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I'key( 10代 ♂ GDnM )
10/07/24 17:16(更新日時)

I'keyと申します。
ミクルでの小説も第三作目になりました。
今回は初挑戦の『恋愛』がテーマです。自分でもいったいどうなるのかわかりませんが、頑張って少しでも楽しい作品にしたいと思っています。
応援や感想、アドバイスなどはもちろん大歓迎です。気になったことはどんどん教えて下さい。

それでは、開幕

No.1158245 08/07/08 22:31(スレ作成日時)

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No.201 10/05/28 23:30
I'key ( 20代 ♂ GDnM )

>> 200 🍉21🍉



「ちょっ!?……離して下さい!」
「フヒヒ、よいではないかよいではないか」
「そうですわ。減るものじゃありませんもの♪」
酷い悪ノリだ。
俺は、中学時代に公衆の面前で下を全部略奪された同級生を思い出しぞっとした。
急に気分が冷める。
「部長、そんなに嫌がってるならもう勘弁しても……」
「もう遅いっ!」
止めようと駆け寄った俺の目前。取っ払われたパーカーの白が青空の中に鮮やかに舞った。俺の視線は反射的に吸い寄せられ、それから自然に一ノ瀬へと向いた。
何てことはない。普通のビキニの水着。一ノ瀬は下を向いたまま懸命に手で隠していた。
スタイルは良いと思ってたけど……予想以上に胸が……
「……見ないでよ」
一ノ瀬がちらりと挑戦的な目で見て言う。
「み、見てねえよ」
「そうね。どうせ私には似合わないから、こんなの」
「んなことねえよ……普通に、何て言うか、大丈夫だから気にすんな」
「……うるさい」
一ノ瀬は放心状態の楠木を押し退けてパーカーを拾った。
「そんな……着痩せ……ああ、無情ですわ……」
うわ言のように呟く楠木を見てニヤリと笑う部長。
こっちが狙いだったか。

No.202 10/06/06 23:09
I'key ( 20代 ♂ GDnM )

>> 201 🍉22🍉



「部長……規格外の鬼畜っぷりですね」
「何の話かね、レン君」
「一ノ瀬の体による楠木への追加攻撃、が狙いでしょう?そこまで先読みしてのパーカー仕込みとは……」
「想像は個人の自由だ。けど真実はいつも一つっ!」
俺は柑奈の存在が真実である不幸を、楠木の代わりに悔やんでやった。
「一ノ瀬先輩のっ!水着姿!?……この俺が遅れを取るとはっ!?」
御厨がコモドオオトカゲにも似た動きで、手足をビタビタ言わせて這って来た。
「爬虫類に身をやつしてまで生き延びるとは見上げた奴だ」
「俺は人間だ!腐ってもオタクでも人間じゃあ!」
御厨は叫ぶ。それから一ノ瀬に視線を移し、途端に世界の終焉を見るような表情を浮かべる。
「白いパーカー……連邦のモビルスーツは化け物か!?」
「いや、普通のパーカーだぞ」
御厨は笑顔で立ち上がる。
「先輩一緒に泳ぎましょう!」
「一人でどうぞ」
「暑くないですか?」
「別に」
「コートをお預りします」
「これパーカーだから」
一ノ瀬の対応は迅速で的確で一寸の隙も無かった。
御厨は崩れ落ちる。
「悲しいけど、これって……」
「戦争じゃないことは確かだ」

No.203 10/06/09 22:08
I'key ( 20代 ♂ GDnM )

>> 202 🍉23🍉



「いや、戦争だっ!」
御厨が叫ぶ。
「一ノ瀬先輩、勝負です!」
「……勝負?」
「俺『たち』が勝ったら水着拝ませて下さい!」
御厨は恥ずかしげもなく頭を下げる。お前には尊厳という物が無いのか?
「……って俺『たち』って何だよ?」
「お前、男だろ?」
「どんな理屈だ」
「それで、そっちが負けたら何してくれちゃうワケ?」
柑奈がイタズラっ気全開の笑みで参入してくる。
「部長が入ると話が面倒になるので来ないで下さい」
俺も一ノ瀬と同感だ。激しく嫌な予感が溢れてならない。
「この合宿中の全雑用、俺『たち』で全てこなします」
「だから俺を巻き込むなっ!」
御厨の耳は、俺の声だけ受信しないらしい。
「いいだろう、その勝負受けて立つぜ」
「部長、勝手に決めないで下さい!」
一ノ瀬の反駁をよそに、真剣な顔で見つめあう御厨と柑奈。
「……部長」
「何だ御厨?」
「……写真もいいですか?」
「……許可しよう」
「部長っ!」
「まーまー、舞衣はちょっと待っときんしゃいね」
もう駄目だ。完全に部長は面白がりモードに入っている。
「……動画もいいですか?」
「……特別に認める」

No.204 10/06/13 22:21
I'key ( 20代 ♂ GDnM )

>> 203 🍉24🍉



「部長!ホントにいい加減にして下さいっ!」
一ノ瀬が大声で叫ぶと、柑奈は「まぁまぁまぁ」という様子で肩を持って俺たちに背を向ける。
「要は勝ちゃあいい」とか言ってるのだろう。柑奈にすれば勝っても負けても楽しい訳だ。
「話はついたぜ。今の条件でオールライト!」
叫ぶ柑奈の満面スマイルと全く前を向こうとしない一ノ瀬の顔、並べればまさに天国と地獄の図。
「一ノ瀬の表情から察するに、話がついたとは到底思えねえ……」
「外野は黙りやがれっ!これは俺の聖戦だ!」
今度は御厨が俺の耳元でシャウトする。俺は反射で御厨の顔面を押し退けた。
「痛えな!?」
「痛いのは俺だ。罰ゲームにだけ巻き込んで外野扱いとは、お前予想外の黒さだな。耳も心も傷だらけだ。それに聖戦というより性せ……」
「俺の無垢の探求心を愚弄する気か!?」
いや、愚弄するまでもなく愚かで汚い。青春の手垢まみれ。
「対決種目はビーチバレー!それでいいかね勇気ある挑戦者よ!」
「臨むところだゴルァ!ギタギタにして先輩のお宝ショットは俺が頂くぜ!」
「あーあ、楠木に続いて御厨まで壊れたか」
俺は溜め息をついた。

No.205 10/06/20 16:11
I'key ( 20代 ♂ GDnM )

>> 204 🍉25🍉



「おい……一ノ瀬」
俺はそっと一ノ瀬に近寄った。
「何?」
「負けてやろうか?」
俺の言葉に一ノ瀬は意外そうな顔をした。
「何だよその顔……お前がそんなに嫌ならって思っただけだけど」
「負けたら分かってるの?雑用なんて言って部長は何させるか分からないわよ?」
「まあ、そんぐらいは耐えてやらんでもないし」
俺は頷いた。
「……いい」
一ノ瀬は首を振った。
「何で?」
「恩を売られたくない」
「はあ?何だよそれ。別に恩売るつもりとか無いし。俺はそこまでセコくない」
「私が嫌なの……とにかく、こうなった以上真っ向勝負で叩き潰すわ。悪く思わないでね」
そう言って一ノ瀬は女子グループに戻って行った。
……かわいくない奴。
「おい、お前一ノ瀬先輩と何話してやがった?」
御厨がギラギラした視線で話しかけてくる。
「負けてやろうか?と情けをかけた」
「何ぃ!?お前裏切りやがったのかよ?」
「裏切るも何もお前の味方になったつもりはない」
「殺すぞ?世界残虐処刑史からクジ引きで選らんで殺すぞ?」
俺は手で制す。
「ところが断られた。つーことで俺も本気でやることにする」

No.206 10/07/12 23:16
I'key ( 20代 ♂ GDnM )

>> 205 🍉26🍉



「めんどっちいから10点先取でデュース無しね」
柑奈がそう言ってボールを手に取る。流石にサーブ権は女子チームに譲った。
「雑用嫌なんで、本気でいきますよ」
「もちろんもちろん。少しは楽しませてくれよな、レン君」
柑奈はケラケラ笑う。
いくらなんでもこっちが有利なはずだ。確かに二対三ではあるが相手は全員女子。柑奈は別として一ノ瀬と楠木の運動能力はたかが知れている。それはこちらの御厨も同じだろうが、少なくとも俺の運動神経はかなりいい。「お前、部活〇〇だったのか?」と大抵の球技で体育教師に勘違いされてきた俺の巧緻性は伊達ではない。
「じゃっ、いっくよー!試合スタート!」
掛け声と共に柑奈が緩いカーブを描き走り出す。俺は驚愕する。
「文化部女子がジャンプサーブだと!?」
「そりゃ!」
反らせた力を頂点で解放する。唸りと共にボールが飛来する。
「くおっ!?」
俺は何とか飛び付いてレシーブ。逸れたボールの落下点に御厨が回り込む。
「おい、寝てんじゃねえよ!スパイク!」
御厨が高くオープントスを上げる。俺はすぐさま立ち上がり走る。
「まず一点……」
「何だって~?」

No.207 10/07/14 20:02
I'key ( 20代 ♂ GDnM )

>> 206 🍉27🍉



ブロックも飛んで来やがるのか!?
「ちっ!」
俺はタッチ狙いで柑奈の指先をかすめる。狙い通り。柑奈の左手に触れて僅かに軌道の変わったボールはコート後ろに飛んでいく。
「もらった!」
「まだまだですわ」
楠木が飛び込み手の甲で真上に上げる。それを一ノ瀬が拾う。
「じゃ、まずいって~ん!」
柑奈の強烈なスパイクが炸裂。自陣コートに突き刺さった。
まさしく流れるような三段攻撃。こいつら文化部じゃなかったのか?柑奈は別として楠木、一ノ瀬も人並み以上とは……誤算だ。
俺は御厨を引っ張った。
「……おい、あいつら普通に強いじゃねえか!特に部長!手に負えねえぞ!?」
「まあ、そうだろうな。だがまだこれからだ……次は俺が攻める」
「……お前が?」
オタクの攻撃……
不安過ぎる。
「まあ見てろって、俺はまだ変身を二回残している」
「意味分かんねえ」
御厨は不敵な笑みを浮かべポジションに付いた。
「じゃあ行くぜいっ!」
柑奈の強烈サーブが飛来する。
「νガンダムは伊達じゃねえ!」
御厨は事も無げにレシーブ。俺の直上にボールを上げる。
「トス上げろっ!」
「あ、ああっ!」

No.208 10/07/15 20:39
I'key ( 20代 ♂ GDnM )

>> 207 🍉28🍉



俺はネット際に高くトスを上げる。
「ウオオラアアッ!」
御厨が全速力から渾身の跳躍。
「た、高いっ!?」
「お前ならここまで来ると思ってたぜ御厨!」
柑奈もさっきより高く飛ぶ。即席ネットから上半身が丸々飛び出す規格外のジャンプ、だが高度は互角。
「お前のスパイク、しのいで見せるさ!」
「何の!今日の俺は阿修羅をも凌駕する存在だ!」
「空中であれだけの長文会話をこなす滞空時間……何という戦いだ。何か知らんがとりあえず凄いぞ!」
「夏目君、壊れたわね」
御厨の右手が唸りを上げる。大気が渦を巻く。空が鳴く。
「爆熱ゴッドフィンガー!!」
御厨入魂のスパイクが柑奈のブロックを撃ち抜いた。一ノ瀬も楠木も拾えない。
御厨着地。
相手コートに背を向け、高く拳を突き上げる。
何か気持ち悪いけどカッコいい。
「お前そんな力をどこに隠していた!?」
俺は御厨に嬉嬉として駆け寄る。
「能ある鷹は爪を隠す。強力ボスは変身を隠す。フリーザ然りオルゴデミーラ然り。そしてこの俺、ただの漫画の天才じゃないぜ。俺は人間として全体的に天才なのさ!」
「大幅に勘違いしてるがまあいい!この戦、勝てるぜ!」

No.209 10/07/19 16:34
I'key ( 20代 ♂ GDnM )

>> 208 🍉29🍉



壮絶な激闘はまさしく両雄二大決戦となった。柑奈が取れば御厨が取り返し、御厨がしのげば柑奈も守る。
そして最終局面、スコア9対9、サーブ御厨。
一瞬の静寂の後、御厨の声。
「いくぞっ!」
御厨が走り出す。ジャンプサーブだ。
「舞衣、なぎさ!気を抜くなよ!」
二人は頷き姿勢を低くする。女子チーム三人、未だサーブレシーブの失敗はゼロ。
「俺のポジトロンライフルが火を吹くぜえ!」
サーブ。瞬間俺は叫ぶ。
「遅いっ!?」
当たり損ねか?御厨らしからぬ弾速のサーブが楠木の元に飛ぶ。
「わざわざラストサーブで失敗なんて、さすが一般庶民の御厨ですわ!」
楠木が構える。
「甘いな!陽電子は地磁気の影響で曲がるんだぜ!」
ボールが瞬間、右に大きく落ちた。
ジャンプからの変化球。まさかそんな奥の手を残していたとは。
「やらせるかいっ!」
刹那、落下点に飛び込む柑奈の姿。
「ちっ!?この反応速度、やはりニュータイプか!?」
勝ちを確信していた御厨が慌ててコート前線に走り出す。
ギリギリのタイミングで柑奈の拳がボールに触れる。
ボールは緩やかに、ネットの真上に打ち上がった。

No.210 10/07/20 23:39
I'key ( 20代 ♂ GDnM )

>> 209 🍉30🍉



ネットの向こうに一ノ瀬が見えた。いつもと同じ、どこか冷たい瞳で俺を見ていた。
勝っていいのか?
一瞬、そう思った。けど違う。俺が自分に訊いた言葉はそうじゃない。
俺は勝ちたいのか?
時間が突然、速度を緩めた。
俺、一ノ瀬、その間のボール。ネット。波。風。柑奈。御厨。楠木。注目する視線。
一ノ瀬の視線。
「跳べっ!夏目っ!!」
「跳べっ!舞衣っ!!」
同時に御厨と柑奈の声が白い砂浜に響いた。
俺は跳んだ。タイミングを取り、加速を生かし、地面を蹴り、ネットに向かって跳ぶ。
一ノ瀬も跳んだ。けれど高さが足りない。俺の腕には届かない。
俺の視界の下に一ノ瀬の顔が見えた。
その目の色に、俺の心がぐわりと揺れた。
諦めているのか?それとも最初からこんなくだらない事、問題にしていなかったのか?
どうして、どうしていつもお前はそんな目をしている。退屈そうで、遠い瞳。隣にいてもお前はずっと離れているみたいだ。
ていうか何でこんな事考えてるんだ?ボールはどこだ?
目の前。もう打つだけだ。
もう一度聞こえた。
俺は勝ちたいのか?
知っていた。
多分、そんな気持ちは最初から無かった。

No.211 10/07/24 17:16
I'key ( 20代 ♂ GDnM )

>> 210 🍉31🍉



結局、俺は空振った。俺たちのコートにボールはすとんと落ちた。
9対10で負け。試合終了。
「わりい、ミスった」
俺は御厨に笑顔で言った。
「だあああっ!!一番肝心な所で、貴様殺す!!」
「仕方ねえだろ、ミスは誰にでも起こる。それを責めないのは部活の鉄則だ」
「ミスした本人が言うんじゃねえ!」
「御厨、私がキャメルクラッチで慰めてあげますわ♪」
「うわっ、お前来んな、あっちいけ!」
楠木が御厨を追い掛け回してくれたお陰で俺の失敗はうやむやになったらしい。
「夏目君、わざと失敗したでしょう?」
一ノ瀬が冷たい目でこっちを見た。
「んなことねえよ」
「何であんなことしたの?私が喜ぶと思った?」
俺は首を振った。
「ぜんぜん」
「……馬鹿みたい」
そう言って一ノ瀬は別荘の方へ戻っていった。
隠したつもりなんだろうけど、ちょっとだけ笑ってたな。
「疲れた~、よしっ海終わり!別荘に帰投する!」
柑奈はそう叫ぶと俺の方に近寄ってきた。
「……何ですか?」
「アタシを運べ」
柑奈は手を広げて笑った。
「自分で歩け」
「え~、雑用するって言ったじゃん」
俺は無視して歩き出した。

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