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追う女
一昨日 主人より相談を受けた。
昨年12月の中頃から見知らぬ女性に後をつけられてると言うのだ。
主人には仕事帰りに夜食や朝食のパン等を近所のスーパーで買って来てもらっていた。
最初に不振に思った時、その女性とやたら目が合ったそうで知り合いかと思い近くに寄って見たが、その瞬間 女性が目を反らして違う場所に移動したので主人も気のせいかと思い買い物を続けたそうだ。
レジに向かうと女性をまた見つけたが どうも視線を感じるらしい。
主人がレジに並ぶと女性は主人のとなりのレジに並んだ。
その間もチラチラと見られてる気がし、1度だけ女性の方を見ると確実に目をそらしたので主人も気分的に嫌な感じがして女性がレジに差し掛かったのを見計らって主人もレジの順番が来ていたので「買い忘れた物がある」とレジの方に謝りまた売り場に戻った。
その時に主人から「変な女がいる」と電話をもらっている。
「怖いから迎えに来て」とふざける主人に私は「何を言ってるの!」とたいして重くは受け止めていなかった。
主人が家に帰ってから話の続きを聞いた…
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「やっぱりオカシイ!」
帰宅した主人の第一声がこれだった。
味噌汁を温め直しながら私は問いかけた。「
で、結局どうなった?」主人は服を着替えながら話し出す。
その後、売り場をゆっくり一周してまたレジに向かった主人は軽い寒気を感じたという。
あの女がまた居た!!
観察してみると空の買い物カゴを下げているが先ほど買ったと思われるスーパーのマークの入った袋を持っていた。
レジに背を向け付近にある菓子類を手に取り食い入る様に見ていたが時折 振り返りレジに目をやっていたらしい。
しかし主人は途中でバカバカしくなってきて【何で俺がよそよそしくしなきゃいけないんだ!!】と女性の後ろをドカドカと歩き会計をすませると主人は足早に店を出たそうだ。
これが怖いもの見たさなんだろうか?後ろを振り返るとスーパーの出入口に立ち尽くしこちらを見る女性を確認した。
【やっぱり見てるよな!何なんだあの女!】
このおかげで主人は全速力で家まで走ってきたらしい。
食事の間中、昔の彼女だとか、恨みをかってるんじゃないかとか話は盛り上がり…
その後しばらく私は「今日は居なかった?」と帰宅した主人に問いかけたが「いや、逆に意識してる自分も嫌だから…何かされたら警察に届けるまでだ!」との夫の言葉に私も納得して それ以降は女の話は持ち上がらなかった。
しかし話しには続きがあった様なのだ…
不審な女との出会いの次の日は買い物はせず主人は真っ直ぐ家に帰って来た。
この日 女を見かけなかったと言っていたが実は電車の中で見たらしいのだ。
その日は朝から強い雨で主人が帰る頃には小雨になっていたが雨の途絶えない1日だった。
帰りの電車は混んで乗れない程では無いがそこそこに人が入っている。
電車に乗り込んでしばらくすると手にした鞄を後ろに誰かに?強く引かれ鞄に目をやった。
ピンク色の傘の持ち手が主人の鞄の持ち手に引っ掛かかっていたようだ。
後ろを振り向き傘の持ち主の顔を見ると制服を来た女の子が下向き加減で「すっ、すいません!」と傘の持ち手を引っ込めた。
顔だけ後ろに向け「いいえ!」と女子高生に声をかけ前を向く間の視界に入った物。
右横のシルバーシート席のつり革に掴まり主人の方に顔を向ける女。
そうあの女だった。
【いつから居たんだよ】
主人は体が冷たくなるのを感じた。
【まさか…】
近所のスーパーで同じ時間に合うんなら同じ電車に乗ってても不思議は無い。
主人が乗る車両はいつも同じで降りる駅の階段に近い場所に乗っている。
主人は意識し過ぎだと自分に言い聞かせたが何かたまらず嫌な予感がして降りる1つ手前の駅で降りたというのだ。
同ホームには最寄りの駅に止まる他線の電車も走っている。
運良く他線の電車が到着した所だったので主人はその電車に飛び乗った。
【何でわざわざ電車を乗り換えてるんだか…】
電車が駅に近づき減速する
ホームに入り電車が止まりかける瞬間 胸の鼓動が強くなる。
階段付近の椅子に座りこちらを見る女。
主人はとっさに車両を移動しいつも使う階段とは別の階段を使い改札に向かった。
何か後ろを振り向くのが怖くて結局この日も走って帰ったらしい。
走って帰る最中 主人は色々考えていた。
【万が一ストーカーだった場合 家を知られたりしたら…家族に何かされたら…ただ何をされた訳でも無い。気にしすぎだろうか?】
家について私に女と会わなかったか聞かれた時、会ってないと言った主人の真意は【なんの関係も無い女に興味も持ちたくない!】という思いだったそうだ。
次の日からは女に会っても動じず家の付近でついてきてないか確認するくらいに留めたらしい。
正直 電車、スーパーではほとんど見かけたていたらしい。
主人は意識せず女の真横を通り、隣のレジが空いていると思えば女の後ろに並び変えたりした。
そんな時の女は一部始終 下を向いているそうで…ただ近くで見ると20代半ば位の女性に見えたと言う。
髪は肩までで栗色、中肉中背で服装はいつも黒いコートを羽織っている。
前髪が厚く目にかかりチラッと見える目が何とも不気味と主人は話す。
言われるとやはり気になる…
この日 主人はいつもより早めの家を出た。
家を出た瞬間は回りを見渡して警戒してみたが次第に駅に向かう人の流れが増えて来ると女の事も忘れていたと言う。
駅の近くの商店街は道が狭い。
右折しようとした時大型のトラックが左折してきた為 しばらく道の端で立ち止まる。
トラックの運転手が軽く会釈をした。
トラックが通り抜けた後、ガラス越しコンビニの雑誌コーナーが目に入る。
そこで立ち読みをしている人が数人…その中に雑誌で口までを隠し覗き込む様にこちらを見ている女性…
黒いコート…
あの女??
はっきり確認する事は避けすぐ様 右折したと主人。
【気にしないとはいえ見ちゃうと気分悪いんだよな】とそそくさ駅に向かったらしい。
【今のは見なかった事に】
今日は今年最後の出勤。
帰宅時に主人はある事を実行してみたと言うのだ。
この日に私は長年会ってない友人と食事の約束をしており主人には帰りが遅くなるので外食をしてと伝えていた。
主人は仕事が終わるといつも通り地下鉄に向かった。
普段ならここでは女の事等考えてもなかった。
しかし主人にはしっかり確かめたい事があったと言う。
地下鉄の車内は比較的空いていてほぼ必ず座れる。
主人はゆっくり左右に目を凝らす。
終着駅に近づくにつれ車内は混雑してくる。
まもなく終着駅に到着する。
いつもなら人の流れに紛れて降りるが今日はある程度人が降りてから空いた車内を見渡しゆっくり降りた。
降りてからもすぐに歩きださずホームの人がある程度退いてから乗り換えの改札口に向かった。
途中コンビニによりコーヒーとガムを買った。
その後少し離れたトイレに向かう。
主人は時計を確認する。
トイレを出て左右を確認する。
ゆっくりと私鉄の改札口に向かった。
年末といえこの駅はいつも人でごった返す。
いつもより30分程遅く到着した為 時刻板に目をやる。
まもなく急行が発車するがあえてその後に発車する各駅停車に乗り込んだ。
いつもの車両には乗らず車内を足早に1番先頭の車両まで移動した。
椅子には座らず車内が見渡せる様に運転手の居るガラス扉に背を向けて立った
その瞬間に車内にアナウンスが流れる。
電車がゆっくりと走り出した。
その時向かい奥の車両接続間のドアが開く。
キョロキョロ回りを見渡しながら車両にはいってくる女。
女。
黒いコートの…
そう!あの女!!
【ここから居たのか?何で同じ車両に来たんだ?いつも乗る電車じゃないのに…やっぱり付けられてる?】
主人は携帯を見るふりをしつつで女を観察した。
女は主人が立つ場所から2つ向こうの扉の近くで止まった。
顔だけをこちらに何度か向けている。
女の顔をしばらく見続けた。
目が合う。
主人はそのまま女に視線を送る。
女は視線を反らし下を向いた。
そのまま女を見続ける。
しばらくすると また女がこちらを見た。
今度はすぐに顔を背け額の汗を拭うような仕草をしたという。
主人は女の方に向けて歩き出した。
主人が歩き出したのを分かったのか女は急に主人の方に背を向けた。
主人はそのまま女を通り越し重いドアを引きいつもの四両目まで移動した。
席が空いていた為座る事にした。
進行方向の空間に注意を配りながら…
電車が駅に止まる。
再び動き出したと同時に…
【くそっ!一体なんなんだよ!】
そう 女が再び主人の後を追うかの様に車両を移動してきたのだ。
主人を見つけたのか車両入ってすぐのシルバーシートのつり革に掴まった。
主人から見て女が背を向ける格好。
暫く様子を伺ったが女がこちらを見る事は無かった。
【さすがに後ろを振り向いたら不自然だもんな…】
そして主人は最寄り駅の2つ手前の駅が近づくとまだ止まらぬ内に女の近くのドアに立った。
ドアが開くと主人は電車を降りゆっくりと歩き出した。
これは主人が考えての行動だった。
この駅はあまり人が降りない。
主人は変わらずゆっくり歩く。
改札に繋がる階段を上がる。
改札を出ると主人は突き当たりの壁まで行き勢いよく振り返り改札口を見た。
改札を出て来た女は顔を左右に振り慌てた様な仕草をして右に歩き出した。
主人から見て左前方の切符の自販機の横で女は止まった。
【もう言い逃れ出来ないぞ!】
主人は1度 時計を見てから左右の出口を確認すると左の出口を出て外にゆっくり向かった。
こちらの出口は車が走る様な通りも無く駅の側には寺がある
。
寺の横を過ぎると緩い上り坂になり住宅街に入る。
主人は階段の中間辺りに差し掛かると急に全速力で走り出したというのだ。
坂を上り切ると道は左カーブに平坦な道になり暫く行くと下り坂になっていた。
主人は右にあるブランコと鉄棒しかない小さな公園に入り身長と同じ位の植木の蔭に身を潜めた。
遠くからカツカツと靴の音がする。
強く打つ胸の鼓動。
体を緊張させた主人は坂に目をやる。
コツコツコツコツ…
靴の音が早くなる。
思った通り…
期待を裏切らず…
女が現れた。
坂を上がると一旦止まり辺りをキョロキョロ見渡しゆっくり歩き出した。
【誰かをお探しですか?】
主人は女が公園を差し掛かる瞬間に木の蔭から身を捩りだし公園の出口に向かいながら咳払いを強く二回した。
こちらに顔を向ける女。
主人はギッと女の顔を睨んだ。
「何?なんなの?」
主人は女に問いかけた。
すると女は逃げだそうとし主人はとっさに女の右肩を強く掴んだ!!
「ちょっと待てよ!なぁ!分かってるよな!俺が何かした?なぁ!何で後をつけてくる?」
「すっ、すみ…ません」
女は怯える様な小さな声で途切れ途切れに喋る。
「はぁ?!謝るんじゃ無くて…何でついてくるんだよ!」
主人はつい大きな声を出す。
女は震えている様で手で顔を押さえている。
主人はそんな女を見て何か力で押さえつけている感じがして我に帰る。
声量を下げ主人は再び問いかける。
「ごめん!悪い様にはするつもりは無いんだ。ただ俺も意味なく後をつけられたら良い気分ではないし…もし後をつけてるなら正直やめて欲しいんだ。」
女は以前 顔を隠して下を向いている。
長い沈黙の後
「分かった!じゃ首を立てか横に振って!」
と主人は提案する。
「俺の後をつけてるよね?」
女は少し経ってからゆっくりと首を縦に一回振った。
確信してはいたが鳥肌と寒気に襲われる。
「俺に何か言いたい事がある?」
女は顔に当てた手を放し下を向いたままで左手でコートの襟を強く掴んだ。
「俺に恨みがある?」
女は直ぐに首を横に振った。
「そう、じゃ好意かな?悪い意味はない?」
女は顔を縦に振った。
主人は続けた。
「ただその好意が恋愛の様な物だとしたら僕は答えられない。1番大事なのは妻で君には興味が無い。」
街灯のせいか女の顔が青白く浮かび上がって見えたという。
「あの…」
小さい声ではあったが力強く女は顔を上げて主人を見た。
「えっ、何?」
思わぬ声に主人は慌てて答えた。
女はコートのポケットに手を入れ何かをこちらに差し出して来た。
主人は恐る恐る女の近くに行った。
そっと手を出し主人はそれを受け取る。
〔ハンカチ?〕
ハッとする主人。
「これは…」
そのハンカチは汗の吸いが良いと主人が一時期、愛用していた物だった。
まとめ買いした色違いの物がまだ家にもある。
「これ俺の?」
女は頷く。
「えっ?これを拾ったから…渡そうと後をつけてたって事?」
女は下を向いている。
「あ~なるほどね。ごめん。なんか俺、勘違い発言したよな。そっか…」
居心地の悪さに笑うしか無い主人に女が微かに笑った様に見えたという。
「本当にありがとう。」
主人は深くお辞儀をすると「じゃあ」と声をかけその場を立ち去った。
【あんなに怒鳴ったりして…俺最悪だよな。でも…いつから持ってたんだよ】
握りしめたハンカチを無造作にコートのポケットに押し込めた。
昨年8月の暑さ厳しいある日。
使っているハンカチは薄手で汗の吸いが悪いと主人に言われた。
家にあるハンカチもだいぶ古くなっていたのでデパートで〔吸水性に優れる〕と書かれたハンカチを買った。
主人はそのハンカチを気に入った様子だったのでその後もまとめて同じ物を買い足した。
夏の間 主人はそれを使っていたが1枚ハンカチを何処かに落としてきている。
それが女の持っていたハンカチなのだが…
夏から今まで女はハンカチを持っていたんだろうか…
【もういい、忘れよう。あの人も善意でやってくれた事だ。】
主人は帰ったら私にこの事を話そうと考えていたが何か笑い話にするのもどうかと思いとにかく(忘れる)事で終わらせようと考えた。
改札に入る前に主人はポケットに入れていたハンカチをゴミ箱に捨てた。
主人は電車に乗りふと
【もう少しちゃんとお礼した方が良かったかな?何だか俺、逃げる様に帰って来たよな…失礼だったかな】
と思い返したが
次の瞬間には
「メシ何食べようかな~」と考えていたと主人は笑う。
結末は予想だにしなかったが気分もスッキリして気持ちも明るく感じた。
見知らぬ人に後をつけられるのがどんなに怖いか思い知らされたが何事も無く良かった…
明日からは冬休み。
今年ももうすぐ終わる。
帰りにお弁当を買い家に向かう帰り道、主人は今年の正月は家でゆっくりしようと考えていた。
これで終わっていれば……
正月は夫の考えた通りに初詣も地元の神社に行き福袋を見に近くのデパートへ行った後は家でゆっくり過ごした。
夜に主人が新しいダウンジャケットが欲しいと言うので明日は久々に川崎でも出かけようかと話をした。
次の日、私は早めに家事を済ませてから朝食を作り主人を起こした。
電車は想像以上に混んでおり川崎で多くの人が降りた。
昼食には時間が早かったのでまずは主人のダウンジャケット探しに百貨店に入った。
主人はどの色にするかを散々迷ったあげく昼食を食べた後、もう一度来てから決めると言い出した。
いつもこんな調子で結局買わないなんて事もしばしば…
何処で食事するか考えていた時 赤い電車が目に入る。
主人が
「どうせ来たんだ。大師に行ってみるか。」
「2日といえ混んでるよね。」
と私が言うと
「そうだな…でも今日なら屋台が沢山出てるよな。そこで何か食うか?」
「いいね!」
昨年は1月の半ばに来たのでスムーズに中に入れたがさすがに今日は駅付近でさえ物凄い混雑を見せる。
自分のペースでは歩けず前の人の歩調に合わせてゆっくり歩いた。
しばらくすると主人がトイレに行きたいと言い出した。
ちょうど近くにコンビニあり私はそこから少し離れた所で主人を待っていた。
すると一人の女性が私に寄ってきた。
「すみません!この辺りで紳士服が買える様なデパートなんかありますか?」
女性は笑顔で感じ良く可愛らしい声が印象的だった。
「紳士服?」
「あっ、彼に買うんです!プレゼントにと思って!」
大師に来て服を買うと言う女性を不思議に思いながらも川崎に出れば沢山あるでしょ言うと女性は
「あまりこの辺りが分からなくて!やっぱり川崎か」
と言いかけ後ろを気にした。
「品揃えは分からないけど隣駅にあるデパートがあるよ。私達も帰りそこに寄ろうかと思ってるんだけど。」
と話すと女性は
「ありがとうございます!」
とお辞儀をして駅の方に向かって走り出した。
その後 主人がコンビニから出てきた。
「誰かと話してた?」
「道を聞かれた。」
「ふぅん~」
ふいにソースの良い匂いが漂う。
「焼きそばが食べたい!」
主人が言う。
屋台を見つけると二人で最後尾に並んだ。
此処へくると正月なんだとしみじみ思う。
二人でお腹を擦りながら大きくため息をつく。
大師に向かう長蛇の列をみてそろそろ戻るかと夫が言う。
駅周辺は以前 人集りが出来ている。
途中で温かい飲み物を買い隣の駅まで歩いて行く事にした。
デパートに入ってすぐに特設会場があり福引や福袋を販売しておりなかなか混雑していた。
主人がここでもジャケット見てみると言うので私は一階の靴売り場に行くからと別行動をする事にした。
売り場に行く途中にウサギグッズのコーナーがあった。
フサフサで毛並みの良いウサギの縫いぐるみを見て思わず私は手を伸ばした。
その時 右横から私を遮る様に白い手が伸びて来た。
「これ可愛いですよね~!本物みたい!」
ハッとして横を向くとと笑顔で私を見る女性…
そう大師で声をかけられた女性だった。
「あら~!」
私が驚くと女性は手にしていた大きな袋を顔の高さに上げた。
中には綺麗に包装され大きなリボンが付いた箱が入っていた。
「聞いたイメージに近いすっごく良いの見つけました!彼も気に入ってくれるはず!!」
「あ~あ、それは良かったね!」
やや高い女性のテンションに戸惑いを覚えたが悪い気はしなかった。
女性は福袋も見て来ようかなと言うと可愛く笑い軽くお辞儀をして行ってしまった。
一部始終 笑顔の彼女を見て彼とは付き合って間もないのだろうと考えた。
しばらく売り場を見て回っていると主人から電話で
ジャケットは良い物が無つからなかったらしく、枕を買い換えたいと言うので私も寝具売り場に向かった。
しばらく買い物をした後 近くにあった喫茶店でお茶をした。
「タバコが吸いたい気分だ」
と主人が言う。
ちょうど一年前から主人は禁煙している。
吸っている頃の主人は よくタバコのストックが無いと落ち着かないと外出先でタバコが切れよう物なら大騒ぎで自販機を求めさ迷っていた。
かなり依存していたので私でさえ辞めるのは無理だろうと思っていた。
しかし禁煙する少し前に体調不良で病院に行くと喫煙は控えなさいと医師に言われただけで すんなり辞めてしまった。
「そう。」
私が言うと主人はコーヒーを飲んでため息をついた。
「さあ、後は川崎でジャケットと買うだけだね」
身支度をしながら私が言うと主人は
「何か疲れちゃったな。」
と肩を落とす。
「じゃ今日は買うのはやめとく?」
私が言うと主人は小さく頷いた。
最寄の駅に着く頃にはすっかり外も暗くなっていた。
家に着き鍵を探していると
「何だこれ?」
と主人が言う。
「何が?」
と主人に目をやるとドアの前に大きい紙袋が置いてあるのに気づいた。
家のドアにピッタリ着けて置いてあるので恐らく私達宛に置かれた物だと思うが…郵便物でも宅急便でも無さそうだ。
「開ければ分かるだろう?」
と主人は部屋に持ち込んだ。
荷物を置いて直ぐに主人は紙袋の中を確認した。
「何だ?」
主人は紙袋から出したそれを私に見せた。
薄い水色の包装紙に緑色のリボンがかけられた大きな箱が入っていた。
「開けちゃうぞ!」
「でも開けちゃて大丈夫かな?」
隣の部屋で買った荷物を仕分けしながら私が言うとに主人は
「大丈夫だろ。」
と無造作に包装紙を破り出した。
箱を開けると更に中の物が薄い紙に包まれていた。
「何かフワフワするぞ。」
そう言うと主人は無言になった。
「何だった?」
隣の部屋から主人の側に行くと主人はそれを広げて見ていた。
「えっ?これスーツ用のコート?」
私が言うと夫は
「だな。」
と頷いた。
そこには紳士用の黒いシングルステンカラーのコートがあった。
「紳士用ならあなたに誰かが持ってきたのよね?」
私が言うと主人は実家に電話してみるかと受話器を取った。
しかし、主人の両親はそんな物は届けて無いと言う。
その後、兄弟、親しい友人にかけてみたが答えは皆 一緒だった。
「誰だろ。もういいや。風呂に入ってくるよ。」
と主人はあっさり行ってしまった。
その時は私もいずれ送り主が誰か分かるだろうと思い包装紙は捨ててコートは箱に戻しクローゼットにしまった。
次の日、私は朝から体調が優れず朝食後に薬を飲むと主人は
「今日は一人で出かけて来る」
と言った。
「遊び程度にね!」
と主人を見送ると主人は苦笑いした。
主人が一人で出かける時は決まって行く場所がある。
着いた頃に電話すればその騒音ですぐに分かる。
まあ当たれば主人の臨時収入にもなるしストレス発散になっているんだろう。
この日1日 私の体調は優れず熱もあった為、帰ってきた主人にはお弁当で食事を済ませてもらったが主人はそれなりに楽しめた1日だったそうで…
主人から5000円を頂戴した。
明日から主人は仕事。
意味は色々だか本当にのんびり出来た正月休みだった。
次の朝には信じられない程体が楽で熱も下がっていた。
主人に言うと疲れから来たんじゃないかと言われ年末の大掃除が頭に浮かんだ。
主人が玄関で革靴を履き終え私の手から鞄を受け取りドアに手をかけた瞬間 私はアッ!と声を出す。
主人が振り返える。
コートの腕の内側の繋ぎめが大きく破れ中の生地が見えていた。
「うわ~。全然気付かなかった。いつから破れてたんだろ」
主人は脇を上げて破れた場所を見る。
私は慌てて他のコートを探しにクローゼットへ行く。
以前着ていたコートをハンガーから外し主人に渡した。
主人はすでにコートを脱いで待っており受け取ったコートを素早く羽織ると
「じゃ行って来る。」
と出かけて行った。
私は破れたコートを手に取った。
【買って一ヶ月も経ってないのに…】
私には直せないと判断し洋裁店にでも持っていくかと考えながらクローゼットにコートを入れた。
その時 昨日のコートの入った箱が目に入った。
私はコートをもう一度出して見てみた。
良く見れば色も型も破れたコートと良く似ていた。
これまたサイズもピッタリだ。
(ピッピッピッ)
洗濯機の終了音なる。
私は慌ててコートをしまうと洗濯物を干しにベランダに出た。
夕方、主人の帰宅後にコートの事を話した。
「そう言えば洋裁店8日から営業だったからまだ直しに時間かかるよ。」
「そう。しっかし、あんなに派手に破れたら気付きそうなもんだけどな。」
主人は着替えながらキッチンに居る私に話しかける。
その時 電話が鳴った。
「もしもし。」
私が電話に出るとすぐ電話は切れてしまった。
キッチンに戻る私に主人は
「何?間違い電話?」
「うん、すぐ切れた。」
主人は早く飯にしよう食事をテーブルに運んだ。
食事を終えお風呂に主人が入った後電話が鳴る。
食器を洗っていた私は手を拭い慌てて電話に出る。
「はいお待たせしました。」
「…」
「もしもし。」
「…」
先程の間違い電話を思い出し私は少し強い口調で喋った。
「どちらにおかけですか?もしもし!どちら様?」
暫くの無言の後
「チッ」
と声がした。
舌打ち?
私は頭に血が昇るのを感じ
「ちょっと!もしもし!嫌がらせ…」
話の途中で電話は切られた。
今までも間違い電話は何度かあったが こんなに長い無言電話は初めてだった。
しかし舌打ちされたのは非常に不愉快で舌打ちしたいのはこちらの方だ!!
お風呂から上がった主人に無言電話の事を話すと
「無言ならすぐ切っちゃえよ!相手にするな!」
主人は冷蔵庫を開け飲み物を物色している。
私はため息を一回つくと
「私もお風呂に入ってくるわ。」
と脱衣場に向かった。
その数分後に再び電話が鳴った。
主人は受話器を取った。
「はい、もしもし。」
暫く間を置いて主人が次の言葉を発しようとした瞬間
「…って。」
と、途切れた様な声が聞こえたと言う。
「えっ?もしもし?」
主人がとっさに聞き返すと
「きて…。」
雑音が混じり声はかなり小さく聞き取りにくい。
「来て?もしもし!声が遠くて聞こえないんですが…」
「…きて…。」
何となく繰り返しても意味が無いと感じ
「切りますよ。」
と告げ主人は電話を切った。
【家の電話がおかしいのか?】
無言電話も件もあったので主人はお風呂から出た私に携帯から自宅の電話に電話をする様に言う。
しかし特に異常は無くはっきりと声は聞こえた。
「重要な電話ならまたかかってくるだろう。」
そう言うと主人は小腹が空いたとキッチンにあったスナック菓子を開けて携帯のゲームを始めた。
「その声って男?女?」
「ん~、もう何言ってるのかさえ分からなかったからな~。でも何となく女ぽかったかな。」
主人はテレビを見ながら答える。
「電話といい、コートといい何か気味悪いよね…」
忘れていたと言う様な表情で主人は
「あぁーそうだな。しばらく保管して送り主分からなかったら交番に届けるか。家に置いといてもしようがないしな。」
その後無言電話がかかって来るは無かった。
次の週、私達は交番にいた。
訳を話すとコートは預かってくれたが住所、名前、連絡先を聞かれ主人がペンを取った。
🍀お知らせ🍀
読んで下さりありがとうございます‼
この度 別に『追う女』の感想スレを作りました✏
こんなつたない私の小説を迂濶にも読んでしまった あなた様🙉
〔何だこれは‼言いたい事がある‼〕
と思われた方はお気軽に
『追う女』感想スレ
に何でもお書き下さい‼
誤字、脱字があり読みにくい箇所、文章力の無さゆえ伝わらない内容はお許し下さいませ🙇💦
スローペースではありますが お付き合い頂けたら嬉しいです☺✨
「久々に交番に行ったから緊張した!」
と主人が言う。
「緊張?捕まる様な悪い事でもしたの?」
私は笑い主人の肩を叩いた。
「道でパトカーを見るとヒャっとするんだろ!」
「しないよ!パトカーに乗るような事だけはしないでよね!!」
「何言ってるんだ!俺は真面目を絵に書いた様な男だ!」
下らない話だけれど久々に大笑いする主人を見た気がした。
それからは無言電話も送り主不明の荷物が届く事も無かった。
破れたコートも無事に直って我が家に戻って来た。
主人は翌日すぐにそのコートを来て会社に行った。
平穏な日々が流れる中。
主人から告白された あの日へと繋がる。
私をテーブルに座らせ真剣な面持ちの主人、ポカンとする私。
「俺ね、知らない女に付きまとわれてる。」
「えっ、知らない女?」
「気付いたのは昨年の12月の中頃からなんだ。」
「えっ?なに何?目的は…??」
「……」
「へっ、あの、女って…あっ!…あの時の?!だって…」
混乱する私を正面から見る主人。
主人の話しはこうだった。
交番に行った翌日の事。
私が調味料が切れたと買い物に出かけた瞬間に自宅の電話が鳴ったと言う。
「はい、もしもし。」
「こっ、こんばんは。初めまして。」
「はい?」
暫く沈黙が続く。
「もしもし?」
「すみません!私、沢田と申します。」
「はい…」
見知らぬ女の声だった。
「あっ、コート届けて下さりありがとうございました!本当に助かりました。」
主人は受話器を強く握った。
「そうでしたか。あっ申し訳ないですが、自宅の電話壊れてまして…こちらからお掛けし直しますので連絡先を…」
女は無言になる。
主人は慌てる。
「あっ!じゃ私の携帯の番号を」
「はっ、はい!」
女は即答した。
女は主人の番号をメモる。
直ぐにかけ直すと言う女に訳も言わず明日の昼にかけて欲しいと伝えると
「分かりました。」
とすんなり受け入れた。
電話を切り主人は硬直する。
【今の女は誰だよ。】
主人は自分の携帯を慌てて探し手に取る。
しばらくすると近くにあった私の携帯が鳴り出す。
「持って行かなかったのか…」
コートの件で警察には
もし持ち主が見つかっても落とし主からの謝礼などは放棄したい。
のでこちらの連絡先も相手に教えぬ様にと伝えてあった。
それ以前に警察に教えた連絡先は自宅では無く主人の携帯番号だった。
【大丈夫か?!】
主人は部屋着のまま外に出て大通りの方に目をやる。
一度 家に入ったが しばらく考えた後、上着を手に持つと電気も消さずに家を飛び出した。
全速力で主人は大通りに出て駅の方に向かって走り出した。
「あっちょっとー!!何処に行くのよ!!」
主人は身を後ろに反らせ止まる。
「何処に行ってた?」
道を挟んで向こう側にいる主人は苦しくそうに顔を歪ませて言う。
「だから…買い物行くって言ったでしょ!」私の手に下げられた買い物袋を見て肩で呼吸をする主人。
「何よ?どうかしたの?」
「あの、(ハァハァ)あっあれだ!何か、(ハァハァ)炭酸飲みたくて。」
「それなら昨日買って冷蔵庫に入れてあるでしょ?全部飲んじゃったの?」
「いや、そうだった。」
主人道を渡りこちらに来ると私の手から荷物も取ると帰ろうと手を引いた。
私はこの時、明らかには不自然な主人の行動に何かあったのかとは感じたが家に帰って美味しそうに炭酸を飲む主人を見てそれ以上話を聞く事はしなかった。
その日の夜 主人はなかなか寝むれず結局 朝まで起きていたと言う。
起きている間に考えていたのは電話の女の事。
誰だか分からない。
女は嘘をついていて不審人物であるのは確かだ。
しかし女の目的が自分である事は間違いないと強く思ったと主人は言う。
警察に相談しようかとも考えたが女が誰かも分からない。
沢田の名前だけで手がかりは何も無い。
ただ下手に動いて妻である私に危害が及ぶのだけは避けたいと主人は考えたのと同時に女が嘘をつく訳を知りたいと純粋に思った。
翌日、会社に着くと主人は交番で
〔警察署で落とし物は保管される〕
と聞いたのを思いだし休憩室で警察署に電話をした。
主人は交番に届けたコートについての謝礼等は放棄したが落とし主が見つかったら連絡だけもらえないかとお願いした。
「まだ落とし主は見つかって無いですか?」
「そうですね…」
電話に出た女性は気付いていても衣類等は取りに来る人は少ないと笑いながら言った。
電話の女がコートを受け取っていないのは確かだ。
なのにあたかも受け取った様に装い、誰が届けたかも知っている。
その上教えてもいない自宅の番号を知っている。
確認しなくとも全てを知っている。
【なんの為…?】
その時ふと私が出た無言電話の後にかかってきた電話を思い出したと言う。
「きて…。」
雑音の中 声が遠く聞き取り難かったが確かに来てと聞こえた。
きて…。
来て。
き…
着て…??
あれは着てと言ってたのか?
送り主不明のコート。
「着て」と言うだけの電話。
頭が混乱する。
【なんの為に…そんな事をして何の為になるんだよ!】
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