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女子校に通ってた人は恋愛下手?
食後。お茶でブクブクうがい、その後ごっくん!何が悪い
ファミサポで預かってもらっていたのですが・・・。

きらきらぼし

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ももんが( PZ9M )
11/11/28 03:32(更新日時)

ねえ母さん
もう泣かないで…




僕は確かにいたんだ…




優しい母さんの声…


暖かい手のひらの温もり…





僕は母さんから命の旅の切符をもらったんだ。





母さん。



僕はちゃんと幸せだったよ。



短い間だったけど僕は確かに存在したんだ…





幸せな、柔らかい時間を…頑張って生き抜いたよ





だからもう泣いちゃだめだよ。



あ…
神様からの集合時間だ…



もういかなくちゃ。




母さん。




僕を…






僕を選んでくれてありがとう。










これは…
僕の幸せな幸せな物語。






短いけどたった一度…

願いは確かに叶ったんだよ。

No.1158756 08/11/07 22:04(スレ作成日時)

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No.201 08/11/18 13:59
ももんが ( PZ9M )

匿名さん🌱


こんにちわ🙇
応援レスありがとうございます



はじめましてモモンガといいます😺





初めての携帯小説で私なんかに思っている内容がうまく書けるかな…




と不安でしたが皆さんに目をつぶって頂きながら何とかここまで書くことができました




今回は子供達が自分達の運命を背負いながらお母さんに会いにきている




という内容でお話を書かせて頂きました



どんなに辛かったり悲しかったりしても決してひとりなんかじゃない




目に見える世界や言葉だけじゃない…




本当はいつも誰かが自分を思ってくれているんだよ




そういう思いで書いています😺




強い愛情とちょっとだけの勇気があれば



きっと家族で生きていく歯車のネジになるのではないでしょうか




これからもつたない文章ですが良かったらお付き合い下さいね🙇🌱

No.202 08/11/18 14:14
ももんが ( PZ9M )

『赤ちゃんまん


今日はあったかいね


風はあるけど寒くないよね』




お母さんは昨日の夜から作ったシチューが思ってたよりうまくできてご機嫌だ





こっちの人には
『事故で恋人は亡くなってしまった』



と報告してあるから誰もお母さんと僕を責めたりしないだろう



ここの人はみんな暖かい



身重なお母さんにとても優しくしてくれる




お母さんは心からここに来てよかったと感じているようだ





勿論ぼくもこの街の雰囲気が大好きだ




あと1ヶ月




そうしたら僕は本物のお母さんに思い切り抱き締めてもらえる




今はもう体も動かなくてただじっとしているだけだ



鳩のおっさんは時たま様子を見に来る位でいちいち介入はしてこない







ちなみにこっちでも鳩ギャル(?)にモテモテらしい…




神様


そちらはみなさん元気ですか?


こちらは色々ありましたが何とかうまくやっています





早くお母さんに会いたいです

No.203 08/11/18 20:44
ももんが ( PZ9M )

『にいにい!
朝ごはんの到着だよ


起きてくださ~い!



…ってさ~
何で昨日片付けたのにこんなに汚くできるかなぁ




ビールの缶!
つまみの袋!
脱いだパンツ!
かんだティッシュ!
丸めた靴下!




もう!
これじゃ嫁どころか彼女もできんはずだね





しゃあないなぁ!
可愛い妹が掃除してやるか』




『……春名ちゃん




今何時ですか?』




『え?今?

うんと朝の9時半だよ。


何なら日にちも言おうか



2008年の9月22日の月曜日!



ついでに明日は祝日でっす!』



『詳しくありがとう…



じゃあ俺も詳しく言うわね…



昨日の夜9時から本日の5時まで仕事して…始発で1時間半かけて帰りました…




さて俺は何時に寝たでしょうか…』



『はい!
朝風呂も入れて朝の7時!』




『…正解



だから起こすんじゃねぇ…』



『にいにの大好きなシチューなのになぁ


それじゃあもって帰ろうかなぁ』



あ~あ
この兄妹は本当に仲がいい


おじさんにちょっと焼きもちをやいてしまう

No.204 08/11/18 21:42
ももんが ( PZ9M )

僕は優しいおじさんが大好きだ




お母さんの何よりの心の拠り所で



お父さん兼お兄ちゃん




たくさんの叱咤とたくさんの愛情をお母さんに注いでくれる




お母さんはおじさんの前だと借りてきた猫ならぬ甘えた子犬のようになってしまう




きっとおじさんがいなかったら



お母さんは僕を産むとは言わなかったかもしれない





おじさん




もし僕が産まれたら肩車やキャッチボール一緒にしてね




毎日をお母さんと一緒に起こしにくるよ




休みの日は野菜をとったり



虫取りも教えてね






僕は産まれたら絶対




おじさんの事を大好きになるだろうな



これからも大好きなお母さんと僕を




よろしくお願いしますね

No.205 08/11/18 21:49
ももんが ( PZ9M )

その日は明日休みだからとお母さんは結局夕御飯までおじさんの家で過ごした





おじさんはかなり眠そうだったけど




お昼を食べたあたりでおじさんとお母さんは昼寝も仲良くしていた




寝息も穏やかに


その光景は幸せそのものだった




できる事なら


この幸せが




いつまでも
いつまでも



続きますように…






特別な幸せなんていらない





僕はただ



大好きな人達と



こうやって穏やかに過ごしていきたいんだ…





幸せって…




こういうことなんだな…




僕も


おじさんやお母さんにたくさんの幸せを運んであげたいです…

No.206 08/11/19 09:06
たけぽん☆ ( 30代 ♀ hg5Ah )

主さん初めまして🍀
11日にケイリュウ流産しました。
出血もなかったので流産した事が本当に信じられなくて未だに受け入れれない状態です。
妊娠が判明した時の喜びが大きすぎて…ショックが大きく、今は病院に行って妊娠さん達を見ると涙が出てきます…。
そんな中『きらきらぼし』に出会って、もしかしたら、亡くなった赤ちゃんからのメッセージかなと勝手に解釈しながら読ませてもらっています。
本当にいい作品ですね。涙が止まりません。本にならないかなぁ…なんて✨
長々と本当にすみません🙏
いい作品をありがとうございます✨✨✨

No.207 08/11/19 09:23
ももんが ( PZ9M )

>> 206 たけぽんさん🌱



はじめまして🙇
モモンガです




お話拝見しました😿


今とてもお辛いでしょうね…
心中お察し致します



今は体の痛みも
心の痛みも




ゆっくり癒して下さいね…





たけぽんさん

私思うんですよ




きっとあなたの大切な大切な赤ちゃんは



幸せだったんだって




確かにこの世に生きる事は難しかったのかも知れません




それはとても悲しいしやりきれないと思います





それでも
たけぽんさんの赤ちゃんはあなたに会えたたったわずかな人生も







あなたと過ごすはずだった何十年も



きっと変わらぬ愛情で過ごしていたでしょう…





だから







期間なんて



生きた時間なんて





きっと関係なく
あなたにあえてとても幸せだったのだと思います





どうか
あまり悲しまないで下さいね😿




ひょっとしたら赤ちゃんが遠くのお空から『ママに伝えて』って



私にイメージをわかせてくれているかもしれませんよ




ラストまでもう少しよかったらお付き合い下さいませ🙇

No.208 08/11/19 09:40
ももんが ( PZ9M )

次の日になり



遅い朝食を二人で食べた





今日は僕の定期検診の日だったからおじさんとお母さんとで



町に一つしかない総合病院まで出かけに行くつもりらしい




今のところ経過は順調で

お母さんの体調にも変化はない



『起き上がるのも寝返るのもきついんだなぁ』




なんていいながら毎日頑張って仕事に行ったり




朝と夕方に近くを一時間かけて散歩したりと





お母さんは一生懸命僕を育ててくれている




ちなみにお母さんは性別を聞くのはやめたらしい




『元気に産まれてくれたら女でも男でもどっちでもいいもん』



と、どちらかわからなくてヤキモキしているおじさんをよそに楽しそうにしている





『さぁ、ぼちぼち 出かけるか



暖かいけど腹は暖かくしてけよ




あっ、大丈夫かお前の母さんの皮下脂肪がきっと守ってくれてるよな』



『……にいに!』



『お~こわ!
早く上着もってこよ』




『あ!上着かぁ
居るかなぁ?



あたしいらないと思って昨日もってこなかった、ちょっと取ってくるね』

No.209 08/11/19 10:01
ももんが ( PZ9M )

『俺のジャンパー来てけばいいじゃん

出してやるぞ』




『大変うれしくないお誘いありがとうございます



たばこの匂いと怪しいシミのついた上着より
可愛いお気に入りのカ―ディガン持ってきます~



すぐだから待ってて』




そういうとお母さんはおじさんの家を急いで出た





おじさんの家と僕らの家は直線道路一本で繋がっているだけだ





のんびりした田舎町だから車の往来もほとんどなかった





お母さんはいつもの調子で行きなれた道を下手くそなきらきらぼしを口ずさみながら進んだ




少しご機嫌な様子だった






遠くの方から車の走る音がする




お母さんちゃんと見てるかな?




大丈夫そう
お母さんの体の向きが変わった




『お~いハル

やっぱり寒いから行くまで俺のジャンパー来ていけよ』




後ろからおじさんの声がした



『にいに?大丈夫だよあたし…』



お母さんの会話をおっさんの焦った声が遮った





『のっぽ!危ない!



運転手のやつ寝てやがるぞ!』





お母さん達の頭上で鳩の羽音が大きくはためいた

No.210 08/11/19 10:19
ももんが ( PZ9M )

次の瞬間



『ハル!!前見ろ!』






おじさんが叫んだ


お母さんの体がゆっくり前を向いていく



その瞬間





体に今まで感じたことのない程の衝撃と痛みが僕を襲った…







ぼくとお母さんは少しの間どこにいるのかわからなかった








物凄く飛ばされたような



バラバラになったような…








運転手の居眠りだったので道にはブレーキの跡はなかった












『のっぽ!のっぽ!!大丈夫か!死んじまったのか!?しっかりしろ!!』






近くで鳩の羽音が聞こえる…



お母さんは…お母さんは無事なんだろうか…








『おっさん



おっさん何が起きたの…?




お母さんは…お母さんはどうなってるの…






僕は …


死んじゃうのかな…』





まわりには騒ぎを聞き付けたおばちゃん達が集まってきたようで何だか騒がしくなってきた…

No.211 08/11/19 10:39
ももんが ( PZ9M )

『はるちゃん!!





はるちゃん!!


しっかりおしよ!


今、救急車呼んだからね!!




しっかりするんだよ!!』



近くで大家のおばちゃんが泣きながらお母さんに呼び掛けている






お母さん




お母さん





おっさん
早く教えて!






お母さんは…!







『のっぽ…もうだめだ



可哀想だが諦めな…』





『おっさん
何でそんな事いうんだよ!!





神様のお使いでしょ



何とかしてよ!





お母さん!





お母さん!』





僕は体の痛みなんかよりお母さんの命や体がどうにかなってしまったのか…



わけがわからず




ただ泣くしかなかった





その時だった



『……ん



痛っッ…


体が痛くて動かない…





あたし、何でここにいるの…?』





周りから歓声が湧いた



お母さんの声だ



お母さんだ!




お母さん生きてる!




僕が喜んでいるのもつかの間


おっさんがぽつりと言った…








『のっぽ違うよ…兄ちゃんの方だ…』

No.212 08/11/19 10:55
ももんが ( PZ9M )

お母さんがその異変に気がつくのに時間はかからなかった







『にいには…?




おばちゃん
にいには?






にいにはどこ…?』



おばさんは無言で泣いている






周りでは


『しっかりしろよ!

妹が目ぇ覚ましたぞ!兄ちゃんよ!




赤ん坊見るんだろ!






おい!しっかりしろ!


死ぬな!!!』







近所に住む人達が突っ込んで来た車の下敷きになっているおじさんを車の下から出そうと車を持ち上げている






車は軽トラックだったが運悪く石材を積んでいた為に容易に上げる事はできない…








スピードを落とさずお母さんの前に飛び出してきた車にお母さんが巻き込まれようとした瞬間…









後ろから走ってきたおじさんは力いっぱいお母さんを田んぼ側に突き落とした…








そして


そねまま車に引かれながら側溝に押し付けられてタイヤの下へと吸い込まれたのだ…







軽トラックは片側の側溝に車体の半分がはまってしまい




おじさんを助け出すのは難しい状況だった…








『にいに!!





にいに!!







死んじゃやだよ!!!』




お母さんは体を支えてもらいながら車へと近づいた

No.213 08/11/19 11:09
ももんが ( PZ9M )

おっさんが不思議な力をわけてくれたのだろう




僕は瞼の裏側に現在外側で行われている様子を見ることができた







『にいに!!







にいに!!








しっかりしてよ…






今から病院行くんでしょ…







赤ちゃんの写真もらうんでしょう…









赤ちゃんに会うんでしょう…









ねぇ…



返事してよにいに…







もうひとりぼっちはいやだよぅ…







あたしを置いてきぼりにしないで…』




お母さんが泣き崩れていると




車体の下からわずかに手が伸びてきた






その手には暖かそうな血の滲んだジャンバの切れ端が握られていた…





おそらく筋肉が硬直して離す事ができないのだろう…







お母さんはその手を開くと一本ずつ丁寧にほぐし頬に当てた





『にいに



あたし大丈夫だよ



多分赤ちゃんも大丈夫…








にいにも絶対死んじゃだめだよ!






あたしを置いていったら許さないんだから…っ』






お母さんが泣き崩れていると



おじさんの指がするりとほどけていった…

No.214 08/11/19 11:10
ももんが ( PZ9M )

おっさんが不思議な力をわけてくれたのだろう




僕は瞼の裏側に現在外側で行われている様子を見ることができた







『にいに!!







にいに!!








しっかりしてよ…






今から病院行くんでしょ…







赤ちゃんの写真もらうんでしょう…









赤ちゃんに会うんでしょう…









ねぇ…



返事してよにいに…







もうひとりぼっちはいやだよぅ…







あたしを置いてきぼりにしないで…』




お母さんが泣き崩れていると




車体の下からわずかに手が伸びてきた






その手には暖かそうな血の滲んだジャンバの切れ端が握られていた…





おそらく筋肉が硬直して離す事ができないのだろう…







お母さんはその手を開くと一本ずつ丁寧にほぐし頬に当てた





『にいに



あたし大丈夫だよ



多分赤ちゃんも大丈夫…








にいにも絶対死んじゃだめだよ!






あたしを置いていったら許さないんだから…っ』






お母さんが泣き崩れていると



おじさんの指がお母さんの手から、するりとほどけていった…

No.215 08/11/19 11:22
牡丹雪 ( 30代 ♀ OseBh )

主様、ご覧の皆様、横レス大変すみません😓
主様に一言だけお許し下さい。
主様、あまり自分のレスを削除なさらない方がいいですよ。私は過去に自レス削除3回で投稿禁止になりました。

出来れば主様には投稿禁止になってほしくないので💦

主様大変読みやすく感銘うけました。
これからも応援しています😉

  • << 217 牡丹雪さん🌱 ありがとうございます🙇 はじめましてモモンガと申します😺 削除のご指摘誠にありがとうございます🙇こちらの利用は初めてで全く存じませんでした💧 危ない所を救って頂き本当にありがとうございます 私もあと少し ラストまで書き上げてみたいのでどうぞよろしかったら お付き合いくださいませ🙇 ご指摘心から感謝い致します🌱

No.216 08/11/19 11:30
ももんが ( PZ9M )

直に救急隊と警察が到着した




おじさんはまだ幸いにも死んでないが重体だ



必死の救命治療をほどこされ救急車で病院へと搬送された






お母さんも体に打撲が見られ為に念のため同じ病院へと搬送された…






お腹の中はかろうじて繋がっていた





僕もお母さんもほっと胸を撫で下ろした




しかし安心なんかできない






おじさんは『絶対安静』のICUに手術後入れられた…









お母さんもたおれた時の打撲や擦り傷の治療をしてもらい




しばらくおじさんの病室を外から心配そうにながめていた…







『大丈夫ですか?廊下は寒いからお腹に触るわよ




こちらで暖かい飲み物でもどうですか?』





一人の看護婦さんが話しかけてきた






『あ…ごめんなさいね

私、お兄さんのICU担当の井上由美といいます








今回は身重なのに大変だったわね…



体は大丈夫?』





優しそうな看護婦さんだ




お母さんは静かにうなずいた

No.217 08/11/19 11:38
ももんが ( PZ9M )

>> 215 主様、ご覧の皆様、横レス大変すみません😓 主様に一言だけお許し下さい。 主様、あまり自分のレスを削除なさらない方がいいですよ。私は過去に自レ… 牡丹雪さん🌱



ありがとうございます🙇



はじめましてモモンガと申します😺





削除のご指摘誠にありがとうございます🙇こちらの利用は初めてで全く存じませんでした💧




危ない所を救って頂き本当にありがとうございます




私もあと少し


ラストまで書き上げてみたいのでどうぞよろしかったら




お付き合いくださいませ🙇



ご指摘心から感謝い致します🌱

No.218 08/11/19 11:51
ももんが ( PZ9M )

お母さんと看護婦さんが小さな休憩室で暖かいお茶を飲み初めてしばらくがたった







警察がおじさんの詳しい状況を担当医に聞きにきている





お母さんも色々聞かれたがうまく答える事はできなかった





警察の話では犯人は運送中についお酒を一杯飲んでしまい




疲れもあって眠ってしまったらしい…




『毎日通る道だし人もあまりいないから大丈夫かと思った』






というのが無責任な飲酒ドライバーの言い訳らしい






ふざけるな








自分勝手な理屈で


何の罪もないおじさんを傷つけるなんて







絶対に許さないんだ!!








結局寝込んだドライバーはおじさんを跳ねた衝撃と側溝にはまりバランスを崩した車内で頭を打ち







病院で治療をうけた後、警察へと連行された






手術は三時間にも及んだ





詳しい内容はまだ医師から説明がない






おそらく妊婦であるお母さんに留意して時間を置いているのだろう

No.219 08/11/19 12:07
ももんが ( PZ9M )

しばらくしてお母さんが聞いた




『看護婦さん…


にいには…








兄は
大丈夫なんでしょうか…





車が上げられた時



体が血まみれで




肌が真っ青だった…





あたしが…

あたしがあのままにいにの言うことを聞いて出かけていればこんなこと…』










お母さんはまた声を上げて泣きだしてしまった







『違うわ


違うわよ



あなたが悪いわけでも

お兄さんが悪いわけでもない



一番悪いのはお酒を飲んで運転してしまったドライバーよ!





だから


そんなに自分を責めてはだめ…




ね?
赤ちゃんが聞いてたら悲しむわ…』




看護婦さんは自分のカ―ディガンを脱ぐとお母さんの肩にそっとかけてくれた







お母さんはそのまましばらく泣いていたが



看護婦さんは何もいわずお母さんの肩をポンポンと母親のように叩いてくれていた…

No.220 08/11/19 12:15
ももんが ( PZ9M )

おじさんの担当だという井上さんは





お母さんより3つ年上の29歳だった






年が近いせいもありお母さんは井上さんに気を許して少しずつ話をしていた






そのうち院内アナウンスが鳴った






『伊藤さん

伊藤春名さん


第1外科505号室までお越し下さいませ…』






先生からの話がはじまるんだろうか…





おじさんの容態はどうなんだろう…




『さ、手を貸すわ
一緒にいきましょう


大丈夫よ
きっと』




井上さんが明るく笑ってみせた







お母さんはこくりと頷くと



『そうですよね


きっと
大丈夫ですよね』



それだけ言うと先生のいる部屋までゆっくり歩き出した

No.221 08/11/19 13:22
ももんが ( PZ9M )

(トントン)


『失礼します…
伊藤春名ですが…』


お母さんが呼ばれた外科医の部屋に入った




外では井上さんが口パクで

(頑張って!)


ガッツポーズをしている




お母さんは力強く頷いて入っていった






中には重厚な大きな机に、革ばりの黒いソファーが2つ向かい合わせに置かれていて






大きな観葉植物が置いてあった





片方のソファーには少し年配のかっぷくのいい白髪頭の先生が座って手を伸ばしてお母さんを招いた





『どうぞこちらへ』



お母さんは頭を下げて黒革のソファーの真ん中に静かに座った




『今回は大変でしたね



気は落ち着きましたか?




カルテを見るとお腹のお子さんも順調だし




不幸中の幸いでしたね』


先生は優しくお母さんを見つめた





『あの…



先生



兄は…

兄はどうなんでしょうか』




お母さんが質問を投げつけると先生は一枚の紙を出した

No.222 08/11/19 13:39
ももんが ( PZ9M )

それは同意書だった



心肺停止
もしくは
脳死になった時に




本人に代わり
処置法をお母さんに一任します




という内容だった




お母さんは少し震えた声で




『兄は




兄はもうだめなんですか…





もう




元には


戻らないんですか…』



それだけ言うと机にうつぶせてしまった





『正直言ってあまり芳しくありません。



今はかろうじて命をとりとめていますが




おそらく



峠は今夜か明日…



これを乗り越えてくれれば見込みはあるのですが…







内臓の破損もひどかったが特に致命的なのは脳です





目が覚めても今まで通りの生活ができるかどうか…





あとは本人の生きる力を信じるしかありませんが全力は尽くしますよ』




そう言うと先生はお母さんの肩をそっと抱き起こした





『妹さんも身重で大変だろうがしっかりするんだよ






一応、念のために親しい友人や知人には連絡をお願いします』



そう言ってまたソファーに腰かけた



お母さんは顔をあげる事が出来なかった…

No.223 08/11/19 13:54
ももんが ( PZ9M )

しばらくして

お母さんは深々と先生に頭を下げてその場を後にした






おそらく井上さんもおじさんの病状はわかっていたと思うが




お母さんの様子をみてしらんふりをしたのだろう





こういう告知は守秘義務があり


軽々しく家族には医師以外の人間が言うことを禁止されている…




何時間が過ぎて
お母さんは同意書をにぎりしめてICUのある通路の廊下で泣きつかれて眠ってしまった





連絡をしようにも



血の繋がった家族なんて誰もいない





たった二人だけだ






お母さんはどんなにか心細いだろう









どんなにか寂しくて怖いだろうか…







お母さんの目の回りはパンパンに腫れていて





頬には涙の後がいくつも



いくつもついていた








僕は決心した





おじさんとお母さんを守るんだ






だから









神様の所へ戻っておじさんの命を繋ぐ方法を聞いてみるんだ

No.224 08/11/19 14:50
ももんが ( PZ9M )

僕は命のありったけの声で叫んだ






『おっさん!
鳩のおっさん!




聞いてほしい事があるんだ!



返事をして!』







僕の気持ちが丸わかりの鳩のおっさん




頼むから返事をしてくれ…






一世一代の



最初で最後の頼みだよ





僕を天国に連れていってよ







もしもこの命がなくなってしまうというなら







それも仕方ない…









僕とお母さんをいつも守ってくれたおじさんと







このままさよならなんて絶対にしたくないんだ









もしも
少しでもなにか方法があるのなら




何かしたいんだ


諦めたくないんだ





いつも誰かに助けてもらってばかりだ







僕も誰かを助けたい





何もしないで諦めるなんて





絶対にだめなんだ!





おっさん


頼むよ!!


力を貸してくれ!!



僕は繰り返し
繰り返し


心から叫んだ

No.225 08/11/19 15:03
ももんが ( PZ9M )

『のっぽお前さ


この世に何しにきたんだよ?


生きにきたんだろ?
え?




ならこのまま大人しく腹の中に入ってな


それがあの兄ちゃんの望みなんだろ?』






おっさんが答えてくれた






そうさ
確かにおじさんは僕を守ってくれた









でも


正確には
お母さんを守ったんだよ






今のお母さんからおじさんを取り上げたらお母さんは死んでしまうかもしれない





僕はお母さんに幸せになってほしいんだ







その為ならなんだってする








お母さんは全てを捨てて僕を守ってくれた








今度は僕がお母さんを守る番なんだ…!






僕の生きる目標が『幸せになる事』なら







それは

『大切な人達が幸せに生きる事』だ








だから




僕の命が例え消えたとしても




みんなが幸せに生きてくれたら




それは
『僕が幸せ生きた証』にならないかな…

No.226 08/11/19 15:13
ももんが ( PZ9M )

だから



お願いだよ



僕が天国に行く方法があるなら教えてほしいんだ






お願いします



お願いします
















しばらく長い…沈黙が流れた









『帰れないかもしれないぜ





ひょっとしたらお前の母ちゃん


お前と兄ちゃん両方なくしちまうかもしれないぜ





それでも
後悔しないのか?』





僕は一瞬ひるんだが



可能性があるならやるだけやってみたいと伝えた








鳩のおっさんは深いため息をついた




『こりゃあ


神様に大目玉くらうな




お前無事に生きてたらちゃんと俺の老後面倒見ろよ』





そう言うと

『目を閉じな




天国に連れてってやるよ』





諦めた声でそう言った

No.227 08/11/19 15:24
ももんが ( PZ9M )

『ただし約束がある


俺がお前を天国に連れていけるのは明け方の6時までだ





神様が仕事にとりかかるまでに帰ってこい







あと








それまではお前の心臓は俺が動かしといてやる







いいか








明け方の6時





それまでに必ず帰ってこいよ!』






僕は病院の壁にかけてある時計を見た



現在夕方の6時を回ったばかりだ







朝の6時まであと12時間…






何ができるかわからないけどじっとなんかしていられない






僕は静かに目を閉じた





『用意はいいな行くぞ』










次の瞬間




僕は丸まった体からスルッと離れると




ふわりふわりとお母さんの体をすり抜けた






体はすっかり前と同じように金色に輝いていた






『それじゃあ飛ばしていきな』






おっさんの声がした


僕のようなできの悪い子供に当たったばかりにごめんね





おっさん




ありがとうございます






僕は天国に向かって光になり走り出した




お母さん



きっとおじさんを連れ戻してくるからね

No.228 08/11/19 15:33
ももんが ( PZ9M )

季節は変わり、空は春から秋になっていた為


夕方6時になるともうすっかりうす暗くなっていた








僕は特撮のアニメみたいに今来た道を反対に帰っていった






みるみる空が近くなり






街が小さくなっていった









空には薄く月明かりが出始めていた






天国までもう少し








神様どうか

どうかおじさんを




助けてあげて下さい…






空には綺麗な星たちがつぶらにキラキラ輝きながら







夜の風景を作っていった……

No.229 08/11/19 15:47
ももんが ( PZ9M )

天国が近づいてくると地上からみえる雲の間から『はしご』がかかってきた





よくいう
『天使のはしご』だ





天国への入り口になっている





入り口は帯のように連なる光の波がひしめいている…



それはまるでオ―ロラみたいに幻想的で美しかった






僕は光の波をかき分けて


天国への道に到達した








勢いよくきたから体が震えて足はガクガクしている






僕はその場にしゃがみこんで



後ろ雲に大の字になりひっくり返った








『……着いたぁ』









ここは間違いなく最初に僕らがいた雲の上だ







回りを見回すと色んな子が『お母さんノート』と双眼鏡を持っている









何だか懐かしいなぁ…







しかし今の僕にはそんな感傷に浸っている時間はなかった




『早く神様の所へいかなくちゃ…』








懐かしい雲の上の感触を感じながらも僕は神様の家へと急いだ

No.230 08/11/19 17:02
ケリー ( zJxCh )

夢中で読ませて頂いてます。

頑張ってください

No.231 08/11/19 17:18
ももんが ( PZ9M )

>> 230 ケリ―さん🌱




応援ありがとうございます🙇



モモンガと申します😺




物語もいよいよクライマックスに入りました






もう少し乱筆な私の文章ですがお付き合い下さいませ🙇




ケリ―さんにも素敵な朝が訪れますように🌱

No.232 08/11/19 17:25
ももんが ( PZ9M )

雲の上は相変わらずフワフワしていて気持ちがいい





穏やかな空気に包まれて今さっき起きていた事が夢のように思われた









でも残念ながら夢ではなく…今のこの瞬間もおじさんの命の灯は刻一刻と消えようとしている





時間はない
急がなきゃ



あと12時間以内おじさんの命を繋ぐ方法を神様に聞くんだ…!





僕は一層足を早めて
神様の家を目指して走った

No.233 08/11/19 17:38
ももんが ( PZ9M )

僕はようやく目的地である神様の家へとたどりついた




相変わらず長い列が続いている




しかし順番をぬかすわけにはいかない




ルールはルールだ









僕は一番後ろに並んで順番を待つことにした




こうやって並んでいるとお母さんに出会う前の事を思い出す







お母さんの所へ行く前の気持ち…







『不倫の子』


という名前に惑わされて


お母さんの愛情を疑ってしまう日もあった







生きて産まれないかもしれないという不安に恐れをなして前向きになれない日もあった








回りの白い目に耐えられるかどうかわからず悩んだ日もあった








でも





でも神様




僕は今ならはっきり言える








『僕はお母さんの子供に生まれて幸せです』と。







悲しみも喜びも
涙も笑顔も






どんな時もお母さんと一緒なら幸せです




僕は神様の家の方をまっすぐに見すえながら素直にそう思った

No.234 08/11/19 18:00
ももんが ( PZ9M )

その時だった




神様の家の洋館から大量の白い鳩が飛び出してきた






それは大きく輪を描くように美しく飛び


やがて回転しながら僕らのいる下の場所までやってきた



そして、その回転してできた不思議なスロープはつぶらな星の光を浴びてキラキラとしたラセン階段に変化していった








みんなが空に突然できた光のラセン階段に見とれていると







『おおい、のっぽく―ん



上がっていらっしゃい


時間がありませんよね?』






神様が階段の一番上の方から手招きをしてくれた





僕が慌てて階段の入り口まで走っていくと





『並んでいてくれたみんなごめんね?





ちょっと君達の先輩が緊急事態なので少しの間だけ抜けさせて下さいね。






順番はどうぞこのままで』




そういうと


『上がっていらっしゃいな、のっぽくん』




と僕を再度、手招きしてくれた






僕は周りの仲間達に深々と頭を下げてから、神様のいる階段の頂を目指して歩き出した

No.235 08/11/19 19:54
ももんが ( PZ9M )

神様の作った光の階段はまるでガラスのように透明でいながら暖かい光に満ちていた







階段を回る度にみんなが小さくなっていく…





夜空に近い夕闇が神様のいる場所をぼんやりとうつし出している





急がなくては…




おじさんの命を救うのは僕しかいないんだ…






改めて気持ちを引き締めて神様に会いに望んだ







最上階ではあの時となんら変わらない様子で白い上下のジャージに優しい笑顔の神様が待っていてくれた









『神様



忙しいのにすみません





僕、お願いがあって今日は伺いました





おじさんを助けたいんです






何か方法はないのか伺いにきました



厚かましいお願いだとはわかっています



でもお願いします


僕のお母さんの大切な人を助けてあげて下さい』

No.236 08/11/19 20:14
ももんが ( PZ9M )

神様は少し困った顔をした




『のっぽくん




私は神です




でも人の生き死にに魔法は使いません




何故なら




あなたのおじさん以外にも命の延命を望む者はたくさんいます





もしも私がその全てに命を与えて復活させたら世界はどうなりますか?








のっぽくん








残念ながら命はひつだけです







だからこそ人は命を大切に使いきらなくてはなりません







例え生きていたくても





その法則はまげられないのです…







ただひとつを除いてはね』










『神様
それは何ですか?

おじさんの命を助ける事はできるのでしょうか』








『それは僕にもわかりません


その決断をするのは私の領域ではありません



全てをみてきた星の


空の意志なのですよ』





神様は僕の頭をなでながら優しい顔をした

No.237 08/11/20 02:21
ももんが ( PZ9M )

『しかし…君の身辺を見届けるようにとは言いましたが


君にこんな危ない真似をさせるなんて




あの方はいただけませんね




帰ってきたら当分魔法はお預けですね』








『違います神様!





僕がおっさん…




いや


鳩さんに無理にお願いしたんです


どうか天国への行き方を教えて下さいって…




だから鳩さんは悪くありません




罰なら僕に与えて下さい



お願いします!』



僕はできるだけ深々と丁寧に詫びた





僕のせいでおっさんが魔法を使えなくなったらただの白い鳩になっちゃう





それだけはさけてあげたい




僕が頭を下げ続けて懇願していると




『君は不思議な子だねぇ



のっぽくん




前に君をM気味だと言った事があったけど訂正しますよ




君はどMですね




いつも自分より人の事ばかり気にしてる




本当に損な性分だね


でも私

そういうのって好きですよ』





神様が言った

No.238 08/11/20 02:37
ももんが ( PZ9M )

『そんな風にいつも誰かを信じて



想うことができる




傷つけられた痛みより




自分を傷つけた人を想うことができる







そんな君なら
ひょっとしたら
会えるかもしれませんね』









『神様


僕は誰に会えるんですか?』









『願い星ですよ








空にいます



でもいつでもそこにいるわけではなく



常に移動していて





全ての動きを見ています




おそらく今も我々を見ているでしょう…







『願い星』は
奇跡をつかさどる星です






その力は大きく

莫大なエネルギーを使います





ですから



願いを叶えるにはそれ相当の力が必要になってきます




のっぽくん




君が願い星に会えば今もっている



『生きようとする力』も根こそぎ使われてしまうかもしれませんよ








そうなれば


君は大好きなお母さんに二度と会うことはできない





しかも



願い星の力は絶対じゃない



それでもいいのですか…?』

No.239 08/11/20 02:52
ももんが ( PZ9M )

僕は少しの間考えた




そしてあるお願いを神様にしてみた





『神様にお願いです


僕は今から願いを叶えてもらいに『願い星』に会いにいきたいです






でも




ひょっとしたら僕はうまく頼めなくて



そのままおじさんと死んでしまうかもしれません





そうしたらお母さんはとても悲しむと思います…





だから




最後に一目だけでも


夢の中でお母さんに会いたいです






どうか
その願いだけは叶えて頂けませんか…?』







『例えそれがお母さんといる最期の瞬間になっても構わないのですね…?』







『はい…!


お母さんが幸せになれるなら…!』






他の誰かが聞いて笑ったって構わないよ




怒ったって





指をさされたっていい





僕はお母さんと過ごせた1日1日が





幸せな人生だったから…




短くって
長くたって





同じようにきっと思う






お母さんが大好きだよ






ただこれだけが真実の気持ちなんだ…

No.240 08/11/20 03:08
ももんが ( PZ9M )

神様は何度か頷いた



そして僕の頬をかるく撫でた





『それだけの強い気持ちを持ち合わせているのならば
お行きなさい







私はとべるべきではないな






一か八か
奇跡を願いましょう…




のっぽくん



最後にお母さんに会ってらっしゃい




私が合わせてあげましょう』





そういうと
神様は髪の毛を一本抜いてフ―ッと風に飛ばした





髪はみるみるうちに大きな翼に代わり



雲の上に倒れるように落ちた



『のっぽくん




これは『天使の羽』です




これは『愛』を学んできた君が導き出した答えに対するご褒美です






天使の羽を使って私の家の最上階ある『夢の扉』を開けてごらんなさいな






君の待ち焦がれた瞬間に行けるでしょう



ただし時間は一時間だけ





あとは『願い星』をさがさなくてはね

No.241 08/11/20 03:14
ももんが ( PZ9M )

願い星が願いを叶えてくれるのは朝日が昇る瞬間だけ…






それまでに


奇跡を必ず起こすんだ!





僕はもう一度深々と神様に頭を下げると
神様からもらった羽を背中につけて




『夢の扉』を目指した





最初で最後のお母さんに




はじめて会うお母さんに





何て伝えたらいいのかな…






僕の最初で最期の




お母さんと出会いが始まる…

No.242 08/11/20 07:53
ももんが ( PZ9M )

僕らが今いる階段の最上階から神様の指差す『夢の扉』まではさほどの距離はなかった






しかしそうは行ってもかなり高い


ビルで言ったら10階くらいの高さだ



僕は神様のご褒美を背中に背負い
もう一度神様と下で待つ仲間にお辞儀をした






『夢の扉』は洋館の最上部の屋根の上にそれまでとは違う赤い色をした木製のドアにいくつもの金色のベルがついていた



この中に僕の望みがあるんだ




お母さんが待っていてくれるんだ…




どんな風に話をしたらいいのか…








僕は迷いながらも
吸い込まれるようにドアを開けた…








『カランコロン

カランコロン…』




ドアについていた金が一斉に鳴り響いた


そのままドアを開けていくと




そこにはさっきまでいた病院があった





僕は回りを見回したが誰もいない





『お母さんはどこだ?』
辺りを見回して探した

No.243 08/11/20 08:09
ももんが ( PZ9M )

しばらく歩くと見慣れた雰囲気の場所に到達した




何だろう…
僕はここを知ってる…






その場所を右に折れると数人の看護婦さんが出たり入ったりしている部屋があった







部屋の前には

『分娩中』


のランプがついている





中から女の人のうめき声が聞こえてきた




『伊藤さんしっかり!あと少しだからね』



『誰か先生呼んできて!




タオルケット準備してください



お湯はもう大丈夫?』



部屋の中に緊張感が走っている





ベッドの上には髪の毛も顔の額にべったり貼りついて




苦痛に顔を歪めるお母さんがそこにいた


両手はベッドの脇にある取っ手をもち




下半身には青いシ―トがかけられている



『はぁ
はぁ…


痛い…




赤ちゃん…大丈夫かなぁ…





もうすぐだよ…




もうすぐだからね』






そう言いながら滲む汗をポタポタ落として必死に息を吐いている…





『はい!伊藤さん頑張って!!




うまいね―いいよ!赤ちゃんの頭降りてきたからね―





そのまま吐いて吐いて―

いきまないよ―!』


『あっ…あああァアアァ!!!』

No.244 08/11/20 08:19
ももんが ( PZ9M )

『赤ちゃん…





がんばれ…!
もう少しで会えるよ…




あっ

あぁあァァ…アアァ!!!!』








お母さんが最期の力を振り絞り体を前に倒しお腹に力を入れた








看護婦さんの添えた手のひらの上には






青いシ―トの間をくるりと回りながら




小さな小さな



赤ちゃんの頭が現れた




何か白くてツルツルして膜のようなものがついている




看護婦さんが両手でそれを受け止めるとすかさずもう一人がお腹から出ているヒモのようなものにグリップをした







『やったね!伊藤さんおめでとうございます!!



15時46分
とっても元気な男の子のお子さんですよ!!






そう言ってお母さんの方に赤ちゃんを向けてみせた

No.245 08/11/20 08:37
ももんが ( PZ9M )

もう一人の看護婦さんが鼻と口から異物を取り除くと赤ちゃんは元気に産声を上げた






『…ッギャアっ…


ホギャア…っ
ンギャア…っ』





看護婦さんがへそからでている残りのヒモをハサミで切ると




そのままお母さんの胸の上に乗せた





お母さんは泣きながらとても幸せそうに言った




『よく来たね…
ずっとずっと心配かけてごめんね?



これからはずっとずっと一緒だからね…

生まれてきてくれて本当にありがとう』



そう言って


何度も
何度も



おでこや手のひら

ほっぺにキスをしてくれた




小さな
小さな僕は



お母さんの胸で幸せそうに手を握っている



お母さんに抱かれて今、幸せかい?




ありがとう


ありがとうお母さん




こんなにたくさん
頑張ってくれて



こんなにたくさん
愛してくれて





僕はあなたの子供に生まれてきて



最高に幸せだったよ



どうか
いつまでも


その手を繋いでいてね

No.246 08/11/20 09:40
ももんが ( PZ9M )

お母さんはそれからほどなくして個室へと移っていった




お母さんは少し疲れた様子だが僕を片時も離そうとはしなかった




少しでもぐずると心配そうに身を寄せ




僕が眠そうな顔をすると優しい顔で頭を撫でた





親子って
こんなに愛しいものなんだね




しばらく僕がドアの影に隠れてみているとお母さんが不意に声を出した




『誰かな~
さっきからおばちゃんの事見てるの




かわいい羽が見えてますよ~』



お母さんはクスクス笑って僕を手招きした



看護婦さんや回りの人は誰も僕に気がつかなかったのに




お母さんにはどうやら感じるものがあるみたいだ





僕がおずおずと中に入っていくと
お母さんは口に手を当てて『シ―』の口をした






『今、赤ちゃんがねんねしてるからちょっと小さい声で話してあげてね』




お母さんは無邪気に笑って言った

No.247 08/11/20 09:55
ももんが ( PZ9M )

『お邪魔します、ごめんなさい。



赤ちゃんが産まれたのが見えて気になってしまって』





『ううん、気にしないで。私も少し退屈だったんだ

ねぇ、その羽キレイだね~
天使の仮装?』





お母さんが羽に触りながら興味津々の様子で聞いてきた




僕が困ったように笑うと



『お母さんのお見舞いか何かかな?』



お母さんが聞いてきた




『あ…
はい、そんなとこです




ちょっと遊びにきて…



お母…
じゃない





お姉さんは赤ちゃん好きですか?』



『ええ!大好き!


今日会ったばかりなんだけどね


この子はいつも私と一緒にいてくれて



私を励ましてくれるのよ




この子がいたら何でもできるわ



おばさんの宝物なのよ』




お母さんは眩しいくらい幸せそうに笑った





小さな小さな僕は安心しきったように手を丸めて寝息をたてている…





『赤ちゃん
幸せそうですね…』

僕らは二人してスヤスヤ眠るもう一人の僕を見ていた…

No.248 08/11/20 10:09
ゆみゆみ ( 30代 ♀ B8tAh )

子育てに煮詰まってる時にここにたどり着きました。元気に成長してくれてる、それだけで十分幸せなんだなと気付きました✨泣き止まない、寝付かないなんてどうでもいいやと思えます。続き楽しみにしてます。

No.249 08/11/20 11:25
ももんが ( PZ9M )

ゆみゆみさん🌱



はじめまして🙇
ももんがと申します



毎日の子育てお疲れ様です




お母さんって24時間働きっぱなしの休みなし




まるでコンビニエンスストアみたいですよね




休みたいのにいつも誰かかれかが入ってきてしまう…




でも、それはゆみゆみさんがいつも優しく迎えてくれるってわかってるからじゃないでしょうか?





お子さんがグズって泣くの


きっとゆみゆみさんが大好きで安心してぐずれるんでしょうね





これからも育児でお忙しい時間にちょっとだけ遊びに来ていただけたら嬉しいです😺



今日も1日頑張って過ごして下さいね




応援レスありがとうございます😺🌱

No.250 08/11/20 11:49
ももんが ( PZ9M )

『あなたお名前は?』




『あ…
いつものっぽって呼ばれてるんです』




『のっぽくん?



のっぽさんじゃなくて?


…って古いか
ごめん、ごめん





身長が高いからかな?


面白いね』






『あの、赤ちゃんの名前は決まったんですか?』





『うん。決まったよ


色々考えたんだけどね『ゆうせい』


って名前にしたよ』




『ゆうせい…』






『そう。カッコ悪いかな?



今カッコいい名前たくさんあるしね




でもどうしてもこの名前にしたかったんだ』






『何でですか?』




するとお母さんがベッドの脇にあったペンと紙に文字を書きはじめた




紙には『有生』
と書いてあった



『どうかな?
カッコいいかな?




赤ちゃんにね
『私の所に生まれてきてくれて有り難うね』って気持ちを伝えたかったんだ






あと生きていく上で色んな人に助けられたり



助けたりする中でね、きちんと『ありがとう』って言える人にも




言ってもらえる人になりますように…』

そう思ったのよ

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