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沙耶香の女装官能小説2(女王様と作家編)

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作家
18/07/30 08:24(更新日時)

物語

わたし水越沙耶香(仮名)はスカウトした麗奈と共に暮らしながらモデルは二年目そして新たに官能作家の道を歩むことになるが隣の部屋に麗奈の後輩早紀が引っ越してきたからたいへん。
朝は淫らにフェラチオで起こされ三角関係はますます広がる。
しかし麗奈は私の担当をはずれ代わりに担当するのはお堅い真面目な美少女。また舞先生の教室に通いながら新たに築かれる性欲に餓えた人妻たち……。
さらに私をヘッドハンディングやスカウトしようとする女装レズ雑誌の美女やAV業界、テレビ局など。私はさらに道に迷い葛藤するなか性の道を模索する。
麗奈に黙り女装SMクラブ“ヴィーナ”の女王様(見習い)としても活動していく。

物語は前回からそのままの正当な続編。
女装小説ではありますがLGBTや性同一性障害などではなく著者が女性や女性的なモノに憧れる作品です。
何度も言いますが誤解なきよう願います。

17/12/08 07:46 追記
ちなみに著者は前シリーズ同様に男性です。

登場人物紹介

水越沙耶香(♂)
ソフトサディストの性癖を持つ女装。麗奈にスカウトされそのまま沙耶香として同居。サディストではあるが本格的なSMは実は苦手。だが麗奈や早紀から愛され神無月社長の女装SMクラブ“ヴィーナ”で女王様(見習い)も兼任。

矢口麗奈
沙耶香をスカウトした張本人。もとレズ。

ニノ宮早紀
麗奈の後輩。まだ未熟。

18/01/16 05:50 追記
登場人物追加設定

冴木流菜(るな)
麗奈や沙耶香が通うフィットネスクラブに通う人妻。沙耶香とセックスをしサインを求めるが実は彼女は……。

美如月愛那(みさらぎあいな)
麗奈に代わり沙耶香の担当になった早紀より年下。実は沙耶香の学生および郷里時代を知り下着泥棒をされた被害者。ただし個人的感情の怨恨はないらしいが……。

本田透子(透・♂)
早紀に過去にいじめられた女装初心者。

No.2571700 17/12/06 06:06(スレ作成日時)

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No.151 18/01/20 20:20
作家 

「……ここが二ノ宮先輩のお部屋……だった?」
黙っておくことも出来たが私が事実を伝えると愛那はグラスを持つ手が震えていた。私は淡々とするようにつとめた。
「そう。去年私は彼女につまみ食いされて何回かこの部屋に通ったの。身体の関係も含めてね。だから驚いた」
「驚いたのはあたしです」
驚くのも無理からぬことでグラスを置いた指は震えがようやく止まるほどに落ち着きは取り戻したようだ。
「なんの因果かな」
「知りませんよ」
「美如月さんにここに連れてこられた時に早紀さんの匂いがした」
「やらしいです」
「匂いがしたのは入った時だけ。あとは美如月さんの匂いしかしなかった」
これは本当。彼女が職場に戻る際にはまるで思い出のように早紀の匂いは消えていた。
「確認してみる?」
スマホを手にした愛那は一度は触れたものの離しグラスのアルコールを口にした。
しませんと。
「女性として複雑?」
サディストとしての嗜虐心か無意識な苛々な気持ちかわからないが彼女を虐めている自分がいた。それに彼女も少し気づく。
「最低です先輩」
少し沈黙が宿った。女性の心にむやみに踏み込むのは女性化し同性として接しているのと変わらないかもしれない。
「先輩ね……美如月さんは学生時代の私を知ってるのよね?下着を泥棒したことも○○町の×丁目あたりかしら」
それとなく地元の番地を示すと羞恥に彼女は顔を赤くしムキに瞳を向けた。
「ほんと最低っ……」
目を背けた私は眼鏡を外し彼女が見えないようにした。
たぶん彼女に罵られ傷つきたかったかもしれない。麗奈や早紀を抱けなくなったのだから。吐息をつき頭を下げた。
「ごめんなさい、と言えばいい?」
「ふざけないでください」
「なら私もひとつだけ言わせてもらっていい」
なんです、とちいさな身体のわりに内にしっかりした意思の存在が見える感じがした。
「撮影の時になんでオチ×チ×に触れたの。成人雑誌の仕事をしてたら陰部がいかにデリケートか清潔を保たないといけないのわからないわけないでしょう」
瞬間彼女はちいさく股を内に閉じたように見えた。内容に性的に感じるようだったが口には出さない。
「っ……あたしはファーストだから」
なんとなく言い訳めいた声にふと女性を感じた。性的に興味ありながら何かが拒むような頑なな感じがあった。

No.152 18/01/21 04:54
作家 

ちいさな愛那の口から吐息が溢れる。
浴衣姿の沙耶香の裾から大人びた女性下着から男性器の膨らみが見えた。彼女は思う。
男性なのにうつくしい、それでいてやらしい。
彼女自身の自覚は薄いが彼女もまた女装者の淫靡な美しさに魅入られたひとり。
しかし年齢に関係なく同性のスタイルに劣等感を持ったがゆえに劣等感に苛まされ異性との初体験を過ごすことなくいびつな思春期を過ごしその原因の一端は沙耶香にもあった。学生時代の沙耶香が下着泥棒をし異性の醜い一面を知りながら一方で男性でさえ美しくなれる女装の世界。
何かが相反してることは頭で理解しているが理解よりも彼女は性への好奇心には素直に従った。それがいびつやアブノーマルであろうと……。
「いいのよ。触っても」
「ああ……」
「どうしたの」
沙耶香を見つめる。沙耶香の女装モデルはフェチ作品『G-Taste』の水越沙耶香そのもので似てる一面がありながらも沙耶香オリジナルの魅力が見え隠れする。
愛那は静かに問う。
「ほんとにオトコなんですか」
「撮影で触ったでしょう?ほら」
浴衣の胸元を見るとブラのカップの裏にパッドが露になる。躊躇いがない。
ふとTバックに似たショーツの膨らみに手が触れるか触れないかとなった時だ。彼女の理性が留めた。
「せ、セクハラです!こんなの」
「自分はしといて」
「そ、それとこれとは……」
わかったわと頷く沙耶香。沙耶香も思う。これではモテない男性と同じ。
「だけどたぶんいまの私は異性を抱けないと思うのにからかう真似して悪かったわ」
「……っ」
しばし沈黙が宿るなか愛那は言う。
「今夜はもうおやすみしてください。お互いに疲れてますから」
「そうね、おやすみなさい」
沙耶香は段ボールに囲まれた部屋に意外なくらいにあっさり姿を消し消灯した。嫌がらせと誤解してもいい部屋なのに。
濡れてる……。
愛那はアルコールを口にし替えたばかりのパンティにちいさく湿り粘液が陰毛や肌に触れたかで気づいた。
襲いもしないなんて。
実は双星出版に入った当初に大学以来合コンに参加したがなかには合コンの最中や二次会だとかにセクハラまがいを受けたことがあるが大事にならなかった。同僚に守られたのもあるが。
『二重契約。社会人としてあるまじき行為ですね』
テレビは忌々しいようにまだ伝えていた。

No.153 18/01/21 07:56
作家 

比較的新しい布団の匂いがするなか私はまた道を誤るところだったといたく実感した。
セクハラです。
麗奈や早紀ならふざけて触れることもあるが真面目な後輩には通じないらしいことに一方で安堵していた。性欲が湧かないのにサディストとしては意思が働く。しかしセックスしたいとはちがう。
堂々巡りをしてるのはわかっているが女装してるのは女の装いの内に男性を持ちあるいは隠すこと……。
もぞもぞと浴衣の裾を布団の中であげショーツ越しに淫部に触れる。カウパー液の湿りはあるがオナニーや射精したいほどにいたらない。
欠陥人間。
そんな表現が浮かび消えた……。
難しく考えすぎもわかっているが根っからの性格は直らない。
扉越しに向かいの部屋の明かりが消え愛那が自分の部屋に入り眠りについたらしい。
……後輩には悪い先輩であり女装モデルであってもまだまだいたらない。
目を閉じ眠りにつこうとするがもやもやした気持ちは眠りにいかなかった……。
……。
眠れない朝を迎えまだ日が上がらないにも関わらず薄く寝ぼけたままテレビのニュースを目にしていた。
『『クロスドレッシング』の二重契約した……』
『このサヤカなる女装モデルは以前にも……』
『……また』
『新しい情報は……』
どのチャンネルも私を延々と叩いていた。以前の時より厳しいと思わせたのは企画AVの卑猥な表現は規制がAV業界にもあり叩きにくかったからだろう。
だが今回はちがう。
二重契約などは通常の会社関係取り引きにおいてもだが俳優やタレントのダブルブッキングあるいは所属事務所間の関係に響きタレント本人はおろか事務所関係者にも衝撃だからだ。
【おはよう、起きてる?どうする今日にでも持っていく? 麗奈】
麗奈からのメールだが言葉少ないのは必要ないこと以外は記したくないのと疲れからと察した。すでに起きてたのか。
【今日はかまいません。ひとりで出来る範囲をします。がんばってね 沙耶香】
返事を返しがんばってねの表現がいかに負担になるかわかりながらもあえて伝えた。
しばらくして愛那が扉を開けて顔を見せた。
おはようございます。
おはよう、と気軽さを装いながらも挨拶した。

No.154 18/01/21 13:50
作家 

愛那の食生活はちょっと心配。
朝からコンビニ弁当やパンばかり。居させてもらってるから文句は言いたくないけど口を挟みたくなる。もちろん私だってできた女装子ではないし麗奈と暮らす前は基本はだらしない男だけど。
「美味しくないですか」
「……いつもこんな食事してるの?」
「い、いつもではないです。買ってきたんだから食べてくださいね」
私が表に出ないためにコンビニの弁当やパン、お菓子などを大量に買い出かけさせないようにする配慮も見えるだけに複雑。私は遠慮がちに言う。
「隣町なんだからマスコミもそう嗅ぎ付けないはずと思うよ。麗奈たちには必要なものは持ってくるなり宅配してもらうけど食事は自炊したいし」
「……甘いです。マスコミについては。彼らは沙耶香さんの場所くらいすぐに」
仕事はできる子というちゃんと会う前の印象とはちがう子な印象。なぜファーストにつけたか疑問が宿る。
ごちそうさま、と掌を合わしコンビニ弁当をゴミ箱に捨てあらためて自室で出勤準備。
根は真面目、小柄で可愛いのになにかもったいない。早紀みたいにファーストになれないのも気の毒だけど。モデルが口に出すわけにはいかない。漫画家が担当編集に口を出すのと同じだ。
「くれぐれもむやみに出かけないでください」
「出かけるなということ」
しばし複雑な色が宿るちいさな瞳に力がちいさくこもる。
「くれぐれも、です」
ちょっとはハードルを下げるくらいの余地はあるらしかったが真意はわからない。
私は意見として言う。
「私も一緒に行こうか?社長や主任さんたちと話をしたいし」
だがこれはまずかった。
「だ、誰のせいでこんな目に遭ってるんですか。おとなしくしてください。ファーストマネージャーの言葉に従ってください」
有無を言わせない口調や態度に空気がぴりぴりした。
いってきます。
ちいさな背中が扉に消えてほっとする気持ちと先を考える複雑さが女装の私に宿る。
扉の向こうで愛那は吐息はついた。
ふつうのオトコよりは気にかけてくれるのはいいけど……変態。
女装はいいけどデリカシーない。まるで私生活がだらしないみたいに。
むしゃくしゃする気持ちを必死に抑えながら彼女は職場にむかった。
双星出版社はまだ混乱していた。
社長である神無月社長は社長室でひとり思案していたことを愛那たちは知らない。

No.155 18/01/21 14:59
作家 

あいかわらず二重契約でワイドショーは執拗に私を叩いていた。
サインをしたことが落ち度とわかるが不当な契約であることをどう証明したらいいのか……。
むやみに出かけないでくださいと言われいくらインドアでも落ち着かない。彼女の自室はのぞかないまで室内を歩いていると昨日私が寝た部屋で何かが足にあたりつまずきかけたが驚いた。
「卒業アルバム……。これ私の年度……」
学年が下なら本来持っているはずのない卒業アルバムでありよく見たら年度がちがう二冊の卒業アルバムがあった。
「なんでこんなのを……」
テレビを消し彼女がよぶんに買ってきたパンを口にしながらアルバムを開いた。男性時代は下着泥棒の件は別にしてそれ以外は恥ずべきではないが半ば思い出は遠くにやってしまったもの。
「図書室、図書委員の私……。体育祭、先生……」
なぜ彼女がこれを持っているのか疑問に感じながら頁を開くと各クラスごとの集合写真と個人の写真、……存在感を消していた私の学生時代。
ふと気づく……。
私の名前の下に何かを書いたような線の羅列か傷みたいなのが見えた。ペンで薄く文字らしいものが浮き出た時にスマホが鳴り出た。
「もしもし」
「……沙耶香いる?」
「麗奈さん。いますが……」
呼吸にやや落ち着きはあるが疲れが見えなくないような微妙さが聞き取れるなか彼女は言う。
「社長があなたに会いたいて。意見を聞きたいらしいの」
「私の?」
「他に誰がいるの。あ……ごめん。つい」
キツい言い方に気づきながらも電話の向こうなのだから一言くらい怒鳴ればいいのにしないのは気遣いからか……。
すぐに向かうと言うと先に制された。
「マスコミに見つかったらどうするの。私と早紀が向かうから住所を教えて……え」
住所を教えると少し麗奈と早紀の声が漏れたみたいだった。
電話が切られしばらく私はインターホンが鳴るのを待つと程なく鳴った。覗き窓からふたりを確認し開けると早紀は驚いていた。
「なんで沙耶香さんがここにいるんですか」
「私じゃなくて美如月さん」
「彼女のお宅が早紀が住んでたお宅?」
麗奈の拍子抜けした声にうなずいていると当の彼女も後から来た。
「先輩たち。なんで」
「なんでじゃないでしょう。追いかけてきたんでしょう」
とんぼ帰りしたであろう彼女は何も言わない。

No.156 18/01/21 16:19
作家 

双星出版のある建物の裏口に社長が寄越したリムジンからひとり、ふたり、三人、四人、五人とメイドが降り張っていたマスコミは少しざわつくがそこに彼らの目当ての沙耶香はいなく一様に肩を落とした。
「あれ社長付きのメイドらしい」
「神無月社長の」
彼らが口々に言うなか五人のメイドのなかに実はメイドに変装した私がいたことに彼らは気づかなかったようだ。
実は愛那の部屋にいた際に麻由と綾香が姿を見せ私をメイドに変装させリムジンに乗せた。
「メイドになるなんて」
「お似合いです」
奈々の恥じらう表現に言葉がなく双星出版のフロアーに麗奈たちも程なく追いついた。麗奈たち麻由たちに連れられ社長室に通された。
神無月社長はいつものように毅然と立っていた。
「よく来てくれたわ」
「この度は私がいたらないばかりに申し訳ありません」
「事情は昨夜聞いたわ」
彼女はメイドたちに場を去るように命じ残ったのは麗奈たち、後から主任が姿を見せた。メイド姿の私にちょっと驚きがあるようだが主任は冷静さが戻る。
「メイドとは考えましたね社長」
「サングラスやコートだと目立つけどメイドだと目は引くけどコスプレか出前と思うでしょう」
神無月社長と主任は付き合いが長いらしいが話題は私になる。だけど彼女は意外なことを口にした。
「確認したいのは沙耶香さんは不当な契約なのはたしかね。間違いない?」
「ええ、はい」
記憶を辿っても契約書でなかったのはたしか。だけど証明する術がなさすぎた。
なら、と彼女は怜悧な瞳で見つめた。
「あなたはどうしたい」
少し私は考えていた。マスコミに言われぱなっしでは胸が収まらない。ましてや流菜にもだ。
「マスコミに打って出たいです」
沙耶香、と麗奈たち女性たちは驚いたが神無月社長は指を組む。
「いい?前回とはちがうのよ。マスコミに出るのは思わぬ余波があなたやあなたの家族、場合には麗奈たちも危険に晒すわ」
息が思わず詰まる。マスコミは本人だけならいざ知らず家族や知人たちまで取材するのは目に見えている。
「ノーコメントを貫き通すのもひとつの方法」
昨年はそれで乗り切ったが今回はどうなるか先が見えない。
よく考えてと社長は部屋を後にし私たちだけが残った。
指や足が震え見えない恐怖や感情が身体に宿った。

No.157 18/01/21 19:34
作家 

主任は社長室にあるテレビを点けそこにはマスコミに囲まれているリアルな映像の彼女がいた。
『サヤカ、水越沙耶香の二重契約についてどう思われますか』
『社長、コメントを』
『答えてください』
リポーターに囲まれながら社長は毅然としメイドたちに守られながらリムジンに乗り颯爽と去っていく。
麗奈は主任に振り返る。
「社長はどこに」
「答える必要はないわ」
「っ……」
私は立ち上がり主任に瞳を向けた。
「マスコミに出てはいけないんですか」
「不利になるのが見えていて相手の思うように利用されるかもしれないのよ。社長や矢口たちの気持ちがわからないあなたではないでしょう」
それだけ言うと主任は去っていき残されたのは私、麗奈たち三人の女性であった。
窓の外を見るとマスコミはさらに騒がしくなっていた。
その同じ頃流菜は新星出版の社長室に今回の件を報告していた。
「サヤカ、水越沙耶香は限りなく私たちの手元に入ることは間違いないでしょう。七月には撮影の打ち合わせ。ウフフ、彼女いや彼は淫ら罠にはまった牙の抜けたオオカミ……」
彼女の報告に社長は疑いを持つ瞳を向けた。
そうかな、と。
「どういう意味でしょう。一度寝ましたが私はあいにく感じませんでしたが……?」
社長は再び彼女に背を向け退室するように命じた。
「どういうこと」
扉の向こうで流菜は沙耶香との情事を思い出す。微かにショーツやストッキングのセンターシームを湿らす程度だが感じるにはいたらない。
とにかく沙耶香に対して包囲網を整える必要があり居場所を突き止める必要は……いやその必要はないことに気づく。
かつてのレズメイト麗奈の下にいるのだから。
あのコも欲しいところだけど。
流菜があやしい笑みをしていた頃私は麗奈に必要なものを受け取っていた。
「下着に服はこれでいい?」
「ありがとう……」
「私が担当を外れなければこんなことには」
ふたりが見つめあうのを早紀は口を挟む。
「誰が担当でも同じと思います。モデルのプライベートまでは見守られませんから」
厳しい言葉に麗奈や愛那は目を合わせなくちいさく見えた。
「早紀さんは私を軽蔑したようね」
私の表現に彼女は頬を叩くかと思えば左右に痛く引っ張り言う。
「ええ、軽蔑しました。感情的になって一人前の男気取りですか」

No.158 18/01/22 05:05
作家 

愛那の目には沙耶香たちの三角関係がいびつなものに見えた。
しかし程なくしてのことだった。
『しかしだね。沙耶香さんかな。キミが二重契約したことは新星出版は認めているんだよ』
『それは間違いです!私は契約書にサインはしたおぼえがありません』
『おぼえがなくても新星出版側はこうして我々マスコミに彼らは提示してるんだよ』
『っ……』
沙耶香は直接画面に映らず生放送の際には刷りガラスの向こうで拳を握り共に付き添う愛那と早紀は気が気でなかった。
どういうわけか社長は沙耶香の二重契約の件に限りはマスコミ出演、週刊誌の取材については認めていたが結果は芳しくなかったのは目に見えていた。
どのテレビ局も週刊誌もこぞって沙耶香に非があると報じ庇う人物はいない。
カット、ご苦労様でした。
Fテレビ系の『まるっと特報!』の生放送を終えた沙耶香たちは出演者やスタッフに頭を下げながらも次のテレビ局に向かうも局の前にはまた取材陣が連なるようにカメラやマイクを向け社長が用意したリムジンに乗り向かう。
早紀は口を尖らす。
「誰も聞いてくれませんね」
「遠吠えなのは理解してるわ。だけど声を上げないといけないと思う」
冷ややかに愛那は言う。
「無理です。あたしたちに勝てる見込みはありませんよ」
弱音や吐息する彼女に私は何も言えない。マスコミの前に出れば出るほどに不利になっていく。
綾香はリムジンのなかで実家や学校関係者たちまで取材するマスコミを車載テレビで流していた。
映さないで、と言うと彼女はあっさりテレビを消した。
その同じ頃麗奈は本来おこなうべき仕事とは別に新星出版社をたずね流菜にアポイントメントを取ると意外なほどあっさり通されたことに驚いた。
「お姉さま……いえ佐伯…さん」
エレベーターの扉が開いたところでタイミングよく彼女が真正面に立っていたことに胸がかつてのようにときめく思いといまは敵なんだからと葛藤する思いがよぎった。
ティールームに通されるが設置されたモニターには同じFテレビ系の『特ヤネ!キンヤネ』で質問攻めに遭っている刷りガラス越しの沙耶香の姿と声が伝わる。
『ですから不当な契約だと』
バカね、と流菜は麗奈にコーヒーを出しながら呟くのを耳にした。
ハニートラップにかかったんだわ。麗奈は爪が掌に食い込まんばかりに握った。どうにかしないと。

No.159 18/01/22 13:31
作家 

沙耶香がそちらに記した契約書を拝見させてください。
私的感情が移入しないように麗奈は単刀直入に申し入れたがあっさり遮断された。
「お断りします。他社の人間にそうそうあっさり見せるわけないでしょう?ニャンニャンれいな♪」
「っ……あ、あだ名で呼ばないで。それもふたりだけの……」
流菜は口許で笑う。ニャンニャンれいな、それはレズの間柄であった同士の彼女のあだ名。
ちなみに流菜はタチっ娘と言っていた。彼女は珈琲を口につける。
「契約書は見せるわけにはいかないのはあなただってわかるでしょう」
「わかってますが。ですがお姉さ……佐伯さんはOLを退社して家におさまってたのでは」
「お姉さまとは呼ばないのね。構わないのに」
呼べるわけがない。同業者かつライバル出版社の人間なのだから。
流菜は語る。
「たしかにあなたとのレズをやめて一度は家庭におさまったわ。子どもは長女がひとり長男がひとりの姉弟。主人はいいひと。だけど性にはふつう。初めての本当のセックスで感じたし女性としてのしあわせについては主人に感謝もしてる」
髪をかきあげ数年前にはなかった落ち着きを醸し出しながらも独身女性にはない魅力があり特有のフェロモンが伝わる。
「だけど家庭だけでは退屈。そんな時に近所にこの会社で働いてる若い子から聞いたの。出版社で働いてみない?ちょっと変わったところだけどと誘われて」
はじめは手伝いやアルバイト扱いだがいまは正社員に近い立場であり社長から一目置かれているとかいないから。彼女は窓外を見つめる。
「主人のおかげでバイセクシャルにもなれたし女装子は可愛いし。お金が入ってオチ×チ×がついた女の子、女装はおいしいわ」
舌を口許で動かし滑らかに艶がある色気がむかしよりあった。
ふとレズ時代がよぎり甘美な雰囲気を感じた。しかし再び裏切られる。
だけど、と彼女は言う。
「あの沙耶香というのは私からしたら童貞少年みたい、いえそのものかしら。あなたあんなので満足なの?」
「……し、失礼でしょう。さ、沙耶香に。それに沙耶香はあなたが思うほどにセックスは下手じゃないわ!」
テーブルを叩かんばかりにプライドに踏み込まれたことに声を出し社員たちがこちらを見つめ顔を赤くした。
どうかしら、と流菜はちいさく笑みし勝ち誇っていた。
女性化のせい?それともお姉さまが上手なのか。

No.160 18/01/22 15:45
作家 

悔しさに麗奈は打ちひしがれながら双星出版に戻った。
また一緒にレズしましょうと甘い囁きに危うく耳を傾けそうになる自分が少しでもいたことに心から羞じらいプライドが傷ついた。
「麗奈さん」
「いまは言葉かけないで……」
早紀や同僚たちが気遣うぶんよけいに傷つく思いがしたが気づけば愛那がいないことに気づく。
「美如月は?」
「今日は帰りました」
「沙耶香さんを匿うのと引っ越しの後片付けがあるとかで」
今朝にたずねたばかりだが彼女と沙耶香がうまくやれているか不安になる。主任が諭す。
「気になるなら様子を見にいけば?」
ところがこの言葉がもとで沙耶香にいろいろな意味で裏切られるから男女(女装とはいえ男性)間からまた大変なことになるとは露にも思わない。
「早紀もいく?」
「古巣ですよね」
以前の彼女の部屋だから躊躇いはありながらも彼女もついてきた。
インターホンを鳴らすと愛那が不機嫌そうに扉を開けた。
「先輩方なんとかしてくださいよ」
ふたりは顔を見合わせ招かれると部屋では沙耶香とメイドの麻由に奈々がいた。
「やだ麻由さんたら」
「え〜、コスプレイヤーなんてオタクからやらしい目で見られるもの」
「スゴい世界ですね」
事情を聞くと麻由と奈々はこれさいわいにと沙耶香のメンタルケアを兼ねているはずだが会話を聞く限りただのプライペートトーク。やらしい会話をしてるわけではないが麗奈早紀ともに神経に障ったらしい。
「沙耶香!」
「沙耶香さん!!」
剣幕あるふたりの声にようわく私は存在に気づいた。
「あ、……ふたりとも」
「なに遊んでるのよ!」
「そうです!今日のテレビ出演で落ち込んでるかと思ってたら」
愛那は目を背け呟く。
「帰ってから遊んでばかりでした」
「何しに匿われてるかわかってるの!!」
「今後のためですよ」
後ずさりながら久しぶりに冷や汗をかいた思いがして頭を下げた。
ごめんなさい、と。
しかしふたりの言葉は容赦ない。
「ここまで馬鹿だったとは思わなかったわ」
「ほんと軽蔑します」
ぐっと言葉に詰まる私を麻由たちは庇う。
「気分転換しただけですわ」
「それにこれは個人的な時間です」
愛那は思う。ここは私の部屋、私物化しないで。
「ご、ごめんなさい。反省します」
怒りが消えるまで時間があった……。

No.161 18/01/22 17:43
作家 

これは何だろう。
修羅場というものだろうか。先輩、この場合は女装した○○先輩いえ沙耶香さんを擁護あるいは反発して矢口先輩側と社長のお付きメイドである星野さんたちが左右に分かれている。
当事者である沙耶香さんは唯一男性であるためか口を挟めないあるいは挟まないのか。テレビ出演を民放に生出演、週刊誌は数社に限り取材しその疲れを星野さんいえ麻由たちが癒しプライペートトークしてたところに矢口先輩たちがあらわれいまにいたる。
「能天気な話をして」
「個人的な話をしたり遊んだりしてはいけないんですか」
「いまがどういう時かわかってるの」
「沙耶香さんはメイドのあたしたちと話をしてただけ」
四人の女性が女装の先輩をさながら奪い合うみたいでなんとも驚きと奇妙な新鮮さを肌に感じ見つめる。そっと沙耶香に話しかけた。
「いいのですか。ほっておいて」
「……迷惑かけて悪いわ。ちゃんと止めるから。いえ止めてみせるから」
この人の言葉遣いや表現、仕草は女性そのもの。だけどオチ×チ×に触れたのを思い出し顔を赤くし下半身がじんわり熱いなか四人の言い合いは止まらない。黄色い怒号が飛び交う。
お茶を口にしようやく沙耶香は口を開いた。
そこまでにして、と。
まず沙耶香は矢口先輩たちに頭を下げた。
「ふたりとも疲れたところで来てくれてみっともないところを見せて心から謝るわ。ごめんなさい」
ふたりの先輩は何か言いたげだが言えない。表情に好意以上の気持ちが見えた気がした。
次に星野さんいえ麻由さんたちにも頭を下げた。
「こんな時にお友だち付き合いをしたいおふたりの気持ちを汲んだ私がまずかったみたい。空気を読むべきだった。気分を悪くさせてごめんなさい」
沙耶香さまとふたりから呟きが漏れた。様という表現がひっかかる。
直感が何かを言っている。○○先輩いえ沙耶香さんは四人とただならない関係……らしいと愛那のなかの女性が諭すように伝える声が聞こえた。
先に口火を切ったのは矢口先輩。
「明日も取材あるんでしょう。悪かったわ。押しかけて美如月にも」
すみませんと早紀も頭を下げ続いて麻由たちも頭を下げた。
くれぐれもふたりとも身体を壊さないで、と麗奈の言葉を最後に四人が去っていき愛那はほっと肩を下ろした沙耶香を見つめた。
一言。
ごめんなさいと謝られた。意外な言葉が耳にした。

No.162 18/01/22 20:49
作家 

謝られるなんて意外な思いがした愛那だった。
さんざん撮影先で傷つけ無理を押しつけたのにそれについても口を出さない。女装であり男性なのに異性に頭を下げることにプライドが傷つくことはないのか。湯船に浸かりながら自分が無闇に傷つけたか少しだけ理解した気がした……。沙耶香が下着泥棒した件はまた別かもだが。
……。
上がりました。
今夜もまたテレビ報道に沙耶香の瞳は複雑な色で見つめていた。
「入ってくるね」
言葉少なであり麗奈たちにもいつもより少な目な雰囲気だった。声をかけなければ……。
「先輩」
「なあに」
「あの、よろしかったらあ…あたしの部屋は片付いてるので今夜からは……寝てください」
「上がってから聞くわ」
女言葉で意識的に避けてるようにもあえて聞かないようにもする壁があった。知らない人と接する感じが皮膚感覚にあった。ちゃんと話したことがないのは学生の時も去年もいまも同じ……。
喉を潤し段ボールがある部屋から布団を持ちとりあえず自分の部屋に持っていきベッドの隣に敷いた。
胸の心音がいつになくドキドキとした。先輩だしオトコだし女装だしとわけのわからない表現の羅列が並ぶ。
リビングに戻り報道からバラエティやドラマなどにチャンネルを変えるが報道に戻してしまう。
「さっきはなに言ってたの」
思わず手にしたグラスのなかのアルコールが揺れるなか落ち着きを取り戻す。聞いてなかったの、ムカつく……。
「こ、今夜から私の部屋で寝てくださって構いませんから……」
背を見せ冷たいお茶を口にする沙耶香から石鹸やシャンプーの匂いから異性の匂いが静かに漂う。振り向いた沙耶香は吐息する。
「いびき」
「はい……?」
「私いびきがあるから睡眠妨害や邪魔になるから……多少狭かろうがキツかろうが寝られたらいいの」
「ひとが親切にしてるのに」
「ちゃんと聞いてからにしてよ」
「だから聞きましたよ」
なんて口の利き方に愛那はムッとした。聞いてないのが悪いのに。沙耶香は口を開く。
「ためしに今夜だけいっしょする?」
「え、えっちはなしですよ……」
声が震えている。先輩それも女装の先輩が隣に寝るんだ……。
「しないわ」
意外にあっさりとしている。普通の男性なら異性が大人びてようが多少未熟な身体でも性欲があるはずなのに。
自分の部屋に招き消灯した……。

No.163 18/01/23 05:52
作家 

先輩寝ましたか?
……。
沙耶香さん?
「なに?」
返事があった。わかりやすい。愛那は先ほどの疑問を聞いてみた。
「なんで矢口先輩たちに謝ったんですか」
ああ、あれと面倒くさそうながらちゃんと答えてくれた。
「あの場合は私が悪いんだし謝った方が麗奈も早紀さんも麻由さん奈々さんにもいいの。最悪こじれる時はこじれるし……」
何か言いたげな感じがあったが無闇に争いは好まないことを感じたがなのにマスコミには打って出る。変なひと。
「何も謝らなくても」
いいの、と薄い暗闇のなかで沙耶香の自然な瞳は優しくもありちょっと何かを秘めたような落ち着きもある。
先輩……。
「沙耶香」
「……沙耶香さんガールズトークしません?」
「寝ないと身体がもたないわよ」
食指が動くのがわかりやすくおもしろい。ある意味ウソがつけないひととわかる。沙耶香が身体を起こし眼鏡を探すが見つけられないらしくそのまま見つめた。
「なあに」
子どもみたいな接せられ方は少し納得しないけど。なにを話せば……。
「先輩……いえ沙耶香さんから見てあたしは魅力ない女の子ですか」
「おやすみなさい……」
答えたくないのか布団を被る沙耶香に枕をぶつけた。いたっ。
「なにするの」
「答えてください」
呼吸をし沙耶香は答えた。
「別に魅力がないなんて思わないわ。ちいさい身体が好きな異性もいるでしょうし外見が可愛いならフリルやレースのついたおしゃれな服着れそうだし」
「子どもっぽいです」
「いつも堅苦しいスーツしか着てないからでしょう。お仕事ができるのは立派だけどプライベートは遊んだりおバカしたらいいの」
欠伸混じりな声に真剣に答えてくれる実感があり気づくと頬から水滴が一滴流れた。
「……ごめんなさい先輩」
「なんで泣くの」
「傷つけて」
「気にしてないから。寝なさい」
頬に掌を触れられながらキスくらいしてほしいくらいの保護欲みたいなあたたかいものが胸の内にあった。
「……なんで優しくするんです」
「いまいがみ合ってお互いに得する?もとはといえば私が佐伯さんの色香に迷ったんだから。悪いのは私」
色香、そんなものがあるなだろうか。愛那は自分にも女性の匂いがするのだろうか。
試してみたい衝動に駆られたがいまはやめておこう。布団に入りそっと下半身に触れた。

No.164 18/01/23 15:40
作家 

処女っ!?
ふたりで飲んでた麗奈は早紀の言葉に驚いた。
「美如月が。まさか」
「だっておかしいですよ。たしかに彼女はモデルさんを勃起させて挑発的かつ色気ある構図や写真を使って実力はあると思いますけど」
ビールを口にしながら愛那が関わった資料を見る。たしかにいくつかは男性器に関わる仕事が目立つ。
「だからて処女だなんて」
「見ましたよ。沙耶香さんの撮影の時に彼女オナニーしてましたし他の子達にも確認取りました」
「仕事はできないのにそういう情報は早いのね」
麗奈は彼女の足回りの早さ認めるがいまいちそれが生かされてるように感じない。
早紀はビールを煽りつまみを食べながら愚痴りテレビをみつめる。
「バカですね沙耶香さん。ノーコメント貫けばいいのに」
「ホントバカ。だけど私も馬鹿」
「そんな麗奈さんは」
麗奈の表情にもいくぶんの陰りが見え新星出版社で何があったかおぼろげに察しがつかないわけない。
かつてのレズ相手、こっちはかつていじめた相手が女装の世界に来るなんて。
「お互いさまです」
「何が?」
「こっちのことです」
早紀は沙耶香が精神面の女性化が進めばいずれは肉体関係さえなくなるのかと懸念してしまう。このしあわせな三角関係が破綻してしまうのか。
麗奈もまた思う。
沙耶香のセックスが下手になったのか流菜が経験ある人妻なのか。あるいは女性化によるものか。
じっと早紀は報道を見つめており少しいい瞳をするようになったみたい。以前なら他人の失敗を密かに喜んでたらしいがいまはそんな邪な思いは見えない。
「マスコミに出たら傷つくのに」
『二重契約などはタレントによくある問題であり……』
ふたりとも報道になにかがひっかかる。意図して新星出版社が流している雰囲気がある。
「ホント馬鹿」
「沙耶香さんに、ですよね?」
「当然でしょう。色香に迷ってハニートラップそのものだし」
ハニートラップ、よもやひっかかるなんてとも思うが女装していくら女性ぽくても男性でもある。男性であることを自分たちも忘れていたのか。
吐息がこぼれる。
夜は長いがまた明日がある。この騒動はいつまで続くのか。
報道の声が耳に遠くにも近くにも聞こえた。
言えないなと早紀はちらっと思う。
社長のところで女王様にもされそうだしなに考えてるの社長は…… 。

No.165 18/01/23 20:00
作家 

取材やテレビ出演をして二重契約は不当と訴えるもなかなかテレビ局はおろか視聴者には通じなく芳しくなくすでに一週間が過ぎた。
「テレビ局のお弁当や食堂にも慣れたけどね」
何しに行ってるんですかと早紀と愛那は睨みながらも彼女たちも局のお弁当は食べない時は持って帰り食費を浮かしていた。
今日のリムジンのドライバーは麻由。メイドの姿でリムジンを操るからたいしたもの。会話は聞いてるはずだが口は挟まない。
「なに考えてるんです?」
早紀は沙耶香に聞いたが答えは意外なものだった。
「なにも考えてない。相手がどう出るかなくらい」
「なにもて」
軽蔑すると以前に言ったがなにも考えてないは口をあんぐり開けないばかりだ。愛那が口を挟む。
「窮地に立ってるのわかってますよね」
「だから取材して訴えてるんじゃない」
だけど沙耶香の手には各テレビ局のディレクターやプロデューサーなどからの名刺がさながらトランプカードのようにあった。最近では二重契約の件よりバラエティやドキュメント番組などに出演してほしい依頼があったが保留である。
「なに考えてるんです」
「だからなにも考えてないから」
ちらっと早紀は本気で軽蔑しかける自分がいることに気づく。誰もが見ても徒労ではないかと怒鳴りかけた時に沙耶香と同時にスマホが鳴りふたりしてそれぞれ見つめた。
【今夜沙耶香様と早紀様をヴィーナにお招きします。神無月舞】
ふたりしてぎょっとするなかリムジンは隣町の駅前で止まり愛那が先に降りた時だ。
「沙耶香さん?降りないんですか」
「……ち、ちょっと急用があって麻由さんに連れていってもらうところがあるから」
「私はついでよ」
早紀は沙耶香の声が小さく震えてるのがわかる。うまく誤魔化せないぎりぎりな境界線。
そうですか、と彼女はドアを閉めた。
リムジンは颯爽と街中を抜けふたりして吐息した。
「うまく誤魔化してください」
「私のせい?」
早紀は目線で応えた。しかし麻由は答える。
「申し訳ありません。神無月様の意向ですので」
週末金曜日。
隣街を抜け自分たちの住む街を抜けようとした時に麻由はミラーを気にした。
「二台タクシーが尾行してます」
え、とふたりして後ろを振り向きさながらスパイみたいに伏せて見た。
「マスコミかしら」
郊外に入る前にまきますと麻由は言った。

No.166 18/01/24 04:59
作家 

まいたみたいです。
麻由の言葉を聞きながらふたりで顔を青ざめていた。フツウに運転してと言いたかったかにちがいない。
リムジンは例によって神無月社長の邸宅かSMクラブ“ヴィーナ”に入っていくが私たちはここで思わぬ出会いがあることを知らなかった。
相変わらず通された部屋はスイートルームみたいな感じなゲストルーム。綾香が現れ黒い女王様のコスチュームを見せ着替えるように命じた。
「着替えるの?」
はいとわずかに羞じらう表情が見え早紀がいるにも関わらず着替えないといけないらしい。一枚一枚ブラウスや下着を脱いでは交互にブーツやコルセットを身に付ける。
キツい……。
そう思っていたら早紀がちらっと見ながら口を開いた。
「セックスはできないのに女王様にはなるんですね」
皮肉らしかったが私は綾香に風吹先生を呼んでもらうように願う。
「週末ですので来られるかわかりませんが」
「構わないわ」
少しばかりブーツや手袋のエナメルやPVC製の感触が蒸れるのではと思い慣れない。レースの手袋の方が柔らかくいいなと思ってしまう。
「早紀さんは軽蔑してるんだ」
お茶で喉を潤した。しかし彼女はわずかに甘えるような声を出す。
「だってこんなに好きなのに。私も麗奈さんも」
と彼女が声に出した時に扉が開かれ風吹先生かと思ったがちがった。
沙耶香!?
先輩に沙耶香さん!?
里沙と奈々に連れてこられたふたりは私の姿と私が早紀といることに驚きは隠せなかった。
事情を聞くと尾行していたタクシー二台は彼女たちがそれぞれ乗っており一度まいたはずだったがふたりは偶然か運よく邸宅に辿り着いたらしい。
「あたしが矢口先輩におふたりの様子がおかしかったので伝えました」
早紀がマンションに帰らなければおかしいと思うのは当然だし一週間も共にいれば愛那もまた怪しむのは当然かもしれない。
「なんで女王様みたいな格好に」
私たちは揃って事情を説明した。
SMクラブ“ヴィーナ”で女王様になる試験かショーらしいものを受けており早紀は事情を知っていたのに麗奈に黙ってたことに謝罪した。
「社長のお宅とはちがうと思うけど」
麗奈は驚きながら彼女が言うには別に邸宅があるらしかった。
女王様……、と愛那は私の姿に唖然としているらしかった。企画AVを見たと思うが違う何かはあるらしかった。

No.167 18/01/24 12:48
作家 

何をさせられるんだろう?
私の不安をよそに早紀は麗奈と愛那にこれまでの経緯を情報交換していた。
「公開オナニーショーみたいなことをさせられたですね」
“させられた”のも正しいが“した”と言うのも恥ずかしい。
「お、オナニーショー!?」
これは愛那。顔を真っ赤にする理由が私にはわからない。他人のぺニスに触れておきながら。女性はわからない。
麗奈は私に向き直り言う。
「なんで黙ってたの。美如月が教えなかったら知らないままだったし」
「よけいな心配かけたくなかったし巻き込みたくなかった……」
たぶんに早紀は本音と思う。恋人に近しいが恋人ではない。自分たちの三角関係は肉体関係が先で恋愛感情が後から来た感情。
以前から同僚たちにはおもしろおかしく茶化されながらも彼女たちもまた三角関係がどう決着つくかは双星出版社内では話題。あと一部の受付嬢くらい。
吐息をつきわずかに嫌みらしいニュアンスの麗奈。
「セックスできないのに女王様?」
「できないというよりしたくない」
「セックスできないんですか」
愛那の言葉に一同がしばし沈黙するなか早紀はつい口にしてしまう。
「美如月さん。あなた処女でしょう」
……。
これには私の瞳が何らかの期待と桃色の妄想、懐疑など複雑な色を含んだ眼差しがゆっくり動くなか彼女は慌てた。
「な、なんでそれを!?バージンだなんて」
図星だったかと同性の麗奈たちは思うが麗奈はちらっと私は見た。
「いまスケベなことを考えた?」
「あ」
「オトコはこれですから」
早紀の表現が端的なだけに女王様のままうなだれる私とは対照的に愛那は叫ぶ。
「名誉棄損です!訴えますよ」
早紀は言う。
「セクハラ紛いなことを沙耶香さんやモデルさんたちがもしも訴えたらあなたがセクハラよ?負ける方が高いわ」
もとスケバンらしく声に凄味があり言葉にも説得力ある。それは先の主任を含めた会議でも明らかであった。
「訴えないわ。安心して」
こういう時何故異性に優しくするのか私自身わからないところ。麗奈たちは納得しない表情にも諦めと共感があるようだ。
「また優しくする」
「訴えても沙耶香さんたちモデルも恥を晒しますし会社も」
愛那もまたうなだれる。ちょっとかわいそう。
「ふたりとも若い後輩をいじめて楽しい?」
今度は彼女たちも黙る。

No.168 18/01/24 15:17
作家 

お待たせしました。
今度は奈々や里沙が風吹先生を連れて現れた。
「さて今度は何?女陰恐怖症の再発、性的不能かしら」
この人は神無月社長と深い付き合いらしく女王様な私のまわりに三人の女性がいることに驚かないことに内心驚く。
しかし驚くのは愛那。
「先輩インポ……」
「ちがうわよ。しゃべらないで」
性的不能(インポ)なら何らかの形で諦めがつくかもしれないが性欲はあるのに麗奈たちを抱けなくなっただけ。その旨を風吹先生に話したが通常カウンセリングは他人がいるところで話さないものだけど……。
風吹先生はここ最近の私の性体験をうかがい舞先生との失敗、佐伯流菜との交わりなどなど。
カルテにメモをしながら美脚が艶かしく見え女王様のショーツの内で勃起しちょっといたい。
「どこ見てるの」
「いっそのこと逆アナルされますか」
麗奈と早紀は時々容赦ない。冗談を含みながら声が冷気を帯びる。
「ふたりは本気で沙耶香さんが好きなのかしら」
冗談めかしながらの風吹先生の瞳に黙るような仕草。女装でありながらも他の異性に目がいくのは気にするくらいはふつうの恋愛感情がある。だけどその先をどう表現していいか互いにわからないかもしれない。
沙耶香さん、と風吹先生は見つめながら組んだ脚から大人びたショーツが素足の隙間から見えた。
「っ……」
「ハイ。フツウの反応、私の下着を気にするくらいなら性欲はいつも通りかそれ以上はあるようね」
それ以上て。
愛那は沙耶香がどれだけ性欲があるのか本気で疑った。
だけどと風吹先生は言う。
「え……とフィットネスクラブの舞先生かしら」
「はい?」
「処女のその人と失敗したのが原因かしら」
ペンを揺らしカルテをトントンとしながらはっきり言う。
「自信喪失かしら?それが極端にマイナスイメージ化されて女性恐怖症の一、ニ、三……何歩か手前な感じというのが初見」
女性恐怖症の手前、これには一同唖然とするなかさらに彼女は聞く。
「ついでに聞くけどその佐伯流菜さんとはいつものようにリードないし主導権は取れた?」
いえ、と私は彼女にのみ込まれたような雰囲気があり童貞少年のようなセックスをしたといまさら感じた。
「このふたつのことが原因かしら」
人差し指と中指を立てわかりやすく示し風吹先生の端正な表情に頷くしかない。
ハイと答えた。

No.169 18/01/24 19:12
作家 

ハイと答えたがすべてにおいて認められない気持ちもあった。
舞先生の初体験は失敗に終わり流菜には裏切られた思いは事実ある。だけど無為に異性に優しくする自分もいる。
セックスの時は人がちがったソフトサディストの一面が出てくる。性癖をコントロール仕切れてないのは伝わる。
だけど、と風吹先生はつり上がった瞳で麗奈たちを見つめる。
「あなたたちも沙耶香さんに甘えてないかしら。この人とセックスしてたら幸せて。だから他に何もいらないから愛してください愛しますからとか」
な、と麗奈早紀共に同じ表情をした。自分たちが診られるとは思わなかったらしい。彼女は続ける。
「リードする時も大事だけど優しく見守るのも女性の役目。三角関係でそれはムリかな」
何も言えないふたりは当たらずとも遠からずみたいに指を小さく握る。多少なりともプライドは傷ついたようだ。
「時には本気で競争する時も大切。マンネリにならないように色気で沙耶香さんを元気づけるなり勃起させたら自信喪失は吹き飛ぶわ」
ふたりは思う。
本気で……。仕事もプライベートも馴れ合ったとは思えないけどライバル……ライバルよね。
奇せずして同じことを思う。
次に風吹先生は単刀直入におくびなく愛那に目を向ける。
「あなた処女ね」
「……!」
「処女なのによくアダルト業界に入れたもの。好奇心は旺盛だけど異性は怖い、だけど興味ある。興味ある異性は近くにいるけどなかなか手を出したくても出せない」
いいように言われわなわなと震える彼女の手を私は思わず握った。
「そんなことあなたに……!」
瞳から水滴を流す彼女を庇うように私は風吹先生を見つめた。
「ま、言い過ぎたのは悪かったわ。だけど処女のままアダルト業界にいたら女性としては不幸せになるかもしれない。ちゃんと相手を見つけることね」
「……はい」
ここまで言われて本音は怒りにごうごうと燃えてるくらいに握り拳が熱く痛いように思えた。キッと睨む愛那は脆い少女が持つ女性としての感情らしかった。
裏を返せば麗奈と早紀もこの感情をいままでコントロールしていたかもしれない。
帰るわ、また機会があったら診るからと風吹先生はカルテを直し背を向けた時だ。
口でおぼえてなさいと呟く麗奈、ベーと舌を出す早紀、ただ睨む愛那。
見てはいけないものを見てしまった私の気持ち誰も考えないの。

No.170 18/01/25 06:49
作家 

とはいえこんな表情を私も知らずにしているかもしれない。
生出演や取材の時にどんな表情を撮られているか意識してない。基本は刷りガラス越しや目線は入れるようにしてるが。
気づくと麗奈と早紀が私を挟んで火花が散らんばかりに見つめてる。そっと愛那の方に逃げる。胸中ごめんなさいと誰に謝ってるのか。
「なんなんです」
「社長の知り合いのお医者様。ちょっと表現はキツいけど」
「処女でいけないんですか」
「……気にしないでと言っても無理よね」
そっと諭すような言い方で少し彼女は落ち着きを取り戻したよう。性的なことは著しく本人にしかわからない劣等感やプライドを傷つける。
「麗奈、早紀さん」
なにとふたりに見つめられ腰が引ける。前にもこんな場面があったようなとよぎり頭の中で振り払う。
「お、遅いね。今夜はなにをさせられるのかな」
知らないと麗奈は言う。それはそうだ。下手に黙ってたことが飛び火してしまう。恋愛関係や仕事関係から関係が始まっててもいまのような状況になってたかは想像にいたらない。
危機感に立たされると“男”を意識する。
“だってあなたはオトコだもの”
沙耶香が頭の内で囁く。
性同一性障害ならとっくに性転換かその準備にしてるかもだけど男の快感を持続し女装であり女性でいたいと願う。
我が儘。
“そう、我が儘”
「先輩、いえ沙耶香さん?」
「ううん、なんでもない」
沙耶香に語りかけられると意識が解離してるらしい。彼女は深層意識か潜在意識の存在あるいはすでに意識のなかで仮想に作られた存在か人格か。身体は私が持ち動かしてるのに……。
自信喪失、これは私自身が女装に関係なくもとからのメンタル的な弱さかもしれない。
「いつまでくっついてるの」
「してませんよ」
愛那から手を離され幸か不幸か。
そこへ扉が開かれ綾香に招かれた女装者に愛那と麗奈以外は驚く。
「先輩に沙耶香さん。なんで……」
そこには中性的な面立ちで似たような女王様スタイルで透子がいた。
知り合い?と聞く麗奈たちに私が事情を話し早紀は思わぬ出会いに困惑が隠しきれないでい。
ふたりの女装の女王様と麗奈に早紀にそして愛那、複雑な人間関係のように思えた。
何をさせられるのか懸念していたら神無月社長が現れ伝えた。
ファッションショーをすると。
SMではなくて?

No.171 18/01/25 08:05
作家 

ファッションショー?
同音異義語でみな一様に社長を見つめるなかルールを彼女は伝える。
沙耶香、透子のふたりではじめのみ女王様スタイルだか後の九回はコーディネートしファッションショーするという。ちなみに演出は通常のショーに準じるが性的なショーも用意するという。性交の有無を含め。
軽くめまいをおぼえそうで帰っていいかなと逃げたくなった私をよそに麗奈は口を挟む。
「なにをやってるんですか、ここで」
「いまは言えないわ」
怜悧な瞳が場にいる全員を射ぬくようだ。帰るからと麗奈が私の手を引くが先ほどの思いとは別に迷いや葛藤の内に何をされることへの淫靡な期待もまたありそう。何より自分と同じ女装者を雑誌やネットを除いては生で目にする機会は少ない。
沙耶香。
「不本意だけどここまで来たら付き合って。お願い」
妙に自分のなかで言葉がつながってない感じだが麗奈は椅子に座り直す。だけど手は離した。
「私と透く……透子さんのコーディネートは?」
「いるじゃない。一部ふたりほどオマケがついたみたいだけど」
麗奈と愛那をあっさりオマケ呼ばわりする。あまりプライドを傷つけるのは控えてと思う。
「あたしたちが沙耶香さんと透……のコーディネートするんですか」
早紀は驚く。
「他に誰がいるの。麗奈たちがいなかったら彼いえ彼女は綾香たちにお願いするつもりだったわ。だけど好都合」
なんにでも前向きなのか後には引けないかわからないけど神無月社長はバイタリティある。見た目だけなら有能な秘書なのに。
「ちょっとオトコ同士でファッションショーとは別な話しをしていいですか?」
おそるおそる逃げるように透…透子の側に向かい部屋の隅に誘う。女王様のやることではないなか女性たちの視線が背中にあるなか彼に聞く。
童貞……?
「ち、ちがいます」
「早紀さんに奪われた?」
小さく頷く。思わず口にできないほどの想像がよぎったがそれはオーバーだろうと頭の隅から消した。過激な想像とだけ読者に伝えましょう。
童貞なわけはない。仮に本人がサディストであっても性癖は自覚するものされるもの。
ん?透子さんもサディスト……?
ということは早紀さんを虐めたいのか。ダメ、袋小路に入る。
私たちが話している間にチーム分けは出来たようだった。
私に愛那、早紀。
透子に麗奈。
麗奈さん怒ってる?

No.172 18/01/25 12:20
作家 

女装子や男の娘(こ)のファッションショーは何度か耳にしてたし最近では大学やイベントなどでも行われるがここはSMクラブ。SMクラブでファッションショーに違和感があったりなかったり。なかには女王様やM奴隷が身に付けるランジェリーにフェチな性癖がない者がいないわけではない。
ちらっと麗奈を見ると複雑な表情に微かに視線に威圧感。
「透くん、いえ透子ちゃんね。よろしくお願い」
「こ、こちらこそ」
ショタの気がないはずだけど彼女が同性しかも女装の同性に親しくするのを間近に見ると嫉妬に近い感情がある。
こちらは凸凹コンビな早紀と愛那など思ってると早紀が言う。
「変なこと考えませんでしたか」
「いや」
「ならいいです」
先日の一件から妙に割り切りがよくはっきりし少し大人びた感じがある。セックスによる行為ではなく自然な感じ。
神無月社長は言う。
ちなみにオールヌードはなしと付け加えた。
あたりまえでしょう、ファッションショーなんだし。
私たちは神無月社長とメイドに連れられ衣装部屋に招かれた。そこにはドレス、制服、コスチューム、ランジェリーなどありとあらゆる衣装や下着が色鮮やかにありマネキンに飾られたドレスやランジェリー、ハンガーにかけられた制服など。
みな一様に驚く。
「会社でもこんなにないわ……」
「目移りしちゃう」
私と透子は女性陣たちの驚きようとは別に唖然としていた。
だけど私の思考回路は別にいく。神無月社長のSMクラブ“ヴィーナ”、常識的に考えて彼女だけの財力だけではたぶんに不可能なはず。邸宅に衣装、SMクラブとしての維持、屋敷などの手入れなど含めたら出資者やグループがいるのだろうか。
考えても埒が開かないので考えるのはよそう。
「女王様以外に九回ずつの衣装チェンジか」
「二ノ宮先輩考えありますか」
「沙耶香さんの意向しだい」
早紀たちは先日の件とは別に気持ちを切り替えたのかいくぶん距離は縮めたよう。女の子はわからない。
麗奈は透子を呼びスリーサイズを聞いたり好みを聞いてチョイスする。
「麗奈さんが相手だなんて」
間接的にこんな形で張り合う戦うかわからないけど意外な形でおとずれた向き合いに吐息する。
「沙耶香さん」
「ハイハイ」
「はいは一回」
早紀が麗奈に似てきたかもしれない。ふたりが協力できるのだろうか。

No.173 18/01/25 15:31
作家 

テーマを麗奈が聞くとこう返ってきた。
“女装と性と女王様”
聞いてる私だけ頭がいたいのだろうか。透子の表情も困惑あるようだ。
「女王様……」
「性なんていろいろありすぎですが」
早紀や愛那は真剣に打ち合わせしている。愛那の言うことは伝わる。
性の世界は男女が基本にあるが現代の性世界は同性愛、SM、男装女装など無数に複雑にテーマがある。文科省が知らない世界かも知れない。
早紀は私に向き直る。
「セックスはできなくても前戯はありですよね」
まっすぐ見つめる瞳はプロの女性の眼差し。力強く妹みたいなかわいげを感じさせない。
「う、うん」
「ハイです」
はい、と答えるなかふたりは改めて衣装や下着を選び綾香たち四人のメイドは二組に分かれメイクについてはできると言う。
鏡台の前で背中合わせになる私と透子。鏡の向こうに麗奈の姿が映る。
「サイズは今夜のためにお二人用に合わせてますが」
「ありがとう」
つい先日ケンカしたばかりなのに女性たちは意気投合。
「女王様でわかりやすいのはランジェリー、ムチ、アイマスク、ヒール。ヒール歩けますよね?」
「できるけど」
「けどじゃなくできますよね」
普段はパンプスだがおしゃれな時はつけてるから。
「できます」
「二ノ宮先輩はなにをするつもり」
私やメイド奈々、麻由には聞こえるように伝え思いきった演出と理解する。麗奈たちも綾香たちと話し合いながらまとまったよう。
勝ち負けがあるのか。
館田先生の女装SM官能小説では女装子たちが競う物語だけど。
ステージにはこの夜のギャラリーたちがいるらしいと社長は伝えた。
衣装やメイクチェンジは相手がステージに立ってる間のおおよそ五分。
人数的には麗奈や透子側が不利なはず。
だけど経験では麗奈が優るはず。
「前戯だけですから逃げないでくださいね」
優しく諭しながら本音は逃げたら殺しますからみたいに早紀の声が聞こえる。
必要な衣装や下着はハンガーにかけられステージ裏に走るように揺れる。後を追う私たち。神無月社長を含め八人が舞台裏に回る。
「怖い?」
麗奈が問い頷く。
「よかった。ちゃんと沙耶香はふつうのひと。怖いことは誰もが怖いんだから」
彼女の瞳は社長にわずかに移す。彼女のライバルは神無月社長ということを知らないままだった。

No.174 18/01/25 17:09
作家 

最初にステージに出るのは女王様スタイルの私と透子が順に出ていく。
BGMがロックサウンドになり舞台袖からステージに派手な照明やカラフルな色彩があたり私は出るようにうながされる。
きゃっ、と声が漏れるなかヒールで歩き髪をかきあげコルセットの背中を見せると声や吐息がギャラリーからわずかに漏れる。眼鏡を外し髪のリボンを外し正面を見据えた。さいわい誰もいない。
こんなのうそっぱちな女王様じゃないと嘆くが五分という時間はステージで立ち回らないといけない。ポーズを決めたりどこの誰とも知らないギャラリーを見つめたり。
手招きがわずかに見え舞台袖に引けるなか透子の表情が青ざめていた。
だいじょうぶ、失敗してもいいの。
そんな麗奈の囁きが透子に伝わるなか私は早紀たちのもとに向かいコルセットや手袋、ヒールなどを脱がされ次の衣装。ランジェリーにとある制服に着替える。メイクをし直され今度は淡く柔らかい。
「行ってください」
SMクラブというより本格的なファッションショー。すれ違う時にわずかに透子の表情が違い眼差しは早紀を見ていた。
「っ……」
息をつきながら私の衣装はセーラー服。ただし丈は短く絶対領域という短さ。けっして細くない足だがそれなりにギャラリーの興奮を誘う。
沙耶香さん!?という声に見ると先日のヒロミたちがいたことに一瞬固まるが透子がいるからいてもふしぎないけどとむりやり納得させた。
途端にBGMが暗い不気味な感じに変わり照明が一瞬落ちスポットライトが私を照らしもうひとつライトが当たる。
きゃっ、と同じようにセーラー服を着けた早紀は舞台袖から投げられた演技をした。
「あら可愛い子猫ちゃん、今日も虐めてほしい?」
「や、やだ……」
「あなたはフェラが好きなんでしょう」
スカートを捲ると扇情的なレースのショーツが露になりそこには勃起したぺニス。
「ほら、いつものようにして」
四つん這いになりながらぴちゃぴちゃとぺニスに舌と指を触れ早紀はまさにいじめられっ子の様子。もとスケバンの面影はない。
「沙耶香様……許して」
「許さない」
決められた台詞通りだが五分という短い間にイカせるのはまず無理。
だがギャラリーがショーとして惹かれてる雰囲気が伝わる。
はむはむ、とフェラする少女のような早紀。
だけどタイムリミット。足早に舞台袖に向かう。

No.175 18/01/25 20:31
作家 

舞台袖に戻る瞬間目を丸くした。
透子はキャミソールにスキャンティとややもすると少年の面影を残し中性らしさの雰囲気があったいかにも母性くすぐる下着のチョイス。
「自然なままでいいわ。女王様は意識しないで」
麗奈の言葉が耳に入りつい普段は意識しない闘争心にちろちろと火が点くのを感じる。
だけどコスプレのなかに女王様を感じさせるあるいは魅力を全面に出すには衣装とランジェリーの融合なにより本人の技量。コスプレと同じだが女王様というのは憧れだけでは埋まらない。
OL、女教師、ナース、バスガイド、女性ドライバー、メイドなどで早紀と戯れるが徐々にギャラリーの反応は薄い。
集中をすればするほど焦りが出てきて麗奈が透子と共に高い壁のように立ちはだかる気分。
「なんでイカないんですか」
「無茶言わないで」
愛那もまたおろおろしはじめ動揺がちいさな顔にあった。仮に射精できてインパクトあったとしてギャラリーの反応が良好とは限らない。
プロのストリッパーでも演出は事細かに綿密に打ち合わせするが私たちは即興。だけど麗奈たちも同じ条件なのに何がちがうのか時と共に焦りがメイクさえ落とす。
「どうしたらいいの。次が最後です」
「わかってるわ」
四人の女性たちは焦りが見え相手が中性的かつ年少に見える女装もしくは男の娘(こ)。
相手になくて自分にあるもの。パッドについ触れて数瞬考え閃くがおこなっていいか迷いがある。
「いい?私にまかせてもらって」
「何かあるんですか」
「やってみないとわからない」
「なんですか、それ」
私は麻由にちいさく囁き彼女は衣装ハンガーからチョイスしたブラウスを持っていきどこかへ消えたがすぐさま現れた。ランジェリーを色を選ぶ。考えてもしかたがない。サッと足に通しブラウスを羽織りステージ前に立つ。
BGMは無しに変更。無音が会場を覆う。
おおっ、とギャラリーたちの声がした。
冷たい、と肩や背中に感じるのは濡れたブラウス。ブラウスから滴る水滴がぺニスのある黒いショーツの前やお尻を濡らす。
表情だけで女王様を表現しようとするがむしろ苦悶したかもしれない。
ギャラリーたちにどう映るかわからないまま濡れたブラウスに自分の身体を抱くようにしたり眼鏡を外したり髪をいじる。
負けたかもしれない……。
黒いショーツの内のぺニスは小さくなっていた。

No.176 18/01/26 14:34
作家 

舞台から戻った私は再び透子の姿に目を丸くした。
女王様ぽいランジェリーに再びを身を包むがメイクは薄く本来の透らしい少年の面影がより目立つ印象。
意図が読めない。
麗奈さんは彼の背中をそっと押し私たちは舞台を袖から見守る。
「あんな子が沙紗香と同じサディストかしら」
ちらっと私が見ると一言。
「ひとりごと……」
透子の動きはまた先ほどの私に似ており自分の身体を抱いたり髪や頬を撫でたり舞台袖からは背中や斜め具合にしか見えない。早紀が呟く。
「勃ってますよ」
「言わないで」
「センパ……沙耶香さん同性愛者じゃ…」
ちがう、とちいさく咎めた。たしかに女装子は時にオナネタにするが一緒に身体を交じあわせたいとは思わない。
五分経ち透子は慣れない舞台で緊張から解放され少し足がふらついた。おおよそ一時間四十分ほどのステージ。
神無月社長はカーテンコールに皆に付き合うようにうながす。
いくわよ。
私、透子、麗奈、早紀、愛那に神無月社長に四人のメイドの十人。マイクを持った神無月社長は言う。
『今宵のステージはここまでと致します。メインを飾ったモデルサヤカと透子に拍手を!』
男女から満場の拍手が送られ照れや緊張など理屈ない感情や気持ち、ある種の快感は肌に伝わる。
「恥ずかしい……」
「私も」
透子の呟きに応じ続いてスタイリストおよびメイクアーティストとして麗奈と早紀たちが順に紹介される。
「なんなのこの世界」
「社長に聞いてください」
愛那だけはちいさな身体をさらにちいさくさせてるみたいでなんとなく伝わるものがあった気がした……。
処女で性の世界を知らないまま未知な世界に飛び込んだ後輩。
早紀もまた満足いくところとそうではないふたつの異なる表情。ほんの少し以前の彼女に見えて安心しなくもない。
私は……。
どんな表情だろうか。
女装として自らを着飾り装いながら……。
メイドの麻由たちはギャラリーのもとにおりパーティーをほんの数時間開くという。
舞台袖から裏に引き上げどっと身体に疲れが襲い眠気が途端に感じた。
「くしゅん!」
「早く服を着替えるかシャワーを」
麗奈だった。すると奈々がシャワールームに私を案内しお湯を浴びた。
勃起している……。湯に浴びた身体は興奮があったのかと思う。

No.177 18/01/26 18:59
作家 

シャワーから上がると奈々は着替える私の裸体が下着や衣服を身につけるのを頬を薄く紅に染め着替え終わると先に進み案内した。
向かった先は別のパーティールーム。よく四人のメイドだけで用意したものと思えるくらいの立食パーティーの料理。別ルームにはギャラリーたちの料理もあるのに。
ふと気づく。透子の視線は早紀。だけど瞳の色から愛情か憎しみかわかるわけない。
神無月社長。
赤いスーツはいつものように鮮やかだがなぜか私には赤い色が陰りある灯火のようにも見えたが気のせいだろう。キャリアウーマンは麗奈や早紀のように本質は弱くても強く生きれるのが女性だから。奈々の姿はいつの間にか去りそっと私は足を進めた。
「沙耶香さん」
「すみません。私だけシャワーを浴びさせてもらって」
麗奈の瞳が珍しく私に挑戦的な輝きのなか神無月社長は皆に聞いた。
「今夜のファッションショーは好評。即興ではあったけど矢口や美如月がいてよかったわ」
互いに顔を見合わせるも微妙な表情。特に愛那は何かを感じている。
だけど、と神無月社長は私に視線を向ける。
「沙耶香さん。何か感想は?」
躊躇い目を背け本音を口にした。
「負けました」
「何に」
「麗奈の技術の素晴らしさや技量、センスとか。あと透子さんを生かした思いっきりのよさ」
私の言葉に早紀と愛那はちいさく頷いたように見え神無月社長は次に麗奈たちにも聞いた。
「いえ、むしろ早……二ノ宮さん美如月を甘く見てた。息が合わないかと思ったら意外なくらいにいいコンビになるかもと後輩のパワーを感じました」
麗奈が早紀たちを認めている本心だろう。しかし私たちは後半そのパワーを衰えていった。
「透子さんは」
十代の面影が残る女装子。早紀を見てた視線が気になるが私事に過ぎない。
彼いや彼女は言う。
「初めてで何がなんだかわからないままでした……」
「ううん、立派なモデルさん。『クロスドレッシング』で使いたいくらい」
こういう時は麗奈は美姉のよう。嫉妬してるのだろうか……。
だけど、と神無月社長はもうひとつ聞いた。
「最後の衣装についてのコンセプトを聞きたいんだけどいい?」
濡れたブラウスにショーツしかも胸パッドを露にした私、片や中性的なままの女王様の透子。
「そうですよ。沙耶香さんなんですあれは」
疑問はもっとも。口を開いた。

No.178 18/01/26 20:57
作家 

“女王様になりたくない私”もしくは“女王様になれない沙耶香”、私が最後に披露したコスプレはそんな意味があることに神無月社長は二重契約問題以上に私を強く見据えた。
「本気で言ってるの」
「ええ、女王様になるつもりはありません」
てっきり平手打ちが飛ぶかと思ったが何かを懸命に堪え本気で必死になる表情が見えた。
なぜそんなに必死なのか。この時は知る由はない。
彼女は麗奈に透子の最後のコスプレを聞くとそれも意外だった。
「“女王様になれない女装子”もしくは“女王様になりきれない女装少年”」
私を含め皆が顔を上げた。なかでも透子本人は若い線の細い顔から驚きがあるようだった。
「女王様じゃなかったんだ……」
「ごめんなさい。私はあなたに沙耶香への私的な感情を最後に含んでしまった……」
いえ、と複雑な表情の透子。彼いや彼女はなぜそんな顔をするのか。
神無月社長はキッと感情をめずらしく露にした。
「なぜ沙耶香さんは女王様になりたくないの」
なにをそんなに怒るのか理解できない。私も麗奈も早紀も愛那に透子も。咳き込む彼女。
「ごほっ!ごほっごほっ」
そこへ麻由たちがやってきて気付け薬か何かを水と共に与えた。
「具合は」
「な…なんともないわ」
愛那は呟く。
「あ、あたしは矢口先輩にも二ノ宮先輩にも負けました。処女なのにこの業界に入ったことを……いま少し…いえとても後悔してます……」
はじめはぽろぽろと涙を流し最後は少女のようにわんわんと泣く彼女を神無月社長は抱き締めた。
「知ってたわ。ごめんなさい。だけどいまは二ノ宮と沙耶香さんとチームでいて」
なんて残酷なことをするのかと複雑な思いを抱く。処女と知りながら成人雑誌業界に入れるなんて。だけどこれは私だけの思いかもしれない。
“あなたには後輩の気持ちはわからないのね”
私の内の沙耶香の声がやたら遠く聞こえた。
今夜はみな泊まっていきなさいという神無月社長の言うことに反発をおぼえる私だが麗奈や早紀たちがはいと答えた。
愛那はまだ泣いていたが実力の差を思い知っただけによけいちいさく見えた。
「愛那さん」
「先輩……」
「少しふたりだけで話していいですか」
麗奈や早紀が大事なはずだが後輩をひとりにしてはいけない思いがあり屋敷内を歩き運よく見張らしのいいベランダに出れた。星が見えた。

No.179 18/01/27 06:25
作家 

眺めのいいベランダからは郊外の地平線にも似た景色やいくつかの街の明かりが見えた。
涙を流し終えたのか愛那は瞳が少し赤い。だけど保護欲をそそりそうで抱いてあげたい衝動をこらえた。
「なんで優しくするんですか」
「前も言ったでしょう?それしかできないから」
「矢口さんや二ノ宮さんともセックスしてましたよね」
「いまはしてないもの」
彼女は私をどうしたいのか。ちょっと勇気はいるが聞かないと先に進めないかもしれない。
「むかし私が下着泥棒した時のことを話してくれない」
目線を合わし少し屈むなか照れや羞恥があるなか少しずつ話しはじめてくれた。
彼女の言い分はこうだ。
ある日学校から帰ると朝や夕方に干した下着が忽然と消えることが幾度かありまた別の日に待ち伏せしていたら学生時代の私が忍び込むのが見えそれがよく見る先輩と知りショックを受け傷ついたという。
声をかけたい相手と思ってた相手に裏切られた思いと少し憎しみが混じる深い声が重い。
だけど女装の美しさを知るがセックスの経験を知らないまま双星出版社に入社。やや性知識は疎いがちいさな身体のわりにクソ真面目なくらいの性格があり少しずつ認められてきた。その矢先に私が麗奈にスカウトされ去年の企画AV撮影と慰安旅行の際に自分をおぼえてるかたずねたかったが相手されず憎からぬ思いがしたという。
私は言う。
「ごめんなさい、て謝っても許してくれないわね」
はい……、と小さな声が針のように胸に痛い。そんななか庭か邸宅の玄関から声がかかった。
「あ、沙耶香さ〜ん」
「いいもの見せてもらったわ」
「透くんは?」
屋敷のなかです、と返事しながら彼女たちは私が愛那といることをからかいながら夜の闇にハイヤーが消えた。
「お友だちですか」
「知り合い」
「……先輩」
「なに」
何を言われるか動悸がどくんどくん鳴るなか彼女は言う。
「お、お友だちからいでいん……付き合ってください」
「下着泥棒の?こんな私の」
はい……、とまるでいままで胸の内に溜めてたことをようやく伝えれたことの思いがあるようにはにかむ。
「……またひどいことをするかも。わたし下着や衣装好きだし」
「あ、あたしが可愛いくなれるようにアドバイスしてください」
こんなに可愛いのにと思うけど本人が自覚してないのも不憫。
わからないだらけ。

No.180 18/01/27 14:40
作家 

充分すぎるくらい可愛いのに身体の小ささと下着泥棒のショックからアンバランスに性の世界に飛び込んだ後輩。
「あのとりあえずお部屋で……」
「なんです」
「愛那さんが気持ちよく眠れるくらいはしてあげるから。だめ?」
いえ、とベランダを出ると待ち構えたように麗奈と早紀少し側に透子が見えた。
「今夜は美如月?」
「……せいぜい沙耶香さんに優しくされてたら」
麗奈は嫌味、早紀は突き放しながら何かを託すようにも取れる遠回しな表現。透子の視線はやはり早紀に向くが気づかない振りのようにも感じる。
こちらも微妙かつ複雑な関係。
綾香に愛那のゲストルームに案内され彼女用のアルコールに私用のジュース、少しばかりのお菓子を運んでもらうようにしほどなく綾香は大人びた表情で退出した。
「あんな風になれないですものね」
後ろ向きな発言はとても私を憎らしいと思った顔よりは儚げ。
「……女装してる私がいつま楽しいと思う?中身はれっきとしたオトコ。やわらかいムネはない。さらさらな髪でもない。肌はよくほめられるけど一度汗もや湿疹できたら女装の殻なんてなくなりそうなくらい服やランジェリーを身に付けながら快感と苦痛があるの。ましてや……オ×ン×ンはいつも身体にぶら下がってる。オトコを意識しながら女性も意識する。性同一性障害なら性転換したいと悩み誰かに相談しいずれは性を変えられる。だけどそこまでの意識はなれない……」
めずらしくいっぺんに本音を吐き出した感があった。ここまで言うことは少ないはずだった。彼女は黙りながら持ってこられたビスケットをカリッと噛む。
「そう思ってたんですか」
「いつもは意識しないからなんとも思わない。だけどふとした時や麗奈たちがまっとうな女性であることを意識したらああオトコなんだ……と思うの」
ビスケットを口にし甘いはずなのにちょっと苦い。彼女の味はどうなのか。
しばし黙る愛那は眠たそうに自然と肩によりかかりベッドに付き添い横にした。さながら『ふしぎの国のアリス』のアリスのような可愛いさ。
「センパイ」
「あ、は…ハイ…」
「気持ちいいこと……せ、セックスですか?」
ふと舞先生との失敗がよぎり振り払い言う。
「セックスはしないけど気持ちよくさせてあげるから」
そっとベッドに上がり軽く甘いキスは自然と重なる。
「ファーストキス……」

No.181 18/01/27 19:27
作家 

愛那が女装の異性と初めてのキスを交わした頃早紀は麗奈のゲストルームにいた。
「沙耶香さん美如月さんとしちゃいます?」
ワインを煽りながら麗奈はあっさり否定する。
「処女をもらうことはまだしないわ」
「ですよね」
かつてのアイの一件からもまわりが長いと思えるくらいの時間だった。
「それにしてもストリッパーでもないのによく舞台に立てたわね」
「人に見られてるのは慣れてますから」
早紀はそのむかしスケバン時代に同性たちがいるなか異性の透たちを性的にいじめていた。
「おいしくないです。水で割りますか」
「ワインよ」
「ならお酒」
苦い思い出が現実として目の前にやって来たことに沙耶香は辱しめをされながら愛那と向き合おうとしている。自分は透にまだ向き合いたくない。
こわい怯え復讐……。
そんな思いが再会以来よぎる。官能小説でも復讐のために凌辱されるヒロインは多々いる。
「いいお酒」
「沙耶香がいないと飲めないもの」
だけどふたりは刺激が足りない毎日だった。連日沙耶香の姿はテレビ越しに見るがここ一週間は今夜を除けばまともに会ってないに等しい。
「一度沙耶香さんが酔うところ見たいな」
「よしなさい」
興味がないわけではないがアルコールが飲めない相手に飲ませるのは酷。また人格がどう変わるかはわかったものではない。が興味は小さくあった。
麗奈は思う。
沙耶香がこの屋敷かSMクラブ“ヴィーナ”だかの女王様候補と神無月社長に聞かされ内心いや本心から一笑に付した。
ふざけないでと思った。沙耶香は一人格がある人間であり女装で変態だけど誰かの所有物ではない。
ふとワイングラスが口の前で止まる。
私も社長と同じ……?
恋愛感情からではなく肉体関係から始まったことで沙耶香を所有物のように扱い接してたのか。
「麗奈さん?」
「なんでもないわ」
ワインを煽りこんな夢や虚飾にまみれたところに沙耶香をやりたくない。SMクラブだのは政治家や会社の会長や社長たちの道楽に過ぎない。
バカバカしい。
早紀は麗奈を見つめながら黙ってる時の彼女は自分か愛する相手を考えてる表情かなとたまに思う。
こんなに思われてるのに沙耶香さんは避けてばかり……。
だからあたしが盗っちゃおうとしてるのに。
あ、あたしも馬鹿かな……。酔いながらそう思い彼女は経験を重ねた。

No.182 18/01/28 14:02
作家 

ファーストキスを終えた愛那をシャワーに向かわせた私はじっと待ちお菓子を口にしていた。
太るのよね……。
シャワーから上がった愛那はバスローブに身を包みちいさな湯気が身体を包みグラスのアルコールを口にし言う。
「せ、セックスするんですか……」
「しないてば。だけど気持ちよくはするから」
「……恥ずかしい」
ちいさな顔が赤くなるのを見ながら撮影の時に無理矢理勃起させられた立場はどうなるの。
隣に座るようにうながしいくぶん接しやすくはなったが彼女が恥ずかしがる理由をまだ察していないまま再びキスをした。
「んぅ……や」
「いやじゃないでしょう……」
「ん……」
少し舌同士が絡み唾液は粘液になり唇から滴る。勃起を堅く感じ内股を閉じてしまうなかバスローブの胸元をそっと触れる。
「……や」
「いや?」
「はい……ちいさいし矢口先輩たちみたいに大きくないし」
たしかにと思いながら私の掌は男性としては指は実は太いが一般男性より微妙にちいさい。
バスローブをそっと上から脱がすと成人女性にしてはちいさなバスト。よくて中学生なみ。だけど形はしっかり円を描いていて乳首は綺麗な桃。おっぱい自体は桃というよりは成熟前のいちごのよう。
「ちゃんと女の子じゃない」
「お、女の子ですよ」
軽口を叩くと頭を軽く叩かんばかりにふつうの女の子の反応をしたことに安堵し胸に触れた。
「ん……あ……」
「あたたかい身体、ちゃんとミルクみたいな女性の匂い」
「言わないでくださいへんたい……」
「気持ちいい?」
うん、と甘えるような初めてのソプラノボイス。胸はちいさなわりにちょっとずつ上を向く。身体がちいさく跳ねるように感じる。
たしかに身体からは処女で性に未発達な甘酸っぱい匂いが鼻腔に伝わる。
「んん……」
「オナニーしてる?」
「な、なななにを聞くんですか」
「聞いただけ」
考えるようにそっぽを向きながらポツリと呟く。
「す、少しはしますよ」
「はい。よくできました」
「バカにしないでください……」
小柄な身体なために身長がある私がロリな中学生を襲ってるように客観的に見えるとしたらちょっと気に病む。
しかしその程度ならともかく彼女がセックスを拒むにはちゃんとした深い理由があったことはこの先に知ることになる。
愛撫しながら下半身に向かう。

No.183 18/01/28 15:20
作家 

下半身に手をやりバスローブがはだけるなか白い肢体が露になる。
いや、と声が漏れるなか彼女の手はぽかぽかと頭を軽く叩く。
「ちょ……いたい」
「あ……」
一旦手を止めると可愛らしいシンプルなパンティ。後輩とはいえ高校生いや中学生を相手にしてる錯覚に陥りそうになりながら花唇の膨らみにそっとやる。
「ん……」
「ちゃんと感じるじゃない」
「……んぅ。いや」
何がいやなのかわからない。ほんの少しうっすら陰毛の繁みが見えるけど。花唇はしっかり下着の薄布を湿らせ愛液が淫らな音を奏でる。パンティの左右に手をやり脱がそうとすると。
ぽかぽかとまた頭を叩くがさらにぼかぼかと本気で叩く始末。
さすがにキレた。
「いい加減になさいよ!!本気で叩いて」
「あ……だって」
睨む私に彼女はうるっと瞳を潤ませる。愛撫するたびに頭を叩かれたのでは相手が嫌がるのわかるはずなのに。
なあに、と聞いたが何も言わない。
「ちゃんと身体は感じてるみたいだし不感症でもないみたいなのに。何がいやなの」
そっと身体を離し向き合いながら聞くがいまいちわからず悩む。
「……あ、あの。じ、じゃあ見てください。先輩の目で」
「オチ×チ×生えてない?」
生えてませんと本気で叱られた。冗談が通じない子はやっかい。
何がでてくるわけ?と思いながら顔を両手で隠し羞恥心がよほどあるのか愛那の下着を脱がして少し動きが固まった。
目の前にあるモノを指で突っついたり指で摘まんだりちょっと指で抜いたりしてたらさすがに怒る声がした。
「なにしてるんですか」
「あ、あのこれ……」
口に出さず目の前にある事実をちゃんと確認した。可愛らしいワレメの上にちいさな髪の毛がもわっとあるみたいな陰毛、いや剛……毛だろうか。『となりのトトロ』ならマックロクロスケみたいなあんな感じ。
愛那は言う。
「身体がちいさいのもですけど……中学生くらいからこんなに毛があって」
「えっと……剃ったりとかは」
口をつぐみながら告白する彼女。
「剃ってみたけどすぐに生えてきて困ってるんです」
…………。
とりあえず私は自分の体験からアドバイスのつもりで答えた。
「永久脱毛してみたら……どうかな」
陰部なので若干の辱しめはあるかもだけど。
「できますか?」
「麗奈たちに聞いてみて」
間抜けな答えだった。

No.184 18/01/28 19:13
作家 

先輩のを見せてくださいと言われベッドの上で向き合いちいさく吐息し見せた。
ショーツの脇から出ている男性の象徴。
「男の人てなんでこんなヘンなのをつけてるんですか……」
間違いなくいまこの子は世界中の男を敵に回したみたいな発想か妄想が浮かんでは消えた。
「そんなのは生物学でも勉強なさい」
悪気がないだけによけい真面目に答える自分が嫌になる。これでは子どもの疑問に答える保育士。
震える手で彼女はそっと触り掴む。
「ちょ……いたくしないで」
「しません。ただ他のモデルさんにくらべたら可愛くちいさい」
いまケンカ売った?売ったのかな。麗奈や早紀は他のモデルについて口に出すことはなかったのに。私の方が劣等感抱きそう……。
しゅっ…しゅっ…くちゅくちゅ。
ちいさい指や手で触れ上下にするために愛撫というよりくすぐったくむず痒い感じに似て腰が動く。呟く愛那。
「大きくなった……」
「バカにしてる?」
「し、してません。撮影の時はじっくり見れなかったし二ノ宮先輩にじゃまされたし」
じゃまて。公私混同してたわけだろうか。この子といるとペースが狂う。
ぺニスを扱きながら彼女は一心に見つめ言う。
「これがここに挿入(は)いるんですか」
舞先生の声が重なるようになり振り払う。
「今夜は挿入(い)れないから安心して」
「……処女だからですか」
「ちがう。あの愛那さんは……いえ愛那は今夜私に抱かれたい?抱かれる勇気はないでしょう。処女だからどうかじゃなくて相手を好きになりたい気持ち好きになる気持ちを私は大事にしたいの」
少し黙りながら愛那は言い返す。
「先輩は美化しすぎです。セックスを。あたしがセックスできなくてどんなに苦しいかわかりません」
あからさまに言われムッとするがたしかに一理あった。セックスを美化することで麗奈たちを愛することから逃げたり気持ちが女性化したり。ましてや処女の女性の気持ちはわからない。
「処女でも……イクことはできるでしょう。さっきの続きしましょう」
髪を上げ眼鏡を外し森林みたいな陰毛は湿りはあり甘酸っぱい匂いがあった。
「んぅ……」
「素直にならないとほんとオトコに相手されないわよ」
「……オトコなんて」
びくんとちいさい身体が愛撫で反応しながらレズではないはずなのにいまの言葉は微妙。女性はわからない。

No.185 18/01/29 05:48
作家 

クリトリスは節分の豆のように見えるがそれでもぷっくり膨れ感じているらしいことがわかる。
「ん……」
そっと指で這わされ舌をちろちろつけると小さな声が漏れる。真面目なせいか頑なな性で声には出したくないのかもしれない。ワレメに触れるとゆっくり陰唇が露になり処女らしい甘酸っぱい匂いが部屋に広がるみたいに感じた。
男の童貞、女の処女どうちがうだろうか。もちろん早くに経験する者もいれば遅くに経験する者もいる。
陰唇から少し蛇口を捻った水道みたいに淫液が腿に滴る。
ん……れろれろ。
「ん…あ……ああ」
「気持ちいい?」
「はい……」
か細いソプラノボイスが心許ない。処女であるがために頑なな性になりまたセックスや異性に劣等感を抱いたようだがその原因の一端は私にもある。
「ん……」
手に触れてないのに肉棒はギンギンに興奮しカウパー液で卑猥な匂いを発している。いまはクンニで彼女を満足させた方がいい。触りたい触れたいけど彼女が変に興味を持ったり逆に男性の醜い一面と思ってもいけないと思い我慢した。
ちろちろれろれろと舌を這わし未経験な花唇は女性の匂いを発しながらも蕾のような幼さがある。
「あ…ああ……ああン」
「感じたらイッて」
「そんな……」
「ちゃんと眠るまで側にいるから……」
ひどいことをしたのにと彼女はちいさく指を握りながら涙目に近い感じで見つめる。が身体はひとりでする自慰より気持ちいい……。
胸や未経験な女性器を指や舌で弄られてるだけなのに吐息がこぼれる。
「ああ……はあはあ」
「いいの。素直になって」
「あ…ン……先輩」
指はベッドのシーツを掴み爪先から頭のてっぺんまで感じたことのない性的快感が電流のように走り小さな痙攣を繰り返す。
「ん……んん」
彼女の陰唇はさほど弄ってなくとも愛液はちょろちょろながらも甘く唾液と絡む。
びくんと身体が時おり跳ねながらフィギュアのよう。お尻もけっして大きくないが桃のよう。
「んあ……」
「イッて……ね?」
「ああ……あ…」
喘ぐ声に理性が性的快感に抗いながらもちいさな身体には汗や体液が毛細血管から放ち牝の匂いが伝わる。
瞬間だった。
「……イッちゃう。イッ……ちゃう……はあはあ」
アクメを感じたのかしばらくベッドのシーツを掴みながら吐息を繰り返す。胸から呼吸の動きが伝わる。

No.186 18/01/29 09:21
作家 

彼女にランジェリーや寝巻きを着せグラスの水を飲み寝息をするまで待った。
皮肉な出逢い、と加害者である私が思うことではないが音を立てないようにしそっと扉から出ると安堵した。
「透くん……」
「少しいいですか」
やむ無く私のゲストルームに招き女装子同士で話をするのに慣れてない私だが透ないし透子には早紀の過去が重なる。
「二ノ宮先輩はボクをどう思ってるんでしょう」
ひとつ確認したいことがあった。早紀が学校を卒業する時に彼や彼の仲間もちろん被害者ではあるが辱しめをした時のことを聞いた。
「あなたもしたんでしょう?」
「……それは。…はい」
早紀が地元を離れるきっかけをつくったのは他ならぬ彼女自身でもあるが同時に彼女を辱しめた彼らだ。認めることは責任を認めた証しと受け止めることはできると思う。
私は慎重に言葉を選んだ。
「透くん……透子さんはどう早紀さんと接したいの?」
もし彼女をさらに辱しめるようなことをしたら恋愛や肉体関係などとか関係なく私は彼を追い詰めるかもしれないと沸々と内に感情がある気がした。
しかし彼は口を開く。
「ボクは……友だちからでも彼女と接したいんですが」
先ほどの愛那が彼に重なりちいさく頭痛をおぼえた。
「え……と。だけど彼女に辱しめをしたのでしょう?一言……一言でもいいから謝った?」
「話しかけようとしたら、……避けられました」
私が愛那と場を離れた直後にそうしたらしいが早紀は麗奈と離れたようだ。なにげに彼女が睨みでもしたら凄味あるが。考える……。
彼が早紀に復讐をしやしないかは少なからず彼女に感情がある私は見過ごせないが立場的には第三者。深入りは危険。
“ほっとけないのよね”
見過ごせない事態があるなら深入りしてしまう危険があるなか場に入ってしまうことを内の沙耶香は伝える。
「……私が間に入ってもいいけど」
「ほんとですか」
ただしと付け加えた。
「ただし、もしも……早紀さん追い詰めたり無闇に過去のことを話題にして脅したり金銭的な要求などはしない?」
これはあり得る事態だった。サディストが力を行使するのは性行為だけと思いたいが実社会で使うとただの暴力になる。これは私自身も密かに恐れていること。
…………。
ハイ、約束します。
私より若いだけにこの言葉を聞いても懸念はあったが信じる以外にない。

No.187 18/01/29 21:07
作家 

ようやく自分のゲストルームに戻った時は深夜を回っていた。
眠い疲れたしんどい。
メイドの誰かが置いたのはパジャマやネグリジェ、ランジェリーとあったがパジャマをチョイス。下着はそのまま。夏が近いので本来なら替えた方がいいが自分の肌でも人肌あるあたたかみが欲しかった。
クンニや相手の身体に触れ愛すことはできるのに。用を足し少し水分を補給しベッドに入り目を閉じ意識が少しずつ落ちかけた時だった。
何かが触れた。肌が敏感な私ははじめはベッド内にあった空気かなと思ったがそれはそっと肩に手に置き肩から肘……手の甲…指に触れ……。
叫ぼうとしたが何者かの左右の両手に塞がれ慌てながらベッドから這い出し明かりをつけるとそこにいたのは……。
「びっくりさせないでよ。私よ私」
一瞬オレオレ詐欺は間に合ってるとツッコミたいことを堪えベッドの上にいるのは麗奈の見慣れた肢体だった。
「な、なんでここにいるのよ!びっくりするでしょ」
シーッとしゃべらないでと咎められおそるおそるベッドに近づくと囁かれた。
「早紀は酔っちゃって寝ちゃったから久しぶりに顔を見に来たのに。そんな態度取るわけ?」
いきなりベッドに忍び込まれて驚かない人がいたら見てみたいと屁理屈を思ったがやめた。セックスできないのにどういうつもりと見つめた。
「なんでここにいるんですか。夜這い?」
「なるほど。沙耶香が寝てる間に既成事実をつくるもありか」
「いまの時代、それしたら強姦罪ですから」
とあるテレビ番組の知識を伝えると吐息をつく麗奈さん。だけどスッと表情を変え頬にキスした。
「キスだけなら子どもできないからセーフかな」
知りませんとツンする私に掛け布団を開け招くようにした。
「ここのところ疲れてるでしょう?エッチはなしで構わないからお姉さまが寝てあげる」
「子ども扱いですか」
「年下でしょう」
ぐっと勃起を感じ彼女はそれに気づいたようだか見ないような振りをした。甘えてると自らに思いながらベッドに入ると無理やり顔を向かされた。
「やっぱり男の顔してるわね」
「皮肉?」
「ちがうわ。沙耶香の中に女性は生きてるし女性を愛せる男も生きてる。何も悪いことはしてないのにテレビに叩かれて」
「いいんです。望んだことですから……」
じっと見つめる麗奈は柔らかい胸に何も言わずに抱き締めた……。

No.188 18/01/30 20:51
作家 

迂闊にサインをすべきではなかった。それも本名でだ……。
麗奈にあたたかく抱き締められながら私が思うなか抱かれた。
「なんで傷つくのに取材に応じるの」
「私は麗奈たちを抱けなくなった。罰は受けないと……」
馬鹿な人。自ら罰を受けるためだが麗奈は沙耶香から日に日に生気がないように思われた。取材やテレビ出演だけではない。性についての自分に対し自信が喪っている。
精神面が女性化や性的不能(インポ)より質が悪い。原因があるとすれば流菜とのたった一度の交わりかもしれない。
「何が罰よ……」
ぎゅっと抱き締める以外しかできないが彼女は一度は逃げたかつてのレズメイトに複雑な怒りを内に燃やした。
ふと気づくと沙耶香が手をじたばたさせていた。
「ハアハア……胸で窒息させるつもり」
「あら。女性に抱かれて女性として女装のままなのだから、魂が女性になるかも」
冗談交えた皮肉だが我ながら凄い表現と思うが本心ではない。
沙耶香は吐息し呼吸し口にした。
「いまはマスコミの前に出て意思を伝えるしかないんだから」
精神面が女性化してるはずなのに根っこは男性の部分が垣間見えた感じがした。精気はないが内に沸々とちいさくある。それが愛情や性的欲求に向かないのはかなしい。
「いったいなに考えてるの」
「考えてないてば」
「わからず屋」
沙耶香は流菜の力を知らないのだろうか。女性のレズ、特にタチは相手が誰であろうと容赦ない。ましてや人妻としての魅力をいまや持った彼女の魅力はかつてを知る麗奈でさえ魅惑的に誘惑されかけた。
「子ども扱いして」
「似たようなものよ」
口喧嘩には至らないが沙耶香の寝息に近い呼吸が胸にあたり太腿には勃起した肉棒を感じ触れたいが堪えた。少し湿ってるのは性欲はあるのにいつものサディストは秘めているのか。
今夜は我慢しよう。いえいつか再び身体を交えることができる日まで。
本当に馬鹿なひと。
だけど社長の手にも渡すことはしたくない。沙耶香はたしかにソフトサディストだけど誰かの女王様やショーのためではない。
「……疲れてたのに無理して」
気づくと胸のなかで寝息があった。いびきはないが身体から力が完全に抜けベッドに沈んでいた。髪を撫でるとこのひとを離してはいけない気がした。
流菜にも神無月社長にも渡さない。彼女は熱く固く決意した。

No.189 18/01/31 06:12
作家 

……!
気持ちよく目覚めたと同時に側にいた麗奈の存在に気づいて私はあわて下半身を見てトイレに駆け込んだ。
なにもされてない……。
複雑な安心感があると同時に彼女に悪い気持ちが胸にあった。
もしかしたら本当に私の子どもが欲しいかもしれない。だけど私は女装であり男なのだ。身勝手ではあるが独り身でいたい。だけど……。
私がトイレで短い間悩んでた少し前麗奈は実は目覚めていた。
やっちゃえばよかった。
半分以上は本心から出た呟く。さいわい昨夜は生理がない日。黙っていたら夜這いでも逆レイプでもできたかもしれない。
だけど昨夜に沙耶香がバラエティ番組でのことはどうやら事実らしい。つまりは女性でも強姦罪になるらしい。
だけどそれでもやっちゃえばよかったなと悔やむ。まただけどそれをしなかった自分にも意外な思いだ。以前なら淫乱なほどに女性男性を求めていたが沙耶香もはじめは毎日のように求めていたがしだいに互いに節度ある生活や性生活していた。
まるで夫婦みたいな。
そっとショーツの内に手を這わすと愛液は牡を求めていた。
だけどただの男ではダメ。女装それも沙耶香のように自らの性癖や受け入れてくれる女装の男性。
トイレから沙耶香がやってきて髪をあげてくれた。意外な言葉が聞こえた。
「夜這いしてくれてよかったのに。そしたらこんなところ……」
それ以上は何も言わないまま麗奈は沙耶香が自分の表情や姿態を眺めているようだったが布団の感触はあり身体は見てないっちょっとむっとする。
言葉は交わさなくても互いに通じてるところはあるらしかった。
しあわせなのかしら。
そう思った時に扉がノックされた。メイドの綾香だった。
「お目覚めですか」
「おはようございます」
「ん……沙耶香。綾香さん」
わざとらしく麗奈は目覚めて布団を外した。
「おはよう」
「おはよう……」
こんな時でも沙耶香の声は柔らかくあたたかい。つらいはずなのに。
綾香は言う。
「朝食はできておりますが皆さまとご一緒しますか?それともこちらに」
「社長も一緒?」
ええと言う彼女に沙耶香はわずかに迷うが決断が早い。
「一緒にするわ」
女王様になりたくない意思があるのはわかるがまたぶつかるのだろうか。ベッドに座りながら沙耶香を離したくない思いに駆られながら抱きつくことを我慢した。

No.190 18/01/31 13:01
作家 

朝食は比較的軽いパン食とポタージュ、サラダに紅茶など私はチョイスした。
麗奈、愛那はごはんや味噌汁、焼き魚やサラダ。早紀は私に近いがサンドイッチ。
気になった透子はいちばん若いが内容は私や早紀と変わらない。
気にしたのは彼が早紀になにをしどうするか。考えてもしかたない。
遅れて神無月社長が現れたが質のよい珈琲だけ口にし私を見た。
「沙耶香さん」
本来なら自分の社員たちな挨拶すべきだが彼女は言う。
「女王様にならない意思は理解はするわ。だけどせめて見習いでも構わないの。ほんのたまにショーに出てほしい。そちらの透子さんと共に」
「共に?」
聞いてはだめと制する麗奈をよそに妙な言い回しと思う。二重契約という不履行を犯したモデル兼作家見習いに対しへりくだっている。
ええ、と迂闊に怜悧な瞳から強い意思が宿る。愛那がちいさく挙手した。
「しかし沙耶香さんはいまトラブルの最中ですが」
「この屋敷いえこの世界では社会のことは関係ないの。美如月」
いまの表現を素直に解釈したらリアルな世界で起きてることはこの屋敷あるいは“ヴィーナ”と呼ばれるクラブには無関係とされる。裏社会や闇社会とかに相当する権力が“この世界”にあるらしかった。
「はいは〜い♪女王様したいで〜す♪」
場の雰囲気を壊すようにいやわざと早紀は壊したいらしく明るく小悪魔な一面ではしゃぐ。
だけど一蹴された。
「二ノ宮、この世界に女性の女王様は必要ないの」
しっぱい、とわざとふざける彼女の瞳がわざと牽制し自分たちに情報をもたらしたことを私たちは理解した。透子はわからないが。
一通り皆が食べ終えてから私は考え口を開いた。
「……構いませんが」
「が、なにかしら?」
「私が先の二重契約のような失敗や失態をして“この世界”が壊れることがあれば」
麗奈や早紀、愛那は思う。なんでこの人は自分をあっさり手駒にしてしまうのか。
しかし神無月社長に怖じ気ついたところは見られない。
「いいわ。壊したいなら壊せば?だけどあなたにできるかしら」
透子の存在は無視されている。神無月社長は付け加えた。
私たちふたり以外にも女装の女王様候補はいくらでもいるという。
「あたしたち以外に」
「まあありきたりね」
透子の驚きを早紀は肩まで手を挙げわざとらしく示した。
食事と話しは終わった。

No.191 18/01/31 15:06
作家 

神無月社長はモデルや作家ではなく女王様として私を欲しがっている。
お茶を後にし私たちはそれぞれ屋敷や邸内を見てまわることを許された。私の側には麗奈、少し離れ早紀に愛那、やや離れたところに透子がいた。
「なんであんなことを言ったの」
めずらしく麗奈にしては私の側から離れず表情だけ見たら恋人のようで男心が揺れた。
“たまには男に戻りなさい”
「……神無月社長がどう出るかなと思って」
「他人事みたいに言わないで」
彼女はむっとし本気で怒っているようだった。庭には噴水、少し離れたところには湖や森林もあるらしい。早紀が寄ってきた。
「失敗しました。社長は女性に眼中ないんでしょうか」
「知るわけないわ。それより透くん、いえ透子さんと話しなさい。だけどありがとう」
早紀は少し離れた透子を気にしながらも気持ちははっきりしない。かつて故郷を離れるきっかけが彼女には重たいらしい。私も似たようなものだけど。
ふとあることを思いつき早紀のスカートを……めくるには不向きなのでジッパーを下ろした。
「な、なにするんですか!?変態!」
スカートを脱がすとストッキング越しのショーツが露になりその声に透子は慌てやって来た。
「なにしてるんです!?」
「あ、ごめんなさい。二ノ宮さんが可愛かったからつい……!?」
透子から平手打ちが飛び少し私はよろけた。
「最低です!見損ないました。女性にセクハラ、いえ痴漢みたいなことして恥ずかしくないんですか」
「本田……お前」
「悪かったわね二ノ宮さん。彼とごゆっくり」
「格好つけて」
私は麗奈を伴い驚く愛那が後をつけてくるのを知りながら早紀が私の知らない過去の顔をしてたことに気づく。
それにしても女性とちがい男性の生平手打ちで奥歯が少々いたい。
早紀は私たちが姿を消しスカートを直したようだ。
「本田……ありがとう」
「いえ。だけど見損ないました。あんな人だなんて……」
ちがうと早紀は感じた。
わざとあんなことをして人前で恥ずかしい目に遭わせた。
あたしたちがふつうに話せるように。
「ちがうわ、きっかけをつくってくれたの。あの人」
「そんな……」
透子もふと昨夜のことがよぎる。早紀に気があればなにもしないまま無視できたのに。
透子は言う。
「少し昔ばなししようか」
スケバン口調に彼女は誘った。

No.192 18/02/01 05:49
作家 

ごめんなさい。
早紀は沙耶香たちの姿が見えなくなりふたりきりになった噴水や彫像の前でかつていじめた相手本田透いまは透子に頭を下げた。もちろん謝って許されるわけではない。
透子は言う。
「顔を上げてください」
「あたしは何をされても文句言えない。あんたやあんた以外にいじめた人達にも」
かつていじめていた忘れていた過去が脳裏によみがえる。グレてしまいなにもかも世間が憎かった十代の自分。脳裏に映像と共に何から何までリフレインされた。
『パンティが好きなの?どこ見てるのヘンタイ』
『み、見てません……』
『ふ〜ん、おマタに沁みができたの。おしっこかな』
『……』
『見てんじゃねえか!ヘンタイ!』
場面はみた変わる。
『そんなにパンティが好きなら着けてみる?可愛いよ。リボンがあって模様があって』
『……や、やだ』
『あんたたち可愛いし女の子みたいね。オトコじゃないみたい』
記憶の中の早紀たちはおもいおもいにパンティを脱ぎ透たちに着けていき彼らの下着は投げていく。
『ああ……』
『あら?勃ってる。ガマン汁。コーフンしてんだ。透』
『に、二ノ宮先輩』
『二ノ宮?……女王様と呼べってんだよ』
『じ、女王様……』
さらに記憶のリフレインは残酷に進みそこには女装させられた透たちの面々がいる。
『ああ……やだ』
『やだ?あたしたちの下着や制服つけてコーフンしてるよね』
スカートを捲ると勃起した若いぺニスがパンティにあり制服の下は若い十代のオトコ。
『ほら、キスだよ』
『ああ……んむ』
『舌出しな』
早紀をはじめおもいおもいに交わるスケバンと女装させられた透たち。不器用ながら若い牡のぺニスをイタズラに面白がり弄る彼女たち。
『女の子なのにオチ×チ×大きくして』
『ああ……堪忍して』
『ほら、オマ×コ舐めな』
ほぼ全裸の彼女たちは69になり若い牝の匂いと共に花弁を見せ舌を這わさせた。
『ああ……上手じゃないか。コーフンして』
『透、今日からあんたは透子だ』
『や、やだ……ん』
若い早紀は勝ち誇ったように彼に若い花唇を顔に押しつける。
さらに場面は変わる。
『オマ×コよ。スケベな透子にあげる』
『うわああ……』
『女王様早紀様のが不満なのか?ん』
童貞のぺニスを喰わんとする若い花唇。だが実は処女であった。

No.193 18/02/01 15:03
作家 

そして記憶は忌まわしい卒業式に戻る。
『な、なにすんのよ!!あんたたち』
『なにもしないさ二ノ宮先輩』
気づくとどこかの廃屋におり目にはカメラやデジカメ、ケータイ、スマホなどで何を撮るのかはじめはわからなく困惑した。
『お、犯すなら犯せば……か、覚悟はできてるんだから。スケバンサキを舐めないでよ』
廃屋のなかで両手や両足は縄やロープで拘束されながらこの時自分の声が震えていることを早紀は記憶の底で覚えていた。
しかしいじめられていた彼らの答えは違っていた。
『犯してなんになる?むしろレイプや強姦で捕まるのはボクたちだ』
『だけどスケバンサキ様がこの土地にいられないようにするだけさ』
制服を破きはしないが胸元やスカートの裾から太腿、下着が露に少しずつ露になっていく。瞬間フラッシュが目を奪う。
『きゃ……』
『なにがきゃだよ?無理やりボクたちを犯したくせに』
『進路は大学?就職?』
『し、就職。事務のお仕事を……』
『あんたみたいな不良でも人並みな仕事につけんだな』
『な、何を……』
彼らはポラロイドで撮った先ほどの早紀の肢体が写った写真をチラつかせる。
『どこの企業?』
『○○事務所……』
『ふ〜んあんたみたいな不良を雇うなんて物好き。だけどこの写真を……写真だけじゃない。ケータイやスマホで撮った画像を送りつけたらどうなるかな』
瞬間リーダー格の男子生徒の言葉に青ざめ身体が震えた。
『や、やめてくれ』
『やめてくれ?無理やり犯しといて』
リーダー格の男子生徒にもうひとりがひそひそと耳打ちし頷いた。
『ま、就職した先ですぐに辞めるのもあれだな。三ヶ月時間やるよ。三ヶ月仕事覚えたら辞めて』
彼が黙っている間に早紀は制服を脱がされ辱しめともいえるほどに下着姿や全裸に近い身体を晒されお漏らしを堪えるのが精一杯だった。
リーダー格の男子は言う。
『……この土地から消えてください。ボクたちの人生に関わらないでください。もし三ヶ月経って○○事務所や実家にいたらこの写真や画像をバラまくから』
キッと睨むがここで暴力沙汰などを起こせば卒業はおろか就職内定は取り消し。悔し涙に彼女は頷くなか男子生徒たちのなかで透だけはケータイを持ちながら彼女を見ないようにしていたと思う。彼だけが……。
気のせいか……。
「ごめんなさい」

No.194 18/02/01 18:20
作家 

「ごめんなさい」
早紀はただ謝るしかできない。ただ言い訳に過ぎないかもしれないが当時グレていた彼女もまた自らが処女であったことは内心恥ずかしいという思いがあった。なら男子の不良たちと初体験をすればいいのではという考えや意見もあった。
だけど男子の不良たちが初体験というのもスケバンであっても中身は女の子。頭悪く仮に成績がよくてもどこかに欠点が見える男子の不良たちよりは手近にいた透のような少女に似た容姿の中性的な男子生徒の方が言い聞かせやすくまたぺニスもさほど狂暴に見えることは少なく勃起時は大きいが男性的な雰囲気は感じなかった。
もっとも初体験そのものはスケバングループの誰もに痛かったらしく早紀もまた例外ではない。
そして現実に時間は戻りいまは初体験の時よりも心から胸が痛かった。
じっと透子になった彼は見つめていたがやがて口を開く。
「顔をあげてください先輩」
「……うん」
「もちろん僕は悩みましたがこうして先輩と会えただけ嬉しいです」
中性的な笑みのなかには憎しみらしい感情はほとんど見えずそっと肩に触れる。少し強ばりが彼女にあった。
「だけど……」
「ぼ、僕だけはあの時一枚も写真や画像は撮りませんでした。信じてほしいと言っても無駄ですよね」
「本当?」
ええ、と透子は頷く。
信じていいのかどうかわからないが信じたい気持ちもある。
実は双星出版社に入社してからはニ、三年は故郷に帰省してなかったがある年にやむを得ず帰省することになりもし透や彼らに会えばどうなるかわからないまま帰った。さいわいにして写真や画像がバラまかれることは盆休みや正月にはない。
だから早紀はそれ以来に限っては帰省するようにした。
「信じてくれません?」
どうする、と悩むが沙耶香の後押しがなければここまで謝罪はできなかったと思う。信じようと自身に言い聞かせた。
「信じるわ」
「よかった……、嫌われるかと思った」
ふたりが噴水や彫像の前で笑みするのを神無月社長はバルコニーから眺めていた。
あの透子という子。早紀が好きなのかしら。だがいまは沙耶香に競争相手が欲しかった。
「沙耶香さまたちは裏の湖を散歩してるようです」
そう、と彼女は二重契約については沙耶香の落ち度はあるが今回は去年と違い好きにやらせていた。彼女は待っていた。
真の好敵手が乗り出したと感じた。

No.195 18/02/01 19:54
作家 

あらあらなつかれたわね。
子猫のように愛那は昨夜添い寝をしたせいか私たちについてくる。
「愛那さん」
私は振り向き呼びかけるとびくっと肩を震わすが「おいで」と招くとようやくならぶようにした。麗奈は私越しに言う。
「あれほど毛嫌いしてたのによほど可愛いがられた?」
「ち、ちがいます。ただこのような場に慣れてなくて」
ぎゅっと私の腕を保護者のように掴む。
「えっちしたんでしょう。この人にされてよかった?」
愛那の耳にはまるでふたりが恋人や夫婦のように見え冷たいような熱いような複雑な気持ちが宿るのを感じた。
「そ、そんなこと……」
「やめなさい麗奈。若い子をからかうのは」
はい、と麗奈もまた腕を組む。両手に花だけど別にたいしたことはしてない。
湖のほとりには小屋がありベンチもあり三人で座り休んだ。湖には白鳥やカルガモなどいくつかの鳥が見えた。
「あの放してくれません?」
右に麗奈、左に愛那。肩や腕がいたい。麗奈はすっと放したが愛那はまるで保護者に守られる妹。早紀よりもだ。
「あの先輩」
「なに?」
「戻ったらあたしも二重契約についてのお仕事調べます」
「無理しないで」
愛那は私を先輩と呼ぶ。そのことに咎めはしないが麗奈は少し遠くを見つめる瞳をした。
うまくいくかしら。
かつてのレズメイト流菜に沙耶香を渡すわけにはいかないが時間は刻一刻と過ぎる。
業界内の噂では新星出版社はモデルや作家を使い捨てにするらしい悪名高い出版社らしい。
胸に不安がよぎる。
「麗奈?」
「ううん、なんでもない」
なんでもないわけがない。私がした不手際で再び双星出版社を危機に招いている。すべては私が自信喪失を性についてなくし精神が女性化し男として性欲あるがふしぎと目の前のふたりの異性に気持ちが燃えない。
責めることはできるのに再び挿入したい欲求がなぜかない。
湖にはつがいだろうか。二羽の白鳥が飛び立ち森林の上の蒼き空に消えた。
いまは平和な時かもしれないが自信喪失のきっかけは舞先生の初体験を失敗。突き飛ばされ苦いセックスをさせた。
一度彼女とあらためて面と向き合う必要はあった。話し合いからでも互いの性の在り方を知らないといけない。かつてジェンダーアイの三姉妹を克服できたからできると信じたい。
麗奈は私が深く考えてる表情を見つめていた。

No.196 18/02/02 05:11
作家 

お昼を前に私たちはお暇をし屋敷を離れ綾香と理沙、奈々と麻由の二台のリムジンに分乗した。
早紀と透子は綾香の、私と麗奈たちは奈々に分かれ土曜の昼前で少し車は多いが渋滞にはならなかった。
「先に麗奈を送ってあげて」
「構わないのに」
「疲れてるでしょう。ゆっくり休んで」
それでもこの時の行動が迂闊なことをさらにしてしまう。透子が早紀を下ろすのを見て私もやや離れたところから麗奈を下ろすなか早紀がこちらに目礼したようだ。
うまくいったのかな。
「先輩、あたしのそばにいてくれます?」
「迷惑をかけたのはこっち。伏せて、マスコミ」
麗奈たちの前にマスコミがいて思わず身を隠してしまった。疲れた彼女たちがさらにマスコミに晒されるのを見つめ複雑になる。
麻由が言う。
「こちらも離れます」
私が見つかればマスコミは私に集中砲火するだろう。だけど麗奈たちが晒されるのはつらい。
ちょうど昼になった頃にリムジンは愛那の、かつての早紀の住んでいたマンションに着いた。透子を乗せたリムジンは隣県に向かったと聞いた。
「では、また沙耶香様」
「また遊びにきていいですか」
「彼女に聞いて」
「……構いません。あたしも皆さんとガールズトークしたいです」
ぶっきらぼうな私に対し彼女はいくぶん対応が柔らかくなったようだ。手の内なのね。
麻由たちが去るなかそう思う。
それから一週間あまり再びテレビや取材に応じたがやはり誰ひとり聞いてくれない。実家の家族には頭を下げたが「信じている」とだけ母は言葉少なにあった。
連日のテレビや取材で週末になる頃には疲弊していた。
「先輩、これ」
愛那がポストを見ると新星出版社の取材依頼の封筒があり部屋に上がりふたりして読んだ。
「取材の時期が迫ってるから折り入って我が社をおたずねください」
かいつまむとそういうことだったが、私が来ない場合は私共々双星出版社を訴える用意があるという。
「いかなくていいです。こんなの」
懇願するような愛那に首を横に振る。
「だめ。麗奈や早紀さん、社長や愛那さんたちに迷惑はかけられない。週明けにでも向かうわ」
「先輩」
離さんとせんばかりに彼女は私を見つめた。ふるふる震える唇が柔らかく重なり温もりがあった。

No.197 18/02/02 15:22
作家 

シャワー浴びて私は麗奈が持ってきたランジェリーのうち最近お気に入りのレースのTバックのブラショーツセット。色はピンク。
先にシャワーを浴びていた愛那は彼女はひとり部屋に招く。一、二週間ほどの滞在だったが招かれたのは今夜が初めて。扉を開け聞いた。
「セックスしたい?クンニまででもこちらは構わないのよ」
あえて女言葉でたずねるなか彼女は可愛いらしい花柄模様のパジャマのまま膝で指が震えている。
「あ、あたしを女に、オンナにしてください。先輩、いえ……沙耶香さん……」
処女であることをニ十年とほんの少しの年月といっても内心の葛藤やプライド、麗奈たち他女性についてのコンプレックスもあると思う。見た目がちいさく可愛いと大人の女性には見られないのはプライドがよほど傷つき葛藤しただろう。
横に座り私は呼吸し告白した。
「春頃に、わたし愛那さんとおなじ処女のひとを相手にしたけど……失敗したの。なにがいけなかったかわからないけど。……愛那さんが痛い思いでほんとに嫌なら突き飛ばしても構わないから」
「そんなことしません……!バカですそのひと」
ちいさいながらいやちいさいからこそはっきり言える言葉があるのだろう。その意味では愛那はコンプレックスをある程度は自信に変えてきた女性といえた。
足りないのは他人や私みたいな存在についての寛容さ、優しく他人に接する適度なひと付き合い。
「そういう言い方はやめて。ひとにはひとの事情があるだろうから」
愛那の部屋は見た目とかわりなく少女ぽい。レースやピンクのカーテン、少女漫画や少女小説、一方では成人雑誌が仕事と併用してだろうけど体験談モノなどが見られまた一方ではふとフリルやレースある服が見られたがハンガーにあるが着た雰囲気はさほどないよう。
「これからは麗奈や早紀さんたちとうまくやっていけるわ」
再びキスを交わしそっとベッドに倒そうとするがさりげなく私自身が下になる。
「先輩、あの……?」
考えて慎重に言葉をつなぐ。
「いい?見た目は女性でも私はオトコ。わかってるでしょうけど異性の身体に触れるにはいい加減にしてはだめ。痛い時は痛いし感じる時は感じるから」
自分でしてみてとあえて彼女にリードをうながす。ちいさな指がさらに震えパッドのあるブラジャーに触れていく。
「ハアハア……」
呼吸が聞こえちいさな掌が包むよう。

No.198 18/02/02 20:25
作家 

しばらく愛那は見つめていたがやがて頬や髪、うなじに愛撫をし始めた。たぶん初めて本格的に触れるであろう異性が女装の男性というのは奇妙としかいいようがない。
「ん……んん……」
どうすれば私が感じるかわからないまま手探りをしてるようでゆっくり慎重にひとつひとつ確かめるようだ。まるで子犬や子猫が飼い主を主として認めるか否かのままに。
「ん……れろ…ちゅ…はあ」
「ん……」
「あ、いたいですか」
首をちいさく横に振りよほどでない限り好きなようにさせる。感じてる時は少しでも声にし伝える。ちいさい身体なために170ある私の身体を愛撫するには大変だけどできる限り難がないようには動かした。舌が首筋、脇、胸などにちろちろと這う。
「ん……」
「男の匂いがします……」
「そうね……」
しかし彼女は驚くようなことを興奮しながら言うが本人は気づかないようだった。
「こんなに男の身体に近づいたのはむかしお父さんとお風呂に入った時以来かな……」
ちょっとドキッとした。女装であっても異性の匂いから父親を連想するのはそれだけ大切に育てられたのではと思わせた。
「あ……はあ…ん」
彼女はもぞもぞと興奮し身体が火照ったのか右手を自らのパジャマの下に潜らせた。少しパンティラインが見え卑猥だった。
ブラジャーとパッドをそっとのけて乳首に舌を動かした。
「あ……んむ…んむ」
必死に愛撫する姿は小動物を思わせるがその瞳は少女から大人の女性になろうとする意思が宿っていた。撮影の時はムキになる少女のようだったがヴィーナでの一件がなにかを変えたようだ。
彼女は息継ぎをするように自らキスを求めた。
「あ……んむ」
「ん……なあに」
「身体が熱い……だけど風邪とかじゃなくて……お、おまん……下半身から熱いです……」
わからない何かが彼女が内に秘めた感情や気持ちを熱を持ち支配してるようだった。卑猥な表現を口にしながら頑なな性は拒む。
そっと頭を撫で抱いた。
「落ちついて。逃げないから」
「はあ……身体が」
「初めてで興奮してるだけ。私以外のモデルさんのオチ×チ×も触ったならできるわ」
「や、やだ。言わないで」
ちいさなパンチが胸を打ちながらも呼吸をしながらやがて撫でていく。パジャマを脱ぎ可愛らしいブラジャーが露になる。やがて彼女はショーツに包まれた男性器を見つめる。

No.199 18/02/03 08:18
作家 

甘い吐息をし撫でながら彼女は言う。
「ソーセージかウインナーみたい」
指で撫でながら一応の扱いは心得ているらしく愛撫に力を入れてない。また小さい指が柔らかい。
「無理しないで」
「んん……」
指で撫でながら亀頭や鈴口に吐息がかかり感じる。口を閉じたり開いたりくわえるには躊躇いがあるようだ。
「あ……はむ…はむ」
いきなりくわえる真似はせず目を閉じ形をたしかめるように甘噛みか触れる程度に唇や舌でたしかめるようだ。
撮影の時もこれくらい優しければ私や他のモデルさんに不快な思いはなかっただろう。
だけど彼女が携わった仕事を私が知る限りは男性やぺニスに人一倍興味がある証であり結果的にはモデルの魅力を発揮したことが評価され皮肉なものかもしれない。
「ん…んむ…はむ…はむ」
「ああ……」
「感じてます?」
頷き身体がベッドを揺らす。しかしショーツをキュッと持たれ引っ張られると睾丸が締まる。
「だめ……」
「あ、袋も感じるんですね。忘れてました」
「下着を脱がすか脇に出して……」
「……変なの」
小さく笑みし彼女は私の性癖を理解しTバックのクロッチの下からぺニスを出して再び撫でる。吐息にはまじまじと見る感心や驚嘆、性への気持ちなどが混じるようだ。
「だいじょうぶ?」
「まだいじらせてください……。これが好きになれるように」
思春期のトラウマや自らのコンプレックスと向き合うような姿勢が見られた。
撫でながら再び口内に含みフェラし愛撫し膨らむ睾丸を指でなぞる。
「あ……ああ……」
「先輩、ここに男の……牡の……が」
「う、うん……」
口に出すのは卑猥なことに耐えられないわりに表情は紅潮し指は自らの淫部に這わしちいさく音が耳に伝わる。
「はあ……気持ちいい」
女装の異性との触れ合いに愛那は芯から身体が熱かった。いままで好きに弄ってた頃とはちがうふしぎな感情があり指には愛液が絡む。
くちゅくちゅとし指が止まらない。毛深い陰毛へのコンプレックスさえも忘れるくらいに誰かに愛撫してもらいたい。
「せ、先輩……!」
もう我慢できずに彼女はパジャマの上と下を脱いで69の姿勢になり沙耶香に跨がった。
「な、舐めて……弄って……ください」
途中息が詰まるように切迫しながらも淫唇からは愛液が腿に流れる。
「ん……れろ…くちゅ」

No.200 18/02/04 15:12
作家 

ちいさく若い柔肉が私の眼前にあり処女の甘酸っぱい匂いがツンと鼻に感じる。
ほんの少し舌を這わしただけで愛那はびくびくと身体をのけ反らせるようだ。
「あ……ああ…ン」
「声に出していいのよ」
「あ…ン」
性行為を取材を通し中途半端にし頑なな性格もあるせいかお尻を揺らすのが精一杯のようだ。
性世界のなかで自分をさらけ出すのはよほど勇気がいる。
「せ、先輩。さ、沙耶香さん……」
「どうかした」
「も、もっとして……ください」
身体はちいさく見た目は少女のようだが心は大人の女性になろうとしいま未熟な果実から成長しようとしている。
青い性から成熟に彼女は向かおうとし淫唇からはとろとろと愛液が滴り私は舌や唇で受け止める。
「ン……んん」
ショーツの内にある男性の性器を愛撫し身体が震えながらも芯から熱い何かを感じている。
「はあ……ン……」
「だいじょうぶ?」
「オチ×チ×……気持ちいいですか」
彼女のフェラチオはけっしてうまくはないがちいさな唇や口内、指の動きに初めて本格的に触れる驚嘆、感激、異性の性器という複雑な心理が見て取れるようだ。
「う、うん」
ほんの少し眉間にシワを寄せたと思えば男性器をショーツの布地で股間を弄る。
「ちょ……!?やだ」
「はっきり言ってくださいよ」
Tバックショーツの紐状の布地がすりすりと睾丸を弄りフェラチオとはちがう快感が襲う。
「や……」
「何がいやなんですか」
「き、気持ちいい……」
そう答えるとショーツの紐状の布地で擦るのを止めながら膨らむ睾丸にちいさな手を這わす。
「オトコの人はこんなえっちなもの付けて」
「……なによ。愛那さんだってここ」
卑猥な女性器の上にあるジャングルのような陰毛を弄ると股間を震わせる。
「きゃ……やだ」
「あら?ここは恥ずかしいところでしょう」
「やだやだ。そこはだめです……」
陰毛のそばの淫豆は赤く剥れそうになりこんにちはをしていた。指を這わし森林のような陰毛でさえもじんわり汗や体液にまみれスコールのようにもみえ処女ではあるが牝臭はあった。
パンティをゆっくり剥ぎ取ると声がした。
「あ……取らないで」
「私の下半身を好きにしていいから」
コンプレックスある下半身を見られるのは羞恥なことを理解しながら前向きに接していく。
「ああ……ンん」

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