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売掛金回収

レス362 HIT数 56638 あ+ あ-

しゃけ( kYyLh )
11/01/12 15:23(更新日時)

年商二千万

個人事業主


世の中
不景気不景気

しか~し
払うものは払って下さい

No.1406398 10/08/28 01:07(スレ作成日時)

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No.1 10/08/28 01:33
しゃけ ( kYyLh )

世の中は不景気だ。

金の巡りが悪い時代は人間の心をも貧しくさせる。

困ったものだ。


わが社は
約四年前に独立したリフォーム会社である。

『わが社』と呼べるほど
凄くないのが現状だが…

何せわが社
【猫田板金】は
代表である猫田トシと
従業員で事務担当の
妻・猫田アイコのみ。

後は外注頼みだ。

以前は従業員が居たが、従業員の生活がかかってくる事の圧迫感から外注頼みに変更。

外注費は嵩むが気が楽なのだ。

一人で頑張っている割に
年商二千万はニンマリしてしまう。

しか~し‼
世の中には居るのだ。

平気で売掛金を払わない輩が。

あぁ困ったものだ。

No.2 10/08/28 01:40
しゃけ ( kYyLh )

不景気不景気だが、仕事は切れない【猫田板金】

代表の人柄か?
腕の良さか?

まぁ両方ということにしておこう。

わが社が主力にしている取引先は信用があり約款も交わしているから安心な会社だ。

では、何処のどんな会社が駄目なのであろう。

No.3 10/08/28 01:50
しゃけ ( kYyLh )

猫田トシ

不覚である。

信頼関係のみでは駄目だと悟った40才だ。

不届き者の個人会社と気付くのが遅かった。

いつもなら
工事終了後に即金払いの
個人会社。

今回は最初から様子が変だった。

工事終了後
相手会社の代表千川の携帯は電源切れ。

女性営業担当東はコールするものの留守電。

悪質な売掛金未払いに遭遇したことがなかったわが社はまだ何も気付かない
5月の終わりだ。

No.4 10/08/28 08:31
しゃけ ( kYyLh )

売掛金90万。
個人事業のわが社では大切なお金である。
材料代・外注費・産廃代をここから払う。
経費を払い実際手元に残るのは30万。

呑気な代表トシに対して
妻アイコはしっかり者。

『ねぇ、STさん(相手会社名)おかしくない』

アイコの言葉で

そういえば…と気づくトシ。

これが6月初めである。

No.5 10/08/28 08:41
しゃけ ( kYyLh )

6月初め
千川氏・東氏両者
電話に出ない。

困ったものだ。

ST社は自宅を事務所としている。

『猫田板金ですが~
お世話になっております。社長さんはご在宅でしょうか?』

アイコが自宅事務所に電話をした。

『あっお世話になっております。主人は岩手に言ってまして、私が完工書を貰いにお客様のお宅に行く予定です。』

?? ?? ??

音信不通の上岩手???

頭の中が??でいっぱいの
アイコ。

『奥様もお仕事を一緒になさってるのですか?』

『いえ、私はパン工場でパートですが、主人に頼まれまして』

?? ?? ?? ??

更に??がいっぱいのアイコ。

No.6 10/08/28 09:00
しゃけ ( kYyLh )

『そうですか』

『社長さんとは連絡とれませんでしょうか?何回お電話しても電源が切れたままなのですが』

『はぁ…』

?? ?? ??

なんだ?この対応は?

アイコは困惑している。

『お客様のお宅に行く時は連絡しますから』

怪しく思ったアイコは

『では、お客様宅へ行かれる時は私も近くまで行きますので、そのままお支払頂けますか?』

『解りました』

『では、宜しくお願いいたします。失礼致します。』

腑に落ちないが仕方ない。

アイコはトシにやり取りの内容を話す。

トシも??がいっぱいになった。

パン工場?の奥さんが
集金??

そんな杜撰でお客様は
お金を払うのか?

No.7 10/08/28 09:34
しゃけ ( kYyLh )

6月初め日曜日の前日
アイコの携帯が鳴った。

千川氏妻からだ。

『お世話になってます~
猫田です。』

『あっお世話になってます。千川です。
明日、
午前中の工場が終ったらお客様宅へ行きます。』

必ず『あっ』が入るなぁ~
この人、お客様宅へ行って大丈夫なのだろうか?

アイコは思いながら

『では、近くまで参りますので集金完了後お電話下さい。』

『あっ、解りました。』


『では、宜しくお願いいたします。』

電話を切ってから不安な感情がモワモワ出てきたアイコだ。

とにかく明日を待とう。

わが社に入金して貰わなければ材料代の支払いがくる。

No.8 10/08/28 09:52
しゃけ ( kYyLh )

翌日、
アイコは領収書セットを持ち、車を走らせ始めた。

約一時間のドライブ。

少し早めに出発したので
コンビニに寄り
一休みしているとこに
携帯が鳴り始めた。

嫌な予感………

やはり…

携帯のウインドウの

【千川氏奥様】の文字。


『猫田です。
お世話になってます。』

『あっ、千川です。
ちょっと早めにお客様のとこに行ったんですが…』

なんだ??

『会社の人間は来ないし、塗装がいい加減と言われてしまって。』


塗装?
うちは無関係の業者。


『で、塗装のやり直しで、終らないと払わないと、
お客様がぁ』

はぁ??

『そうですか。
では、いつ頃になりますか?』

『あっ、
また連絡します。』

『解りました。
失礼致します。』

不安的中。

アイコは事の経緯をトシに報告し、来た道を引き返した。

No.9 10/08/28 10:22
しゃけ ( kYyLh )

帰り道。
景色がグレーだ。

あの奥さんに任せて大丈夫なのか?
千川氏は何故連絡してこない?
東氏は何故電話に出ない?

頭の中はクエスチョンだらけだ。

トシとアイコは話し合い
今後もあるし
同じ業界にいる訳だから
少し様子を見ようということにした。

トシの頭の中では
嫌な記憶が蘇っている。



130万売掛金があった会社が計画倒産した記憶。

あの時も困ったものだ
だったよなぁ。

規模の大きい会社で競争馬を何頭も所有しているような社長だった。
勿論、破産管財人はついたが微々たる金額の通知が来ておしまい。

取りっぱぐれは
もう沢山だ。

トシはタバコに火をつけながら心の底から思った。

No.10 10/08/28 19:39
しゃけ ( kYyLh )

3日後、アイコの携帯に
千川氏妻から電話だ。

『猫田です。
お世話になってます。』

『あっ千川です。』

相変わらずの受け答えだ。

『どうなりましたか?』

『それがぁ
塗装が一週間ぐらいで
その後、足場をばらさないともらえないので………』

で、何ですか?

冷静に冷静にと自分に
言い聞かせながら
アイコは聞いた。

『それでいつ頃ですか?』

『あっ、二週間ぐらいみてほしいんですけど』

!!!
大丈夫かぁ?

でも、冷静に…

『そうですか。
解りました。
でも、なるべく早目にお願いします。』

本当早くしてね~が
本音だが冷静さを失わないように勤めた。

電話を切ってから
深いため息をつき
アイコもまたトシと同様に
130万の売掛金の事を思い出していた。

あんな思いは
もう嫌。

払ってもらわなくちゃ。

No.11 10/08/28 19:51
しゃけ ( kYyLh )

もうすぐ二週間。

連絡無し。

不景気だからと連絡しなくて良いなんて事はない!

痺れを切らしたアイコは
千川氏妻に電話した。

『猫田ですけど、
どうなりましたか?』

『あっ、今、
東さんと会って話してきたんです。』

『東さん、連絡とれるんですか??』

『あっちょっと休んでいたみたいですけど、復帰するみたいです。』

?? ?? ??

また??がいっぱいだ。

仮にも会社として仕事しているのに
千川氏・東氏共に何を考えてるんだ?


千川氏妻では話が進まなそうな様子を感じたアイコ…

『では、私のほうから東さんにお電話してみます。』
そう言って電話を切った。

経緯はどうあれ
やっと、ST社に精通している人間の出現に少し心が
穏やかになったのが解る。

No.12 10/08/28 20:05
しゃけ ( kYyLh )

電話を切り、
一呼吸して
東氏に電話した。


少し遅い時間で失礼かとも思ったが、ほったらかしにしていたほうが失礼だろうと考え電話したのだ。

『猫田板金ですが
遅い時間にすみません。』
『あ~どうも東です。
今回はご迷惑かけてしまってすみません。』

ん?案外良い人?
声が高いおばさんと言う印象である。


『今後は…』

と、聞こうと話始めたら

矢継ぎ早に

『私に連絡下さい。』

どうやら
あまり人の話は聞けない人種らしい。

しかし、
言うことは言わなければ

『そろそろ、お振込頂かないと、私共も材料代諸々立て替えなくてはならないのですが。』

『そうですよね。
解りました。何とか
動いてみます。』

『宜しくお願いします。』

少し日が差したような気分なアイコはトシにいつもの如く報告した。

No.13 10/08/28 21:24
しゃけ ( kYyLh )

『そうかぁ~。
東さん、連絡取れたんだ。千川さんは未だに電源切れてるよなぁ。』

日焼けしている顔は
困ってる。

『岩手からまだ帰ってないんじゃないの?
それにしても、
連絡ぐらい出来ないもんなのかなぁ。』

相手側に言えない愚痴を
アイコが溢すとトシは黙って頷いた後に口を開く。

『全額回収したら
取引はもうないな。』

今度はアイコが黙って頷いた。

No.14 10/08/29 10:22
しゃけ ( kYyLh )

かなり、不安だったが
その後、東氏より連絡があり
6月中に三回の振込があった。
一回目20万
二回目22万5千円
三回目2万5千円

計45万である。

しかしながら、よくよく考えれば5月の末には90万の予定だったのだから
6月末に45万の残金があるのはおかしな話である。

No.15 10/08/29 10:36
しゃけ ( kYyLh )

社のお金の動きは重要だ。
仕入れ先へ
『ちょっと待ってほしい』など言ってしまうのは
簡単な事だが、
わが社が今まで築き上げた信頼は少なからず揺らぐであろうと言う事が容易に想像できる。

そういう訳で
ST社からの売掛金を当て込む予定だった穴埋めが必要だ。

信頼関係にある取引先が何社かある。
その中で、割と柔軟な会社に売掛金を前倒しで振り込んでもらうか…


トシは悩んでいた。

悩んでいるトシに
全く頭になかった会社から電話が入った。

No.16 10/08/29 11:12
しゃけ ( kYyLh )

電話の内容は仕事を請けてほしいとごく普通の内容だった。

しかし、この会社は最近資金繰りがあまり良くない噂を聞いている。

そこで

『最近どうですか?松田さんの会社は?』

さりげなく聞く。

察したのか

『いや~一時期大変だったけど何とか持ち直しましたよ。』

『そうなんですか。
今は世の中不景気ですからね』

『変な噂が出ちゃってますよね。』

松田氏は噂を知っていた。

『いやぁ…
まぁ…
お互い頑張りましょうよ。』

少し歯切れが悪いトシに
松田氏が言う。

『噂を解消する為に
着手金で七割まで払いますよ。猫田さんの技術でお願いしたいんです。』

トシの仕事の出来には
業界では定評がある。
お客様からのクレームが出たことないぐらいだ。

No.17 10/08/29 11:26
しゃけ ( kYyLh )

電話で話ながら、トシは頭の中で考えを巡らせている。

この仕事を請け、松田氏からの入金をST社の穴埋めに使う。

そして
松田氏の現場にかかる経費をST社の残金から払う。


いくらなんでも、7月末までにはST社も入金してくるだろう。

瞬時にそんな事を考えた。

『解りました。引き受けます。では、現調の打ち合わせをしましょう。』


現調とは現場調査のことで、寸法を計り図面を作成し材料経費・請求金額の算出である。

松田氏の現場の材料代は
7月末の支払い予定だ。


これで資金は廻ると考えたトシだが、果たしてどうなるのか…

No.18 10/08/29 12:50
しゃけ ( kYyLh )

7月前半、松田氏の現場は無事完工し
着手金・完工金も滞りなく納めて頂いた。

松田氏以外の会社からの入金も滞りない。

ST社を除いては。




7月に入り異変が起こり始めた。


アイコが何回東氏に電話をかけても呼び出しはするものの留守電になってしまうのだ。


留守電に入金日の確認をさせて頂きたいので折り返しのお電話お待ちしております。

と何回か入れたが連絡が無いまま。


話が出来なくては何も進まない。


困ったことになりそうだ…

No.19 10/08/29 13:10
しゃけ ( kYyLh )

連絡が取れないまま二週間が過ぎた。

トシもアイコも困惑だ。


困惑もあるが、少し図々しいとさえ思い始めている。


この頃から
アイコは万が一の事を考え
ネットで【売掛金債権】の事を調べ出していた。

売掛金債権の時効は二年。司法書士であっても140万以下であれば弁護士と同等の職務が出来る。
個人で裁判所から支払い督促を出せる。
60万以下であれば少額訴訟が起こせる。

調べながら
いきなり司法の手に委ねるのは今後を考えあまり良くないとアイコは思った。


しかし、電話でのやり取りを記録に残そうと考え、
さっそく使っていない手帳を出し、今までの経緯を
全て書き留めた。


まだまだ
色々調べなければ…

何かあった時にすぐ動ける体制を作らなければ。

アイコはパソコンに向かいながら
明日は千川氏にダメ元で電話を入れてみようと考えた。


万策尽きたら司法なのか
尽きる前に司法なのか

このラインはパターンにより微妙であることがネットから伺える。

調べるにつれタバコの煙がため息混じりに作り上げられ始めているの解る。

No.20 10/08/29 13:42
しゃけ ( kYyLh )

繋がるか?
どう?

そう思いながら
携帯のボタンを押した。

思いの外コールした。

出るか?

7、8回目で出た。

出ないと思っていたアイコは少し驚いたが直ぐに言いたい事を頭の中に描いていた。

何回留守電にいれても東氏からの電話が無いこと。
入金日の予定。
今後千川氏は岩手に行かないのか?

的確に答えられない千川氏だったが、
現在の状況を話始めた。

今、銀行ローンで工事する予定のお客様が居て
銀行から融資実行回答が明日になる。
工事終了後に入金になるので、10日から12日待ってほしい…との話。


アイコは折り返し

『明日、解るのですね。』
そう念を押す。


『大丈夫です。東にも聞いてみて下さい。』


何?その東氏が逃げているのにどうやって聞くんだ?

感情を抑えつつ

『では、宜しくお願いします。』

そう言って電話を切った。

No.21 10/08/29 16:06
しゃけ ( kYyLh )

翌日、銀行ローンの否可決の行方が気になり電話をするものの、見事に両者共に出ない。

千川氏に至っては
携帯の電源を切る始末だ。
対応の杜撰さにだんだん怒りが強くなってきているのが解る。

このぐらいになってきて
ようやくST社の2人には常識と言う言葉は通じない事を認識しはじめたのだ。

No.22 10/08/29 16:15
しゃけ ( kYyLh )

それから約一週間、
こちらからの電話を無視しはじめた両氏。


話さないことには始まらない。


どうする?

自宅兼事務所に電話をすることにしてみた。

事務所と言っても
名刺に記載されているだけの一般家庭である。

案の定
奥さんが普通の電話に出るように出た。


『もしもし~』


『お世話になってます。
猫田板金です。』


『あっお世話になってます。』


『すみませんが、ご主人いらっしゃいますか?』


『あっいえ、まだ仕事で』

『そうですか。ご主人も東さんもお電話に出て頂けないみたいで、すみませんがお帰りになったらお電話下さいとお伝え頂きたいのですが』


『あっはい、解りました』

奥さんに折り返しの電話を頼んだのにも関わらず
その日も電話はないままである。


何か考えなければ…

No.23 10/08/30 08:50
しゃけ ( kYyLh )

電話が駄目ならメールかぁと考えていたが
ST社には会社アドレスはない。

文章を送るには効果があるだろうが、携帯アドレスは解らない。


今までのやり取りを思い浮かべていたアイコは思った。
『そうだショートメール』

Sメールはドコモ同士なら携帯番号で送れる文字制限が少ないメールだ。


千川氏はアイコと同じドコモである。

早速、短い文章でも支払いをして頂きたいと言う意思が伝わるような文章を入力し送った。


送った後に何らかの反応を期待したが、結局その日は期待で終ってしまい
アイコは別の手を考えることにした。

No.24 10/08/30 09:01
しゃけ ( kYyLh )

別の手立て。

まだ遅れて2ヶ月立たない。
内容証明は早いような気がする。
ならば配達証明をつけて請求書と請求文を送ろう。

請求文はなるべく柔らかくしかし、核心につくような文章を考え
最後に必ずご連絡下さいと入力した。
勿論、これから何が起こるか解らないので請求文は保存である。



郵便局で速達にしてもらいながら、アイコはイライラしている自分に気づく。

何でお金払わないほうが悪いのにこんな面倒な事をしているんだろう?
逃げていてこの人達には
罪悪感は無いのか?

局員に当たるわけにもいかないので、イライラを消化しきれないまま事務所に戻った。

No.25 10/09/01 01:26
しゃけ ( kYyLh )

事務所に戻り、請求書を送ったことについて両氏に電話したが、相変わらず出ないままだ。

アイコは更にイライラしてきた。

自分の携帯ではもう出ないのか?

この段階で【債務者】と言うのは失礼なのかもしれないが、これが債務者の常套手段なのかと思ったアイコは引出しから滅多に使わないもう一台の携帯を取り出した。


これで出れば
こちらとしては話が出来て好都合だが、明らかに
こちらの電話を無視したことが解る瞬間だ。

さて、東氏…出るのか?

No.26 10/09/01 03:00
しゃけ ( kYyLh )

コールが始まった。

出ないか?



『はい、東です。』



出た!!


『猫田です。
お世話になってます。』

『えっ』
聞こえるか聞こえないかぐらいだが驚いた様子が伺えた。

少し気分が良いアイコ。

だが、
その気分の良さは続きはしないだろう。

No.27 10/09/01 03:23
しゃけ ( kYyLh )

アイコはトシの仕事を手伝うまでは、ある程度知名度の高い会社で事務をしており これから東氏と話すなかで今までの常識が通用しない人間を相手にしていることを痛感するのだ。


『すみません、何度もお電話したんですが…』


『千川のほうから話聞いてますよね。』

最初から応戦体制か?

『ええ、聞いております。それで、』

と、言いかけたとこで

『いいですか、奥さん! 今日は何日ですか? 千川が言った日から 1、2、3、4、5、6、7、8 まだ8日目ですよ! それを、何回も何回も電話してきて!』

『いえ、それはですね…』
言い終らないうちに


『正直、こんなにしつこいのは奥さんのとこだけですよ!』


あ~あ 己に非がある人間は何でこうも逆ギレするんだ?

うんざりだ。

心の中で叫ぶアイコ。


東氏の逆ギレマシンガントークは終らない。

No.28 10/09/01 03:31
しゃけ ( kYyLh )

『ええ、ですから』

『私だって一生懸命やってるんですよ!』

また、人の話を遮る。

『ですからね』

『私が話しているんだからから聞いてください!』
またまた、遮る。

東氏はヒステリックにエキサイトしていく。


何なんだこの女は?
人の話が聞けないで、 よく社会で働けるもんだ。

いい加減頭にきはじめたアイコはマシンガントークを止めるために

『聞いてください。』

『いえ、奥さんが聞いてくださいよ!』


『だから、聞きなさい!』

はぁ… 声をあらげてしまった。

しかし、
こうでも言わない限り
このヒステリックな女性はエキサイトに喋り続け
話にならない。


一瞬
東氏が止まった。

今だ!!!!

チャンス!!!!

No.29 10/09/02 21:25
しゃけ ( kYyLh )

『電話に出て頂けたら
一回で済む話なんですよ。私が日にちを待たずにお電話をしたのは、融資実行されたかお聞きしたかったからです。』

相手に話させないように
間髪入れずにアイコは続けた。

『遅れているのは仕方ありません。ですが、次回入金予定が解らなければこちらも困ります。12日間まで待って、やっぱり無理ですと
当日や前日に言われたらアウトになります。』


『それは、
解りますけど。』

やっと東氏は落ち着き始めたようだ。


『ですから、
確認の為にお電話を入れていたのです。』


『まだ、この間の現場は残金が貰えてなくて。
月末には貰える予定ですから。』


?? ??

また、話が刷り変わってきたぞ。

東氏エキサイト再び到来!

『他の業者さんは
こんなに煩く言ってこないですよ!何も言わずに
待っててくれてます!』


かち~ん!


なんだ?この人?

あ~面倒臭い。

No.30 10/09/02 21:43
しゃけ ( kYyLh )

アイコのイライラは頂点にきはじめている。


『お言葉ですが、塗装屋さんと、うちでは材料費だけでも金額が全く違います。まして、クレームになったのは塗装屋さんですよね。それに、塗装屋さんは6月に施工、うちは5月に施工です。条件に違いがありますよ。』


東氏更にエキサイト!


『奥さん、クレームクレーム言いましたけど、 ベランダに落ちない塗料のようなものが着いていて、私が必死に落としたんですよ!着けたのは猫田さんかもしれないでしょ!』


アイコ、絶句…………
塗料って?
うちはシリコンは使うが塗料なんて使わない。

『それに、5月に完工って言うけど、猫田さんが早く入れてくれって言うから入れたのに!』


?? ??



うちの猫田はそんなに懇願しない性格だし、 コンスタントに仕事をこなす取引先もあるし ありえないだろと思った。

No.31 10/09/02 21:46
しゃけ ( kYyLh )

『そうですか、それは仕事上のトラブルですので 猫田に伝えてます。』

エキサイトな東氏に対してかなり冷静に伝えた。

『えっ、いやそれは 猫田さんには敢えて言わないで下さい。人づてだと、違った解釈になりますから。』

少し意地悪したくなったアイコがいる。

『それがミスならば 猫田にしっかり伝えなくてはならないので、伝えますよ。』


『いえ、、言うなら猫田さんには私が直接言いますから』


『すみませんでした。』

おっ 謝った。 驚きだ。

No.32 10/09/02 22:04
しゃけ ( kYyLh )

>> 31 売掛金を払わないくせに
難癖つけるとは
程々呆れた。

こちらの言い分には
耳を傾けず
自分本位な人間。

相手にするのが嫌になってしまったが、ここで引いてしまってはいけない。

『では、12日間のお約束までお待ちします。』


『解りました。お電話します。』


こうして電話は終り
疲れが押し寄せてきた。

No.33 10/09/03 10:16
しゃけ ( kYyLh )

懇願した東氏。

冷静を装ったアイコ。

猫田には言わないでと相手代表者を罵り最終的に内緒にしてくれなどとの道理は通さない。

アイコは全てトシに伝えた。


『他に仕事があるから
この辺でいれてほしいとは言ったけど早くいれてくれなんて言ってないよ。
それに、ベランダに塗料って、瓦剥がして埃や泥は落ちるかもだけど塗料って何?だよ。』


『だよね。』


『しかも、現状復帰は当たり前のことだから掃除してるし。』


『だね。』


『払えないから、何かと理由つけてるんだな。』

普段穏やかなトシの顔は
かなり険しい。

アイコは悪く言われたことにかなりの腹立たしさを感じている。


しかし、ここで騒いでは
分が悪くなる可能性も無きにしもあらずだ。

とりあえず、千川氏と話した日から12日間待つことに決めたのだ。

No.34 10/09/03 16:39
しゃけ ( kYyLh )

気が気でなく待つ数日間。
この数日間は実に嫌な思いだった。


何故払わないほうが勢い良く逆ギレするのか?
その心理がアイコには理解し難いことだと思った。


次はどうでるか。

また考えなくてはならないと思うと気が重い。


ふと、そう言えば配達証明の受取証明が届かないことに気付いた。

速達で送ったのにも関わらずだ。

今日あたりきてるかもしれない。
そう考えた理由は郵便局の保管ギリギリになっていたからだ。

No.35 10/09/04 00:02
しゃけ ( kYyLh )

確認の為、ポストを見に行ったアイコ。
開けると数種類の封書の中に一枚のペラペラの葉書があった。

郵便局からである。

受取日を確認すると、やはりギリギリの日付だ。


じっと見つめながら

なんて
いい加減でバカにしている行為なんだと思った。


果たして支払う気があるのか?

払う気が無いならば
詐欺罪で警察とも思ったが相手が【払う意思がある】と言えば介入すらしてもらえないだろう。

こうなると、お金を回収することは大事だが
ST社を追い込みたい気持ちでいっぱいだ。

No.36 10/09/04 00:36
しゃけ ( kYyLh )

千川氏と話してから
12日たった。

東氏から電話がきたら言いたいことは山程あるが、冷静に対応することを心掛けなければいけない。

本当は
『ふざけんな!
くそばばぁ!』ぐらい言ってやりたい気分だが、ぐっと堪えなけば。


しかし、一向に東氏からは電話がない。


嫌だったがこちらからかけることにした。


本当はヒステリックになる人間となど話したくないのが本音だが、コンタクトをとらなければ何も変わらない。


元々ウツの症状があるアイコはこの辺りから悪化しはじめた。

No.37 10/09/04 09:57
しゃけ ( kYyLh )

>> 36 期間は過ぎた…電話をしなければ。
そう解っていても動悸は止まらず手は震えている。


トシは今ある仕事をこなしていかなければ会社は回らないのでST社に構っていられないのが現状だ。


アイコは頑張るしかない。

自分自身に呪文のように
頑張れ大丈夫と言い聞かせる。


目を閉じ
深く深く深呼吸をし
気持ちを落ち着かせる。


携帯を手に取り、東氏の名前を画面に出し、発信ボタンを押した。


意を決して電話をしたにも関わらず、コール音から留守電に変わった。


またか!

払えないのであれば
電話に出る誠意ぐらいは見せてほしいものである。

No.38 10/09/04 10:02
しゃけ ( kYyLh )

電話に出ない東氏。

おそらく千川氏も出ないだろう。


仕方ない、ショートメールで一刺ししよう。

Sメールは文字数が限られている為、中々短文にこちらの言いたい事を詰めるのは難しい。

取り敢えず、
期間が過ぎた事
電話に出てもらえない事を丁寧な文章で送った。

No.39 10/09/04 10:12
しゃけ ( kYyLh )

思いの外反応があった。

東氏から電話がきたのだ。
東氏の甲高い声を聞いた瞬間からアイコは動悸がしはじめている。

落ち着け、落ち着け、落ち着け。
念じながら話をするアイコの目は涙が溜まる。
相手に感ずかせてはダメだ。弱味は見せるな。
東氏が何と言おうが
悪いのは【債務者】達なんだ。
相手に伝わらないように
深く深呼吸をする。

『すみませんが、12日間過ぎましたが?
いかがですか?』

No.40 10/09/04 10:23
しゃけ ( kYyLh )

甲高い声が返ってきた。

『この暑さで職人さんが熱中症で現場が終らなくて
まだ、銀行から入らないんです。』


また、言い訳か。


『では、いつまで待てばいいのですか?』


前回、散々文句を言われ
待たされたのに、何故低姿勢にしてなければいけないのか、悔しさが心から溢れる。

汚い言葉で罵るのは簡単だが、それを逆手に取り払わないと言われては今までの労力は水の泡だ。


次の入金日を東氏の口から出させなければ。

No.41 10/09/04 11:46
しゃけ ( kYyLh )

『今、千川が銀行で融資の話を進めていますから。
それが通れば払います。』

銀行で融資?
千川氏に銀行融資が可決されるとは思えない。
理由は簡単だ。
ST社に帳簿などないであろう動きをしているからだ。


『千川さん自身が融資をうけるのですか?』


東氏の声は更に甲高くなり

『そうですよ!千川がSTの代表なんですから!』


あまりにも信憑性がないので、その話に突っ込むのは止めにした。


『そうですか。』


『いつまでお待ちすれば良いんですか?』

エキサイトしはじめた東氏が炸裂した。

『まだ、猫田さんが入った現場から全額もらってないんですよ!!!
払えるようになったら
連絡しますよ!』


払えるようになったらって友達でも親族でもなく
会社間の問題なのに何を抜かしているんだか。
この人はちゃんと会社組織で働いたことがあるのだろうか?
常識が通用しない人間がいかに厄介かを感じた。

No.42 10/09/04 12:27
しゃけ ( kYyLh )

きっちり約束させなければこういう人間はのらりくらりと理由をつけて逃げ道を作る。

『お客様からはいついただるんですか?』


『月末です!!』

いちいち返しが感に障る言い方である。

『月末までお待ちしたら
入金頂けますか?』

こちらも食い下がる。


『全額は払えませんけど
払います!!』

語尾を強く言う威圧感のある女。

全額は無理だと?

『おいくらなら大丈夫なのですか?』


『計算しないと解りません!だいたいこんなに煩いのは奥さんとこだけですよ!』

またか。

そんなに偉そうに言うならば早く払えよ!

言わずにいられなくなったアイコは

『私共もSTさんみたいなやり方は初めてです。他の会社さんは遅れても次回入金日をお知らせしてくれますよ。』

少しすっきりしたアイコだ。

No.43 10/09/04 21:39
しゃけ ( kYyLh )

スッキリしたのはほんの一瞬の出来事であった。

『私、払わないっていってないですよね!
お金が入ったら払うっていってるでしょ!』

この人は、どうしてこうも攻撃的なんだ。
冷静に話すことは出来ないのか?
どうせなら払わないって言ってくれたほうが
警察に行けていいのに。


少し、突っついてみよう。

『うちの事を煩いように仰いますが、月末で2ヶ月ですよ。何だかんだと2ヶ月立つってことはお支払頂けますよね。』

『だから、払わないって言ってないですよ!』

この人には何を言っても通じないのか、疲労が蓄積されていくのが身体中で感じる。

『解りました。
月末ですね。それまでお待ちします。』


何回、
こんなことを繰り返せば全額払ってくれるんだ?

こんなに酷い杜撰な会社は今までで初めてだ。

No.44 10/09/04 21:50
しゃけ ( kYyLh )

不景気=お金がないは
人間の人格までを変えてしまうのか、本来の姿が出てしまうのか、実に実に嫌なものである。

しかし、無いから払えないがまかり通ってしまうなど許されない事である。

ネットで検索をすると売掛金回収で悩んでいる人が沢山いることが解った。

その数だけ
図々しく払わない人間がいることになる。

裁判で勝訴しても
取れないケースもざらだ。

嫌な世の中に
なったものだ。

図々しく払わない人間が
普通の暮らしをしていて
払ってもらえない人間が頭を抱え資金繰りに奔走するケースが多い。

そして、払わない債務者は開き直るらしい。


トシとアイコは40万は全額手元にこなくても良いから
司法に委ねるか考え始めた時期であった。

No.45 10/09/05 00:03
しゃけ ( kYyLh )

月末の入金はかなり怪しくなってきている。

それでは困るのだ。

ST社の未入金の穴を松田氏の現場で埋めている為、松田氏の現場の経費諸々をST社からの入金で埋める予定が狂ってしまう。


入金は出来ないと言われた時の為に手を打っとかなければならない。

No.46 10/09/05 08:40
しゃけ ( kYyLh )

アイコはパソコンの請求書のファイルを開いて何社かの請求書をめくった。

10年来の付き合いのある会社の請求書で手を止め、じっと考えている。

『ねえ、トシ。
鍋田さんとこ、入金日より先に入れてくれないかなぁ。前に鍋田さんとこが遅れた時に何かあったら協力してくれるって言ってくれたんだよ。』


鍋田さん…ラッキーハウス株式会社の社長だ。
1月2月と入金の遅れがあったが期限を決めきっちり全額入金してくれた。
その時に
ご迷惑をお掛けしたのだから手助け出来る時はしますからと言ってくれた。

たとえ、それが社交辞令だとしても聞いてみる価値はある。

『鍋田さんとこ、持ち直したみたいだから聞いてみる価値はあるかもな。』

トシは図面を見ながら答えた。

勿論、交渉するのはアイコである。

トシはもともとは現場大好きでかなり職人気質な人間の為、あまり交渉は得意ではないからだ。

No.47 10/09/05 09:21
しゃけ ( kYyLh )

鍋田さんは多忙な人なので電話に出るか不安だったがかけてみることにした。

『鍋田です~。』

相変わらず人当たりの良い声だ。

『猫田です。お世話になってます。』


『あ~どうもどうも』


『あのですね。』


『あ~前回大変ご迷惑かけちゃったから、今回早めに入金するつもりなんですよ。』

アイコのばつの悪そうな
あのですね…察したように鍋田氏は答えた。

曇っていたアイコの脳裏から雲が消えた。


『すみません。なんか催促してしまったみたいで。』
『いえいえ、じゃ半分二三日中に入れて、残りは来週中に入れるので大丈夫ですかね?』

『はい。本当に助かります。実は今、未払いにあってて。支払日も言ってもらえず困ってるんですよ。』

少し愚痴をもらした。

『近いなら直接集金に行ったほうがいいですよ。』

鍋田氏に言われ、それもそうだなと考える。


『そうですね。今回は無理を聞いてくれてありがとうございました。』

『がんばってください。』
そう言って鍋田氏は電話を切った。

No.48 10/09/05 22:26
しゃけ ( kYyLh )

直接集金かぁ…相手側には効き目があるかもしれない行為だ。

月末まで待って未入金ならば行ってみよう。

もうすぐ月末が来る。
7月の末は土曜日だ。
それは、現金集金を意味する。
振込でこちらに入金するならば8月2日である。

これで、入金がなければお客様の家の屋根材を剥いで返して貰いたいとこだが、調べた結果、所有権はお客様になるらしい。

そうと解ると益々払わないST社の2人が図々しい債務者に思えてくる。

No.49 10/09/05 22:35
しゃけ ( kYyLh )

7月末日。いよいよ今日だ。東氏からの連絡を待つ。
相変わらず連絡してこない杜撰な会社である。

連絡が無いまま暗くなり始めた。

もうため息も出ないぐらい呆れながらアイコは東氏の名前を携帯の画面に出し発信ボタンを押した。


『東です。』

珍しく電話に出た。

『猫田ですが、月末になりましたが、どうですか?』

この後、
アイコの問いに対して
東氏の口から辻褄の合わない言葉が出てきたのだ。

No.50 10/09/05 22:56
しゃけ ( kYyLh )

甲高い年配女性の声で東氏が言う。

『集金は出来たんですけど、リース会社の引き落としで、あのお客様からのお金はもう無いんです。』

言われたことをアイコは瞬時に頭の中で整理している。
月末集金と言っていた筈なのに、何故、引き落としが出来る月末前に銀行にお金が入っている?
月末集金と言うのは嘘だったのか?
うちが施工した売掛金がリース会社代だと言うことなのか?


『と、申しますと、払うお金は無いと言うことでしょうか?』

頭の中では聞きたいことが沢山あったが、取り敢えずそう聞くので精一杯であった。


『ええ。
リース会社には引き落としを待ってくれって言ったんですが、引き落とされちゃったみたいで。』

上手いこと言って確信犯ではないか。

入金を予定していたこちら側の事など微塵も考えていないんだろう。

アイコの中では敵意が芽生え出しているが、いつもの如く冷静でいかなければならない。

No.51 10/09/05 23:09
しゃけ ( kYyLh )

東氏は挑戦的な人間だ。

では、泣き落としは効くか試してみようとアイコは考えた。

『私、正直、東さんのこと信用していたので、裏切られたようで悲しいです。
取り敢えず、4日までに10万でもいいので入れて頂けたら、本当に助かるのですが。』

わざと、涙声で話し
東氏の反応を探る。


『すみません。
奥さん。なんとか10万集めてみます。また、連絡しますから。』

泣き落としが聞いたのか、案外すんなりと話が終わった。


残金45万一括で要求したとこで、払えないものは払えないと突っぱねるであろうことは今までのやり取りで感じ始めたので分割で攻め込む方向にした。

No.52 10/09/05 23:30
しゃけ ( kYyLh )

やり取りの流れをトシに報告し、分割への方向転換の話もした。

話の中でひとつの提案としてアイコは言った。

『少し割り引いたら払うかもよ。』

眼光鋭くトシが返す。

『あの現場は元々まけてくれって言われて割引してあるんだから、これ以上割引く必要は無いよ。』

優しい声ながら芯は曲げないと言う意思が伝わったのでアイコはそれ以上言うのを止めた。

トシは腕にプライドを持って仕事をしているので
価値を下げることをしたくないのだろう。
外注さんには大事な箇所は絶対に任せず、どんなに忙しくても調整し自分でこなすのがプライドの現れであり、そこが取引先に気に入られている要因らしい。

No.53 10/09/06 00:51
しゃけ ( kYyLh )

個人事業主といえキャッシュフローは重要である。

ST社の残金45万のうち30万はキャッシュフローになる予定だった。

しかし
入金なしだ。


松田氏の現場経費を鍋田氏の現場で賄い
鍋田氏の現場経費をST社でと予定していたが、この調子では鍋田氏の現場経費を違うところから払わなければならなくなると容易に想像出来てしまう。

我々個人事業主にとって
たとえ45万であっても
されど45万。
そのロスは大きい。


調整しなければ立ち回れなくなる。

No.54 10/09/06 08:15
しゃけ ( kYyLh )

日本政策金融公庫。
所謂、国からの貸付が出来る場所。
ここに事業者貸付がある。以前お世話になり、まだ残債はあるが借り換えが出来ないか検討しはじめた。

ここでは申込み時に申告書、収支内訳書、事業計画書等を提出し、後日、担当者と面接になる。
面接での話術がものをいう。

早速必要な書類を用意し
今年度分の売上表を担当者が見易いようにパソコンで作成した。

用意万端にし、日本政策金融公庫に電話をした。

穏やかな女性が電話に出たので、ホッとしながら
融資についての質問があることを伝えた。名前、生年月日を聞かれ融資担当者に取り付けてくれた。

No.55 10/09/06 08:27
しゃけ ( kYyLh )

『お電話かわりました。』
こちらも話しやすそうな男性だ。

『借り換えについてなんですが。』

『はい、どうぞ。』

『実は今、未払いがありまして、今年は売掛金の入金が遅れる会社さんが多く資金繰りが大変になっていまして、そのような理由でも融資は受けれますか?』

ダメかもしれない気持ちで電話をしたのだから
本当の話をした。

『返済に遅れも無いですし、一度お越し下さい。
ご相談に乗れると思いますので。』

『ありがとうございます。近いうちに
お伺いします。』

善は急げでトシに仕事の調整をしてもらい、明日申込みに行くことにした。

No.56 10/09/06 08:37
しゃけ ( kYyLh )

翌日の午前中に2人で
金融公庫に訪れた。

申込み受付の担当者は
眼鏡をかけた、いかにもきつそうなキャリアウーマンのような女性だ。

アイコはどうしよう嫌な人だったらと先入観で思ったが、話していくうちに、そんな先入観を吹き飛ばす程、良い人で親身になり話を聞いてくれた。

申込み担当者は

『実績があるから、大丈夫だと思いますよ。
面談担当者が決まったら連絡がいきますから。』

そう言って話を綴じた。

ここで大丈夫と言われても太鼓判が押された訳ではないが第一関門突破である。

No.57 10/09/06 17:47
しゃけ ( kYyLh )

金融公庫の第一関門通過は良いが、暗く暗く長いトンネルが残っている。

明日は約束の4日だ。

電話をしてこないということは10万用意出来ないということを意味しているのだろう。

だが、そんなことは知ったことないなのだ。
払うべきものは払ってもらうと言う姿勢を崩せば
あの2人は付け上がるからである。

No.58 10/09/06 19:17
しゃけ ( kYyLh )

話すことも嫌だが電話をしてみることにした。

しかし既に身体が拒否反応を起こし、動悸と手の震えが出始めた。

アイコは落ち着け落ち着けと念じながら、意を決して携帯のボタンを押す。

『東です。』

この甲高い声を耳にしただけで嫌な気分になっていく。

『猫田です。明日のお振込ですが、どうですか?』
静かに聞いた。

『やっぱり無理みたいなんです。五万ならなんとか6日に振り込めるんです。』

なに???


7月は振込ゼロで
やっと振り込むと思ったら五万だと?

No.59 10/09/06 19:20
しゃけ ( kYyLh )

子供の使いじゃあるまいしいい加減にしてほしいものだ。

自分達の甲斐性の無さで 他人に迷惑をかけるな バカヤロー…

アイコの心の声だ。

そのまま言ってやりたい衝動を抑えながら


『そうですか。そのあとはどうなりますか?』


『まだ、解りません。』

7月8月で五万しか払わないで、今後の予定を解らないと言ってのけるこの人間は何者だ?

詐欺師か?

詐欺師のほうがよっぽと 騙されたから警察へ行こうと諦めがつく。


どこまでも図々しい人間はどうしたら自分本位の考えを改めるのか。

東氏は振込したら連絡すると電話を切った。

アイコに怒りだけが残った。

No.60 10/09/06 20:05
しゃけ ( kYyLh )

この怒りをどうするか、
ST社にぶつけるのは簡単だが、こちらが不利なことはしてはならない。


鍋田氏が言っていた自宅訪問。
幸い、事務所を自宅にしている。
訪問した時に千川氏が在宅なら都合が良い。

ST社の代表でありながら
電話にも出ないで、かけなおしてさえもこない不届き者だ。

No.61 10/09/06 20:14
しゃけ ( kYyLh )

早速、持参する請求書と
留守だった時の事を考え、請求文をパソコンで作成しはじめた。

勿論、脅迫めいた文章にはしない。
こういう図々しくずる賢い人間は何を逆手にしてくるか解らないから文言は慎重に考えながら入力した。

次回入金予定の確定と
連絡がとれなくなることには非常に困惑することに関しては意思表示をはっきりさせた文章を作り上げた。

封筒に入れ封をし完了だ。

No.62 10/09/06 22:59
しゃけ ( kYyLh )

翌日、金融公庫から面談の日程の知らせの電話がきた。
電話をかけてきた方が担当者らしく、話した感じからして、とても丁寧で礼儀正しい好青年という印象である。

当たり前のことだがこちらも礼儀正しく低姿勢な対応をした。

面談は4日後に決まった。
こちらはトントン拍子に話が進み気持ちも穏やかにいられる話だ。

明日あたりに封書で知らせがくるらしい。

何が必要かは知人にリサーチ済みで用意してあるので大丈夫であろう。


さあ、ST社兼自宅に向かう心の準備をしなければ。

No.63 10/09/07 00:29
しゃけ ( kYyLh )

アイコは鏡を見るのが大好きだ。

顔、全身、後ろ姿、色々な角度から自分を観察する。
建築関係ということで
見栄で玄関はかなり広く
軽く全身を映せる大きな鏡が取り付けてある。

楽しくお出かけする時は
念入りにその鏡で
自分チェックをするアイコだが、今日は違う。


鏡をじっと見つめ、


敗けるな…アイコ

そう言って
目に力を込めた。



…行こう…

No.64 10/09/07 00:40
しゃけ ( kYyLh )

背筋を伸ばし、再度、鏡でチェックした後、
玄関の施錠をし車に乗り込んだ。


アイコはCDボックスから
ケツメイシのCDを取り出した。
何かに敗けたくない時や
ネガティブな時に必ず聴く曲だ。

タイトルは《上がる》

この曲を聴くと絶対負けないって気持ちになる。


一時間の道のり。
ケツメイシを聴きながら
気持ちを強くしていく。

No.65 10/09/07 08:06
しゃけ ( kYyLh )

ナビの指示通りに車を走らせている。
近づくにつれ鼓動が早くなっているのが解る。

車内に流れる曲のボリュームを上げ気持ちを下げないようにする。

事務担当のアイコは実際に千川氏に会ったことがない為か、余計緊張していた。

ナビの案内からすると
もうすぐ到着らしい。

近くのコンビニに入って
一息つこうかとも考えたが、テンションが下がってしまいそうな気がしたので
そのまま直行することにした。

No.66 10/09/07 08:19
しゃけ ( kYyLh )

【目的地周辺です】

ナビからの案内だ。

遂に到着である。

ナビが指した場所に建っている家には表札がない。
仕方なく車から降り、ポストに目を凝らすと
走り書きのように黒いマジックで
【千川】と書かれていた。

ここだ…


あまり新しくない家の駐車場らしきとこに古びた軽自動車と自転車がおいてある。

電気がついており人の居る気配を感じた。

車を千川氏自宅の塀側に
停車させ、少し様子を伺ってみたが、いつまでも車内にいても仕方ないので、封筒を持ち玄関へ向かった。

鼓動が最大限にドクドクし始めている。

そして玄関のチャイムに
手を伸ばした。

No.67 10/09/07 09:35
しゃけ ( kYyLh )

【ピンポーン】

極々
一般家庭のチャイム音。

玄関脇の部屋らしき場所は磨りガラスになっており
人が動くのが解った。

ガチャ。

ドアと言う名の長い長いトンネルの壁が開く。

顔を出したのは奥さん。

かなり怪訝そうだ。

『突然すみません。
猫田板金です。』

『ああ、どうも。』

変わらず怪訝そうだ。

No.68 10/09/07 15:01
しゃけ ( kYyLh )

『請求書を持参したのですが、ご主人はいらっしゃいますか?』


『いえ、わざわざ来られたのですか?』

迷惑だと言っているように聴こえるが、せっかく来たのだからこちらの言い分を伝えなければ。


奥さんはST社には籍のない人間だが、千川氏が不在の時にお客様から集金をすると息巻いていたので、仕事の話をしても良いだろうと判断し話始めた。

No.69 10/09/07 15:06
しゃけ ( kYyLh )

『こちらに伺ったのは、千川氏とご連絡が取れない為と、6日に東さんから五万の入金予定がありますが、7月8月で五万のみでは、こちらとしても困ってしまいまして。』

相手は ドアを半開きにしながら 早く帰ってくれと態度に出しながら、はぁと返事をしながら聞いている。

『仕事もあるみたいだし、大丈夫だと思いますよ。』
こちらとしては、そんな話をしたい訳ではない。 入金確定日を知りたいのだ。

『こちらとしては五万のみの入金ではどうにもなりませんので、今後の予定を連絡して頂きたいのですが』
『はあ、
伝えておきます。』

このままでは
何の進展も見えないただの立ち話で終わりそうだ。 アイコはあまり言いたくなかったが、このままの状態では、司法に委ねることになりかねないことを伝え、下げたくないが頭を下げ、 車に戻った。

わざわざ一時間かけて来たのにも関わらず反応の薄さに運転するのも面倒になったが、いつまでも路駐している訳にもいかずエンジンをかけ車を走らせた。

No.70 10/09/07 15:27
しゃけ ( kYyLh )

旦那が腐ってるなら嫁も同じなのか。

払うものを払わないから
わざわざ訪問しているのに、詫びるどころか開き直りに近い態度には呆れた。

何不自由無く育ったアイコはこれが人間の本質かと思った。

お金がないと心は貧しくなる。他人にも刃を向ける。その相手が取り立てに来たと思えば刃も鋭くなるのだろう。

誠意の無い相手を前に
その鋭い刃で心を斬られたような気分だ。

しかし、こんなことで
斬られっぱなしでいる訳にはいかない。


万事休すになった訳ではないのだから、次の手を考えなければならない。

No.71 10/09/07 23:03
しゃけ ( kYyLh )

次の手。
やはり、司法の力か?

しかし、ここまでくると、司法書士や弁護士に依頼したとしても、彼らが怯むとは思えなくなってきた。

しかも、司法書士や弁護士に知り合いが居ない為に
債権回収に強い人を探さねばならない。

アイコはパソコンに向かい
債権回収に力を入れている事務所を調べ始めた。

調べながら相手に対して、まだ甘い気持ちがあることに気づいた。

もしかしたら、五万入金の後に残金を入れてくるかもしれないと…

こんな甘い気持ちは
後にひとかけらも無くなるのだが、この時点では
そう思ってしまっていた。

No.72 10/09/07 23:38
しゃけ ( kYyLh )

金額が40万と少ない為に
弁護士事務所では、あまり好意的に引き受けてはくれないだろうと考え、司法書士事務所を重点的に調べ、目ぼしい事務所を何ヵ所かお気に入りに入れた。

何より、弁護士事務所より司法書士事務所のほうが圧倒的に無料相談を受けてくれるところが多く、敷居も高くない。

お金が使いきれない程に猫田板金にあるのなら凄腕弁護士に依頼して苦しめてやりたいとこだが、わが社の懐と相談しながら依頼しなければならないので、
選ぶのも慎重になってしまう。

No.73 10/09/08 16:42
しゃけ ( kYyLh )

画面を見ながら虚無感に襲われる。

何をしても
どうやっても払わないなら無駄なことをしているのではないのか?

時間の無駄
お金の無駄
気持ちの維持

結果がついてこないことへの苛立ち

心が空洞になっていく。


虚脱感


他にやらねばならいことがあるのに、こんなぐだらないことに時間を費やし、心を痛める。。

いっそのこと
残金回収は諦めてしまおうかとも思った。
だが、
【諦めよう】とトシに言うのを躊躇う気持ちがある。
諦めてしまうと言うことはトシの中の自己価値が下がってしまうような気がするからだ。

No.74 10/09/08 21:48
しゃけ ( kYyLh )

【諦める】
それは、彼らに無償で40万差し出すことだ。

いや、そんな事はあってはいけない。
絶対にいけないのだ。

アイコは目を閉じ
堕ちた気持ちを
闘いへの気持ちへ変える。

売掛金を回収出来ない話はよくあるが、こんな身勝手な人間のいいようになってはならないのである。

明日は五万振り込んでくる日だ…

No.75 10/09/08 23:23
しゃけ ( kYyLh )

翌日の昼過ぎにアイコの携帯が鳴った。

ウィンドウを見ると東氏と文字が光ってる。

動悸が始まった。

胸に手をあてながら電話にでる。


『猫田です。』


『東ですが、今、五万円振込ましたから。』

棘のある言い方。
直ぐに電話を切りたそうな話し方だったが
アイコは食い下がった。

『ありがとうございます。次は
いつになりますか?』

『まだ、解りません。』

相変わらずの対応に
イライラする。

『では、今後の事をお聞きしたいのでお盆前にお電話下さい。』

『解りました。』


短い電話は終った。

アイコは東氏と話す度に
体調がおかしくなっていっている。


動悸や手の震えは日常的に起こり、不眠症にもなっている。
常識が通じない人間を相手に身体中のバランスがおかしくなっているのだろう。
電話を切った後
ネットで入金の確認をしたアイコはきっちり五万のみの入金に失笑した。

No.76 10/09/09 07:46
しゃけ ( kYyLh )

6月45万
7月0
8月5万

計50万残金40万

この調子では残金は本当にいつになるか解らないだろう。

そう思いながら
パソコンを開きお気に入りに入れた司法書士事務所のページを開いた。

事務所の謳い文句は
債権回収解決します!である。

隅から隅までサイトを確認し、料金をチェックする。
着手金は無いが
事細かに項目があり
結局のところ値段は他の事務所と差がなさそうだが、着手金が無いなら依頼して
あれ?ちょっと違うって思っても然程痛手がないと考えた。

No.77 10/09/09 08:09
しゃけ ( kYyLh )

【無料相談致します】
そう書かれた下部に
電話番号が記載されている。

アイコは携帯を開き番号を入力し発信ボタンを押した。
2コール目で

『はい、山口司法書士事務所です。』

女性事務員さんがでるのかと思っていたが
出たのは男性だ。

『すみませんが、債権回収についてご相談があるのですが。』

『はい、どうぞ。』

アイコは今までの経緯を1から10まで話すと長くなってしまうので、かいつまんで話した。

No.78 10/09/09 08:23
しゃけ ( kYyLh )

一通り話終わると事務所側は

『相手の口座番号か取扱い銀行は解りますか?
番号は解らなくても
支店まで解ればいいんですけど。』

『すみません。うちは振込を受ける側なので解らないんです。』

『いえね、そういう相手だと、支払督促や少額裁判の結果が出たとしても、払わないと思うんで、強制執行になるんですけど、
押さえるものが無いと結局何も取れないで、あなた達はこちらの料金だけ支払うことに成りかねないんですよね。』

『そうですよね。』

動産、不動産。
アイコは考えた。
家は?土地は?

『家が持ち家かもしれません。家では駄目ですか?』
『実際には強制執行かけなくとも、相手は40万で家が取られては大変だと払うケースもあります。』

はい、はい、と相づちを打つ。

『まず、相手が住んでいる管轄の法務局へ行って
不動産登記を調べてみて下さい。強制執行にする対象を作ったほうがいいですよ。』

No.79 10/09/10 09:46
しゃけ ( kYyLh )

司法書士は話を続ける。

『こちらで調べるのは簡単ですけど、それだと余計な料金がかかってしまいますからね。』

それはそうだと納得した。

『自宅が解るのは代表者のみなんでんすが、それで良いのですか?』

そう聞くと

『訴える時にはその会社二名同時に訴えて、不動産は駆け引きに使うので大丈夫ですよ。
まずは、調べて見て下さい。』

『解りました。
ありがとうございました。検討して
また、お電話致します。』
アイコは電話を切り
ふぅとため息をついた。

No.80 10/09/10 09:52
しゃけ ( kYyLh )

【法務局】
【訴える】
【強制執行】

これをしたら払うのか?

彼らは動じるのか?

もしかしたら、9月の始め辺りには払うかもしれない。
それならば、今動いたら
彼らの払う意思を砕いてしまうのではないか?


選択に悩みながら、
サイトをまた見始めた。

No.81 10/09/10 10:01
しゃけ ( kYyLh )

そして、次はコンサルタント事務所と名乗るところに電話してみることにした。
そこも
やはり女性事務員ではなく男性が電話に出た。

司法書士に話した内容と同じ事を伝えた。

『契約者は交わしてありますか?』

その質問にアイコは

『いえ、この業界は小さいところは、あまりそういうのが無いんです。』


そうなのだ。
契約書がないのだ。
この業界は割りと暗黙の了解でそのまま仕事に入る会社が多い。
勿論、大手はそんなことは無く、専属契約をしている大手とは猫田板金も
最初に契約を交わし、仕事に入る前に発注書が送られ、終れば完工書をだしている。

No.82 10/09/10 10:12
しゃけ ( kYyLh )

『そうですか。
それなら、少額裁判をして下さい。債権者側は勝訴しますから。』

『少額裁判ですか…』


『勝訴して、公に取る権利があれば我々は動けますから。』

アイコは男性の話を聞きながら少し不安になってきた。
『動くとは、たとえば?』
尋ねるてみた。

『勝訴していれば自宅を張って訪問して回収しますよ。それが、何もなくやれば、なんだあんた達はなってしまいますからね。』

男性は冷静だが、悪そうな雰囲気が電話でも伝わってくるような話し方だった。
ここに頼むのは危険なような気がしたアイコは

『解りました。では、動いてから、また、ご相談させて頂きます。ありがとうございました。』

電話が終わりアイコは
更にため息が出た。

今度のため息は自分の
浅はかさに対してだ。

No.83 10/09/10 10:20
しゃけ ( kYyLh )

コンサルタント事務所。

いわゆる取り立て屋であった。

アイコは
知り合いに聞いたことこでかある事を思い出した。

そのような所に依頼し
いつまでも付き合いを強要され大変だったと。

今の事務所がそうかどうかは解らないが、わざわざ危険な匂いのする場所に飛び込み回収することは得策ではない。

サイトを再度確認すると

【事例により、弁護士・司法書士をご紹介します】

と、記載されていた。

それは、この事務所には
資格者はいないと言う事を意味していることだ。

やはり
浅はかだったと
アイコは落ち込み、ネットを見るのを止め
暫くぼんやりしていた。

No.84 10/09/10 10:31
しゃけ ( kYyLh )

ぼんやりしていても
今後はどうすれば良いのか頭の中で思考が回転している。

そんな頭の中で
明日は
政策金融公庫の面談日だと気づいた。

持参する書類を
全て揃えクリアファイルへ挟んだ。

二期分の売上表
今年度の売上表
確定申告書
収支内訳書
銀行通帳
固定資産税領収書
個人事業税領収書
公庫住宅ローン明細

これらを挟んだファイルを封筒へ入れ
明日の用意を終えた。

あとは話術だなと考え
アイコは頭の中でシュミレ―ションし
準備万端にした。

No.85 10/09/10 11:04
しゃけ ( kYyLh )

その日の夜、施工現場から帰宅し、図面を書いているトシに、アイコは今日の二件の電話の話をした。

『ごめんな。俺がやらなきゃいけないのに。』

謝られたアイコの目から
ポロポロ涙が溢れだし
号泣しだした。

アイコ自身、何に対する涙なのか解らない。

だが、トシは解っていた。
誰かに頼ることが嫌いなアイコだが、抱え込み過ぎてダムの水は決壊したからだろうと。


落ち着いたアイコの頭を撫でながらトシが言った。

『頑張ってくれて
ありがとな。』

アイコはティッシュで鼻をかみ涙を拭い

『大丈夫。
トシは目の前にある仕事こなしてくれればいいんだからね。』

強がっていることがトシには解っていたが
もう一度

『ありがとな』

と返した。

No.86 10/09/10 11:39
しゃけ ( kYyLh )

アイコの中には二つの思いがある。

トシが全面に出る時は
多分ブチキレた時だ。
そんな時のトシは我を忘れ
相手に有利にさせてしまうことが考えられる。

もうひとつは
現調、図面、材料手配、見積り等々、毎日家に帰ってきてもやらねばならないことが有りすぎて
下らない図々しい彼らを相手にしている暇がないからだ。


だから、自分が頑張れるとこまでは頑張らねばと
自分に言い聞かせることで気持ちを奮い立たせる。

No.87 10/09/10 12:44
しゃけ ( kYyLh )

翌日、午前中に政策金融公庫へ向かう前に抜かりは無いかと再度持参書類をチェックし、少し早めに二人で車に乗り込み出発した。

あまり会話のないまま約20分車は走り続ける。

到着したが
駐車場が無い為に
コインパーキングに停車させた。

予定時刻より早く着いた為、少し車の中にいることにした。

アイコは人前で話すのが一見上手そうにいつも周りから思われているが、実はいつも極度の緊張に襲われていた。
今日も既に緊張が始まっているが、やらねばの気持ちで喝を入れる。

時刻が面談時間の15分前になった。


『行こうか。』

アイコに言われトシは頷き二人は車を降り歩き始めた。

No.88 10/09/10 16:29
しゃけ ( kYyLh )

徒歩で3分ぐらいの場所に目的地がある。
まだ、10時前なのに
夏の日差しが暑い。

政策金融公庫が入っているビルに着き、日傘を閉じエレベーターに乗り込んだ。
五階のボタンを押し
エレベーターが昇っていく表示を二人は無言で目で追っていた。

五階に着きドアが開く。
そのまま、真正面が金融公庫である。

手のひらの汗をアイコは拭き取り背筋をピンと伸ばし
トシと共に自動ドアをくぐった。

No.89 10/09/10 17:19
しゃけ ( kYyLh )

自動ドアくぐると
受付がある。

『おはようございます。
今日はどのようなご用件でしょうか?』

受付の女性が礼儀正しく聞いてきた。

『おはようございます。
面談予約が入っている猫田と申しますが。』

アイコが答えると

『かしこまりました。
只今、担当をお呼び致しますのでお掛けになってお待ちください。』


そう促され二人は椅子に座り待った。
椅子に座っている間もアイコは背筋をピンと伸ばし姿勢を正したままだ。
気持ちが小さいアイコにとって、背筋をピンと伸ばすことは自分が自分でなく、違う自分にしていくおまじまいのようなものなのである。

No.90 10/09/10 21:54
しゃけ ( kYyLh )

ほんの数分、椅子に座りまっていると

『猫田様。
こちらへどうぞ。』


電話で話した時に感じた
爽やかさのある二十代後半ぐらいの青年がにこやかに案内してくれ、
アイコとトシは後ろを歩き4つに区切られたうちの1つに招き入れられ、担当者の青年と挨拶を交わし着席した。

彼の名は秋田さん。


初めは事務的に持参した書類のチェックからだ。

No.91 10/09/10 22:34
しゃけ ( kYyLh )

『では、
先ずは税金関係の領収書から拝見しますね。』

何1つ見落とさない感じでチェックが始まり

『では、次は通帳をよろしいですか?』

言われるがままにこちらも出していく。

また、細かに通帳のチェックが始まった。

チェックの内容は正常に取引先と取引が行われているからしい。

メインの取引先
単発の取引先のチェックをしながら売上表と入金金額を照らし合わせているようだ。

やましいことは一切ないので、秋田さんの動きを
2人は落ち着いて見ている。

No.92 10/09/10 22:58
しゃけ ( kYyLh )

売掛、買掛の通帳のチェックの後は、
住宅ローンの通帳のチェック。

こちらも遅れは一切無いので安心して渡した。

この通帳のチェックは
簡単に終わりだ。

一通りの持参した物のチェックが終わり
いよいよ本題に入っていく。

No.93 10/09/10 23:25
しゃけ ( kYyLh )

爽やか青年は話始めた。

『え~と今回は運転資金と言うことですね。』

『奥様が経理担当と言うことでよろしいですか?』


『はい。そうです。』


秋田さんは7月までの売上表を見ながら

『今年度の売上を見ますと去年と変わらず順調な感じがしますね。』


『ええ、そうなんですが、このST社は帳簿上では売上が立ってるのですが、入金の遅れと未払いでして、ここをカバーする為に次の現場次の現場となっている状態なんです。』

アイコは一気に話した。

No.94 10/09/10 23:34
しゃけ ( kYyLh )

『ST社ですね。』

秋田さんは
そう言いながら何やらメモをしている。

『そのST社からは今後入金予定はどうなんですか?』
『遅れながら50万入金があって、残金は40万なんですが、予定は解らないと言われてます。』

『そうですか。その他の会社さんはどんな感じなんですか?』

アイコはメインの取引先を
指しながら

『この会社がメインでして、こちらは過去一度もトラブルはありませんし、順調に取引させて頂いてますね。それから、こちらがサブメインと言う感じで仕事を調整しながら、受けています。後の何社かはやはり同じように調整がつく時は受けるような形です。』

秋田さんはメイン会社の売上をチェックし再度通帳のチェックをした。

No.95 10/09/10 23:42
しゃけ ( kYyLh )

『話戻りますが、ST社さんとはどんな感じのお付き合いだったんですか?』

『ここは単発で同じように調整がつけば受ける感じでした。』

『今後、お付き合いする予定はありますか?』

『一切付き合うつもりはないですね。』

アイコは本心を述べた。


『そうですよね。』

苦笑いの秋田さんが
売上表の1月を指し
問いかけてきた。

『こちらは0になってますが?』

確かに1月は売上が0なのだ。突っ込まれる要因だが、これはこちらには好都合な話なのである。

No.96 10/09/10 23:51
しゃけ ( kYyLh )

何が好都合か…
それはいかに猫田板金が
融資を受けたいか懇願する材料だからだ。

『1月は大クレーマーのお客様が施主さんでして、
弁護士立てるとか大変な騒ぎになってしまい、結局はお客様が非を認めたのですが、完工が間に合わなかったんです。』

秋田さんは頷きながら聞いている。


『それで、2月まで持ち越してしまったのですが、今度は完工を早めなければいけなくなってしまって、外注さんを入れたんですね。それで、2月に売上はたったのですが、外注費で殆んど持ってかれて赤字の現場だったんです。』

話終わるまで静かに聞いてくれていた秋田さんが口を開いた。

『不景気になるとそういうお客様が増えるんですかなね。』

その通り。
施主さんも。
ST社も。

心の中の叫びだ。

No.97 10/09/10 23:57
しゃけ ( kYyLh )

『そうですね。
初めてですね、こんなクレーマーの施主さんは。
それに、こんなに支払わない取引先も初めてです。
世の中が不景気だからですかね。』


アイコはST社の話やクレーマーの施主さんの話をしながら何やら胸がすっきりしているのを感じる。

秋田さんに話しても
ST社がお金を払う訳ではないが、国の機関の人間に
ST社の事を言えた事で
胸が一瞬でもスッとしたのだろう。

No.98 10/09/11 00:05
しゃけ ( kYyLh )

アイコは続けて話した。

『1月の遅れを取り戻そうとしている矢先に、ST社からの遅れが始まりまして、違う現場でカバーをしていたのですが、ここまで払ってもらえないと思っていなかったので、こちらも予定が大幅に狂ってしまいまして、こちらにお願いしようって事になりました。』


『そうですか。
大変でしたね。』

ちゃんと感情を入れて
言ってくれた秋田さんに
人間味を感じた。


そして
手応えも感じている。

No.99 10/09/11 00:17
しゃけ ( kYyLh )

面談は最後の確認に差し掛かった。


『今回はお借り換えということで宜しいですよね。』
『はい。そうです。』

『ご返済は同じぐらいの金額で大丈夫ですか?』

『はい、大丈夫です。』


その都度
秋田さんは細かにメモをとっている。

『では、これから
こちらの書類を倫理にかけます。
結果は郵送で
だいたい一週間ぐらいで猫田さんのお宅に届きますので。』

『最後に、
何か、ご質問ありましたらどうぞ。』

特にはないが
取り敢えず尋ねてみた。

『融資可決になりそうですか?』


『支払い実績もあって
政策金融公庫と住宅も遅れないので大丈夫だとは思いますが倫理の結果になりますので…』


これ以上聞くことは無かったので

『ありがとうございました。宜しくお願いします。』
と、挨拶をし公庫を後にした。

No.100 10/09/11 00:37
しゃけ ( kYyLh )

エレベーターを降り
コインパーキングへ向かいながらアイコはやり遂げた気持ちを満喫していた。

まだ、融資実行になっていまないのに満足感がある自分が笑えた。


秋田さんとアイコが話している間、頷くだけのトシだったが

『アイチャン、ありがとね。
さすが、影の猫田板金代表者って感じだったけど、
震えは大丈夫?』

気づいてくれていたんだ。アイコはそれで充分だった。

話してる途中
何度も手が震えテーブルの下に隠していたことに
気付き心配してくれるトシはやはりアイコの理解者だと感じた。

緊張と手の震え動悸はあるが、世間を渡り歩くのが得意なアイコと、人受けが良く勤勉なトシは良いパートナーだと、つくづく感じた。

No.101 10/09/11 13:19
しゃけ ( kYyLh )

2人は車に乗り込み走りは始めた。

『俺はこれから、現場に行くけどアイチャンは今日はゆっくりしてなね。』

とにかく優しいトシに
アイコは

『うん、そうする。
今日はST社の事も忘れることにするよ。』

『そうしな。あいつらの事を考えるとアイチャン具合悪くなるし。』

アイコは、今まで
あまり具合悪い事を言ってこなかったのに
ちゃんと解ってくれてる事が嬉しかった。

家に着き

『お疲れ様』と
コーヒーをいれてくれ
トシは出かけて行った。

No.102 10/09/11 13:30
しゃけ ( kYyLh )

午後になり携帯が鳴っているのに気づいた。

ウインドウは
【政策金融公庫】

少し不安の中、
明るくアイコは出た。

『猫田です。』

『先ほどはありがとうございました。
公庫の秋田です。』

何だろう…

『こちらこそ、ありがとうございました。』

『え~とですね、
月々のご返済額のお知らせでお電話致しました。』

ホッとしたアイコがいた。

『今までと変わらない感じでいきたいと思いまして、月々52000円とお利息という形で宜しいですか?』

『はい、大丈夫です。』


『解りました。それでは、今から上司に書類を渡します。』

『わざわざありがとうございます。』


お礼を言って
電話を切った。
アイコは融資否決の電話かもと脳裏によぎったので
切った後かなりホッとしていた。

そして、反応から
可決になるかなと安堵の気持ちが出ている。

No.103 10/09/11 13:42
しゃけ ( kYyLh )

秋田さんからの電話の3日後、つまり面談からの3日後。


実家に行っていたアイコにトシから電話がきた。


『アイチャン、公庫から融資可決の封筒きてるよ。』

アイコの脳内にアドレナリンが出た。

『マヂ、良かった。
トシ、
明日は公庫に行ける?』

最終段階は

公庫から届いた書類に記載事項を記入し
印鑑証明と一緒に提出するのだ。

『ごめん、
明日は俺が行かないとダメなとこなんだ。』

面談以外は本人でなくても大丈夫なので

『じゃあ、あたしが行くから、今から書類書いちゃって。もう少ししたら帰るから。』

『うん、ごめんね。いつもいつも。
ゆっくり、してきていいからね。』

そう言ってくれたが、
本人が行かない場合、
不備があると訂正の為に
出直さなければならなくなるので、書類の確認の為にアイコは父母に帰るねと挨拶をし、ばあちゃんのお仏壇にお線香をあげ手を合わせ
【ST社で苦しみませんように、見守ってね】と
ばあちゃんに言って
急いで車に乗り込み帰った。

No.104 10/09/11 13:53
しゃけ ( kYyLh )

『ただいま。』


『おかえり。
ゆっくりしてきて良かったのに。』

書類を確認しながら
トシが言った。

『けと、不備があると出直しだから、一緒に確認しようと思って。』

『そっか、ありがとね。』

そう言いながら、
記入しはじめた。

可決金額が入っている用紙に氏名住所捺印
銀行口座の記入
口座印

個人情報取り扱いについての署名

団信の記入
簡単なメディカルチェックの記入

等々だ。

後は明日
市役所で印鑑証明を取得し一緒に持参する。

念のため実印、認印を持参する。

全て記入しチェックも終り、封筒にしまい
明日の準備は終了した。

No.105 10/09/11 13:59
しゃけ ( kYyLh )

翌朝、午前中に済ます予定にしていたアイコは
8時半に家を出発し
市役所へ向かった。


印鑑証明を取得するATMのような機械に市民カードを入れ、何かあったらと
二通取得し、
急いで車に乗り込み
約15分くらいの公庫へ車を走らせる。

コインパーキングに停車させ、書類を全部出し
確認した後、
日傘を差し公庫へ向かい歩き出した。

No.106 10/09/11 14:15
しゃけ ( kYyLh )

エレベーターに乗り込み
公庫に着いた。

自動ドアをくぐり
受付へ真っ直ぐ歩いていく。

『おはようございます。
どんなご用件でしょうか?』

女性事務員さんが相変わらず丁寧に尋ねる。


『おはようございます。
融資実行の書類を持参したのですが。』


『かしこまりました。
では、担当をお呼びしますので、お掛けになってお待ちください。』

何故、朝早くからいそいそと手続きをしに来ているかというと、アイコは
誰もが認める程のネガティブ人間なのである。

何に対しても
もしかしたら
もしかしたらと悪い方向ばかり考えてしまう。

だから、早く済ませ
これは現実に事が運ばれていると実感したいのである。

No.107 10/09/11 23:41
しゃけ ( kYyLh )

担当者に呼ばれ待っていた椅子の真向かいのカウンターの椅子に座った。

この最後の作業は事務的にことが運ばれた。

全ての書類のチェックをし、印鑑証明と実印の照合で終りである。


担当者がカレンダーを取りだし尋ねてきた。

『最短で
来週の火曜日になりますが、宜しいですか?』

『はい、宜しくお願いします。』

アイコは現実だと思いながら答えた。

『では、
これで終りですが、何かご質問はありますか?』

担当者に言われたので、
質問はなかったが

『あの、秋田さんに素早い対応ありがとうございました。と、伝えて下さい。』
アイコの本心を述べた。

担当者は秋田さんを呼ぼうとしてくれたが、お仕事中なので丁寧にお断りし、
もう一度お礼をし公庫を後にした。

No.108 10/09/11 23:49
しゃけ ( kYyLh )

今日は金曜日で来週の火曜日に公庫からの融資実行。

心配性でネガティブなアイコはこの期間が物凄く永い時間に感じ、
何か不都合が生じて
融資が中止になったらどうしようとか
悪い事ばかり頭に浮かんで仕方なかった。

申し込みから融資まで
2~3週間かかると、良く聞くが、今回は11日間で全てが終了した。

政策金融公庫と名を聞くと国の機関で事務的な感じがするが、とても人間味溢れる良い人達だったと
アイコとトシは感じていた。

No.109 10/09/12 07:38
しゃけ ( kYyLh )

土日を越し月曜日。

気が気じゃないアイコ。

アイコとは対照的で
かなりポジティブなトシは

大丈夫!
そんなトラブルないよ…と言いながら仕事に行った。

それでも悪い方へ考えがいってしまうアイコ。

なるべく考えないようにすることにしていたが、
こちらを考えなければあちらでST社のことが頭にでてくる。

No.110 10/09/12 07:56
しゃけ ( kYyLh )

【お盆前に電話下さい】

6日にそう伝えたが
果たして電話をしてくるのだろうか?

アイコ自身、あまり期待していなかった。

こちらから電話しない限りしてこないだろうと考えていた。

いつの間にかST社の事で
頭の中がいっぱいになってきた。

ST社のことを考えているとヒステリックな東氏を思いだし動悸が始まる。

このたありでアイコは
心療内科の受診を検討しはじめていた。

平常心を保てなくなりつつあるのが自分で良く解るからだ。

No.111 10/09/12 09:23
しゃけ ( kYyLh )

毎日、時間があるとネットで色々な事例を調べたり
弁護士・司法書士・行政書士のサイト調べている。

しかし、アイコの精神状態が行動を起こせる状態にない。

活力が急激に減少しており、猫田板金の事務をし
家事をやっとこなしている状態なのである。



そんな状態で東氏にコンタクトを取ることをかなり気持ちの上では拒んでいるが、逃げ得的なことは
曲がった事が大嫌いなアイコには許せない事。

気持ちの葛藤を続き
更に気持ちはおかしくなっていく。

No.112 10/09/12 14:43
しゃけ ( kYyLh )

火曜日になり
午前中にネットで確認すると公庫からしっかり振り込まれていた。

一つ胸のモヤモヤが解消された。

あとはST社だ。

今日は10日だ。
お盆前に電話の約束など
到底破ることを見越し
明日、電話してみることに決めた。

反応はどうなのか…
またヒステリックになるのか…
考えるだけで嫌になる。

No.113 10/09/12 14:53
しゃけ ( kYyLh )

8月11日。

意を決して電話をした。

出ないと思っていたが
案外簡単には出た。


だが

『今、お客様のとこで話が出来ないんです。』

また、逃げか?
そう思ったアイコは食い下がった。

『では、いつでしたら大丈夫ですか?』


『明日なら…』


『明日の何時ごろならお話出来ますか?』

逃がさないように
時間指定だ。

『お昼過ぎなら。』


【明日のお昼過ぎ】


よし!日時指定だ。
これなら
いくらなんでも逃げないだろう。

『解りました。では、明日のお昼過ぎ位にお電話致します。』

東氏本人が指定してきたのだから、いくら何でも
話すだろう…
アイコは、こちらの考えが安易すぎた相手だったと翌日痛感する。

No.114 10/09/13 08:01
しゃけ ( kYyLh )

翌日、アイコはわざわざ時間を作り指定時刻の
【お昼過ぎ】に電話する。

昨日同様にすぐにでた。

しかし
時間指定にも関わらず

『今、お客様の現場なので、ちょっと』

何?
あんたが昨日【お昼過ぎ】って言ったんでしょ?!

いい加減にしろ!

などの感情が沸いてきたが押し殺し

『夜なら大丈夫ですか?』
冷静に尋ねた。

『夜なら
大丈夫だと思うのでこちらから電話します。』

信じやすい性格のアイコは
その言葉を鵜呑みし
電話を切った。

わざわざ時間を作って電話したのにも関わらず
昨日と同じセリフ。

しかし夜まで待とうと
アイコは素直に思っていた。

No.115 10/09/13 08:07
しゃけ ( kYyLh )

【夜】と言っても時間の幅は広い。

人によって【夜】の時間帯の感覚も違う。

アイコは辺りが暗くなる6時頃から携帯を常に自分の元に置いていた。

しかしながら、そんな行動も虚しく
7時になっても
8時になっても
9時になっても
電話はかかってこなかったのである。

10時過ぎて
今日はかかってこないと
思う反面
また、約束を破るのかと
怒りが込み上げてきた。

No.116 10/09/13 08:12
しゃけ ( kYyLh )

怒りが込み上げてきたが
それに任せて感情的になってしまっては
相手のヒステリックと同じになってしまう。

アイコは1日空けて
冷静に掛け直そうと決めた。

これだけ約束を破られると人間不信になりそうだと
アイコは思ったが
東氏はヒステリックにならずに今回は対応してきているので、明後日電話をしたら、入金予定などの確認が出来るかもしれないと
淡い期待をしていた。

No.117 10/09/13 08:23
しゃけ ( kYyLh )

翌々日、今日こそはと思い電話した。

今日こそは、そう思っての電話だったが

『今日もお客様の現場でちょっと無理なんです。』

同じセリフが飛んできた。
電話を切ろうとする東氏にアイコは切らせてはならないと思い尋ねた。

『夜に電話を頂けるって事だったのでお待ちしてたのですが?』


『あっすみません。
時間がなくて。
後でこちらから電話しますから。』

東氏は半ば強引に会話を終了し電話は終わった。

バカにされているのか?
本当に忙しいのか?
逃げているのか?

この人間は信用などしてはいけない部類だと
改めてアイコは思い
とりあえずあまり期待はしないが、折り返しの電話を待つことにした。

No.118 10/09/13 08:54
しゃけ ( kYyLh )

その日も夜まで待ったが
やはり予想通り電話は
無かった。


ここまでされると
敵対心しか出てこなくなる。

相手がきちんと話した上で待つのと
話すこともせず
虚偽ばかりになれば
普通に対応していては
彼らは永劫に虚偽で終らせるだろう。

もう一度だけ
明日電話をし
次に何をするか考えることにし、アイコはその日を
終りにした。

No.119 10/09/13 15:33
しゃけ ( kYyLh )

【三度目の正直】
とあるが、
【四度目の正直】だ。



アイコが電話すると
やはり普通に出た。

そして
また同じ事を言ってきた。
『今、お客様の現場でお話が出来ないんです。』

『では、いつならいいんですか?』

『こちらから掛け直しますから。』

これで電話は終わった。

アイコは非常にバカらしくなってきた。

No.120 10/09/13 15:40
しゃけ ( kYyLh )

きっと
何回電話したところで、これからも同じ事を繰り返し逃げるのだろう。

アイコはバカらしくなったのと、時間の無駄だと思い
電話するのは止めにした。
図々しく
払わない事を悪びれない相手をどうやったら払わせられるか…

調べた限りでは
このように図々しい相手は逃げ得をしている輩が非常に多い。

そんな事が
許されていいのか?
と疑問に感じながら、
アイコはパソコンに向かい始めエクセルを開いた。

No.121 10/09/13 15:45
しゃけ ( kYyLh )

先ずは五万入金後の請求書を作成し、それとは別にわざと繰越残金を表す請求書を作成した。


そして
請求書のファイルを閉じ
新たにエクセルを開いた。
何をするかと言うと

今度は手帳を参考に
6月から今日までのやり取りの経過を全て
日付を入れ事細かに
入力したのだ。


三枚の用紙をプリントアウトし、次はワードを開いた。

No.122 10/09/13 15:51
しゃけ ( kYyLh )

ワードでは
【ST社御中千川様】で
文章を作成する。

連絡は着くが話が進まないこと
7月8月で五万のみのこと
司法または第三者の介入

などを入力し


最後に分割にするならば
お知らせ下さい並びに
必ずご連絡下さいの2つの文章を太字にし強調して入力した。

No.123 10/09/15 00:57
しゃけ ( kYyLh )

合計四枚の用紙を
封筒に入れ、宛先を書いて封をした。


こちらの電話に応じないが故に経過表なるものを作成し、送ることにしたが
言わば宣戦布告ととられるかもしれない。

だが、
話も出来ない、
手紙を送ったところで応じないのだから仕方がない。




しかし

…反応が少し怖い…

No.124 10/09/19 22:29
しゃけ ( kYyLh )

『宣戦布告になるかも。』

仕事から帰宅したトシにアイコが言った。

『何するの?』

当然の質問だ。


『今までのやり取りを表にして送るの。』

話ながら
パソコンの保存したファイルを開きトシに見せた。


『やるね、アイチャン。』

『トシがやらないからでしょ。』

ちっくり
にんまりアイコは言った。

にんまりの意味は、
ちっくり言ったけど
この役目は私でいいんだよの意味だ。

トシは仕事に関しては
定評があるが
駆け引きはとても苦手としている。
そんなトシが彼らにやり込められるのは目に見えているからだ。

No.125 10/09/20 08:37
しゃけ ( kYyLh )

『で、送ってOKかな?
向こうがどうでるかは解らないけど。』


『いいよ。』


軽く返ってきた。


『あのさぁ、こんなことして、トシは違う会社とかに言われちゃったら分が悪くなったり、付き合い難くなったりとかは無いの?』


『全然。』

平然と答えられて
少し拍子抜けのアイコは
もう一つ聞いた。

『じゃあさぁ、ST社と付き合いがあって、うちも付き合いのある取引先は無いの?』


『付き合いって言うか、
まあ、知ってるとかはあるけど、千川さんと俺のどっちを信用するって言ったら俺だと思うよ』

No.126 10/09/20 09:13
しゃけ ( kYyLh )

トシは続けた。

『二、三の会社は被って知り合いだけど、あの人、信用度低いらしいよ。』

『そんな会社の仕事を安易に受けちゃった俺は反省だよなあ。』

申し訳なさそうに言うトシにアイコはフォローする。

『でも、ST社は今まで単発で受けてもちゃんと払ってくれていたんだから、
今回のことは仕方ないんだよ。』


そう…仕方ない
不景気のあおりを受けたんだ。

下を向かない為にはそう思うしかない。

仕方ない…不景気だから。

No.127 10/09/20 09:19
しゃけ ( kYyLh )

仕方ない…不景気だから。
だが、それに甘えて払わない行為は許さない。

人の道に外れているだろう。

不景気を良いことに
払おうとしないで、自分はのうのうと自社を維持していくなんて事はあってはならない。

しかしながら、沢山のサイトを見たアイコは実に泣き寝入りや取りっぱぐれの人が多く存在することが解った。

心の奥底では

…もう無理かも…

そんな思いも出てきている。

No.128 10/09/20 09:30
しゃけ ( kYyLh )

払う気が無くとも
やり込めてやりたい気持ちでいっぱいだ。

このままでは終りにはしない。


アイコは
自分の精神は持つか…

常識の中で育ったアイコにとって、払うべきものを払わず逆ギレしてくる相手は
かなり異種な存在であって苦しめられている。

その異種な存在は
自分の言い分を通すやっかいな代物だ。


アイコはまだ心療内科を受信こそしていないが
限界が近づいていることが解っていた。

現に動悸、手の震え、不眠症が続き体調不良を起こし、食欲不振に陥っている。

ST社との付き合いを止める以外快復はないだろう。

No.129 10/09/20 11:15
しゃけ ( kYyLh )

作成した文章の送付方法。
普通郵便ではまったく足跡が辿れない。

かといって配達証明をつければ、受け取り拒否も有りうるし、前回のように期限ギリギリまで受け取らない場合も考えられる。

そこで、問い合わせ番号があるメール便を使うことにした。

コンビニから簡単に送れるし料金も安い。
配達も早い。

前回の速達配達証明を送った時の事を思い出すと
全く速達にした意味が無かった。

郵便局まで行き速達料金を払い送った意味の無い配達証明郵便。


そもそも何故こちらが
そんなに手間暇かけてお金を使うのかも疑問に感じしてまう。


果たして今回は効果が生じるのか…

いや
生じてもらわないと困るのだ。

No.130 10/09/20 11:27
しゃけ ( kYyLh )

『メール便でお願いします。』

セブンイレブンのレジへ
封筒を出した。

手際の良いレジ係の女性はあっという間にレジをこなし控えを渡してきた。

このあっという間の時間が物の何十秒間がアイコには
長く感じた。

頭の中では

本当に送っていいのか?
あの自分本位の人間が指摘されて激怒するのではないか?

そんな考えが
ぐるぐる頭の中を回っていた。

No.131 10/09/21 09:04
しゃけ ( kYyLh )

帰りの車中、やはり送るのを止めて取りに帰ろうか悩んだ。

それほどあのヒステリックな話し方に神経がやられていた。

何か行動しなければ
何も変わらない。
良い方へ転ぶか
悪い方へ転ぶか
それは解らないが、何もしないよりはいい…
思い直したアイコは、普段は片手運転だが、固めた心を現すかのようにギュッとハンドルを両手で力強く握りしめアクセルを踏んだ。

No.132 10/09/21 09:15
しゃけ ( kYyLh )

心を固めた後は
今後の展開を考えた。

どの様な形でも連絡を頂きたいことを文面にいれたが彼らから連絡を待って
それでも来なければ
こちらから電話しなければならない。

なるべくなら簡潔に話を終わらせヒステリックな声は聞かないで済ませたいものだ。


県内同士なので
明日明後日中には着くだろう。


気持ちを整え待とう…

アイコは願いは叶わない事と自身感じながらハンドルを固く固く握り続けた。

No.133 10/09/21 17:03
しゃけ ( kYyLh )

彼らからは翌日も翌々日も連絡がない。

こちらは心を構えて待っているというのにだ。

この輩達はまともにはいかないと感じてはいたが、
ここまで酷いとは思わなかったのでかなりの戸惑いが出てきた。

電話をしようかどうしよかと悩むばかりで
携帯に手を伸ばせないでいる。
言うまでもないが、自己に非があるのにヒステリックに話す相手をするのかと思うと躊躇いばかりになるからだ。

No.134 10/09/21 17:11
しゃけ ( kYyLh )

躊躇いばかりの中、さらに1日経過していった。

どう考えても送付した書類は彼らの手元にある筈なのに。

40万。
彼らにとってはどのような金額なのだろうか?
逃げ通せる金額だとでも思っているのだろうか?
一般サラリーマン家庭にしたら一月分に値するだろう金額だが、払わない、連絡しない、意思を示さないでおり、何を考えているのか知りたいものである。

【いつまでに入金します】等、予定を告げてくれれば可愛いげもあるのだろうが、彼らには可愛いげもへったくれもない。

No.135 10/09/22 10:59
しゃけ ( kYyLh )

ヤキモキした気持ちのまま夜を迎え、既に電話をするには遅い時間を時計が差している。

電話を出来ずにいたのに、掛けれない時間になると
掛けなかったことに対しての苛立ちと後悔の気持ちに襲われた。

掛けなくちゃ掛けなくちゃと強迫心が出てきて
自己嫌悪だ。

全くもって悪循環なパイプの中をぐるぐると回っている。

じゃなかったらメビウスの輪だ。
裏と表が解らず
裏側だと思って行けば相手は表側だと思い行ってしまう。

輪をハサミで切って
ねじれを修正し
裏と表をはっきりさせ対峙しなければいけない。

ハサミは携帯。

次の繋げる為に貼り合わせる粘着剤は司法。


明日はハサミを入れなければ。
相変わらず不眠症で眠れないアイだが目をゆっくり閉じた。

No.136 10/09/22 22:16
しゃけ ( kYyLh )

翌日、
メビウスの輪を切るためのハサミの携帯を開き、東氏の名前を画面に出した。


【何言われるだろう】
【またヒステリックになるのかな】


嫌なことしか頭に浮かばないが、彼らが接触してこないのだから、こちらから接触しかない。

携帯の録音機能を確認し
発信ボタンを押した。

携帯の説明書を捨ててしまったので、どのぐらい録音出来るかは定かではないが、相手がヒステリックになり始めたら録音するつもりである。


呼び出し音が始まり、アイコの鼓動は早くなった。

No.137 10/09/22 23:57
しゃけ ( kYyLh )

コールが重なるにつれて、鼓動は早くなり手が震えだす。

重症だな…と認識しながらも、ここで引くわけにはいかないと言う気持ちが勝り、相手が出るのを待つ。


コール音が止んだ。


『東です。』


…出た…

落ち着け
落ち着け
落ち着け

No.138 10/09/25 10:15
しゃけ ( kYyLh )

闘いが始まるか
締結になるか…

『猫田ですが、お世話になってます。』

少し間が空き、あちらは何も言ってこない様子が伺える。

アイコは柔らかく言う。

『こちらから送付した封書は届きましたでしょうか?』

また間が空く。

………

………

今度はあちらが口を開いた。

『ああ、メール便のですよね。』

『そうです。それで、』

まで言いかけたら
機関銃もしくは
戦車の連続砲弾のように
こちらの話を遮り口火を切ってきた。

No.139 10/09/25 10:26
しゃけ ( kYyLh )

『ちょっと!
何なんですか?
あの表は!!!!』

かなりのボルテージだ。
ヒステリックは最初から始まり、しかも最初からマックス状態に入っている。

アイコは携帯のメモボタン(録音機能)を押してから
冷静に口を開いた。


『何度、お電話しても、』
言い終らない内にまた機関銃を撃ってきた。

『あれじゃあ、まるで私が嘘つきみたいじゃないでしか?千川さん宛に送ることないでしょ!!!』


いや、実際嘘ついてるし、千川さんは代表であり、担当者の東氏が話しにならなければ、代表宛に送付するのは当たり前だ。

何を自分本意に捉えているんだこのヒステリックな人は?

アイコは
【ふざけるな!】と思いつつ冷静にいかなければと心臓に手をあてた。

No.140 10/09/25 12:11
しゃけ ( kYyLh )

アイコは冷静に戦をする。

『東さんに何回お電話してもお話出来ないから、千川さんに送らせて頂きました。』

今度は最後まで言えた。


『わたし、
今は話せないからって言いましたよね?!』


おいおい、そのあとに
【掛け直す】って言ったのもあんただよ。
アイコは相変わらず話が通じない相手だなと怒りもあるが、失笑気味だ。


『ですが、東さんは掛け直すって仰いましたよね?
それにお盆前にお電話』

『言ってませんよ!!』

話が終らない内にまた遮りだ。


うんざり
うんざり
うんざり

No.141 10/09/25 12:18
しゃけ ( kYyLh )

あ~あ
こんなに興奮して血管切れちゃうんじゃないのかな、おばちゃんヒステリックパワーはさらに増大。

『言ってませんから!』

『ですがね』

『言ってません!!』

『あの』

『言ってません!!!』

『言ってません!!!!』
ダメだな、この人。


『興奮なさらないで下さい。』

アイコの一言に

ヒステリックはマックスを越えた。


『奥さんが興奮させているんでしょ!!!!!!』

No.142 10/09/25 12:34
しゃけ ( kYyLh )

物凄く憎らしくなってきたアイコは言った。

『私はすごく冷静なんですけど。』


さあ、今度はどんな機関銃を使うのかな。


『わたし、6日に電話した時に、次はまだ解らないからまた連絡するって言いましたよね?!
なのに、何回も電話してきて
嫌がらせかされているのかと思っちゃいますよ。
それに、こんなことしてくるのは奥さんとこだけですよ!!!!!』


一気に機関銃を連射してきた。
またまた自分本意。

No.143 10/09/25 14:35
しゃけ ( kYyLh )

自分は正しいと思って発言を繰り返しているのか、
自分の非は解っていて回避するために理に合わない発言を繰り返しているのかは、本人にしか知り得ないことだが、こんな人間を相手にしていると心が荒むのだけは事実だ。


アイコはまたしても冷静に
答える。

『うちだけ五月蝿いとおっしゃいますが、
連絡してもお話が出来ない、代表者と連絡がつかない状態でしたら、今の世の中このぐらい何処の会社もしてますよ。』


さあ、次の機関銃を撃って下さい。

No.144 10/09/25 14:58
しゃけ ( kYyLh )

『こんな
いちいち書き留めたのを
送ってきて、わたしも今日の会話をメモしますからね!!』

都合が悪くなると話を変えてくる。
変わらずだなぁ~

キンキンした声でまくし立ててくるのは止めてもらいたいものだ。

耳が
可笑しくなってしまう。


別に非がないので

『どうぞ、
お書き下さい。』

相手が
冷静さを感じとれるようにゆっくり伝えた。

No.145 10/09/25 15:22
しゃけ ( kYyLh )

『書きますよ!
え~と』

本当に書いてるのかは知らないが滑稽だ。

そして、こんなくだらないやり取りを延々続けない為にアイコは提案を出した。

『一度
お会いしませんか?』

『えっ?』

『遅れているのは事実であり、仕方ないことですが、入金日や分割で払うならその旨を書面にして頂きたいんですけど。
で、今後は書面通りのやり取りを行い、遅れなどある場合のみ連絡を取り合うことにしませんか?
そうすれば、私と話して不快な思いをしないんじゃありませんか?』

『いいですよ。
相談して25日までに連絡します。』

売り言葉に買い言葉なのか案外あっさり了承してきたので、拍子抜けしたが
応じてくれるなら拍手ものだ。


まあ、本当にそうしてくるかは甚だ疑問ではあるが、一歩進めたような気がしてきた。


こんなに簡単に信じてしまうアイコは世の中の理不尽さをあまり体験していないからだろう。

No.146 10/09/25 18:28
しゃけ ( kYyLh )

約束の日まで
約一週間ある。

この時点で今度こそ
本当に守るであろうと考えてしまい、約束の25日まで静観したアイコの甘さが
後々尾を引くのだ。

No.147 10/09/25 18:33
しゃけ ( kYyLh )

一週間、気が気で無かったが、25日まで待った。


【電話したのに出ない】


そう言われるのは癪なので、その日のアイコはトイレにまで携帯を持ち込んだ程、準備万端で掛かってこない電話をひたすら待っていた。

No.148 10/09/25 21:40
しゃけ ( kYyLh )

その状態で夜を迎えたが
やはり掛かってこない。

アイコは
今まで散々な目に合わされたのに、少しでも信用してしまった自分の愚かさが
嫌になってきた。


出るのは溜め息。

人間とは怖い生き物だ。
簡単に人を裏切る。
簡単に嘘をつく。
仕事上の付き合いでこんな人間に出会うとは思いも依らなかった。


ない袖振れないのか
袖はあるが振らないのか
それすらも知り得ない。

1日猶予をみて明後日連絡を取るつもりだが、
もう信用するのはやめだ。

No.149 10/09/25 21:48
しゃけ ( kYyLh )

翌々日、電話をする前に

【録音はどの部分まで出来てるだろう。】
と思い、アイコは再生をしてみる。

何故、直ぐに確認しなかったかと言えば
あまりにヒステリックな彼女との会話に心は荒み、とても再生する気になれなかったからだ。


再生が終わり
アイコは呟いた。


『失敗だ』



録音した部分に

【25日までに連絡する】

が入っていなかった。

こちらの声は録音されないらしいこの機能は彼女の興奮したキンキン声で
溢れており、一度聴いて気分が滅入ってしまった。

No.150 10/09/25 22:08
しゃけ ( kYyLh )

失敗はしたが、終始興奮状態でまともに話が成り立たないことが良く解る内容。


何かいつか使えるかもしれないので、嫌だが消去せず残しておくことにした。


再生を聴いただけで鼓動が速くなった。


大丈夫か?
自問自答。


今までで出会った人間で
一番ヒステリック、そして裏切りの連続。


詐欺師にならないぐらいの巧いやり方。


完敗などするつもりは無いが、関わる度に自分の心が壊れていく。

メビウスの輪は切ったつもりで切れていなかった。

また後退。

溜め息をつきながら
東氏の名前を携帯の画面に出した。

No.151 10/09/25 23:50
しゃけ ( kYyLh )

発信ボタンを押しコールが始まる。

誰に電話をかけるよりも嫌な時間である。


出ない。


コール音が止み
留守番電話に切り替わった。

怒りが込み上げてくるのがわかる。


約束の日に電話もしてこない上、1日猶予を措き電話したのにも関わらず
電話に出ない。


いったい何なんだ?!

No.152 10/09/26 01:10
しゃけ ( kYyLh )

まるでトカゲだな。
尻尾を捕まれても切って逃げ、また生やす。

留守電のアナウンスが早く話せばと言わんばかりに
【ピー】となる。


『猫田です。25日にお電話頂けると思ってお待ちしていたのですが?
必ず連絡下さい。』


尻尾を再び生やし
のうのうと生きている彼らには、留守電ごときでは
響かないだろうが
入れないよりマシだ。

No.153 10/09/26 08:36
しゃけ ( kYyLh )

この留守電に話して待つを何回繰り返しているんだろう。

メッセージを聞いてるのかさえ定かでない。


案の定
その日も折り返しの電話はなかった。

こういう人間は自己を責めたり嫌になったりはしないのだろうか?

人を欺く事に対しての罪悪感はないのだろうか?


心理を知りたい。

いや
真意だ。

払う気があるのか無いのかだ。

前記に巧い詐欺師と書いたが、泥棒に近いものを感じる。


材料も返してほしいが
調べた結果、所有権はお客様にあるらしい。

材料、廃棄代、人件費、そして技術。
これらに対して対価を払わないのだから、泥棒と変わりない。

No.154 10/09/26 08:39
しゃけ ( kYyLh )

結局、電話が無いままだった。
さらに翌々日、電話をしたが、また留守電だ。


同じようにメッセージを入れた。

しかし、折り返しの電話は無いままである。

No.155 10/09/26 08:46
しゃけ ( kYyLh )

さらに2日待ち、今度は
千川氏に電話をしたが、
出る様子も無く、
虚しくコール音だけが
鳴り続けた。

彼ら2人申し合わせていることが目に見えて解る行為に呆れることしか出来ない自分がもどかしく感じる。
こんな話しは世の中に沢山あり
警察に話したところで
民事不介入で終る。

しかし
たとえ残金の入金が無かったとしても只では終わらせたくない。

No.157 10/09/27 08:09
しゃけ ( kYyLh )

>> 156 🍒ガチャピンさん、レスありがとうございます。

男女の話が多いミクルのこのカテの中で、興味を持って頂いて嬉しいです。

稚拙な文章ですが、最後まで書ききりたいと思います。

No.159 10/09/27 09:18
しゃけ ( kYyLh )

>> 158 🍒悩める嫁さんレスありがとうございます。

お互い頑張りましょうね⤴
でも主は少し疲れてしまいました😢

No.161 10/09/27 09:33
しゃけ ( kYyLh )

待てど待てど連絡はないままだ。

8月が終る。

もう一度、千川氏に電話をしてみたがコール音が相変わらず虚しく鳴るだけだ。

そうか。
出ないか。

なら、自宅か。

名刺には堂々と事務所として住所、電話番号、ファックス番号を記載してあるのだから、こちらも堂々と電話出来る。

No.162 10/09/27 09:36
しゃけ ( kYyLh )

>> 160 今、一番大変かと思いますが借金ができる前に頑張って下さい💪 相手が倒産したら取れなくなってしまいます💧 🍒悩める嫁さん再びありがとうございます。

うちも一度10年くらい前に計画倒産されました😢

いっそのこと
この会社も終わってほしいです😞
今はそんな思いです😢

No.164 10/09/27 09:45
しゃけ ( kYyLh )

携帯画面に事務所の番号を出した。

若干手が震える。

意を決し発信ボタンを押した。

数回のコール音の後
千川氏妻が出た。

『もしもし』


『猫田ですが、お世話になっております。』


『あっ、はぁ。』

何とも歯切れの悪い対応である。

最初にこの方も今回の事には関わっていたので話しても良いだろうと判断し、
アイコは話を進めることにした。

先ずは、所在確認。

『すみません、ご主人と連絡がとれない状況なのですが、ご在宅ですか?』

歯切れが悪かろうが何だろうが、
【あなたのご主人が代表を務める会社は酷いです】と伝えたい気持ちもあった。

No.165 10/09/27 09:50
しゃけ ( kYyLh )

『あっ、まだ仕事ですけどう。』

相変わらず
【あっ】が多い人だ。


そして、
最悪なやり取りが始まった。

『お支払いの事でお電話したのですが。』

『主人から聞いてますが、そちらがしつこいようなことを。』

何?
しつこい?
払わないのは誰だ?

疑問だらけだ。

No.166 10/09/27 09:59
しゃけ ( kYyLh )

言わずにはいられなくなったアイコは

『しつこいと仰いますが、お電話に出て頂いて、
冷静に話せて、ご入金予定を確認出来たら、たった一回で済むのですよ』


どうだ?
どう、切り返す?


『何ヵ月かの遅れで
一年や二年遅れた訳じゃないですよね。』


はあ、そうですか。

うちの会社の上がりを使ってる人に言われたくないよ。

『そうですか。
それでは、東さんにもお願いしましたが、今後の事を書面にして頂きたいと伝えて下さい。』

『はあ。』

夫婦揃ってこんななのか?
いい加減にしてくれ。


アイコは苛立ちがあると共に鼓動がおかしくなってきている。

No.167 10/09/27 10:04
しゃけ ( kYyLh )

『もしくは、第三者を入れての話し合いの場を設けて書面作成にして頂きたいのですが。』

『はあ、第三者ですか。
私、弁護士にも警察にも知り合いが居るので』

はっ?
警察?
警察に訴えたいのはこっちなんだが。

『警察ですか?』


風向きがおかしい。

なんなんだ。

No.168 10/09/27 10:13
しゃけ ( kYyLh )

『猫田さん、
前に請求書持ってうちに来ましたよね。』

だから?

『ええ。』


『私は主人の会社とは関係ないのに、玄関で裁判の話をされたりで、気持ちが動揺してしまって。』

で、警察?

『ちょっと待って下さい。奥様は、最初に責任持ってなさると関わってましたよね。だから、私はお話させて頂いたのですが。』

『でも、
娘も聞いていたし。
影響が。』

そうですか。
原因は何処にあるのでしょうかね。

アイコにも中学生の息子がおり、母であるアイコの変化をお見通しだ。

『言いたくは無かったですが、うちにも息子がおり、私の心情を察してます。
同じではないでしょうか?』

No.169 10/09/27 10:20
しゃけ ( kYyLh )

次はどうくる?

『これは、千川とは関係なく私の問題ですので、警察に言うだけです。』

クエスチョンでいっぱいである。

『何を言うのですか?』


『市民相談課に言ってもいいし、警察にも弁護士にも知り合いがいるので。』

脅し??

アイコの鼓動は既にかなりの速さになっている。


『そうですか。解りました。では、書面についてお話しておいて下さい。』


話しても何の進展もなく
脅しまでしてくる人間と
話していると、壊れかけの心がもたないのを感知し
アイコは電話を終わりにした。

No.170 10/09/27 10:23
しゃけ ( kYyLh )

壊れた。
心が壊れた。





息が苦しい。
上手く呼吸が出来ない。
鼓動が速くなっていく。
手は震え続ける。

No.171 10/09/27 10:25
しゃけ ( kYyLh )

異変に気づいたトシが
床に倒れているアイコを抱える。


喋れない。
小さな子供のように大きな涙を流し震えることしか出来ない。





全て疲れてしまった。

No.172 10/09/27 10:31
しゃけ ( kYyLh )

かなりの時間が経った後、アイコはトシに全て話した。



今までにない形相のトシ。


何かしてしまったら
こちらが不利になる。


切れ切れの言葉でアイコは言う。


『トシが…切れて
何か…しちゃったら…
向こうの思う壺だよ…』


『だけど、許せない。
逆に脅してくるなんて。』

『少し………
…様子みようよ』

トシを落ち着かせなければ


合法でやり込めなければ
彼らには利かない。

No.173 10/09/27 10:39
しゃけ ( kYyLh )

🍒悩める嫁さん
ありがとうございます。

私もサラリーマンのほうが…って何回か思ったことあります😞
けど、いい思いも沢山させてもらってきたので、やっぱり旦那を信じて頑張ろうって感じです。

現状はこの会社以外は全て順調なので良いのですが、この会社だけは取れなくても懲らしめてやりたい思いでいっぱいです😱

No.176 10/09/27 15:59
しゃけ ( kYyLh )

🍒私も自営の嫁さん
レスありがとうございます。

自営業ってお給料保証が無いからつらいですよね。

お互い敗けずにがんばりましょうね⤴

No.177 10/09/27 16:02
しゃけ ( kYyLh )

🍒淡護さんレスありがとうございます。


これから書きますが、今、病院通いしています😢😢😢

世の中に理不尽なことって多いですけど、自分が直面するとこんなにも脆いのかと思いました。

でも、負けたくないので
薬を服用しながら頑張ります。

No.178 10/09/27 16:10
しゃけ ( kYyLh )

1日経ってもアイコの体調は戻らない。

勿論、彼らからの連絡もない。


アイコと仲の良い友達からのメールの返信すら辛く感じ、世の中全てが嫌になっている。


『何かあったでしょ。
大丈夫?アイチャンはアイチャンの
ペースで生きていいんだよ。』

感情の無いメールを返したアイコに対して
アイコを想うメールを返してくれた友人。
大切な宝物。


大まかな事は以前話したことがあったので、彼女は察してくれたのだろう。

No.179 10/09/27 16:21
しゃけ ( kYyLh )

メールを読みながらアイコは泣いた。


彼女はパニックと重いウツを持っている。
自分がそうだからこそ
誰よりも心配してくれる。
アイコはメールで返さず
電話することにした。


待ってたよ…と言わんばかりにすぐに出てくれた。

時折泣きながら
全て話した。


『アイチャン、時には薬に頼ってもいいんだよ。
病院行ってごらん。
症状進むとパニックにもなっちゃうよ。』


声にならない声で
頷いた。


『それから、アイチャン。
ウツって間違った事を押し通されると悪いのは自分なんだって追い詰めちゃうこともあるんだからね。』


『うん。ぅん。』


友達って有難い存在だと
心の底から思えた時間であり、久しぶりに溜まっていた塊を出せた。

No.180 10/09/27 16:27
しゃけ ( kYyLh )

夜になりトシが聞く。

『アイチャン、
身体は大丈夫?
もう、東さんとはやり取りしないでいいから
病院行きなよ。』


『今日ね、ゆきちゃんにも言われたから、明日調べてみる。』


心療内科はほとんどが予約制ですぐに診てもらえるとこがあればいいけど…


とにかく
明日、探してみよう。

今は、買い物にも行けない状態であり、自分より歳上であろう女性が怖い。

No.181 10/09/27 16:37
しゃけ ( kYyLh )

翌日、市内の名の知れた心療内科四件に問い合わせたが、どこも予約制で
二週間以上の待ちと言われた。

隣接する市も同様だった。
現代は
こんなにも心が病んでいる人がいるんだと痛感。


どこもだめだぁと悩んでいた時に
ママ友で心療内科に行っていた人が居たのを思い出した。

彼女は【予約制】では無いと言っていたような気がする。

早速彼女が通っていた病院のホームページを開いた。
確かに予約制とは書いていない。

その病院は中堅の内科病院であり、木曜日のみ心療内科が受診出来るらしい。

電話をかけて聞いてみると、やはり予約制では無かった。

友人は予約制じゃないから混んじゃって朝一で行ってると言っていたので、
アイコも木曜日の朝一に行く事に決めた。

No.182 10/09/27 16:42
しゃけ ( kYyLh )

木曜日まであと2日。

アイコの気力は
失せていく一方だ。

動悸も息苦しさも治まらない。


辛い。


きっとそんなアイコを見ているトシも辛いだろう。

しかし、トシは前を向き
未来に向かっていかなければ共倒れするのが解っているから、常に前向きに仕事に取り組んでいる。


アイコは最小限の事務と家事をこなし二日間を乗り越えた。

No.183 10/09/27 19:24
しゃけ ( kYyLh )

気分が堕ちた時に必ず聴く曲。

ケツメイシの【上がる】

アイコは病院に行くのに
リピートにし聴き続けた。

No.184 10/09/27 19:32
しゃけ ( kYyLh )

【上がる】

上がり上がる人間の性
(バイオリズム変えるこのリズムに)
気付くなら(立ち上がれBABY)
上がるか否か今の君のままか
回り回る人間の中
(君のイズム試すこのリズム)
貫くなら(沸き上がれBABY)上がるか否か過去の君のままか

皆立ってる
もう立ち上がってるなら
勝ち上がる為に戦ってく
その道はイバラ
嫌なら今から立ち去れ
負け犬気分は如何
上見たら全くきりがねえ
下見たら成すなく意味は無い

勝ち上がること
まずそれだけを
夢みりゃいいぜ
口だけなら
ただほざいてろ

常胸に夢大志抱いてろ

No.185 10/09/27 19:38
しゃけ ( kYyLh )

今更
傷なめ合う暇は無い
今から直ぐ立たなきゃ
光らない
そう
他でもないお前が
その手を伸ばせば掴める
答えが
ここまでと思えば
成り下がるだけ
足元踏みしめ
拳固め
常に勝ち上がれ
そして成り上がれ

俺らは思う
いつもこれからと
望むしかないならば
声枯らそう
誇り望み
ここにあるヤツが残り
まず立つ勝つ己
立ち上がるここに

No.186 10/09/27 19:43
しゃけ ( kYyLh )

夢追うことに「遅い」は無い
だが立ち上がらなきゃ
お呼びは無し
飛び立て感じろよ
その追い風
立ち上がれ
かませ成り上がるまで

上がるか下がるか今のままか
答えは己の心の中
勝ちつづけるのか
欲に溺れ甘える人の弱さ

気付いた時には
間に合わない
そこのお前が立たなきゃ
始まらない
ああ
気合い入れて這い上がれ
己の力で立ち上がれ

No.187 10/09/27 19:51
しゃけ ( kYyLh )

降りかかる災難も
問題にしない
それだけ
日々
TRY TRY MY LIFE
行き急いだ足取りも
後悔しない
それだけ
日々
TRY TRY MY LIFE

道理不条理
その通りと行儀良く
自分になりきれず揺れる
道理不条理
見極めろ調子良く
自分になるために揺れる
道理不条理
その通りと行儀良く
心揺れ動き震える
道理不条理
見極めろ調子良く
生きるすべ隠しきれぬ
救世主

君は何処へ向かうの
明日に何を望むの
疲れた身体で空をみながら走り出したFARAWAY
視線そらさぬまま
上り詰める意味を語りながら

No.188 10/09/27 19:57
しゃけ ( kYyLh )

この曲を聴くと

負けない!って
いつもなら奮起出来るのだが、今のアイコには
効果がない。

けれども、アイコは奮い立たせたくて何回も聴いた。

リピートが何回目かに
病院に到着。

駐車場に車を停め
目を瞑り先生に伝えたい事を頭の中にまとめた。

8時半から受付開始だ。

時計は8時40分。



行こう…

No.190 10/09/27 23:40
しゃけ ( kYyLh )

>> 189 🍒もなかさんレスありがとうございます。


主人公…心弱いですね😢


主人トシも頼りない…
ですね…描写的に。

No.192 10/09/28 00:54
しゃけ ( kYyLh )

>> 191 🍒まあさん。レスありがとうございます。


まあさんの心暖まるレスに感謝します😢

本当に本当にまあさんの
レスを読んで言葉って
人の気持ちを暖かくさせるってことを実感しました。
ありがとうございます⤴

No.194 10/09/28 08:36
しゃけ ( kYyLh )

>> 193 🍒ぽんぽこさん。レスありがとうございます。


今、感想スレ立ててきました。
アドバイスありがとうございました。

No.195 10/09/28 08:46
しゃけ ( kYyLh )

🍀お知らせ🍀


お読み頂きありがとうございます。


感想スレを立たせて頂き、こちらは自レスのみにいたしましたm(_ _)m


感想等ありましたら
レスお願いします⤴

No.196 10/09/28 10:03
しゃけ ( kYyLh )

簡単な問診票を書いて受付を済ませ、待合室で待っていると、看護師さんに呼ばれた。

今度は
心療内科の問診票だった。
内容は
死にたいと思う時があるか必要な人間だと思ってるか食欲について
お通じについて
など
10項目ぐらいあった。

正直に記入し看護師さんに返した。

予約制では無いので
待ち時間がかなりあったがぼんやり頭に入らないが
テレビを観ていた。


ぼんやりしている内に
時間は過ぎ10時半を回った頃、

『猫田さん、どうぞ』


順番がきたらしい。

No.197 10/09/28 10:14
しゃけ ( kYyLh )

どんな先生だろう…

『失礼します。』


『はい。どうぞ。』

カーテン越しに穏やかな声が返ってきた。

少し安心し中に入り
進められた椅子に座った。
先生は声と同じ穏やかな
雰囲気の方だった。


急かせる様子もなく
穏やかに聞いてくる。


『どうしましたか?』


アイコは全ては上手く伝えきれなかったが、大体の内容を伝え現在の症状を訴えた。

何も口を挟まず
ひたすら聞いてくれた。

それだけでも気持ちが落ち着くような気がしてくる。

不思議だ。



病院に来た安心感からか
関係ない人に聞いてもらった上で否定されないからか。

No.198 10/09/28 10:25
しゃけ ( kYyLh )

アイコが話終わると
先生は
アイコは間違っていないこと、相手が自分が間違っているからこそヒステリックになってしまうことを話してくれたのだ。

東氏にはヒステリックに責められ、奥様には警察や弁護士と言われ、自分は正なのかと問いていた部分があったので、先生の話はアイコを落ち着かせる。


そして
これ以前に同じような症状が出たことは無かったかを聞かれ、ここまでではないが、19歳が最初だったことを伝えた。

原因は家族不和。


それも先生は穏やかな表情で聞いてくれた。

No.199 10/09/28 10:31
しゃけ ( kYyLh )

当時不和だった家族との現在の付き合いを聞かれた。

アイコは結婚し
少し距離を置いたので
あの頃程でないことを話す。



話している間にアイコは思い出していた。
あの頃の自分を救ってくれたのはトシだった事を。



あの頃からアイコはトシに気持ちを支えられている。



信頼できる親友であり
同士であり
愛がある。


どちらかが欠けたら
転んでしまう2人だ。



自然と涙が出てきた。

No.200 10/09/28 10:36
しゃけ ( kYyLh )

『先生、私、あの人達に敗けたくないんです。
裁判所に行くことがもしあっても、頑張れるようになりたいんです。』


涙を拭きながらアイコは力説した。


先生はうんうんと頷きながら
問診票をチェックしながら夜は寝れてるか
食欲はどうか
色々尋ね、先ずは体調回復を促してくれた。

No.201 10/09/28 10:43
しゃけ ( kYyLh )

口頭での体調チェックは終わり内科検診のように
血圧・脈拍を計り、心音チェックをした。


『今は少し落ち着いている感じだね。』


『精神を安定させる薬と
眠れて食欲をだす薬をだすからね。』

二種類、内服薬がでるようだ。


『二週間後にまた話そう。今日はいいですよ。』


こうして
心療内科初受診は終った。

心療内科の医師と話したのは初めてで他の医師を知らないが、とにかく来て良かったと思いながら診察室を後にした。

No.202 10/09/28 17:13
しゃけ ( kYyLh )

会計を済ませ、薬局で薬を受け取り車に乗り込む。

個人の病院以外の心療内科は三分診療なのかと思っていたので、ちゃんと時間をかけ診療してもらったことへの安堵感があった。


家に帰って薬を飲もう


車のエンジンをかけ走り出した。


運転しながら
やはり考えるのは彼らに対しての事だ。

No.203 10/09/28 17:24
しゃけ ( kYyLh )

警察や弁護士を出されたことに対して、何か落ち度があったただろうか?

見解の相違以外アイコには
考え付かない。


組合かあ


漠然と頭に出てきた。


建設業界には幾つかの組合がありそのうちの一つに組合員として加入している。

種々の相談に乗ってくれ
その中に未払い相談もあった。

No.204 10/10/02 08:57
しゃけ ( kYyLh )

組合に相談してみよう。

アイコは自分が間違った事をしたのか、きちんと第三者に教えて欲しかった。

自分を追い込む何かから逃げたかったのだろう。

組合には
相談したとこで、法曹の人間は居ないが、場合によっては組合から紹介を受けれる。




アイコはトシに電話で組合に相談する事を告げた。


アイコの身体を心配し、時間を置くことを提案してきたが、【警察弁護士】と言う理不尽な話しに潰されそうな事を伝え、トシを納得させた。

No.205 10/10/02 09:17
しゃけ ( kYyLh )

翌日、話す内容を頭で整理し、電話をかけた。


直ぐに男性がでた。

『はい、○○組合△△支部です。』


組合員である事を伝え、
未払い相談の事を話すと
電話は担当者へと繋がれた。


『はい、お電話かわりました。未払いの件ですね。
先ずは、相手先を教えて下さい。』


事情聴取並みの電話のやりとりは30分続き、殆ど今までの彼らとの駆け引きを話しきった。

『大体の事は解りました。え~と事務所にはこれますか?』


そう聞かれ、担当者とアイコの都合が付く日を消去法で決めていくと、翌日しかないことが解り翌日伺う事にした。

No.206 10/10/02 09:31
しゃけ ( kYyLh )

事務所に行く為に、今まで彼らに送付した書類を全てパソコンからプリントアウトし、ファイルに挟んだ。
彼らの名刺二枚もしっかりファイルに挟む。

明日の準備は万端だ。

No.207 10/10/02 09:43
しゃけ ( kYyLh )

病院に行けば心が治る訳じゃない…
治るように自分も行動しなければ…

トシは相変わらず忙しく飛び回っている。
過去の彼らや40万に拘り構っている余計な時間などない。

じゃあ、誰がやる?


アイコだ。
このわたしだ。

アイコにはトシの様に仕事を引き込む力も魅力も技術も信用もない。
トシのように二千万三千万と作り出す能力もない。
トシの仕事を代わる事はアイコには不可能だ。
だが、代理で彼らと闘う事は可能である。


出来る限りは自身が動き、肝心要な時にトシには動いてもらえれば良い。


事務所側も代表者の相談でなくとも、経理担当で良く話を理解しているアイコが伺うことを了承してくれている。

アイコは明日は心に突っ掛かった物体を取り除けたら良い。

ただそれだけを願っていた。

No.208 10/11/09 12:57
しゃけ ( kYyLh )

翌日約束の時間に事務所に行く。

多少の緊張はあるが用事があれば訪れる場所なので
ドキドキはしない。

玄関をくぐり真正面が
庶務などをする事務所だ。
ドアは開いていた。

『おはようございます。』
事務員さんらしき女性が気付きアイコに近づいてきた。

『おはようございます。
えっとどうしましたか?』

『未払いについて
君津さんにご相談があって参りました。』

『はい、
お待ちください。』

女性は内線で担当者を呼び出している。

その間、頭の中を整理する。

そうこうしているうちに
二階から誰かバタバタと降りてくる音がした。

No.209 10/11/09 13:02
しゃけ ( kYyLh )

振り返ると、

年配の穏やかそうな男性がいた。

『すみませんね、会議が長引いちゃったもんで。
じゃ、二階の会議室で話しましょう。』



二階に上がると、まだ終ったか終わってないかという感じで書類を持っている人やまだ話を続けている人が何人もいた。


君津さんはその中の一人に声をかけ

『一緒に話を聞いて』

と告げた。


同じく年配の男性である。

No.210 10/11/09 16:37
しゃけ ( kYyLh )

二人の対面の席を進められ、話が始まった。

先ずは、昨日の電話で話したことを順を追って確認する。

アイコは頭に引っ掛かっている【警察・弁護士】の事を確認後に尋ねた。


『何も悪くないでしょう。まして、奥さんも最初に関わっていた訳だし。
債務者ってのは、難癖つけたり、逆ギレしたりするんですよ。』

第三者に間違ってなかった事を確認できアイコは突っかえがとれた感じだ。


そして
担当者がもしかしたら
この会社がうちの組合員かもしれないと問い合わせに一階に行った。

組合員なら話が早いのになと思いながら、もう一人の担当者と雑談をしていると、

『組合員じゃなかったよ。』

と、君津さんが帰ってきた。

軽い望みはすぐに
消えた。

No.211 10/11/09 16:56
しゃけ ( kYyLh )

『さて、どう手を打つかだね。』

『ちゃんとした法人なら
苦労しないけど、手強いなあ。』

『我々が訪問しても、それじゃあ埒が空かなそうだし。』

『ですね。』

『配達証明つけたって
ギリギリまで取りに行かないんだもんなあ。』

『支払督促か少額訴訟しちゃいましょう。』


はぁ
やっぱりそれしかないかぁ
内心、組合でもっとガツガツ行ってくれると考えていたので拍子抜けした。

No.212 10/11/09 17:17
しゃけ ( kYyLh )

『組合でどちらかした方
いらっしゃいますか?』

相手の顔が曇った。


『うちの支部では、今まで個人で四件ですね。』


『それで勝敗は?』

『結局、取れたのは
一件でした。』

顔が曇る訳だ。

『そうなんですか。』

アイコの顔も曇った。

『個人のほうが図々しいんですよ。
でも、やらないよりやったほうがいいですよ。』

その後
支払督促と少額訴訟の説明を受けたが、殆どリサーチ済みだったので
相槌を打ち、特に質問もせずに終った。

No.213 10/11/09 17:20
しゃけ ( kYyLh )

収穫といえば
いくら相手の奥さんが
【警察・弁護士】と騒いでもこちらに非がないことが解った事と
支払督促や少額訴訟をおこしてもあまり勝算は見込めないということだ。

No.214 10/11/09 23:11
しゃけ ( kYyLh )

ネットで調べてみても、確かに勝訴したとこで払ってもらえない、強制執行する物がないと泣き寝入りしている人がかなりいる。


アイコは以前話した司法書士との会話を思い出した。


不動産だ。


猫田板金は振り込みを受ける立場な故に相手の口座が解らない。



だから
押さえるとしたら
不動産。


登記簿謄本を取得しなければ…

No.215 10/11/10 00:13
しゃけ ( kYyLh )

色んな人の体験談をネットで見てるうちに、
登記簿もネットでオーダー出来ることが解った。

勿論、他人の登記簿が取得出来るのだ。

考えると怖い世の中だが
今の状況では使える世の中である。

色んなサイトがある。

どれが信用出来るのか解らない。

値段の開きもある。

家屋番号と地番が不明の為、調査してくれる会社を探した。

No.216 10/11/10 00:29
しゃけ ( kYyLh )

価格も手頃で調査もしてくれる会社を選び、早速入力ページを開いた。


他人の登記簿を取り寄せる事に対しては罪悪感があるが、彼らの態度を思い出すと罪悪感の欠片さえ無くなっていく。


項目を埋め送信した。


個人情報が騒がれている昨今で、こんなことがネットで出来るなんて不思議だ。
不思議だが便利で良い。
まぁ我が家が赤の他人に同じようにされていたら、きっと心中穏やかではいられないだろうが。

No.217 10/11/10 08:02
しゃけ ( kYyLh )

2~3日で届く筈の登記簿が届かない事に1週間ぐらいたってから気づいた。


何か不具合でもあったのだろうか。

こちらから問い合わせるのがとても面倒に感じたアイコは、何の連絡もしてこない杜撰な会社は放っておくことにした。

いつもなら、メールなり電話なりで問い合わせるのに、問い合わせる気にもなれない。

何故かといえば
いい加減な奴を相手にするのがもうウンザリだから。
今後、送られてきたとしても料金は二千円から三千円と諦めもつく金額。


あ~面倒くさっ。

彼らが、さっさと払ってくれないから余計な労力と金銭を使う。

ムカムカしながら
ネットを開く。

もうダブってもいいから
違う会社に依頼しよう。


彼らに痛い目を味わってもらう為には前進しなければならない。

No.218 10/11/10 08:11
しゃけ ( kYyLh )

同じように調査もしてくれて、価格も手頃な会社を選び必要事項を送信した。

今度は頼むよ…

相手から自動送信で入力した内容がメールで送られてきた。
ここまでは、前回の会社と同じだ。

いつまでもパソコンに引っ付いている暇はないので
画面を閉じ、用事があるので出掛けた。


運転中に携帯が鳴る。

まさか
彼ら?

そんな訳ないか…

携帯のウインドウには
知らない番号。

固定電話からだ。

No.219 10/11/10 08:20
しゃけ ( kYyLh )

『はい』

出てみた。


『こちら、登記簿取得会社のネクストですが、猫田様ですか?』

さっきの会社だ。

ん?不都合?

『はい、そうです。
何かありましたか?』

『はい、この度はありがとうございます。
それで、猫田様が入力されたお名前の方と登記簿上では別人なんです。』

???

ヤツ、持ち家じゃないの?

『あの、土地も違うんですか?』

『ええ、土地も違う方みたいなんです。』

『じゃあ、現在の所有者は誰なんですか?』


土地も家も本人名義ではないなんて。
50近いのに…

もしかして奥さん名義なのか?

No.220 10/11/10 08:29
しゃけ ( kYyLh )

誰の名義だ?


『法務局のほうに、こちらから何様と聞く形で
法務局側から何様ですとは教えてもらえない仕組みになっていて、どちら様かはまた調査になってしまうのですが。』

『そうですよね。』

『調査は続行出来ますが、空振りの場合でも調査費のご請求が発生してしまうんです。』

それはそうだ。
生業としてやっていれば
当然の話だ。

『そうですよね。
では、誰か解りませんが、その地番・家屋番号の登記簿を送ってもらっていいですか?』

例え本人名義でなくても
見てみたくなったし、
自分の目で確認したかったのだ。

『解りました。
取得して、すぐにお送り致します。』

『よろしくお願いします。』

No.221 10/11/10 09:09
しゃけ ( kYyLh )

疲労感。

疲労感。

疲労感。


何も持ってないのか?

車のナンバーも県外ナンバーだと聞いた。

車はナンバーが解れば
所有者を調べるのは簡単だ。

とっても仕方ないような
ボロらしいが。


口座を調べる方法。

違法。

合法。

違法と言われることには
関わりたくない。

とりあえずは
メール便でネクストから
登記簿が届くのを待ってから考えることにしよう。

No.222 10/11/10 16:22
しゃけ ( kYyLh )

メール便が届くまで
どうせ出ないと解ってはいるが、電話を毎日してみることにした。

予想通りコール音のみで
一向に出ない。

どこまでも人の道から外れている。


ふと
もう一台の携帯を出し
千川氏にかけてみた。

東氏はこの携帯で話してしまったので登録されてしまっているかもしれないが、千川氏とは話したことはない。

もしかして
もしかしたらだ。

No.223 10/11/10 16:32
しゃけ ( kYyLh )

10コール鳴らしたが出ない。

ダメか。


いや警戒して最初は出ないのかもしれない。


もう一度かけてみた。


ビンゴ。


出たのだ。


アイコはしてやったの顔である。


『はい。』


フンと思いながら


『猫田ですけど。』


『あっあーどうも。』

焦ってるのが伝わって滑稽だ。


『すみませんね。今回は』

ん?低姿勢だ。


『いえ、あのですね、お支払い出来ないなら、分割で書面にして頂きたいと東さんに伝えたのですが、連絡が取れなくて困ってるんですが。』


『そのことなんですが、
月末にいくらかまとまって入るんで全額は無理でも
半分の20万ぐらいならお支払い出来るんで、明日また電話しますよ。』

また、でまかせか?

『じゃあ明日
お電話お待ちしています。』


ちゃんと
電話してこいよ。

こいつら詐欺師並みに口が巧い。

どうせかけてはこないだろう。

No.224 10/11/10 17:06
しゃけ ( kYyLh )

翌日、予想通り電話はこなかった。

腐ってる。


東氏の留守電にメッセージを入れようと電話することにした。


出ることはないだろうと考えかけたら
思いの外

『はい。』


げっ出たのだ。

No.225 10/11/12 08:03
しゃけ ( kYyLh )

出たからには話そう。

『先日、千川さんからお金の都合がつくのでお電話頂ける筈だったのですが、
お電話なくて』

『すみません。
そうなんですよ。今月末前に入金出来ると思いますから。迷惑かけてしまって
すみません。』

ん?
やけに低姿勢だ。
今回は信じていいのか?
今月末まであと20日強。

どうなんだ?


『解りました。
では、もしも不都合が生じて入金が無理になったら
連絡下さい。』

『解りました。ご迷惑おかけします』

『宜しくお願いします。』

No.226 10/11/12 08:12
しゃけ ( kYyLh )

何か低姿勢過ぎて気持ち悪い。

これは長引かせる作戦なのか?
本当に払う気があるのか?
アイコには量りきれない。

せっかく払う気になっていたら、これ以上の催促は
彼らの気持ちを変えてしまうかもしれない。

今は猫田板金もキャッシュフローに余裕がある。
待つことは可能だ。


何回も騙され、逆ギレされ電話も無視された状態にされたが、最後にもう一度信じてみることにした。


甘いのかもしれないが、
人間は疑ってばかりでは
心が荒む。

既に荒んだ心に光を入れる為に信じたかったのかもしれない。

とにかく、20日強だ。

待ってみよう。


それでも裏切られたら
今度こそ動こう。


アイコの腹は決まった。


アイコの考えをトシに伝え、
トシも同意した。

No.227 10/11/12 08:20
しゃけ ( kYyLh )

あの電話の2日後に
登記簿取得会社ネクストからメール便が届いた。


開封するにあたって、
他人の秘密を盗み見するような気持ちだ。

何とも言えない気持ちで
封を切る。


請求書と共に二枚の登記簿のコピーが添えられていた。

二通で4500円。
自分で行けば印紙代の2000円で済む。

しかし、相手住所の法務局までは、往復二時間半かかるので、手間を考えれば
高いとは感じない金額である。

便利な世の中だ。

No.228 10/11/12 08:28
しゃけ ( kYyLh )

さて、肝心の登記簿はと言うと、確かに全くの別人の所有であった。

土地・家屋共に同一人物だが、彼らの所有では無いことが、この紙切れで容易に解る。

例え、強制執行まで漕ぎ着いたとしても
強制執行にかける物がなくなった。

やはり銀行預金か。

彼らの売掛金を押さえる方法もあるが、これはお客様も絡んでしまうので
あまり気が進まない。

取られる物がロクにないから、彼らは強気なのか?

またまた疲労感でいっぱいになる。

もう、どうでもいいような気持ちにも襲われる。

いっそのこと
無かった事にして
関わるのを止めてしまいたい。

No.229 10/11/12 09:58
しゃけ ( kYyLh )

売掛金の時効は二年。

彼らは逃げ通すつもりか。
二年と言えば
あと一年半だ。

あの態度では
やりかねない。

歩み寄ったり
離れたりして、のらりくらりと逃げる。

【払わない】とは
決して言わない。

巧妙な詐欺師を相手にしているとしたら
法に訴えても無理なのか。

月末に入金がなければ…


考えるのも疲れる。

No.230 10/11/12 10:01
しゃけ ( kYyLh )

全て投げ出したい。

だが、こんな奴らを無罪放免にし野放しにしておくのは癪だ。


最後に信じることにしたが、裏切られた時の事も
考えなければならない。


以前、相談し登記簿取得を勧めた司法書士事務所に電話してみることにした。

No.231 10/11/12 10:09
しゃけ ( kYyLh )

電話口で事の経緯を説明した。

『取れる物が無いのでは強制執行は無理ですね。』

気持ちの入っていない声が電話口から聴こえてくる。
アイコの気持ちは一気に引いた。

この司法書士の
ホームページには
【市民の味方】なんて
良いことが書いてあるが、

…なんだこんなもんか…


所詮、司法書士も金儲け。
お金にならない仕事は
気持ちも入らずか…

がっかりだ。


債権額が少ない事も
司法書士のやる気を削いだのだろう。


かなり前にドラマであったカバチタレみたいな書士なんていないんだろうなぁと、失笑し電話を切った。

No.232 10/11/12 17:10
しゃけ ( kYyLh )

それからアイコはもう一件電話した。


今度は、債権回収のみを生業にしている会社だ。
以前も同じような会社に電話しているが、今回はどういうやり方で回収するのか具体的に聴く為である。


同じように事の経緯を話す。

そして、もしも依頼するとしたらどのようにするのか聞いてみた。


『関係ない第三者が金払えって行っても、違法だ何だって騒がれる可能性が大きいんですよ。』

なるほど。


『そこで、私共の担当者とお宅の会社で契約を交わしてお宅の人間になって
行く訳です。』

なるほど。
なるほど。



『相手はかなり図々しくて、おまけに心的圧迫とか
言って警察や弁護士を出してくるんですけど。』


『あなたね、あなたは債権者。強気で行かないと。
警察弁護士結構結構呼んでもらいましょう!ぐらいの勢いでいいんですよ。』


『そうですね。』


『それにね、警察を仮に呼ばれたとしても、民事不介入だし、払わないほうが悪いってなりますから、大丈夫ですよ。』


そうか
怯むことは無かったんだ。

No.233 10/11/12 17:18
しゃけ ( kYyLh )

『もし
依頼するとしたら…』

『いや~受けませんよ。』

何だ?
債権額が少ないからか?


『それは債権額が少ないからですか?』


『それもあるけど、我々
着手金で15から30万頂いちゃうから、自分で少額訴訟や支払督促しちゃったほうがいいですよ。』


『ですよね。
こんな少額じゃ儲かりませんもんね。』

嫌みではなく
確かにそうだと思った。


『でも、私、
こんなにのらりくらりされて逆ギレされて嘘つかれて懲らしめてやりたい気持ちでいっぱいなんです。』


電話は30分は続いたであろう。

相手は商売にならない相手なのにちゃんと話しに付き合ってくれている。

さっきの司法書士より
親身に聞いてくれているのが伝わった。

No.234 10/11/12 17:24
しゃけ ( kYyLh )

『相手は男性と女性って言いましたよね。
それで、
担当は女性ですよね。』


『そうです。
すぐ逆ギレしてキーキーするんです。』


『昔からね。この業界は女には金を貸すなって言われてるんですよ。
それだけ、女性相手は面倒なんですよ。
都合悪くなると
喚いて怒って話しになりませんからね。』


うわっ
確かに。
都合悪いと逆ギレは当たり前。
自分は常識外れなのに
お構い無し。
嘘をつく。
終いには電話すら出ない。

『納得です。』


『まあ、とにかく
少額訴訟や支払督促してみて下さいよ。
いくら図々しくても
少しは動揺しますよ。』

No.235 10/11/12 17:31
しゃけ ( kYyLh )

『あっそれとね、
うちに電話相談してくる人の六割から七割の人が
お宅さんのように
お金より懲らしめてやりたいって人ですよ。
それだけ、世の中に払わない人間がいるんですよ。』

『今、多いんですね。
うちももう全額は無理って思っていて、懲らしめてやりたいが一番です。』


『いつでも相談電話は大丈夫なんで、相談して下さいよ。
あっでもね、同業者で
危ない会社もあるから
気をつけて下さいよ。』

あっ
やっぱりあるんだ。
この会社はどうなんだろう。

かなり長電話をしてしまったが、
まぁ、自力でやってみるかって気になってきた。

No.236 10/11/12 18:08
しゃけ ( kYyLh )

見ず知らずの人に
激励され少しやる気になった自分が可笑しかった。



支払督促ならなんの証拠資料も要らなく、
一方的に督促出来る。

但し、相手が異議申し立てをしたら通常訴訟に移るのが難だ。

支払督促と同時に
次の展開を予測しなければならない…

漠然とそう考えていた。


異議申し立てが無くとも
そのまま進んで
強制執行になった時の事も頭に置かなければ。


司法書士や弁護士に頼むと着手金や成功報酬が発生する。
だいたい着手金五万以上
成功報酬一割が主だ。

調べた限り
自分で申し立てれば
四千円弱で済む。

No.237 10/11/12 18:14
しゃけ ( kYyLh )

何より、親身になってくれる法曹の人物を探すのが
面倒である。

それに
電話をした司法書士のような思いはしたくない。

ネットの画面上では
良いこと書いてあっても
結局は大して儲からない仕事に力は入らないのであろう。

No.238 10/11/13 00:52
しゃけ ( kYyLh )

支払督促をしたとこで、払うとは限らない。

自分で申し立てをしよう…

通常訴訟に移るかもしれないから、お客様にご挨拶がてら探りも入れなくては…
そんな事を考えながら
カレンダーを眺めていた。

もうすぐ月末。


彼らからは何の連絡もないままだ。

No.239 10/11/13 00:55
しゃけ ( kYyLh )

迎えた月末。


ネットで入出金を確認したが、彼らからの入金は無し。



電話は片方は一向に出ないでコール音。
片方は留守電。


トシの携帯でかけても
もう一台の携帯でかけても同じ。


試しに
友人の携帯でかけてみた。

出るから笑えた。

No.240 10/11/13 01:04
しゃけ ( kYyLh )

少し無言にしてみた。

不審そうに
『もしもし』と女の声が聴こえてくる。


『猫田ですけど。』


『あら、今晩は。』


バカなのか?
真剣にそう思った。


『私の電話には出ないし、入金もなく、電話もしてくれないんですかね?』


『#£%#&』

キーキーキャンキャン言ってて聞き取りにくい。


面倒な人だ。


『不都合があったら電話してくれる筈じゃなかったんですか?』


『奥さん、それは&#%£%£』


また、キーキーキャンキャンだ。


しかも

『明日、相談してかけ直します。』


ガチャン…


何者?
日本語話せよ。


話しにならない電話で終わったが、明日の予定が埋まった。



裁判所だ。

No.241 10/11/15 08:25
しゃけ ( kYyLh )

支払督促には特に証拠資料はいらない。


相手が法人なら登記簿が必要なぐらいで、後は住所をしっかり把握しておけば
申し立てが出来る。


トシには申し立てをする事を告げ、明日の予定を聞いたが相変わらず忙しいので
アイコ一人で行く事にした。

明日、連絡すると言っていたが、そんなのはもう当てにしない。

連絡を待っても無駄に一日が終るのが手に取るように解るからだ。


アイコは彼らの事のみ記入している手帳と彼らの名刺をバックに入れ準備を終える。

No.242 10/11/15 08:39
しゃけ ( kYyLh )

翌日の午前中。

車に乗り込みナビを相手の住所を管轄する簡易裁判所にセットした。

往復二時間半。


運転中に
携帯のコール音が鳴る度に心臓がドキッとする。

もしかして
彼ら?

そう思いながら
携帯のウインドウを見ると違う。

何故かその日は電話が多く、その度にドキッの繰り返し。


違うと解ると
掛けてくる訳無いかと
少し落胆な部分もあるが
今、掛けてきたとしても
裁判所への申し立てを続行する気持ちは揺るがない。

そんな思いの中
到着した。


車の中でタバコに火をつけ裁判所に行き来する人達をぼんやり見ていた。

50台ぐらい入るであろう
駐車場はほぼ満車状態。


これだけの人が何らかの形で法に関わって頼ったり闘っているんだ。


そんな事を考えながら
火を消した。



アイコは眼に力を込めた。



行くか。

No.243 10/11/15 09:36
しゃけ ( kYyLh )

裁判所の玄関をくぐり立ち止まった。

意気込んで行ってはみたものの勝手が解らないからだ。


右手の階段の近くには
弁護士の待機室があり数人の弁護士らしき人が見えた。

聞ける雰囲気の人も見当たらず案内板を見ることにした。

二階に法廷があるらしい。

支払督促の申し立ては
一階である。

ガラスの両開きドアの向こうだ。


市役所を思い出す雰囲気だなと思いながら
受付らしき場所に行き
申し立てをしたい事を告げた。

No.244 10/11/15 10:32
しゃけ ( kYyLh )

受付は感じの良さそうな女性。


改めて辺りを見回してみてもやはり市役所みたいな雰囲気だった。


あちこちに興味が沸き
見渡していたら受付の女性から質問がきた。

『印紙や切手などは
ご持参されましたか?』


『いえ、何も。』

そういえば、駐車場のもっと向こうに印紙販売所みたいなとこがあったなぁと思った。

女性はマニュアルのような用紙と申し立ての用紙を用意してくれ説明してくれた。


40万に対しての印紙は
2000円。

その他に
1130円分の切手。
郵便ハガキ一枚。
長形3号封筒二枚。

No.245 10/11/15 11:33
しゃけ ( kYyLh )

記入する用紙は三枚。

支払督促申立書
当事者目録
請求の趣旨及び原因


受付の女性は
三枚の記入方法を丁寧に教えてくれた。


法人ではないので
代表という言葉は使わないこと。
○○会社【こと】
○○ ○
と債務者情報を記入する事など

知らない事ばかりだ。

知らなくて一生済めば
それで良いことだが
何だか勉強になるなぁと思いながら説明を聞いていた。

彼ら以外
ここにお世話になることなく、生涯の仕事を終わりにしたいものだ。

No.246 10/11/15 13:08
しゃけ ( kYyLh )

印紙販売所がお昼休憩にはいってしまうので
記入前に購入を勧められた。

女性にお礼を述べ
裁判所から少し離れた購入所へ徒歩で向かう。

周りを見ると司法書士事務所や弁護士事務所などが何軒もあることに気付いた。

本格的に頼むなら
この辺の事務所のほうが都合がいい。

さりげなく目に止めながら印紙販売所まで歩く。


こんにちはと入っていくと慣れた感じの女性が
いらっしゃいませと
受注用紙を手に取り
出迎えてくれた。


言われた通りの
印紙・切手・はがきを注文し、長形封筒は販売しているか尋ねると
これも、慣れた言い回しで道路向こうの信号の角に
文房具屋さんがある事を
教えてくれた。


『お世話様でした。』

女性に一礼し
今度は文房具屋さんへ向かう。

No.247 10/11/15 13:14
しゃけ ( kYyLh )

同じ場所で済めば時間短縮なのに。
そう思いながら歩いたが
解っていて用意していないんだから仕方ないかと気を取り直し、背筋を伸ばし
文房具屋さんを目指した。

裁判所を挟み
右側の印紙販売所と
左側の文房具屋さん。

もたもたしていると裁判所もお昼休憩に入ってしまうので歩くスピードを早め、目的の長形3号封筒を購入し裁判所へ戻った。

No.248 10/11/15 13:22
しゃけ ( kYyLh )

裁判所で用紙を記入する机を借り
間違えないように
かつ迅速に記入していく。

用紙に彼らの会社名や名前住所を書くのに
イラつく。


本来なら活字にもしたくない名前だからである。


こんな事をしても
無意味に終るかもしれない思いも混ざる。

そんな思いの中に裁判所から送達された時の彼らの
気持ちを想像してみた。

驚くか

何とも感じないか

連絡してくるか

意義申し立てをするか


さて
どれだろう。

意義申し立てをしてきて
通常訴訟へ移行すれば
対面だ。

それはそれで良いだろう。

だが、その時はこちらも準備しなければ。

No.249 10/11/15 13:27
しゃけ ( kYyLh )

送達後、意義もなく
何の連絡もなければ
二週間後に
仮執行宣言の申し立てをする。
それでも意義がなければ
強制執行だ。

これも
何に強制執行するか
準備が必要だ。


何にせよ
厄介である。


本当に嫌になるくらい
厄介だ。


強制執行でかけるものは
裁判所では調べてくれないので自力で調べなければならない。

個人保護法の世の中で
何処まで調べられるか
難しい話である。

No.250 10/11/15 13:40
しゃけ ( kYyLh )

そんなことを考えながら
用紙を記入し

ハガキと封筒にこちらの宛先、
もう一枚、封筒に彼らの宛先を記入し
全て終えた。


そして
先程の受付女性のところへ行った。

女性は時計をチラッと
見ると

『お昼になりますので
今、私がチェックし
午後、書記官からまた書類についてのお話になりますが、よろしいですか?』

これは
はいとかし言いようがないでしょと思いながら
答えた。


『はい、大丈夫です。』


女性のチェックは一通り終わり
最後に遅延損害金について聞かれた。
空欄のままにしておいたらだ。

請負工事の場合
年率6パーセント。

どうでも良かったから空欄にしておいた。

『他の方は請求されてるのでしょうか?』

質問してみると


『様々ですが、請求される方のほうが多いですね。』

『じゃあ、
一応請求します。』


そして
空欄に【6】の数字を入れた。


無駄足になる予感がするから、どうでも良いことになってしまったのだろう。

No.251 10/11/15 13:46
しゃけ ( kYyLh )

『午後、書記官からお名前が呼ばれますので
ロビーでお待ちになっていて下さい。』


『宜しくお願いします。』
席を立ち
裁判所の玄関から外に出た。

秋晴れの気持ちの良い日。
車に向かって歩いていると無性に喉が乾いていることに気付いた。

精神安定剤のお陰で
声や手の震えは出なかったが、緊張していたことには変わりなかったらしい。

コンビニに行き
お気に入りのコーヒーを買い車の中で一服した。


お腹は全く空いていない。


一服しながら
ナビを検索する。

No.252 10/11/15 13:55
しゃけ ( kYyLh )

検索先は問題の現場。

ここから
約20キロ。

この帰りに寄れない距離でもない。

アイコは
時間があれば現場のお客様のお宅へ寄ろうと考え
予め、手土産も用意していた。
地元有名和菓子だ。
しっかり賞味期限もチェックし、今日が時間が無かったら明日にでも伺おうということである。

距離があるだけに
時間の無駄にならないように、やはり今日伺おう。


在宅していなかったら
それは仕方ない。


お客様に構えられないように、電話はしないで
直接伺う事を考えていた。

No.253 10/11/15 15:48
しゃけ ( kYyLh )

一服し、ナビを検索したり考え事をしていると
あっという間に時間は過ぎた。

裁判所の昼休憩は45分間だった。

もうすぐ
始まる。

戻らなければ。

車を緩やかにスタートさせた。

No.254 10/11/15 16:04
しゃけ ( kYyLh )

時間丁度に戻り
5分位椅子に座って待っていると

『猫田さんいらっしゃいますか?』

『はい。』

書記官らしき人に呼ばれた。
両開きのドアを潜り 挨拶をして座った。
らしき人ではなく 正真正銘の書記官だった。

見た感じ裁判所のらしからぬ感じの事務のおじさん。
見た目は関係ないが 何はともあれこの方が導いてくれる。

No.255 10/11/15 16:08
しゃけ ( kYyLh )

『え~とですね。 大体大丈夫ですね。』
『直すとこは特にはないです。』

ホッとした。

『後はこの二枚の用紙を 各々三部コピーしてほしいんですね。 コピー機は二階にありますから。』

『はい。行ってきます。』
一人で行こうとしたら 書記官が二階まで案内してくれた。
市役所の人間より親切かもなんて思いながら ついていく。

では…と書記官は先に下に降りていった。

二階には法廷がある。
コピーし終わった後 少し興味が沸き 近くまで行ってみた。
法廷ごとに 原告 被告人 代理人とA4の用紙に書かれ張り出されていた。

早く戻らないとと思い
よくは見なかったがあまり重々しい空気は流れていなかったように感じる。

実際、自分の事なら
重いのだろう。

所詮、他人事だ。

No.256 10/11/16 12:04
しゃけ ( kYyLh )

書記官のところに戻ると
忙しそうに違う仕事に取りかかっていた。


声をかけようとしたアイコに気付き、ホチキスを持って寄ってきた。


印紙を貼ってある申立書を一番上にし綴っていく。

当たり前だが手際が良い。

『では、ここの余白に
印鑑を押して終りです。』
『こちらから発布すると
債権者、つまりあなた側に発布したというハガキが届きます。』

『以後は事件番号がつきますから、問合せの時は事件番号で担当書記官までお願いします。
私が担当になるか、まだわかりませんので、通知書を確認してください。』


事件番号
何かカッコイイ
あっ聞かなければ

『仮執行宣言をする時は
相手が意義申し立てをしたとかは解るんですか?』

『担当書記官から連絡がいきますよ。』

『ありがとうございました。宜しくお願いします。』

一礼して席を立った。


今、色々聞いても
相手の出方次第で方向が変わる。
後は、彼らの動向を待ち
臨機応変に動こう。

そして、裁判所を後にした。

No.257 10/11/16 12:08
しゃけ ( kYyLh )

思ったより仰々しくなく
終った。

思ったより簡単だった。


変な達成感がある。
今始まったばかりなのに
達成感なんて持ってしまってはいけないんだ。


さあ、次の行動をとらねば。


さっき検索した住所をナビにセットし
走り始めた。

No.258 10/11/16 14:02
しゃけ ( kYyLh )

彼ら…特に東氏はお客様のことを良くは言ってなかった。

年老いたお父様と娘さんのお客様。

歳は解らないがお父様は身体が不自由らしい。

娘さんはおそらく仕事でいないだろう。

No.259 10/11/16 14:07
しゃけ ( kYyLh )

東氏が言うには
かなりクレームをつけたり支払いを延期したり
まけてくれと言ってきたりしたらしいが

今となっては、その話には信憑性がない。


入り組んだ住宅地の中に
目指す場所があった。


ゆっくり走行し表札を確かめる。


そこには車が停められないので、通りすぎ
近くに路駐出来そうな場所を見つけ停車した。


笑顔
笑顔
笑顔


バックから鏡を取りだし
笑ってみる。

第一印象は重要なのだ。

No.260 10/11/16 14:10
しゃけ ( kYyLh )

手土産を持ち、お客様宅へ向かった。

もう一度表札を確認し
玄関チャイムを鳴らす。




応答なし。





上のほうで音がする。

見上げるとベランダに
誰か居る。


『こんにちは~』


声に反応して
こちらを見てくれた。

お父様だ。

No.261 10/11/16 14:17
しゃけ ( kYyLh )

不審そうにこちらを見下ろす。


『すみません、以前、屋根の工事をした者ですが、ちょっとお話したいんですが。』


更に不審がられた。


『屋根の工事?』


『そうです。男性と女性2人の会社で塗装もされましたよね?』


上を向いて話しているから首が痛い。

早く降りてきてほしい。


『あぁ。何だっけ。あの女の人は?』


『東さんです。』

もう少しだ。


『その東さんについて
ちょっとお話伺いたいんですが、少し降りてきてもらえませんか?』


周りから見たらアイコは
かなり不審者だ。
笑い事でなく早く降りてきてもらわないと
通報されそうだ。

No.262 10/11/16 14:20
しゃけ ( kYyLh )

『あんた、ちゃんとした人かい?』


『はい。困っている事がありまして、是非お話したいんです。』


『じゃあ、ちょっと降りるから。』


第一関門がやっと通過出来た。

No.263 10/11/16 14:25
しゃけ ( kYyLh )

5分くらいして
玄関の鍵が開く音がした。
『いやね、娘がね、簡単に鍵を開けるなって言うもんだからね。』

お父様…
おじいちゃまかな…

そう言いながら玄関の中に入れてくれた。

先ずはトシの名刺を渡し
ご挨拶をし、手土産を渡した。
手土産に関しては大変恐縮し中々受け取ってくれなかったが、お会いできた事へのお礼も込めてと無理にお渡しした。

このやり取りだけでも
東氏がアイコに植え付けた
人物像と相違していることが解る。

No.264 10/11/16 17:09
しゃけ ( kYyLh )

『それで、
どんな事です。』

ストレートに切り出すか
迷った。
遠回しにオブラートに包むべきなのか。
今、あったばかりだけど
聞かされていた人物像とは違うこのおじいちゃまなら解ってくれるか。

悩んだが
アイコは賭けた
おじいちゃまの人間性に。

No.265 10/11/16 17:20
しゃけ ( kYyLh )

アイコがお客様宅へ訪問した一番の目的は奴らの銀行口座番号を知るためだった。口座番号が解らなくても
使用している銀行支店まで解れば良い。



『お客様にご迷惑をおかけするような事は決して行いませんので、お話を聞いてください。』


アイコは切り出した。


『何があったの?』

穏やかな方だ。


『実は、ここの屋根工事代金の約半分を未払いにずっとされているんです。』


おじいちゃまの眼光が鋭くなった。


『何だって。
同じ職業でそんな事するなんて酷いなあ。』

『今は連絡もろくに取れない状態なんです。』

『うちも途中で2人共、連絡取れなくて、あの男の人の奥さんだって人が来たけど、何だか話にならなくて、まいちゃったんだよ。』

おじいちゃまも腹に据えかねていたのかもしれない。
『その時、こちらも同じでした。2人共、連絡つかなくて。』


まさか、お客様にも同じ対応だったとは。

怒りが込み上げてきた。

許さない。

No.266 10/11/17 12:04
しゃけ ( kYyLh )

『それでさあ、奥さんが来たけど、塗装はいい加減だし、娘が怒って奥さんに電話したぐらいだよ。』

おじいちゃまは穏やかだが鋭く語る。


『そうだったんですか。
うちも連絡が奥さんで大変でした。』


『も~うね、足場は中々外れないし、塗装はいい加減だったし、他にもねえ。』
おじいちゃまは誰にも言えなかったんだんだろう。

『足場が外れないのは
聞いていました。
塗装がやり直しだったのもです。』


『他にも、ベランダは塗装で汚されるし、裏のサッシのところは汚されるし。』

ベランダの汚れ…
猫田がやったかもしれないと逆ギレ女が言ったこと。

『あの、ベランダの汚れはうちがやったかもしれないって、東さんに言われたんです。』

No.267 10/11/17 12:12
しゃけ ( kYyLh )

『違う違う。ペンキがポタポタ落ちた汚れだから!
屋根の人は終った後だったんだから。あんたんちじゃないよ。』


『全く関係ない人のせいにするなんて!
あたしはね、身体が丈夫な時は綺麗好きでね。
ベランダだって何だって綺麗にしていたのに!
落とすって言って何かやってたけど、
落ちきらないし、裏なんて落とすって言って余計に汚くしちゃって、嫌になっちゃったんだよ。』



くそばはぁ~!

一番最初に浮かんできた
言葉だ。

お客様には迷惑をかけたくないので、最後の手段と思っていたが、もっと早く来れば良かったと悔やんだ。

しかし
大嘘つきだ。

No.268 10/11/17 12:19
しゃけ ( kYyLh )

少し言葉に詰まっているとおじいちゃまは続けた。

『うちに来るヘルパーさんも、【おじいちゃん、こんなに汚れちゃってどうしたの】って驚いていたんだから。』


『だけどね、近所の人に
中々足場とれないねえって言われても、あたしは愚痴なんて決して言わなかったんだよ。そういうのは好きじゃないからさあ。
お金だって、払ってくれって言われたら払ったし。』


!?
!?
!?


お客様が払いを伸ばしているような事を奴らは言っていた。


どんどん嘘が見えてきた。

くそばばぁ~を通り越してあの世へ行ってくれとまで思ってしまった。

No.269 10/11/18 17:37
しゃけ ( kYyLh )

更に
おじいちゃまは続けた。

『あたしも娘も腹に据えかねたけど、娘があの男の人の奥さんに怒って電話したぐらいしか、文句だって
言ってないんだら。』


あの女~!

おじいちゃまは変わっていて難癖ばかりつけてきて大変だって言っていた!


『あんたが来て、同じように、嫌な目に合ってる人がいたって解って、話せて良かったよ。』

おじいちゃまの話を聞いていたら涙が出そうだ。

泣く訳にはいかない。

おじいちゃまを心配させてしまう。


『私も今日来て良かったです。東さんに言われた事を鵜呑みしないで、もっと早く伺えば良かったです。
それに、おじいちゃまと
お話出来て何より良かったです。』

本心だ。


あの女…

そんなにお客様がごねているなら、直接伺うって言ったことがある。

その時に
余計にごねられたら困るから任せてほしいって言った。


それは嘘がばれるからか…

No.270 10/11/18 17:44
しゃけ ( kYyLh )

奴ら2人は子供がいる。

奴らは子供を持つ親として自分達のしてる行為をどうかんがえているんだ。

良心は無いのか?

これだけ嘘を普通に言えるなら、連絡するって言ってしないなんて事はお手の物だったろう。


『それで、あんた。
うちに来たのは何か用があるんだろ?』


おじいちゃまが聞いてきた。

No.271 10/11/18 17:58
しゃけ ( kYyLh )

『はい。』


『何を言っても駄目だし、連絡もろくにとれないので、裁判所から【払いなさい】と手紙を送る手続きをしてきたんです。』


うんうんと真剣に聞いてくれている。


『それで、相手が意義を言ってこなかったら、強制執行に移れるんですが、
相手の口座番号が解らなくて、おじいちゃまのお家に何か手掛かりになるようなものがあればと思って伺ったのです。』


『そうですか。
うちは現金払いだったからなあ。』

『契約書とかはありますか?』

『ああ、あるよ。』


おじいちゃまは奥へ探しに立った。
身体が不自由なのに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

『娘がしまったみたいで、見当たらないなぁ。』

声より少し遅く奥から帰ってきた。

『夜、娘さんが帰ってくる時間に電話しても大丈夫ですか?』

失礼は承知で聞いてみる。

No.272 10/11/18 18:13
しゃけ ( kYyLh )

『ああ、いいよ。
だけど、帰ってくるのは遅いよ。』

『私は遅くても構いませんが、おじいちゃまのお家でご迷惑じゃないですか?』

『うちは娘と2人だから
大丈夫だよ。』


おじいちゃまの優しさに


心が打たれる。

心が痛む。

心が泣く。

おじいちゃまは、娘には言っておくからと玄関で見送ってくれた。

アイコは丁寧にお礼を言い車に向かった。


おじいちゃまにお礼を言い踵を返した時のアイコの顔は怒りそのものだった。

No.273 10/11/19 12:56
しゃけ ( kYyLh )

あいつら
あんなに優しいおじいちゃまをクレーマーの如く
話を造りあげたのか。

お金を取るより
潰したくなってくる。

しかし、おじいちゃまと娘さんを巻き込む訳にはいかない。

No.274 10/11/19 13:08
しゃけ ( kYyLh )

夜になり娘さんが帰宅したぐらいの時間に電話をかけた。


すぐに娘さんが電話に出てくれた。
ありがたい事におじいちゃまが娘さんに話をきちんと通してくれていたらしく、娘さんはアイコをすんなり受け入れてくれたのだ。

腐った奴もいる世の中だが、人情がある人も沢山いる。

挨拶から本題に移った。


『今ね、
契約書や見積りを見ているんだけど、口座番号は何処にもないのよね。』


『そうですか。
でも、そういった物も
コピーさせて頂きたいのですけど。』


『いいわよ。
でも、随分ね。工事させてお金を払わないなんて。』

『私もこんなに酷い会社は初めてなんです。』


『そうなの。
私も後になってこの会社酷いし、高いのかしらって思ったのよ。
変なこと聞いてしまうけど、工事代金はおいくらだったの?』


少し躊躇いがあったが

『負けろ負けろって言われて、押さえて90万です。
あのう、お客様はおいくらで契約したか伺っても
いいですか?』

No.275 10/11/19 13:19
しゃけ ( kYyLh )

『総額280万で屋根が200万よ。吹っ掛けられたみたいね。』

娘さんが落胆しているのが伝わる。

200万の金額にアイコは再び怒りが込み上げてきた。

確かに10何年前は
リフォーム業界はまだ今のように変な会社は溢れていなく、バブルが弾けた後もバブルのように、一坪10万から20万で工事する会社が多々あった。
しかし、現代はリフォーム業界は競争だ。
そんな金額で中々やっている会社は少ない。
工事者に払う二倍以上の金額をお客様に請求するなんて詐欺に近い金額だ。

うちが請けてる会社は常に五社近くあるが、その中でも一番高額だろう。

奴らは200万を懐に入れ
50万のみ払い
後はのらりくらりか。

No.276 10/11/19 13:30
しゃけ ( kYyLh )

『200万ですか。
びっくりです。
かなり前はリフォーム業界も高額でしたけど、不景気と共に価格破壊になってますから。私は15年くらい、この業界を見てますけど、15年ぐらい前はそのぐらいの金額が普通でしたが、今はそんなに高額な会社は見ないです。』


『やっぱり。
何かにつけて、追加でやりましょう。って言って、何でもお金お金で、いい加減嫌になって、もう結構ですって言ったのよ。』

最低の奴らだな。
取れるとこからはとことん取るか。


『それで、正解ですよ。
あの、領収書もあったら
コピーさせて頂きたいのですけど。』

『いいわよ。関係している物は全部見てみて。』


おじいちゃまだけじゃなく娘さんもとても良い人だった。

『どうすればいいかしら。』

『明後日、おじいちゃまの予定が合えばお借りに伺いたいのですが。それで、近くのコンビニでコピーしてお返しします。』

No.277 10/11/19 13:58
しゃけ ( kYyLh )

娘さんはおじいちゃまに予定を聞いてくれ、明後日伺う約束をしてくれた。

『それにしても酷いわね。あんまり協力出来なくて
すみませんね。』

『そんな!とんでもないです。私こそ突然伺って
おじいちゃまを驚かせてしまってすみませんでした。本当にお客様にはご迷惑はおかけしませんので。
あと、お客様とお話出来て良かったです。
迷いも消えました。』

『大変だけど、頑張ってね。あっ、コピーだけど、
わざわざコンビニに行くの大変でしょ?
私が明日コピーして
持って帰るだけにしておきましょうか?』

どこまでも良い人。

『そんな、こちらがお願いしているんですから、自分でコピーしに行きます。』

『いいのよ。そのほうが楽でしょ?』


アイコは無性にこの優しさが嬉しかった。
あまり拒んでは失礼なので甘えることにした。

『すみません。本当にいいんですか?』


『ええ。それじゃあ、明後日用意しておきますね。』

『本当にありがとうございます。』

No.278 10/11/19 14:05
しゃけ ( kYyLh )

電話を切った後
歪んだ気持ちは暖かさを感じた。
会った事もないアイコを信用して書類をコピーして渡してくれる。
感謝の気持ちでいっぱいだ。

しかし
よくよく考えれば
奴ら以外アイコの周りは
嫌な人など居ない。

心を歪ませる必要などないのだ。


そう考えたら
お客様の優しさに泣けてきた。

そして吹っ切れた。
同情などいらない。
奴らに人情などいらない。

奴らも経済的に大変なのかと考えていたり、
人間そんなに悪い奴もいないだろうと考えていたりしていたが、全て捨てた。

No.279 10/11/25 16:35
しゃけ ( kYyLh )

お伺いする約束の日。

邪心など無く
おじいちゃまと娘さんの事を考えながら、地元名産品を使ってる和菓子を購入した。

きっとおじいちゃまは
また謙遜して中々受け取ってくれないだろうなと
心が笑った。

再びおじいちゃまとお話出来る事が嬉しいような気がする。
怪しまず
同士のように扱ってくれた事がそんな気持ちにさせているのだろう。

そして
初めて会い初めて話をしたのに、信用してくれたからだ。

債権回収は何の進展もないのに、心は前に進み出してるようにさえ感じる。

No.280 10/11/25 16:43
しゃけ ( kYyLh )

一時間ちょっとのドライブで到着。


車を路駐出来そうな場所へ停め、お土産を持ちお客様宅へ歩き始めた。

リフォーム住みや新築の多い住宅街。

お客様宅の両隣も新しい。
これならリフォームしたくなるなぁと思いながら
インターホンを押す。

直ぐに
おじいちゃまが玄関を開けてくれ招き入れられた。

No.281 10/11/25 16:48
しゃけ ( kYyLh )

『これは、うちのほうで評判の和菓子なんですけど、良かったら召し上がって下さい。』

そう言ってお土産を渡そうとすると


『お金もらえないのに
お金使うことはないんだよ。それじゃあ、反ってわるいやぁ。』

泣かせる。
そんなこと言わずに
感謝の気持ちだからと
無理矢理受け取ってもらった。

No.282 10/11/25 17:02
しゃけ ( kYyLh )

少し世間話し本題に入る。

娘さんがコピーし綺麗にビニールの袋に入れられた
奴らの本性をおじいちゃまから受け取る。

『拝見させて頂いてよろしいですか?』

『ああ、どうぞ。』


契約書
見積書
保証書
領収書

どこにも口座情報は
なかった。


見積書の金額は倍々で
吹っ掛けてある。

しっかり塗装の養生代まで取ってあるのに汚してさらに汚しているのかと
呆れてしまう。

そして
最後に目に止まったのは
領収書の日付だ。

No.283 10/11/25 17:08
しゃけ ( kYyLh )

手帳を出し、奴らとのやり取りを確認する。

まだ施工代を貰えないから払えない。
お客様がああじゃない、こうじゃないと煩くてまだ貰えない。

等々言ってきていた段階では既に全額お客様は支払っていた。

詐欺師か?

ふざけんな!


簡単に人間を信用してしまうアイコもアイコだが、
最初から騙されていたことが判明し、ぶつける場所がない怒りが沸いてきて収まらない。

だが、ここで奴らに連絡をとって文句を言うのは
先走りで自滅する。

考えよう。

No.284 10/11/25 17:22
しゃけ ( kYyLh )

アイコの様子を伺いながらおじいちゃまは
どうかした?
と聞いてきた。

言って良いものか悩んだが奴らの酷い言い草をおじいちゃまに伝えた。

ショックを受けるかもしれない。
だが、リフォーム会社は
一度リフォームすると
何年後かにまた営業しに来たりする。
その時にちゃんと真実を知っていれば断れる。


おじいちゃまにやはりショックを与えたかもしれない。

『あたしはね、誰の文句も言わないし、誰からも文句なんていわれないように
生きてきたんだよ。』

寂しそうに言う。

ごめんなさい。
おじいちゃま。


『銀行の人にね、
【おじいちゃんそんな大金こっちから振り込むようにしますよ】
って言われたけど、現金でって言うからちゃんと払う日に払ったんだよ。』


『嫌になっちゃうなあ。』

『すみません、余計な事を言ってしまって。』

平謝りだ。

『いや、いいんだよ。
あたしは、あんたと話せて良かったんだから。
この間話して、ずっと、娘以外に言わなかったモヤモヤが取れたんだよ。』

『私もおじいちゃまに会わなかったら、おじいちゃまをずっと誤解したままでしたから、お会い出来て良かったです。』

No.285 10/11/25 17:42
しゃけ ( kYyLh )

一時間ちょっと話した後
お客様宅を後にした。

丁寧にお礼を言うと
おじいちゃまも
同じようにお礼を言ってくれた。

本当に恐縮だ。


そして車に戻り
タバコに火をつけ少し考えた。


警察。
警察に行ったらどうなんだろう。
相手は払わないとは言ってない。
高額だが施工はちゃんと終了している。
悪徳会社と言っても
このくらいでは
民事不介入とやらで無理なのか?

考えながら車を走らせ始めた。

No.286 10/11/25 17:52
しゃけ ( kYyLh )

ナビでこの辺りを管轄する警察署を検索し、さらに考えている時だ


ガシャン
強い衝撃を受けた。

何が起きたか解らないまま路肩に停車した。

助手席側のミラーだ。
鏡は全部粉々。
跳ね返ったのであろうか
助手席側のウインドウも
無数の傷。
ミラーはぶらぶらと今にも落ちそうになっている。


降りて見てみると
何かで止めないと走れない状態だ。

はぁ…
交換かぁ。
何でこんな時にと
どん底に気分が堕ちる。


『電柱かい?』

背中から声がする。

振り返ると家から出てきた感じの中年のご夫婦が心配そうにしている。

No.287 10/11/25 17:59
しゃけ ( kYyLh )

『何だか良く解らないんです。』

アイコは本当に良く解ってなかった。

ご主人が電柱を確認して


『やっぱり電柱だね。
この電柱は出っ張っているから、良くぶつける人がいるんだよ。』

正直、何処にぶつけたかはどうでも良かった。

『そうなんですか。』

少しだけ適当に返す。

『でもあれだ、
電柱で良かったね。
人惹いちゃったら大変な事になってたよ。』

奥さんもそうそうと
頷いている。

確かにそうだ。

これが人間だったら
自分が警察行きだ。

No.288 10/11/25 21:26
しゃけ ( kYyLh )

このご夫婦は親切にミラーが落ちないようにと、
ガムテープを家に取りに行き貸してくれた。

小さな親切に触れる度に
世の中は腐りきってないって思える。

腐っているのは極僅かと
願いたい。

いつまでも路肩に停まっている訳にもいかないので、ご夫婦にお礼を言いその場を離れた。


そしてディーラーにいる友人に電話し、修理の手配を頼む。

友人は直ぐに手配してくれ明後日には部品が届き、
その日のうちに直るそうだ。

トシにも電話しぶつけた事を報告する。

トシも友人も車よりアイコの身体を心配した。

周りはアイコに優しい。

やはり憎むべきは
奴らだけかと…
ため息まじりに思った。


警察の事は考えず
今日は大人しく家に帰ろうと片側が見えないミラーの車で、ゆっくり家に向かった。

No.289 10/11/25 21:32
しゃけ ( kYyLh )

その夜、トシとアイコは話し合い、暫く奴らに連絡をするのを止める事にした。


支払督促発布の知らせが裁判所から届き、その後相手が授受したハガキが届くまではコンタクトは一切取らない。

そして、
その間、コンタクトがあった場合は、ショートメールにて
書面にしてほしい旨を伝えようと二人で取り決めた。

No.290 10/11/26 16:11
しゃけ ( kYyLh )

奴らは支払督促が送達されたらどんな気持ちになり
リアクションはあるのか?
もしかしたら、図々しいので配達員からの受け取りを拒否するかもしれない。

意に介さずかもしれない。
異議申し立てをしてくるかもしれない。


逆に図々しいのは仮面で
一人の人間としては
小心者で内心はドキドキするかもしれない。


何れにせよ、連絡を寄越すのではないかと想像する。
何もなければ
奴らに送達された翌日から二週間が過ぎれば
仮執行宣言の申し立てが出来る。


仮執行宣言が受理され奴らがそこでも異議申し立てをしてこなければ強制執行に移れるが、今の段階では
対象にするものが見当たらない。

これは何とかしなければならないことだ。

No.291 10/11/26 16:26
しゃけ ( kYyLh )

翌々日には車のミラーが直りすっきりした気分になった。

アイコは
携帯のネットで相手管轄の警察署のページを調べている。

法的にも追い詰めるが
奴らを社会からも追い詰めたくなっていた。


躊躇いなど無いまま
警察署の番号を押した。


【詐欺について聞きたい】と電話口の女性に伝えると担当者に繋げてくれた。

No.292 10/11/26 16:36
しゃけ ( kYyLh )

最初に名前や住所を詳細に尋ねられた。

住所を伝えた時に
担当者の歯切れの悪さが感じ取れた。
おそらくこちら側の管轄に言えって事だろう。

アイコは先手を打ち担当者が話せないように話した。

『相手がそちらの管轄なので電話させて頂いたのですが、駄目でしたか?』

『いや、そうでしたか。
それでは、どうぞ。』

取り敢えず話だけは
聞いてくれるらしい。

【民事不介入】
きっとこの言葉がでてくるだろうと思いながら
事の経緯を担当者に話した。


話終ると予想通りの言葉が返ってきて笑えた。

No.293 10/11/26 23:04
しゃけ ( kYyLh )

聞いてもいないのに
少額訴訟や法テラスの話をしはじめた。
しかし、とても親身になっているとは感じず、刑事事件としては扱えないのだから諦めろと言われているようである。

アイコは食い下がった。

だが、やはり

【債務不履行】なのだから【民事】だと強調された。

No.294 10/11/27 00:00
しゃけ ( kYyLh )

ならばと思い
奴らのお客様に対しての悪行を話した。

あるおばあちゃんのお客様のお宅の話だ。
工事が納得いかずに
支払いを拒んでいたら
ローン用紙を持っていき
娘の名前でローンを組んでくれと何回も迫った。
そこの娘さんは誰もが知っている企業で働いているからだ。

しかも
お客様がちゃんと直してほしいと言っていた箇所に対してクレーマー扱いをし、きちんと直さずうやむやにした。


担当者に感情を悟られないように淡々と話す。


おじいちゃまのお家の話ではないが、この際奴らに
警察の手がいけばそれで良かった。

No.295 10/11/27 00:27
しゃけ ( kYyLh )

担当者は言った。

『そのぐらいじゃあ、我々は動けないよ。』

『それで、本当に無理矢理用紙に書かせたら動くかもしれないけど、そのぐらいだとね。』


警察がそんなだから
悪徳会社が
蔓延るんだよ!
お前らしっかりしろよ!

そう思ったが敢えて言うのは止めた。

このやる気のない人に何を言っても無駄だろう。


そう言えば
何回も警察に相談していたのに、警察が真剣にならないで、殺されてしまった娘が居たなぁ。

内容は違うが
こんな調子だったんだろうか?

No.296 10/11/27 00:40
しゃけ ( kYyLh )

担当者は奴らの社名すら聞いてこない。


こんなもんか。

がっかりだ。


ここは所轄だ。


では、県警に電話したらどうなんだろう。

それでも
対応は変わらないのか?


同じような詐欺まがいの業者に、その場で電話してくれた警官が居たとネットで見たがそんな警官は
希なのかもしれない。


担当者は再び少額訴訟を勧めてきた。
そして、世間話でもしてるような口振りで言う。

『あっ、NHKでもそういう訴訟の番組やってるから、観てみたら。』


馬鹿らしくなったので、適当に話を合わせて電話を切った。


使えない。

社名ぐらい記録として
残してくれたら、
まだ良かったが
こちらの情報のみ、詳細に聞かれただけで終わった。

追い詰めるのは
難しいのか?

いや、追い詰めたい。

No.297 10/11/27 00:55
しゃけ ( kYyLh )

追い詰める。

追い詰める。

どうすればいい?


こちらの分が悪くなるような事はしてはならない。

誰かを追い詰めるなんてしたことが無いから思い付かないのは、至極当たり前なのだが、思い付かない事がイライラを助長させる。


登記簿を取り寄せたり
銀行情報を探したりしたり動いているのに、
不発ばかり。



嫌になってくる。

No.298 10/11/27 14:48
しゃけ ( kYyLh )

手詰まりを感じている。


そんな思いの中、裁判所から封書が届いた。


開封すると

【支払督促正本発布のお知らせ】だった。


やっと始まったか。


不在だったとして、
郵便局で預かるのは一週間ぐらいだろう。

2日前に発布しているから、今から一週間ぐらいの様子みだ。

異議申し立てを受け取りから二週間以内にしてくるか賭けだ。

奴らは会って話すことを拒む。

なので、異議をだされ
通常訴訟になって直に話す事をこちらは好都合とも考えている。

No.299 10/11/27 14:51
しゃけ ( kYyLh )

通常訴訟になったところで、相手は債務者。

弁護士を使ったら費用倒れになる。

おそらく弁護士は使わない。

奴らがどう出てくるか
楽しみだ。


そして、これから色々調べなければ。

奴らに書面上で債務を確定させる方法を。

No.300 10/11/28 10:39
しゃけ ( kYyLh )

【債務弁済承認契約書】

平たく言えば
債務を認めさせる契約書。

口頭で結んだ契約でも新たに契約出来る。

その場合、本契約書が無いので、収入印紙を貼る。


そして
それに伴い
分割支払確約書を作り署名捺印を
してもらう。


さて、どうやって
奴らに話を持っていくか。

そろそろ支払督促正本を
受け取った頃だが。

まだ、連絡はない。

No.301 10/11/28 10:48
しゃけ ( kYyLh )

発布通知が届いて一週間。
郵便局で預かっているのか受け取っているのかは、
まだ解らない。

裁判所から送達通知が
来ないからだ。


もういい頃か…

何がいいか?


電話で心理的圧迫を
かける。


直接行ったところで
空振りに終る確率が高い。
圧迫をかけるだけだから
出なかったり
留守電のほうが都合が良い。

No.302 10/11/28 10:56
しゃけ ( kYyLh )

トシは千川氏へ1日五回前後電話をした。
全て、出ないが向こうは
精神的にやられるだろう。

受け取っていれば、正本を見ている筈だし、
局預りなら、差出人が
簡易裁判所だ。

何らかの気持ちの揺れは
あるはずだ。


そして、アイコ。

ここまで抑えてきたものを留守電に入れる。

今までにない口調で話す。
だが、こちらが不利になるような事はやはりいれない。

留守電を聞き
向こうから電話をしなければと思わせるような事を
話すつもりだ。

No.303 10/11/29 09:58
しゃけ ( kYyLh )

今まで常に冷静さを欠かさず対応してきた。

しかし
それは相手からしたら冷静ではなく言いくるめる簡単な奴と映っていただろう。

冷静さの中に冷酷さを持たせ、声は営業用の声を出さない。

バカにしたかのように
淡々と話す。


コール音がしだした。


もうすぐ留守電に切り替わる。








切り替わった。

No.304 10/11/29 10:16
しゃけ ( kYyLh )

名前など名乗らない。


『また、留守電ですか~?
話さないと何も解決しないのに変ですね。

もっと可笑しなことがありますよ。


お客様からお金頂いた日は、まだ貰っていないって言ってましたね。
変ですね~。
産廃代も随分お客様から頂いてるみたいだから
うちの産廃分引き取ってもらいたんで、いつ持っていけばいいか必ず連絡して下さいね~。
連絡ないなら
明日にでもお持ちしていいって解釈しますから。

それから
大人なんだから
ちゃんと出てきて
大人と大人の話しましょうよ。
社会の常識解ってますか?子供のやり取りじゃないんですよ?
会社と会社ですからね。

払えないから払わないで済むなんて思ってるんですか?

このまま
ずっとずっと一年も二年も逃げるんですかね。

そんな事が
許されるんですかね?

いいですね~。
払わないで済んだら楽ですよね~。』

No.305 10/11/29 10:20
しゃけ ( kYyLh )

『煩いのはうちだけなんて言ってましたっけ?

連絡すれは煩い。
しなければしないで連絡してこない。
何なんでしょうかね?

不思議ですね。

どっちにしろ
払わないんですからね。

あ~
それと』

ピー…

留守電の録音時間が終ってしまった。






もう一度かける。


さらに留守電に向かって
話す。

No.306 10/11/29 10:43
しゃけ ( kYyLh )

『あ~それから、
私と話すのが嫌なんでしたら、建材メーカーの人かお互い知ってる北村さんとかに入ってもらいましょうか?』

建材メーカーは奴らが
保証書に文言として謳っているから知られたくないだろう。
直接関係して材料を卸してもらっているのはうちだ。奴らはそれをメーカー保証としてお客様に保証書を発行していることが解ったから敢えてメーカー名を出して話した。
(ここでは、伏せます)

北村さんはこちらよりの人だが、奴らも知り合いだ。

『それでいいなら、直ぐに建材屋さんに連絡して
話し合いをしたいんですよね。
そのほうが話が早くて
いいんじゃないのかなぁ。

何処に話を持っていったら払えますか~?


建材屋さんですか?
北村さんですか?
他の共通の知人ですか?
司法ですか?
裁判所ですか?
警察ですか?

言ってくれれば直ぐに連絡するし、連絡ないなら
建材屋さんと北村さんには間に入ってもらうんで。』

ピー…


また録音時間が終った。

No.307 10/11/29 14:56
しゃけ ( kYyLh )

留守電なだけに相手の反応は読めない。

だが、いつものアイコの口調や営業喋りと違うことや
こちらが動き出したことは感じたろう。

お客様の話を出したり
知人やメーカーの話。

奴らがどう感じるかは解らないが
いい思いはしない筈だ。


少しでも危機感を覚えたら良しとしよう。

No.308 10/12/05 16:33
しゃけ ( kYyLh )

当てにならない警察を出したのは、言葉の流れではない。

こちらが如何に動き出しているかと思わせる為だ。

こちらは手詰まりではないと思わせる、言わば合法の去勢に過ぎないが、
奴らが勝手に勘違いして
焦ってくれればいいのだ。

No.309 10/12/05 16:40
しゃけ ( kYyLh )

翌日の夜。

アイコは本屋にいた。

レジでお金を出す時に
携帯が鳴っているのに
気付く。


着信相手を確認すると
東氏である。

しかし、今ここで出るのは止めにした。

会計途中であり
雑音がある。

ゆっくり
感情的にならないように
話さなければないない。


着信は切れた。


アイコは急いで駐車場に停めてある車に戻ったが
二度目の着信も切れてしまった。


こちらがコンタクトをとっても散々逃げに回っていた奴らからの電話。

慎重にいかなければ
ならない。


呼吸を整え
リダイアルを押した。

No.310 10/12/05 16:44
しゃけ ( kYyLh )

……………出ない。


留守電に切り替わった。


何も入れずに切った。


10分後もう一度かけたが
同じだ。


何なんだ?!
掛けてきたくせに
掛け直すとでない。


子供の遊びか?

アイコは
張り詰めた気持ちのまま
自宅へ帰った。

No.311 10/12/05 16:51
しゃけ ( kYyLh )

リビングで一服。


気持ちを落ち着かせる。


少しするとトシが帰宅した。

『今日も千川さんに電話何回かしたけどさあ、でないんだよな!
極めつけに電源切られてさあ!
人としてどうなの?って
感じだよな。』


ふ~ん。

奴ら、追い詰められてる感がある。

アイコも電話の話をした。


そんな話をしていると
着信音が流れ出したのだ。



…………きた


携帯を開き録音ボタンを確認する。

No.312 10/12/06 11:54
しゃけ ( kYyLh )

『はい。猫田ですぅ~』


前日の留守電に録音されている声とは真逆の明るい営業色たっぷりの声で出た。
20代前半を
デパート勤務で過ごしたアイコには声のトーンを変えて話すのは容易い事だ。


全く真逆の声。
敵対心を出さない態度。
奴は
面食らっているだろう。


そして、録音ボタンに指を置き押した。

No.313 10/12/06 11:58
しゃけ ( kYyLh )

意図ある対応。

この電話での目的は
払う意思と書面にするという確約の言葉。

それを引き出すつもりだ。

アイコの対応に釣られてか
相手も今回は
キーキーキャンキャンしてこない。


言いたい事は山程あるが
言わない。

相手の切り出し方で
様子を見る。

No.314 10/12/06 12:09
しゃけ ( kYyLh )

『すみませんでした。』


謝ってきた。
裁判所効果か?

『やっと、少しお支払い出来そうなので、お電話したのですが。』

支払督促については
何も言ってこない。


『それで、どの位で
いつ頃ですか?』


取り敢えず聞いてやろう。

『すみませんが、五万円を来月半ばくらいに…』

はあ…

また五万かい?!

もっと払えるだろ?

そう思いつつ

『そうですかぁ。
ありがとうございます。
その後はどうなります?』

『その後もすみませんが
分割で月末ごとに五万ぐらいづつでお願いしたいんですけど。』


いったい
いつまでかかる払いだ?

まあ
いいや。

『解りました。それで
いいですよ。』

しっかり録音は
されている。

『あっ、でもお支払い出来る時はもう少しまとめて
お支払いします。』


言いましたね。

やっと言わせた。

何回も分割払いの提案をしたのにも拘わらず
奴らはうやむやにしてきた事を引き出した。



もう一息だ。

No.315 10/12/11 09:17
しゃけ ( kYyLh )

分割払いについて、本人の口から言わせた。


次は…書面化。


『以前もお話しましたけど、分割の詳細を書面にして頂きたいのですが?』

さあ、どう答える。

『解りました。猫田さんのほうで作って頂いて送ってもらえたら、直ぐに署名捺印して送り返します。』


ん?
案外あっさりと答えてきた。

奴の作戦か?

作戦にしても
この内容は録音されている。

後から知らないは通らないですからね………

No.316 10/12/11 09:20
しゃけ ( kYyLh )

そこまで話しても
支払督促については何も言ってこない。

この話で帳消しとでも思っているのか
故意に触れてこないのが解る。

いい大人が呆れる。



ならば
こちらから触れてやるか。

No.317 10/12/11 09:29
しゃけ ( kYyLh )

『あの…
お怒りになられるかもしれませんが…』

これでもかと低姿勢で切り出した。


『お二人共、連絡してもお話出来ない状況で私共も困り果てまして、裁判所から支払督促を出させて頂いたのですが、ご覧になられましたか?』

さあ
どうなんですか?


『あっそうなんですか?
ちょっと千川の携帯がおかしくて&£#*#£』

最後は
口ごもって何言ってるか
聞き取れない。


知らないようなことをもごもごと言っているようだ。

ふ~ん。

知らないんだ。

知らない訳ないだろ。

じゃあ何で電話してきたのかなあ。


『そうですか。郵便局で
預かりになっているのかもしれないですね。』


それにしたって
局の不在票には差出人欄に簡易裁判所と入っているだろう。

見え見えの嘘。

まかり通ると思って言っているのか。

笑いすら出てこない。

No.318 10/12/11 09:55
しゃけ ( kYyLh )

『じゃあ、お支払いはしないでそれを受けとればいいんですか?』

何をワケわからない事を言っているんだ。

受け取って
払うんだよ。


『いえ、お支払いはお願いします。
それから、受け取りはしてください。』

取り敢えず流れだけ説明してやろう。


『そちらが、お受け取りになって二週間以内に異議申し立てをしなければ、
【仮執行宣言】をしまして強制執行へ移る流れになります。』

『はい。』

素直に聞いている。


『ですが、お支払いの意思があるのと書面化に合意して頂いたので、こちらが今後期日内に申し立てをしなければ、この支払督促は無効になります。』


『解りました。
書面は直ぐに送り返します。』


この言葉信じていいのか?

いや、
信じきれない。


信じきっては
いけない気がする。

No.319 10/12/11 10:17
しゃけ ( kYyLh )

電話を切った後

アイコは踞った。

激しい頭痛。
動悸。
手の震え。

立てない。


奴らとの関わりをやめない限り続くだろう。


この症状で止めようとは思わない。
自分をこれだけの身体にされたのなら、同じように追い詰めたいからだ。

No.320 10/12/11 10:27
しゃけ ( kYyLh )

踞っているアイコにトシが慌ててかけよる。

何も言わずに手をずっと
握ってくれる。

アイコが落ち着くまで。

ずっと
ずっと…



人の温もりは心安まる。



『もう大丈夫。
やらなきゃ。』


書面についてトシに説明し
パソコンに向かった。


『俺が
次は裁判所行くよ。』


トシの言葉はありがたくもらうがこうなると最後まで
自分が関わり終わりにしたい。


だから
トシは奴ら以外の仕事をしてほしいと訴えた。

渋々了解してくれた。
腑に落ちない顔だが、
終りが見えなく縁を切る奴らにトシは貴重な時間を使う必要はないのだ。

No.321 10/12/11 11:14
しゃけ ( kYyLh )

書面化。


奴らはどんな書面を考えているだろう。


簡素な文言が並べられているただの紙切れを想像しているのかもしれない。


アイコは
そうはいかないことを
解らせる為に黙々と
パソコンに向かう。

No.322 10/12/11 11:58
しゃけ ( kYyLh )

【債務承認及び債務弁済承認契約書】


ある司法書士のホームページから引っ張った。

この司法書士は自分で出来るならしたほうが良いと、丁寧に様々な雛型を掲載してくれている。
あいにく事務所までとてもじゃないが遠すぎて依頼するには無理があるが、
近場なら相談したいところだ。



コピペでエクセルに張り付け
多少文言を変える。


雛型では
債務者
債権者とあるが、
これでは奴らも抵抗、反発があるだろうから

支払人
受取人に変更だ。

No.323 10/12/27 17:47
しゃけ ( kYyLh )

ここまでの作業で夜中になってしまった。

この労力も請求してやりたいぐらいだ。

今日はこの辺でやめようとパソコンに向かうのを止めにしたが、今度は薬を服用しても眠れない。

結局、イライラしながら朝を迎えてしまった。

No.324 10/12/27 17:49
しゃけ ( kYyLh )

朝になり、結局またパソコンに向かう。


今度は奴らにしっかり分割払いを認識させる為の書面を作成する。

No.325 10/12/27 17:54
しゃけ ( kYyLh )

【分割払い確認書】


月五万
一回から八回までの年月日の確認。

それでも未払いが起きた時の対応方法の確認。

誰が払い
誰に払うかの確認。


署名捺印は当然であり、
先に作成した書面の連帯保証人にも債務を負ってもらう確認。

No.326 10/12/27 17:56
しゃけ ( kYyLh )

そして
もう一枚。

残債確認の為の請求書。


この三枚を作成し終わった時には昼を迎えた。

食欲はない。

そのまま何も食べず
コーヒーだけを飲み一息ついた。

No.327 10/12/27 18:03
しゃけ ( kYyLh )

次は税務署に電話だ。

債務承認の書面に必要な収入印紙の金額を確認するためである。

税務署はパートらしい女性の対応であり、調べて折り返し電話するとの事で
一度電話を切った。

もっとパッパッと事は進まないのかと、イライラは続いたが仕方ないかと電話を待った。

収入印紙はより書面にリアルさを出す為に
こちらが負担しても貼りたいアイテム。

40万と額も少ないので
印紙は大した金額ではないだろうと考えているが、
中々折り返しの電話がこない。

No.328 10/12/27 18:12
しゃけ ( kYyLh )

電話待ちの状態で
ぼんやりしているのも時間が無駄である。

三枚の書類を宛名が書かれた封筒に入れ、郵便局に向かう準備をした。
玄関でブーツに足を通す時に着信音が鳴る。

何とも間の悪さに
はぁとため息をつき
ブーツを置き電話に出た。

時間がかかりすぎて恐縮そうに話す税務署の女性。

一生懸命話す彼女に何故か癒されている。

みんな一生懸命頑張ってるんだよなぁと思ったからである。

そして
アイテムの金額は400円という答えをもらいお礼を言い電話を切った。

No.329 10/12/27 18:15
しゃけ ( kYyLh )

やはり少額である。

400円ぐらいの負担で
リアルさが出るなら安いものである。

車に乗り込み郵便局に向かった。

封筒はメール便で送付しようかとも思ったが印紙を購入するついでに郵便局から送付することに決めた。

No.330 10/12/27 18:20
しゃけ ( kYyLh )

郵便局にて印紙を購入し
張ってみて
それらしい書面になっていることにニンマリしてしまった。


おっ
ニンマリしている場合ではない。

鉛筆を借り
印紙に捺印してもらう為にマルを薄く書き捺印と記した。

その他の記入してもらうところには全て付箋で記してある。

これでもかってぐらい
説明書きをつけた。



さてさて
この労力は活かされるのか殺されるのか。

No.331 10/12/27 18:31
しゃけ ( kYyLh )

配達証明をつけようと思ったが、無駄打ちに終わるかもと脳裏に過り
安価な【特別記録】にした。
これはポストに確かに届けましたと言う記録だ。

封筒に
赤いインクで

【特別記録】と押されるので相手には多少なりとも
圧力はかかる。


アイコは自分で嫌な奴と考えながらも、
奴らにもそうだがアイコに圧力をかけた奥さんに圧力をかけ返したいのが本心である。


相手がどう感じるかが見えないのが残念だが、少なからずは嫌な思いはするだろう。


こんな事を考えてしまっている今のアイコは自分自身うんざりしていた。

No.332 10/12/27 18:37
しゃけ ( kYyLh )

局員は翌日には届くと教えてくれた。

郵便局を出た時には
少しすっきりしている感じがあった。

これで
終ってくれと言う願いもある。


一筋縄でいかない相手だということは体験済みなのに終る訳も無いのに…







このやり遂げた感は
すぐに無くなるだろう事はわざと考えから抜きたかった。

いや
抜いていた。


心底疲れていたのだ。

だから
今だけでもそう思っていたかった。

No.333 10/12/27 18:42
しゃけ ( kYyLh )

書面を見たら奴らは何らかのアクションを起こしてくるかと何日間は思っていた。


堅苦しいとか
連帯保証人についてとか
などだ。


しかし
何日待っても
何の連絡もなく
返送もない。

わざわざ切手を貼った返送用封筒を同封したのに。

時間をかけ書面作成したのに。

収入印紙まで貼ったのに。


全て無意味に終るのかもしれない。


そんな気持ちになっていく。

やるせない。

No.334 10/12/27 18:48
しゃけ ( kYyLh )

そんな気持ちのまま
約束の五万を振り込む日がきた。


振込みなどある訳がなかった。

奴らは無視を決め込んだのだ。

最低最悪な奴らだった。

腐ってると思っていたが
ここまで腐っているのかと、感情が止まらない。


でも感情に任せて電話などはするつもりはない。

やる事があるからだ。



アイコは出かける準備を始めた。


トシには
奴らに電話しないように
メールする。

そして車に乗り込み出発した。

No.335 10/12/27 18:51
しゃけ ( kYyLh )

ナビの行き先


奴らが名乗る会社の所在地を管轄している簡易裁判所。


そう、支払督促を申し立てした場所だ。

No.336 10/12/27 18:57
しゃけ ( kYyLh )

支払督促から強制執行まで持ち込む為の手続きをする為。


【仮執行宣言】の申し立てである。


奴らから取れるものは今のところ無い訳だが
心理的圧力をかけるのだ。

この申し立てについても
相手は意義を申し立てられる。
そうなれば通常訴訟だ。

それならそれで良い考えだ。

何なら通常訴訟にしてもらってハッキリさせたいぐらいなのだから。

No.337 10/12/27 19:04
しゃけ ( kYyLh )

必要なものは
長形3号封筒二枚。
ハガキ一枚。
特別送達にかかる切手。
申し立て書。

封筒にはそれぞれの住所氏名。
ハガキにはこちらの住所氏名。

封筒は配達に使い
ハガキは授受記録をこちらに知らせる為に使う。





初めて行った時は慣れてなく時間がかかってしまったので、今回はスムーズにいくように予め全て用意しておいた。

No.338 10/12/27 19:22
しゃけ ( kYyLh )

前回支払督促で必要とされた印紙代切手代は
請求金額と共に相手に請求出来る。

そして
今回の送達費用も相手に請求出来るらしい。

合わせても7000円ぐらいである。

自分でここまでして7000円。

弁護士や司法書士に依頼すると10万円前後。
それとは別に成功報酬もとられる。

依頼して成果が出れば良いが、成果が期待出来ない相手であるなら自分で手続きしたほうが無駄骨に終わった時の落胆は少ないだろう。


しかし裁判所の近くは
弁護士やら司法書士やら行政書士の事務所が何件もあり、飛び込みで依頼してしまおうかと錯覚に陥る。


誰かに任せて楽になろう…そんな思いがあるからだ。

人間そんなに強くない。

No.339 10/12/27 19:29
しゃけ ( kYyLh )

逃げの思いを打ち消し
裁判所の玄関をくぐった。

仮執行宣言の申し立てをしたい事を伝え用意した物を出した。


今回は
簡単には手続きは終った。

これで終り?ってぐらい簡単で拍子抜けしたぐらいである。


往復三時間弱の道のり。

何だかこれで帰るのもと思い、強制執行について聞く事にする。


解らない事は
解決して帰らなければ。

そんな思いだ。

No.340 10/12/28 12:14
しゃけ ( kYyLh )

【強制執行】は
申し立てをした部屋とは
違う部屋で申し立てをするらしい。

また
目的別で部屋が違う。

取り敢えずは
銀行差し押さえについて聞く為の部署に行ってみた。

職員は早口だが
何が必要でどのようにするかを丁寧に説明してくれる。

そこで解ったことは
手当たり次第差し押さえにあたっては、10行差し押さえるならば
40万を10行分に分けて
たとえば4万づつ申請しなければならない。

差し押さえる件数に応じて申し立て金も加算される。
第三債務者になる銀行の資格証明書が必要。
これは法務局ですぐ取得できる。
一通千円だ。

手当たり次第にするには
それなりにお金もかさむ。
相手の取引銀行が不明なのは致命的だと言うことが解った。

No.341 10/12/28 12:20
しゃけ ( kYyLh )

それから
【債務名義の送達証明書】なるものが必要らしい。

これは
最初に申し立てをした部署で発行してもらう。

相手に送達されていれば
150円の印紙で申請できる。


少なくともあと二回は
裁判所を訪れなければならないらしい。



ここまできたら
とことんやってやりたい。

図々しいにも程がある奴らへ精神的圧力がかかるだけでもいいんだ。

No.342 10/12/28 12:23
しゃけ ( kYyLh )

裁判所の職員は
質問してきた。


『債権者の銀行はわかっているんですか?』


『いえ、そこがネックなんです。』

『そうですか。動産執行もありますよ。』

キラっ。

アイコの曇った目は少し見開き輝いた。


そっか
動産執行か。

No.343 10/12/28 12:32
しゃけ ( kYyLh )

【動産執行】

執行官が相手宅(事務所)に出向き、家の中の物を差し押さえることだ。
ただ、いつだったか法改正があり昔のように手当たり次第に差し押さえは出来ず、かなり事細かに差し押さえる物が決まっており家電製品などは対象外らしい。


なのでお金持ちの人間が債務者でない限りは大体は不発に終る



債権者も同行は可能だが
家(事務所)の中には入れない。


その後、差し押さえた物が競売にかかり配当が渡される。

差し押さえる物が見当たらない場合でも執行官の交通費を払う。

No.344 10/12/28 12:38
しゃけ ( kYyLh )

一度見た奴の家は
古いし借家で外見からは差し押さえる物など無さそうに感じた。


しかしだ

裁判所の執行官が家に入るというだけで、普通の人間ならかなりの苦痛だろう。

苦痛を与えるにもってこいだと思った。



執行するには五万弱くらいの予納金を必要とする。



どう攻めるか
良く考えて行動しなければとならない。

No.345 10/12/28 12:49
しゃけ ( kYyLh )

そして最後に車の差し押さえについて尋ねた。


『車はですね、新車とか高級車でそれなりに価値がないと無理ですね。』

やはり
そうか。


『どうですか?』


『いや~、価値無き車ですから無理そうですね。』


実際、アイコは見たことないがトシの話しによると
価値など無いボロ車らしい。

一台奴の家に停まっていた軽自動車も同様で10年くらい前のではないかと推測した。

『そうですか。売掛金なんかはどうですか? 』

『この相手はお客様からしかお金は入らないので無理だと思います。』


『では、やはり預金か動産ですね。』


『はい。色々ありがとうございました。』

また
お世話になりうる場所なので丁寧にお礼をし席を立った。

No.346 10/12/28 12:51
しゃけ ( kYyLh )

そして
また一時間半の道のりを帰る。

今回は前回のように
不注意なくしなければと
慎重に運転した。

No.347 10/12/28 13:06
しゃけ ( kYyLh )

ここまでして
果たして奴らに効果はあるのだろうか?

今までの経過を考えるとおそらく動じないのだろう。

明日から
毎日着信を入れる。

嫌がらせにならない程度にである。

No.348 10/12/28 13:08
しゃけ ( kYyLh )

千川氏に関しては
どんなに着信を入れても
出ないし留守電にもならない。


東氏は留守電になる。


お互い出ようとはしない。

No.349 10/12/28 13:14
しゃけ ( kYyLh )

裁判所に行った3日後に
裁判所から特別送達で正本が届いた。

郵便局員に促されるまま捺印したが、事情を知らない局員は裁判所からの特別送達を受けとる事をどう思っているんだろうと、少しバツが悪い。

わざわざ話すのも変なので
お世話様でしたと玄関を閉めた。


相手はもっと嫌な気持ちになるのかもしれない。

No.350 10/12/28 13:21
しゃけ ( kYyLh )

こちらに届いたって事は
向こうにも局員は行ってる筈である。

先ずは
受け取ったかどうかが問題だ。


受け取った日より二週間後から強制執行に移れるからだ。


裁判所からのハガキを待つしかないが
中々届かないようならば
電話で確認しようと考えている。



中には
裁判所の送達だろうが
内容証明だろうが受け取らず放置する輩もいるらしいから、奴らも安心してはいられない。

No.351 10/12/29 15:52
しゃけ ( kYyLh )

電話を何回かけても
奴らは出ない。


出来れば強制執行など面倒だし、余計なお金など使いたくないのが本心だ。


さてさて
留守電にでも
いれましょうかね。

No.352 10/12/29 16:01
しゃけ ( kYyLh )

機械の女がメッセージをすすめる。

ピー…


『あの~何考えているんですかぁ?』


名前は相変わらず名乗らない。


『振込はしない
書面は送り返さない
電話は無視。
何考えているか教えて下さいよ~。

裁判所から届きましたか?このままなら
執行官と一緒に伺いますから。
まあ、そのほうが早いかもしれないですね。

今何月ですか?

子供じゃないんですから
大人の対応してくださいよ。
なければ払わないなんて
そんなのが通用するんですか~?

振込めないなら連絡するのが大人なんじゃないですかね。

早く振り込んで終わりにしてくださいよ。

疲れましたよ。』

No.353 11/01/11 14:28
しゃけ ( kYyLh )

ぴー

留守電の時間いっぱい話した。

この頃になると留守電に話す事がストレス解消になってきた。

奴らが留守電の内容を残しておくと厄介なので、脅しととられるような言い回しはしないように気を付けていた。

だいたい
ここまで払わない奴等には脅し文句など何の役にも立たない。

淡々と話すほうがリアリティーがあって効果的だろう。

No.354 11/01/11 14:30
しゃけ ( kYyLh )

正本が届いてから10日が過ぎたが、まだ裁判所からは授受のハガキが届かない。
聞きたい事もあったので裁判所に確認の電話を入れる事にした。

No.355 11/01/11 14:38
しゃけ ( kYyLh )

裁判所は部署ごとの直通電話になっていた。


こちらの事件番号を伝えるとすんなり話が伝わった。

『え~と
相手側は22日に受け取っていますね。』


へ~
受け取ったんだ。


『相手が意義を出してきたら知らせて頂けるんですか?』

『ええ。こちらの正本にファックス番号がありますから、こちらに内容を送る事になりますね。』


意義を出してきたら
面白いのに。


『あの
もう一つお聞きしたいんですが。』

『どうぞ。』

裁判所の職員は感じの良い男性だった。


嫌がらずに質問に答えてくれる。

No.356 11/01/11 14:45
しゃけ ( kYyLh )

『前回伺った時に強制執行に必要な物を教えて頂いてその中に
【債務名義の送達証明書】というのがあったのですが、それはどのようにしたら頂けますか?』


『そちらは
申請書と150円の収入印紙で発行できます。用紙は裁判所のホームページからダウンロード出来ますよ。』


案外
簡単なんだ。

裁判所が遠いのが難だが。
億劫になる。


思うとこは沢山あるが

職員にお礼を言い電話を切った。

No.357 11/01/11 14:47
しゃけ ( kYyLh )

あいつら~

正本を受け取っているのに無視か~。

へ~
そぅなんだぁ

そんな感情しか出てこなかった。

ここまできても
まだ無視ね~。

No.358 11/01/11 14:53
しゃけ ( kYyLh )

『仮執行宣言の正本を
22日に受け取ってますね。何の連絡も無ければ、次の手続きに移りますから。』
『入金なし。連絡なし。書面返送なし。手続き続行します。連絡下さい。』


以上の文をショートメールで送った。

これ以上はしないなど
思っていたら大間違いである。
ここまできたら
やってやる。
そんな気持ちだが
強制執行はただではない。

何処に重点をおくかで
執行にかかる金額もかなり変わってくる。

面倒臭い話だ。

No.359 11/01/12 10:37
しゃけ ( kYyLh )

ショートメールを送った日の夜、トシが東氏に電話をした。

また留守電かと思いきや
出たらしい。


言い訳をだらだらと語る東氏。

苛立ちを覚えるトシ。

最終的にはいつ払えるのかと問いただせば

得意の明日連絡します

だった。


明日…


明日の電話ではどんな言い訳をしてくるのか。

奴らからは電話してこないだろう。


面倒だが
こちらからかけることになるのは目に見えている。

No.360 11/01/12 10:40
しゃけ ( kYyLh )

思った通り電話などかかってこない。


アイコは今回の電話は攻める話をするつもりだ。

どうせ払う気がないなら
言いたい事を言ってやる。

No.361 11/01/12 10:52
しゃけ ( kYyLh )

出るのか?と思いながらコール音を聞いていると

『はい、東です。』

訝しげに出た。

最初から感じ悪い。

良いとこ何にもないおばさんだな…


『すみませんが昨日電話くれるって言ってましたよね?』

『それは昨日代表に話した通り*£&%◇…』

最後は何言ってるか解らない。
まともな会話してくれよ…

『最後に入金してから何ヵ月立ってますか?
うちはあの現場赤字なんですけど。他の業者さんにも払ってないんですか?』

『そうですよね。
すみません。
払ってないとこは代表のとこだけです。
でも、その前の現場は
まだ回収しきれてなくて、代表のとこにはお支払いしたから、こっちは赤字で』
???

バカなのか?
頭悪すぎる。

『それは、おたくの会社内の問題であって、うちは関係ないですよね。』

淡々と言ってみる。


自分のとこが赤字であっても払うものは払う、
当たり前のことだ。

子供か?
もらえないから
あげないよ~ってな感じなのか?
よくそんなんでやっているもんだ。

No.362 11/01/12 15:23
しゃけ ( kYyLh )

『ええ。まぁそうなんですけど……………』


そうなんですけど…じゃないだろ?


『じゃあ、赤字だったら
支払いしないんですか?』

『えっいや
そういう訳じゃないんですが……………
………すみません。』


『それに、払う払うって何回裏切ってんですか?』


『……すみません。』


謝り作戦か?


あ―
うだうだ面倒臭い。

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