こんなはずじゃ…
てめぇ今日こそぶっ殺すぞ!
早く面貸しやがれ!
今無事でも夜中にてめぇぶっ殺す!
さっさと出てけ!
結婚10年目の夫に顔を合わせれば罵られるようになったのは一体いつからだったのだろうか…
こんなはずじゃなかったのに…
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モラ夫にも何度も代わってくれないかな?
と頼んでみたが
「どうせ一週間位の入院でしょ?あんたが仕事辞めたんだから働かなくちゃいけないだろ?仕事は休めない 」
あっさり断られた
だったら義母に一日でいいから代わってもらえないか聞いてみてもらえないかな?
「俺からはそんな大変な事言えない」
と聞いてくれなかった
5日目にして限界を感じた私は思い切って義母にそれとなく話してみた
「婦人科の先生からも張りが強いから薬が増えて付き添いを代わってもらうように云われたんですけど…しょうがないですよね…」
私は医師から云われた言葉をそのまま伝えた
すると義母は
「自分の子供だから仕方ないわよね」
その一言だった
祐子の子供が入院した時は確か何度も足を運び
弘人がかわいそうでかわいそうで…と何度もこぼしていたのを私は覚えていた
もういい…
お腹の赤ちゃんには申し訳ないが今ある命
勇希を守るのは私しかいない
私は勇希の付き添いをしながら張り止めの薬を飲み幸い同じ病院の婦人科に受診していたのでわざわざそんな私の為に病室に出張してお腹の診察もしてくれたスタッフがいた事に涙ながらに感謝した
今回の妊娠も経過が経過だった為に
長野の実母に東京に来てもらい
こちらで出産する事にした
どうにか臨月を迎え陣痛がきた時にモラ夫に病院まで送ってもらった
旦那さん立ち合いますか?
と聞かれ
立ち合い分娩について全く勉強していないんですが
と聞いた所
妊婦さんの頭の方で立っている分には問題ないとの事だった
私はこの出産が恐らく最後であるだろうと思っていたし
この出産に立ち合ったらモラ夫が変わってくれるような気がした
「助産師さん、でしたら主人を私の下の方が絶対に見えない位置に連れてきて下さい」
モラ夫は私の頭の近くで第三子の出産に立ち会った
ただモラ夫は立っているだけだった
私はモラ夫の事など頭にはなく
三度目であるが強烈な陣痛の痛みが襲ってきて必死だった
何となく周囲が慌ただしい事に気付いた
どうやら心音が低下してきているらしく
一刻も早く赤ちゃんを取り出さないと危険な状態らしかった
助産師さんはお腹を思い切っり押して赤ちゃんを出そうとしているがなかなか出てこない
いつも穏やかな先生の表情が変わっていた
赤ちゃん…!
祈る気持ちだった
赤ちゃんの心音が低下した為に
吸引分娩をしますよ
と簡単に説明された
私の赤ちゃん…
頑張って!!
しばらくして泣き声が聞こえた
男の子ですよ、おめでとう
嬉しくて涙がこぼれた
無事に産まれてきてくれてありがとう
新しい命…
新しい力…
名前を「新」
とつけた
私の出産は夕方だったので
モラ夫一族の長男として産まれた新に
義父母はたいそう喜んだ
入院中の私はさておき子供達や私の実母、祐子や弘人まで呼んで老舗料亭を予約し御祝いの席を設けた
義母は
「立ち合いはどうだったの?あなたも大変だったわね」
「いやー、どうって事なかったけどね~。全然見えないし何やってんだかわかんないしさー、そしたらスルって産まれたからさ~、三人目だったから楽だったんじゃないの~?」
モラ夫は笑いながら話した
義母は
「そうよね~、祐子は弘人の出産の時、丸一日かかったから本当に皆が心配したわ。代わる代わる腰をさすったりしたものね。ママは楽なもんよね~」
続けて祐子は
「そうよ!私は大変だったんだから!もうあんな大変な思いしたくないわ!楽な人はいいよねー、こんなに楽なら代わりに産んでもらおうっかな~!ポコって」
実母は黙ってそれを聞いていた
〔私がここで釘をさしたらあの子が悪者になる、ここは玉って話しを聞いていた方がいい〕
母なりに悔しい気持ちで一杯だったが私の為に我慢していたのだった…
話しは尽きずに
義母と祐子とモラ夫は義父の経営していた会社の話題へと変えた
お父さん今年で定年だから新も産まれた事だし皆で旅行にでも行こうよ
そうだね、そうだね!
9月頃がいいねー、紅葉も綺麗だし
〔9月?新はまだ2ヶ月じゃないの?まさかね…〕
そのまさかが来ようとは…
その時私は産まれたばかりの新を目を細めて眺めていた
9月
モラ夫は突然
「お父さんの退職祝と俺の誕生日祝を兼ねて軽井沢の温泉に行くから準備しておいてよ」
え?…
新、二ヶ月だよ?
温泉とかムリじゃないの?
「だってお父さん達は温泉がいい、って言ってるし、祐子はアウトレットに行きたいんだって。ちょうどいいホテルがあったんだよ」
え?祐子さん達も行くの?でも二ヶ月の赤ちゃんと梨緒達を連れてあちこち行くのはちょっと気が進まないんだけど…まだ夜泣きもするし…
「あんたって何なんだよ? お父さんの御祝じゃないか!祐子だって御祝いしたいんだよ!あんた何かしてあげようとかそうゆう気持ちになんないの?あんたはさ、新の面倒だけ見てりゃいいだろ!梨緒達はお母さんがいるからいいだろうよ?温泉だって嫌なら入らなきゃいいんだ!本当にお前はとことん厭味な奴だな!どうせ文句いうだろうと思ってもう予約したんだよ!クソアマ!」
一方的にまくし立てた
返す言葉がなく産後で不安定な気持ちもあり涙が自然と出てきた
そんな私を見てドアをドンドン叩いて威嚇するモラ夫はまさに鬼の形相だった…
しばらくはまたいつもの無視が始まった
そうゆう期間は二週間位経つと大体おさまる
だが決して謝罪はしない
悪いなんてこれっぽっちも思っていないからである
そうさせる相手が悪いから謝る必要はない
こんなに人を怒らせるなんてあんたは天才だ、人を怒らす天才だ!すごい才能だ!
一言でも言い返せば何倍にも返ってくるし酷い時には物が飛んでくる
家のあちこちは穴が空いている
私は渋々ながらも旅行の計画に従うしかなかったのだった…
とうとう旅行の日が来てしまった
同じ長野に行くのに私の実家に寄ろうなんて事はモラ夫一家の頭にはこれっぽっちもなかった
「いいか、この旅行はお父さんの定年の御祝いと俺の誕生祝いなんだからな、予定がびっしり組んであるんだから寄り道してる時間はない」
事前に圧力をかけられていた
途中の観光地で湖でボートに乗る所があり、祐子が乗りたいと言い出した
「じゃあせっかくだし皆で乗ろう」
ボートといっても手漕ぎボートではなくモーターのついた釣り舟のようなボートで屋根もなくかなりのスピードが出ていた
私と新はもちろん見学だと思っていたので抱っこしながら沖で待っていた
するとモラ夫は怒り口調で
「なんで乗んねーの?皆で乗ろう、って言ってんだろ?!そうゆう態度、シラケるんだよ!」
だって新を抱っこしてこんなスピードの出るボートに乗るなんて危ないと思わない?
今度は祐子が
「私達は乗りたいんだけどぉ~!弘人待ちくたびれちゃったしぃ~」
スピードは80キロ近く出るらしい
絶対ムリだ
私達は残るからみんなで行ってきて
「大丈夫だって釣り舟のオジサンも言ってんだから早くしろよ!」
こんな押し問答がしばらく続き
しびれをきらした義母が
「こうゆう時は何を言っても駄目なもんよ、気が進まないんだから無理矢理進めても駄目よ。私達だけで行きましょう」
この一言で私達は乗らずに済んだ
まだ二ヶ月になったばかりの首の座らぬ赤ちゃんと私は救われた気がした
無事に帰ってきたモラ夫達は
「あ~楽しかった!!楽しかった!風が気持ちいいし最高だったねぇ~!景色もサイコー!乗れなくてざんねん~だったねぇ~もう二度と乗る機会なんてないんじゃな~い」
イヤミたっぷりにモラ夫に言われた
だが思ったよりスピードがあったらしく実は景色を楽しむ所ではなく風の抵抗が強くて目もあけられなかったと後から義母から聞いた私は
なんだかモラ夫が滑稽に感じた
翌日は祐子が行きたがっていたアウトレットショップへ行った
だがまだまだ甘えたい盛りの勇希はすぐに
抱っこ~
と言ってくるので、私は勇希をおんぶし
新のベビーカーを押しながらアウトレットショップへと行った
久しぶりの買い物に私も嬉しくなり
昨夜新に夜泣きされて寝不足だったし背中も重いけれど
そんな事すら忘れる位心が久しぶりに弾んだ
梨緒は弘人と一緒に義母達が連れて行ってくれたので
私達はモラ夫とショップを見て
「この洋服どうかな?」
「いいんじゃない?」
久しぶり買い物に会話も弾んでいた
所が何軒目かのショップを後にして次のショップに移ろうとした瞬間
「俺だってみたい所があるんだ!いつまで付き合わすんだ!」
突然キレた
私はびっくりして
「なんで急に怒るの?
何が気に入らないの?」
モラ夫はお得意の言葉攻撃を発射した
「てめぇの行きたいとこばっか行ってんじゃねぇよ!俺だってみたいとこがあるってさっきから言ってんだろーが!それをずーっとてめぇの行きたいとこばっか行ってよぉ!
俺の時間はあんのか?!てめぇ聞こえてんだろ?!返事くらいしろよ!聞こえてんのかバカ!」
私を罵り始めた
「そこまで言うんだったら子供達連れてあちこち行くの大変だし一人で行って来たらどうなの?」
ドスッ
モラ夫の持っていたセカンドバックを投げ付けられた
そうしてモラ夫はプイッとひとりで行ってしまった
この光景を立ち止まって見ていたカップルもいた
悔しくて涙が出そうになったが
新が泣き出してしまい
私の自由時間は20分足らずで終了となった
授乳を済ませてオムツを替えて…
私はもう罵られる事に慣れていた…
結局モラ夫は何も買わずに帰ってきたのだが
集合場所には義父母もいたので不機嫌な態度を取るわけもなく
「う~ん、いいのはなかったなぁ
お母さん達は何かいいのあったの?」
と何事もなかったかのように話し始めたが当然私には無視を続けた
私はこのパターンにすっかり慣れていた
リゾートホテルでの晩餐会はモラ夫と義父の講演会状態だった
元々滑舌良く話すモラ夫は話しだしたら止まらなく
巧みな話術を持っていた
そして外面が良い
それは身内である親までにもだ
義父はモラ夫と晩酌しながら
「しかしモラ夫はいい男になったな、家も建てて子供も三人つくって。うん、本当にいい男になったな、うん」
モラ夫は少し照れた顔をしていたが
「俺は夫として父親として当たり前の事をしているだけだよ。家事も育児も協力するしね。子供が寄り付かない父親になりたくないしね。子供達に色んな事を教えたい」
べらべらべらべら…
まるで機関銃のように語りはじめた
私はこの説教じみた話し方をいつしか受け流す癖がついていた
まともに聞いていたら何だか洗脳されそうだったから…
新の授乳の時間だ…
やっとこの場から解放だ…
他の子供達も飽きてしまってゆっくり食事所ではない状態になってきた
私は子供達を連れてお先に失礼した
モラ夫のおしゃべりに付き合わなくて済む…
あぁ助かった…
短いようで長かった旅行もやっと終盤を迎え
やっと家でゆっくり休めると思ったのもつかの間
「定年の御祝いと俺の誕生会なんだから普通ケーキでしょ?家に帰ったらケーキで御祝いだからね、あんたそれ位用意してよ」
旅行から帰ってきたその足でケーキを買いに行かされ
間もなく誕生会が始まった
「記念写真を撮るから」
カメラを渡された
私以外のみんなで集合写真
嬉しそうな義父を見て嫁はこれでいいんだ
と自分に言い聞かせた
すでに酔っ払っていたモラ夫は早々横になってテレビを見ている
子供達を一人でお風呂に入れ
寝静まってから誕生会の後片付けをひとりぼっちで黙々とやって…
テレビを見て寝ていたモラ夫に声をかけると
「俺は明日仕事なんだよなー、いいよなー、休みの人はなー、まるでニートだな」
主婦ってニート?
子育てってニート?
「そんな言い方あんまりじゃないの!家事だって立派な仕事だよ!」
「じゃあよ、お前の分の住宅ローンは誰が払ってんだよ?ガス光熱費は誰が払ってんだ?誰が稼いでんだ?あぁ?!」
モラ夫はまた激しく罵り始めた
今までは住宅ローンをモラ夫と半々、食費と子供達の洋服代や雑費を私が負担する形だったが
私が退職してからはモラ夫の給料がいくらなのかわからぬまま食費他オムツや洋服、雑費代として平均して毎月10万のお金をもらっていた
モラ夫はいつも得意げに
「10万なんてもらいすぎだ。他の主婦はこんなにもらっていない、あんたは贅沢だ、だから余った時は返してくれ」
いちいちレシートでチェックはされなかったが毎月余ったお金は必ず「返金」させられていた
「あんたが退職する事は計算外だったし子供が三人っていうのも計算外だったから、俺だってお金ないのにあんたの住宅ローンを払ってやってんだから」
何かあるとこの一言だった
私が退職してからは
事ある事に
「あんたの住宅ローンの支払いをしている」
これが定番だった
「あのさー、あんた退職金いくらもらったの?その退職金を住宅ローンに回して繰り上げ返済しないか?そうしたら月々の支払いが楽になるし。俺一人の収入じゃあやっぱりきついから」
事ある事に言われ続けていた私はモラ夫の収入では支払いが困難なんだろうと思い退職金500万を繰り上げ返済する事にした
モラ夫にこれで責められなくなる…
私の分の住宅ローンは少しは楽になる…
その時はそう思っていた
私は言われるがまま
退職金を住宅ローンの繰り上げ返済にあてた
これで月々の支払いが少なくなってモラ夫の負担も少なくなる…
私の分の支払いだからこれでいいんだ
子供達の為にと思って貯めておいた退職金…
また働けるようになったら貯めよう…
これで責められる事もないだろう…
私はそう思っていた
モラ夫は車を買い替えたから
と突然言い出した
モラ夫は小銭にはうるさいのにいつも大きな買い物を突然してしまう
今回もいきなり車を買い替えてしまった
新車代はモラ夫の祖母の遺産だったらしく
住宅ローンの返済にあてなさい
と義母から頂いていたのだった
モラ夫は私の退職金で先に住宅ローンの繰り上げ返済をしたのをいい事に遺産を新車に使ってしまっていたのだった
勿論義母には私の退職金を宛がった事など一切話すわけもなくあの人が仕事やめたから俺の負担が大きくて大変なんだ。だから遺産で繰り上げ返済できて助かった。車は長期のローンを組んで買ったから問題ない。
と義母に嘘をついていたらしい
義母は「あの子、時々嘘つく事があるのよね」
とだけ言っていたが遺産の使い道に関しては
「そんな事だろうと思ってたわ~ママ大変よね。本当に嘘つきで嫌になるわ!」
と私にモラ夫の愚痴をこぼしていた
義母なら私の気持ちを理解してくれる唯一の理解者だ
義母なら私の気持ちを理解してくれる
私はそう思っていた
月々の住宅ローン返済は減ったからといって私が頂く食費分は以前同様であり
相変わらず余ったおお金は「返金」していた
だが
「お前の分のローン返済をしている」
こう罵られなくなった分気持ちは楽になっていた
そして新が四ヶ月になった時
忘れられない大事件が起こってしまったのだった…
二歳になったばかりの勇希はおっとり型の梨緒とは正反対に自我がとても強く
よく癇癪を起こしては泣いていた
買い物に連れて行ってもキーキー騒いで買い物どころではなくなるのだ
まだ赤ちゃんの新と
とにかく手がかかる勇希
やっと年中さんになった梨緒
この三人を連れて買い物に行くのは本当に大変だったので
モラ夫の休みの時にまとめ買いをするようにしていた
またいつものように勇希が騒ぎ出した
抱っこ~
これやーや!
モラ夫は明らかに苛立っていた
いつものように夕飯の支度をしていたら
なんだかリビングが騒がしかった
どうやら子供達がおもちゃの取り合いをしているらしい
またか…
今日はモラ夫がいるから任せよう…
私は揚げ物中だった事もあり夕飯の支度を続けた
すると勇希が突然大泣きする声が響き渡ったと同時にドスンという音がした
私の目に映ったのは勇希が床に転がって大泣きしている姿だった
モラ夫が勇希を投げ飛ばしたんだ…
「勇希に何するの!」
モラ夫は物凄い形相で私を睨みつけている
「こいつ俺に向かって玩具を投げてきたんだぜ!仕返しして何が悪い!」
モラ夫は続けてまくし立てた
「こいつが新や梨緒に意地悪すっから俺が怒ったらこいつが俺に向かって玩具で叩いてきやがったんだ!だから仕返ししただけだ!」
「相手は子供だよ?投げ飛ばしてケガでもしたらどうするの?仕返しじゃなくて言葉で説明したらどうなの?」大泣きしている勇希を抱きしめ私は泣きながらモラ夫に訴えた
「じゃあよ、叩かれた俺の気持ちはどうなんだ?俺は痛かったんだよ!俺の気持ちはどうでもいいのかよ!だったらてめぇこいつらが揉めてんのわかってんだったらこうなる前にてめぇが止めろ!てめぇが教えろ!」
「やっと二歳になったばかりの子供相手に仕返し?
叩かれた俺の気持ち?それは親なんだから教えてあげなきゃしょうがないんじゃないの?」
「そこまで言うならてめぇが教えろ!大体世の中叩く仕付けをしなくなったから度をこした事件が起こるんだ!親が叩かなくなったから痛みがわかんねぇんだ!」
モラ夫は反省するどころか叩く育児論を語りはじめ自分のした事を正当化していた
「叩いたら叩く子供になるんじゃないの?私は叩いて教える子育てには賛成できない!」
この時私は必死で訴えた
だがモラ夫は相変わらず
玩具で叩いてきたこいつが悪い
この一点張りだった
モラ夫お得意のグチグチネチネチが始まったので
子供達が眠そうだから、お風呂に
と、切り上げた
モラ夫がいる時はまだ赤ちゃんの新とモラ夫に先に入ってもらい、洗い終わったら新を受け取るのが私の役割だった
その晩もモラ夫は不機嫌ではあったが新を連れてお風呂に入っていった
「新、上がるぞ!早く勇希達を連れて来い!」
この声に焦った私は勇希がまた怒鳴られないように新を受け取ってから勇希を急いでお風呂場に行かせた
勇希が入った事を確認すると
私は少しホッとしたのか
梨緒に
「梨緒も早く行かないと叩かれちゃうよ。コワイコワイよ」
するとお風呂場からタオル一枚巻いて物凄い剣幕でモラ夫が出てきた
「てめぇ~!今なんて言いやがった!!」
まさか聞かれているとは思っていなかった私は凍り付いた…
「てめぇ~!このバカ女!!てめぇなんか死んでしまえ!!」
そういいながら脅える私を捕まえ
逃げようとした私の髪の毛をわしづかみにし
床に思い切り投げ飛ばし
モラ夫は私に馬乗りになり首を絞めたのだった…
首を絞められながらもそんな事を考えてた
モラ夫は気が済んだのかまずいと思ったのかその手を緩め
再び何事もなかったように風呂に入って行った
私は何ともいえない恐怖と嫌悪感とそして屈辱的な感情に襲われ
しばらくは壁に張り付いたまま声にならない声で泣きじゃくった
床にはわしづかみにされて抜け落ちたのだろう髪の毛が
束になって落ちていた
私はそれを見てまた
涙が込み上げてきた
まだ赤ちゃんの新は何が起こったか知らない
勇希はお風呂場にいたからこの場面は知らない…
全てを見ていた梨緒…
梨緒…
下を向いて本を読んでいる…
気付いてないはずがない…
梨緒…
ごめんね…
梨緒…
ママ、もう大丈夫だよ…
梨緒…
怖かったよね?
「ママ…この本ね…とっても面白いんだよ…
ほら、扉を開けると何か出てくるんだよ…」
梨緒は丸で何も見なかったのかのように話しかけてきた
風呂から勇希とモラ夫が出てきた
まだ恐怖感で一杯の私は勇希を呼び寄せ逃げるように別の部屋に移り着替えさせた
モラ夫はリビングに行ったようだ
梨緒…
もう遅いしお風呂に入れなきゃ…
お風呂に入ってくるから新の面倒みててね
まだ二歳の勇希に言い聞かせ
私は梨緒と急いでお風呂に入り出てきた
モラ夫は怒鳴ったり物を投げたりした後は家事育児を全面的に放棄する
新はもう寝てしまっている
勇希も眠いとぐずり始めた
梨緒は明日幼稚園か…
これからどうしよう…
でも…
私何でこんな酷い仕打ちを受けなくちゃいけないの?
私が悪いの?
私、そんなに酷い事言ってた…?
また涙がこぼれてきた
時刻はすでに23時をすぎていた
新も勇希も寝てしまった
梨緒は私を心配しているのか私の側を離れない
今晩は怖いけどモラ夫はもう私達に無関心だろうからとりあえずはここに居よう…
明日の朝ご飯の支度にキッチンに行かなくちゃいけない…
モラ夫がいたらどうしよう…
恐る恐るリビングを覗くとモラ夫はいない
奥の部屋でまたパソコンか…
今のうちにご飯をとがなくちゃ…梨緒のお弁当…
梨緒と二人でキッチンに行きご飯をセットした時
奥の部屋からモラ夫が出てきた
すると梨緒がモラ夫に笑顔で
「ねぇパパ、鉄棒でさかあがりできる?」
モラ夫に話しかけたのだった
モラ夫はそれに機嫌を良くしたのか
「昔はできたけど今はどうかなー?
あれ?何でこんな時間まで起きてるの?
梨緒、早く寝ないと明日幼稚園行けないよ。
このバカ女に付き合ってるとろくな事ないよ、早く寝たら~」
そう言うと睨みつけながらバカにしたような目つきでこちらを見てほくそ笑んだのだった
「ちょっと…
さっきからあんまりじゃない?
梨緒の前で言う事でもないし
あんな酷い暴力は許せない…
梨緒、怖がってるのわかんないの?」
途中から涙が流れてきた
「あのさー、梨緒なんか見ちゃいねーだろうよ
それに怖がってねーからこうやって俺んとこ来んだろ?こうやって笑っててどこが怖がってんだよ!
てめぇいい加減にしろよ?
あぁ?今度こそぶっ殺してやろーか?」
モラ夫はキッチンにしまってあった包丁を取り出しちらつかせながら
「ぶっ殺してやろーか?」
を連呼した
梨緒は私の後ろにピッタリと隠れて無言でそれを見ていた
私は梨緒を連れて急いで勇希達のいる寝室に逃げ込んだ
梨緒は私の手を握りながら寝てしまった
その晩は子供達の寝顔を見ながら涙が取り留めもなく出てきて
結局一睡もできなかった
朝になって鏡を見たら
私の首周りには赤い細かな斑点がいくつもできていた
それを見た私はまた涙が出てきた…
梨緒…
幼稚園行けるかな…
とりあえずお弁当作らなきゃ…
モラ夫は既に出勤していて顔を合わせる事はなかったのがせめてもの救いだった…
今日のモラ夫の帰宅は夜中か…
良かった…
逢わなくてすむ…
梨緒が起きてきた
「幼稚園どうする?眠かったらまだ寝ててもいいんだよ」
「昨日まおちゃんと鉄棒やろう、って約束してたから、幼稚園行く」
「わかった。具合悪かったり眠くなったら先生に言ってね。」
梨緒は幼稚園に行くと言ったので急いで支度をした
まもなく送迎バスが来て梨緒は幼稚園に向かった
私は首周りのアザを見られないように季節外れのタートルネックを着た
その後悶々としながらも家事をしていたが何かのふいに涙が出てきてしまう…
私がいけないから?
私がいけないからこうなるの?
私のせいなの?
新が産まれた時に区役所からもらった
「家庭の事、育児に悩んだら一人で悩まずにまずお電話下さい」
こんな冊子をもらった事を思い出した
「子育て支援センター」の案内だった
電話してみようかな…
この悶々とした気持ち…
誰かに聞いてもらいたい…
本当に私がいけないんだろうか…
「はい、子育て支援センターの佐藤です」
声からして50代半ばの優しく尚且つ、きりっとした女性の声が電話の向こうから聞こえた
「あの…
しつけについてちょっと相談したい事があるんですが…大丈夫ですか…?」
「ええ、大丈夫ですよ、ここはそうゆう場所だから遠慮しなくていいんですよ。
どうしたのかな?」
「あの…
先日子供の躾について夫と意見が合わずに喧嘩になってしまって…
夫は叩くしつけも必要だ、今の子は叩かれないから痛みを知らない、だから限度を知らずに相手が死んでしまう事件が起きるんだ、と言って叩く躾は必要だと言うんです…
でも私は叩いて子供を躾するのはちょっと違うような気がして…
それで…
夫が子供に玩具を投げられたからといって子供を投げとばしたのでやり過ぎじゃないの?と口論になったんです。でもどうしても納得いかない私は悶々としてしまって…」
私は震える声で一生懸命話した
電話口の佐藤さんは時々相槌をうちながらとてもよく話しを聞いてくれていた
佐藤さんの優しく包みこむような声に私はいつの間にか昨夜の出来事を話していた
……ただモラ夫から暴力を受けた事以外は……
佐藤さんは
「正解を言うわね。
叩く躾は間違いよ、
あなたが正しいの!
叩いて教えたら叩く子になるのよ。
明日、ちょうどあなたの住んでる近くの保育園で開放保育があるでしょ?そこの2階で子育て支援センターが毎週木曜だけそっちで開かれているの。良かったら明日いらっしゃらない?叩く躾がいかに良くない事なのか資料も用意しておくわよ。」
私は実際顔を合わせるのに抵抗があった
何故なら首にはまだ赤い斑点のアザが残っていたので
明日はもう少し薄くなっているかな…
そんな事を考えながらも
「はい、行けそうだったら伺います」
と返事をし、電話を切った
木曜日の朝
梨緒を幼稚園に送り
家事を済ませた昼近くに
勇希をベビーカーに新をおんぶして
歩いて20分程の子育て支援センターにたどり着いた
首周りのアザはよく見ればわかるけど
大分薄くなってきていた
だが念のためにタートルネックを着て出かけた
おんぶまでしていたのでとにかく暑く
勇希と水筒を飲みながら頑張って歩いた
トントントン…
勇希の手を繋いで階段を登ると
中からドタバタ子供達の騒いでいる声が聞こえてきた
ガチャ…
「こんにちは…」
あの…昨日電話で…」
と言いかけたと同時に
玄関先に50代半ばの優しい顔をした小さな女性が直ぐさま駆け寄ってきた
「佐藤です!いらっしゃい!お待ちしてたわ!暑かったでしょ~ささ~上がって~」
中に入るとそこは12畳位のスペースがあり
保育士さんが子育て中のママさん達の悩みを聞いたり
手遊び歌や読み聞かせなどを行っていた
ママさん同士もお互いの子供達の様子を見ながら楽しく会話していた
佐藤さんは
「本当によく来てくれたわ~!私、もしかしたら来ないんじゃないかと思いながらも資料を集めてコピーしておいたのよ♪良かったわ、本当に来てもらえて」
と、にっこり笑顔で言ってくれた
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15レス 274HIT 恋愛中さん (20代 女性 ) -
あなたならどっちを選ぶ?
お金が全くないけど超大好きな人と、 お金は沢山あるけど全く好きじゃない人、 どちらと付き…
11レス 239HIT 恋愛好きさん (30代 女性 ) -
マッチングアプリで知り合っていきなりお泊まりを誘われました
マッチングアプリで知り合って、会うことになったのですが、1回目から泊まりでの旅行と言われました。 …
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