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俺のもの

レス177 HIT数 58348 あ+ あ-

名無し
15/01/05 16:01(更新日時)



俺、好きな人いるんっすよ…



ただな…

これが、ちょっと…





No.1987259 13/08/12 19:56(スレ作成日時)

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No.1 13/08/13 20:07
名無し0 




『お前の好きになった人なら、……応援する。』

『マジっすか!』


『…あぁ。』

ん?

『先輩?なんか、歯切れわるいっすよ?』

『あ、あぁ…』
なんだ?
『先輩!はっきり言ってくださいよ!』




『……。…歳が、な?』
『歳?』

煙草をふかしながら、俺の先輩、野中竜二さんが軽く眉間にしわを寄せる。

『あぁ。……離れ過ぎてんだろ?』







俺の好きな人。


は、俺よりも20こ上の人だった。





No.2 13/08/14 09:37
名無し0 




歳。か~

やっぱ、無理あんのかな~


『………』


俺の尊敬する会社の先輩、竜二さんの言葉はやっぱ、重いよな。



先輩、ほんといろんな事あって、今やっと好きな人といられるんだ。


後輩の俺としても、めっちゃ嬉しいっつうか、…うん、ほんとさ、幸せ?になってもらいて~って思う訳で。




っつうか!
いや、今は俺の事なんだよな?


はぁ~
やっぱ…歳の差って、大きいのか~





No.3 13/08/15 12:34
名無し0 




初めてアノヒトに会ったのは、俺が高熱だした時で。



一人暮らししてる俺。


ある日、目が覚めると…

「っ…、いてー…」
全身の関節が痛くて、起き上がれない。


ナンだよ…

ひょっとして、俺、熱あんの…?


自分で自分の額に手を当ててみる。


ん…?
なんか、熱い…ような、気が……?


しかも、喉もいてぇ…



「風邪か?」


やべぇ…



「もしも…」

先輩に電話した。
喉が痛くて、うまく声が出ない。

「あ?…」
「……せんぱぃ…、」
「なんだ、お前その声。」
先輩…
相変わらず、こんな時でもクールっすね…。


「………」
「風邪ひいたのか?」
声にならない声で返事をする。





No.4 13/08/16 20:19
名無し0 




「すぐ、病院行ってこい。会社には俺から言っといてやる。」



先輩のクールな声に半分ビビりながらも、


俺は、近所の病院に向かった。





「小森さーん!」

俺の名前を呼ぶ声がする。


返事をしようとして、立ち上がりかけた。


「あ、いいですよ。そのままで」


え、…


「少し、お話聞かせてもらっていいですか?」



座っている俺の横に、マスクをした看護師さんが座った。



「ぁ…」


「喉、痛いですか?」


小さく頷く。


「はい。」
そう言って、看護師さんが俺にマスクを渡した。

あ…


「インフルエンザかもしれないので。」


マジか…











No.5 13/08/18 10:44
名無し0 




いろいろ、聞かれた。


「昨日は、熱何度ありました?」

「昨日…」

「計ってませんか?」


「あ…」


「え?」

「あの…体温計、持ってないんで…」


「え……」

看護師さん…固まってる…
「そう、ですか…。分かりました。」

「す、すみません…」

「謝らなくていいですよ。」

ニッコリ笑ってくれた。


俺も苦笑い。



「ただ…、いつから発熱したかを知る事ができたら、いいんですけどね。」


「…?」



「インフルエンザだとして、発症するまでに時間がかかるから。検査をしても、早い時期だと陽性が出ないんですよ。」




……あ、そういう事?

か。……




No.6 13/08/18 11:09
名無し0 




…そういえば、


「あの…、昨日の朝から、体調悪くて…」



ダチと遊ぶ約束してたけど、ラインで断りの連絡入れた。


「そうですか。昨日は、仕事行かれました?」


「いえ、昨日は休みだったんで…」



「じゃあ昨日は、ご家族と?」


「あ、いえ。俺、一人暮らしなんで。」



「そうですか。だから…」



え?

だから?……?



「今後のためにも、体温計は持っておいた方がいいですよ。」





めっちゃ、笑顔で言われた。







No.7 13/08/18 16:17
名無し0 




「とりあえず、移動しますね。」



「移動?」


診察室からはちょっと離れた部屋に連れて行かれた。



「ごめんなさい。もし、インフルエンザだったら、他の患者さんに感染したりするといけないので。」


申し訳なさそうに、説明してくれる。


そういう事か…

「あ、はい…ですよね?」



所謂、隔離室?ってこと?



「じゃあ、体温計挟めて下さいね。」


あ!体温計ね。
これ、買わなきゃな。



「うん…、結構高いですね。」


測り終えた体温計を見ながら、看護師さんが呟く。

高い…?

「え?あの、何度ですか…?」





No.8 13/08/21 19:28
名無し0 




「インフルエンザ!?」



鼻に綿棒みたいなもん、突っ込まれて。


検査したら、インフルエンザだって分かって…


点滴するからって言われたんだけど。


その前に、会社に電話した……。



「はい…。それで、一週間は休むようにって言われたんですけど…」




部長の驚きに、俺の方が更にびっくりしたっつうか…


「分かった。ゆっくり、休め。」


「すみません…」


だから、謝るしかなくて。







No.9 13/08/21 19:46
名無し0 




「どうかしました?」



俺の横で点滴の準備をする看護師さんが心配そうに聞いてくる。



「あ…。いえ……」

実は部長の驚き以上に、俺にとっては、大きなショックだった事があって…


「どこか、つらい所あります…?」



看護師さん…



「身体、痛いですか?」



痛い…ってゆうのもあるかも…です……



「何かあったら、おっしゃって下さいね。」



…っ、



「熱が…」


「え…?熱?」


さっき計った熱が―――

「40度だって…」


「あぁ…」


「俺…、40度の熱って、初めて…かもしんない…です……」



「あ…、そうですか」

「あの…」
「はい?」
「死んだり、とか…しませんか?」




No.10 13/08/21 20:07
名無し0 




バカかって言われるかもしんないような質問だって思うけどさ…



俺にとったら、ほんと、マジな話で…


「大丈夫ですよ。」


「……」

看護師さん…




「小森さん。」


はい…


看護師さんが、じっと、俺を見つめる。


「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。インフルエンザの時は、殆どの方が高熱出されますから。」

にっこり、笑う。


「あ…、」


そう…なんっすか?





「それに、今している点滴や今日出すお薬は、インフルエンザ用のものですから。きちんと、服用していただけたら、ちゃんと治ります。」



また、笑顔で説明してくれる。



ヤバい…

涙腺が―――





No.11 13/08/22 19:51
名無し0 




泣いてるとこなんて。

見られたくねぇ…



俺は、急いで瞼の上に自分の腕を置いた。



「………」

「………」



「小森さん、何かあったら、すぐナースコール押して下さいね。」



腕を置いたまま、軽く頷いた。



気づかれた…?


でも、看護師さんは、それ以上何も言わず。



ゆっくりと、部屋を出ていった。


マズい…

やっぱ、気づかれたよな…



今ごろ、噂されてんじゃねぇ…?



………

ハァ…
俺って、マジ情けねぇ…

今ごろ後悔するぐらいなら、泣くなっつう話で。



けど、あの看護師さん…




何も、フレてこなかったよな…





No.12 13/08/24 18:30
名無し0 




「お大事にどうぞ。」


「ぁりがとうございました…」



さっきの看護師さんが、点滴の針を抜きに来てくれた頃には…



流石に涙も止まってて。



点滴を終えた俺は、薬をもらって病院を出た。






あ~あ…
明日っから、仕事行けねぇんだよな…





自分のアパートで、ベッドに横になりながら……、


ぼんやりとそんな事考えてた。





あ…
薬、飲まなきゃな…


あ…

その前に、なんか食べないと…



って、…


今日はもういいや…。


っつうか、無理…



なんも、はいんねぇ…し




No.13 13/08/25 12:50
名無し0 




「…!、……」





いつのまにか、寝てた俺。


ひどく汗をかいてて


「気持ちわりーぃ…」





シャワー浴びるかな…


「あ、いや…俺…熱あったんだ…」




ひとまず、タオルで身体拭いて、着替える。



だりぃ…



「インフルエンザかぁ……」




ほんと、マジか…って感じだよ…


「………」
ふっと、思いだした。



「大丈夫だって、言ってたな。……」



あの看護師さんの顔が浮かんだ。




ピンポーン…



?…誰か来た。





「はい…」





俺は重い身体を引き摺るようにして、玄関を開けた。








No.14 13/08/27 09:43
名無し0 




そこには。


マスクをした先輩が立っていて…



「………」

あまりの驚きに声すらでなくて


「なんだ。まだ、声出ないのか。」


少し籠もった声で俺に話し掛ける先輩。



「!…」
いや…そうじゃなくてっ!


「電気ぐらい点けろよ。」


はっ…

「え…!?今、何時ですか!?」


「なんだ。声出るじゃねぇか。」


「え…」


「9時だ。」


9時?

「夜の?…」

「当たり前だろ。そんな事より、これ。」







意味も分からず受け取ると。



「お粥だ。」

「……え?お粥って…、先輩、作ったんすかっ…?」


「んなわけ、ないだろ。」


え?じゃ、……???



「彼女が、作ってくれた…。」



「彼女……って…、有里さん?!」






No.15 13/08/28 18:17
名無し0 




「あぁ。っつうかお前、マスクぐらいしろ。」


「!…すみませんっ!」





有里さん。と先輩。


今は別々に住んでるらしいけど、春になったら、一緒に住むって、先輩言ってたな~



「仲いいっすね!」

「……」

「……?」

「あぁ。」


「…………」

はいはい…
「あ?なんか言ったか?」

「あ!いえ…!」




あのクールな先輩が、こんなに素直に自分の気持ち、口にするなんて…!

好きな人が居るってさ、


こんなにも人を変えちまうのかな。




好きな人…ね…。



俺は…




いねーな。




まだ。


うん、まだ。






No.16 13/09/01 17:41
名無し0 




「うめぇ…」



先輩がさっき持ってきてくれた、有里さん手作りのお粥を食ってる。



「はぁ…、汗またかいてきた…」



全部は食べきれなかったから、残りは冷蔵庫に入れた。



また、身体拭かなきゃな~


先輩。
来てくれたのは嬉しかったけどさ…


「お前、くせぇ。」

とか言われて。


「…んな事、分かってます…」


泣きますよ…?



「けど。風呂には入んなよ。」

「?…」

「体力落ちてるんだから、身体拭くだけにしろ。」

「先輩…」

やっぱ。泣きます、俺…

「心配しなくてもいい。汚ねぇぐらいで、人間死んだりしねえから。」



先輩……
優しいのか冷たいのか、わかんないっす……

やっぱ…


泣きますっ…から!










No.17 13/09/02 20:03
名無し0 




そんなこんなで、また爆睡した俺。



目覚めると、朝になってて。



熱…
計ってみるか…。



昨日薬局で薬もらった時、体温計を買った。




「38度…」


まだ、そんなに熱あんだ…!


あぁ…まぁ。
あの看護師さん、言ってたしな…


『2~3日は、高熱出ますけど、心配いりませんからね。』




「はい…」

昨日の看護師さんの言葉に、ひとり返事する俺。


キモッ…


って言うな~

って…

俺、一人ぼけつっこみ………




相手、いないし。


先輩……。
いいよな~


……………





No.18 13/09/07 17:27
名無し0 




残しておいたお粥をレンジで温めなおして食べる。



お粥か…


俺も一人暮らし長いから、それなりに料理も……




できねぇ…



高校卒業してから、ずっと一人暮らしだけど。


ほんと料理なんて、な…


彼女。いなかったワケじゃないけどさ。

俺と付き合う女の子って、みんな料理できなくて…

いや!
まだ俺の方が、飯くらいは炊けるし!
…炊飯器が、炊いてくれるだけだろって、先輩にツッコまれたけど…




今度付き合う子は、有里さんみてぇに料理上手い子がいいなぁ~






No.19 13/09/07 18:28
名無し0 




『食べたいものを食べるようにして下さいね。』


あの看護師さん、そんな事も言ってたな…


『えっ?食べたいもの?あのっ、でも、よく言うじゃないですか!
消化にいいものをって。』


だよな?


『勿論、消化にいいものはいいんですけど、熱が高い時に無理して暖かいものを取るより、冷たいものが欲しければ、そちらの方がいいって事です。』


あ…?

『身体が欲してるっていう事なんですよ。』


そういう事か!

『わかりましたっ…!』

『あと、水分はしっかりと。』

『水分…あ、はい。水ですね。』


『水ではなく、スポーツドリンクです。』
『あ…スポーツドリンク…』
『はい…。出来るだけ糖分の入ってないもので。』



糖分の入ってないスポーツドリンク。

ね。



体温計と一緒に、500のスポーツドリンク3本を買ってきた。


…………






  • << 25 ハァ… 先輩、感謝っす… 500、3本なんて全然足りなくて 昨日、お粥と一緒に先輩が買ってきてくれた2リットルのスポーツドリンク。 それも5本… って 俺んちの冷蔵庫、そんなにでかくないっすよ? それだけで、いっぱいになった冷蔵庫、見ながら。 ほくそ笑んでた俺。 こんな姿、先輩に見られたら… きっと、殴られんだろうな~ って俺… ヤバい! 末期症状じゃね? 早く、治そ…!

No.20 13/09/09 18:53
名無し0 




話の途中ですみません。
もし、読んで下さってる方がいらしたら―――


今日、気づいたんですが、ここミクルは主のレスのみ、ピンクになったようで。

スマホの方は以前からだった事も、今日知りましたが…

ガラケーの自分にとっては、衝撃的で…


まさか、小説板にまでとは思わず…

ただ正直、書く気も見る気も失せてしまいました……



こんな事思う人間は自分ぐらいなんだろうけど、この先このまま書いていきたいと思えなくなり



ここでストップしたいと思っています



もし、こんなお話でも楽しみにしてくれてる方がいらっしゃったら、本当に申し訳ありません…


短い間でしたが。
本当に、ありがとうございましたm(_ _)m





『俺のもの』の主より





No.21 13/10/08 19:30
名無し0 






あなたのレスをキッカケにしても


いいだろうか…





優柔不断な主で


申し訳ないけど…





と、ひとまず独り言を―――
呟いてみた。



(笑)




No.23 13/10/08 19:49
名無し0 

>> 22


こんばんは


レスありがとうございますm(_ _)m



あと、読んでくださってたんですね
重ねて、ありがとうございますm(_ _)m



ただ、
素人の小心者なので、期待せず、気長にお待ちください(^_^)


では。


No.25 13/10/09 15:07
名無し0 

>> 19 『食べたいものを食べるようにして下さいね。』 あの看護師さん、そんな事も言ってたな… 『えっ?食べたいもの?あのっ、でも、よく…


ハァ…

先輩、感謝っす…



500、3本なんて全然足りなくて



昨日、お粥と一緒に先輩が買ってきてくれた2リットルのスポーツドリンク。



それも5本…

って



俺んちの冷蔵庫、そんなにでかくないっすよ?


それだけで、いっぱいになった冷蔵庫、見ながら。



ほくそ笑んでた俺。




こんな姿、先輩に見られたら…



きっと、殴られんだろうな~



って俺…




ヤバい!

末期症状じゃね?





早く、治そ…!




  • << 32 「おはようございまーす!」 「あ、お前。生きてたのか。」 「ちょっ…先輩!」 無事、インフルエンザから復活した俺 会社に着いて、先輩に挨拶した途端のセリフがこれだかんなぁ~ 「ヒドいっす…」 「冗談だ。」 「っ…!先輩!」 なんて。 相変わらず先輩にからかわれながら 俺は、部長にも挨拶して いつものように仕事を始めた。

No.26 13/10/12 11:25
名無し0 

>> 25


と、言う事で…


また、細々と書いていこうかと思います。



止めると言ったり、また書き出すと言ったり


いい加減な主。

ですが



読んで下さってる方がお二人ほどいらっしゃるみたいなので(^_^;)


相変わらずのマイペースで、仕事の息抜きに書いていこうと思ってます




主より



No.28 13/10/12 14:48
名無し0 

>> 27
レス、ありがとうございますm(_ _)m



マイペースマイペース…

(^_^;)

No.30 13/10/12 16:30
名無し0 

>> 29


レスありがとうございますm(_ _)m


素人の書く話です
なので、あまり期待されずにお待ちいただければ…
有り難いです(^_^;)
我が儘で申し訳ないですf^_^;


No.32 13/10/13 14:28
名無し0 

>> 25 ハァ… 先輩、感謝っす… 500、3本なんて全然足りなくて 昨日、お粥と一緒に先輩が買ってきてくれた2リットルのスポーツ…


「おはようございまーす!」


「あ、お前。生きてたのか。」

「ちょっ…先輩!」





無事、インフルエンザから復活した俺



会社に着いて、先輩に挨拶した途端のセリフがこれだかんなぁ~




「ヒドいっす…」


「冗談だ。」


「っ…!先輩!」




なんて。
相変わらず先輩にからかわれながら




俺は、部長にも挨拶して


いつものように仕事を始めた。






No.33 13/10/13 14:42
名無し0 




「ふー…」



やっぱ、病み上がりはキッツいな…




「お前、死にそうな顔してんぞ。」


し、死にそうって…




帰りの更衣室で先輩にそんな事言われて。



「仕方ないっすよ~…」

「なんだ?」



「だってまだ、あんま食欲なくて…」



「………」


え…?無言?スルー?



「食欲ないんじゃ、ないだろ。」

「え?」


「飯、作ってないだけだろ。」



「っ…!」

せ…先…

「図星か。」



う…



「こんな時ぐらい、実家に帰れよ。」




「!」












No.34 13/10/13 14:50
名無し0 




実家…


「……」


「まだ、無理なのか…?」



「…先輩……」



「そっか。分かった。」


「………」


先輩…俺…


「今日は、早く帰って寝るんだな。」




「…っ、……はい、……」








実家か…



もう、何年、帰ってないだろう…




高校卒業して


逃げ出すように、家を出た俺…




母さん…






No.35 13/10/13 23:36
名無し0 




まだ、スーパーに行く気力がない。
とりあえずアパートの近所のコンビニに寄る。



パスタとコーヒーを買った俺は、車に乗り込む。



ふと、買ったばかりの商品に目をやった。



こんな時、
母さんだったら、何作ってくれる?


は…




すぐには思い出せなくなっちまった…



……………





どうでもいいや。



俺は、ゆっくりとコンビニを離れていった。





  • << 38 アパートの駐車場に車を止めて。 コンビニの袋を手に取り、自分の部屋に向かって歩いていく。 俺の部屋は二階にあって、階段に近づいた時だった。 一階のある部屋の扉がゆっくり開いた。 何気に目を向けると… 「あ…、こんばんは。」 え…? もう、俺が帰ってきた頃は、薄暗くなっていて よく見えない… 「……、あ…の?」 「あ!突然、すみません…!」 え…と、… この部屋って、… 確か空き部屋になってたはず… 「今日、引っ越してきました…。」 「あ…。引っ越して…」 そういう事か~

No.37 13/10/14 08:54
名無し0 

>> 36
レス、ありがとうございますm(_ _)m

ずっと待ってくれてたんですか

すみません
どうしても、このピンクが許せなくて(^_^;)


ま、いつも書いてますが、かなりのマイペースですので、また、待っていただく事になると思いますが(^。^;)

それでもよければ、お付き合い下さい。



ありがとうございました(^_^)

No.38 13/10/14 13:51
名無し0 

>> 35 まだ、スーパーに行く気力がない。 とりあえずアパートの近所のコンビニに寄る。 パスタとコーヒーを買った俺は、車に乗り込む。 …


アパートの駐車場に車を止めて。


コンビニの袋を手に取り、自分の部屋に向かって歩いていく。




俺の部屋は二階にあって、階段に近づいた時だった。



一階のある部屋の扉がゆっくり開いた。




何気に目を向けると…



「あ…、こんばんは。」


え…?

もう、俺が帰ってきた頃は、薄暗くなっていて


よく見えない…




「……、あ…の?」



「あ!突然、すみません…!」



え…と、…



この部屋って、…


確か空き部屋になってたはず…





「今日、引っ越してきました…。」



「あ…。引っ越して…」


そういう事か~





No.39 13/10/14 14:11
名無し0 




「すみません!ちょっと、待っていただけますか!」




その新しい住人は、そう言って


部屋の中へ戻ってしまう。



「!?…」



なに?

「………?」



ま、いっか…


その部屋には、もう既に灯りがついてて



上の自分の部屋を見上げると、まだ真っ暗で




当たり前か~


なんて。
一人、心の中でつぶやいてみた。





「すみませんっ…」


慌てたように、部屋から出てきた新入りさん。





手には、何か握っていた。



「あぁ、いえ~」



俺は軽く、返す。




「…?!」


謝りながら、俺に近付いてきたその新入りさんが、俺を見てむちゃくちゃ驚いている。






  • << 41 ん?なんだ? 「…?え…?」 俺は、自分の身体を見た。 いやっ…だってさ、そんなびっくりした顔されちゃあ なんか、俺の恰好が変なのか?って思うワケで 「小森さん…?」 「へ?」 俺は、俺の名前をいきなり呼ばれて アホみたいな反応してしまった。 「え…?え?俺の…名前…」 俺の名前を呼ぶ、その人をじっと見る。 「え?えっとー…」 分かんねー… 知ってる人間かって思ったけど 「あのー…」 薄暗いから、じゃねぇ… やっぱ、しらねぇよ…?

No.40 13/10/14 14:25
名無し0 




またまた、話の途中で申し訳ありませんm(_ _)m



今までレスしてくださった方々へ―――



突然の事で驚かれるかもしれませんが



とりあえず、これ以降、自スレ設定にさせて頂きたく…m(_ _)m(汗



出来れば、ご気分を悪くされる事のないよう、切にお願いしたく…m(_ _)m


過去にネタばれされた経験により、かなりびびっており…(苦笑
書く気を失った事があったので…💧(笑)




ま、ネタばれされなくても、レスしてくださった方々には、バレてると思いますが(^_^;)


すみませんm(_ _)m




それでも、ペースは恐らく変わらないと思いますが…(^_^;)




では、これからもお暇な時にお付き合い下さいm(_ _)m




主より



No.41 13/10/14 14:49
名無し0 

>> 39 「すみません!ちょっと、待っていただけますか!」 その新しい住人は、そう言って 部屋の中へ戻ってしまう。 「!?…」…


ん?なんだ?


「…?え…?」


俺は、自分の身体を見た。


いやっ…だってさ、そんなびっくりした顔されちゃあ


なんか、俺の恰好が変なのか?って思うワケで






「小森さん…?」



「へ?」



俺は、俺の名前をいきなり呼ばれて



アホみたいな反応してしまった。




「え…?え?俺の…名前…」





俺の名前を呼ぶ、その人をじっと見る。



「え?えっとー…」


分かんねー…



知ってる人間かって思ったけど





「あのー…」



薄暗いから、じゃねぇ…



やっぱ、しらねぇよ…?




No.42 13/10/14 15:03
名無し0 




「あ!そうですよねー!」


ん?


「私の名前言っても、きっと分からないと思うから。」


「はい…?」



な、なに?


「インフルエンザ、」



「え…、」

インフルエンザ?



「治ったみたいですね!」



インフルエンザ。
治った。
……


「えっ!なんで、俺がインフルエンザ…」





その人が、にこっと笑った。


この笑顔……


―――………








No.43 13/10/14 15:24
名無し0 




「あぁぁぁ!!!」



あまりの驚きに。
俺はまた、とんでもないデカい声を出してしまってて…




「わっ…!すみませんっ…!」


その人に謝っていた。




「ふふっ…、私はいいですけど?」


また、笑った。




「すみませんっ…」



「また、謝ってますね~」



「あ…」




「でも、安心しました。そんな大きな声が出せるくらい元気になったって事ですもんね。」



「あ…、はいっ…」




ま、元気になったと言えば、元気になった…みたいな…?



え?いや!そんな事より…!








「神坂と言います。改めて、小森さん?宜しくお願いします!」




深々とその人は、頭を下げた。






No.44 13/10/14 18:34
名無し0 




今俺は…


その、神坂さんにもらった引っ越しの挨拶の洗剤を手にして



玄関に突っ立ってた。






「こうさか…さん…?」

「はい。神の坂って書いて、こうさかって読みます。」



「あ…、はい…、分かりました…」




「じゃ、私、今から仕事なんで。」


「え?仕事…?」


「あ、はい。夜勤です。」


あ、そっか!


「じゃ、また!」


「あ…えっと、はい!」



神坂さんは、そのまま車に乗って、アパートを後にしたわけで。…










No.45 13/10/14 19:03
名無し0 




そ。
この神坂さんっていうのは…



俺がインフルエンザで、お世話になった病院の看護師さんなワケで…


点滴してくれた人なワケで…




いや俺…今、めっちゃ、ドキドキしてるんすけど…



は!?
熱!?
また出てきた!?みたいな…!


いや…




俺…



アノヒトに…




泣いてるとこ。



見られたんだ…よな…?





ヤバい…



ヤバいっ…




そんな人が、俺と同じアパートに引っ越してくるなんて…!




どうする?



どうすんだよっ…!





No.46 13/10/14 19:18
名無し0 




「なんだ、お前…また、熱でたのか?」



翌日。
会社で会った先輩に、こんな事を聞かれた俺。



「いえ…、熱はでてません…」

たぶん…



「じゃあ、なんだ。そのシケた顔は。」



「先輩…」



「あ?」


「……いえ、」


「そうか。」


!!
「先輩!」

「だから、なんだ。」



「っ…!俺…」

「………」







「泣き顔…」

「は?」



「…見られたんすっ…」


たぶん…

いや…、

ほぼ百パー間違いない!




No.47 13/10/18 18:54
名無し0 




「泣き顔?」



俺は事の経緯を話した。



「お前…。」


ね…先輩
誰だって落ち込みますよね…?


「アホか。」


「え…」
今、アホって…?

「アホかって言ったんだ。」


いや、先輩…
「聞こえてますっ…けど!」


「なんか、その時言われたのか?」


「え…?」


「昨日、その神坂さんか?…に会った時、嫌みでも言われたのかって聞いてんだ。」


「?…あ、いえ…」




先輩は、俺の顔も見ず、煙草を吹かしてる。



え…

「例えば。お前のあほ面神坂さんに見られたとして。」



先輩…
今何気に、俺の泣き顔の事…あほ面って…

「はい…」



「もし本気で馬鹿にしてたら、昨日会った時に馬鹿にされてんだろ。」



!!…


「そもそも。お前のあほ面なんか、誰も気にしちゃいねえ。」



うっ…
先輩、また…!

「傷つく…」


No.48 13/10/28 17:30
名無し0 




「傷つくとしたら、お前じゃなくて神坂さんだろ?」


「え…?」


先輩の言葉の意味が分からない

「あの…?先輩?」


「看護師なんだろ?神坂さんて。」


「あ、はい…」


「守秘義務って知ってるか?」


守秘義務…


「はい…」

それぐらい、俺だってっ…

「でもっ…!俺の泣き顔とはっ…!」

「関係ねえさ。」

!…だったら!



「患者の事をべらべら喋るような職業じゃないだろって事だ。」


「!……」


「それに…、」
「…?」
「そんな人間に見えたのか?神坂さんの事。」



あ…


俺は、病院での出来事を思い出していた。

あの時…看護師さん…、神坂さんは、泣いてる俺の事、何も言わず…見てた…


「だから、傷つくのはお前じゃねえって言ってんだ。」






No.49 13/10/28 17:43
名無し0 




先輩に言われた言葉は、バカで浅はかな俺を冷静にしてくれた。



だよな…


昨日の神坂さん…
ほんとに、普通だった



ま、当たり前だって言えば、当たり前なのかもしんねぇけどさ。…





俺は、軽く落ち込みながら、アパートに帰ってきた



車から出ると、



神坂さんの車が目に入る。


神坂さん…






No.50 13/10/28 17:57
名無し0 




「小森さん?」



「へ?わっ…」

神坂さん!?



「どうしたんですか!?そんなに、びっくりして?」



「すいませんっ!」


俺、思わず謝ってた…



にっこり笑った。…神坂さん…

「なにを謝ってるんですか~?」



「!あっ…、あ、いえっ!」

マジ…俺って


変なヤツ……


神坂さんにも、そう思われても仕方ねぇ…よな





でもさ、そんな俺の勝手な事情なんか、話せるワケねぇし…






No.51 13/10/28 18:15
名無し0 




「今日も、コンビニ…?」


そんな俺の気持ちを知ってか知らずか


話題を変えた神坂さん




さっき、コンビニに寄って買ってきた弁当の袋を見る俺。



「あ…、はい…。」


「食欲、まだないですか?」


「あ!いえっ…、あ……」



食欲、ないワケじゃねぇ…けど




昨日の先輩とのやり取りを思い出す。




「………」


「……小森さん?」



っ…

なんか言えっ…俺!



くそっ…




No.52 13/10/29 11:51
名無し0 




「あの…、ちょっと待ってくださいね!」


え?あ…


神坂さんが、自分の部屋へ戻っていく。






「………はぁ…」


ナンだよ、俺…

出てくんのってため息だけかよ…







弁当と一緒に買ってきた缶コーヒーを開けて。


一口飲む




「あったけー」



ふと見上げた夜空は






星がいっぱいで





実家を思い出した…



こうやって、昔、星眺めてたっけ…







母さんと。…………








No.53 13/10/29 12:08
名無し0 




『え?妹……?』



『そう…』



母さんが、知らない赤ん坊抱っこして玄関に立っていた。




『いや…、何言ってんの~』


何かの冗談だろ!


そう思って。




『陽平…』



母さんが俺の名前を呼ぶ。


『は?…』



『あなたの…妹、なの…』

妹……


『…妹、って…』






No.54 13/10/29 14:13
名無し0 




「すみませんー、お待たせして…!」



神坂さんが、急いで外に出てきた。



神坂さんの声に、現実に戻る俺…




「あ…?あぁ、はい…」



「これ、良かったら…!」


神坂さんの手には、ちょっと大きめのタッパーが握られている。



「?…え、これ…」

「あぁ、今日おでん作ったんです!沢山作っちゃったから、良かったらって」



「おでん…」

「あ!…もしかして、嫌い…?」

「ぁ…いや、そんな事ないですっ…」


「良かった~じゃ、これ。」


タッパーを渡す神坂さん


受け取る、俺…



「タッパーは、いつでもいいですから!じゃ。」


そう言って、神坂さんは自分の車の方へ走り出す



「!、あのっ…!」


振り返った神坂さん。





「あぁ!私、今から夜勤なんで…、」


え!

「夜勤…」


「はい、じゃ。行ってきます!」








No.55 13/10/29 14:27
名無し0 




気付けば…



俺は、神坂さんからもらったタッパー握りしめて


神坂さんの車、

見送ってた。




あ…!
「お礼…!」



言ってねぇや…



ありがとうございます…



心の中で呟く。









「弁当…どうすんだ…」


自分の部屋に入って


一人、また呟いていた




キッチンの小さなテーブルに、弁当とタッパーを置く。



ゆっくり、タッパーの蓋を開けた




まだ、暖かかった


「うまそー」





弁当とおでん、両方は無理だけど




とりあえず。



おでん、食おう…!






No.56 13/10/29 16:11
名無し0 




神坂さん…

夜勤って言ってたな



ってさ、昨日も夜勤って言ってたよな?…




神坂さん…


結婚してんのか?



いや、誰かと居るの見たことねぇし

って!まだ、ここに引っ越して2日じゃん?




そんな事、
どうでもいい…か




おでん、


うまかったな…





結局、俺、弁当も食ったけどさ



おでんがうますぎて、つい、な~





どんだけ食ってんだっつう話だよな~





!!

………


俺…
食欲、でてきてる…?





俺にしては珍しく、ソッコーで洗ったタッパーを、ぼんやりと見ながらそんな事を思っていた……





No.57 13/10/30 16:32
名無し0 




『妹って!…』



ガキの俺にだって、そんな事ぐらいわかる


居間に座った母さんと俺


母さんのすぐ横で、ぐっすり眠っている赤ん坊




母さんがちらっと、その赤ん坊を見た



それが、なぜか悔しくて

『母さんのっ…、子じゃ…、母さんが産んだんじゃないだろ!』


思わず、大きな声で叫んでた





今朝。
俺が学校行くまで、普通だった…




『陽平…、』

『なのに…、なんで!俺の…妹…なんだ…』




『……陽平』




『父さん…、浮気でもしたのかっ…!』



母さんの顔、睨みつけた俺



はっとする母さん


『ごめんね…、陽…』


っ…
父さんが、浮気…



ただ、
咄嗟にでた言葉だった
ただ…
思いつきで、放っただけだった…
のに…

認めた母さんが、許せなくて



『なんで…母さんが、謝んだ…!』

責めていた


『!…』

何の罪もない母さんを



『なんでっ…!!』


なんで…だよ……




俺の声に驚いて泣き出した赤ん坊を





母さんは、

黙って抱いていた





No.58 13/11/22 18:10
名無し0 




その日を境に


父さんは帰って来なくなった




理由なんか聞かない


母さんは、何か俺に言いたげだったけど


無視した。




理由なんか聞いて、どうすんだ…


俺が…
聞いたとして



なんか変わるのか



前のように


父さんと母さんと俺の…

3人の生活が戻ってくるのか?




父さんと…母さん…と、…俺……




誰が…


誰のせいで








No.59 13/11/22 18:33
名無し0 




そんなある日、家に帰ってきた俺。



玄関の鍵が空いていた


いつものように、何も言わずに家へ上がる。



台所を通り過ぎようとして…


『あら、陽平くん?』


え…

母さんの声じゃない



台所から出てきたのは、近所のおばさんだった。


『おばさん…?』

なんで…?


『あぁ、お母さんね~仕事で遅くなるって。』

『仕事…』



またか…


『そう。だから、おばさんが夕ご飯作るからね。』

『え?あのっ…』

『あぁ、気にしないで!たいしたもの作ってる訳じゃないしー』


『…いつも、すいません』

『いいから~!それより、陽平くん、來未ちゃんの事、ちょっと見ててくれない?』

來未……

『……』



『さっきね、保育所からおばさんが預かってきたんだけど、居間に寝かせてるのよー。お願いね。』


そう言ったおばさんは、俺に背中を向ける。




來未。


母さんが連れてきた、……



誰が名付けたかなんて、俺は知らない


興味なんてねぇし…






No.60 13/11/22 18:47
名無し0 




鞄を抱えたまま、居間に入る。



來未は、
……そいつは、小さな布団に寝かされてた




『………』


ぐっすり眠っている




『陽平に目元がそっくり…』


母さんは、來未を抱っこしながら、時々呟いていた


まじまじと顔を見る


『似てねぇよ…』



俺に…、
似てるとかっ…


『っ…!言うなっ…!』




持っていた鞄を投げつけた。



バンッ!!







寝ていた來未が泣き出した。





No.61 13/11/23 09:35
名無し0 




物音と泣き声に、

おばさんが慌てたように、居間に入ってくる。



『!…どうしたの!?』

はっとした…


『陽平くん…?』



『っ…』


俺……



『あらら、泣き出しちゃったのねー。』



そう言いながら。

おばさんは、俺の鞄を拾い上げ



そっと俺に渡した。…



『!………』


『ごめんね?陽平くん。』


え?


『受験の大変な時期なのにねー。來未ちゃん、頼んだりして。』


!……

ち!違……


『おばさん、ご飯の支度もう済んだから~。陽平くん、もう部屋に戻って勉強してね?』






『………』


俺…

『俺っ…』



『お母さんにも言われてたのよ~』


?…

母さんに?


『陽平くん、今大事な時期だから、負担掛けたくないって。』



『負担…』


負担って…




No.62 13/11/23 11:01
名無し0 




俺には、親以外親類と呼べる人はいなかった。



両親とも、自分たちの親は死んだって聞かされてて


だから、小さい頃から、このおばさんが何かと俺や家族の面倒をみてくれていた


年は母さんより、少し上で。


母さんも、このおばさんの事、ほんと頼りにしてた



元々、パートの仕事はしてたけど…
來未が来てから、常勤で働くようになって。



更に帰りは遅くなっていた。



だから、おばさんが來未を迎えに行って、母さんが帰ってくるまで、おばさんちで來未を預かってくれていた。


でも、今日は状況が違ってて…




『ごめんね~。おばさんち、おじさんが風邪ひいてて。』


『風邪…』

『そうなの。だから今日は、うちに來未ちゃん連れて行かない方がいいと思ってね。』


『…ぁ、…』



それって…


『お母さんね、來未ちゃんが居るから…って、…
陽平くんに、負担掛けられないって。
なのに、結局おばさんが陽平くんに負担かけちゃった…。』





來未が居るから…


來未が…





いなけりゃ








No.63 13/11/23 11:20
名無し0 




おばさんの…


『?』


『おばさんのせいじゃないですよ…』



『え?あ…、』


おばさんは座ったまま、泣きじゃくる來未をあやしている。




『悪いのは…!』

來未…


『!!陽平くんっ…!?』

來未さえ、いなけりゃ!

『!!…陽平くん!』




いつのまにか。


強く握りしめていた拳に気付く俺




『陽平くん!』


おばさんの顔を見た。




『!?…おばさん?』


目にいっぱいためていた涙に気付く…





『なんで…?』


おばさんが…泣くんだよ…?




『ごめん…、ごめん。…陽平くん……』






だから、なんでっ…


『なんで…おばさんが…』







No.64 13/11/23 11:35
名無し0 




『…ただいま。』



玄関から、母さんの声がした。



『あ…!』


おばさんが、また俺を見る。



呼吸が速くなる。



『ただいま…。…陽平?』


居間に入ってきた母さんが、俺を見つけて名前を呼ぶ。




母さん…


『え…、どうしたの?…』



突っ立ってる俺と、


來未を抱っこするおばさんを交互に見つめた後、



母さんは、

不安げに俺を見た。




俺?

何かあった事を敏感に感じ取った母さんは。





俺が、原因だって…


そう思ってんのか…!?



來未じゃなく…



俺なのか?






『そんな顔!すんなよっ!!!』






No.65 13/11/24 11:43
名無し0 




それから俺は、


家を遠ざけるようになる。



高校は、ほんとは行くつもりなくて


ただ、母さんの言葉が引っかかって



『お願いっ…。高校は、高校だけは、行って…!
……約束し…』


『約束?…、どうせ、父さんから何か言われたんだろ?』


『違っ…。とにかく…、お願い…高校は、ちゃんと行って…!』



何が違うんだっ…

出て行った父さん…

が、 ………


『今さら…!!』


父親面したって…



『母さんが、…母さんと一緒に居るのが嫌ならっ…!』



『は?』


『ぁ…、違うの!』

そういう事?


母さんも、俺の事、見放すんだ…



『分かったよ…』


父さんは、浮気相手選んで

母さんは、來未を選んで…




俺は


俺には、……






No.66 13/11/24 12:02
名無し0 




『母さんにとっては、陽平も來未も、大事なの…
比べる事なんてできない…!』

『………』


両方とも大事?

赤の他人と俺を…一緒にするのか?



『陽平…?』

『………』


『…それは、これからも変わらないから…』



変わらないか…

俺より、來未が…大事だって事だよな?















しばらくして


俺は、進路を決めた。





No.67 13/11/24 13:21
名無し0 




決めた先は、県外の高専。



田舎だったから、通っていくには無理で、



ちょうど学校の寮があったから、そこに入る事にした。



ま…寮があったから、そこに決めたっていう方が合ってんだけど…



電気の専門に興味があったし、普通高と違って、知識や技術も学べて、資格も取れるから



その時の俺には、ちょうどいいって思った。



進路を決めた時



母さんは、反対しなかった。



少し、はっとした顔を見せたけど…。








寮に入る日。


駅まで送っていくって言った母さんの言葉を遮って



『バスあるから、一人で行く。…』



『……じゃ、バス停まで』





荷物なんて、殆ど送ってたから、自分のバッグぐらいで…



だから俺は。…



母さんに言った時間より早く、家をでた。





No.68 13/11/24 13:57
名無し0 




早く、身軽になりたかった。


俺の中で、
母さんの事が…
重荷になってたのかもしれない。



靴を履いて。

不自然なくらい静か過ぎる家をもう一度見渡した。





『母さん……』



小さく、呼んだ。



…返事が


聞こえたような気がした。


んなわけ、ないか…





俺は静かに玄関を閉める。


そして、見慣れた家の鍵を、玄関脇にあるポストに入れた。


カツンと音がした…


もう二度と、この家に、母さんの所に、戻ってくるつもりはなかった。



俺は、バス停に向かって歩き出す―――







『陽平ーーー!!!』


家の中から、母さんの声がした。

俺の名前を呼ぶ母さんの声が―……

『!!』




俺は、走った。


無我夢中で。





意地しかなかった。


15の俺には、それぐらいでしか自分を見せる事ができなかったんだと思う。








No.69 13/12/01 11:18
名無し0 




翌朝。

俺は、タッパーを持って神坂さんの部屋の前に立っていた。



どうすっかなー

まだ朝はえーし


昨日、夜勤だって言ってたしな。


!、車…



駐車場を見ると、神坂さんの車はなくて


やっぱ、まだ帰ってきてねぇんだ…




俺は迷った挙げ句
袋に入れたタッパーを扉のノブに掛ける。







ありがとうございます!
…うまかったッス…




久々に思い出した昔のコトに


ちょっとざわついた夜





……母さん、

か…



また空を見上げる。



帰りは雨かな





No.70 13/12/01 15:15
名無し0 




神坂さんの部屋から、笑い声が聞こえてくる。



その日仕事から帰ってきた俺は、ふと足を止めて

神坂さんの部屋を見つめる。



誰か来てんのかな?


扉を見ると、今朝俺が掛けた袋が見当たらない。



気づいてくれたんだ…


どうすっか…


お礼、ちゃんとしたいけど


………


誰か来てるんじゃ



「また、今度にするか~…」




階段を2~3段上がり始めた時だった。




「小森さん…!!」



階段の手摺りに手を掛けて、そのまま振り返った。



「あ…、こんばんは…!」



神坂さんだった。



「あの!昨日…」

お礼を言おうとして。



「小森さん!ちょっと!」


神坂さんが、俺の腕を掴んで引っ張る。


「えっ!?」


No.71 13/12/01 15:32
名無し0 




半ば引っ張られるようにして



俺は、神坂さんの部屋の前まで連れていかれる。



「あ…、あの!?」



「あ!ごめんなさい!いきなり…!」



そう言った後、掴んでいた俺の腕をぱっと離す。



「え?あの…、神坂さん…?」




俺は、何がなんだか分からなくて、神坂さんの顔をじっと見る。




「あ…、えっとー…、ごめんなさいっ…」




神坂さんは、俺に謝るけど


「いえ…あ、俺の方が謝んないと…」

「え…?」

「あ、いや…、謝る…というか、…お礼を…、」

「お礼…?」


「はい!昨日のおでんの…!」






ガチャ…







神坂さんの部屋の扉がゆっくりと開いた。








No.72 13/12/01 15:53
名無し0 




そこには、見知らぬ女の子が立っていて





え…?

「誰…」


思わず、口にしていた。



「あ、え…?」

神坂さんが、俺の反応に驚いている。



いや…、俺の方が、びっくりなんすけど…?



「小森さん…?」

そんな俺に、声を掛けてきた神坂さん。





女の子に向けていた視線を、神坂さんに移す。



神坂さんの表情は明らかに、戸惑っていて

俺は、


どうしていいのか分からず…




また、女の子に視線を戻した。




まさか…

神坂さんの?





子ども…!?



目を見開いて、女の子を見る。





しばらくの間、俺と女の子はお互いを見つめるしかなくて…












「……お兄ちゃん?」






最初に答えを出したのは、俺ではなく
ましてや、神坂さんでもなかった。


………







No.73 13/12/01 16:20
名無し0 




「お兄ちゃん?……」


俺は、女の子が口にした台詞を繰り返す。





「…小森、さんっ…」


神坂さんの声にはっとして、

俺は、まぁ…
俺なりに、頭の中を整理しようとした。



………

お兄ちゃん…って
言ったよな?
今俺の事…
お兄ちゃん…って…





「來未…ちゃん…」

神坂さんが、ぼそっと呟くと




俺の中で何かが、弾けたような気がした…




來未…


來…未……



來未っ…!?






「來未…?」


…………




なのか…






No.74 13/12/15 17:44
名無し0 




「なんで…」


言葉が上手くでてこない。


「小森さ…」
「お兄ちゃんっ…」



神坂さんと來未の声が同時に聞こえた



…!


……

なんで…


「ここにいんだよ…」

「小森さん?…」



なんでっ…


「お前が…!っ…、こんなとこに!」




やっとでてきた言葉は、神坂さんだけじゃなく。
來未自身も、言葉を失うぐらい凍りついたもので…




ただ
俺は…

思った事を口にしただけで…


そう、深い意味なんか…

深い意味…なんて




ない

ないんだ…



意味…なんて……




俺の唇が震えている事に、俺自身も気付けないぐらい


俺は、自分を見失っていた。





No.75 13/12/15 18:13
名無し0 




「待って!」


神坂さんが、俺と來未の間に入る。



「っ…!?」



俺はいつの間にか、拳を握りしめたまま、來未に近寄っていて。




神坂さんの声にはっとする



「え?」




俺は、自分の手を見る。




神坂さんの手の温もりに

「いや、…」


俺…

「俺、…違っ…」



違いますって言いたくて、顔をまた上げた。



そこには。


驚いた顔の來未と

涙をためた神坂さんの顔があって。




俺の思考回路は、完全に止まってしまった。





No.76 13/12/23 17:40
名無し0 




「兄妹なんでしょう…?」

神坂さんの絞り出すような声


「え?」


兄妹…



「兄妹…なんかじゃっ…」


「ごめんなさい…。お兄ちゃん…!」



來未は、こぼれ落ちる涙を拭こうともしないで、俺をじっと見つめていた。



そして、一度神坂さんの部屋の中に戻ると、來未 は持ってきたであろう自分の荷物を手にして



俺と神坂さんの横を走り抜けた。



俺は体が硬直したまま、動けない。




その時、

目の前にいた神坂さんが走り出した。

「待って!來未ちゃん…!!」



動かない体を、どうする事もできない俺は、そんな状況をただ黙って見ているしかなかった。




來未…


なんで、来たんだ…


母さん…

!!…
母さんは、この事…知ってんのか!?

知ってて?

………

なにが…

どうなってんだよっ…


………



俺は突っ立ったまま、冬の闇に消えた來未と神坂さんの姿を無意識に辿っていた。






No.77 14/01/06 10:50
名無し0 




ぽつりと何かが顔に当たった気がして、俺は顔を上げる。



「雨……」

やっぱ、降ってきたんだ…

朝見上げた空を思い出す。



「お前、何やってんだ。」


え…

俺ははっとして、声のした方に目をやった。



「………先…輩?」


そこには、野中先輩が立っていて



「あの…」

「雨、降ってんぞ。」


あ…

「家、入んないのか?」

「あ…、いえ…」


何も返せなくて、黙り込むしかなかった俺。


「せっかく、インフルエンザ治ったのに、また病気になって、仕事休む気じゃないだろうな?」




「いえっ…。違い…」




「小森さん……」





その時、

消え入るような小さな声が聞こえてきた。







No.78 14/01/06 11:45
名無し0 




「神坂さん……」


俺の発した言葉に、先輩が反応して、神坂さんの方を見る。


「あ、…」

「あ…、えっと……」


お互い、初対面だ。


「あぁ。…私、野中と言います。小森は会社の後輩で。」



「ぁ…、はじめまして…。私…、神坂と言います…。小森さんとは、…」

「あぁ。小森から聞いてます。」


「え…」

「看護師さんで…、ここに引っ越して来た、あ……?…」



二人のやり取りをぼんやりとした頭で聞いていた俺は、先輩がある事に気付いた事に反応できなかった。




「娘さん、ですか…?」
娘…!

「先輩っ…!!!」


俺が出した大きな声に



神坂さんの後ろに隠れるように立っていた來未がびくりとした。

「小森、大きな声だすな。」



先輩の、俺を制するような静かな言葉に、來未が泣きだした。



No.79 14/01/06 13:31
名無し0 




異様な雰囲気に気付いた先輩は


「ここじゃ寒いし、雨も降ってきたんで、中に入りませんか?」



こんな言葉を神坂さんに掛ける。


「あ、はいっ…、…そうですね…」


そう返事をした神坂さんは、來未の手をしっかりと握り直して



「來未ちゃん、…」

來未と一緒に、神坂さんの部屋へ入ろうとした。


「あ、じゃあ、私はこれで。…」

「あの!」「先輩っ…!」


神坂さんと俺がほぼ同時に声を上げた。







No.80 14/01/06 13:43
名無し0 




「何があったんだ。」


先輩の少し威圧するような声が、俺の心臓を早める。



「…わかんないっすょ…」


「わかんないって。…」



結局。

俺たち4人は、今、俺の部屋に居るワケで。



「んな事言われても…」

俺の方が知りてぇ…



「すみません!野中さん…」
神坂さんが、先輩に謝っている。

「あ、いえ。俺はこいつに聞いてるんで。」

でも、神坂さんが謝る理由なんてないワケで…
だけど、今の俺には、ホント…ワケ分かんなくて……

「だから先輩…!俺にも…」



「小森さんっ…」

「あ…」

No.81 14/01/06 14:05
名無し0 




「さっき、來未ちゃんの事…、妹じゃないみたいに…、言ってましたよね…?」



「っ…!」


「は?妹…?」

先輩が、俺の顔をじっと見る。


胸がいてぇ…



「あの…、あなたの、神坂さんの娘さんじゃないんですか…?」


今度は、神坂さんに質問する先輩。


「違います。」

きっぱりと答える神坂さん。



「お前…妹なんていたのか?」



!!
「先輩…」


なんて言えばいいんだよ…



「野中さん…」

「?…」

先輩の疑問もだけど


「私も…、正直、迷ってて…、分からない事だらけで…。」


「神坂さん?」


俺の疑問もどんどん大きくなっていく。



「來未ちゃん?話してもいい?」



神坂さんの横に、ぴったりと着いて座っていた來未が小さく頷いた。






No.82 14/01/06 16:30
名無し0 




神坂さんが、静かに話し始めた。

「小森さんが帰って来る…ちょっと前に、私も帰ってきたんですけど。
そしたら、階段の下の方に、來未ちゃんがいて…
初めて見る子だったんですけど、なんだか気になって…声を掛けたんです。」


ちらっと來未を見ると、肩を小さくして俯いた。


「話を聞いたら、小森さんの妹だって言うから…、しかも一人で来たって…」



一人…


先輩は黙って聞いている。

一人ってっ…、
「お前…、まさかっ…母さんに黙って!?」


「らしいです…」


代わりに、神坂さんが答える。


「あ、だから、私が小森さんの実家の方にお電話させていただきました…。」



「えっ?神坂さんが…!?」



「はい…。余計な事だとは思ったんですけど…、やっぱり來未ちゃんやお母様さまの事、考えると…」



!!

母さんの事…


「でも…、お家にはどなたもいらっしゃらなくて…、」


「!…あ、仕事、…」


「はい…、來未ちゃんに確認したら、多分仕事で…って言ってました…。」




母さん

あなたは相変わらず、仕事、仕事…

なんだな…





No.83 14/01/06 17:18
名無し0 




「それで…、」

「…はい」


「小森さんが帰って来るまで…、勝手だと思ったんです…が…」


あ…

「預かってくれてた?…って事…」

「ごめんなさい!勝手に…」

「…」


「だから…!來未ちゃんを叱るのはっ…」


「叱るって…、俺!」


びくっとした來未に気付く。


「さっきも言っただろ。大きな声は出すな。」



「!!…先輩…、……はい…」



俺は、今日何度、こいつをびびらせてんだろ…



びびらせたくて

泣かせたくて



話してんじゃねぇ…


そんなつもりは…




…………




No.84 14/01/06 17:59
名無し0 




ないって

言えるのか…?

俺の本心…

は、


…わかんねぇっ…よ


自分でも、わかんねぇ…




「小森さん…」


神坂さんが俺を呼ぶ。


「……はい、」

「ごめんなさい…」


「…?神坂さん?なんで、謝るんすか…?」


「苦しんでるんですよね…」


「っ…、」


「詳しい事は、…私も分かりません…、でも、小森さんをつらい目に合わせてる。その事だけは…、私にも分かります…」



來未がまた、泣き出した。



來未…


「野中さんも、すみません…」


神坂さんは、來未の背中をそっとさすりながら、先輩にも謝ってきた。





No.85 14/02/28 14:48
名無し0 




「神坂さん。」

一瞬黙った先輩が、神坂さんに目をやりながら、声を掛けた。


「はい…。」


「コイツ、今パニクってるみたいなんで、ちょっと二人で話したいんですけど。」


先輩…?


「あ…、そう…です…よね…。
…分かりました。」





いきなりの先輩の提案に戸惑いながらも

とりあえず、來未を神坂さんに預けて、俺は先輩と一緒に自分の部屋へ入っていった。






自分の部屋なのに、緊張から抜け出せないように、黙ってしまう俺



「……」

先輩も何もしゃべらない



どうする…

いったい何から話せばいいんだ…




壁に掛けた時計の音と、雨音だけがやけに耳に付く。




No.86 14/02/28 15:07
名無し0 




「話せないか?」


静寂を破るように、先輩の声が静かに響く。



!?…
「先輩…」

「話したくないなら、無理に話さなくていい。」

先輩…

「違うんです…」

話せないんじゃなくて…


「何から話していいのかっ…、」


「………」






下には、來未がいる。…

來未…

何年ぶりなんだ?…



10年?…か?…


あいつ…







大きくなってたよな…

分かるワケねぇよ…



高校入ってから、一度も会ってないんだから



分かるワケ…






No.87 14/02/28 15:38
名無し0 




「俺…」


俺って…

「薄情なヤツですよね…」


自分の妹…

「を、…妹じゃ、ないとか…って」




「妹じゃないのか?」


先輩の言葉に、はっとして顔を上げた。


先輩は、ただ俺を見ている。




「…妹、」

來未は俺の…
「妹、です…」


「そうか。」

「はい…」

「ただ、訳あり。なんだろ。」




俺はまた、俯いていた顔を上げた。




「お前が、実家と上手くいってない事ぐらいは知ってるからな。」




「先輩…、」


遠くに住んでるワケでもないのに、盆も正月も…帰らない俺

この前のインフルエンザの時の事もある




俺がずっと、家を、來未を、…母さんを




避けてきた理由。








No.88 14/02/28 18:25
名無し0 




先輩は黙って聞いてくれた。


否定するワケでもなく、
肯定するワケでもない



ただ黙って俺の話を聞いてくれる




薄々、俺の事情に気付いてても、今まで何も聞いてくる事はなかった先輩


いつも、可愛がってもらってて、すげー世話になってる



先輩には、ほんと感謝してた


そんな先輩に今までの事を打ち明けていく
俺の中で、少しずつ気持ちが軽くなっていくのが分かった



全部話し終えた時

先輩が、初めて口を開いた。





No.89 14/03/02 10:49
名無し0 




「で、どうする?」


「え…?」

どうする…?


「來未ちゃんだよ。」


「來未…?」

「お前、何も思わないのか?」


「…?」

先輩の言いたい事がわかんねぇ…



「…妹が、兄貴に会いに来たんだろ?理由があるんじゃないのか?」


……!?



理由…?


「理由…って」


なんだ?…


來未が、俺に会いに来た理由




母さんに…
黙ってまで…?


…………






No.90 14/03/02 16:27
名無し0 




おばさんっ…


おばさんは、何か知ってんじゃ…?



俺が出て行った後も…、きっと來未の事、世話してた…



…………

……


っ…!
おばさんが知ってたら、今頃俺に連絡あってるはずだよな…



っつう事は―――……




「先輩…ちょっと俺…來未のとこ行ってきますっ…」




そう先輩に言い残して、部屋を出て行った。







神坂さんの部屋の前に来た俺。




來未と話そうと思って

ここまで来たのに


ドアを開く事にまだ、戸惑いを感じていた。




來未…


俺は―――……




No.91 14/03/02 16:47
名無し0 




ガチャ…


神坂さんの部屋の扉が開いた。



目を見開いて、扉の先を見ると神坂さんが立っていて


「足音がしたから…。」

「ぁ…」


「來未ちゃんに、でしょ?…」


「………はい。」





俺の部屋に連れて行こうとしたら、來未が嫌がって

結局、神坂さんの部屋に上げてもらう。



当然か…

さっきまで、俺、來未の事泣かせてばっかだったからな…。





だから、神坂さんが部屋を出て行こうとすると…

また來未が泣き出してしまい……




結局。

神坂さんと來未、そして俺の3人でテーブルを囲んでいるワケで…




No.92 14/03/02 18:28
名無し0 




そんな状況で

誰もが言葉を発しない事に、息苦しさを感じ始める。



どうすんだ…


ったく…しっかりしろよ、俺…



「來…」「お兄ちゃん。」


來未が、一瞬俺を先に呼んだ。……?



來未を見る。


「明日、…帰ります。」

は――…?

「來未ちゃん…」
神坂さんが苦しげに声を絞り出す。



いや…

帰る…って…


「どういう…」
「会いたくて、…」
「え…?」

「……会えたから。」
「会えた?…」
「お兄ちゃんに…、会いたくて…でも、会えたから…」
「俺…?」

俺に会いたかった?


來未が
俺に……


No.93 14/03/08 15:20
名無し0 




俺は…
一度だって会いたいと思った事はなかった


こいつだって、俺の事、覚えてるワケないのに…
会いたかった。って


…………


來未に目をやる

唇をぐっと噛み締めた來未。


……?


俺に会えた事で、目的を果たせたのか?


……違う?


「來未、お前…、何か話したい事あるんだろ?」


俺、どうしてこんな事聞いてんだ?


確かになんかあったんじゃないかって。思うけど…

スルーする事だって、できるのに…



なんで?…


黙り込んだままの來未。

「言いにくい…事か?」



俺の問い掛けに、ぴくりと肩を竦めた。




No.94 14/03/14 18:34
名無し0 




「お兄ちゃん…」

「ぁ…、あぁ…」

「お兄ちゃんと…」

?…俺と?


「いっしょに住みたいっ…」


は…?俺と…?



「來未…?」
「お母さん!…」
「!」
母さん…

「母さんが…?」



「來未は…お母さんの子どもじゃなかったの…」









―――…


…………………




……






No.95 14/03/14 18:51
名無し0 




俺が初めて、來未の存在を知ったのは中3の時



あの時の衝撃は、今でも俺を苦しめてる。


ただ、今の來未は…

確か…、小6

その頃の俺よりも、下だ

そんな來未が知ってしまった《事実》



こいつは、母さんの子じゃない…






「お母さん…ずっと、來未を騙してたのっ…!」



「………!」

騙してた…






世の中には、マジでお節介なヤツがいる


ほんとの母親ってヤツが現れて、來未に話したらしい



ほんとの母親か―――



母さん

じゃ、母さんは…


なんなんだ


こいつを…

來未を、今まで育ててきた母さんって






No.96 14/03/17 18:28
名無し0 




「母さんは…」
「…!?」

「その事、…知ってるのか?」


知ってたら…
なんて思うんだろ…


「たぶん、知らない…」
知らない…。

「でも…、もうすぐ…」
「もうすぐ?」
「來未…、手紙、書いてきたの…」
手紙?

「!…まさか、その手紙って!今日、置いてきたのか…!?」


頷く來未。

時計を見た

20時になろうとしていた。

そろそろ、帰ってくんじゃ?…


その時だった
俺の携帯の着信が鳴り響いた。


その場にいる全員が、ぴくりと反応する。





母さん……




No.97 14/03/21 16:38
名無し0 




「…もしもし」


数回の着信音の後、俺は電話にでた。



「陽平くん!?」


この声…
「おばさん…?」



俺たちをいつも世話してくれていた近所のおばさんだった。



話を聞くと、母さんよりも先に來未の置き手紙を見つけたらしく


驚いて、俺の携帯にかけてきたらしい。



とりあえず、心配かけたおばさんに謝って、今の状況を簡単に説明した。状況をのみこんだおばさんは、安心した後、…


「陽平くん…、お母さんには?」

やっぱり、そうくるよな…
「いえ、まだ…」


連絡しなきゃいけないんだろうけど…


「私が電話してもいいんだけど…」



電話…か


「あ…いえ、…俺がします」



「陽平くん…」


おばさんにも、來未の事で迷惑かけてる…



「すみません、來未…の事で、迷惑かけて」




俺は、とにかく謝るしかなくて。




No.98 14/03/21 16:54
名無し0 




「陽平くん…」


「はい…」

「一度、帰って来ない?」

「え?」

俺が?…

「あ、來未の事ですか…?」


けどな…

來未の事で、俺が帰ってもどんな意味があんだ?…

「違う…の、來未ちゃんの事だけじゃなくて…」
?…

「おばさん…?」



どういう…?


―――

………………






「あ!早希さんっ!!!」



早希…



母さんの名前だ…









No.99 14/03/28 19:18
名無し0 




「ょ…、陽平…」


久しぶりに聞いた母さんの声は

懐かしさよりも


切なく聞こえた





「ぁ…あぁ…」
ぎこちない返事しかできねぇ…

「………ごめんね。」
謝る母さん…


「…來未、ちゃんと側に居るから、…」

きっと母さんは、いきなり俺のとこに来た來未の事が心配で

「……陽平、…」

そんな、泣きそうな声…

「大丈夫だから、」

「迎えに行く…」

え…

「來未はよくても、陽平に…迷惑掛けるから、…」

母さん…

「もう遅いし…、とりあえず今日はこっちに泊めるから…、明日俺、休みだし」



「………ごめん、陽平、…」
また、謝んだ…

「いいから、…」



電話での距離は、俺と母さんの距離と同じように感じられて


また、連絡する…

と、だけ最後に話して電話を切った。




No.100 14/04/01 12:17
名無し0 




今、來未は神坂さんちで寝てる



母さんと話したのって、何年振りだ…?





今ひとり自分の部屋で、今日の出来事を思いだしていた


先輩は、結局俺が部屋に戻ってくるまで待っててくれて


でも、その後何にも聞かず


「じゃあな。」


って、帰っていった。


きっと、俺
めちゃめちゃ疲れた顔してたんだろな…




そんな俺に、先輩…

気ぃ使ってくれたんだ





來未…


母さん……。




もう既に日付の変わった時計を見ながら


俺は、明日からの事を想いあぐねていた。







No.101 14/04/01 12:41
名無し0 




おばさん…
言ってたな


1度、帰って来ないかって


なんだか、意味深な言い方だったし


………



翌朝。


俺は冷蔵庫に入ってた水を開けて、そのまま口にした



來未。……



その時、俺の携帯が鳴った



神坂さんからだった



一緒に朝ご飯、食べないかって



一瞬迷ったけど



來未ちゃんも居るからって



………






俺は、神坂さんからの電話を切った後、家に電話をした。






No.102 14/04/01 15:01
名無し0 




嫌がる來未を車に乗せ、神坂さんに見送られながら、アパートを出た俺。



アパートを出る直前

「來未ちゃん、また遊びにおいで?」


優しく話し掛けた神坂さんに、俯きながら小さく頷いた來未。




神坂さんには、ほんとマジでお世話になったよな

神坂さんがいなかったら、俺一人じゃ…


勿論、先輩の存在も大きいけど


!…先輩
先輩は、昨日なんで俺んとこに来たんだ?

今さらか…。


………―――







30分もすれば、着く家


こんなに、近かったか?


11年。…振り…か



あの時俺は…

……2度と帰ってくる事はないって思ってた






その実家を前に、妙な胸騒ぎを覚えずにはいられない。




この時俺は
本能的に感じてたのかもしんないな…

來未の運命だけじゃねえ


俺の、運命さえも変えてしまう出来事に







No.103 14/04/01 15:17
名無し0 




家に着いても、來未は降りようとしない。



俺だって…


こんな形で、帰ってくるなんて思ってなかった


できることなら、このまま來未を降ろして


戻りたい…。




「來未…、降りるぞ。…」


それでも、俺はそう声を掛けて運転席のドアを開ける。




つられたように、來未もドアを開けた。



その時。

家の玄関が勢いよく開いた。




「母さん……」



俺は、ドアに手を掛けたまま、小さく呟いた。




No.104 14/04/06 13:03
名無し0 




そんな俺に小さく視線を送りながら、


「來未…」

來未の所へ駆け寄る母さん。

「…………」

ちらっと來未に目を向けると



來未は、下を向いたまま、足早に家へと入っていった。



「!!………」

拒絶する來未の後ろ姿を、ただ茫然と見送る母さん。



…來未………


母さん。…

「…………」
俺には、言葉は出てこない。



そんな俺に気づいた母さんは、




ゆっくりと笑顔を作って、

「陽平…、ありがと。」


母さん…


「疲れたでしょ?中に入って?…」






俺は、中学卒業以来になる実家へと入っていった。





この先に
どんな未来が待っているとも知らずに







No.105 14/04/13 16:47
名無し0 




どうやって帰ってきたのか

――――


気付くと俺は

アパートの駐車場に車を止めて




茫然と、

段々と薄暗くなっていく車の外を眺めていた







俺っ……て


なんなんだろ



俺……


って






コンコン…



窓をたたく音に



それでも、俺の神経は

定まらなくて



音に、

そのひとに気付かない






「…、… 森さん…?」



……?



「小森、…さん」








No.106 14/04/13 18:55
名無し0 




☆話の途中ですみません

こんな拙い話を読んで下さってる方へ―――



仕事の関係で、これから…更にか…
更新が難しくなるかもしれません…

もし、それでも待って下さる方がいるのなら

ちょっとずつでも
進めていこうと


今、思ってます。

何人かの方が、目を通してくれてる事に、本当に感謝してます


この話、サイドストーリーで書き出したのに、前回、いや、いつもの事か…
長くなり過ぎて、やっぱり素人には、なかなか上手くまとめる事ができなくて

しかも、勝手に自スレ設定にしてしまい


早く終わらせるチカラがあれば
なんて、素人のくせに焦ってる毎日です


すみません
ただのグチになってしまった


これからも、
多分、ひっそりと…(泣笑)
書いていきます。




主のグチでした(^_^;)v





No.107 14/04/20 09:59
名無し0 




神坂さん?……


俺はゆっくり、ドアを開けた。



「あのっ…、」

「…………」

「小森…さん?」


俺の中で、何が起きたのか―――



気付くと俺は






神坂さんを抱きしめていた―――…





No.108 14/04/20 10:19
名無し0 




☆クーさん、そして、クーさんのスレにレスされた匿名さん、kaotanさん、ありがとうございます(^_^)v

こちらこそ、学も何もない素人の書く話に、そんなふうに思いを抱いていただけるなんて
有り難いとしか言えなくて

感謝です☆

いろんなところに手を出し、自分で自分の首をしめているのかもしれない…という思いもありますが(^_^;)

書きたいって思う気持ちを素直に受け止めたいと考えていて

小心者なので…
こそこそと。これからも書いていこうと思います(^_^;)


では


また☆





No.109 14/04/20 16:07
名無し0 




「え…――」


神坂さんの声が小さく聞こえた。



「………」
「ちょ…」



俺、なんでこんな事…


「離してっ…」


神坂さん、嫌がってるよ…



「小……」


あったけぇ…


人って、こんなにあったかったっけ…




「…………」


神坂さん…




なんで、何もしゃべんない…?



俺はふっと…

顔を下に向けた。




神坂さんと目が合う。




「神坂…さん…?」


その時だった


少し、力を緩めた俺の身体を





今度は、神坂さんの細い腕がぎゅっと抱きしめる。








No.110 14/04/27 17:49
名無し0 




抱きしめたつもりが
いつのまにか
俺は、神坂さんに抱きしめられていて




「あったかい…」


声にだしていた


「大丈夫…」

え…?


「大丈夫、だから…」


俺を抱きしめながら、神坂さんはずっと
″大丈夫″って繰り返している。




大丈夫…


………


大丈夫?って



俺をまるで包み込むように

囁いてくれる



…………


何も、話してないのに


何も知らない神坂さんが、

俺を癒やしてくれる







No.111 14/04/27 18:02
名無し0 




こんなバカな事してる俺を



神坂さんはきっと


何かを感じとってる?


「俺……」



「いいから、」


「え?」
「今はまだ、…このまま。…」



神坂さん…







No.112 14/04/28 14:40
名無し0 




「妹、の事、まだ何かあるのか?」



昼休み。

先輩が、俺に聞いてくる

「あ、…いえっ…」


昨日の出来事が、蘇ってくる。


「じゃ、まだ他にあるのか。」




他に…




「まぁ、いい。」

「…!?」

「話したくないんだろ?」


「あ、…」


話したくない…つうか…

「話せないか。」

「!?」



俺は、弁当を食べる箸を止めて固まってしまう…



「無理するな。」


先輩…!


違う…




「聞いて下さいっ…!」


俺の、話。―――







No.113 14/04/28 14:51
名無し0 




夕方、会社近くの居酒屋で先輩と待ち合わせした。


店に入ると、年末っていう事もあって、かなり混んでいた。


先輩は、まだ来てないみたいだ…



奥のテーブル席に案内される。



カウンター席もテーブル席も客でいっぱいだった。



「あ…」


?…



席に着いた途端だった。




No.114 14/04/28 15:06
名無し0 




声がした前のカウンター席に目をやると




「!…神坂さん…」



まさかの!?…

俺は息をのんだ



「え…!?誰?」

神坂さんの隣に座っていた女性が、驚いたように俺を見る。



昨日の今日だったから…
俺は思わず、下を向いてしまった…



「え?なに!誰?誰?ねー、神坂さん!」



どうしよ…
神坂さんが、変に思われてる…!



「こんばんはっ…!」


俺は思い切って、顔を上げて神坂さんを見る。



No.115 14/04/28 15:23
名無し0 




そんな俺とは対照的に、神坂さんは

「こんばんは。」


冷静に、少しだけ笑って応えてくれる。
……


「え?ちょっとー、神坂さん!誰?」



しつこいくらい、俺の事を聞いてくる隣の女性。



「あの…」
なんて言おう…

「ご近所さん。」



?え…


「ご近所?、さん?」
「そう。」


ご近所…


「へぇ~」


もう既に、アルコールが入っているのか、
その女性は少しだけ赤くなった顔で、ジロジロ俺を見てきた。




No.116 14/04/28 16:10
名無し0 




歳は、神坂さんとあんま変わんねぇかな



「名前は?」

あ…

「こ…」
「小森さん。」


俺がちゃんと名乗る前に、神坂さんが答えていた。


「小森…さん?くん!でしょー」


別に…
どっちでもいいっす…


「私!渡辺美里ー。神坂さんの同僚ー!」



アルコールのせいなのか、性格なのかわからないが、高いテンションで自己紹介をする。



「同僚…ですか?」


っつう事は、病院の?



「そう!看護師ー」


やっぱり。


「小森くん、いくつー?」


歳か…



「26…です。」






No.117 14/04/28 16:47
名無し0 




「えー!じゃ、私と近いじゃ~ん」



「…はぁ。」
「私、33~」

33…


「神坂さんと同じくらい、ですか?」

「は!?なに言ってんの!」


さっきまで、笑ってた顔が引きつったようになった。



「神坂さん、46よ!?」

?…え、4…


みえねぇ…
マジ…


「しかも、子どももいて!」


「子ども…?」


神坂さんを見ると、焦ったような表情だ。


「そうよ!私は、独身なんだからねー!」



独身でもなんでもいい。
それより、俺は神坂さんの事が気にかかって…





No.118 14/04/28 17:39
名無し0 




少なくとも。
神坂さんが引っ越してきてから、子どもの姿なんて見た事なかった……。

…………



どういう事だ…?




「それにねー、子どもって、二十歳過ぎてんだからねー!」







……………


「二十歳過ぎ……」


「そうー!あ!小森くん26だったら、小森くんのお母さんと変わんないんじゃないのー」


っ…
母さん…っ



「渡辺さん!」
それまで、黙っていた神坂さんがまるで制するように、同僚の名前を声にだす。




俺も、渡辺さんも一瞬だけど

周りも、静まり返った。





「帰ろう?」
「えー!なんでー」
「飲み過ぎだよ?」
「…んな事ないー…」



興奮して、余計にアルコールが回ったのか


渡辺さんは、椅子から崩れ落ちそうになる。





No.119 14/04/28 19:27
名無し0 




「!」

咄嗟に手を差し出した。


「大丈夫、ですっ…」
神坂さんはそう言って


渡辺さんを抱え上げる。


「でも…!」

「ほんとにっ…。それより…」

「……?」
「さっきは、ごめんなさい。…」
「え、あの?…」


「渡辺さんが…」

あ…

「母さん…の、…」
小さく、頷く神坂さん。


「いやっ…」

そんな…事より…



「それじゃ…、」
「あ…?あの…」

「おやすみなさい。」



俺に笑顔を見せて。





神坂さんは、渡辺さんを連れて
店を出ていった。







No.120 14/05/05 12:58
名無し0 




入れ替わるように、先輩の姿が目に入ってきた。



「あ…」


「今、店の外で神坂さんに似た女性、見たけど?」


「!…あ、あ、えっと…」



昨日の今日で動揺を隠せない俺



「まあ、…いい。」

そんな俺を見透かしたように、先輩はそう言いながら。


俺の前に座った。





「なに、ぼーっと突っ立ってんだ。」



まだ、いろんな事が整理できない俺は、




きっと、腑抜けのような顔をしてたんだと思う。……



先輩にツッコまれた俺は、慌てて椅子に座った。





No.121 14/05/05 13:21
名無し0 




何から話せばいい?


母さんの事


昨日の、神坂さんとの事…


それから
さっき知った神坂さんの事実?…………






「あのっ…」

「あぁ。」




先輩…


先輩のそのクールさが、今の俺にとっては、すげぇ助かるような気がする…



グチャグチャになった俺の頭と心を落ち着かせてくれるようで





「先輩…俺、…俺、」


俺、も…





「母さんの子どもじゃ、なかったんです…」






昨日、母さんから聞いた事実を俺は思い出していた。





No.122 14/05/05 13:38
名無し0 




「來未だけじゃ…なかったんです…」



そう。…

俺も來未も、母さんの子どもじゃなかった


來未と同じように、俺にも別の母親がいて





來未の時と同じ

俺は、誰からかもらわれてきて




そして、

母さんと…
父さんは、俺を育てた



笑えるよな


來未の事、初めて知った時



俺は、母さんを取られるって

自分の…自分、だけの母さんを




浮気した父さんを、許せねぇって思った



なのに…さ

俺も、父さんの浮気で産まれた子どもだったなんて






No.123 14/05/05 14:11
名無し0 




「おかしい…っすよね、」



俺が今まで、信じてきたものって

母さんだけは、って思ってきたのに





「何がおかしいんだ?」

「……え?」



「お前の人生、笑えるような人生だったのか?」


「?…え、」


「お前も。親も。―――
必死で生きてきたんじゃないのか?」



!…


「妹だって、同じだろ。」



「先…輩。…」





「今はまだ、わかんねえかもしれないが。
いつかきっと、分かる時が来る。」





いつかきっと……





No.124 14/05/05 18:34
名無し0 




初めてだったかもしれない。



先輩の言葉が、俺の中に入ってこない…




父さんの気持ち?
母さんの……?




結局俺は、それ以上の事を先輩に話す事ができなかった。





いや…
先輩…
俺は、
ずっと母さんに騙さ…

!?

俺…來未が言ってた事とおんなじ事、…っ、……



來未と俺…


同じ…なんだ……。




違うって思ってた俺は…







神坂さん…


子どもいるって、

あの人言ってたけど…






No.125 14/05/06 19:10
名無し0 




先輩と別れて


アパートに戻ってきた。


タクシーで帰ってきた俺は、降りた後


神坂さんの部屋を見る。


灯りが点いてる。

もう、帰ってきてんだ…


………当たり前か、…


今、何やってんだろう…神坂さん。…





っ……


俺、

何考えてんだ?


昨日の神坂さん…


俺、殴られても仕方ない事…したんだよな…?



なのに
神坂さん、は…



俺の事、受け入れてくれた?



………―――







No.126 14/05/06 19:28
名無し0 




「はい…?」


ドア越しに聞こえてくる、神坂さんの声。




「………!」

俺っ……!



勢いよく、ドアが開いた。


「小森さんっ…!」


神坂さんは、風呂から上がったばかりだったのか


肩までの髪が濡れていた。





「そんな…、」

「え?」

「すぐ開けちゃ、…」


ダメじゃないっすか…


「え、あっ…、いや、小森さんだったから…!」


「え……」



俺?だったから……?



それ…って


「どうしたんですか…!?」




濡れた髪から滴り落ちる雫に、気付きもしない。





No.127 14/05/07 18:20
名無し0 




俺は、黙ったまま神坂さんを見る。


その時
「あ…」

神坂さんが小さく声を上げた。





「カレー、好きですか?」

想定外の質問に、俺はフリーズしてしまう。

「?…」


「いえ!明日、食べようと思ってて、だから今から作ろうと思ってたんです。」



「あ、…」
「もしかして、嫌いですか?」
「え、いえ…、あの、好き、です…」


カレー…



「よかった~。あ…でも、…」



今度は?…

「彼女に、作ってもらいますよね?」



「彼女……」


俺、
彼女なんて…



「いま…」


No.128 14/05/07 18:37
名無し0 




いません…っ


言いかけて。

俺は、思わず足を一歩だそうとした…



その時。どこからか、携帯の着信音が聞こえてくる。




「あ…、!」





神坂さんの携帯だった。


「ごめんなさい…!」


「!」

「さっきのカレーの話、忘れて下さい!」



っ…


軽く頭を下げながら、

ドアから離れようとする神坂さん。



「あ、いえ…」
「おやすみなさい。」


「……はい、おやすみなさい…」




俺は、静かにドアを閉めた。


「もしもし…っ、」
電話の相手に向かって、話をする神坂さんの声がわずかに聞こえてくる。



No.129 14/05/07 18:56
名無し0 




俺は、何しに行ったんだよ?


自分の部屋に戻った俺は、ベッドに座り込んだ。



さっきの神坂さんの姿が、目に焼き付いている


俺より、20こも上には
みえねぇ…




…………



俺…
神坂さんの事


好きになったのか?




―――……




No.130 14/05/07 19:09
名無し0 




「先輩…俺、好きになったみたいっす…。神坂さんの事…。」




あれから、俺の頭の中は神坂さんの事でいっぱいになっちまって


ついに、先輩に話してしまった。







先輩は、応援するって言ってくれた。


………

一応。って感じだけど



やっぱ、年の差の事、言われた。



…だよな、…






No.131 14/05/11 11:17
名無し0 




ここ一週間ぐらい、神坂さんの姿を見ない。



なんかあったんだろうか?

……あの、電話?




あの時

少しだけだけど…
なんとなく、神坂さんの声に不安を感じた。





來未が来た時に、神坂さんの電話番号は聞いたから



かけてみるか…?


…………



何、話す?


姿見えないんで


なんて言うのか…?




そんな事をぼんやりと考えていた。






No.132 14/05/11 11:33
名無し0 




「小森…、お前、いい加減にしろ。」




え…
横で仕事していた先輩を見る。


「仕事中だ。」


!!
「すいませんっ…」
















「あれから、親とは話したのか?」


休憩中、先輩は煙草に火をつけながら俺に話しかけてきた。


「え…親?」

「お前、…親の事で悩んでんじゃないのか」


母さん?

「別に…親の事なんてっ…、悩んでませんよ!…」



俺の、…親、


なんて






No.133 14/05/18 09:31
名無し0 




「…神坂さん、の事か?」



「!…、あ、…」


先輩は、くわえた煙草をゆっくりと離す。


「別に、邪魔するつもりはない。」

「え?…」



「お前の、事。だからな。」


先輩…?



「ただ、親の事は後回しにするな。」



後回しっ…



「俺はっ…」


「例え、血の繋がりがないとしても、だ。」



!?


「もう一度…いや、何度でも話せ。分かり合えるまで。」




分かり合える?



俺と…


母さんが?





No.134 14/05/18 09:53
名無し0 




ふと、俺は携帯を握りしめる。



來未は…


あれから、どうしてる?……



あの家で、母さんと二人



してんのか…話。……




俺は?


距離を置く事なんて、簡単にできるけど




もうすぐ中学生になる來未にとって


同じ家にいて


母さんや、実の親の事

誰かに話せるのか?



一番、不安になる年だしな。



………………






No.135 14/05/18 12:42
名無し0 




今日も、神坂さんはいない。


アパートに帰ってきた俺は、灯りの点いていない神坂さんの部屋に目をやる。



重い足取りで、階段を上り


部屋に入った俺は、


ポケットから携帯を取り出し、家の電話番号をさがす。



母さんの携番を知らないワケじゃない


けど


母さんにかけるんじゃないから




來未に…


そう思って、携帯を見つめていた。





No.136 14/05/18 13:09
名無し0 




「もしもし…!」


微かに聞こえる相手の声。


……!

未だに携帯を見つめていた俺は、はっとして返事をした。



「………!?」


え…?
來未?…?母さん?……


「あ…、」

俺。って答えようとして


「陽平くん!?」


え…?


「おばさん?」



あぁ…また、か。


「仕事ですか?」


俺は、母さんが電話にでなかった事にほっとしていた。



「…!陽平くん…」







「お母さん…」


「え?」


仕事じゃないのか?


「おばさん?」








「………、倒れたのよ。」





No.137 14/05/18 13:17
名無し0 




………?



「倒れた…?」



「そう、…あのねっ…」


母さんが?



「陽平くん…!」



倒れた……




「ねぇっ…!陽平くん!聞いてる!?」





母さんが、…………






倒れた……




No.138 14/05/18 19:16
名無し0 




「陽平っ…?」


驚いているのに

か弱く聞こえてくる声。


病院のベッドに横たわる。

母さん


「………」

母さん……



「どうしたの…?」


どうした?



「こっちのセリフだろっ…」


「…陽平、」




俺は、おばさんとの電話の後


すっ飛んできた…




「ぁ…もしかして、」

「おばさんに、…」


「そう、…」


小さく返事をする母さんを見た。



「ごめんねっ…」


ごめん…って、…





一週間前に久々に会って
その時から、何ヶ月も経ってるみたいに



痩せたな

母さん。……





  • << 141 4人部屋の窓際。 俺は、ベッドの横に立つ。 改めて、母さんを見ようとしたけど 顔色の悪さに、思わず視線を外してしまう。 母さん… …… 「…座って、…?」 小さな声で、俺に椅子をすすめる。 「………、ぁー…」 「大丈夫…?」 俺は、ベッドの横にあったパイプ椅子を広げ、ゆっくり座りながら、話しかける。 「…大丈夫。」 小さく笑いながら、そう答えた母さん。 俺は下を向いたまま、一週間前の事を思い出していた あの日、 俺は自分の事実を知らせれ 何も考えられなくなった俺は、母さんを詰った これでもかって言うぐらい 「俺の…」 「…?なに…?」 待てっ… 何言い出すつもりだよ…? 「母さんが倒れたのって、…」 「ぇ…?」 やめろ… 言うなっ…

No.139 14/07/02 14:38
名無し0 





思うところがあり、いきなり閉鎖してしまった


…まだ、考えがまとまったワケじゃないが


続けようと決めたら、また更新していくか

もう一つの話も




自分勝手で情けないが

気持ちがまだ上がってこない




ただのひとりごと。








No.140 14/07/02 17:54
名無し0 




クーさん
レスありがとう



放置

いろいろ言っても、ただの言い訳にしかならない

仕事。
プライベート。


忙しいなんか言い訳

そんな事が頭をぐるぐる駆け巡って



続けていく事に不安を感じてしまった


クーさん、ごめん

自分の方が意味わからない事言ってる


ただ一つ
リアな問題じゃないから

でも、オチるとこまでオチてみる、か

いいかも


試してみるよ

身体のメンテナンスも忘れないように



ありがとう。



No.141 14/07/06 13:07
名無し0 

>> 138 「陽平っ…?」 驚いているのに か弱く聞こえてくる声。 病院のベッドに横たわる。 母さん 「………」 母さん…… …


4人部屋の窓際。

俺は、ベッドの横に立つ。


改めて、母さんを見ようとしたけど

顔色の悪さに、思わず視線を外してしまう。




母さん…




……


「…座って、…?」


小さな声で、俺に椅子をすすめる。



「………、ぁー…」




「大丈夫…?」


俺は、ベッドの横にあったパイプ椅子を広げ、ゆっくり座りながら、話しかける。



「…大丈夫。」


小さく笑いながら、そう答えた母さん。


俺は下を向いたまま、一週間前の事を思い出していた


あの日、

俺は自分の事実を知らせれ



何も考えられなくなった俺は、母さんを詰った


これでもかって言うぐらい




「俺の…」



「…?なに…?」



待てっ…

何言い出すつもりだよ…?



「母さんが倒れたのって、…」



「ぇ…?」


やめろ…


言うなっ…






No.142 14/07/06 17:20
名無し0 




「母さん、働き過ぎちゃったみたい。」


そう言って

また、小さく笑う母さん。



!…



「いやっ…」


「陽平、…」


「え…」


「來未の事…、お願いね…?」



來未?…


お願い…って


「どういう意味だよ…!」





「來未は…、あなたの、陽平の妹だから、…。」








――――………




…………







「やっぱり…っ!」



声がした方向を見る



そこには、來未とおばさんが立っていた。





No.143 14/07/06 19:26
名無し0 




來未を見ると、真っ赤な顔で母さんを睨みつけている


「來未…っ、お前!」



來未の横で、おばさんはおろおろしていて


母さんは、というと…、





泣いてた





「泣きたいのは、私の方だよ…!」



そう叫んだ來未。




泣きたいのは、…


「來未…、違うの、…」

母さんが絞り出すように、言葉をつなぐ



「來未と陽平は…、ちゃんと血がつながってて…!」


「だから!?」


声を荒立てる來未


「…だから、…?」

「お母さんには!……お兄ちゃんや私の事なんてっ…
関係ないんだよね!!」





來未…



「血が…つながってないから―――…」






No.144 14/07/14 00:33
名無し0 




『血がつながっていないから』





………


來未だけじゃない

俺だって―――



母さんと、…



俺。……と、母さんって、


赤の他人?

……なのか?




他人。


他人って





「母さん…?」


俺は、母さんを見た。




母さんは、声を押し殺して


泣いている。




「やめてよ…」


え…?



「泣きたいのは、私の方だって…、さっきから言ってるじゃないっ…!!」



來未が、さっきよりも大きな声で叫んだ





No.145 14/07/14 17:04
名無し0 




「來未っ!やめろ。」

俺は、來未を諭すように、制した


「なんで!…なん…で…」


來未も、泣きだす



「來未…、確かに、俺と來未は…、」

ここまで言って、母さんを見ると


目を閉じたままの顔を、俺たちとは反対の方に向けたまま、じっと動かない


母さん…

「母さんとは、…血はつながってない。…」


「だからっ……」


「いいから、來未、聞けよ。…」




…………―――




「他人じゃないんだよ。」

「お兄ちゃん……?」


「だってさ、今まで、家族だっただろ?」



「陽平…くん…」

そう言いながら
おばさんが、來未の肩を抱き寄せる。



「上手く言えないけどさ…、母さん…、ちゃんと俺たち…、俺と來未、育ててくれたじゃないか。」




そう…。

母さんは、
ちゃんと俺たちを

血のつながらない俺と來未を
愛情込めて育ててくれた。




それだけは、


こんな俺でもわかるから。








No.146 14/07/14 17:49
名無し0 




それから、俺は病室をでて、医者と話をした



おばさんが話してくれた通り、過労と少しの貧血だった


ただ今日は念のため、一晩入院して様子を見るという事になり




ほっとした俺は、來未とおばさんが待つ待合室に顔をだす



「陽平くん、…!」
おばさんが、俺の顔を見た途端、走り寄ってきた

「ぁ…、おばさん、すみません。」


頭を下げる俺


顔を上げた先には、來未が静かに座っていた




『家族』って話をしてから、來未は黙ったままだ


アイツには、まだ難しかったか?……




「陽平くん…」

「え…?あ…、何ですか?」


「さっきの話、ね…」
「え?さっきの話?」


「そう…。あの、陽平くんが言ってくれた、家族。っていう…話。」


「あ、…はい。」

「あれね、…」





No.147 14/07/14 18:28
名無し0 




來未とは、少し距離がある所で


おばさんは、ゆっくりと話しだした




「早希さんにとって、ほんとに嬉しかったと思うの…。」

え…、

「あ…」



ほんとに、そうだろうか?…


「早希さん、お母さんね…」


「?…」





「子どもが産めない身体なの………」



「……………、」


子どもが…




「ほんとは、お母さんには口止めされてたんだけど…、もう話しても…、ううん、話した方がいいんじゃないかって思って…。」



子どもが産めない?




「來未ちゃんには、まだ…って思ったんだけど、」




子どもが産めない身体って…


「でもね!さっき、陽平くん言ってくれたでしょう?
早希さん、ほんとにあなたや來未ちゃんの事、大事に育ててた…!」




自分の子どもを産む事ができなかった母さん



なのに

父さんが、浮気してつくった俺や來未を…





母さんは



母さんは、どんな思いで?







No.148 14/09/08 14:01
名無し0 




父さん…?

子どもの産めない母さんを


哀しませて
苦しめて





もう、何年も会ってないけど


どこで何してるかなんて、なんも知らないけど



ほんと
最低だな…




No.149 14/09/08 14:19
名無し0 




「陽平くん…?」



おばさんの問い掛けに、我に返る俺


「大丈夫…?」


「大丈夫です…」


「おばさん、余計な事言っちゃったかな…」



「余計な事なんかじゃないです…。」


「ほんと?」
心配そうに、俺の顔を覗き込んでくる



「はい。…俺たち、…母さんと來未と俺は、…家族ですから。」




「陽平くん…」




そう

俺たち3人は、家族



血は繋がってなくても





No.150 14/09/08 18:41
名無し0 




未だに、下を向いたまま、何かを言いたげな表情の來未を、俺は見つめた



ちゃんと、來未に話そう

おばさんはまだ、早いって言ってたけど





「えっ…!」

突然のおばさんの驚いたような声に、ゆっくりと顔を向けた



廊下の先に、足早に歩いてくる男がいる



「………?」

誰だ?…



「おばさん?」


一瞬、俺の顔を見たおばさんは、


「ちょっ…と、…!」


そう言いながら、その男に走り寄っていく



えっ…?



どんどん近づいてくる男


俺は、何かを確かめるようにその男の顔じっと見た




「!!」
「!!…」



俺とその男は、同時に顔を見合わせた





「陽平っ…!?」



俺はこの瞬間

この男の顔を殴っていた



床に転げ落ちる男


泣き叫ぶ來未


崩れ落ちるおばさん






握りしめた拳を

俺はどうする事もできず


真っ白になった頭で、茫然と立ち尽くしていた





No.151 14/11/15 11:09
名無し 




怒りなんてもんじゃねぇ

そんなっ…
軽いもんじゃねぇ


母さんや俺、來未をほったらかしにして


いや、俺はまだ…

母さんだ…


母さん?……今まで、…
どんだけつらい思いしてきたんだよ


どんだけ…




「あんた…」


そんな母さんの気持ちっ…


母さんの…事


「分かってんのかっー!!」




握り締めた拳を俺はまた振り上げていた。



No.152 14/11/15 11:28
名無し 




「止めて…!陽平くん……!」



そんなおばさんの声なんて、頭に入ってくる筈もなく



倒れてる父さんを無理やり立たせて

胸ぐらを掴んだ



「陽平……」


父さんが俺の名前を口にする


「うるせぇ!!」



俺の名前っ…なんか

「殴れ。」



「…!?」



「好きなだけ、殴れ。」


っ…!?



胸ぐらを掴んだまま


俺は父さんの顔を見た。



一度俺に殴られた父さんは、口から血を流していた


けど…

俺の目をじっと見たまま、微動だにしない



「!!…」



なんだ…?


「なんなんだっ…!」





No.153 14/11/15 11:56
名無し 




殴った


何度も、何度も


父さんは、黙ったまま俺に殴られてるだけで




だけど


なぜだろ…?



そのうち、虚しくなってきて






「小森…さん……」


…?


胸ぐらを掴んだままの俺はゆっくりと顔を上げる



父さんの向こうに誰かが立っている



「……?」


よく、見えねぇ…?



誰……?



「神坂さんっ…」


後ろで泣き叫んでいた來未が、掠れるような声でその人の名前を呼びながら―――




俺と父さんの横を走り抜けていく








人を殴るってさ


こんなにも、痛いもんなのか?



俺は自分の拳を見た





No.154 14/11/15 12:32
名無し 




神坂さんの顔を認識するには、今の俺には難しかった



「陽…平…、」



父さんが俺に、ハンカチを渡す



?…


殴った俺が、渡すんじゃなくて?



意味わかんね……




「もう、…いいのか…?」


…?もう、いい?


「まだ、殴りたいなら殴っていいんだぞ…」



殴りたいなら…




いてぇな…

手……


「陽平…」
「もういい…」




「陽…」
「もう、いいっ…!」







No.155 14/11/15 18:09
名無し 




「小森…さん…」



「…!」


今度は顔を上げる事ができない




声の主が、神坂さんだって分かったからじゃない


父さんの声を振り払った時に気付いてしまったから





「……」



これで、二度目だ…


神坂さん…に見られた

俺の泣き顔



俺…

…………




情けねぇ…






「翔平さん……」


父さんの名前をおばさんが口にする



「あ、はい…。」


「ごめん…なさいね…」
謝るおばさん。



「あ!いや!おばさんが謝らないで下さい!」



切れた唇を庇う事なく、深々と頭を下げる。



「なんで…なんで、おばさんがっ…!」


謝んだっ…



俺の頭の中はぐちゃぐちゃだった




No.156 14/11/16 09:05
名無し 




いつだってそうだ…

関係ないおばさんが、俺たち家族のために頭を下げる……


俺が來未の存在を知った時だって


俺を…気遣って…

いや…、
家族のため?
……だったのかも、な…


そうだとしたら

俺たち家族は、おばさんのおかげで保ってる



家族……


家族か…



ほんとに俺たちは、家族……なんだろうか



こんな形で

しか、再会できなかった父さん…


こんな、……父さん

なんて、父親って言えるのか…?




「何しに来たんだよ…」


俺は思っている事を言葉にする



「…陽平。」


「何しに来た…」


「母さんが、」


「母さん…?」


「あぁ…。倒れたって、おばさんから連絡もらって。…」



「あんたに、」

「?…」


「そんな権利あんのか…」




No.157 14/11/16 09:21
名無し 




「そう、だな。」


「っ…!」



「翔平さんっ…!」

「おばさん、いいんですよ。」


…!?
「何が、…いいんだよ…」



「お前にも、言い分があるだろう。」


言い分…


「ただ、ここは病院だし、周りの人にも迷惑がかかる…。」




迷惑…


ふと、周りを見渡してみる


他の病室から廊下に出てきた患者さん


気配を感じて
後ろを振り返ると……


おばさんに支えられるように立っている母さんがいて



父さんの先には、泣きじゃくる來未の肩をしっかりと抱きかかえた…
神坂さんの姿…





……………



「分かった…」


俺と父さんは、とりあえず病院を出る事にした





No.158 14/11/16 09:53
名無し 




病院を出た俺と父さんは、父さんの車で近くのファミレスに入った



………


…………………


神坂さんの横を通り過ぎる時、ちらっと神坂さんを見た俺


神坂さんは、笑って俺を見返してくれた…


優しすぎるほどの笑顔で―――…




そういや…神坂さん、

なんで病院に…?


誰かに?……




そんな事を考えていると


「腹減ってないか?」

父さんが聞いてくる


俺は黙って首を横に振る


「そうか。…じゃ、コーヒーでいいか?」


また俺は黙ったまま頷いた




そんな気遣いなんかいらねぇ…


注文したコーヒーが来るまで、




俺は、一切父さんを見る事はなかった







No.159 14/11/16 18:26
名無し 




「大きくなっ……あー、悪い…、大人になった…か…。」



「………」





店員が怪訝な顔をしながら、コーヒーをテーブルの上に置く




ふと、父さんの顔に目を遣ると


俺に殴られた顔は、内出血で赤く腫れていた



「!?…」



「結構、効いたな…。」


顔を押さえながら、苦笑いした


俺は思わず、目を逸らす



「あぁ、気にするな。」

「!…」


思えば、こんな顔でファミレスなんて…




目のやり場がない俺は、コーヒーのカップを手にした





No.160 14/12/07 13:13
名無し 




「陽平、俺に聞きたい事あるんだろう?」



徐に父さんは、俺に話しかけてくる

「!!」


聞きたい事!?


「…聞きたい事じゃない!言いたい事だっ!」



「…そう、だな。」

そう言うと。

父さんは、口をつけたコーヒーカップをゆっくりと置いた





でも、こうして改まってしまうと、何から話せばいいのか…



母さんの事…

來未の事………?



父さんは黙ったままだ



そんな父さんを見ていたら、無性に腹が立ってきて



「なんで…」


「……」

「なんで…っ」



「陽…」
「捨てたっ…?」
「陽平…」
「俺たち…、を…、俺たち家族を…っ!!」

No.161 14/12/07 13:42
名無し 




捨てた!?

俺…今、捨てたって…

なんで、

…………


捨てられたなんて、

俺はっ…、思っちゃいない!



「捨てた…、つもりはない」


そんな俺の気持ちを逆撫でするように

父さんがつぶやいた



「はっ…!なに、言ってんだ…!!」

「陽…」
「俺と來未を…っ!母さんに押し付けて、出ていったくせにっ!!
母さんが…、母さんが…」
どんな想いで……



「他人の俺たちを、育てたと思ってんだよ!!!」

「………」


何も答えない父さん



「それが…、それが答えじゃないかっ!」




やっぱり俺たちは


「捨てられたんだ…」





No.162 14/12/07 14:14
名無し 




「確かに、お前と來未は…母さんとは、血の繋がりはない…。」



「………」


「陽平?お前、いくつになった?」



「………」


「……20…6か?」


「だから、なんだ…」



「好きな人とか、いるのか?」


!?

「うるさい…」


神坂さんの顔がちらつく



「俺が、母さんと知り合ったのって高校生の頃で。…ひとつ下の後輩だったんだ。」



父さんと母さん…

そんな話、初めて聞く



「勿論、俺の方が一方的に好きになったんだけどな。…母さん、全く振り向いてくれなくてさ。」



…………

そんなに好きだったんなら、………



「何度付き合ってくれって頼んでもずっと断られて。ある時さ、聞いたんだよ。『俺の事、嫌い?』って。それで、嫌いって言われたら、諦めようとも思ったんだけどな。」



「………?」


「フ…、好きだって。」


「…………」



「だったら、付き合ってくれって、言ったら…」


父さんは、一瞬窓の外を見た後


「病気の事、話してくれた。自分は、子どもができない身体だからって。
だから、好きだけど、付き合う事はできないって。」






…………



母さん。








No.163 14/12/07 15:16
名無し 




「それでも、俺はいいと思った。だから、付き合って。
高校卒業して、すぐ結婚した。…、半ば強引だったけどな。」



母さんは、…

「なのに、浮気したんだよな…」


浮気されるような父さんと結婚して、

幸せだった?





「俺の言葉を信じるかどうか、陽平…、お前に任せる。」



「……?」



「母さん、俺の子どもが欲しいって…。だから、他の女の人に産ませてって、そう言ってきた。……」



「!?」


「俺だって、最初はそんな話聞かなかったさ。
だけど、…母さんの気持ちは変わらなくて。
お前が生まれた後も、俺の気持ちは変わらなかった。
來未の時もそうだった。ただ、來未の場合は…お前がいたから、な…。」



覚えてる…

母さんがあの日、生まれたばかりの來未を連れてきた事…






No.164 14/12/07 17:26
名無し 




…っ!


「まさか、…」


「…どうした?」


父さん…

「來未の事で、出ていったの…か…?」



「あぁ…、いや…、母さんに…出て行ってって言われた。…」


「だからっ…」

「お前が…陽平が…、俺や母さんを受け入れられないって。來未の事でな。だから…」


俺と來未が初めて会った時の事…?


でもっ…!

「だったら!母さんだって、俺…」


ずっと、母さんの事、避けてた…



父さんが出て行って行ってから、ずっと…




「母さんには、母さんなりの考えがあったんだろう…。
しばらくの間だからって。」



しばらく…の間……


なんかじゃない


あの日から、10年?


母さんは、俺の気持ちをずっと一人で受けとめてきたのか…?



俺だけじゃねぇ…

來未だって



No.165 14/12/23 18:39
名無し 




母さんの顔がちらついて

俺は…

「俺…」

「陽平?」



手にしたカップを落としそうになる


「どうした?」


父さんの顔を見る


ますます腫れてきた父さんの顔…



「母さんは…」

「…?」


ひとりで?


「何もかも…っ、母さんに、押し付けたのか…っ」


「陽平、俺が悪いんだ。」


「……」


「母さんが、あいつがこんな事になってしまったのは、俺のせいだ。……」


父さんの…


せい…?




いや…

もう、とっくに…


母さんの事

許すべきだったんだっ…


「俺の……、せいだ…俺が、母さんを、母さんを苦しめてたんだっ……」


「陽平…?」



「俺がっ。…」




來未の事、家の事
全部、押し付けてきたんだ




No.166 14/12/24 17:05
名無し 




「お前、…大人になったな。」


父さんの思いもかけないセリフに、はっとする


「大人…、俺が?」




「あぁ。」
父さんがゆっくり頷きながら、答えた


「っ…!どこが…!」


俺のどこが、大人だって言うんだ…っ



「お前今、自分の事責めてるだろ。」



責めてる…


あぁ……


「俺の…せいで…」


「責任感じてるんだろ?」


「!…」


「母さんの事。……もしかして、來未の事も、か…?」



何も口にしてないのに

父さんは、俺の思いを言葉にする






No.167 14/12/24 17:41
名無し 




「男なら、きっと同じ事考える。」



「!、」


「まぁ、俺が言える立場じゃないんだが。…」



「父さん……」




父さんは俺の目を真っ直ぐ見た後
ゆっくりと笑った




父さん


父さんは、…


もしかして


「母さんの事…」

「え?…」


「俺が、面倒見てもいいか…?」



「えっ?」

父さん…が、?


「勿論、來未ともちゃんと話す。」



「來未と…?」

「心配するな。母さんたちと、一緒に住むっていう事じゃないから。」




父さん?


「父さんは、…誰かと、」
「?」
「一緒に住んでる……?」


母さんとは違う、女の人と…






No.168 14/12/24 18:08
名無し 




「……陽平?」


「あ…、いや、」





「ひとりだ。」

「え?…」

「家を出てから、ずっと、ひとりだ。」



「ずっと?…」



俺は、ずっと父さんは、誰かと一緒だって…
そう思ってた


母さんや俺たちを捨てて、女のところに行ったんだって

そう…思ってた……




「こんな事言ったって、お前と來未の母親はあいつじゃないからな…。
なんの、説得力もないが。…」



「………信じる、よ。」


「陽平…。」


信じる


「母さんが…」

「?」


父さんの事

「信じるなら。」








No.169 14/12/24 18:52
名無し 




今。

病院の駐車場に戻った俺と父さん



「こうさかさん…?って言ったか?」


車を降りながら、父さんが徐に聞いてくる


「!…」

「いや、來未がそう呼んでたから、な。」



神坂さん…

そういえば…、


「可愛いひとだな。」

「!?」

「お前より、少し上みたいだが。」


「少し…じゃないよ」



「そうか?…ま、お前が好きになったひとだろ?」


好き…に


「20、…違うんだ…」


俺は、素直に告げた


「歳は関係ないだろう?」


「!?」


「お前が、陽平が好きになったんだろ。」

「………」


「まぁ、いろいろ問題はあるかもしれないが。
あとは、当人たちの問題だろうし。」


それ、だけか…?


いや、
ただ単に

「俺の…、一方的な片思いだから…」





車のドアを閉めながら、俺はそう答えた





No.170 14/12/24 19:35
名無し 




「一方的な思い…だったら、こんなとこまで来ないだろ。」



前を歩く俺に、車の鍵を閉めながら放った父さんの言葉に



「…!?」

思わず、足を止める



こんなとこ…まで、


……


そういえば…、神坂さん、

なんでっ…、ここに……


「陽平の事が心配で。ここまで来てくれたんじゃないのか?」


心配……


………

神坂さんの気持ちが、知りたくなる






No.171 14/12/31 15:05
名無し 




今。

俺の横には、神坂さんがいる


―――あれから



來未と父さんと

それから、母さんも一緒に話をした

もちろん、おばさんも。



話してしまえば

ちゃんと話せば


なんて事なかった


なんで、もっと早く話さなかったんだろう?



そしたらもっと、分かり合えたのに


こんなに長い間、お互いを傷つけあって



ぐちゃぐちゃになって




「時間も…必要だったんじゃない…?」



横にいる神坂さんの一言が、俺の心に響いてくる


時間…か


「そう、…ですね。」




必要な時間。






No.172 14/12/31 15:18
名無し 




「俺と…神坂さんの間にも、時間って必要?…」



「え…っ」


「俺、好きです。神坂さんのこと」



「小森…さん…」


「だめっすか?」


「…………っ、」



俺は軽く息を吐く



「神坂さん?なんで、今日来てくれたんですか…?」



どうしても聞きたかった


「それはっ…、」






No.173 14/12/31 15:45
名無し 




俺、困らせてる?


「野中さんに、」

「先輩?」

「そう…。…あなたが、小森…さんが、今、大変だって…」



先輩…


「だから?」

「ぇ…」


「先輩に言われたから、だけ?」



「!?…」



下を向いて俯いてしまった神坂さん


「俺…、あなたを困らせてるのかも。」


ゆっくり、顔を上げた神坂さん



「でもね、やっぱり聞きたい。
俺の事、…気になって来てくれたんじゃないんですか?」



「小森…さん、」


「時間が、必要?」

「っ…、」


「だったら、俺、待つから。」





No.174 14/12/31 16:20
名無し 




今は俺の事を見てくれてる




「俺たちにも時間が必要なら……、それが、必要な時間なら、」


「………待ってて、」


「!!」


「私は…、小森さんが心配で…、気になって…ここまで来てしまった…。でも、図々しい事をしてしまったって…後悔してて……」


「神坂さん?」


「だけど、…今は、もう後悔はしてない…。ここへ来た事。」






神坂さんにも、俺と同様いろんな事情があって…


きっと、これからもいろんな事があって



思うようにいかないこともあるかもしれない



でも

「待ってる。」


家族が、ひとつになるのにだって
こんなに時間がかかることだってある


ましてや、他人の俺と神坂さん


だけど、俺はもう迷わない

好きだって
大切な存在だって


気づいたから


だから俺は


神坂さんが



『俺のもの』になるまで。


待つ。



「いい?」














―完―





No.175 14/12/31 16:51
名無し 




ほんとに、時間がかかってしまった(笑)


この話、今確認したら去年の夏からで―――


最初は去年までには終わらせるつもりが、まさかの年越し
しかも、また更に1年が

は…
もう、笑うしかなくて

どんだけ、仕事に追われてたんだっつうの

あ…あとは、プライベートもか…


それから、あ、いや、いいや(汗…



とりあえず、第2目標にしてた2014年までには終わらせる事ができた訳で

これも自分にとっては、必要な時間だった?
なんて…
得意のイイワケを話のラストに引っ掛けて綴ってみた((泣)笑)



これで、一連のお話は書き終わった
ユキトと直哉のその後も、(あ、また字間違ってるかも汗…)も、書けたし
書きたいと思っていたものは書けた
陽平と神坂さんのこれからは、…誰にもわからない
ただ、陽平が少し強くなったことだけは、伝わっただろうか?
勿論、そうなったのには、家族や神坂さんが…
そして、竜二の、沢山の人たちのおかげでもある訳で
あ、グダグダ書きすぎたか…

とにかく。
最後まで、読んでくださった方がいらっしゃったとしたら、
拙い素人の書く話に
こんなに長い間お付き合い頂けた事に

本当に感謝しかありません


本当に、ありがとうございました(^_^)v



どうぞ、よいお年をお迎え下さい



2014.12.31





  • << 177 最後に この唄を――― http://www.youtube.com/watch?v=SoGzZCbe7Ew&sns=em 贈る。 好きな唄です すみません 少し、遊んでみましたf^_^; 一人遊びです (^_^;) じゃ。☆

No.176 14/12/31 17:40
名無し 




書こうかどうか
ちょっと迷ったけど


クーさん
もうここは覗いていないと思うけど、あなたの名前を勝手に想像して、使わせてもらった事、改めて感謝と共に謝罪させて下さい

区切りという事で(^_^)


これから、ますます寒くなると思います
怪我された足が痛まないよう、祈ってます


クーさん、本当にありがとうございました(^_^)v







No.177 15/01/05 16:01
名無し 

>> 175 ほんとに、時間がかかってしまった(笑) この話、今確認したら去年の夏からで――― 最初は去年までには終わらせるつもりが、まさか…


最後に
この唄を―――




http://www.youtube.com/watch?v=SoGzZCbe7Ew&sns=em



贈る。

好きな唄です


すみません
少し、遊んでみましたf^_^;
一人遊びです
(^_^;)






じゃ。☆









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