月下美人
結婚なんかしない俺の人生には。
……★ナルシスト★……
15/01/07 01:13 追記
テーマ「絆」です。
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出世する男には要らない。
家庭なんて必要ない。
女なんて腐るくらいいる。
金を出せばいくらでも抱ける。
そんな価値のない人生を過ごす事が無駄。
いつも真新しいスーツを着て、女をはねのけて来た。
男のプライドなんて言われたら仕方ない。
格好つけではない。
ただ必要性がないからだ!
飲み歩き好きな時に好きなタイミングで女を抱く。
仕事仲間では俺は一目置かれている。
住宅ローンだの子供の学費だの困っている奴は沢山いる。
「岩田が羨ましいょ」
だから無駄な時間を使うからだょ。
気楽に過ごせば苦労なんて1人分で済むんだ。
俺は岩田俊介 32才。
高校生から未だ尚青春している。
遊びも仕事も全て俺は楽しい。
女の数も半端じゃなぃ。
全て遊びの女ばかり、当然結婚を意識した女はいない。
独身ほど楽しい毎日はない。
同期でも一番に出世した俺。
何も困る生き方をしていない。
最近お袋に結婚の話しを良く急かされる。
俺はしない、結婚なんて。
妹はすぐに寿退職をして、立派な母ちゃんしてる。
姪は可愛い、俺の小さな彼女だから。
血が繋がってるからやたら可愛い。
姪が話せるようになれば俊介と呼ばすつもり。
姪の名前は「めんま」ひらがなで可愛い。
「めんま」だけが俺の恋人。
めんまの為なら何でも買ってあげる。
「お兄ちゃん、甘やかさないで」と言われながら、めんまにご機嫌伺いに妹の家に立ち寄る。
馬鹿!
お前に会いに来たんじゃない!
めんまに会いに来たんだ!
妹まで勘違い女、困った生き物だょ。
女は。
一応タレント事務所のスタッフで沢山のタレントを抱えた会社に席を置いている。
最近特に注目する女優は「長谷部優」この女優が俺の一押しだ!
彼女の演技力は光ってるが、なかなかお声がかからない。
素敵な女優なんだが、橋口ユウキ君も絡んだ仕事している。
世の中の視線はテレビなど活躍している人が注目されるが、カラオケのPVやアーティストのDVDなどで頑張っているタレントさんも多い。
俺の仕事は所属事務所のタレントを売り込む仕事である。
影武者的な役割。
当然女性との絡みも多く、沢山機会はある。
恵まれているっちゃいる仕事である。
大学を出て難問を突破し、今の位置に属してる。
大学の同級生に羨ましいと言われるが、反対に頑張っているタレントのフォローも必要だ!
ファミレスである女優さんの悩み事を聞いている。
「岩田さん、お仕事、ないですか?」
彼女の顔色も見つつ話してあげないといけない。
「エキストラは、嫌だょね、一応、なんだけど、」
「はぁ、エキストラ、ですか?」
「君は可愛いし、もう少し待って、仕事探しておくからさ!」
内心は仕事などない。
でも頑張っている女優さんを慰めないと。
上の天井が決まれば、なかなか、空きは回ってこないんだ、この仕事は。
一応これでも役職つきなんでスーツでの行動。
こんな感じの俺の仕事。
皆さん知らない所で頑張っているタレントさんは多い。
今のご時世タレント志願者は溢れるくらいいるから。
そこら辺の女はみな俺にすれば叶わない、沢山いい目で女優さんみているから。
そこら辺の一般より目は肥えている。
だから青春している仕事と私生活なのかも知れない。
お抱えタレントをどう売り込むかも大変だ!
俺の抱えるタレントは即変わる事もある。
みんな男性の俳優さんを抱えて売り込み合戦をする事も珍しくない。
目まぐるしく動き、また楽しく遊ぶ。
俺のモットー。
「おはようございます!今度入りました、ユウスケです!宜しくお願いします」
新人君のユウスケも。
「ユウスケです!頑張ります、宜しくお願いします、」
元気いっぱいに挨拶する青年。
関西から夢を追いかけて出て来た青年。
まだまだ素人だけど、頑張ってくれそうだ!
新人君を祈るように世に出す仕事も楽しい。
全くの素人から這い上がり立派な成長して欲しい影武者の俺。
沢山の敗北した人達も見て来た。
いちいちお涙頂戴なんてやってられなかい。
沢山機会はある、ミュージカルや劇団で頑張っている青年や少女。
だから俺は家庭など持たない。
たのしすぎるから今の仕事がさ!
良く勘違いの一般人は、チケットを頼むやら、タレントさんに会わせろなんて言われる。
俺の遊びや私生活ではただの一般会社の印刷屋だと名乗っている。
そこまでして仕事を絡める必要はない。
ならその仕事でモテたいのか?
仕事は仕事、私生活は私生活だから。
毎日忙しく飛び回る、最近少し目が出て来た、ユウスケを連れて、各メディアに小回りする。
ユウスケは大切なうちのタレントさんだから。
名前は本名するか、会社で付けるか話し合う。
彼は会社の考えた名前を希望した。
YUーSUKEにするか、悩んだ末にカタカナに決定した。
まだ青々し青年が階段を上がれば、天狗になる事もある。
この仕事はスタッフ受けしない人間は突き落とされる。
そのフォローもしなくてはいけない。
沢山見て来た、突き落とされる人間を。
突き落とされた人間は必ず助けてと泣きついて来る。
スルーなんだょ!
可哀想だけど。
だから甘くないんだょな!
この世界は。
ユウスケを一人前に階段を上げるまで、後は彼の才能だ!
沢山の歌手の打ち合わせにも参加する。
納得行くまで何日もかかる事もある。
徹夜なんて当たり前の世界。
この業界離婚者も多くいる、だから結婚はしないのかも?
俺には快適な仕事なんだが、家庭向きな性格ではない事自覚してる。
朝から外回りをして、ユウスケの売り出し作戦を練る。
「ユウスケは、まず、ボイストレーニングをしょうか?」
「はい、お願いします、」
「この業界、歯並びの悪い人はNGなんだょ、目立つ歯並びなら、インプラントか、矯正して貰うんだょ」
「わしの母さんが矯正してくれました」
「君、年いくつなの?」
「はい、22才になりました!」
「君その若さで、わし、って使うの?関西弁なの?」
「関西でも、俺とか僕です、わし、はクセです!」
「今から、わし、は禁止だから、よろしく」
「君は何を目指してるの?」
「憧れは、三代目さんの登坂さんです!」
「なら、諦める事だね、うちの会社は俳優さん、お笑いさん、くらいだから、LDHに行けば?」
「頑張ります!」
「うちの会社では、EXILEさんと絡まないよ」
最近の若者はほとんどEXILE系列に憧れる勘違い青年が多くて、絡めるチャンスを狙う奴が多い。
夢物語の世界だ!
後売れたい、人気者になりたい。
俺達の仕事はいかにメディアにタレントを世に出すか、その辺が若者を勘違いさせている、
「ユウスケ君、君が売れる為には、誰かを踏み台にする位の根性がいるょ、すぐに潰され、関西に帰る事になるょ、自覚してくれなきゃ!」
新人君はその意味を把握したのか?
「何でもこなせるように頑張ります!」
「頑張ってくれょ!関西に帰らないように」
内心売れなきゃ帰るしかないでしょう。
いちいち手取り足取り世話は出来ない。
駄目ならスルーなんだから。
このユウスケも。
「さぁ、売り込みだょ、」
俺とユウスケは車に乗り、会社系列に挨拶に向かった。
局やすポンサー探しでこの新人君と車で回る。
助手席にちょこんと座る新人君。
甘くナインだょ、この仕事なんて、入れば売れると勘違いするなょ!
タレントなんて蛸足以上にパーツに分かれる、手タレ、足タレ、首タレ、後ろ姿タレ、シルエットタレ、全て全面にでないタレントなんて沢山いる。
正直22才の新人君は遅いくらいなんだ!
中学生からやり始めても遅いくらいだ!
沢山のスタジオにはステージママさんが待機してる。
親が熱入れるタレントなんて当たり前の世界。
何故新人君にボイストレーニングをさせるかは、普段の声はマイクで拾えない。
まして彼がミュージカルなんかに抜擢されれば声が必須なんだ。
歌手やアーティストでも、何度も声を潰す、潰さないと次の声に進化しない。
ただ憧れてるボーカル自体、今も特訓している、抜かされてしまう恐怖もあるだろう。
みんな満足してはいない、新人君はまだ素直な方だ。
俺に感謝しろ!
俺が居なきゃお前は名古屋辺りをうろついていただろう。
こいつの運が都会の俺の事務所に入れたって事。
明日を夢見る若者をどうにか這い上がらせたい今の俺。
「おはようございます、新人のユウスケです」
各局や監督に挨拶周りを始めた。
CM・PV・ドラマ・舞台・映画・全てに挨拶した。
監督の目に止まる役者はなかなかいない。
1人の助監督に声をかけられた。
「ユウスケって言うの君?」
「はい、ユウスケです、よろしくお願いします、」
声が掛かったからと期待するなょ!
みんな気まぐれなんだから。
そんなに甘くない、この世界は。
声を掛けられ嬉しそうなユウスケ。
現実をこれから味わうんだ!
「ユウスケをよろしくお願いします、」
俺はユウスケのアピールをしながら頭を下げた。
俺の仕事柄また俺の性格に女は要らない。
一番厄介な問題は男女のスキャンダル。
これには頭を抱える。
まだ女性はネタで「あの男優と寝た」スクープさせれるが、男優は厄介だ!
スクープを今か今かと待ち望むマスコミの連中。
「ユウスケ、遊ぶなら、バレない遊びしろょ」
「わし、違う俺は仕事頑張ります!」
「みんな初めはそうなんだよ!馬鹿!」
挨拶周りの廊下で話した。
次の売り出しにも向かう2人。
俺にだって恋愛話しくらいある。
だがこの仕事は約束は出来ない。
ドタキャンなんて当たり前の世界だ!
大学時代付き合っていた彼女がいた。
まだこの業界に入りたてのウブな俺。
同じサークルで知り合った彼女。
大学時代は良く2人に向け出し、2人でコパン抜けたよ。
彼女の手握り走っ記憶だけが懐かしい。
ロングヘアーて素直な女性だった。
どこかでこいつも守ってやりたかった。
仕事のまだ新人の俺は、仕事で彼女に会えなくなった。
今は仕事に夢中の俺は彼女さら「純介君にいて、疲れに疲れちゃった!」
まだ青年して忙しいあまりに、彼女を追いかける事は出来なかった。
今彼女が俺の隣にいても結果は同じだと思う。
華やかな世界で影武者な俺は影武者に徹していた!
大学時代の彼女は一番濃厚な女性だった。
その彼女は社会出だし、今は家庭に収まっていると風の噂で聞いた。
「幸せになれょ、お前は素敵な女性だった。
それ以来連絡もない、俺の一番の愛した女性だかも知れない。
溢れる出会いが会ったが、その先なない関係。
仕事に飲み込たんだ俺、女性はただの遊び相手にしかすぎない。
口にと顎に薄く生え少し貫禄を見せる。
なんて、影武者でも、貫禄を、アピールするのも俺、の仕事なんだから。
新人は毎日沢山の志望さが殺到すり
いかに売れそうな人材を狙い売り出す、どうして売れせるねか?
毎日、売り出しで、毎日目まずる毎日だつた!
恋愛は大好きから封印してしまった。
俺、は今仕事に全力注ぎたい。
ただそれだけ、
鼻と顎にヒゲを薄く生やし少しダンディーだともてやはされている俺。
ユウスケを連れ歩き仕事の依頼を待っていた。
俺もこいつみたいな時期があった。
彼女から「着いて行けない、約束も守ってくれない」
良く喧嘩したよ!
「理解してくれよ、仕事なんだから!」
あの頃が一番素直で俺を困らせた青春だった。
あれ以来素人の女性と付き合う事も、また付き合いをしなくなった。
面倒なんだよ!
彼氏や彼女、付き合う、誰の者なんて!
女は邪魔くらい!
ただそれだけ、遊び感覚の女など腐る程いる。
有り難い遊べる女は。
引き際も去り際もお互いにわきまえている。
所詮遊びは遊びなんだから。
仕事の内容を把握してくれる女を探す!
仕事の目まぐるしさでストレスどころではない。
ユウスケがPV撮りが決まった。
真冬の撮影だが、季節の内容は春の設定。
くそ寒い季節なのに、春の設定で、全ての撮影は春一色。
彼女と抱き合うシーン。
白いカッターに黒のズボンを履き、彼女と抱き合うシーン撮り。
新人の女優さんと絡むシーン。
まぁまだ恵まれたチャンスにユウスケの運なのだろう!
お互いに初めて同士で挨拶を交わしていた。
「ユウスケ、今から彼女は、お前の一番大切な彼女に変身するんだ、頭切り替えろょ!」
セリフなしのカット、彼女を胸に抱き寄せるユウスケ。
「カット!」
監督に何度もダメ出しくらうユウスケ。
モニターで何度も確認し、注意を受けていた。
くそ寒いこの真冬に顔が歪むユウスケ。
ここが素人なんだょ!
真夏の厚い季節にマフラーをして真冬の雰囲気を出せる俳優に成長して欲しいよ。
カット!
何度もダメ出しくらうユウスケに付き合うしかない俺は。
音声さん証明色んなスタッフがその一瞬のカットに時間を掛けるか。
監督のOKが出ないと永遠に続く撮影現場。
毎回緊張する。
一番困るのが「役者変えてくれ!」監督の言葉だ!
役者変えられたらたまったもんじゃなぃ。
俺の信用もがた落ちだ!
ダウンを羽織らせ「ユウスケ、彼女はお前を愛してる女なんだ、彼女を守る気持ちで抱き合え」
今の俺にはユウスケを交代させない事でいっぱいだ。
女優さんのマネージャーも相当ビビっている。
お互いに新人同士だから相手の必死さが目に見えてわかる。
若い2人はビルの屋上で同じ白いカッター、ブラウスに黒のズボンを履き。お互いに見つめ合い、2人抱き寄せた。
「……OK、カット!」
緊張が高鳴る瞬間。
ユウスケにダウンを羽織らせ、モニターに向かった。
何度も取り直してやっとOKを貰えた。
実は2日かかったこの撮影に。
夜のシーンなので空の景色は誤魔化せない。
このユウスケの抱き合うシーンはアーティストのDVDの一瞬の映像化になった。
メインではない、一瞬のシーンだけでこれだけ掛かる仕事なんだ!
予想外な出来事なんて沢山ある業界。
こいつの撮影が終わると俺に睡魔が襲って来た。
緊張の糸が切れたのか?
1人暮らしの自宅に帰り少し休む事にした。
寒くて冷たい部屋に帰る事も慣れてしまった。
ゆっくり休める時は俺が一番会いたい、めんま、に会いに行こう。
疲れた身体をベットにもたれかかった。
「きついよなぁ!」
ずっと寝れなかった。
仕事が忙しくて。
仮眠をしていたらスマホがなった。
「岩田さん、うちの女優が時間に来ないんですよ!携帯にも出ないし」
遣りやがった!
また男に走ったのか?
あの女優は?
「一応家をはれ!こっちからも連絡しておく」
重い身体で下着だけ履き替えて女優の家に向かった。
一番乗りに乗っている時がややこしいだょ。
周りからチヤホヤされ勘違いすんだょ!
男も女も同じだが、別に驚く話ではない。
慣れてしまっただけなんだ。
まだ若いマネージャーは顔色を変えて必死に家探ししているだろう。
俺も昔はそうだった、何もかも心配で必死だった。
今は女優の仕事に穴をあけるくらいの覚悟なら!女優の代わりは沢山いる。
若さゆえに走り後で後悔しても遅いんだよ、そう思える俺になった。
マスコミが騒ぐまでの女優ではない。
ただきっちり形はつけて貰う為に探してやってるだけ。
「いるか!理子、おぃ、帰ってるのか?」
オートロックのマンションのインターホンに応答はなぃ。
「俺も疲れてんだょ、勘弁してくれょ、」
「岩田さん、いましたか?」
顔色を変えたマネージャーがやってきた。
首を横に振り、いないょ、と答えた。
まだマネージャーになり2人目のこいつも肩を落としていた。
「どうしましょうか?」
「さぁ~」
「連絡ついたら知らせて、じゃあ!」
俺は疲れているんだ!
部屋に帰った。
スマホが鳴った。
「あの女かょ!」
誰だか分かっていた、出たくなかった。
俺はスマホの電源自体切った。
その女もそうだけど、疲れてるんだょ、今の俺は。
疲れを少しでも取りたかった。
気が付けば4時間近く眠れ…ていた。
スマホの電源を点ければ数件の着信がなり、理子からの連絡もあったみたぃだ。
「この女どうするんだか!」
かけ直してやった。
「岩田だが、何か?」
「岩田さん、助けてくださぃ」
どんな女優でもとちれば同じセリフだ!
「腹括ったなら、君の責任だょ、好きにしなさぃ、」
これは俺の決まり文句。
マスコミが騒ぐくらいの女優ならまだしも、中途半端な女など、後につかえる女優など沢山いる。
這い上がる道は自分の身体でもはれ!
俺はあのシルエットの女性をずっと追っている。
あの若い頃に出会ったあの可憐で綺麗で鮮やかななの女性を。
いくらこの業界に入って見ても見つからない。
と言ってやさがししてまでも探していない。
自然に待っている。
夜空で抱き合うシーンのあの女性を。
綺麗だった。
顔は見えない。
可憐な。
あの女性を俺は見つめていたかった。
所属事務所すら知らないあの女性。
今も目に焼き付いている。
俺が愛したあのシルエットの女性。
「岩田さん、理子さん、見つかりました、」
「知ってるょ、好きにさせとけ!」
これでも仕事となれば厳しい俺。
情けや人情なんかで、この世界は渡っちゃこれなたいんだょ。
甘くないんだ、この仕事は。
頑張ってAKB予備軍なんて沢山いる。
Dボーイズって知ってますか?
案外深夜にドラマに出てくる若者は注目。
沢山のタレントや路上パフォーマにも歩きながら目をやる俺。
役に立つなら拾うがそこまで目にいく人はいない。
俺はシャワーを浴び街をぶらつき美味しそうな女を探しに行こう。
忙しかったからたまの自分へのご褒美に。
普段でもスーツ姿の俺は町ゆく女と話をする。
簡単な会話をすればだいたいの性格くらい分かる。
「何してんの? 君モデルさん?」
「嫌だ、違いますょ、嬉しい!」
「あのさぁ、君可愛いね、いつも声かけられるでしょう?」
「そんな事ありませんょ!」
「マジで!彼氏居るの?」
「まぁ、一応は、」
「自慢の彼女だね、君ならさ、」
「そんな事、なぃと思います、」
「一度だけ、一度だけ、俺と遊ばなぃ、彼氏にしかられるね、ごめんね、あまり、可愛かったから、ありがとう!」
「遊ぶだけなら、」
て尻軽女なら釣れる。
腕を組んで即席カップ誕生!
俺は182センチ
体重70キロ
顔は藤木直人に少し謙虚に書いておく。
ヒゲを生やした藤木直人って事に。
だから女には困らないてか!
この女とも一度限りの俺のご褒美。
厄介な女に捕まれば、知り合いの、怖いおじさん登場てか!
世の中楽しく遊べばいいんじゃなぃ?
だから独身は辞められないんだょね?
この女の目的はひとーつ、寝るだけ!
楽しい夜を邪魔するスマホ。
「また、この女かよ!」
厄介な電話はおさらば、電源切ってやった。
スマホの女はフリーの売れない、売れない女。
たまに仕事ないかと連絡がある。
有るわけないだろう!
お前みたいなブス!
「やっぱ君かわいいょ、」
俺達はその女とネオンガイに歩いて行く。
振り返り。
「いただきます!」
抜き終えたら必ず女は聞いてくる。
「ねぇ、どんな仕事してるの?」
「真子ちゃんだったね?俺?」
「名前は?」
「小林、仕事は町の印刷屋勤務」
「えー、印刷屋さんでスーツなの?」
「営業だから、で、君は?」
「私はブティックの定員、」
「だから、綺麗なんだ!」
んな訳あるか!
終わったんならさっさと帰れブス!
「お風呂入る? あっ、俺もうすぐこの街離れるんだ!」
そうでも言わなきゃ会いたいなんてのが落ちなんだよ!
さっさと風呂入って消えろブス!
「彼氏には内緒だょ、最高の女性だょ、君は、」
動きそうにない女だとサッチした俺は風呂に入り。
「はい、デートのお礼、」
2万円握らせた。
「お金貰っていぃの!」
「綺麗な人とのデート代でしょう、普通は、」
「あまり綺麗だから、写メいぃ?」
馬鹿な女は嬉しそうにお金を2枚広げポーズ!
馬鹿か?
お前と後で揉めたくないんだょ。
そんな女はウジョウジョしてる。
遣りやすいっちゃ遣りやすいかなぁ?
明日の仕事の活力になるなら安い落とし物だよ。
「いつか会おうね!」
機嫌よく尻を振り高い靴を履き、まるで京都の花魁みたいに姿を消したやりマン。
俺はスマホの電源をつけた。
あの理子どうなったのか?
マネージャーに連絡した。
「岩田さん、大変なんですょ、」
「で、どうなったの?」
「一応謝り押さえました」
「なら、良かったじゃんか!」
「監督が……」
「お前、致命傷だょ、辞めさせろ、理子を、」
「えっ?」
「はい、理子は、クビ、」
馬鹿らしくて聞いてられない。
共演者を押さえても肝心の監督を怒らせればクビしかないっしょ?
この新人もこの世界の厳しさを分かっちゃいなぃ。
何年もしていたらそれがどれだけの致命傷だか分かる。
それまで頑張れるかなぁ?
新人君。
君もクビにならないようにな!
俺は遊びがてら飲み屋に行った。
飲み屋と言っても立ち飲みの方が情報が満載なんだよ!
金のない人や若者も今は流行りで利用している。
「最近路上ライブで楽しい奴いる?」
案外路上ライブでデビューをしたと看板掲げた歌手も多い。
ゆず、コブクロ、ももクロだってそうだ。
ミニスカポリスも有名である。
歌手が反対にサプライズ的に路上ライブを活動する人も増えて来た。
売れないアーティストを救い出す事も楽しい。
読んでいて分かるだろう?
俺が楽しく仕事をして、家庭臭くない事が。
俺の本当の目的はあの忘れられない女性を探している。
街をうろつきさまよい歩いているのはあの女性の手掛かりを探している。
謎の女性鮮やかなあのシルエット女性だ。
どうしても見つける事が出来ない。
諦められない、あのシルエット女性が。
見つけたとしてもただ会いたい女性のみ。
気持ちが入る事はない。
もう一度あのシルエット女性の姿を俺は見たい。
街をさまようが手がかりも情報も全くない。
ただこの街に必ずいると信じていたい。
街のどこかのスナックやクラブなんかにも足を運ぶ。
「最近新しい女性入って来なかった?」
俺が覚えている限りの印象を話すが全く見当たらない。
この業界ではちとなの知れた俺すら探すくらいの女性だ。
それだけ印象も魅力もある女性。
数件探したが見当たらない。
こんな一面を持つ傍ら俺は業界では怖い存在なんだよなぁ?
俺は認める女性はどの女優も勝てやしない。
そしてある女性と出会った。
爽やかな顔つきだが、売れない女優さんだ。
腰に手を回すとくびれがやたら細い。
何故この女優さんが売れないのか?
公私混同しながら彼女と付き合いながら、有名女優さんにまで登らしてあげたい俺の思いだった。
この女優さんが俺が探している女性だと思った。
翔子と言う女優さんだ。
全く売れなくって頑張っていた。
背も高く目鼻立ちはクッキリした美人である。
俺は自分の事務所に翔子を入れ、まずは挨拶周りから始めた。
「岩田ちゃん、かなり、熱入ってるね、珍しくないか?」
関係者は口を揃えて言ってきた。
翔子を立派に育てあげ、翔子の夢を叶えてあげたい。
そして翔子のそばでデビューを見届けたかった。
仕事は仕事、プライベートは俺の女。
ある日俺が目を掛けていると聞いた関係者からお声が掛かった。
「翔子、一度挑戦してみないか?」
「私頑張るわ、ありがとう岩ちゃん」
俺は少し翔子にメロメロになっていた。
カモフラージュだったが、ほとんど俺と毎日居てくれた翔子。
勿論身体も重ねる関係だった。
翔子の腰はくびれ素敵なスタイルだった。
関係者でも口にないが、俺と翔子の仲くらいお見通しだった筈だ。
俺は影武者な存在だから、翔子に迷惑掛ける事はなかった。
少しづつ翔子は役がつく仕事まで上がってくれた。
ある日翔子に言われた。
「もう、女優さんは、要らない、岩ちゃんと結婚したい」
「お前は今階段登り始めたんだぞ!今からだ、諦めるな!」
「でもね、岩ちゃん…」
「どうしたの?翔子?」
「子供が……」
「妊娠したのか?」
「………」
俺達の選択はそれしかなかった。
「翔子、ごめん、」
翔子は泣く泣く俺の前から消えようとした。
あの憧れていた翔子に俺は罪な事をしたと。
後悔しても始まらない。
翔子を支えようと努力した。
愛していた翔子は俺の物ではなく、商品なんだ。
そして翔子と俺は別れる事になった。
離したくなかったが、翔子の今後も考えた。
今彼女は光り輝く舞台に立っている。
そして分かった。
翔子はあの俺が探す女性ではなかった。
今となりゃあ翔子は「あなた誰扱いだろう」俺の事など。
子供を妊娠したかだなんて分かったもんじゃない。
売れない女優は安全保障を優先する。
たとえ妊娠していたとしても本当に俺の子供なのか?
保証もない。
そんな純粋な気持ちがあればこんな仕事もしちゃいない。
この世界に君臨しだしてようやく男性や女性の心理が読めるようになった。
この世界の女性は心臓に毛が生えている性格ではない。
よほどしっかりとお互いに信念を持たないと流されてしまうんだ。
女性はしたたかだ。
声を掛けられてホイホイ付いて行く馬鹿なスタッフも多い。
事務所の反対で交際しているが、マスコミにスッパ抜かれ別れるタレントも多い。
ダミーは必ず存在する。
やたらこの世界の人間も一般人とゴールする。
業界の人間より新鮮で、純粋な女性、男性に惹かれ出した。
一般人と記載されているが、何ら昔にこの世界に足を入れていた関係者も多い。
ある女性と知り合った。
昔で言う浅野温子似のロングヘアーが似合う女性。
名前は美香。
細くて綺麗な女性。
彼女は後ろ髪専門の女優だ!
沢山のパーツがあるんだよ!
綺麗な髪は彼女の商売道具。
日によりその専門分野の髪に金をかけ、トリートメントや水分補給に美容院に通う。
コマーシャルなんかで髪をサラサラと浮かせるシーンのみになんて器用さるている。
そんな彼女との出会いはCM撮影でのキッカケ。
CMなんて何十秒の時間だが、案外時間がかかる、
何十回も髪をパラパラさせ、思う様になびかない時は、何十時間掛けての撮影になる。
これも季節により、髪の質により、湿気や汗など全て変わってくる。
撮影まで専属の美容師がつき、何度も髪の毛のチェックが入る。
簡単に見ているCM撮影ですら沢山のスタッフの思い入れがこもっている。
そんな美香と撮影で知り合い、俺達は親しくなった。
「君、シルエット撮影した事がある?」
振り向いた美香。
「何度かは!」
俺はこの女に興味を持った。
美香の仕事を俺は入れた。
アーティストの「メーキング」の仕事だ。
顔はあまり写らない仕事だった。
メーキング映像とはDVDを作るまでのセット風景を映し出す。
アーティストのメインのDVDの為美香の綺麗な髪を使う事になった。
俺がその気になればどんな仕事でも取って来てやる。
長く綺麗な美香の髪はこの世に沢山残すべきだった。
私情を挟みたくないが、やはり男の女の関係に、心が動いてしまう。
「今日の撮影は時間がかかるかも?」
「岩チャンありがとう、頑張るね!」
薄笑いしながらスタッフの元に向かう美香。
スタッフに沢山要求され、美香の髪が動き出した。
俺が見ていても鮮やかだった。
沢山のアルミ板に囲まれ髪を揺らす美香。
今は黙って腕組みしながら見てるだけの俺。
シルエット女性を見つける為に沢山の女性と声をかけ続けている。
美香は振り返り俺に「頑張るね」
手招きする美香を笑い返した俺。
この季節に美香の髪や後ろ姿が綺麗だった。
毎日手入れも大変だと思うよ。
パーツ女優さんは。
彼女を顔一面出せる女優にしてあげたい。
惚れていたのかも知れない、ただの一時の恋愛だけでいい。
彼女も俺を踏み台に駆け上がってくれれば良い。
使える人はどんな男でも、相手と寝てまで、仕事を取る事なんて構わない。
踏み台はどんな形でも踏み台にしかならない。
沢山の扇風機が美香の髪を変化し出した。
「頑張れ!」
俺は心の中で美香にエールを送り、美香の撮影現場から離れた。
会社に帰ると沢山の所属タレントがいる。
モデルさんも抱えているが、モデルは年齢制限がある。
ある程度売れているモデルなら今後の仕事もあるが、売れないモデルは、燃えるゴミに入って貰う。
地方から出て来た賞味期限切れたモデルが高い声でキャンキャンとまくし立て怒ってる。
そんな相手すらしない俺。
新人がその相手をしてやれ!
「岩田さん、いきなり仕事キャンセルなんてやだ!」
「ごめんね~断って来たんだよ、相手のモデル雑誌から、まぁ仕方ないよ、年齢が年齢だけに、」
「超ムカつく!」
「なら、婦人雑誌に代わる?」
鞄を俺の顔に叩きつけた年齢アウトのモデル。
「君の性格良ければ救いようあったんだけど、残念だね」
「んじゃ、どうするばいいのょ!私は!」
「グラビア?AVに行くか?」
「岩田さん失礼じゃない?」
「はっきり言って、君業界で評判悪いんだよ!」
「はぁ? 意味不明、」
「お鼻高かったね、残念だか、」
「なら、なんで、いろんなモデルの仕事来てたのょ、」
「若かったから、いくらでも居るんだょ、君みたいなレベルの若い女性は、」
「私は岩田さんの会社に貢献したんだょ!」
「たから、紹介するょ、AVにさ!」
「岩田さんは私はAVしか値うちないと思ってんの?」
「いや、通販の下着の仕事でも構わないょ、地方限定の?」
「岩田さん、そこまで言わなくても、」
新人がかばい出した。
「おい、ならこの女の仕事取って来てやれ!」
馬鹿げた女に付き合う暇のない俺は会社から姿を消した。
「おぉ、痛てぇんだ、」
一応商品には手は絶対出せない。
糞みそに言われ続けたタレントに。
マネージャー時代は。
あの◯◯◯◯今はタレントの嫁してるあの女も。
鏡を持つ手が見えないのよ!
俺よりかなり年下の歌手。
下手な歌を歌っていたが、一時期売れ出した。
そんな歌手に平手打ちされ我慢していた俺。
懐かしい思い出だ!
彼女にまだ会えない俺のシルエット女優に。
もう探し求めて2年くらいになる。
謎のシルエット女優を。
街をさまよい業界にも声を掛けている。
これだけ探して見つからないのは、普通の生活に戻り、結婚して主婦したのか?
美香と待ち合わせをする事になった。
俺の携帯は3台ある。
仕事用、プライベート用、家族用。
全て使い分けている。
家族用といってももっぱら「めんま」用みたいは物だ!
あまり話が出来ない俺の可愛い姪の為に携帯を新しく持った。
美香と仕事の進行具合を聞くため、あまり知られていない穴場のラウンジがある。
お忍びで使う場所で、完全会員制である。
一般人は入れない場所。
たまに俳優、女優、歌手、監督、沢山のスクープに遭遇する。
この業界は口が固くないと出来やしない。
まぁそこら辺の芸能記者より詳しいって事。
人の関係性なんて俺には興味はない。
美香の仕事関係だけが今の俺の関心かも知れない。
「岩チャン、お久しぶり!」
「お前、また綺麗になったなぁ!」
「岩チャンのお陰で仕事なんとか順調だし、」
「良かったな、少し前顔も、認められたか?」
肩を叩かれた。
「そうなの、そうなの、最近顔も出してくれてるの!」
嬉しそうに話す美香。
「髪がメンイで、何枚か顔のシャッターがあるの」
「良かったな!先は焦るなょ!」
「あのね、相談なの、」
「どうした?」
「…………………」
「どうしたんだ?」
「あの、……………」
「何だよ、話せよ、」
「撮影の監督が………」
「監督が? どうしたんだ?」
すぐに検討はついた、皆が悩み道なんだ。
美香は俺と付き合ってるから言いにくいんだろう。
そんな女なんだ、美香は。
「別にいいんじゃないか、仕事に必要なんだったら」
俺がバッサリ言うものだから、美香は急に怒りだした。
席をばっと立ち
「岩チャン、私をどう思ってるのよ!-
「待てよ!まだ美香から途中の段階だょ、」
「でも、私が話す内容分かってるのょね?」
興奮している美香の肩を持ち、席に座らせた。
「私達、付き合ってるのょ、私達は、」
「そうだょ、付き合ってるょ、俺達は、」
「何故、やきもちや、止めとけって言わないの!」
生き残りたいなら仕方ないんだょ。
俺は美香との結婚なんて考えていない。
この女の踏み台になれば良かっただけ。
そのままストレートに話せば、カクテルを頭の上からかけられるだけだ。
全てお見通しなんだょ。
そんな光景何度も味わって来た俺。
「美香、良く聞け、俺は一般人ではない、業界には目をつぶる事など沢山ある、お前は彼女である前に、商品なんだょ、商品の良し悪しは、使わないと、分からない、商品が良質な俺の彼女なんだょ、反対にお前から、さよなら、言われる事も、想定している」
「私が岩チャンから離れるなんて、考えられない」
「そんな保証も明日の美香の気持ちなんて、誰にも分からないし、断言出来ない、お前は必要とされる存在になるのなら、俺は我慢する、」
「岩チャン…」
「大切な人が階段を上がれる事が俺の幸せなんだょ、分かるか?」
まっすぐカウンターを見てカクテルを口に運ぶ美香。
「俺が一般人なら、止めとけと言う、そんな男を選んだのは、美香なんだょ、」
もう愛想をつかれて離れるのなら俺達はそこまでの関係だったって事。
「もうその話は止めるね、そして忘れて」
「あぁ、止めよう、美香の好きにすればいぃ、美香は美香だから、」
すっかり気持ちの切り替えが出来たのか?
隣りで座っていた美香は笑顔で俺の顔を見た。
美香は俺の話に納得したのか?
そんな乙女ちっくな話しなど要らないんだょ。
いちいち答えてられやしない、黙って寝りゃ分からない美香なのに?
今更処女と結婚する話でもない。
芸能界に居るのか?
処女は……
小さな子役ぐらいだろう!
気分良く、お互いが、楽しけりゃいぃんだょ!
目をつぶるような話しでも、我慢する話しでもない。
沢山の踏み台を使えばいい。
女は何故、付き合い、結婚を口するのか?
「美香、行く?」
少しほろ酔いの美香の肩を持った。
「岩チャン……」
俺の肩に寄りかかり、俺達はホテルに向かった。
ラブホは使わない。
一応商品だから目立たない場所の高級ランクのホテルに泊まり、美香と肌を重ねた。
美香の大胆なセックスは俺の疲れを飛ばしてくるた。
髪が商品の美香に気を使いながら跨がった。
「岩チャン…」
少しでも情を出せば俺自身壊れてしまう。
大人の男と女での関係を上手く保ちたい。
「美香の髪は全てが最高だょ」
と興奮する俺。
女優やタレントを褒める事は俺の仕事だから。
写真集などカメラマンはベタ褒める。
「綺麗だ!」
「セクシーだょ、」
「そのポーズ最高だね!」
周りが褒めれば綺麗になるんだ!
まだ美香は駆け出した女優だ、だから俺は真新しいキャンパスに絵の具を書いてやる。
「岩チャン…」
「いいょ、美香は最高だょ」
こんなセリフどれだけ吐いて来たか!
それでその女優が綺麗になれば嬉しい。
いつも頭に過ぎるシルエットのあの女優が俺の頭から離れない。
今日の仕事はアーティストのDVDのMusic Videoの撮影にうちの女優が選ばれた。
好きな2人だが、彼に架空の家庭があり、そのかれを好きになる。
女優を探していたらしく、うちの女優に声が掛かった。
夜の撮影で寒くて寒くて、女優俳優さんの抱き合うシーンだった。
夜限定なので、気に要らなければ、監督の指示で、何日もかかる。
アーティストさんのスケジュールも重なりなかなか進まなかったが、今日が最後の撮影なので、見に行く事にした。
若い女優だが、なかなか根性もあり、期待の星なのかも知れない。
毛布にくるまるその女優は。
「宮田さん、お疲れ様です」
「寒いのに、頑張ってるな!」
俺はスーツにカシミヤのコートにポケットに手を入れていた。
女優の撮影の季節は春の設定で、ブラウス1枚羽織るだけ。
メイクさんや衣装さん、照明やら音響など、全てダウンコートを羽織っていた。
冬場の季節の撮影はこれだから嫌いだ!
「久々のPV撮影に楽しんでます!」
「寒いのにごくろうさん!」
マネージャーが持っていた、温かいコーヒーを彼女に渡した。
「寒いだろう?」
「ありがとうございます」
2口飲み。
監督の
「さぁ、始めようか!」
男性俳優さんと彼女が抱き合うシーン。
バックにワイン色の観覧車が映っていた。
彼が彼女の髪にキスをしながら2人抱き合うシーン。
無性にあのシルエットの女性と重なった。
シーンが終わると1人の女性に変わる彼女。
少しまぶしかった、俺が気になる女性と重なり、勘違いしそうだった。
自分の会社の女優に手はつけれない。
綺麗だったんだ!
俺が探している女性に近いくらい。
何故こんな話しをつらつら書いているのか、俺の探している女性に会いたいから。
ただそれだけ。
月下美人の花を咲いている瞬間を見た事がない。
俺の探している女性は月下美人なんだ。
月下美人…
なかなか見つからない。
その女性のシルエットには勝てない誰も。
今回の撮影場所はビルの庭みたいな所で撮影した。
画面の樹木にスポット当てビルに協力して貰い沢山のライトをあて、監督は柿本ケンサクさんにカメラを回して貰った。
柿本さんが。
「彼女いい、演技する女優さんだね。」
「はい、かなり根性も熱意の強い女優ですので、今後も使ってあげて下さい。」
女優と男優さんは一瞬にして恋人同士を演じれる雰囲気を醸し出してくれる」
お互いに演技に力がはいり、アーティストさんのDVDに若者は細かい所まで、アーティストに近づく為にヒゲを生やしたり、俳優さん自身努力をしている」
ただのDVDかもしれないが、役者魂は若者の俳優や女優に細かいこだわりの撮影が多い。
駄目出しやこうでないと嫌だという人は馴れたアーティストや俳優に多い。
彼女も柿本さんに認められ、その後2人がどうなったねかは、俺には関係ない話し。
今回のスタッフにも監督やカメラマンに、俺が探す月下美人の彼女の話は聞いてみた。
「そんなシルエット女優さん、居るんですか?」
居るから探しているんだょ、
情報は得られなかった。
あの素晴らしいシルエットの女性はまだこの世に残って欲しい、俺の願いだった。
彼女を見つけ、俳優ではない、俺と抱き合い、月下美人とのシルエットを写して欲しい。
沢山の女性に靡かない俺の原点は、月下美人である。
夏の夜密かに咲く一夜だけ。
月と語り合うの?
月と消えていく月下美人。
俺の為に咲かせて欲しい。
なかなか情報も取れず、なんの手がかりもない。
諦められない。
諦めたくない。
俺の業界初めて好きになった月下美人。
まだ活動していても、俺の情報に入って来ないのは、多分月下美人がくすみ、干されている可能性もあるからだ。
大概のメディアでは俺の存在を知っている。
それでも俺が探す月下美人にはたどり着かない。
今日の撮影は終わった。
「岩田さんのお探しの女性見つけたら連絡します」
監督が言ってくれた。
「柿本さん、お願いします、お疲れ様でした」
深夜の時間帯はたとうに過ぎていた。
ある俳優が。
「岩田さん、なかなかの女優なら、知ってますょ」
「本当か?」
その俳優に釘付けに駆け寄った。
「岩田さんのさがしている人か、どうかは知りませんが…」
「どこに居るんだ、その女優さんは?」
俺はついにその月下美人に会える喜びに胸が熱くなった。
「◯◯プロのなんて言う名前だったかなぁ?」
考え込む俳優。
「思い出したら連絡くれないか?」
俺は家庭用の携帯番号を教えた。
家庭用の携帯番号は大切な人しか教えない。
会社や女性の携帯番号は電源を切る事があるが、家庭用は絶対に切らない。
姪のめんま専用だから。
それぐらい月下美人は俺とって大切な存在だった。
「この番号は大切なんだょ、だから人に言わないでくれ!」
「分かりました、多分だけですょ、」
「彼女今なんの仕事してるの?」
「多分仕事につまってますよ、仕事ないって言ってました。」
だろうなぁ?
彼女の魅力を分からない奴は馬鹿だろう!
「岩田さんのなんなんですか?」
「月下美人って所かなあ!」
「岩田さんがそんな話しするほどの女優とは思えませんよ~」
一瞬ムッとした。
俺の目は確かなんだよ!
彼女が見つかれば必ず一流に磨いてやる!
俺が認めた女性なんだから!
彼女を探してさまよい歩きやっと見つかったあのシルエットの月下美人なんだから。
久しぶりに気分が良くなった。
撮影も終わり俺の身体も冷え切っていた。
仕事用の携帯が鳴った。
「また、この女かよ!」
「岩田さん、やっと出てくれましたね」
「仕事の話し?」
この女の電話の声で一気に暗いムードになった。
「どんなお仕事でもいぃから、仕事を…」
「あぁ、あれば連絡するよ、」
寒空に俺はさっきの胸の熱さを感じて現場から離れた。
身体は全て指の関節すら凍っていた。
ちょこっと冷えすぎた身体を温めたいのでサウナに向かった。
寒い時にはこのサウナが最高なんだょ。
俺は芸能人ではないので、騒がれる事はない。
明日、嫌、今日はユウスケのデビュー作の打ち合わせだった。
まぁ、若造なので素直な心の彼は今の時点はやりやすい存在だ。
この若造も変わり初めて来るだろう。
数ヵ月たち、少しこの業界が分かり始めたら。
少しのヤンチャなら目をつぶれるが、目に余る事などしでかさなければ。
いつ地元の地に戻る事など簡単な事だ。
あくまでも影武者だが、影武者の俺に、潰される事のある、俺の存在。
俺に少しでもイラっとさせれば、一気にバッサリ切ってやる。
それで切られ恨んでいる奴なんて沢山いるんだよ、俺には。
街でナイフ向けて俺を襲いたい奴などいくらでもいる。
いつ殺されても不思議ではない。
そんな仕事なんだ俺の仕事なんて。
恨まれてなんぼの芸能界。
いちいち怖がっていたら命どれだけいるんだ。
画面では楽しい場面しか映らないが、芸能界の厳しさに生き残るには、踏み台をいかに、頭を使い、這い上がる人間が、最後に生き残れる。
沢山の脱落者も目にして来た。
その反面沢山の成功者も見て来た。
熱く俺の身体の芯まで温かくしてくれるサウナで、さっきまでの冷え切った身体から、無数の汗が吹きだしてきた。
沢山の職種の違う男性と隣り合わせになり、月下美人と会える期待を楽しみにしていた。
あの俺が新鮮に綺麗な月下美人。
もう忘れられない、あの綺麗な彼女のシルエット。
時計を気にしながらサウナで温まる。
「さぁ、ユウスケに頑張って貰うか!」
サウナの人は俺を一斉に見ていた。
「ユウスケに頑張って貰うか!」
俺はゲイか、同性愛者だと思っていただろう!
俺はタオルを片手にブラブラ状態でサウナから出た。
スーツに着替え家に帰り着替えを済ませた。
顔を両手で思いっきり叩き気合いを入れた。
「さぁ、行こうか!」
ユウスケの新作の打ち合わせだ!
新聞を読んでいた。
あれ?
三面記事に小さく載っていた。
美香があの監督と入籍の小さな記事。
美香自身売れない髪の毛タレントだったが、監督は中々業界では有名だった。
「美香、幸せになれよ、いい女だったよ、お前は、」
過去の女に未練などない。
今の俺は光るタレントを這い上がらせるだけ。
さぁユウスケ、光ってくれるだろうか?
俺は美香の幸せを願いハンドルを持ち走ろうとした矢先、会社の携帯が鳴った。
家庭用の携帯ならドキッとするが、会社の携帯だった。
「おはようございます、岩田さん、今大丈夫ですか?」
会社の後輩からの電話だった。
「昨日の女優なんですが、彼女のオファーがありまして、ユウスケと時間かぶっちゃいまして…」
仕事の話なら嬉しい事だ!
お前的に行きたい場所に行ってくれ!
「お前の穴は俺が行くから、」
「ユウスケの事お願いします!」
「O.K.全て任せてくれ!」
ユウスケの新作の打ち合わせ場所に車で向かった。
「名前すら分からない、月下美人、会ってみたい、」
俺の夢でもあった。
目に焼き付いている月下美人の彼女。
会社にネームプレートを首に下げ。
「おはようございます」
次々に挨拶を交わされる。
俺は新人君のユウスケが待つ部屋に向かった。
「岩田さん、おはようございます」
「ボイストレーニングやってる?」
直立不動で緊張している新人君。
「はい、頑張ります!」
その姿勢忘れるなよ。
「じゃあ、行こうか」
まずは担当を付け、作者に挨拶に行き、どんな配役を与えられるのか、そこが一番の勝負だ。
緊張の新人君は連れて行くのみ。
すべて俺が作者、監督、相手役、脇役さんと話し合う。
ただ与えられたら役を新人君はこなすだけ。
いきなりの主役は無理な事は分かっている。
ただ脇役のポストがハマってしまえば、ユウスケ君は、ずっと脇役さん止まりだ。
相手はユウスケ君にどんなポストを与えてくれるかが問題だった。
これは俺でも変える事は出来ない。
会社のワンボックスに新人を乗せて。
「ユウスケ君、君は何も話さなくていいから」
余計なお喋りをされ、気分害されちゃ困る。
「いいか!聞かれた事以外話すな!」
トッチャン坊やみたいにちょこんと座るユウスケ。
地元に強制送還させるなよ!
俺のスマホが鳴った。
会社用のスマホだった。
「岩田です、」
「………」
「岩田…」
「岩田さん、私です、優華です、」
またあの女だった。
「仕事だよね、今探しているんだ、」
相手にしてれない。
「お世話になりました…」
「どうしたの?」
「諦めました、女優の仕事を…」
「あっ、そう、まぁ、頑張って、」
「岩田さん、ありがとう、」
邪魔な電話だった、ただその電話に。
腐る程いるんだから女優なんて。
気に止める事もなかった。
「ユウスケ、任せろよ!」
数秒間の最初で最後の優華との会話。
その時はそう思ってた。
気にする存在でも…
ユウスケの配役が決まった。
今乗りに乗っている直人との共演だった。
お互いに好きな女性を奪い合う2人の若者の物語だ。
「直人君、うちのユウスケ頼んだよ」
「変な変態親父から聞いています、ユウスケ君よろしく」
直人君は街でスカウトされたラッキーボーイ、腕も中々になり、露出度も高い青年だ!
直人君ならユウスケも絡みやすいはずだ。
ユウスケと直人君は笑顔で握手を交わした。
ユウスケ勘違いするなよ、こいつもお前の敵なんだぞ!
少し先輩の直人君に。
「凄い、俺直人君と共演出来るんや!」
「ユウスケちょっと来い、」
「はい、なんどすか?」
「お前関西弁には気をつけろ!この業界は標準語なんだよ!分かるか?」
俺はマネージャーを呼び出した。
「ユウスケの関西弁を直させろ!」
直人君には大きいバック付きだ。
あの直人の黒幕は俺でも一歩も二歩も下がる相手だ。
「ユウスケ、いくらお前が年上でも、先輩なんだから、わきまえろよ!」
「はい、分かりました。」
ユウスケの新作にしては中々のスタートだった。
ユウスケに必死だった俺。
まずはスタッフや周りに可愛がられないとこの仕事を継続は無理だ!
「ユウスケ新人なので失敗などあると思いますがよろしくお願いします」
直人君は堂々とした面持ちでユウスケを懐かしく見ていた。
「俺も懐かしいっす!」
さぁユウスケのスタートに安心していた俺の携帯に家庭用の連絡が来た。
一瞬ドキドキした、あの俺の待ちに待った月下美人の連絡なのか?
俺は少し緊張して
「すいません、ちょっと、」
扉から出た。
「ユウスケ君はどうしてこの世界に入ったの?」
直人君に聞かれた。
「EXILE三代目の登坂さんに憧れて…」
「確かにすげーイケメンだし!」
「直人さんは?」
「俺? 変態オカマ親父に学校に放火するって脅されてからかなぁ?」
「凄いですね、直人さん、有名人だし、」
「君の所の岩田さん、中々厳しいけど、業界じゃ有名だから、恵まれてるよ、」
「そうなんや~、違った、そうなんですか?」
「演技には容赦しないよ、本気で演技するから」
「ひぇ~怖いです。」
「俳優なら、本気で毎回好きにならなきゃ」
「そうなんですか?」
「まぁ仲良くしようぜ!ユウスケ君」
「はい、よろしくお願いします」
沢山の配役さんが集まり出した。
直人さんはみんなと仲良く話していた。
岩田さんが見あたらなかった。
正直誰が誰だか分からなかった。
台本をパラパラめくる人達。
いきなりセリフを吐く人もいて、わし、違う俺は岩田さんが居ないとこの場に居るのが怖かった。
冗談で場を紛らす直人さん。
初めての体験で俺は「おかん」を思い出してた。
「あんたアホやねんから、頑張りや!」
岩田さんを探していたが居ない、おかん、助けてくるや~
心の中で叫んでた。
「ユウスケ君、一回セリフ合わせしようか!」
直人さんに声を掛けられたら。
「はい、お願いします」
沢山の刺すような目に俺は怖かった。
おかんなら何見てんねん、私見せ物てちゃうで!
怒鳴るだろう。
台本を持ち直人さんに近づいた。
廊下に出て家庭用の携帯で話していた。
「すいません、多分違います」
「名前分かったのか?」
「ええ、女優さんに聞いて見たんです」
「で?」
「シルエット撮影は無いらしくて…」
「おぃ、ガセかよ!」
「もしかして…と思いましたが…すいません」
「この携帯番号抹消してくれ」
「お役に立てず、すいません」
「いや、ありがとう…」
俺の探す彼女はどこに居るんだ?
すぐさまユウスケの元に帰った。
もう脇役さんもスタンバイしていた。
ユウスケは直人君と台本を開け、ユウスケに指導していた。
正直避けたかった。
演技指導は構わないが、ユウスケの新鮮な気持ちを、業界の奴らに染められたくなかった。
今しかないユウスケの新鮮は。
「直人君、ありがとう」
「大丈夫っす!」
安心した顔に変わったユウスケ。
誰に染められるか分からないこの世界。
「ユウスケの事皆さん、宜しくお願いします、なんせ新人な物で」
「ユウスケ、お前も挨拶ぐらいしろ!」
「えーっと、◯◯プロダクションのユウスケです、まだまだ新人な者で、宜しくお願いします」
「ユウスケ、一言多いんだよ、よろしくお願いしますだけでいいんだよ!」
「よろしくお願いします」
本当に俺がいないと駄目なユウスケなんだから。
当分こいつの成長を見守る事になりそうだ。
俺の幻の彼女探しは後になりそうだ。
「直人君、君のスカウトしてくれたプロデューサーは業界でも鬼だと言われている、人物なんだょ、浅井さんに、会ってる?」
「糞、変態親父ですか?」
「君だから、そんな呼び方出来るんだが」
「いきなり街で声かけた、ね、親父ですよね?」
「あぁ、君の場合特別なんだょ、俺でもビビる存在なんだょ、俺ですら、パイプないから、」
「何か用なんですか?」
「君を通じて、浅井さんに、パイプ掴めないかなぁ?」
「君しか繋がらないだょ、お願い出来るかい?」
「いいっよ、役に立つなら、」
「私情のお願いなんだょ、浅井さんなら、知っているかも?」
「誰か探してるんですか?」
「電話は失礼だから、直人君、パイプ繋いでくれる?」
「はい、変態親父に聞いておきますよ」
「浅井さんの時間が空いたら、直人君、俺の携帯に電話くれる?」
「電話はあげれませんょ、」
天然だと聞いていたから、俺はスルー出来た。
浅井さんなら昔の情報や、業界に詳しい筈だ。
「携帯番号だから、よろしくね、あっそれから、うちのユウスケの指導もお願いするょ。」
「ユウスケ、直人君に沢山の勉強教えて貰えよ、」
「じゃあ浅井さんの事たのんだょ、」
「分かりました、オカマ親父に連絡して、スケジュール聞いておきます。」
浅井さんと会う事すら難しいのに、直人君が居てくれて助かった。
まぁユウスケと直人君、どちらが有名になるかなぁ?
相手が売れている直人君で良かった。
俳優は最初に嫌な印象付ければ、中々そのキャラのメージが消せない。
直人君には浅井さんが付いているから悪くない条件。
「直人君、ユウスケの事たのんだょ、女関係はまだ後で、」
直人君も中々のイケイケだったが、浅井さんの影でマスコミを消すくらいの存在だ!
浅井さんなら希望が期待出来るかも?
情報が全く掴めない、ラストチャンスかも?
ラストチャンスにかける俺。
「さぁ、ユウスケ沢山の人に可愛いがられろ」
今ユウスケに出来る事はそれのみだ。
まず、ユウスケにはプロフィール写真を撮り全ての企画会社に送り、経歴や趣味、性別、出身地、身長、体重、所属事務所名、全てまいている。
「少し休憩しましょう!」
監督の一言でユウスケを呼び出した。
「少しこっちに来いユウスケ」
ユウスケにすれば初めての体験に固まっていた。
「岩田さん、怖いです、」
「お前にすれば、緊張するだろうが、俺にはお前のデビューには、恵まれたスターだ!」
「そーなんーですかー?」
「肩の力抜けばいいから、」
「俺ー出来ますかーねー」
「慣れだょ、慣れだ、」
「岩田さんー居てーくれーますかー、岩田さんがー居ないとー怖いーですー」
「その棒読み止めろょ!
緊張と俺の関西弁NGで完全に棒読みになっている。
ユウスケは完全に俺が良く行く千代田区のスナックのホステスみたいに俺を頼っている。
「トイレー行ってー来ますー」
「早く戻って来いよ」
トイレに駆け込み俺は電話した。
「おかん、俺こわいわ、みんな関東弁で、怖いわ、どうしょう?」
「役もろたん?」
「直人君とおんなじやねん」
「あんた、凄いやん、頑張りや、おかん、神棚に、手合わしといたるから、」
「関東弁こわいわ、俺出来るかなぁ?」
「あんた、わし、止めれたんや、おかんすら、わしは、可笑しいと思ってたんやから、直人君、ガツンと言わしたり、関西人舐められたらあかんで、頑張りや、」
少しおかんの声で楽になった。
「リラックスだな」
岩田さんは俺のトイレ待ちで呼び出され。
「いいか、ユウスケ、監督、配役さん、スタッフさんの名前覚えるだ、これが大切なんだ、NG出しても、少しは多目にみてくれる、まずは周りの見方作りからだ、分かったね、」
「そろばんの暗記得意だったから、頑張ります」
「こいつ直人君の上行く天然かも?」
「じゃあ、皆さんの自己紹介から初めて下さい、」
「今回の主役の直人君から」
「おはようございます、益々監督や皆さんに助けて頂きながら、作品に全力注いで行きます、よろしくお願いします」
みんなからの拍手だった。
「準主役の紗英ちゃんです」
監督が俺と直人君から奪い合う女優さんを紹介した。
「◯◯オフィスの紗英です、頑張ります」
「では、今回関西出身の新人俳優のユウスケ君です、デビュー作なので温かく見守ってあげて下さい」
「岩田さんの事務所で頑張っているユウスケです、おかんに関西人舐められたらあかんで、と言われました、新人ですが、頑張ります」
拍手じゃなく、笑われてしまった。
「ここは吉本新喜劇じゃないからな!」
岩田さんは俺の挨拶が悪かったのか?
部屋の壁にもたれ掛かっていた。
失敗したのか?
関西人を舐めているのか?
おかんを出した事がいけなかったのか?
後でメチクチャ叱られる事は確かだ。
「ユウスケ君は昔の俺みたい、懐かしい、皆さん、ユウスケ君を支えてあげて下さい、ユウスケ君たのしみだょ!」
直人君がかばってくれた。
「新喜劇じゃなぃ、演技期待してるょ、誰もずっこけないからね、」
脇役さんに突っ込まれた。
恐る恐る岩田さんを見つめた。
少し笑っていた。
後でけつの穴から頭まで、ストローでチュウチュウされるぐらい叱られそうだ。
岩田さん鋭い目をする時があり、俺は怖かった。
芸能界がこれほど怖いなんて知らなかった。
三代目の登坂さんも性格悪くて腹黒いのかなぁ?
「ユウスケ君、彼女を見て何か感じない?」
「綺麗し可愛いなぁ、って、」
「もし、彼女が恋人で、他の男性に取られそうになれば?」
「ボコバコにしばきます!」
「俳優はしばけない気持ちを身体で表現するんだょ、例えば…また振り向かせる方法を」
直人君の演技指導は俺にはわかりやすかった。
「泣く事も手だし、強く抱きしめる、あえて冷たい態度だと、」
「紗英ちゃん、ユウスケ君の前に立ってあげて」
あの若造だった、天然の直人君と、ユウスケの関係を見ているだけで助かった。
関係者でも指導は無理だし、あの年代の気持ちを、教える事は、今の俺には無理だ。
ユウスケの挨拶はある意味役者さんの印象に残ってくれた。
びっくりした、関西人を舐められたらあかんで、なんて空気を変えてしまったと。
脇役さんのツッコミがある意味役者さんや監督に良い印象を持たれた筈だ!
こいつにひっくり返しさせられそうだ。
人を惹きつける者があれば、MCも出来る俳優に育てる道もある。
ユウスケがどれだけの力があるのか?
MCこなしてくれれば儲け物の人材だ!
不思議なオーラを感じている。
「おぃ、ユウスケの事頼んだぞ!」
これまた新人のマネージャーに頼んで俺は席を外そうとした。
「岩田さん、居てくださいょ、」
悲しそうな不安そうな顔をして俺を見るユウスケ。
お前勘違いするな!
墨田区のホステスかよ!
専属ホステスが「岩田さん、同伴してよね?」
そんな目をするな!
俺はあちら関係には全く興味ないんだからさ!
ユウスケがゲイなのか?
「岩田さん、親父から連絡あるかも?」
「浅井さんに連絡してくれたの!」
「一応留守電だけメッセージしました。」
「直人君、助かるよ!」
ユウスケがゲイでも同性愛者でも関係ない!
彼女の連絡先が分かれば…
俺は父親参観で息子が手を上げ、問題の回答待ちしている気分でユウスケを見ていた。
す
紗英ちゃんがユウスケの身体に抱きついて、ユウスケの気持ちに、感情を入れてくれていた。
「おぃ、マネージャーティッシュ!」
はぁ?
ユウスケ鼻血出しやがった!
もう役者さん監督全ての笑い者だ!
「ユウスケ君、楽しい、実に楽しい、岩田君、中々の拾い者だょ、彼は、」
「すいません、本当に素人に近くて…」
益々印象づけやかったユウスケ。
和みながら直人君の指導や紗英ちゃんの演技力で、ユウスケは感情を紗英ちゃんに向けていた。
関西人舐められたらあかんで、その通り皆さんに囲まれ可愛いがられるユウスケを、父親参観の俺も彼を温かい目で見ていた。
演技指導が深夜まで続いた。
いつもの俺ならとっくにバトンタッチして夜の世界を楽しんでいる。
本当の目的は浅井さんからの連絡待ちだ。
周りから見ればユウスケに力を入れている様にみえているが、直人君の直の浅井さんに絡める方法は、直人君しかいない。
変な親父と名前としているが、俺ですら中々会えない人物。
直人君がこの世界に守られているのも、彼の努力と浅井さんの影の姿だ!
浅井さん自身スカウトなんて無縁だと思っていたが、凄い人材をこの世界に残している。
沢山の俳優やアーティストを演歌歌手をこの世界に送りだした。
今はあまり活動していないが、彼女の事は知って居るかも知れない。
俺の情報と浅井さんの情報は全く違う、浅井さんが知らないと言えば彼女を探す事は絶望だ。
ユウスケは彼女の手をしっかり握りしめ彼女が直人君の元に行かないシーンを演技していた。
若造の暗記力がいいのか?
完全に演じていた。
そろばんの暗記力が役に立ったのか?
「ねがいましては~」
ユウスケの頭の中で玉が弾いているのか?
紗英ちゃんに大きな涙がこぼれていた。
あの彼女、どうしているのか…
深夜遅くなる緊迫した立ち稽古のユウスケの右の鼻にはティッシュを突っ込み感情移入して涙を流せる女優の紗英、やはり根性のある将来の光る素材の紗英。
俺は腹の中でユウスケの馬鹿っぷりに笑いが止まらなかった。
マヌケ過ぎるぜ、このユウスケは。
新鮮な気持ちに女性に対して免疫が少ないのか?
一度ユウスケ連れて抜きに連れて歩こう。
監督も笑う雰囲気でもないくら、ユウスケを必死に見ていた。
「さぁ、今日はここまでだ、直人君、紗英ちゃん、脇役さん、ユウスケ君も大丈夫か?」
監督のお許しがやっと出た。
直人君初め脇役さんは腹抱えてユウスケの鼻のティッシュに爆笑だった。
「岩田さん、すいません、俺トチリました」
「ユウスケ君、俺でもなかったょ、鼻血は、」
「お前関西人で良かったなぁ!」
脇役のドンがユウスケの肩を叩きフォローしてくれた。
「あざす!」
ふざけすぎのユウスケの頭を3回叩いてやった。
この可愛い性格が変わるんだよ、今の新鮮な性格が、マスコミと言う世界に入れば。
直人君は浅井さんのお陰でまだ性格は良く頑張り屋さんだ。
俺もユウスケを直人君みたいに育てたい。
やっぱりユウスケの授業参観なのか?
俺は?
時間だけ経過した。
浅井さんの電話は。
なかった。
「お疲れ様でした」
「あぁ、頑張ったな、ユウスケ、この調子で、マネージャーにバトンタッチだな!」
外は冬の寒い季節に朝日が登っていた。
「岩田さん、俺岩田さんにお願いしたいです」
この馬鹿男俺を誰だと思ってんだ!
「あのね、ユウスケ、お前は前に進だけ、俺の役目はここまでだ、甘えるな!」
「俺なんとなく何ですが、岩田さんの探してる女性の情報は俺といた方がいいと思います」
鼻血野郎が何ほざいてんだ?
俺にずっとマネージャー的存在になれと言うのか?
お笑いかぶれの関西人が!
一昨年来いって話しなんだょ、まったく。
「マネージャー、ユウスケ頼むわ、じゃあ、な」
やっぱりアイツ同性愛者なのかも?
聞いてるだけで、背筋が凍りそうだった。
直人君に連絡先頼んでいるから彼からの連絡を待つことにした。
フラフラ歩いていると、大きなキャリーバックにボストン鞄を持つ女性とすれ違った。
「あれ? 優華ちゃん?」
「岩田さん、おはようございます」
「引っ越し?」
嫌だ、挨拶のお電話しましたょ、諦めて地元に帰るんです、大変お世話になりました」
ぺこりと頭を下げた優華。
「残念だったね、そう地元に帰るんだ」
「もう、未練ありません、向いてなかったんですね、私は、」
「ごめんね、仕事回せずに、でもまた地元で頑張って」
「はい、地元で一般人として頑張ります、お世話になりました」
「じゃあね、」
彼女の通り過ぎる瞬間、俺は何かを感じた。
振り返る事をしなかった。
彼女も背を向けた俺を見る事もなかった。
何かを感じた俺の失敗だった。
数時間後。
直接浅井さんさんから連絡があった。
大物だけに俺は緊張しまくった。
「岩田君だね、直人のオカマ親父の浅井だが、人探しだと聞いてね、シルエット女優の話しなの?」
浅井さんから直人君のオカマ親父と名乗る浅井さんも凄いが、それを言わせる直人君も凄い。
直人君の話は小説欄の「直人」をご覧になれば理解されると思います。
「で、シルエット女優の件だね」
「浅井さんなら顔も広いしご存知かもと思いまして」
「僕の結論から話せば、2人居たね、綺麗なシルエットを醸し出す女優さんが、」
生唾を飲み込んだ。
「誰ですか? 浅井さんの一押しの女優さんは?」
「1人は◯◯オフィスのハーフモデルのローズちゃん、」
「もう1人は?」
「君もこの世界に何年腰据えてるの? 君の事務所の優華ちゃんだょ、」
「優華ですか?」
「君の事認めていだけど優華ちゃんを売らなかった君は業界のクズに近いよ、僕なら優華ちゃんを立派な女優に磨いていたね、」
「待って下さい、優華なんですか?」
「君に内緒で優華ちゃんをこちらに移籍させる話もしていたんだが、彼女の首は縦に振らなかったから、こっちも指加えるしかなかったんだょ、」
「浅井さんは優華の事見抜いていたんですか?」
「彼女の魅力は抜群だったょ、優華ちゃん売れるよ、君の事務所の人だから、最終は君が決めると思っていた、だが、売らない、クズだね、君は、」
浅井さんの携帯を持ちながら優華を駅へと向かい探していた。
クズだょ、俺は。
必死に必死に優華を探して一死不乱だった。
「浅井さん、優華辞めると…」
「逃した魚はデカかったんだね、じゃあ、直人頼んだょ、」
優華済まなかった、やっぱりあの雰囲気は違ってた。
東京駅をくまなく探す俺。
「おぃ、岩田、優華のプロフィールの出身どこだ!」
見つけてやれなかった優華の才能。
そして俺はクズだった。
「岩田さん、名古屋ですね! どうしたんですか?」
俺は走りながら名古屋行きの新幹線を外の窓から必死に探した。
「優華、済まなかった、」
次々に発車する新幹線を見送りながら、止まってる列車を汲まなく探した。
「優華、優華、すまない、」
数秒の窓に映る乗客を探した。
「優華、優華、お願いだ、優華、」
次々発車のアナウンスに俺の鼓動が不安に変わった。
「岩田だ、名古屋に向かう、当分戻れない、」
事務所にそれだけ伝え俺は名古屋行きの新幹線に乗った。
「知らなかった……」
疲れていた。
疲れているが脳は興奮状態だった。
浅井さんの「君は業界のクズ、」
その言葉を思い出していた。
あの時、あの時、優華を止めていたら。
俺がずっと憧れていた優華があのシルエット女優だったのか?
浅井さんの事務所に移らなかった。
浅井さんなら安心出来たのに。
何故断ったのか?
優華の辞める挨拶を電話で聞いていた俺。
「あっ、そう、じゃあ、」
本当に優華に仕事探していなかった、俺は、
名古屋行きの新幹線に乗り。
「優華、迎えに行くから、」
手を伸ばせば届いていたんだ。
俺の月下美人は。
優華の事など考えも仕事すら探す事など考えなかった。
夜のライトが薄暗い女性が男性と抱き合うシーン。
彼女の肩までの髪が少し風に靡きながら映るシーンはこの世の人間ではなく。
まさに綺麗に咲く、誰もが見れない間に役目を終わる月下美人の花のようなシルエット。
言われて見れば優華とすれ違う時に俺は彼女の雰囲気に何か感じでいた。
何故それに気づかなかった。
「優華…」
決して目立たない存在で控えめな性格が彼女の魅力を邪魔したのだろうか?
浅井さんはその魅力を俺より先に気づいていた。
ショックだった。
俺は何年この世界に君臨し、この世界でどんな存在を発掘して来たのか?
浅井さんに言われる通り、少し舞い上がっていたのか?
ポストだけ与えられふんぞり返っていたのだ!
隠れた魅力すら見つけてやれず、何が業界のトップを気取っていたんだ!
慣れない地方は全て若手のスタッフに任せ、俺は都心から出る事もなかった。
優華を連れて帰り俺の元から女優として手助けしてやりたいと思った。
新幹線から見る名古屋行きの車中で俺は少し新鮮な気持ちに変わっていた。
女優を追いかけるなんて俺の仕事では考えられない行動だ。
追いかけ俺の手で、優華の手を握り、東京に連れて帰りたかった。
今の俺が出来る彼女への謝罪だ。
ゆっくり且つスピードを出し、名古屋に向かう俺。
名古屋の土を踏めば簡単に優華を探せると思っていた。
名古屋駅に到着したがスーツ姿のままの俺。
まずコンビニで下着と充電器を購入。
「岩田だ、優華の本名を教えてくれ! あっ住所もだ、」
「黒木優子、住所は、はぁ?あま市のみ!」
「岩田さん、あま市しか書いてませんょ、」
あま市って人口どんだけ居るんだ?
「あま市の黒木優子を片っ端から連絡してくれ!」
「俺も探すっからさ!頼んだょ、」
長期戦になるかも知れないなぁ?
とにかく宿探しするしかないか?
俺は自分の若い頃を思い出した。
計画性もなく無鉄砲で走り出したあの若い頃。
青春してたょ、今の俺は。
業界に入り走り出してた。
何故かあの頃を思い出していた。
新米の俺は壁にぶち当たりながら、自分の方向性を必死に探してた。
こんな気持ちは何年ぶりかだよ!
とにかく優華を見つける事が先決だ!
知らない土地に佇んだ俺は、迷子になった気分だった。
地方に行ってもスタッフや沢山周りにいて全て宿までセッティングしている。
宿探しすら分からない。
東京の都心と違い勝手が分からない。
「参ったなぁ!」
駅員に情報を聞く事にした。
「あま市に行きたいんだが、電車使うの?」
あま市がどこにあるのかも知らない。
「えー遠いんですか?」
やってられん。
優華を見つけるまで帰らない、帰れない。
駅員に訪ねた。
「あま市までなら、徒歩で市役所駅から、名城線各停左回りから、栄駅、東山各停高畑行きに乗り、岩塚駅で徒歩で地下鉄の岩塚バスに乗り、千音寺バスから徒歩であま市になります」
「はぁ? そんなに乗り継ぐの?」
計算違いだった。
「あのさぁ、タクシーで行くよ、」
益々俺の浅はかな考えが間違っていた事に気づいた。
「すいません、金かかってもいいから、あま市まで頼むわ!」
「あま市のでこれゃへんまでだ?」
「えっ?」
おじさんかなりなまってるぜ!
「あま市でもたくしゃんあるから」
「まずはあま市の駅、あま市のどえらいとこまでだわ」
分からない、こいつ日本人かょ。
「市役所で!」
どえりゃい所まで連れて行かれんだ?
「岩田、分かったか?優華の住所は?」
事務所に連絡したが詳しい住所が分からないみたいだった。
「もっと探してくれ!全く分からない、頼む、」
「あま市だけでも、どえりゃい人口だから」
「そうなんですか…」
帰りたい気持ちと優華の手を握り連れ帰る気持ちで迷っていた。
簡単に頑張って、では、のつもりで始まった優華との別れに。
あいつ一般人として頑張りますって言ってたよな!
あの名古屋テレビに向かって貰えますか?
そちらの方が早い。
地方なら朝の番組に流してくれそうだ!
ラジオの手も考えられる。
俺は探す手段を変更した。
「名古屋テレビなら大丈夫だろう」
タクシーは名古屋テレビに向かっていた。
「優華……」
名古屋テレビのローカルなテレビ局に入ろうとした。
「はい、関係者いぎゃい立ち入り禁止だぎゃ」
このガードマンすらなまってるぜ!
「俺は東京の◯◯オフィス事務所の岩田です」
ガードマンに名刺を渡した。
「いや、入らせにゃーぞ」
俺は東京なら顔パスがこんな地方のテレビ局ですら入れないのか?
「岩田だ、今名古屋テレビに来ている、入れないんだょ、地方テレビ局に、ムカつくから、誰か連絡しろ!」
「ガードマンさん、業界の人間なんです、すぐに手配しますから、」
「最近多いかや、詐欺みたいな奴が」
俺は完全に怪しい奴扱いだった。
奥から走り出して来た男性がガードマンに話をしていた。
「これゃ失礼いたしました」
「紛らわしくて済まなかった、」
糞地方テレビ局に入る事が困難だとは思わなかった。
「すいません、岩田さんですね、」
こいつは地方の人間じゃないのか?
ぎゃ、ぎゃ、がないだけマシだ。
「東京から何故ですか? 名古屋テレビも、東京と合併ですか?」
んな訳ないだろうが、笑わせるな!
地方は所詮地方テレビなんだょ。
「人探しでちょっと頼みたい事があって」
「局長さんにでも会わせてくれる?」
地方テレビの局長ぐらいすぐに会わせて貰えると思っていた。
「◯◯オフィス事務所の岩田さんですか?」
「俺の事知らない?東京じゃあ顔パスなんだけど」
「すいません、勉強不足で、はい、」
「東京の浅井さんは?」
「浅井企画の浅井さんですか?」
さすがに浅井さんは全国共通だなぁ?
浅井さんがプラチナガードなら、俺はTSUTAYAガードの違いなのか?
「こちらでお待ち下さい、」
ローカルテレビの看板番組のポスターが壁に貼ってあった。
「いまいちだなぁ、名古屋テレビは、」
と思いながら人が入ってくるまで待っていた。
「大変お待たせ致しました」
どう見ても仕事出来なさそうな男性が入って来た。
「私は企画担当の浜中と申します」
すっ立ってる男性。
「東京◯◯オフィス事務所の岩田です」
名刺交換をした。
か、か、か、係長かよ!
「本当に申し訳けありません」
この俺に係長かよ!
「御用件は?」
「人探しなんですょ、」
「人探しですか?」
「報道でもいいからテロップ流してくれないか?」
「えっ? テロップですか?」
「そうテロップ!」
「上司と話ししないと、自分では、何とも、」
だから上をよこせよ!
邪魔臭い地方テレビなんだょ!
ぎゃ、ぎや、と叫びやがっては!
「君には用事はないんだょ、君に、」
にっこり笑ってやった。
「少しお待ち下さい、」
ボンクラめ!早く行け!
お茶も出ないのかよ!
地方テレビ事きりが!
ポスターもしっくりしないし、
シャチホコ祭りだと!
笑わせるな!
「優華を探す事が出来るのかよ!」
このソファーもビニールで安物臭いだよな!
病院以外使わないだろうが!
トン、トン
「はい、」
「大変失礼致しました、報道局の小泉と申します、」
「東京◯◯オフィス事務所の岩田です。」
「人探しをと聞きまして、」
「テロップお願いしたい、」
「報道局では対応出来かねません、」
チンたらチンたらしやがって!
東京じゃお前らはとっくにクビだぞ!
「地方のテレビ局ならどんな分類や報道機関にわかれてるの?」
「簡単な質問を 」
これでも簡単で明確につたえてんだが。
「報道番組の種類や枠の幅などどのような分担わくの設定なのかと聞いていますが?」
「はい?」
「あいーんじゃねぇのかょ!」
「意味がまたふかくなり……」
イライラしてきた金のしゃちほこに。
「ようはテレビでは探せないって事なんですね」
「すいません、お役に立てず、はい、」
もっと早く言え。
ボンクラが!
だから地方は嫌いなんだよ。
茶ぐらい出せよ!
♪♪♪
「岩田さん、多分ですが、優華ちゃんの実家らしき場所を探しました」
本当に地方局の融通や規模の違いにびっくりしたよ!
「すぐメモするからちょっと待ってろ、あっ、ユウスケどうだ?」
「岩田さんが居なくて大変なんです、泣いたり、仕事行かないと言ったり、困ってますから、早く帰ってきてください、・
「先に優華の連絡を、◯◯町◯番地◯の?◯」
「ユウスケに待ってろと伝えてくれ、後直人くかに連絡して応援お願いしますと頼んでくれ」
「いつ頃帰れそうですか?」
「わからん、しか言えないかなぁ?」」
「では気をつけて下さいね、」
優華の連絡先が分かった。
少し安心した。
あの糞ガキやっぱ同性愛者なんだろ!
背中が北極みたいに寒気がした。
タクシーを拾い優華の住所を運転手に住所伝えた。
カーナビに住所ん打ち込んでいた。
「お客さんかなり遠いがや」
「大丈夫だ、無賃の詐欺はしないから」
名古屋市民は東京の人間が嫌いなのか?
名古屋県民しか心を許さないのか?
聞いた話がある名古屋の人は自宅に招かないと。
だから喫茶店が多いのか?
昼飯を食うがどきも抜くメニューの数は半端じやなかった。
この付近は優華の実家なのか?
玄関を開け「すいません!」
優華の父親なのか?
無愛想だった。
「あんただれやが?」
「優華の親父の顔色は変わった。
「優華の東京の事務所の人間がやか?」
「はい、優華さんを迎えに来ました」
「優華じゃない、今は優子だ!」
親父さんの怒りはごもっとも、彼女を地元に帰らせたのは、俺に責任は感じてる。
「優子さんに会わせて貰えませんか?」
「今更何を感じてるだ、あいつは芸能界から、足を洗ったんだ、もう優子に近づくな!悪いが帰ってくれ!」
「少しだけ、話したいです、お願いします。」
「これ以外しつこいと、塩まくぞ!」
「やっと自分でケジメ付けて帰った優子さんに近づくな、帰れ!」
今日は諦めて帰る事にした。
全国ネットと地方局の違いをまじまじ感じた。
東京では顔パスの俺は地方局ではぎゃぎゃ警備員に止められる、東京のスタッフの応援で入れたくらいだ。
この名古屋に来て俺は、まだまだなんだと。
優華が地元に帰るまどの決断には、誰にも言えない悩み事があったはず。
その胸中すら聞いてやれなかった俺。
「優華ごめん、」
「父さん、もういいがや!」
優華の母親なのか?
あまりぎゃぎゃと叫んじゃ名古屋市の皆さんから苦情が来るので標準語に切り替えます。
「優子の母親です、すいません、主人が駄目なので、外でお話しを、」
やはり名古屋の人は家に入れたがらないのか?
「すいません、東京で優子さんが所属していた、事務所の岩田と申します。」
挨拶をし、喫茶店に誘われた。
どえらい派手な、喫茶店だった。
「優子さんは?」
「知り合いの紹介で仕事昨日から始めました。」
「彼女に会わせて貰えませんか?」
「もう、辞めましたから、」
「再度、売り出したいんです、」
「本人も納得して、帰って来たので、」
「そこを何とか出来ませんか?」
コーヒーが運ばれてきたが、コーヒーに付属していた、豚カツにはびっくりした。
「コーヒーに豚カツですか?」
「気に入らなかったら、スパゲティやらありますが、」
コーヒーだけなのに…
「お気に召しませんか?」
びっくりの組み合わせに。
「頂いていいのですか?」
俺はコーヒーの付け合わせの豚カツを頂いた。
「いくら来られても、無理です」
「彼女が納得されれば、大丈夫では?」
「東京行きも、猛反対を押し切り、優子の父親が反対して、次は勘当になります、優子もそれ相当を覚悟で、帰って来ました。」
俺は簡単に優華は俺の一言で帰って来ると思ってた。
「必ず俺が責任を持ち優子さんを育てます」
「本当本人も納得してますから」
「そこを何とか、お願いして、」
「あなたね!芸能界にいた、過去だけでも、恥ずかしいのに…」
俺はこの世界にしかいない人間だけど、芸能界って普通悪い過去なのか?
「芸能界って人気のある仕事ですが?」
コーヒーを飲み母親。
「ブラウン管の人だけですよ、そんな人は、反対に一発芸の人なんて悲惨では?」
確かにそう言われたら言い返せない。
「優子の縁談すらこっちは、諦めている位なんですよ!」
カツ丼は途中で食えなくなった。
優華の母親は畳かけるように話した。
「必ず売れるなんて保証もなく、岩田さんが保証出来ますか?優子の人生を、」
かなり怒りを押さえている母親、
「頑張りますから!」
「頑張った結果がこれなんですよ!現実の優子が」
ここまではっきり言われるとは思わなかった。
「優子さんの魅力がもったいんです。」
「なら、売れなかったら、岩田さんでしたか?優子をお嫁に貰って頂けますか?」
嫁さん。
それは俺の人生の選択にはない事だし。
「えっ?答えられますか?」
「…………」
「ほら、」
「………」
「少し出直して来ます、」
名古屋は頑固なのか?
真面目は両親なのか?
また足踏み状態だった。
優華の母親にこてんぱんに説教された気分で俺が泊まる宿さがしをしていた。
「君、この辺りに泊まれる、高級ホテルはないかい?」
高校生ぐらいのチャリ坊やだった。
「おじさん、警察に聞けば」
おじさんってか?
名古屋人は冷たいのか、世間一般がそうなのか?
邪魔臭いタクシーで高級ホテルを探して貰った。
残念だが、俺が思う高級ホテルとはかけ離れていた。
今日1日振り返って感じた、一般人と俺の価値観の違い。
優華がどんな気持ちで東京まで夢を求めて来たのか?
優華の両親もどんな思いで娘を都会に送り出したのか?
優華にすら感心がなかった俺。
「岩田さん、仕事ありませんか?」
「ああ、探しておくよ」
簡単に流していた優華の心の叫びを、俺はどうでもいい女くらいにしか思わなかった。
何があっても優華をまたあのライトに当ててあげたい。
優華の夢は夜開く、何故か昔の歌にあったよな!
宇多田ヒカルの母親だった。
前川清の元嫁だ!
あの頑固親父さんより優華にまず会いたかった。
携帯を持ち会社に連絡した。
「岩田、どう? そっちは?」
「岩田さんユウスケ泣くんですよ、岩田さん、岩田さん、てね!」
「あのボンクラオカマだぞ、直人君のサポートは?」
「テレビの撮影は順調です、あの、また新人の女優志願者が来てるんです、早く切り上げてくれませんか?」
「年齢は?」
「18才です」
「未成年の同意書あるのか! 親と面談は?」
「だから、岩田さん待ちなんですよ、早く帰って来て下さいよ」
優華を諦め東京に帰るべきなのか、優華と話し納得させ、東京の土に足を入れさせるべきか?
俺は悩んだ。
そして岩田さんと泣くユウスケにも悩んだ。
「よし、今日も行くか!」
俺が女性に会いに行く、また何度会いに俺から、
そんな気持ちは初めてだった。
都合良く女に連絡すれば、けつをフリフリついてくる女ばかり相手していた。
優華は違った。
まずはあの母親に優華に会うキッカケさえ作れば簡単なんだよ!
この俺に会えば優華は必ず俺に付いてくる。
下手すりゃあの親を捨ててでも付いてくる。
優華なら。
「おはようございます、岩田です。」
「あら、昨日のええっと……」
「岩田です。おはようございます。」
「岩田さん、もうお昼前ですよ…」
業界では夜でもおはようございますなんだが!
「優華、優子さんは?」
「仕事に行きました、岩田さん、諦めて下さい、優子の事は、諦めて下さい、忘れたいんです」
優華との芸能活動も忘れたいのかこの母親は。
「いくら来て頂いても、同じです。」
「勤務先だけでも、なんなら新しい携帯番号だけでも……」
「あまりしつこければ、警察呼びますよ!」
家の中に入られた。
計算外だらけ。
失敗や挫折すら経験のない俺は全てこの名古屋という土を踏み感じてた。
帰ろうか?
優華の綺麗なシルエットを諦めようか?
「すいません、優子さんには、岩田の事は話してくれました?」
奥から迷惑そうな母親が出て来てくれた。
「名刺わたしました。この人来たよって」
「名刺の裏に携帯番号書いてたんですが?」
「名刺ごと、渡しました、納得されました?お父さんに見つかれば厄介なの、帰ってくれます?」
「そうですか……」
「最後に、優子さんに、帰るので、連絡して欲しいと、伝えて貰えますか?最後に、」
「はい、はい、伝えておきます、期待しないで下さいね、」
「後1つ、優子は何時頃、家から出ますか?」
「もういい加減にして下さい!7時20分くらいです!」
多分これ以上は見込みなしだなぁ?
7時20分って朝だよな?
一般人の7時20分って。
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