return
こんな毎日もう嫌だ。
できるわけないけど
もし…できるなら…
過去に戻ってやり直したい。
中学入学前?
それとも小学校低学年ぐらい?
もっと前かな…
人生がくるい始めたのは
いつ頃からだろう…
不定期な更新になると思います🙇💦
誤字・脱字、表現力の乏しさ…等々、お許し下さい。
よろしくお願いします。
新しいレスの受付は終了しました
主さんお疲れさまでした
何方かも書かれていましたが
展開が読めない所が 面白くハマりました
実は 主人公の男性は別世界の 希美子の夫と 同一人物ではないのかとか…
最後はハッピーで終わりでしたが
ビックリ😲仰天の展開も面白かったかも
主さんの 感性
創造性 凄くいいです
また続きが読みたいと思う作品を有難うございました🙏✨
是非次回作お願いします 心待ちにして おります 有難う✨
- << 210 🌱ゆき子さん 最後まで読んで下さって、ありがとうございます🙇 私自身ハッピーエンドの物語が好きなので、ついハッピーエンドにしてしまいます😁 この作品は主人公が男性ということもあり、内容が不安でしたが、読んで頂けて本当に嬉しいです (≧∇≦)❤ やっぱり主人公は女の子の方が書きやすいので、次回は女の子にしたいな~と思っています😃
リンさん。お疲れさまでした🙇
本当に本当に楽しみにしていたので、ちょっと淋しい気もします😢
レスが進み…読む。
「何でここで終わるの😱気になる気になる」の繰り返しでした。
「…つづく(って書いてなかったけど)」
が絶妙過ぎでしたよ☺
次の作品楽しみにしています。
番外編も良いですねぇ✨
礼七は勿論、個人的には凌司の目線も気になります😁
ウズウズしちゃいますが、まずはゆっくりして下さい。
- << 200 🌱嵐ちゃんさん 最後まで読んで下さって、ありがとうございます❤ いつも寝る前にレスすることが多いんですけど、内容を考えている途中で寝てしまうことが度々あって、中途半端なところで終わってしまうこともありました💦 楽しみにして下さって、本当に嬉しいです (≧∇≦)✨ 今、礼七の続編を考えていて、私もウズウズしてます😁😁
主さん💕完結おめでとうございます🙇
お気に入りに設定して、とても楽しみに拝見させてもらってました✨構成や文章力が、ものすごく確立されてて、とても引き込まれました😃
明日からもう読めないと思うと寂しいです😭でも、完結していただけない作者様の多い中💦ハッピーエンドなラストまで書き上げて下さりまして本当に感謝です🙇
図々しくてスミマセン🙇💦もし今後、少しでも続編や番外編を書いていただけたら💕と期待しております💓
- << 195 🌱パムさん 最後まで読んで下さって、ありがとうございます🙇 私の方こそ感謝です✨ 続編や番外編のことは全く考えていませんでしたが、他の登場人物の目線で書いてみるのも面白そうですね⤴ また書きたくなってきました❤
主のリンです🙇
もし最後まで読んで下さった方がいましたら…
ありがとうございました🙇
体験したことのない話を書いてみたくて、挑戦してみましたが…
すごく難しかったです💦
訳の分からない内容になってしまって、恥ずかしいです⤵
でもなんとか完結できたのでホッとしています。
ありがとうございました。
「ちょっとまだ迷ってるんだけど…」
と友子が言い出した。
俺は慌てて
「え💦
れな!いい名前じゃないか!
なあ、季美子!」
季美子に同意を求めた。
「れなって読むの?
私、なんて読むのか分からなくて💦」
えー⁉
友子もビックリしたような顔で、
「私達も読みを迷ってたの。
『あやな』にしようか『れいな』にしようか…」
……嘘💧💧
「『れな』っていいね!
おじいちゃんセンスあるよ(笑)
じゃあ『れな』に決定!」
…また俺が名前決めてしまった…
本当にあっちの世界は存在するのか?
完
友子は無事退院し、しばらくは我が家で過ごすことになった。
名前が早く決まらないかと俺はウズウズしていた。
「おい、友子。
赤ちゃんの名前決まったのか?
早く決めないと赤ちゃん呼べないだろ。」
俺は待ちきれず友子に聞いた。
「そうだよね。
パパとも話し合ったんだけど、多分この名前に決定。」
「どんな名前なの?」
季美子もやってきた。
友子はメモ用紙に名前を書き俺達に見せた。
「じゃ~ん。」
メモ用紙には
『礼七』
と書いてあった!
ヨシ!
俺は心の中でガッツポーズをした。
ここにいる礼七を幸せにできたら、あっちの世界の礼七も幸せになれるような気がしていた。
そして数ヶ月後…
友子が元気な女の子を出産した。
おおー礼七だ!
…っと、
今回は凌司の時のようにうっかり名前を言わないようにしないとな💨
俺の意見抜きで礼七という名前に決まってこそ、この子は礼七なんだ!
この世界では絶対に幸せにしてみせる!
でもこうしてまだこっちの世界では存在しない礼七から手紙をもらったことで、別の世界があるということは証明された。
礼七が入れ替わった時、意識がないふりをしながら、どうにかしてこの手紙を書いたんだろうな…
まあ俺と入れ替われたぐらいだから、何でも出来そうだな💧
もうあっちの世界に行くことはないだろうし、礼七達の幸せを願うしかないよな…
不思議な体験だったな…
…そうか。
俺が礼七の母親を電話で怒った時、母親が友子だということも、俺が死んでるということも知らず、
確か俺、自分の名前を言ったよな…
友子にとったら本当にビックリしただろう💧
幽霊に怒られてるようなもんだからな…
俺が死んでいるもうひとつの世界…
ホントに存在するんだな…
今頃になって、ぞわぞわっと鳥肌が立ってきた。
ちょっと怖いな💧
なんだよもう一つの世界って💦
俺の死んでる世界は凌司も礼七もつらいばかりだから、もう一つの世界なんてなかったらいいのに…
おじいちゃんへ。
ママを叱ってくれてありがとう。
死んだおじいちゃんに叱られて、ママもきっと変わってくれます。
私は毎日死にたいと思っていました。
凌司兄ちゃんも同じでした。
おじいちゃんが生きていたらな~とよく言ってました。
私もおじいちゃんが生きていたら幸せだったのかなとずっと思っていました。
おじいちゃんに会ってみたいと毎日考えていました。
そしたら本当におじいちゃんに会えました。
これから私は幸せになると思います。
おじいちゃんありがとう。
またね。
礼七より。
1枚の便せんが入っていた。
可愛らしい子どもの字…
入れ替わった礼七が書いたものだとすぐ分かった。
この名付けの本。
俺が入院していた部屋に置いてあった。
病室で看病していた季美子が、少しでも前向きな気持ちになれるようにと、名付けの本を持って来て見ていたと言っていた。
『礼七』
『礼』は礼儀正しい子に…みたいな感じか?
『七』はラッキーセブン?
などと思って本を見ていたら、本の間に封筒が挟んであった。
なんだ?この封筒は…
不思議に思いながら封筒を手に取る。
封筒には何も書かれていない。
もしかして季美子のヘソクリ?
封筒の中身を見てみた。
ヘソクリではなかった。
友子のお腹もだんだんと目立ち始めた。
孫が産まれるとなると、やっぱり嬉しいものだな~。
別に名前を考えようとかいう気持ちはなかったが(礼七に決まるだろうし)
俺は友子が産まれた時に買っていた名付けの本を探し出し、パラパラ見ていた。
何十年も前に買った本だが、本棚の奥に大事にしまってあった。
それからも俺は2人にあれこれ口を出した。
子どもに何かあった時、すぐに駆けつけることができるように、ウチの近くに住め。
友子には、家計簿を付けさせ無駄遣いを控えるようにしつこく言った。
タバコも絶対吸うな、2人に育児書も読ませた。
もちろん礼七の為…
礼七が楽しく過ごすには、母親である友子にしっかりしてもらわないと!
絶対にあんな母親にはさせない。
意地もあった。
「…えっと……」
2人は黙ってしまった。
結婚・出産…
若い2人がこれから先の生活のことや、保険のことなど考えているはずがないのは分かってる。
うかれる気持ちも分かる。
でも…
俺も甘い親。
可愛い娘のこと。
孫のこと。
旦那は交通事故にあい、病気で早くに亡くなってしまうことが分かっている。
今更結婚に反対もできない。
せめて、お金の面だけでも不自由なく…
と思ってしまう。
俺は2人に保険に入るように言った。
「これから二人で暮らしていける金はあるのか?」
俺は二人に聞いた。
「はい。
これから二人でアパートを借りて暮らします。」
佐々木がハキハキと答える。
「友子…
これから先、もし佐々木くんが事故にあったり、病気になったりしたら、どうするんだ?」
「え、
そりゃあもちろん看病するよ。」
…この二人は💧
大丈夫なのか?
「金はあるのか?
家を借りるのも敷金やらかかるし、電化製品もそろえなきゃいけないだろ?
事故した時の保険は?
生命保険や入院保険には入ってるのか?」
「まあ二人共座りなさい。」
俺も友子達とテーブルを挟んで向かい合うように座った。
季美子も俺達にお茶を出してから、俺の横に座った。
誰も何も喋らず、気まずい雰囲気だ。
しかし、俺の言うことは決まっていた。
俺は少し咳払いをして、声を整えてから話し始めた。
その時、ふと思い出した。
💡
そうだった!
この男、交通事故にあうんだよな?
早くにガンで亡くなっていたしな…
運命変わって長生きするかもしれないが…
…一気に結婚させたくなくなってきてしまった。
でもなあ💧
人はみんな死ぬものだ。
あ、それなら…
家に戻り玄関のドアをあけると、季美子が立っていてビックリ!
「あなた!
どこ行ってたの?
これから探しに行こうと思ってたのよ。」
「ビール…
買いに行ってたんだよ。」
「そうなの?
でもビールは話が終わってからにして下さいね。」
…ハイハイ。
俺は季美子とリビングに行った。
「お父さんどこ行ってたの?」
リビングのソファーに座っていた友子が立ち上がる。
「ちょっとビール買いにな…」
友子の隣には男が座っている。
その男も立ち上がり
「あ、あの初めまして。
友子さんとお付き合いさせてもらっている佐々木広と言います。」
と頭を下げる。
…あの男だ。
名字も佐々木…。
友子とこの男が礼七の両親に違いないな。
見覚えのあるあの車…
やっぱりそうなのか?
行くあてもなく近所をウロウロ歩きながら考えた。
礼七…
いや、友子…
お前はなんであんな母親になるんだよ💨
お前を叱ってくれるヤツはいなかったのか?
情けない気分だった…
ふぅ~
タバコの火を消し、家に入ろうとした。
すると、ゆっくりと走ってきた一台の車が家の前でとまった。
…友子の相手かと思ってよく見ると、
車は黒色の軽四…
車を見たとたん俺はなぜか逃げ出してしまった。
俺は友子の男が来ると決まった日から、緊張していた。
娘の結婚相手と会うから…というわけではなく、
もし…
相手が礼七の父親だったら…
何年か前に会ったあの男だったら…
確か、名前は佐々木だった。
友子にはまだ相手のことは何も聞いてない。
名前さえ知らない。
怖くて知りたくなかった。
礼七の父親だったら嬉しい…その反面友子があんな母親になるなんてやっぱり嫌だった。
数日後、友子の付き合っている男が家に来ることになった。
日曜日の11時…
ただ会うだけでは間が持たないと思ったので、一緒に昼ご飯を食べることにした。
早朝から季美子と友子で料理を作っている。
ちらし寿司
お吸い物
ポテトサラダに鶏の唐揚げ…
なんだかお祝い事みたいなメニューだな…
そう思いながら俺は庭に出てタバコを吸った。
礼七が養子として福森家にきた後も、母親と頻繁に連絡を取っていたこと。
修平や季美子が母親を甘やかすと言っていた凌司…
自分の姉だからこそ凌司はあんなに母親に変わって欲しいと願ったのでは?
礼七の生まれてくる年にちょっとズレがあるが、俺が生きていることで運命が変わってしまったのかもしれない。
生まれてみないと分からないが、友子があんな最低な母親になってしまったということは信じたくなかった。
これから産まれてくる友子の子ども…
もし友子が育児放棄したら、俺がいなくても、季美子は子どもを引き取って育てるだろう。
礼七…
もしかして友子の子どもじゃないよな?
…ドキドキしてきた。
友子の子ども…
今まで気付かなかったけど、友子の子どもだとしたら、不思議に思っていたことに納得がいく。
最初は青ざめたような顔をしていた友子の表情がみるみるうちに明るくなり、季美子のところへ行き
「母さん、よろしくね。」
なんて言っている。
まったく💨
季美子は「ハイハイ」と苦笑いしている。
俺の考えに対して季美子は何も言わなかった。
多分、季美子も俺と同じ考えだったのだろう…
その時礼七のことが頭に浮かんだ。
できちゃった婚か…
付き合ってどれぐらいか知らないが、夫婦関係うまくいくだろうか…
産まれてきた子どもが、礼七のようにならないだろうか…
イヤ、
もし友子が育児放棄したら、俺が引き取って育てる!
俺にとっては孫になるわけだからな!
「子ども産んで育てられるのか?
金かかるぞ!貯金あるのか?
自分の時間もなくなるし、我慢することばかりだぞ!
大丈夫なのか?」
「うん。覚悟してる。」
…まあ、今何言っても分からないだろうが。
「子ども産まれたら、結局は母さんに世話になるんだから、母さんにちゃんとお願いしとけ!
あとな、子どもを虐待したり育児放棄するなら、俺のところに子ども連れてこい!」
「…分かった。」
なんでちゃんと避妊しなかったんだ💢
…なんて怒ってみても仕方ない。
出来たものはどうしようもない。
『中絶』という考えは俺にはなかった。
もし友子が中絶しようとしていたら、俺は友子を殴っていたかもしれない。
「私…産みたいんだ。」
友子はそう言った。
友子ももうハタチだ。
高校卒業してから、工場で真面目に働いている。
少しだが毎月家にもお金を入れている。
会って欲しい人がいるというぐらいだから、結婚するつもりなんだろう。
反対したって仕方ない。
礼七に会えないまま3年が過ぎようとしていた。
「お父さん、会って欲しい人がいるの。」
ハタチになった長女・友子に突然言われた。
土曜日の夕飯後、テレビを見ながらくつろいでいた俺はビックリした。
「お父さん、ごめんなさい。
赤ちゃんが出来たの。」
はー❓❓
俺は飲んでいたビールをふき出した。
おいおい、順番が違うんじゃないのか💦
季美子は先に聞いていたみたいで、心配そうに少し離れた場所からこっちの様子を見ている。
修平と凌司は自分達の部屋にいて、リビングには俺と季美子と友子の3人だけだ。
それからも淡い期待を胸に、月に1回は礼七の父親の家の前を通ってみた。
…が、何の手がかりもつかめなかった。
礼七…産まれてこないのかな…
いや、もしかしたら違う場所で産まれているかもしれない。
違う両親、違う名前で…。
それだと探しようがないな…
俺は寂しい気持ちになっていた
俺が死ななかったせいで、巧は生まれない。
俺が生きていることで産まれてこない人がいる…
運命変わってしまった人が…
礼七の両親はどこで出会ったんだろう?
その出会いを俺が邪魔しているのかもしれない?
…礼七は産まれてきて欲しい。
そして幸せになってもらいたい。
ふぅ~💨
ヒヤヒヤしながら俺はコンビニの方へ歩いた。
男は黒色の軽四に乗って出掛けて行った。
あの男が礼七の父親なんだろうか…
なんとなく礼七に似ている雰囲気もあった。
父親の兄弟っていう可能性もあるけど…
まだ結婚してないと言ってたしな。
う~ん…
やっぱり外から見ただけじゃ分からないな…
表札をじ~っと見ていた俺は突然の出来事に驚き、一歩も動けなかった…
家から出てきたのはハタチぐらいの男。
男もビックリして、『何だコイツ?』みたいな顔をして
「ウチに何か用ですか?」
とたずねる。
…まずい💧💧
「えっと…
あ、保険屋なんですけど、子どもさんの入院保険とか入られてますか?」
日曜日の昼間に私服でやってくる保険屋なんているわけないと思ったが、我ながらナイスな嘘がつけたと思った。
子どもがいるかどうか確認できるかも…
男は完全に詐欺だと思ったみたいで、嫌そうな表情で
「僕、まだ結婚してませんし、あの…けっこうです💧」
「ああ、そうでしたか💦
失礼しました。」
俺は逃げるようにその場を去った。
変質者に間違われないように気を付けながら、家の前をゆっくりと通り過ぎた。
家の前のカーポートに、白色のファミリーカーと、黒色の軽自動車がとまっている。
庭の物干しには大人物の服や作業着が干してある。
小さな子どもが住んでいるような雰囲気はない。
…そういえば、俺は礼七の父親の顔も名前も知らないんだよな💧
家の表札を見ると
『佐々木』だった。
佐々木礼七…だったのか。
その時、ガラッと家の戸が開いた。
ポカポカと暖かく、菜の花がきれいに咲いている。
春のにおいだな~。
日曜日の昼過ぎ、約10年ぶりに礼七の父親の家の前にきた。
景色はあまり変わらないが、家が随分増えている。
近くにコンビニが出来ていたので、そこに車をとめて、家の前まで歩いて行ってみた。
もし父親が本当に結婚していたら、実家を出てどこかであの女(奥さん)と暮らしていると思う。
でも…何かちょっとでもいいから、手がかりないかな…
赤ちゃんの名前が無理やり『凌司』に決まり、本当にこれでよかったのかと心配になったが…
名前など関係なく、凌司はスクスク成長していった。
そして時は流れて…
11年後。
礼七の記憶が薄れることもあったので、俺は礼七と入れ替わった時のことをノートに書いておいた。
俺、43才だ。
季美子とも離婚せずうまくやっている。
子ども達も
友子17才
修平15才
凌司11才…
元気に学校に通っている。
礼七誕生の年だ。
俺は4月から月に1回、礼七の父親の家の前を通ってみることにした。
その時、友子が
「赤ちゃんリョージだよ」
と言い出した。
「リョージ?」
季美子は不思議そうに友子にたずねる。
「うん。お父さんが赤ちゃんいっつもリョージって呼んでた。」
6才の友子…
俺が凌司って呼んでたのを聞いていたみたいだ💧
「なんだ…あなたも名前考えてたの?」
「いや💦
そういうわけじゃないんだけど💦」
「あなたがリョージって決めてるならリョージでいいのよ。」
「あ、いや…」
それじゃあ意味ないんだけど💦
「リョージね。
漢字も考えてるの?」
「いや、違うんだよ。」
「じゃあ、漢字は私に考えさせてね。
みんな、赤ちゃんの名前はリョージだよ。」
「リョージ~」
「リョーくんだ。」
子ども達は喜んで赤ちゃんの名前を呼んでいたが…
…これでいいのか⁉
赤ちゃんの名前はリョージになり、後日、季美子が『凌司』と漢字を決めた。
「康平…ってどうかな?」
「え⁉こ、こうへい?」
俺はひっくり返りそうになった💦
凌司じゃないのか⁉
「健康の康。元気な子になって欲しいから…」
「…」
俺は放心状態だった。
そんな俺を見て
「…嫌だった?」
恐る恐る季美子が聞く。
嫌とかではない。
康平…いい名前だと思う。
ただ…凌司や礼七の存在がなくなってしまうようで悲しかった。
赤ちゃんも季美子も無事に退院し、家に戻ってきた。
ささやかながら家族でお祝いした。
子ども達と協力して散らかった部屋の掃除をして、みんなでカレーとサラダを作った。
お祝いにケーキも買って、友子と修平は大喜び。
そんな中…
「あなた、赤ちゃんの名前なんだけど…」
きたー。
「う、うん。
いい名前決まったか?」
俺はドキドキしながら聞いた。
生まれた赤ちゃんはなんとなく俺に似ていた。
友子や修平も赤ちゃんが可愛いみたいで、二人共ニコニコしながら赤ちゃんを見ている。
やっぱりお前は凌司だよな!
まだ名前が決まってないのに、
「お~い、凌司~」
と呼んだり、抱っこしたりしていた。
その後…
季美子は無事に男の子を出産した。
友子も修平も名前は俺が考えていたので、3人目の子どもの名前は季美子が決めることになっていた。
季美子が名付けの本を見ながら楽しそうに名前を考えている横で、俺はドキドキしていた。
礼七と入れ替わった話など季美子にはしていない。
男の子が生まれた時点で、俺はあの出来事が夢ではなかったんだと妙に緊張していた。
何も知らない季美子がこの子を凌司と名付けたら…
そう思うとなぜか嬉しかった。
でも、俺は今生きている。
だから季美子とあのオッサンが夫婦になることはない。
巧は生まれないし、礼七があの家に引き取られることもない。
…
やっぱり夢だったのかな…
俺が体験した礼七の生活は…
あんなつらい生活…
夢であった方がいいんだけど…
なぜだか夢だと思えなかった。
礼七の父親が何歳だったのか分からないが、凌司の話からすると、凌司よりも年上のはず。
これから成長して、何年か後に礼七の母親と出会い礼七が生まれる…
そうだ…
凌司と礼七は確か11才差だったな。
凌司が11才になった時にここへ来れば、礼七に会えるんじゃないのか?
11年後…
長いけど💧
それから俺は病院で検査などを受け、どこにも異常がなかったので、しばらくして退院し、元の生活に戻った。
礼七と入れ替わったのは夢だ…
そう思いながらも、俺は退院してすぐ、礼七が住んでいた家の辺りまで車で行ってみた。
場所は案外すぐ分かったが当然、家はなく畑が広がっていた。
新聞配達をしたであろう家も、ほとんどがまだ建っていなかった。
でも景色は面影があるというか…
なんだか懐かしい感じだった。
礼七の実の父親の実家も探してみた。
狭い道をウロウロしていると、それらしき家を発見した。
あまりじろじろ見るわけにもいかないので、ゆっくりと車で家の前を通り過ぎてみた。
庭に小さな自転車があった。
礼七の父親のものだろうか…
今…幼稚園ぐらいかな?
今本当は死んでいたってことは、あの時の凌司は俺のことを知らなかったのか…
でも…
そんなことってあるか?
俺は夢を見ていたんだろうか…
俺が死ぬ未来
俺が生きてる未来…
別の世界が存在するのか?
いや、そんなわけない。
きっと俺は夢をみていたんだ。
『お腹の中で暴れて知らせるんだよ。』
凌司の言葉がよみがえる…
思わず季美子のお腹に手をあてた。
俺が礼七と入れ替わった未来の世界。
季美子と離婚していた…
死別だったんだ!
俺は死んでいたんだ。
俺が死んだせいで、凌司も礼七もつらい人生になってしましたのか?
それを知らせるために?
自分自身の運命を変えるために、凌司と礼七は未来からやってきて、俺を殺さないでくれたのか?
「どういうことだ?」
「あの日、あなたがいつも通りの時間に家を出ていたら、交通事故にあっていたと思うの。
車同士…正面衝突する事故があったの。
片方が居眠り運転だったみたいで反対車線から突っ込んできたの。
どちらの運転手も亡くなってしまって…」
そこまで話を聞いて、だんだんと思い出してきた。
出勤時間が10分遅れたこと。
渋滞していた道。
通り過ぎる救急車…
「だからね、この子が私のお腹を蹴って知らせてくれたのよ!
今家を出たら交通事故にあうよーって。」
きっと礼七と入れ替わったから、意識を失ったんだな…
じゃあ、俺の姿をした礼七は、病院で眠っていただけなんだな💦
よかった…
「でもよかった。」
季美子がホッとした表情で俺を見る。
「そうだな。意識戻ってよかったよ。」
「うん。
それもあるけど…」
?
季美子は大きな自分のお腹をさすりながら、
「この子が助けてくれたのよ」
え…?
「あの日、出勤する前にお腹が痛くなったでしょ?
お腹が痛かったのは不安だったけど、そのおかげで、あなたは死なずにすんだの。」
え⁉
元の世界だった。
季美子はナースコールのボタンを押し、
「主人が目を覚ましました!」
と言っている。
そして俺の手を握り
「よかった…
あなた、1週間近くずっと眠ったままだったの。
出勤する途中、車の中で突然意識を失ったらしくて…」
と、泣きながら教えてくれた。
…ん?
俺はうっすら目をあけた。
あれ?
凌司の車の中で寝てしまったのか?
「お父さん?」
?
誰だ?
「だ、誰?」
「お父さん?気が付いた?
私、季美子!分かる?」
え?季美子?
頭が混乱する。
俺は病院のベットの上で寝ていた。
ふと、礼七と入れ替わる直前のことを思い出した。
妊娠中の季美子がお腹が痛いと言っていた。
赤ちゃんがお腹の中で暴れてるみたいだと言って…
あの時、季美子のお腹にいた子どもは間違いなく凌司だろう…
じゃあ、凌司は本当に、胎児に戻ったのか?
何かを知らせる為に?
「いつからやり直したい?」
なんとなく聞いてみた。
「そりゃ~…
うーん。胎児かな。」
「胎児?」
「そう。
お腹の中で暴れて知らせるんだよ!」
「知らせる?」
知らせる?
何を?
胎児になって?
「痛っ…痛たたた…」
「季美子?
どうした?」
「お腹が痛くて…
赤ちゃん、すごく暴れてるみたい…」
「大丈夫か?」
「色々言って、混乱するよな💦
でも兄ちゃんは、礼七の母親は季美子だけだと思っていて欲しい。」
…俺もそう思う。
「…うん。」
多分、礼七も同じ気持ちだと思う。
「俺もな~
できるなら人生やり直したいよ。
いつからおかしくなったのかな~
…って、ホントは分かってるけど。」
凌司も季美子が俺と離婚したせいで、大変だったんだな…
ごめんよ、凌司…
…養子だとしても、本当の母親のことは、気にしないといけないものなのか?
凌司の話を聞いているうちに、よく分からなくなってきた。
そもそも、礼七は季美子達の養子なのに、実の母親だからって簡単に一緒に暮らせるようになるのか?
そこまで実の母親を気にしなくても…
礼七も本当の母親のことなんて記憶にないだろうし、季美子が母親でいいんじゃないのか?
俺は男だから分からないけど、「産んだ」っていうこと…
それが母親なのか?
産んですぐに手放しても⁉
育ての親が本当の母親でもいいと思うが?
産むのも命がけ。
でも、育てるのも大変なことだろう…
「甘やかすって?」
「あ…
悪い悪い💦
ちょっと言い過ぎたかな💦
アイツは本当にすべきことをせず、人に頼ってばかりだった。
誰かがアイツに「それは違う」と注意するとか、自立できるようにわざと突き放すとか…
そういうことをしないとアイツは同じことばかりを繰り返すのに…母さん達は見て見ぬふりだった。
「今の生活もつらいと思う。
でもアイツと暮らせば、もっとつらいことになる。
…礼七には悪いけど、アイツは母親として最低だ。
俺はアイツに変わって欲しくて、何度も話し合ったんだけど、俺の話なんて聞こうとしない」
凌司は悔しそうに話している。
「兄貴や母さんもアイツのこと甘やかしてばっかりで…」
?
凌司の話からすると、礼七が福森家に来てからも、母親とは頻繁に連絡は取っていたみたいだが…
甘やかすってどういう意味だ?
凌司はキッパリそう言った。
俺もそう思った。
今の生活の中で自分の居場所がない礼七。
でもオッサンも季美子も他人だから、仕方ないと思える部分もある。
しかし、実の母親と一緒に暮らした時、自分の居場所が見つからなかったら、つらいだろ…
礼七には悪いが、自分の都合だけしか考えない母親だ…
母親と一緒に暮らしても幸せになれるかどうか…
…通夜の帰りに修平から父親のことを聞いた時、父親に不信感みたいなものを感じていたが、
修平は礼七のことを考えて、随分大ざっぱに話してたんだな~。
礼七が聞いたら傷付く内容かもしれないが、父親が頑張って子育てしていたことは、しっかりと伝わってきた。
問題は母親だな…
「礼七は本当の母さんと一緒に暮らしたいのか?」
「…分からない。」
「今の生活から逃げ出したいって思ってる?」
「…少しは思ってる(かな?)」
「だったらやめといた方がいい!」
「父さんも礼七の父親だから、大変でも礼七の世話をするのは当たり前のこと。
ただ、母さんが仕事が終わっても、すぐに家に帰ってこない日が多くなってきたんだ。
父さん困ってな…
礼七を仕事に連れては行けないし、礼七ひとりを家に置いとくわけにもいかない。
父さんは仕方なく仕事を休む。
母さんに『仕事終わったらすぐ帰って来い。帰って来れないなら仕事辞めろ。』って言ったけど、母さんは仕事辞めなかった。
父さんは欠勤が続いて、とうとう会社クビになったんだよ。
父さん働ける状況じゃないのに、母さんから『男のくせに働かない』って責められて…
喧嘩ばかりにするようになってしまったから、父さん達は別々に暮らし始めたんだ。
礼七は父さんと暮らしてたんだぞ。
父さんは朝が少しゆっくりな仕事を探して、礼七を保育園に預けて働いてたんだ。
でも…
事故にあってしまって…
母さんに礼七をお願いしたんだけど、仕事があるから無理だと言われて…
父さんはどうすることも出来ず、礼七を手放したんだ…
父さん元気になってから、礼七を引き取りたかったんだけど、母さんとはすでに離婚してたし、拒否されたんだ。」
子どもが生まれて仕事を始める。
別におかしいことじゃないよな…
「礼七の母さんは夜働きに出たんだよ。
父さんは反対したんだけど、母さんは夜しか働いた経験がなかったらしい。」
礼七がまだ小学生なので、凌司も仕事については細かく言わなかったが、母親はスナックで働いていたようだ。
「母さんが夜働き出るから、夜の間は父さんが礼七の世話をするんだけど、赤ちゃんって夜でもミルク飲んだり、泣いたりするんだよ。
父さん昼間は普通に働いてたから、寝不足になって大変だったみたいだ。」
「とりあえず、ここで立ち話もなんだから、車乗るか?
ドライブでも行こう。」
真っ暗な中で話していたので、凌司の車に乗ることにした。
「明日は葬式もあるだろうし、学校休めよ。」
「うん。
あ、でも新聞配達が…」
「それは俺も手伝うよ。」
そんなことを言いながら車に乗り、
車・スタート。
「ザッと話すけどな。
礼七の母さんは礼七が産まれて少したつと仕事を始めたんだよ。」
「俺も通夜に行こうと思ってたんだよ。
礼七の本当の父さんと、少しの期間だけど一緒に仕事したこともあるから…。」
あの女…
旦那が仕事しないから離婚した~とか言ってたけど…
嘘なのか?
「まあ俺も本当のことは分からないけどな。
礼七の父さんは離婚したくなかったって言ってたよ。
仕事が一緒になったのは偶然だったんだけど、礼七の様子聞いてくるばっかりしてたよ。
母さん達(季美子+オッサン)は、礼七の父親に、礼七の様子とか知らせたりしてなかったみたいだからな。」
「礼七!
どうしたんだよ?」
夜遅くに外にいるもんだから、凌司は車から降りると、俺のところへ走ってきた。
修平も凌司も礼七のことを大切に思ってくれている。
修平は頼りになりそうだし、優しい。
でも礼七に気遣いし過ぎて肝心なことは言わない…
そんなタイプ。
凌司は裏表がないような感じだ。
思ったことは言う。
好き嫌いがハッキリ分かれるタイプだろう…
今は本当のことが知りたい!
俺は凌司に今までのことを全部一気に話した。
凌司!
本当のことを教えてくれ🙏
涙が出てきた。
もし礼七が俺の子どもだったら…
友子や修平がこんなめにあっていたら…
…絶対に許せない。
でも礼七には周りに助けてくれる大人がいない。
気持ちを共感してくれる人も、相談できる人もいない?
そう思っていると、一台の車が家に入ってきた。
相談できる人
共感してくれる人
いたいた!
家に入ってきたのは凌司の車だった。
イライラして、タバコでも吸いたい気分だが、そうもいかず…
俺は外に出て深呼吸した。
空を見上げた。
今日は星がひとつも見えないな…
礼七…
逃げたくなるよな…
多分、父親の病気のことも知ってたんだろうな…
本当の父親は死んで…、本当の母親から連絡きたと思えば、自分の都合でしか、ものを考えない甘えた親…
育ての両親からは冷たくされて…
自分の居場所がない。
つらすぎるだろ…
なんて自分勝手な母親なんだ…
自分達の都合で子どもを捨てて、自分達の都合で引き取る。
子どもの気持ちなんて完全に無視だ。
「ちょっと💢
礼七にかわって!」
「もう一度自分のしたことをよく考えてみろ!
今の考えのままだと礼七が可哀想だ。
お前も幸せになれないぞ。」
「はあ💢
何よ💢偉そうに💢
あんた誰なのよ!」
「大岩孝雄だ💢」
俺は自分の名前を言うと、ガチャンと乱暴に電話を切った。
ったく…
礼七には悪いが、なんだあの母親は💨
「じゃあ何で最初の旦那と離婚したんだよ?」
「それは…
旦那が働かなくて困ったからよ。」
「だったら旦那に礼七預けて、あんたが働けばよかったんじゃないのか?」
「だから~💢
女の給料だけじゃ食べていけないんだってば。」
「でも世の中にはシングルマザーで頑張ってる人がたくさんいるぞ。
母子家庭なら手当とかもつくんじゃないのか?」
「人と比べないでよ💢」
…
コイツには何を言っても意味がないな…
時間の無駄だ。
多分働く気なんてないんだろう。
ただ自分の為だけに 礼七を引き取りたいんだ。
礼七の幸せなんて全然考えてない。
「…オッサン誰?」
当たり前だけど、女は驚いている。
あー、あー…(発声練習💧)
まだ男の声だ…
「礼七の知り合いだよ。」
「そうですか。
でもあなたには関係ないことです。
よく知りもしないのに怒鳴られたくない💢」
「新しい家庭が出来てから礼七を迎えに来たって、礼七は喜ばない。
そこに礼七の居場所はあるのか?」
「あるわよ!
私もいるんだし💢」
「礼七は母親と二人の方が良かったと思うけど…」
「あのね💢
私1人じゃ経済的に礼七を育てるのは無理なの!
どんなに働いても男より給料低いし。
男のあんたにこんなこと言っても分からないでしょうけど💨」
「は?💢
お前何言ってるんだ?💢
親の役目だの責任だの偉そうに言ってるけどな、
自分の子どもは絶対に手放さない、
苦しくてもつらくても、子どものために頑張るのが親の役目や責任じゃないのか?💢
新しいパパのおかげって、どれだけ男に甘えてるんだよ!
親なら自分の力でなんとかしろよ💢」
俺はブチキレて女に怒鳴った。
怒鳴り声は礼七の声ではなくて、男の俺の声だった…
「経済的にゆとりが出来たから、一緒に暮らすの?」
「は?
経済的ゆとりって、子どものくせに何言ってんの?
一緒に暮らせるようになったから連絡したの!
子どもを引き取るのは親の役目でしょ!
親には責任があるの!」
「今更って…。
そりゃあ今更かもしれないけど、今だから一緒に暮らせるんだよ!」
今だから?
経済的理由か?
でも再婚して赤ちゃんもいるんだろ?
赤ちゃんつくるより先に、礼七を引き取るべきじゃないのか?
「赤ちゃんいるんでしょ?
新しい家庭があるんだよね?」
「そうだよ。
だからこそ、礼七を引き取れるんだよ!
礼七の新しいパパのおかげなんだから。」
新しいパパね💧
礼七には父親何人いるんだよ。
男の力がないとどうにもならないのか、この女は💧
自分の力で何とかして礼七を迎えに行こうとは思わないのか?
「家も広いし、赤ちゃんもいるし、きっと楽しいよ!」
コイツはどうして突然礼七を引き取ろうと思ったんだろう💧
「今更…どうして?」
思わず俺の本音が出た。
3日ぐらい前というと、俺と礼七が入れ替わった日に近い。
多分、入れ替わった原因はこれだ。
礼七自身が母親と一緒に暮らせることを喜んでいたら、俺と入れ替わったりはしなかっただろう。
母親からの一緒に暮らそうという連絡に、礼七は戸惑い、…傷ついたんではないだろうか?
「礼七?
ごめん。おまたせ。
でさ、どうなのよ?」
「…何の話?」
俺は怒りをおさえて答えた。
「も~💢
3日ぐらい前に話したでしょ?
一緒に暮らす話!」
一緒に暮らす?
礼七を引き取るのか?
「ちょっとごめん。」
そう言うと、女は
「何~?
いい子で寝てよ~#%*…」
と、赤ちゃんに声をかけて、あやしていた。
…赤ちゃん。
礼七の弟か妹?
夫の死を知らないとなると、離婚してるのか?
礼七を捨てたくせに、自分は新しい家庭を作ったのか?
礼七がこんなつらい思いしてるのに…
礼七の母親に対して怒りがこみ上げてきた。
「…お父さんって、私の本当のお父さんのことだけど…」
「本当のお父さん?
え~、アイツ死んだの?」
…何だコイツは?
おかしくないか?
何で何にも知らないんだよ💨
その時…
受話器の向こうから赤ちゃんの泣き声が聞こえた。
「ママ?」
「この前の返事、聞かせてもらえる?」
どうしよう。
この前の返事って何だ?
ていうか、礼七は母親と連絡取ってたのか?
意味分からんぞ。
連絡取ってるなら、通夜のこととか知らせろよ。
それに今通夜中じゃないのか?
「今、お父さんの通夜でしょ?」
「は?え?
お父さん死んだの?」
…え?
「知らないの?」
「知らないよ!
も~、ちゃんと教えてよ。
お葬式は?明日?」
「え?多分明日かな?」
「多分って何よ。
お父さんのことでしょ?」
…もしかしてオッサンと勘違いしてる?
家に入ると電話が鳴っていた。
巧はもう寝たのかな?
「もしもし。…福森です。」
とりあえず電話に出た。
「…礼七?」
誰だ?若そうな女の声。
季美子ではない。
「?はい。礼七です。」
「礼七~、ママだよ♪」
は??
ママ?
ママって誰だよ?
礼七の?
本当の母親か??
>> 101
🌱主のリンです🙇
削除されたレスが見れなかったのでちょっと気になってます💦
小説の内容、あまり楽しい話ではないので、不快に感じた方がいたの…
初めまして❗
いつも楽しみに読ませていただいております😃
削除の内容ですが、このスレとは全く関係の無いしょーもないチェーンメールのようなものでした。
私も削除に一票入れましたが、もしかしたらここ(ミクル)の管理者さんが消したのかもしれません。
ご安心ください😊
とっても面白いです❗
これからどうなるのかすっごく楽しみです❗
- << 109 🌱zoccaさん 削除メールのこと教えて下さり、ありがとうございました🙇 ホッとしました☺ 小説の方も読んで下さってありがとうございます‼ これからもお付き合い頂けたら嬉しいです❤
修平に家まで送ってもらい、
「礼七…今日は悪かったな。」
そう言って修平は帰って行った。
本当の父親に会わせてやりたかった、という修平の優しさ。
その気持ちはすごくわかる。
が、礼七と入れ替わって通夜に行ったのが俺で良かったと思った。
色々とショックだろ…
…なるほど。
でも…
母さんは?
母さんも父さんのリハビリとかで忙しくて育児できなかったのか?
修平にたずねた。
「…」
修平は何も答えてくれなかった。
母親には完全に捨てられたのか?
礼七…
帰りの車内。
「私の本当の両親はどうして私を捨てたの?」
俺は思い切って修平に聞いた。
修平は黙っている。
やっぱり聞いちゃいけないことだったかな…
「礼七のお父さんな、礼七が1才になるちょっと前ぐらいに、交通事故にあって大怪我したんだよ。」
…
「リハビリとかもあって、とても礼七の育児ができる状態じゃなかったから…」
「怪我が治った後も、そのままで…
あ…亡くなった原因はガンだったらしいんだけど。」
「ごめん、分からない。」
自分の気持ちを正直に修平に伝えた。
「そうだよな💦
突然。礼七も困るよな💦」
ハッ
待てよ!
礼七の父親の通夜…
家の中には礼七の本当の母親もいるってことだよな?
礼七が行ったら気まずいだろ…
礼七を施設に預けた理由とか知らないし…
そっとしておくべきか?
「ここで手をあわせておくよ」
俺は家に向かって手をあわせた。
「そうだな。」
修平も手をあわせていた。
「礼七…」
修平が家の方を見たまま俺に声をかけた。
「…何?」
「礼七、ここはお前の本当の父さんの家なんだよ。」
…やっぱりな。
「…病気で亡くなったんだ…」
「…そう…」
「お前父さんに会いたいか?」
「え⁉」
礼七じゃないから分からないぞ💦💦
会いたいか?
家の中にはオッサンも季美子もいる。
オッサン達は最低な両親だと思うけど、礼七を育ててきたのはオッサンと季美子だ。
礼七が本当の父親と会うのは失礼じゃないのか?
でも…
もし礼七が本当の父親に会いたいと思っていたら、俺じゃなくて本当の父親と入れ替わったかも⁉
…
ダメだ。
分からない。
🌱主のリンです🙇
削除されたレスが見れなかったのでちょっと気になってます💦
小説の内容、あまり楽しい話ではないので、不快に感じた方がいたのかな…😣
この修平の雰囲気から、多分俺はこの家に入るべきではないんだと感じた。
でも修平がわざわざ俺をここに連れてきたということは、亡くなった方と礼七には何か深い関係があるのでは?
…思いあたるのは礼七の本当の両親しかいない。
施設に入ったら、いくら親子でも他人になるのかな?
そういうしくみが俺には分からない。
自分を捨てた親には会いたくないかな?
そういう礼七の気持ちも俺には分からない。
礼七の立場になって考えることも出来ない。
誰の家なんだろう…
横にいる修平の顔をチラッと見た。
修平は難しい顔をしている。
家の中に入ろうとはせず、じっと立っている。
家の周りの田んぼから、カエルの鳴き声だけが響いている。
凌司とは違い、修平はかたい雰囲気で、話しかけづらい。
俺も黙って立っていた。
「おい…礼七、起きろ。」
「え…」
車の中で俺はいつの間にか寝ていたようだ。
フラフラしながら車から降りた。
あたりはもう真っ暗だった。
どれぐらい車に乗っていたんだろう…
車を降りて少し歩いた。
「ここだよ。」
修平が言う。
暗くてよく分からないが、昔ながらの和風の家の前に立った。
家の前には何台か車がとめてあり、季美子の車もあった。
修平の車に乗り出発。
修平は全身黒っぽい服装だった。
さっきの季美子の置き手紙…
もしかして俺もお通夜に行くのかな?
「お通夜に行くの?」
修平に聞いてみた。
「通夜のこと、知ってたのか?」
「季美…母さんからの置き手紙に書いてあったから。
さっき知った。」
「誰の通夜って書いてあった?」
「えっと…知り合いって書いてあったかな?」
「知り合いか…」
??
その後、修平は何も言わなかった。
なんだよ?
誰の通夜なんだよ!
なぜだか重い空気が流れる。
ハッキリ言ってくれー💦
ふ~ん。
で、晩ご飯にカレーを作っておいてくれたのか…
そうだ💡
季美子もオッサンもいないし、もう1回凌司に電話してみよう。
その時…
ガラッと玄関の戸が開いた。
俺はビックリして、受話器を持っていた手を元に戻して、玄関の方を見た。
…
間違いない。
「礼七」
玄関には20代半ばぐらいの男が立っている…
修平だ。
今度こそ。
凌司とは顔が全然違う。
幼い頃の面影も少しあるような…
季美子によく似ている。
家に帰ると、珍しくオッサンがいなかった。
どうも昨日から家には帰ってきてないみたいだ。
まだ凌司がいると思ってんのかな?
ショボイヤツだな💧
オッサンがいないと気楽でいいけど。
台所からカレーのにおいがした。
いいにおい🎵
においにつられて台所へ行くと、食卓に置き手紙が…
『巧と礼七へ。
お父さんと知り合いの方のお通夜へ行って来ます。
帰りは遅くなります。母より』
翌日…
俺は礼七の両親のことが、どうしても気になったので、学校帰り、また凌司に電話した。
他人の家庭の事情を知りたがるなんて、よくないかと思ったが、俺がここにきた理由が知りたかった。
ところが、凌司は電話に出なかった。
仕事中かもしれないな…
諦めて電話を切った。
季美子に聞いてみることもできるしな…
仕方なく俺は家に帰った。
市役所に行って調べればすぐ分かるだろうが…
市役所の場所が分からない。
それに、ここは田舎なので車がないと厳しそうだ。
自転車で行ける範囲内に市役所があるような雰囲気でもないし…
まあ、とりあえず今日はもう寝ようか…
明日も新聞配達あるし。
俺は日記帳を引き出しの中に戻し、布団に入った。
礼七の本当の両親ってどうしているのだろう?
礼七を手放したのには、それなりの理由があるんだろうが…
根本的にはそこからか?
季美子も礼七の両親のことは知っているのかな?
聞いてみていいものだろうか?
礼七が本当のことをどこまで知ってるのか分からないから、ちょっと困るな💧
入れ替わったせいか何なのか分からないけど、俺は礼七のことがとても心配だった。
礼七とは他人だけど、つらい思いをしている子どもを放っておけない。
どうしたらいいんだ…
どうすれば礼七は幸せになれるんだ?
これから先、俺と季美子の間に何か大きな問題が出てくるのかな…
離婚してしまうような大きな問題が…
でも…
頑張るよ!
季美子と離婚しないように!
二人で困難を乗り越えるよ!
礼七がつらい思いをしないように!
そう。
なんで俺だったんだ?
誰でもよかったのかもしれないけど…
何か俺に伝えたいこと、して欲しいことがあったんだろうか?
季美子と離婚しないでと言いたいのかも?
季美子がオッサンと再婚しなければ、礼七がこの家に来ることはなかった。
こんなつらい毎日を送ることもなかった。
そういうことなのか?
でもこの日、礼七にとって何か悲しくなるようなことがあったのは確かだな。
過去に戻りたいなんて…
こんな毎日…と書いてある。
こんな毎日も確かに嫌だな。
ただ単に普段のストレスがたまっただけ?
でも妙にこのページ引っかかるな…
この翌日に俺と入れ替わったわけだし。
なんで俺だったんだろう…
怒りページの感情的な字とは違い、
すごく冷静な字…
寂しそうな字で、そう書いてあった。
この日、何かよっぽどのことがあったんだろうか?
自分が養子だという事実を知った日とか?
いや、巧の存在もあるし、それはもっと前から気付いてるか?
養子だと知ったら…
俺だったら悲しむより、愛されてないのはそれでかと、納得してしまうかも。
他人と知ってホッとするかも…
礼七はどうだったんだろう…
友子が結婚しているものだと勝手に決めつけて、孫のことを想像しながらニヤニヤしていた。
ハッ💦
俺が妄想して楽しんでいる場合ではなかった。
俺は再び日記帳を手に取りページをめくった。
そして…
一番最後…最新のページ。
日付は俺が礼七と入れ替わる前日だった。
修平も来てるんだな…
日記の内容から、修平は礼七にとても優しく接しているようだ。
来る回数は凌司の方が多いけど…。
兄弟仲良いんだな~とポカポカとしたあたたかい気持ちになった☺
でも俺の長女である友子の名前が一度も出てきていない。
友子…冷たいな💧
もしかしたら友子自身に家庭ができたのかな?
それで忙しくて来れないとか?
子どもがいたりして、まだ小さかったら来るの難しいもんな。
俺の正真正銘の孫!
見てみたいな…
そんな中、
『今日は凌司兄が来た⤴
本屋に連れて行ってくれた📖ラッキー🍀』
『今日は修平兄が来てくれた。いつも優しい❤』
と兄達が来たという内容の日記が何ページかあった。
日記を見ただけで嬉しさが伝わってくる。
嬉しいページはカラーペンを使ってカラフルに書いている。
逆に怒りをぶつけたページは黒マジック一色で書いてあった。
『明日の家庭科は調理実習だ⤴嬉しいな⤴』
『今日の遠足楽しかった🍙』
等々、ごく普通の内容の日記もあったが…
ノート一面にデカイ字で
『ムカつくムカつくムカつく。
あんなヤツ早く死ね。』
『早く消えて。』
『私を元に戻して!』
などと書いてあるページが何ページもあった。
そりゃあ、礼七は不満だらけでムカつくだろう…
どうしてやることもできないのか…?
日記帳…
俺は礼七の気持ちが知りたかった。
…
もし礼七が俺の娘だったら、
「娘の日記を勝手に見るなんて最低💢」
って言われて、嫌われると思うが…💧
他に知る方法がない。
実際に話が出来るわけでもないし💧
罪悪感はあったが、俺は礼七の日記を読んだ。
礼七の部屋に入り、礼七の勉強机の前に立った。
礼七…
ごめんな。
俺は礼七の勉強机の引き出しを開けて、あるものを探した。
多分あるはず…
引き出しに何冊かノートがしまってあり、それをペラペラめくった。
あ…
あった。
俺は礼七の日記帳を探していた。
しかし…
オッサンは凌司から逃げたのか?
子どもを虐待するようなヤツだ。
昔は凌司を虐待してたんだろうが、凌司も成長して、力がかなわなくなると怖くて逃げ出すような、情けない男なんだろうな。きっと。
暴力で家族を従わせる。
従わないヤツには暴力をふるう。
自分の考えを押し付ける。
仕事もしてないくせに💨
季美子…
なんでこんなヤツと再婚したんだよ💧
凌司は俺を家まで送り、
「また来るからな!」
と言って、心配そうな顔で帰って行った。
凌司を見ていると、家族に血の繋がりなんて、それほど関係ないのかな…とも思えた。
凌司が帰って少し寂しかった。
冷酷な家族のいる、あの家に帰るのか💧
とぼとぼ玄関に向かう。
静かに玄関の戸を開けた。
オッサンはまだ帰っていないようだ。
台所に季美子がいたが、
「ただいま。」と言う気分になれず、黙って自分の部屋へ行った。
ファミレスを出て、凌司の車に乗り、家まで送ってもらった。
「お兄ちゃん…
私って何のために生きてるのかな?」
車内で凌司に問いかけてみた。
「未来の為だ。
今、礼七がつらいのはよく分かる。
俺も同じめに合ってきたからな。」
…やっぱり。
「家出もした。
でも何をしても結局はあの家に連れ戻される。
だから、高校卒業するまでは何とか我慢するんだ。
あの家から自立できたら、自由になるから‼」
「…うん。」
「生きる意味は、それから見つけても遅くない。」
「…そっか。」
「また兄ちゃんも時々礼七の様子見に来るから。」
「ありがと。」
「普通」って分からないけど…
礼七の家族…福森家は俺からしたら「異常」だ。
小学生に新聞配達って。
早起きの為とかそういう感じでもなさそうだし…
木刀で叩くのも有り得ない。
酷すぎる。
そして怒る内容がしょーもない。
あと、兄弟に差がありすぎる。
…礼七の精神状態が心配になってきた。
なんだか頭の中がゴチャゴチャしてきたが…
俺がいつ季美子と離婚したのかは分からないが、多分凌司が小学校にあがる前ぐらいには離婚しているだろう。
または、死別⤵
礼七は施設から引き取られた。
他人同士だけど兄である凌司からは、すごく可愛がられている。
両親からは酷い扱い受けてるけど…
真実は分からないけど、このあたりの俺の予想は多分当たっているだろう。
だけど…
俺は凌司が11才になる前に季美子と離婚している…ということだよな?
俺と離婚して、オッサンと出会い、再婚する…凌司が3才ぐらいにはもう離婚してたりして💧
礼七は俺と季美子の子どもだと思っていたけど、それは有り得ないんだな…
やっぱり礼七は施設から引き取られたんだろう…
巧がもう少し早く生まれていたらなぁ…
礼七、今とは違う、幸せな人生だったかもしれないのに…
友子や修平はどうしたのだろう?
凌司11才の時
修平は15才、友子は17才か…
あんな家嫌だよな💧
高校入学と同時に一人暮らし…そんな感じかもしれないな…
凌司が兄弟の中で、一番長い時間、礼七と過ごしてきたのかな…?
もし、俺の予想が当たっていれば、凌司と礼七は家族と言っても他人同士なのか…
凌司が今22才。
礼七は11才。
礼七が引き取られた時、凌司が11才か…
今、凌司はどこかで一人暮らしでもしてるんだろうけど、あの家で一緒に住んでいた時期もあるんだろう。
もしかしたら、凌司も礼七と同じような扱いを受けていたのかもしれない。
凌司はファミレスに連れて行ってくれた。
やっぱり子どもはお子様ランチなのか?
と思ったが、せっかくなので、
「ハンバーグ食べたい。」
と言って、チーズハンバーグのセットを頼んだ(俺の好物😁)
凌司も同じものを頼んでいた。
親子で同じものが好きなのか?と、ちょっと嬉しくなった。
ニヤリとした俺を見て
「嬉しそうだな😊」
と言いながら、凌司もニコニコしている。
考え込んでいると、ガラッと玄関の戸が開いた。
「あのクソ親父💢
逃げやがって💢」
凌司が出てきた。
「おっ💦礼七!
ビックリした。
玄関先で何やってんだよ。」
俺の姿を見て凌司は驚いていたが、
「お前、まさか俺達の話聞いていたのか…?」
というセリフもなかったので、礼七も真実を知っているんだろうな~と思った。
まあでも何にも知らなくても、あんな扱い受けてたら疑問に思うよな。
ある程度なら自分で調べることも出来るかもしれないし。
「犬の散歩に行ってたんだよ」
「そうか…
お前も大変だな。
これから兄ちゃんと飯でも食いに行こう。」
凌司!気前いいね~⤴
季美子はオッサンと再婚したけど、なかなか子どもが出来なかった?
でも子どもが欲しかったので、施設から礼七を引き取った?
礼七を引き取ってすぐ妊娠発覚?
自分の子どもが可愛い。
礼七が邪魔になった?
で、この扱い?
俺は1人考えていた。
でも礼七と巧は同級生…
礼七が4月生まれで、巧が3月生まれなら、そういう可能性もあるのか?
それにしても、それじゃあ礼七があまりにも可哀想だろ💧
あぁ、それで凌司はこんなに怒っているのか…
凌司は全部知ってるんだな。
…礼七自身は?
この事実知ってるんだろうか?
まあ俺の予想が合っているかどうか分からないけど。
引き取る?
その後も凌司は季美子に
「引き取ったんだから家族として、ちゃんと育てろ」
というような内容のことを言っていた。
息子が母親に説教していた。
引き取るってどういうことだろう?
施設から引き取ったということか?
礼七は養子なのか?
それなら、あの家族との距離感というか…巧との差にも少し納得がいくが…
どうしてだ?
俺は玄関に座り込み、凌司の怒鳴り声を聞いていた。
「礼七にばっかり仕事言いつけてんだろ💢
巧にもさせろ!
同じ兄弟だろ💢」
うんうん。
そうだそうだ!
同じ兄弟なんだから、巧にもさせろ!
俺は頷きながら聞いていた。
凌司よく分かってるんだなぁ。
「うん…
ごめんね💦
でもお父さんが…」
季美子は謝っている。
「俺に謝っても意味ないだろ💢
礼七を引き取るのは夫婦で決めたことだろ!」
え⁉
家に着くと見慣れない車が一台とまっていた。
もしかして💡
凌司が来たのか?
俺は犬を犬小屋に連れて行き、小屋の鍵をかけると、急いで玄関に向かった。
すると…
「いいかげんにしろよ💢」
と、家の中から怒鳴り声が聞こえた。
凌司?
自分の時間もないまま…
あっという間に夕方になり、俺は犬の散歩に行った。
凌司…夜来るのかな?
そう思いながら、いつもの散歩コースを歩いた。
間もなく家に到着~という時。
家の勝手口から慌てた様子でオッサンが出てきた。
オッサンは俺とは反対方向に急いで歩いて行った。
?
何してんだオッサン?
そして翌日。
凌司が来る日だ。
しかし、何時に来るのか分からない。親に今日来るという連絡もないみたいだ。
今日は日曜日。
学校は休みだけど、新聞配達はあるので、いつものように早起きして、新聞配達に行った。
今日はゆっくり過ごせるのかな~と思っていたら、
季美子が出勤した後、朝食の片付け、洗濯、掃除…
オッサンは趣味で絵を描いているらしく、パレットや筆を洗わされたり、犬小屋の掃除をさせられたり…
学校の方が楽だ…
巧は朝から遊びに行ってるというのに💧
そういえば…
オッサンっていつも家にいるな
季美子は働いてるみたいだけど
オッサンいつも何してるんだ?
働いてないのか?
まさか…
礼七が新聞配達した給料はオッサンのもの?
もしそうだったら、ありえない親だな…
家に着き、家の中には入らず、そのまま犬小屋に向かい、ランドセルを背負ったまま散歩に行った。
俺は犬にはあまり興味がない。
こんな風に散歩に連れて行くのは正直少し面倒だ。
でも小学生は犬とか動物が好きなのかな。
そんなことを考えながら、ふと…
ん?
でも…礼七は犬の世話をしているけど、礼七が犬が好きで飼いたいと頼んでも、あのオッサンが了解するだろうか…
シロ…
何才とか犬の年齢分からんけど、結構年な気がする。
ひょっとして…
シロはオッサンの犬では?
…
凌司はせっかちな性格だな💧
誰に似たんだ💧
受話器を戻し、横にあったベンチに座った。
でも…明日こっちに来るなんて…せっかちだけど妹思いだな。
まあ、こっちに来てどうするのかは分からないけど。
夕焼けの空を見上げた。
これから家に帰ったら、またオッサンに怒られて、真っ暗の中犬の散歩に行かないといけないのか…
巧は遊んでるのに…
礼七は朝から働きっぱなしだな。
気が重かったが、家出をしたって、金はないし行くところもない。
どんなに嫌でもあの家に帰るしかない…
無力だよな…
俺は仕方なく立ち上がり憂うつな気持ちで家に帰った。
「おお!
礼七か?
どうした?
何かあったのか?」
明るいテンションだ。
きっと妹大好きなんだな。
「…」
なんて言おう。
「礼七?」
凌司が心配そうに聞く。
「親父か?」
‼凌司はこの状況知ってるのか?
「…うん。」
とりあえずオッサンが原因でつらいのは確かなので、返事をした。
「…あの親父💢」
突然、別人のような凌司の怒りの声に驚いた。
「明日、兄ちゃん仕事休みだから、そっち行くよ。
待ってろ!」
ガチャッ
ツー・ツー・ツー…
き、切られた💦
翌日。
木刀で叩かれる覚悟を決めて、学校帰りにまた公園に寄った。
テレフォンカードなんてないし、礼七の勉強机に置いてあった貯金箱の中から、小銭を持ってきた。
電話代がかかるけど仕方ない。
凌司になんて言おうか…
礼七は素直に自分の気持ちを言える子なんだろうか?
悩みながらメモに書かれた番号を押す。
トゥルルル…
呼び出し音。
仕事中かもしれないな。
「もしもし?」
ハッ💦
出た💦💦
「あ、もしもし?
凌司…お兄ちゃん?
礼七です。」
礼七は毎日どんな思いで過ごしているのだろう…
楽しいわけない。
礼七が産まれた時、俺はどうしていたのだろう…
こんなことになるなら俺が引き取っても…
…他の子どもはどうしているんだろう?
それぞれ1人暮らしか?
結婚してるかもしれないな…
何よりも俺は今どうしているんだろう💧
やっぱり死んだのか?
死ぬのは怖くないが…
気になる。
俺が住んでいた家に行ってみたい。
でも、車がないと厳しいな。
バスとか…
よく分からないし。
うーん💧
また色々な思いが頭の中を駆けめぐる。
あ💡
俺は自分自身、両親からは兄弟同じように扱われていたと思う。
俺は自分の子どもにも差をつけるつもりはない。
だけど…この家族は何なんだ?
巧は子どもらしく育てているみたいだが、
礼七は朝から新聞配達、学校が終われば犬の散歩に風呂掃除、
友達と遊ぶ時間もない。
おまけに家族との会話もない。
季美子…
良い妻で、良い母親だったのに…
再婚して変わってしまったのか?
礼七は俺と季美子の子どもなんだろ?
おいおい💧
怖くて帰れないって、どんだけヘタレなんだよ。
礼七は真っ暗の中、犬の散歩してたんだぞ!
このあたりは街灯も少なく、夜は真っ暗だ。
普通は女の子の方が心配じゃないのか?
息子に甘い。
イヤ…
この家には息子しかいないんだ。
礼七は子どもとして扱われていない。
なんでこんなに差をつけるのか?
その後、俺は風呂掃除をして、食卓についた。
家族4人…
3人+居候…そんな感じだな。
俺は黙って晩ご飯を食べる。
巧とオッサンと季美子は今日も楽しそうに話している。
会話を聞いていると…今日、巧は学校帰りに友達の家に行って遊んでいたらしい。
遊びに熱中し過ぎて、気が付いたら暗くなっていて、怖くて1人で帰れないから、迎えに来て欲しいと家に電話したみたいだ。
俺がオッサンに叩かれていた時の電話が巧からの電話だったのだろう。
その帰りにDVD?が借りたいから、とレンタルビデオ屋に寄ってもらったらしい…
今日も犬の散歩に40分ぐらいかかった。
家に着いた時には完全に夜だった。
こんな暗い中、女の子ひとりで犬の散歩に行かすなんて…
礼七がいなかったら、他のヤツが行けばいいだろ😠
不満に思いながら犬にエサをやっていると、季美子達の車が帰ってきた。
どこ行ってたんだよ💨
車から季美子とオッサン…
それから巧が降りてきた。
巧⁉
少しすると、ガラッと玄関の戸を開ける音が聞こえた。
俺はビクッとして、慌てて犬小屋の後ろに隠れた。
そっと様子を見てみると、季美子とオッサンが車に乗り、どこかへ出掛けて行った。
ふ~💦
焦った💦
あたりはだんだん薄暗くなってきている。
早く散歩に行かないと道に迷いそうだな…
体の痛みも少しおさまったので、俺は犬の散歩に出発した。
オッサンは小声で、
「早くシロの散歩に行け。」
と言い、台所の方へ行ってしまった。
体のあちこちが痛い…
とりあえず電話で助かった💦
またオッサンが来たら叩かれそうなので、俺はヨロヨロしながら犬小屋へ行った。
ジンジンと体が痛む…
俺はしばらく犬小屋のそばでうずくまっていた。
家に着くと、
あれ?オッサン?
玄関先にオッサンが立っている。
オッサンは俺の姿を見つけると、俺を家の中に引きずり入れ、
「お前、何やってたんだ!」
と怒鳴り、木刀で叩いた。
「お前に遊ぶヒマはないぞ!
やることは山ほどあるだろう!
さっさとシロの散歩に行ってこい」
俺は必死に頭を守った。
痛い💦💦
チラッと台所を見ると、季美子がいた。
やっぱり何も言わない…
バシッバシッ
い、痛い…
リリリリリーン
電話がなった。
「はい…」
季美子が電話をとり、何か話している。
電話の音と同時にオッサンの手がとまった。
そんなことを考えながら、なんとか交換日記の自分のページを書き上げた。
筆箱に入っていたカラーペンを使って、可愛らしく書いた…つもりだ💧
かなり時間がかかった。
もう犬の散歩ぐらいは終わっているだろう…
そろそろ帰ろう。
交換日記をランドセルにしまって、ゆっくりと家に帰った。
巧より先に帰ったら、また俺が犬の散歩や風呂掃除をするはめになるだろう…
俺は帰り道にあった公園に寄った。
ベンチに座り、四苦八苦しながら交換日記を書いた。
交換日記の内容は、好きなタレントの話やファッションの話…
俺は全然分からなかったので、礼七の家族の愚痴を書いた💦
でも…
血はつながってないが、同じクラスに兄弟がいるって、どんな感じなんだろうか…
双子気分か?
友達はどう思ってるんだろう。
小学生は友達の家庭の事情なんて、それほど気にしないものか?
こういう場合、子どもよりも親の方が、気にしたりするんだよな💦
今日も昨日のように学校へ行った。
友達らしき女の子に、明日は絶対に交換日記持って来てね、と責められた(笑)。
そして放課後になった。
校庭に出ようとした巧を呼び止めた。
「今日は犬の散歩と風呂掃除、あんたがやって。」
お手伝いなんだから当然分担制だろ。
ところが巧は何も言わず、校庭にいる友達のところへ走って行ってしまった。
なんだよ💢
俺は呆然とした…
まだ見たことのない我が子…
産まれてからのお楽しみで、性別さえ知らなかった。
男の子だったのか…
無事に産まれたんだな…
よかった…
嬉しくて涙が出そうになった…
いい男になってたな。
俺に似てたし…
ジーンとしていると、またオッサンの怒鳴り声が聞こえた。
やれやれ…
あのオッサンは俺の感動を台無しにするな😠
仕方なく俺は今日も新聞配達に向かった。
修平からもらったメモ…
『凌司 携帯 0X0…』
俺はそのメモの裏を確認した。
裏には…確かに俺が昨日かいた地図‼
凌司?
昨日俺が会ったのは修平じゃなかったのか?
もしかして、3人目の子どもか⁉
あの時、季美子のお腹の中にいた…
いつの間にか寝ていたようで、また目覚まし時計の音で目を覚ました。
俺は礼七のままだった。
まあ、なんとなくそんな予感はしていたが。
どうやったら元に戻れるんだろう…
俺の姿になった礼七もどこかにいるんだろうか?
仕事とか大丈夫なのか⁉
気になったがどうしようもない。
とりあえず今日も新聞配達か?
俺は昨日修平からもらったメモをさがした。
新聞配達先の家の地図をかいたからな💨
あれがないと新聞配達行けないよ。
確か机の引き出しにしまったような…
あ、あったあった!
あれ⁉⁉
食事を終え、風呂に入り、自分の部屋に戻った。
眠い…
すぐに布団に入ったが、少し考えた…
明日は元に戻っているのか…
俺はずっと季美子と夫婦でいると思っていた。
離婚したのか、それとも死別か…
それは分からないけど、とにかく俺は季美子とは一緒にいない。
季美子はお互いの連れ子と共に、オッサンと一緒にいる。
悲しいとか…あまり実感はないが、それよりも礼七のことが気になる。
再婚相手からの虐待。
実の母親も見て見ぬふり…なんてニュースをよく聞くが…
礼七もそうなのか?
晩ご飯…オッサン、季美子、巧、俺の4人で食卓を囲む。
俺以外の3人は、ごく普通の家庭のような会話をしている。
なんだろう。
俺だけ除け者的な感じだ。
まあ俺は本当に他人だから除け者でも全く構わないが…
礼七はきっとつらいだろう…
季美子に対しても、礼七との関わり方に納得が出来ず、怒りがこみ上げる。
礼七は俺とお前の子どもじゃないのか?
礼七に冷た過ぎるだろ!
オッサンに対してイライラしたが…
俺は今、小学5年の女の子。
オッサンが嫌でも言うことを聞くしかない。
家出することも出来ない。
無力だよな…
俺は仕方なく、犬の餌を探して、犬に餌と水をやり、風呂掃除をした。
風呂掃除をしていると、季美子が晩ご飯だと呼びにきた。
もうそんな時間か…
何分ぐらい眠っていただろう…
「お前、何寝てるんだ!
子どものくせに!
誰のおかげで生きてると思ってるんだ!
さっさと起きろ!」
また突然オッサンに怒鳴られて、俺は目を覚ました。
オッサンは枕元に仁王立ちし、「宿題はすんだのか?
シロのえさやりに風呂掃除…
やることはまだたくさんあるだろ!
昼寝なんて何様のつもりだ!」
ガンガン怒鳴って部屋から出て行った。
犬の散歩…いつも決まったコースがあるんだろうが…
犬はズンズン進んでいき、散歩にたっぷり40分はかかった。
ヘトヘトで家に戻った。
家に入ると、オッサンはいなかった。
台所を覗いてみたが、季美子もいない。
巧は俺が帰る時、校庭でサッカーをして遊んでいた。
まだ帰宅してないようだ。
明日は巧に犬の散歩に行ってもらおう…
そんなことを考えながら自分の部屋へ行き、少し仮眠した。
犬小屋には『シロ』と書いてあった。
俺は犬を飼った経験がなく、種類?もよく分からない。
俺が犬小屋に近付くと、ヒモにつながれたデカい犬が、小屋から飛び跳ねながら出てきた。
多分、雑種?なのかな?
とにかくデカい💧
引っ張られるように散歩に出掛けた。
なんとか授業を終えて、すぐに帰宅した。
学校には居辛かったし、なにより眠かった💧
帰って寝たい…
時々道に迷いながらも無事帰宅。
家に入るとオッサンがいた…
コイツ…仕事してないのか?
俺の姿に気付くと
「ボーっとしてないで、早くシロの散歩に行ってこい!」
と怒鳴る。
は?シロ?
…犬か?
そういえば、庭に犬小屋があったような…
犬の散歩も礼七の日課なのか?
眠かったが、仕方なくランドセルを置き、犬小屋に向かった。
小学校まで徒歩でおよそ30分。
小学校に到着すると汗だくになっていた💧
クラスは学年ひとクラスずつで、下駄箱等も人数が少ないので分かりやすくて助かった💦
教室に入ると友達らしき女の子から
「おはよ~。ハイ!次は礼七ね!」
と交換日記を渡された。
中を見ると仲良くしている友達の名前がわかった。
朝は慌てて確認しなかったが、今日の時間割り通りに教科書やノートがランドセルに入っていた。
ふぅ💨
なんとかなりそうだ。
オッサンの連れ子であろう巧…
お前は新聞配達ないんかい💢
俺は新聞配達した上に、木刀で叩かれたんだぞ!
しかも俺は…礼七は女だぞ!
納得出来ない状況にイライラした。
が、しばらくすると巧が学校に行こうとしたので、俺も慌ててランドセルを探し、巧の後をついて登校した。
いつもより何倍も時間がかかったのだろう…
家に帰ると玄関先にオッサンが立っていて、
「遅い!」
と、また木刀で叩かれた。
いったいこのオッサンは何なのか…
まっすぐ立てず、ヨロヨロしながら台所へ行くと、
同い年ぐらいの制服姿の子どもが朝食を食べていた。
男の子だ。
台所に季美子の姿はなかった。
俺の分の朝食も用事してあり、あまり食欲はなかったが、なんとか食べた。
その男の子の名札を見ると
5年
福森 巧
と書いてある。
え⁉
ホントに同い年?
…ということは、オッサンの連れ子か?
俺はきっと真面目なんだろうな💧
明日もこのままだったら新聞配達困ると思い、運よく玄関先に鉛筆が転がっていたので、さっき修平がくれたメモの裏に、もう一度新聞を配達した家をまわりながら、簡単な地図と名前を書き込んだ。
本当のことを言えば新聞配達なんてしなくてすむのにな💦
あ~あ…💧
修平と一緒に自転車に乗って、30戸ほどの家に新聞を配ってまわった。
周りの景色になんとなく見覚えがあった。
俺が住んでいた所から車で1時間ぐらいの場所だろう…
新聞配達が終わると修平は、
「じゃあな。」
と行ってしまった。
携帯番号を変えたからと言って、番号を書いたメモをくれた。
こんな早朝にどこへ行くのかと思って、しばらく見ていたら、赤色の可愛らしい車が修平を迎えに来た。
見たことのない車だった。
きっと彼女だろう…。
修平も彼女が出来たのか~、と嬉しくなった。
「今晩、同窓会があってさ、ちょうど今日こっちに用事がある人がいたから、乗せてきてもらったんだよ。
そしたらその人の都合でこんなに早く着いちゃって💧
行くとこもないし、ちょうど礼七が新聞配達の時間かな~って思って、寄ったんだよ。」
修平は喋っていたが、俺は修平の顔ばかり見ていた。
『4才の頃は季美子にそっくりだったけど、今の修平は俺に似てるな…
顔、変わるんだな~』
「礼七?
どうした?
じーっと俺の顔ばかり見て…
何かあったのか?」
俺はハッとして
「何でもない!
ちょっと疲れてるのかな💦」
「は?」
しまった😨
小5女子が、疲れてるなんて言わないか💦
「寝不足で…」
修平に本当のことは言えなかった…
なぜだか分からないけど…
本当の福森礼七が言って欲しくないと思っていたのか…?
4才だった修平…
22年後だから26才。
いい男になって…
いつもふざけたり、イタズラばかりして、季美子に怒られていた修平が…
面影…いきなりの22年後だから、あんまりないけど…
修平ー‼って抱きつきたいよ、父ちゃんは…
声のする方を見ると、20代ぐらいの男が立っていた。
ニコニコしている。
誰だか分からないけど、怪しい感じはしない。
こんな早朝に…
誰だろう?
「何きょとん顔してんだよ?(笑)
まあ、そうだよな。
こんな時間に突然兄ちゃん現れたらビックリするよな~。」
男は笑っている。
…兄ちゃん?
もしかして…修平⁉⁉
俺は驚いたが、それよりも新聞配達に困った。
新聞は全部同じもので、古新聞ではなかった。
新聞配達など出来るわけない。
でもあのオッサンに何を言っても無駄に思えた。
季美子だけに事情を話すのもオッサンがいるから出来そうにない。
…どうしよう。
途方にくれていると、
「礼七!」
と俺のことを呼ぶ声がした。
背中の痛みも少しおさまったが、あり得ない現実に一歩も動けない。
季美子と離婚したのか…
もしかして俺は死んでしまったのか…
なぜここにいるのか…
俺と福森礼七との関係は?
でも…季美子があのオッサンと再婚して、礼七が生まれたとして…
父親が娘の背中を木刀で叩くか?
ひょっとして連れ子なのか?
そうすると、礼七は俺の子?
考えれば考えるほど混乱していった。
俺…大岩孝雄は、24才の時に5才年下の季美子と結婚した。
俺が26才の時に長女・友子、
28才の時に長男・修平が生まれた。
そして俺が32才、季美子が27才の時、第3子が生まれる予定だった。
さっきの季美子は、どう見ても40~50代…
50才として…
礼七は小5…11才か。
39才ぐらいの時の子どもになる。
季美子にとっては4人目の子どもになるのか…
ということは…ここは…20年ぐらい先の未来なのか?
しかし…
季美子はあのオッサンのことを『お父さん』と言っていた。
ということは?
この福森礼七は季美子とオッサンの子ども…?
待て待て待て‼
俺はどうしたんだ?
なんでいないんだ?
離婚したのか?
また様々な思いが頭の中を駆けめぐる…。
驚き過ぎて声も出ず、その場から動けなかった。
「おい、お前何やってるんだ!
早く行け!」
いつの間に来たのか、俺の背後にオッサンが立っていた。
バシッ
バシッ
オッサンに背中を木刀で叩かれた。
「いっ💦」いてー
「早く行け。」
そのまま引きずられながら玄関に連れて行かれ、靴と共に外に放り出された。
俺は玄関先にうずくまりズキズキとする背中の痛みと戦った。
母親…季美子は俺が木刀で叩かれたのに、何も言わなかった。
母親失格だな💨
階段をおりると、居間らしき部屋があり、さっきのオッサンがテレビを見ていた。
隣には台所があり、母親であろうオバサンがコーヒーをいれていた。
オッサンは短気そうだから、オバサンに…
と思い、台所へ行き
「あ、あの…」
と後ろからオバサンに声をかけた。
オバサンは振り返り、
「あ、れな。おはよう。早くしなさいよ。お父さんに怒られるよ。」
と、小声で俺に言った。
そのオバサンの姿に俺は再び驚いた。
…季美子?
状況は分からないが…。
とにかく布団をたたみ、着替えを探した。
制服があったので、とりあえずそれに着替えた。
夏服だった。
名札には
5年
福森礼七
と書いてある。
フクモリ…レイ…?
よ、読めん💧
鏡にうつる自分の姿を見る。
可愛らしい女の子だけど…
中身は32才のオッサンだからな💧
いったいなんでこんなことに…
すると下から
「おい‼れな‼
まだか‼」
またオッサンの怒鳴り声が聞こえた。
俺は部屋を見回した。
四畳半ぐらいの和室。
真ん中に俺が寝ていた布団が敷いてあり、部屋の隅には勉強机とタンス。
…子ども部屋だよな…。
勉強机に鏡が置いてある。
なぜこうなったのか分からないが、多分きっとそうであろう…
覚悟を決めて鏡を見た。
‼
…やっぱり。
俺は少女になっていた。
車の後部座席に座っていたあの少女に…
「まだ着替えてないのか‼
何やってんだ!
さっさとおりてこい‼」
50代ぐらいのオッサンが部屋に入ってきて、いきなりすごい形相で怒鳴られた。
「あの、俺は…」
オッサンに話しかけようとしたが、オッサンは無視して、部屋の戸を勢いよく閉めた。
ギシギシギシと階段をおりる音が聞こえる。
どうやらここは2階みたいだ。
その時、俺は愕然とした。
確かに足はあった。
しかし、パジャマ姿だった俺の足は、まるで少女のような足だった。
そして立ち上がったが、目線が妙に低い。
…
あの時、俺の車の後部座席に座っていた少女の姿が頭をよぎる。
そんなわけないよな。
1人焦っていると、突然部屋の戸が開いた。
通勤途中、渋滞で…
救急車がきて…
それから…
それからどうしたんだったかな?
あ、
確か女の子の声が聞こえて…
…もしかして…
事故ったのって、俺だったのか?
ここは夢の世界だったりして⁉
いや、違う。
俺は生きてたはず…。
ほら、足もあるし。
俺は立ち上がった。
ピピピピピ…
ん?
気が付くと布団で寝ていた。
目覚まし時計の音が鳴り響いている。
枕元に目覚まし時計を見つけ、とりあえず音をとめた。
時計を見ると…4時…。
朝か?
ゆっくり起き上がり、周りの様子を見る。
ここは?
ここはどこだ?
空耳か?
おじさん‼
こっちこっち‼
え⁉⁉
急に真後ろから声が聞こえた。
ヒヤッとした。
ハンドルを握っていた手に力が入る。
…幽霊?
じめじめと暑い6月の終わり。
鳥肌が立ち、血の気が引く…
一気に寒くなった。
おそるおそるルームミラーをチラッと見た。
女の子がニコニコして後部座席に座っている。
だ、誰だ😨😨
…
俺の記憶はここまでだ…
通い慣れた一車線の田舎道。
車を走らせる。
…が、大渋滞だ…。
出るのが10分遅れただけで、こんなにも道の混みようが違うのか…。
と思っていたら、後ろから救急車がサイレンをならして迫ってきた。
事故か?
車を道の端に寄せる。
おじさん‼
え⁉
突然、どこからか女の子の声が聞こえた。
いつもと変わらぬ朝だった。
妻の作った朝食を食べ、まだ寝ている2人の子どもの顔を見てから出勤する。
しかし、思い返してみると、いつもと違うことがひとつあった。
妊娠中である妻が、出勤する直前に腹痛を訴えたことだ。
お腹の子は3人目。
今まで妊娠中は順調で、酷い腹痛など経験したことがなく、俺も妻も戸惑った。
幸い、腹痛はすぐにおさまった。
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