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闇の中の天使

No.30 13/02/19 19:01
中谷月子 ( ♀ ezeSnb )
あ+あ-

≫29


「ゆかりちゃん、カンさんのお家にお使いに行ってくれないかしら?」
朝食を終えて、庭のあのベンチでぼんやりとしている私に、美恵さんが声をかけた。
「はい」

「これをね、カンさんに届けてもらいたいの」
美恵さんは、桐の箱を丁寧に風呂敷で包みながら言った。
「これはね、とーっても大切な物なの。だから、途中で道端に置いたりしないで、しっかり持って行って欲しいのですが、お任せしてもいいかしら?」
「はい、分かりました」
「カンさんのご自宅は、あのバス停を越えてそのまま真っ直ぐに行けばあります。お隣りですし、一本道ですから迷うことはないでしょう」
「はい」
「では、くれぐれもよろしくお願いしますね」

私は美恵さんが包んだ風呂敷包みを手にした。
重っ!
今度は両手でしっかりと持って、洋館を出た。

私はここに来た時の道を歩いた。
バス停までは十五分くらいだった。
手が痺れてきたので、包みを抱きかかえるように持ち替えた。

それから、私は重い包みを抱えて舗装されていない土の道をずいぶん歩いた。
美恵さんは‘お隣だから…’そう言っていたが、そのお隣はなかなか見えなかった。
もう、一時間近く歩いただろう。
秋に入り始めているというのに、私は体中から吹き出すように汗をかいた。
着ているTシャツの肩でこめかみに流れる汗を拭った。
包みは、重さを増していくようだった。
とうとう両腕も限界で、私はいったん下に包みを置こうとした。
‘途中で道端に置いたりしないで…’美恵さんの言葉が頭をよぎって、下に置くことはやめて、再び歩き出した。
いくら歩いても、民家らしきものは見えない。
一本道だと言っていたから、迷ったわけではないだろう。実際に、別れ道はなかった。
私は無心になって、汗を拭うこともやめて歩き続けた。


その時、遠くの方に萱ぶきの屋根がチラリと見えた!
「あった!」
私は思わず感嘆に似た声を上げた。




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