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海未の名は?ンミチャ!海未です!

レス115 HIT数 5516 あ+ あ-

作家
19/07/03 15:03(更新日時)

あらすじ

東京は音乃木坂に住む高坂穂乃果と園田海未は実は前世からの付き合いらしい。
やがてふたりは夢の中で前世での悲しい出来事を知るが----。
出会ってしまったふたりが前世から動き出すアニメ『ラブライブ!』前史。

本物語はいうまでまなく『君の名は。』の『ラブライブ!』によるパロディである。

18/01/22 09:26 追記
キャストコメンタリーは通常アニメ作品DVDで本来は放送後や製作後におこなわれますが、今作品はあくまでパロディなので息抜きで入れております。ご了承ください(笑)。

海未「単純にレスが埋まらないからではないですか?」

主「💔」グサッ!

穂乃果「主さぁ〜ん!」

☆ちなみに『マクロス』や『ガンダム』など他作品の名前がいくつか出てきますがメタフィクションか伏線かいずれかです。

No.2585380 18/01/07 18:32(スレ作成日時)

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No.101 18/02/10 11:19
作家 

「ば、ば、ば、……爆弾!?ちゅどーん!」
亜里沙は可愛らしい声でケーキを口にし変な声を上げます。
「正しくは含水爆薬。わかりやすくいえばタイナマイトみたいなもの」
ポテチを口にしことりはあっけらかんと言います。私はチョコを食べます。机には亜里沙が買ってきてくれたコンビニの食料が山ほどあります。パーティーみたいです。地図を広げ考えついた避難計画を亜里沙に伝えます。ワンダバのBGMがいります。ワンダバワンダバ……♪
500ミリリットルの紅茶をがぶ飲みすることり。
「ぷは!爆薬はお父さんの会社の保管庫にいくらでもあるよ!地方での特撮番組撮影やちょっとえっちなAVの時とかに使ったり……いやん♪バレる心配はあったりなかったりかなとか」
得意気に言いながら本来は乃木坂町の建設会社のはずなのに地方ロケの特撮やえっちな撮影に協力してたんですね。だからことりがこんな変態に……。
「それから次は。こほん」私は気を取り直しメロンパンを食べ口にします。穂乃果の身体で食べるパンは一味ちがいます。
「で、で、で……電波少年!?松村邦洋?松本明子!?土屋Pじゃなくて……電波ジャック!?」
亜里沙、意外に古い番組を知ってますね。ちょっといやかなり意外。ことりが言う。
「田舎の防災無線は、伝送周波数と重畳周波数さえわかれば穂乃果ちゃんと愛し合うえっちな小説を朗読……じゃなくて乗っ取るよ!音声に特定周波数を重ねたら、スピーカーが動くはずだよ!」
メロンパンを片手に、私は言います。
「だから、学校の放送室からでも、町中に避難指示を出せるんです」
「つまりは学校からでも穂乃果ちゃんとことりの愛し合うえっちな小説を朗読……なぜいままで実行しなかったの!?あたし」
ことりの妄想を横に置いとき私は話を続けます。

No.102 18/02/10 14:10
作家 

ことりの妄想はさておき乃木坂町の地図を指差します。高坂神社を中心に直径1.2キロほどの円を書き指でなぞりました。
「これが隕石の予想被害範囲。セカンドインパクトほどではないですが、乃木坂高校は、外側にあります」高校の場所を指で示す。
「だから、町民をみんなここの校庭に誘導します」
「それは…」
亜里沙がわなわなと言います。
「か、かんぺきな犯罪!まさにルパン三世!快盗キッド!?」
ゴクリとケーキについたイチゴを飲み込む亜里沙に「犯罪……ですがみんなを助けるためなのです!」と私は穂乃果の身体で拳を握ります。地図の上に散らばる丸いチョコをどかします。犯罪かもしれませんが、円のなかの町民をみな外に出すだけ。それだけ。
「なんか穂乃果ちゃん、別な人……どS?」
亜里沙にニコッとする私。この身体にいる時は優しい女子になりますが、私はもう、穂乃果として振る舞うことはいまはどうでもいい。すべて終わった時に彼女たちが無事なら後先は考えません。生きてほしいのです。
「で放送は亜里沙、あなたに頼みます」と肩に触れます。
「ええ!?あたし」
「放送部で佐倉綾音ボイスでいまはシンカリオンですよね?なにより絵里は町長候補、無線の周波数を聞くなんて簡単です」
「シンカリオン!?亜里沙ちゃんが?きょだいロボなんだ……」と変に感心することり。
「ええ……?勝手に」
決められてと抗議する亜里沙ですが、ことりはVサインをします。
「あたしが爆薬担当」
「そして私は町長に会いに行きます!」この方法は完璧です。
「さっき言った手順で、避難のきっかけは私たちで作れます!最後は役場や消防が動かないとニ百世帯の皆さんは動きません」
「だから町長に会いに行く穂乃果ちゃん」
「娘の私から話せば、わかってくれます。たぶん」
ことりは愛らしくも不気味に笑みし「完璧な作戦だよ……。だけど放送を使えば愛の朗読ができたのに」と自画自賛と少しの後悔があるようでつぶやく。愛の放送はいつか勝手にしてください。だけどこの方法しかないのです。たぶん、きっと。

No.103 18/02/10 15:56
作家 

「……何を言ってるんだ?穂乃果?」
厳しさと微妙な娘に対し優しさと複雑が混じる声。
私は焦りました。押し切られてはダメです、と声を張ります。
「だから!念のために町の人達を避難させないと----」
「黙りなさい」
もとは和菓子職人であり職人の秘めた厳しさある声に、さすがの私も声が出ません。
穂乃果の父親は町長らしくも目を閉じ、そっと椅子に腰を預けました。椅子を軋ませ目の前の皿に載せられた煎餅を食べなさいと指が動く。ですが食べる意思はありません。その様子に穂乃果の父は窓の外を見て吐息します。明るい日差しに、葉が揺れます。
「……彗星が二つに割れこの町に落ちる?五百人が亡くなる?」
煎餅をばりっと口にし、厳しさを秘めた瞳が、私を見つめます。私は母と同じいえそれ以上に汗が感じます。穂乃果はお父さんの前ではいつも以上にいい子だから彼は会い、穂乃果は緊張しながら親しみを込めてたと伝わる。
「信じられない話わかります。だけど、根拠が……」
「戯れ言にも程かあるぞ」
煎餅が口許からこぼれ怒っていました。職人でありかつては神主であり眉間の皺は深くし「妄言は高坂家の血筋か」と呟きその言葉に穂乃果の胸が痛みます。職人の魂が残った瞳で私を見つめ、穂乃果と低く呼びました。
「本気で言っているなら、お前は病気だ」
「……なっ」
違いますの言葉が出ません。学校を出た時の自信が、音もなく崩れます。ミラクルウミちゃんですのに。見当違いなのか、不安が胸の内を覆い……いえ、違います。妄想ではないし、私は病気では……私は----。

No.104 18/02/11 07:24
作家 

「車を出してやるから」穂乃果父はふいに心配そうな表情で、受話器を取る。ボタンを押して電話をかける様子です。
「市内の病院に行きなさい。その後でならもう一度話を聞いてやる」
ムッとその態度に、私の体を不快になってます。アホのかではないです。私を、自分の娘を、病人扱いしています。全身が冷たくなり、頭にやかんを乗せたら沸騰しそうな怒りがありました。
怒りです。
「----バカにしないでください!アホのかでありませんよ!」
叫び、町長の目が開き、気づけば、私は穂乃果父のネクタイをねじり中尾彬にしてやる寸前でした。受話器が手から落ち、ツーツー……という音がありました。
「……あ」
手をゆるめ離れる私。町長の顔が離れ、驚き、困惑、穂乃果父は口から煎餅をこぼれさせ震える口元、私たちは互いの視線から外せません。私の全身の毛細血管が開いて、汗が漫画のようです。
「……穂乃果」
彼はゆっくりゆっくりと口を開きます。
「……いや……お前は、誰なんだ?」
震えて発した声には『ウルトラセブン』の「あなたは誰?」のニュアンスが込められ、嫌な感覚が耳に残りました。

No.105 18/02/11 15:47
作家 

金槌を打つ音が、どこからかかすかに聞こえます。
真昼と夕方のなか、町は静か、ずっと遠くの音までが風に乗り耳に伝わります。カンカン、カンカン。なんの役にも立ってない絵里、当初の目的を忘れるハレンチ警官希、町役場を出た私は湖を見下ろす坂道をとぼとぼと進み、音に合わせて堅い木に刺さる釘のリズムが落ち込みます。暗い狭い木に押し込まれ、錆び付く釘。神社では秋祭りの準備。道沿いに並べられた木造りの灯籠をぼんやり眺めました。
じゃ、あとでー、と子どもたちの声に私は顔を上げます。
坂の上では子どもたちが手を振りあってる。
「じゃああとでお祭りで」
「神社の下でな」
友だちと別れ、男の子と女の子が私の方に駆け下りる。小学校半ばで花陽くらいだ。
----落下地点は、神社。
「行ってはいけません!」
思わず男の子の方を掴み叫びました。
「町から逃げてください!友だちに伝えなさい」
私の腕のなかで子どもは恐怖の顔に変わりました。
「わ、ワシワシMAX!?ついに男の俺にも」
きゃあ!?と黄色い声に逃げる男の子。男の娘(こ)?
「お姉ちゃんー!」
振り向きランドセルが微妙な花陽が私に駆け下りてきました。子どもたちは逃げていきます。----これでは希と同じです。いえそれ以下。
「どういう意味や」
「認められないわ」
「お姉ちゃん!あの子たちに何したの!あの子たちは花陽のボーイフレンドじゃなくて!?」花陽は飛びつくように見上げます。
----私では、私はなにをしたらいいのです?
花陽の顔を見つめる。不安そうに私の言葉を待っています。穂乃果なら、と私は思いました。
「穂乃果なら……説得できたのですか?私では」
目を丸くする花陽に、私は言葉を伝えます。
「花陽、雪穂おばあさまと町から出てください」
「え」
「ここにいたら死ぬんです!」
「えええ、お姉ちゃんどうしたの!?」
私の言葉さえ押し戻すくらいな勢いで、花陽は必死で真剣です。
「お姉ちゃんどうしたの!しっかりして」
うるうるとし花陽は訴える。怖がりながらも。私の目を覗き込む、花陽は言います。
「昨日は東京に行っちゃうし、お姉ちゃん、いつも変だけどさらに変だよ!」
「え……?」
違和感を感じました。……東京?なぜ?

No.106 18/02/11 18:04
作家 

「花陽、東京って」
「穂乃果さ〜ん!!」
亜里沙の声です。ことりの自転車の後ろで、亜里沙が手を振ってます。アスファルトにことりは自転車を止めます。
「お父さんとの話はどうだったの!?」
前のめりにことりが聞き私は返事ができません。混乱です。なにから考えればよいのか、わからなくなってます。私では、町長は取り合ってくれません。それどころか「お前は誰だ」と、穂乃果父は聞いた。私がそう聞かせました。私が穂乃果の中に入っているからダメなのでしょうか?では、穂乃果はどこにいます?穂乃果は昨日、東京に行ったと花陽は言います。なぜ?昨日とは、いつです?
穂乃果ちゃん?とことりは私の前で手を振り、お姉ちゃんどうしたの?と亜里沙が花陽に聞いてます。
穂乃果は、どこに?私はいま、どこににいます?
----もしかして?
私は視線を上げ、民家の向こうにまるい山の輪郭を重ね、そのさらに向こうにある山の稜線。私が登った山、山頂アタック。いえ山の上のご神体。口噛み酒を飲んだ場。湖からの冷たい風が吹いて、穂乃果の短い毛先を揺らし、誰かの指先のように、髪が頬を撫でます。ことりが撫でようとするのを指で払います。
「そこに……いる?」私は呟く。
「ことりはここにいるよ」
ことりたちは揃って私の視線を追います。穂乃果、彼女がそこにいるのなら----。
「ことり、自転車を借ります!」
ハンドルを奪い自転車に乗り歴代仮面ライダー1号からビルドまでの変身ポーズをします。さっさと行ってと冷たい花陽。
「え!?穂乃果ちゃんが仮面ライダー!?TOKIOの城島が好みでしょう?」
よけいなな茶々をいうふたりを無視し私は坂道を登ります!
「穂乃果ちゃん、作戦は?」
背を向ける私に、ことりは必死に伝えます。
「計画通りにお願いします!頼みました!」
静まった町に、私のウミちゃんボイスが響きます。身体から切り離された穂乃果の声が、山と湖に反射し声は大気に溶けます。私はその声より先に先にと向かい、自転車をドレミサイクロンのように走らせました!

No.107 18/02/11 18:30
作家 

頬を、誰かが叩いている。
ことりちゃんならちょっとやらしく、亜里沙ちゃんならかわいく、絵里ちゃんならここぞとばかりに頬をくしゃくしゃにして、希ちゃんについては----却下。
あたしの頬を痛がらないようにそっと触れる。指先は冷たいよ。くすぐったくひんやりだよ。そんな風に起こすのは、だ〜れ?
あたしは目を開く。
あれ?
そこはとても暗く、まだ夜?
また頬を撫でられた。ちがうよ。これは水だよ。水滴が、さっきからあたしの頬に落ちてるんだ。身体を起こして、あたしは気づいたよ!
「……あたし、ンミチャ、海未ちゃんになってるよ!」と声が出たよ。
ぐう〜、とお腹が鳴ったね……。
おなか空いた……。
ふとお供えものがあったよ。

ばくばくごくごく!ぷはぁ〜♪
とりあえず海未の身体になった穂乃果はお供えものに残す以外は炭酸飲料水とスナック菓子を頬張り腹八分目くらいに抑えようと我慢する。
とりあえず神様には掌を合わし穂乃果は呟く。
食べたのは海未ちゃんの身体だよ、ほのかは悪くないよ。
後にこの祈りが海未をとんでもない目に遭わせるのだが彼女は知らない。
げぷっ、と炭酸飲料水を飲み干し穂乃果は神様に頭を下げてようやく登っていくのだった……。

No.108 18/02/11 20:02
作家 

狭い石段を登ると、夕陽がまぶしいよ!
長い間暗いところにいたので、海未ちゃんの目にはひりひり光が差す。登りきったそこは、もしかしたと思ったら、ご神体の山の上。
この前きたのはいつ?
海未ちゃんがどうしてこんなところに?
とりあえず巨木の下を出て窪地を歩くよ。海未ちゃん厚めのパーカーだけどおムネは……。ゴムのシューズはなんだか濡れてたね。雨が降ったのか、あちこちの草は水滴だらけ。だけど、お空は晴れている。薄い雲が、金色だよ!
だけどほのかの記憶は、なんだろ?ぼんやり。
なにも思い出せないまま、窪地の端をいき、斜面の下に辿り着く。斜面を見上げると初代ゴジラがぬっと出てきそうなカルデラ。カステラじゃないよ。山の頂上、海未ちゃんは体力あるしいまはお腹いっぱい。登りながらなにか頭のなかをたどる。ここに来る前になにをしてたか。思い出そう。すると、やがて、端っこに指が触れた。
祭りばやし、浴衣、髪を切ったあたしの顔。
----そうだ!
昨日は秋祭り、あたしはことりちゃんたちに誘われて浴衣を着て出かけ、彗星がいちばん近くで明るく見える日、三人で見に行こう、て。そう。なんだか、とても遠い記憶な感じ。ずっとむかしみたいな……。

No.109 18/02/12 07:09
作家 

髪を切ったあたしに、ことりちゃんと亜里沙ちゃんはかなり驚いていたよ。ことりちゃんは出店に仕込むフライドチキンを頬張りそうになるくらい。気の毒なほどにふたりは動揺して、高台まで来た時にはタレントの高田純次さんが取材に来てたのに相手にされなく、「失恋?穂乃果ちゃんが」「まさか。だけど」と背中で言い合ってたよ。
細い道を登り、カーブミラーを曲がり、視線の先には、巨大な彗星。長い尾をエメラルドグリーンに輝いていて、その先は月より明るい。目を凝らすと、細やかな塵が舞っていた。ことりちゃんは出店を出し、亜里沙ちゃんは村の美少女コンテストで優勝し、絵里ちゃんは希ちゃんにワシワシされ、希ちゃんは絵里ちゃんをワシワシしバカみたい……前言撤回だよ。バカそのものに希ちゃんと絵里ちゃんははしゃいでいた。
気づくといつの間にか、彗星の先っぽがふたつに分かれているんだよ。あれ?なんで?疑問に思う間もなく先っぽがぐんぐん近づいてくる。やがてそのまわりに、細い細い流れ星が無数に輝いていたんだよ。星が降ってくるようだったよ。ううん、星が本当に降ってきていたんだよ!まるで夢のように、嘘みたいに綺麗な夜……。
ほのか詩人だよ。

No.110 18/02/12 13:44
作家 

あたしは、斜面を登ったよ。海未ちゃんの身体はおムネはないけど体力があるよ。風が冷たいよ。眼下には、じゅうたんみたいな雲ばかりが広がる。そしてその下には乃木坂湖がある。
あれれ?とあたしは思う。
おかしいよ。
あたしはさっきから、足が凍ったみたいに震えが止まらない。
おかしいよ。
こわいよこわいよ、不安ばかりが胸を覆い心細い。頭がおバカよりたいへんだよ。額や髪には汗が流れて、止まらない止まらない。
もしかして。
あたしはおかしくなったのかな。おかしくなって壊れたの。
こわいよこわいよ。いますぐになにか叫びたいのに、喉は粘り声にならないしか出ないよ。意思とは無関係に、まぶたは大きくなる。眼球にある表面がじっとじっと湖を見つめて離せない。あたしは知っている。あたしはは気づくよ。
乃木坂町が、ない。
乃木坂湖に被さるようにして、もっと大きい湖があった。
----ひょうたん型じゃないよ、もっと大きいのがひとつ、と穂乃果の心の声が呟く。
あんなものが落ちてきたんだよ。
あんなに熱く重い塊、頭の上に落ちたんだよ。
そうだ。
あの時、あたしは。

ゆっくり膝を崩して無音のまま、あたしは膝を地面につけた。
あたしは、あの時。
ゆっくりゆっくり声に出し空気に触れる。
「……あたし、あの時……」
涙がうるうる流れ止まらない。誰か止めてよ。海未ちゃんの記憶。ひとつの町を滅ぼした彗星災害。ほんとは三年未来の東京音乃町に暮らしていた、海未ちゃん。その時、あたしははいなかったんだ。星が降ったあの夜、あの時、あたしは----。
「死んじゃった……?」
涙が止まらないよ……。

No.111 18/02/12 15:29
作家 

人の記憶はどこに宿るのでしょう。
脳のシナプスでしょうか。瞳や指先でしょうか。もしくは、霧のように不定形な精神の塊があって、記憶を宿すのでしょうか。心や精神、魂と呼ばれるもの。OSやUSBメモリみたいなもの。
アスファルトがなくなり、私は未舗装の道を自転車で必死に走ります!根性海未ちゃん!太陽が低くなり、木々の間をチラチラ瞬きます。穂乃果の身体はいつになく汗を流し、前髪が揺れています。私は自転車で走りながら、汗と一緒に、髪を拭います。
穂乃果の魂。きっといま、私の身体のなかにあるはずです。私の心がここに、穂乃果の身体のなかにあるのですから。でも----と、さっきから私は思います。
私たちはいまも、一緒です。
穂乃果は、すくなくても彼女の心のかけら、いまもあります。たとえば、穂乃果の制服の形、制服を着る時、ファスナーや襟の長さも、知ってます。穂乃果は、親しい相手にはとても優しい犬みたいな瞳をします。嬉しくなつきます。穂乃果は相手が絵里や希でも優しいです。聞かなくても誰が苦手がわかります。おばあさまを目にすると、私が知らない思い出までが映写機みたいに、ぼんやり頭に浮かぶのです。身体や記憶、感情は分かちたくさんむすびます。
---うみちゃん。
穂乃果の声が、内から聞こえます。
うみちゃん、海未ちゃん。
泣き出しそうな声。遠い星から瞬くような、寂しく伝える声。
ぼやけながら、結ばれていく。海未ちゃん、と穂乃果が呼びます。
「おぼえて、ない?」
あの日の穂乃果の記憶を、私は思い出します。

No.112 18/02/13 07:02
作家 

その日、穂乃果は学校には行かずに、電車に乗った。
東京への新幹線がつながる、大きいターミナル駅。そこへ向かうローカル線には、通学時間なのに空いていた。沿線に学校はなく、このあたりの人達はみなクルマか通勤ロボを使う。
「あたしちょっと、東京に行ってくるね」
朝家を出て、学校に向かう途中で突然、穂乃果は妹花陽に言った。
「ええ!?いまから?なんで!?」花陽は驚き聞きながらあれこれ頼む。
「なんで!?よしお姉ちゃん。吉野家にすき家、ガスト、餃子の大将に、他はメニューはこれとこれとこれ……」
「むりむり!穂乃果そんなに貯金ないよ!」
「よし!あたしの預金通帳持っていって買いに行ってください」
「むり!!」
なだめられた花陽は聞く。
「デート?まさか」
「ええ……、まあ。そんな」
「え!お姉ちゃんが東京ぬ彼氏いたの!?」
「う、う〜んと、あたしのデート……じゃなくて……」
うぶな穂乃果は困り走り出した。走りながら花陽に伝えた。
「夜には帰るよ、心配しないでね!」

No.113 18/02/14 16:02
作家 

いつもなら新幹線の窓を流れる景色を穂乃果ははしゃぐのだが、穂むまんを口にし考える。
西木野先輩と海未ちゃんのデートを見て、あたしはどうしたいのかな。さすがに遊ぶってわけにはいかないし。初めていく東京で、あたしはちゃんと人に会えるのかな。もし会えたとして----急にたずねたら、悪いよね。驚くよね海未ちゃんは、嫌がるかな。
あっさりと新幹線は、東京に着いちゃった。希ちゃんが欲しがるのわからなくもない。あまりの人混みに息を詰まらせながら、穂乃果は私に電話をしてみる。電波の通じない場所にいるのか、電源が入ってないのか……。電話を切る。やはり通じない。
誰も出んわ、としゃれさえない穂乃果。
会えないのかな、と穂乃果は思う。
でも、駅の案内板をテストの時みたいに熱心に見つめる。あいまいな記憶のまま街に出てみる。
ドン・キホーテは帰りかな。
とりあえず会えたら……。
山手線に乗り、都バスに乗り、歩き、また電車に乗っては歩く。
やっぱりあたしなんが迷惑かな。気まずいかな。それとも----。
街頭テレビには、『ハイコウ彗星・明日最接近』が映る。
それとも、もし会えたら、もしかしたら、すこし----。
歩き疲れ、歩道橋から東京の見知らない街を眺めて、穂乃果は祈るように思います。
もし会えたら、海未ちゃんは、喜ぶかな----。
再び穂乃果は歩き、考える。
こんなふうにやみくもに歩いて見つかるわけない。会えないよね。だけど、たしかなのは、ひとつあるよ。あたしたちは、会えば、わかる。あたしに入っていたのは、ンミチャ!海未ちゃんに入っていたのは、あたしだよ。
100パーセント、だれだってまちがえない1+1=2みたいに、そのことだけは、穂乃果は確信していた。

No.114 18/02/15 19:27
作家 

駅のホームの屋根裏に、夕陽が沈む。
歩き続けてはあちこちのコンビニやファーストフードでパン食を購入しははむはむ食べる穂乃果は座り息をつく。乃木坂町の夕陽に比べたら都会の夕陽は頼りなく淡い、ぼけ〜と穂乃果は瞳に映している。音楽のようなチャイムが鳴り、まもなく・○番線に・各駅停車云々と……アナウンスが流れる。中川家かな?と思っていると電車がホームに入る。車体の巻き起こす柔らかい風がサイドテールを揺らす。穂乃果はパンを飲み込み電車の窓を見つめる。
ごく、息と共にパンを飲み込んだ。
弾かれるように、犬のよえに走った。
今、目の前を通りすぎた窓に、彼女がいた。
穂乃果は走る。電車は停車し、窓に追いつく。夕方の電車の混雑のなか、彼女の姿はなかなか見えない。巨人が息を吐くような感じで、ドアが開く。流れるような人混みで、回転ドアみたいに回る穂乃果は叫ぶ。でも、すみませんすみませんと言い、犬が飼い主を求めるみたいに、人々の間を縫うように進む。巨人の息が漏れ、ドアが閉まる。電車が動き穂乃果はよたよたする。すみませんをまた繰り返し穂乃果は進む。そしてひとりの少女の前で、止まる。ハアハアと犬みたいな息を止めると、まわりの音は消えていく。そんな感じに、穂乃果はなる。
目の前には、三年前の、中学生の私園田海未が立っていました。

No.115 18/02/21 17:07
作家 

海未ちゃん海未ちゃん。
呼び方を変えて。
ンミチャ。
穂乃果はさっきから、口のなかで私の名前をころがしている。目の前にいるのに一向に気づかない鈍感な私に、ンミチャと呼ぶのさえ恥ずかしいのか照れなのか、はにかみながら真剣な表情。そして笑顔で思いきり声を出す。
「ンミチャ!じゃなくて……うう海未ちゃん」
名を呼ばれた私は顔を上げました。私たちの身長は同じ、ただし穂乃果の方がさりげなく胸があります。
「はい?」
「あのあたし」
はにかむ彼女は指を差して見せる。私は戸惑います。
「はい?」
「……覚えて、ないの?」上目遣いな穂乃果は犬のように見つめて、吐息が荒くなります。まるで甘える犬のよう。
「……誰です?あなた」
ちいさく穂乃果はきゃんと声を上げた。赤くなり迷子の子犬のように。やがてちいさく答えた。
「……ご、ごめんなさい」
電車が揺れ、乗客がバランスを取るなか穂乃果は慣れずに私にぶつかる。サイドテールが触れ、甘いシャンプーの匂いがしました。ごめん、とちいさく謝る穂乃果。へんなひとと私は思いました。
でも穂乃果はンミチャと思いました。どちらにしても気まずい時が流れた。
次は秋葉原、とアナウンスと聞こえた。海未ちゃんの手には『ツンデレに勝つ方法!』『ツンデレを落とすこの一言!』『にこちゃんにとどめをさす必殺技!』と打倒!真姫への無駄なスポ根熱があり複雑だった。でももう帰らないと。扉が開いて何人かの乗客に揉まれながらくるくる回る。穂乃果は降りようとした。ちいさな背中を見て、海未は思う。この可愛い犬みたいな女の子はいつか知るべき相手ではと思う。なぜなら海未は『アキバの赤胴鈴之助』だから、いやニュータイプに始まる人類の進化の先駆けだから……!思わずあのです!と声をかけました。
「名前は……!」
振り向く穂乃果。だけど降りる人達の波に揉まれ離れる。穂乃果はサイドテールにしているリボンと組紐をほどき手を伸ばす。私に向かい叫びました!
「ほのかだよ!」
私は手を伸ばし可愛らしい色のリボンと組紐を掴む。
「名前は、穂乃果!」

しかしこの時にアナウンスがハノケチェン!と重なりンミチャ、ほのか、穂乃果、ハノケチェンと名前がわからなくなり忘れてました。

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