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闇の中の天使

No.28 13/02/19 18:58
中谷月子 ( ♀ ezeSnb )
あ+あ-

≫27


「今日も、いいお天気ねえ」
美恵さんは笑顔で言った。
「はい」
「ゆかりちゃん、あなたは高校生でしょう?学校に行かなきゃいけないわねえ」
「でも…」

あんな事件を起こした弟の姉である私を高校は強制的に退学させることはできないにしても、他の生徒や、その保護者達は黙ってはいないだろう。

「わたしの古くからの友人が、高校の理事長なの。昨日ね、電話をしてあなたのことを話してみたら、受け入れてくれると今朝、返事のお電話を頂いたの。あなたさえ良ければ、転校してはどうかと思って」
「本当ですか?私を…事件のことを知って、受け入れてくださるんですか?」
「ええ、本当ですよ。あなたの弟さんの話もちゃんと説明しています」
「私、学校に行きたいです!でも…、あのことがばれたら…」
「大丈夫ですよ。あなたは‘多田’ではなく‘曽根崎由香里’という名前で学校にいくのですから」
「曽根崎…美恵さんの名字を使わせて頂いていいんですか?」
「ええ。戸籍もわたしの所に入れて、あなたは新しい人生を始めるのです」
「戸籍?」
「そうです。…一つ、悲しいことをあなたに伝えなくてはいけません」
「悲しいこと?」

美恵さんは、少し下を向いた。睫毛の影がこれからどんな悲しい話を始めるのか私を不安にさせた。

「今朝、カンさんが新聞を届けてくれました。そこに、あなたのお母様が病院でお亡くなりになったとありました」

「お母さんが…?」

「ええ。とっても残念なお話です。お母様は自ら命を断たれたようです」
「自殺?」
「親として、お亡くなりになった女子生徒の責任を取ります、といった内容の遺書があったそうです」
茫然とした私の耳には、美恵さんの言葉はもう入って来なかった。
今までさわさわと風に揺れていた草花の音も、何も聞こえなかった。
「おかあさん…お母さん…」

私はそう呟いて、頬に熱いものが流れることで自分が泣いているのだと思った。
美恵さんは立ち上がり、私の隣にそっと腰を下ろすと何も言わずに私の背をゆっくりとさすってくれた。


私は、溢れ流れる涙を我慢することはしなかった。




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