*~年下の男~*
全て私の妄想です(*^^*)
登場人物は実在しません(*^^*)
16/06/20 22:39 追記
大変ご迷惑をおかけしました。
自己満足の世界ではありますが、また再開したいと思っとります
m(__)m
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結婚という匂いをちらつかせ、女の子達に貢がせていた修羅が刺された。
杏子はその内の一人だった。
『もしもし?杏子?』
『修羅~♪どうしたの?今日も修羅に会いに店に行くよ~(//∇//)』
『あのさ、来る時ついでに売り掛け金を少しでもいいからさ、入れてくれないか?』
『えッ?....だって....』
『何がだってだよ!お前が入れたシャンパンのつけ、150万になってんだぞ?』
そう、修羅の売掛金は全部で500万にまで膨れ上がっていた。
少しでも店に入れないと修羅が払う事になる。
修羅は焦っていた。
『だって、二人の将来の為にノルマに協力して欲しいって......
あ...あたしから進んで追加で注文した訳じゃないし』
『はぁ?お前が入れても良いって言っただろが!!』
『ね..ねぇ、修羅~。どのみち将来は一緒になるんだから修羅が払っても同じ事じゃない?』
『はぁ~、お前バカじゃねぇの?金もねぇ女なんかと誰が一緒になるってんだ』
その日の夜。
既に出勤していた修羅に、杏子からお金を用意したから取りに来てと連絡が入った。
指定された場所で待っていた修羅。
突然.....知らない男に刺された。
けたたましく鳴り響く救急車が到着する頃には、修羅の回りに人だかりが出来ていた 。
うわ言の様に
(杏子に.....刺された....)
と、繰り返し言っていた。
だが、杏子は既に飛んでいた。
(払わずに逃げる事)
実家というキーワードを出したのがいけなかった。
ちょっとの脅しのつもりだったのか......
実際、恐喝まがいの事はしてはいけない。
(調子にのった修羅が悪い)
店で事の一抹を聞いた瑠宇久はそう思った。
と、同時に、ホストという世界が少し怖くなった。
何故なら、瑠宇久もまた、売掛金が100万程あるからだった。
12月初めのミーティング。
ホストがそれぞれの今月のノルマを発表した。
亜紀の事で新規顧客獲得に力が抜けていた瑠宇久は№6まで落ちていた。
真也は相変わらず№1.刺された修羅は№3にまで上り詰めていた。
(やばいな...年内に元の位置に戻したい...
それより、売掛金もどうにか回収しないと....)
亜紀の事も大事だったが、今は大金を落としてくれる女を捕まえなければ...。
女の子に刺され、この世界から消えてしまった修羅の心配などしている余裕はない。
修羅の一件はこの業界では既に噂は広まっていた。
もしかすると、今度は俺が消えるかも....
みな、それぞれに不安を抱いていたある日の事。
ふとした事で出会った女性がいた。
大手企業の社長夫人だった。
瑠宇久とは付き合いが長い女の子の誕生日にプレゼントしようと、とあるブランド店に来た時だった。
若い女の子に人気のお店で、店内は女性客でいっぱいだった。
前回の同伴出勤前のショッピングでリサーチしていた瑠宇久。
誕生日プレゼントにしては高い買い物だったが、迷わず店のスタッフに
「これのピンクを下さい」とカウンターで告げた。
瑠宇久の右隣りには、店に似つかない上品な女性...。
同時にそのご婦人も、瑠宇久と同じ物が欲しいと言っていた。
店員がバックヤードで確認すると在庫が残り1個しか無く、その一点を前に瑠宇久と夫人の顔を見合わせる。
夫人は自分の娘にあげようと以前から決めていたらしい。
瑠宇久は迷わずその一点を譲った。
(別になんだっていいんだ。ブランドだの、値段だの、そんなのどうでもいい...。
ホストの俺に貢いでくれればそれでいい...。その程度のプレゼントだからな(笑))
そんな事は勿論口に出したりしない...。
感銘を受けた社長夫人は、お礼がしたいと食事に誘ってくれた。
入店すると夫人は周りをキョロキョロし始めた。
(おいおい....マヂかよ?!
本当に来た事無いんだ.....,)
ランチも終わりにさしかかろうとしている時刻。
すぐに案内係に呼ばれ後ろを付いて行く。
(かっこよくエスコートしたかったが...
ファミレスじゃあ、な(笑))
席に着くなり、メニューを広げ、瑠宇久は夫人に
『どれにしましょうか?』と、聞いた。
『あなたと同じ物をお願いします』
同じものか.....
再度メニューに目を落とす瑠宇久。
ファミレスのメニューなんて何処もたいして変わらない品揃え。
瑠宇久は日替りのランチメニューを2つオーダーした。
メインディッシュはハンバーグ。
夫人の口に合うか瑠宇久は興味津々だった。
食事も終わり、夫人が先程のお礼に払うというので、レジ近くに立っていた瑠宇久。
レジの店員と夫人が何やらひと悶着している。
『あのう、ですから、2人分の支払いをしたいんですけど,.....』
『はい。ですから、1000円になりますが....』
『?!まさか....嘘でしょ?1人500円だなんて...そんな....』
瑠宇久はそんなやり取りを横で聞き、声を上げ笑ってしまった。
店を出てからも
『信じられない....
あのハンバーグが....何かの間違いよ....』
オロオロする夫人がとてもキュートに感じた。
すかさず
『500円でも高い方ですよ?』
『嘘でしょ?嫌だわ..,私ったら.....恥ずかしいわ...』
頬を赤らめる夫人・・
を、いじめたくなった瑠宇久。
『世間知らずとはこの事ですな!あはははは♪』
わざと大きな声で笑う。
黒服の瑠宇久......
金を持っていそうな中年女性.....
行き交う人達の目にどの様に写っているのだろう.......。
『本当に恥ずかしいわ♪うふふ
......そうだわ!私の知らない世界って他にどんなところがあるのかしら?教えて頂けません?』
大きな目をキラキラさせながら瑠宇久の顔を見つめる夫人。
翌日。
日課になっている朝の電話は、上機嫌な正人だった。
亜紀には言わないが、昨日の夫人と午後から会う約束になっていた。
『正人さん、何か良い事あったの?いつもと声のトーンが違うよ?』
『そうかぁ?なんもねえよ!
亜紀の勘違いだっつーの!』
『そうだ!ねぇ、Christmasは仕事でしょ?その前の日曜日は私の為に空けといてね!最近はデートらしいデートしてないし.....』
『あぁ?わかったわかったって!大丈夫だ!』
『約束よ?』
『あぁ....
そんじゃ、俺、疲れてっから、もう一眠りする。あとで、喫茶店に寄るから..,..』
『うん....あとでね』
『気をつけて行けよ!じゃ....』
電話を切った後、正人はシャワーを浴び出掛けた。
この夫人は瑠宇久に沢山の贅沢をさせてくれた。
仕事で着るスーツ、洋服、時計、欲しい物は何でも買ってくれた。
夫人の高級外車に乗ってはドライブをし、その後は店にやって来ては高い酒をオーダーする。
この夫人がばらまく金だけでノルマを達成出来そうだ。
ノルマどころではない,....
もしかしたらNo.1になれるんじゃね?
そして、結婚したいとは絶対に言わない.....
楽しければそれでいい。
瑠宇久は夫人に夢中になった。
絶対この女性を離すまいと必死になった。
好きとかそんなんじゃない.....
そんな感情は微塵もない,......
だが、亜紀にとってはおもしろくない存在だ。
亜紀の働く喫茶店にいても、いつも誰かと電話をしている。
(彼の仕事はホスト......
だから、仕方ないのよ.....)
亜紀は何度も自分に言い聞かせた。
信じていいよ...ね....?
『健人さん?どうしてここに?』
『花の注文が入ったから届けにきたところ。それより大丈夫?
火傷してない?』
亜紀の足元を心配そうに見る。
『健人....さ...ん.....』
正人のキス現場.....
突然現れた健人,....
信じられない今の状況に耐えきれず亜紀は両手で顔を覆った。
『道端じゃ邪魔になるから。
ほら!しっかり....マスターにも連絡しないと......』
うんうんと頷く亜紀。
『俺が代わりに連絡してやっから....とりあえず足元をこれで拭いて.....ほらッ』
タオルを渡された。
(そういえばバイト初日もタオルで汗拭きながら健人さんから軍手を渡されたな~)
涙目で懐かしそうにタオルを見つめた。
健人は亜紀の代わりに喫茶店に電話をする。
仕事が出来る状態ではないこと
珈琲ポットを落としたので代わりが必要だという事を告げ、このまま帰る事にした。
家まで送ってくよ
健人は亜紀に言った。
帰り道、見たいきさつを健人に話した。
『そっか.....亜紀ちゃんにすれば地獄だね......全くあいつは何やってんだか.......』
『ホストの正人さんと付き合うって自分で選んだ道なんだけどね。
でも、どうしても割り切れない自分もいるの』
『当たり前だよ!彼女じゃん。
他の女とのキスシーンを見て喜ぶ奴なんていないよ!』
『私と一緒に居る時より......
楽しそうな正人さんの笑顔が...
一番辛いな....ははッ....』
亜紀はふと、先週のデートを思い出した。
映画中は寝ていた正人。
(確かに私が選んだ恋愛物だった)
ケータイを開くことはなかったけど、誰からの連絡か確認はしていたっけ.......
私が楽しそうかどうかより、ケータイの方に意識を向けていた気がするな~。
(もう駄目かも......)
そう言おうとした時.....
『亜紀ちゃん。俺からも言っとくよ!亜紀ちゃんが大事ならホストなんて辞めろって』
『健人さん』
『俺に偉そうな事言っといて、あいつも亜紀ちゃんを泣かせてんじゃん!あったまくるよ.....
ちょっと懲らしめてやるか!』
指をボキボキと鳴らした。
『あはははは♪健人さんたら
いいのよ。我慢出来なくなったら
別れればいいだけだし.......
健人さんに聞いてもらえただけでも救われたから♪大丈夫♪』
立ち止まる健人。
『そういう俺も.......
亜紀ちゃんを泣かせてるね
ごめんな......』
(そういう私も.....
健人さんから正人さんに
のりかえてるんだよ?)
健人は優しい。
嫉妬心で心をかき乱される事もない。
相手を追い込む言い方もしない。
ふと、健人を好きだった頃を思い出した。
健人の優しさと正人の優しさは正反対。
正人は仕事で作られた優しさだ。
だから心に響かないんだ。
健人の母を思う優しさは、私にとっては地獄だったけど、それもまた、健人の魅力だったのかもしれない。
アパートまであともう少しの所で
『もう大丈夫だね。ゆっくり休んで明日も頑張って....
じゃ、おやすみ.....』
『え?!』
亜紀はアパートまで送ってもらえると思っていたので、思わず顔を上げた。
もう少し話をしていたい......
うぅん、もっと話がしたい,.....
けど、私は健人から正人にのりかえた女......
『....あ...ありがとう......』
急に表情が沈む亜紀を見て健人は
『亜紀ちゃん。俺、
アパート前で亜紀ちゃんに振られてっからさ(笑)
だから、ここで......』
『.....!』
(そうだった......
私、健人さんを傷つけてた)
自分の事しか考えてなかった。
恥ずかしい.......
『ごめんね。ありがとう。
元気出た!うん♪頑張る!
おやすみなさい、健人さん』
『うん。おやすみ...,.』
そのまま2人は背中合わせになり、振り返る事はしなかった。
その頃のクラブでは......
亜紀にキス現場を目撃された事を知らない瑠宇久は、夫人の機嫌をとっていた。
Christmasイベントは盛大に行われていた。
フロワの中央にはシャンパンタワー。
夫人はこの店で一番高いロマネ・コンティを2本、ドンペリ2本入れていた。
総額400万円。
瑠宇久は
(俺、今月No.1ぢゃね?)
ホストを始めてから初のNo.1獲得かと思うと、心の高まりを抑える事が出来なかった。
無理な要求もしてこない。
ただ、楽しませるだけでいい。
次はどうやって喜ばそうかと夢中で考える。
(今なら抱いてと言われても、
俺、抱けるな.....)
ドライブ中に聞いた話だが、やはり、社長である旦那は毎日が接待で、帰宅が遅いか、あるいは帰宅しないと言う。
子供達もそれぞれ独立している。
暇と金の使い方が分からないなら俺が教えてあげよう,,.....
忘れていた青春を.......
経験した事のない世界を,.,....
瑠宇久は夫人にのめり込んでいった。
25日。今日はクリスマスイブ☆
2人の日課になっている朝の電話は、最近は亜紀からかけている。
プルルルッ.....,
(留守番サービスに接続します.... )
拍子抜けしてしまった。
と、同時に昨日のキスを思い出した。
(その人は誰?)
正人に聞いたところで、シラをきるだけだよね.....?
今日は電話はいいや。
また布団に寝転んだ。
大晦日やお正月はどうするのかな?
何も言ってこない......。
キス相手と一緒に過ごすのかな..,...
朝から段々と落ち込んでいく。
ふと、健人を思い出した。
火傷、心配してるかな?
そうだ!昨日、メリークリスマスって言ってない。
連絡してみようか,......。
そう思った時だった。
メールを送信してから数分後。
プルルルッ....
ケータイには浦田健人の文字が光って見えた。
(......えっ?電話?)
『.......もしもし?亜紀ちゃん?』
『健人さん.....,....
まだ私の番号を残してくれてたんだ......ありがとう』
とっくに削除されていると思っていた。
『あ・あのさ......』
『はい........』
『あの,......良かったら明日、何処かに行かないか?』
『......えっ?』
『正人も勝手気ままにしているみたいだし、この際、亜紀ちゃんも気晴らしにどうかなと思って...,』
『お店は?明日は平日で生花市場も開いてるんじゃ?』
『明日は母さんが病院なんだ。もともと付き添うつもりで休む予定だったんだけど......。俺、行きたい場所があってさ,........
それで一緒にどうかなって』
『......いいの?
お母様は大丈夫なの?
私なら大丈夫だから。お母様の側に居てあげてよ』
『母さんなら大丈夫!最近は調子がいいんだ♪
それより、正人からは連絡は無いんだろ?』
『......そう.........だね.....』
正人に何も言えないもどかしさは、昔の健人と同じ状況だ。
今の私の気持ち、健人なら分かってくれる。
『.....うん♪行こう!』
亜紀の中で何かが動いた。
健人が行きたかった場所.....
それは植物園だった。
植物園のエントランスは、ワイヤープランツや南天の実、山茶花で彩られていた。
到着早々、健人のうんちくが始まった。
『山茶花はね、中国語で椿、山茶に由来してるんだよ』
『そうなの?あぁ、そういえば椿に似ているね♪』
『うん!あー、でもそろそろ見頃も終わりかな...,.今からだったら椿の方が咲き誇るよ』
『ふ~ん.....,.
赤に、白に....あッ!見て,....
ピンクもある.........綺麗~......』
『花言葉は.....
困難に打ち勝つ,.......とか.....
ひたむき.......とか、ね』
亜紀の顔をじっと見ながら言った。
まるで自分の気持ちを花言葉で表現するかの様に.......
真剣な顔で見つめられ、顔が赤くなる。
『.....あッ!あれは?
あれは何?』
話を反らした。
『ん?どれ?....
あぁ~、多分,......ツルウメモドキの実だな』
『へぇ~、健人さん凄ーい!
花火大会の時もそうだったけど、なんでも詳しいんだね』
『ははッ!花火は下心で覚えただけだよ。花や植物は自然に覚えていっただけだし....
花火大会か.......そういえば一緒に見に行ったね.......』
(そう、そこでキスをして、2人は将来を誓いあったんだよ.......)
『あ!柊だよ......柊って赤い実がなるんだ!
そういえば造花には赤い実が付いてる!嫌だわ、私。何にも知らなくて恥ずかしい......』
『はははは♪
そんなもんだよ(笑)俺は仕事だからさ』
広い園内は綺麗に手入れされていた。
行く先々でワクワクした。
亜紀と別れた後、健人は正人に電話した。
この時間なら仕事前だろうと思った。
『お前が放ったらかしにしている亜紀ちゃんとデートしてきたぜ♪』
健人はわざと焼きもちを焼かせ、再び亜紀に気持ちを向かせようてした。
『はぁ?なんでお前が亜紀と?
意味わからん』
案の定、引っかかった。
『仕事前だろう?今、1人か?』
『あぁ?お前には関係ねぇだろ』
実を言うと、ついさっきまで夫人と一緒だった正人。
今から喫茶店に向かう途中に健人からの電話。
『なぁ、正人。亜紀ちゃんが可哀想だ。俺の為にもホストを辞めてくれないか?偉そうな事言えた義理じゃないんだが.....』
『そりゃそうだ(笑)母親を選んだお前から言われるのは論外だ!
つうか、勘違いすんな!
俺は仕事をしているだけだ。
亜紀も理解してる』
(なんでお前に言われなきゃならないんだ。関係ねぇだろ!)
段々イライラしてきた正人。
『仕事だけど、内容が内容だろ?
なぁ、正人。ホストを辞めて堅気の仕事にしろよ!俺からも頼む!亜紀ちゃんを幸せにしてやってくれ。俺の分まで幸せになってくれよ』
一瞬.....気持ちが揺らいだ。
ついさっきまで一緒にいた夫人は、年明けに海外に引っ越すと言ってたからだ。
今の瑠宇久の頼みの綱は夫人だけ。
その夫人が居なくなる。
心にぽっかりと穴があいた感じがしていた時に健人からの電話だった。
だが、素直に考えてみると健人には言えなかった。
(.......亜紀.....)
ふと呟く。
『............健人に返すよ』
『はぁ?お前何言っ.......』
『健人がもう一度亜紀を幸せにしてやれよ』
『亜紀ちゃんは物じゃないんだぞ!なんだよ、それ。それでいいのかよ!亜紀ちゃんよりホストを選ぶのか?そんな終わり方でいいのかよ!』
『........あのさ、健人.....
終わりも何も.....始まりすら無かったと思うよ、俺達
今だから言えるが、亜紀は
俺を通してお前、健人を見てた』
『違う!違う!ちゃんとお前を見てたって!!』
『俺もさ、最初の頃は、早く健人の事を忘れさせてやりたくて、あいつを喜ばせたくて一生懸命だったさ
けど、フッと寂しい表情をするんだよな.......俺と一緒に居ても
遠くを見つめたりしてさ.......
花屋で見たあの笑顔
俺の前では.......無かったんだ』
(何が駄目なんだろう)
見当もつかない亜紀だったが、とりあえずアパートの下で待つ事にした。
ふと、見上げた夜空。
今宵も星が綺麗だった。
(今度はプラネタリウムに行こう♪)
誘ってみようかな.,.ははッ!
じっとしていると寒さで手が震えてきた。
吐く息で手を暖めながら、健人と付き合い始めの頃の事を思い出した。
(いろんな事があったなぁ~)
二人の父の事
お母様の病気の事
正人さんの事
(喫茶店も年内で辞めるって言わなきゃ.....)
そう、あの日から休んでいる。
正人のキス現場.....
目撃した時はショックだったけど
まだ、気になる?
ううん、そうでもない♪
こんなに落ち着いていられるのは......
やっぱり健人さんのおかげだなぁ。
でもね、
好きになってはいけないの。
好きになると
また
健人さんが
苦しむだけ。
『ごめん......遅くなった 』
暗闇の向こうから息せききってやって来た。
『健人さん。大丈夫?
どうしたの?何があったの?』
『あ...きちゃ...ん....
俺、俺に....もう一度チャンスをくれないか?
今度こそ頑張るから
正人に渡したくない
.....だから......もう一度.....』
『.....健人さん』
(いいの?
また、好きになってもいいの?)
『私も、やっぱり
あなたが好き.......』
健人の胸に飛び込んだ。
健人は力強く亜紀の身体を抱き締めた。
『もう逃げないよ......
母さんからも.....亜紀ちゃんからも....,.』
『うん....うん.....』
『本当にごめん.....
情けない俺で.....
いっぱい傷つけて......』
『........うん.......
もう....私を離さないで.....』
『約束する』
そう言って亜紀にキスをした。
亜紀と別れた後、次は母を説得しようと部屋をノックした。
『母さん、入るよ....
話があるんだけど.......』
『なあに?あの娘の話なら聞く耳持たないわよ!』
『母さん、俺の話も聞い.....』
『父さんを死なせた家の人間なんかを嫁に迎え入れるなんて無理に決まってるでしょ?
お前には母さんの気持ち分かるだろ?』
健人にすがる母。
『母さん......
分かるよ!分かるけどさ....
俺にはやっぱり彼女しかいないんだ!父さんと彼女は関係ないよ!母さんの方こそ分かってよ!』
亜紀とやり直すと2人で決めたんだ!
もう迷わない......
母さんを説得する!
口調が今までと違っていた。
その口調に驚いた母は
『....け..ん..........と』
息子の名前を呼びながら母は胸を押さえ倒れた。
生花市場へ行く以外は病室で過ごした。
その為に個室を選んだ。
市場に行っては買った赤いカーネーション。
花言葉は『母への愛』
毎日病室に飾った。
寝ている事が多くなった母、店は亜紀が守っているとは知らない。
うつらうつらしている母に、
『母さん、ちょっと店の様子を見てくるよ。新しいバイトの子も1人じゃ大変だろうし』
『....あぁ....悪いねぇ、健人
頼んだよ......気をつけてね』
『うん.......』
そう言って亜紀に会っていた。
小さな嘘
大きな嘘
亜紀に会う為の口実
本当は生きてる間に認めてもらいたい。
嘘なんてつきたくは無い。
生きてる間に言わなきゃ.......
亜紀ちゃんと一緒になりたいと
『........健人や......』
うっすらと目を開ける母。
『?!...か....あ...さん』
『あなたが幸せになってくれるのなら......
母さんはもう.....何も言わないよ.....
1度ここに連れて来て頂戴.....,
母さんから健人をお願いしますって言うから.......』
最後の力を振り絞る様に言った。
『?!母さん......
本当に?
本当にいいの?
無理しなくていいから』
痩せ細った母の手を握った。
『お前が幸せになってくれれば
それで......,もう......』
『母さん!母さん!
うん、うん。
明日連れて来るから.....』
嬉しそうな最愛の息子を見て、母は安堵し、静かに目を閉じた。
そんな母の表情を見て、健人は、白いシーツが被せてある病院の布団に顔を埋め、また泣いた。
(ありがとう....
ありがとう.....母さん....)
母はそのまま昏睡状態に陥り、2日後帰らぬ人となった。
息を引き取る前日。
健人は、亜紀と正人を連れ病室に向かった。
朝の回診で、今夜が峠でしょうと言われたからだ。
母の胸に覆い被さっている真っ白い布団は、ゆっくりと上下に動いている。
『母さん、正人と亜紀ちゃんを連れて来たよ』
目は固く閉じられたまま動かない。
でも、きっと、聴こえているはずだ.......
『母さん......
改めて紹介するよ。
僕が今、お付き合いしている四角亜紀さんだ』
健人は亜紀をベッドの側に引き寄せた。
『四角亜紀です。
ふつつか者ですが.......
.......よろ..,...し..........』
声にならなかった。
(義母さん......
父の事、ごめんなさい.....
そして
許してくれてありがとう......
健人さんと一緒にお店を守っていきます
退院したあの日、たった1度だけだったけど、
大好きな花の話をしましたね。
ついこの間の様に思い出します。
もっと話がしたかったです。
義母さん.......)
言葉に出来ない亜紀の気持ちが健人に伝わり、その気持ちに応える様に亜紀の右手をギュッと握った。
『おばちゃん!正人だよ!
俺と健人は兄弟の様に育ってるから、2人の事は俺に任せてな!
こいつらに何かあったら、俺、すぐに飛んで行くから.......
だから、おばちゃん、安心して』
最後の最後に亜紀を許すと言えた母の表情はとても穏やかに見える。
間に合って良かった、と。
母もまた、参りに来た3人を追い返した事、その日の夜、亜紀の父親が自殺した事をずっと後悔していたのだろう。
だが、一生懸命女手一つで育てた一人息子を取られたくない一心で、反対と言う口実を作っていた。
母の一周忌が済んだ後、二人は結婚した。
母の大切な場所で二人は出会った。
天国の二人の父達が引き合わせてくれたのかもしれない。
口実なんて必要ない
二人は出会う運命だったと...,...
※~完~※
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