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聖〔他人の添え星〕

レス19 HIT数 2991 あ+ あ-

東雲南風( Ciw6h )
08/03/14 18:14(更新日時)

聖〔他人の添え星〕

僕の名前は関本潤一。今まで普通の人生を歩んでいる。人並みに勉強して一流ではないがそこそこの大学に入学していた。
普通に友達がいて、普通に彼女がいる。バイトだってコンビニや居酒屋だ。
その生活に疑問なんて抱いた事なんかなかった。
いつの間にかそこにいた「あいつ」と出会うまでは。

No.1157597 08/02/19 00:36(スレ作成日時)

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No.1 08/02/19 17:39
東雲南風 ( Ciw6h )

「あいつ」は僕と同じバイト先にいた。
「関本くん久しぶり」僕の目を見て「あいつ」が言った。
なんだこいつ・・・久しぶり?何処かで会った事あるのか…
また「あいつ」が話しかける。
関本君小学校以来だね」
「あいつ」は僕の小学校の時の同級生だと言っている・・・
頑張って思い出そうとしたが僕の記憶の中に「あいつ」は存在していなかった。だけど「あいつ」の話す話は僕の記憶にもある…
「まぁ影の薄い奴っているから」とか思いながら、昔からの友人として、接して行くことになった。

No.2 08/02/20 16:28
東雲南風 ( Ciw6h )

「あいつ」の名前は、矢野聖《ヤノヒジリ》男性・一応大学生。

容姿はかなりの男前…吸い込まれそうな切れ長の目の持ち主だ。〔ちょっとむかつく〕

性格はかなりの快楽主義者・・・
自分が楽しむ為ならどんな苦労も厭わない、見てるこっちが恥ずかしくなるくらい純真な悪戯っ子って感じだ。
僕と出会った次の日にどんな悪戯なら笑って許せるのか、アンケートまで作ってきた・・僕は久しぶりに大笑いした。本当に何年かぶりに心から笑えた。

No.3 08/02/21 14:34
東雲南風 ( Ciw6h )

そんな聖と仲良くなるのに時間なんて掛からなかった。
そのまま穏やかに時は流れ僕は就職していた
聖は相変わらずの大学生・・・
快楽主義者の聖にとっては大学生というものは、本当に居心地の良い立場なのだろう。

こっちが心配してもお構いなしのあの態度にはかなりのむかつき具合なのだが…
周りの友達は『聖だから仕方無い…』と言う話がほとんどだった。
「まぁ・・・仕方無い」(笑)
子どもから大人に成ろうとしていた僕にとっては、そんな聖のことが本当に羨しく思えた

No.4 08/02/22 23:31
東雲南風 ( Ciw6h )

>> 3 でも…それは大きな間違いだった・・・

僕が仕事をしだして、二年が経ったある日を境に僕が普通だと思っていた人生が音を立てて崩れていった。
それは僕の上司、木島宗一郎この人の一言から、僕の本当の人生が始まってしまった・・・
いや、気付いてしまった。
僕は入社してすぐに、木島さんの部下になった。本当に面倒見が良くて仕事もできる、木島さんを尊敬していた
その木島さんがその日こう語りかけてきた。
「聖を知ってるんだな」

No.5 08/02/23 17:21
東雲南風 ( Ciw6h )

>> 4 「聖を知ってるんだな」
いつもの木島さんからは想像出来ないような悲しそうな、そして怒りを押し殺すような声。
その時の僕はなんだか怖くて木島さんの顔を見る事が出来なかったが・・・今ははっきりと解る。
その時木島さんは泣いていた。
木島さんが語りかけてきた時、いつもの僕なら、聖がまたとんでもない悪戯を木島さんにしたのか?と。
思うはずなのに・
僕の頭の中には聖と出会った時の事が不意に思い出された。

No.6 08/02/25 18:21
東雲南風 ( Ciw6h )

幼い時に出会っていたはずの、聖の記憶がないこと・・・僕は正直怖かったが、木島さんの問い掛けに「はい」そう答えた。
「やはりそうか」
僕はすぐに聞き返した「聖がどうかしたのですか」
しばしの沈黙の後木島さんの口から理解しがたい言葉が発せられた「聖は・・・」
「私とも同級生だった」僕は唖然としたが、すぐにからかわれたと思い。「もしかして、聖に頼まれて僕の驚いた顔でも写メにでもとってくるように言われたんですか」
僕がこう言い返すと、木島さんは僕にこう聞き返す・・・
「聖との記憶・・・」

No.7 08/02/26 17:40
東雲南風 ( Ciw6h )

「聖との思い出に気になる事があるだろう」その言葉は、僕に恐怖を与えるのには、充分だった。
「木島さんは何を知ってるのですか」
この僕からの問い掛けに。
「私が何を知っているかを話すには、関本・・・君の口から聞かなければならない事が一つだけある」
その時の僕は、何故か木島さんの聴きたい事がすぐに解った。
今まで誰にも言わなかった話・・いや、言えなかった話だ。
「父親の事ですね」
その言葉に木島さんは安心したかの様な声で「すまない」とだけ答えた。
そして僕は真実を語る・・・

No.8 08/02/27 17:23
東雲南風 ( Ciw6h )

僕にはもう父親しか居ない。母は僕が高校生になる日に死んだ・・・その時に言われた言葉「お前さえいなければ」父親の言葉だったそれを聞いた時理解した。父親は僕と同じ事を考えていたのだと。昔からずっと思っていたこと〔父親さえ居なければ〕
これと同じ意味の言葉を聞いた時・・・
母が死んだという事実を前にしても。
僕の顔には笑みがこぼれていた。

No.9 08/02/28 17:08
東雲南風 ( Ciw6h )

僕は葬儀が終わった後母方の姓に変えた。
お互いに邪魔だと思っている父子には、ごく自然な成り行きだった
いつからこう思っていたかは覚えていない。でも、川の流れに身を任せている葉っぱの様に。 ごく自然に
〔お前さえ居なければ〕と思う様になっていた。この事を素直に木島さんにつげた。
木島さんは少しの沈黙の後、こう問い掛けて来た。
君は宿命というものを信じるか・・・・
僕は戸惑いながらも、信じますと言った木島さんは深く深呼吸をして、僕の目を見た
僕にはその一瞬がとても長い時間に感じた。それは、今から語られる信じがたい話を信じる為の準備期間・・・そんな気がしたとても長い時間だった。

No.10 08/02/29 19:02
東雲南風 ( Ciw6h )

その長い一瞬が終わると、こんな言葉が聞こえた。
聖は普通の人間ではない。
聖は逃れられない宿命を告げる役目をしている。
宿命を告げられた者がどんな人生を歩んでいくのかを楽しんでいる
私は聖の事を【Joker】呼んでいる。
そう木島さんから告げられた。
その時僕の頭の中には聖の目が、あの吸い込まれそうになる目が。思い出された。

No.11 08/03/05 18:11
東雲南風 ( Ciw6h )

木島さんは続ける
私は告げられた宿命から逃れてはいない…
僕は聞き返した
木島さんの宿命とは何なのですかと。
しばしの沈黙の後
聖に宿命を告げられた者に手助けをしなければならない。
これが木島さんの宿命だった。
その言葉が疑問を掻き立てる。
僕の宿命・・・
木島さんは明日になれば聖に告げられると
いっている。
その告げられた宿命を変えたいのなら出来るかどうか解らないが必ず協力すると。
その言葉に何故安心感を感じたのかはわからなかったが、自宅へ向かう時間がこんな話を聞いた後だというのに驚くほど冷静だっだ。
そのままゆっくりと眠りについた。
そこで僕の時間は凍りついた。

No.12 08/03/06 16:30
東雲南風 ( Ciw6h )

自宅のベッドの上
天井が見えるはずの、その場所に聖がいた。「聞いたんだろ?木島から」
僕は怖くて仕方がなかった。本当に怖くてそこから逃げたくて仕方無かった
「無理だよ」
聖が続ける。
「君に告げなきゃならない、解るよね」
その言葉が僕の中の恐怖を掻き立てる。
そして僕の凍り付いた時間はその冷たさを増す。
その冷たさに耐えられなくなっている僕に聖が語りかける
「そう・・その顔だよ・・・」
そう言った聖の顔は、いつもと同じ無邪気な「あいつ」だった。

No.13 08/03/07 17:41
東雲南風 ( Ciw6h )

いつも見ていた聖の顔が僕の凍り付いた時間は溶けていた。
僕は無い勇気をふり絞って問い掛ける。
「なんで僕なんだよ…僕みたいな普通の人生の何が楽しいんだよ」この問い掛けに聖が答えた。
「普通?違うよ・・・関本君の宿命は普通の人とは違う」
そして、その後に続いた言葉が僕の体に突き刺さる。
「君は、君の嫌いな、大嫌いな父親の為にうまれてきたんだよ。父親の人生の重しとして作られた・・【あいつさえ居なければ】君はその為だけに生まれてきた。だから君の母親が死んだのは父親のせいなんかじゃないよ。解るかい・・・君の父親の奥さんは君のせいで死んだんだよ。
もう解るだろ・・・
君は自分の人生を歩く事はない。」
【だって君の人生なんて始めから無いのだから】

No.14 08/03/10 15:52
東雲南風 ( Ciw6h )

聖の声が僕の頭の中に響く。
僕の目からは涙が溢れていた・・・想像もしていなかった事に驚いたのか、自分の人生が無いという事が悲しいのか解らなかったが、とにかく泣いていた。
「君は一年後に死ぬよ」聖が続ける。
「どんな死に方なのかは言えないけど、君は死ぬよ。これで君の父親の人生は素晴らしい物になるだろうね」
「君がこれからどんな人生を送るのか楽しみだ」
僕はやっと理解した。木島さんの言う意味が。何故あの時木島さんは泣いていたのか。
「戦う」僕の口から思わず出た言葉・・・
そして思い出す。昔読んだ物語に書いてあった言葉。
「運命は人の歩みし道、宿命は神が定めし不変のもの」
その言葉に納得していた。たぶんそうなのだろうと。
でも・・・僕は戦いたい・・・自分の人生を、他の誰の為のものでない、自分自身の人生を作る為に。
そして僕は聖をみつめた。
「まだまだ楽しめそうだ」聖はそう言い残し僕の前から姿を消した

No.15 08/03/11 16:39
東雲南風 ( Ciw6h )

僕が目を覚ましたのはそれから三日後だった。目を覚ました僕の傍らには、心配そうな顔をした女性がいた。
阿久津菜緒・・・僕の彼女だ。
「やっと目ぇ覚ました」優しい声だった。
この声が好きだった、とても優しい声・・・大学からずっと一緒にいた彼女・・・
「聖君から聴いてびっくりしたゎ~、潤一が風邪ひいて寝込んでるって教えてくれたん。後で聖君にお礼いうといてな」
大好きな菜緒だけど、この標準語のまざった関西弁だけは、勘弁して欲しい・・・
「ちゃんとお礼しておくよ」菜緒はいつもどおりの優しい笑顔だ。この笑顔が僕の心を助けてくれる。このまま何もしなければ、この笑顔はあと一年で消える。僕があの時「戦う」と言えてなかったら、今こうして菜緒の笑顔なんかとても見てはいられない。
「よかった」僕がこうつぶやいた時、菜緒は不思議そうな顔をしつつも。
「うん」と、
言ってくれた。
僕の時間はもうゆっくりとは、流れては、くれない。

No.16 08/03/12 15:59
東雲南風 ( Ciw6h )

彼女に聖の事は言えない。迷う時間はなかった。残された時間は、宿命と戦う事に使う。僕は聖との経緯を木島さんに伝えた。
木島さんは僕の宿命を知っているようだった「君のするべきことは二つある」
この時の僕は「戦う」という事をなめていた・・・
木島さんの言う二つの事・・・その一つは僕にとっては他愛もない事、【君の父親の人生を奪う事】
でももう一つのするべき事に、僕は絶望を覚える。
【君の最も大事な人の人生を奪う事】
菜緒の事だ・・・
木島さんに問い質す、「これは聖が決めたルールなんですね」
僕のその言葉に木島さんは覚悟を決めたかのように語り出した。
君の人生は君の為に存在していない、だから作る為に必要なんだ、二つの人生が。
木島さんは続ける。
聖は陰と陽・・二つ手に入れて初めて新しい物が生まれるといっていた、そして君への伝言も預かっている。
僕は怒りに震える体を押さえ付けて、聖からの伝言を聴いた。

No.17 08/03/13 17:15
東雲南風 ( Ciw6h )

【関本君に新しい人生が作れるといいのにね・・・期待しているよ】この無慈悲なルールに踊らされる僕を嘲笑う、自分が楽しむ為には、どんな苦労も厭わない無邪気な悪戯っ子・・・。初めて会った時と同じ気持ち。
聖は何も変わらない。
木島さんが僕に問い掛ける・・・
「手伝うことは、あるか?」
僕はその言葉に何も返す事なく自宅に帰った
そしてその時からもうすぐ一年になる。

僕は明日死ぬ・・・

No.18 08/03/14 16:06
東雲南風 ( Ciw6h )

何も出来なかった僕が
たった一つ出来た事。それは、菜緒と別れた事・・・それだけだった。
僕は弱かったのだろうか・・・・
それとも強かったのだろうか・・・
そんな事を考えている間にその時がきた。
僕の目の前には大きなトラックがいる。
こんな最後なのだと判ったとき・・・
聖の姿が見えた。
そして聖はつぶやく
【つまらない・・君ならもっと面白い事をやってくれると思ったのに】
その言葉を聞く事が、僕に出来る精一杯の復讐だった。
他人の添え星として生まれてきた僕に出来る事は、
何もしない事・・・
聖を楽しませない事、たったそれだけの、つまらない復讐。

No.19 08/03/14 18:14
東雲南風 ( Ciw6h )

でも、なんだかとても気分がよかった。
僕は自分の意思で自分の人生に幕を下ろす事が出来たのだから・・・僕は幸せだ。
そして最期のとき。
僕の視界は暗くなり、微かに聖の声だけが聞こえる
【君が何もしないのはわかっていたよ。本当に楽しませてもらった】
【無駄な努力ご苦労様】

僕が死ぬとき、
聖は
無邪気に笑っていた。



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最後まで御付き合いくださった方々
ありがとうございました。

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