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運命

レス249 HIT数 129834 あ+ あ-

サクラ( mR7jnb )
11/01/19 23:38(更新日時)

もしも…
もしも神様が本当に居るなら、聞いてみたい。 2人が出逢った事に 意味はあるのですか。 いつかは、この苦しさから解放されますか。 この苦しみしみから 抜け出せるなら 今までの29年間の記憶なんて全部無くしてもイイです。


※初めての小説です。 ド素人なので誤字脱字、文章もメチャクチャかも知れないですが、 宜しくお願いします。

No.1263709 10/03/04 21:10(スレ作成日時)

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No.151 10/03/27 22:03
サクラ ( mR7jnb )

「全然、平気じゃないよ。嫌だし、苦しいよ…」


私は3杯目のバーボン水割りを飲み干し
トシ君の席に背中を向ける様にして真美に話した。


「あんた、本当にバカだね。言いたい事も言えない関係って幸せなの?」

真美が冷たく言い放つ。

背中からトシ君達の笑い声が聞こえる。


私の酔った頭では
何も考えられない。


幸せってどんな気持ち?


分からないよ。私。


「わぁ!何?どしたの?さくらちゃん。酔うと泣き上戸かい?」



挨拶回りをする誠さんが
私の隣に座り、泣いてる私を見て驚いた顔をする。

「誠さぁん、この子にイイ男居たら紹介してやって下さいよぉ。」


真美は泣いてる私を誠さんの方に押しながら
そのまま席を立ち、離れて行ってしまった。

No.152 10/03/27 22:19
サクラ ( mR7jnb )

「…何さ?失恋でもしたのかよ?ん?」

私は首を振る。


「私、結婚してるもん。」

「ほぉ。人妻か!」



よしよし、と頭を撫でながら「でも、人を好きになる気持ちは止められないわな。仕方ないっしょ。」と言って、ニッコリ笑った。



「何それ?意味分かんない」


突然そんな事を言われ
まるで私の気持ちを見透かされてるみたいだった。


誠さんはトシ君の居た席に体を向けた。


「気付かれないと思った?バカだねぇ。さくらちゃん、判りやすいよ、凄く。」

「だってバカだもん。イイんだもん…。」


ムスッと膨れた顔をした私の顔に、一瞬だけ誠さんの唇が触れた。

No.153 10/03/27 22:34
サクラ ( mR7jnb )

【えっ?】

何が起きたのか分からず
でも、誠さんの感触のした頬を手のひらで確かめた。


「おっ!涙止まったろ!」

確かに。
ビックリして涙は止まった
何で泣いてたのかも
一瞬、忘れてたよ。

「じゃ、また後でね。」

誠さんは
可笑しそうに【アハハ】と笑ってバイバイしながら
席を離れて行った。



入れ替わる様に真美が
席に戻ってきた。
「あっ、涙止まってるじゃん!何よ?合コンの約束でも取りつけた?」


ワクワクした目で私の顔を覗き混む。


「戻って来るの遅いんだよお、ばかぁ。」


不貞腐れた顔して呟いた。

No.154 10/03/29 00:11
サクラ ( mR7jnb )

一度泣いたら、
何だか気持ちがスッキリして、真美と再び乾杯した


久しぶりに
女同士で飲んで
バカ話しながら盛り上がった。


すると、千春が近寄って来た。


「さくらさん。私、具合悪いんで先に帰りますね。」


「あっ、うん。」


バイバイと手を振ると
ご機嫌なトシ君が近寄って来た。


「お先にな~、真美ちゃん、今度はゆっくり飲もう!」


私は二人の姿を見て
また、涙を堪えた。

それに気付いた真美が
私の肩をポンと叩いて

「トシ君、ちょっとイイ?」

「千春ちゃん、ゴメンね」
二人にそぅ言うと真美は、トシ君を店の隅に連れて行ってしまった。


「じゃあ、私、先に車行ってるって伝えて下さい」


そう言って千春は店を後した

No.155 10/03/29 19:48
サクラ ( mR7jnb )

千春の背中を見送りながら、何とも言えない孤独感が胸を占めた。


【もぅ、嫌だな。】


言いたい事も言えない
楽しい時を過ごせば過ごすほど、
嬉しい。と思う気持ちが大きければ大きい程に、苦しさ増してくる。


嫌いになれたらいいのに。
離れられたら楽なのに。




「さくら…とりあえず、今日は行くね。」

トシ君が真美と一緒に戻って来た。

「うん、気を付けてね。彼女は車行ってるってよ。」

「…ん。了解。」



軽く手を振る彼を見送った


真美は再び私の隣に座り
さっきの二人の会話を教えてくれた。

No.156 10/03/29 21:13
サクラ ( mR7jnb )

「サクラの事、もし、本当に好きなら、彼女を送った後にでも、こっちに戻って来なって言ったの。」


本当は
もっと聞きたい事もあったけど、まぁ、トシ君の言葉じゃないけど、【言葉じゃ何とでも言える】だから
行動で示して欲しい。



真美はそう言ったらしい。

真美の気持ちは嬉しかった…でも、
「そんな事、無駄だよ。絶対来ないもん。」

期待してしまいそうな自分に向けて言った。
来るわけないから。


「でも、トシ君は来るって言ってたよ。」


来ない。来てくれる訳ない

そぅ何度も言い聞かせた


でも…
来て欲しい。



来て欲しいんだよ。

No.157 10/03/29 21:42
サクラ ( mR7jnb )

気付けば、もぅお店は閉店の時間になっていた。


「今日はイベントだったから店閉めるの早いんだよ」

誠さんが申し訳なさそうに教えてくれた。


時刻はもうすぐ1時になる

終電も、もう無い。


「真美、付き合わせてゴメンね。どぅする?タクシーで帰る?」


ん~。と考えた後
「始発まで待とうか。」
と、言ってくれた。


「じゃあ、カラオケでも行こうか!」

後ろで聞いていた
誠さんが提案してきた。


「うちのイチオシ連れて行くからさぁ」


「え~?!」
と言う私をよそに
真美は
「マジで~!オッケー!」
と満面の笑みを浮かべていた。


近くのカラオケに真美と先に行って待ってる事にした


「楽しんだ方が携帯気にしなくて済むでしょ?」


私の握りしめた携帯を指差して真美は微笑んだ。

No.158 10/03/29 21:55
サクラ ( mR7jnb )

誠さんが連れてきたイチオシ君は[ケイちゃん]とゆう24歳の調理師さんだった。


カラオケでも、沢山飲んで沢山歌った。
久し振りに笑ってる。
楽しい。

なのに、携帯電話を
離せずにいる私。


こんなに楽しいのに。


こんなに楽しいから、
トシ君が居たらもっと楽しいはずなのに…



「サクラちゃん、携帯ばっかり気にしすぎ!お前も歌え~!」


マイク片手に
誠さんが叫んだ。

「はぁい。ごめんなさぁい」


勢い付けようと
テーブルにあったビールを一気に飲み干した。

No.159 10/03/29 22:04
サクラ ( mR7jnb )

気付くと私は、誠さんの膝枕で眠っていた。


「えっ。私…寝てた?」


誠さんは携帯でゲームをしていた。


「おぉ!やっと起きたか」

誠さんは私の声に気付くと、携帯を閉じて、私の顔を覗きこんだ。



室内は私と誠さんしか居なかった。


「ねぇ、真美は?」


ズキズキする頭を抱えて私は体を起こした。
完璧二日酔いだ…


「真美ちゃんは啓介が送って行ったよ。」


「そっか。ごめんなさい。私…」


「あぁ、別に。大丈夫だよ。気にしなくて。」


そう言って、私の手にお水を持たせてくれた。

No.160 10/03/30 18:29
サクラ ( mR7jnb )

手渡された水を
一気に飲み干した。


喉が渇いて仕方ない。


「イイ飲みっぷりだなぁ、もぅ一杯飲むか?」


「うん。」と頷くと、フロントに電話してくれた。


私はテーブルに置かれたままの携帯に手を伸ばす。
時間はすでに、朝の4時になっていた。
【ヤバいな…。】

メールが届いていた。


一件は真美から。


『おぃ!酔っ払い!先に帰るけど、誠さんと変な事すんなよ~♪』


【変な事って…】
思わず苦笑する。


もう一件はトシ君から。


もしも迎えに来てたら、どうしよう。
連絡取れなくて困ってるかも知れない。

一瞬、胸の鼓動は早くなり携帯を持つ手が震えた。


受信は3時になっていた。
一時間近く経ってる。
どうしよう…


そう思いながら、
メールを開いた。

No.161 10/03/30 18:46
サクラ ( mR7jnb )

『サクラ、ゴメン。今日はやっぱり行けないや。この埋め合わせは絶対するから』


【分かってたけどね。】


強がりだと、自分でも分かってるけど。
強がらずには居られない。

メールを見るまでの
さっきまで心配していた自分が、本当に恥ずかしい。

期待してしまった自分が
情けないんだ。
情けなくて、みじめで
消えてしまいたくなる。


静かに携帯を閉じた。


ふと見ると
誠さんと目が合った。


「待ち人は来るのかな?」

「フフ…意地悪な事、聞くんだねぇ。」



それだけ答えるのが
私には精一杯だった。

No.162 10/03/30 19:08
サクラ ( mR7jnb )

「んっ、水飲めば?」


届いた水を受けとると
「ありがとう。」と言って一口飲んだ。


「…さて。帰りますか?家まで送るよ。」


「ありがとう。でも、始発で帰るから平気だよ。」


「危ないから、送る!」


そう言われて
ほら、と上着を渡された。


会計を済ませてエレベーターに乗り込むと
「酔っ払いは危ないからねぇ。」と言いながら
私の手を掴んだ。


誠さんの手のひらの感触も、その温もりも
トシ君のとは違う。


本当に欲しかったのは
いつものトシ君の手のひらだった。


でも、私は誠さんの手を拒む事は出来なくて、そっと握り返した。

No.163 10/03/30 20:26
サクラ ( mR7jnb )

車に乗ると
芳香剤の甘い匂いがした。

トシ君の車とは違う香り。

何をしても
トシ君を想ってしまう。

比べてる…とは違う。
今、一緒に居るのが彼ではないって確かめる作業みたいだった。


家までの道を説明すると
誠さんの車は走り出した。

車内では、何気ない会話が続く。
誠さんは、今年30歳、彼女とは3ヶ月前に別れたばかりだって言ってた。

「やっぱり、夜働いてると、生活のリズム合わなくてねぇ。」
そんな事をぼやいてた。


私はパチンコ屋でバイトを始めた事や自分の近況などを軽く話した。


家の前に着くと
誠さんとアドレスの交換をしてバイバイした。

No.164 10/03/30 21:05
サクラ ( mR7jnb )

次の日、トシ君から
電話が来たけど
私は、初めて彼の着信を無視した。

それは、さっきから続いてる誠さんとのメールのお陰かも知れない。



今はまだ話したくない。


誠さんとのメールは
辛い事も苦しむ事もない。
お互いの話しや
下らない話しをするだけでイイから、楽しかった。


トシ君からの電話も
メールも一切を無視した。
そんな日が暫く続くと
次第にトシ君も焦りを見せ始めた。


着信の回数も増えてきた。

それでも出ない。

…出ないんじゃなくて
出れなかった、の方が正解かも知れない。


話をすれば
また丸め込まれる。
そして又、始まる、辛い日々。好きな気持ちは変わらない
だから、辛いんだ。

No.165 10/03/31 19:07
サクラ ( mR7jnb )

いつもの様にパチンコ屋に出勤した私。


今日はホールを巡回する。
私の働く店では
女性でも、ローテーションでホールに入る日や
カウンターで景品交換業務の日があった。


店内の光るコールボタンを追いかけながら
ひたすら歩き回る。


汗だくになりながら
巡回していると
突然背後から腕を掴まれた。



驚いて振り返ると
スロット台に誠さんが座っていた。


「もぉ、ビックリするんですけどぉ~。来るなら連絡してよね~。」


私を驚かせた事に
満足したように
ケラケラ笑っている誠さん

「何回も前通ってんのに全然気付かないんだな!お前、巡回してる意味ないだろ、それ。」



確かに。
考え事しながら
歩いてたからな…。

No.166 10/04/01 19:49
サクラ ( mR7jnb )

「てか、誠さん、どうしたの?今日仕事休み?」


「久しぶりの休み!休みなのに暇でね~」


しばらく、その場で話していたけど、仕事中という事もあり、私は誠さんの側を離れた。


何となく、意識してしまって誠さんの居るスロットゾーンは避けて巡回する私。

コールランプが光った先は誠さんのゾーン。
一番近くを歩いてた私が
ランプを取りに行く。


ランプの主は誠さん。


「どうしたの?」


「お前、全然来ないんだもん。わざと避けてるべ。」

「わざとじゃないけど~」

苦笑いしながら嘘ついた。

「あっそぅ?ふぅん、まぁいいや。目押しして、これ。」


私は試されているんだろうか。目押し位、出来るだろぅに。

No.167 10/04/01 21:04
サクラ ( mR7jnb )

台の隣に屈むと

「仕事終わったら、ちょっとお茶しに行こうよ。」
と誘われた。


優樹の保育所のお迎えまでには一時間位、余裕がある。


「ちょっとならイイよ。」

仕事終わったら電話するね。と約束して仕事に戻った

誰かと一緒に居れば
トシ君の事を考えずに済む
1人で居ると
トシ君の事ばかり考えてしまうから。



仕事が終わり
私達は保育所の近くのコーヒー屋さんに入った。

No.168 10/04/01 21:40
サクラ ( mR7jnb )

誠さんと、他愛のない話しをして居ると
突然、誠さんの顔色が変わった。

「どしたの?」

誠さんは、一点を見つめている。
視線の先に目を向けると
そこには、
トシ君が立っていた。

今日はトシ君のお店も定休日だったんだ…



「お前、何やってんだよ?」

苛立ちを露にしたトシ君が私達の方へと歩み寄る。


やましい事は何もないのに言葉が出て来ない。


「何でお前が誠さんと二人で居るんだよ?」

私の前で足を止める


怖くてトシ君の顔を見る事が出来ない。誠さんをチラッと見ると、私達のやり取りを腕を組みながら見ていた。

No.169 10/04/01 21:57
サクラ ( mR7jnb )

「トシ、何イラついてんだよ?まぁ、座れって。」


誠さんは、トシ君の腕を引っ張り私の隣に座らせた。

掴まれた腕を振り払うと
私と誠さんの顔を交互に見ながら、大きなため息をついた。


「サクラ?お前、俺からの連絡無視して、何やってんだよ?」


「違うの…。今日、たまたま、お店で会ったから…」

「トシ~、言っとくけど俺達、今の所、やましい事は何もないよ。」

誠さんが、この状況の説明をしてくれた。

ただ頷くだけだったトシ君の顔に安堵の色が見えてきた。


「でも、まぁ、これから先は分からないやな。」


「「えっ?」」


唐突な誠さんの言葉に
トシ君と私の二人の声が被ってしまった。

No.170 10/04/02 17:47
サクラ ( mR7jnb )

「それは、どうゆう意味っすか?」


再び、敵意を剥き出しにしたトシ君に誠さんは余裕たっぷりの態度で


「俺は、サクラちゃんの事、好き。もっとサクラちゃんを知りたいと思う。」


…全然、そんな事、言った事無かったのに?
そんな素振りすら感じた事無かったけど…?



「誠さん、コイツ、旦那だって居るんですよ?」


「知ってるよ?俺は、離婚するまで待つつもりでいたけどね。」


何でだろう…
この違和感。
誠さんが私を好き?



トシ君はしばらく考え込みながら、頭を抱えて
消え入りそうな声で言った

「誠さん…コイツだけは止めて下さい。お願いします。」

No.171 10/04/02 18:48
サクラ ( mR7jnb )

「それは可笑しいんじゃねぇか?お前には千春ちゃんが居るだろ?」


「………。」


返す言葉がないのか黙り込む。


私は何て言って良いのか分からない。

誠さんは、そんな私達を見ながら苦笑する。


「サクラちゃん、今はまだ、俺の気持ちに答え無くていいからさ。」

「トシ、お前は中途半端な事してねぇで、よく考えろよ。んな事してっと両方失うぞ。」


私は誠さんの方を向いて
「分かった。ありがとう」
とだけ答えた。
トシ君は、何かを考える様に、ただ窓の外を見ているだけだった。


暫く沈黙が続いて誠さんが口を開く。


「そろそろお迎えの時間だろ?帰るとするか。」


誠さんは、席を立ちながら「また連絡するな。」
と言ってお店の出口に歩いて行ってしまった。


残された私達は
暫く無言のまま
その場から動けずにいた。

No.172 10/04/02 21:25
サクラ ( mR7jnb )

さりげなく時間を見ると
優樹のお迎えの時間が迫っていた。


「トシ君。ゴメンね、私、もう行くね。」
そう行って席を立つわたしの左手を、ギュッと掴んだ。



「俺…サクラの事、好きだから。大切だから…」


「うん。」
と頷いて、掴まれた手からゆっくり離れて
私は店を後にした。


車に乗り込むと
ため息が漏れた。


優樹を迎えに行くと
「ママァ~おかぁり!」
と、両手を広げて駆けて来た。私もしゃがんで優樹を抱き止めた。


優樹は私の顔を見上げて
ニコニコ笑う。


笑った顔がトシ君によく似てきたね…

優樹の頬に軽く触れる。

柔らかくて温かい。


私の大切な宝物。


トシ君と私の大切な…

No.173 10/04/03 00:26
サクラ ( mR7jnb )

私は優樹を乗せて
車を走らせた。


このまま帰る気分にはなれなかった。


しばらく走ると後ろのシートに座る優樹が騒ぎ始めた。

「優樹、どうしたの?」

「ママァ、ごはんは?」

時計に目をやると、いつもの夕飯の時間になっていた。

「よし!ご飯にしよっか!」


ファミレスに入り、二人で夕飯を食べる。


「お~しいね!」
優樹は顔中ケチャップまみれにして、満足そうにオムライスを食べている。


「ゆう君、顔がきっちゃないねぇ。」
おしぼりで顔を拭いていると、何故か涙が出てきた。


優樹。
ママは優樹を幸せにしてあげれるかな…


二人で居ても幸せなのに。
なのに、どうしても…

どうしてもママはトシ君と一緒に居たいんだ…

離したくないの。

あの手を…。

No.174 10/04/06 17:46
サクラ ( mR7jnb )

車を走らせて向かった先は、実家の近くにある河川敷。


そこは私にとっての原点。

父が母と再婚して、この土地に来た。

家族で遊びに来た事もあるお正月には凧上げもした。友達と泥だらけになって
走り回った。



年を重ねると共に
その場所に向かう時は
嫌な事がある時が多くなっていた。



お母さんに怒られた時
家に居場所が無かった時
友達と喧嘩した時や
失恋した時。


自転車に乗ってここまで来た。いつもの場所に向かい芝生に寝転びただ流れる川を見る。


川の流れが
私の心のモヤモヤも
一緒に連れて行ってくれる

どこまでも続く空が
私の悩みなんて
ちっぽけだと
笑い飛ばしてくれた。

No.175 10/04/06 18:44
サクラ ( mR7jnb )

「優樹、降りようか。」


車を停め、チャイルドシートに手を伸ばして私は優樹に声を掛ける。


さっきから鳴りやまない携帯電話は車内に置き去りにする。


優樹の手を引いて
私はお気に入りの場所まで歩いて行く。


すっかり日が落ちた河川敷には、川の音と草木が揺れる音だけが聞こえる。


「んしょ、んしょ。」
と掛け声を出しながら
優樹は丘を登る。


てっぺんまで登ると、二人で座って川を眺めた。


真っ黒に続く川。
見ていると、そのまま自分も吸い込まれそうな錯覚に陥り、優樹の手を強く握り締めた。

No.176 10/04/06 20:06
サクラ ( mR7jnb )

私は、どうしたいのかな。


【幸せになりたいよ】



幸せって何…?



【笑いながら食卓を囲んで優樹の成長を話したり、今日の出来事を話したい。】


今のままじゃダメなの?
本当に離婚するの?
トシ君の事を抜きにしても、離婚する?



【毅にも、自分の子供をちゃんと抱いて貰いたい。幸せな家庭を築いて欲しい。でも、その相手は私では無いんだ…】



トシ君とは、どうしたらいいの?今、また戻っても何も変わらない。
また、耐えるだけ。



あの日、私の戻って来なかったのが彼の本音なんだろよ。私より千春を選んだ。


【このまま、戻らない。ちゃんと前に進んでから。】

No.177 10/04/08 20:28
サクラ ( mR7jnb )

自問自答を繰り返した


本当は

何が正しいのか

答えなんて分からない。



ただ、今を変えたい。


彼にも変わって欲しい。


二人で変えて行かなければ。




家に着く頃には
チャイルドシートから
優樹の寝息が聞こえて来た


私は車を路肩に停め
携帯を開いた。




トシ君からの着信とメールが沢山来ていた。


私は、メールは見ないでそのまま消した。


見たらきっと、
私の決心は鈍るから。

No.178 10/04/08 21:33
サクラ ( mR7jnb )

「…もしもし、トシ君?」

私は、自分の決断を告げる為に電話を掛けた。


「さくらっ?何処に居るんだよ、今!」


「トシ君、ゴメンね?…へへ…まぁ、落ち着いてよ。」


「ふざけんなよ!俺、心配したんだぞ。連絡取れなくて!」



こんなに感情的に怒られたのは初めてだったかも知れないね。何だか今、堪らなく愛しく思うよ。



「うん。ゴメンね。ゴメン…ゴメン…ゴメンなさい」

鼻の奥がツンとする。


「…トシ君…トシ君…」


名前を呼ぶだけで苦しくなる程、貴方が好きです。

「もう、分かったから。謝るなよ。」



「ゴメンね…トシ君…、ゴメンね。」



「止めろよ!謝るなよ!」
トシ君には、もう伝わってるね。ゴメンね。の本当の意味が。



「っ、ひっ…ご…ごめ…」
「ヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロ!!」


私、嗚咽混じりで上手く話せないよ。

でも聞いて?
ちゃんと聞いてね…。

No.179 10/04/08 21:56
サクラ ( mR7jnb )

「っっ、ひぃぃ、うぅ」


圧し殺した嗚咽が
甲高い不快なトーンとなり私の中から溢れだす。



伝えたい言葉があるのに
喉の奥につっかえて出てこないよ。
痛む喉を押さえて
バンドルで頭を支えて
私は携帯を耳に当てたまま私はただ、「ゴメ…」と謝る事しか出来なかった。



「ト…トシ…君?」


「うん?」


優しい声で返事をくれる


電話の向こうで
トシ君も泣いてる。


鼻を啜る音、
溜め息と一緒に漏れる
微かな水気。



「トシ君?」

「うん?」

大好きだよ…


「トシ君。」

「うん。」

離れたくないよ。


「ト…シ…く…」


このまま終わったりしないよね?
もう一度、今度こそ、
貴方の恋人として
胸を張って並んで歩いて行けるよね?



私は貴方だけのものになりたい。
だから貴方も…
私だけのものになって?


そして、二人で
優樹に
沢山の愛と笑顔を
注いで行こう…?

No.180 10/04/08 22:14
サクラ ( mR7jnb )

「…へへっ。トシ君?私ね、トシ君の事が本当に好きなんだよ。」


本当の終わりを予感した時、人は何故か、とても冷静になる。
感情をぶつけ合えたら
まだ修復は可能なのかもしれないね。



「…さくら…?お前、誠さんと…?」



トシ君は、まるで子供と一緒だね。
オモチャを取られた子供と同じだよ。


例え、飽きてた玩具でも、人に取られると急に惜しくなっちゃうんだよね。


分かるよ。


分かるから…

「トシ君、私と別れて下さい。」


「…。」


「ゴメンなさい。このままじゃ私、ダメになる。トシ君の事が好きだから、だから毎日苦しいの、悲しいの。」



「俺だって、同じだ!毎日苦しいし、悲しいよ!それに、俺は…」


「だから私も…!」


トシ君の言葉を遮る様に
話を続ける。

「私もキチンと離婚する!自立するから…だからトシ君もよく考えて?本当に私の事を想ってくれるなら別れて?」

No.181 10/04/09 18:15
サクラ ( mR7jnb )

好きだから、別れを選ぶ


ずっと側に居たいから
今は離れる。


もしも、お互いが
お互いにとっての運命の相手なら、また必ず繋がると思うから。




「私と…私と、離れて、それでも彼女と別れても良いと、そう思うなら、その時はちゃんと別れて欲しい。」



私も、貴方と離れている間に、ちゃんと決着つける。


そう遠くない未来に
三人の幸せな姿がある事を願いながら…。



「俺は、嫌だよ。何で今なんだよ?今、離れて…お前は…本当は俺より…誠さんを…」


このタイミングで別れ話しなんて、確かに誠さんの事を気にするトシ君の気持ちも分かる。





「トシ君?今も変わらず、私は、トシ君が大好きだよ。」



「じゃあね、バイバイ。」


返事を聞かずに
私は電話を切って
携帯の電源を落とした。



私はバンドルを握り直し
涙を吹いて
車をスタートさせた。



このまま、後は
走り続けるだけ。
前だけを見て。

No.182 10/04/12 15:52
サクラ ( mR7jnb )

私と毅は離婚する事は簡単だった。

私が出て行く準備が整うのを
毅もずっと待っていたのだから。


トシ君とサヨナラしてから
1か月近く経った日曜日。


その日、お互い仕事も休みで
珍しく、毅も家に居た。

リビングでくつろぐ毅の横に
そっと座って、私は話始めた。



「毅、今までありがとう。お金、ようやく貯まったから。」


「へっ?」

突然の話題に状況を理解出来なかったようで
気の抜けた返事をする。


私は、そんな毅に笑いかけながら

「離婚しよう。」

と言った。


それは、まるでプロポーズの様な
前向きな響きになった。

悪くない・・
前向きな離婚。
お互い憎んでる訳ではない。
お互い幸せになる為に
別々の道を歩いていくんだ・・


「お前、優樹はちゃんと育てられるのか?」


「大丈夫。必ず、幸せにするから。」

私は胸を張って答える。

「・・・分かった。」

少々不安そうな顔をしながらも
毅も優しく微笑んでくれた。

No.183 10/04/12 20:14
サクラ ( mR7jnb )

「お金の事だけど…」

毅はそう切り出すと、さっきまでの笑顔を消して真面目な面持ちで私の方に向き直った。


「悪いけど俺、養育費も慰謝料も出せないよ…」



当然、私も出して貰うつもりは無い。
そんな事、言う資格は
私には無いから。



「その理由は、お前も分かってるよな?」


毅は気付いてるね。
トシ君の事も
きっと優樹の事も。


「うん。分かってる。」


毅の真っ直ぐな瞳を直視出来ず目を反らして俯いた。

この人は、今まで
どんな気持ちで優樹と過ごしていたんだろう…


私が、優樹を預けて出掛ける時、何を想って見送ってくれてたんだろう。


私は今まで、どれだけ、
この人を裏切ってきたんだろう。

優しさに漬け込んで
騙し続けていた自分。


「今まで、ゴメンなさい。今度こそ…今度こそ、幸せになってね。」


ゴメンなさい。なんて言葉じゃ、私の罪は消えない。
分かってるけど
謝りたい。



ゴメンなさい。

ゴメンなさい。

ゴメンなさい。

ゴメンなさい。

ゴメンなさい。

No.184 10/04/19 21:56
サクラ ( mR7jnb )

一度は本気で愛した人


幸せな家庭を築く為に
同じ道を歩いてたはずだったの。


目指すゴールを見失って
気付いたら
お互い別々の方向に歩き始めてしまった。



いつからか
向き合う事から逃げて
お互い見ない振りが多くなって来てた。


夫婦として一緒に過ごして来たのに
私達は、お互いの事を全然解り合えなかった。




たくさん後悔はある。


でも、もう毅とは
一緒には生きて行けない。


【幸せになってね】


そう祈りながら

私は優樹の小さな手を握り
3人で過ごした家を

後にしたんだ…



自分の足で一歩ずつ…


新しい道を

歩き始めた。

No.185 10/04/22 16:43
サクラ ( mR7jnb )

「もしもし?」


「サクラちゃん?久しぶりだねぇ。」



「うん、今日、ちょっと時間ある?」



私は誠さんに確かめたい事があった。
あの日の誠さんからの告白

私はそれには応えていない

あの日から
私はトシ君からも
誠さんからの連絡も
一切無視して来た。


もしも、話をしていたら
きっと又、何も変える事無く私はその場所で甘えてしまう…そう思った。


1人になって
自分で考えて答えを出したかったから。


「じゃあ、後でね。」


私は誠さんと
会う約束をして電話を切った。

No.186 10/04/25 21:36
サクラ ( mR7jnb )

約束の時間より
早く待ち合わせのカフェに到着してしまった。


「いらっしゃいませ。」

平日の昼間なのに
店内は思ったよりも込み合っていた。
私は先に席を確保しようと店内を見渡すと、窓際の席に誠さんの姿があった。


久しぶりに会った誠さんは、少し痩せた様に見える。
私は黙って誠さんの席まで歩いて行く。
まだ私の存在に気付かない様子でタバコを吸いながら窓の外に目を向けたままだ。


「誠さん!!」


声を掛けると
勢いよく後ろを振り返った

「わぁっ、ビックリした!」


「驚かすなよなぁ~。」

と言いながら、誠さんは前と同じ笑顔を私に向けてくれた。


「へへっ。ゴメンね~」


そう言って、誠さんの
向かいの席に座った。


「お前、元気してたのか?ちょっと痩せたな?」


「あ~、痩せたかなぁ?でも誠さんの方が痩せたよ」

「そっかぁ?…あっ、何飲む?俺買って来るよ。」


「あぁ、自分で行くよ。大丈夫!誠さんは、まだあるの?」


誠さんのカップを覗くと
コーヒーは空っぽになって居た。

No.187 10/04/25 21:57
サクラ ( mR7jnb )

「俺も買うから、俺が行くよ。」


そう言うと先に席を立ち
私の注文を聞いて歩き出した。
その後ろ姿を目で追いながら、この後、彼に話す事を、ぼんやりと考えていた。

誠さんが、私を好きだと言ってくれた事。
それは本当だったのか。

あの場の流れで
トシ君を挑発したかっただけなんじやないのか…


誠さんは何を考えてるのか

ずっと確かめたかった。




「はい。お待たせ!」


温かいコーヒーのカップを2つ、静かにテーブルの上に置いて、誠さんは席に着いた。


新しいタバコに火を着け、深く吸い込む。


私は、どう話を切り出して良いのか分からず
カップを握りしめたまま
最初の言葉を探した。


「…サクラちゃん、トシとも連絡取ってないんだって?」


沈黙を破ってくれたのは
誠さんだった。


「うん。最後に話したのは…」



最後にトシ君と話したのは別れ話の3日後。


仕事が終わって
駐車場に歩いて居ると
私の車の前でトシ君は立って居た。
足元には無数のタバコの吸殻が捨てられていた。


驚いて歩みを緩める私を
トシ君は目を逸らさずに
ずっと見つめ続けてた。

No.188 10/05/02 14:23
サクラ ( mR7jnb )

「・・・よぅ。」


私の方に向かって
ゆっくり歩き出した彼が
力なく笑ってみせた。

「ゴメンな。待ち伏せなんかして・・」


至近距離までやってくると
私の右手を優しく
彼の左手が包んでくれた。


「お前と・・ちゃんと話したかったから。電話も出てくれないし。」

私はトシ君の顔を見る事が出来なくて
触れられている自分の右手を
ただ、ずっと見ていた。


「電話・・無視してごめんなさい。」

たったそれだけの言葉を口にしただけなのに
何故か胸が苦しくって
涙が出てくる。


こんな時・・涙なんて見せたくないのに。


「・・今、少しだけ・・話す時間くれない?ちゃんと・・お前に、気持ちを伝えたいんだ。」



私は俯いたまま
大きく頷いて、左手で涙を拭った。

No.189 10/05/02 14:55
サクラ ( mR7jnb )

駐車場に停めてある私の車に乗って
そのまま、その場で話をする事にした。


「サクラ・・?ちゃんと俺を見て?」


いつまでもトシ君の顔を見れない私の肩を
少しだけ強く、自分の方に向かせようとした。



俯いたままの顔を
少しずつトシ君の視線に合わせて行く。

視線がぶつかる瞬間に 激しく胸が苦しくなった。


ようやく向き合った私に
優しく微笑んでくれた。

トシ君の手は私の肩を離し
胸元まである私の髪の先へと移動した。



「俺は、お前の人生に居たらいけない人間なんだよ。」


突然、そう呟いた。

「何で・・?」

私にはその言葉の意味が分からなかった。

No.190 10/05/02 14:57
サクラ ( mR7jnb )

[おれは・・サクラの笑った顔を沢山見たいと思った。・・俺が・・お前を笑わせてやりたっかったんだよ。」


・・そぅだったね。


【サクラは笑ってるけど、心は笑ってないな。】

よく、そんな事言ってたね。

「実際、お前の泣いてる顔とか・・・俺のせいで苦しめてばかりだった。」


「そんな事ないよ・・私、トシ君が居たから・・乗り越えられた事、沢山ある。」


実家とのイザコザ

優樹のこと・・

沢山相談した。
その度にいつも・・


私の欲しい答えへと導いてくれた。
トシ君は私の言葉に力なく笑って
俯き黙ったまま「そんな事無い。」と 首を横に振った。

No.191 10/05/02 15:13
サクラ ( mR7jnb )

「俺は・・大切だと思うモノを・・守りたいって思うモノをいつも壊して失くしてしまうんだよ。」


俯いてるトシ君の頬に
一筋の涙が伝う


「大切だから、失うのが怖くって、どこかで保険を掛けてしまうんだ。」


人を好きになればなる程・・
失った時の傷は大きい。
好きな気持ちと、怖い気持ち
信じる気持ちと、疑う気持ち

正反対の想いなのに
いつも比例して増えていくんだ。


【永遠】なんて言葉を簡単に信じれる程
私達は純粋じゃなくなってしまった。


「トシ君の言ってる気持ちは、私も分かるよ。」


痛いほどに分かるよ。

愛し方が分からなくて
でも、愛して欲しくて
強がる言葉の裏にある、
本当の気持ちに気付いて欲しいって
何で気付いてくれないのって
一人でもがいているんだよね。


本当は寂しくて仕方ない。

だから・・

一人になるのが怖いんだよね。

No.192 10/05/03 22:13
サクラ ( mR7jnb )

私は、涙を流すトシ君を見るのが辛くなって
助手席に座るトシ君の体をそっと抱き締めた。


「ゴメンな。お前の事、沢山傷つけて…」


「お前は、俺なんかより誠さんと一緒の方が幸せになれるよ…」


私は抱き締める腕に力を込めた…


「止めてよ…もぅ、終わりみたいな言い方…」


私は別れたいんじゃない。
これからも…
ずっと一緒に居たいから
だから、今だけ離れるんだ

3人で歩く未来の為の
準備期間なんだよ…

No.193 10/05/05 22:05
サクラ ( mR7jnb )

「私は…トシ君と、ずっと一緒に居たいんだよ…だから、今は離れるんだよ…」

私は、あなたの隣で
堂々と並んで居たいの。


「だから…トシ君も…私の事、ちゃんと彼女として出迎えて…?」


千春と別れて…


私を選んで…


私には貴方しか居ない。


貴方にも、私しか居ないのよ…


こんな男を愛せるのは


私しか居ないんだから…



今まで沢山、傷付け合って、何度も別れ話をした。


それでも、
結局、こうして側に居るのは…それがお互いにとっての運命の相手だからなんだよ。

No.194 10/05/05 22:23
サクラ ( mR7jnb )

その日、トシ君は
「分かった…ありがとう。」と言って、私達は別れた。




その日から、今日まで
連絡は取らずに居た。


取らずに居たから
ココまで来れた…


「誠さんは…トシ君と、連絡取ってたの?」


「あぁ…何回か店に来た。アイツも荒れちゃってね」


そぅ言うと、まるでその光景を思い出したかの様に「ハハッ」と笑った。

No.195 10/05/05 23:14
サクラ ( mR7jnb )

「そっか…」


私はコーヒーを口に運び
荒れてお酒を飲むトシ君を想像した。


いつも仲間に囲まれながら陽気に飲む姿しか見てないから、想像も出来ない。


でも、私の影響で
もし、彼が…荒れてしまったのなら…それだけ私の存在は必要だったのかも知れない。そんな事を考えたら、自然と頬が緩む。



「俺さ…言わなきゃいけない事があるんだわ。」


誠さんの言葉に
現実に戻される。


「えっ?何?」


もう一度コーヒーを飲み
私は静かにカップを置いて誠さんに視線を戻す。

No.196 10/05/06 00:00
サクラ ( mR7jnb )

「俺、今さ…」



今…



「…今、千春と…」



千春と…?



「千春と付き合ってる。」



!!



「どぅゆぅ事?」



今聞いたはずの言葉が
まるで初めて教わった英単語の様に、私の頭に流れ込んできた。
その言葉の意味が理解出来ず、
私の問いが酷く間抜けに響いた。



「作戦勝ちだよ。」


そう言って得意気に笑い
悪戯にブイサインをした。

No.197 10/05/06 15:40
サクラ ( mR7jnb )

「俺さぁ、本当は千春の事が好きだったんだよな。」

・・・なるほど。


「でも、人間って、不思議なもんでさぁ・・飽きてた玩具でもさ、他人が欲しがると急に手放したくなくなるんだよな。」


トシ君は、まさにその典型だ。


「もし、あの時俺が、千春を好きだって言ったらどうなる?間違いなく、トシはお前を捨てたね。」


あの状況で・・
そんな事考えてたのか・・

いや・・


違うか。
もっと前から計画していたんだ。


私達は誠さんの思い描いたストーリーに沿って
ただ動かされていたんだ。


この少年の様な笑顔に隠された
誠さんの闇の部分を見た気がした。

No.198 10/05/06 15:54
サクラ ( mR7jnb )

「凄いね。よくそんな最低な考え思いつくね。」


本気で怖いと思った。

こんなにも完璧に人を騙せるんだと・・
全然、分からなかった。
誠さんがそんな事を考えていたなんて。

「俺が最低?ははっ。面白い事言うんだね。」


いつもと変わらない笑顔のはずなのに
憎しみと軽蔑が入り混じった空気を感じる事が出来る。


「最低なのは、俺も、お前も、トシも一緒だろ。」

私たちは自分の欲望の為に
沢山の人の気持を踏みにじってきた。

大きな欲望の影に隠れて
傷つけた人の涙があることを
私は分からなくなってた・・


いや・・


分かりたく無かっただけか・・。

No.199 10/05/06 17:03
サクラ ( mR7jnb )

「俺は俺のやり方で欲しい物を手に入れただけ。」


「…そうね。」

本当に欲しい物を手に入れる為に、正しいやり方も
間違ったやり方もないのかも知れない。

…少なくとも私には
誠さんのやり方を避難する資格などない。



「まぁ…何にせよ…早いトコ、トシに連絡しな。あいつ野放しにすると、今度こそアイツ戻って来ねぇよ?」



誠さんはその言葉を残して店を後にした。


私は1人残された店内で
冷めたコーヒーをぼんやりと眺めていた。

No.200 10/05/06 19:23
サクラ ( mR7jnb )

家に帰ってからも
まだ誠さんの言葉が離れない…



【例え飽きた玩具でも…】


飽きた玩具…


分かってる。
それが自分の本当の姿。


遊び尽くして
もぅ、新しい感動もない。

…でも…
確かに新しい感動は無くたって…愛着や情で捨てれない玩具だってある。


新しければ良いってもんじゃないでしょ…


そぅ…


そぅだよ…!


私は自分自身に言い聞かせていた。



私は優樹を寝かしつけた後で、トシ君に電話を掛けた

「もしもし…」


「トシ君?サクラだよ…」

久しぶりに聞くトシ君の声に胸が高鳴る。

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