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黒と白のグラデーション

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てん( zEsN )
15/03/02 18:54(更新日時)

俺が17歳

彼女は20歳

俺は高校生

彼女は大学生

たったそれだけの差が

遠かった

14/12/14 20:58 追記
「ため息はつかない!」に登場した黒田さんと白井さんの出会いからのお話です。
よろしかったら「ため息はつかない!」もご一読ください
http://mikle.jp/threadres/2143875/

14/12/23 15:17 追記
【感想スレ】
http://mikle.jp/threadres/2169945/
よろしくお願いします

No.2167443 14/12/14 20:50(スレ作成日時)

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No.151 15/02/23 13:18
てん ( zEsN )

年明けから3月にかけて建設業界は繁忙期で、俺は土曜も出勤することが多かった。
涼とは時間を作ってときどき会っていたが、青木や赤城さんとは忘年会以来飲みに行ったりする機会はなかった。

青木も忙しいようだったが、3月の下旬の土曜、メールがきて飲みに誘われた。
その日も土曜出勤だったが、夕方に仕事は片付き、俺もいい加減飲みに行きたい気分だったので、よくいく池袋の焼き鳥屋で青木と会った。

「悪いな、リョウちゃんと会う約束とかなかったのか」

相変わらず青木はそんな気遣いをしてくれる。

「子ども達と実家のお母さんと出かけてるよ」

「それならよかった」

「忘年会以来だもんな」

俺がそう言うと、青木は少し顔をしかめた。

「どうしたんだよ」

「その忘年会のときだけどさ、例の藍沢って子がいただろ」

「ああ。赤城さんが追っ払ったよな」

「また会ったんだよ」

「藍沢と?」

「X運送に俺の指導者だった先輩が出向してるんだけど、その人と飲んでるときになぜか彼女が現れてさ。よく分からないんだけど、俺と飲んでるって聞いて勝手にきちゃったらしいんだ」

「へぇ」

「藍沢がX運送でトラブル起こしたときは先輩のアシスタントだったんだけど、久し振りに連絡がきたと思ったら、なぜかそんなことになったらしくてさ。なし崩しに俺まで連絡先聞かれて、それから毎日メールがくるんだよ」

ここ最近A商事でも涼の噂は沈静化していたし、忙しかったせいか、藍沢と接触する機会もなかった。

でもなるほど。
藍沢は青木に目をつけたということなのか。

「モテて良かったじゃないか」

俺がそう言うと青木は俺の頭を平手で引っ叩いた。

「勘弁してくれよ。俺、ああいうタイプは苦手なんだよ」

「女の子全般の扱いが苦手なんだろ」

「そんなことないよ。さっちゃんとは気軽に話せる」

そう、青木は赤城さんとは気が合うようなのだ。

No.152 15/02/23 15:30
てん ( zEsN )

「じゃあ赤城さんに相談すればいいじゃないか。俺は藍沢とは親しいわけじゃないぞ」

「さっちゃんと連絡取れないんだよ」

青木は少し情けない顔をした。

「なんでだよ。2人で飲みに言ったりしてたんだろ」

「リョウちゃんが言ってたけど、さっちゃん機種変して携電もメアドも変わったらしいんだ。俺んとこには連絡きてないんだよ」

青木に言われて俺も思い出した。
そう言えば先日赤城さんから携電とメアドの変更のメールが来ていた。
そんなことはあまり気にしていなかったが、青木に連絡がいっていないとは思わなかった。

「青木、赤城さんに嫌われるようなことでもしたのか」

この男に限ってまずそんなことはないだろうと思いながらもそう聞いた。

「するわけないだろ。正月にも新年会っていって2人で飲んだんだ。そのあとは忙しくてあんまり連絡もしてなかったけど、飲んだときは普通だったし、彼女を怒らせるようなことは言ってないと思うんだけどなぁ」

ほぅ。
俺の知らないところで仲良くやっていたんだな、と一瞬ニヤけそうになったが、青木が落ち込んでいるようなので笑うわけにもいかない。

「藍沢が青木の追っかけを始めたから、赤城さんは関わりたくなくて、とかか?」

「なんでだよ。俺、藍沢なんてどうでもいいよ。そもそも藍沢は黒ちゃんのことが好きなんだろう?俺に連絡してくるのは、俺をダシにして黒ちゃんに近付きたいんだろうと思ってたよ」

「ここんとこ俺の周りでは藍沢は大人しいぞ。緑さんにクギ刺されたのもあってか、噂も落ち着いたしな。俺には涼がいるし、だったらフリーの青木にしよう、ってとこじゃないのか?」

「俺は黒ちゃんみたいに若い女の子からモテるタイプじゃないんだよ」

青木はそう言ったが、青木は決して女の子にモテないわけじゃない。
誰にでも優しいし、顔はいかついが不細工ではないし、背も高くて男らしいタイプが好きな女の子には人気があるだろう。
仕事でも有能なほうだし、同世代の男の中では収入だって悪くないはずだ。

藍沢が目をつけても不思議ではない。

「赤城さんの連絡先、教えようか。ただ単に忘れてるだけかもしれないぞ」

「リョウちゃんにも黒ちゃんにも教えてるのに、俺だけ忘れるか?女の子の連絡先を他人から聞くもんじゃないだろ」

No.153 15/02/23 15:57
てん ( zEsN )

「赤城さんみたいな子が理由もなく付き合いぶった切ったりしないだろ。なんか心当たりないのかよ」

俺がそう言うと、青木は飲みかけのサワーに口をつけて少し考え込んだ。

「………俺、好きな人がいたんだよ」

青木の言葉に俺は思わず涼の顔を思い浮かべた。

「へぇ。初耳だな」

「まぁいろいろあって、その人のことは諦めたんだけど、さっちゃんにその話はしてるんだよ。昔の、同棲してた彼女のことも話したけど。それなのにさっちゃんのこと誘ったりしたから、軽い男だと思われたのかもしれないな」

青木が軽いなら、世の中の男は空気よりも軽い男ばかりだろう。
38歳にもなって、なにも恋愛経験がない男のほうがおかしいということくらい、赤城さんだって分かってるはずだ。

そして俺は、やっぱり青木は涼を好きだったんだと確信した。

青木はそんなことは絶対に認めないだろうが。

でも、青木が涼を好きだったと赤城さんが知っていたら、青木がこんな風に考えるのも自然なような気がした。

たぶんいま青木は赤城さんを好きになっているんだろう。

俺から見ても、赤城さんはいい子だ。
一緒に仕事をし、そして涼や青木と絡んで仕事以外でも親しくする機会が増えて、やっぱりいい子だと思う。
涼などはべた褒めだ。

だけど俺が余計なお節介をするわけにもいかないだろう。

俺が考えた通り、青木が本当に涼を好きだった時期があり、そしていまは赤城さんを好きになっているのなら、俺が出しゃばるのはなんとなく青木に失礼なような気がした。

「そのうち涼が赤城さんと飲みたい、って言い出すよ。そのときなら青木も来やすいだろう?ゴールデンウィーク前までには、仕事もひと段落するだろうし」

「まぁ、そうだな」

もっと上手く青木を元気付けてやりたかったが、こんなことを言うのが精一杯だった。

No.154 15/02/24 13:04
てん ( zEsN )

4月になり、A商事にも新卒の社員が何人か入社した。
俺も営業担当になった新入社員を指導することになった。

それなりにバタついたが、仕事の絶対量は繁忙期よりは減り、一息ついた感じだ。

「明日、赤城さんとビッグサイトに行ってきてよ」

ある日、少し用事が長引いて出先から戻り、帰り支度をしていると、課長に呼ばれてそう言われた。

「ああ、展示会ですか」

俺のところにも建材の展示会の案内がきていた。

「赤城さんは現場に行く機会もないしね。展示会にいけば建材の現物も施工サンプルも見られて勉強になるから」

赤城さんは上の人間からも期待されているんだろう。
緑さんが退職し、そのあとを引き継げるのは赤城さんしかいないのだ。

俺も時間があったら展示会へは行くつもりだった。

確かX商事のブースもあるはずだ。
青木は展示会の担当ではないが、顔を出すことはあるだろう。

『さっちゃんから連絡きたよ』

嬉しそうな青木から電話がきたのは、先週のことだ。

「へえ、よかったじゃないか」

俺はそう言ったが、内心青木の嬉しそうな声を冷やかしてやりたい気分だった。

赤城さんから連絡がきて2人で飲んだらしい。
どうやら藍沢絡みで赤城さんにもとばっちりがいき、赤城さんが怒って電話してきたようなのだが、例によって藍沢はひとりよがりな動きをしていたらしく、赤城さんが音信不通だった件もなんとなく有耶無耶になり、仲直りというか、まぁ楽しく飲んだということだった。

『だけどさ、さっちゃんが元彼と会ったって聞いてさ』

そこで青木のテンションは一気に下がった。

「そりゃあ赤城さんにも元彼くらいいるだろう。ヨリ戻すとかって話?」

『いや、そいつ結婚して離婚したみたいなんだけど、まぁ要はさっちゃんとヨリ戻したかったんだろうな。さっちゃんは相手にしなかったみたいだけど』

「ならいいじゃないか」

『あ、そう、だな。うん』

電話の向こうで青木が焦っているのが分かった。
多分元彼の話まではするつもりじゃなかったのに、口が滑ったんだろう。

どうやら青木は本気で赤城さんを好きらしい。
だから赤城さんから連絡がきて俺に報告してくるし、元彼と会ったと聞いて明らかに落ち込んでいる。

本当ならからかってやりたいところだが、青木を応援してやりたい俺としては、そうもいかなかった。

No.155 15/02/25 15:07
てん ( zEsN )

翌日、俺は朝出社すると制服姿の赤城さんを連れてビッグサイトへ向かった。

会社を出るときに藍沢に見つかり、赤城さんが例によって苦虫を噛み潰したような顔をしていたのがおかしかった。

「彼女も相変わらずだね」

車を出して俺がそう言うと、助手席に座った赤城さんは小さくため息をついた。

「藍沢さんですか?」

「うん。青木からなにか聞いてる?」

俺のほうから水を向けてみた。

「藍沢さん本人からも聞いてます」

赤城さんはゲンナリした口調で言った。

「青木が首傾げてたよ。『なんで毎日メールがくるんだろう』って」

「藍沢さん、積極的だから」

「赤城さん、青木に携帯変えたの知らせてなかったんだって?」

俺がそう言うと、赤城さんは「しまった」とでも言いたげな顔をした。

「ウッカリ忘れてたんですよ」

澄ました顔でそう言いながらも、赤城さんはなぜか頭をドアにぶつけた。

会社では割と落ち着いた雰囲気なのに、青木の話を振られて動揺している赤城さんは可愛かった。
だけど赤城さんに悪いので、笑うのは我慢した。

「あいつも不器用だよな。心配でしょうがないなら、俺とか涼ちゃんに聞くとかすればいいのに」

「私がウッカリしてたのが悪いんですよ」

「こないだ久しぶりに会ったんだって?青木から電話がかかってきてさ。『さっちゃんから連絡きたんだよ』って、嬉しそうに」

思い出すとつい笑ってしまう。
あのときの青木は本当に嬉しそうだった。

「はぁ」

赤城さんはなんとなく不満そうな声を出した。

「青木、女の子の扱い、苦手だからな」

「そうなんですか?」

「それでもあいつ、それなりにモテるんだよ。だけど、手酷い失恋してから、ちょっと慎重になってるみたいだな」

No.156 15/02/25 15:28
てん ( zEsN )

これは本当だ。
青木はいいヤツだ。
だけど、恋愛に関しては不器用な男だ。

同棲していた彼女のことを青木がどれほど好きだったか、俺は知っている。

そうだ。
俺だってかつては忍のことが好きだった。
あのまま忍と別れることがなかったら、きっと俺はいま涼とは付き合っていないだろう。

本気だったから、俺も青木もそのあとの恋愛が上手くいかなかったんだと思う。

だけど、昔の話だ。

俺がいま大事なのは涼だし、青木はその涼に心を寄せた時期があり、いまはきっと赤城さんのことが好きなのだろう。

その青木は、不器用ゆえに、悩んでいるに違いない。
誠実な男だから、切り替えが上手くできないんだ。

俺は赤城さんのことを同僚としてしか見ていなかったが、最近になってプライベートでの付き合いも増え、いい子だと思うようになった。

青木だってそう思うから、俺の知らないところで親しくなっていったんだろう。

青木も赤城さんも立派な大人で、しかも独身だ。もちろん2人とも未婚だ。

涼が俺の想いを受け入れるのに葛藤したような足枷はなにもないのに、青木はなにを迷っているんだろう。

「青木さんは元カノのこと、そんなに好きだったんですか?」

ほら。
赤城さんも青木のことを気にしているじゃないか。

「結婚するつもりでいたからな。傷ついたと思うよ。俺も信じられなかった。青木の元カノ、別れた3ヶ月後には違う男と婚約したらしいから。メタフレのメガネが似合う、クールな感じの、いかにも仕事ができそうな子でさ。青木が言うにはツンデレ気味だったみたいだけど、それが金持ちと結婚して、あっさり専業主婦になっちゃうんだもんな」

そういえば青木は俺にこの話はしていない。
緑さんから聞いた話だ。
だけど、赤城さんはホイホイと青木本人や周囲に話したりはしないだろう。

赤城さんなら、青木の誠実なところを汲んでくれそうな気がした。

No.157 15/02/25 15:39
てん ( zEsN )

赤城さんはしばらく窓の外を見ながらなにか考えているようだった。

「黒田さんはいいなぁ」

ぽつ、と赤城さんが口を開いた。

「?」

「だって昔から好きだった白井さんと付き合ってるんですもんね」

俺に矛先が向いてしまった。
青木のことをペラペラ喋った罰だろうか。

でも、この話の流れで俺と涼のことが出るのは、やっぱり赤城さんも青木に好意があるのかもしれない。

照れ隠しに俺は、涼の次女から嫌われていることを話した。

赤城さんは同性ということもあって、なんとなく次女の気持ちが分かるようだった。

「彼女の父親に嫌われた彼氏みたい」

上手いことを言うと思った。

「気分的には極めてそれに近いね」

そう。
なにもかも順風満帆な恋愛など滅多にない。

忍とは順風満帆に見えて、家の事情で別れを選ぶという結末が待っていた。

涼とは回り道だらけで、紆余曲折の末、やっと想いが通じたと思ったら、ちゃんと障害が用意されている。

それでも俺は涼が好きなんだ。

青木だって同じなんじゃないだろうか。

過去の失恋、涼への想い、そしていま赤城さんとの微妙な関係。

青木みたいないいヤツにはこれから順風満帆な恋愛が待っているんじゃないだろうか。

No.158 15/02/25 16:58
てん ( zEsN )

「青木はさ、前の彼女と別れてから、女の子の話なんてしたことなかったんだ。それが、赤城さんと仲良くなってからは、よく赤城さんの話をしてる」

俺がそう言うと、赤城さんが不満そうな雰囲気になったような気がした。

青木推しが過ぎたか。
俺が青木に頼まれてお節介をしていると思われたら困るが、赤城さんに青木のことを知ってもらういい機会じゃないだろうか。

「誤解しないでよ。別に青木が俺になんか言ってるわけじゃないんだ。ただ、こないだ赤城さんが元彼に会ったらしい、って心配してた」

「青木さんたら、そんなこと黒田さんに言って」

「赤城さんから連絡きて会った、ってテンション上がってたから、ちょっとクチ滑った感じだったんだ。許してやってよ」

「別に、怒りはしませんけど。青木さんにもちゃんと経緯話したのにな」

言葉通り、赤城さんはそれほど気分を害しているわけではないようだった。

「うん。だから、あいつ不器用なんだ。感情隠すの下手だし。でも、ホントいい奴だから、あいつには幸せになってもらいたんだよな」

不器用だから、青木が涼を好きだったんじゃないかと、俺にも分かった。

そしていまは赤城さんを好きになることを葛藤しているんじゃないかと。

俺もお節介だな。

だけど、そのあと窓の外を眺めながらなにかを考えている赤城さんを見て、もしかしたら俺のお節介は青木の助けになったかもしれないと思った。

赤城さんも、涼も、分かっていない。

男は女性陣が思ってるより、ずっとガキで単純で、だけど変なところで繊細なんだ。

それでいて、惚れた女を手に入れて、自分の手で守ってやりたいと思っているんだ。

そんな馬鹿な男共を、涼も赤城さんも、笑って受け入れてくれるんだろうか。

No.159 15/02/26 13:24
てん ( zEsN )

首都高を走り、車は東京ビッグサイトに着いた。

車を駐車場に入れ、展示会の会場に入り、赤城さんを案内しながら、取引先のブースに立寄ったりしていたら、やっぱり青木に出くわした。

「えっ、さっちゃん?来てたの?」

人の流れの中だったので、離れた所から女性の赤城さんは青木には見えなかったらしく、青木は面白いくらい驚いていた。

「青木さん、こんにちは」

赤城さんは特に驚いた様子もなく、青木に笑いかけた。

せっかく青木に会ったので、X機材のブースは青木に案内してもらうことにした。

X機材と、X機材の仕入先のブースで青木の説明を聞き、赤城さんは目を輝かせていた。

入社したころは派遣社員としてただソツなく仕事をこなしている印象だったが、最近の赤城さんは本当に仕事熱心だ。
緑さんが見込んだ通り、きっと赤城さんは優秀な事務員になるんだろう。

青木も赤城さんの熱心さにつられるように、いろいろと細かく説明している。

なんというか、2人とも真面目だ。
仕事で会っているのだから、もちろん浮ついた雰囲気などないのが当たり前なんだろうが、それにしたって柔らかい空気がもう少しあってもいいんじゃないかと、俺は勝手に思った。

青木と赤城さんと3人で昼食でもとるかと思っていたら、会社から緊急連絡が入った。

俺が担当している現場で、トラブルがあったようだ。

「クレームだ。現場に行かないと詳細が分からない。ゴメン、赤城さん、電車で帰ってもらえる?」

「分かりました。私は大丈夫なんで、早く行ってください」

さすが赤城さんは冷静な口調でそう言ってくれた。

「ゴメン。青木、またな」

俺は青木に挨拶して、駐車場へ向かった。

現場へ向かって車を走らせながら、きっと青木も営業車で来ているだろうから、このあと赤城さんを会社まで送ってくれるだろうと思った。
青木のいる支店へ戻る途中にA商事はあるのだ。

時間を考えたら、昼食も一緒にとれるだろう。

青木、クレームに感謝しろ。

そう言ってやりたくなって、俺は1人でニヤニヤした。

そこでまた携帯電話が鳴り、俺はハンズフリーで応答して頭の中を切り替えた。

No.160 15/02/26 17:15
てん ( zEsN )

「青木さんて好きな人がいたのね」

涼にそう言われて俺はギョッとした。

展示会に行った翌週の日曜日、涼の子ども達はめいめい遊びに出かけているということで、涼と待ち合わせて池袋で会った。

涼がお好み焼きを食べたいと言うので、デパートのレストラン街にあるお好み焼き屋に入ったところだった。

涼は金曜の夜に赤城さんと飲みに行っていた。
赤城さんは以前不動産屋で働いていたことがあるそうで、涼は妹が借りている賃貸物件のことで相談しようと会ったらしい。

涼は赤城さんを最初から気に入っているし、赤城さんのほうも年上の涼を慕っているという風で、2人はずいぶん仲良く付き合っているようだった。

「そりゃ、青木にだって、好きな人くらいいるだろう」

涼の口調から、青木が好きだったのは涼自身だということは知らないのは分かった。
赤城さんもそんなことは涼に言わないだろう。

「青木さんは赤城さんのことを好きなんだと思うんだけど、青木さんたら前に好きな人のことを赤城さんに相談してたみたいなのよ。あの2人、いい雰囲気だと思ってたのに、なかなか進展しないと思ったら、青木さん、そのせいであと一歩が踏み込めないみたいね」

涼はウーロン茶のグラスをストローでかき混ぜながら愚痴のように言った。

内心、涼も俺が考えたのと似たようなことを考えているんだなとおかしくなった。

青木のためにも、赤城さんのためにも、そして俺のためにも、青木が涼を想っていたことは知らせないほうがいい。

「赤城さんはどうなんだろうな。この間一緒にビッグサイトに行ったときに少し話したんだけど、彼女もそんなガツガツいくタイプじゃなさそうだしな」

「そうそう、青木さんに聞いたんだけど、藍沢さん、またやらかしたんだって?」

展示会の日、俺がクレーム対応で赤城さんと青木を置いて帰ったあと、青木は赤城さんを会社へ送るついでにウチの課長に挨拶に寄ったそうだ。

そのとき、例によって藍沢が現れて、赤城さんにイチャモンをつけた挙句、コーヒーをぶっかけるという暴挙に及んだらしい。

俺は帰社したあとに緑さんからその話を聞いた。

No.161 15/02/27 15:40
てん ( zEsN )

「青木もその場に居合わせたらしいんだけど、怒ってたよ」

「ちょっと可哀想だけど、藍沢さんは青木さんのタイプじゃないわよね」

「普通の男には荷が重いだろう。俺も無理だな」

「そう?」

涼がそう言ったときに、店員が注文したお好み焼きを運んできて、涼は嬉しそうに箸を取った。

「そう、って、俺は藍沢みたいな子は苦手だよ」

涼の言った言葉が気になって、俺はお好み焼きには手を付けずに言った。

「だって謙ちゃん、わざわざ私みたいなのと付き合ってる」

涼は笑いながら俺の皿にお好み焼きを取り分けた。

「いい加減そういうこと言うのやめろよな。涼は涼なんだから」

俺は少し腹を立ててそう返した。

いつまで涼は自分が年上のバツイチであることに拘るんだ。

「あ、ゴメン。そういうことじゃないのよ」

涼は俺の感情を読んだように、顔の前で手を振った。

「でも、第三者から見たら、やっぱり年上でバツイチで子持ちなんて、普通の男の人には荷が重いと思うの。私だって、離婚してすぐに謙ちゃんと付き合うなんて、やっぱり世間からは悪く言われて当たり前なのよね」

「まぁ、普通はそう、なのかもな」

「うん。だから青木さんなんて、前に好きな人がいようが、そんなに気にする必要ないのに、って思うのよ。私や謙ちゃんなんか、言われ放題でも平気でいるのにね。青木さんも赤城さんも、お互い遠慮ばっかりしてないで、少しは私の図太さとか、藍沢さんの素直さを見習えばいいのよ」

「藍沢のあれを素直っていうのは納得いかないな」

俺はつい笑ってしまい、やっとお好み焼きに箸をつけた。

そのとき、涼が脇に置いていたスマホが鳴った。

涼はチラッと見て、すぐにスマホを手に取ると、満面の笑みを浮かべた。

「なに?」

「赤城さんからLINE。連休に青木さんとお出かけだって」

「へぇ」

連休に出かける、つまりデートというわけか。

どこへ行くのかは知らないが、青木はさぞ喜んでいるだろう。

No.162 15/02/27 16:07
てん ( zEsN )

抜けるような青空の日だった。

花が舞う。

祝いの声が飛び交う。

その中を新郎新婦が恥ずかしそうに腕を組んで歩いてくる。

俺は涼と一緒に花びらを撒きながら、目を合わせて笑った。




「赤城さん、綺麗だったね」

「青木のヤツ、デレデレだったな」

「だって、付き合い始めてまだ2年よ。やっと想いが通じた赤城さんと結婚できるんだもの。デレデレにもなるでしょ」

「子どもでもできたら、もっとデレデレだろうな」

「そうだね。ちょっと羨ましい」

「俺は涼がいれば、それでいいよ」

「………あのね、謙ちゃん」

「なに?」

「ヒナがね」

「ヒナちゃん?」

「うん。この間謙ちゃんがツーリングのお土産で、ご当地キャラのイヤホンジャック買ってきてくれたでしょ。お礼がしたいんだって」

「ヒナちゃんが?」

「うん。だから一緒に食事でもできないかな、って。ヒナと風花と、4人で」

「………でも、ヒナちゃん、あれだけ俺のこと嫌ってたのに平気なのか」

「まだ複雑な気持ちはあるらしいんだけど。最近ヒナも彼氏ができて、ちょっと考えが変わったみたい。ヒナは高校を卒業したら、看護学校の寮に入るつもりみたいだし、風花も学生寮に入ったでしょ。なんか、私が1人になるのが心配になったみたい」

「俺にとっては、ヒナちゃんが恋人の父親並に怖い存在なんだよな」

「そう?ヒナは謙ちゃんに会って、見極めるつもりらしいよ」

No.163 15/02/27 16:31
てん ( zEsN )

「やっぱり怖いな」

「ふふふ。でもね、ヒナはそれなりに謙ちゃんのこと信用してくれてるみたい」

「嫌われてたのに?」

「嫌ってるから点が辛いのよ。『お母さんは年上でバツイチで、しかも気の強い人なのに、しかも子どもに嫌われても別れないって、黒田さんって根性あるのかな』とか言ってた」

「ヒナちゃん、俺のことよく分かってるな」

「ヒナは体育会系だから、根性のない男の子は嫌いなのよ」

「いいよ、食事、行こう。ヒナちゃんと風花ちゃんになにが食べたいか聞いておいて」

「謙ちゃん」

「ん」

「もう少し待っててくれる?」

「馬鹿だな。20年以上待ったんだから、あと4、5年くらい軽く待てるさ」

「いつか謙ちゃんと一緒に暮らしたい」

「一緒に暮らすんだろう?」

「ずっと一緒にいたい」

「ずっと一緒にいてくれよ」

「おじいさんとおばあさんになっても?」

「涼のシワシワになった手を引いて歩いてやるよ」

「シワシワ、もうそろそろ危ないかも」

「涼は綺麗だよ」

「お世辞?」

「昔から涼は綺麗だよ」

「バカ」

「どんなになっても、俺は涼が好きだ」

「私も」

「死ぬまで一緒だ」




☆☆☆了☆☆☆

No.164 15/02/27 16:33
てん ( zEsN )

完結いたしました。
最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
よろしかったらご感想をお願いします
( ´ ▽ ` )ノ
【感想スレ】
http://mikle.jp/threadres/2169945/

No.165 15/02/28 15:12
てん ( zEsN )

「まとめスレ」を閉鎖して「まとめスレ改」で立て直しました。

以前書いたお話にご興味おありの方がいたら、お暇つぶしにのぞいてみてください。

http://mikle.jp/threadres/2191908/

No.166 15/03/02 18:54
てん ( zEsN )

次のお話を始めました。
「ともだち」というタイトルです。
今度は純愛路線ではないお話で、あまり綺麗な人間関係ではなく、いままでのお話とは雰囲気が違うのでお好みでない方もいるかもです。
一応テーマは「男女の友情」です。
よろしかったらお付き合いください。
http://mikle.jp/threadres/2192583/

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