選択
貴方ならどうしますか?
我が子が何か得体のしれないウイルスに感染し
我が子が感染源となり
我が子の意志とは裏腹に我が子に触れた人が感染し
死に至るとしたら
我が子を監禁しますか?
まわりに殺せと非難されたら殺せますか?
我が子と共に逃げますか?
貴方なら
どうしますか?
お葬式とかあるならいったほうがいいのかしら
などと考えていると
玄関から声が聞こえた
「パパだ!」
巧が玄関に跳んで行った
旦那が帰宅したらしい
お帰りなさいと旦那に告げ中途半端な夕飯の支度にとりかかった
「そんな事があったんだ」
夕飯時林田先生が亡くなった話をすると旦那はあまり興味なさそうな返事をしたいつもそうだ
私の話には対して興味を示さない
わかっていたことだけどね
「葬式ぐらいいってこれば?巧は母さん預かってくれるだろ 巧咳もうしてないみたいだから大丈夫だろ」
やっぱり葬式ぐらいいったほうがいいよね
お世話になったし原因も知りたいし なにか聞けるかもしれないし やじ馬根性かもしれないけど何故急に?って気になるし
香典いくら包めばいいかしら なんて軽く考えながらその日は終わった
葬式当日
雨が降りしきる中
葬儀は滞りなく進んでいる
沢山とはいえない参列者からは時々啜り泣きのような声が漏れていた
受付で香典を渡すと受付の女が声をかけてきた
「患者さん?」
「はぁ」
私の返事に女は小声で耳打ちした
「ここだけの話なんだけど」
「はぁ」
「貴方大丈夫?」
大丈夫ってなにが?
「林田先生ねなんか普通の死に方じゃなくてね」
女が小声をさらに小さくする
「ナニカに感染して亡くなったみたいなの」
「?」
「私見てたんだけどね」
女は回りを気にしながら続けた
「先生と看護師の遺体が病院から運びだされた後に病院立ち入り禁止になったのに防護服みたいなの着た人達が何人も出入りしてたのよ!」
「防護服?」
「そうよっ!私近所だから見ちゃって!防護服の人達になにかあったんですかっ!聞いても何もないっていうし でも何もないなら防護服なんて変でしょう? だからナニカ病原菌がいてそれに不注意で感染してなくなったんじゃないかって噂なのよ 病院だもの 」
「いやぁ話が飛躍しすぎじゃ」
「でも防護服ってへんよ 先生が亡くなってから毎日出入りしてるわ 私近所だからうちにまでなんか変な菌がこないか心配で 」
「大丈夫じゃ」
「なにかあってからじゃ遅いのよ 貴方も患者であそこいっていたのなら感染していないか調べた方がいいわよ!」
「はぁ」
「もしもし」
「鈴木仁美さんですか?」
知らない声だ
「そうですけど・・」
「鈴木道子さんご存知ですね?」
「!義理母ですが」
「こちら××病院ですが先程道子さんが救急で運ばれてきました 意識がない状態で大変危険です
仁美さんはいまどちらにおられますか?」
危険? 救急で運ばれた?
「事故ですか?!」
「いえ自宅で急に倒れられたようで」
「あっあの!巧は?五歳の男の子が一緒なんですけど!」
「お孫さんですか?いまこちらにいらっしゃいます すぐこちらに来ていただきたいのですが」
「わかりました!すぐいきます」
私はすぐさまタクシーをつかまえ××病院に急いだ
タクシーの中で旦那に連絡しようにも旦那の携帯は圏外 旦那の会社に連絡し状況を伝えた
どうしてこんな事に・・・
「お母さん!お子さんをこちらへ!」
「巧!巧!」
「君!救急に!急いで!」
医者に抱き抱えられカウンセリングルームを出ていく巧
私は医者の後を必死に追う
「お母さん!?お子さんはなにか病歴が!?」
「いいえ!いいえ!」
半ば泣きそうになりながら答える
「お母さんはこちらでお待ちください」
看護師に救急受付のドアの前で制止されその場に立ち尽くす
巧は医者と共にドアの中へ消えて行った
「巧・・」
昨日から咳がでてたぐらいなのに!
なんで?!
ただの風邪じゃないの?
あの様子は尋常ではない・・・
あぁ! 神様!
神様なんか今まで信じていないけど!
もしいるのなら!
助けて!
無事に巧を私に戻してください!
「仁美」
ふいに後ろから声をかけられ振り返ると旦那が呆然と立っていた
「大丈夫・・だよな?」
旦那の言葉に涙が出てきてうまく喋れない
「母さんが死んで巧まで・・・」
「そんな訳ない!」
自分でも驚く程の声が出た
「仁美・・」
思わず旦那の衿をつかむ
「だってだってだって・・・さっきまで元気だったじゃん!咳は少ししてたけど元気だったでしょ!人間咳ぐらいで死なないでしょ!?」
自分に言い聞かせているように泣き叫ぶしかない
「・・・」
「死なないって言ってよ・・・大丈夫って・・お願いだから!」
旦那が無言で私を抱きしめる
「俺も辛いんだよ・・」
旦那の言葉でまた涙がこぼれる
二人でひたすら救急のドアが開くのを待つしかない
時間の流れが今までの人生で1番遅く感じらるだろう
「アレルギー体質は遺伝する確率が否定できず」
医者が続ける
「お母様と同じアレルギーとは考えにくいのですが何にしても特例もありえますので」
義理母と同じアレルギー?
「はっきりとは解剖を終えお子さんのアレルギー検査の結果をみてみないとなんとも言えませんが」
黙って話を聞いていた旦那が口を開いた
「解剖をお願いします
さっきは気が動転していて・・すいませんでした」
「あなた・・・」
「巧に関わりがあるかもしれない事なら・・母さんも許してくれるだろ・・」
「・・・」
死んでいるとはいえ自分の母親をあれこれ切り刻まれる
一度は解剖を勧めたがやはり現実となると躊躇してしまう
だけど巧に関わる事なら・・・
力無く笑う旦那に私は何もいえなかった
翌日
検査結果を聞くために入った診察室には昨日と違う医者がいた
「鈴木巧君かな?」
医者はニッコリと笑顔をみせる
「あの?昨日の先生は?」
「あぁ・・山本先生は今日お休みで・・」
私の問い掛けに医者は歯切れが悪い
「?」
少し不安を覚えながら
医者と言葉を交わす
「検査結果ですが」
「はい」
「アレルギーはありませんでした」
「・・・?!」
医者の言葉に一瞬耳を疑う
「ないというか・・」
医者は言葉を続ける
「全くないというわけではないですがどれも許容範囲のレベルで・・発作が起きるレベルのものは見つからないんです ただ」
「ただ?」
「巧君は異常に免疫力というか抗体が・・強いと言うか・・・昨日の発作はアレルギーに反応したわけではなくナニカに激しく反応したと思います」
ナニカって何?
そのナニカが何なのか知りたいんだけど
「ナニカって何なんですか?」
「考えられる物としてはウイルスなどだと思います」
「ウイルス・・」
「なんでそんな・・・」
いいようのない不安が私の中に漂いはじめる
「とにかく病理検査をしますので・・お母さんよろしいですか?」
私が頷くと医者は巧にニッコリと笑いかけた
「お注射したいんだけど巧君頑張れるかな?」
「うん!」
巧は元気よく返事をする
巧の服の袖をまくりあげ医者は巧の腕を消毒し注射針を刺す
「偉いね!」
我慢している巧を褒めた時だった
注射針が微かに震え出した
「?」
私が先生の顔を見上げると先生の顔がおかしい
「先生?」
「ごっ・・ごがっ!」
医者はいきなりうめき声をあげ椅子から転げ落ち苦しみだした
「先生!!」
看護師が医者に駆け寄る
私は巧を引き寄せる
医者は直も苦しんでいる
どれぐらいその場にいただろう
「鈴木仁美さん?」
ふいに声をかけられ顔を上げる
見知らぬ男が目の前に立っていた
「?」
私が頷くと男は私に立つように促した
「この子が巧君かな?」
巧が頷くと男は静かに語りだした
「お母さんには申し訳ないんですが」
「?」
「巧君をこちらでお預かり致します」
男はそういうと巧の腕に手をかけた
「!?」
何?
何言ってるの?!
私は巧に伸びた男の手を振り払った
「あなた・・だっ誰なんですか!?いきなり巧を預かるってなんなんですか?!」
「後でご説明します」
男はまたも手を伸ばし巧の腕を掴もうとする
「やめて下さい!だれか!」
私の叫び声を聞き付けてくれたのか人影が見えた
安堵したがそれは直ぐに恐怖に変わった
明らかに病院スタッフではない男二人が近寄ってきた
「?!」
男二人に私は押さえ付けられ巧は抵抗虚しく男に抱え上げられた
「巧!」
「まま!まま!」
巧の泣き叫ぶ声に私は必死に抵抗するが男達に押さえ付けられ身動きが取れない
「まま!まま!ままぁ!」
巧の叫び声が小さくなっていく
「巧!巧!」
その時いきなり右腕にナニカを刺されたような感覚
その瞬間私の意識が途切れた
私は閉じ込められている
その事実に私は笑ってしまった
「ははっ」
なんで?
なんで?
私が何したの?
巧を連れさって私閉じ込めて
誰がなんのためにこんなことしてんの?
「なんでよ!」
叫びながらドアを力任せに何度も殴る
「なんなの?!」
「巧に会わせてよ!出して!」
叫び声が段々泣き声に変わる
「お願いだから・・」
ドアに縋り付くようにその場に座り込む
「巧・・・」
あの子は今どうしているだろうか
お腹空いてないかな
寒くないかな
私がいなくて寂しくて泣いてないだろうか
あの子は少し甘えん坊だから・・
考えながら涙がこぼれる
あの子が生まれた時
小さい手が私を握りしめた時 思ったのに
この子は私が守るって決めたのに ・・・
「ごめんね・・・巧・・・ごめんね・・・」
長い廊下を男の後に続いて歩く
男があるドアの前で立ち止まり映画でよくみる装置に男の手をかざした
ドアが左右に開く
「こちらへ」
男は少し振り向きながら私を誘導する
少し躊躇したがドアの向こうに見覚えのあるものが少しだけ見えた
「!」
巧の靴!
私は足早に駆け寄る
間違いない!巧の靴だ!
靴を握りしめ男に詰め寄る
「巧は?!」
男は無言で壁についたボタンを操作する
すると目の前の白い壁が左右に開きガラスの壁が現れた
そのガラスの壁の向こうにあるベッドに巧は寝かされていた
色んなチューブと色んな機械に繋がれている巧
「巧!」
私はガラスにしがみついた
「何があったの?!なんで巧は繋がれているの?向こうに・・巧の近くに行かせて!」
頭が混乱し言葉がうまく出てこない
「落ち着いて聞いて下さい」
男はゆっくりと話しはじめた
「巧君は」
「・・・」
「未知のウィルスに感染していて」
「・・・」
「検査の結果巧君に触れた人間が感染し発症していることがわかりました」
「・・!?」
「残念ながら貴方も感染されています」
男は続けた
「巧君がどこでウィルスに感染したかはわかりませんが巧君は何故か耐性があり巧君は発症しても風邪程度の症状しか変化はないみたいですが」
「何?・・何?」
「他の人間が感染した場合発症するのに要する時間は個人差はありますが発作を起こし死亡します」
「は・・?」
「巧君は・・つまり感染源なのです」
「ちょっと待ってよ!」
私は声をあげた
「あなた・・いきなりなにいってんの?」
フラフラする
「意味わかんないんだけど・・・ウィルス?感染?感染源?なにそれ?」
「理解しがたいのはわかりますが・・」
私は男の声を遮る
「巧は普通の子供です!いきなり感染源?ってなんなの?なんかの間違いだよ!ドラマじゃあるまいし・・現実にそんな事になるわけないでしょ?!」
「事実です」
私の言葉を男はピシャリと遮る
「嘘みたいですが真実なんです」
「だって!」
「林田医師 長井看護師 お義母さん 鈴原医師 佐久間看護師・・巧くんと接触した後不可解な発作を起こし死亡
遺体解剖の結果未知のウィルスが判明しました
巧君の血液からも少し変化したウィルスもみつかりました
事実なんです」
「血液検査はしました!鈴原先生はなんも問題ないって・・!」
「従来のウィルスなら一般の血液にも反応は出たでしょう ですが今回巧君から見つかったウィルスは世界で初めてなんです
感染経路もわかりませんし何もわかっていません
わかっていることは
巧君が感染源であり巧君と接触した生物は発症し死亡する という事だけです」
「そんな・・!」
「我々としても信じがたいですが・・先程巧君の血液を猿に与えてみました
猿は死にましたよ
五体とも・・ね」
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