届かない思い《sidestory》
いつだって
キミの事、思ってる。
どこにいても。
どんな時でも。
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「許して欲しいとは、思っていませんっ…。
ただ、お話を聞いていただきたいんです…!」
俺は今日も、ある人の家の前に来ていた。
玄関のチャイムを鳴らすと、インターホン越しに返事が返ってくる。
「…どちら様ですか?」
俺は、一呼吸おいて答えた。
「修二です…。」
「…………」
「お話を、聞いていただけませんかっ…」
「………何も、お話する事はございません…」
「……お願いします!」
もう何度、ここへ通ってきただろうか…
それ以上の返事が返ってくる事はなく。
インターホンも切られてしまう。
敷地内に入れてもらう事すらできない俺は、
深々と頭を下げて、その家を後にした。
【修二side】
俺の視線に気づいたのか…
もしくは、父親の俺の名前を呼ぶ声に気づいたのか……
分からないが。
母親はゆっくり立ち上がって、俺の方へと近付いてきた。
「真壁さん?」
母親の声は、なぜだかその様子とは裏腹に、力強かった……
「こんばんは…。ご無沙汰……」
「哀れんでるの…?」
俺の言葉を遮るように、質問を投げかけてくる母親。
「?」
「自分が捨てた女が、自殺したから、笑いにきたの…?」
「え…?」
俺が…捨てた?
「止めなさいっ…!」
結子の父親が、母親を遮るように、間に入ってくる。
何がなんだか、分からない…。
「あの?」
「あなたのせいでっ!結子は死んだ!」
「え…?」
俺の……せい?
「あ…、いえ。…」
俺と秀が並んで座った前に。
結子の父親が、手に何かを持ったまま、ソファに腰掛ける。
「…?」
「これ…は、日記だ…。」
「日記?」
「あぁ、結子の…。」
「!……結子…さんの…」
秀も、一瞬驚いた様子だった。
「日記と言っても、普通のノートみたいな物だったから、最初は、日記だなんて気づかなかった…。」
言われた通り、よく見れば、どこにでもある大学ノートで。
「ここにな…、修二くんとの事が書いてある…。」
俺…との事……?
「それって、修二と結子さんが付き合ってた頃の事、ですか…?」
秀が、聞く。
「いや…」
「………?」
「別れた後の事もだよ…」
別れた後?
って……。
「いやっ、修二は、結子さんと別れてからは…、な?修二…!」
だから。
無二の親友のこいつが、俺の事わかってくれれば。
それでいいと思って、
「いや…、いい。」
俺は秀を諭すように、返事をすると、
秀も、納得したように、小さく頷いた。
……………
「その日記…に、何が書いてあるのか…、教えていただけるんでしょうか…」
俺は、結子の父親を見る。
「…読んで、くれないか…結子の、この日記…」
そう言って。
結子の父親が、俺の方にノートを差し出す。
…………
俺は、静かに受け取る。
見れば見るほど、何の変哲もないノートだった。
だが…
それが、余計に俺の気持ちをざわつかせた。
このノートに、
……………
いったい何が、書いてあるっていうんだ……
俺は、胸騒ぎを抑えながら、表紙を捲った。
「修二……」
隣で、見ていた秀がぽつりと俺の名前を呼ぶ。
「修二くん……」
結子の父親が呼ぶ声に、落としていた視線を上げた。
「結子は…、ずっと君の事、忘れられなかったようだ……」
………………
「………結子さん、だけじゃ、ありません…」
俺だって…
「わかってるよ…。」
「え…?」
「突然、別れを告げられたら、誰だって…戸惑うさ。……」
「………っ」
「結子は…、誰にも相談しなかった……。
私達にさえね…。
家内は、それが悔しいんだよ…。
だから君に…、修二くんに八つ当たりする事で、気持ちを紛らわそうとしてるんだと思うんだ……。」
「…………」
「でも君には、ちゃんと話を聞いてくれる友人が居てくれたんだね。」
結子の父親が秀の方を見て、少し笑った。
俺は、返す言葉がなかった。
ほんとは俺が、呼び止めたかったのかもしれない……。
ただ、昨日のユキトさんの様子は、どうみても由子さん一筋だ…。
……迷ってる暇はない。
すぐに、ユキトさんに電話をかけた。
そのまま、車の中で待っていると、駅に向かって走っていくユキトさんの姿を確認できた。
きっと、大丈夫に違いない。
そう信じて。
俺はその場を後にした。
それからしばらくして、
ユキトさんからの連絡で、由子さんが戻ってくる事を知った。
でも……
由子さんを戻して良かったのか…
ほんとに、
彼女のためになったのか……
ユキトさんのためだって、口では言いながら…、
俺は、
自分のえごで、由子さんを引き止めてしまったんじゃないんだろうか…
失う怖さを、由子さんで取り繕うとしてるんじゃないのか?
☆小説大好き3さん
いつも、ありがとうございます(^_^)
返レス遅くなって、すみません💦
花粉症のアドバイスまでいただき、ありがとうございます。
同僚に紹介されて、今年初めて、病院にかかっているおかげで?
今のところ、あまり酷い症状は出ていないようで。
ただ、薬のせいで眠気があったり、仕事の事もあって、ここを更新する事がなかなかできない状態で、申し訳なく思います💦
なので。
完結まで、もうしばらく気長にお付き合い下さると有り難いですm(_ _)m
こんな素人の書くお話を、楽しみにして下さる事、感謝してますo(^-^)o
本当に、いつもありがとうございます(^_^)v
主より。
全てではないけど。
結子との事を話した俺に、彼女は気遣いまでみせてくれた。
その優しさに、俺の気持ちもいつのまにか、癒やされていくような気がした。
もしかして。
彼女も、…
俺と同じなのか?
昔の恋を引きずってる?
同じような思いをした者同士ってやつなのか。
だから俺は。
安心したんだろうか?
彼女を前にすると、素直になれた。
こんな気持ちになれたのは、久しぶりだった。
だからと言って、彼女を独占しようと思っていた訳じゃない。
ユキトさんとも、直弥さんとも無理な状況なら、とりあえず、俺の所にって決めたのは、特に深い意味はなかったんだ。
ただその選択が、俺自身を苦しめる事になるなんて、
この時は思いもしなかった。
ひとまず、自宅マンションへと由子さんを案内する。
遠慮しながら、聞いてくる。
彼女の存在。
……居る訳がない。
結子が出て行った後、ここに引っ越してきた俺は、
女を連れてきた事なんてない。
そう…
由子さんが初めて。
簡単に部屋の説明をした後、俺は店に戻るためにマンションを出た。
途中、ユキトさんに電話を掛ける。
少しの間があって、
「分かりました…。ありがとうございます。」
ユキトさんは、俺に礼を言う。
正直、いい気持ちはしないだろう。
ユキトさんにとって、いや、男にとって、大切な人を他人に任せなきゃいけない現実。
俺は。
そんなユキトさんの気持ちを汲んで、極力冷静に話を終えた。
二人、向かい合わせに座ってする食事。
仕事から解放された安堵感も手伝ってか…、
俺はまた、結子の事を思い出していた。
もう、愛してる訳じゃない……。
そんな事は、わかってる…
なのに、俺は
未だに結子の事が忘れられない……
目の前に居る由子さんを見ながら、
俺は自分の気持ちを持て余していた。
食事の後、当たり前のように後片付けをしようとする由子さん。
長い一人暮らしのせいか、家の事はそれなりにできるようになっていた。
だから、無理しなくていいからと伝えると。
居候だからと半分、申し訳なさそうに答える。
居候……か、…
由子さんにとっては、ここはあくまで仮の住処。
いつかは、出ていく。
………いつかは。
俺は、自分の気持ちに蓋をして。
ハローワークに行くと言った彼女に、エールを贈りながら、残った書類を片付けるために自室へと入っていった。
由子さんに電話をかける前に、秀に連絡しておいた。
アイツは普段いい加減なところがあるが、医者としては、優秀だと思っている。
本人には、言わないが。
だから。
秀なら、安心して由子さんを任せる事ができる。
酷いケガじゃなければいいが……
運転しながらも、隣に座る由子さんが気になってしまう。
そんな思いが、俺の苛立ちを更に大きくしていたのか…
由子さんに言われた一言。
「怒ってます…?」
怒ってる?
俺は、………
…違う?
別に由子さんに怒ってるんじゃない。
「心配してるんです。」
そう…
俺のこの苛立ちは、
由子さんを守ってやれなかったっていう
現実に。
そんな自分に、苛立ってるんだっ……
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