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沙耶香の女装官能小説2(女王様と作家編)

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作家
18/07/30 08:24(更新日時)

物語

わたし水越沙耶香(仮名)はスカウトした麗奈と共に暮らしながらモデルは二年目そして新たに官能作家の道を歩むことになるが隣の部屋に麗奈の後輩早紀が引っ越してきたからたいへん。
朝は淫らにフェラチオで起こされ三角関係はますます広がる。
しかし麗奈は私の担当をはずれ代わりに担当するのはお堅い真面目な美少女。また舞先生の教室に通いながら新たに築かれる性欲に餓えた人妻たち……。
さらに私をヘッドハンディングやスカウトしようとする女装レズ雑誌の美女やAV業界、テレビ局など。私はさらに道に迷い葛藤するなか性の道を模索する。
麗奈に黙り女装SMクラブ“ヴィーナ”の女王様(見習い)としても活動していく。

物語は前回からそのままの正当な続編。
女装小説ではありますがLGBTや性同一性障害などではなく著者が女性や女性的なモノに憧れる作品です。
何度も言いますが誤解なきよう願います。

17/12/08 07:46 追記
ちなみに著者は前シリーズ同様に男性です。

登場人物紹介

水越沙耶香(♂)
ソフトサディストの性癖を持つ女装。麗奈にスカウトされそのまま沙耶香として同居。サディストではあるが本格的なSMは実は苦手。だが麗奈や早紀から愛され神無月社長の女装SMクラブ“ヴィーナ”で女王様(見習い)も兼任。

矢口麗奈
沙耶香をスカウトした張本人。もとレズ。

ニノ宮早紀
麗奈の後輩。まだ未熟。

18/01/16 05:50 追記
登場人物追加設定

冴木流菜(るな)
麗奈や沙耶香が通うフィットネスクラブに通う人妻。沙耶香とセックスをしサインを求めるが実は彼女は……。

美如月愛那(みさらぎあいな)
麗奈に代わり沙耶香の担当になった早紀より年下。実は沙耶香の学生および郷里時代を知り下着泥棒をされた被害者。ただし個人的感情の怨恨はないらしいが……。

本田透子(透・♂)
早紀に過去にいじめられた女装初心者。

No.2571700 17/12/06 06:06(スレ作成日時)

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No.251 18/02/22 20:57
作家 

もう一回しようか。
「え、だけどお仕事は」
「一日くらい寝てなくても平気。帰りの電車で少しだけ寝るつもりだし」
早紀の呟きに透子は時計を気にした。すでに深夜二時頃、いまから寝たとしてもほんの数時間程度の浅い眠り。
早紀は頬にキスをし肩を抱き始めた。
「いや?」
「……いやてわけじゃ」
「それにいまのうちに味見をしておかないと撮影の時にランジェリーや衣装でコーフンしちゃうし」
口実であった。必然的に男性は女性モノのランジェリーや服を見ただけでも興奮するもの。
「朝には透……、透子はバイトでしょう」
「うん……」
「あたし帰っちゃうんだし……」
「うん……」
「さっきからうんばかり……」
セックスをし互いにこのまま静かに朝まで過ごすくらいの穏やかな気持ちは互いに知らずにあったがそれでは色気がない。
からかうように早紀は口に出す。
「またむかしみたいに襲っちゃうぞ」
「……そ、それはやだ」
「なら、愛し合おう……?」
ほんの少し小悪魔な一面を彼女は自覚した。
こうやって甘えるとたしかに異性は数える程度は思い通りになるが、あくまで早紀はセックスの時にしか使わないようにしていたが、男性とて馬鹿ではないのだ。慌て言葉を変えた。
「だ、抱いて……朝まで」
あ、これも同じようなものと気づくがあんがいこんな場合に言葉は選びにくい。
じっと透子は見つめていることに気づく。
「……一回だけにしましょう先輩」
なんだ。やりたいじゃんと思いながら先輩という表現に自制が感じられた。
「……うん。いいよ」
ふたりしてちいさいベッドに横になり身体を撫で弄る。互いの牡臭牝臭の匂いが鼻腔を突くようで熱くなる。
「パンティ着けてる?」
「え、あ、ハイ」
先ほど慌て着けたらしく女性モノ下着を着けた下半身がスリップの裾を上げ見えた。
なんとも卑猥なビジュアル。女装の美しさや卑猥さは何も外見だけではない。ランジェリー姿は女性のそれと同じで全裸よりやらしい。
早紀はそっと彼の手を掴み淫部の膨らみにあてた。
「触って……」
「ん……」
透子の掌に柔らかい布地の内から若い毛と淫豆、花唇の感触が欲情を誘う。女性器の膨らみはふしぎ、男性器ほどの膨らみはないが小高い丘をイメージや草原な感じ。さわさわと触っているだけで胎内を思わせる。淫靡な丘だ。

No.252 18/02/23 05:18
作家 

さわさわと透子は女性器の膨らみを下着越しに触れている。
ぎこちないというよりは撫でている。
少しだけ肌や下着を通してぴりぴりびりびりみたいなちいさな電流を通しているみたいで早紀は声を漏らす。
「ん……」
「気持ちいいですか」
「ん……、なんか包まれてるみたい」
沙耶香との行為ではなかった穏やかで安らぎみたいな時間と思う。性的快感を求めるとはなにか違う。
「キス……いい?」
「いい……して」
唇が重なり舌が絡み唾液が粘液のように絡みながら身体が芯から再び熱くなる。
以前の自分を少なからず恥じるところがあった。沙耶香やそれ以前の女装モデルを取っ替えながら時に取材と称し女装子達と遊ぶ日々。
以前に沙耶香が言わんとしたことがいまになり違う男性を通してわかる気がした。
愛されるより愛する。
いまはこの一語を言葉にしないで伝えたい。
誰に?
透ないし透子に。
はあ、と互いに桃色な吐息をして唇から唾液が垂れた。
「うふふ、元気になった」
「な、なにが」
「オチ×チ×……」
「きゃ……」
「きゃて女の子みたいに」
バツが悪そうに少し黙る透子の頬や髪を撫でる。こういう時沙耶香ならどう伝えるのだろう。
「……いいの。じ、自分に自信持ちなさい」
「え……」
「いまの透子があるのはあたしの責任でもあるから」
と言ってしまいもし透子以外の学生時代のいじめ被害者がそれを聞いて押しかけたら身体もたないよと冗談めかし悲観した。
透子は言う。
「責任て負い目感じないでください……」
負い目。それがないわけではないがまだ時間が必要かもしれない。
「うん……」
「ちょ……」
ランジェリーに包まれた女の装いの彼は早紀に抱きつかれ戸惑いながらおそるおそる肩から背中を抱いた。
互いの肌の触れ合いに安堵した。
「ベッド」
「いきましょう……」
抱きあい再びキスをしそっと倒れた。
「透子」
「ん……」
「オチ×コ……すごい」
「……もう」
透子は思う。
先輩はとてもエッチ。むかしは軽蔑や嫌悪があったが話をして頑張り屋でもあるしエッチ。だけどとても女の子らしい。
「あたし……」
透子の次の意外な言葉に早紀は驚くことを知らない。
「こんなこと言うのもなんだけど、あの沙耶香さんに負けたくない」
え、と声が溢れた。
ええ〜!?

No.253 18/02/23 13:45
作家 

深夜なので騒がしくしてはまずいと思い口を閉じたが驚きは胸の内の動悸を脈立てる。
さながらぺニスがどくんどくんとした音が聞こえるようだ。
沙耶香さんをライバルにしたい、と透いや透子は口にしたから。
「……沙耶香さん?聞き間違えじゃなかったら沙耶香さん……?」
自分の耳がどうかしたと思い間抜けな返答しかできない。混乱してると思う。
「ええ、あの……いけません?」
「いや……いけなくはないけどまだあの人モデル二年目だしいま……よそに行っちゃったし」
ふと早紀は沙耶香について気持ちが醒め始めた自分に気づきかけていた。しかし透子は言う。
「そんなの関係ないです。先輩と親しそうだったし……」
あ、と思い当たる。
透子は早紀が沙耶香の彼女以上の存在と誤解してるのだ。
友達以上ではあるけど。
「ちがうちがう。あたしは……彼女じゃないし彼女でもなかった、と思う」
「え、それて……」
「……あまり言えないけど友達以上な人なのはたぶんほんと。セックスも……したし」
ちいさな驚きが混ざる呼吸や喉の音がした。傷つかせ驚かせた。
だけど事実だからしかたない。だけど誤解を招いてはいけない。
「あの人……」
「……あのあたしを好きになってくれて憎いのはわかるけど、身体だけの関係だったと思う。沙耶香さんが好きな人は……他にいる…から…」
それが自分でなかったのはかなしいことだが、去年手を出した段階で沙耶香は自分を本音では相手にしてなかった。
だからセックスの際に虐められ快感を味あわせながらいつかは離れるように仕向けていたかもしれない。
「わかってくれた?」
「……わかりたくないけど。先輩の言うことなら……聞きます」
歳が若くまだ整理がつかないのは何となく伝わる。自分は沙耶香にもとから暗にフラれていたのに、距離が離れ身も心も離れていったいまだからわかる。
「……つ、続きしよ」
「ん……ちょっとだけ、先輩をいじめていいですか……?」
上目遣いにお願いされ胸の内がキュンとなったと同時に軽く背筋が震えた気がした。初夏なのに。
「あ、あの……いいけど。身体に跡が残ったり痛すぎは……」
「……SMなんてしたことないです。ちょっとだけ、プライドが傷つくかもだけです」
彼はベッドの側にある棚からあるモノを出した。それは卵状のピンクローターだった。

No.254 18/02/23 19:10
作家 

ん、ん……ンン。
ピンクローターの刺激がショーツの上から花唇を刺激しベッドの上で足を卑猥にM字に開き早紀は羞恥心でいっぱいだった。
オナニーを見せてほしいというのが透子のお願いだった。
室内をローター付けて歩けとか四つん這いになってよりはましかもだけど……。
「あ、あまりまじまじ見ないで……よ」
「だって……」
ローターは(弱)だがぶるると震えながら淫豆や花唇を刺激し透子は淫部を興味深く見つめていた。やらしい。
「あ、あんたも、お……オナニーくらい…しなさ……して…よ」
「そんな……」
「なら挿入(い)れさせないわ……。このローターちゃんで果てて朝にはハイ、さようならよ」
自分だけオナニーしてる恥ずかしさからつい口走ったがもちろん本気ではない。透子は見つめながらも同じように膝を曲げ足をM字にしスリップの裾から卑猥な膨らみある形状のパンティが垣間見えた。
「ん……先輩」
「そ、それでいいわ……」
「ンン……」
うわ、と声が漏れる。可愛いらしいパンティの内にはぺニスがあるだけで扇情的に見える。しゅっしゅっとぺニスとパンティが擦れる音がちいさく伝わる。
ん……はあ…はあ…。
透子の吐息が荒い。そういえば沙耶香が女陰恐怖症になった際にあれこれしたのだった。
「ちょっといい?」
「や……」
爪先でパンティの内にある膨らみに触れ柔らかく堅くなんともいえない感触。爪先で触れているが、ローターの震えがあり爪先から足で犯してるような淫らな錯覚をおぼえた。
「ん……」
「沁みできちゃった?」
「……うん」
手元をのけたパンティにはカウパー液の沁みがじんわりできていた。
「はあ……すごいね」
「……ふ、ふつうです」
「女装なのに?」
「……ん」
肯定否定ともつかず俯く透子の側に寄り肩を抱き頭を撫でた。
よしよしと。
「ん……」
「いいの。変態でも」
透子の鼻に早紀の匂いが伝わる。シャンプー、リンス、石鹸の爽やかな匂いのなかに汗や体液、愛液からの性行為の匂いがツンとした。
「……三時。もうこんな時間。しよっか」
「……はい」
最低でも早紀は午前中の電車に乗らないと職場には間に合わない。
「先輩……」
「なんかいいね」
そっと淫部に肉棒をあてながら若い肉唇にゆっくり挿入してゆく。
朝までの一回の淫らなシンデレラ。

No.255 18/02/24 20:37
作家 

中性的ではあるが透子はランジェリーに気を使ってるせいか女性ぽく見え早紀はふしぎな気分。
だが透子はあることを言いかける。
「あの……早紀。ボク……」
「イヤな話なら後にしましょう。いまはここから元気をもらいたい」
熱く堅いぺニスをそっと握りながらイカさない程度に撫でた。
透子は思う。復讐をしようとした自分が内にあるのは事実と思う。なのにこの人はそんな自分さえ受け止めようとしてくれている。
「挿入(い)……いれますね……」
「う……うん……」
挿入される瞬間は早紀はいつも痛みが全身に走るが、沙耶香ほど透子の肉棒は挿入に痛みはふしぎとない。相性かどうかはわからないがスムーズな感じ。
「ッ……」
痛みはさほどない。軽い刺激のような電流が伝わる感じ。早紀は思う。
出産はもっと痛いんだよね……。
なぜそれを思ったか。
処女ではないが花唇を押し開け奥の襞をのけていく肉棒。
「あ……ッ、ンン」
痛みと共に性的快感が伝わる。指先や爪先に力は入るがそれは拒みではない。愛情なのだとわかる。
「ん…はあはあ……」
「もっと……奥まで……して」
「は……い……」
無理な挿入を透子がしないのはセックスに慣れてなく彼もまた女装をおこないならうことで異性たる女性の身体や心のむずかしさはそれとなく理解しているから。
女性にはなれないが女性を大切にしたい点は沙耶香とふしぎと同じ志しや信念があるらしい。
だから早紀への復讐はもとからできるわけではないが、自覚するのは少し先である。
「ッ……いい」
「ハアハア…ハアハア…」
「動いて」
ベッドが軽く軋み揺れ始めた。パンパンと肌と肌が触れていく。
あたたかく熱い。
互いに性器同士の交わりながら感じていた。汗や体液、カウパー液や愛液が胎内の奥で交わり毛細血管が無数に開く。
「あん…アン…あ…ん」
「ん…はあ…ハアハア……」
甘えるな喘ぎ声と繰り返す呼吸が性交を表現するようだ。
「ん……ハアハア……」
「……だ、だいじょ…うぶ……?」
「……は…い…」
性経験が少ない透子だがイカないようにするのは本心からはむずかしい。気を緩めたらイッてしまいそう。
異性の襞は幾重に重なり包みあたたかく母性を感じた。むかしはこの女性器にレイプまがいに喰われたのに。
いまはまるでちがう。気持ちいい。

No.256 18/02/25 15:24
作家 

気持ちいい。
素直な気持ちだった。学生の時にはおもしろ半分で犯された同じ女性器なのに、まったくちがっていた。
「ん……いい」
「ほんとですか……?」
「ん……気持ちいい」
学生時代には学校のなかでスケバンと名を馳せていた女性が目の前では女性らしい顔立ちをしていた。
キツいけどまったりぬるぬると包容感ある感触がたまらない。母の胎内に還る感覚に近い感じ。透子にはそんな感覚があった。
「ん……」
「……きゃ」
早紀は慌てた。抱き合っているなか若い陰毛や淫豆に触れられ身体中に電流が走るようだ。ただでさえ挿入され相手の顔が真正面にあるのに。
「さ、触るならい、言ってよ……」
「だって……」
「顔だって、見えちゃうし……」
思わず早紀は相手を真正面に見れないことに気づく。
あたしは透、いや透子を好きになり始めている。さんざん沙耶香さんと麗奈さんの仲をじゃましちゃったのに。
沙耶香はこんな女性になりたいのだろうか。あるいは透子も……。
「さ、……せ、センパイ?」
気づくと彼女はほろほろと涙を流していた。
「ん……ふぇ…ふぇ〜ん……ん。んん。な、なんでもないから」
泣くのをごまかしながら笑みしながら感じるだけで精一杯だった。
すべてではないが、女装者が残酷な存在とそれとなく理解してしまい沙耶香や透子が残酷かつ美しく醜い存在と心のどこかでわかった。
「あ……ハアハア…ハアハア……ん」
「やん……」
「センパイ、早紀……イキそう……」
感情の高ぶりを感じ女陰がキツく締められ身体が熱い。そっと指で涙を拭い唇で水滴を口にした。
「ああ……」
「やだ……」
「しょっぱい、あまい……」
涙なのに彼はひたむきに頬や唇にキスをした。若いぶんただひたむきだった……。
透子は思う。
この人を泣かせてはいけない。
瞬間だった。
「イキます……」
「ああ…きて…きて…」
射精の瞬間が伝わる。熱く太くなった男根が胎内で膨らむ。
「イッちゃう」
「イク……!!」
深い夜から朝陽が少しずつ照らすなか安アパートの一室のカーテンの隙間からわずかに光が届く。
あ……ああ……。
イクイク!!
はしたない声を上げ堪えながらふたりの身体は熱くなる。
透子は抱き締めながらキスをし相手の舌を絡めながら射精を感じた。
シンデレラの時間は終わる。

No.257 18/02/26 05:03
作家 

朝までのほんの数時間ふたりは軽くキスしたり抱き合ったり時間を過ごした。
スズメがさえずりをする頃に互いに着替えをはじめ透子は透の姿に戻り早紀も少し皺がついたスーツに着替えささやかな朝食をした。珈琲や紅茶、トースト、目玉焼き、サラダなどかんたんではあるがセックスの後のお腹を満たすには早紀に充分だった。
連絡するから、と早紀は言葉短くに伝えた。
「はい……」
離れるのが名残り惜しい時間に思えたがお互いに当たり前だが仕事がある。透子は朝からスーパーのバイト、早紀は出版社に戻らないといけない。
二度も朝帰り。また白い目で見られちゃうことは胸の内で覚悟していた。
「あ、あの」
「ん?」
「に、匂いが気になるなら、あそこの銭湯は早朝からやってますので」
「や……。ん……ありがとう」
女装者はふつうの男性よりは気を使う傾向があるかは微妙だが、透が気を使っているのはわかった。
玄関を出る頃には初夏の眩しい太陽が町を照らしていた。
「いってきます。気をつけて帰ってください」
地方の町とはいえ人がいないわけでなくアパートの側を学生やOL、サラリーマンの姿があり大人になると一時的な別れでも切ないと思う。
透の姿が消えた時にはほろりと涙が頬を伝った。
「あ……」
愛されるより愛することを知り理解した彼女はこの地を離れる切なさがあった。
涙や身体を洗うために昨夜の銭湯にいくと、朝早いのに年配の人達が性別に関係なくいた。番台にお金を払い衣服や下着を脱いで身体を洗う。火照りは醒めていたが胸の内は切ない。湯船に浸かり息をした。
おや、あんた。昨日の。
呼びかけたのは昨夜の地元のおばあさんだった。
「お、おはようございます」
「帰る前に一風呂かい」
ええ、とさすがに身体は洗ったからバレないよねと少し焦るがおばあさんはにこにこ笑みしていた。他の人達も。
「なんか寂しそうだね。よけいなこと言ってすまないがね。年寄りなものでね」
「いえ、たぶん寂しいのと思います」
素直な言葉が出たことに安心もあった。昨夜のセックスで彼女は自分の内を知ってしまった。
賑やかな銭湯のなか寂しい自分がいる。ただそれだけなのだ。
朝の混雑ななか帰るよりほんの少しだけまだ現実に還りたくない思いがあるが愛那に悪い。
風呂から上がりコーヒー牛乳を口にした。甘く苦い味。

No.258 18/02/26 05:41
作家 

双星出版社のある建物の側に立ち背中向こうにあるやや向かい側の新星出版社がある建物を見つめた。
沙耶香さんはライバル出版社が側にあるのを驚いただろう。
スーツの襟や袖、スカートを整え双子の受付嬢に挨拶しエレベーターでフロアーに向かう。時間は十時半過ぎ、最低限午前様の内に戻れた。
息を一回して挨拶した。
「お、おはようございます」
瞬間編集担当のほぼ皆が自分を見つめ愛那はやや軽蔑的ながら駆け寄るより先に主任が目の前に立った。
「おはよう」
やや冷たい声に応えた。
「おはよう、ございます」
「二度も朝帰りはいい度胸だけど。それなりの収穫がないと許さないわよ」
「え……と」
「私でもなくここにいる皆でもなく、読者がよ」
威圧されプレッシャーをかけられたのが伝わる。出版業界で恐ろしいのは〆切を守らないなどいくつがあるが読者こそが最大の味方であり敵になる存在なのだ。
「あ、ハイ。それについては沙耶香さんの代わりはあたし、いえわたしに……まかせてほしいのですが」
「それについては美如月とよく話し合うこと。お土産か?」
ハイ、と慌て前に持ち渡した。主任はわずかに目を細めた。
「まあ無理をしないことだな。あちらに水越沙耶香が行ってしまった以上どんな存在になるかわからない。少し休め」
主任の言葉は半ば呪縛であったが目の前から去った時に安堵し室内の雰囲気はいつもに戻る。
愛那が手を引き誰もいない応接室で睨む。
「なんとか取り繕ったんですから感謝してください」
「悪かった。ごめん、貸しひとつにしとく」
「ただでさえ先輩、いえ沙耶香さんがあちらに行ってしまい社内はピリピリなんですから」
ごめん、と詫びた。
女装の後輩と一夜を過ごしてる場合ではないのだ。
ふと気づく。
「麗奈さんは?」
少し愛那が目を逸らし小説担当の課に手を引き彼女の様子に気づく。仕事のできる彼女のペンを持つ手が動いてなく新刊向けの企画さえ滞りがあるようだった。
「矢口さんこれモデル候補の資料ですが……」
「ああ、後で見るわ……」
「お願いします」
表情が青いのだとわかる。まるで悪夢のような初体験をした女性のような性的嫌悪のようないやな何か伝わりがある気がした。
「何かあったみたいですが……」
「あの冴木とかいう……」
嫌な予感はそこにある気がした。

No.259 18/02/26 13:57
作家 

昼休み合間を見て早紀は愛那と共に声をかけ愛那にお弁当を頼み屋上に連れ出した。
「何かありました?」
さりげなく聞くこともできたがうかつな遠回しでは伝わりにくい。
ほんの一年前に沙耶香を誘惑しこの屋上がほぼ始まりだったのが皮肉であり遠いむかしのようだ。
「お姉さ……いえ、冴木流…菜に……」
「レズ……ですか」
手にした自販機の缶が震え耐えられなくなった座るベンチに置いて何かに耐えられないように泣き出した。早紀の肩に顔を預け人目もはばからず泣いていた。
「わたし……ひどい女……」
「……ちがいます。麗奈さんはいい女性(ひと)です」
「だけど……」
「過去はよくわからないけど、いまを大事にして……」
いまの自分が言えるのはそれが精一杯。
なんとなくわかったのはあの冴木流菜に犯されたと思う。愛する女装の異性とかつてのレズ相手。去年のままの自分ならこの機に乗じ何らかの手段を講じ沙耶香を奪いいつかは別れただろう。ハンカチを渡し麗奈は涙を拭った。
見ていた他社の社員たちは見て見ぬ振りをしてくれ安堵した。
「あの」
「なに?」
歳上の同性なのにいまの麗奈はちいさく見えた。彼女もひとりの女性なのだと肌に感じる。呼吸しとりあえずいまの気持ちを伝えた。
「こんな時になんですけど……さ、沙耶香さんはあたしいえ……わたしはあきらめる、かもしれないです……」
ようやく耳に入りいちおうの理解をしたであろう麗奈は涙を拭いてティッシュを出して鼻を噛んだのにくしゃみをしまた鼻を噛んでから目を丸くした。
「え……と意味がいまいち理解できないのはワタシ……?」
混乱があるせいか口に出してる日本語さえトンチンカンであった。
「……沙耶香さんをあきらめるかもしれないです、と伝えましたが。わかります?」
「……え」
ええ〜っ!?
ベンチに置いた缶が転がるくらいに立ち上がり再び屋上は人目を呼んだ。さすがにふたりが喧しいと思ったか目線で注意する者、場の空気を読み早くに去る者さまざま。
眉間に指をやる麗奈は吐息した。
「あきらめるて冗談かなにか……?」
疑いの瞳がじろりと見つめ複雑な色が見えた。意外に一途なのかなと素直に思う。早紀は言う。
「冗談でこんなこと言いませんよ……」
そこへ愛那が買い出しから戻り缶を拾い彼女も目を丸くしていた。
なにこのふたり?

No.260 18/02/26 15:12
作家 

事情を聞いた愛那はふと思う。
沙耶香さんはあたしのモノになるかもと思ったら早紀に睨まれた。
「な、なんですか」
「一回やそこらセックスしただけでオトコが自分のモノになるなんて甘い、とだけ言っとく」
む、と思うが麗奈の気持ちを考えたら複雑。社内では沙耶香と麗奈の関係は何かと話題だった。ようやく巡り巡り沙耶香と分かりあえたがいまは屋上から見えるやや向かいの新星出版社のもの。
「どうするんですか」
「沙耶香さん?あちらに行ったんだから他社のことに口出しはできないわ」
あっさり言う早紀に麗奈は見つめ返し言う。
「あなた変わったわね。さんざん私がスカウトしたモデルに手を出しては失敗したのに」
「お互い様です」
麗奈はサンドイッチ、早紀はホットドック、愛那はトンカツ弁当を口にし少しだけ笑った。
ここに沙耶香がいないことに一抹の風があるだけだ。
愛那は意見する。
「取り戻すことはできないのですか」
「契約書。あれがあちらの手の内にあるし沙耶香のサインは本物。まずムリ」
「そうですね。契約書は社会のルール、口約束なら場合ですが言ってないではねのけられますが」
悪どい、と麗奈と愛那は思う。小悪魔な早紀は頭がまわるのだ。
「美如月、あなたも少し変わった?」
「え、なんですか」
話題を変えられ彼女はきょとんとする。ふたりは上から下へ見つめる。気づいた。
「腕にシュシュなんかつけて可愛い」
「え、あ、これは」
「トンカツを口に入れたまましゃべらない。はしたない」
咀嚼しごくっと飲み込みペットボトルの烏龍茶を飲む。
「……これはべつに」
「愛那さん。むかしあたしに仕事中にむやみにオシャレしてはいけないと言わなかった?」
もとスケバンの早紀の凄味に愛那は冷や汗。
「む、むかしのことです……」
「その辺にしときなさい。美如月が女性になった証拠。赤飯でもいる?」
首を横に振る。
「さ、沙耶香さんにはいちおう感謝してます……。意地悪したあたしを……」
「抱かれて一人前か。だけど気取っちゃダメ。女の格を下げるから」
複雑な笑みをしながら麗奈は愛那にいちおう助言をした。
わからないのは沙耶香の考えだ。契約書がある以上不利は理解できる。
だが、あっさりと身を預けすぎ。
麗奈は考える。
このまま流菜のもとに預けていいのか。負けられない。

No.261 18/02/26 18:28
作家 

昼休み後に早紀は神無月社長に呼ばれた。
本田透、いや透子は使える素材なのかと聞いた。この会社では社長直々に呼ばれ確認されるのは半ば必要的なこと。早紀は慎重に言葉を選び口にした。
「まだ女装経験は浅いですが、化けさせることはできると思います。いえばけさせてみせます」
わずかに言い淀むのは沙耶香の存在がよぎりそれが敵や壁としてか不安かわからない。
ただ好意を持った相手を敵にしてしまう表現できない複雑さから解放されなければ戦うことも勝つことも上回ることもできない。
赤いスーツの神無月社長の眼鏡が輝き少し振り向いた。瞳は相変わらず怜悧、先を見ているような。
「勝てるのね?」
この一言は重く冷たい。つい最近まで沙耶香さんはこの会社に所属したモデルなのに声だけ聞けば情を感じないかのようだ。緊張感が伝わり答えた。
「か、勝ちます!やらせてください。本田透、いえ透子を契約の方向でお、お願いします……」
暫し沈黙が流れた。神無月社長の手には透子の資料らしいものが握られていた。
「……わかったわ。だけど今度は美如月とうまくやらないとあなたはいつまでもセカンドよ」
ぐっ、と悔しさを堪えた。社長に呼ばれたのは自分も透子も使える存在かという問いかけ。
「はい……」
声にようやく出して気持ちを堅めようと思う。
沙耶香さんは敵という意思、それがないと愛那も自分も透子も立場がない。ぐらぐらと頭の中が揺れそう。
瞬間ふらっと頭から倒れそうになった時だ。誰かが自分の腕や肩を支えた。
「寝不足のようね」
気づくと社長の顔が側にあり少し疲れがあるように見えた感じがした。気のせい……?
「あ、いえ……」
「少し休みなさい」
ソファーに座らされ社長のお付きのメイドのひとり麻由が現れお茶を淹れテーブルに置かれた。
「すみません……」
「男と一夜を共にしたことを咎めるつもりはないけど、無理は禁物よ」
「はい……」
麗奈はこんな神無月社長と張り合うつもりだろうか。成人雑誌の社会は食うか食われるかの世界。
神無月社長は見つめた。
「あなたも少しは想像できるだろうけど、“ヴィーナ”には沙耶香さん透子さん以外にも女王様候補は他にもいるわ」
ふつうに世間話のつもりなのか話題が変わりカップの珈琲がむせた。
「し、社長……?」
話を聞きなさいと言わんばかりの空気がある。

No.262 18/02/26 20:49
作家 

早紀は社長室を出た頃にはいつになく疲労感が身体を襲っていた。
「先輩……?」
「ああ、何でもないわ」
呼びかけた愛那でもわかるくらい何でもないわけがない表情とわかるが、いまは聞きたいことがあった。
「社長の許可は?あの本田さんの件は」
「許しが出たわ。だけど私とあなたが協力しないと新星出版にいいようにされるわ」
「え……」
言ったことが飲み込めない表情は早紀にはわかるがあえて伝えた。
「あっちには社長が認めた沙耶香さんがいるの。麗奈さんのむかしのレズメイトも……。どうなるかわからないけど力を抜いたらこちらの……負けよ」
「そんな……」
性経験が少ない愛那にはわからない言葉だった。早紀は言う。
「いまは私情を挟まないこと。新星出版に負けたくなければ中途半端はできないわ」
「っ……」
「目の前の仕事をこなしてこそプロ。今夜私の部屋で夜通し会議だけど、いい?」
「あたしの部屋では」
キッと早紀は見つめ返し吐息した。
「古巣に戻ったらあたしにとっては私情が入るわ。必要な資料をまとめて……対沙耶香さん用に勝てるように透、いえ透子をモデルに仕立てないとならない」
「……はい」
「沙耶香さんを敵と思わなければあたしもあなたも先はないと思うつもりで臨みなさい」
言ってることは正しく思われたが沙耶香にすくわれた彼女には辛い決断がいる。
「……わかりました」
ふたりが資料室に姿を消すのを麗奈はそっと見ていた。
沙耶香が敵。
彼女もまた愛した女装の異性が敵ということを認めることはむずかしかった。
だが早紀や愛那が協力しようとしてる姿は素晴らしいことのはずなのに心から喜べなかった自分がいた。
そこへスマホが鳴り手に取るとかつて愛したレズメイトの声がした。
『こんにちは麗奈』
「……」
『あら、返事もないのね』
「……なに」
自分でも驚くくらい低く暗い声がした。
沙耶香を奪い返したい。たとえどんな毒牙にかかっても取り戻さないとまた大切な存在を失う。もういやだった。
だが流菜は言う。
『ドライブでもしない』
「……ええ」
『ならそちらに迎えにいくわ。可愛がってあげる』
電話の向こうで流菜の妖しい笑みがしたのが伝わる。感じてはいけないのに同性愛に慣れ親しんだ身体の芯は熱い。
『じゃあね』
冷たく電話は切れた。

No.263 18/02/27 12:12
作家 

私の中で何かが変わりはじめていた……。
朝昼夕夜の執筆の間を縫うように桜子たち近所や町中の人妻女性がやってきては世話を見てはセックスを求める毎日。
麗奈や早紀たちでさえここまで淫乱ではなかったと思いながら私は桜子を招く。
「待てなかったの。あれから?」
ほんの二、三日程度なのに飴と鞭を使い分けられた人妻たちはただただ従順だった。彼女たちの瞳には私が女王様に見えるらしかった。
桜子は人妻の魅力を放ちながらも触れるか触れまいかと指が震えていた。
「ん……ンチュ」
「はあ……。主人とはちがう」
そう、と唇を重ねるが舌はほんの先しか絡まさないこともある。意識的か無意識に身に付いた“女王様の素質”は彼女たちを虜にしていき私は“沙耶香”ではない存在に飲み込まれていく……。
“なんとかしないと、あなたがふこうになる”
“なんの話”
“沙耶香”の伝えるふこうが何のことか私にはわからない。
ただ性欲や情欲が身体を動かす。決まって二、三回射精した後に“女王様の素質”が動かす。
「クリチンポ好き?」
仁王立ちし流菜が用意したであろうランジェリーははじめは質素だったが二、三日後くらいはやや装飾あるものに変わっていた。
だが彼女のある策略とは気づかない。
ショーツからぺニスは牝を求めけっして世の男性たちに比べたら大きくはないはずが女の装いのギャップや魅力によりちがう物体のようだ。
ああ……、と桜子はおそるおそる手に触れた。ぺニスなど主人やそれ以前の異性で見慣れてるはずなのに。
「いいわ、クチになさい……」
甘く深い吐息が鈴口や亀頭に触れ仁王立ちした私の足は震えた。私本来の理性が抗い戸惑いがあらわしていた。
「ふん……」
「どうしました?」
「何でもないわ」
“女王様の素質”の私は身体さえ乗っ取る。男女の意識さえ統合征服しかねない深く暗黒面のようだ。鼻で笑みしたのはそれだった。
はあ、くちゅれろれろ……んぐんぐ。
「オトコのモノだからどれも一緒なのに」
「さ、沙耶香様のは……オトコのモノではありません。女王様……」
「お世辞はいらないわ。お世辞を言う人は好きでないわ」
びくっと怯え私の冷たい瞳に桜子は口にぺニスを含むのを躊躇った。が私は構わず言う。
「いいわ。好きになさい」
「は、ハイ……ん」
口内に含み歯や舌、喉で味わう。

No.264 18/02/27 15:16
作家 

ちろちろレロレロングングゴクゴク……。
人妻たちのフェラチオは独身女性のそれより貪欲かつ艶かしく性感帯を一、二度交わしただけで心得ているが“女王様の素質”に動かされる私は容易に射精に至らない。だから桜子に限らずこの町の人妻たちはかんたんに性欲が満たされない。
女装の変態に膝まずいていることに町の奥様としてのプライドさえこのちいさなプレハブのなかでは忘れられる淫靡な空間のようだ。
「ああ……まだイキませんの……」
「イクかイカないかをなぜ桜子さんが決めるの?桜子さんにオチ×コがあればいいのかしら」
「ち、ちがいます。私が欲しいのは沙耶香さん……沙耶香様の男の…オスの……アレが……」
麗奈たちとプレイする時でも私はできる限り卑猥な淫語をわざと避ける傾向があったが“女王様の素質”の私はちがう。じっくりゆっくり卑猥に言葉責めをし相手を胸の内から辱しめていく。たとえばこのように。
「ご主人のを舐めたらよくはなくて。女装の私よりさぞや立派でしょう」
「ああ……」
「ああ?なにかしら」
「た、たしかに主人のは沙耶香さ……んより立派ですが……」
そこで言葉を止める桜子に人妻としての苦悩や葛藤がわずかに見え指は刺繍のあるガードルやショーツの内へいき口を開く。
「ふ、ふつうに一、二回して……おやすみしてしまいます」
「週に何回かしら」
「週末……くらいにしか」
「セックスレスでもないのに?」
本来の私が触れないことを“女王様の素質”は相手の心の内面それも奥深い部分に惜し気もなく触れていく。
“やめて”
“女王様のあなたには聞こえない。いえ聞いてない”
しばしして“彼女”から声が返る。
“そう、やめないわ。○○にも沙耶香にもこの時間は渡さない”
“私”たちはふたりして目を合わせた。意識的存在だから身体はないが驚く挙動が伝わる。それを知り“女王様”は動き出す。
桜子は告白する。
「たしかに主人と一緒になり新婚生活を経て子どもが生まれつらい時もありましたが、子どもが生まれてから思っていた生活とはちがったかもしれません」
「しあわせではないかしら」
「ハイ、しあわせです。たぶん」
告白の時は聞いている人妻たちアキたちも口を開かない。みな事情は似たり寄ったりなのだ。
「しあわせなのにこんなことをしていいのかしら」
“女王様”は残酷に進める。

No.265 18/02/27 20:32
作家 

フェラチオをしながら淫らな告白を続けさせる“女王様の私”に私はなす術がない。
桜子は言う。
「いまはセックスの……快感に…浸りたいんです……」
「わかったわ。好きなだけ愛して」
愛しなさいとは言わないが“私”は意識の内で目を背けたくなるが“沙耶香”は見てと促す。“沙耶香”は中立的に冷静なようだ。
ショーツから出た牡の肉棒や睾丸を桜子は現実逃避したい欲望のまま羨望的に淫らなフェロモンを撒きながら味わう。
「ン……ン…ン!ハア…ハア…ン…んぐ」
「なかなかイカせられないのね。ガマン汁と唾液で綺麗だけど」
「あ…ああ……」
身体の内では射精したい感覚さえ“女王様の私”は巧みに自制していた。もしかしたら遅漏であった疑惑(?)を何らかの形でわかりコントロールしているのだろうか。
だがそれは違った。
次の瞬間に仁王立ちした私の身体から牡の肉棒を自ら手コキし精液が桜子の美しい表情や吐息していた口内に飛沫が熱く飛んだ。
「ああ……」
「イクじゃない。どう?」
「き、気持ちいい……。もっと……もっと……」
恍惚とした桜子やアキたた他の人妻たちは飴と鞭で支配されていた。初夏なのにまるでプレハブ内だけは真夏の淫夢のような空間なのだ。狭い一室であるのに。
そこには唾液やフェロモン、汗や体液、カウパー液に愛液など淫汁、香水や化粧の匂いが支配し男性は私ひとりなのに淫らな楽園なのだ。絵画によくある裸体や淫靡な衣装の女性たちの姿のような世界だがそれとはちがうアブノーマルな時間なのだ。
桜子は恍惚としたまま言う。
「私のえっちでどうしようもないおま×こに……沙耶香さ…まの…オチ×コを……お願いします」
成熟した淫唇が上品なブランドものらしいショーツの隙間から見えクロッチのわずかに厚い生地には沁みがお漏らしのように見えていた。
「挿入(い)れないなんて言ってないわ」
「ああ……ン」
けっして広くないベッドの上でシーツは私や桜子たち女性の体液や汗で身体の匂いしかしない。流菜は知ってるはずなのに取り替える様子がない。
“また……”
“女王様のあなたがしてることよ……”
“沙耶香”の声に“私”は身体を取り返したいが完全に“彼女”に支配されていた。
「こんなただの人並みなクリチ×ポなのに」
「かまいませ……ん……」
肉棒はずぶずぶと花唇に挿入されていく。

No.266 18/02/28 06:35
作家 

桜子たちといつもの淫らな時を過ごす私はこの時カーテンが少し隙間が開いていることに気づかなかった。
それより少し前のこと双星出版社の向かいの歩行者用道路で待つ麗奈の前に赤いスポーツカーが滑るように姿を見せ流菜は明るく笑顔を見せた。
「乗って」
「……」
助手席に座る麗奈は彼女の手の内に乗ることは危険なこととわかりながらもその方法しかないことに内心苛立ちがあった。流菜は言う。
「ドライブに行きましょうか」
「遠慮します」
「ならホテルかな」
「強姦罪で訴えます……」
「え〜!?レズなのに」
はしゃぐ流菜の声に以前沙耶香に教わった同意のない性行為は強姦罪やそれに類する罪になることは実社会にあるのは事実だった。スマホの画面にそれを映し見せた。
唖然とする流菜。
「この前貴女が私を襲ったことも訴えようと思えばできるんです」
「訴えるのかしら」
麗奈のなかで葛藤が生じる。学生時代に男性が興味が持てないなか彼女は優しくあたたかく自分を包んでくれた彼女。
「……今回は訴えません」
「甘いわね」
車が赤信号で止まるなか軽く頬にキスされまわりのドライバーや歩行者が目を点にし見つめていた。
「や……」
思わず身を堅くした。レズの甘美な雰囲気が嫌なのではない。目の前の流菜に怯えがあるのだ。
いまの彼女はかつて自分を愛してくれた女性ではない。何かに飢えたような牝の獣のような悪意がある感じがした。
「フン、麗奈があの沙耶香とかいう変態によほどご執心なようね。だけど男なんて馬鹿な生き物よ」
「な、なによ」
「会わせてあげる」
青信号になり車は住宅地に入り昼間の静かななかをすり抜けるように入り裏庭の側にあるプレハブの少し隙間の空いたカーテンを顎で示した。
「……え、さ、沙紗耶香……」
そこで見たのは信じられない光景だった。見知らぬ女性たちと性交を重ねまるでハーレムのような淫靡な楽園だった。
「カレは私の、いえ私たちのモノ。執筆しながら撮影までの間は毎日のようにセックスしてるわ。おかげで私もくたくた」
麗奈には彼女の言うことが真実に残酷に聞こえた。だが実際はちがう。桜子たち人妻は麗奈より沙耶香に心酔し飴と鞭を巧みに使われ麗奈は最近は近所では沙耶香との取り次ぎ役にすぎない。またセックスもあれから沙耶香とはしてない。
嘔吐に似た感覚が麗奈にある。

No.267 18/02/28 16:17
作家 

流菜は彼女が口許を押さえ嘆き悲しんでいることに心から驚いた。
噂に聞いた限りでは業界内では女装モデルを取っ替え引っ替えしながら遊んでいると聞いていたから。
だがいま見た反応は愛する異性や相手への気持ちそのままだった。顔を青くし目や顔を背けたいが必死に堪える女性の姿だった。
「フン。男なんてあんなものなのよ」
流菜は人妻たちが沙耶香の術中にハマッてはいるがいまは新星出版社所属なのだ。言うなれば沙耶香も手の内なのだ。
ハアハア、と嘔吐を堪えた麗奈は気持ちを整え隣の流菜を見つめた。
「なにかしら」
「お姉さ……、冴木さんは沙耶香と何回したの」
「なにそれ、一度きりよ」
それを聞いて彼女は何故か安心した。理由はなんとなくわかった。
この人は男も沙耶香もまだ理解してない、いわばサディストを秘めた沙耶香の複雑かつ愉悦ある性行為を知らない。あの人妻たちが愉しむならそれはしかたない。早紀や愛那と変わらないだろうとあえて気持ちに蓋をした。
しかしこれがいけなかったと後に知る。
もう互いの関係が元に戻らない歯車はゆっくり自然に動き出していた。
「はあ、冴木さんがどの程度男や女装男性を知ってるか知らないけど」
「なに……」
いままで自分に圧されていた麗奈の瞳が輝いた。
「沙耶香を甘く見ないこと……」
「意味がわからないわ」
ならそれでいいと思う。少なくとも自分とのセックスが半ば沙耶香を育てたかもしれない。
神無月社長の女装SMクラブ“ヴィーナ”で女王様候補とされる沙耶香。
わずかに身震いした。この時の身震いを彼女は思い違いしたかもしれない。
沙耶香は自分の大切な人だから、きっと戻ってくると信じたに違いない。
瞬間ドライバー席の流菜は麗奈の唇を襲った。
「ンンン……!!」
「ん……はあ。あなたは私のモノよ!むかしもいまも!」
芯から身体が熱くなり麗奈はスーツやスーツの下にあるブラやショーツを包む肢体が感じるのがわかる。まだかつてのレズ経験が疼くのだ。
じわりじわりと流菜はディープキスをし舌や唾液を絡め胸に触れる。
「ん……はあ…ン」
「身体は忘れてないのね」
「……ああ」
甘美な雰囲気が車内を包む。キスを離し流菜は再び麗奈をホテルに誘う。毒牙からまだ逃れられない……。
沙耶香……。
遠ざかるプレハブを麗奈は見つめた。

No.268 18/02/28 21:12
作家 

プレハブの中で桜子を私は快美に悶えさせていた。女装を除けばただの性交なのに。
だが“女王様の私”は容赦がない。人妻の成熟している花唇に淫らに挿入していき深く深く根元まで入れていく。
「っ……おお……ンン」
プレハブは一応防音仕様の壁らしいが昼間に誰かに聞こえるのではないかと牝の獣の悲鳴が伝わるようだ。
桜子は流菜に次ぐほどのマダムや奥様たちの準リーダー格、実際はこの界隈のリーダーらしく流菜はあくまで性的関係を取り持つ元締めのようなもの。女性同士の人間関係はわかりにくいが彼女が孤立しない数少ない接点が桜子たち三人だったらしい。
理性のある私がたまたま引き当てたのに“女王様の私”がいまや主導権を握りつつある。
恍惚と汗や体液を髪や毛細血管や淫部、太腿から垂らし彼女は唇を求める。
「沙耶香様、おクチを……」
互いに淫部で結合し他の者たちが見つめるなか羞じらいなく女装の異性に求める淫靡な人妻。だが残酷に“女王様の私”は言う。
「唾でいいわ」
「ああ……ん」
挿入はされたのに腰は焦らしを与え粘りある唾液が洞窟の天から滴る水滴のように相手の口に落ちる。
「ん……」
「こんな私の何がいいのかしら?」
聞いている意識内の“私”さえ冷えるような声。理性の象徴である眼鏡を外し水越沙耶香から別の女装者の存在になっていく。
「こんな淫乱なおま×こ……懲らしめてア・ゲ・ル」
いつの頃からか身に付いた挿入した途端に無数の若く赤い襞を強引に破るようにし子宮深くに突き刺さる。
「ぐっ……おおお……」
アクメに達しそれさえ越えるようなオルガスムスに一瞬が長い時に桜子には思えた。
苦しいはずなのにいつもは貞淑で町内の奥様の姿いや心の鎧が無惨に剥がされていく。彼女にはもしかしたら人間ではなく牝の獣という感覚しか宿らないくらい快感が支配していた。
見ているアキたちも息を呑むほどだが目を離せず自慰をやめられない。
凄い……。
ああ、私にも……。
だが沙耶香に要求することはできない。気まぐれな女装の女王様は相手をランダムに選び犯す。
「こんなペニクリに犯されて悦ぶなんて」
「……は…あ…ン。あたまが……白い……感じて…いたい」
桜子の唇を容赦なく私は左右から摘まむ。美しい人妻から唾液が溢れる。
「感じなさい、この時だけでも」
ゆっくり腰を振っていく。

No.269 18/03/01 06:05
作家 

気持ちいい……。
成熟した女陰は女装のペニクリを挿入される前からとろとろと愛液を垂らしベッドや室内を淫靡にしていく。
“これが私”
“あなたよ、沙耶香。いえ……○○クン”
“沙耶香”は“私”の本名で呼ぶ。いままで避けていたのに目を背けないでと言わんばかりに諭すかのよう。
“○○、それに沙耶香”
“女王様の私”が意識の内から呼びかけた。
“私の正体は○○自身であり沙耶香。貴方も私なのよ”
“私”は“沙耶香”がぎょっとするのを見つめた。
“誰!?あなたは”
「ん……おお……あん…あん」
「女性というのも大変ね。欲求不満を抑えられなく流菜さんがいないとセックスできないなんて」
桜子や人妻たちは後ろめたさを感じセックスをしあるいは自慰をするなか身体が凍える思いがしたにちがいない。
「桜子さん程度なら不倫サークルのひとつやふたつは作れたでしょう」
「っ……は、ハイ」
「なぜ、そうしなかったの……!」
腰を跳ねベッドのスプリング上下に揺れるほどに大胆なセックスをし問い詰める。
「……や…ややンン…!感じる……!」
しかし相手が甘い声を上げた途端に腰を残酷に離さんとし桜子は慌てる。両足で掴まえることはできるがしてはならない。
「あ……ああ」
「答えるの?」
「はい……。実は以前にアキさんたちとつくっていました。この町やネットを介しての不倫サークル……」
まさに飴と鞭である。
私があくまでプレイの一環である焦らしと告白を巧みに“女王様の私”は使い辱しめを彼女たちにさせていく。
桜子は甘い吐息を漏らし告白する。
「子育てや日々の生活に疲れていた私や私たちは……セックスや不倫といういけないことにしあわせやスリルを求めていたかもしれません」
「しれません。いまこの時も……?」
いま現在おこなっている行為中でさえまさに容赦ない。誰もが目を伏せる。背徳感を心や精神から求めている非日常。
「……ハイ、いまも求めています」
「よくできました」
再び挿入されるがさらに容赦ない。犬のように四つん這いにされベッドのスプリングが壊れるのではないか私の身体が壊れるのではないかくらいに激しいセックスなのだ。
「ん……おおお…」
「満足しないのね……。この淫乱おま×こは」
成熟に近い花唇の内の無数の襞に快感を感じているのに熱い射精はまだない。

No.270 18/03/02 05:51
作家 

女性たちは性行為をしてる時は他の誰でもない性への牝になれるのだとこの時の私にはわからなかったかもしれない。
女装の私と交わることで苦しい現実から逃れられる背徳な日々。
「っ……凄い。沙耶香様……」
「子どもが出来ても知らないわよ……」
「ああ……」
蒸せ返るような汗や体液、愛液、カウパー液や香水や化粧の匂い。女装と女性の匂いでしか満たされない淫靡な時間。
女性たちは射精の時をいまかいまかと待ちわびる。精液などそこら中の男たちがいくらでも持ってるのに。
沙耶香としての“私”の内にいる“女王様”は胸やお尻を愛撫したり平手で赤くなるほど叩いたりサディストの一面を露にしていた。
「牝に成り下がって」
「ああ……私は牝です……」
花唇はぐちゅぐちゅと音を立てながら奥の襞は無数に肉棒を絡み付ける。締め付け時に呼吸するように花唇を開きアヌスからでさえも呼吸してるようだ。
「ああ……ンン」
「まだイカないわ」
「ああ……しあわせ……です……っ」
悶え牝の獣と化す桜子。ぐっと肉棒が襞の内で大きくなるが射精へまだいたらず淫らな時だがいやいや首を振りフェロモンがより刺激する。
「アキさんたちにも見せてあげなさい」
一度結合を解いて私はベッドの側の壁にもたれ吐息し正面に見えるように体位を変えていく。
「はい、皆さまに見せてあげて」
「わ、私、桜子が沙耶香様のオチ×コをおま×こをくわえます……」
「そのまま……」
ゆっくり腰を下ろさせ再び淫音が微かに伝わり聞こえるはずのない花唇が男性器をくわえ襞を破らんばかりの音が伝わるかのように桜子や女性たちも息を呑む。
桜子の背後にいる私は冷たく口角をあげ眼鏡がなくコンタクトさえなく見えないはずなのに女性たちの快感や背徳に浸る表情は見えていた。
ああ……。
ハアハア……。
イキそう……。
唖然呆然としながらも理性が残るなか自慰をし淫らに呟く。
密室のショー、それもプレハブの外はいつもと変わらない日常。営業のサラリーマンがたずねたり配達の車やタクシーが通りすぎたり井戸端会議をする主婦や近所のおばあさんなど。
だけど彼らは知らない。
「っ……はあ…ン」
「沙耶香様?」
「気持ちいいわ」
「あ、ありがとうございます……」
そこは“女王様の私”でも偽ることない本音らしい。一時の性欲が満足される。

No.271 18/03/03 08:13
作家 

人妻の成熟し経験豊富な女体に“私”が耐えられないことは“女王様”も彼女たちもそれを知りながら快感の時間を満たしている。
「イクわ……」
「ああ……ン」
甘い声と共に淫唇や襞からぐちゅぐちゅと音が伝わり射精感がショーツの内の睾丸が熱をさらに帯び膨らむ。
「ッ……くるわ」
睾丸からの射精に耐えたい気持ちと射精したい気持ちが瞬間重なるが花唇のあたたかい感触にかなうはずもない。
「イク……!」
「ああ……ンン。き、きてる……!あ…はあ…ン」
「ン……う、受け止めなさい……」
女装の女王様である牡と純粋な女性の牝の匂いが広くないプレハブに広がる。“女王様の私”は射精に至ると自然と意識から姿が消す。腰を痙攣させる意識からしだいに。
「ああ……ん」
名残りを惜しむように桜子の胸や背中、うなじや指さえ抱き締める。
それを相手は感じるのか快感に果てていくなか指でさえ彼女たちは包み込む。
花唇からは噴き出す愛液とカウパー液、牡の精液などがどくどくと出て吸い込む。甘い吐息がこぼれる。
「あ、ハアハア……沙耶香様……」
触れ重ねる指は桜子の臀部に触れられる。まるで胎内に精液を宿すかのように。
しかし意識を失っていく私。射精に慣れていても意識を失う快感、罪悪感などがある。心のどこかで麗奈を裏切る辛さ。
ハアハア……と息遣いのかそれでもアフターセックスを心がける馬鹿なのだ。
しかし意識は一瞬でも失う。
桜子は意識を失いかける私の頭を後ろ手に撫で自らの淫部と肉棒を撫でていく。
背徳の時間は終わりを告げていく。
……。
次に私が気づいた時には同じベッドの上。目を開ける私の前に桜子たちは身なりを整えていた。いつもと変わらない日常のために。
「沙耶香様ありがとうございました……」
「ムリをなさらないでください……」
「あ……」
彼女たちは私にタオルケットなどをかけながら貢ぎ物のように飲料水や手作りの料理、時には羞じらいながら自らの下着など置いていく。
「あの」
思わず私は言う。
「何か」
「いつもひどい言葉を言ってセックスをして……」
「言わないでください。沙耶香様に言われなくてもわかっています。だけどもう少しお願いします」
彼女たちの背徳感を理解してるのは“私”ではなく“女王様”。
プレハブの扉が閉められ去っていく彼女たち。

No.272 18/03/03 09:27
作家 

彼女たちが去った後、私は身体をタオルなどで拭いて清潔を保つ。
まだ流菜は戻っていないようだ。
トイレやお風呂場に限っては使用が認められており性行為後は用を足す生理現象がありやむ無く家の中に裏口から入る。用を足し冷静さが戻る。
「身体がもつの……?」
呟きながら彼女がいない時にしか流菜のことを知る時間はない。
数日の間にわかったことは生活感があるのはリビング、キッチン、トイレやお風呂場、庭やベランダくらいらしい。まだ見てない二階を見たい好奇心に駆られる。
気配がない夕方時の一戸建て住宅。マイホームだろうか。だけど女装の、それも下着姿に近いまま家の中を歩くので先ほどの桜子たちとちがう意味で後ろめたさはある。
二階に上がり扉は左にふたつ、右に三つくらいある。
左のいちばん近い扉を開けてみた。
「なにもない……?」
ふと見ると洋間だった部屋らしく畳ではなくフローリングらしき床。壁の方の床は色が変色の跡が見え何か大きな家具か調度品があったらしい。
そっと足音を立てずに進むと何かが足にあたりおののいたが虫などではなかった。
『アブノーマル・シークレット』と書かれた本。
SM雑誌の類いらしく私自身にも学生時代に立ち読み程度の経験はあり出版は新星出版らしい。
開くとSMの女王様や小説、風俗店の紹介や体験談、あとはネットがない時代なので出会いを求める男女の交歓手紙会など。
「マセてたにしては過激……」
素直な気持ちだった。左側の隣部屋、夫婦の寝室らしかったがキングサイズのベッドや本棚、ライトなどがあるが使われてない印象。
何か鼻に感じた。
「下着?男物に女物……よね」
散乱というほどではないがトランクスにランジェリーが何枚かあり手にした。
続いて右側だ。向かい側をそのまま開けるとなにもない空間。物置に使われた感はある程度。
だがなにもない。
そのまま戻るように右隣を開けると意外だった。
「可愛い……」
生活感は例によりないが白や桃などに彩られた女の子らしい部屋が目の前に広がり先ほどランジェリーを手にしたせいもあり勃起があった。
しかしひとがいるあるいは生活してるリアルタイムな雰囲気はない。タンスやクローゼットを開けると女子の制服や下着が丁寧にあった。
いたずらに触れようとしてはいけない自制があった。
次はそのまた隣。最後だ。

No.273 18/03/04 09:07
作家 

そこは先ほどの隣の部屋と似た雰囲気だが男の子の匂いはした。
だけど生活感がさほどない点も似ていた。本棚には男の子向け漫画や雑誌がありバットやグローブ、サッカーボールなどスポーツ用品が置かれていた。
普通の男の子がいたらしいという感じ。
タンスを開けるとブリーフやシャツに混ざり女性モノの下着、やや大人びた感じの柔らかい感じ。妙な違和感があった。
そこへクルマの音がし流菜が戻ってきたのがわかりわかったことが少ないながら足早に階段を下りてつまずきそうになりプレハブに戻った。
「やばっ、持ってきちゃった……」
気づくと男の子らしい部屋にあったパンティを手にしていた。慌て自分のバッグに隠した時に扉が開いた。
「おとなしくしてた?」
「……はい」
「そのわりには毎日お盛んなこと」
私の内にいる“女王様”を彼女は知らない。動悸が激しくなり冷や汗が背筋を伝うようだ。
「シャワーやお風呂いる?」
「はい……」
「なら準備するからプレハブのなかをえっちな空気で満たさないで」
「はい……」
呼びにくるわ、と踵を返す気配があり肩を落とした。監禁にはいたらないが非人間的な生活をさせられているが、下手に逆らうと何をされるかわからない。
わかったのはこの家には流菜以外の人はいないのだろうかという疑念。だけど結婚しているはず……。
ふとバッグに隠したパンティを手にしフェチな私は鼻にあてた。匂いがないと思ったのはわずか。嫌な感じはしなかったが若い男と女性らしい匂いのふたつがする気がした。あとややカビくさい。
いったい何かしら?
つい女言葉が浮かび消え再びバッグに戻した。
「準備できたわ」
「ありがとう……」
フン、と鼻を鳴らす彼女の後をついていきお風呂場で身体を洗う。性行為の有無に関係なく彼女は必ず夕方に帰宅し聞く。
お風呂場に入り身体を洗うがお風呂場も家族がいるはずなのに使用感が少ない。ほぼ私と彼女しか使用してないよう。
あたたかいお風呂から上がりまた下着姿だが下着は新しいものに替えられ洗濯機の稼働音が伝わる。
「沙耶香さん」
彼女の声は私には低く伝わる。複雑な感情があるようだ。おそるおそる私は振り返る。
「なに」
「来週には撮影よ。できたらセックスは一度控えてもらうわ」
冷たい眼差しのなか端的に伝え感情を抑えているらしい。

No.274 18/03/04 14:18
作家 

お風呂と夕食を済ませプレハブにはテレビやパソコンがあるのでひとりでいる娯楽には飽きない。強いていえば外にいけないのが難だった。
人妻たちには流菜を介し私を連れ出したいというが彼女は頑なに断る姿勢らしい。
“逃げれるのに逃げないんだから。馬鹿”
“沙耶香”の声は刺がある。“女王様”ほどではないが時折責める。まるでいつか間違いを犯すのではと思われるニュアンスだかわかるわけない。
「ここと家のなかはとりあえず見れたんだから」
流菜のまわりに旦那さんらしい人はいるらしい。あと子どもさんがふたりだろうか……。姉弟か兄妹……。
広くないプレハブに男女の下着があったことからそれは間違いないらしい。
プレハブから家を見上げた。二階の部屋に明かりは見えるがまわりの住宅と違いあまり声がしないことに気づく。そこへ裏口が開いてアルコールを口にしてた流菜が恥じらいなくネグリジェらしい姿が見えた。
「のぞき見?いい度胸してるわね」
「ちがいます……」
「麗奈はあなたの何がいいの?ナニかしら」
「……嫌味なら聞くくらいの気持ちはあるわ。入りません?」
嫌味を言われる筋合いはないがアルコールを飲まれたのはご家族が気の毒に思い誘った。
扉が閉まったと思うと開き彼女は勝手知ったるとばかりプレハブに入りビール缶とつまみを口にした。
「匂いは取れないわね。ふけつ」
「……桜子さんたちが求めるからです。身体がもたないわ」
「なら断りなさい。あなたの言うことなら彼女たちは聞くわ」
パワーバランスは内と外では変わってしまった。“女王様”が彼女たちを気にいっている限りは断るのは難しい。
ひどく恐ろしさを秘めた瞳で流菜は見つめる。
「私はあなたと寝るつもりはないから」
あてつけのような言葉にむっとしたがわけがわからない。つい私は応えてしまう。
「……挿入(い)れなくても慰めることはできると思います」
「優しくしたら、麗奈のもとに戻れると思うの?甘いわ」
「……失礼します。ん…っ」
「……ちょっ」
何故かキスを求めた。アルコールの匂いや味がする唇は麗奈を思わせた。人妻たちと六、七回セックスしたのに再び勃起していた。
やめ……、やめて!
瞬間彼女は私をベッドまで押し退けるくらいに本気の力が込められた。
「はあはあ……」
「……すみません」
肩を打つ痛みがある。

No.275 18/03/04 15:04
作家 

痛い……。
ベッドの堅いところに肩を打ったらしい。気づくと流菜は睨む瞳の中に心配する色があった。
「大丈夫?あんなことするから」
「っ……」
「待ってなさい」
ネグリジェ姿にも関わらず家から救急箱を持ってきて消毒をし湿布を貼り様子を見て病院に連れていくわと言ったのは驚きだった。
「そんな悪いです」
「誤解しないで。モデルに怪我されたのでは私の立場がないのよ」
あえて私は言った。
「警察に突き出されても文句は言いません」
「何を言ってるの」
「さっきは私自身の意思であなたに唇を求めましたが、……私の中に私とはちがう“女王様の……私”がいます。そいつは危険なヤツかもしれません。」
意味がわからないという流菜に少々話を長くし桜子たちのことを含め一応は理解してもらったようだった。彼女の一声は驚きに満ちていた。
「あなた何者……?」
こういう問いがもっとも困るがあえて私は複雑に視線を這わせ答えた。
「変態でしょうね」
「そんなのわかってるけど……」
「私は自分を受け入れられない弱さがあるから悩むし葛藤するし麗奈……麗奈たちを困らせる悪い変態です」
「……これだから男もあの子たちも」
気になる言葉が耳に残った。
「あの子たち?」
「何でもないわ。あんたなんかと飲むんじゃなかった。身体に何かあったら夜中でも早朝でも私に電話なさい」
突き放すような口振りだが一応の心配はありながら去る彼女の瞳から水滴の輝きが闇に見えた。
「あ……救急箱」
救急箱を忘れてることに気づかないくらい感情の昂りがあったらしい。あの子たちとは誰だろう?流菜の子ども……。
毎日セックスを求められ体力と意識は消耗の一途で回復は食事のたびにしているが自己を保つ保証はどこにもなかった。
「麗奈……」
呟きがこぼれどうしているのか。逃げれるのに逃げないことはたしかに愚かだ。
肩に痛みを感じながら私はベッドの上で意識が失うのを感じた。
夢のなかで私は逃れられない淫夢を見ているようだった。
私は女の装いの女王様をし女装者や女性たちの前にいて黒い革のランジェリーの女王様だった。側にいるのは神無月社長とメイドたち。そこで私は見知らぬ女性たちと性行為を繰り返し風吹先生に行為をしてない時は診られていた。
日常と非日常にしてはあり得ない光景。女王様になるのを断ったからか。

No.276 18/03/04 15:30
作家 

さいわい肩は軽い打ち身程度で日常生活に差し障りはなかった。
だがそれでも流菜はちがった一面を見せ始めた。肩をあまり使わずすむ食事を用意し時にはプレハブで時を過ごした。
人妻は母親でもある。母親らしい一面を無意識に感じておりこれならいい関係を作れたらいいと思ったが甘い考えと週が明けた途端にわかった。
「着替えて。肩はなんともないわね」
気遣いを見せながらもしばらく下着姿でほぼ過ごしていたためブラウスやスカートを身に付ける行為に安堵より複雑な気持ちがあった。
「メイクさせて」
「清楚なわりに桜子たちをひいひい言わすセックスするなんて信じられないわ」
「ちょっ……」
リップがずれ慌て拭い塗り直し髪は彼女がといてくれ整えた。子どもの世話で慣れている感じがあった。
だけどおかしい。生活感がない、部屋に。
いくわよ、と久しぶりに空の下に出され夏になった陽射しが眩しく肌にいたい。車では助手席に座らされ以前の撮影の概要を聞かされた。
撮影はSM写真家小木澄真のスタジオいやSM専門のラブホテルという。
「マゾではないのに」
「アナルに経験ないの?」
「……ないわけではないわ。使わないだけ」
減らず口な私に流菜は興味なさそうに前を見つめた。双星出版社の前を過ぎたことに気づき思わず振り返った。
「麗奈が名残り惜しい?」
「……」
「答えないのね。可哀想だわあの子が」
新星出版社の駐車場に止めロビーからスタッフが集まっている会議室にはスタッフがいた。誰もが私に視線を集中させた。
「よろしくお願いします」
よろしく、と短くみな挨拶した。流菜は一度退出し私はスタッフから席に招かれお茶を出された。
「身体もちますか。こういうのもなんですがウチの会社、撮影ハードですから……」
「気を使ってくれてありがとう。だけど気を使わないで……」
お茶を出してくれたのは若い女性。麗奈や早紀、愛那たち双星出版社の女性たちと似てるようでちがう。
その頃流菜は神無月舞の双子の妹の恋社長をたずねていた。
「準備できました」
「そう。契約が切れるまで使い倒すつもり?」
「はい……」
恋の瞳に双星出版社いや姉の舞しか映ってないようだ。
流菜は思う。
姉妹ケンカに巻き込まないでと思うが利用するされるはこの会社ではお互い様なのだ。気持ちを非情にしないとならない。。

No.277 18/03/04 16:16
作家 

お茶を飲んで気持ちを落ち着けているとある男性が挨拶に来た。
小木澄真です、と。
「あ、挨拶が遅れました。水越沙耶香です」
振り返り相手を見ると私より背は低いがダンディかつ渋い中高年だ。かといって太ってなく痩せすぎではないが渋い髭がありSM写真家らしく優しい瞳のなかにサディストの気配はあった。
「気にしなくていい」
「……はい」
だけど、と彼は声をちいさくし聞いた。
「マゾではないのに撮影は大丈夫かね」
「……大丈夫と思いますが縛られる程度は覚悟してますが蝋燭や鞭は」
考慮するとだけ彼は約束するかのように答えてくれ安堵はあった。
しかしその安堵は打ち破られる。
「申し訳ありません澄真先生。出来の悪いモデルが粗相をしましたか」
「いや挨拶しただけだよ」
「そうですか。なにぶんウチの新人ですから」
流菜は私に恥をかかせたいようだが小木澄真の方が器が大きかったようだ。後で聞いたら流菜は何かと新人いびりをするらしかった。
ほどなく撮影場所のSM専門のホテルへ向かうがそこは都内だった。
「こんなところで……」
「せいぜい虐めてあげるわ」
「……」
何の意味があるのだろう。通されたSMルームは昼前にも関わらず黄土色や濃いオレンジ色の輝きがある大人ぽくアダルトがある部屋。
「沙耶香くん、試し撮影するがいいかい?」
私は澄真に頷く。責める側なのに責められる対象として撮影されるのだ。
はじめは沙耶香のスタイルのままだが胸元のボタン、スカートの裾などを開かせられる。双星出版社は女性スタッフで固められていたが新星出版社は男性がいることに身体の内側は震えていた。
もしかしたら犯される襲われるよりも怖いのは蔑視を含めた好奇の瞳。マスコミの瞳と同じかもしれない。
ほどなく澄真は言う。
「表情はかたいけど気にしないでくれ」
「はい……」
「何を言ってるんです。いつもみたいに被虐的に撮ってください」
「冴木さんは厳しいね。だけど撮るのはボクだ」
わざと茶目っ気あるように答え場は和む。だが女性の視線は構わないが同性である男性の視線は私を頑なによりかたくさせる。
衣装に目をやる。
澄真が得意とする純白のランジェリー、黒い下着やボンデージ。清楚なブラウスにスカート、チャイナドレス、チュチュなど。
縛られるんだ……。犯されはしないが汚される。

No.278 18/03/04 18:42
作家 

撮影が始まり小木は照明やカメラをスタッフと共に話しながら私にも話しかけ表情や衣服の状態を要求や調整する。
凄い……。
撮られているうちに彼が撮ったかつてのAV女優やモデルたちの気持ちに同化していくのがなんとなくわかる。
彼が撮る被写体の特徴は主にモデル女性がひとりで憂いを秘めた表情や少し寂しさがある大人の女性。その女性たちが黒のボンデージ衣装やランジェリーを身につけ縄で拘束される。
「沙耶香さんはなりたかった職業ある?」
澄真は普通に女性に話しかけるように私に聞き答えた。
「女教師かな」
「清楚な感じが出てるよ」
お世辞は本来好まないがリラックスし自然と笑みが出ながらも「うつ向いて」など指示されるが暗い照明がアダルトな官能を満たす。
しかし澄真はSM写真家なのだ。アシスタントが縄を用意し澄真自らが私の後ろ手を縛り肩が震えた。
「怖いかい?」
「はい……」
「いつもは女性を責めてるの」
「ええ……」
後ろ手に縛られるだけとはいえ固い縄の感触が肌に触れる。
え……?勃ってる。
声には出さないがショーツの内側から堅く勃起していた。疑似的にマゾぽい経験は麗奈たちとプレイをしていたせいかあるいは……考えるのはよそう。
念を押す澄真。
「だんだんハードな縛りになったり責めるぽい場面をするけど蝋燭や鞭は控えるようにしたい」
「は、ハイ……」
「でも勃起はしてるから身体は素直かもな」
「……」
複雑だった。
後ろ手に縛られベッドで寝かされるなかシャッターが切られる。SMビデオにある拘束された女教師のよう。無表情な顔も数枚撮られた。
しかし撮影はほんとにハードになってきた。胸はパッドのまま胸の前で縄に縛られブラジャーの形が歪むほどきつく縄にしめられる。
「くっ……」
「大丈夫かい?」
「ハイ……」
撮影の合間に勃起は一時的に萎えるが縛られるたびに勃起しカウパー液が用意されたスリーインワンのショーツを湿らす。ふと気づく。
見てる……。
流菜はいままでとちがいただじっと見つめている。ふしぎとその姿勢は忘れていた麗奈を重ねるようだ。口出しをしないのはプロの写真家に意見を挟むのはよしとしないからか。
だが撮影はさらにハードになり股間や足首まで縄が迫り正直顔が青ざめた。
「股間責めはSMの基本だから耐えてくれ」
やるしかない。

No.279 18/03/04 20:17
作家 

股縄責めと左右の足にこぶがついた縄が張られていた。
「いや……」
哀願するように声がこぼれまるで女装の女教師が責められているが誰も耳を貸さないようだ。そこへ流菜がスマホを耳にあて何事か囁き一旦姿を消した。
「ゆっくり進むんだ……」
小木澄真の瞳から私いや“女王様”と同じサディストの輝きがあった。同じだ、このひとも。
ちがうのは男のままのサディストか異性装のちがいで本質は限りなく似て重なる。
縄のこぶが丸やVの字に縛られたショーツの内のぺニスいや肉棒と睾丸に進むたび痛く軽く刺激し男性器を縛る縄がショーツに擦れる。
「ああ……」
不覚にも感じていた。男性としての本質は拒絶してるが“沙耶香”は感じていた。“女性”として……。
扉が音もなく開かれマゾの快感に葛藤と快感がある私は思わず足を止めた。流菜の後に現れたのは麗奈の懐かしい姿があったからだ。
麗奈。
れ、い、な。
声もなく彼女の名を呼んだが伝わるわけはないが彼女は私の淫靡かつ縛られ拘束した姿にちいさく大きく驚きがあった。
沙耶香。
さ、や、か。
彼女もまた私と同じように声に出さない声で私を呼んだようだ。
「…あ、ああ……」
「いいよ。その表情」
澄真の声は私が感じていると思い違いしたのかギラギラとした瞳をしながら室内に伝わる。
「はあ…はあ…はあ…」
数メートルの縄を歩き終えた時にはショーツの前面はじっとりカウパー液で湿り濡れていた。クロッチの内の睾丸はまさにタマ×ンコと化していたが射精にはいたらない。
麗奈から私は顔を背けながら着替えやメイクし直されランジェリーや衣装を着替えさせられまた縄に拘束された。
我慢しよう耐えよう。いつかは終わる……。
契約さえ済めばこんな淫らな悪夢は終わるはずと開き直り思った。逃げれるのに逃げなかった落ち度だ。
澄真は一部屋ごとに撮影をしまたシチュエーションはことごとく変えていく。深窓のお嬢様、女教師、女学生、ロリータファッションなど変えていく。縄で縛られない時はいいが股縄や亀甲縛り、ベッドに四肢を拘束されたりハードなことに変わりない。
さいわい男性の相手、鞭や蝋燭がないのは救いだが目の前の麗奈の存在だけは葛藤と快感のなかでさらに複雑な感情を呼ぶには充分すぎた。
午前の撮影が終わり昼食時でさえ私たちは目線を交わすことなく互いに無言だった。

No.280 18/03/05 06:13
作家 

それでも男というのは愚かだろう。なんとかして彼女に話しかけなくてはと思うのだができない。
ふと気づく。
麗奈の表情や耳、耳の裏まで紅に染めたように赤い。顔は俯き目を合わせようとしない。しかも流菜がいるのでなかなか話しかけられない。
この場から逃げ連れ出したいがあいにく私は衣服がない下着姿。下着姿の女装と顔を真っ赤にしてる麗奈がもしSMホテルから出てくれば何事かと通行人は思うだろう。
「あらあら、かつてのルームメイトの顔さえ見れないのね」
「……っ」
気丈な麗奈はちいさく身体を震わせ視線がさだまらない。もうひとつ気づいたのは手が膝の上で握られ汗らしい玉が浮き出ている。緊張しているのとちがうがわからない。
「水越さん。ちゃんと食べてください」
流菜の同僚らしい若い子は麗奈を気にしてることに気づき箸や口が止まっていることに気づく。それなりにいいお弁当らしいが味がわかるわけない。澄真はアシスタントと打ち合わせしながら真剣さはうかがえた。
麗奈、ごめんなさい。
心の中で呟くだけで声にならない謝罪があった。新星出版社の中に入れば何かわかるかと思ったがむしろ流菜の術中に嵌まったらしい。
「ごちそうさま」
「どちらへ?」
「トイレ……」
ルーム内にトイレはあるが出来たら公共のトイレを使うようにしたい。ルーム内とはちがいエレベーター付近のトイレは比較的綺麗なトイレだったが下着姿でいつ誰に見られるともわからないが女性用トイレに入り素早く扉を閉め用を足した。
“麗奈さんを苦しめて馬鹿”
「っ……」
“沙耶香”は心の内で私を責めた。逃げられるものなら逃げたいが何もわかってない。特に流菜は早紀や愛那とはまるでちがう形で私いや私たちの関係を壊す存在。
馬鹿なのだ。
用を足しショーツをあげスリーインワンのランジェリーが気持ちいいはずだが澄真いいや流菜の手の内で拘束されていた。それは私だけではなく麗奈もだったことを知る。手洗い場で手を乾燥機で乾かした時だった。
さ、沙紗耶香……。
「れ、麗奈」
声をする方向を見ると彼女がいた。
互いに言葉が出なかった。そこ流菜がいた。
「久しぶりの対面なのにぎこちないわね」
ふたりして彼女を睨むが彼女は麗奈のスカートの裾に手をやりそこには陰部にローターが淫らに動きバイブが女陰をくわえ込み責められる姿があった。

No.281 18/03/05 11:34
作家 

“沙耶香”の言う通りに事は成っていた。
真っ赤に顔や耳にした麗奈はちいさな喘ぎや苦悶をしながら私から視線を避けているなか流菜は残酷に促す。
「久しぶりのルームメイトとの対面よ。ちゃんと挨拶しなさい」
声にならない喘ぎや悶える声が口から漏れるなか麗奈はようやく声を出した。
「久しぶり……沙耶香。ご機嫌は、いかがです……?わ、私は冴木……いえ、お…お姉様に口も耳も……お、おま×こも……調教されレズに……うう。い、いや……こんなこと言えない……」
瞬間彼女はローターやバイブのスイッチを(強)にされ苦悶し膝を曲げしゃがんだ。
「麗奈……!」
思わず私は駆け寄ろうとしたがその肩に触れるかどうか迷いが生じた。私の中の“女王様”がもしも表に出てきたら彼女をサディスティックに責めるかもしれない。
こわい……。
“あなたがやらないなら私がやるわ”
“沙耶香”は私の身体を強引に操り彼女の肩を抱いた。
「さ、沙耶香……」
「もう大丈夫。私が守るわ」
安堵する彼女の前で流菜はさらに残酷に言い放つ。
「さんざん私や人妻たちとセックスしといてよく言うわ。なに?愛かしら。性を超越した関係かしら」
意外な言葉に私には聞こえた。家庭があるならそこには愛や信頼関係がないと成り立たないはずなのに。生活感のない家……。
“沙耶香”が答えた。
「あなたは私とはあの一回しかセックスしてないわ」
「え……」
ほんとなの、と顔を上げた麗奈に“沙耶香”は頷いた。麗奈はローターやバイブを強引に下半身から自ら手で取り流菜にぶつけた。
“沙耶香”は“私”に伝えた。
“あとはまかせたわ。彼女だけでも守りなさい”
勝手なことばかり。
「こんなことして……」
「麗奈……ごめんなさい」
「ううん、私も黙って行かせなければ……」
互いの謝罪を流菜は許せない場面ばかりと怒りを露にした。
「契約書がある限りそこにいる変態男は私や新星出版のモノよ」
その通りだ。契約書がある限り私は逃げられない。
「変態変態てレズも変態でしょう。お姉様……」
流菜に対して麗奈は以前の経験からか受け入れるくらいの余裕はできたようだ。女性は強い。
「レズ以外は変態よ」
おかしい。ならなぜ新星出版にいるのか。
「ならあなたはなぜ新星出版にいるのですか」
私の問いに麗奈は口を噛むように閉じた。

No.282 18/03/05 13:21
作家 

私はゆっくり口を開き流菜に聞きながら麗奈を守るように抱いた。
「結婚していますよね」
「そうよ……」
だとしたらおかしいのだ。たしかに夜に彼女の家は二階や他の部屋に明かりは点くが会話が不自然なくらいに聞こえないことがあった。
確かめる必要があった。
「ご主人と子どもさんがふたりいますよね」
「ええ……」
麗奈は顔を上げ驚く顔をしながらまじまじと見つめていた。
確信にいたってない推理をし相手に伝えるのは無謀か勇気か……。ひとの秘密を暴いていい気持ちは正直自分が暴かれた側を考えると躊躇いがある。呼吸し言葉を選んだ。
「そのわりにはお風呂場や洗面台、キッチンなど使うことが少ないようですが……」
「なによ、その言い方」
「失礼ですがあれだけの家に家族四人程度ならもう少し生活感があると思います。なのに……」
確信にいたらない言葉や表現は失礼なのだがいまここで口に出さないと流菜に負けて膝を折る。深く呼吸しバッグからあの下着を出した。
瞬間彼女の顔が青ざめた。
ここからが完全な推理なのだ。せめて状況証拠だけでも駒をを揃えたかったと後悔もあるがやむを得ない。同時に他人の秘密を暴くのは最低なことと恥じる。
「なのにあの家には流菜さん、あなたひとりしか住んでいないのではないですか……?」
確認するように私はスリーインワンのランジェリーで女子トイレという場で伝えた。
瞬間顔をくしゃくしゃにし平手打ちが頬に飛んだ。
「っ……」
「ひとの家を見たのね」
「なら見られないように澄真先生みたいに縛るなり拘束するべき。いいえ……あなたはわざと私に見せたんじゃないの」
図星だったのか彼女は顔を背けた。
「お、お姉さま……?」
彼女は涙をほろほろと流しそこには私や麗奈を虐めた女性の姿はなかった。そこへ流菜の同僚の若い子がやって来た。
「撮影の準備ができましたが……、どうしました」
「少し時間をくれない?私はいえ私たちは流菜さんとお話ししたいから」
「撮影が長引きます」
「……澄真先生には私を好きなようにしていいからと伝えて」
男性のサディズムに身をまかせるのはさらに危険だが取り引きとしては悪くないと思う。
わかりました、と若い子は引き返していった。
どういうこと?と麗奈は私を見つめていた。
とりあえず場所を別室に移した。流菜は私を睨む。

No.283 18/03/05 15:39
作家 

SMホテルは貸し切りらしく新星出版とホテルの人しかいないらしく誰も私たちを怪しむ様子はなく別室の場所を澄真の部屋に伝え撮影に戻るとあらためて伝えた。
相変わらず流菜は私を睨む。スリーインワンとはいえ下着姿の私に気を遣うように麗奈はバスローブを羽織らせた。
「ありがとう……」
「ううん、こっちこそ」
ほんの少し関係に修復があったように思うが私はすでに引き返せないところに踏み込んでいたかもしれない。
“私”や“沙耶香”ではなく“女王様”が。
日常に彼女は現れないから油断していたかもしれない。
お茶を淹れ私は流菜を見つめた。
「冴木さん結婚はなさってますよね」
「してるわよ」
ふて腐れた顔に慎重に言葉を選ぶ。
「そのわりに二階の旦那様らしいお部屋には何もなかったです。あとお子さんのお部屋姉妹でしょうか?兄妹?あと私が使わせてもらっているプレハブはお子さんたちが学生くらいまでの歳まで使ってたのでは。間違えてたらすみません」
「謝ることなんて」
口を挟む麗奈に私は制した。彼女はふんと嘲笑う。
「それが何?なんの証拠かしら」
気が立ちやすい女性らしいが桜子たちに比べたら従順にならないのはなんとなくわかっていた。だから妥協すべくところはあえて妥協する。
「証拠ではなく推理だから気にしないでください」
「ん……」
「だけどひとつだけ。結婚されてるかあるいは別居か離婚されてる可能性は伝えます」
「え……」
私の言葉に麗奈の方が唖然としていた。バッグから部屋で拾ったパンティを出した。刺繍やレースがあり女性ぽいが匂いが男女混じりが持ち主がわかりにくい。
「それは……」
「家の中で拾いました。誰のです?旦那さんかお子さんか」
「……答える義務はないわ」
頑固な女性。それでいて他人に厳しく厄介。私は話題を変えた。
「桜子さんたちとセックスさせたのは私みたいに女装者をだしに彼女たちより上に立つため」
「そうよ……」
意外なくらいこれについてはあっさり認めた。
「私に桜子さんたちとセックスさせて麗奈にも見せた……?」
この質問は自分でも怖い。麗奈からなにもかも失う可能性はあるから。
「ええ……、今日徹底的にあんたも麗奈も絶望させたかった。なのに」
複雑な表情が感じた。麗奈には愛情を私には憎しみを。
まだ真相ではない。

No.284 18/03/05 18:01
作家 

スタッフが呼びに来て再び撮影開始という。
「このまま撮影続けるの?」
「契約書を確かめ取り返さないと」
私の言うことに麗奈は納得しない表情は当然だった。ライバル出版社のモデルになってるわけだしましてや流菜の家にいる。
生命に危険がない限りはとことん何かに近づきたがる性格。いやこれも性癖だろうか。
流菜を先頭にし私たちは従わせる形にした。
「なんの真似」
「私たちがあなたを裏切ったとまわりに知られたらあなたも都合悪いでしょう。だけど麗奈は撮影の後に解放してあげて」
「誰が……!っ……なにすんのよ」
沙耶香はしゃがみそのまま人差し指を重ね指浣腸をした。
麗奈は思う。相変わらず子どもみたいでおそろしい……。
「してください」
「……わかったわ。なんで麗奈はあなたみたいな変態と」
「……私にもわかりません。互いに恋愛感情からの関係で始まったわけではありませんから」
正直な気持ちらしかった。ボタンのかけ違いはまだ続いている。
澄真は撮影が始まる前に私に衣装チェンジをお願いした。差し出されたのはボンデージ衣装各種。エナメルや皮のスリーインワンやボディスーツ、ブーツなど。あとはバレエのチュチュなど。
「澄真先生には従うのね」
「はあ、沙耶香はただの変態じゃないもの」
ほんと麗奈はさらりと本音を言う。先ほどまでバイブやローターで辱しめをされてたとは思えない。とりあえずボディスーツとブーツである。
後は再び衣装に合わせたメイク。だけどこちらも上品や清楚さがある化粧。
「沙耶香さんそれは」
澄真に手に持ってたローターやバイブを気づかれた。というか気づかれない方がおかしい。
「あ、これは別な部屋で見つけました」
「そうかい?だけど使ったような後があるような」
「昨夜のお客さんのじゃないかしら」
後ろで麗奈の顔が羞恥で真っ赤になり姿見に映る姿から睨み返していた。こわい。
澄真は好奇心を露にし私に要求してきた。
「これ使っていいかい」
「……お手柔らかに願います」
「ローターやバイブ使うぞ」
女装はいいんだけど責められる側になるのは素直に抵抗感ある。しかも今度は同性さらにカメラマン。
変態と自覚してるけど女装生活はいろいろ難がありすぎ。こういう壁に度々ぶつかるから女装は悩む。
撮影が始まり再び縄に身体を拘束された。

No.285 18/03/05 20:16
作家 

ローターやバイブの音が(弱)(中)(強)と切り替わりそれぞれ異なる音が耳に伝わる。
素直に言えばこわい。
擬似的にマゾの快感に耐えるのは責められる側の気持ちを知る前提があるからできるがいくら雑誌掲載のためとはいえ相手は本物のSM写真家。こわい怖すぎる。
「っ……んん」
「平気かい」
声に出すと流菜に弱味を握られると考え頷く程度にした。ここまできたら開き直る気持ちが出てきた。麗奈に見られる恥ずかしさはあるが。
まずはローターの振動がボンデージボディスーツの上から振動し陰部や胸を刺激する。
「あ……ン」
澄真はカメラをアシスタントにまかせ自らは責めにまわり同性に責められる抵抗感は依然とあった。ダンディではあり経験ありそうなだけに秘めたる魅力はあるんだろうな。
シャッターが切られる音がするなか表情がどう撮られてるかわからないが特に指定はいまはない。
「ン……ちょっと」
ボディスーツの股間の膨らみにローターをあてられさすがに声が出た。感じてしまった。
しかし澄真は髭を撫で言う。
「そうそれ。縛られ拘束されてる時は感じていい」
「え」
「キミは私と同じサディズムだろう。なら相手の気持ちを知らないといけない。声や表情は自然に出るものだから堅くなることはない」
「はい……」
開き直るつもりはなかったが肩の力はいくぶん抜けた。最悪蝋燭や鞭もあるだろう。
撮影は比較的自然な流れなように思われた。
しかし澄真はある要求をした。
「イク画(え)が欲しいな」
「それは……」
先ほどの麗奈のように顔や耳が赤くなり恍惚に近い表情になりながら抵抗をした。
「いくら澄真先生を尊敬してても男にイカされるのは……嫌です」
嫌われるのを承知で口にした。私もまた頑固だった。澄真はじっと睨んだかと思うと笑みした。
「同性愛者でないのはお互いさま。私が本来女性しかSMしかしないし写真やビデオを撮るのも女性たちさ」
はっきりと本音を言いながらも弱ったなと呟く。
「イク画(え)は欲しいな。本気で感じてる表情取れないと新星さんには悪いしな」
「……お仕事ですものね」
ちらっと私は流菜と麗奈の方を見つめた。
「彼女たちに道具を使わせて私をイカせてください」
「彼女たちか」
流菜と麗奈を起用する方に持っていくが麗奈は手だけしか撮影されないようにお願いした。

No.286 18/03/06 06:40
作家 

訝しむように流菜は麗奈に聞きながらバイブを手に持つ。
「なんなのこの人」
「変態よ」
「その変態をスカウトしこんな世界に誘ったのは誰?」
私の言い方に麗奈は顔を赤くしながらローターを(弱)に作動させ胸元に触れていく。振動が気持ちいい。
「や……ン」
「や……ンだって。せっかく才能を発掘してセックスもしたのにお姉さま、いえライバル出版社にいくなんて」
「それは……」
「言わなくていいわ」
ローターが軽く揺れながら麗奈には呆れた表情が見て取れた。男が身勝手なことは彼女はある程度は理解ある。
流菜はバイブを(強)にいきなり作動させその動くさまに私は身体を震わせた。
「オトコなんてくだらない生き物よ」
「そうかもしれません。だけどこの世には男女ふたつと女装やニューハーフなどもっと複雑なの。沙耶香もそのひとり……」
「意味がわからないわ」
「目隠ししてもらおうか」
澄真の意向で私は目隠しされさらに恐怖があったが淫部は熱く堅い。それにローターらしいものが触れ感じた。
「っ……れ、麗奈」
「どういうつもりかまだわからないけどひとりにさせたことの仕返しはさせてね」
「っ……ンン」
「感じてるじゃない」
いいよ、と澄真の渋い声とシャッターの音、フラッシュの目映い感触がボンデージボディスーツの私を映す。
ハアハア、と女性に責められるのは悪いことではなく“沙耶香”が内から伝えた。
“へんたい”
女性の意識は意地悪だ。だけど一方ではこんなことを望むが以前ほど矛盾は感じない。
責められるマゾの側を擬似体験したいあるいは女性になりたい願望がこんな時には目覚めているだけ。理由はどうあれサディストの裏側にマゾヒストの一面がある。
だが“女王様”は一向に現れない。
「手で触れていいですか」
「ダメよ」
いいよ、と流菜の声を遮り澄真は麗奈に許した。彼女の柔らかい手が久しぶりに触れた。
「……ほんとどうしようもない」
「……ああ、やめ…」
「やめてほしい?そんなわけないわね」
「っ……」
目隠しをされており感じるのは肌や皮膚を通す感覚と呼吸、渇く喉だけ四肢は縛られ動けない。
「こんなのはただの汚いオチ×ポよ」
(強)のバイブがボディスーツの秘部に触れ本気で悶えた。
「ああ〜!?だめ…だめ…イク……から」
悶えながら感じていた。

No.287 18/03/07 05:48
作家 

いったいどういうことだろう?
麗奈は沙耶香を責めながら先ほどの会話を思い出していた。
ご主人やお子さんがいるのは確からしいが沙耶香が手にしていた下着。
「っ……はあはあ」
「こんなのが何がいいわけ」
沙耶香が悶えるな流菜の声に現実に戻された。現実といってもSM専門の室内のためにふしぎと現実感がないようだ。
考え麗奈は言う。
「お姉さまだって男を知ったのではないの」
「それは……、家や両親へ体裁を保つため」
「っ……ああ!?」
流菜は沙耶香に極太のバイブを(強)でボディスーツの秘部からぺニスの膨らみからカウパー液が滲み出る。
「ああ……ハアハア」
沙耶香から吐息が溢れるなか流菜は妙な関係の麗奈と沙耶香に問う。
「あなたたちはどういう関係よ?恋人なの?ルームメイトなの?」
「……たぶんどの関係も当てはまらないと思うけど私は……この人が好き…好きと思う」
麗奈は手にしたローターを私の身体に預けそっとスカートの裾に手をやる。裾から魅力的な白い肌から太腿が露になりそこは下着をつけてない淫唇が見えた。
「れ、麗奈……」
驚く流菜の前で彼女は膝を曲げたまま淫唇を露に指で触れた。
くちゅくちゅ、と指が淫唇の内の愛液の音がし再びローターを手にし沙耶香に触れる。
「私たちは恋愛から関係を持たなかった……。だから恋愛や愛情……とはちがうところで結びついてる……」
「なによ。それ」
「お姉さま見て。さ、沙耶香のココは感じてる……。彼はSだけどMでもある。なぜかわかる」
わからないわ、変態と沙耶香を罵る。
麗奈は思う。
流菜は性の世界をたいしてレズ時代のまま変わらないのかもしれない。
「沙耶香は女性を愛してる。だけど性転換するほどの気持ちにはいたらないしあくまで身体は男性、だけど女性という姿を装い愛し愛されるなかサディストとマゾヒストの両方を演じれる。どうしてかわかります?責められる女性の気持ちを理解してるから。たぶん」
「そんなの……」
麗奈はボディスーツの内で苦しそうにしてる肉棒を出すと先端からカウパー液が淫らに発している。揺れるぺニス。
「イキそう……?」
ハアハアと呼吸してる沙耶香に聞いた。
「うん……」
女装の変態のくせに甘えた声を出してと流菜はバイブを肉棒に当て悶えさせた。
「っ……ああっ!!」

No.288 18/03/07 09:11
作家 

イクッ!どぴゅどぴゅとボンデージのボディスーツとベッド、麗奈や流菜の顔や頬を滴らせるように牡の精液が飛沫のように飛ぶ。
ハアハアハアハアと沙耶香の息遣いが荒い。
「見なさい、オトコなのよ」
「……そう、男。だけど私は……レズに戻りたいか、わからない。いまのお姉さまから愛が感じられません」
複雑な麗奈の声音にはかつて愛した同性といま愛してる女の装いの異性への感情がこの場にいる誰もに伝わる。
んっ、と麗奈は射精し敏感な沙耶香の男性器に触れる。そこに躊躇いはない。あるのは実らない互いの関係なのだ。彼女は牡の精液を亀頭から指に絡めけっして快感だけでなく不快な牡の匂いでもあり舌につけると甘く苦くもあり精子というひとつの子種でもある。
「私はこのひととひとつになりたい。身も心も……だけど沙耶香はそれを望んでるのにあえて望まない。男だから経済力がまだないとか、理由をつけて。いままた新星出版やお姉さまのもとに逃げてもいる」
「ダメ男じゃない」
それは沙耶香が射精し果てた身体や心にも伝わる刺のある流菜の女性として厳しい一言だった。
しかし麗奈は指についた精液を自らの太腿の間にある淫唇の愛液と絡める。ちいさく子種のもと同士が指で絡める。
もし胎内で受精されたらふたりの子となる存在だが空気中ではそれは成されない。ただの男女の淫らな液体でしかない。
麗奈は吐息する。
「私がもし恋愛から沙耶香と出逢っていたらちがう関係だった。偽りの彼氏でも性の慰めでも女装させて性の代用にしたかもしれない」
「っ……あ、はあ…はあ…」
呼吸し目隠ししてる私にも彼女の声は伝わる。いつになく女性としての声に感じた。
「それならまだ男女の付き合いのなかふつうの女性のしあわせんつかず離れずケンカや別れたりしながらでも互いにいれたかもしれない」
「れ、麗奈……?っ……」
彼女は精液と愛液が混ざる指を私の唇に触れさせた。子種かもしれない淫らな液をなぞる。
シャッター音が無慈悲に切られる。
彼女は言う。
「ボタンのかけちがいでもいまは構わない……」
「なによ。それ」
流菜は納得しない。
麗奈は思う。
離れたくない。
いつの間にかもと同性愛者の彼女は流菜やいままでの女装者とはちがう感情を持ちはじめていた。できることならこの場で性行為をしても構わない衝動が内に熱く深くあった。

No.289 18/03/07 14:52
作家 

だけどそんなことをすれば沙耶香と結ばれるかもしれないが失うものは大きいかもしれないと過る。
早紀や愛那、同僚たちがいる双星出版社は少なからず彼女には必要に思えた。なにより神無月社長にはおよばない。
彼女には渡したくないと思うが口には出せない怯えや怖さが少女のようにあるのも事実。
「っ……!」
「ん……んむむ!?はあ…はあ…れ、麗奈」
この一瞬の唇の重ねいや熱く深いキスを澄真は逃さすシャッターを切ったが一度写真におさめたと確信しただけで二度三度とスイッチを押すことはしなかったという。
「はあ……」
「な、何よ。見せつけて……」
麗奈は流菜に目をやる。
「沙耶香は……不本意だけどお姉さまに預けます。沙耶香があなたに興味あるみたいだから、ではなく私はいつかこの人が戻ってくると信じるから」
「レズならまだしも変態同士の愛かしら?それともお涙頂戴や浪花節かしらね」
もちろん麗奈は心から納得してないが沙耶香が流菜の何かを知ろうとしてるのにそれを自分がいればたぶん邪魔や足手まといになるかもしれない。さっきのように流菜にいいようにされるおそれがあるなら沙耶香の方が適任かもしれない。
できるなら自分が身代わりになりたいがそしたら最後再び自分は同性愛の甘く美しい世界に浸れる代わりに女性や流菜の言うような変態でも構わないがそんなしあわせさえ逃すだろう。
沙耶香さんがイッたから休憩を兼ねて衣装チェンジと部屋を替えようと澄真が指示した。
縄を解かれた沙耶香は陰部を澄真のアシスタントの女性に拭かれたりタオルを渡されながら麗奈と流菜を見つめた。
この場にいる誰にも伝わるくらいの昼ドラみたいなどろどろした愛憎がふたりから感じられた。
「私にこの変態、いや水越沙耶香を預けていいのかしら」
「ええ、私はこの人を信じてます。契約が切れるまで新星出版社と冴木さんにまかせます……」
彼女にすれば賭けだった。契約はたぶんに今年度内つまりは来年度になるまで新星出版社はとことん使い倒し切り捨ては業界内では有名だった。
最悪として流菜の魔惑に嵌まり沙耶香がいくか捨てられるかあるいは何か逆転の打開策。
戻れるのだろうか。
ふたりのぶつかりあってもおかしくない剣幕に私は女性の在り方を肌に感じたかもしれない。射精の余韻で肌が立っているのではない。
まさに女心が向き合っていた。

No.290 18/03/08 06:10
作家 

しかしこれが流菜の逆鱗に触れたようで彼女の感情は私に向けられた。
澄真先生、沙耶香さんに鞭でも蝋燭でも使ってください!
「!?」
あまりの発言に私や麗奈は二の句が告げなかった。流菜は私を睨む。
「あなたが私の言うことを聞かないなら麗奈に手を出さなくても二ノ宮早紀や美如月愛那にも手を出すわ」
「卑怯よ。契約書といい正々堂々と向き合いなさいよ」
つい女言葉で私は答えたことに誰もが場がどうなるか見守る。
しかし麗奈の先ほどの場面が過り他者に迷惑がかかることを恐れる性格はある。自分さえどうにかなれば袋小路に入らなければ逆転はできるはずだった。
わかったわ、と折れる私に麗奈は少しだけ申し訳なさそうに瞳を背けた。
「麗奈が自分を責めることじゃないわ」
「沙耶香……」
「ラブシーンはやめてもらいたいわ」
とことん彼女との相性は悪いらしかった。それに尋常ではないくらいの男嫌いか私そのものを嫌うのか。
再び衣装を着替え今度はコルセットタイプのスリーインワンに加え下着姿の上から澄真に首から腰が縛られさらにパーティードレスの上からも同じように縛られる。
「つらいけどスポンサーの意向だからな」
「ええ」
「だけどまるで女性同士でひとりの女性を奪い合ってるみたいだった」
先ほどの流菜との言い合いは第三者にはそのように見えたらしくお世辞には聞こえず礼を言う。
ありがとう、と。
しかし撮影はさらに淫らに被虐的になる。股縄を通されすりすりと固い縄の感触がぺニスや睾丸を刺激する。
「っ……ああ……」
じんわりと純白のランジェリーを緊張感と不快感、縄のふしぎで固い感触が睾丸を刺激しぺニスの先端は再びカウパー液が湿る。
「足を縛るよ」
「あ……」
足を再び縛られシャッターが絶え間なく切られる。
「いいよ、沙耶香さん」
「っ……」
「耐え屈辱的な顔。オトコには見えない……」
ほめられているのに素直な喜びはないが被虐的な快感に支配されそうで怯えた。
マゾではないが擬似的かつ潜在的な被虐的な快感を身体は密かに感じている。サドとの矛盾や葛藤があるから。
「先生、蝋燭や鞭は」
「黙っていたまえ。相手が女装モデルであっても私は私の撮影をしたい。文句を言うなら出ていってもらう」
渋い声がルーム内に伝わり澄真の信念が伝わる。男の中の男なのだ。

No.291 18/03/08 13:05
作家 

衣装は破らない程度にはだけさせながら澄真は鞭や蝋燭を用意し始めた。
鞭のしなる音や蝋燭の形状などに撮られ縛られる側なのに使いたいという欲求が芽生えていた。
“沙耶香。いえ○○”
“なに……”
“アイツが起きないか心配……”
“沙耶香”はあえて意識の内で本名で“私”を呼び“女王様”を“アイツ”を呼んだ。変態な“沙耶香”でさえ怖れているらしかった。
少しの間は衣装がはだけ淫らな姿で撮影が進んでいたが、澄真は確認するように聞いた。
「私やアシスタントはSMの経験はあるが、男性にやられるのは?」
「……やられるなら女性にやられた方がいいです」
「アシスタントに女性もいるが」
澄真が指し示したのは一見どこにでもいる女性のようだが瞳や頬、スタイルなどにサディストの気質があった。
構いません、と頷く。
すると今度は両手を柱に縛られお尻を突き出す形になった。
「加減はするけど肌に傷がついてもいいの?」
女王様役のアシスタントは綺羅と名乗った。何でもSMクラブでバイトをし澄真のアシスタントなどを兼業してるようだ。
はい、とだけ答えた。すると空気を裂くように鞭が背中や肩を打った。
「あ……!」
「あら、結構耐えるのね。次は背中よ」
ひゅんっ!と背後の空気を裂く音がしながら思わず私は柱に逃げるようにしたが背は打たれた。
「い、痛い……!」
「痛いうちはまだ快感じゃないのね」
「……っ」
これがマゾなら快感になるかもしれないが痛いのは痛いのだ。
しかし美しいランジェリーに包まれた身体はちがうようだ。勃起しているのだ。
「クリチ×ポが天井を向いてるわ」
アシスタントの綺羅は女王様スタイルで卑猥に私を責める。痛みはあるが下半身はまるで快感を知ってるかのように熱く堅い。
ヒュンヒュンと宙を裂きながら鞭に打たれていた。
痛い痛い!泣き出しくらい自分が惨めにさえ思うくらい理性が働いていた。ショーツはカウパー液で滲んではいた。
「沙耶香……」
目を背けたい麗奈だが沙耶香が流菜や新星出版社の核心に近づくためなのだ。理屈はわかるが理屈と感情はちがう。
自己犠牲を美しいと表現したくないがここまでする必要があるのか。
彼女は自分に問う。
「あなた興奮してる」
隣にいた流菜が彼女の紅潮した表情に気づいたようだ。麗奈は指を秘部に上から触れている。

No.292 18/03/08 15:20
作家 

麗奈はスカートの上から自分がショーツを湿らせていることに気づく。
スカートとストッキング、ショーツの上から秘唇が興奮し熱いのが伝わる。沙耶香が痛い思いをしてるのに……。
ああ……。
「愛する人が女王様に虐められる姿に興奮するなんて」
「っ……」
微かに指をスカートの上からショーツの内にある丘を時にそっと時にぐっと撫でたり押し快感が身体に宿る。
変態なんだ、あたしも。
そう胸の中で呟く自分を以前は嫌悪や葛藤があったはずだがいまはその矛盾はほぼ考えないものだった。沙耶香との生活や触れ合い、セックスなどで獲た結論かもしれない。
彼女は快感を共有したいと思いながら叶えてはならない大人の事情もある。沙耶香と一緒になるには流菜、新星出版社そして神無月社長という壁がある。
「あなたイカないの?」
綺羅女王様は沙耶香にムチを振るいながら聞いた。
「っ……だって」
すでに肩や背中には痛々しいくらい赤い傷があった。ムチを振るう方も振るわれる方も必死だ。
私は答えた。
「はあはあ、濡れてはいますけど……」
ショーツの内では勃起したしかにカウパー液がじっとりじんわり滲み出て臭気はあった。確かめるように綺羅女王様はのぞきこみながらそっと触れた時だった。
「っ……い、イクっ……!!」
ショーツの上から綺羅の指に触れられただけで精液がショーツの内から迸った。あまりに意外な射精に彼女は少し驚いた。
「あなた……」
「はあはあ……」
縄で縛られ足は自由だが腕は拘束され膝を曲げることはできない。屈してはいけない意地みたいな思いがあった。
綺羅女王様は思う。
この人が感じてるのは鞭ではない。潜在的なマゾに近い感覚はあるがあくまでそれは意識が疑似女性として求めてるだけに思えた。
マゾヒストとしての男性では本質にないらしい。指でイッたのはショーツと女性としての指のふたつ感触がイカせたようだ。これが本当のマゾなら鞭や彼女の女王様としての存在感などで射精し果てているはず。
証拠といえるかはわからないが沙耶香は彼女に屈してはいない。
しかし流菜は思い違いをしていた。
「イッたわね。あの変態」
ほくそ笑む彼女に麗奈は思う。この女性(ひと)は性の世界を理解してない。ああ、沙耶香といっしょににイキたかった……。紅潮した彼女はバーチャル(幻想)に沙耶香と一緒だった。

No.293 18/03/09 06:34
作家 

蝋燭の先端に火が点されちいさく赤く宿る。
綺羅女王様はスリーインワンのランジェリーと澄真により下着姿で縛られた沙耶香に溶ける蝋を冷たく無慈悲に向けた。蝋が溶けベッドの上の女装の沙耶香に落ちた。
「あう……!」
「ああ……。悶えなさい」
「熱い……痛い……」
「……興奮はしてるのに」
綺羅女王様はやはりと思う。勃起はしショーツはカウパー液でいやというほど濡れ湿っているのにイカないのだ。
無慈悲に蝋を垂らし鞭を振るう。蝋と鞭、熱と痛覚は襲っており沙耶香の瞳から涙らしい滴が見えわずかに化粧を落とす。
「っ……痛い、熱い!」
たぶんにイカない相手を責めるのは綺羅も必死なのだと感じる。沙耶香の声からは時折男らしい声が混ざるのは女性として感じる部分はあるが熱や痛みがなりきりさえ拒むようだ。
「ハアハア…ハアハア……」
「凄いひと……」
「綺羅くん。やれるかい……?」
澄真でさえ思う。
イカないモデルなのだ。見た目だけなら女装モデルとしては清楚さと淫靡さを合わせもち感じ悶える表情はできてはいた。本来なら撮影はスムーズに行われたが冴木流菜により長引いていた。
ハイ、と綺羅は答えるが責める方も責められる方の労力は計り知れない。気力体力共に数時間で消耗していく。
「っ……責めてください。身体がもつ…限り……」
沙耶香からは声が必死に漏れ勃起こそはしているが射精に至らないのは本人も理解している。
綺羅は再度股間に触れてみた。今度は騎乗位のように馬乗りになり蝋を垂らした。
「っ……ああ…」
女性として綺羅は自分が欲情しているのではと思う。上体をゆっくり揺らせ沙耶香の太腿や臀部の間にショーツに包まれた陰部がある。迂闊に触れてはイクのだ。
性器そのものは敏感、ひとによってはあっさりと快感に達する。沙耶香の場合は敏感なのだ。だけどマゾヒストの感覚はほとんどないと思われる。気持ちを女性に近づけることで耐えてはいるが男性としては拒絶している。
「いけない奴隷ね」
「っ……は……」
この時私は綺羅が大胆に自分に乗っていたことに目を丸くしていた。
なぜそんなことを。
だけど彼女はボンデージスタイルのまま片手で蝋を垂らし空いた手で胸を揉みそっと彼女は自らのショーツを触れた。
感じているのを確かめたいんだ、この女性。
ンッ、とわずかに女性らしい声がした

No.294 18/03/10 08:55
作家 

挿入(い)れてみたい。
撮影中にも関わらずサディストの綺羅女王様は騎乗位の姿勢になり沙耶香のショーツから出た男性器にひそかに熱く興奮していた。
だができるわけない。
目の前に沙耶香の彼女らしい若い女性そして流菜かいる。
なにかある……。
女性の勘はそう告げていた。人間関係を見抜くほどではないがSMもまた恋愛や肉体関係、時には契約関係でもある。そうなると自分と相手を俯瞰や客観視する目は養われる。
たとえば相手がどんな性格や性癖、普段の日常生活またそれからくるストレスなど地位や関係により様々。
ただかなしいのは目の前にいる沙耶香は真性なマゾではない。真性マゾヒストでもない相手を責め一方では自分が女性として相手に惹かれ感じているかもしれない。
「っ……ンン」
ショーツの内の男性器は綺羅の下半身ショーツに程よく触れ内にある肉唇が生地越しに触れていた。
責められているのに。まるで別な生き物。
火が点る蝋が落ち沙耶香は悶え叫ぶ。
「熱い……!ん…はあ」
「……きゃ」
あやうく騎乗位の姿勢から落ちそうになるが下半身で踏ん張るように乱暴にならない。それこそ彼女を押し退けたい気持ちがあるかもしれないが必死なのだ。
この人に触れたいのと女王様としてイカせたいふたつの思いが綺羅にあった。
「っ……ハアハア」
「キスするんだ」
カメラを構える澄真から意外な指示が飛んだ。彼も興奮はしてるが綺羅ほどではない。
蝋を垂らし沙耶香が悶えてる間は女装者でも隙はできる。
いまだった。
「っ……熱い……!?ん……」
「ン……は…む……ごく…れろ」
「っ……ンン」
「はあ……」
瞬間ショーツ同士の熱い下半身が触れカウパー液の若い牡汁と愛液の牝汁が触れていた。肌は蝋に触れながら熱く火傷をおぼえそうだがよけいに芯から熱くさせていた。
さらに瞬間があった。
「っ……い、イク……」
「…!?は…は…ぁン……」
ショーツ同士が触れながら内にある女王様の女陰を感じ少しの肉唇の膨らみに挟まれイッたのだ。挿入(い)れてもないのにイクのは恥もあるかもしれないがマゾヒストとしてではない。
互いの臀部の肌に熱い白濁液がどろどろと脈打ち迸る。
「っ……ハアハアハアハア……」
四肢が動かない沙耶香にはどうしようもない。蝋に感じてないのに女体に感じる牡でもある。

No.295 18/03/11 06:17
作家 

撮影は夕方まで進み休憩を挟み沙耶香はシャワールームで鞭の痛みや蝋を洗い流していた。
よほど流菜は沙耶香が憎いらしい。それは流菜の同僚たちから見てもやりすぎだった。彼女たちや事情をよく知らないアルバイトまで疑問を抱かせるほど。
バスローブを身に纏った沙耶香は流菜の前まできてあることをお願いした。
「麗奈は疲れています。帰してあげてください」
「断るわ」
「彼女がここにいつまでもいたら双星出版で肩身が狭くなります。あちらは私がいなくなったことで新たなモデルや企画をいくらでも投入します。双星出版には彼女は必要と思うのです」
「わかったわ」
敵に塩を送るわけではないから沙耶香の言い分は飲むことにした。流菜とて麗奈が複雑な思いを抱くくらいは想像できた。なにより沙耶香がこちらの手にあるから構わないのだ。
帰りなさい、と言う流菜に麗奈は一言言った。
「気をつけて。好きよ……」
背を見せ帰る彼女の姿にまだ私たちは結ばれる運命にないかもしれないとめずらしくセンチメンタルに思う。
「はあはあ……」
「身体壊すわよ。麗奈の前だからて無理して」
「……まだ撮影続けるんでしょう」
SMは責める側責められる側互いに消耗しましてや沙耶香は潜在的や内面にある女性の“沙耶香”はマゾを秘めているが真性マゾではない。
理性と性的本能が著しく葛藤しぶつかりあうことでよけい精神的に消耗をしている。
澄真は出来た画像や写真を何枚かチェックし様子をうかがい綺羅もまた複雑な瞳を向けていた。
澄真は綺羅に言う。
「キミは女性として沙耶香クンに感じてなかったか」
「……先生。はい」
「だけど挿入はしなかったな。なにぶん撮影中でもあるしこわいスポンサーの意向だからな」
「はい……」
流菜のことだ。流菜は無茶な注文ばかりしモデルばかりかカメラマンや撮影スタッフのなかでもいい評判は少ない。
澄真は綺羅を見つめた。
「何でも沙耶香クンは“ヴィーナ”というSMクラブにいるそうだ。機会があればまた会えるかもしれないな」
「“ヴィーナ”?」
彼女も風に聞いた噂のSMクラブだが所在は不明。なんでも女装者と女性ばかりのクラブとも伝え聞く。
撮影はまだ続く。
沙耶香を縛る綺羅は複雑な気持ちを抱く。
欲情させるだけさせるなんてこの世界は時々疲れる……。

No.296 18/03/12 05:15
作家 

撮影は夜十時すぎまでにおよび私に限らず澄真や綺羅たち撮影スタッフ、新星出版のスタッフまで疲労していた。流菜も疲れはあるものの他のスタッフほどではないらしい。
お疲れさまでした。
互いの挨拶がしてようやく撮影が終わり精魂尽き果てた感がある。撮影された写真や画像については今後また調整するという。
「だいじょうぶ?」
「え……と、綺羅さんこそだいじょうぶ」
ええ、と互いに気遣う余裕はないが共に撮影を乗り切った感覚はあった。しかしそんな雰囲気さえも流菜は壊そうとする。
「沙耶香さん」
「なに」
「先に帰っていて。タクシー代、だけど表から家に入らないで」
一万円札を一枚渡し先に帰らせようとするつもりらしい。だけど言い方が気になったが聞かなかったことにした。
ホテルの下にはタクシーがすでに呼ばれ一度シャワーを浴びた身体だが身体から卑猥な匂いや化粧の匂いが混ざりタクシーのドライバーが見てる気がした。
裏口にタクシーを止めてもらいプレハブに戻り服を脱ぎ下着を取り替えた。
やはりいない……?
プレハブから流菜の家を眺めると不自然なくらい暗くひとの気配はしない。スマホを見ると麗奈からメールがあった。
【だいじょうぶ?お姉さ……冴木さんは怖い女性よ。気をつけて】
疲れた身体を動かし返信した。
【いつかちゃんと話せる時がくると思う。身体を休めて】
なにもかも疲れきって再度シャワーを浴びたいがプレハブから基本出れないし裏口は開いてなかった。精神的にも肉体的にも疲れて水分を補給し私は深い眠りについた。
意識の底、夢だろうか。
“沙耶香、いえ○○”
“なに……?”
“もう素直に生きて……、さもないとアイツが……”
アイツ?と私が深い意識の底か闇のなかから“女王様”が現れた。
具体的な姿形はないはずだが黒いサディストの気配が寝てるはずの身体を金縛りにするくらいのドス黒さがあった。
“よくも私にマゾを味あわせたもの……”
“なに?私の身体でしょう”
“ちがう。この身体は私の身体。沙耶香でもお前でもない……”
“コイツは……”
“沙耶香”はなにかを伝えようとするが届かない。
なに……、と理由のつかない恐怖が悪夢に変わろうとした時だった。
起きなさい、と現実の流菜の声に悪夢を忘れるほどに目が開かれ怖い夢のはずだったのに勃起だけはしていた。

No.297 18/03/12 14:45
作家 

お風呂に入りなさい。
朝風呂に入れるのはめずらしいと思いながら下着姿で扉を出ようとしたらパジャマを着て、と言われた。
ふたりだけのはずなのに思いながらプレハブの扉を開け裏口の扉を開けるとリビングの方から声が聞こえてきた。
「パパ、ママは?」
「ママなら裏にいるお客様に会いにいったよ」
「ふ〜ん」
「お風呂はその人のためかな」
リビングからは二、三人の男女の声が聞こえ背後にいる流菜は行きなさいと指図する。すると足に小学低学年くらいの男の子と女の子がぶつかった。
「お姉ちゃん?」
「あ……」
純粋すぎる眼差しでどことなく流菜に似たような男女の子どもに何かが深く胸に刺さる思いがした。
「挨拶なさい」
てっきり私に言われたかと思ったがちがう。
「さえきせいやです。おねえさんおはよう」
「おはよう、さえきはるかだよ」
「は、初めまして。水越沙耶香です」
「いやいやこれは挨拶が遅れました。晴雄です」
……。
女装に気づかない?子どもたちが素知らぬ振りをしてくれているかもしれないが大人が気づかないわけはない。
ただでさえ昨夜の撮影で淫らな匂いが残ってるはずで鈍感とは考えにくいのだけど。
流菜はそっと私の脇を通り言う。
「沙耶香さんはママのお友だちでこれからお風呂なの。あなたたちは朝ごはんを食べてなさい」
「おかあさんのおともだち?」
「う、うん。よろしくね……」
言い淀んだのは保育士である自分を思い出し心か意識の底で変態、葛藤、哀しみ、自分を受け入れない何かなど無数の考えや気持ち、感情が瞬間過ったからだ。
「じゃあねさやかちゃん」
「ちゃんじゃなくてさんだろ」
「さやかさんまたね」
「失礼します。ゆっくりしてください」
主人は意外なくらいに年齢があるように思う。澄真はやや歳が上だったが彼女の主人は流菜にしては若くない。中年というくらいだろう。
「(お風呂は)沸いてるから入りなさい」
「はい……」
いつの間にか風呂場と廊下にはカーテンの仕切りができていた。配慮したの。
「着替えは用意したから。私は食事をしてくるわ。ゆっくり入って」
あっさり姿を消す流菜はキッチンかリビングで朝食をするつもりらしい。
……着替えないと。
女装から男性の身体になる時に動機が大きくなった。あの子たちに女装とバレたらと思うと怖いのだ。

No.298 18/03/12 15:20
作家 

上がれない。
身体をボディソープで洗い髪にシャンプー、リンスをつけ綺麗になったはずの身体を温かい浴槽のなかで私は苦悩した。
あの子たちに正体がバレたら自分は沙耶香でいられなくなる。私の内にはまだ保育士時代の自分がいたことに気づかされた。
女装の変態ではあるが、一方では保育士であり子ども好きな一面の私がいるのも事実なのだ。
まだ勃起している。
プレハブを出た時に勃起してたはずだが晴雄や子どもたちが気づかなかったのか。気づかない振りをしたのか。
「ン……っ」
勃起をおさめるには射精にいたらすか時がきて萎えるまで待つ以外にない。
「おかあさん。さやかさんびじんだね」
「そうね。妬けちゃうくらい」
「やけるてなに?」
「ハハハ、せいやにはまだ早いか」
風呂場の扉とカーテン越しからしあわせな家庭の声に胸が熱く苦しくなる思いがした。
“沙耶香、……○○”
“あの子たちの目の前で流菜を犯せばこの家庭は壊れる。なぜやらない……”
“あなた……!”
“沙耶香”は突如目覚めた“女王様”を頭の内で咎めるが彼女は暗く不気味に笑みするだけ。
フフフ……。
その笑みは理性ある私を苦しめる。
以前の男や牡の本能ではなくもっと深く暗い部分あるいはもっともっと深く根ざしてる存在。
「ッ……ハアハア……」
長時間の湯船を身体は拒むが理性は上がれとは指示したくない。間違いなくこのままでは長くないうちに脱水症状になるだろう……。一時間二時間は耐えられるはずだが、連日のセックスと昨夜の撮影で疲労感は素直だ。
……。
どれくらい時間が経ったのか。
「沙耶香さん……?」
流菜の声がした。
あ、と声とも吐息ともつかない私の反応に彼女は安心するように息をした。
「子どもたちは主人が学校へ連れていったわ」
「ハアハア……」
「とにかく上がりなさい。風呂場で女装の男性に死なれたら夢見が悪いわ」
肩を貸され彼女はお湯で濡れるのも構わず私を風呂場から出し身体をバスタオルで拭いて水を持ってきて飲むように促した。
ごくごくと喉から音がし下半身はバスタオルで覆われているが上半身はフィットネスクラブで少し鍛えられた男性のまま。
「女装にする?オトコのままかしら」
嫌味な声音が少し含まれていた。迷った末に女装にした。
なんだ、と彼女は下着と衣服を差し示した。

No.299 18/03/12 17:29
作家 

あれが私の家族よ。
あたたかい紅茶、トースト、ジャムやサラダ、なぜかウインナーではなくソーセージなど軽食らしい朝食を私が食べる姿を見て流菜はブラックのコーヒーを口にした。
「誰が家族がいないのかしら?」
わずかに身体に緊張感が走る。
たしかにあれは家族と呼べる存在。同時に故郷にいる自らの家族を思い起こさせるには充分な存在だった。立派な主人に姉弟か兄妹かわからないが雰囲気だけでいえば後者かもしれない。
「すみません……」
「素直に謝るのね。てっきり私のあら探しをするかとおもったわ」
“セックスで屈しさせたらいいのに”
!?
咀嚼してる口の動きが止まり流菜は私に首を傾げた。
「どうかした。まずかった」
「いえ……」
「今日は私は休みだから変態なあなたと夕方まで過ごさせてもらうわ。なんなら身体で遊んであげてもいいわ」
瞬間手にしたカップを少し音を大きくさせテーブルに底をつけていた。
「な、なによ」
思わず私はテーブルの木目だけを見つめていた。
「いま……いまそんなことを言わないでください」
「変態のくせに」
キッと睨むと彼女は黙りコーヒーを口にし落ち着きを見せるようだった。
……。
この時私の股間はテーブルの下で熱く堅く勃っていた。
“私に身体を渡して”
“何者”
“あなたは私、私はあなた……。沙耶香はしょせんは疑似人格”
トーストをかじる音、サラダを咀嚼し紅茶で喉を潤しながら“私”は私の内にいる“女王様”と会話していた。
独り言とはちがう。
確実に私の内で生まれ育ち芽生えた人格らしいと“女王様”は自己紹介した。
流菜はそんな私を見つめた。軽蔑や侮蔑を含めた視線。
最後の一口まで食べ紅茶をひとしきり飲み息をつき手を合わせた。
「ごちそうさま」
「居候のわりによく食べるわね。子ども以上ね」
流菜は私を意地悪いや虐めることで満足したいらしい。私は聞いた。
「プレハブに戻った方がいいの?ここにいていいの?」
探るような言い方をしたのは勃起を見られないためでもあるが油断があった。彼女は向かい側に座っており爪先が股間に触れた。
「コーフンしてるじゃない」
「これは……」
「昨夜は綺羅さんに感じたのよね」
「あなたに私がわかるわけないわ」
アブノーマルな性のなか生きるのは快楽と葛藤の繰り返し。

No.300 18/03/12 20:33
作家 

流菜はいつもと違い自然な主婦のまま私を寛がせていた。
プレハブに戻れとも言わないまま胸チラやパンチラなどをしながらお茶をしたりテレビを見たり掃除をしたり。
「退屈ね……」
「原稿を書く必要はないんですか?」
「今日はいいわ」
何を考えてるのだろう。誘惑する様子はなく澄ました表情が気になると思った時だ。
「主人と子どもたちの部屋を見る?」
「見ましたけど」
いいからと寛いでいたのに手を引かれ二階の部屋のまずはご主人の部屋を見せられた。
「え……」
声はちいさいが驚きがあった。中は立派な書斎となっており以前見たような生活感がない部屋ではなく本や書籍それに肘掛け椅子に机と明らかに使われた形跡があった。
「どう?あなたがこの前見たのは錯覚だったんじゃないかしら」
「……」
これ見よがしに見せる様子が納得しないが黙ってた方がよさそうだ。一度は謝っているのに。
次に彼女は子どもたちの部屋の扉も開けた。そこには小学生サイズの机やベッド、本棚や小学生向けの玩具などがありそれぞれ男の子向け女の子向けに綺麗になっていた。
「さっきも見たからわかるけど私には主人も子どももいるわ」
勝ち誇る彼女の笑みに微かに肩や背中に違和感みたいな奇妙な感触があった。それは感覚や感触だけで言葉に表現しづらい。
「ぐうの音も出ないのね。そういえば空いてた部屋かしら。あれは開かずの部屋かしら」
ちょうど流菜の部屋の向かい側にあたる扉を彼女は開け私の背中を押した。
「きゃ……」
「ごめんなさい」
白々しい謝りを背にしながら目が開かれた。そこには壁には漆黒のボンデージのランジェリーや鞭や蝋燭、ローターやバイブ、首輪など昨夜のSMホテルに劣らないSMルームのようだった。
「な、なに……これ」
「昨夜も主人と子どもたちが寝てる間は愛しあったの」
「……」
おかしい。
昨夜プレハブに帰った途端に眠りについたが家から淫らな様子はまるでなかったように感じる。さらに流菜は言葉を重ねた。
「昨夜は聞こえなかったと思えるらしいけどこの部屋は防音設備があるから子どもたちには聞こえないわ」
「……!?」
瞬間首に首輪をつけられ思わず手に首輪を掴むが外れない。
「は、外してよ!」
冷たい金属の首輪の感触のなか流菜は冷酷だった。
「今日は私と遊んでもらうわ。沙耶香さん」

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