運命
もしも…
もしも神様が本当に居るなら、聞いてみたい。 2人が出逢った事に 意味はあるのですか。 いつかは、この苦しさから解放されますか。 この苦しみしみから 抜け出せるなら 今までの29年間の記憶なんて全部無くしてもイイです。
※初めての小説です。 ド素人なので誤字脱字、文章もメチャクチャかも知れないですが、 宜しくお願いします。
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次の日、ファミレスに出勤すると、昨日の私とクミの話で持ち切りになっていた…
【もぅ…面倒臭い…】
毅の事…
生活費の事…
クミの事…。
そして今度はバイト…
全部が私の肩に重くのし掛かる。
もぅ、全てがイヤだった
仕事も何とか終わり、着替えて帰ろうとすると
店長に呼ばれた。
「大丈夫か?」
今日1日のお店の空気は本当に最悪だった。
みんなが好奇心と嫌悪感の目で私を見る。
【もぅ、嫌だ。無理。】
「店長…すいません…」
【もぅ頑張りたくない】
「仕事を…辞めさせて下さい。」
遠くから音楽が聞こえる。
【何?ウルサい…】
今、何時だろぅ。
寝ぼけた頭で考える。
【あ…携帯か…】
バックにしまったままの携帯電話を暗闇の中、手探りで探す。
着信3件。
トシ君からだった。
今は1時20分、仕事が終わった頃かな。
かけ直そうかとも思ったけど、今日はもぅ、誰とも話したくない。
そのまま携帯を閉じようとした瞬間に、
再びトシ君から着信。
どぅしよぅ…と迷いながらも、電話に出た。
「もしもし?」
「ゴメンな。寝てた?」
「うん。平気だけど…どぅしたの?」
「サクラ…?サクラ」
「ん?聞こえてるよ?」
「サクラ…会いたい」
胸が高鳴る。
「どぅしたの?」
「俺、サクラに会いたい」
ドキドキする
胸が苦しくなって息が出来ない。
頭がクラクラするよ…
「酔ってるの?今、ドコにいるの?」
「酔ってない。もぅ、お前の家の近く。」
ジャージにスッピン。
髪もボサボサ。
…まぁ…いっか。
「分かった。待ってて」
そのままの姿で
髪の毛だけ結んで外にでると、見慣れた黒いワンボックスカーが見えた。
いつもの様に助手席側に回りドアを開けた。
「お疲れ様。」
車に乗り込むと、トシ君は私の右手を握りしめた。
「ワガママ言ってゴメンな。来てくれてありがとう。」
私の手を握ったまま車を走らせた。
「ドコ行くの?」
「ん?俺の秘密基地。」
そう言うと繋いだ手を強く握られた。
「サクラってスッピンも大して変わらないのな」
「そんな事ナイでしょ。恥ずかしいから、あんまりコッチ見ないでよ。」
「恥ずかしい?何で?お前、結構可愛いとこあるんだね」
嬉しそうに笑いながら
車を停めた。
その場所は家から15分ほどの所で、海浜公園の裏手にある、人気のナイ駐車場だった。
トシ君は運転席の窓に背を向けて私を見る。
繋いだ手が、急に恥ずかしくなって手を放そうとした。
「トシ君?放して?」
手を更にギュッと握られた。私はトシ君の顔を見る事が出来ない。
「やだ。放さない。」
「やっぱり酔ってるんでしょ~」
ワザと明るい声を出して笑いながら顔を上げた。
トシ君と一瞬目が合った…その瞬間、体をグイッと抱き寄せられた。
【えっ?】
あまりにも一瞬の出来事で呆然とした私。
「俺、酒臭い?」
トシ君の胸に抱き寄せられたまま、首を振った。
腕の力で体を離そうと突っぱねる。
少し離れては、また抱きしめられる。
そのままの勢いで
助手席に倒される。
倒されるのと、ほぼ同時にシートも倒された。
「きゃっ」
驚いて思わず声が出た。
私の耳元でトシ君が囁く
「ゴメン。でも少しの間でイイから…このままで居させて…」
私は、返事をする代わりにトシ君の背中にそっと腕を回した。
抱き合った体から。
彼の温もりを感じる。
体の左右から心臓の鼓動を感じる。
私の心臓と
彼の心臓が
抱きしめ合って一つに重なる。
こうして誰かを感じるのは
いつ以来なんだろう・・
ずっと、温もりが欲しかった。
ただ抱きしめて欲しかった。
本当は、ずっと毅に求めていたのに。
いつから、求める事をやめてしまったんだろう。
求めなければ、傷つかない。
でも、体が離れると、心まで離れてしまう。
体の距離は心の距離・・
こんな事になる為に
結婚したんじゃないのにね。
幸せになる為に・・
この人なら・・って思って
永遠の愛を誓い合ったはずなのに・・・
自分が情けなくて
悔しくて
気づくと涙が出ていた。
「あっ、嫌だったよな。サクラごめん・・」
私が泣いているのに気づいて、私から離れようとする。
離れかけた背中を、今度は私が強く抱き締めた。
「お願い・・離れないで。」
「サクラ・・??」
顔を覗きこもうとされて、
私はトシ君の胸に顔をくっつけて
それを拒んだ。
「・・トシ君、温かいね。」
当り前の事なのに
そんな事すら忘れてたよ。
「サクラも温かいよ・・」
流れる涙を止める事が出来ない。
トシ君は私を抱きしめたまま
髪の毛を撫で続けてくれた。
私の前髪をかき上げて
おでこに優しくキスしてくれた。
おでこにキス
頬にキス
首にキス・・
目と目が触れ合う・・
唇に、トシ君の温もりを感じた。
ただ唇が触れ合っただけのキスなのに
心臓は撃ち抜かれたみたいに痛くなる。
トシ君の真っ直ぐな瞳の中に私が映ってる。
トシ君の瞳に映る私に問いかける。
【本当にイイの?】
でも、クミへの復讐心が消えた訳じゃない。
ただ、毅への愛が無くなった訳でも無い。
1つだけ確かな事は…
私は今この人を求めている。
この温もりを全身で感じたいと、求めてる。
再び、トシ君の唇が触れる。彼の瞳を覗く事はもぅ出来ない。
私も、そっと目を閉じた。
そして私の体は彼の全てを受け入れた。
後悔が無かったと言えば嘘になる。
でも、後悔だけが残った訳ではない。
「また明日ね…」
家に帰り着くと、
毅は、まだ眠っていた。
パジャマに着替えて
毅のベッドに入り込む。
【ゴメンね…】
「ん…お帰り…」
後ろから毅をキツく抱きしめた。
「ただいま…」
【ゴメン、ゴメンなさい】
「何かあったの?」
気付くとまた涙が出てた。
「何もないよ。」
そのまま私は、
毅の温もりを抱き締めて眠りに落ちた。
「おはよぅ。」
もぅ夕方だけど
これから仕事に行く私達にとっては、今からが1日の始まり。
「おはよう。」
そぅ言って、迎えに来てくれたトシ君の車に乗り込む。
今朝まで一緒に居た。
この車で2人で何時間も過ごした。
その唇に何度も触れた。
その指で…
その胸で…
その声を…
気まずさに、消えてしまいたくなる。
彼は優しく手を握ってくれた。
「手はココでしょ。」
そぅ言って握りしめた手を自分の膝の上に置く。
「サクラの事、好きだよ。だから、抱いた事、謝らないからね。」
「俺、お前が笑う顔みてみたい。出来れば俺がお前を笑わせたい。」
自然に笑う事…
いつか…出来るかな。
「トシ君ってさぁ、女の趣味悪いよねぇ…」
こんな女のドコがイイの?
「そぅそぅ。俺、磨けば光る原石が好きなの」
「つまり、お前は今、道端の石ころってトコだな」
「ひどぉい」
膨れた顔を見て
彼は楽しそうに笑う。
ケラケラ笑う姿が可愛くて、私も一緒に笑った。
その日も、私達は秘密基地に行った。
「ところで、何でココが秘密基地なの?」
「俺、家に帰りたくナイ時は、ココで1人の時間過ごしてんだ。」
車も滅多に来ない。
街灯も少ない。
こんな寂しい場所で
1人で時間を潰す姿を思い描いたら、何だか悲しくなってしまった。
「どぅしても、ダメなんだよ、俺。家に帰ると息苦しいんだ。」
だから、ココで
この場所で息抜きをする
そぅやって彼は、バランスを保っていた。
「そっか…。」
沈黙を破るように
彼の携帯が鳴る。
クミ…?
携帯を見たトシ君が
「出てイイ?」
と聞いてきた。
「どぅぞ。」
「ゴメン、今日行けないや…。うん、ごめんなぁ。」
電話はすぐに終わった。
「何か用事あったの?」
「あ~…うん。」
言いにくそうな姿をみてピンと来た。
「女のトコでしょ?」
「…うん。」
「ゴメンね。今から行ってきなよ。私帰るし…」
「イヤ、行かない。俺、お前と居る方が楽しいもん。」
「私は帰りたいの!!」
何でだろぅ…
分かってたのに。
彼には私以外にも女が居るって分かってたじゃない。
なのに…何でこんなに
イライラするの?
ヤキモチなんて妬きたくない。
「もしもしぃ、あっ、俺~。俺さぁ、本気で好きな女出来たから、もぅ遊ぶの止めたから~…ん~、まぁ…、お前も元気でなぁ。」
突然電話を掛け始める。電話を切ると同時にメモリーも消去していく。
「イイっっ!そんな事しなくてイイから…もぅ止めてよ。」
何故だか涙が出る。
トシ君の耳に当てた携帯を奪い取ろうとすると
そのまま腕を引っ張られ抱き締められた。
「あっ、もしもし~…」…
…
…
何件目だかも分からない。ただ、携帯を閉じたトシ君の姿で、終わった事が分かった。
「ねぇ、サクラ…これで俺の気持ち、少しは信じてくれる?」
「お前の事、好きなんだよ。」
「うん。」
涙でグチャグチャの顔でトシ君を見た。
「フフ…お前は~なんつぅ顔してんのさ。とにかく、鼻チーーンしろ。」
ティッシュを渡されて
私も泣きながら笑った。
「へへ…」
「こんな事して、後悔してないの?」
私は自分から彼に抱きついて、聞いた。
「何で?後悔なんてしないよ。これからは、お前だけが傍に居てくれよ」
優しく髪を撫でてくれた
私は、
私の涙腺は
彼と居ると緩みっ放しになってしまうらしい。
彼の事が好きなのか
この関係だから
好きなのか
私には分からない。
ただ面倒な現実の問題から逃げ出したかった。
彼と過ごす時間は
私にとって非現実的で
恋愛の甘い部分だけを楽しめた。
クミの存在も
毅の存在も
罪悪感すら、2人を盛り上げるスパイスになっていたのかも知れない。
でも、目を逸らして来た現実は、放っておいても改善される訳じゃない。
痛み出した歯みたいに
最初は小さな虫歯でも
放っておいて完治はしない。
自分でも気付かない内に
激しい痛みと
大きな虫歯になって
耐え難い苦痛を与える。
ある日、それは突然。
私の中に
小さな命が宿った。
毅の可能性も
僅かながら、ある。
新しい仕事を始めた毅は
その日、珍しく上機嫌だった。
2人でお酒を呑んだ。
酔っ払った勢いのまま、
私達は久し振りにした。
でも夫は、果てる事もなく
中途半端なまま終わった
付き合っていた頃は
中出しばかりしていた
避妊した事はナイ。
それでも、私は妊娠しなかった。
それが、こんな一回で?
果てる事も無かったのに
妊娠なんてするだろぅか
トシ君の可能性は大きい。
仕事中であろぅ、彼に電話を掛けた。
「大事な話があるの。」
仕事が終わったら会う約束をした。
【どぅしたらイイ?】
お腹に、そっと手を当てる。
何となく、出来てるかも。って予感はあった。
昨日の夜、自分の心臓の音がすごく大きく聞こえたんだよ。
だから、もしかしてって思ったんだよ。
【私の赤ちゃん】
【私達の赤ちゃん】
今、家の中には
私は1人ぼっちだけど
私のお腹には
小さな命が生きてる。
だから、私は1人じゃないんだね。
「赤ちゃんが出来たの」
「うん。」と頷くトシ君。
「もしかしたら、そぅかなって、思ってたよ。」
「赤ちゃんが、居るんだよ。ココに…」
トシ君の手を取って
そっとお腹に乗せた。
涙が出てくる。
せっかく授かった命。
誰からも祝福されない命
それでも、
私には愛おしい命
守りたいの。
この子に会って
抱き締めたいの。
愛してるよって伝えたいの
トシ君も泣いている。
「ゴメン。でも、産まないで欲しい。」
泣きながら首を振る
「心臓も動いてるんだよ。今も、お腹の中で、私と一緒に生きてるんだよ」
目に見えない命と
目に見える命
同じ命なんだよ。
その、違いは何…?
見えないなら
奪ってもイイの?
この命の決定権は
私達にあるの…?!
1人の命を守る以上に
大切なモノって何?
生きてさえいれば
人には幸せになる可能性がある
こんな、ろくでもない親でも、子供は自分の力でだって未来を切り拓いて歩いていける。
最低な女だと言われても構わない。
人間じゃない…と思われてもいい。
どんな事してでも
私は
この子を守る。
この子が、生きようとする限り。必ず…
「もしも、子供産んだら、俺達、離れる時が来るよ。俺はまだ…離婚は出来ないから…」
分かってた。
彼にも瑞希と言う、守るべき宝がある。
でも、私も守りたい。
たった一つの宝を…
「毅…私、妊娠した。」
「は?お前、何やってんだよ。」
私の浮気には
きっと気付いてたはず。
お腹の子も自分の子である訳がない…そぅ確信しての言葉だろぅ…
「何って…2人で作った子供じゃない。」
自分の子供だって証拠はない。でも、自分の子供じゃないって証拠もない
こんな時、男性は
「あなたの子供」って言葉を信じるしかない。
「あんな一回で?俺、イッてないし。」
「いかなくたって妊娠はするんだよ。実際、妊娠したんだもの。」
不思議と罪悪感は無かった
子供を産もうと決断してから、何度もこの場面を描いてきた。
最低な人間。
こんな騙し方するなんて人間じゃない…
人間以下の存在に成り下がったって構わない。
もっとも、友達の旦那に手を出した時点で
私は人間以下の
最低な存在だ…
「おろしてくれ。」
「私は産むって決めた。」
「無理だから…俺…今、好きな人がいる。」
それも知っていた。
夫にも彼女が居る事を。
「その人と、結婚したいの?」
「今すぐ、って訳じゃないけど…」
「じゃあ…三年まって。この子を産んで、働ける様になったら、私達離婚しようよ。」
子供を産む事と引き換えに、離婚する。
1人で育てて行けるのか
幸せに出来るのか
そんな事は
やってみなくちゃ分からない。
でも、いざとなったら、やるしか無いんだ。
「分かった…」
毅は、産む事を許してくれた。
お腹の子供は
何のトラブルもなく
順調に育っていった。
BARのお客さんも
大きくなるお腹をさすりながら、私達を見守ってくれている。
最近、毅はあまり家に帰らなくなった。
彼女と仲良くやっているのだろう。
トシ君は検診の度に貰ってくるエコー写真を、眺めては、微笑みあった。
人を騙して不幸にて
手に入れてる今の生活
心から幸せだと、感じる事は出来ない。
それでも、こんな親の元に宿った小さな命は
こんな私に笑顔を与えてくれる。
6月のある晴れた月曜日
その日の空は
絵の具の水色で塗ったような、とても綺麗な青空と、大きな綿菓子みたいな真っ白い雲が浮かんでいた。
気が遠くなるような痛みの中、
分娩室の窓から見えたこの空を、私はずっと眺めていた。
産まれた赤ちゃんは元気な男の子だった。
小さくてホヤホヤで
とても頼りなくて
でも、とっても大きな声で泣いたんだ。
私は産まれた我が子を
胸に乗せてもらい手を握った。
「初めまして、赤ちゃん。これから宜しくね。」
悲しくないのに涙が出るって初めて知ったよ。
こんな風に自然に涙って出るんだね。
生まれて来てくれて
本当にありがとう。
出産を終えて
私は病室に戻ると
毅は目を赤らめながら
座っていた。
「お疲れ様。」
その一言だけ言うと
病室を出て行った。
BARの仲良かった仲間に
出産の報告メールを送る
妊娠8ヵ月まで働いていた
お客さんもスタッフも
みんなが、この日を楽しみにしていてくれた。
トシ君とは、仕事を辞めてからは、会う機会が減った。
たまにご飯に行ったり
電話したりの関係。
トシ君にも出産を教えるメールを送った。
次の日から
退院までの間
友達や
BARの人達
お祝いを持って
沢山の人達がお見舞いに訪れてくれた。
ただ…
トシ君だけは
一度も顔を出さなかった
【これでいいんだ】
そぅ思い始めていた。
子供が産まれたのを機に別れよう…
実際、そんな会話をした訳ではない。
でも、出産してから
私達は連絡を取らなくなっていた。
子供の名前は優樹と名付けた。
優樹は、元気に育って行った。
優樹がハイハイを始めた頃、クミから手紙が届いた。
そこには
あのファミレスでの騒ぎに対する謝罪と
離婚した旨と
実家に戻る事
そんな事が書かれていた
【こんな事になったけど、今、私は凄く清々しい気持ちです。ようやく自分を取り戻せるって喜びが大きいです。】
最後には、そう締めくくられていた。
トシ君とは連絡を取っていなかったけど
BARの仲間から
時々、トシ君の情報は入って来ていた。
彼女が出来た事
結婚するって話してる事
【本気で結婚するのかな】
クミと離婚した事を知り
新しい彼女の存在が
急にリアルに感じて
胸が痛んだ…
ある日、BARの常連さんから電話が入る。
みんなでバーベキューやるから、優樹と一緒においで。と、誘いの連絡だった。
みんな、家族で来るから。って言っていた。
【どうしようかな…】
悩みながらも
「じゃぁ、行くね。」
と答えた。
トシ君に会いたかった。
そんな気持ちもあった。
彼女の姿を見てみたい
そう思った私が居る。
このまま、関わり合わない方がお互いの為だと
分かっているのに
彼を忘れられない私が居る。
その日は朝からよく晴れた1日だった。
優樹と2人で
車にのってバーベキュー会場まで行った。
トシ君からは、相変わらず何の連絡もないまま、当日を迎えた。
私が行く事は、きっと知ってるはず…
最後の最後まで、
行かない方が…って気持ちと戦ってた。
ベビーカーを広げて
優樹を車から降ろす。
優樹は嬉しそうに
キャアキャア言って喜んでいた。
私はしゃがみこんで
優樹の手を握り
視線を合わせる。
【優樹…ママは、弱いね。ずるくて卑怯なママでゴメンね】
本当に会っていいの?
このまま、今ならまだ引き返せる。
【やっぱり、帰ろう】
そぅ思った時、誰かが私の肩を叩いた。
「サクラ…」
振り向くと、トシ君が立っていた。
「あっ、久し振り…」
トシ君はしゃがんで
優樹の目線に合わせた。
「優樹、大きくなったな!」
「…うん。」
トシ君は今、どんな気持ちでいるの?
この子を、どんな想いで見つめているの?
「トシ君、離婚したんだって?」
私は聞いた。
「あぁ、うん…。」
「今日、彼女は?一緒じゃないの?」
「後で、拓と一緒に来るみたい。」
拓は、BARのスタッフ。まだ大学生だ。
彼女は仕事があるらしく午後から、学校が終わった拓と一緒に来るらしい
「そっか。」
そう言って、私は優樹のベビーカーを押して
みんなの居る場所へと歩き始めた。
トシ君に会ってしまった以上、もう引き返す訳には行かない。
「サクラ…?ごめんな」
「何が?」
何に対して?
トシ君は離婚した。
あの時、優樹が出来た時は離婚は出来ないって言ってたのに。
私よりも今の彼女の方が大切だったの?
私よりクミより。
優樹よりも瑞希よりも?
言いたい言葉は沢山ある
責めたい。
でも、私には出来ない。
私も騙してる人が居る
トシ君だけを責める事は出来ない。
私だって同じ罪を抱えてるんだもん。
「優樹、大きくなったなぁ。前見た時は、お猿さんみたいだったのに」
みんなは優樹を見て
騒いでいる。
優樹はみんなに代わる代わる抱っこされて
声を出して喜んでいる。
私はその光景を
温かい気持ちになりながら眺めている。
その輪の中には
トシ君の姿もある。
話し方も
笑い方も
ちょっと癖のある歩き方も、何も変わってない。
変わったのは
心だけ。
久し振りに見た彼の姿に
胸が締め付けられた。
しばらくして
拓が来た。
拓と一緒に髪の毛の長いスレンダーな女性も来た。
「トシ~♪」
手を振りながら
ニコニコ笑って彼の元へと駆け寄る。
【この人が…】
可愛らしい人だった
だけど私は
この人が嫌い。
…好きにはなれない。
やめて。
彼に触らないで。
馴れ馴れしく彼の名を
呼ばないで。
醜い嫉妬心が沸いてくる
終わらせたはずなのに
でも、とめどなく沸いてくる醜い感情を
私は消す事が出来なかった。
優樹は一歳の誕生日を迎える事が出来た。
その日は、友人を招いて
誕生日パーティーをした
まだ歩けない優樹は
ハイハイしながら
嬉しそうに部屋中を徘徊しては、【おめでとう】の言葉を掛けて貰った。
パーティーも終わり
優樹は沢山の人に遊んで貰って疲れたのか
いつもより早く寝てしまった。
1人、リビングで優樹のアルバムをめくる。
産まれたての優樹
初めて微笑んだ顔
おっぱいを飲む優樹
寝返りの瞬間
下手っぴな、お座り…
ママの勝手で
優樹を産んだ。
沢山の人を裏切って、
優樹って宝物に出会えた
優樹ゴメンね。
でも、ママは…
優樹に出逢えて幸せなんだ。
日付も変わろうとした時に私の携帯が鳴った。
メール…
胸が苦しくなる
何かを待っていた私が確かに存在していた。
携帯を開くと
やはり相手はトシ君だった
【優樹、誕生日おめでとう。】
それだけの短いメール
それなのに
私は何度も読み返した
メール画面を見ては
彼の名前を見つめた。
【ありがとう。やっと一歳になりました。】
私は何度も打ち直して
ようやくメールを返した
携帯を閉じて
ソファーにもたれかかる
静かに目を閉じると
胸に熱い物が込み上げてきて、苦しくなった。
【本当は、トシ君からのおめでとう。の言葉を一番に聞きたかったんだ。】
本当は
一緒にお祝いしたかった
一緒に優樹の成長を
喜び合いたかった
優樹の事を一緒に考えて欲しい。
今まで、ずっと見ないようにしてきた自分の本当の気持ちと
私は初めて向き合った。
それは、凄く我が儘で
自分勝手で
汚い欲望だと思う。
でも。
それでも私は
私には…
彼の事が必要で
彼のあの手の平の温もりが、欲しくて仕方ないんだ…
🎀読んでくれてる皆様へ
初めまして。
何だかこんな小説(と言えるのか?)も、気付けば人気スレの仲間入りしてしまいました。
初めから読み返すと
本当に誤字脱字だらけで。
すいません💧
出来る事なら最初から
書き直したい位です💧
編集機能とかあれば
いいのに…💦
内容も不快な内容ですので、これを読んで気分を害されたり…とか、あると思います。
しかし、ここまで来てしまったので、
1人の弱い女、汚い心を持った女の話しを
最後まで頑張って書いて行きたいです。
読んでくれて
ありがとうございます。
また気が向いた時にでも、お付き合い頂ければ♪と思ってます。
🎀さくら🎀
膝を抱えて
携帯に手を伸ばす。
電話番号を呼び出して
後1つボタンを押せば彼に繋がる…
でも
親指が言うことを聞かない
私の心臓は
今にも壊れそうな位
ドキドキしている
頭の中では
会話のシュミレーションをする。
大きく息継ぎをして
私は
最後のボタンを押して
耳に当てた。
呼び出し音が聞こえない
「……あれ?」
えっ?
トシ君?
「も…もしもし…?」
「えっ?さくら?」
お互い同じ様なタイミングで掛けたから、呼び出し音がなる前に繋がったらしい。
「ホント気が合うな。」
さっきまでの緊張感も和らいだ。
頭に描いてたシュミレーションとは、程遠かったけど、その方が私達らしくてイイ。
「元気にしてたのか?」
「うん。元気だよ…彼女とは仲良くやってるので?」
「あ……うん。どうだろうな、何か…微妙だよ」
微妙…って言葉に
心が軽くなる自分がいる
「微妙って…?」
「う~ん、何かな。そんな事より、優樹は?元気なのか?」
「うん。優樹は元気!毎日うるさい位だよ♪」
彼女との事は
上手くはぐらかされた。私も、これ以上深くは追求出来ない。
トシ君に優樹の近況を話した。
優樹の事をもっと知って貰いたい。
愛おしいと思ってもらいたい。
彼女なんかよりも
優樹を大切にして欲しい
「優樹はさくらに似て騒がしそうだもんなぁ。」
ケラケラ笑いながら言う。
彼の可笑しそうな笑い声を聞いてると
私も自然と笑顔になる。
「明日は暇か?もし良かったら、3人で飯でも行こうよ。お祝いしたいし」
「うん。大丈夫だよ」
私達は
明日の約束をして電話を切った。
嬉しかった。
初めて3人で会える。
久し振りに…
トシくんの側に居れる。
優樹と私は
いつもよりも少し
お洒落をしてトシ君が来るのを待っていた。
「優樹、今日はママとお出掛けだよ。」
「ママ~。」
「ご飯食べに行くよ。お利口さんに出来る人?」
「あぁ~い」
優樹のお気に入り。
~出来る人?と聞くと
得意気な笑顔で片手を上げる。その時、首も傾けるのが優樹流。
「今日も、上手にお返事出来たね。」
そう言って、柔らかい髪の毛を撫でると
優樹は手を伸ばして抱っこをせがんできた。
約束の時間まで
あと少し…
さっきから落ち着かない。
そのまま優樹を抱きあげて、玄関を出た。
下に降りると
懐かしいトシ君の車が
やって来た。
「今電話しようとしてた所だよ。」
タイミングも合って
出だしは好調♪
トシ君の車には
瑞希が使ってたチャイルドシートが取り付けられていた。
「わざわざ付けてくれたの?ありがとう。」
そぅ言うと
トシ君は優しく微笑んで
私から優樹を抱き取り
愛おしそぅに
ギュッと抱き締めた。
「優樹、誕生日おめでとう。一歳だな!」
優樹は、仕切りに言葉にならないお喋りを続けてる。
チャイルドシートにそのまま乗せると
車は走り出した。
車が着いた先は
機関車の形をしたパスタ屋さんだった。
「あっ!マァマ!」
優樹はお店を指差して
歓声を上げる。
「優樹、ポッポーだぞ」
トシ君が優しい眼差しで優樹に教える。
「ポポー、ポポー!」
優樹は指差したまま
トシ君の口調を真似する
中に入ると
大きなボールプールや
滑り台、ジャングルジム
子供を遊ばせられる遊具が沢山あった。
遊具を取り囲むようにテーブルと椅子が並べてある。
「うっわぁぁ~!」
優樹は店内をキョロキョロと眺めては声を出した
「このお店凄いね!優樹も、凄い興奮してる。」
「な。優樹に喜んで貰えて良かったよ」
店内は平日の昼間なのに
ママさんグループで大賑わいだった。
私達も席に着いて
料理を注文した。
「優樹、おいで。」
料理を待つ間、
トシ君と優樹は遊びに行った。
優樹は、抱っこから下ろされると、ハイハイしながらお目当ての遊具に近寄って行く。
2人はボールプールに入り、ボールを投げている。優樹が投げたボールが、自分の頭に戻って来てぶつかるのを、ケラケラ笑い合っている。
私はテーブルに頬杖して2人を眺めた。
幸せな気持ち。
私が求めていた光景がそこにはある。
でも、その光景は
本物ではない。
嘘で塗り固まれた物である事も、ちゃんと知っている。
だから、悲しい気持ちにもなるんだ…
注文した料理が運ばれて来ると、三人で席に着き「いただきます。」をした。
パスタが食べ終わった頃、突然、店内のBGMが途切れた。
「えっ?何?どうしたんだろう?」
店内もざわめいた。
すると、またBGMが流れ出す。
【happybirthday】だ。
蝋燭が一本立てられたケーキが、ワゴンに載せられて、私達のテーブルに運ばれてくる。
優樹はキョトンとしている。
私は驚いてトシ君を見た
トシ君はニヤニヤ笑う
「優樹、誕生日おめでとうな。」
店員さんがテーブルに置いたケーキに火を付けてくれた。
少しだけ、店内の照明が落とされる。
「優樹、蝋燭ふぅってしてごらん。」
優樹は「ふぅ。ふぅ。」と真似しているが声をだしてるだけで火は消えない。
トシ君は優樹の後ろにまわり、優樹の「ふう。」の声に合わせてそっと息を吹いた。
火が消えると
店内からは「おめでとう。」の言葉と拍手が聞こえた。
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小説・エッセイ掲示板のスレ一覧
ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。
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依田桃の印象7レス 139HIT 依田桃の旦那 (50代 ♂)
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ゲゲゲの謎 二次創作12レス 131HIT 小説好きさん
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私の煌めきに魅せられて33レス 326HIT 瑠璃姫
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✴️子供革命記!✴️13レス 93HIT 読者さん
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猫さんタヌキさんさくら祭り1レス 56HIT なかお (60代 ♂)
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依田桃の印象
バトル系なら 清楚系で弱々しく見えるけど、実は強そう。 恋愛系…(常連さん7)
7レス 139HIT 依田桃の旦那 (50代 ♂) -
神社仏閣珍道中・改
暦を見ると本日は『八十八夜』となのだといいます。 八十八夜とは、…(旅人さん0)
231レス 7824HIT 旅人さん -
西内威張ってセクハラ 北進
特定なんか出来ないし、しないだろう。実際しようともしてないだろう。意味…(自由なパンダさん1)
82レス 2836HIT 小説好きさん -
仮名 轟新吾へ(これは小説です)
彼女は 🌸とても素直で🌸とても純粋で 自分の事より先ず! 🌸家族…(匿名さん72)
182レス 2793HIT 恋愛博士さん (50代 ♀) -
一雫。
あれから一週間過ぎてしまった(蜻蛉玉゜)
78レス 2367HIT 蜻蛉玉゜
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🌊鯨の唄🌊②4レス 123HIT 小説好きさん
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人間合格👤🙆,,,?11レス 127HIT 永遠の3歳
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酉肉威張ってマスク禁止令1レス 134HIT 小説家さん
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今を生きる意味78レス 512HIT 旅人さん
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黄金勇者ゴルドラン外伝 永遠に冒険を求めて25レス 952HIT 匿名さん
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🌊鯨の唄🌊②
母鯨とともに… 北から南に旅をつづけながら… …(小説好きさん0)
4レス 123HIT 小説好きさん -
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人間合格👤🙆,,,?
皆キョトンとしていたが、自我を取り戻すと、わあっと歓声が上がった。 …(永遠の3歳)
11レス 127HIT 永遠の3歳 -
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酉肉威張ってマスク禁止令
了解致しました!(小説好きさん1)
1レス 134HIT 小説家さん -
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おっさんエッセイ劇場です✨🙋🎶❤。
ロシア敗戦濃厚劇場です✨🙋。 ロシアは軍服、防弾チョッキは支給す…(檄❗王道劇場です)
57レス 1392HIT 檄❗王道劇場です -
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今を生きる意味
迫田さんと中村さんは川中運送へ向かった。 野原祐也に会うことができた…(旅人さん0)
78レス 512HIT 旅人さん
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ゴールデンウィークって大事な行事ですか?
兼業主婦です ゴールデンウィーク休みが1日しかない事に旦那がブチ切れです バイトごときが店に…
45レス 1280HIT 相談したいさん -
離婚した人と友達以上恋人未満。
私36歳、彼女(便宜上)40歳、彼女の娘16歳です。 彼女は数年前に離婚し、半年ほど前に知り合…
17レス 297HIT 匿名さん (30代 男性 ) -
スパゲティの分け与え
あなたは彼氏の家にアポ無しで遊びに行ったとします。 ちょうどお昼時で彼氏はナポリタンスパゲティを食…
17レス 324HIT 恋愛中さん (20代 女性 ) -
家を綺麗にしたいんです。
私 30代会社員 妻 30代扶養内パート 子ども 年中女児と2歳男児 自宅が凄まじい有り様…
7レス 229HIT 聞いてほしいさん -
元旦那とディズニー旅行に行くシングルマザーの彼女
自分には1年4ヶ月付き合っている小6と中2の女の子2人の子供がいる彼女がいます。 元旦那とは5年前…
9レス 272HIT 匿名さん (30代 男性 ) -
この食生活を30年続けたらどうなりますか
朝 安い菓子パンと野菜ジュース 昼 カップ焼きそばまたはカップ麺 夕食 白米+刻みネギと…
7レス 201HIT 教えてほしいさん - もっと見る