私と母と…
私と母との関係が親子でなくなってから二年がたとうとしている。
母は私を愛せないと言う…。
実の娘に本気でそんな事を言うのだ。
(私と母との事を書こうと思います。初めて書くので誹謗中傷はご遠慮下さい。)
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私が子供の頃の記憶
私はいつもヒステリックな母におびえながら暮らしていた。
母は家事が大嫌いな人で食事は毎日出来合いの物…
掃除もしないので家の中はとても汚く、ひどかったのを覚えています。
でも、まだ小さい私は母が憎めず母に愛されるように必死でした。
私の家族は父と母
そして、二才違いの妹と八才違いの弟。
私は中学の始めくらいまでは父は家事をしない母に愚痴をこぼしていたけど、家族仲は良かったように記憶している。
でも、私が中学三年の頃から母は私にだけ辛くあたるようになった。
きっかけは ささいな事だ。
私が中学の頃、私の家の門限は5時だった
学校が終わるのが4時半。
急いで帰って5時ギリギリ…。
ある日友達と話し込んでいて6時になってしまった。
6時に家に帰るとびっくりした。
警察がいる…。
なぜ?
私はまさか自分のせいだとは思わず
「何かあったんですか?」警察の人に問いかけた。
「ひょっとして、美咲ちゃん?」
警察の人が私に問いかける…。
「そうですけど…」
「奥さ-ん、娘さん帰ってきましたよ」
??ひょっとして、私の帰りが遅れたせい!?
「あんた、今まで何しよったんよ!!」
母は凄い形相で私を睨みつけ私の髪をつかみ壁に頭をぶつける。そして、ビンタ
警察の人があわてて止めに入った。
母は警察に止められようやく私を離した。
「…ごめんなさい」私はそう言うしかできなかった…。
しばらくして私と母とで警察の人に謝って警察の人は帰っていった…。
「あんた、最近調子にのっとるんやないの!?門限破るなんて」
はぁ?私は門限破ったのはこれが初めてだったし、調子にのってる?意味がわからなかった…。
「調子にのってなんてないよ…」
消え入りそうな声でやっと言葉を発した
今日の母がいつもと違う事だけは分かっていたから。
多分威勢よく言い返していたら何倍にもなって返ってくる。
母の性格は良く分かっていた。
「あんた最近お母さんの変わりに家事やってるんだって?誰がそんなこと頼んだ?お母さんが近所と人や親戚に変に言われてもえいの?」
なるほど…。
私の門限に怒ってるのではなく、私が母のプライドを傷つけたのが気に入らないのだ…。
門限はきっかけだ。
怒るためのきっかけ
前にも書いた通り、母は家事はしない。
食事は毎日出来合いだし、掃除洗濯は父が休みの日に見かねてするのだ…。
私はそんな我が家が嫌で自分なりに改善しようとしていた。
近くに住むおばあちゃんに料理を教わり自分でも本等を見て覚えた。
しばらくすると父から食費を預かるようになった。
学校帰りには門限があるので買い物には行けない。
休みの日にまとめて買いだめする。
父の仕事は不規則で休みは土日とは限らない。
買い物には弟を連れて二人で行く事が多かった。
当然、子供の足で遠くのスーパーに買い物は行けない。
近くにあるスーパーに行くのだが、何回か通っていると自然と隣近所のおばさん達と話しをするようになった。
おばさんは皆話し好きだ。
色々聞かれた。
「いつも二人やねぇ。お母さんとお父さんは?」
何気に聞いたのだろう…。
「父は仕事で、母は料理とか家事が好きではないので私がするんです」
言わなければ良かった…。
今思えば私の一言が余計だったのだ…。
もっと母を庇うように言っていれば母の機嫌を損ねる事もなかったのかもしれない…。
私が言った一言がきっかけで、おせっかいにも近所の吉田さんは私が可哀想だと、もうすぐ受験もあるのに…あんた母親やろ?と母に説教をしたらしいのだ…
全く大きなお世話だ
そのおかげで私はとばっちりだ。
母は当然面白くないわけだ…。
何とか自分の評判を上げようと必死で知恵を絞った。
そうだ…、美咲を悪者にしてしまえばいいんじゃないか。
そんな事を考えていたのだろう…。
母は機会を待った。
近所に私が悪者になるべく種をまいて…
母はいつしか近所の人に私の不出来を話すようになった…。
私は悪い友達と付き合っていてシンナー等悪い事をしている
母は娘が荒れてるから疲れて家事ができない…。
こんな事を言っていた。
急にそんな話しを広めてみても信じる人は少なく母は余計に孤立していった…
頭がおかしい…。
母に対するそんな噂も聞くようになった
確かに、近所の人も馬鹿ではない。
私が真面目な事は知られていたし、子供が同級生の親もいた
嘘はすぐばれた…
母は悔しかったのだろう…
近所の人を信じこませようと、一芝居うった。
警察を呼び、野次馬で見に来ていた人達に
「美咲が悪い友達と付き合っていて、薬やってるみたいなの。今日も帰りが遅いし…。」
そんな事を言っていたのだそうだ。
全く、呆れてしまう
警察は帰りが一時間遅いくらいで来てはくれない。
母は私が朝から様子がおかしく、自殺の恐れがある。
そう言って警察を呼んだのだ。
警察には自殺、近所の人には薬物。
嘘はすぐばれる。
警察の人に母はこっぴどく怒られた。
近所の人は
「美咲ちゃんも大変やね…」
と、皆私のかたを持ち同情していた。
この一件以来母と私との間には溝ができた…
母は昔から自分が気に入らない事があると無視をする
私はもうなれっこだった
この日から私はいない人間として扱われるようになった
無視は当たり前
目も合わそうとしない
挙げ句の果てには妹や弟と会話するのを禁止された
妹や弟が話しかけようとすると
「何話ししよるん。そこには何もおらんやろ。幽霊でもおるんか」
このような事を言っていた。
私はそんなに悪い事をしたのだろうか…
もう分からなくなっていた…
いつもなら二週間くらいで自然と機嫌が直るのだが、今回は違った。
2ヶ月たっても私は無視され続けた…
2ヶ月が半年になろうとしていた もう精神的にきつかった…
その頃父は仕事が忙しく夜遅くに帰り朝早くに出掛けていく
家族の異変に気がついていなかった…
無理に父に伝えようとすれば出来たのかもしれないが、私がおかれている今の状況を知られたくなかった…
可哀想な子…
そう思われたくなかったのだ…
でも、私にも限界がある
近くに住む祖母に相談に行った
おばあちゃんなら何とかしてくれるかも
「おばあちゃん、私家で無視されよる…」
涙が出た…
やっと今の状況を話す事ができる
安堵感
それと同時に自分が惨めに思えて
涙は次々と流れた
「もっと早く言ってくれたら良かったのに。つらかったな…」
祖母も私と一緒に泣いていた
「お母さんはあの性格やからな…。こうなったんは、おばあちゃんの責任もあるな…」
そう言うと祖母は私に母の生い立ちを話してくれた
「お母さんは、おばあちゃんが育てたんやないんよ。おばあちゃんのお姉さんが子供がない人で、養子に出してたんよ」
びっくりした…
「お母さんはそこで我がまま放題に育ってね。欲しい物は何でも買ってもらって、何不自由なく暮らしてたんやけど、お姉さん夫婦がお母さんが17才の時に事故で亡くなってね。それから、おばあちゃんと一緒に暮らすようになったんやけど」
一緒に暮らすようになってから母が少し他の人とズレてる…
そう思うようになったのだそうだ
協調性もない
欲しい物は必ず手に入れないと気がすまない
自分が一番でなくてはならない
母は自分の育ての親の死を悲しんでる素振りもなく、祖母の家をかき乱していったのだそうだ…
母には三人兄弟がいて皆母の事を嫌っていた
「お姉さんは意地悪やから」
叔母や叔父はいつもそんな事を言っていた
常識がない
そんな事も言われていた。
確かに、思い当たる節は多々ある。
いくつか言うと、
母は弟を連れて買い物に行くと
「騒ぐとうるさいから」
と、まだレジを通していないお菓子やパンの袋をあけ弟にあげていた。
「お母さん、レジすんでないやん」
私が言うと
「後から払うから」
そう言って悪びれる素振りもない。
私は子供ながらに母が恥ずかしく消えてなくなりたい気持ちでいっぱいだった
母と買い物に行くと毎回こんな調子だった。
ある時、近所の人達と花見に行った
母達は
「お弁当は持ち寄りで、担当を決めて作ってこよう」
そんな話しになった
「私はお茶を用意するから後はよろしく」
母はそう言った。
「えっ!?お茶だけ!?」
そんな事を他の人に言われても悪びれる素振りもない。
気まずい花見になった…。
母はマンガが大好きで幼い私達を車に残して本屋に入ったきり二時間も三時間も出てこない…。
冬ならまだ良いが真夏はたまったものじゃない。
私は我慢が限界に近づくと本屋に母を呼びに行った。
「勝手に車から出るな言うたやろ!!」
毎回しかられた…
呼びに行っただけでビンタされた事もある。
きりがない…。
母は変わってる…
子供心にそう思っていた。
でも、子供の頃は母に何を言われても母が他人に変に思われていても、私は母が好きだった。
でも、今は…
私は母に愛情を感じているのだろうか…
良く分からなくなっていた。
祖母と二人で日が暮れるまで話しをしていた。
母の事を色々聞いて同情もした。
しかし、今の状態で母に従い暮らしていくのは限界があった
「おばあちゃんがお母さんに言うてみるから」
祖母と母に話しをする事になった。
外に出ると、日はすっかり暮れていた。
街灯も少ない田舎町では薄暗いを通り越して真っ暗だった。
年老いた祖母の手を引き家に向かう。 しばらく歩くと家の灯りが見えてきた。
デレビでも見ているのだろう、内からは母と妹と弟の笑い声が聞こえてきた…。
その中に私はいない
悲しくて
哀しくて…涙があふれた…。
祖母にばれないように暗闇にまぎれて、そっと涙を拭った。
玄関の前まで来ると
「心配せんでもえぇ、おばあちゃんは美咲ちゃんの味方やから」
おばあちゃんは私を見て笑った。
さっきの涙に気づいていたのだろうか…
祖母の言葉に元気づけられ、ドアを引いた。
ガラガラ…
「ただいま…」
小さな声で帰りを告げた。
案の定返事は無い…
靴を脱ぎ家に上がり、母のいる居間に行った。
「美咲ちゃんの事て話しがあるんやけど」
祖母が言ってもデレビを消そうともしない…。
「話しがある言うたやろ!?デレビ消し!」
母はようやくデレビを消し祖母と向き合った。
私とは視線を合わそうとしないが…。
「話しって何?忙しから早くして」
面倒くさそうに言った。
「あんた、何で美咲ちゃん無視するん?自分の娘やろ…。もう半年になるそうやない…。」
祖母が言うと、母は信じられない事を口にした。
「あの子はもう私の子供やないから。いるんやったら、お母さんにあげるわ」
えっ!? 嘘やろ…。
私も、まさかここまで嫌われてるとは思わなかった…。
涙がボロボロあふれてきて止まらない。
私は泣き崩れた…。
少しは話しになると思っていた…。
全く話しにならない
母は私の母である事を放棄した…。
祖母は、泣き崩れる私を抱きしめ
「あんた、自分の子供に何てことを…!!あんたは親やないんか!!」
泣きながら母を殴った。
「最初に悪い事をしたんは美咲や!!」
母は悪びれる様子もなく、そう言った。
「美咲ちゃん、おばあちゃんの家に帰ろう」
泣き続ける私に、そう言うと必死で立たせようとした…。
祖母に立つように促され、立ち上がろうとするが立てない…
私はかなりのショックを受けていた…。
祖母は何とか立たせようとする…。
無理だよ、おばあちゃん…。
私は泣くばかりで、しばらく立てずにいた…。
私は母に捨てられた
私はいらない…
その言葉だけが私の心に児玉していた…
祖母は私を立たすのを諦め、何とか泣き止むよう背中をさする。
私はようやく落ち着きを取り戻し立ち上がった。
「おばあちゃんの家行こ」
祖母は泣きながら私に向かったて笑った
「荷物取ってくるから待ってて」
これ以上この家にいたくない…。
早く、早く、早く
出ていきたい…。
母の姿が見えない場所に行きたい…。
私は急いで荷物を用意した…。
荷物を用意していると小さな弟が涙目で近寄ってきた。
「美咲ちゃん、おばあちゃんちの子供になるん?もう僕のお姉ちゃんやないん?」
そう言うと大泣きした…。
「うるさい!!」
隣の部屋から母の怒鳴り声が聞こえた…
ビクッ!
弟は恐々隣の部屋に目をむけた。
弟も被害者だ…。
私は弟の目線に視線を落とし、
「お姉ちゃんは、おばあちゃんの家に行くだけや。いつまでたっても瞬のお姉ちゃんや」
頑張って笑顔をつくった。
部屋の奥に目をやると妹がいた…。
何とも言えない複雑な顔をしている。
そっと妹に近づき、
「わかってるから」
そう、一言だけ言った。
妹は私の手を少しだけ握り、そっと離した…。
妹も辛い立場だ…。
私がいなくなる今、次の被害者は妹かもしれない…。
私も妹もわかっていた…。
私は荷物をまとめ終わると祖母の待つ玄関に向かった。
バイバイ…。
お母さん…。
「おばあちゃん、行こ」
頑張って笑った。
結局、母とは一言も会話をせず家を出た
来た時より、もっともっと暗い夜道が悲しかった。
「お腹すいたねぇ」
祖母に話しかけると
「そうだね。今日は出前とろうか」
祖母が笑って答えたような気がした。
実際、この暗さでは顔は分からないのだが…。
「はぁ…、疲れた」
祖母は家に着くなり玄関に座りこんだ。
もう年だし、無理もない…。
「おばあちゃん、ごめんね…」
また泣きそうになって我慢した。
「美咲ちゃんが何で謝るん?おばあちゃんは美咲ちゃんと暮らせるんが嬉しいんよ」
笑って私を見た。
ありがとう
本当にありがとう
おばあちゃんがいなかったら私は自殺していたかもしれない
その夜は祖母と二人で出前を取り一緒に寝た。
布団に入ってから寝付けなく、天井を見上げていた…。
「美咲ちゃん…」
視線は上を向けたまま
「ん?」
祖母に返事をした。
「お母さん、あんな事言うてたけど本心やないやろうから、気にしなさんな」
「…うん。今日はもう寝るね」
本当には眠くなんかなかったのだが、これ以上話しをしていると涙が出そうだったので、話しをやめた…。
次の日、夜遅く父が来た。
「美咲、どういう事や。説明して」
私は泣かないように頑張って説明した。
父に話すのは初めてだった。
母は私のせいで自分の評判が悪くなったって思っている事
長くなったけど何とか説明をした。
父は涙を浮かべていた…。
「お父さんに言うてくれたら良かったのに…」
声が震えていた…。
悲しみ、怒り、色々あったのだろう…。
「美咲を助けてくれてありがとう」
父は、祖母に深々と頭を下げた。
「美咲、お母さんと話しをしてくるから。美咲は心配せんでもえぇから…」
そう言うと私の頭にポンポンと手を置き、母の待つ家に帰っていった。
父が話しをしたところで母は変わらない…。
私は確信していた…
祖母との暮らしは快適だった。
もう無視される事もない。
学校から帰ったら祖母と買い物に行き一緒に台所に立った。
寝る前にはきちんと勉強もしたし、充実していた。
でも、気掛かりな事があった。
祖母はあまり裕福ではない。
私が居候しているとお金もかかる…。
「おばあちゃん、お金大丈夫なん?」
私が聞くと
「子供がお金の心配せんでもえぇ」
同じ返事が毎回返ってくる。
後、半年したら高校生だからバイトしよう
私は心に決めた。
必ず恩返しをしよう
大好きな、大好きなおばあちゃん。
ありがとう…。
数日後、父が無理やり母を連れて祖母の家に来た。
「美咲と仲直りせぇ」
…仲直り?
無理だ…。
仲直りも何も私は悪い事はしていないし
父は母に私との会話を促すが私と話しはおろか目も合わさない。
お父さん、無理だよ
父は何も分かっていなかった。
「美咲は悪くないよ。」
祖母が私を庇って言ってくれた。
そうだよね…。
私 悪くないよね…。
自分に問い掛けた。
「みんな、美咲の味方ばかりして!!」
母が声を上げて泣きだした…。
「美咲がお母さんを悪く言うのが悪いんや!!」
母は泣きわめきながら叫んだ。
「どう考えても、お前が悪い」
父に言われる。
ますます、叫びだす
しばらく、その繰り返しだった。
私は父と母のやり取りを冷静に少し冷めた感情を持ちながら見ていた…。
もう、母て関わるのが嫌だったし、
祖母の家で喧嘩してほしくなかった。
(やるなら他でやってや…)
自分の事が原因ながら、母の態度に呆れていた。
祖母と二人で目を合わせ
ため息をついた…。
「お父さん、もういいよ。私はおばあちゃんと暮らすし…」
早く終わってほしくて父に言った。
「美咲の家はここやない。お母さんと仲直りできたら前みたいに戻れる」
父は自信たっぷりに言った。
何も分かってないなぁ…。
「美咲ちゃんは、おばあちゃんの家でおるべきやと思う。そんな母親と一緒におったらダメになる」
おばあちゃんは私を分かってくれてる。
それだけで嬉しかった。
「お母さんが最初に私を捨てたんよ…。だから、私はおばあちゃんと暮らす」
父の目を見て自分の意見を伝えた。
「お父さんは納得できん…。でも、美咲が、ここにいたいんやったら…。」
父は渋々納得したようだ…。
「お母さん連れてまた話しに来るから」
父はそう言うと、泣いている母を連れて家に帰った。
グゥ…
私のお腹がなった。
笑えた…。
こんな時でもお腹はすくんだ…。
深く考えるのがバカバカしく思えた。
「おばあちゃん、ご飯にしようか」
祖母を見て笑った。
祖母も私を見て笑った。
「そうやね、お腹すいた、ご飯ご飯」
まるで何事もなかったみたいに私達はご飯を食べた。
食事の間、私も祖母も母の事には触れなかった。
これでいいのかも…
母の事は考えないようにしよう。
そう、決めた。
私は母の話しをしなくなった。
祖母も母との事に触れない。
父は数日置きに訪ねてきていたが、最初ほど家に帰るようにとは言わなくなっていた。
私の母はいない…。
そう思うようにしていた。
祖母の家で暮らし始めてから数カ月後、私は志望校に合格し高校生になった。
分かりきった事だったのだが、母は卒業式にも入学式にも来なかった。
でも、私には祖母がいた…。
高校生になってからも、私と母の関係に変化はなかった。
相変わらず父は数日置きに祖母の家に訪ねてきていた。
帰ってこい…。
そう言うのは止めたみたいだ。
その変わり、毎回
「何か困っている事は無いか?」
そう言うようになった。
「大丈夫だよ」
私は毎回そう答えた
本当は言いたい事が山ほどあった。
お父さん…
本当は修学旅行費用の積み立ているんだ…
修学旅行に持って行くお小遣いも…
資格を取るためのテストのお金も…
言えない…
父は私と母との間に挟まれて、やつれていた…。
「お父さん…、円形脱毛症ができとった…」
ある日、祖母が言った…。
「私のせいかな…」
久しぶりに泣いた…
祖母も泣いた…。
「お父さんも間に挟まれて辛いんやろ…。でも、美咲ちゃんのせいやないよ」
祖母はそう言ってくれたのだが
責任を感じずには、いられなかった…。
お父さん、ごめんなさい…。
何度も、何度も謝った…。
私の高校入試の時、父と母は入学費用の事でもめていた。
母は私にお金は出せない。
そう言っていたのだそうだ。
やっぱり…。
私はそう思っただけ
不思議じゃなかった
母なら言うだろう。
父が説得し、渋々費用を払った。
その他かかる費用は父のお金から出す。
そう決まった。
しかし、生活費を入れると父の自由になるお金は僅かしか残らない…。
私は知っていた。
母は多額の借金をしている…。
しかも、母は父の名義で借金をしていた…。
自分の名前で借り入れが出来なくなったから。
それが理由らしい。
祖母と暮らすようになってから母の事を色々聞いた。
母は自己破産をしていた…。
父には秘密で…。
後々ばれる事になるのだが…。
自分の名前を使えない…
自己破産のせい。
昔から母の浪費癖はひどかった。
何にそんなに使っていたのかは分からない。
子供の為にお金を使う
そんな事は全くなかった。
母は自分以外にお金を使う事を嫌っていた…。
学校の集金や給食費でさえ出すのを嫌った。
自分の洋服や化粧品等は買っていたのだから、お金が無い訳ではなかった。
私は学校でいつも恥ずかしい思いをしていた。
恥ずかしい
惨め
そんな思いをしていたのは妹も弟も一緒だった…。
子供がそんな思いをしていても母は全く気にしていなかった
気にする方がおかしい…。
むしろ、そんな考えだったのかもしれない。
私は、自分の家庭の経済状況を知っていた…。
父が払っても払っても借金は無くならない。
父は相当苦労していたようだ。
私は、父が苦労しているのを知っていた
だから、尚更負担をかけたくなかった。
幸い、私の高校はアルバイトを許可していた。
アルバイトを頑張れば何とかなる…。
私は頑張った。
私は授業料以外出してもらう事は無かった。
最初の方こそ父に頼りたい。
そんな甘えたい気持ちがあったのだが…
何とかなるものだ…
母と毎日顔を合わさなくていい。
その事が気持ちを穏やかにしていた。
でも、高校三年の夏頃から状況は変わった。
ある日、いつものようにバイトから帰ると弟が祖母の家の玄関の前でうずくまっていた…。
「瞬?どうしたん…」
心細かったのだろう…
私を見上げると目に涙が滲んでいる。
その頃、祖母は他県にいる叔母の具合が悪く、私は祖母の家に一人で暮らしていた。
「いつから待ちよったん?」
鍵を開け、弟の手を取り家に入った。
私は直感で母の事だと分かった。
「何かあったんやろ?大丈夫やから話してみぃ」
弟は小さな声で言った…。
「お姉ちゃん、僕って臭い…?」
そう私に聞くと涙をポロポロ流した。
いじめだ…。
絶対にいじめだ…。
とっさにそう思った。
当時、周りには母の本性は知られていたし、その事でいじめられたのだろう…
私はそう思った。
でも、違った。
弟の口から信じられない事を聞かされる…。
「お母さんが僕の事臭いって言う。僕は臭いんや…」
唖然とした…。
「どういう事!?」
意味が分からなくて弟に聞いた。
弟は泣きながら必死に訴えた。
「お母さんが僕の事臭い臭いって…。友達のおる前で…」
弟は友達にいじめられていたんじゃなかった。
母にいじめられていたのだ…。
母は暇さえあれば弟を臭い臭いと鼻をつまんで言っていたのだそうだ。
「全然臭い事なんてないが!!」
私は泣きながら弟に言っていた。
何回も。
何回も…。
…許せない…
怒りが込み上げ、私は玄関を飛び出た。
走って母がいる家まで行き乱暴に玄関をあけた。
ガラッ!
母は何事かと驚いたようで私を見たが、すぐ目を背けた。
私は三年間母と口を聞いていない。
でも、そんな事どうでも良かった。
「あんた瞬に何て事言うたんや!あんたなんて母親やない!!」
怒りで我を忘れて、そこらへんにあった物を次々と投げつけた。
死んでしまえばいい…。
そんな感情もあった…。
自分の母親を あんた呼ばわり…。
私は今まで母親の事を あんた なんて呼んだ事はなかった。
理性なんて吹き飛んでいた。
「何するんや!人殺し!!」
母は物を投げ返してきた。
「自分の息子に臭いやなんて、良く言えたな!!最低や!!」
母は私の怒りの理由が分かったらしく、顔を真っ赤にしながら
「冗談で言うただけや!!」
そう言った。
「冗談で言うてえい事と、いかん事の区別もつかんのか!!」
私の家庭は冗談でそんな事を笑って言いあえる家庭ではなかった。
たとえ、母が冗談で言ったのだとしても弟が傷ついているのは確かだ。
私は隣の部屋に入り、そこらへんにあった袋に弟の荷物を放り込み、家を出た。
「勝手な事せんといて!!」
母はそう言っていたが私は無視した。
とにかく、弟をこの鬼のいる場所から連れ出さなければ…。
そう思った。
私は弟の荷物を持ち家を出た。
走って、
走って…、弟が待つ祖母の(私の家)に向かった。
家に着き玄関のドアをあけた。
弟は薄暗い玄関で小さくなりながら私を待っていた。
ヒック、ヒック…
可哀相に泣きながら
私の持って来た荷物を見て察したようで
「僕、こっちで暮らすん?」
そう訪ねた。
「そうや、姉ちゃんと暮らそう」
弟の顔を覗き込み、そう言った。
私は自分のした事が正しかったのか不安だった。
ひょっとしたら、弟は母といたかったのかも…。
そんな事も思っていた。
その当時、弟はまだ九才。
母親にまだ甘えたい年頃だろう。
でも、あんな母親といるよりは…。
その不安はすぐ消えた。
こっちで暮らす。
そう言ってから弟が泣き止んだ。
そして、私を見て言った。
「お姉ちゃんありがとう」
私は間違ってなかったのだ。
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