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ジャイアントロボ 地球が静止する日 外伝 〜鉄人と少年探偵〜

レス14 HIT数 1423 あ+ あ-

作家
16/12/17 10:48(更新日時)

OVA ジャイアントロボ 地球が静止する日の外伝として『鉄人28号』を主役に据えた物語。

物語は地球全土が大怪球フォーグラーと幻夜による危機のなか日本に襲来するフォーグラー。
OVA本編では活躍することのなかった鉄人28号と金田正太郎、村雨一家の知られなかった物語としての一編として綴る。

はたして鉄人28号と正太郎はフォーグラーから日本を守れるか!?

No.2394625 16/11/01 17:39(スレ作成日時)

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No.1 16/11/01 17:47
作家0 

来るべき近未来!
人類は第三のエネルギー、シズマドライブのもと繁栄を謳っていた!
しかしその影で暗躍する謎の秘密結社、BF団っ!
『我ら、ビッグファイアのために』
彼らは謎のメカやロボ、能力者を使い破壊や暗殺などを用い世界に恐怖をもたらしていた!

しかし、彼らに対抗する者たちがいた!
その名は国際警察機構!彼らはエキスパートと呼ばれる達人で構成されBF団の能力者と戦う唯一の者たちだった。
そのなかに史上最強のロボを操る少年がいた!
名を草間大作!

しかし、草間大作と歳や格好が似るもうひとつ史上最強の名を持つロボを操る者がいた。
名を鉄人28号!
操るのは少年探偵金田正太郎!
この物語は少年探偵金田正太郎と大塚署長、敷島博士、村雨一家たちの人知れず戦った物語である。
ビルの街に青き鉄人の咆哮が伝わる、ガオー!

No.2 16/11/01 18:20
作家 

ニューヨーク、上海にならぶ大都会東京。いつもは活気に溢れた都心も大怪球フォーグラーの前には誰ひとり声や物音、野良猫さえ鳴き声さえ立てないくらい静寂を保っていた。
人はいるが誰ひとり不気味な大怪球の前には怖れを抱いていた……。

「こういう時こそ悪党の出番だぜ」

「大怪球さまさまとはこのことだな」

「セキュリティシステムさえ止まってますから」

黒い影が人気のいない銀行の裏口から潜入し彼らはいやらしい笑みを浮かべながら普段は動いている金庫や隠し金庫から札束や小切手などをせしめていた。
盗人猛々しいにもほどがあるもんだ。
彼らはある程度、腹を満たすように札束や小切手などを袋や懐いっぱいに入れると銀行をあとにしようとした。
しかし、そこにまばゆいばかりの照明と赤い特徴あるパトランブ、そしてお決まりの文句をカイゼル髭の署長がスピーカー片手に響き渡せる。

「あ〜、キミたちは完全に包囲されている。素直に降伏したまえ。繰り返す……」

そう、この人物こそ東京は警視庁で名高い大塚署長である。しかしその実体は……。

「言っちゃいかんよキミ」

おっと失礼しました。三人組の犯人たちは覆面顔で慌てるがすぐさま気持ちを切り替える。
彼らは鞄から操縦器を出して電波を飛ばした。すると夜の街にズシーン!ズシーンと地が揺れるほどの巨人が現れた!

「ろ、ロボット!アンチシズマドライブの影響が少ないからか」

驚愕な表情をしパトカーや機動隊は巨大なロボットの前に踏み潰されわらわらと散る。
日本はアンチシズマドライブの影響を受けてる範囲が少ないためこのような悪党たちが跋扈(ばっこ)していた!
そこへ現れるもうひとつの影!同じように地響きを与えながら現れる。
兵士のような頭部にやや丸い胴体、太い腕や足、敵を睨みつける人間のような瞳、尖った鼻、覆われたマスクみたいなくちもと。

「し、正太郎くん!それに鉄人!!」

大塚署長は感激の声を持ち警官隊や機動隊も希望に瞳を灯した。

「すみません大塚署長。遅れました。いけ、鉄人!」

両腕を威嚇するように上げ鉄人内部の動力炉が唸るように動きそれがさも口元から咆哮のように大都会に伝わる!
ガオー!
そう、これこそが少年探偵金田正太郎と鉄人28号!

No.3 16/11/01 20:33
作家 

鉄人の両腕が強盗団のロボットの腕を掴みギギギと機械特有の音を立てしばらくすると引きちぎった!
グアア!!
怪ロボットは人間のそれと同じようにのけ反ったところを鉄人の拳が怪ロボットの頭に放たれる。

「ああ、なんてことだ」

「鉄人め」

「いけ!鉄人」

鉄人は背中にある二基のロケット噴射を出し飛び上がる!大都会の暗闇に青い巨人の勇姿が舞う。そのままぐるっと回り怪ロボットの腹部に両腕を突き出した拳がめり込み内部のメカが露出しバチバチと配線や配電、燃料らしいものが吹き出る。瞬間、炎が腹部から爆発のように出て強盗団は悲鳴をあげた。

「俺たちのロボが!?」

「早く逃げましょう!」

「カネさえあればななんとかなりますぜ」

そこまでだ、とカイゼル髭を揺らした大塚署長と警官隊の姿が照明により照らされる。
彼らは大塚署長の声と共に強盗団に飛びかかる。やれ捕り物といわんばかりにわらわらと彼らは捕まえにかかった。五分、いや三分とかからずに三人組の強盗団は捕まった。

「やれやれ、正太郎くんと鉄人がいなかったらあぶなかったわい」

「すみません。埼玉の事件に手間取りまして」

「いやいや、あの怪球の前では何者も悪事に懲りるはずじゃがこうして悪事に向かう者たちもいる」

「鉄人はいまのところ動いてますが敷島博士にみてもらわないと」

都会のビル群に立つ鉄人はいつも変わらぬ勇姿だが、大平洋上をゆく大怪球フォーグラーは不気味な沈黙を漂わせている。
警察のモニターに映るフォーグラーの瞳は日の国日本を見つめてるようだった……。

No.4 16/11/02 07:56
作家 

事件を解決した正太郎と鉄人は都内にある敷島邸にいた。
BF団は日本では表立った活動は大怪球フォーグラーの出現から目立った暗躍はしてないようだ。目立った暗躍というのも変な表現だが。
しかし、鉄人や正太郎に休息は許されないようにBF団以外の強盗やギャングなどが小規模ながら動いていた。
正太郎と鉄人は日夜、捜査し事件を未然に防いではいたが散発的な活動は悪人たちはしていた。

「鉄人はアンチシズマドライブの影響下でも動けるようだ」

「それはまだフォーグラーが直接、日本に来ていないからではないでしょうか」

鉄人を整備してるのはかつて金田博士の下でロボット工学を学びいまでは日本有数のロボット科学者の第一人者の敷島博士。眼鏡から知性あふれる瞳が鉄人と正太郎少年を信頼しているようだ。

「フォーグラーか」

「シズマドライブは立派なものなのにアンチシズマドライブはなぜあんなに人々を恐怖に陥れるのか」

「科学の宿命だよ。ダイナマイトは本来は工事に携わる現場の人たちが安全に仕事するために開発された。だが……戦争に使われた。それはダイナマイトに限らない」

鉄人の鋼鉄の肌を撫でながら敷島博士は科学者として語っているようだった。わずかに冷徹な印象が正太郎に見えたが口に出すことはしなかった。
話題を変えた。

「鉄人はまだ動けますか」

「あ、ああ。アンチシズマドライブがまだ日本には来ていないから安心だ」

「鉄人はシズマドライブに動力が変えられましたから。ジャイアントロボや大作くんに比べたら非力です」

愛すべき相棒を下から見つめながら正太郎は少年らしくないことを口にした。鉄人28号もまた旧来の化石燃料からシズマドライブに動力に変えられた。
国際警察機構日本支部および大塚署長、敷島博士の判断でなされたのだ。
慰めるわけでなく敷島は言う。

「非力ではないさ。BF団は日本では活動してない。彼らでさえ警戒してるのだ。頭がわるい小悪党くらいさ。悪さをするのは」

「小悪党たちがおとなしくしてくれたら鉄人を傷つけることもないのに」

そこには少年探偵では少年らしい面立ちがあった。整備は敷島博士が明日までにしてくれるので正太郎は自分の屋敷に車を走らせた。

No.5 16/11/02 15:23
作家 

屋敷に帰ると正太郎はシャワー浴びあたたかく柔らかいベッドで眠りについた。
さいわいなことにこの日の事件は埼玉と東京の二件だけだった。それゆえに朝までぐっすりと眠りについた。

正太郎の朝は早い。
どんなに疲れていても六時には起きて顔を洗い着替え朝食や洗濯をしながら新聞や資料に目を通す。
正太郎が少年探偵であることにはじめこそは大塚署長をはじめ世間は疑問に思ったことは難くない。
しかし正太郎はそんな思いをものともせずに少年探偵らしく時に推理し時に鉄人を操り警察に協力することで“少年探偵”として名を馳せていった。
少年探偵金田正太郎がいるから東京は日本は守られているという自負が国民のひとりひとり老若男女に憧れや孫、弟、少年たちには兄でもあった。

正太郎は敷島邸に車を走らせると、完全に整備修理された鉄人があった。

「正太郎くんおはよう。鉄人は直ったよ」

「敷島博士いつもありがとうございます。昨夜は寝てないんですか」

「なあに正太郎くんのためだよ。お安い御用さ」

敷島は昨夜と違い明るく接した。敷島夫妻には子どもがいない。そのためか彼らは自分のために公私ともによくしてくれている。
敷島にとっては正太郎も鉄人も息子同然なのだ。

「今日はどうされるんですか」

「少し休んだら大学へ講義さ。ロボット工学を志す学生がいるからね」

「僕みたいな子どもがいうのもなんですけど、未来によきロボットをつくってほしいですね」

「いや、正太郎くんにはそう言う資格はあるさ。鉄人を正しく使っている。少し休ませてもらうよ」

敷島は息子のようにほめながら敷島邸に入っていき奥さんの姿が見えた。

「お茶でもどう?」

「いえいまから大塚署長のもとに向かいます。またにします」

ちいさく頭を下げながら奥さんに礼を言った。
正太郎の車が走り去る。

「正太郎くんいつも大変ね」

「金田博士が残したのは鉄人だけではないさ。彼が正しく鉄人を扱えるのは彼だからさ」

ソファに身を預けた敷島は鉄人がゆっくり邸を離れるのを見ながらお茶を口にし美しい奥さんのもとで短い眠りについた。
彼女はそっと旦那さまと息子のような正太郎、鉄人を見送った。

No.6 16/11/02 20:37
作家 

大怪球フォーグラーつまりはアンチシズマドライブの影響が少ないとはいえ東京は朝にも関わらず静かだった。
まるで高度成長期による団地開拓建設などが始まる前の田舎の様相を残した東京の郊外くらいに音がないのだ。ひとや車はいるが、フォーグラーに怯えているのが会社員やOL、学生や子どもたちに青い顔があった。
正太郎は車と鉄人を同時に操り警視庁の駐車場に車と鉄人を止めた。
警視庁の側に鋼鉄の巨人鉄人28号が着地し立つ姿は人々に偉容と希望を照らす象徴に見えた。
「鉄人だ!」「金田正太郎くん!」「かわいい!」と人々の声が明るくなる。
照れながらも正太郎は警視庁の玄関に立つ警官にちいさく頭を下げ入る。若い警官はつかれはあったが笑みを正太郎の背中に見せた。

「おお、正太郎くん。おはよう早いね」

「昨夜の事件の銀行強盗はどうです?」

「昨日見たとおりじゃ。彼らはBF団とのつながりはないらしい。彼らも知らないの一点張りだ」

大塚署長は昨夜のつかれをものともしないのは敷島博士とは対照的である。が、肝心のBF団は姿を見せない。
見せるのは小悪党ばかりだ。もちろん彼らは犯罪者である。
しかし、アンチシズマドライブの影響が少ないとはいえフォーグラーがなければ平穏と細々ながら小市民として暮らしていたかもしれない者たちだ。

「罪は償ってもらわんと世間さまにも悪いからな」

はい、と正太郎は答える。埼玉の事件も怪ロボットを使った強盗事件だった。刑務所行きの護送車に乗せられる昨夜の銀行強盗は一様にふてくされながら反省の色はわずかにあったらしい。
正太郎の顔に気づくと、顔をそむけた。悪びれながらも後悔が少しはあるようだ。

「敷島くんはどうした」

「少し眠ってから大学の講義に向かうとおっしゃってました。昨夜は鉄人の修理でかかりきりなのに」

「敷島くんはまじめ実直だからのう」

警視庁の窓から見える巨人たる鉄人の姿に大塚署長はつぶやく。
そこへ警視庁に通報が入る。
銀座の宝石店に強盗が入ったという。

「やれやれ貧乏ヒマなしじゃ。正太郎くん」

「わかってます。ロボットに犯罪をさせたくありません」

正太郎のまっすぐな瞳には少年らしい輝きがあった。操縦器を鞄から出して動かす。
ガオーッと咆哮が広がった!

No.7 16/11/03 15:52
作家 

正太郎くんと大塚署長が現場に向かう間、シズマドライブについて解説をしとく。

シズマドライブ!

シズマ博士を中心とした科学者によりエネルギー枯渇だった過去から解放された新エネルギーシステムである。
ちいさなものは乾電池ほど、大きなものは原子炉ほどでありエネルギー自体は有限ではありガソリンなどと同じである。
エネルギーが切れた場合はシズマ欠と呼ばれるが自動車などの場合は旧来と変わらずなぜかガス欠と呼ばれてもいるのだ。
ちなみに大怪球フォーグラーに使われているのはアンチシズマドライブもしくはフォーグラーシステムと呼ばれる、いわば電池におけるプラスとマイナスのような関係であるらしいと考えられるのだ。
正太郎は現場に向かいながら空を飛ぶ鉄人を少し見上げた。
敷島博士の整備による賜物か昨日よりは調子がよいようだ。

「鉄人……」

「正太郎くん、鉄人はキミがいてこそ鉄人は法や正義のもと活躍しておるんじゃよ」ワハハ

現場に向かう緊張感のなか大塚署長の陽気な笑いが耳に届く。
だが、鉄人にもシズマドライブは使われている。いつアンチシズマドライブの影響を受けるかわからないのだ。
少年の胸にちいさく重い黒い不安はよぎっていた。
現場は怪ロボットを使った強盗団がいた!

「君たちは完全に包囲されている!おとなしく降伏したまえ」

「うるせえ!くらいやがれ!!」

怪ロボットは吸収装置を逆に反転させ空気噴射装置として使い大塚署長や警官隊を慌てさせた!

No.8 16/11/04 09:46
作家 

ガオーッという咆哮と共に鉄人は地に降り立ち大塚署長らの盾になり立ちふさがる鉄人!
そのまま鉄の拳を強盗ロボットに放つ!瞬間、強盗ロボットは逆噴射をして鉄人の巨体はのけ反り地に響いた。
ズシーン!

「鉄人!?」

だが、次の瞬間に強盗ロボットそして鉄人の動きが妙になった。
強盗ロボットは盗んだ宝石を吐き出すように噴射しばらまき強盗たちは慌てふためいた。

「なんだこりゃ!?おい、取り戻せ!」

「わかってますぜ」

「な、なんだ!?」

「これは、いったい……」

大塚署長があきれるなか鉄人に異常が起きた。鉄人の青い拳が銀座の建物に突如、振るわれ破片が降り注いだ!
うわぁ!?

「鉄人!?これはシズマドライブの暴走!?」

鉄人のいつも青い瞳が狂ったように赤い瞳をしていて鬼のように正太郎や大塚署長に見えた。

「大変です!フォーグラーが大平洋上から動いたようです」

「なんじゃと!?」

警察のモニターには不気味な大怪球フォーグラーがゆっくりゆっくり前進しているようだった。
そこにBF団の幻夜の声がマイクを伝い日本全土に伝わる!

『繁栄の都、トーキョーも最後の時を迎えてもらう!我が父フォーグラーが生み出したアンチシズマドライブ、いやフォーグラーシステムで滅ぶがいい!』

「鉄人……!」

「正太郎くん、なにを!?」

正太郎は操縦器のあるところを押すと、鉄人は狂ったように暴れてた姿とは思えないほどに途端に静かになった。
強盗ロボットは宝石を吐き出すだけ吐き出すと、建物に自分からあたり中のシズマドライブごと爆発した。

「か、かかれえ!!」

ヤバイ、と強盗団は思ったが多勢に無勢であっという間にあわれ強盗団は逮捕された。
しかし正太郎は安堵な表情を見せたものの鉄人が暴走したことに不安は隠せなかった。
大塚署長はその様子を我が子を見つめる眼差しで見ていた。
暴走した鉄人は静かに銀座の街並みに存在していた……。
そして、それを見つめる謎の影。
危機は日本に来ていた……。

No.9 16/11/07 21:30
作家 

「……であるから以上のことからロボット工学は戦時中の技術より発展しいまに至る。それにより……」

大学で講義をする敷島に突如としてアナウンスが入った。

『敷島教授、敷島教授、警視庁の大塚署長より緊急の連絡が入っております。繰り返します……』

「講義中にあれほどかけるなと伝えてあるのに。すまない皆、講義はまた後日……」

警官である大塚署長、かたや教授でもある敷島博士。職種のちがいはあるが正太郎を思う気持ちは同じだが、講義を邪魔されてはいかんともしたいがその気持ちは大塚署長の言葉に粉砕されてしまう。

「なんですって!?鉄人が暴走!!」

『そうなんじゃ。正太郎くんはショックがあったみたいで口も聞いてくれんわい』

「わかりました。すぐにそちらに向かいます」

詳しくは話は聞かなかったが大怪球フォーグラーの影響ではと推測した。
たしかに日本への影響は少ないがそれでも都会は静かすぎた……。講義に座る学生たちもアンチシズマドライブの影響を悩んでいるのか一様に青かった。
我々、科学者は何ができるのでしょう。金田博士……。
師であった金田博士はもういないが、心にいる師に問いかけながら車を走らせていた。
鉄人は警視庁のそばの駐車場に膝を折り曲げまるで敗軍の将のようであった。

「おお、敷島博士。これを……」

「正太郎くん。鉄人……」

駐車場にいる正太郎の表情はいつになく浮かない。それは少年探偵ではないありのままの少年の顔に見えた。

「鉄人を暴走させるなんて、僕は操縦者として……」

「いいや、正太郎くんキミが悪いんじゃない。いいも悪いもリモコンしだいというのは私が学生やキミにいつも言う言葉だ。キミに罪はない。鉄人にもだ」

うむ、と大塚署長は頷く。わしの慰めより敷島くんの言葉の方が親身に迫るわい。ちょっとしゃくじゃが……。
大塚署長は大怪球フォーグラーについて伝えた。

「なんですって!?フォーグラーが!!」

「幻夜と名乗るエージェントの標的はこの日本となったかもしれん」

むかしシズマドライブ研究の折りに見た過去の新聞記事が敷島の脳裏に宿る。
同じ科学者の子どもなのになぜこうもちがうのか、と……。

「正太郎くん、鉄人を私に預けてくれないか」

その言葉にふたりは驚いた。

No.10 16/11/12 15:20
作家 

急遽、敷島邸にあるひと知れずある整備工場で鉄人は解体されることになった。
首や胴体、手足、背部のロケットエンジンがケーブルによって繋がれている姿はかの『フランケンシュタイン』を彷彿させるものだ。
なかでも胴体内部に内蔵されているシズマドライブを正太郎は鉄人のエンジンあるいは動力炉とも呼ぶべくだがシズマドライブに変わられた時、以来実はほとんど見たことがない。

「鉄人……」

安全のためと敷島博士は言っていたがそんな鉄人の姿は見たくない。
だけど見なくてはならないとも思った。
鉄人のシズマドライブはこの世界のロボット用に使用されているものの主に中型、鉄人28号自体が一見、大型に誤解されやすいが実はシズマドライブ自体は中型を使用している。
しかし、敷島の様子をよく見るとシズマドライブをたしかに点検整備をしているように見えたが、鉄人の胴体の前や左右、後ろそしてシズマドライブとはちがうなにか隙間のようなところを見ているように見えなくない。

「敷島博士、なにを……」

その声は博士には届いてはいない。が、気になるには充分すぎる。

「正太郎くん、鉄人はすぐに戻るさ」

「大塚署長、はい」

鉄人を敷島博士と大塚署長に任せながら正太郎は車を走らせ自分の屋敷に戻った。
だけど、鉄人にはまだ自分の知らない“なにか”を敷島博士は知っているのではと声にならない勘が告げていた。
食事を終え寝る前に彼は鉄人の資料を父の書斎からいくつか目を通してみた。
戦前、戦中のロボット工学。それはいま戦後のロボット工学に生かされているのは事実のようだ。
また戦前からもエネルギー枯渇によるエネルギー争奪戦による戦争が起こることを示唆してたと科学者は訴えていた。

「シズマドライブ以前からもひとは争いをやめてはいない。そしていまも……」

ふと窓の外を見ると、謎の人影が見え声をかけた!

「誰だ!?」

予想に反し人影はわずかに動揺しびくっと揺れたが、逃げることなく窓を音もなく開けて現れた。
現れたのは意外なことにヤクザ風の男だ。

「少年探偵金田正太郎、国際警察機構日本支部の守り手、その能力は少年探偵としての推理力とロボット操縦」

「だ、誰だ」

銃を構え身を守るために撃つのはやむをえない。相手は名乗る。

「村雨竜作」と

No.11 16/11/12 16:18
作家 

村雨竜作と男は名乗った。

「鉄人を敷島博士に取られたからいじけているのかい?」

男は下卑た笑いを浮かべながらもその瞳は一見、暗くきたなく見えながらもなにかに命を懸けている凄味はあった。
だが、正太郎は油断することなく銃を構えていたが意外なことに下ろした。

「おいおい、俺を悪者じゃないと決めつけるのかい」

「いま草間大作くん、銀鈴さんたちが所属している北京支部から頼まれた探偵に村雨健次と呼ばれる者がいます。あなたはその健次の兄ではないですか。むかし大塚署長に国際警察機構の資料を見せていただきました」

「ち、あのヒゲおやじめ。ま、アイツはなにかと北京支部のヤツラ、特に銀鈴と大作を気にかけているからな。だが、俺はいま警察機構の人間じゃねえぜ」

竜作は舌打ちをしながら素性を明かした。
正太郎はポットに入った湯で彼にお茶のおもてなしをした。

「まったくこんな小綺麗なところでおもてなしをされるなんつがらじゃないぜ」

「もしあなたが敵なら僕が日常の姿に戻ったとたんに襲うことも可能です。それにフォーグラーが出現してから監視をしていたのもあなたですね」

カップから立つ湯を境にふたりは互いの目を合わした。
とても少年とヤクザ風の男の会話とは誰も思わないだろう。
お見通しか、とカップに竜作は口をつけた。やや味が甘いのは少年らしさか。

「健次のヤツがお前さんのことを気にかけたから。ついでみたいなものさ。ついでにいうと村雨一家は俺だけじゃない。俺以外も見張ってたぜ」

なるほど、と正太郎は頷いた。ひとりの人影はこのひとつきくらい見ていたが複数かどうかは判別できなかった。
竜作はギロリと睨むような目で単刀直入に聞いた。

「なあ正太郎、お前と鉄人に日本が守れるか」

「……わかりません」

聞くところに聞いた少年探偵らしくない少年の言葉に竜作はわずかに憐憫の瞳を見せた気がした。
いま世界はフォーグラーに怯え日本も例外ではない。
そこへ日本の守り手である鉄人までもアンチシズマドライブの影響で暴走したのだ。
人間というのは恐怖に弱い。古来、火を手にしたのは獣に襲われないため。だが、いま人々はシズマドライブという火を失われようとしている。
正太郎から鉄人という相棒まで奪うのかも知れない恐怖があった。

No.12 16/11/30 14:39
作家 

村雨竜作は夜のうちに姿を消した。
村雨健次からいまも正太郎は忘れていないという言伝てを残して。
翌朝、敷島邸に向かうと鉄人は青い姿そのままに真新しいような外観になっていた。

「おお、正太郎くん。鉄人は直したよ、動かしても構わないよ」

挨拶もそこそこに敷島博士は正太郎を鉄人のもとに連れていった。
だが、リモコンを手にする正太郎には内に恐怖や不安がいつの間にか芽生えていた。
何に……?
わからない。鉄人を操る自分かあるいは鉄人に対して、もしかして……。
無意識に目を向けたのは敷島博士だったことに声により気づく。

「正太郎くん?」

いえ、とちいさくうつむきながらリモコンのスイッチを入れおそるおそる鉄人を動かす。
鉄人は目を覚ますようにガオーッとシズマドライブからの動力炉からのエネルギーにより両腕をあげた。

「鉄人……!」

正太郎の顔には喜びと戸惑いの色があった。そこへ大塚署長が慌てたように駆けつける。

「正太郎くん!敷島博士!」

「大塚署長!」

喜びを見せる正太郎の顔に大塚署長、彼もまた戸惑いを見せた。
実は昨夜、御前会議に呼ばれたのだ。
御前会議----。
その実体を知る者は少ない。
大塚署長は昨夜とある料亭に呼ばれた。
そこにいる者はひょっとこやおかめ、能面などありとあらゆる面をつけているが彼らは首相や大臣、政治家や官僚などを裏から操る権力者たちであった。
本当は何者かは大塚にもわからない。だが、彼らなくしては戦後の日本復興はなかったとも噂された。
御前たちと呼ばれる者たちの言葉は一様にひとつだった。

『鉄人は動かしてはならぬ』

大塚は自らその言葉を伝えることに葛藤していたが、伝えなくてはならないのも自分だけで

No.13 16/12/01 09:03
作家 

『鉄人を動かしてはならぬ』

大塚は御前会議での言葉を正太郎に伝えた。
その言葉にさすがの少年探偵は言葉はなかった。もちろん正太郎は御前会議の存在は知らない。しかし法の番人でもあり警察組織を司る大塚署長の言葉の言葉に驚き少年の表情は蒼白していた。
代わりに口を開いたのは敷島博士だ。

「なぜですか!?大塚署長。鉄人を動かしてはならないだというのは」

「いや、それは……」

「大怪球フォーグラーによりヨーロッパやアメリカが壊滅的にやられこの極東アジアひいては日本にも影響ある。あのフォーグラー、戦えるのは北京支部のジャイアントロボ、……そして日本支部の鉄人しかないのでは」

「それはそうなんじゃが……」

国際警察機構本部からは鉄人や正太郎についてはいまのところはなにもない。
が、御前会議には立場上逆らえない。ましてやそれを伝えることは大塚にはできなかった。だから口を濁し歯切れはよくない。
蒼白した正太郎ではあるが、ゆっくり大塚を見て声を震わしているようでもあった。

「大塚署長がそう言うのであればしたがいます……。おそらくシズマドライブの暴走をこの国の人たちは懸念したのでしょう」

正太郎がいま社会の壁にぶつかりながらようやく出した言葉がそれであった。“この国の人たち”、御前会議の存在は知らないだろうが聡明な少年探偵の頭脳や勘はふしぎと察しているのでは、と大塚は感じた。

「しかしこのままでは大怪球フォーグラーに日本やアジアがやられては……」

うむ、と大塚は敷島の言葉にちいさく唸る。
正太郎はしばし青い巨体の鉄人を眺めていた。修理を終えても戦えない。
考えようによってはシズマドライブの暴走もなく戦わなくてすむ。
妥協、少年探偵である正太郎にとってあまりいい言葉ではないが妥協という言葉が浮かんでは消えた。
大塚署長にもひとに言えない事情もあるだろう。
現場における相棒という点では鉄人も大塚署長もおなじかもしれないが、心のどこかになにかに裏切られたという気持ちがあったのも否めない。
それはもしかしたら自分自身にもだ。
この一件を健次がいない竜作率いる村雨一家は耳にしこう吐き捨てた。

「かぁ〜。なにもしないでやられろってか!フォーグラーのぼんぼんに!!」

酒瓶が割れる音がした。

No.14 16/12/17 10:48
作家 

大怪球フォーグラーの内部操縦室にいる幻夜は部下から日本のことを知った。

「なに?鉄人が封印。日本という国はどこまで臆病なのだ。だが、大怪球フォーグラーが止まることはありえない」

彼は口許に笑みを浮かべながら操縦室内にある二本のアンチシズマドライブを見つめる。
そうだ、私は父が正しかったことを示すのだ。
その瞳にはわずかに少年のような輝きと哀しい明かりが内にある。だが気づく者はいない。
フォーグラーはゆっくりゆっくりとだが大平洋上を不気味に静かに進んでいた。日本を壊滅させるために……。
その頃、鉄人は敷島邸の地下で封印作業に入っていた。
その様子は神話に出てくる巨人やゴーレムが封印されるのに似ていた。手足は金属製のアームで拘束され首や背中のジェット、脚にいたるまでまるで闇に葬ろうとせんばかりだ。
だが、鉄人はもの言わぬひとのつくりし巨人。
ただ正太郎は敷島博士および彼にしたがう部下を頑なに見つめている。その瞳には鉄人にごめんなさいと言っているかのようでもあった。
大塚は鉄人の封印作業を正太郎と共に見守りまた敷島邸を警護する指揮にあたっていた。
彼もまたやりきれない思いはあった。
御前たちの意図するところはわからない。かつて日本は敗戦の痛みや重さを堪え高度成長期を経ていまにいたる明るさ希望がある。
それを今度は得体の知れない大怪球フォーグラーに再びこわされんとしてるのに唯一の守護神鉄人は封印されていく。
大塚は一言正太郎に謝る。謝ってもどうしようもないかも知れないが。

「すまん正太郎くん。わしは大人として恥ずかしい。君の活躍を知りながら君に悲しい思いをさせてしまう。悪い大人じゃ……」

「大塚署長……」

正太郎は大塚がなにか複雑な思いを抱えていることを少しだが察した。
彼が鉄人の活躍ひいては自分と鉄人こそが日本の治安を守っている理解者でもあった。
だが思う。いま自分は守っていると思ったが、傲りになって慢心があったのかもしれない。
大塚の気持ちは自分の気持ちと離れてはいないかもしれないが、拘束される鉄人は慢心した自分かもしれないとどこか自分と鉄人を重ね合わせた。

「封印は完了したか」

はい、と作業員たちは敷島博士に答える。
鉄人、と正太郎はひとり呟いた。
鉄人はこれから地下の闇で眠るのだ。

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