作者はあなた✨ケータイ小説

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2009/02/16 23:50(更新日時)

小説書くの好きな人😃
読み切りなカンジでタイトルも付けて、ちょっと怖いミステリー小説書いて下さい✨

上手い、下手とかは気にしないで、思いついたら載せて下さい✨

No.1157375 (スレ作成日時)

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No.151

ー続…



カイ君は私の提案に黙って頷いた。急に無口になったなこの子…。

「あれ…急に無口になったねこの子?」

何でか知らないが私の考えてることが筒抜けている。となりの大吾に筒抜けている。いや、単純に同じことを考えているだけなのかも知れないけど。
しかしコイツと同じ思考レベルなのかと思うとかなりショックだ。

「……ッそれじゃあ他に仲間を探しましょうか。まだ時間もあるしね!」

腕時計を見ると既に七分経過していた、コイツのせいで七分も経過していた。
後三分か…せめて後一人くらいは…

「…あれ…」

カイ君が口を開いた、見ると右手で何かを指差している。
何だろう…?

『んん…?』

私達は視線を向けた。十メートル前方に蠢く陰が見える、草場の中でよく見えないが確かに人みたいだ。

大吾に背を押された。
《この野郎》と思いつつも、私はソッと近づいて声を掛けた。

「…あのぉ…」

私が声を掛けると、影はピクリと反応した。
何なんだろうか…この人は…何をしてるんだろうかこんな所で。

『…小便かな?…』

《ドスっ》

『…グェッ…!』

品も無いのかコイツは…と思いながら私は大吾の腹部に肘うちを喰らわせた。

No.152

ー続…



私は腹を押さえてうずくまる大吾を尻目に、ゆっくりと影に近づきもう一度声を掛けようとした…

「あの…」

「メガネッッ!!!」

「ッッわひぃ!!?」

突然の叫び声に私の方もかなりビックリした。しかもかなり恥ずかしいリアクションを取ってしまった。
姿勢を取り直し目の前の人物をもう一度視認した、頭やら肩やらに草の葉っぱが大量に付着している。
本当に何をしているんだろう…目の前のこの、やつれ顔の女性は。

「…えっと…あの…大丈夫ですか?」

どこをどう見ても大丈夫には見えないが一応訊いてみた。…害は、無いよね?

「あのぉ…」

「……ね…」

「え…?」

「…がね…」

「えっと……スイマセン、何です?」

「メガネ…」

「め…がね?💧」

「メガネ…落とした…」

「………えっと、あっ……在りましたよ!そこ!そこ足元に在りますよホラ!」

よく見ると彼女の足元にメガネを発見した。ホントに気づいてないみたいだから代わりに取ってあげた。

「はい、どうぞ…」

私は女性にメガネを渡してあげた。女性は何も喋らない。

「……」

ワナワナと震える手で彼女は私の手からメガネを受け取った。変な人だな、と思った。

No.153

ー続…



女性は朝露に濡れたメガネを掛けると、ポーカーフェイスを保ちつつ肩や頭に乗った草の葉っぱを叩き落とした。
視線はずっと私を捉えていた。

「…りがと…」

多分『ありがとう』と言いたいのだろうな。

「…どう致しまして。」

「礼には及びませんよ。アッハッハッ!」

それ…私のセリフだよね大吾。
…私が大吾に呆れているとカイ君が服の袖をグイグイと引っ張ってきた。

「おばちゃん時間は…」

「え…?」

時計を見ると後二分を切っていた。ソロソロ時間だ。

「えっと…大吾…そろそろ準備を……ッ!?」

大吾の方を振り向くと、私の目の前に女性の顔が迫っていた。怖い。

「あの…何です…か?」

「…川島…玲奈…」

「え…はい……?」

「名前…川島…玲奈…」

「えっと…カワシマ…レイナ…さん?」

女性はコクリと頷いた。単語しか喋らないのかこの人は…。

「えっと…川島さん、お互い頑張りましょうね。」

私は苦笑以外の表情が浮かばなかった。とりあえず早くこの人とは別れたい。そう思った。

No.154

ー続…



しかしこの人は私とは正反対の思想を密かに抱いていた。

「それじゃあね川島さん…」

「……ま…」

「え…?」

「…かま…」

「……すみません、え…何?」

「仲間…」

「…ナカマ…。え…?」

「仲間…に…なってあげる。」

「………」

…この人は、本気なんだろうか。本気なんだろうな…。
困ったな、困ったぞ…どうやって断ったら良いのかしら。この人は無口だけど恐らくかなり頑固な方だろう。私の経験上…この手のタイプは大吾並みかそれ以上に扱いが難しい。

「……」

私はどうして良いか分からず、隣にいるカイ君に視線を移した。

『どうしよ…カイ君』

「……」

…彼は下を向いたままで何も答えない。絶対聞こえないフリしてるよね?

私は視線を前に移した。目の前の川島さん……の後ろにいる大吾に、何とかしろ!と視線でサインを送ったのだ。

《大吾!…大吾!》

しかし大吾は私の視線には気付かず下を向いている。
絶対気付いてるだろう、と思った。さっきまで半ばナンパ口調で口説いていたヤツはどこに行ったのだ。

視線を戻すと、川島さんが手を差し伸べていた。

「仲間…」


「…どうも…。」

結局私は彼女と熱い(?)握手を交わした。

No.155

>> 154 妤続妤


《ビ――――――ッ》


握手を交わしたその瞬間、音が鳴り響いた

どうやら10分経過してしまったようだ。
これからはこの四人で行動しなければいけない…
激しく不安だ

掴み所の無い軽いノリの青田 大吾
謎の少年、カイ
黒縁眼鏡のミステリアスな川島 玲奈

この面子で、本当にゲームをクリアしていけるのか…
そもそも、誰の差し金で、どんな趣向のゲームなんだろう…?


《…これより最初のミッションを説明いたします…》


いよいよゲームが始まる
果たしてどんな難題を出されるのだろう…


《…最初のミッションは・・・》


~つづく~


バトーさん、はじめまして溿ゆぅと申します珵

若輩者ですが、一日1レスを目標に頑張ります垬
よろしくお願いします珵

No.156

ー続…



《…最初のミッションは、樹海でのサバイバルです。
コレより樹海に入り、お宝を探し出してもらいます。お宝の場所は地図に書いてある通りとなっていますので、手分けして探し出して下さい。
三十分後にハンターを離します。

最終的には、ゲームスタートから四十分後に終了しますので…終了までの十分間はハンターに見つからないように気をつけて下さい。

もしハンターに撃たれた場合、お宝は没収。もう一度初めから再チャレンジして貰います。

それでは、

スタートーーー!!!》

______________



私達4人は、手分けしてお宝を探し出す事にした。スタートの合図が鳴ってから、一度固まって再度お宝の地図をチェックした。
他のプレイヤー達には聞こえないように、小声で最短ルート等を検討し合う。

「このルートはどうかしら、こう、こう、こう…と行けば短時間で人数分のお宝を確保できるんじゃない?」

私は地図の上のお宝があるポイントを指でポンポンと指し示した。



📴
ゆぅさん、此方こそどうぞ宜しくお願いします。

一日一レスも入れて頂けるなんて😂感激です。

コレからも、時間がある時は顔見せて下さいね😁




◎訂正
青田 大吾➡柳田 大吾

No.157

ー続…



私の提案に、メンバーは誰一人として何も答えない。ただ一人…大吾だけが少し苦笑を浮かべている。
いや、嘲笑っている。

「何よ大吾…文句があるなら言いなさいよね!」

大吾は相変わらず嘲笑しながら、ヤレヤレと鼻で溜め息をついた。

「いやね…確かに合理的だと思うよ?
合理的だと。
ただね、今この状況でそのルートを行くと…他のプレイヤー達と鉢合わせになっちゃうんじゃない?」



あ……
そっか………。



「まぁ最も、完璧に他のプレイヤー達と鉢合わせにならず…尚且つスムーズにお宝を確保できるルートなんてのは敵の現在地が掌握出来ない限りは…把握不可能なんだけど…ね!✨」

『キラーン』と奥歯が輝いた。アッサリと言わないでほしい。

「……じゃあ大吾…敵の位置分かるの?
地図には載ってないのよ?」

私は少し皮肉を込めて言った。コイツに思考が劣っているのかと思うと…何だか無性に悔しかったらだ。
私の問い掛けに、大吾は相変わらずニコニコしている。ナルシストめ。

「…うーん、ハッキリでは無いけどね。
概ね把握は出来てる。」

「え…ッ!そうなのッッ!?」

驚いた。だってコイツが其処まで考えてるとは思ってなかったから…。

No.158

ー続…



「……どうするの?」

私はコレから何をすべきなのか、大吾に尋ねてみた。大吾は相変わらずニコニコしている。

「まずは敵さん方の向かおうとする方角を確認するんだよ。
その為に…俺、カイ君、玲奈…の三人で、さっきからこうやって円陣まで組んで…三方向を見渡してたんだからね。
地図を囲んでるだけの様に見せかけて、実は敵の動向を観察してた…と言うわけさ。」

地図を囲んでる様に見せかけたのはおそらく…周りのプレイヤー達に感づかれ無い様にするためだろう。
彼らが…コレから向かおうとする方向を他のプレイヤー達が観察しているなんて知ったら、彼らは真っ先に方向と作戦を変えてくるだろうから。

大吾はそうならない様に、わざわざこうやって敵に顔を見せない円陣の形を取った訳か
……って、ちょっと待てよ_

「…何でアナタ達三人だけなの、アタシは!?
アタシはいつから外されたのかしら!?」

よくよく考えてみれば、円陣を組むときに
《他のプレイヤー達を観察しろ》と言う指示はなかった…そう、私にだけ無かった!
ソレに大吾に関しても、
《俺、カイ君、玲奈の三人…》と言った。今さっき確かに言った。

しかし私の名前は呼ばれなかった…!

No.159

>> 158 﨎続﨎


納得いかない!
一体いつの間に三人は結託したの?
意志の疎通はいつ行ったのよ…!

「だいたいの予想はしてて、このゲームに参加したからさ…
それに菜摘は…」

「菜月です!」
まったくアリエナイ!
二度も名前間違えるなんて!!

意に介した風も、悪びれも詫びもせず
「だいたい菜月は初心者なんだろ?とりあえず様子見って事で、足手まといにならないように付いておいで」

真っ白な歯をキラキラさせながら、爽やかに言い放った。


不当な扱いに、些か傷付いた…いや、大いに傷付いたぞ!私は!!



~つづく~

柳田昉苗字間違って申し訳ありませんでした
m(_ _)m昉

頭の中の修正完了です
(^^ゞ昉

No.160

匀続匀


だいたい何で皆この状況で慌てふためかないのか…

落ち着きがあり過ぎる!

この10分も、私以外であたふたしている人は居なかった…気がする。

…ちょっとショック…


「とにかく!私だって仲間なんだから!!
作戦、教えてよ…」


私は大吾を見つめたが、大吾はカイ君や玲奈に目配せする。

この通じ合ってる感が凄くイヤ…
疎外感満載だよ…?



本当に彼らに付いて行って良いのか

しかし一人で行動する勇気は毛頭ない。
今は彼らを信じるしか…

信じるしか道は無いのだ!!!



「とりあえず、しばらくは俺達に付いてきて。
少しでもこのゲームを知っている人間は、地図を囲むってスタンスが常套手段なんだ。
先ずは流れを把握してもらわないとね」

相変わらずニコニコと薄ら笑いを浮かべている。

余り良い気分ではないが、ここはとりあえず引くしかないのだろう…


ミステリーツアー…
今更ながらに、このゲームの深さを知った気がした…

No.161

ー続…



…ソレから私達は、ものの数分ほど黙って歩き続けた。会話はない。
湿った草が足元一面に広がっている。恐らくこの下の土はもっと湿ってるんだろうなぁ…。

周りには沢山木々が生い茂っている、コレは杉の木だ。周りの木々は全部…杉。しかもどの木にもビッシリ、コケが張り付いている。

「ねぇ…」

「うん?」

私はフと、ある事が気になったので大吾に尋ねてみた。

「ここの木ってさ、どれもこれも長寿木じゃない?」

「ん…あぁ、そうだね。」

ホントだ…と大吾は周りの木々を見上げながら答えた。
どの木も二メートル越えの太さだ。しかも高さならばその辺の学校の校舎にも負けてない位だ。
約3~40メートル位はある、メチャクチャ高い。

「でも何か変な気がするのよね、こんなに霧が張ってたら…太陽の光がまともに当たらないじゃない?
ソレに周りの木々同士がビッチリ引っ付いてるから、栄養だってまともに行き届かない筈…。

なのにどうしてここの木々は、こんなにも大きいのかしら?」

大吾は顎に手を添えた。




📴
ゆぅさん😚
もし時間がありましたら
「携帯小説の集い」と言うスレに一度顔を出して下さい😁
待ってます😚

No.162

>> 161 続


「……ゲーム…だからじゃないかな?」

めずらしく大吾が真剣な顔をしている…
と、思ったが

「俺達 ゲームの世界に招かれたんだよ。だから非現実的で違和感のある空間なんじゃない?」

やはり ちゃらけた笑顔でキラーンと白い歯を光らせた。
ゲームの世界?
大吾は何を言っているのだろう

「菜月も申し込んだんだろ?ミステリーツアー…」


今更ながらな空気が流れる…

な、何?まるでこの流れが解ってない私が悪いかのような雰囲気…
ていうか、皆はどこで“ミステリーツアー”の情報を手に入れたのだろう?
そういえば私は・・・

『…確 カ 私 ハ 仕事 デ…

「おばちゃんは特別だから」

思考を遮るように カイ君が言った。
“特別”…?

「菜月が特別?」

私の思考を代弁するように、大吾がカイ君に問いかける。


~つづく~

アルミさんの“携帯小説の集い”ですか蓜坥昉
実はこのスレ覗く前に一回覗いたのですが、サークルやコンパに途中参加するみたいな…盛り上がってるトコに水注すみたいで珵
でも誘って頂いたんで、後で行ってみますね昀

No.163

㈱続㈱

「おばちゃんは、ツアー側が特別に招待した人間だからね」

サラっととんでもない事を言ってのけたが、カイ君は別段 暴露話をした風でもなく

「だから余り詳しく無くて当然かもね」

淡々と語った。


「…俺は 金 目的。
このゲームをクリアして、最終的に勝ち残った者が手に出来る、優勝賞金が目当てでツアー申し込んだんだ」


「…探索…
…調べたい モノが…」


………皆それぞれ目的があって このツアーを申し込んでたなんて、考えもしなかった。

思考が全然ついてこない…

しばし呆然と立ち尽くした





ガサ
ガサ ガサッ…

一瞬にして緊迫した空気が張り詰めた

皆 一様に身構えながら 音がした方を睨みつける

“動物”…?
それとも“敵”か!?

ジリジリと後退りながらも視線は外さない。

ガサガサ…ガサッ


そこに現れたのは…!!

No.164

ー続…



「あれ……?」

私達は目の前のソレと目が合った。相手もジッとコチラを見つめている。
そう、私達の目の前に現れたソレは…


「……これ、タヌキ?」

突然大吾が口を開いた。ちょっと待って大吾…どうやったらタヌキに見えるの?

「いや、コレはどう見ても…アレでしょ…」

「………カピパラ………」

突然、玲奈さんが口を開いた。そう、確かに今私達の目の前にいるのは…世界最大のネズミと言われている哺乳類…カピパラだ。
全長は約1~2メートルの間くらい。小学校三・四年生くらいの子供ほどの大きさだ。

しかし、このカピパラ…何か変だ。何だろう…生きてる感じがしないと言うか…。

「……おぃ……」

『!!』

突然カピパラが声を発した。私達は驚いた。驚いて、私はうっかり尻餅をついてしまった。

「…な、何……?」

何だろう…このカピパラは、怖い、不気味だ、私は固唾を飲んだ。

すると、その時…突然カピパラが立ち上がった。四足歩行しかしない筈のカピパラが突然、後ろ足二本で立ち上がったのだ。
怖い…何だこのカピパラは…!!

「…オメェら…初心者かい?」

「え…?」

突然目の前のカピパラが口を開いた。
……え…何…コレ…?

No.165

ー続…



私達はその場に固まった。何だこのカピパラは…一体何者なんだろう?
見たところ…人が入ってるようには見えない。じゃあ一体…

「訊いてんだろが…答えたらどうだよ…あん?」

随分口の悪いカピパラだな…いや、そんな事はどうでも良い。
それより何なんだろうコレは…何なんだこのカピパラは…。

「えっと、僕ら全員初心者です。」

大吾がニコニコしながらそう答えた。何でアンタは平気なんだよ…この状況で…!!

私の考えを察したのか、大吾が私の方を向いて口を開いた。

「大丈夫☆多分このタヌキは…ロボットの類だろうから。」

キラーンと、また奥歯が光った。何度も言う様だけどタヌキじゃなくてカピパラだからね?
ソレと、『☆』はウザイからやめなさい…大吾。

「ロボ…ット?」

私はカピパラに視線を移した。カピパラはコチラを凝視している。怖い。

「なぁ……話、進めて良いかな?」

「…あ…どうぞ。」

私は立ち上がると、お尻をパッパと払った。しかし草についた露がしっかりと私のジーンズに染み込んでいた、ショックだ。

「うわぁ~ん…ベタベタ…💦」

私はその部分をタオルで押さえた。カピパラは黙ってコチラを見ている。何か申し訳無い…。

No.166

ー続…



「えっと…ところでアナタは?」

私は目の前のカピパラに尋ねた。一体何者なのだろう?

「…ん…?俺か…?
俺ぁ…カッピィ。
このゲームのナビゲーター兼、定時連絡係さ。」

「ナビ…ゲーター…?」

私は聞いた事のないその単語を尋ね返した。

「…まぁつまりアレだ。ゲーム終了時になったら、お宝を持ってるプレイヤー達を次のミッションに連れて行く役職だ。

他にも連絡事項なんかをプレイヤー達に伝える定時連絡係の役割もある。」

あぁ、成る程成る程。そう言うわけね。
…でも何でカピパラなんだろ。いや……まぁ、深く考えないでおこう…コレはゲームなんだから…。

「あ…そう言えばさ、さっき聞いたんだけど…このゲームって賞金が貰えるって本当なの?」

私が気掛かりにしていた事だ。

「ん…?何だ、知らないで申し込んだのか?」

目の前のカピパラは不思議そうに尋ねてきた、無理もない…私だって何が何だかサッパリなんだから。

「ナビゲーターさん?
菜津江はツアー側から特別に招待されたプレイヤーなんですよ」

「な・つ・きッッ!!!」

しつこい…しつこいぞ大吾、もう名前を間違うのは三回目だ。ひょっとしてワザと間違えてないか?
私は彼を睨んだ。

No.167

ー続…



しかし一方の大吾は反省する様子もなく、相変わらずニコニコしている。この野郎…。

一方のナビゲーター(カピパラ)さんは、
納得した様子で『ああ、成る程』などと呟いている。
納得して頂くのは大いに結構だが、出来ればその辺を詳しく説明してほしい。ツアー側からの招待…って、どういう事?
何なのよソレは?
ソレに聞きたいことは他にも山ほどある。

「このツアーの狙いは何なのよ?
他のプレイヤーはどうか知らないけど、私は何の触れ込みも無く、このゲームに参加したのよ?」

私は目の前のカピパラにコレまでの行きさつを語った。失踪事件の調査…ミステリーツアーの存在…インターネットの運営サイト…私がコレまで辿ってきた軌跡を出来得る限り全て正確に述べた。端で大吾が『うん。うん。』と相槌を打つのが少し気に食わなかったが、ここは我慢することにした。

そうして私は、モノの三分間ほど昨日の今日で…起こった出来事を全て語った。お願いカピパラさん、分からない事だらけなの…教えて、出来れば詳しく_

「悪りぃな姉ちゃん…規定で喋れないんだ。」

_…ダメでした。
ちょっと待ってよ!そう言う規定(?)……が、あるなら最初にそう言えよ!

No.168

ー続…



何か…一生懸命説明したのがバカみたいじゃないか私!!!

「…そう言う事は先に言って欲しいわね。こっちは貴重な時間割いて喋ったのよ…ッ!!?」

「君が一方的に喋りだしたんだろ。」

「うっ!……」

…何気に大吾にツッコまれた。悔しい。そんな私達を見ていたカピパラさんは一つ小さな溜め息を吐くと、お腹のポケットから何か道具を取り出した。ドラ○もんみたいだが、可愛くはない。

「姉さん、コレ…アンタのだろ。」

「え…」

そう言ってカピパラさんが差し出してきたのは私がいつも仕事で愛用しているカメラだった。
そう言えばツアーのバスに乗った辺りから何処かに行方不明になっていたのだった。多分バスに置き忘れてきたのだろうと思っていたが、まさかカピパラさんが持って来てくれるとは…。

「あ…ありがと。」

私は礼を言うと、素直にカピパラさんの手からカメラを受け取った。コレは以前勤めていた出版社で貰った…初めての給料で買ったカメラだ。
それ故に思い出深い物だ。まぁ…今となってはどうでも良い思い出なんだけどね…。

「俺は余計なことは言え無いが、ただ…
ん……ッ!!?」

その時だった…突然、カピパラさんの声を遮るソレが聞こえたのは。

No.169

ー続…



ー《ズガァァンッッ!!!》ー

森を裂く様な激しい轟音が皆の耳に飛び込んできた。

「……ッ何!!?」

一番最初に口を開いたのは私だった。轟音が…大きな稲妻のように森中に響く。すると木々から凄い数の鳥達が一斉に飛び出し、大空に広がって行った。

_怖い_いきなり胸騒ぎがし始めた。それも今までで一番の恐怖を孕んだモノ…その時傍らのカイ君が突然私の腕を掴んだ。

「おばちゃん…行こうっ!」

そう言うとカイ君は急に音のした逆方向に私を引っ張りだした。

「ちょっ…カイ君!何が」

_光が私の視界に飛び込んできた、次の瞬間私の声はかき消され、激しい揺れが私達の足元を襲った…そして同時に先程の比にもならない位の轟音が私達から聴覚を奪った_

『「……!…!?…』」

声にならない叫びを余所に_視界に映ったのは、前方…かなり前。距離は分からない。五十メートルか七十メートルか…ただ視界に映ったのは燃え上がる森林だけだった。そしてその…大きな大きな炎は、立ち上る煙さえをも飲み込んで…まるで巨大な大蛇の様に周囲を這いずり回っている。更にその炎は確実に_私達に向かって来ている。

No.170

ー続…



炎の大蛇は獲物を、私達を、見つけたと言わんばかりの勢いで迫ってくる。_あり得ない_

「湿地なのに…火の勢いが強過ぎないッッ!?」

私はカイ君に手を引かれながら精一杯走る、

「…ゲームだから、何でも在りなんだろうさ!」

私達の隣を、大吾と玲奈さんが走っている。ゲームって、ちょっと待ってよ…何なのコレッ!?
いつの間にかカピパラさんの姿が無い、ひょっとしたらあの大きな炎に巻き込まれた…

「ねぇ、さっきのナビゲーターさんは大丈夫かな!?
ひょっとして巻き込まれたりしてないよねッッ!?!」

大吾は私の方にチラリと目をやると、口元に笑みを浮かべて答えた。

「大丈夫!
そうならないようにプログラムされてるだろうから、このゲームは!」

私はそれ以上は言葉が出なかったが、不思議と心の奥底から安堵していた、何故だろう_

_「おばちゃん!其処の岩陰に入ろう!!」

カイ君が私の思考を遮るかのように、声を上げながら手を引いた、

「あ…うん!」

私は相槌を打って、その岩肌の裂け目に他のメンバー達と一緒に飛び込んだ。
流石に火の手は追ってこなかった…_



_「はぁ…ぜぇ…はぁ…なんなんだ…あの炎は?」

No.171

ー続…



「…はぁ…はぁ…し、知らないわよ…!」

私達は息を整えながら、現在の状況を確認しあった。
みんなが汗だくで息を切らしている中、玲奈さんだけは、まるで疲れを感じさせないかのようなポーカーフェイスを保っていた。
息切れもしてない…

「…はぁ、玲奈さん…持久力在るのね。」

やっと息を整えた私は、正直に玲奈さんを誉めた。

「…運動は昔から得意…」

「はぁ…はぁ…マジで…死ぬかと…思ったよ…ゼェ…ゼェ…💨💧」

何故か唯一筋肉質の大吾が一番バテている。その筋肉は飾りですか?

「カイ君…平気?」

「大丈夫だよ…。」

カイ君は、アレだけのスピードで走ったのにも関わらず、この短時間のウチにスッカリ息を整えていた。凄い…私もこの子と一緒に走ってたけど、こんなには元気になれない。
この子も凄い運動神経。って言うか…

「……ねぇ、カイ君さ…ヤケにこのゲームに詳しいよね?
ソレに…"私が特別"って…"ツアーの方から招待された"って言ってたよね?

…ソレって」

「オバチャンは僕と同じだから。
僕もツアーに招待された人間、《特別》な存在なんだよ。」

……特別な存在?……

No.172

ー続…



「…カイ君は、このゲームの事や私の事を…どこまで知っているの?」

カイ君はフと、怪訝そうな顔をした。
ソレは私の質問に不服があったからでは無く、
私が真剣な表情で…彼に問いかけた為かも知れない。
何にせよ…こんなカイ君の表情を見たのは初めてだ。ほんの一瞬の事で、そばに居る二人はまるで気付いて無いみたいだけど。

「…このゲームの関係者と知り合いなんだ…」

カイ君はゆっくりと口を開いた。顔を下に向けて…。

「…関係者?」

私はその言葉を反芻した。カイ君は続ける。

「…このゲームの主催者側の一人さ」

「………!!!!!…………」


…私を含め、その場にいた全員が驚いたのは間違いない。
大吾は言葉に詰まって口をパクパクしているし、玲奈さんに至っては呼吸どころか瞬きすら忘れている、そして私は…

「あ…っ……え…っと……」

やはり言葉が出ない。思考がピタリと止まって、頭の中が真っ白になる。
どう表現すれば良いのか、私が今、何を思い…何に戸惑っているのか、自分ですら、皆目見当がつかないのだ。

「…えっ…と、つまりカイ君は…その人から情報を貰った上で、このゲームに参加したっ…て事?」

「うん、ただ…」

No.173

ー続…



「…正確にはその人から情報は『貰った』ワケじゃなくて、『盗んだ』んだけどね。」

そう言って…口元に微笑を浮かべる彼の表情は、しかし、まるで感情を微塵にも感じさせないものであった。
私はまたカイ君の言葉を反芻した。

「…『盗んだ』…?」

カイ君は顔を上げ、真っ直ぐに私の目を見つめてきた。

「…そうだよ。
ハッキングしたんだ、その…知り合いのデータベースを利用してね。
まだ覚え立てだったから、バレてこのゲームに強制参加させられたんだけど。」

カイ君がそこまで言い終わるのと同時に、先程から微動だにしなかった玲奈さんが突然、彼の前に詰め寄った。

No.174

ー続…



「!……玲奈さん?」

突然カイ君の前に詰め寄った玲奈さんは、心無しか……少し顔を強ばらせているように見えた…

「……何……?」

「……少し…話したい……」

途切れ途切れに声を発する玲奈さんからは、確執にも似た何かを感じさせられた。

「…良いよ。何?」

「……二人で…話したいの……」

妙な重圧感に包まれた岩肌のなかで、私は初めて《心の壁》を強く意識した。
そしてどうやらソレは大吾も同じだったらしい、

「…ちょっと、ちょっと!お二人さん?
話し込むのは勝手だけどさ、ここにも他に二人居るんだぜ?

念の為に言っとくけど俺達はチームだ。組んでいる以上は、隠し事は無しだぜ?
話せないワケがあるのなら、せめて一言くらいは断ってくれても良いんじゃないかい?」

珍しくマトモな事を口にした。
無論、私も大吾の意見には賛成…だから否定も口出しもしなかった。

ただ玲奈さんからの返事を待つ…

「玲奈姉ちゃん、どうしても二人に話せないんなら…一言断りなよ。」

カイ君も私や大吾と同じ事を考えていたようだ、玲奈さんに説いかけた。


……って言うか、
私は《おばちゃん》なのに玲奈さんは《お姉ちゃん》なのね。
…なんか複雑…

No.175

ー続…



…それから色々あって、玲奈さんも一言断ってくれた。
私と大吾は暫く岩の奥の裂け目で待機することになった。


_「…ねぇ、あの二人…何話してるんだろ?」

私と大吾は丁度良いくらいの隙間を見つけ、そこで腰を掛けて話し込んでいた。

「ん…?
散策はしないって約束じゃなかったっけ?」

大吾はこの空間が気に入ったのだろうか、満足そうに岩肌にもたれ掛かっている。

「そんな約束した覚え無いんだけど?」

私の顔がおそらく怪訝そうだからかも知れない…大吾は真面目に、とぼけた表情を浮かべた。

「何よ?」

「あ……いや、
菜月とは約束してなかったっけなぁ~…って思ってさ……はは。」

大吾…ソレってまた、私だけ除け者にしたって事よね…?

私は自然と黒い笑みをこぼしていた。

「ふぅ~ん…他の二人とはそう言う約束したんだ?私の知らないウチに?」

「あ、いや~…その…」

「作戦の指示も出してくれなかったしね?」

「…あ、あれは…言い忘れてただけで…!」

「お黙りっ!!!」

私は大吾の胸ぐらを掴んだ。

「わ、菜月…抑えて…抑えて…!」

大吾は焦った表情で必死に私を制止しようとした。
しかし私は一層手に力が入る。

No.176

ー続…




「だいたいアンタはいっつもそう!!!
人の名前は何度も間違えるし、チームとか言って作戦の指示も出してくれないし、

かと思ったら今度は何!?
私は無視して他の二人とチームワーク?

大層な事じゃないけどねぇ、なんッッか、ムカつくのよ!!!



大体ねぇ、アタシだってこんッッな…くっだらないことでいちいちキレたくないわよ!!!

だけどねぇ、だけど物事にも限度ってモノがあるのよ!!限度ってモノが!!

アンタ分かる!?
このゲームが始まってから、アタシが何回アンタにウンザリしたか!分かる!!?」

「わっ…わっ…落ち着いて、落ち着いて、なつみ…」

「…………ッッ!!!



菜月だぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」






「ギャァァァァァァァァア!!!」














…数分後…











「…なんか、スゴい大声が聞こえたけど…何かあったの?」

カイ君が玲奈さんと手を繋ぎながら戻ってきた。この短時間でヤケに仲良くなったのね…

「ほほほ
何でもないわよ。(棒読み)

ソレはそうと…二人とも、もう話は終わったの?」

私が尋ねると、カイ君は手を繋いだまま玲奈さんの方に目をやった。こうして見ると、親子みたいだ…。

No.177

ー続…



「…終わった…」

『何が終わったの?』と尋ねてしまいそうな、低いテンションで、玲奈さんは簡潔に受け答えしてくれた。

「…そ…そう…。」

「ところで大吾は?
なんで白目で倒れてるの?」

いつの間にか呼び捨てにされるようになった大吾…カイ君は無機質に、倒れてる彼を指差した。

「……アハハ、
…馬鹿だから少し灸をね…。」

「……」

沈黙。まぁ、それが普通の反応だろう。

ところでコレからどうするか、外は火の海。
厄介なことに火の手は収まることを知らない、木が、森が、その姿を留めていないのに、炎だけが延々と燃え続けているのだ。
黒い煙は空高くに上がり、炎の赤が空一面に広がっている。
まるで大空襲でも起こったような光景だ。
私達は暫くその様子を眺めていた。

「さすがにここまでは火の手も来ないみたいだけど…」

「…長くは居られないよ。」

そう、時間内にお宝を見つけて手に入れないことには、ゲームクリアにはならないのだ。
ただでさえ、生き残るのに必死だって言うのに…。

「お宝を見つける余裕なんて無いじゃない…!」

コレでは何時まで経っても埒があかない。
なんとかしないと……。

No.178

ー続…




「この奥ってさ、行き止まりだよね?」

カイ君が、奥の方を指差した。
今、私たちが居るのは岩肌の裂け目の中だ。森から五・六十メートルほど離れた、岩山の隙間。

「うん。ダメみたい…。
さっき見たんだけど、通路が狭くなってるのよ。
人が通れる広さじゃ無いわ。」

たまたま逃げ込んだは良いが、ここから抜け出せないのが現状だ。
外は火の海、今ここを出るのはあまりに危険な選択だ。
しかし、かと言ってこのまま此処で待っていたら、タイムアウトだ。

「……」

私たちは考える。

そして、そうこうしている間にも、時間は刻一刻と過ぎて行くのだった。



「あのさぁー…」

そんな時だった、先程までグッタリと倒れていた大吾が、突然目を覚ましたのは。

「何よ…て言うか、気絶しながら聞いてたの!?」

「へへ、まぁね。」

神業だ。
きっとコイツは、これ以外に特技は無いんだろうけど…。

「要は此処から抜け出せば良いんだろ?
簡単じゃん。」

簡単じゃん。…っと、簡単に言うあたり、それなりに自信があると言うことだろうか。しかし、どうにも…不安だ。

「…詳しく聞きたいわね。
話してちょうだい?」

No.179

ー続…



自信満々に言う辺り、信用の出来る作戦なのだろう…と思いたい。

「だからさぁ、要はこの岩山を登れば良いんじゃないの?」

「……はい?」

私は思わず聞き返してしまった。

「だからさぁ、この岩山を登ったら先に進めると思うんだよね…」

「ハイハイハイ、聞いた私がバカだったわ。」

私は大吾の言うことに聞く耳を持たず、シカトする事にした。ところが、

「待ってよオバチャン、大吾の案は一理あると思うよ。」

カイ君がそれを止めた。

「な…え、ちょっと待って……本気なの?」

No.180

ー続…



カイ君は私の問い掛けに、コクリと首を頷ける。
私はその裂け目から、岩肌を見上げる。
岩の壁を目で辿り、視界に空が映ったのは、首がほぼ真上を向いた辺り。

「……高い。」

それ以上言葉が出なかった。
と同時に、物凄い冷や汗をかいてるのを肌で感じとった。
私は周りの三人に視線を移す。


「もうコレ以外に手はないよ。」

カイ君。


「ダメもとでもやってみようぜ!いざって時は助けてやるからよ!👍」

大吾。


「…やる。」

玲奈さん。


「…………」

「…分かったわよ…」

「…登るわよ。登れば良いんでしょ?」

「…ええ、登りますとも…富士山でもエベレストでも何でも登ってやるわよ!登れば良いんでしょうが、登れば!!」

そして、私。


そして、そうこうしているウチに火の手が完全に森を覆い尽くしたのだった。

No.181

ー続…



赤い空の下、私達は岩山の壁を登り始めていた。岩の裂け目の奥、岩肌が突き出しているところを素手で登る。と言うのが当初の予定。
しかしそれだと効率が悪い。なにより時間がないのだ。
だからここは、誰か一人が上まで登りきりロープを垂らす。そしてそれを伝って残り三人が登りきると言う作戦だ。

「大吾、しっかりッ!」

私達は、そびえ立つ岩山とそれを登る大吾に視線を向けていた。大吾は今、岩壁を死に物狂いで登っているため返事をしてこない。
ちょっとでも足場を崩せばすぐ、高さ約三メートルの所から転落してしまう。下手すれば大ケガだ。

私達は、ただ、見守る。


____
十分前
 ̄ ̄ ̄ ̄
「え…俺が登るのッッ!?」

「当たり前でしょ?
大吾以外に誰がいるのよ。
よもや、か弱い女性や幼い子供に登らせようって言うんじゃ無いでしょうね?」

「……ッ」

「どうなの?」

「お……俺が…登ります。」

「よろしい。
それじゃあさ、さっそくだけど…みんなの荷物の中にロープがあるじゃない?
それを繋げましょう。」

「上からこのロープで引っ張れば良いんだろ?
重くないよね?」

「どういう意味?💢」

No.182

ー続…



時間は刻々と過ぎて行く。私達は何とか岩壁を登りきり、岩山の上に居た。

「地図によると、この辺に在るハズなんだけど…」

指で地図をなぞる。現在地からすると宝の在処は丁度…

「…この付近…」

珍しく玲奈さんが口を開いた。私は頷くとみんなに分担して探すよう指示を出した。岩山の頂上はまた森になっているが、この方が敵からの発見を避けることが出来るはず。
丁度眺めも良いから辺りを一望できる。
しかし、時間はない。ここも早く逃げないと…いつ爆発するか分からない。
私達の眼下の炎に包まれた森の様に…。

「しっかしっ…始まって早々に森を焼くとわね。
意地悪なトラップだこと…。」

「菜月ーっ!!菜月ーっ!!」

大吾の声がする。
何か見つけたんだろうか?
私は声の方へ駆け出した。

「…どうしたのッッ!?」

「カマキリの卵見つけた!!」

次の瞬間私は、我を忘れて大吾に飛びかかり関節技を掛けていた。大吾の、声にならない叫びが森中に木霊した。


それから暫く経ち、カイ君と玲奈さんのペアが宝の在処を発見した。私はズタボロになった大吾を引きずって、二人の元に駆け寄った。

「おばちゃん」

「見つけた…」

カイ君、玲奈さん。

No.183

ー続…



私達の目の前には、石造りの小さな矢倉があった。そしてその中に一つ、葛籠(つづら)が入っていた。
私達は葛籠を取り出し、蓋を開け中を見た。

「あ…」

「コレ…が…宝?」

私達は中の宝を取り出すと、葛籠の底に紙切れが入っているのを見つけた。読んでみると…

《おめでとうございます。ソレが次のステージへ行くための鍵となります。
制限時間まで無くさないよう、気をつけて下さい。
では、残り時間をお楽しみ下さい。》

…どうやら、このステージはこの宝でクリアー出来そうだ。

葛籠の中に入っていた、この…懐中時計で。
葛籠の中には合計で五つの懐中時計が入っていた。純銀性のなかなか豪華な時計だ。
一人に一つずつ持たせれば、人数分は足りる。一人分余るが問題ない。次のステージに、持って行けるからだ。
みんなの時計を見たが、全て同じ時間を指している。
一時二十八分。
先ほどゲームの案内書を読んだところ、開始から五十分後にゲームは終了するという。そして、開始から三十分後の時点で…

「ハンターが投入されるわけか…」

後、二分足らずでハンターが来る。
…と言ってもよく分からないので、身構えて草陰に息を潜める。

No.184

ー続…



ハンターの姿、形、大きさが分からない以上、下手に姿を晒すのは危険な選択だ。
生憎、たいした武器も持ち合わせてはいない。此処は隠れて様子を伺うのが上策だ。

「…ねぇ、ハンターって強いのかな?」

カイ君が珍しく質問してきた。

「さあねぇ~…。
少なくとも、一筋縄ではいかない気がするわね。」

「この火の森を抜けてくるのかな?」

カイ君が私に視線を向けてくる。気のせいだろうか、その目には一点の不安も無いようだった。

「…どう…かな。
ひょっとしたら岩山の中から突然現れたりして?」

怪獣映画さながらの演出…いや、それ以上に迫力がありそうだ。
だけど、もし、そんな事になったりしたら私達だって危ないのは事実だ。
そう考えると段々不安になってきた…

「ねぇ…場所…変えない?」

苦笑いをしながらの私の提案に、一同は目を丸くした。

「…いや…今からは危ないん…じゃ、ないかな?」

流石の大吾も言葉を詰まらせていた。何を言ってるんだろ…私。

「あっ……そ、そうよね!
あはは…じょっ、冗談よ!冗談っ!」

我ながら下手な芝居だ…。

No.185

ー続…



それから約二分が経過し、懐中時計が30分を指した頃…ヤツらは現れた。
それは突然何の前触れもなく私達の上空…地上数十メートルの地点を飛んで、轟音を鳴らしながらやって来た。

…デカい…

「な……んだ…ありゃ…ッッ」

「ウソ……っでしょ……?」

地鳴りにも似た轟音を鳴らしながら私達の上空にやって来た…それは…

「…対人兵器…」

カイ君の言うとおりだ。それはあらゆる条件下に適した構造を持ち合わせ、人間を狩るのに最適な形をしている。まさに殺人機とはこの事だろう。

不思議な円盤の様な…しかし人ひとり位は入れそうなコックピットの部分がおそらく本体だろう。
その本体には、地面を歩いて動くための脚が二本ついている。
私は機械にはあまり詳しくなかったが、昔こんな感じの機械を映画で観たことがある。
厄介な事に、この機会はその映画のモノとソックリなのだ。

…ガトリングガンが装備されている…

「あれを喰らったら蜂の巣だぜッ…!!」

大吾が、震えている。
よく見ると私自身も震えていた。

…見つからないで…

見つかったら、絶対に一貫の終わりだ。私達は、その機械が立ち去るのを固唾を飲んで待った。

No.186

―続…



私達は息を潜めて、ただソレが通り過ぎるのを待つことにした。轟音が、耳に刺さる。
ハンターは何かを探すかのように、あたりを伺っているようだ。コレはマズい。
もし今見つかったら、ソレこそ一貫の終わり。もしそうなれば何をされるのか…想像するのも恐ろしい。
私は息を止め、ただジッと、草の陰で姿勢を低くした。
私だけじゃない…大吾や他のみんなも気配を殺して、ハンターから存在を隠す。


暫くハンターは何をするでも無く、私達の上空に駐留していたのだが、やがて何かを見つけたらしく…急にソレまでとは違った轟音を発した。



《グモオォォォォォォォォォォォオッッッッ!!》



地を裂くような轟音が、まるで獲物を補足した肉食獣のようだ_

とっさに、本体部にある赤いランプが光る。
肉食獣は一度狙った獲物は逃さない。必ず捕らえようとする。
そして、コイツもその例外では無いらしい_

(…!)

_視界が、消えた。
激しい轟音と突風、
次の瞬間…私達は風の餌食となった。



______________



「……ん…」

「…ゃん…」


(…んっ……誰?)


「…おばちゃんッ!
…っ菜月おばちゃん!」

「ん……っカイ…くん?」

No.187

―続…



私は目を開けるが、視界がぼやけて何も見えない。
やがて少しずつ視界が戻ってきた。

「カイくっ___…!?」

突然の耳なりと、激しい頭痛が私を襲った。まだ脳が揺れているのか、それとも頭蓋骨に穴でも開いてしまったのか…なんて錯覚まで起こしてしまった。
幸い、それは杞憂だった。
私は頭を触ってみたが何処にも穴などは開いておらず、また、耳鳴りも頭痛も嘘のように段々と和らいでいった。

「どこも痛まない?
大丈夫…おばちゃん?」

カイ君が私の隣に腰掛けて、ジッと私の顔を見つめながら訊ねてきた。私は、状況もよく分からないのに嬉しかった。

「…大丈夫よ。ありがとう。」

微笑んで、私は重い体を持ち上げた。
腰のあたりが少し痛むが、他は何ともない。幸い、ケガは無かったようだ。

「…みんなは…!?」

大吾と玲奈さん…
私が辺りを見回すと、二人は隣に寝かされていた。まだ気を失っているようだ。

「幸いケガは無いみたいだよ。
大吾は膝のとこ…擦りむいてたけど。」

カイ君が自分の右膝のところをチョンチョンと指差す。
私は安心し、ホッと一息ついた。
周りを見回すと、そこは先程までいた岩山の壁の中だった。

No.188

―続…



「飛ばされてきたんだよ、僕ら。」

気絶していたため記憶が曖昧になっていたけど、カイ君のその言葉で段々と状況を理解し始めた。

「…そうだ…!
私達、あのロボットに…」

「うん。飛ばされたんだよ、ココまでね。」

すぐさま私は立ち上がると、岩の裂け目から外を見た。辺りは相変わらずの火の海だった。

「…ココからの風景じゃ、何も見えないわね。」

私は、心臓がバクバク言ってるのを感じ取った。あの巨大が…まだ外を彷徨いてるのかと考えると、ソレだけで…寒気がした。

「…大丈夫。
此処は安全だから。」

カイ君の方を見ると、落ち着いた表情で口元に笑みを浮かべていた。

…その瞬間、私は不思議な感覚に襲われた…

妙な……安心感……の様な感覚。いや、まるでその瞬間に全てが決定した様な…そんな感じだった。


そしてソレは現実の物となった。



…十数分後、ゲームが終了した。
私達は、次のステージへ上ることとなった。
結局、大吾と玲奈さんは気絶したままゲームの終了を迎えることとなった。
…私はカイ君とは一言も言葉を交わさないまま、ゲームの終了を迎えた。

No.189

―続…



第二章



私達は突然眠気に襲われ、気がつくとどこかの建物の中にいた。かなり広い部屋で、四方はコンクリートの壁、床、天井で囲まれている。
広さは大体…面積は50メートルくらいで、天井の高さは3メートルくらいの正方形な空間だ。
壁には扉が一つ、天井には小さな換気扇が幾らか間隔的に付いている。
そして大きな四角い柱が4・5メートル間隔で立ち並んでおり、外の景色は一切見えないが、おそらくここは巨大なビルの一室だと思われる。
何も無いせいか、余計に広く感じてしまう。

私達は其処で、出入り口用の扉に設置されたスピーカーから、この第二コースに関する説明を聞いた。

ルール自体は第一ステージと全く同じで、今回は舞台が変わるだけだそうだ。
大吾と玲奈さんは目が覚めたら第二ステージにいて、少し混乱した様子だった。
例のハンターに吹き飛ばされて、一時的に記憶が飛んだみたい。
目を覚ましたと思ったら、暫く黙り込んで頭の中を整理し始めた。ちなみに大吾に至っては、軽くパニックを起こしていて宥(なだ)めるのに少しばかり時間が掛かった。

No.190

―続…



ゲームが再び開始されるのは二時間後だそうだ。
それまでは各自、この部屋の中で好きなように過ごして良いとの説明がなされた。
…しかしこの無機質な部屋では、出来ることに限度があるのでは無いか…。

「ウォウ!ウォウ!ウォウ!
第一ステージ、クリアだァ!!」

…そして大吾の異様に高いテンションに、私はどう対処をしたら良いのだろうか。

「缶ビール飲みたい…」

とりあえず合わせておこう…かな。

「僕コーラが飲みたい。」

カイ君も私の方を見ながら、そう漏らしてきた。
何気に目が…真剣だ。
でも…ごめんねカイ君、私に言っても何も出ないのよ…?

「俺はジンジャエールが飲みたいなっ!!
ハッハッハッ!!!」

そして相変わらずノリの良い大吾…を尻目に、玲奈さんは足を組んだまま黙って床を見つめている…。
なんか…学生時代にいたな…こういう子。

「…玲奈さんは何飲みたいの?」

…雰囲気に流され何気なく訊ねてみたが、言ってすぐに後悔した。
何をバカな事を訊いてるのだろう、私は。玲奈さんがこんなバカなやり取りに参加する筈無いじゃない…

「……ず……」

「…え?」

「……みず……」

「………みず?」

彼女はコクリと頷いた。

No.191

―続…



「……水…ね」

まさかまともに答えてくれるとは思わなかった…。
…ちょっとビックリ。

「ノリが良いね」

そこでカイ君も会話に参加。私と玲奈さんは無言で向き合い、大吾が横でオナラをした…

「…って…クサっ!!」

「あっ…ごめん。」

ごめんで済む…けど恥を知れ!一応レディーの前なんだぞ!
大体何だ…このタイミングでいきなりのオナラって!!?
…と喉の辺りまで出そうになった言葉を、私は寸前で飲み込んだ。ここで吐き出してしまったら、女を捨ててしまうことになるからだ。

「大吾…今度から離れた所でしなさい。」

なんでこんな小学生にするような注意を、大の大人相手に…しかも男性にしなければならないのだろうか…
ひょっとしてコレは何かの暗示なのかもしれない、神様が私に
《良い縁談は無いよ》
と告知しているのかも…
それはちょっとシャレにならないな…
…なんて考えていたら、カイ君が服の袖をクイクイと引っ張ってきた。

「ん…どうしたの?」

カイ君は妙に私に懐いてくる。初めて会ったときもそうだったが、今でもしばしば私の事を気に掛けてくれる。
…子供がいると言うのはこういう感じなのだろうか?

No.192

―続…



…なんて、バカげた妄想に浸っていると、カイ君がゆっくりと口を開いた。

「…おばちゃんは……」

…そこで、カイ君は言葉を噤んだ。私は、彼が何かを言おうとしているのが分かったから、敢えて言葉を促すように訊き返す。

「どうしたの?」

出来る限り優しい声で、なるべく落ち着いた表情を浮かべながら、ゆっくりと声を掛ける。
子供に言いづらい事があるときには、出来る限り棘の無い姿勢になり子供の警戒心を取っ払った上で聞き手に回る。
…と言うのが私のやり方だ。
これでも一応、学生時代は保母さんになるのが夢だった。これはその時の名残のようなものだ。

「……」

しかしカイ君は黙り込んだまま全く口を開こうとしないのだ。表情も、なんだか少し堅い。
…私は、妙な違和感を覚えた。

「…何でも無い。」

カイ君は、下を向いたまま走り去ってしまった。
私は今まで色んな子供を見てきたが、あんな表情をする子供は……見たことがない……
私はその時はじめて、カイ君に対し…妙な違和感を覚えた。

いや、本当はこのゲームが始まったときから気付いていたのだ。
彼が、何か重大な鍵を握っていると言うことに…
そして…まもなくソレが現実のものとなる。

No.193

―続…



《コレより、
第二ステージに移ります。》

入り口のスピーカーから機械の声がして、私達は皆、扉の前に集まった。
無機質な鉄の扉の前には、幾つかの集団が作られている。
チームでクリアしたのは、どうやら私達だけでは無いようだ。

「ワクワクするねぇ…」

大吾がいつにも増してニコニコしている。どうやら、彼なりにこのゲームを楽しんでいるようだ。もっとも、その割にはあまり活躍しなかったが…。

「ところで菜月さ、第二ステージって……今回が初めて?」

「…え?」

…それは勿論、

「……初めてだけど、何?」

「ん…いや、訊いてみただけ。」

(……?)

大吾は時々、何の脈絡も無い質問をしてくるときがある。特につまらないヨタ話をしているときなどは、それが多い。
でも今回は…何だかいつものそれとは違うような気がする。

「…本当にそれだけ?
他に、何か言いたいことがあるんじゃ無いの?」

こう言うとき、妙な予感が的中したりする。案の定、今回も的中してしまったみたいだ。

「……実はさ、今回のゲーム…
…四人全員でクリアするのは、ムリかな……って思ってさ。」

「………はい…?」

頭の中が、カラッポになった瞬間だった。

No.194

―続…



一瞬の余白が空いた後、私が大吾に事情を問いただそうと口を開いた次の瞬間。
言うが早いか、突然、入り口の扉が開いた。と同時に、私達は白い光に包まれ…次の瞬間、目の前が真っ白になった__




__視界が、一瞬にして元に戻る。まずは輪郭。その次は色。
最後に…目の前の景色を脳が感知した。

「……!……」

(此処は…)

私はその光景に…目を奪われてしまった。
辺りは静まり返っていて、冷たい風がソッと、私の肌を吹き抜ける。凍えた大地に足が触れているのが分かる。

…此処は…

「……久し振りに…
戻って来たなぁ。」

「…!」

突然大吾が、頭をポリポリと掻きながらそんな言葉を呟いた。
…久し振り?

「…どういうこと?
大吾、来たことあるの?」

「ん?……まぁね。
…言って無かったっけ?
俺、菜月達より前から、このゲームに参加してたんだよ。
初めて菜月達と遭った時が、丁度…このステージでミッションに失敗したときだったんだ。」

それは初耳だ。てっきり大吾もビギナーだとばかり思っていたから…。
って、ちょっと待てよ…

「ひょっとして…カイ君や玲奈さんも?」

コクリと、玲奈さんが頷いた。
カイ君は…

あれ?

「…カイ君が…いない?」

No.195

―続…



_静まり返った大通りと、破壊されたビルの残骸。
此処は近未来、核戦争で崩壊した未来都市…まさにそんな言葉が似合いそうで殺風景なこのステージは、遠い昔に観た映画とよく似ていた。

「…っカイ君……カイ君!!?」

「お――い!!!カイ!!
何処だ―――!!?」

私達はビルの残骸跡や土が剥き出しになった大通りを、必至になって歩き回った。
しかし、カイ君の姿は何処にも見当たらなかった。

「なぁ…もうやめないか?」

突然、大吾がそんな言葉を口にした。

「…っ何言ってんのよッッ!!?
…カイ君はまだ子供なのよ!?こんなところに一人で居たら…」

一瞬、
第一ステージで見た…ハンター達の姿が脳裏をよぎった。
そしてそれが益々、私の不安を掻き立てることとなった。

「…ッッとにかく、まだ時間はある筈だわ…早く、早く見つけないと…」

「…菜月」

「モタモタしてる場合じゃ無い!!
大吾も早く見つけて、ヤツらが来る前に!!」

「…菜月!」

「サっサっとしてッッ…!!!
早くしないとヤツらが、ヤツらが来ちゃうじゃない!!!」

「菜月ッッ…!!!!!」



_勢いよく飛ばされた大吾からの渇に、私はそれから先の言葉を全てかき消されてしまった。

No.196

某ホテル殺人事件(繋げろ)   ゼロアッキー「翌年、某ホテルにて殺人事件が起こってしまった。犯人はなんと俺自身だった。その証拠にナイフが部屋にあり、疑われても仕方のない状態。果たして俺は真犯人を見つける事が出来るのか」

No.197

―続…



「…いい加減にしろ菜月ッッ!!
……少し…冷静になれ…。」

「………ごめん。でも…」

「分かってる、」

そうは言ったものの大吾の表情は、とても冷静とは言い難いものだった。ひょっとしたら彼も、その表情の裏側では、自分を抑え込むのに必至なっているのではないか…。
そう思うと、私は突然、彼に申し訳無くなった。そして気の利いた言葉も思い付かず、その場はただ黙り込むしかなかった。
それを察してか、先程からずっと口を閉じていた玲奈さんが、突然何の前触れもなく口を開いた。

「……彼は…暫く…戻らない。」

「………何で分かるの…?」

私は彼女に視線を流し、尋ねる

「…アレが近づいてるから…」

「………"アレ"………?」

次の瞬間、玲奈さんがその言葉を口にした途端に、その場の空気が一気に張り詰めるのが分かった。と同時に、大吾がいつもなら絶対有り得ない様な真剣な表情を浮かべた。


「……"白神"……」


私には、その言葉が何を意味するのか分からなかったが、ただ一つ確かなことは、ソレが何か、とんでも無く不吉なモノであると言う事だけだった。_

No.198

―続…



「…"白神"…?」

繰り返し、声に出してみるその単語の意味を、私が知る由も無かった。
ただ一つ、確信を持って言える事があるとすれば、
その単語は何か、とても恐ろしいモノを隠喩している…。
それは二人の顔色、声色が克明に物語っていた。

No.199

―続…



「ねぇ、一体何なのよ…カイ君が戻らないって…なんで分かるのよ!?」

私の問い掛けに大吾と玲奈さんは暫く口を噤んだ。言いたくないとかそう言った様子ではなく単純に、どう言えば良いのか分からない。と言った様子なのだ。
それでも私は彼らから視線を反らすこと無く、ただジッと、彼らに視線を向け続けた。
そして、やがて大吾がそれに促されるかのように、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。

「…俺が知る限りじゃ…アイツは無差別な殺戮者だよ。」

「…どう言う事…?」

私は遠慮なく、大吾に質問を続けた。

「…俺がこのゲームに参加したての頃のことだ。
俺は当時の仲間達と、第五ステージまで上り詰めていた。
そこで俺達は、全員ゲームオーバーになった。」

「……え……」

それって、と言う前に…大吾はそれが分かっていたかのように言葉を繋げた。

「"白神"にやられたのさ…。
俺達はハンターさえ注意していれば問題ないと思ってたんだ。
けど、アイツを只の人間だと思ってたのが落ち度だった…アイツは人の皮を被った悪魔だったんだ。」

No.200

―続…



明かされる謎。
張り詰める空気。
そして明かされる。
"白神"の正体…

「ちょっと待って、
…その"白神"って人間なの!?」

「…正式には《人型》だよ。
人間の形をしているが、実際はただの悪魔さ。ヤツはとんでも無い化け物だ。」

そこで一息着いて、静かに目を閉じる大吾。最初は何か、瞑想じみた事でも始めるのかと思ったが、そのうち彼が、記憶を辿っているのだと言うことが分かった。

彼の額を、一滴の汗が伝う。
本当は思い出したくもない思い出。彼にとっては、おそらくそれはトラウマに等しいモノであろう。
いつもは陽気な大吾。
しかしその裏で、私が、いや……私達全員が気づかないような暗い負の感情を抱え込んでいたのだろう。
しかし彼は、私達にそんな事を思わせないくらいに、いつも明るく振る舞っていた。私は、それを思うと、胸が締め付けられそうになった。

やがて大吾は静かに目を開け、私の方を向いた。

しかし、彼は何度も口を開いたが、まるで声が出ないのだ。
言いたいことは整理できているのに、それを言う度胸が無い。いや、覚悟がない。

私には、そのように映った。

「…代わり…言おうか…?」

すると、傍らの玲奈さんが口を開いた。

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