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闇の中の天使

No.40 13/02/19 19:27
中谷月子 ( ♀ ezeSnb )
あ+あ-

≫39


二時になり、運転手が迎えにきた。

美恵さんは、一度もスマホなどで運転手に居場所を告げていないのに、レストランを出ると、後部ドアを開けた運転手が待っていた。
あのデパートに行った後は、このレストランで食事をするのが美恵さんのパターンだということを運転手は知っているのだろう。

車に乗ると、「わたしは病院で降ります。それから、ゆかりちゃんを‘ソノハラ’まで送ってちょうだい」と言った。
「美恵さん、私は旦那さんのお見舞いに一緒に行っては駄目ですか?」
「主人は、誰にも会いたがらないのですよ。自由気ままに生きてきた人ですから、弱っていく姿を誰にも見せたくはないのでしょう。ですが、あなたのことは主人に話しておきますからね」と、優しく言った。
「あの…‘ソノハラ’って、どこですか?」
「美容室です。カットは美容師にお任せすると良いかと思います」
「はい…」

病院のロータリーで車を降りた美恵さんは、軽く右手を上げて私を見送ってくれた。
運転手と二人の気まずい車中。
「お嬢様、寒くはないですか?」
「はい」
それだけの会話で、車は‘ソノハラ’に着いた。

とても小さな美容室。
私はそのドアをゆっくりと押した。

「いらっしゃいませ。曽根崎様」

曽根崎…まだ、慣れない。
お嬢様と呼ばれることも、慣れない。

店内にはたった一つしか椅子は無く、だがその椅子は高級感を漂わせていた。
私と同じくらいの年と思える若い男性と、三十を過ぎたくらいの女性の二人がいた。
女性の方が「こちらへどうぞ」と言い、パーテーションの向こう側に私を案内すると、シャンプー台の付いた椅子に座らせ、膝掛けを置いてくれた。
ゆっくりと椅子が反り返っていく。顔には水が掛からないように、ガーゼのような布を掛けた。
丁寧にシャンプーをして、椅子の位置を元に戻すと、タオルで叩くように髪をあるていど乾かすと、「お疲れ様です。では、鏡の前へどうぞ」そう言って、女性はあの高級感のある椅子に私を座らせて、ケープを着せた。


意外にも、鏡の向こうには若い男性が立っていた。



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