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サクラ( mR7jnb )
11/01/19 23:38(更新日時)

もしも…
もしも神様が本当に居るなら、聞いてみたい。 2人が出逢った事に 意味はあるのですか。 いつかは、この苦しさから解放されますか。 この苦しみしみから 抜け出せるなら 今までの29年間の記憶なんて全部無くしてもイイです。


※初めての小説です。 ド素人なので誤字脱字、文章もメチャクチャかも知れないですが、 宜しくお願いします。

No.1263709 10/03/04 21:10(スレ作成日時)

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No.51 10/03/07 21:29
サクラ ( mR7jnb )

次の日、ファミレスに出勤すると、昨日の私とクミの話で持ち切りになっていた…


【もぅ…面倒臭い…】


毅の事…
生活費の事…
クミの事…。
そして今度はバイト…



全部が私の肩に重くのし掛かる。
もぅ、全てがイヤだった


仕事も何とか終わり、着替えて帰ろうとすると
店長に呼ばれた。



「大丈夫か?」

今日1日のお店の空気は本当に最悪だった。
みんなが好奇心と嫌悪感の目で私を見る。



【もぅ、嫌だ。無理。】

「店長…すいません…」

【もぅ頑張りたくない】

「仕事を…辞めさせて下さい。」

No.52 10/03/07 21:39
サクラ ( mR7jnb )

私は…


逃げ出してしまった。


立ち向かわなければいけないと、分かっているのに…
逃げたって何も解決なんかしないのに。


【もぅ、疲れた】



ベッドに入り目を閉じると、深い眠りに落ちた。

No.53 10/03/07 23:28
サクラ ( mR7jnb )

遠くから音楽が聞こえる。


【何?ウルサい…】

今、何時だろぅ。
寝ぼけた頭で考える。


【あ…携帯か…】



バックにしまったままの携帯電話を暗闇の中、手探りで探す。


着信3件。


トシ君からだった。


今は1時20分、仕事が終わった頃かな。

かけ直そうかとも思ったけど、今日はもぅ、誰とも話したくない。

そのまま携帯を閉じようとした瞬間に、
再びトシ君から着信。


どぅしよぅ…と迷いながらも、電話に出た。


「もしもし?」



「ゴメンな。寝てた?」

「うん。平気だけど…どぅしたの?」



「サクラ…?サクラ」


「ん?聞こえてるよ?」

「サクラ…会いたい」

No.54 10/03/07 23:45
サクラ ( mR7jnb )

胸が高鳴る。


「どぅしたの?」



「俺、サクラに会いたい」


ドキドキする
胸が苦しくなって息が出来ない。
頭がクラクラするよ…


「酔ってるの?今、ドコにいるの?」


「酔ってない。もぅ、お前の家の近く。」



ジャージにスッピン。
髪もボサボサ。
…まぁ…いっか。


「分かった。待ってて」

そのままの姿で
髪の毛だけ結んで外にでると、見慣れた黒いワンボックスカーが見えた。

No.55 10/03/08 00:16
サクラ ( mR7jnb )

いつもの様に助手席側に回りドアを開けた。


「お疲れ様。」


車に乗り込むと、トシ君は私の右手を握りしめた。


「ワガママ言ってゴメンな。来てくれてありがとう。」


私の手を握ったまま車を走らせた。


「ドコ行くの?」


「ん?俺の秘密基地。」

そう言うと繋いだ手を強く握られた。


「サクラってスッピンも大して変わらないのな」

「そんな事ナイでしょ。恥ずかしいから、あんまりコッチ見ないでよ。」

「恥ずかしい?何で?お前、結構可愛いとこあるんだね」


嬉しそうに笑いながら
車を停めた。

No.56 10/03/08 00:37
サクラ ( mR7jnb )

その場所は家から15分ほどの所で、海浜公園の裏手にある、人気のナイ駐車場だった。


トシ君は運転席の窓に背を向けて私を見る。
繋いだ手が、急に恥ずかしくなって手を放そうとした。


「トシ君?放して?」


手を更にギュッと握られた。私はトシ君の顔を見る事が出来ない。

「やだ。放さない。」



「やっぱり酔ってるんでしょ~」


ワザと明るい声を出して笑いながら顔を上げた。
トシ君と一瞬目が合った…その瞬間、体をグイッと抱き寄せられた。



【えっ?】
あまりにも一瞬の出来事で呆然とした私。


「俺、酒臭い?」


トシ君の胸に抱き寄せられたまま、首を振った。

No.57 10/03/08 00:54
サクラ ( mR7jnb )

腕の力で体を離そうと突っぱねる。
少し離れては、また抱きしめられる。


そのままの勢いで
助手席に倒される。
倒されるのと、ほぼ同時にシートも倒された。


「きゃっ」


驚いて思わず声が出た。


私の耳元でトシ君が囁く


「ゴメン。でも少しの間でイイから…このままで居させて…」


私は、返事をする代わりにトシ君の背中にそっと腕を回した。

No.58 10/03/08 15:38
サクラ ( mR7jnb )

抱き合った体から。
彼の温もりを感じる。
体の左右から心臓の鼓動を感じる。

私の心臓と
彼の心臓が
抱きしめ合って一つに重なる。


こうして誰かを感じるのは
いつ以来なんだろう・・

ずっと、温もりが欲しかった。

ただ抱きしめて欲しかった。

本当は、ずっと毅に求めていたのに。

いつから、求める事をやめてしまったんだろう。

求めなければ、傷つかない。

でも、体が離れると、心まで離れてしまう。

体の距離は心の距離・・

こんな事になる為に

結婚したんじゃないのにね。

幸せになる為に・・

この人なら・・って思って


永遠の愛を誓い合ったはずなのに・・・

No.59 10/03/08 16:07
サクラ ( mR7jnb )

自分が情けなくて

悔しくて

気づくと涙が出ていた。


「あっ、嫌だったよな。サクラごめん・・」

私が泣いているのに気づいて、私から離れようとする。

離れかけた背中を、今度は私が強く抱き締めた。

「お願い・・離れないで。」

「サクラ・・??」

顔を覗きこもうとされて、
私はトシ君の胸に顔をくっつけて
それを拒んだ。

「・・トシ君、温かいね。」
当り前の事なのに
そんな事すら忘れてたよ。

「サクラも温かいよ・・」

流れる涙を止める事が出来ない。

トシ君は私を抱きしめたまま

髪の毛を撫で続けてくれた。

私の前髪をかき上げて

おでこに優しくキスしてくれた。

おでこにキス

頬にキス

首にキス・・

 
目と目が触れ合う・・

唇に、トシ君の温もりを感じた。

No.60 10/03/08 17:03
サクラ ( mR7jnb )

ただ唇が触れ合っただけのキスなのに
心臓は撃ち抜かれたみたいに痛くなる。

トシ君の真っ直ぐな瞳の中に私が映ってる。
トシ君の瞳に映る私に問いかける。


【本当にイイの?】


でも、クミへの復讐心が消えた訳じゃない。

ただ、毅への愛が無くなった訳でも無い。

1つだけ確かな事は…
私は今この人を求めている。


この温もりを全身で感じたいと、求めてる。


再び、トシ君の唇が触れる。彼の瞳を覗く事はもぅ出来ない。
私も、そっと目を閉じた。




そして私の体は彼の全てを受け入れた。

No.61 10/03/08 17:54
サクラ ( mR7jnb )

後悔が無かったと言えば嘘になる。
でも、後悔だけが残った訳ではない。


「また明日ね…」


家に帰り着くと、
毅は、まだ眠っていた。
パジャマに着替えて
毅のベッドに入り込む。
【ゴメンね…】


「ん…お帰り…」


後ろから毅をキツく抱きしめた。


「ただいま…」


【ゴメン、ゴメンなさい】


「何かあったの?」



気付くとまた涙が出てた。


「何もないよ。」



そのまま私は、
毅の温もりを抱き締めて眠りに落ちた。

No.62 10/03/08 18:27
サクラ ( mR7jnb )

「おはよぅ。」


もぅ夕方だけど
これから仕事に行く私達にとっては、今からが1日の始まり。


「おはよう。」

そぅ言って、迎えに来てくれたトシ君の車に乗り込む。


今朝まで一緒に居た。

この車で2人で何時間も過ごした。

その唇に何度も触れた。
その指で…

その胸で…

その声を…



気まずさに、消えてしまいたくなる。


彼は優しく手を握ってくれた。


「手はココでしょ。」


そぅ言って握りしめた手を自分の膝の上に置く。

「サクラの事、好きだよ。だから、抱いた事、謝らないからね。」

No.63 10/03/08 21:08
サクラ ( mR7jnb )

「俺、お前が笑う顔みてみたい。出来れば俺がお前を笑わせたい。」


自然に笑う事…
いつか…出来るかな。



「トシ君ってさぁ、女の趣味悪いよねぇ…」

こんな女のドコがイイの?



「そぅそぅ。俺、磨けば光る原石が好きなの」



「つまり、お前は今、道端の石ころってトコだな」


「ひどぉい」


膨れた顔を見て

彼は楽しそうに笑う。


ケラケラ笑う姿が可愛くて、私も一緒に笑った。

No.64 10/03/08 21:22
サクラ ( mR7jnb )

その日も、私達は秘密基地に行った。


「ところで、何でココが秘密基地なの?」


「俺、家に帰りたくナイ時は、ココで1人の時間過ごしてんだ。」


車も滅多に来ない。
街灯も少ない。
こんな寂しい場所で
1人で時間を潰す姿を思い描いたら、何だか悲しくなってしまった。



「どぅしても、ダメなんだよ、俺。家に帰ると息苦しいんだ。」

だから、ココで

この場所で息抜きをする
そぅやって彼は、バランスを保っていた。


「そっか…。」


沈黙を破るように
彼の携帯が鳴る。


クミ…?


携帯を見たトシ君が
「出てイイ?」
と聞いてきた。


「どぅぞ。」

No.65 10/03/08 21:33
サクラ ( mR7jnb )

「ゴメン、今日行けないや…。うん、ごめんなぁ。」


電話はすぐに終わった。

「何か用事あったの?」

「あ~…うん。」

言いにくそうな姿をみてピンと来た。


「女のトコでしょ?」


「…うん。」


「ゴメンね。今から行ってきなよ。私帰るし…」

「イヤ、行かない。俺、お前と居る方が楽しいもん。」


「私は帰りたいの!!」

何でだろぅ…

分かってたのに。

彼には私以外にも女が居るって分かってたじゃない。

なのに…何でこんなに

イライラするの?

ヤキモチなんて妬きたくない。

No.66 10/03/08 21:55
サクラ ( mR7jnb )

「もしもしぃ、あっ、俺~。俺さぁ、本気で好きな女出来たから、もぅ遊ぶの止めたから~…ん~、まぁ…、お前も元気でなぁ。」


突然電話を掛け始める。電話を切ると同時にメモリーも消去していく。



「イイっっ!そんな事しなくてイイから…もぅ止めてよ。」

何故だか涙が出る。
トシ君の耳に当てた携帯を奪い取ろうとすると
そのまま腕を引っ張られ抱き締められた。


「あっ、もしもし~…」…


何件目だかも分からない。ただ、携帯を閉じたトシ君の姿で、終わった事が分かった。



「ねぇ、サクラ…これで俺の気持ち、少しは信じてくれる?」


「お前の事、好きなんだよ。」


「うん。」

涙でグチャグチャの顔でトシ君を見た。

No.67 10/03/08 22:05
サクラ ( mR7jnb )

「フフ…お前は~なんつぅ顔してんのさ。とにかく、鼻チーーンしろ。」

ティッシュを渡されて

私も泣きながら笑った。

「へへ…」


「こんな事して、後悔してないの?」
私は自分から彼に抱きついて、聞いた。


「何で?後悔なんてしないよ。これからは、お前だけが傍に居てくれよ」

優しく髪を撫でてくれた


私は、

私の涙腺は

彼と居ると緩みっ放しになってしまうらしい。

No.68 10/03/09 17:12
サクラ ( mR7jnb )

彼の事が好きなのか

この関係だから

好きなのか

私には分からない。


ただ面倒な現実の問題から逃げ出したかった。

彼と過ごす時間は

私にとって非現実的で

恋愛の甘い部分だけを楽しめた。


クミの存在も

毅の存在も

罪悪感すら、2人を盛り上げるスパイスになっていたのかも知れない。


でも、目を逸らして来た現実は、放っておいても改善される訳じゃない。


痛み出した歯みたいに

最初は小さな虫歯でも

放っておいて完治はしない。

自分でも気付かない内に
激しい痛みと

大きな虫歯になって

耐え難い苦痛を与える。

No.69 10/03/09 17:22
サクラ ( mR7jnb )

ある日、それは突然。


私の中に

小さな命が宿った。


毅の可能性も

僅かながら、ある。


新しい仕事を始めた毅は
その日、珍しく上機嫌だった。

2人でお酒を呑んだ。



酔っ払った勢いのまま、

私達は久し振りにした。


でも夫は、果てる事もなく

中途半端なまま終わった

付き合っていた頃は

中出しばかりしていた

避妊した事はナイ。

それでも、私は妊娠しなかった。


それが、こんな一回で?

果てる事も無かったのに
妊娠なんてするだろぅか

No.70 10/03/09 17:33
サクラ ( mR7jnb )

トシ君の可能性は大きい。


仕事中であろぅ、彼に電話を掛けた。


「大事な話があるの。」

仕事が終わったら会う約束をした。


【どぅしたらイイ?】


お腹に、そっと手を当てる。

何となく、出来てるかも。って予感はあった。


昨日の夜、自分の心臓の音がすごく大きく聞こえたんだよ。


だから、もしかしてって思ったんだよ。



【私の赤ちゃん】

【私達の赤ちゃん】


今、家の中には

私は1人ぼっちだけど

私のお腹には

小さな命が生きてる。

だから、私は1人じゃないんだね。

No.71 10/03/09 20:46
サクラ ( mR7jnb )

「赤ちゃんが出来たの」

「うん。」と頷くトシ君。

「もしかしたら、そぅかなって、思ってたよ。」


「赤ちゃんが、居るんだよ。ココに…」

トシ君の手を取って
そっとお腹に乗せた。


涙が出てくる。

せっかく授かった命。

誰からも祝福されない命
それでも、

私には愛おしい命




守りたいの。


この子に会って

抱き締めたいの。

愛してるよって伝えたいの

No.72 10/03/09 20:58
サクラ ( mR7jnb )

トシ君も泣いている。


「ゴメン。でも、産まないで欲しい。」


泣きながら首を振る


「心臓も動いてるんだよ。今も、お腹の中で、私と一緒に生きてるんだよ」


目に見えない命と

目に見える命

同じ命なんだよ。

その、違いは何…?

見えないなら

奪ってもイイの?

この命の決定権は

私達にあるの…?!



1人の命を守る以上に

大切なモノって何?

生きてさえいれば

人には幸せになる可能性がある

こんな、ろくでもない親でも、子供は自分の力でだって未来を切り拓いて歩いていける。

No.73 10/03/09 21:19
サクラ ( mR7jnb )

最低な女だと言われても構わない。


人間じゃない…と思われてもいい。


どんな事してでも

私は

この子を守る。

この子が、生きようとする限り。必ず…



「もしも、子供産んだら、俺達、離れる時が来るよ。俺はまだ…離婚は出来ないから…」



分かってた。

彼にも瑞希と言う、守るべき宝がある。


でも、私も守りたい。


たった一つの宝を…

No.74 10/03/10 20:20
サクラ ( mR7jnb )

「毅…私、妊娠した。」

「は?お前、何やってんだよ。」


私の浮気には
きっと気付いてたはず。
お腹の子も自分の子である訳がない…そぅ確信しての言葉だろぅ…


「何って…2人で作った子供じゃない。」


自分の子供だって証拠はない。でも、自分の子供じゃないって証拠もない

こんな時、男性は
「あなたの子供」って言葉を信じるしかない。


「あんな一回で?俺、イッてないし。」

「いかなくたって妊娠はするんだよ。実際、妊娠したんだもの。」


不思議と罪悪感は無かった


子供を産もうと決断してから、何度もこの場面を描いてきた。


最低な人間。

こんな騙し方するなんて人間じゃない…


人間以下の存在に成り下がったって構わない。
もっとも、友達の旦那に手を出した時点で


私は人間以下の
最低な存在だ…

No.75 10/03/10 20:31
サクラ ( mR7jnb )

「おろしてくれ。」


「私は産むって決めた。」


「無理だから…俺…今、好きな人がいる。」


それも知っていた。
夫にも彼女が居る事を。

「その人と、結婚したいの?」


「今すぐ、って訳じゃないけど…」




「じゃあ…三年まって。この子を産んで、働ける様になったら、私達離婚しようよ。」


子供を産む事と引き換えに、離婚する。



1人で育てて行けるのか
幸せに出来るのか


そんな事は
やってみなくちゃ分からない。
でも、いざとなったら、やるしか無いんだ。

No.76 10/03/10 20:49
サクラ ( mR7jnb )

「分かった…」

毅は、産む事を許してくれた。




お腹の子供は

何のトラブルもなく

順調に育っていった。


BARのお客さんも
大きくなるお腹をさすりながら、私達を見守ってくれている。



最近、毅はあまり家に帰らなくなった。

彼女と仲良くやっているのだろう。



トシ君は検診の度に貰ってくるエコー写真を、眺めては、微笑みあった。


人を騙して不幸にて
手に入れてる今の生活
心から幸せだと、感じる事は出来ない。


それでも、こんな親の元に宿った小さな命は
こんな私に笑顔を与えてくれる。

No.77 10/03/10 21:04
サクラ ( mR7jnb )

6月のある晴れた月曜日

その日の空は
絵の具の水色で塗ったような、とても綺麗な青空と、大きな綿菓子みたいな真っ白い雲が浮かんでいた。


気が遠くなるような痛みの中、

分娩室の窓から見えたこの空を、私はずっと眺めていた。




産まれた赤ちゃんは元気な男の子だった。
小さくてホヤホヤで
とても頼りなくて


でも、とっても大きな声で泣いたんだ。


私は産まれた我が子を
胸に乗せてもらい手を握った。

「初めまして、赤ちゃん。これから宜しくね。」
悲しくないのに涙が出るって初めて知ったよ。

こんな風に自然に涙って出るんだね。


生まれて来てくれて
本当にありがとう。

No.78 10/03/10 21:11
サクラ ( mR7jnb )

出産を終えて

私は病室に戻ると

毅は目を赤らめながら

座っていた。


「お疲れ様。」


その一言だけ言うと

病室を出て行った。



BARの仲良かった仲間に
出産の報告メールを送る
妊娠8ヵ月まで働いていた

お客さんもスタッフも

みんなが、この日を楽しみにしていてくれた。



トシ君とは、仕事を辞めてからは、会う機会が減った。
たまにご飯に行ったり
電話したりの関係。


トシ君にも出産を教えるメールを送った。

No.79 10/03/10 21:17
サクラ ( mR7jnb )

次の日から
退院までの間

友達や
BARの人達

お祝いを持って
沢山の人達がお見舞いに訪れてくれた。


ただ…
トシ君だけは
一度も顔を出さなかった


【これでいいんだ】
そぅ思い始めていた。


子供が産まれたのを機に別れよう…




実際、そんな会話をした訳ではない。
でも、出産してから
私達は連絡を取らなくなっていた。

No.80 10/03/10 21:38
サクラ ( mR7jnb )

子供の名前は優樹と名付けた。

優樹は、元気に育って行った。


優樹がハイハイを始めた頃、クミから手紙が届いた。


そこには

あのファミレスでの騒ぎに対する謝罪と
離婚した旨と
実家に戻る事
そんな事が書かれていた

【こんな事になったけど、今、私は凄く清々しい気持ちです。ようやく自分を取り戻せるって喜びが大きいです。】


最後には、そう締めくくられていた。



トシ君とは連絡を取っていなかったけど
BARの仲間から
時々、トシ君の情報は入って来ていた。


彼女が出来た事

結婚するって話してる事


【本気で結婚するのかな】

クミと離婚した事を知り
新しい彼女の存在が

急にリアルに感じて

胸が痛んだ…

No.81 10/03/10 23:26
サクラ ( mR7jnb )

>> 80 クミに返事を出そうかと、何度か手紙を書き掛けては捨てた。


今更、私にはクミと話す資格などない。



私は携帯を手に取り
見慣れたアドレスを開く。

【声が聞きたい。】


トシ君の声が聞きたい。


通話ボタンを押しかけた時、お昼寝していた優樹が泣き出した。


慌てて携帯を閉じ
優樹の元へと駆け寄った。


「ママ…マ~マァ!」

泣きながら、私の体に向けて手を伸ばす。


その小さな体を抱き締める。

「優君、おはよう」

優樹は嬉しそうに笑う



優樹と瑞希の顔は



よく似ている。

No.82 10/03/11 16:51
サクラ ( mR7jnb )

ある日、BARの常連さんから電話が入る。


みんなでバーベキューやるから、優樹と一緒においで。と、誘いの連絡だった。


みんな、家族で来るから。って言っていた。


【どうしようかな…】


悩みながらも
「じゃぁ、行くね。」
と答えた。


トシ君に会いたかった。
そんな気持ちもあった。
彼女の姿を見てみたい

そう思った私が居る。



このまま、関わり合わない方がお互いの為だと
分かっているのに

彼を忘れられない私が居る。

No.83 10/03/11 17:02
サクラ ( mR7jnb )

その日は朝からよく晴れた1日だった。


優樹と2人で
車にのってバーベキュー会場まで行った。
トシ君からは、相変わらず何の連絡もないまま、当日を迎えた。
私が行く事は、きっと知ってるはず…
最後の最後まで、
行かない方が…って気持ちと戦ってた。



ベビーカーを広げて
優樹を車から降ろす。

優樹は嬉しそうに
キャアキャア言って喜んでいた。



私はしゃがみこんで
優樹の手を握り
視線を合わせる。


【優樹…ママは、弱いね。ずるくて卑怯なママでゴメンね】


本当に会っていいの?
このまま、今ならまだ引き返せる。


【やっぱり、帰ろう】

No.84 10/03/11 17:26
サクラ ( mR7jnb )

そぅ思った時、誰かが私の肩を叩いた。


「サクラ…」


振り向くと、トシ君が立っていた。


「あっ、久し振り…」


トシ君はしゃがんで
優樹の目線に合わせた。

「優樹、大きくなったな!」


「…うん。」


トシ君は今、どんな気持ちでいるの?
この子を、どんな想いで見つめているの?


「トシ君、離婚したんだって?」
私は聞いた。


「あぁ、うん…。」


「今日、彼女は?一緒じゃないの?」


「後で、拓と一緒に来るみたい。」


拓は、BARのスタッフ。まだ大学生だ。
彼女は仕事があるらしく午後から、学校が終わった拓と一緒に来るらしい

No.85 10/03/11 18:41
サクラ ( mR7jnb )

「そっか。」


そう言って、私は優樹のベビーカーを押して
みんなの居る場所へと歩き始めた。


トシ君に会ってしまった以上、もう引き返す訳には行かない。


「サクラ…?ごめんな」

「何が?」


何に対して?

トシ君は離婚した。
あの時、優樹が出来た時は離婚は出来ないって言ってたのに。

私よりも今の彼女の方が大切だったの?

私よりクミより。


優樹よりも瑞希よりも?


言いたい言葉は沢山ある
責めたい。


でも、私には出来ない。

私も騙してる人が居る

トシ君だけを責める事は出来ない。

私だって同じ罪を抱えてるんだもん。

No.86 10/03/11 18:49
サクラ ( mR7jnb )

「優樹、大きくなったなぁ。前見た時は、お猿さんみたいだったのに」


みんなは優樹を見て
騒いでいる。
優樹はみんなに代わる代わる抱っこされて
声を出して喜んでいる。

私はその光景を
温かい気持ちになりながら眺めている。



その輪の中には
トシ君の姿もある。

話し方も
笑い方も

ちょっと癖のある歩き方も、何も変わってない。

変わったのは
心だけ。


久し振りに見た彼の姿に
胸が締め付けられた。

No.87 10/03/15 16:55
サクラ ( mR7jnb )

しばらくして
拓が来た。


拓と一緒に髪の毛の長いスレンダーな女性も来た。


「トシ~♪」

手を振りながら
ニコニコ笑って彼の元へと駆け寄る。


【この人が…】


可愛らしい人だった
だけど私は
この人が嫌い。
…好きにはなれない。


やめて。
彼に触らないで。
馴れ馴れしく彼の名を
呼ばないで。


醜い嫉妬心が沸いてくる


終わらせたはずなのに

でも、とめどなく沸いてくる醜い感情を
私は消す事が出来なかった。

No.88 10/03/15 21:10
サクラ ( mR7jnb )

その日から、また私の中でトシ君の存在が大きくなってしまった。


それでも、自分からは
決して連絡は取らなかった。
彼からも。
掛かっては来なかった。

No.89 10/03/15 21:29
サクラ ( mR7jnb )

優樹は一歳の誕生日を迎える事が出来た。


その日は、友人を招いて
誕生日パーティーをした

まだ歩けない優樹は

ハイハイしながら
嬉しそうに部屋中を徘徊しては、【おめでとう】の言葉を掛けて貰った。



パーティーも終わり
優樹は沢山の人に遊んで貰って疲れたのか
いつもより早く寝てしまった。


1人、リビングで優樹のアルバムをめくる。


産まれたての優樹
初めて微笑んだ顔
おっぱいを飲む優樹
寝返りの瞬間
下手っぴな、お座り…



ママの勝手で
優樹を産んだ。
沢山の人を裏切って、
優樹って宝物に出会えた


優樹ゴメンね。
でも、ママは…
優樹に出逢えて幸せなんだ。

No.90 10/03/15 21:35
サクラ ( mR7jnb )

日付も変わろうとした時に私の携帯が鳴った。



メール…


胸が苦しくなる



何かを待っていた私が確かに存在していた。



携帯を開くと
やはり相手はトシ君だった




【優樹、誕生日おめでとう。】



それだけの短いメール


それなのに
私は何度も読み返した
メール画面を見ては
彼の名前を見つめた。



【ありがとう。やっと一歳になりました。】


私は何度も打ち直して
ようやくメールを返した

No.91 10/03/16 17:48
サクラ ( mR7jnb )

携帯を閉じて
ソファーにもたれかかる

静かに目を閉じると
胸に熱い物が込み上げてきて、苦しくなった。



【本当は、トシ君からのおめでとう。の言葉を一番に聞きたかったんだ。】


本当は
一緒にお祝いしたかった
一緒に優樹の成長を
喜び合いたかった

優樹の事を一緒に考えて欲しい。




今まで、ずっと見ないようにしてきた自分の本当の気持ちと
私は初めて向き合った。


それは、凄く我が儘で
自分勝手で
汚い欲望だと思う。



でも。
それでも私は
私には…
彼の事が必要で
彼のあの手の平の温もりが、欲しくて仕方ないんだ…

No.92 10/03/16 18:07
サクラ ( mR7jnb )

🎀読んでくれてる皆様へ

初めまして。
何だかこんな小説(と言えるのか?)も、気付けば人気スレの仲間入りしてしまいました。
初めから読み返すと
本当に誤字脱字だらけで。
すいません💧


出来る事なら最初から
書き直したい位です💧

編集機能とかあれば
いいのに…💦



内容も不快な内容ですので、これを読んで気分を害されたり…とか、あると思います。

しかし、ここまで来てしまったので、

1人の弱い女、汚い心を持った女の話しを
最後まで頑張って書いて行きたいです。



読んでくれて
ありがとうございます。
また気が向いた時にでも、お付き合い頂ければ♪と思ってます。





🎀さくら🎀

No.93 10/03/16 18:24
サクラ ( mR7jnb )

膝を抱えて
携帯に手を伸ばす。



電話番号を呼び出して

後1つボタンを押せば彼に繋がる…



でも
親指が言うことを聞かない


私の心臓は
今にも壊れそうな位
ドキドキしている



頭の中では
会話のシュミレーションをする。


大きく息継ぎをして
私は
最後のボタンを押して
耳に当てた。

No.94 10/03/16 21:36
サクラ ( mR7jnb )

呼び出し音が聞こえない


「……あれ?」


えっ?
トシ君?


「も…もしもし…?」


「えっ?さくら?」


お互い同じ様なタイミングで掛けたから、呼び出し音がなる前に繋がったらしい。


「ホント気が合うな。」

さっきまでの緊張感も和らいだ。
頭に描いてたシュミレーションとは、程遠かったけど、その方が私達らしくてイイ。



「元気にしてたのか?」

「うん。元気だよ…彼女とは仲良くやってるので?」



「あ……うん。どうだろうな、何か…微妙だよ」


微妙…って言葉に
心が軽くなる自分がいる

「微妙って…?」


「う~ん、何かな。そんな事より、優樹は?元気なのか?」

No.95 10/03/16 21:55
サクラ ( mR7jnb )

「うん。優樹は元気!毎日うるさい位だよ♪」

彼女との事は
上手くはぐらかされた。私も、これ以上深くは追求出来ない。


トシ君に優樹の近況を話した。
優樹の事をもっと知って貰いたい。
愛おしいと思ってもらいたい。
彼女なんかよりも
優樹を大切にして欲しい


「優樹はさくらに似て騒がしそうだもんなぁ。」

ケラケラ笑いながら言う。
彼の可笑しそうな笑い声を聞いてると
私も自然と笑顔になる。




「明日は暇か?もし良かったら、3人で飯でも行こうよ。お祝いしたいし」


「うん。大丈夫だよ」



私達は
明日の約束をして電話を切った。



嬉しかった。
初めて3人で会える。

久し振りに…
トシくんの側に居れる。

No.96 10/03/17 01:53
サクラ ( mR7jnb )

優樹と私は
いつもよりも少し
お洒落をしてトシ君が来るのを待っていた。


「優樹、今日はママとお出掛けだよ。」


「ママ~。」


「ご飯食べに行くよ。お利口さんに出来る人?」


「あぁ~い」

優樹のお気に入り。
~出来る人?と聞くと
得意気な笑顔で片手を上げる。その時、首も傾けるのが優樹流。



「今日も、上手にお返事出来たね。」

そう言って、柔らかい髪の毛を撫でると
優樹は手を伸ばして抱っこをせがんできた。


約束の時間まで
あと少し…
さっきから落ち着かない。


そのまま優樹を抱きあげて、玄関を出た。

No.97 10/03/17 02:04
サクラ ( mR7jnb )

下に降りると
懐かしいトシ君の車が
やって来た。


「今電話しようとしてた所だよ。」


タイミングも合って
出だしは好調♪

トシ君の車には
瑞希が使ってたチャイルドシートが取り付けられていた。


「わざわざ付けてくれたの?ありがとう。」


そぅ言うと
トシ君は優しく微笑んで
私から優樹を抱き取り

愛おしそぅに
ギュッと抱き締めた。



「優樹、誕生日おめでとう。一歳だな!」


優樹は、仕切りに言葉にならないお喋りを続けてる。


チャイルドシートにそのまま乗せると
車は走り出した。

No.98 10/03/17 21:50
サクラ ( mR7jnb )

車が着いた先は
機関車の形をしたパスタ屋さんだった。


「あっ!マァマ!」
優樹はお店を指差して
歓声を上げる。

「優樹、ポッポーだぞ」

トシ君が優しい眼差しで優樹に教える。


「ポポー、ポポー!」

優樹は指差したまま
トシ君の口調を真似する

中に入ると
大きなボールプールや
滑り台、ジャングルジム
子供を遊ばせられる遊具が沢山あった。
遊具を取り囲むようにテーブルと椅子が並べてある。


「うっわぁぁ~!」
優樹は店内をキョロキョロと眺めては声を出した

「このお店凄いね!優樹も、凄い興奮してる。」

「な。優樹に喜んで貰えて良かったよ」



店内は平日の昼間なのに
ママさんグループで大賑わいだった。



私達も席に着いて
料理を注文した。

No.99 10/03/17 22:02
サクラ ( mR7jnb )

「優樹、おいで。」

料理を待つ間、
トシ君と優樹は遊びに行った。


優樹は、抱っこから下ろされると、ハイハイしながらお目当ての遊具に近寄って行く。


2人はボールプールに入り、ボールを投げている。優樹が投げたボールが、自分の頭に戻って来てぶつかるのを、ケラケラ笑い合っている。


私はテーブルに頬杖して2人を眺めた。



幸せな気持ち。
私が求めていた光景がそこにはある。
でも、その光景は
本物ではない。


嘘で塗り固まれた物である事も、ちゃんと知っている。


だから、悲しい気持ちにもなるんだ…

No.100 10/03/18 00:16
サクラ ( mR7jnb )

注文した料理が運ばれて来ると、三人で席に着き「いただきます。」をした。





パスタが食べ終わった頃、突然、店内のBGMが途切れた。

「えっ?何?どうしたんだろう?」


店内もざわめいた。


すると、またBGMが流れ出す。


【happybirthday】だ。

蝋燭が一本立てられたケーキが、ワゴンに載せられて、私達のテーブルに運ばれてくる。
優樹はキョトンとしている。
私は驚いてトシ君を見た
トシ君はニヤニヤ笑う


「優樹、誕生日おめでとうな。」


店員さんがテーブルに置いたケーキに火を付けてくれた。
少しだけ、店内の照明が落とされる。


「優樹、蝋燭ふぅってしてごらん。」

優樹は「ふぅ。ふぅ。」と真似しているが声をだしてるだけで火は消えない。

トシ君は優樹の後ろにまわり、優樹の「ふう。」の声に合わせてそっと息を吹いた。
火が消えると
店内からは「おめでとう。」の言葉と拍手が聞こえた。

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