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届かない思い《sidestory》

レス93 HIT数 18024 あ+ あ-

名無し
13/11/23 14:27(更新日時)





いつだって




キミの事、思ってる。





どこにいても。



どんな時でも。





No.1912841 13/02/09 16:20(スレ作成日時)

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No.51 13/03/10 10:47
名無し0 




由子さんが口にした縁。



これが、この出逢いが縁だと言うなら。




俺は、結子に感謝しなきゃいけないのかも。



何の根拠もないが…





同じ名前の由子さんに出逢えたのは、もしかしたら結子が導いてくれた…?




そんな事を考えていた。




No.52 13/03/10 11:08
名無し0 




店に入って、早速サンドイッチを注文する。




気付くと。

由子さんが俺を見ている。


?…




唐突に年を聞かれた。



少し驚いたが、

答えると…



思ってもいない答えが返ってきた。




りゅうと一緒…


りゅう…?




由子さんの表情を見ると。


曇っている事がわかる。




彼氏か。………





つい、いろんな事を聞いてしまう。




知りたいと思った欲求を抑える事ができない。






No.53 13/03/10 11:23
名無し0 




好きだったのかどうかわからない。




いい人だったから。


か……





俺は、結子の事、本気で好きだったんだろうか。




結婚したいと思っていた。


…………………





結子は?

あのノートに書き綴られていた結子の言葉。




俺の元を去ってから、誰とも付き合っていなかった結子。




それは、俺をまだ愛していたから?なのか?



…………



それとも。

ただ単に、結子の中で、俺との事が終わっていなかったのか……


俺に、何か伝えたい事があったのか。





今となっては、

答えを知る術は、ない……





No.54 13/03/10 11:37
名無し0 




サンドイッチを頬張る由子さんを見ていると。




この先、告げなければならない話がある現実に躊躇してしまう。




こんなに幸せそうに。


俺の薦めるサンドイッチを口にする由子さんを見ていると…




このまま、何も話さず、

こんな時間を、ゆっくり楽しみたい。





が。



由子さんの決意は思ったより固くて。



同時に不安も読み取れるけど、








俺が、守る。



一人じゃないっていう事を、由子さんに伝えて。





ゆっくりと静かに。



直弥さんとユキトさんの事を話し始めた。







No.55 13/03/10 12:29
名無し0 




話し終えた後でも、気にかかる。



由子さん、

どう感じただろう……






この街に来て。



数日で、こんな運命に巻き込まれて。




運命…



運命なんて、いい意味でも悪い意味でも、変える事はできる。




過去は変えられないが、未来なら。


いくらでも、変える事ができる。






……由子さんの運命は、俺が変えてみせる。




この時俺は、由子さんの存在値を勘違いしていたのかもしれない。




由子さんにとって。ではなく。



俺にとっての由子さんの存在を。












俺は、静かに目を閉じた。


この後に起きる出来事に、自分の運命さえ変えられる事に気付きもしないで。





No.56 13/03/10 19:10
名無し0 




………



携帯が鳴る。



いつもなら起きる時間だが、今日は休みだ。




社長か……?


そう思って、携帯の表示を見る。




ユキトさん?



「はい。…」


「…………」


何も、返ってこない。


………?



「もしもし?」



「ぁ…………」


「え?ユキトさん?」



「…………オレ」



ユキトさん?



俺は起き上がり、ベッドの端に座り直す。



「ユキトさん?どうしたんです?」




「直弥……」


え?社長?



「社長が、どうかしたんですか……?」






「さ…された……」



「え…、」


社長が、…





「刺された?」



「真壁さんっ…オレ…オレ…!」

「ユキトさん!!しっかりするんです!!」






No.57 13/03/10 19:29
名無し0 




こんな仕事をしてると、誰かに恨まれたりする事もある。



ついさっきだって、由子さんにそんな話をしたばかりだ。




現に、ユキトさんが喧嘩したのも、直弥さんの仕事が原因だ。





!!……


もしかしてっ…!


直弥さんが刺された原因は…!





俺は動揺するユキトさんに、なんとか場所を聞き出し、急いで出掛ける準備をする。




由子さん……



知らせるべきか?





結論を出せないまま、自室のドアを開ける。



リビングには、由子さんの姿はなかった。




どうする!?



こんな事を悩んでる時間があるなら、とりあえず、このまま出掛けた方がいい…!





ごめん…!



由子さん…!





玄関に行くと、由子さんの靴がなかった。



出掛けてるのか……






俺はひとまず、直弥さんとユキトさんの所へ行く事を優先させた。







No.58 13/03/17 11:38
名無し0 




読んで下さってる皆さんへ


年度末のため、仕事など超多忙になり、なかなか更新する事ができません(^_^;)


頭が届かない思いのモードにならず(^_^)


すみません。
読んで下さってる方には申し訳ないんですが…


もうしばらく気長にお付き合いいただければ、有り難いです。


できるだけ、更新していこうとは思ってますがf^_^;





主より。





No.59 13/03/17 17:11
名無し0 




クーさん、いつも気遣いありがとうございます(^_^)


クーさんや読んで下さっている方のまだかな、まだかな?という顔が目に浮かびます(^_^)


確かに、花粉は猛威を奮っていますが(T_T)
時間に追われる事の方が、今は一番しんどいかも(^。^;)


ほんとに長くなってしまいますが…

もうしばらく、お待ち下さい🎵



主より。



No.60 13/03/24 16:53
名無し0 




ユキトさんに聞いた現場に到着すると、



背中を丸めたユキトさんが座り込んでいる。



その傍らには直弥さんの姿もあった。




俺は、急いで近寄る。



「!?………真壁…?」

俺に気付いた直弥さんが、驚いている。


「社長っ!喋らないで下さい!」


俺は、予め電話をしていた秀にもう一度、電話を掛ける。


救急車に一緒に乗り込んだ秀が、こっちに向かっているからだ。


「もうすぐ着くから、安心しろ。」




秀の声を聞いた俺は、少しだけ安堵した。





改めてユキトさんを見ると、社長のお腹に手をやっている。




「情けねぇ…な…」

ぽつりと直弥さんが呟く。



社長…







「ユキ…」


「…………」


「ユキっ…、お前は離れろ…」



ユキトさんは何も答えない。



いや、答えないというより、答える事ができないんだ。

完全に放心状態。





「死ぬ…な……」



え…?






No.61 13/03/24 17:07
名無し0 




絞り出すように、ユキトさんが声をだした。




「ユキトさん…」


「は…、死ぬ?……俺が、死ぬわけねーだろ…」



社長……




「やっと…、お前に貸しがなくなったんだ…、そんな俺がこんな事ぐれぇで…、死んで……たまるかっ…」















「…………生き…て、くれ……」




!……

ユキトさん…











「…兄貴。」





っ…!

「ユキ……」











No.62 13/04/07 19:05
名無し0 




ユキトさん…




俺には、掛ける言葉がみつからない。





震える背中で、直弥さんを必死で支えようとしているユキトさんの姿に。





泣いているのか…


笑っているのか、


わからない直弥さんの息が、





少しずつ上がっていくのがわかった。






「社長?…」



「真壁…」



ユキトさんの横に座り込んだ俺は、



俺の名前を呼ぶ直弥さんの顔を見る。





「由子ちゃんには、…言うなよ…?」



「え?…」




「今が一番…大事な時だろ……」





「社長………」





もしかして、由子さんの仕事の事、…知ってるのか…?



「とにかく…由子ちゃんには心配かけたくねーから……」






社長…







遠くでサイレンの音が聞こえてきた。





ほっとした。


これで、大丈夫だ…




この時の俺は、呑気にそんな事を考えていた。






  • << 64 手術は無事に済んだ。 …が。 直弥さんの意識は、戻らない。 秀の話では、思ったより出血が酷かったようだ。 想定外の状況に、 『このまま…』 なんて事を口に出しそうになる… ………… また……、 俺の大切にしていた人が… いなくなるのか…… いや…、 そんな訳はない…! きっと、目を覚ましてくれるはず… ICUの前の長椅子に茫然と座るユキトさんを見つめながら、 俺は、ただ ……願うしかなかった。

No.63 13/04/13 23:02
名無し0 



クーさん、こんばんは(^_^)

足の具合も良さそうで、ちょっと安心しました。
今日、友人との飲み会でさっき帰ってきたところです(^_^;)


少し、飲んだので今はちょっと酔ってるかな?

新年度を迎え、職場の環境も変わり、まだ落ち着かない状況ではありますが(苦笑)


クーさん、そしてレスを下ってる皆さんも、もしかして、忙しい日々を過ごしてる方も居るかもしれませんが。


体調崩さないよう、気をつけて下さいね(^_^)v



とりあえず、ご挨拶まで☆



主より。



No.64 13/04/23 17:23
名無し0 

>> 62 ユキトさん… 俺には、掛ける言葉がみつからない。 震える背中で、直弥さんを必死で支えようとしているユキトさんの姿に。…


手術は無事に済んだ。



…が。




直弥さんの意識は、戻らない。


秀の話では、思ったより出血が酷かったようだ。


想定外の状況に、



『このまま…』


なんて事を口に出しそうになる…





…………





また……、


俺の大切にしていた人が…


いなくなるのか……







いや…、



そんな訳はない…!



きっと、目を覚ましてくれるはず…




ICUの前の長椅子に茫然と座るユキトさんを見つめながら、




俺は、ただ


……願うしかなかった。






No.65 13/04/23 18:26
名無し0 




翌朝になっても、直弥さんの意識は戻らないままだった。




相変わらず。

ユキトさんはほとんど反応がない。



家に帰った方がいいと説得しても、受け入れようとしない。




このままじゃ、ユキトさん…
倒れてしまうんじゃないか…


そんな不安が過ぎる。




由子さん…



直弥さんは、知らせるなって言ってたが。





未だに意識の戻らない直弥さんと、この場を離れようとしないユキトさんに、


俺は、



無意識に、由子さんに頼ろうとしていたのかもしれない。



「修二、…お前大丈夫か?」



秀の気遣いに
気付くはずもない俺は。

「あぁ。」



そう答える事しかできない。






この時の俺は、そんな不安を打ち消すように、冷静を装うしかなかった。







No.66 13/04/23 19:12
名無し0 



甘えても、


誰かに、頼っても…




いいんだろうか?





手術を終えた直弥さんの携帯を預かっていた俺は。


突然鳴り響いた直弥さんの携帯に、咄嗟に出てしまう。







『緒方さ~ん』



電話の向こうで聞こえた名前。




……


「!?」


由子…さん?



そしてまた聞こえたきた、キミの声に。





どれだけ、気持ちが動いたか…。




直弥さんの携帯にかけてきた理由なんて、考える余裕もなかった。




たった一晩声が聞けなかっただけの俺は、


情けないくらい

キミを。



意識していた事に、俺自身まだ気付いていなくて。






No.67 13/04/27 17:21
名無し0 




直弥さんだと思い、また掛け直すと言って切った由子さん。




少し冷静になった俺は、

由子さんが掛けてきた電話の意味を考えた。






……

…………!




1日振りに自分の携帯をチェックする。


由子さん……!





直弥さんに掛けてきた直前に、由子さんからの着信が残っていた。





……



心配してる?




…………




直弥さんの一件。



………話してもいいのか?





……!?




という事は……、

ユキトさんにも連絡している可能性があるって事か…!





でもユキトさんはきっと、電話にはでていない…



………



やっぱり。
これ以上黙っておく訳にはいかない……。



そう判断した俺は、由子さんが帰ってくるだろと思った時間に、自分のマンションへと車を走らせた。





  • << 70 地下駐車場に車を停めた俺は、携帯を取り出した。 由子さんにどう伝えようか… 結論が出ないまま、俺は履歴から由子さんの携帯にかけた。 静かに鳴り響く呼び出し音。 繋がって欲しいような、 でも…、この現実を伝える事に、怯えている自分を知られたくない気持ちが。 俺の心を不安にさせる。 なのに。 繋がった電話は、 今の俺の気持ちを、分かってくれるような。 そんな由子さんの反応だった。 まるで、俺を心配するような由子さんの言葉。 そのまま、受け取っても…いいのか?

No.68 13/05/02 19:35
名無し0 




すみません。



諸事情により、

更新する事が難しくなりました……




この休みに更新していこうと思っていました

気持ちも上がっていました。



自業自得?なのかも、しれませんが……


今。
かなり、落ちてます…




本当に、
すみません…




時間を下さい。




主。




No.69 13/05/04 10:01
名無し0 


クーさん、そしてクーさんのスレへレスして下さった方々へ


ご心配おかけして、すみませんm(_ _)m。


リアルではなく、ミクルが原因で落ちてたので…


ただ、いろいろ考えているうちに、少し気持ちが変わってきた?ような…

ちょっとだけ、浮き上がってきてる気がしてます。


ただ、流石にまだ、更新していこうという気持ちにはなれず…



こういう気持ちを綴っていこうと立てたスレに、訳のわからないレスがつき…、

返事をしても、何の返レスもないまま、今に至ります…


やっぱり、そんなスレ立てなきゃ良かったと小心者の自分は後悔ばかりで。
と同時に、ただの勘違いレスに振り回された自分が情けなくもあり…



こんな事を、つらつらここに綴っていくより、別スレをと思っていたので。





とりあえず、その別スレはそのままにして。

今後は、ここを更新していく事ができたらと思ってます。

時々、別スレでつぶやきながら。



長くなりましたが…
こんなつまらない愚痴に付き合っていただき、ありがとうございますm(_ _)m☆



また、更新できた際には、暇つぶしにお付き合い下さい☆


クーさんの考えた小説にも興味ありますが☆




主より。





No.70 13/05/18 23:54
名無し0 

>> 67 直弥さんだと思い、また掛け直すと言って切った由子さん。 少し冷静になった俺は、 由子さんが掛けてきた電話の意味を考えた。 …


地下駐車場に車を停めた俺は、携帯を取り出した。


由子さんにどう伝えようか…




結論が出ないまま、俺は履歴から由子さんの携帯にかけた。




静かに鳴り響く呼び出し音。


繋がって欲しいような、



でも…、この現実を伝える事に、怯えている自分を知られたくない気持ちが。

俺の心を不安にさせる。




なのに。

繋がった電話は、


今の俺の気持ちを、分かってくれるような。

そんな由子さんの反応だった。




まるで、俺を心配するような由子さんの言葉。



そのまま、受け取っても…いいのか?





No.71 13/05/19 00:05
名無し0 




謝る俺に何も答えない。



返す言葉を失っているのか?





今は何も分からないが。


心配かけてしまった事だけは分かる。



由子さん、…




悪い…




だが今は、直弥さんの事を伝える方が先決であって…





簡潔に用件を伝えると、俺は静かに携帯を置いた。





No.72 13/05/19 08:35
名無し0 




程なくして。


車に走り寄ってくる由子さんを見つけ、俺は車から降りた。





新しく決まった仕事の初日…


疲れている筈のキミの姿を見ると、こんな運命に巻き込んでしまった事を、俺は後悔するしかないんだろう…



出来るなら。
直弥さんが刺された事を告げる俺を、責めてくれ…


そして、こんな運命に引き込んでしまった俺を憎んで欲しい…




…この短い間に、キミにどれだけの事を背負わせてしまったのか…




黙り込んでしまった由子さん。



俺にできる事、…




ハンドルを握りながら、
微かに震えるキミを…





本当は…
抱きしめたかった…






No.73 13/05/19 16:00
名無し0 




シンと静まり返った病院の中。



直弥さんが眠るICUの前で、由子さん、キミは何を思うんだろう…




ナースステーションに居るスタッフに一言声を掛ける。



ふと、由子さんを見ると、細い肩が震えているように見えて。



いたたまれなくなる。




これから知る直弥さんの姿に、キミは堪えられるだろうか…?





さっき、抱きしめたいって思ったのは、


もしかしたら?
俺自身の不安の表れなのかもしれない。




先の見えない不安に、

押し潰されそうになりながら、俺は由子さんの側に寄り添う事しかできなかった。






No.74 13/05/26 18:05
名無し0 




じっと直弥さんを見る由子さん。



今の今まで、気付かなかった。


直弥さんの手に付いた血の痕…





そっと直弥さんの手を握る由子さん。





「……………」


直弥さんの意識が戻るのなら、

それが叶うなら、




結子を失った俺は、

自分の命と引き換えにしてでも



直弥さんの意識を取り戻したい



それが、キミの望みを叶える事になるのなら。






「由子……」


俺は無意識に、キミの名前を呟いていた。




すぐ後ろで、そんな俺の気持ちに気付いていた秀の存在に気付きもしないで。






No.75 13/05/26 18:42
名無し0 




「秀…」


俺たちにタイムリミットを告げた秀は、




一瞬、つらそうな表情を見せた。



「…!」



秀…




だよな?



俺は…
こんな短い時間で、由子さんに何を分からせようとしてたんだろう…





由子さんとICUを出た俺は、疲れきった由子さんを椅子に座らせ、飲み物を買いに行く。







後悔か…


キミに、謝らなきゃいけない。




やっぱり、もっと早くに教えるべきだった…




再び。

由子さんの元に戻った俺は、



由子さんと話す秀と会話をする。




少ない会話でも、俺を勇気づけてくれるには十分だった。






No.76 13/06/01 19:00
名無し0 




直弥さんが刺された後、病院に来るまでは意識があった事。



そして、由子さんの仕事の事。


ユキトさんの暴力事件が、今回の事件の引き金になった事。





全て話した。




そして。

キミは、傷ついたユキトさんまでも癒やしてくれる。





実の親にさえ、心を閉ざしたままだったユキトさんの心を。




由子さん。


キミは、

キミの存在は、…


沢山の人に影響を与えてる。




俺の人生にさえも。






No.77 13/06/01 19:35
名無し0 




結子が逝って3年後。



キミに出会うまで、俺の人生はもう終わっていた。

そう、考えていた…



秀にも何回か、女を紹介するって言われたが。




当然、そんな気にすらなれない俺は、自分の人生なんて無いものだと。


そうして。
生きてきた…



このまま一人で、生きていく。




結子のため?


いや…。

違う




誰かのためとかではない。




俺自身のため…?




答えはでなかった……。





No.78 13/06/02 16:26
名無し0 




そんな中途半端な俺の気持ちを変えてくれたのが、由子さんだった。



直弥さんの意識が戻って。


安心したのか、不覚にも倒れてしまった俺を、入院させた由子さん。


ただの気の緩みで、心配かけてしまって…



すまないと思った。


だから、入院する事は断った俺に放たれた言葉に、返す言葉が見つからなかった。



直弥さんが入院していた時と同じように、毎日病室に来てくれる。




最初は、申し訳ない気持ちでいっぱいだったんだが…


日が経つにつれ、いつの間にか俺は、キミが来てくれる事を楽しみに待つようになっていて。




特に、何かをするでもなく。
キミと他愛もない話をするだけで




なのに、
俺の中で、キミの存在がどんどん大きくなっていく。



いや、元々、俺にとってキミは大きな存在だったんだ。



ただその事に気付かなかっただけで。



はっきりと悟った。




俺には、超えなければならないハードルがある事を。





No.79 13/06/02 17:17
名無し0 




時間が許される限り、できるだけ通った。


許してもらおうなんて、思っているわけじゃない。



結子が死んでしまった今、結子に聞く事もできない俺は。


…………






じゃあ…

俺に、何ができる?



自問自答する。





結子の両親に謝ったからと言って、何かが変わるのか?




謝る…?



何を?





…………



今さら何をしたって、結子が帰ってくるわけじゃない。





No.80 13/06/02 18:39
名無し0 




わかってる…


そんな事、…

でも。



今までのように、ただ黙って過ごしていくわけにはいかない…!




例え、どんなに時間がかかっても…





俺は……






今日もまた、ここに来た。



結子が眠る墓…


唯一、俺が許されたのは、結子の墓参り。





あれからもう、5年……か。





今日は、結子の月命日。



「結子…」




俺は、結子の墓の前で手を合わせる。



結子…

今お前は、俺の事どう思ってるんだ?




余計な事は喋らない性格だったからな…



例え、生きていたとしても…

何も話してはくれない…か……







「修二…くん……?!」


え……






No.81 13/06/21 19:33
名無し0 




結子の父親だった。



「!…ご無沙汰、…してます…」



「やはり、君だったんだね…」

「え…?」



結子の父親、田崎恭一とは、結子の葬儀以来だった。




「結子の命日だけじゃなく、月命日にも花を手向けてくれてたんだろう?」



「……!」



そう言いながら、田崎恭一は結子が眠る墓の前に立つ。


「家内は何も言わなかったが…、家にも来てくれてたんだろう?」



「……田崎さん」




ゆっくりと腰を下ろすと、静かに手を合わせた。



No.82 13/06/21 19:53
名無し0 




「…8年か…」



手を合わせた田崎恭一は、独り言のようにつぶやいた。




「………」


俺は、何も言えない。


「私も、年を取ったよ。」



「田崎さん…」



「まぁ、私だけじゃないが。」



………?



「いつか、君に会えるんじゃないかって思ってた。」



「…?」




「いつか…、会えたら……、君に言おうと思ってた事がある。」



「え…?」



背中を向けたままの田崎。




「田崎さん……?」










「もう、ここには来ないでくれ。」








No.83 13/06/21 20:17
名無し0 




「家内も、同じ気持ちだ…」




「!!……」






俺は…

…………



そうか……



結子の両親にとって、


俺のしてきた事は、ただの自己満足に過ぎなかったんだ。




俺にとって超えなくてはならないハードルも、結子の両親にしてみれば、………
迷惑な障害物でしかなかったのかもしれない。






「申し訳ありませんでした…」



俺は、頭を下げた。








「修二くん、頭を上げてくれ…。」




はっとして、顔を上げると…


いつのまにか、俺の前に田崎さんが立っていた。
何故かその顔は笑っているように見えて…。









No.84 13/06/22 15:18
名無し0 




「人の一生なんて、本当に短いものだよ。」


え…

「あの…」



「もう、充分だろう。」
充分?

「……?」


「ここに来る暇があるなら。…君には、やるべき事があるだろう?」



やるべき事…



「あの、田崎さん…」



「結子だって、私達と同じ気持ちの筈だ。」



「?……」



「後悔しないように生きていって欲しい。
修二くん…、幸せに、な?」




幸せに…




「田崎さん…!」




No.85 13/06/22 15:55
名無し0 




結子の父親田崎恭一は、俺にそんな言葉を残して帰っていった。




幸せ…に、か……




俺はまた、結子の墓の前に立つ。






「結子…。
俺は…、ほんとに幸せになってもいいのか?…」




一人、呟けば。

冬の風が、俺の頬を掠めた。







『幸せに…。修二。』



!?

結子の声が聞こえたような気がして。


「結子っ…!?」



辺りを見回してみるが。



……………

………




「結子…」



田崎恭一はこんな事も言っていた。





「遺された者が幸せになる事が、先に逝ってしまった者への一番の供養になる。」と…。




もし。そうだとするなら、…




結子、


…ありがとう。



勝手に先に逝ってしまったお前を、許せないと思った事もあった…



お前の存在が、俺にとってなんだったのか…
解らなくなった事もある



けど、今は感謝してるよ。


お前がいたから、


俺は、大切なものに出会えた。



お前が気付かせてくれたんだよな?




大切な存在に。






No.86 13/06/22 17:03
名無し0 




俺は、会社に退職願を出した。




社長は、俺の話を黙って聞いてくれた。



そして、静かに俺に話し掛ける。


「真壁」

俺の名前を呼ぶ社長。



「申し訳ありません…」


「…謝る事じゃない。」


「!……」


「今まで、何ひとつ愚痴や文句も言わず、ただ黙って私に着いて来てくれた。感謝してる。」



社長…



「結子さんの事があった時も…、何も言わず、会社や私…、いや、それだけじゃないな…。
直也やユキトの事まで、面倒な事は全て真壁に押し付けてきた。」



「社長…、私は一度も面倒だなんて思った事はありません。」



「だから、だ。」


「?」



社長…?


「真壁がそう思ってくれたから、私は、お前に感謝こそするが、私に謝る必要はないと言ってるんだ。」


「………社長、…」



社長は、立ち上がって俺の前に歩いてきた。



「真壁…、今まで、ありがとう。」

社長…




「いえ…、私の方こそ…我が儘を聞いてくださって…
本当に感謝してますっ…」





俺は深々と頭を下げた。








No.87 13/06/22 17:29
名無し0 




直弥さんも、会社の顔として、営業を頑張っている。



社長は、口には出さないが、直弥さんを信頼しているし。
俺から見ても、もう一人前だ。


ユキトさんも、卒業後の進路も決まったし。



何も心配する事はない。




ただ、


ひとつ、気になる事がある。





由子さんの事だ…




久しぶりに、食事に誘ってみるか…。







No.88 13/06/23 18:37
名無し0 




この5年。


俺はずっと、ひとつの事を考えていた。




不意打ちで、由子さんを迎えに行くと…



少しだけ寂しそうに歩くキミの姿を目にする。




何かを悩んでる事は、確かだ。


けど、キミは何も言おうとしない。


敢えて俺からも、特に振る事はしなかったが





時々、映画を観に行ったり、食事にも行っていた。


デート?


いや、俺にはそんな資格はない。
そう、考えていたから。




だが…

これからは…





No.89 13/06/23 19:51
名無し0 




キミに、俺の過去の話をする。



前に、キミに結子の事で嘘をついていた事も…


吹っ切れてなんていなかった…



俺はずっと、結子のために…って思ってた


結子のために、誰も愛さない

そう、思ってた…




でも、キミに出会ってから

少しずつ変わってきた…


いや、気付いたんだ


俺は、俺の本音は…



結子のため。じゃなくて、自分のために、自分を守るために、…



俺は自分を、偽ってきた…



……………




だから、これからは本音で生きていく。






No.90 13/07/15 19:45
名無し0 




俺の心臓は、こんなにも柔だったか?




愛しい人にやっと、会えるっていうのに


足が震えてるんじゃないか?

は…

情けないな。









俺は…ゆっくりと、扉を開けた―――










No.91 13/07/16 14:13
名無し0 




☆読んで下さった方へ


これで、『届かない思いsidestory』は終わりです。

え?って思われた方もいらっしゃるかもしれないですが(^_^;)



本当は昨日の書き込みに、終わりと書くつもりだったんですが

リアルで急に忙しくなり、書き込めないまま投稿。

続きの文面も書けないまま、今に至ってしまい…

情けなく…、
いや違うな、笑うしかないですね(^_^)







修二が開けた扉の先に



何が待ち受けているのか…



は、読んで下さった方が想像してくれれば。

と思います。


sidestoryなのに、随分と時間がかかってしまい、自分としても納得がいかないですが。


クーさん
そして、クーさんのスレにレスして下さった皆様☆


今まで長い目で見ていただき、本当にありがとうございましたm(_ _)m☆

感謝の言葉しかありませんo(^-^)o



長くなりそうなので、次に移ります(^_^;)




No.92 13/07/16 14:54
名無し0 

>> 91


前スレで、竜二の後輩を登場させたいなんて書いていながら、ストーリーの流れ的に無理だと気付き…
結局、夢半ばに終わってしまった事に、多少なりとも後悔してる訳です(^_^;)


ひとまず。
このお話は終わりですが。
いつかまた、書きたいと思った時に書いてみようかな

なんて、思っています♪

しつこいようですが、あくまで、素人の息抜き程度ですが(笑)

しかも、かなりの小心者ですf^_^;


ミクルを覗いてみると、沢山の方がいろいろな作品を書いていらっしゃってて
皆さん、凄い才能だなって感心するばかりで


だからこそ、才能の無い素人の自分に感想スレなど立てる勇気なんてなく

しかも、ヘタレな性格から、今まで自分勝手に書いてきたんですが


恐らくこの先、また書く事があれば、そのやり方は変わらないと思われ…

ま…、グダグダ書いておりますが…(笑)



とにかく。

『届かない思い』
お付き合いいただき、本当に本当に…
感謝してます♪

ありがとうございました☆



では、また♪


2013.7.16

主より☆








No.93 13/11/23 14:27
名無し0 

>> 92


久々に。



ここを覗く。


竜二の後輩、書き始めました。
ひっそりと、ダラダラと、ちまちまと…(^_^;)
相変わらず、自己満のもと書いてます。


なんて…

今年中に書き終える事が、できるんだろうか…

そんな不安を抱えながらのスタート


いつものように

仕事とプライベートの合間合間に


途中で終わる事のないよう、ゆっくりと書いていく予定です。












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