような気分だ。

しかし、こんなことで
斬られっぱなしでいる訳にはいかない。


万事休すになった訳ではないのだから、次の手を考えなければならない。

No.71 10/09/07 23:03
しゃけ ( kYyLh )

次の手。
やはり、司法の力か?

しかし、ここまでくると、司法書士や弁護士に依頼したとしても、彼らが怯むとは思えなくなってきた。

しかも、司法書士や弁護士に知り合いが居ない為に
債権回収に強い人を探さねばならない。

アイコはパソコンに向かい
債権回収に力を入れている事務所を調べ始めた。

調べながら相手に対して、まだ甘い気持ちがあることに気づいた。

もしかしたら、五万入金の後に残金を入れてくるかもしれないと…

こんな甘い気持ちは
後にひとかけらも無くなるのだが、この時点では
そう思ってしまっていた。

No.72 10/09/07 23:38
しゃけ ( kYyLh )

金額が40万と少ない為に
弁護士事務所では、あまり好意的に引き受けてはくれないだろうと考え、司法書士事務所を重点的に調べ、目ぼしい事務所を何ヵ所かお気に入りに入れた。

何より、弁護士事務所より司法書士事務所のほうが圧倒的に無料相談を受けてくれるところが多く、敷居も高くない。

お金が使いきれない程に猫田板金にあるのなら凄腕弁護士に依頼して苦しめてやりたいとこだが、わが社の懐と相談しながら依頼しなければならないので、
選ぶのも慎重になってしまう。

No.73 10/09/08 16:42
しゃけ ( kYyLh )

画面を見ながら虚無感に襲われる。

何をしても
どうやっても払わないなら無駄なことをしているのではないのか?

時間の無駄
お金の無駄
気持ちの維持

結果がついてこないことへの苛立ち

心が空洞になっていく。


虚脱感


他にやらねばならいことがあるのに、こんなぐだらないことに時間を費やし、心を痛める。。

いっそのこと
残金回収は諦めてしまおうかとも思った。
だが、
【諦めよう】とトシに言うのを躊躇う気持ちがある。
諦めてしまうと言うことはトシの中の自己価値が下がってしまうような気がするからだ。

No.74 10/09/08 21:48
しゃけ ( kYyLh )

【諦める】
それは、彼らに無償で40万差し出すことだ。

いや、そんな事はあってはいけない。
絶対にいけないのだ。

アイコは目を閉じ
堕ちた気持ちを
闘いへの気持ちへ変える。

売掛金を回収出来ない話はよくあるが、こんな身勝手な人間のいいようになってはならないのである。

明日は五万振り込んでくる日だ…

No.75 10/09/08 23:23
しゃけ ( kYyLh )

翌日の昼過ぎにアイコの携帯が鳴った。

ウィンドウを見ると東氏と文字が光ってる。

動悸が始まった。

胸に手をあてながら電話にでる。


『猫田です。』


『東ですが、今、五万円振込ましたから。』

棘のある言い方。
直ぐに電話を切りたそうな話し方だったが
アイコは食い下がった。

『ありがとうございます。次は
いつになりますか?』

『まだ、解りません。』

相変わらずの対応に
イライラする。

『では、今後の事をお聞きしたいのでお盆前にお電話下さい。』

『解りました。』


短い電話は終った。

アイコは東氏と話す度に
体調がおかしくなっていっている。


動悸や手の震えは日常的に起こり、不眠症にもなっている。
常識が通じない人間を相手に身体中のバランスがおかしくなっているのだろう。
電話を切った後
ネットで入金の確認をしたアイコはきっちり五万のみの入金に失笑した。

No.76 10/09/09 07:46
しゃけ ( kYyLh )

6月45万
7月0
8月5万

計50万残金40万

この調子では残金は本当にいつになるか解らないだろう。

そう思いながら
パソコンを開きお気に入りに入れた司法書士事務所のページを開いた。

事務所の謳い文句は
債権回収解決します!である。

隅から隅までサイトを確認し、料金をチェックする。
着手金は無いが
事細かに項目があり
結局のところ値段は他の事務所と差がなさそうだが、着手金が無いなら依頼して
あれ?ちょっと違うって思っても然程痛手がないと考えた。

No.77 10/09/09 08:09
しゃけ ( kYyLh )

【無料相談致します】
そう書かれた下部に
電話番号が記載されている。

アイコは携帯を開き番号を入力し発信ボタンを押した。
2コール目で

『はい、山口司法書士事務所です。』

女性事務員さんがでるのかと思っていたが
出たのは男性だ。

『すみませんが、債権回収についてご相談があるのですが。』

『はい、どうぞ。』

アイコは今までの経緯を1から10まで話すと長くなってしまうので、かいつまんで話した。

No.78 10/09/09 08:23
しゃけ ( kYyLh )

一通り話終わると事務所側は

『相手の口座番号か取扱い銀行は解りますか?
番号は解らなくても
支店まで解ればいいんですけど。』

『すみません。うちは振込を受ける側なので解らないんです。』

『いえね、そういう相手だと、支払督促や少額裁判の結果が出たとしても、払わないと思うんで、強制執行になるんですけど、
押さえるものが無いと結局何も取れないで、あなた達はこちらの料金だけ支払うことに成りかねないんですよね。』

『そうですよね。』

動産、不動産。
アイコは考えた。
家は?土地は?

『家が持ち家かもしれません。家では駄目ですか?』
『実際には強制執行かけなくとも、相手は40万で家が取られては大変だと払うケースもあります。』

はい、はい、と相づちを打つ。

『まず、相手が住んでいる管轄の法務局へ行って
不動産登記を調べてみて下さい。強制執行にする対象を作ったほうがいいですよ。』

No.79 10/09/10 09:46
しゃけ ( kYyLh )

司法書士は話を続ける。

『こちらで調べるのは簡単ですけど、それだと余計な料金がかかってしまいますからね。』

それはそうだと納得した。

『自宅が解るのは代表者のみなんでんすが、それで良いのですか?』

そう聞くと

『訴える時にはその会社二名同時に訴えて、不動産は駆け引きに使うので大丈夫ですよ。
まずは、調べて見て下さい。』

『解りました。
ありがとうございました。検討して
また、お電話致します。』
アイコは電話を切り
ふぅとため息をついた。

No.80 10/09/10 09:52
しゃけ ( kYyLh )

【法務局】
【訴える】
【強制執行】

これをしたら払うのか?

彼らは動じるのか?

もしかしたら、9月の始め辺りには払うかもしれない。
それならば、今動いたら
彼らの払う意思を砕いてしまうのではないか?


選択に悩みながら、
サイトをまた見始めた。

No.81 10/09/10 10:01
しゃけ ( kYyLh )

そして、次はコンサルタント事務所と名乗るところに電話してみることにした。
そこも
やはり女性事務員ではなく男性が電話に出た。

司法書士に話した内容と同じ事を伝えた。

『契約者は交わしてありますか?』

その質問にアイコは

『いえ、この業界は小さいところは、あまりそういうのが無いんです。』


そうなのだ。
契約書がないのだ。
この業界は割りと暗黙の了解でそのまま仕事に入る会社が多い。
勿論、大手はそんなことは無く、専属契約をしている大手とは猫田板金も
最初に契約を交わし、仕事に入る前に発注書が送られ、終れば完工書をだしている。

No.82 10/09/10 10:12
しゃけ ( kYyLh )

『そうですか。
それなら、少額裁判をして下さい。債権者側は勝訴しますから。』

『少額裁判ですか…』


『勝訴して、公に取る権利があれば我々は動けますから。』

アイコは男性の話を聞きながら少し不安になってきた。
『動くとは、たとえば?』
尋ねるてみた。

『勝訴していれば自宅を張って訪問して回収しますよ。それが、何もなくやれば、なんだあんた達はなってしまいますからね。』

男性は冷静だが、悪そうな雰囲気が電話でも伝わってくるような話し方だった。
ここに頼むのは危険なような気がしたアイコは

『解りました。では、動いてから、また、ご相談させて頂きます。ありがとうございました。』

電話が終わりアイコは
更にため息が出た。

今度のため息は自分の
浅はかさに対してだ。

No.83 10/09/10 10:20
しゃけ ( kYyLh )

コンサルタント事務所。

いわゆる取り立て屋であった。

アイコは
知り合いに聞いたことこでかある事を思い出した。

そのような所に依頼し
いつまでも付き合いを強要され大変だったと。

今の事務所がそうかどうかは解らないが、わざわざ危険な匂いのする場所に飛び込み回収することは得策ではない。

サイトを再度確認すると

【事例により、弁護士・司法書士をご紹介します】

と、記載されていた。

それは、この事務所には
資格者はいないと言う事を意味していることだ。

やはり
浅はかだったと
アイコは落ち込み、ネットを見るのを止め
暫くぼんやりしていた。

No.84 10/09/10 10:31
しゃけ ( kYyLh )

ぼんやりしていても
今後はどうすれば良いのか頭の中で思考が回転している。

そんな頭の中で
明日は
政策金融公庫の面談日だと気づいた。

持参する書類を
全て揃えクリアファイルへ挟んだ。

二期分の売上表
今年度の売上表
確定申告書
収支内訳書
銀行通帳
固定資産税領収書
個人事業税領収書
公庫住宅ローン明細

これらを挟んだファイルを封筒へ入れ
明日の用意を終えた。

あとは話術だなと考え
アイコは頭の中でシュミレ―ションし
準備万端にした。

No.85 10/09/10 11:04
しゃけ ( kYyLh )

その日の夜、施工現場から帰宅し、図面を書いているトシに、アイコは今日の二件の電話の話をした。

『ごめんな。俺がやらなきゃいけないのに。』

謝られたアイコの目から
ポロポロ涙が溢れだし
号泣しだした。

アイコ自身、何に対する涙なのか解らない。

だが、トシは解っていた。
誰かに頼ることが嫌いなアイコだが、抱え込み過ぎてダムの水は決壊したからだろうと。


落ち着いたアイコの頭を撫でながらトシが言った。

『頑張ってくれて
ありがとな。』

アイコはティッシュで鼻をかみ涙を拭い

『大丈夫。
トシは目の前にある仕事こなしてくれればいいんだからね。』

強がっていることがトシには解っていたが
もう一度

『ありがとな』

と返した。

No.86 10/09/10 11:39
しゃけ ( kYyLh )

アイコの中には二つの思いがある。

トシが全面に出る時は
多分ブチキレた時だ。
そんな時のトシは我を忘れ
相手に有利にさせてしまうことが考えられる。

もうひとつは
現調、図面、材料手配、見積り等々、毎日家に帰ってきてもやらねばならないことが有りすぎて
下らない図々しい彼らを相手にしている暇がないからだ。


だから、自分が頑張れるとこまでは頑張らねばと
自分に言い聞かせることで気持ちを奮い立たせる。

No.87 10/09/10 12:44
しゃけ ( kYyLh )

翌日、午前中に政策金融公庫へ向かう前に抜かりは無いかと再度持参書類をチェックし、少し早めに二人で車に乗り込み出発した。

あまり会話のないまま約20分車は走り続ける。

到着したが
駐車場が無い為に
コインパーキングに停車させた。

予定時刻より早く着いた為、少し車の中にいることにした。

アイコは人前で話すのが一見上手そうにいつも周りから思われているが、実はいつも極度の緊張に襲われていた。
今日も既に緊張が始まっているが、やらねばの気持ちで喝を入れる。

時刻が面談時間の15分前になった。


『行こうか。』

アイコに言われトシは頷き二人は車を降り歩き始めた。

No.88 10/09/10 16:29
しゃけ ( kYyLh )

徒歩で3分ぐらいの場所に目的地がある。
まだ、10時前なのに
夏の日差しが暑い。

政策金融公庫が入っているビルに着き、日傘を閉じエレベーターに乗り込んだ。
五階のボタンを押し
エレベーターが昇っていく表示を二人は無言で目で追っていた。

五階に着きドアが開く。
そのまま、真正面が金融公庫である。

手のひらの汗をアイコは拭き取り背筋をピンと伸ばし
トシと共に自動ドアをくぐった。

No.89 10/09/10 17:19
しゃけ ( kYyLh )

自動ドアくぐると
受付がある。

『おはようございます。
今日はどのようなご用件でしょうか?』

受付の女性が礼儀正しく聞いてきた。

『おはようございます。
面談予約が入っている猫田と申しますが。』

アイコが答えると

『かしこまりました。
只今、担当をお呼び致しますのでお掛けになってお待ちください。』


そう促され二人は椅子に座り待った。
椅子に座っている間もアイコは背筋をピンと伸ばし姿勢を正したままだ。
気持ちが小さいアイコにとって、背筋をピンと伸ばすことは自分が自分でなく、違う自分にしていくおまじまいのようなものなのである。

No.90 10/09/10 21:54
しゃけ ( kYyLh )

ほんの数分、椅子に座りまっていると

『猫田様。
こちらへどうぞ。』


電話で話した時に感じた
爽やかさのある二十代後半ぐらいの青年がにこやかに案内してくれ、
アイコとトシは後ろを歩き4つに区切られたうちの1つに招き入れられ、担当者の青年と挨拶を交わし着席した。

彼の名は秋田さん。


初めは事務的に持参した書類のチェックからだ。

No.91 10/09/10 22:34
しゃけ ( kYyLh )

『では、
先ずは税金関係の領収書から拝見しますね。』

何1つ見落とさない感じでチェックが始まり

『では、次は通帳をよろしいですか?』

言われるがままにこちらも出していく。

また、細かに通帳のチェックが始まった。

チェックの内容は正常に取引先と取引が行われているからしい。

メインの取引先
単発の取引先のチェックをしながら売上表と入金金額を照らし合わせているようだ。

やましいことは一切ないので、秋田さんの動きを
2人は落ち着いて見ている。

No.92 10/09/10 22:58
しゃけ ( kYyLh )

売掛、買掛の通帳のチェックの後は、
住宅ローンの通帳のチェック。

こちらも遅れは一切無いので安心して渡した。

この通帳のチェックは
簡単に終わりだ。

一通りの持参した物のチェックが終わり
いよいよ本題に入っていく。

No.93 10/09/10 23:25
しゃけ ( kYyLh )

爽やか青年は話始めた。

『え~と今回は運転資金と言うことですね。』

『奥様が経理担当と言うことでよろしいですか?』


『はい。そうです。』


秋田さんは7月までの売上表を見ながら

『今年度の売上を見ますと去年と変わらず順調な感じがしますね。』


『ええ、そうなんですが、このST社は帳簿上では売上が立ってるのですが、入金の遅れと未払いでして、ここをカバーする為に次の現場次の現場となっている状態なんです。』

アイコは一気に話した。

No.94 10/09/10 23:34
しゃけ ( kYyLh )

『ST社ですね。』

秋田さんは
そう言いながら何やらメモをしている。

『そのST社からは今後入金予定はどうなんですか?』
『遅れながら50万入金があって、残金は40万なんですが、予定は解らないと言われてます。』

『そうですか。その他の会社さんはどんな感じなんですか?』

アイコはメインの取引先を
指しながら

『この会社がメインでして、こちらは過去一度もトラブルはありませんし、順調に取引させて頂いてますね。それから、こちらがサブメインと言う感じで仕事を調整しながら、受けています。後の何社かはやはり同じように調整がつく時は受けるような形です。』

秋田さんはメイン会社の売上をチェックし再度通帳のチェックをした。

No.95 10/09/10 23:42
しゃけ ( kYyLh )

『話戻りますが、ST社さんとはどんな感じのお付き合いだったんですか?』

『ここは単発で同じように調整がつけば受ける感じでした。』

『今後、お付き合いする予定はありますか?』

『一切付き合うつもりはないですね。』

アイコは本心を述べた。


『そうですよね。』

苦笑いの秋田さんが
売上表の1月を指し
問いかけてきた。

『こちらは0になってますが?』

確かに1月は売上が0なのだ。突っ込まれる要因だが、これはこちらには好都合な話なのである。

No.96 10/09/10 23:51
しゃけ ( kYyLh )

何が好都合か…
それはいかに猫田板金が
融資を受けたいか懇願する材料だからだ。

『1月は大クレーマーのお客様が施主さんでして、
弁護士立てるとか大変な騒ぎになってしまい、結局はお客様が非を認めたのですが、完工が間に合わなかったんです。』

秋田さんは頷きながら聞いている。


『それで、2月まで持ち越してしまったのですが、今度は完工を早めなければいけなくなってしまって、外注さんを入れたんですね。それで、2月に売上はたったのですが、外注費で殆んど持ってかれて赤字の現場だったんです。』

話終わるまで静かに聞いてくれていた秋田さんが口を開いた。

『不景気になるとそういうお客様が増えるんですかなね。』

その通り。
施主さんも。
ST社も。

心の中の叫びだ。

No.97 10/09/10 23:57
しゃけ ( kYyLh )

『そうですね。
初めてですね、こんなクレーマーの施主さんは。
それに、こんなに支払わない取引先も初めてです。
世の中が不景気だからですかね。』


アイコはST社の話やクレーマーの施主さんの話をしながら何やら胸がすっきりしているのを感じる。

秋田さんに話しても
ST社がお金を払う訳ではないが、国の機関の人間に
ST社の事を言えた事で
胸が一瞬でもスッとしたのだろう。

No.98 10/09/11 00:05
しゃけ ( kYyLh )

アイコは続けて話した。

『1月の遅れを取り戻そうとしている矢先に、ST社からの遅れが始まりまして、違う現場でカバーをしていたのですが、ここまで払ってもらえないと思っていなかったので、こちらも予定が大幅に狂ってしまいまして、こちらにお願いしようって事になりました。』


『そうですか。
大変でしたね。』

ちゃんと感情を入れて
言ってくれた秋田さんに
人間味を感じた。


そして
手応えも感じている。

No.99 10/09/11 00:17
しゃけ ( kYyLh )

面談は最後の確認に差し掛かった。


『今回はお借り換えということで宜しいですよね。』
『はい。そうです。』

『ご返済は同じぐらいの金額で大丈夫ですか?』

『はい、大丈夫です。』


その都度
秋田さんは細かにメモをとっている。

『では、これから
こちらの書類を倫理にかけます。
結果は郵送で
だいたい一週間ぐらいで猫田さんのお宅に届きますので。』

『最後に、
何か、ご質問ありましたらどうぞ。』

特にはないが
取り敢えず尋ねてみた。

『融資可決になりそうですか?』


『支払い実績もあって
政策金融公庫と住宅も遅れないので大丈夫だとは思いますが倫理の結果になりますので…』


これ以上聞くことは無かったので

『ありがとうございました。宜しくお願いします。』
と、挨拶をし公庫を後にした。

No.100 10/09/11 00:37
しゃけ ( kYyLh )

エレベーターを降り
コインパーキングへ向かいながらアイコはやり遂げた気持ちを満喫していた。

まだ、融資実行になっていまないのに満足感がある自分が笑えた。


秋田さんとアイコが話している間、頷くだけのトシだったが

『アイチャン、ありがとね。
さすが、影の猫田板金代表者って感じだったけど、
震えは大丈夫?』

気づいてくれていたんだ。アイコはそれで充分だった。

話してる途中
何度も手が震えテーブルの下に隠していたことに
気付き心配してくれるトシはやはりアイコの理解者だと感じた。

緊張と手の震え動悸はあるが、世間を渡り歩くのが得意なアイコと、人受けが良く勤勉なトシは良いパートナーだと、つくづく感じた。

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