『桜咲く頃』
野球の話です⚾
登場人物(軽く紹介)
⭐青井 拓也
アオイ タクヤ 右投右打ち
中3。高校野球の名門、橘高校への進学を希望する。
⭐青井 卓三
アオイ タクゾウ 右投右打
40歳。拓也の父親でプロ野球選手。チームの守護神として活躍中。
⭐柏木 武弘
カシワギ タケヒロ 右投右打
中3。橘高校のライバル校、大倉高校への進学を希望。
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第1回 青井拓也の最後の試合
‐安田中学 野球部グランド‐
ここ安田中学の野球のレベルは、決して強くはなく、ましてや弱いわけでもない。普通といった所だろう。
しかし、この中学には各高校のスカウト達が集まっている。
その理由はプロで守護神として活躍中の青井卓三(アオイタクゾウ)の息子がいるからである。
そして各高校のスカウトが見守るなか…安田中学と渋谷西中学の練習試合が始まった。
安田中学の先発はスカウト注目の青井卓三の息子、青井拓也(アオイタクヤ)。
試合は0対0のまま9回裏 安田中学の勝ちは消えたが、なんとか引き分けに持ち込もうと安田中は必死だった。
先発の青井拓也も各下相手に、ここまでは危ないながらも無失点ピッチング。順調に2アウトまでいった。青井拓也にとって中学最後の対戦相手となるバッターが打席に入る。相手は渋谷西の小林一郎(コバヤシイチロウ)。カウント2ー3…青井拓也は最後の一球を捕手のミットに全力で投げた。しかし、投げたボールはミットに入らず小林一郎によって場外へ飛ばされた。
『ゲームセット!!0対1で渋谷西のサヨナラ勝ち!!』
審判が高々と声を上げた。
マウンドの青井拓也は呆然としている。
>> 2
第3回 桜咲く頃
渋谷西の小林一郎に劇的なサヨナラホームランを浴び、青井拓也の中学野球は幕を閉じた。試合後、各下相手にギリギリの投球をしてしまった青井拓也の評価は下がっていた。しかし、青井拓也の将来性を買って出たのが橘高校だった。橘高校は甲子園の常連校として知られる名門である。青井拓也は、橘高校進学を決めた。
一方、完封という最高の形で試合を終えた柏木武弘。試合後には各スカウトが是非我が高校へと勧誘していた。柏木武弘は、その場で決めた。進学先は大倉高校であった。打線は凄いが投手が少し欠けている大倉高校。大倉高校野球部の監督も柏木武弘には期待しているとの事。
そして4月の桜咲く頃…
青井拓也、柏木武弘を含めた野球少年たちは高校野球という舞台で花を咲かそうとしている。
>> 3
第4回 闘将!砂川監督
橘高校に入学した青井拓也。
入学式が終わると早速、野球部に行ってきみた。さすが甲子園常連校ともあって練習も凄い。グランドに響く声、舞い上がる砂、バットにボールが当たる音、とても活気がある。
陰で練習を見ていた青井拓也に1人の男が話しかけてきた。
男『何している?』
拓也『いや…練習を見に…』
怖い顔をしている男に少しビックリしていた。
男『なら、こっちに来い』
そう言われると男はグランドの方へ歩きだした。
野球部員『こんちわッー!』
練習していた野球部員が、男に向かって一斉に挨拶した。
青井拓也は、その時、感づいた。
この人が橘高校の監督だ…と。
男『私は橘高校野球部の監督をしている砂川一夫(スナカワカズオ)だ。』
砂川監督は、とても熱い人で、なにより部員からの信頼もあつい。
拓也『こ、こんにちは!青井拓也です!』
この時、青井拓也は先輩たちの迫力に圧倒されていた。
>> 4
第5回 橘高校野球部
監督『このグランドにいるのは2軍の選手たちだ。1軍は遠征中だ。』
青井拓也は驚いた。あれだけの練習風景を見せられたあとでは仕方のない事である。
監督『みんな、新入部員に挨拶だ』
そう言うと、選手たちは次から次へと自己紹介を始めた。
部員『俺は3年で2軍キャプテンで捕手の藤井透(フジイトオル)だ。』
部員『2年!チームの4番!安國伸太郎(ヤスクニシンタロウ)だ!ま…2軍だがな。』
部員『俺は2年で外野手の真木陽介(マキヨウスケ)。本当は1軍なんだが、肩の調子が悪くてな。』
この後も自己紹介は続き、数分後、自己紹介が終了した。
そして砂川監督は急遽、明日、新入部員と2軍での試合を行うと発表した。
監督『明日を楽しみにしている。』
>> 5
第6回 新入部員VS2軍
‐試合当日‐
監督『それでは、両チームのスタメンを発表する。』
・橘高校2軍
1真木陽介 右
2○○
3○○
4安國伸太郎 三
5藤井透 捕
6○○
7○○
8○○
9○○
(○○は重要な部員じゃないため無名)
・橘高校新入部員
1小金井鈴丸 ニ
2○○
3小林一郎 一
4泰平ひかる 右
5清松俊介 遊
6篠原庄太郎 捕
7アレックス 中
8○○
9青井拓也 投
監督『以上。審判は私がやろう。』
青井拓也はスタメンを見て驚いた事がある。
中学時代、サヨナラホームランを打たれた渋谷西中の小林一郎がスタメンにいたのだ。そのほかにも、今日の試合を楽しみにしている者ばかりだ。
そして、ついに砂川監督が試合開始の声を上げた。
>> 6
第7回 緊張の初マウンド
‐1回表 2軍攻撃‐
青井拓也の高校野球の初マウンド。相手打者は1番ライト真木!
真木先輩の肩は完治していて、この練習試合で結果を出せば1軍復帰への近道となるため、やる気十分だった。いきなり橘高校1軍レベルの打者との勝負という事もあり、緊張したのか高めに浮いたストレートは右中間を抜けて2ベースヒットとなってしまった。その後も青井拓也は相手打線につかまり1アウトも取れず3失点。
砂川監督、コーチなどが見守る限り、青井拓也の投球は全く2軍に通用していなかった。
ここでバッテリーを組む篠原庄太郎(シノハラショウタロウ)がタイムをかけて青井拓也のもとへ来た。
篠原『全然ダメ。球に力がなくなってきてる。』
拓也『…あぁ』
篠原『だが俺なら、これ以上の失点はなくせる。』
拓也『え!?』
篠原『ここは1つ俺のサインに従ってくれないか?』
>> 7
第8回 信頼出来る捕手
篠原『ノーアウト、ランナー1、2塁のピンチ。無理に三振は狙わず相手に打たせてやれ。』
自分の力じゃ抑えられないのを分かっている青井拓也は素直に篠原庄太郎に従った。
相手打者は4番、安國伸太郎。
しかし篠原庄太郎の構えた位置はド真ん中だった。
篠原『おもいっきり来い!』
言われた通り青井拓也は全力で投げた。
ボールは篠原の構えた所と全く違い、インコース高めにいってしまった。
その瞬間、青井拓也は、しまったという気持ちでいたのだが、打者の安國伸太郎はボール球をフルスイングしてきた。打球はショートゴロとなり内野ゴロゲッツーとなった。
篠原庄太郎が笑っているのが見えた。
試合を見守るコーチ陣は…
『さすがね。』
『あぁ。青井に、全力で投げてもらうために真ん中に要求。制球力のない青井は暴投。しかし安國伸太郎はボールの見極めが苦手でボール球に手を出してくれる。投手、相手打者の2人の特徴をとらえたからこそ生まれたダブルプレーだ。』
>> 8
第9回 無安打無失点
その後は篠原庄太郎のおかげで、最低限の失点で7回5失点の結果だった。
一方、新入部員の打線で目立ったのが、バントがうまく、俊足の小金井鈴丸、ここまで打率10割の泰平ひかる、2本塁打を放ったアレックスの3人。
そして8回から青井拓也に代わりマウンドに立った今野康平(コンノコウヘイ)。
この1年生投手に誰もが目を丸くした。青井拓也が全く抑えられなかった2軍相手に2回無安打無失点の投球内容。球速が早く、ストーンと落ちるフォークに空振りする打者が目立った。
試合は5ー3で2軍が勝った。
???『あぁー!?なんだこの試合はぁ!!』
大きな声がグランドに響いた。
1軍だ。1軍の部員たちが遠征から帰ってきたのだ。
>> 9
第10回 橘高校1軍
真木『この怒鳴り声は鮫島先輩だ。』
鮫島清志(サメジマキヨシ)。守備位置はセンターで強肩強打の3年。
鮫島『なに、新人相手にギリギリの試合してんじゃ‼なぁ小雪!』
小雪『それほど魅力のある新人さんがいるんだよ、きっと😊』
大声で話す鮫島清志に対し、静かな口調で答えているのは小雪潤(コユキジュン)。3年だ。セカンドで広い守備範囲が持ち味の選手。この2人以外にも続々と1軍選手が帰ってきた。
監督『よし、ちょうど1軍が帰ってきた所で今日はここまで。明日ミーティングを行う。そこで新人選手の第1段階の評価を伝える。評価は100点満点でつける。以上!』
橘高校部員『お疲れっしたー‼』
拓也『お、俺は何点かな…』
篠原『0点だろ😁』
拓也『なにー‼』
その後、1軍の先輩たちに挨拶をし、明日のミーティングを心待ちにしていた。
>> 10
第11回 監督の評価
‐ミーティング当日‐
監督『それではミーティングを始める。』
ミーティングには、橘高校野球部が全員集まっていた。
そして1年生は、みな緊張を隠せていない。
監督『評価は紙に書いてきた。それでは点数を発表する。』
そう言うと、大きな紙に1人1人の点数が書いてあった。
小金井鈴丸…60点
小林一郎…40点
泰平ひかる…70点
清松俊介…20点
アレックス…70点
篠原庄太郎…50点
今野康平…70点
青井拓也…20点
以上…。
拓也『えッ…にじゅっ…てん?』
篠原『ははは!打倒だな😒俺のリードなかったら0点だったんじゃね?😁』
監督『えー…70点以上が合格。合格者は頑張り次第で1軍は近いと思ってくれ。』
泰平『よしッ!』
アレックス『ワァオ!』
今野『・・・・・』
監督『それと、真木!!お前は今日から1軍昇格だ。』
同じ1年のライバル達にも負け、散々な結果に終わったミーティングだった。
>> 11
第12回 2軍監督
篠原『青井、まぁドンマイだな!俺も2軍だし、お互い頑張ろうな!』
拓也『篠原は50点だけど、俺なんて20点だぞ…』
???『俺も20点だぜ!』
青井拓也が振り向くと、そこには清松俊介(キヨマツシュンスケ)がいた。
篠原『清松って…確か全打席三振のやつだよな??』
清松『まぁな!だが守備は誰にも負けない自信があるぜ!』
拓也『守備?』
篠原『青井も清松の守備に助けられたのは何回かあった。』
清松『まぁ!同じ20点同士、仲良くやろうぜ!』
そう言うと清松俊介は去っていった。
青井拓也ら2軍選手は、午後の練習を始めていた。
監督『集合!今日から俺は1軍中心に見る。そこで今年も2軍監督をやってもらうのは崎原2軍監督だ。』
崎原監督『今年もよろしく。1年生は初めて見ると思うが、これからコミュニケーションをとっていきたいと思う。』
青井拓也たちの2軍は崎原明(サキバラアキラ)が監督となった。
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