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一人ぼっちになったシングル母
既読ついてもう10日返事なし
娘がビスコ坊やに似てると言われました

*~年下の男~*

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名無し
16/07/21 17:38(更新日時)

全て私の妄想です(*^^*)

登場人物は実在しません(*^^*)



16/06/20 22:39 追記
大変ご迷惑をおかけしました。

自己満足の世界ではありますが、また再開したいと思っとります

m(__)m

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No.2263317 15/10/07 11:02(スレ作成日時)

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No.1 15/10/07 11:09
名無し0 


私は、地方から上京して来た田舎者

上京したての頃の都会は、それは目まぐるしく毎日が変化していた。

慌ただしい毎日に、ついていくのが精一杯だった。

仕事を覚える、都会ならではのルールや、キャッチのあしらいかた、交差点での人の避けかた等・・・・

見たことも無いブランド店や、沢山の高層ビル。

遊ぶ場所は多いし、休日は楽しく過ごした。


田舎はたまに帰る

それくらいが丁度良かった。

No.2 15/10/07 11:13
名無し 


気がつくと、年は40手前の38歳

すれ違う人に振り返られる事も無くなっていた。

独身の友人が1人減り、2人減り、気が付けば遊ぶ友達も居なくなっていたが、独り遊びが寂しいと考えたことはなかった。


ふと、郵便受けに入っていた冊子の広告が目に止まった。

No.3 15/10/07 11:18
名無し 

(お見合い相談所?)

へぇ、会社にはもぅ目ぼしい人は居ないし、同期の女の子は1人も居ない・・・・
みんな、寿退社していた。

そろそろ
私も考えなきゃ・・・・




よし、登録してみよう!

来週の休みの日に出掛ける事にした。

No.4 15/10/07 11:24
名無し 



とある雑居ビルの2階。

ドアには(結婚相談所・出逢い)

と書いてある。


コンコン!
『失礼します 』
『はい、どうぞ!』


雑居ビルらしい狭い空間に受け付けらしいカウンター。


受付に居るおねいさん・・というより、いかにも世話好きそうなおばさんがいた。


『初めての方ですか?』
『はい』


『では、こちらに記入を・・』

紙を渡された。

横に設置されているテーブルに腰掛ける。


No.5 15/10/07 11:30
名無し 


(えっと、、とりあえず自己紹介ね・・・・)


私の名前は佐藤幸子。
勤め先は△△商事。
性格は、んー、ネガティブ
???

駄目だ、マイナス思考と思われる
。明るい・・・・これで良し。

特技、、料理。

好きな事、、寝る事。


ぅ~ん。駄目駄目、ショッピング

これで良し!!

No.6 15/10/07 11:36
名無し 


裏面へ・・・・

ほー、相手の希望条件ね。
まぁ、私の年齢が年齢だけに、あまり望みをかけては駄目よね。


相手に望む仕事、性格、


へぇ、長男次男?!

・・何???持ち家かマンションか???そんな事まで?

さすが相談所だわ・・・・


記入を終え萎縮している頃に先程のおばちゃんがお茶を持って目の前に座った。


軽い雑談をした後、パソコンを見せてくれた。

No.7 15/10/07 17:40
名無し 


登録してある男性の写真とプロフィールの一覧表。

どうやら、全国展開しているようだ。
全国各地、ざっと200人は居そう。
『こちらでは個人のお見合いも出来ますし、集団でのお見合いパーティー形式でもしております。』
向かいに座っているおばちゃんがニコニコと言う。

とりあえず個人でのお見合いを希望し、一覧表から関東近郊の良さそうな人を二人選んでみた。

お相手の方にもお見合いの意志があるか聞いてみますね、と、とりあえず今日は入会金を支払い、これで終わった。

No.8 15/10/07 17:46
名無し 

1週間後、携帯に連絡が入った。

『申し訳ありませんねぇ。お相手の方には気になる人がいらっしゃるようで・・・・』


要するに、私は気にいられなかったということね・・・・

そりゃそうよ、私より、6つも若いんだもの・・・・

そう、40近い私に合いそうな人はなかなか居なかった。

定年後の人、30前後の若い人。
いいなと思っても遠い地方の方ばかり・・・・


No.9 15/10/07 17:55
名無し 


どうやって選べというのよ・・


暫くして、相談所から連絡が入った。

『今度◎◎ホテルでお見合いパーティーがあるのですが、よろしければ参加してみませんか?』


話によると、二時間程食事にお酒、会話をし、気に入った相手の名前を記入するという、何処かのTV番組みたいな事をするみたいだ。


紹介所に足を運び選び返事を待つより面倒くさくなくていいかも・・参加する事に決めた。

若い女の子に負けないよう気合いをいれなくちゃ!

かといって(痛い人)にならない様、気を付けなくては......




No.10 15/10/07 18:05
名無し 


黒のカクテルドレスに、ショール、下品にならないよう気を付けた。

◎◎ホテルの屋上........


入り口にはあのおばちゃんと他の従業員と思われる女の子が受付をしていた。

『頑張って!良いお相手が見つかりますように』と、励まされた。

励まされた理由が直ぐに分かった。




みんな・・若い。



参加した事に激しく後悔した。


帰ろうかとも思ったが、参加費も払ってるし、せっかくのお洒落を台無しにするのにも気が引けたのだ。

No.11 15/10/07 18:13
名無し 



さすがホテルの屋上

夏ということもあって、夜風が心地よい。

そしてなにより、夜景がとても綺麗なのである。


私のアパートはごく普通の2階。
見渡してもアパートや民家で埋め尽くされている。


あー、違う違う。
夜景を見に来たんじゃない、男を見に来たんだ。


ふと会場を見渡す。
みなカクテルを手にツーショットを展開している。

(いやだ、出遅れた?)


独りの人は誰もいない。

みなそれぞれにグループになっていて雑談に花を咲かせている様だ。


あの中に入る勇気は

無い。


No.12 15/10/07 18:22
名無し 


会場を背に、再び夜景を堪能する事にした。


なんだか、みじめになった。


やはり、帰れば良かったと・・


どれだけの時間が過ぎたのだろう。

『夜景、綺麗ですね。好きなのですか?か』

『・・・・』

最初気が付かなかった。私に声を掛ける人なんて居ないと思っていたし。
数秒してから・・・・
『はい?あ!ごめんなさい。もしかして私に言ってます?』

クスッと笑いながら『はい』



かなり若い。細身で長身。世間ではモテるタイプのいい男。

チラッと名札を見る。

(32歳.斉藤歩)

32歳か・・・・冷やかしだな......

No.13 15/10/07 22:17
名無し 


『皆さんの中に入らないのですか?』

私との間に50cm程の距離をおいて彼は言った。

『あっ、いや、夜景に見とれてしまって・・その・・』
見苦しい言い訳。


『佐藤ゆきこさん、とおっしゃるんですね』
名札を見て、またニッコリ微笑む。

・・やだ・・年齢はスルーされた。一瞬で対象外と判断されちゃったか。

『僕も夜景を見るの好きなんですよ。・・それに・・佐藤と斉藤、なんだか似てますね!』
(いや、私、さちこなんだけど)

『・・あの・・私に気を使わずどうぞ皆さんの所に・・・・』


遮るようにアナウンスが流れた。


『えー、皆様、本日はお疲れ様でした。そろそろお時間が来たようです。お付き合いをしてみたいと思われる意中の方のお名前の記入をお願いします!なお、集計結果が出るまで暫くお待ち下さい。』

No.14 15/10/07 22:24
名無し 


私にも用紙が回ってきた。
勿論白紙で出す。

再び夜景に視線を戻す。


既に、斉藤歩さんはいない。


『えー、長らく御待たせいたしました。それではカップルになられた方のお名前を発表したいと思います。お名前を呼ばれた方は壇上に・・・・』


アナウンスが続く。



帰ろう。

お祝いムードの中に居るのも苦痛になってきた。
皆が壇上に目を向けている間に、そっと帰ろう。



ホテルを出て、ため息ひとつ。



(なにやってんだろ)


No.15 15/10/07 22:37
名無し 


おにゅうのヒール音が車の往来音に消されていく。

私の存在すら消すように・・・


『・・・さーん、・・・・さーん、』

ん?後ろで誰か呼んでいる???

振り向くと、あの人、斉藤歩君だ。走ってこっちに向かって来る。


『歩くの....ハァハァ....速いですね』

『・・・・?』

『会場を後にするゆきこさん、、を・・見かけたもので・・』

『あのう、何か用ですか?』

(間違えてるけど、今、名前で呼んだ?なんだか、ちょっと嬉しい)

『いやぁ、もう少しお話してみたいと思って』

また、あの笑顔を見せてくる。
『良かったら、このあと、近くで食事でも行きませんか?』



なんだ???この人....気持ち悪っっ



んー、でも、確かパーティーの参加者だよね。身元は確かな人のハズ、、、、


No.16 15/10/07 22:50
名無し 

少し考えてみる。

実を言うとこの後、行きたい場所もあった。

斉藤歩君。
悪い人でもなさそうだ。

何より私もこの人ともっと話がしたい。

その気にさせるこの笑顔にヤられてしまった。


『あ、あのう、実は行きたい場所があるので、その後でもいいですか?』

『あっ!全然構わないですよ。良かったら一緒について行ってもいいですか?』


私の行きたい場所・・・・
それはスーパー!!

この時間値引きされててお買い得なのである。


『あのう、"力"あります?』

『えっ!?普通にあるとは思ってますけど・・・』


(よーし、もう逢うこともないし、お米と醤油、買っちゃぉっと!)


密かに目論む。

No.17 15/10/08 00:34
名無し 


『うわっ!鮭50円だ!!安い♪....あ!カレイも・・煮付けて冷凍しとくか・・』

彼は、品定めをしている私の後ろでカートをひいている。

例のあの笑顔で、なんだか楽しそう。

『退屈じゃないの?』
『僕、こういうの1回してみたかったんです!』

(へぇ、つうか、その内後悔するからねー)
と、お米に醤油、追加で味噌と牛乳をカゴに入れた。

色々買えて私はかなりご満悦♪

重い荷物は彼に持ってもらった。

『ごめんね。大丈夫?』とりあえず聞いてみる。
『あと、どれくらい歩くんですか?』

顔が少し歪んでみえた。

『そうねぇ、あともう少しよ!頑張って♪』


程なくしてアパートに到着。
彼の指には、スーパー袋の持ち手部分が食い込み赤くなっていた。

やり過ぎたかな・・・・

少し可哀想になった・・・・

No.18 15/10/08 08:42
名無し 


『ここの2階だから。』

車1台がやっと通れる細い道から少し入ると、各部屋の郵便ポストが6つ並んでいる。そのポストに覆い被さる様に階段がある。
時間が遅いだけに、靴音が響かないよう、静かに上がる。

ドアを開け、玄関先に荷物を置いてもらった。

置いた途端、彼もダウン!!

『ひゃぁぁぁ、疲れたぁ!』
『ありがとう♪助かりました。』


そういう私も、慣れないヒールで靴擦れが出来ていた。

出来れば、出掛けたくない。
足も痛いし、このまま買ってきた食材を調理したい。

けど、このあと、この人と食事に出掛けると約束をしている。

No.19 15/10/08 09:05
名無し 

『あの、、お腹空いてます?もし良かったら、私の家で食事しません?買ってきた食材で料理しますので・・』

提案してみた。

今日初めて会った名前しか知らない男を、部屋に上げる自分が理解出来なかったが、疲れがどっと押し寄せてきて、もう動きたくなかったのである。

(慣れない荷物を持たせた罪滅ぼしもあったのかな・・・・)

自分の言動に自問自答する前にとっさに出た言葉だった。



『良かったぁ♪僕、もう、歩けません』玄関先で寝転がる彼。


その言い方、表情、仕草が可愛くて、愛おしくて、見つめあって2人で笑った。


『ささ、どうぞ。お上がり下さい。』

『すみません。御言葉に甘え、失礼します!!』と、靴を揃える彼。

32歳の彼は、とても礼儀正しかった。

No.20 15/10/08 09:25
名無し 


アルコール類は酎ハイしか無かった。
簡単なつまみを作り、冬はコタツになるテーブルに並ぶ様に座った。

(この部屋に家族以外の人が来たの・・いつだっけ???)
ふと、思った。


目の前にはTV。
深夜番組を放送している。

『ゆきこさん、あの・・・・』
『あ、私の名前はさちこ!幸子と読むの。よく間違えられるんだけどね』
『ああ、そっちでしたか?!迷ったんだよね~』

はにかんだ笑顔も可愛い♪

『ねぇ、歩君は若いし、かっこいいし、どうみても女性には困らない人に見えるんだけど・・・・』

ほろ酔いも手伝ってか、タメ口の私。

『いやぁ、なかなか。出会いはあっても結婚まで考えられる人には逢わないというか・・・』

『ふ~ん、なるほどね・・そうね・・恋愛と結婚は別よね』

『・・・・』

一番聞きたいコト・・・・



どうして私の後を追いかけて来たの???



No.21 15/10/08 19:21
名無し 



『何故、私の後を追いかけて来たの?』

『え!?・・だって・・もう少し話をしてみたかったし・・迷惑だったかな?!』

『・・・・』


私の年齢は38歳。彼は6つも年下の男。
お見合いパーティーで知り合った。

興味を持ってくれるのは正直嬉しい。
けど、今から交際期間も含めると40になってしまうだろう。

当然子供も、産むのは難しくなる。

私に興味を持ったって、仮に付き合ったとしても、あなたのご両親に孫を見せてあげられないと思うわよ・・・・


本当は嬉しい一言なのに、気持ちを圧し殺し自分に期待なんかするなと一喝する。


『歩君は大丈夫だよ!若いし、かっこいいし、もっと自分をアピールすれば、私なんかじゃなくても、他の沢山の女性からアプローチがあるわよ』

『・・幸子さんて、・・さっきから若い若いって言うけど、年齢にこだわりがあるのかな?!年下は興味無い?』

『いや、そういう訳じゃないけど。私、あと2年で40だよ???普通、30前後の人なんかと考えられないって・・・・』

『今こうやって、僕と出会ったケド?』

『・・・・』

No.22 15/10/08 19:54
名無し 

『僕は君に興味はあるし、だから追い掛けたし。』
続けて彼は言う。
『どんな人なのかもっと知りたいし、』

『・・・・』

『僕は出来れば付き合ってみたいんだけどな・・』

アルコールのせいなのか、少し赤い顔の歩君は、じっと私の顔を見る。

『・・・歩君。ありがとう。嬉しいよ♪けど、正直に言うね。もうね、私には時間が無いの。出来れば交際期間なんて省きたいのよ。結婚したいの。出来れば早めに子供を産みたいの......』
熱く語ってしまった。

酔っているのかな、私。
今日初めて知り合った年下の男にナニ言ってんだろぅ・・・・

『そっかぁ、幸子 さんて、偉いね。ちゃんと将来のコト考えてさ......』

『僕なんか、周りが煩いから適当に考えているだけなんだよね』

『ねえ・・・・』と、彼。
『ん???』と、私。

『幸子さんは若さが無いと自信が持てないの?僕から見たら、十分魅力的な女性なんだけどな・・』

歩君の優しい言葉に酔いしれつつ素直になれない私。


どう答えれば良いのか分からず、

ふとテレビに目を向けた........




No.23 15/10/08 19:59
名無し 

テレビ画面は純粋で甘酸っぱい青春ドラマを放送してる。



主人公の可愛い女の子に自分を投影し


今日の自分の惨めさも手伝って


一夜限りでも


コノ人に甘えてみたくなった


年下の男に・・・・

No.24 15/10/08 20:08
名無し 



横に並ぶ様に座って

ふたり
正面のテレビを観ている

沈黙が続く・・・・


ふと、

彼の
視線に気付く


その視線の意味に
応えるかのように


私も首を彼の方に・・・・


キスを期待して

軽く首を傾けた・・・・




No.25 15/10/08 21:50
名無し 



キス・・・何年ぶりだろうか


初めてのキスッていつだッたッけ....


頭がぼーッとする


お互いのカラダを引き寄せる


自分以外の温もりを唇で確認する



わたし

ドキドキしてる・・・・




No.26 15/10/08 23:23
名無し 

そのまま背もたれにしていたベッドへ・・・・


『....歩君、、、わたし......』

『ごめん、もう、我慢できない』

『あッ..』

服の中に歩君の手が・・・・

『あ、でも待って....避妊』


『僕が持ってるから........』

手を止め、財布の中から出してきた。

彼の優しい慣れた手つきの愛撫に感じつつ

頭では冷めてしまった自分がいた


(持ち歩いているんだ。そうか・・・・そうよね・・)


一夜限り

自分にそう言い聞かせ彼に身を委ねた。


No.27 15/10/09 09:49
名無し 



久しぶりのSEXは
とても気持ちが良かった。


愛し合うという行為で
女であるという事を再認識した。

素直になれた自分がいた。



ふと目が覚めた。
時間は朝の5時

隣で歩君が寝息をたてている。
このまま彼の寝顔を見つめていたい。

私の頭の中で

ワンオクの
♪the same as....♪

が流れていた。




No.28 15/10/09 10:12
名無し 


無性にコーヒーが飲みたくなった。

歩君を起こさない様にそっとベッドから出る。

台所でサイフォンを取り出し、お気に入りのブルマンを入れる。
部屋全体に芳醇な香りが行き渡たる。
匂いに釣られたのか、彼も起きてきた。

『おはよう!よく眠れた???』
彼にコーヒーを渡す。

幼くみえる彼の顔に髭が少し伸びていた。

『さっちゃん、おはよ~(´Д`)』
けだるそうな彼が唇にキスをしてくれた。

今日は土曜日。
コーヒーを持って部屋に移動する。


『歩君、今日は仕事???』

『ん?!......んー、今日は休みだョ....だから、このまま、ここでゆっくりするぅ~』

私の体を引き寄せる彼。

そして



『・・・・オナカチュキマチタ......』
(お腹空きました)
甘えた声を出す。

(ぷっ!)

『そうね、トーストでもいい?』

『うん!あッ、でもその後また運動だょ!』

と、にやける彼のオデコを人差し指で突く。





No.29 15/10/09 11:38
名無し 


無言で朝のニュース番組を2人で観る。
『あッ、でも、何処か行く?』

先程の発言で私の機嫌が悪いと思ったのかな・・・・

『ごめん、私仕事なんだ。昨日のパーティーに参加する為に、家に仕事を持ち帰ってるの。だから、帰ってくれる???』


独身で勤続19年の私......
それなりに仕事は頂いていた。

この土日にしなければ月曜日に間に合わない。


『・・そうなんだぁ
・・なら仕方ない。
これ食べたら行くよ.....』


本当は仕事より、彼と居たい。
けど、素直になれない。

(期待しちゃダメよ、彼とは一夜限りよ!この部屋を出た途端、彼は私の事なんて忘れるから...)


『じゃ、頑張って!』

そう言い残し
彼は、帰って行った・・・・




No.30 15/10/09 18:24
名無し 



やっぱりね・・・・



私の携帯番号を聞かなかった


次はいつ逢える?
とも聞かなかった




彼は、
笑顔で帰って行った


そうだよね、うん。


割り切っていたつもりだッたが


酷く疲れが押し寄せてきた


少し眠ろう・・・・
目が覚めたら
私も忘れよう・・・・

何も無かったコトにしよう・・・


(そういえば帰り道・・・・
・・わか・・るのか・・な・・)


そのまま眠りについた....



No.31 15/10/09 18:39
名無し 


月曜日の朝、会社のロッカールームで
後輩の彩が寄って来た。

『先輩!おはようございます♪』
『彩、おはよー♪また1週間が始まったね!』

『・・あれッ???先輩・・なんだかいつもと違ーう....何か良いコトでもありましたぁ???』

鋭い突っ込みを入れてくる。
今私に1番近い存在だ。
仕事でも良きパートナーである。

『この土日良く寝たからじゃない???』


(お見合いパーティーに行ったとは口が裂けても言えない!)

(彩は29歳、彼氏持ち。
この子もそのうち、
結婚して居なくなるンだろうな)

『確かに先輩のお肌、潤ってますよ!!!』

絶対に年下の男と
エッチしたとは言えない!!!


『ささ、仕事仕事!!!』


着替えが終わり、話題を無理に変える。

『この間のさぁ、・・・・』

No.32 15/10/09 19:08
名無し 

『先輩!5時になったので先に帰ります。』

気がつけば机に向かっている人は半分位になっていた。

『え?!もう5時???
お疲れッ、また明日ね....』

私の仕事はまだ終わらない。
土日に仕上げた企画書を見直しして、明日また再提出しなければ
....今日も残業か....

ふと、外を見る。
外はまだ明るい。
明るさが
気休めになる。


ぼーッとしてたら、歩君を思い出しそうだ.......

『さッ、仕事仕事』



ふと気がつくと警備員が見回る時間になっていた。
『遅くまでお疲れ様です。
まだ仕事かかりそうですか?』


『あッ、すみません、今帰ります』


なんとか終電は間に合った。


途中スーパーに寄り、半額になッた幕の内弁当を買って帰宅する。




アパート前でふと見上げると
私の部屋の前に黒い物体が動く
(?!誰かイタズラしてる???)

『・・あッ!・・さっちゃん!!
お帰り~遅かったね~』

小声で叫ぶ誰かが居た......


No.33 15/10/09 21:19
名無し 



ニコニコと階段の手すりから身を乗り出し手を振っている。

『あ..歩君?!』

(えッ!?いつからそこに??
てか、約束してたッけ??)

急いでそして静かに階段を駆け足で上がる。


『逢いたくて....
来ちゃったぁぁぁ!!』

ぎゅぅッて抱き締めてくる。

(私も♪・・・そんなコト言えない)

びっくりした気持ちより、嬉しさが込み上げる。

舞い上がる気持ちを抑え、冷静を装った。


『ごめんね、遅くなって。
さあ、上がって』

No.34 15/10/09 21:46
名無し 

『びっくりしたじゃないの....
急に来たりして....』

玄関で靴を脱ぎながら歩君に問いかける。

『だってぇ、....』
唇を尖らせる
『土曜日のぶん・・・・』

(土曜日の???)



『もう1回しよッてお願いしたじゃん』
ぷぅって膨れる彼。

・・赤面するような事を臆面もなく言う。

若いな・・・・

『そうだッけ?!忘れた』
(本当は覚えてる)

『嘘嘘。本当に顔を見たかったんだぁ』
また、あの笑顔を見せてくる。

『さっちゃんとご飯一緒に食べたかったしぃ、土日は忙しそうだったしぃ....』
『どうしよう、弁当、買って来ちゃッた!』
『冷蔵庫に何かあったかも....
ちょっと待ってて・・・』

ピーマンと冷凍してあった牛肉で
青椒肉絲を作った。


『旨ーい!さっちゃん、料理上手だねッ♪』

『ありがと♪』

(何年独り暮らしていると思うの???)

突然現れた年下の男に
身も心も
かき回されている

No.35 15/10/09 22:19
名無し 


『そういえば、駅までの道分かった?大丈夫だった?』

『うん、大丈夫!
僕この辺土地勘あるから....』

(昔付き合ってた彼女でも
住んでいたのかなッ....)

『そうなんだ。良かった。心配してたの。ケータイ番号も知らないし,....』

探りをいれてみる。

(普通に番号教えてッて言えば良いのに....)

『あッ、本当だね。じゃぁ、lineしようよ』

(じゃぁ、ッて....仕方なく?!
彼のlineの数、見てみたい!
でも彼女でもないしな....)



『さて、linも交換したし、
次は、さっちゃんを・・・』
と、私を抱き寄せる。

私は食欲と性欲の処理女かッて
怒りも込み上げたケド・・・・


私は

彼が好き

紛れもなく
私は歩君が好きなのだ

今宵も少し
素直になろう


神様

ただの女になってもいいですか?


No.36 15/10/09 23:05
名無し 


平日の半分は私のアパートの前に彼が居た。
来れない日はlineを送ってきた。

週末は私のアパートで過ごしていた。

私が仕事を持ち帰れば私のお世話をよくしてくれた。


ある土曜日の昼・・・・

『さっちゃん、カルボナーラでいい?』
『えッ!また?!』

簡単だからなのか、よくスパゲティを作ってくれる。
『ぇぇぇッ駄目なの?!』

愛情を欲しがる犬の様に私の顔を伺う。

『この前はナポリタンだったから今日は違うょッ!?』

『そういう意味じゃなくて・・』
(ぷっ!)

歩君の眉毛が八の字になってる



私の負けだ!!
キスしたくなるでしょに・・・・

『じゃぁ、それでお願いします!』
『ほーい♪』
挙手をするアラレちゃんみたいだ....


パソコン画面を見る合間に
彼を目で追う。

洗濯物を干す彼
散らかった部屋を片付ける彼。
テレビを観て何かブツブツ言ってる彼。
私の横で
半開きの口を開けて寝ている彼。


時々
目が合うと

ドキドキする私。


歩君、
私、あなたのこと

段々好きになる。


No.37 15/10/09 23:24
名無し 


初めて会った日から2ヶ月が過ぎた10月のある日曜日。

『ねえ、私、歩君の家
知らないンだけど・・・・』

いつもココ私のアパートだった。

『ああ!そっかぁ。そうだね。
でも何も無いよ?!
来てもつまらないよ?!』


テレビでは彼の好きなゴルフを放送していた。


『・・ふぅ~ん・・』

少しこなれてきた関係......


わざと怒ってみせた。
沈黙+顔を合わせない......
どうだ!!!


やっとテレビから目を離す。

『ごめん。なら、今から行こうよ。独り暮らしだから汚いケド』


どうせ続かない関係だと思ってる

少し位は彼女ヅラしてもいいよね
???



『では、出掛けますか♪』

どんな土地勘なのか
みせて頂きますッ!!!



No.38 15/10/10 09:47
名無し 


アパートを出る

左へ行けばスーパー・・・・

その反対側、スーパーを背に右方向へ向かう。

歩君の後ろをついていく.......

歩君、身長ッてどれくらいあるのかな?華奢な背中を眺めていると、この人に抱かれたのかと思ったら、独り赤面してしまった.....

『ここだよ!』
『えッ!?』

私のアパートから徒歩3分。
5階建ての分譲マンションに彼は住んでいたのだ。
土地勘があって当然だった。

『ここに住んでるの???』
思わず見上げる。

立派なマンションに独り住まい。
何者???

エレベーターで最上階へ・・・・

オートロックの最新式だ・・・・

『さあ、どうぞ!お嬢さん♪』
分厚くて重そうなドアだ。
レディファースト....そんな仕草を振る舞う紳士的な歩君。

『お・お邪魔します・・・』

『うわぁぁ、広ーい。
眺めも素敵。夜景も綺麗に見えるでしょ?!』

『う~ん、疲れて帰るダケだから、、、あんま見ないかな?!』


360度見渡している私に、

『ベッドルームも見る???』
にやける彼。

(ヤダ、物欲しそうな顔してた???)


『部屋も見たし、場所も分かったから、もういいわ!』

玄関に向かおうとする
私の腕を掴み、
振り向き様に
キスをしてきた・・・・

ここは歩君の部屋・・
いつもとは違う
キスに感じた・・・
私の鼓動が激しくなってきた・・

『帰りましょ!!』

鼓動が気付かれる前に・・・・



戻り道・・・・
もう1つ確認しなければならないこと・・・・


(私達.......付き合ってルの????)




No.39 15/10/10 10:00
名無し 


『凄いマンションに住んでいるんだ。自分で買ったの?』

『いや、親父の物件だよ。
不動産屋なんだ。僕は親父の関連会社に勤めているんだよ』

『そうなんだ....
初めて聞いた...』

『僕も初めて言った...』
あははははは・・・・♪


笑い事ではない。
もしかしてお坊っちゃん!!?
こっちは田舎者で、しかも年上!

釣り合う訳ないじゃん....
歩君の両親が許さないわッ!


『あ、でも僕の結婚相手は自分で決めるッて言ってあるから♪』

(それ、どゆ意味???
私の考えていたコト分かったの???)


先が見えない関係なんて続けてる暇はない・・・・

アパートに戻ったら思い切って彼に聞こう・・・・



No.40 15/10/11 19:02
名無し 

『ねぇ、歩君。』

『ん?!何?』

彼は洗濯物をたたんでいる。

『あのさ、私達ッて、
付き合ってるの???』

『え???違うの?!
僕はそう思ってるけど.....
さっちゃん違うの??』

『うぅん、私は歩君が好き。
出来ればこのまま一緒に
なりたいと思ってる』

『・・・・』

『歩君も同じ気持ちなら、
出来れば早い段階で
ご両親に挨拶に行きたい。
そして結婚の了承を
頂きたいんだ』

『・・・・』

『前にも話たよね。
私には時間がないッて。
私の中では結婚は2人だけのものではないと思うの。
子供が出来ないかもしれない
孫を抱かせて上げられないかもしれない。その事が引っ掛かって、その・・・・』


言いたいコトが有りすぎて
口がモゴモゴして言葉に詰まった。

自分でも何が言いたいのか
分からなくなった。

『・・・・』


手を止めて何か考えている様子の歩君。

彼の口からどんな言葉が出てくるのか・・・・
私はまた、ドキドキしながら待った。




No.41 15/10/11 19:35
名無し 

『・・・・
うん、分かった!
セッティングするよ!
許可を貰いに
僕の両親に会ってよ!!!』


『・・歩君・・ありがとう』

『気がついてあげれなくて
ごめんね。さっちゃんの口から言わせるなんてさ、僕もまだまだ
だなッ!』

嬉しくて涙が出そうになった。




『そういえば・・・・』

『何?歩君』

『プロポーズ、、まだだね?!』
あはははは♪


私も釣られて笑ってしまった。

僕の両親に会ってよ!!!

最高のプロポーズだよッ♪


No.42 15/10/11 19:57
名無し 

11月某日。

出会ってから4ヶ月。

天気は晴れ。
彼の実家で初顔合わせ。

既に私の両親には会って許しを頂いた。
結婚相談所には2人で退会した。

次は歩君のご両親。
隣に住む歩君のお兄さん家族は用事があり、また別の機会で会って頂くことにした。

紺のワンピースに、黒のbag。
アクセサリーなしの、髪は後ろに1つ束ねただけのシンプルな装いにした。

彼と一緒に決めた。

昨晩は緊張してあまり眠れなかった。
(反対されたらどうしよう.......)

そればかり考えてしまう。

しっかりしなきゃ!!


彼がアパートまで迎えに来てくれ、彼の運転する車で行く。





No.43 15/10/13 08:41
名無し 


彼の運転する車の助手席でふと思った。

なんだかおかしい......
上手く行きすぎる......

今まで恋愛なんて上手くいかなかったのに・・・・

急に不安になった・・・・

『・・・・』
『どうした?具合悪いのか?』
心配そうに覗み込む彼。

『緊張半端ない.......』
『胃がいたいょぉぉぉぉ』

『あははは!大丈夫だって!
それとなく言ってあるから、
年齢とか,.,.....』

『ェッ,!?年齢だけ???』

『あ!名前も言ってあるよ♪』

『そういう問題じゃないでしょうに・・・・』

『あははは!可愛いなぁ、
すぐムキになる幸ちゃん。
大丈夫!!僕を信じて,...
僕に任せて!!!,』

ハンドルから手を離し私の手を握ってくる。

『運転中でしょ?!危ないわ!』
『はいはい』


出来ればずっとずっと握ってて....
今も、これからも.....

私を安心させて.....
それが出来るのは

歩君、あなただけだよ・・・・




No.44 15/10/13 08:55
名無し 

彼の実家に到着する。
と、同時に立派な外観が目を引く。

『本物のお坊っちゃんなんだ,...』
『ええ?!違うよ!車入れてくるから先に降りて』


ここはいわゆる高級住宅街。
とんでもない人を好きになってしまったのかも・・・・


インタフォンを押す前に大きな玄関ドアが開いた。

『いらっしゃい♪幸子さん。
初めまして、母親の今日子です』

『あ!初めまして。
さ・斎藤幸子です・ほ・本日はお・お忙しいてところ
お・お時間を・・・』

緊張がピークだ!!
『玄関先で何やってんだよ!
上がって!!!』

車を車庫に入れて遅れてきた歩君が私に声を掛ける。

『おほほほ、そうね。
さ、どうぞ!お父様も
お待ちかねよ』


『失礼します』

そそうがないように.....

頑張れ、自分!!!!!

No.45 15/10/13 10:24
名無し 


玄関横の大接間。
歩君の後ろをおずおずと付いていく。

『父さん、只今!
えっと紹介するね!
こちら斎藤幸子さん』

『初めまして、斎藤幸子です』

『やぁ、いらっしゃい!!
お待ちしてました。
話は歩から聞いております。
ささ、どうぞお掛け下さい』

(歩君、お母さん似なんだ)

『歩がお世話になってるみたいでて・・・・』
『いえ、私のほうこそ歩君に出会えて幸せを沢山頂きました』

お母様が焼いて下さったクッキーを頂きながら4人で談笑する。

雑談が途切れた頃にお父様が本題に入ってくれた。


No.46 15/10/13 22:17
名無し 


『歩が言うには年齢的に、
その・・・・』

『あ、そうです。
私には時間がありません。
ご理解頂けない場合は歩さんとご縁が無かった事にしようと思い、普通に考えると早い段階ではありますが、彼に無理にお願いしました。』

『・・成る程・・さすがしっかりしていらっしゃる。
筋を通す、曲がったことが嫌い...そんな印象を受けますな』

続けてお父様は言う。

『幸子さん、私共はね、歩が幸せになる事を1番に考えています。孫は長男の所にいるし、跡取りも長男の所でなんとかなると思っている訳ですよ。その時迄、会社があるかどうかも分からない。何も心配はいらんと思うのですがね....』

お母様はお父様の方を向いて頷いた。同じ意見ということか......


『私の方からも歩をお願いしますよ。幸子さん・・・・』

予想もしていなかった展開に
ただただ驚いた。

びっくりしている私をみた歩君、悟ったのか私の手をとり、改めて

『これからも宜しくね!
さっちゃん!!!!』


『・は・・・はい♪』

そう答えるのが精一杯だった。

No.47 15/10/13 23:39
名無し 

結婚が決まってからは
それは目まぐるしい忙しさだった。

会社の上司、仲良しの彩に報告する。

『おめでとうございます♪先輩!なんで隠してたんですかぁ???やだなぁ~!』
『ゴメン、いや、自分でも信じられないくらい話が早く進んで....』
『お式はドコでするんですか?』
『親族だけの簡単な食事会形式なの。急すぎて式場が空いてなくて・・・・まッ、この年でウエディングドレスは、ねぇ....』
『でもぉ、お写真は撮るンですよねッ♪後で見せて下さいよッ♪』

ピョンピョン飛び上がって自分のコトの様に喜んでくれた。

(彩!!ありがとう♪)


初顔合わせから1ヶ月後
私の両親も上京し、両家の顔合わせをした。

あまりにも急に話が進んでしまい、やはり式場は難しかったが、それでも嬉しかった。

婚約指輪は貰わずエンゲージリングだけ。

裏に記念日と


A to s


歩から幸子へ


彫って貰った。


1月吉日


私達は結婚しました.....




No.48 15/10/13 23:45
名無し 


仕事は歩君とも相談し、このまま続ける事にした。

本音を言えば、妊活に入れば良いのかもしれないが、40近くまで独り頑張ってきた女の勘...とでもいうのか・・・・

何かあった時の為の自分の居場所を確保しておかなければ・・・・
何故か、そう思ったのである。

その考えは後に正解だった事になろうとは誰も予想がつかなかった。


No.49 15/10/14 11:30
名無し 

新婚生活は私の古ぼけたアパートで生活する事にした。

大家さんに結婚した事を報告し、2人で住む許可を貰った。
荷物は歩君の洋服のみ。
彼が住んで居たマンションは、家具類はそのまま残し賃貸にした。


ココに住みたいとこだわった歩君。
『僕たち、ココから始まったんだよ!』

そう、あの日、歩君を部屋に招かなかったら・・・・
外へ食事に出ていたら・・・・

わたしが年下の男に甘えなかったら・・・・

今の幸せは無かったかもしれない.......

結婚してからも前と変わらない
日常がそこにあった。

家事が嫌いではない歩君は、

『自分以外の誰かの為に
何かをするって楽しいねえ♪
さっちゃん!!』

(相変わらず麺類を作るケドね♪)


何気ない日常・・・・
彼の声は私のBGM・・・・
彼の笑顔は私の最高の癒し・・・

歩君、
あの時追い掛けて来てくれて
ありがとう。

私は
とても
幸せです.......





No.50 15/10/14 23:06
名無し 


結婚して1年が過ぎた。
季節は冬。

(今日は私のほうが帰宅が早いわね♪寒いし、夕飯はお鍋にしよッ♪)

相変わらず幸せな毎日を
送っていた。

『只今!』
『歩君、お帰り~♪今日は鱈鍋だよ♪』

『さっちゃん、俺・・・・』
神妙な彼。


『俺、営業部長になッたぁぁぁぁ』

『えッ?!おめでとう♪
お祝いしなきゃ!!
ワインあったかなぁ?!』


コタツで鱈鍋とビールで乾杯をした。


『それでねぇ、
これからはねぇ、
色々忙しくなるからッてねぇ、
秘書がついたんだょぉ...』


ビールでほろ酔いの彼。
呂律もおぼつかない......


『23歳のねぇ、
麻衣ちゃんッていうの、

これがねぇ、なかなか
しっかりしててねぇ』

『なんかね、
麻衣ちゃんの言う通りに
してれば良い訳.....』

『ねッ♪凄くない???』


一瞬、嫌な予感がした。
『さっちゃーん♪』


酔っぱらいの歩君がキスをしてくる。

『はいはい
酔っぱらいは
お寝んねですよー』


そのまま彼はコタツで寝てしまった

独り深夜放送を観ながら
秘書の麻衣ちゃんとやらを
考えた......




No.51 15/10/15 18:45
名無し 


昇進してからの彼は忙しそうだった。
呑んで帰る事が多くなった。

毎日が接待.....そんな感じ。
(営業だから仕方ない・・・・)

体が心配だ・・・・

そのうち、土日は接待ゴルフにも
行く様になった。

だんだん、私の知らない歩君が
増えていく・・・・

今日は金曜日。
明日のゴルフの為に久しぶりの早い帰宅。


『ねぇ、歩くん』
『ん?』
彼はクラブの手入れに夢中だ。

『少し呑む機会を減らせない?
体が心配なんだけど・・・』

『大丈夫だょッ♪1つ、明日の
ゴルフで契約がとれそうなんだよ♪』

『・・・・』

『親父、喜ぶぞぉ!!!』

貸ビルの一室が契約にこぎつけるらしい。

ふと麻衣ちゃんも来るのか
気になった。

聞いてみようか・・・・
いや、止めよう・・・・
麻衣ちゃんは関係ない・・・・
私達の問題だ・・・・


土日、暇だなあ…
2人なのに.........独り

『あ!来週は空けといてよ。
たまにはフタリで
映画でも見に行きたいわ』

『わかったよ!!明日、
麻衣ちゃんに言っとくから』


(やっぱり、麻衣ちゃんも
来るんだ・・・・)




No.52 15/10/16 08:53
名無し 

翌朝早くに歩君は出掛けて行った。
迎えに来た車の前に麻衣ちゃんが立っていた。
『おはようございます!』
歩君と私に挨拶をする。

車に乗り込むと、窓を開け
『行ってきます♪』と手を振る彼。

20代の麻衣ちゃんはとても眩しかった。キラキラ輝く.....そんな言葉が似合いそう。
私には無いモノが全身から溢れてた。

住んでいるアパートは上京してから住み続けている。
入居当時は新築だったけど、今は私と同じ古ぼけてきた。

古さには古さの良さがあるけどねー・・・・
慰めにもならない
私の独り言・・・・

部屋に入ると、急に寂しさが
込み上げてきた。
この部屋は今までもずっと独りだったのに・・・・
歩君と暮らし始めてからは
ヒトリの空間がとても広く感じる。

濃いめのコーヒーを入れ
わざと持ち帰った仕事にとりかかる。




No.53 15/10/16 18:28
名無し 


夜遅くに、麻衣ちゃんに
抱えられて彼が帰宅した。

『奥様、申し訳ありません。
契約が決まり祝杯をハイペースで
その・・・・』

『さっちゃん、たらいまぁ♪』
『麻衣子さん、ごめんなさいね。ありがとう。気を付けて帰ってね。』
『歩さん、ではこれで
失礼します。お休みなさい。』
と、頭を下げて帰って行った。

相当酔っている。
余程嬉しい契約だったのか....


もう寝息をたてている彼の服を脱がした。

私以外の匂いがしないか確めたかったが、惨めになりそうで
止めた。


歩君。
夢の中でもいいから


寝言で・・・・


私の名前を呼んで・・・・



No.54 15/10/17 10:01
名無し 


また
私の知らない歩君が増えていく

最近は出張もするようになった。

事業展開の為なのか・・・・
一泊が月に1~2回。
(麻衣ちゃんも行くの?)
聞きたいケド聞けない見栄っ張り
の私・・・・

土産は必ず買ってきてくれたが、
普通に考えれば東京のアンテナショップ
で買える事に気がついた.....

聞けないまま半年が過ぎた
Christmasseason・・・・

『さっちゃん、ごめん。
今年のクリスマスは金沢へ行くことになった。親父が北陸新幹線の影響が出る前に、金沢で物件を購入したいと言ってきてさ、その下見
なんだ・・・・』

『・・・・』

仏頂面の私を察知したのか、

『ごめんよ。この埋め合わせは
帰って来てから・・・・』

『・・・・』

『本当に・・・・ごめん。』

仕事に一生懸命なのは分かる。
お父様の為に頑張るのも分かる。

でも、私の為には頑張れないの?

昇進してからは
フタリで笑うことも無くなってた.....


クリスマス当日

『行ってきます』
とだけ言い残し、出て行った......


まさか、あの場所で、


金沢に行ってるはずの
あなたに会うとは・・・・


歩君、

あなたも思ってなかったでしょ?



No.55 15/10/17 10:17
名無し 


主です
読んで下さってる皆様
ありがとうございます。
私の初妄想小説で
知らず知らずに皆様に
ご迷惑をかけていましたら、
申し訳ございません。
慎んでお詫び申し上げます。
謝りついでに・・・・

文字の大きさにより改行がおかしくなッてる事に気が付きました。

重ね重ねこの場をお借りして
お詫び申し上げますm(__)m

宜しければ引き続き読んで下さるとありがたいです。

貴重なお時間を
ありがとうございました




No.56 15/10/18 10:36
名無し 

今日は金曜日・・・・
そして、クリスマスだ・・・・

街中がクリスマスカラー一色。
様々なイルミネーションが街路樹を彩っている。

このまま帰っても歩君はいない。

(街中に溢れている知らない人達
から、少しだけ元気を貰って帰ろう.......)

ふと気がつくと◎◎ホテルの前だっ
た。
(そういえば、歩君と私・・・・
ココから始まったんだ・・・・)

『懐かしい~♪』
思わず声に出してしまった.....

ココで彼と会わなかったら
今頃、私は・・・
同じ毎日を淡々と繰り返している
のかな・・・・

歩君のお陰で私は幸せだよね。
寂しいからって、メソメソしてたら
駄目だよね!!!
さ、家に帰ろう!

ホテルを背に歩き始めた。



不意に背中から聞き覚えのある
男女の声・・・・

会話が聞き取れない・・・・

振り返る私・・・・


歩君と
麻衣ちゃんだった。

(えッ?!金沢じゃ.......?)


(どうして東京に?!
何故ホテルから出て来たの?!)


パニックになった・・・・
どうか間違いであってほしい。
頭の中で整理が出来ない。

何故?なぜ??

歩君と麻衣ちゃんがこっちに
向かって来る。

とっさに隠れる私・・・・
(何処に行くの??)

足が震える・・・・
行き交う人にぶつかる・・・・

突っ立っている私を怪訝そうに
見る。

足がすくんで動けない・・・・


『?!・・さっちゃん・・!!』


見つかってしまった・・・・


No.57 15/10/19 18:42
名無し 

『あ、あの・・・・
ご、ごめん。』


見てはいけないものを
見てしまった。

とっさに走り出していた。
息が苦しい。
どうにかなりそうだ。

誰か
私を
助けて・・・・




何処をどうやって歩いたか記憶がない。
ふと気がつくとアパートにいた。

カーテンから朝日が射し込んでいた。

どれくらいの時間が経ったのだろう・・・・

今日が何時なのか分からない為
TVをつけた。

月曜日の朝になっていた。

(会社を休むッて連絡しなきゃ)


風邪で2~3日休むと電話した。
休む私が珍しいらしく、所轄の部長はとても心配をしてくれた。


歩君は居ない・・・・


休んでいる間に考えなくては.......

冷静な自分が居た.......


No.58 15/10/19 19:40
名無し 


どうしようか・・・・
連絡を待つ?
別れようと言われたら?

いやだ、別れたくない・・・・!

でも、嘘つかれてたんだよね?
裏切られてたんだよね?

でも、一回は許す??

考えがまとまらない。

涙も出ない・・・・
声を出して叫びたいのに・・・・


腕を組んで楽しそうに
見つめ合って笑ってた
フタリの姿が頭から離れない.......



無理だ、私・・・・
きっと一生
歩君を罵るだろう・・・・
思い出し気が狂うだろう・・・・



もう、ダメだ・・・・

嫉妬に狂った
ただの女だ・・・・




No.59 15/10/19 19:50
名無し 



ふと我に返った。

寝ていたのか?起きていたのか?
記憶がない・・・・

私は部屋の隅っこにいた。
部屋全体を見回した。
歩君がそこに居る感じがした。

『さっちゃん、ご飯だよ!』
『もう、寝ようよ!』

そんな声が聞こえてきそうだ。

泣きたい、けど泣けない.......

どうしよう・・・・
考えがまとまらない。

疑う毎日は嫌だ.....
歩君は私以上に苦しんでいるかも
しれない。
私の出方を待っているのかな?


歩君はどうしたいんだろう.......


私は歩君を
まだ、好き?.........


ふと、ケータイを見た。
歩君からは連絡は無い。


これが彼の返事かもしれない.......




No.60 15/10/20 08:51
名無し 


翌朝、ご飯を炊き、味噌汁を作り
、歩が好きだったスクランブルエッグを
作って食べた。

今から歩君に連絡をし、別れを
告げる。

もし、元に戻ったとしても
私の性格上たった1度でも
許す事は出来ないと思う。

一生罵る自分は嫌だ!
一生疑う自分は嫌だ!

そして、いつまでも
ウジウジ引き延ばすのは
もっと嫌だ!!


最後は元気な私で終わりにしたい

歩君の
記憶に残る
最後の私・・・・



lineを送る・・・・

『荷物、夜にでも取りに来て』

既読

『わかった』
『まとめておくね』

既読

『ありがとう』


終わった・・・・


彼の荷物をまとめよう・・・・

気持ちが揺るがない為に
髪を1つに結んだ・・・・


No.61 15/10/21 08:55
名無し 


別れてからは、がむしゃらに
働いた。
離婚してなお精力的に働く私を、会社のみんなはそっとしといて
くれた。

進んで残業をし、帰りたくない
日は誰かを誘って呑みに行った。
みんなは明るく接してくれた。

(仕事辞めなくて良かったな。
今更ながら周りのみんなには
感謝している。)

引っ越しはまだしていない......
元々私の部屋だったし、少しの
間だけ歩君が関わっただけの事。

元々あった私の荷物に
歩君の荷物が増え、そして減った
・・・・それだけの事。

そう強がって、自分を慰める。

だけど、無性に寂しくなる時がある。
ふとした瞬間に歩君の匂いがする
時がある。

幻聴すらした時は、(歩君??).......
玄関のドアまで開けてしまう......

未だに
泣きたいのに泣けないでいる......

この部屋では
笑うコトも
泣くコトも
何も出来なくなっていた。

40年ちかく生きてきた私の中の
たった2年は・・・・
私の人生の中で最も幸せな時間だったのかもしれない。

あの時許してたら?
私はまだ、幸せたッた???


忘れなきゃ....良い思い出にしなきゃ.....

前に進む為に・・・・
自分を守る為に・・・・

No.62 15/10/22 08:58
名無し 


『先輩!最近変な人が
会社の前に出没するらしいですよ』

入社5年目の優香が、何処からか
情報を仕入れてきたらしい。

私に報告する。

『そうなの? 』

『先輩帰りが遅いから
気を付けてくださいよ!』

『帰りが遅すぎて裏の出入口よ、最近は.....』

しかし、今日は珍しく早く終わり
優香と一緒にエントランスから出た。


『あ!!あの人じゃないですか?』
『ん??』
『ほら、あそこに座ってる人...』
『ん?・・・えッ?・・・・・』



歩君だ。見間違い?
いや、別れて暫く会ってないとは
いえ、見間違えるはずがない。

何してるんだろう・・・・
誰か知り合いでも待っているのか
・・・・



『・・さっちゃん・・』
(えッ?!私?)

『どうしてココに・・・・?』

やっとの思いで忘れた元夫。
懐かしさより怒りが込み上げる。

『さっちゃん、久しぶりだね。
元気にしてた?』

『・・・・』

『良かったらこの後、ご飯でも
行かない?』

『私は話なんてないけど?』

『話がしたいんだ。さっちゃん』

『もう来ないでくれる?
迷惑なんだけど・・・・』

『・・さっちゃん・・』

『行こッ!優香・・』

『えッ?!でも、先輩・・・・』


駅に向かう。

『先輩....,あの人知り合いなんですか?』

『別れた元夫・・・・』

『ええええええええ!!!!』




No.63 15/10/23 08:45
名無し 


びっくりするのも無理はない。
6つも年下の男・・・・

『・・先輩・・結婚してたこと
あるんだ・・・・』

『えッ?そこ??』

『だってぇ、先輩男ッ気無いんだもの....』

あははは!フタリで笑った。
けど、私は心から笑えなかった。

何をしに、今頃、来たのか.......


優香情報によると、次の日もその次の日も歩君は来ていたらしい。


歩君を見かけてから四日目の事。
ふと窓の外を見ると赤色灯が
光っているのが見えた。

(ん?救急車?誰か病人?)

窓から下を覗くとパトカーだった

どうやら、警備員が歩君を通報
したらしい。

慌てて下に降りた。





No.64 15/10/23 08:55
名無し 

*~おはようございます~*

すみません、土日は野暮用が
あり、お休みします。

読んで下さっている方
ありがとうございます。

なお、投稿規制を解除してみました。

宜しければ批判、感想等コメント頂けると嬉しいです。
勝手ではございますがお返事は月曜日になるかと思います。

皆様にとって
良い1日でありますように?**


主より

No.65 15/10/23 08:59
匿名65 

>> 64 おはようございます。いつも楽しみにして読ませてもらっています。続きが楽しみ。早く読みたいなぁ。

  • << 73 匿名65様 コメントをありがとうございました♪ 続きが楽しみだというお言葉も 嬉しい限りです。 引き続き私の妄想話にお付き合い下さいませ(*^^*)

No.66 15/10/23 09:36
名無し 

>> 65 早々に嬉しいお言葉をありがとうございます。

月曜日の朝、コメントが0だったら
悲しくなるトコでした。
(みくるを開いて読んで元気に野暮用に行けそうです(*^^*))

月曜日にまた閉じる予定です。

今後とも宜しくお願いします。

では、行ってきます!


ありがとうございました♪

No.67 15/10/23 09:52
名無し67 

私も読んでますよ

面白いです

ハラハラしたり、もどかしい気持ちになったりしてます(笑)

これからも楽しみにしてます

  • << 74 名無し67様 コメントをありがとうございました♪ 朝っぱらからドキドキさせて 申し訳ありません(笑) 8時台が1番投稿しやすくて...... ☆(*^^*) 引き続き私の妄想話にお付き合い下さると嬉しいです。

No.68 15/10/23 12:29
匿名68 ( 40代 ♂ )

こんにちわ。
とても面白く毎日楽しみに更新を待ってます♪
これからも頑張って下さいね。応援してます!

  • << 75 匿名68様 コメントをありがとうございました♪ 男性の方に読まれているとは 思ってもみませんでした。 また、応援ありがとうございます。 ハィ,頑張ります。

No.69 15/10/23 14:14
匿名 ( ♀ lSZK )

歩君何で~?
めちゃ気になるんですけど~
いつも楽しく読ませて貰ってますよ~o(^-^)o

  • << 76 匿名様 コメントをありがとうございました♪ 歩君、なんで~~??? そぅ、私もなんで~~,???? 私の頭ン中の妄想もコロコロ変わり、 いつの間にか、浮気設定になってしまいました(笑) 引き続き読んで頂けると嬉しい嬉しいです。

No.70 15/10/24 01:25
匿名70 

>> 69 俺も楽しく読んでます♪

歩くんとどうなるのか凄い気になる(笑)

続き楽しみにしてます。

  • << 77 匿名70様 コメントをありがとうございました♪ 歩君とさっちゃんは、実は........ おッと、喋るトコでした(笑) 引き続き読んで頂けると嬉しいです。

No.71 15/10/24 09:31
お助け人 ( Pp4Th )


毎回楽しみで、読んでいます。

私も、さっちんと歩くんの行く末を楽しみにしています。

  • << 78 お助け人様 コメントをありがとうございました♪ 歩君とさっちんの行く末はですね もう決めてあります。 私の頭ン中では.......ピー......◯‰¶Å∝∵♭≡......で終わります 引き続き読んで頂けると嬉しいです。

No.72 15/10/24 13:31
携帯小説ファン72 

私も毎回、ドキドキしながら拝読してます!主さん、これからも連載を宜しくお願いします!

  • << 79 携帯小説ファン72様 コメントをありがとうございました♪ 毎回ドキドキさせてしまい 申し訳ありません(笑) ドキドキはまだまだ続く予定でございます。 引き続き読んで頂けると嬉しいです。

No.73 15/10/26 00:02
名無し 

>> 65 おはようございます。いつも楽しみにして読ませてもらっています。続きが楽しみ。早く読みたいなぁ。
匿名65様

コメントをありがとうございました♪

続きが楽しみだというお言葉も
嬉しい限りです。

引き続き私の妄想話にお付き合い下さいませ(*^^*)

No.74 15/10/26 00:07
名無し 

>> 67 私も読んでますよ 面白いです ハラハラしたり、もどかしい気持ちになったりしてます(笑) これからも楽しみにしてます
名無し67様

コメントをありがとうございました♪

朝っぱらからドキドキさせて
申し訳ありません(笑)

8時台が1番投稿しやすくて......
☆(*^^*)

引き続き私の妄想話にお付き合い下さると嬉しいです。

No.75 15/10/26 00:14
名無し 

>> 68 こんにちわ。 とても面白く毎日楽しみに更新を待ってます♪ これからも頑張って下さいね。応援してます!
匿名68様

コメントをありがとうございました♪

男性の方に読まれているとは
思ってもみませんでした。

また、応援ありがとうございます。

ハィ,頑張ります。

No.76 15/10/26 00:18
名無し 

>> 69 歩君何で~? めちゃ気になるんですけど~ いつも楽しく読ませて貰ってますよ~o(^-^)o
匿名様

コメントをありがとうございました♪

歩君、なんで~~???
そぅ、私もなんで~~,????

私の頭ン中の妄想もコロコロ変わり、
いつの間にか、浮気設定になってしまいました(笑)

引き続き読んで頂けると嬉しい嬉しいです。

No.77 15/10/26 00:22
名無し 

>> 70 俺も楽しく読んでます♪ 歩くんとどうなるのか凄い気になる(笑) 続き楽しみにしてます。 匿名70様

コメントをありがとうございました♪

歩君とさっちゃんは、実は........





おッと、喋るトコでした(笑)

引き続き読んで頂けると嬉しいです。

No.78 15/10/26 00:27
名無し 

>> 71 毎回楽しみで、読んでいます。 私も、さっちんと歩くんの行く末を楽しみにしています。
お助け人様

コメントをありがとうございました♪


歩君とさっちんの行く末はですね

もう決めてあります。

私の頭ン中では.......ピー......◯‰¶Å∝∵♭≡......で終わります



引き続き読んで頂けると嬉しいです。

No.79 15/10/26 00:30
名無し 

>> 72 私も毎回、ドキドキしながら拝読してます!主さん、これからも連載を宜しくお願いします!
携帯小説ファン72様

コメントをありがとうございました♪

毎回ドキドキさせてしまい
申し訳ありません(笑)


ドキドキはまだまだ続く予定でございます。
引き続き読んで頂けると嬉しいです。




No.80 15/10/26 01:10
名無し 


*~年下の男~*
を、読んで下さっている皆様

北陸新幹線はつい最近の話だし、
入社5年目の優香がさっちゃん達
の結婚を知らなかったりと
一体今はいつなんだ????

と、書いてる本人も、なんだか矛盾だらけなんじゃねッ??と、恐縮しまくりです(;・ω・)

身勝手なお願いではありますが
ォバカな私の妄想小説を 温かく見守って頂けると有難いデス........

では、皆様
良い夢を.........おやすみなさい

No.81 15/10/26 09:03
名無し 


どうやら警備員が歩君を通報したらしい。

慌てて下に降りた。



『僕は何もしてないよ....』
『ちょっと署までご同行願います.....』
警察の方と一悶着していた。
会社周りに出来たギャラリーの数に
なんとかしないといけないと思った。

『すみません。
私の知り合いです』

『さっちゃん!!』

『お騒がせしまして申し訳ありません』

警察、警備員に説明をする。
もう迷惑行為をしない様忠告すると約束をし、引き取って頂いた。

『ありがとう。さっちゃん』

ここは私の会社。
恥ずかしさのあまり苛立ちを覚えた。

『なんなのよ、一体。
いい加減にしてよ!!』

『ごめん・・・・』

ギャラリーは減ってはいたが、好奇心や興味本意で残っている人も居たため、少し離れた場所まで来た。

『....今頃何の用?』

『・・ただ・・話がしたかった
.....それだけだよ・・』

また会社に来てもらっては困る。

『....今日付き合ったら
もう来ないでくれる?』

『うん。約束する』

『じゃあね....私の行きたい店を当てたら一緒に行く。外れたら
これで終わり。どお?』

『ぇぇぇぇぇ!、そんなぁ.....』

『10秒待つわ。1..2...3......』

『え!え!ちょ、待って・・・
んとね・・・・マチコの店??』


『?!.......』


『え?当たり!?
やったぁぁぁぁぁ!!』

約束は約束だ。
しょうがない・・・・

やっと忘れた元夫
何故今頃になって会いに来たのか

私と何を話したいんだろう.........

懐かしさより
情けで付き合う事にした。







No.82 15/10/27 09:26
名無し 

マチコの店・・・・

そう、オカマバー・・・・

昔は仕事帰りによく待ち合わせをした店だった・・・・

ママに離婚した事を報告したかった。

(あなた達は絶対別れる!!)
そう言われ続けていたからだ。

『まだ営業してるのかなぁ?』

『・・・・』

無言の私。
複雑な自分の今の心境をどう操れば良いのかわからず、いつもより早足で歩いていた。

10分程歩くと見覚えのある看板に灯りが灯っているのが見えた。

ドァベルの音と共に

『いらっしゃいませぇ!』
酒とタバコで潰れたのママの声

(懐かしい♪)
思わず笑顔になった。
一瞬で昔に戻った気がした。

私達を見るなり、
『?!・・・あらッ・やだ・・
あんたたち・・・久しぶりじゃ
ないのさ・・・・』

『ママ!久しぶり♪
元気にしてた?』

広い店内ではないが満席に近かった。
私達は入り口近くのカウンター席に座りビールを頼んだ。


お互い目も合わさず、ひたすら前を見つめる無言の私達。


店が落ち着いた頃にママがこっち
にやって来た。

『ちょっとぉ、あんたたち。
イヤに他人行儀じゃないのさ.....
ぇッ??やだ....もしかして.............』

『そう、今日はその報告!』

『んまッ!どうせこのアンポンタンが
悪い事したんでしょ!』

と、歩君の頭をピシャリと叩く。

歩君は小さな声で
『ごめん』の一言だけ。

それ以上、ママは深く追及して来なかった。有り難かった。


そして私がこの店を選んだ理由。
絶対別れると断言してたママは
本当は応援してくれていた。

ママなりの優しさは私には分かっ
ていたから。

頑張れなかった事を謝りたくて
今日はここを選んだのだった。










No.83 15/10/28 08:54
名無し 


相変わらず黙り込んだままの
歩君。

『ほら、もっと呑んで売り上げ
に貢献しなさいよ!』

明るく接してくれる
ママなりの優しさ・・・

痛い程伝わってくる・・・・


歩君が忙しくなった時から、独りでよくここへ来て時間を潰した。

部屋に独りでいると麻衣ちゃんの
事ばかり考えてしまう自分が嫌だった。

フタリで来なくなった私に
ママはいつものジョークで

『別れたら私に頂戴ね!!!!』

『別れないもん!!!!!』

そう言い合いながら
よく笑ったッけ....

楽しかった事も
辛かった事も
走馬灯のように蘇ってくる。

(やだ....泣きそう........)

何も話さない歩君・・・・

何をしに私に会いに来たの?


店が混雑し始めたのと、このまま一緒に居ても辛いだけなので
店を出る事にした。



『さて、これでおしまい!
もう来ないでよね!おやすみ...』
歩君に背を向け歩き始めた。

『さっちゃん』

『何?』

『さっちゃん、僕達
やり直せないかな???』



『はぁ??!』




No.84 15/10/29 08:55
名無し 


『はあ?!』

思わず振り返った。

私がどんな思いであんたを
忘れたと思ってんの??

呆れてしまった。
無責任な発言に無性に腹がたった


『僕さっちゃんじゃなきゃ
駄目なんだ!』
『離婚して分かったんだ。
凄く後悔してる......』

私は頭が混乱してきた。

『軽はずみな気持ちで傷つけて
しまった事、凄く後悔している』

『ちゃんと謝れなかった事を
後悔している』

今までずっと黙っていた歩君は、
怒涛のごとく一気に喋り出した。

『僕は昇進して、親父もさっちゃんも喜んでくれて.....契約も
どんどん決まるし、何やっても
許される気がしたんだ。
有頂天になってたんだ.......』


私の手は握りこぶしになり、
怒りとなんとも言えない複雑な心境でブルブルと震えていた。


『何言ってンの?歩君、まだ
離婚してないじゃない.......』

『よりを戻してくれたら
離婚する』

『悪いけど、遅いわ。
私はもう、あなたの事は忘れた』



だめだ・・・・
純粋にあなたの事が好きだった
自分が蘇ってくる・・・・

(マチコママのせいなかな........)

全身のちからが抜けてゆく.....
直ぐにでも歩君の胸に飛び込み
たくなる・・・・


あなたに隠してた事を
話そう・・・・

そうすれば、私の気持ちも
収まるだろう・・・・


『歩君、うち来る?』

『え?!』

『話たい事がある』






No.85 15/10/30 09:06
名無し 

『さ、上がって』

『・・・まだここに?』

『うん。思い出が沢山有りすぎて辛い時期もあったけど・・・』

『コーヒー入れるわね』

歩君は久しぶりの部屋を
懐かしそうに見回している。


『座ってよ』

『うん』


ふと気がついた・・・・

私達は離れて座っていた。
あの頃とは違う位置・・・・

これが現実だ・・・・

『麻衣子さん、元気にしてる?』

『うん』

『子供、出来た?』

『うん。女の子1人......』

『そう......』

素直におめでとうと言えなかった

コーヒーを一口飲み本題を切り出した


『実はね・・・・

結婚して少し経った頃だったかなぁ,....
課長の送別会で、あるホテルを使ったの。二次会が8階のラウンジでね、そこでお父様と麻衣子さんを1度見掛けているの。品の良いお嬢様。そんな印象だった。
二人とも楽しそうに話をしていたわ。その時は何故か声を掛けてはいけない、そんな気がたの.......。

それからまた暫くして、歩君が昇進し麻衣子さんが秘書として紹介
された時わかったんだ。
お父様は本当は麻衣子さんと結婚させたかったんだってね.........

あなたが私を選んでそして紹介
してくれた時はお父様はとりあえず賛成してくれたけど、本当は
反対だったのよ。

あなたの意思を尊重しつつ、麻衣子さんという刺客を送り込んだ。
私はそう思ったの........


あなたはまんまとお父様の罠に
掛かった。そして、私の性格も
よく知っていた。

絶対に離婚するだろうってね.....

No.86 15/10/31 15:59
名無し 


『何故そんな事を親父が?』

『・・私の推測だけど・・
世間に自慢出来る嫁が欲しかったんだと思う。そして、孫も・・』

『・・・・』

『そういう私も・・・・
お父様の罠に引っ掛かったんだけどね・・・・』

『そんな・・・・』

『歩君、何故突然部長になったと思う?普通は部長に秘書なんて
つかないと思わない?』

『・・・・』

『歩君、私は短い間でも幸せだった。今はありがとうと素直に
言える。だから、歩君も・・
お父様の為にも頑張らなくちゃ』

(歩君?)

泣いている。声を押し殺し泣いている。

私も・・・・泣いていた・・・・

『本当に....もう、駄目なのかなぁ………』

『うん・・・・あなたと私・・
お父様に負けた』


目の前にはあんなに夢に出てきた歩君がいる。
手を伸ばせば届くのに・・・・

もう1度抱き締めたい
キスをしたい・・・・
理性なんてどうでもいい
お父様なんてどうでもいい

もう1度........歩君と...........



でも、止めておこう。

歩君との思い出だけでいい
幸せだったあの頃だけで・・・・



あの日
あの二人を見掛けた時に

既に私は負けていたから・・・・



No.87 15/11/02 09:00
名無し 


とある土曜日。
ふとカレンダーをみた。
(.....今日、歩君の誕生日だ。
いくつになったんだろう.......)

離婚してから7年。
41歳かぁ、、私は?......
47歳・・・・

縮まる事のない、そして
開く事もない年齢差。
今度は50歳手前かぁ・・・・

がむしゃらに働いた7年だった。
あっという間の7年だった。
いいなぁ~と思える人も居たには居たが、自分から飛び込める程の元気は無かった。
マチコママの店もあれから行ってない

あの日、
歩君の
『やり直せないかな?』
の一言が今でも忘れられないで
いる。お父様に負けていたとはいえ、素直に飛び込めば良かったのかな?



(このまま、独りで
老後を送るのかぁ~)

(もう1度結婚してみたいな.....
今度は両家と言わず自分の為に)

あの相談所はまだやっているのだ
ろうか・・・・。
場所は覚えている。
明日の日曜日、行ってみようかな


No.88 15/11/02 09:15
名無し 


日曜日。
(あッ!あった....)
まだ営業していた。

~結婚相談所・出会い~


『こんにちは~』
『いらっしゃいませぇ~』

あのおばちゃんではなくて、違うおばちゃんが出てきた。
2度目とはいえ、ちょっと緊張
している私・・・・

『初めての方ですかぁ ~?』
『あ!いえ、退会はしましたが
以前登録はした事あります』

『そうなんですねぇ~。では、
もう1度用紙に記入をお願い
しますぅ~』

『わかりました』

(イヤに語尾を上げる人だわッ♪)

思わずクスッて笑ってしまった。
緊張が溶けた。

見合い方法は昔と変わらない同じ内容だった。

『では、パソコンを見れる状態
にしておきますねぇ~』

『ありがとうございます』

さてと・・・・
どんな人が登録されているんだろう・・・・




No.89 15/11/02 09:34
名無し 

相変わらず全国展開をしていた。

登録されていた男性のプロフィールも
昔と変わらない、そんな感じがした。
(ん~。なんだかなぁ~。)
ピンとくる人が居ない.....
なら、自分はどーよッ!
相手からも同じように思われるんだろうな・・・・

1人突っ込みして笑ッた!


そんな中・・・・

ふと目に飛び込んできた人・・



歩君だった。

胸の奥がチクッと痛んだ・・・・

忘れた筈なのに・・・・

結婚相談所に登録?

まさか、本当に離婚したの?

そのまま、手が止まってしまった





No.90 15/11/04 09:08
名無し 


歩君のプロフィールを無表情で眺めている私。
先程のおばちゃんがこっちに
やって来た。

『その方、社長サンでしてねぇ。
何人かの方から申し込みが
あるんですがぁ、お見合いまではなかなかたどり着かないと言いますか・・・・』

『・・・・』

『宜しければこの方に連絡をとっ・・・・』

『結構です。年下には興味ありませんから・・・・』

『あッ!あらぁ。残念ですぅ。
では、他の方々でもごゆっくり
ご覧下さいねぇ』

そう言い残し席を経って行った。

(冗談じゃ無いわ!
同じ過ちを2度と繰り返すもんですか!! )


でも、何故ここに登録を?

あれから歩君は会社に1度も来ない。
風の便りも聞かない。

(社長って事はお父様、引退したのかな.........)


歩君を見てから頭に何も入って来なくなっていた。


今日も入会金を支払い相談所を
後にした。



今の相談所は新規登録者の会員名簿がケータイのメールで来るシステムになっていた。

私はそれを利用し相談所まで足を運ぶ様な面倒な事はしなくなっていた。

入会3ヶ月後
(集団お見合いパーティー開催)
という連絡が入った。

『今度、◎◎ホテルでぇ、お見合いパーティーが.........』

『あぁ、行きます。
申し込みしといて下さい』

『あッ!わかりましたぁ。
ありがとうございますぅ』

『宜しくお願いします』


今度こそ夜景より
男を見なくては・・・・


私の気合いはMAXだった。

幸せになるぞー!!









No.91 15/11/05 08:58
名無し 


パーティー当日。
◎◎ホテルの前。
9年前、全てはここから
始まった・・・・

同じ過ちは繰り返さない!


エレベーターで屋上へ・・・・
(よしッ!)と、気合いを入れる。

受付で参加費を支払い、既に来ていた男性陣の中へ進んで行った。


『こんばんは。話の中に混ぜてもらってもいいですか?』

男性陣の名札など見なかった。
年齢ばかり気にしてた卑屈な自分とはオサラバだ!
楽しく会話が出来ればいい。


と、思ったが名札をチラ見する自分

(50代から30代のグループだろうか
・・・・)

たわいもない会話が心地良かった

積極的に話し掛けてくれる人も
居た。


(歩君以上の人・・・・
居ないな・・・・)

いやだ、こんな時にも歩君を思い出すなんて・・・・


パソコンで見掛けてしまったからかな・・・・

歩君も参加してるかも・・・・
心のどこかで期待してた自分が
居た。



そう、彼は参加してなかった。

私の気持ちはお見合いどころではなくなっていた。


少し頭を冷やそう・・・・

夜景を見る。
(綺麗だなぁ~。)


・・・ナニやってんだろ・・・・・
・・何も進歩してないや・・・・


『隣、宜しいですか?』

1人の男性が声をかけてきた。













No.92 15/11/06 08:57
名無し 

『?!』

この声・・・・

振り向く事が出来ない・・・・

体が硬直する。

『さっちゃん!』

名前を呼ばれて呪文が溶けた。


『・・あゆむ・・くん?』

『さっちゃん、また登録した
の?』

『あ・・歩君こそ・・』

『誰かいい人居た?』

『まだ・・・・歩君も・・・・
また登録したんだね』

『・・・ここに登録したら
またさっちゃんに会える・・・
そんな気がしてさ・・・・』

『そんな事言わないで』

(やだ、泣きそう.........)

『そういえば歩君いつ来たの?
さっきまで居なかったよね?』

『実を言うと相談所の人に
頼んでおいたんだ。斉藤幸子さんが来たら連絡してくれって......』

『そうなんだ・・・・』

『相談所から送られてきた
新規登録者名簿で、さっちゃんのこと見ていたからね.........』

9年前の私達
現在の私達
同じ場所で
同じ事をしていた。

歩君が現れた事で、嬉しさや
懐かしさで、私の頭の中は
グチャグチャになっていた。

1度ならず2度も諦めた歩君が
目の前にいる。

溢れそうな涙に気付かれない様
に夜景を見ているふりをするのが
精一杯だった。




No.93 15/11/06 09:28
名無し 

*訂正*

すみません、斉藤幸子ではなく
佐藤幸子でした。


ォバカでごめんなさい( TДT)

No.94 15/11/07 09:36
名無し 


相変わらず笑顔が似合う彼は
あの頃より大人びた顔になって
いた。

離婚してからの
私の知らない7年
歩君
どんな人生を送ってきたの?

『ねぇ、歩君。麻衣子さんと
離婚したの?』


『うん、あの後、さっちゃん
から聞いた話を親父に聞いて
みたんだ。そしたら、あっさり
認めてね・・・それからはもう
・・・・無理だったよ。子供も
いたけど素直に愛せなかった。
僕の分身なのに、ね。・・・・
子供には申し訳ないと思ったけど・・・・これが親父の望んだ
事かと思ったら・・・・』


『・・・・』


『どうしても許せなかった。
親父も、麻衣子も、そして自分も・・・・』

『・・・・』

『さっちゃんを傷つけた事、
一生後悔する為にも離婚を
決意したんだ』

『.....私のせいにしないでよ.....』

『ごめん、違うんだ。
僕のせいなんだよ。
自分に対する戒めなんだよ。』

『ただの自己満足だよ、それ』


『うん。そうだよね・・・』



沈黙が続く。

私は既に泣いていた。



No.95 15/11/08 20:05
名無し 


『でもね、さっちゃん。
これだけは信じて・・・・』

『・・・・』


『今でも、さっちゃんが
好きだって事・・・・』

『・・やめて・・』

『僕もさっちゃんに隠してる
事・・・・あるんだよ。』

『何?』

『初めてさっちゃんを見た時』

『うん』


『僕はさっちゃんに
一目惚れしたってこと..........』


涙で何も見えない・・・・

駄目だ・・・・
歩君が好きだ・・・・
純粋に歩君が好き・・・・

気が付くと歩君に抱きついていた

『・・・私・・・も・・・』

そう言えるのが精一杯だった。

『さっちゃん、
改めて言うよ。
・・・・
両親に会って下さいじゃなく
僕と結婚して下さい』


『歩君.......大好き♪』




*~完~*



No.96 15/11/08 20:13
名無し 


*~年下の男~*

を読んで下さっていた皆様

ありがとうございました。

また、誤字脱字等
ご迷惑をお掛けしました。

頭ン中の妄想を文字におこす作業
は思ってた以上に大変でした。
今回はいい勉強になりました。

そこンとこは反省し
また投稿してみたいとは
思っております≡(*^^*)

その時はまた宜しくお願いします

みくるの皆様

ありがとうございました★


また会える日までお元気で.......


No.97 15/12/09 10:03
名無し 

*~おはようございます~*



1ヶ月ぶりに
また投稿してみようと
思っとります(*^^*)

ちなみに
反省は出来ませんでした(笑)

なので、また
誤字脱字等
ご迷惑をお掛けしますが
宜しくお願いします♪

なお、私は他の方々のミクル小説は
読んだ事がありません。

似たような作品がありましたら
申し訳ございません。

だったら読めよッて感じなのですが、なにせ老眼なので・・・・

すみません(;_;)
投稿以外、目を酷使したくないのです・・・・


では、また宜しくお願いします。




No.98 15/12/09 10:14
名無し 


『静かにしろ!!!騒いだら
ぶっ殺すぞッ!!』


それはいつもと変わらない
冬の朝だった.......。

時刻は8時少し前。
夫と小1の娘を送りだし
玄関先の小さな花壇に咲いている葉牡丹やビオラに水やりをした。

行き交う人達に朝の挨拶をし、
家事の続きをするために中に入った。

サンダルを脱ごうとする直後だった


いきなり玄関のドアが開き

振り向きざまに

私の首には

包丁が向けられていた.........







No.99 15/12/09 22:57
名無し 


刃物を向けた男の顔が
目の前に迫った。

臭い......そう思った。

吐く息、体臭、一瞬の恐怖と匂いで吐きそうになった。

『おとなしくしろ!』

私は無言で首を縦に振った。

男は後ろ手に玄関の鍵をかけた。

(カチャッ...)と鈍い金属音がした。

男の右手には包丁
左手は私の腕を掴んでいた。

私の左首にある男の右手は震えていた。


(慣れてないな.,.....)そぅ思った。

私は冷静さを取り戻し
目の前の男の顔をまじまじと見る。

次に、男の左側に目を向ける。
首筋が見えた。

(・・・・この傷・・・・)

男の左首には10㎝程の
ミミズばれの様な傷があった。




No.100 15/12/10 06:59
匿名 ( ♀ lSZK )

又楽しみに読みますね(^_^)v

  • << 102 ぁッ、失礼しました。 69番の匿名様でしたね。 再び読んで下り嬉しい限りです。 まだ沢山の妄想話が あるのですが、 なにせ・・・・老眼の進行が早くて(笑) また宜しくお願いします♪

No.101 15/12/10 07:21
名無し 

>> 100
匿名様
おはようございます♪

またコメントを
ありがとうございます。

はい♪頑張ります*(*^^*)

No.102 15/12/10 07:27
名無し 

>> 100 又楽しみに読みますね(^_^)v ぁッ、失礼しました。

69番の匿名様でしたね。

再び読んで下り嬉しい限りです。

まだ沢山の妄想話が
あるのですが、

なにせ・・・・老眼の進行が早くて(笑)

また宜しくお願いします♪

No.103 15/12/10 09:19
名無し 

男の首に出来ていた傷・・・・

確か・・・・


私は
『騒ぎませんから、刃物
下ろしてください』

『うるせぇ!黙れッ』

私の左首にある包丁.....男は
グッと押し付けてきた。

『良かったら夫の下着や洋服、
持ってきます....逃げるにしてもその格好じゃ.....頭だって.......それに、臭うわ。上手く逃げれても逃走中です!捕まえて下さいと言ってる様なもんですよ.....』


無表情に、淡々と話をする私に一瞬面食らった男だったが、


『ふ・風呂入ってる間に・・け・警察に連絡するつもりなんだろがそうはいかないぜッ!!』

『大丈夫です。私には小さな子供がいます。まだ死にたくありませんから..,.......』


まるで原稿用紙を読んでいるかの様な口調の私。
明らかに私の方が落ち着いていた。



『風呂は入らねぇ。服と金、用意しろ!!』




No.104 15/12/11 09:13
名無し 

『わかりました......』


その次に目に飛び込んできたのは
服装だった。

汚い作業着に、よれよれのスエットのズボン。
袖丈やズボン丈が全く合って
いない。

いつ盗んだ物なのか.......
冬なのにサンダル履きで防寒着も
着ていない。


刃物をつきつけられたまま
ゆっくりと2階の寝室まで行き
クローゼットから新しい下着を出した

次は洋服だ。
クローゼットの中を見回す.....
夫より背が高そうだ........

ズボン.....どうしようか........
夫も細いからウエスト部分は大丈夫だろが....,長さが.......ん~........


そうだわ!!
ウエストではなく腰で履くタイプのブカブカのジーンズにしよう!


洋服は逃亡を考えてゆったりとしたサイズの地味で量販店で売っているフリースを選んだ。

(この服で首の傷・・・・
隠せるかな・・・・)

私はそんな事を 考えていた.......











No.105 15/12/12 19:19
名無し 


服と下着を持って下に降りていき台所で熱く湿らせたタオルを用意した。

『これで顔と体を
拭くだけでも気持ち良いですよ』

『・・・・』

『さ、どうぞ。熱いうちに.......』

室内はまだ暖房が効いていたが、裸になり体を拭くであろうと予測して温度を上げた。

男は面食らっていた........。

『お金は銀行に行かないとありませんので、一緒に下ろしに行って下さいね』

そう言いながら
今度は洗面所へ行き
電動式の髭そりを
男に差し出した。


男は熱いタオルで顔を拭きながら半信半疑で私の顔をじっと見ていた.,........







No.106 15/12/13 07:55
名無し 


私は続けて言った。

『ここに入る時、
誰かに見られました?』

『多分.....見られてねぇと
思うが......』

『着替えが終わったらここを出ましょう。ここは田舎です。見慣れない人が歩いているだけで噂になりますからね。それに、何処で誰が見てるかも分からないわ』


下着姿になった男は身体を拭きながらまた、私の顔をじっと見ていた。


暴れもしない
騒ぎもしない
私の言動に戸惑っているようだった.........


(何処で誰が見てるか分からない......)

自分の発した言葉でまた考えた

(今この家を出ると危ないかな.....)


『やっぱり家を出る時間は
午後の1時にしましょう。
昼ドラが放送する時間は
皆さんTVに釘付けですからね......その間に.......』


なんだか腑に落ちない男は

『う....うん....』



そう返事を返してきた。




No.107 15/12/14 08:56
名無し 

時計を見る。

もうすぐ9時になろうとしていた。

『お腹すいてます?
軽く何か作りましょうか?』

『・・・い・いや・・・』

『じゃあ、コーヒーでも
入れましょうね』

『・・・・』

『良かったらそこの
テーブルに座って下さい』

男は身体も拭き終わりさっぱりした様子だったが、手にはやはり包丁を握りしめたまま、対面式のキッチンに居る私の動きをじっと見ていた。


コーヒーカップを2つ持ち、男の前に座った。

大好きなコーヒーを一口飲み、更に落ち着いた私は、また色々と考えた



(どうやってこの男を無事に逃がそうか........)

いくつかのパターンを考え男に相談をした。







No.108 15/12/15 08:58
名無し 


『まず、あなたを
◎◎駅まで送ります。
◎◎駅だと沢山の人が
利用してますから
人目につきにくいと思います。
...そこからどこに行きます?
名古屋方面?大阪?それとも,...東北方面?.....』


東北と聞いた瞬間、男はピクッとしたが、すぐに

『そ・・そうだなぁ・・決めてないが・・・・』

そう言いながらコーヒーを一口飲むと

『・・旨い・・』

男は美味しそうに飲み干し
もう一杯、とカップを差し出してきた。

(旨い)の一言が嬉しかった。
本当に美味しかったのだろう,....
男の左手に包丁は握られてなかった。

私は空になったカップを持ってキッチンに向かい、ついでにトーストを1枚焼き◎◎駅のプランを続けた。

『都市部の方が身を隠しやすいと言いますよね?何処かでアパートを借りるには50万程あるといいかしら?.....切符は私が緑の窓口で買いますからね......片道でいいですよね?........そうだわッ!!.....駅に着いてすぐに出発する電車にしましょうよッ!!!そうよ、それが良いわッ!!!』

一番Bestだと思われる考えが浮かんだと思った......


まるでそれが正解とでも言うようなタイミングで、トースターがチンッと鳴った






No.109 15/12/16 08:56
名無し 


知らない人達が見たら
まるでフタリはフラリと旅に出る...
そんな打ち合わせをしている様に見えるだろう。


刃物を持つ手が震えていた男
男より落ち着いていた私。

終始私のペースで
男を巻き込んでいった......

男もこんな展開になるとは思っていなかっただろう......


だが、私達は
強盗犯と刃物を向けられた被害者

『あのさ、どうしてそんなに親切にしてくれるんだい?』

『えッ?!だって、私、刺されたくない、それだけよ?』

とぼけた表情でコーヒーを飲む。

むしろ私が楽しんでいるように見えたのか?

『俺を助けると、どーなるのか
知っているのか?』

『えッ?.....』


『お前も共犯になるんだぜ?』

『・・・・・・』

『だから金だけよこせ。
ここからは俺1人で出る』

『だめよ!絶対に誰かに見つかるわ!車の後部座席に身を隠して出る方が安全よ!!』

『・・はぁッ?・・お前何言ってんの?逃亡幇助の罪に問われてもいいのか?』

『・・そ・・それは・・・・』

『俺は金さえ貰えりゃいい。銀行に行かなくてもいい。今あるだけ出せッッッ!!』

前にのめり込み、再び包丁を手に睨みを効かしてきた。

『それが・・・無いの。
今日銀行に行く予定だったし...』

『・・・はぁぁぁ・・・』


男は大きくため息をつき
椅子の背もたれによしかかった。




No.110 15/12/17 08:54
名無し 


時刻は9時40分.......

コーヒーも飲み干し身なりも
綺麗になった男は
じっとしている事が苦痛に
なっていた。

『今から銀行に行くぞ!
そこで俺を下ろせ!』

『だめ!今の時間帯は
ご近所さんたちは
外でうろうろしてるわ!』

またしても男を心配する発言に

『・・・・俺達・・・・
何処かで・・・・会った?』

『・・えッ?・・どうして?』

『普通は泣くか喚くか、
恐怖におののくか、だろ?』

『・・・・』
私は視線を外した。

『何か企んでいるのか?』

『違う!何も企んでない!
刺されたくない、それだけよ。
安心して!!』
私は必死に誤解を解こうとしていた。


腑に落ちない......
裏があるのか???
男はここを早く出たくなっていた。

男は包丁を持ち
立ち上がり
向かいに座っている
私の腕を掴んだ。

『言う通りにしろッッ!!
出るぞッッ、ほらッッ.!!』

『い・・痛いッ。分かりました。今、用意します』

私は鞄を取りだし
先頭に立つような形で玄関に向かった。

No.111 15/12/17 09:35
名無し 

*~おはようございます~*

お詫びです。
今綴っている話は、次の年下の男話でもなく、板の恋愛話でもありません。

しかも、題名も紹介せずいきなり進めてしまいました(T-T)

しかもしかも、今頃気がつきました。

皆様、申し訳ないです。

ォバカな私をお許し下さい(´;ω;`)


今更なのですが、

恋愛話ではありませんので
第2の歩君方面で読まれていた方、申し訳ありません。

それでも宜しければ
引き続きお願いします。






No.112 15/12/18 09:04
名無し 

ドアを開けた瞬間......
赤色灯を光らせたパトカーが
前を横切った。

慌ててドアを閉めた。

ただの偶然か?それとも・・・・

『この辺で何かしたの?』
私の後ろで包丁を突き付けている男に聞いた。

『いや。この辺では何もしていないが.....』

『そう・・・・じゃあ、
不審者情報でも流れた訳ではなさそうね......』

私は靴を脱いだ。

『一旦部屋に戻りましょう』
そう男を促した。

強盗犯よりパトカーに驚いている自分がいた。

『はぁぁぁぁ、上手く行かねえな......』

男はため息一つついて私の後に付いてきた。

さっきまで座っていたテーブルにまた戻り

『ただのパトロールなら暫く外に出ない方がいいわ』

今は私の方が動揺している。

『俺の人生こんなもんか!
あははははッッ.....』

男が突然笑い出した時だった。

(ピンポ~ン!!)
インターフォンが鳴り響く。

向かい合わせで座っていた私達。

お互い顔を見合せた。

写し出されたカメラを見るとお向かいさんだった。

『誰だ?』
男は包丁を持ち、身構えた。

『お向かいさん。出ないとまずいわ.....』

『・・しゃ・・喋るなよ....
喋ると・・・・』

『大丈夫よ。通報するならとっくにしてるわ。任せて!追い返すから.....』


そう言って玄関に向かった。

(もしかして、男がうちに入る瞬間を、見られた?)

うちに探りを入れに来たのか.....



男は今までの私の言動に信じきってる様子だったが、玄関先まで付いてきた。







No.113 15/12/18 21:23
名無し 


『おはようございます!』
私は笑顔で普段通りを装った。

『おはよう♪ねぇねぇ、買い物に一緒に行かない?ついでにランチでもしようよッ♪』

『ごめんなさい。ランチは.....
近くまで遊びに来る友達と約束があって,この後出掛けるの。またの機会にしません?』


『あッらー、残念!
じゃあまた今度ね!ばいばい!!』

『ごめんなさいね.....』

『いいの、いいの』

と言って向かいの家に吸い込まれる様に入って行った。

急いで部屋に入り、インターフォンをカメラモードに切り替え、向かいの様子を見る。


動きは無い。
カーテンも揺れてない。
うちに偵察に来た感じは
無さそうだ。

(ほっ!)
まずは一安心!

『大丈夫そうか?』

『うん.....多分』

二人で安堵のため息をついた。


時計を見る。
10時10分.......

ふと、男を見た。
寝てないのか、憔悴しきって
うなだれていた。

『そう言えば、
何故うちに押し入ったの?』


『ん?あぁ....そうだなぁ.....
特に無いが.....あんたが外に居るのを見かけた。それくらいかな.....強いて言うなら......』


ふと、この男に何があったのか
聞いてみたくなった。

『何をしたの?
なんで逃げてるの?』


私は、この男がこの前、
結婚相談所~出会い~で聞いた男だとは思ってもみなかった。



『良かったら
私に話をしてみませんか?』


そぅ男に言った........











No.114 15/12/20 08:32
名無し 


私の名前は矢部真弓。
とある出版社で短編小説を
書いている。

*~年下の男~*を書いてから、次の短編小説がなかなか書けないでいた。

(ん~~、次は何を題材にしようか......)

そぅ、この年下の男の話は相談所で働く人にワイロを払いネタを提供して貰った話である。

【みくるの皆様、これは私の妄想です。実際にはそんな事はないと思いますので、妄想話と言う事を念頭にお読み下さいm(__)m】



(しょうがない.....
また相談所でも遊びに行こうかな......)



結婚相談所~出会い~

数年前、ネタに行き詰まった私は、とある町をブラブラ歩いていた。


ふと、ここの看板に目が止まった。

(.....ここを利用する人達って
どんな人達なんだろう......)

ちょっと興味が湧いてきた。

(ダメもとで聞いてみるか....)


『こんにちは♪』

『いらっしゃいませ!』

キョロキョロ見回す私に・・・・

『初めての方ですか?』

『はい.....』

戸惑っている私を察知し

『宜しければ説明だけでも
構わないんですよ♪』


『はぁ....』


『どうぞ、中へお入り下さい』



受付横のテーブルに腰掛ける。


相談所の方はお茶を持って向かいに座ってきた。




No.115 15/12/21 09:00
名無し 


『おいくつでいらっしゃいますか?』

『あ!いえ・・・・』

ここは正直に言おう。
警戒されても困るし・・・・。

『あの、実は.....ライターでして.....
結婚もして子供も居ます。
何かお話を聞けないかなぁって.....,すみません。只の冷やかしなんです........』

『あらっ!そうなんですね....
まあね、いろんな方がいらっしゃいますよ』
と、ニッコリ微笑んだ。

(なんだろう....この余裕.....
余裕のよっちゃん的な.....
沢山ネタ持ってるのかな.......)

『あのッ!』
『はい、何でしょう?』
『入会金いくらでしょう?
私、入ります』

『あらッ?ありがとうございます
。でも....結婚されているんですよねぇ?』

『やっぱりダメですよねぇ』
思わず苦笑い・・・・


『まぁ......パソコンに登録しなければ....大丈夫なんですが....ねぇ..』


自分の懐に入れる気だな♪
まぁ、いいや.......
話だけ聞かせて貰えれば........

回りのを見渡した。
私達しか居ない。

契約成立だ!

『どういった種類の方が
登録されているんですか?』

早速気になっている事を聞く。

『種類?あぁ、職業の事かしら?』

『はぃ、すみません』

『そうですわねぇ....お医者様、社長様、先生......あとは,お仕事柄出会いが少ない方,地方にお住まいの方・・・そんな感じかしら?......まぁ、色々いらっしゃいますわねぇ.......』

『へぇ・・・・』
メモ帳に書き留めた。

『先日もですね、お二人揃って
退会された方がいらっしゃいましたの.....それはそれは、お似合いのお二人でございました.......』


そぅ、後に小説になった歩君と幸子さんの話だった。






No.116 15/12/22 09:46
名無し 

『その方達って何か
特徴みたいなもの、あるんですか?』

『同じ方と2度結婚されたんですよ!もぅ運命ですわね.....』

目をキラキラさせながら言った。

『同じ方と2回も.....凄いですね』

『うちも沢山のお見合いを見て来ましたけど、2回も同じ方と相談所を通じて結婚なさった方は初めてでしたわ......』

『へぇぇぇ.....』

(その話、書いてみたいな!
かといって.....相談所から聞いた話ってバレると.....おばちゃんも私も名誉毀損で訴えられそうだし.......ん~~...........)

腕組みをし、苦味潰した顔をして
考え事をしている私を察知したのか

『良かったら相談所イベントという事で記念に本にしてみませんか?的な方向で、書いても良いか聞いてみましょうか?』

(すげー!悪代官みたい!
悪巧みの知恵は私以上に働いている感じだ!)

探りを入れるように
『その方達とお会いする事って
出来ないです・よ・ね?』

『連絡だけでもとってみます?』

(思わず心の中でガッツポーズ!)


後日、とある喫茶店で歩君夫妻にあった。
『私達の事が小説になるなんて
.....なんだか恥ずかしいわ......』

頬を赤らめる幸子さん!
可愛い♪

だが、私も必死だ!!!

『大丈夫です!勿論、色々脚色はします。幸子さん達の話だとは分からないよう配慮は致します。』

『いいじゃないか!
僕は嬉しいけどな....
記念になるし、もう今後は何があっても離さないけど....
それでも何かあった時、
小説を読み返して反省も
出来るよ?』

『いやだわッ!』


あはははは!

3人で笑った。

そうして、この年下の男が
出来たのであった。



これは
その次に
聞いた話だ・・・・


歩君達の小説完成報告に
久しぶりに相談所を
訪れた時の話だ。

軽い雑談の後・・・・

突然キョロキョロ辺りを見回し・・・

『実はですね・・・・
ここだけの話なんですが・・・』

『何でしょう?』


『うちの会員さん同士の
殺人事件があったんですよ!!』






No.117 15/12/23 20:24
名無し 


『えッ?殺人ですか?』


『まだ犯人は捕まって無いみたいなんですけどねぇ....警察の方達がみえて、当時はもぅ大騒ぎでしたよ!』

『いつの話ですか?』

『そぅねぇ.....もう....かれこれ2~3年になるかしら....』

『どうして相談所利用者だと
分かったんですか?』

『女性の財布にここの名刺が入ってましてね、それで連絡が来たんですよ!!....』

『名刺ですか.....』

『それで、パソコン登録者のプロフィールを見せてくれって.....そしたら同姓同名の方がいたんですよ.!!』


『やはり、ここの利用者だったんですね?場所は東京ですか?』

『新宿区のホテルらしいです』

ホテル殺人事件・・・・
あったような.....無いような....
記憶をたどってみたが思い出せない......


『署で、ホテルの防犯カメラの映像を見て欲しいって。で、この女性か確認してくれって......そしたら、まぁービックリ!!!』

『何が写ってたんですか?』

『8月2日にこの女性に会いたいと言ってきた東北の会員さんだったんですから・・・・』

『えッ!?意味が...ちょっと』

『相手ですよ!
一緒に入った男です!』






  • << 119 区を特定にしてしまうと アウトですかね?(-_-;) 携帯小説というものに対して よく判らずに投稿してしまいました ホテル業界の方々様、 申し訳 ありませんm(__)m なんか、ちょっと このまま話を進めても良いものなのか・・・・ 携帯小説にお詳しい方・・・・ どなたか アドバイス頂けると 有難いかなと 頭ン中では 最後はちょっぴり 切なく終わる設定に なっております。

No.118 15/12/23 20:39
匿名 ( ♀ lSZK )

立てこもってる話し続いてる?

  • << 120 レスありがとうございます。 立て込もっている男の過去の話と 刃物を向けらていた女性が結婚相談所で聞いた話が一致してるという設定なんです。 分かりにくいですよね(-_-;) 頭ン中の妄想が読み手さんに 伝わっているのか心配でして (T-T) レスありがとうございます。

No.119 15/12/23 20:41
名無し 

>> 117 『えッ?殺人ですか?』 『まだ犯人は捕まって無いみたいなんですけどねぇ....警察の方達がみえて、当時はもぅ大騒ぎでしたよ!』… 区を特定にしてしまうと
アウトですかね?(-_-;)

携帯小説というものに対して
よく判らずに投稿してしまいました

ホテル業界の方々様、
申し訳 ありませんm(__)m



なんか、ちょっと
このまま話を進めても良いものなのか・・・・

携帯小説にお詳しい方・・・・
どなたか
アドバイス頂けると
有難いかなと

頭ン中では
最後はちょっぴり
切なく終わる設定に
なっております。

No.120 15/12/23 20:47
名無し 

>> 118 立てこもってる話し続いてる?
レスありがとうございます。

立て込もっている男の過去の話と
刃物を向けらていた女性が結婚相談所で聞いた話が一致してるという設定なんです。

分かりにくいですよね(-_-;)
頭ン中の妄想が読み手さんに
伝わっているのか心配でして

(T-T)


レスありがとうございます。

No.121 15/12/24 01:17
名無し 

>> 120
矢部真弓→刃物を向けられた女性

今は矢部真弓と結婚相談所との出会い編を回想中。
(なので、歩君の話が出てきた)

話には出て来ないが
立て込もっている男の過去を
矢部真弓は今、聞いていて、聞いている最中に、過去に相談所で聞いた話を思い出している。


この後も話は二転三転しますが、
終わりに全ての辻褄が合うようになります。


尚、明日から冬休みが入ります。

投稿も毎日出来ないかもしれませんが、気長に待って頂けると有難いです。

日付が24日になりました。



メリークリスマス♪

良い1日を・・・・





No.122 15/12/24 08:55
名無し 


『えッ?.....でも.......
どこにお見合い相手を
殺してしまう理由があるんですか?』

相談所の方は、再度周りに誰も居ないか確認し小声で話してきた。

『まぁ、ねぇ、事情がありましてね.....あまり言いたくは無いんですが,.....その女性の方・・・・
ここで雇っていたサクラなんです.......もしかしたらバレたのかなって・・・・』


『その事、警察には
話をしたんですよね?』


『い・言いませんよ!言ったらここも私達も詐欺で捕まるじゃないですか!それに、もう亡くなった女性以後、サクラは雇っていませんからね........』

自分たちだけを養護する発言に
少しムッとした私。

『じゃぁ、何故私には
話をして下さったんですか?』

マズい....そぅ思ったのか
慌てて弁解をしてきた。

『いや・・・・
だから・・・・
もしかしたら未だバレてないかもですし....べ・別の理由があったのかもしれないじゃないですか!』


明らかに下世話な話好きのおばさんがそこに居た。


私はここに来てしまった事を
酷く後悔していた。


しかし、後に
真弓はこの男に刃物を向けられ
自分自身の過去にも大きく関わっていたことをまだ分からずに居た。




No.123 15/12/25 09:33
名無し 

*~殺人までの経緯~*



『すみません、東京在住の田中由香里さんとお見合いを
してみたいのですが........』


俺の名前は吉田聡。
年齢は33だ。
東北地方に住んでいる。
産まれも育ちもここ東北だ。

仕事は18から運転手をしている。

俺が4歳の時だった。
親が俺を捨ててさ、
育児放棄ってやつ?
突然知らないおばさん達に預けられて、それっきりよ(笑)


当時はあれだなー、
捨てられたって分かってからは
荒んだ人生だったなー。
喧嘩ばっか売ってたな(笑)

この首に出来た傷もそうだ。
西ブロックの頭とタイマン張って
縄張り争いヤッてたんだけどよ、
いきなりナイフ出してきやがって。

まー、傷は浅かったから良かったものの、それをいい事に医者にも行かなかったからこのざまよ(笑)

ミミズばれみたいな傷だけ残っちまったぜ!
けど、まぁ、あれだな。
ハクがついて、お陰で負けしらずよ


中学もロクに行ってねー奴なんかを
入れてくれる高校なんてあるわけねぇからさ、15で施設を飛び出し今の社長に拾って貰った。
そんで、金貯めてよ、18で免許取ったんだ。
社長が免許取れってうるせーからよ、俺、社長にはアタマ上がんねーから滅茶苦茶勉強した(笑)


そんな俺も今では全うに生きててよ、家庭を持ちたくなったんだ。

俺、家族なんていねぇから......

夫とか
父親とか
自信は無かったけど........


好きな女は大事にする.....

それには自信があったから
結婚相談所に登録したんだよね。








No.124 15/12/26 18:47
名無し 

結婚相談所から私のケータイに
連絡が入った。

『もしもし?結婚相談所出会いです。実は田中様とお見合いをしたいとおっしゃる方がおりまして』




私の名前は田中由香里。
産まれは東北地方で、芸能界に憧れ、19歳で上京したの。

上京した理由は女優に憧れていたから。まぁ、仕事は雑誌のモデルやキャンペーンガールばかりだったケド.......それでも沢山お仕事は頂いてたのよッ♪


それにね、20代の頃は結構チヤホヤされてたんだよぉ♪ゥフッ


まぁ、そのうち私にも女優のツキが回って来る位に考えていたんだけどね........


んでね、それがずっと続くと思ってたのね......


けど、今じゃ、・・・・
女優はおろか、モデルの仕事すら
無いんだよね......



だから、本当は38歳なのに、33って嘘ついて結婚相談所のサクラのバイトをしているんだよね。


今さら地味なバイトなんてしたくないし.....それに、もしかしたら
女優の仕事が来るかもしれないじゃない???

その時の為に相談所で演技磨き出来るし、ね♪

バイト料はね、相談所登録料として毎月三万円。お見合い1回につき一万円。


結婚する気も無いのに登録して
お見合いして

真剣に結婚を考えている人を
騙してたんだよね・・・・


自分の事しか
考えて無かったね・・・・








No.125 15/12/27 18:13
名無し 


『お相手の方は東北にお住まいでして......お仕事の都合上、上京は難しいということで、電話でのお見合いを希望されています』

電話お見合いは1回5千円。
安すぎて乗り気では無かったが.....


『はぁ・・・・
分かりました。来週
そちらに伺います』
そう返事をした。



翌週の日曜日・・・・

東京支部と東北支部の電話回線でお見合いをした。


『はじめまして。吉田聡です』

『はじめまして。田中由香里と申します』

プロフィールを片手にお互い簡単な自己紹介を始めた。

『同い年の田中さんに、ちょっと興味をそそりました(笑)』


(同い年?.....あッ!私33で登録してたんだっけ,....危ない危ない....)

『同じ干支の羊ですねー♪』

『?!・・・あははははは!』

突然笑い出した聡さん。

『はぃ?!えっ?』
(ヤバイ.....間違えたか......)

『由香里さんて、面白い方ですねぇ。干支って・・・・』

『え?!あ?あははははは!』
(焦ったぁぁぁぁぁ!)


30分があっという間に過ぎた。


私も同じ東北出身だが、サクラの為内緒にしてある。

けど、久しぶりに聞く東北独特のイントネーションに夢中になり、演技中ということも忘れて楽しんでしまった。

吉田さんは私を気に入って下さった様子だ。

『いやぁ、田中さんともっと話がしたい!また来週もお願い出来ませんか?』

『分かりました。また来週、
宜しくお願いします』

そう返事をした。


楽しい会話の余韻に浸っている私に相談所の方は


『次回は乗り気でない素振りをして下さいね!相手を本気にさせてもらっては後々困るんですから.....それに、サクラだと絶対にバレないよう細心の注意をして下さいよ!』

『はいはい、分かりました!』

5千円の報酬を貰い帰宅した。

ケド、楽しかった。
また来週
話が出来るのを
楽しみにしている
自分が居た・・・・














No.126 15/12/29 09:07
名無し 

翌週も楽しく会話が出来た。
聡さんは優しい人.....
相手を思いやる人柄は
話の端々に垣間見えた。

私の正直な気持ちは・・・・

(このまま終わりにしたくない....
芸能の仕事も芽が出ないし、このまま結婚しちゃおッ..,かなぁ....
なんて・・・・

ダメだよね.....
ウソから始まった関係.....

でも・・・・でも・・・・)



『由香里さん、残念だけど
そろそろ時間だね・・・・』


(嫌だ!このまま終わりたくない)


私は相談所のおばちゃんの目を盗んで自分の携帯番号を教えた。

『ね!聡君。明日から
この番号で話さない?』

相談所には今日で終わりにしましたと嘘をつき、報酬を受け取り帰宅した。



翌日聡さんから電話がきた。
聡さんの仕事柄、運転中は荷卸し以外は1人だし、私は私で仕事もなく暇だったしで、気がつくと半日も喋っていた。


『今日は何するの?』
『洗濯ー♪』
『お昼は何食べる?』
『ラーメン!』


たわいもない会話が心地よい。

しかし、
私はサクラ・・・・
しかも、
年齢詐称・・・・

生きてきた時代の話には
細心の注意を払いながら・・・・


それでも楽しかった。













No.127 15/12/30 09:13
名無し 

この電話で話すようになってから
2週間が過ぎた。
本当に毎日連絡した。
15時間喋った日もあった。
充実した日々だった。


『ねぇ、由香里ちゃん・・・・』
『ん?何?聡君・・・・』
私は雑誌をペラペラと捲っていた。

『本物の由香里ちゃんに
会ってみたいよ!ハァァァ......』

私は雑誌を捲るのを止め
『そうだねぇ...そろそろ会ってみたいね......でもさ、お金......
無いよ?遠いよ?.....』

『.....う.....うん........』

ケータイの画像でしかお互いを知らない。

東京と東北。
日曜日しか休みが無い彼。
交通手段は土曜日の最終新幹線でこっちにくるしかない。
数万円かかる。
私も20代に貯めた貯金に手を出しはじめていた。

ある日の電話を切った後、由香里は通帳を見ながら考えた。



(そろそろ終わりにしないとダメかなぁ....いつまでも先の見えない事している場合じゃないし...
情が移ってしまわないうちに......
サクラがバレないうちに........)



『よし!決めた!
少しずつフェードアウトしていこッ!』



No.128 15/12/31 09:21
名無し 


翌日。
いつもの様に朝8時に電話が鳴った。

『由香里ちゃーん、おはよう♪
今日も天気だ!気持ちがいいぜ!』

朝6時出勤の彼は朝からハイテンションだった。

『おはよう、聡君・・
今日は出掛けるから・・
ごめんねー・・』
ガチャッ!プーッ...,プーッ.....,.プーッ


『えっ?ゆ・由香里ちゃん?・・』

再び電話が鳴る。

『もしもーし、由香里ちゃん?
少しでも話そうよ!寂しいじゃん(泣)・・・・』

『ごめん、今からシャワー浴びるから、またね!』
ガチャッ!プーッ....プーッ.....プーッ.......



そぅ、この調子でいい・・・・
明日からは電話に出ない・・・
うん、そうしよぅ・・・・
さて、明日から暇だなぁ~………


さみしいな..........




そして本当に由香里は電話に出なくなっていった。

突然の連絡絶ちに聡は動揺を隠せなかった。
すぐに結婚相談所に連絡をした。


『あのぅ、田中由香里さんと連絡が取れなくなったのですが,.....』

相談所のおばちゃんは意味が解らなかった。とっくの昔に終わっていると思っていたからだ。
だが、この方はお客様!
機転を効かし即座に対応をする。

『申し訳ございません、吉田様。田中様は他に気になる方がいらっしゃいまして・・・・』

『はぁ....そうですか....
分かりました。ありがとうございました』


聡は
(他に気になる人ッて・・・・
もしかして,.....最後に電話に出た日って.....お見合いだったのか?
.......くっそぅぅ!!!)





No.129 16/01/04 09:41
名無し 

聡は運転をしながら色々考えた。

(俺に金が無いからか?
会いに行けないから
由香里ちゃん・・・・
呆れちゃったのかなぁ?
・・・・
気になる人って・・・・
金持ちなのかなぁ・・・・)



聡は配送業の他に深夜の道路工事のバイトを増やした。
運転手は寝不足が命取り。
だが、由香里ちゃんに会いたい一心で頑張った。




聡と由香里が連絡を取らなくなって3ヶ月が過ぎた頃だった。
由香里はサクラのバイトは辞めてコンビニで働いていた。


『8月2日に東京に行くと伝えてもらえませんか?どうしても、1度会いたい。会って話がしたいんです。お願いします』

そう連絡が来たと相談所から由香里に電話が入った。

『まだ 続いてたんですかッ!?
キッパリとお断りをしてないんですかッ!?』


『す・すみません.....』

『サクラのバイトしてる分際で勝手に連絡なんか取って.....』

『申し訳ありません......』



『吉田様とはもう、連絡はしてないんですよね?
サクラだということはバレてないんですよね?』

『はい、大丈夫です』

『とりあえずお伝えしますが、相談所を捲き込む様な迷惑行為は辞めて頂けます?もう貴女は関係の無い人なんだし、吉田様は相談所のお客様なんですからね!!』
半ギレ気味で怒られた。

『申し訳ありません』





由香里は怒られた事より聡との楽しかった日々を思い出していた。

聡との嘘から始まった出会い・・



(8月2日かぁ・・・・
どうしよう・・・・
・・・・
聡君かぁ・・・・
・・・・
会ってみたいな・・・・)



No.130 16/01/05 09:43
名無し 

8月2日(土曜日)

聡は由香里との約束の返事も貰わずに、土曜の午後から休みを貰い高速バスで東京に来た。


由香里は朝からそわそわしていた。
行こうか行くまいか、ギリギリまで悩んだが、由香里もやっぱり会いたくて、相談所から聞いた時間に新宿の高速バスターミナル付近をうろうろしていた。


顔を知ってるとはいえ、この人混みの中・・・・

時刻は夕方・・・・
安易に見つかるだろうか・・・・


(聡君、東京は修学旅行以来だろうし........人混み大丈夫かな?......)

改札口辺りをキョロキョロしてると背後から・・・・


『・・・ちゃん・・・・』

振り向くと聡君が居た。

『由香里ちゃん・・・・』
いきなり抱きついてきた。


びっくりしたけど・・・・
嫌じゃなかった私・・・・


『さ・聡君・・・・』
『由香里ちゃん、会いたかった!』
更にギュッてしてくる・・・・

私も自然に彼の背に手を回していた・・・・

(なんだろう、この気持ち・・・
嬉しい?・・・・私・・・・)

背中に回した手に力が入った。


『急に連絡取れなくなるし、焦ったよ!』

『えッ?......あぁ、うん.....ごめんね......』

『俺に金が無いからだろ?』

『えッ?,.......』

『それとも、本当に他に好きな人が出来たの?』

『・・・・』

(ずっと私の事を信じてくれてたの?ずっと私を諦めずにいてくれたの?........聡君........)


『俺に会いに来てくれてありがとう......由香里ちゃん......』


私の背にある彼の手の力強さから真剣さが伝わってくる。

(このヒト.....真剣なんだ......
本当に私のコト思ってくれてるんだ...........駄目だ.......これ以上騙せない......真実を事話さなくちゃ..........)


『ね!聡君、お腹空いたでしょ?ご飯食べよ!!』

『うん!......あッ!ごめん。』
笑いながら抱きしめていた手を緩めた。


『俺、ずっとこの日を楽しみに待ってたんだよね!』


嬉しそうに私の右手を握ってきた。


『ねぇ、居酒屋行こうよ!案内するね♪』


手を繋ぎターミナルを後にした。
















No.131 16/01/06 08:45
名無し 


眠らない街、新宿。

お腹も一杯になり、街をブラブラと散歩することにした。


『東京って凄い人の数だね。
夜中でも明るいや!すっげぇ!』

『そう?』

キョロキョロする聡君。
はぐれないか心配になる。

33歳の彼には刺激的な街なんだろう.....
私にはもう、ついていけない街になっていた。


繋いだ左手と右手......
絡めた指と指に力が入る.....



『やっぱ可愛いな・・・・』

チラチラと私の顔を見る。

『そんな事ないよ....』

『いや、マジこん中で一番可愛いよ!』


(男の人に可愛いッて言って貰えたの....久しぶりだな.....)

『由香里ちゃん、よくナンパされたでしょ?』

『ないない!ここじゃ、私なんて普通だよ?』


(普通すぎてモデルの仕事すら来ないもん......)

『そういう聡君もカッコいいよ!
実際に会ってみて、そう思ったよ 』

『......由香里ちゃん,......
俺、やっぱ、来て良かったよ!
俺、由香里ちゃんの為なら寝不足も苦にならねぇよ♪』

『うん、私も..............』


由香里は思いを続けて言う事が出来なかった。

この後の話によって聡の態度がどう変わっていくのか気になっていた。










No.132 16/01/07 09:04
名無し 


この近くに公園がある。
そこで話をしようと考えた。

『ねッ!聡君。少し休まない?』


人気の無いベンチを探し腰掛けた。

アルコールのせいなのか
夜風が気持ちいい....,
と、聡君は言った。

(機嫌は良さそうだ......
話さなきゃ.....全てを.......)



『聡君、今日は土曜日だけど休みを貰ったの?』

『うん!由香里ちゃんを他の人に渡したくなくて(笑)
俺、休みなんてさ、貰ったの初めて!........東京に行きたいからって、社長に頼んだよ!.......
そしたら社長ビックリしてさ!あははははは!!.....
どうしたんだ!何があったんだッて!......』


『うん......』


『俺、......どうしても会いたい人が居るって.......』


『そぅなんだぁ.....ありがとう..
....私も....聡君に会いたかった!!』

『本当?!俺、めっちゃ嬉しいよ!来て良かったぁ♪』

『でもお金は?お金も社長に頼んだの?』

『いや、違う。そういうトコ社長は厳しいからさ、俺、.....深夜のバイトして金貯めたんだよね,......』

『えッ!?それで寝不足に?』

『めちゃくちゃしんどかったぜ(笑)眠いし(笑)筋肉痛だし(笑)』


『........そぅ.......そこまでして....私に会いに来てくれたんだ......』


『でも、頑張った甲斐があったよ!こうやって由香里ちゃんにも会えたし.....俺、また頑張るから......待ってて、俺の事.........』


『.....そんな.......
私なんかの為に.......,』

『俺さ、由香里ちゃんにまだ言ってなかったけど、最初由香里ちゃんの写真みて.......運命のヒトだと思ったんだよね♪大袈裟かもしんねぇけど.....』

『ぇッ?!』


『前にも話したと思うけど、母親に捨てられて家族いねぇじゃん?......だからよ、由香里ちゃんとどうしても一緒になりてぇんだ!
電話しかしてねぇ関係だったけどよ、俺、......楽しかったんだ』

『うん!うん!私も,......
私も楽しかったよ!
毎日聡君からの電話を
待っていたよ!』


『そうだ、それ聞きたかったんだ(笑)........なんで連絡絶ちした?』











No.133 16/01/08 08:56
名無し 

『・う・・・うん・・・・
あの・・・ね・実は・・・・』

怖い,...じっと私を見つめる聡君が怖かった,......でも、言わなくちゃ
.......出会いは嘘から始まった。でも、今は聡君が好き.....そぅ、言おうと思った。

『私、サクラだったの』

『えッ!?サクラって?』

『結婚する気も無いのに相談所に登録してたの』

『はぃ??意味わかんねぇし.....』

『........お見合いするたびに....
お金を貰ってたの,......』

『・・・・?!』

『................ごめん...........』

『・・・なんで?・・・』

『本当は、私も東北出身なんだ
.....東京じゃないよ.......女優になりたくて......19で上京したの
......けど、なかなか上手くいかなくて.........でも諦めたくなくて
.......生活の為にサクラのバイト....
してたんだ.........』

『・・・・・・・・』

『それに、年齢も・・・・
本当は38なんだよ・・・・』

怖くて聡君の顔が見れない,.......


ただ・・・・
組んでいる聡君の脚が
ガクガクと上下に
激しく揺れているのが
横目で見えた・・・・


沈黙が続く・・・・


(怖いよ!聡君.........
何か言ってよ............)





聡君は大きく息を吸い........


『ふぅん・・・・
毎日楽しく電話してたつもりが
・・・・仕事だったんだ..........』

『ち・違う!違うよ!
私のケータイで連絡取ってた時からはお金なんて・・・・』


『嘘だったんだ・・・・』


『ちがッ・・・・』


『全部嘘だったんだ!!!』





No.134 16/01/09 15:53
名無し 

『聡君.........
ごめんなさい.........
でも、でも、もう辞め........』



『.......よく、のこのこと俺に会いに来れたよな......たいしたタマだぜッ!』


『正直に話そうと思って.......』





『俺の・・・・
俺の・・・・
深夜のバイトまでしてよ・・・・
由香里ちゃんに会いたい一心で
・・・・お前に俺の気持ちなんか・・・・情けねぇよ・・・・』




『・・・・聡君・・・・』










『来いよ!!』


『え ッ?!聡君・・・』



私の腕を掴み歩き出した。







ラブホ街に来た。


『ぇッ?聡君,.......』





『・・・・』






適当に入り空室を探した。




×××号室



由香里を無理やり連れ込んだ。
























No.135 16/01/11 11:20
名無し 



『・やッ・・やだッ!・
・・・・辞めッ・・・・』



『来いよ!俺の気持ちを
たぶらかしやがって・・・・
思い知らせてやるッ!!』


『やだ!!辞めて!!
お願いよ!・・・さと・・・』


ベッドに私を突飛ばし
無理やりキスをしてくる


乱暴に服を脱がし始める彼。



『やだ!やだ!辞めて!
ごめんなさい!
ごめんなさい!!聡君・・・』


懇願しても辞めない彼。


『俺がどんなに傷付いたと
思ってんだよ!!・・・・
真剣な俺の相手をしながら
裏で笑ってたのかッ!!』


(違う.....ちがうのに.......)






由香里は無抵抗になり
泣いてしまった。



自分がどんなに酷い事をしたのか今さらになって気がついた。




『・ご・・めん・・な・・さ・・・』




『男を舐めるのも
いい加減にしろや!!!』







バカにされた。
そぅ思った。




こいつも
俺の母親みたいに・・・・


俺を・・・・

俺を・・・・





聡は無我夢中で
由香里の首を

締めた・・・・



No.136 16/01/12 08:48
名無し 






聡はハッと我に返った.......




ベッドに横たわる
目の前の女はぐったりして
動いていない........




(ヤバい事しちまった......)



どうしよう・・・・


どうしよう・・・・



頭が混乱する・・・・



いてもたってもいられず
1度入り口のドアを開けたが
また締めた・・・・



このまま・・逃げようか・・
いや・・・・それとも・・・・

ベッドの回りをうろうろする。






プルルルッ.......プルルルッ.........プルルルッ....


電話が鳴った.......



(・・・殺したのバレた?・・・)






『・・・・はい・・』

『フロントですが何かありました?
退室なら料金精算まだなんですが』



『すいません。今払います』



聡は由香里をそのまま残し
行方を眩ました...........



No.137 16/01/12 08:57
名無し 

*~立てこもり再び~*


私の目の前にいる男.......
そぅ、相談所で聞いた話と
ほぼ一致した。

間違いない,.....
見合い相手を殺害し
逃げ回っている男,.........




不思議な縁を感じた。
あの相談所は訪れる運命だったのか・・・・



東北出身ということ・・・・

この首の傷・・・・

やっぱり・・・・


貴方なのね・・・・




No.138 16/01/13 09:04
名無し 


『今までどうやって
逃げ回ってきたの?』


『まぁ、あれだな,.....
留守宅に盗みに入ったり......
公園に寝たり......寒けりゃ
駅に行くし........浮浪者の
世話にもなったな........色々だ』


『自首しようと思わなかったの?』


『そりゃ思ったさ。
正直辛かったぜ.......
冬なんか特にアレよ......
寒いし、盗みに入ろうにも
どの家も戸が締まってるしよ...』


『・・・・』


『いつも空腹だし、誰かに追われてる感がめちゃくちゃしんどかった.............
すれ違う人、みんな俺の事見てる、そんな気がした........
もう逃げられない
逃げるの疲れた.......何度も思ったさ。自首しようと交番の前にも行ったぞ!俺...,.......』

『だったらなんで..........』


『そんな時に限ってよー......
社長が......俺の親代わりみたいな社長の顔が..,...浮かんできてよぉ......』


『・・・・』


『合わせる顔がねぇんだ......』


『でも、突発的な事故でしょ?
騙されたんでしょ?
上量酌量の余地はあったんじゃないの?』



『...........俺さ、本当に彼女の事好きだったんだ.........こんな俺でも真剣だったんだ......幸せな家庭を持ちたかったんだよ...........
一人前になって、世話になった社長に恩返しをしたかった.,......』


『・・・・』


『そんな彼女を・・・・
カァーッとなって殺しちまうなんてよ......最低な人間だよな!あん時死んでりゃ良かったんだ........』


『簡単にそんな事言わないで!』

『今日初めて会ったお前に
何が分かるってんだ!
幸せな家庭があってよ......
旦那がいてよ......
子供がいてよ.......
幸せな日常があるお前に
何が分かるってんだ!!』




No.139 16/01/14 09:06
名無し 

真弓は、男の話を聞いて
もうこれ以上
罪を増やして欲しくない....
そう、思った。


(名前.......吉田聡って言うんだね...
こんなかたちで貴方と再会し、名前を知るなんてね......... )





(今何時だろう,.......)
ふと、時計に目をやった。

1時を回ろうとしていた。


もう動いても大丈夫だろう。


私は椅子から立ち上がり
男に言った。


『1時になったわ。
そろそろ出ましょう.,.....
まずは銀行に.......その後は
駅に行くわ...........』


『.................うん.......』


男も素直に立ち上がったが、
再び包丁を手に取った。

緊張しているのか、男の手は震えていた。




『包丁は置いて行って。
もぅそんな物はいらないから』


『・・・・?!』

『大丈夫よ!安心して!
私を信じて!』


男は素直に応じた。
信頼関係が少し成り立っていた気がした。



身支度を整え
インターフォンのカメラで
外の様子を伺う。


よし!誰もいない!

『行きましょう........』




(誰にも
見つかりませんように......)



心の中で願った.........














No.140 16/01/15 09:18
名無し 

玄関のロックを外す。
カチャリと鈍い金属音



少しだけドアを開け
人が出歩いてないか
確認する。



(今だ!......)



私の後ろに男を
ピタリと寄せ付ける。



玄関ポーチを避け
左横の樹木の間を

静かに.......そっと.......

すり抜け駐車場に入る。



車のロックを解除する。

ピピッ!
聞き慣れている音でさえ
ドキッとしてしまう。



車のドアを閉める音が
2つに鳴らない様
男とアイコンタクトをとり
同時に閉めた。



男は後部座席に
身を隠す様に
横たえる。


『いいと言うまで隠れてて』


後ろの男に小声で言った。




ハンドルを握る私の手は震えていた。



スタートボタンを押した。



車庫から車を出した時も
更に辺り全体を見渡した。


(良かった,.......
誰も居ない..........)





震える手でハンドルを
左にきり,アクセルを踏んだ。
















No.141 16/01/15 09:26
名無し 



共犯者になるのか・・・・


今まで
築き上げたものは
崩れさるのか・・・・



私はどうなってしまうの
だろう・・・・




けど
後悔はしていない・・・・




今度は
私がこの人を
助ける番だ・・・・




あの傷を見た瞬間に
私の心は決まっていた・・・・




No.142 16/01/15 09:40
名無し 


もう少しで
大通りに出る。

あともう、ちょっとで.......



その時だ。



対向車が来た。
見るとご近所さんだった。


顔がひきつる。
呼び止められるだろうか.......
嫌な予感がする。


すれ違いざまに会釈をし、
アクセルを更に踏んだ。


その様子を、後ろで身を隠している男が

『パトカーか?』


と、聞いて来た。


『大丈夫よ!
なんでもないから........』

そぅ、返事をした。




片側2車線の大通り前まで来た。


ここまで来れば安心だ。


私はウインカーを左に出し
◎◎駅を目指した。











No.143 16/01/15 09:55
名無し 

◎◎駅までは車で40分。


(頑張らなきゃ.......)
緊張のせいなのか目眩がする。


それでも、真弓は後ろの男に


『トイレとか大丈夫?
気持ち悪くない?』

『あぁ、大丈夫だ!』

久しぶりの車だし、栄養不足だし、少し心配になった。


ここまで来て具合が悪くなっては困る。

自分の事より男の心配をする。




自宅と駅の間の銀行は利用しなかった。


無駄に防犯カメラに映るのは
できるだけ避けたい。



『半分まで来たから......
あと20分くらいで着くわ』

男に言った。

『・・うん・・』


スピードで捕まらない様
細心の注意を払いながら
運転を続けた。








No.144 16/01/17 17:29
名無し 

◎◎駅に着く。

大きな時計が目印の
近くの駐車場に車を入れた。


駐車場から少し歩き
駅構内に入る。


構内の人混みは凄かったが
掻き分けて電光掲示板の前に行き
、目線を向けた。


一番早く出る新幹線は・・・・


九州方面だ!

真弓は無言で聡の顔を見た。

聡はうんと頷いた。


電車が出るまであと1時間。


真弓は

(もう少しの辛抱よ........
1時間後には
貴方は.........
人生をもう1度やり直せる.......)

そう信じていた。



No.145 16/01/17 20:44
名無し 


行き先が決まれば次は金だ。

構内のキャッシュコーナーに向かい
60万下ろした。

その内の50万を備え付けの封筒に入れ、聡に渡した。

『九州に着いたら、財布と履き物を買ってね』

足のsizeはどーにもならないかったので、今は踵を踏んで履いてもらっている。

聡は

『こんなにいらないよ.....,
切符代だけで.......,』

『大丈夫よ。無いよりはあった方が安心だから......持ってて..,......』


『・・・・』

次に緑の窓口で切符を購入する。


『博多まで・・・・
大人1人・・・・
片道でお願いします』

『何号車か窓側か、何か希望がございますか?』


そう言われてふと考えた。
彼は、きっと指名手配されているだろう.....
駅員にも聡の顔が知れ渡っているかもしれない......

不穏な動きがあればトイレに逃げ込める・・・・
挟まれず逃げ切れる・・・・



『では、最後尾かトイレ近くの窓側で・・・・』

そう駅員に告げた。










No.146 16/01/18 09:12
名無し 

次に売店に行き、車内で食べる
弁当、ビール、つまみ、雑誌を
買った。

私は入場切符を買い、二人で改札口を通った。

左横のエスカレーターで上がり、九州行きの3番線へ。

プラットホームに設置してあるベンチに腰掛けた。


(目立つかな?........)

とも、思ったが、キョロキョロと不審な動きさえしなければ、大丈夫かな.......


ふと、聡を見た。

(旅行者に見えないだろうか?)

フリースにブカブカのジーンズ.......
シューズは踵を踏んでいる.........

(履き物くらい、途中で買えば良かったな.........そうだ!手荷物が
無い.......)

『ちょっと待ってて.......』

そう言い残し、キヨスクで土産風の
饅頭を2つ買った。

カモフラージュに少しでもなれば.......
そう思い、聡に渡した。


『これで いいかな・・・・』

私のつぶやきに聡は


『ありがとう..........
なんて言ったら......いいか....
その............』


『いいの。いいのよ,.........』


初めてお礼を言われた。
嬉しかった。

照れ隠しに
私は前をじっと見つめていた。


ただ、まだ安心は出来ない,.......

この人が電車に乗るまでは.......
見届けなくては........



『あのさ......』

『何?』

『名前.....教えてくれないか?』

『?.....あぁ、そう言えば、言ってなかったわね(笑)私の名前は、真弓って言うの』

『あのさ、もう1度聞くが.......
何故、俺を助けるんだ?』


私は時計に目をやり

『............そうね.....まだ時間....あるわね.........私、△△出身なの。私の事、覚えてない?.........』

『え?俺も△△出身だが,........
歳は随分下だろ?やっぱり
どこかで会っているのか?』










No.147 16/01/20 09:07
名無し 

*~聡と真弓の出会い~*


真弓が聡と出会ったのは真弓が低学年の頃だった。

当時はマンモス団地に住んで居た。

真弓の父親はタクシーの運転手で
仕事から帰るのは翌日の朝。

帰宅しては朝っぱらから酒を呑み
寝てばかりいた。


母親は真弓の入学を機にスーパーに勤め始めたが、帰宅はいつも19時頃になった。


当時、学童保育等は無く、学校が終わると母親が帰るまでいつも団地内の公園で遊んでいた。
いわゆる鍵っ子だった。


部屋に父親が居れば、寝ているのを起こさない為、たとえ父親が居なくても、独りぼっちが嫌で、団地の公園でブランコやシーソー、砂遊びをしながら、いつも誰かと遊んでいた。

公園に行けば、必ず誰かが居た。



夕方になると、みんなお母さんや兄弟に
『ごはんだよー!
帰っておいでー!』

と、お迎えが来ていた。
一人っ子の私は誰も迎えに来なかった。
来る訳がない。


一緒に遊んでいた子が1人減り・・・・2人減り・・・・

いつの間にか
薄暗い公園に独りぼっち・・・・


それでも母親が帰宅する迄は公園に居た。


ふと見上げると・・・・


各部屋に明かりが灯っている。

何処からか・・・・

カレーの匂いがしてくる。


羨ましかった。

寂しかった。


それでも・・・・


公園で母親を待っていた。








No.148 16/01/21 08:18
名無し 

『おやおや・・・・
お嬢ちゃん、独りかい?』


砂場で独り遊んでいた時だった。


『へっへっへっへ・・・・』

5~6人位、いただろうか.....
中学生グループが声をかけてきた。

『寂しいだろぅ?・・・・
一緒に遊んであげようかぁ?



『くっくっくっ・・・・』


薄気味悪い.....笑い声.......,

今も忘れられない..........





砂場の真ん中にいた真弓......


薄暗い砂場は中学生達に取り囲まれ、真弓の周りは更に暗くなった。


その暗さに
ふと見上げた瞬間,.........





真後ろにいた人が真弓を
持ち上げた。



声を出す前に口を押さえられる。


足をバタつかせたが
その足も押さえつけられた。



唯一動かせた手は
口元にある男の手を
振り払おうとしていた......









No.149 16/01/22 09:03
名無し 



団地の裏山だろうか.......
どんどん茂みの中に
入って行く.........


突然下ろされた........



こわい・・・・
こわい・・・・


暗闇と恐怖で何も見えない......



下着を脱がされる........



下のほうで
何かがヌルッとする.......




口の中に
何かが入ってきた.......



うげぇぇぇ・・・・

嘔吐するも
口の中の何かが阻む........




そのうち
下の方で激痛が走った.......



口の中の物を
おもいっきり噛んだ.......




『痛ったぁぁぁぁ!!
何すんだ!!てめー!!』



おもいっきり
頬を叩かれた.........






何をされているの?
いつまで続くの?

こわい・・・・
こわいよ・・・・
お母さん・・・・



真弓は
声にならない
悲鳴をあげた・・・・



もうすぐ終わる・・・・
お母さんが
迎えに来る・・・・





お母さんが・・・・







No.150 16/01/22 09:10
名無し 





どれくらい
経ったのだろう・・・・



『おめぇら・・・・
何やってんだよッッ!!!!』


その声と同時に
真弓を取り囲んでいた
中学生グループ達は
次々と真弓の目の前から
消えていった・・・・



喧嘩しているのだろうか・・・・


恐怖と痛みで起き上がれない
真弓には、何が起きているのか
解らない・・・・



ただ・・・・
恐くて目をギュッと
瞑ッていた・・・・






No.151 16/01/22 09:23
名無し 





辺りは静かになった・・・・




『帰るぞ!!』



中学生グループではない
見たことがないお兄ちゃんが
私を(真弓)を優しく抱き上げた



あのお兄ちゃん達とは違う
優しいお姫様抱っこ・・・・


小さい頃
お父さんがしてくれた
あの抱っこに似ていた・・・・


私の腕は
お兄ちゃんの首に
回していた・・・・




『お前、団地に住んでるのか?』

真弓は首を縦に振った。


『とーちゃんとかーちゃんには
言うんだぞ!いいか?』

また、首を縦に振った。



団地近くまで来た時だった。


外灯でお兄ちゃんの顔が
見えた・・・・



(.....あッ!!........傷...........)



助けてくれた
お兄ちゃんの顔は
忘れたが
首に出来ていた傷は
ずっと忘れずにいた・・・・



今日・・・・
聡に会うまで・・・・
ずっと・・・・



(あの時のお兄ちゃん........)


















No.152 16/01/24 09:34
名無し 


『そうか、あんただったのか......なるほどな。それで、俺を.......』


『首の傷を見たとき......,
思い出したの。あの時のお兄ちゃんだって!あの時はありがとうございました。今までお礼も出来ずにごめんなさい』


『いや、いいんだよ。あの頃は俺も色々やらかしてたしな(笑)』


『えッ?!』


『いや、虐待じゃないよ!
喧嘩だよ、喧嘩(笑)』


聡は下を向いて、ふッ!、と笑った


『あの後、親にちゃんと言ったか?』

『ううん。
お母さんは仕事で疲れてて.......
お皿にお惣菜並べて、そしてオヤスミ......と言って寝たと思う....
....お父さんは野球中継を見てたと 思うけど...........』


『・・・・そうか・・・・
あんたも大変だったんだな・・』


『泥だらけで・・・・
足から口から血を流してても
何も言われなかったの......。
幼心にも..........言ってはいけない.....そぅ思ったし.......』


『・・・・』

『今の私があるのは、貴方のおかげよ!ありがとう!』

『そんな・・・・』

聡は照れていた。
人から感謝された事なんてなかった。


(俺、今までちゃんと、ありがとうと言えてたのかな?
境遇のせいにして、悪さばっかしてよぉ.......おまけに人殺しかよッ.......情けねぇな.....俺.......)


聡は走馬灯の様に自分の過去を振り返してみた。










No.153 16/01/26 09:15
名無し 


『今は幸せそうだな!
なんだか嬉しいよ、俺』


『うん、ありがとう.......,
だから・・・・
貴方も生きて・・・・
生き抜いて・・・・
私が与える命を
無駄にしないで欲しい........』


『.......うん.....わかった.....
しかし、不思議な縁だな、俺達
......あんたの所に押し入るなんてよ(笑)』


『そうだね(笑)
包丁を突き付けられた時は覚悟したけど........その後に見た首の傷で不思議と落ち着いたわ(笑)』



『いや、俺もさ、最初っから
変な展開でよ、正直戸惑ったよ(笑)呆気にとられていったというか.........』


『ふふッ♪でしょうね......
でもね、例え人違いであっても、私は貴方を助けようと決めていたの.......貴方を助ける事によって
自分の中で一区切りが出来るというか..........過去を終わらせられるというか..............本当は間違っているのかもしれないんだけど、
今は、私は、貴方を助けたい』


『・・・ありがとう・・・・』


『そうだ!お願いがあるの』

『なんだ?今なら何でも聞いてやるよ(笑)』


『私ね、ライターの仕事してて、つまり、貴方の事書いても良い?』


『えッ?まぢかよ(笑)』

『貴方の事だって判らない様に書くから・・・・』

『・・・・そうだなぁ・・・・
まッ!逃がしてくれるお礼に特別に許可するか!(笑)男前の設定で書いとくれよ(笑)』


『あはははは!
ありがとう♪聡さん』














No.154 16/01/26 09:43
名無し 


もう少しで逃亡から解放される安心感からか、聡の表情は明るかった。




(まもなく三番線に列車が参ります。ご注意下さい)


構内にアナウンスが流れる


終わる・・・・
私の恩返しも・・・・

真弓は思った。



ベンチから立ち上がった聡は



『今まで、ありが・・・・』
そう言いながら手を差し出した瞬間・・・・





『吉田聡だな!
任意同行を求める!
容疑は田中由香里殺害の件!
容疑者吉田聡!
あなたには黙秘権があり・・・』



三番線のプラットホームには
私服警官で溢れ返っている




真弓はぼんやりと
次々と男を取り押さえる様子を
見ていた



男は
あの時の自分に
似ていた




暴れる手足を押さえられ
騒ぐ口を塞がれ
フラッシュバックする私の脳が
警戒音を鳴らしていた






(助けてあげれなかった...........
あと、もう、ちょっとだった
のに...........)



『はぁぁぁぁ........
巧くいかねぇな........
ぁははははははは,...........』





泣きながら笑う私を

心配そうに

女性の警察官は

『もう大丈夫ですよ!』

そっと抱き寄せてくれた・・・・








*~完~*













No.155 16/01/26 09:52
名無し 

今まで読んで下さっていた皆様


ありがとうございました。


老眼の調子もみながら、また

投稿してみたいと思っとります

(*^^*)


その時は宜しくお願いします♪



ありがとうございました(*^^*)












No.156 16/03/02 11:16
名無し 

※~おはようございます~※

また性懲りもなく
ボチボチと綴って
みたいと思っとります(*^^*)

誤字脱字等
御迷惑をおかけしますが
宜しくお願いします(*^^*)

恋愛系の話のつもりです......





No.157 16/03/02 11:17
名無し 



※~口実~※

No.158 16/03/02 11:24
名無し 


私の名前は(四角亜紀)

私が小さい頃に父親は亡くなっている。

今は母と二人、ひっそりと生きている。

四角は父方の姓だ。

離婚した訳ではないからと
ずっと父方の姓を名乗ってきた。


私が25の時だった。


高校を卒業して勤めた会社が
倒産してしまった......


いきなり無職になった.....,



No.159 16/03/02 17:58
名無し 


ガラッ.....

亜紀の部屋の戸が開く。

『ちょっと!
いつまで寝てんの?
お母さん、仕事に行ってくるから。洗濯と夕飯の用意頼んだわよ!』

『・・ハァ~イ・・』
ヌクヌクの布団の中から返事をした。

(ッていうか、ノックくらいしてよね)

無職になって3日目の朝だった。

『じゃ、行ってきます!』

そう言って母は仕事に出掛けた。

(早起きしたって意味無いじゃん。だって私、無職なんだもーん)


そう呟きながら、ベッドから這い出た。


亜紀の部屋は居間を通らないと台所には行けない。

居間のテーブルには朝食が置かれていた。


玉子焼きとおひたし。
欠伸をしながらそれをチラリと目で追いやり、洗濯機のスイッチを押し朝食をとり始めた。


No.160 16/03/02 18:12
名無し 


さて、
仕事探さなきゃなぁ......
ケータイを開いた。


1つ気になる仕事が見つかった。
以前務めていた場所の近くで土地勘がある。同じ事務職だ。

派遣会社に連絡し、明後日の午後面接になった。

慌ててクローゼットを開ける。
リクルートスーツ.....
取っておいて良かった.......
が、試着してみるとお腹回りがきつくなってて焦った。

(たった7年でこんなに太ったの?もぅ、やだぁ.......)

座った途端、ボタン飛ばないかしら(汗)

亜紀はシャワーを浴び、履歴書を買いに行く事にした。


No.161 16/03/02 18:37
名無し 


面接当日。

事務所はすぐに見つかった。
職員は全部で4人。
▽▽支店で本社は博多だった。
なので、社長はここには居ない。

面接は二人居た。
男の人は人事部兼、支店長。
もう一人・・・・
一緒に働くお局風の人。
気が強そうだ。
多分、このお局と気が合う合わないで合否が決まるのでは?・・
そぅ思った。

給料もいい!待遇もいい!
あとは、このお局をクリアできれば・・・・

亜紀は、大人しい性格だから大丈夫だと思っていた。
お局様の言う事をハイハイと素直に聞ける性格だと!!

だが、お局は1度も亜紀の顔を見なかった。
若くて可愛い......それだけで気にいらない様だった。


支店長はチラチラとお局の様子を伺っていた。

『結果は2~3日後に連絡します』と言われて面接は終わった。



(多分.....駄目なんだろうな....)



久しぶりに着たリクルートスーツ。
少し緊張を解したくて商店街を歩いて帰る事にした。



(あ!花屋さんだ!)

店頭にある大きな向日葵が目に飛び込んできた。
思わず近づく。


(ふぅん、色々な向日葵があるんだ,.....何々?.......へぇ~,ジョーカーにソニア??........)



『いらっしゃいませ!』

店の奥から、太くて低い
男の人の声がした。




No.162 16/03/02 18:52
名無し 


声がするほうに、ふと眼を向けると、花屋には似つかわしくない大きな男が居た。
180cmはあるだろうか......
体格も立派な男の人だった。

(まー、確かに....
花屋さんて重労働だけども,.....)

でも、どうひいきめに見ても、
ゴツい!

エプロンが子供用に見える!
ダメッ!!
笑ってはダメょ!!

嗚呼~、手にしてる薔薇がミニ薔薇に見えるぅ~.........クスッ!!!

『いらっしゃいませ!
何かお探しですか?』

やだ....笑ったの....見られた?....


『あ!いえ....特に何も......』


『わかりました。何かありましたらお声を掛けて下さい』


『はい。ありがとうございます』


大きな体が狭い店内を往き来してる。

(森の熊さんみたいだ........)

亜紀は、また笑ってしまった。




No.163 16/03/03 09:59
名無し 

向日葵の次に観葉植物に眼をやる。

彼は私の後から来たお客様の相手をしていた。
どうやらお見舞い用の花束の注文が入ったらしい。

カスミソウ、スイートピー、ガーベラ等を器用に束を作っている。

亜紀はそれを横目で見てギャップに驚いた。

大きな手が右に左にクルクルと回転し、不思議な生き物に見えた。


(森の熊さんは......花.....好きなのかな?....,)








No.164 16/03/03 10:25
名無し 


亜紀は居間のテーブルに飾ろうとテーブルヤシを1つ手に取りレジに向かった。


『ありがとうございます。
726円です.....』

亜紀は千円を財布から出し


『千円お預かりし、274円のお返しです』


近くで聞いた彼の声は、大きな体から出ているとは思えない程、優しく穏やかなトーンだった。


(あッ!.....この声....好きかも,......)


そう思った。

お釣りを貰おうとした時、レジ横の案内が目に止まった。


(バイト募集,.....時給800円
休日.....日曜祝日)
と、書いてある。


亜紀は・・・・
『あの!,........』

とっさに出た言葉。

『はい?』

『あの!働きたいです。
ダメですか?』

一瞬面食らった森の熊さんだったが、

『いや.....水仕事だし、手は荒れますよ?それに力仕事だし、
大丈夫ですか?経験はありますか?』


『あ~、いや、無いです。
力もそんなには.....やっぱ、無理ですよねぇ~.,.......』


『あ!じゃ、花は好きですか?』

『はい。好きです』

『花屋って見た目とは違う、かなり過酷だけど、それでも良かったら採用です。明日からお願いします』



『..,...............えッ?』


『好きなら大丈夫かなぁッて.....
ははッッ!』


『.,....あ!でも、好きと言っても花の名前とかはあんまり......
今も、向日葵の種類が沢山あってビックリしてたとこなんです。
それに.....フラワーアレンジも出来ないし......う~ん、やっぱ止めときます。ごめんなさい.........』


『そうですか.......残念!』

さっきまでの笑顔が消えてしまった。








No.165 16/03/04 09:15
名無し 


(え?いいのかなぁ?)

『あの!やっぱ来ます。
好きな花に囲まれて仕事したいです!』


『ほんと?ありがとう♪
助かります!明日から
お願い出来ますか?』

『え?あ!はい。大丈夫ですが、何でですか?』


『実は母の調子が良くなくて人手が足りないんです。それに、時給も安いしで、なかなか......』

『それは、つまり.......』

『そうです。母が元気になるまでなんです。もしかすると、退院してもすぐに仕事が出来るかどうか、わからない感じなんですが...,.,ハハッ!.....すみません。こちらの都合ばかりの話で........』

大きな体で気の弱いことを言われると、なんだか気の毒になった亜紀。

亜紀は、先程の面接の様子では不採用だと感じていた。

次の仕事が見つかるまでここでバイトをする事に決めた。


森の熊さんは嬉しそうに

『では、明日から宜しくお願いします!そだ、お名前は?.......』

『四角亜紀です。25です。
宜しくお願いします!』

『浦田健人です。こちらこそ宜しくお願いします!あ!健人の健は健康の健です』


見た目と名前が一致した♪

亜紀はまた笑ってしまった。




No.166 16/03/04 11:30
名無し 

亜紀は家に戻り、洗濯物をたたんでいると母親が仕事から帰ってきた。

『ただいまぁ~、はーッッ!
今日も疲れたぁ....』

荷物を玄関にドカッと置いた。

『おかえり~、ねえねえお母さん.....仕事決まったよ!バイトで暫くの間だけど』

『え?そうなの?
後でゆっくり聞かせてよ!
まずは、風呂にビールね!』

『はいはい...沸いてますよ(笑)』



夕飯を一緒に頂いている時に亜紀は(今日の出来事)を話した。

『箸より重い物を持った事がない亜紀に花屋なんて勤まるのかねぇ~(笑)』

『失礼ね!大丈夫よ(笑)』

母親はテーブルに置かれたヤシを見ながら、
『できたらそのまま、その人と結婚でもしてもらいたいもんだね~』

『もぅ~、お母さんたら.....』




TVを観ながら笑う母をみて

(そろそろ結婚して、孫の顔でも見せてあげたいな......健康の健人さんか........)



ふと思い出して、顔が赤くなった。











No.167 16/03/04 20:07
名無し 

翌日......


『おはようございます!
今日から宜しくお願いします!』

『あぁ、おはようございます。
早速で悪いのですが、今、生花市場で仕入れてきたこの花を中に入れて下さい』


健人は車から降ろしている途中だった。

『わかりました』


『あ!これ、使って下さい』
と、軍手を渡された。


亜紀は花の入った段ボール箱を持ち上げた。


『重いなら無理しないで下さい。軽い鉢物をお願いします』

健人は吹き出る汗を拭いながら亜紀に言った。


(タオルや軍手、持ってくれば良かったな......)

自分の準備不足に恥ずかしくなった。思ってた以上に大変そうだと感じた。


『大丈夫そうなので運びます』


亜紀の力でもなんとかなりそうだ。だが、水分を含んだ生花は見た目より重たかった。


夏の暑い季節。
素早く花専用冷蔵庫に入れる。
落ち着いてから水揚げをするらしい。




No.168 16/03/04 20:24
名無し 

生花店で働いた事がなかった亜紀は、つきっきりで健人に色々教えてもらった。


レジの打ち方
掃除
値段
花の名前
etc.....


ラッピングの仕方や花束の作り方を教えてもらっている時、


時々.......
健人さんの手が
私の手に触れ
健人さんの
顔が近づく。


『ここは、こう持って........』


耳元で囁かれる,......

私の大好きなトーン.......


耳が.......くすぐったい......


胸の高鳴りを抑えられない........



勿論下心など、この人には無い。


けど、亜紀は内容が全く入らない程、健人の声に心を奪われた。



(耳、赤くなっていないかな.....?)

亜紀はそんなくだらない事を考えていた。








No.169 16/03/04 20:39
名無し 

バイトを始めてから1ヶ月が過ぎた。


徐々に仕事も覚え、接客にも慣れた頃だった。




『よぅ!健人』


『おー!正人。久しぶりだな♪
最近どーよ?』



『あ?ボチボチだなッッ♪
常連は相変わらずなんだが、新規がなぁ~(笑)なかなか新規の指名が入んなくてよお........今日もさ、常連の女の子の誕生日でよ、店来るッつーから花でも送ろうかと..............』


ふと、亜紀と目が合った。



『あれ?新しいバイトの子か?』

『あぁ、紹介するよ!
四角亜紀さんだ。とりあえず母さんが退院するまで働いて貰うつもりなんだ』


『四角です。宜しくお願いします』


亜紀は頭を下げた。

(チャラそうな男......健人さんの友達なのかな.......)


どう接してよいのか分からない亜紀の回りに居ないタイプで一瞬戸惑った。














No.170 16/03/06 08:20
名無し 


『四角ッて珍しい名前だねぇ~
インパクト強すぎぃ~(笑)』


亜紀は、こんなやり取りには慣れていて、ハハッ...と苦笑い。


『んで、こいつは幼馴染みの正人。ホストだよ!』


『ホストの瑠宇久(ルーク)でーす♪
よろ!亜紀ちゃん。良かったら
遊びに来てよ♪サービスするよー♪』

『あー、は・はい・・』

『可愛いねぇ♪俺の回りに居ないタイプだわッ』

と、名刺を渡された。

(健人さんとは大違いね。華奢な体でチャラい......金髪に香水プンプン.,....苦手なタイプ......)



『てか.......四角ッて....,..どっかで...,........まさかな.......だな.....』

『なんだ?正人、何かあるのか?』


『いや、なんでもねぇ』
意味深な発言を残したまま、話をすり替える正人。



『そだ、健人。適当に1万円程の花束作ってよ♪』


『おぅ、いいぞ!花は何にする?』


『あ?何でもいい♪
つか、知らねえし(笑)』

『ったく!お前はよぉ.....』


健人はカスミソウ、百合、青い薔薇10本、その他諸々を冷蔵庫から取り出しアレンジし始めた。



青い薔薇・・・・

花言葉は神の祝福・・・・


No.171 16/03/07 09:05
名無し 


『ねぇねぇ亜紀ちゃん♪
いくつ?彼氏とかいんの?』


『あのぅ....私仕事中なんで、
すいません』

『いいじゃん!
俺、客だよ?はははは.......』

亜紀はチラリと健人を見た。
真剣に花と向き合っていた。


(こんなチャラい男から贈られる花たちが可哀想.....せめて、健人さんの優しさが受け取る人に伝わりますように,.....)

そう心の中で願った。




『よし!正人、こんなもんで良いか?』


『あ?青い薔薇?なんじゃそりゃ(笑)』

『売れないんだよ、高くて(笑)
だから買ってくれ(笑)』


クスッ♪

亜紀は健人と正人のやり取りに笑ってしまった。


『しゃあねぇな..,...ま!適当にって言ったのも事実だ』

『毎度ありがとうございます』

『おお!そだ、花言葉はなんだ?』


『神の祝福だよ!』

『おお~、それいいね!気に入った。そんじゃ行くかの.......亜紀ちゃん、またね!』

『おいおい俺には?』

『また来る』

『ありがとうございました』

『正人!また来いよ』




『健人さん、正人さんと仲がいいんですね♪』

『そうだな。腐れ縁だな♪
どういう訳か気が合うんだよなぁ.,.....亜紀ちゃん不思議に見えた?』

『はい!かなり.......』


『あははははは♪』

健人は大きな体を揺らし大きな声で笑った。


つられて亜紀も笑った。


(可愛いなぁ.....健人さん♪)

花屋とホストクラブ.......

どちらも一見華やかな世界に見えるが、水面下では過酷な一面がある。そういう意味では同じかも知れない...... そぅ亜紀は思った。
















No.172 16/03/07 09:34
名無し 

~ここはホストクラブ~
正人・・・瑠宇久の職場だ。

キラキラと耀くネオン街.....
各店の入り口にはホスト達の顔写真が飾ってある。

街を往き来する女の子達の目を引く。


正人の店は従業員20人程の小さなクラブだ。

ここのオーナーの好みで全員20代のイケメン揃い。

その中で瑠宇久はNo.4.......
微妙な立ち位置だった。



ホストクラブ・・・・
女性に夢を売る別世界・・・・

棚に並んだ高級なボトルの数々....女の子達はここに来てお気に入りのホストを喜ばす為に羽目を外し、高級シャンパンやコニャックをオーダーする。


これもれっきとした仕事,......
正人はこの仕事に誇りを持っていた。



正人が居るこの店のNo.1は真也。


この日も、お店に来ていた女の子達の半数は真也目当て。
いつもだいたいこんな感じだ。


瑠宇久も負けじと今日が誕生日の女の子と同伴出勤した。





No.173 16/03/08 08:48
名無し 

真也は瑠宇久の隣のテーブルに着いていた。


『毎日僕に逢いに来てくれてありがとう!嬉しいよ♪』

真也は女の子の肩を抱き寄せた。

『だぁってぇ、真也君以外の男に興味無いんだもーん』

『僕、ホストだよ?(笑)』

『いいの、いいの。今だけは私だけの・も・の。フフッ♪』

女の子は真也に抱き付いた。



『真也さん』

『ん?』

『××様、いらっしゃいませ!
真也さん失礼します。指名入りました』

『あ!そう.....
ごめんね、指名入ったから行くね.......』

『えええええ~、真也くぅ~ん』


女の子を置き去りにし素っ気なく去る。これもまた、独り占めしたくなる、ライバル心を煽る作戦だ。



真也を呼びに来た下っ端のホストが代わりに女の子の相手をした。


下っ端にすればこれはチャンス!
接客内容によってこっちになびいてくれれば儲けモンだ!



ホストは女の子のハートを一生懸命くすぐった。





No.174 16/03/08 11:16
名無し 


そんなやり取りを隣で聞いてた瑠宇久。


今、店内に瑠宇久目当てはこの子だけ。


とりあえず健人の店で買った花束を渡し誕生日を祝った。



瑠宇久のサブに入っていたホストが

『誕生日おめでとうございます♪』と音頭をとった。


『××ちゃん、おめでとう♪』

『ありがとう♪瑠宇久ぅ~』


瑠宇久はグラスを両手で持ち、相手のグラスの下半分の位置に合わせ音を鳴らした。


ホストの基本中の基本。
どんなに仲良くなろうと基本は真面目に守る.......それが瑠宇久だった。


その性格が時には邪魔になり、No.4止まりなのかもしれない。


No.175 16/03/09 11:19
名無し 


亜紀のバイト生活は2ヶ月目に突入した。

軽い気持ちで始めたバイトだったが、仕事探しはしていなかった。

健人に会える毎日が幸せだった亜紀。


接客中の健人を目で追ってしまう。

狭い店内で健人を探してしまう。


大きな体の健人はすぐに見つかるが、それでも存在を目で確かめていたかった。



亜紀は配達も任される程になった。
今日は業務提携している美容院の鉢の入れ換え。

カポックにガシュマロの鉢。
車から下ろすのにも一苦労。

『お疲れッッ♪どう?大丈夫だった?』

帰宅した亜紀に聞く健人。


『はい....なんとか(笑)明日の筋肉痛が心配です(笑)』


『ははッ♪若いから大丈夫!
あ、そうだ、手.,.....出して』

『え?なんですか?』


突然、亜紀の手にハンドクリームを塗る健人。


『え?え?』


『今は荒れるコト無いけど。今のうちに皮膚を強くしておくと、冬、楽だから......俺もこれ、塗ってるんだよねぇ』


そう言って健人はマッサージも兼ねて念入りに塗り始めた。

『段々と水も冷たくなるから。
まぁ、頑張って』

『.....はい,..,...』



二人の目線はお互いの手と手。
くすぐったいのと、恥ずかしさと、気持ち良さと.....



亜紀は(このまま時間が止まらないかなぁ)


と、同時に、今の状況に耐えられなくなり

『あの!もぅ、これで,....,』

『あ!そ・そうだね。ハハッ♪
じゃあこれでおしまい!また明日頼みます』


『はい。お疲れ様でした』


亜紀の手は血色の良いピンク色になっていた。

帰り道、何度も何度も薄紅色の空に手をかざし、さっきまでの温もりを名残惜しむように眺めた。


その日を境に、仕事終わりには健人が亜紀の手にクリームを塗るのが日課になった。


(手を触っていたい..,..
クリームなんて口実さ!)


そんな健人の気持ちを知ってか知らずか、亜紀は恥ずかしがってよく断った。








No.176 16/03/10 11:32
名無し 

仕事もほぼ覚えた亜紀は、手が空いてる時には健人と雑談もするようになった。

お互いに父親がいない事や独りっ子あるあるで盛り上がったり.....


ある日の事。


『そういえば健人さんのお母様の調子は如何ですか?』

『それなんだが、明日手術なんだ。付き添いたいから明日は臨時休業するね』

『わかりました。無事終わると良いですね』

『うん!ありがとう』



............『あの......健人さん』

『うん?何?』


『私一人で店、開けます。少しは自信ついたし、売り上げも、少しでもあれば入院費用の足しにもなるし.......どうですか?』


『そお?いいの?じゃ、お願いしよっかな♪』

『はい!頑張ります♪』


『俺さ、亜紀ちゃんが居てくれるだけで心強いよ.....一緒にいて楽しいし、一生懸命で健気で、俺...............
はッ!何言ってんだ!と・ともかく、明日はお願いします』

『はい♪』


(俺.....の続きが聞きたかったなぁ♪.......健人さん、少しでもあなたの助けになりたいです)


不安はあったが、健人を思う気持ちの方が強かった。





翌日。
店のシャッターを開けると、既に花が各位置に置かれてあり、直ぐに営業出来る状態になっていた。

(あれ?健人さん.....仕入れ、早めに行ってもう終わらせたの?)


健人の優しい気遣いに感動した亜紀。



時計をみると開店時間だった。

よし!店を開けよう!


健人さんのお母さん、手術頑張って下さい。
私はここで頑張ります!


そう呟いた。




No.177 16/03/11 09:04
名無し 

朝から1人頑張っていた亜紀。

時計を見ると夕方になろうとしていた。


(手術.....無事終わったのかなぁ)

ふと、気が抜けた時だった。


『ちわー!亜紀ちゃん居る?』


『は、はーい!
いらっしゃいませ~』

『よう!元気かぁ?』

『あ!正人さん。健人さんは今........』


『知ってるよ。だから来たんだよ。んで、あいつは?』

『いえ、まだ......』


『ふぅん、そっかぁ.....』


正人は店内を落ち着かない様子でうろうろしていた。

亜紀は
(幼馴染みという事は健人さんのお母様を知っているという事よね......健人に聞けなかった事......正人なら知っているかも....,.)



『あの.....』

『ん?何?』


『健人さんのお母様は何処が悪いんですか?』

『そっかぁ、亜紀ちゃん知らないんだ。癌だよ.....もう何度目かなぁ......再発を繰り返しててさ.......』


『えッ?』

いつも明るく振る舞っている健人からは想像出来なかった。

『あいつんち、とーちゃんいないじゃん?かーちゃんが花屋を切り盛りして健人を育てたんだよ。ここの花屋はあいつら親子にとって大切な場所なんだよね。無理がたたったのかなぁ......』


『それじゃ、お父様もご病気で?』

『いや、違う。ま、そのうち教えるよ。じゃあ、俺、行くわ』

『あ、はい。健人さんには正人さんが来たこと伝えておきます』


『りょーかい♪んじゃ.......』


ちょっとショックだった。

そんな大切な場所で健人にドキドキしてた自分が恥ずかしくなった。


亜紀は溜め息一つついた。


No.178 16/03/11 09:29
名無し 


『ただいま~、亜紀ちゃん?』


『あ!健人さん。お帰りなさい。たった今、正人さんが........』


『そぅ......あいつ、心配して来てくれたんだ.......』

とても疲れている様子の健人。

亜紀もそれ以上話かけずに下を向いた。

今日1人頑張った事、大切な場所でドキドキしてた事、いろんな感情が入り交じり、亜紀は何も話せなかった。


『亜紀ちゃんも今日はごめんね。大変だっただろ?1人心細かったね?ありがとうね。大丈夫だったかい?』



(こんな時でも私の心配まで......
健人さん..........)


張りつめていた緊張が切れた


健人に抱き付いた。



『え?え?』



はッッ!!!

『ごごご..ごめんなさい......』


恥ずかしくなり下を向いた。



『亜紀ちゃん......ごめん』


そう言って健人は亜紀の顔を両手で挟みキスをした。



健人もまた同じ
張りつめていた緊張が切れた瞬間だった。






No.179 16/03/12 09:01
名無し 





『..........ごめん...ね....』


『......ぃぇ............』

健人もまた、同じ想いだったのか

嬉しくて涙が出そうになった。



『亜紀ちゃんの顔を見たらホッとして........寄りかかりたくなった........ごめんな.....』

亜紀は頭を左右に振った。



沈黙を破る様に

『そだ!手術巧くいったよ』


『そうなの?良かったぁ!
良かったですね♪』

『うん、ありがとう。暇な時間帯は病院に行くから、また店の事宜しくね』

『はい!大丈夫です。いっぱいいっぱい行ってあげて下さい』



最初は声が好きだった。

それがきっかけでバイトを始めた。


今は
全部好き......

大好きです
健人さん......







No.180 16/03/13 07:21
名無し 



『・・・き?
・・・・亜紀?』


『・・・・え?
何?お母さん』

『何ってこっちが聞きたいわよ!どーしたの?ぼーっとして』


『え?あ?....あの、ね...,
今日は1人で店番したから疲れてるのかも......』


『ひとり?』

『そう。お母様の手術の日だったから』

『そぅ.....大変ねぇ....』


亜紀は健人とのキスを思い出していた。


『ねぇ、お母さんも病気になったら、手術には付き添ってね。寂しいからね』


『ちょっとぉ!縁起でもない事、言わないでよ!冗談でも止めてよね』


『あはははは♪ごっめーん』


(まったく!)

ビールでほろ酔いの母。


そぅか.....そぅよね.....
私も母1人子1人。


お母さんのいない生活なんて想像も出来ない。


健人さんも同じなんだね。


早く明日にならないかな♪

急に愛おしくなった。



No.181 16/03/13 09:14
名無し 

翌日。

『おはようございます』

『おはよう!今日も頑張ろうね』

『はい!』


亜紀は健人の口元を見た瞬間、昨日のキスを思い出してしまった。

急に頬が赤くなるのを感じた。

それは健人も同じで、二人ぎこちない朝のスタートとなった。


そして、いつもの様に仕事を終え亜紀が帰宅しようとエプロンを外した時だった。

『亜紀ちゃん、話があるんだけど』


『はい?なんでしょう?』



『.....僕と、付き合って下さい』


『.......え?.....』


『あ!急にごごごめん。忘れて.....お疲れ様でした』

そう言って後ろを向き後片付けを始める健人。


(そんなぁ~........
私、嬉しいのに.......)


『健人さん、私と付き合って下さい。お願いします』
亜紀は手を差し出した。



びっくりした形相で振り返る健人。

『いいの?』

『はい♪私、健人さんじゃなきゃ駄目なんです』


『よかったぁ~』

ヘナヘナと座り込む。


『亜紀ちゃんに振られたら恋心もバイトも失うとこだったよ』


『やだぁ~健人さんったら。
私バイトを決めた理由は健人さんの優しい声だったんですよ♪』


『そうなの?』

『そういう健人さんは私でいいんですか?』


『何言ってんの。即採用したでしょ?それが答え』


座り込んだ姿勢のままで亜紀を見上げニコリと笑った健人。


『可愛いなぁって思ってたんだ。亜紀ちゃんが働きたいって言わなきゃ僕の方から聞こうって思ったくらい(笑)』


『ん?』


『初めての客だし、大きな鞄持ってリクルートスーツ着て変な時間にうろうろしてたし(笑)』


『あー、成る程!よく見てますね(笑)さすが商人!』

『あははは!止めてくれ、あきんどッて』


よく笑う健人さん、大好き♪


(このまま結婚でも・・・・)
母親が言ってた事を思い出し、独り顔を真っ赤にした。


こうして二人は付き合う事にした。










No.182 16/03/14 08:58
名無し 

付き合う事を決めた翌日。

出勤前の正人が店に来た。

『よう!健人。おふくろさん、どうだった?』


正人は電話でも聞ける事を直接健人から聞きたくてやって来た。


『よう!正人。この前は留守で悪かったな。大丈夫だよ!心配かけたな。ありがとうな』


『そか!なら良かった。おー、亜紀ちゃんおはよう♪』

ホストの正人は夕方でも(おはよう)が普通だ。

亜紀も『おはようございます』
そう返した。

『明日くらいにでも集中治療室から出れると思うから。今日も店閉めてから病院行くし、正人が心配してたって言っとくわ』

『あったりめーだろ!俺も健人のかーちゃんには世話になってっからよー』

『ハハッ!そうだな....,』


『そんじゃ、俺、仕事行くわ。亜紀ちゃんまたの♪』



『あ!正人.....』


『あ?』


『あのさ、こんな時にアレだけど、俺達付き合う事にしたから』


健人は亜紀を傍に寄せた。

照れてる亜紀は軽く頭を下げた。

『はぁ?まじ?』

『マジ(笑)』




『ふ~ん.......亜紀ちゃん。
こいつは止めとけ。マザコンだ!
ほんじゃ.....』

『えぇ~、本当ですか?(笑)』

『マジもマジ!だから止めとけ(笑)』

逃げる様に入り口に向かう正人。
その後ろ姿に向かって今度は健人が

『あほか!』
と、吐き捨てた。

『あははははは♪』
亜紀は大笑いした。


『違うからね。ジョークだからね』


心配そうに亜紀に言った。









No.183 16/03/14 09:21
名無し 


正人は店に着いた。

『瑠宇久さん、おはようございます 』


『お~、おはよう。今日も宜しくな』


後輩のホスト達が店内の掃除をしている。

No.4の瑠宇久は、灰皿、グラス、トイレのチェック担当だった。

一番下っ端はトイレ掃除から入る決まりだ。




今日のこの日も、瑠宇久は同伴出勤出来ずにいた。


時刻は17時を回っている。

OL達は仕事は終わってるはず。


瑠宇久は掃除された店内の椅子に座り、片っ端しに登録されている女の子達に連絡した。


『よぉ!××ちゃん!久しぶり♪今日この後どぅ?久しぶりに来ない?俺、そろそろ会いたいんだけどさー、・・・・ダメ?・・・・あぁ、そうなんだ、残念!・・・・あぁ、分かった。てか、また来てくれよな♪
ん!バイバイ!』



玉水!!!


ああああああああああ..........,.















No.184 16/03/15 10:24
名無し 


同じ職場という事は毎日がデートみたいなものだった。

朝から念入りに化粧をする亜紀を母はよくからかった。


『彼氏が出来るとこうも違うのかねぇ~(笑)』


『ち..違うわよ!接客業だから失礼の無いようにしてるだけ!んもぅ、あっち行ってよ』


『はいはい♪......そうだ!いつかは会わせてよね♪どんな人か気になるし』


『分かった分かった!』

最後に口紅をさした。



『じゃ、行ってきま~す♪』


『行ってらっしゃ~い。
恋に仕事に頑張ってねぇ~(笑)』


『ちょっとぉ....!仕事に行けないじゃん』


『あ~(笑)ごめんごめん..,もう言わない』


『.....ヤバい!遅刻遅刻』



亜紀は健人に早く逢いたくて駆け足で駅に向かった。



No.185 16/03/15 17:52
名無し 


季節は夏も終わりに差し掛かろうとしている。


初めてこの店に立ち寄った日には向日葵が目に飛び込んだ。

今全盛期を迎えている花はキンモクセイ、秋桜、クレマチス、ブーゲンビリア・・・・亜紀の好きなトルコキキョウ.....色とりどりの花が咲き誇っている。


季節ごとに咲く花を覚えるのは大変だった。


健人は
『徐々に覚えていけばいいよ
。分からない事は俺に聞いて』

客がいないことを確認すると、亜紀の頬に素早くキスをした。


恥ずかしくて下を向いた亜紀だったが、

(いっぱいキスをしたいなぁ~
いっぱい手を繋ぎたいなぁ~
健人さーん♪)

亜紀からもキスをしようと顔を上げた瞬間.......



『いらっしゃいませ~』
健人は客に挨拶をしていた。


慌てて現実に意識を戻す亜紀だった。





客足が落ち着いた午後。

『そだ!亜紀ちゃん。今日河川敷で花火だね。仕事が終わったら一緒に行かないかい?』

No.186 16/03/16 08:59
名無し 


『え!?....行きたいです。健人さんと一緒に行きたい』

亜紀の心はワクワクした。


『そういえば、デートらしいデートしてなかったね。ごめんね』


『大丈夫です。毎日ここであえたから寂しくなかったですよ♪それに、健人さんお店に病院に忙しそうだったし....朝だって市場行かなきゃ.....』


『明日は日曜日だから大丈夫さ。それに、母ももう自分でなんでも出来るから、今日くらいは...』


『え?え?...じゃぁ.....』


『うん!亜紀ちゃん、デートしよう♪』



『嬉しい~♪ありがとう、健人さん』


『今日は早めに店を閉めようか』

『はい♪』







No.187 16/03/16 09:27
名無し 


いつもより一時間早く閉店し、河川敷に向かった。


8月最後の週末。
学生達も長い夏休みが終わる。
まだ遊び足りないのか、羽目を外している学生の数は凄かった。


(浴衣くらい着たかったなぁ♪)


花火ともう1つの楽しみといえば出店だ。
チョコバナナにリンゴ飴、かき氷にヨーヨー......


(うわぁ♪どれも美味しそう♪)

そんな表情の亜紀を見て健人は

『そういえばお腹空いたね。焼きそばでも食べる?』

『え?』(食べたい!でも、前歯に青海苔でも付いていたら間抜けな顔になるしなぁ~....)

『い・いえ....暑いし、かき氷にしよっかなぁ~♪ァハハ...』

『そぉ?顔にお腹空いたって書いてあるよ』


『え?嘘?』慌てて顔を拭く亜紀。


『あははははは♪冗談だよ!ごめんごめん(笑)』

『やだぁ~、もぅ!!』


『しかし、凄い人の数だね......亜紀ちゃん、手を繋ごう』

『え?』

『しっかり俺の手を握って!』

『はい♪』


手を繋いで初めて歩く。

キスは何度もしているのに.....

場所が変わっただけで
ドキドキが止まらない。



向こうの方でバンバンと音が鳴った。


『行こう!』

健人は亜紀の手を引いた。


まるで未来に向かって走り出すように。















No.188 16/03/17 09:07
名無し 


適当な場所を見つけて二人で座った。

花火はもう始まっていた。





『あ!見た?今の・・・
ハート型だったね~♪』

『見た見た!可愛い~♪
あ!次のは星の形だったよ。
最近の花火って凄ーい!!』


あちらこちらで歓声が上がっている。



『あ!私、これ好き!
柳みたいなこれ♪』

『ああ、これね。そう、そのまんま、柳って名前だよ♪』

『そうなの?』

『似たやつで冠菊っていうのもあ有るけどね。俺はね、通称(ハチ)って言うのが好きなんだよね~♪シュルシュルッッて回転しながらアチコチ飛び回るやつ(笑)』


『へぇ~、健人さん何でも知っているのね♪花に花火に.......凄ーい!!』


『.....昔さ、いつか好きな子と来た時の為に、花火について調べた事あるんだぁ......。ま~、今日の今日まで女の子と来た事無いんだけど(笑)......今日、やっと役にたった♪ハハッ...,.』


『そうだったんですか....お役にたてて良かったです(笑)』



『亜紀ちゃん....』

『はい♪』


健人は花火を見上げたまま

『ほんとは花火なんてどーでもいいんだよ.....本当は.....,亜紀ちゃんともっと一緒に居たかった、亜紀ちゃんの事もっと知りたかった。花火大会なんて只の口実なんだ,..............



好きだ.....亜紀ちゃん』



『私も.........好き....』




花火もそろそろ終わりに近づいた。


色とりどりの打ち上げ花火......


スターマインをみんなが見上げている間、二人はキスをし将来を誓いあった。





No.189 16/03/17 10:05
名無し 

花火大会から1週間が過ぎた。

客足も落ち着いた午後の事。

昼休みを利用して病院に行ってた健人が

『明日、母さんの退院が決まったんだ』

『そうなんですか?
おめでとうございます♪
良かったですね。
無事に退院出来て』

『うん♪ありがとう。それでね、退院後1度店に寄るから会ってやって。母さんと.....』


『えええ~、突然過ぎます。
挨拶、何も考えてません』


『大丈夫だよ!暫く2階で療養するし、会う機会も少ないだろうし.....明日がチャンスなんだよ』

健人の自宅は花屋の2階にある。



『気に入られなかったらどうしよぅ....』


『大丈夫!大丈夫!今から緊張してどうするの(笑)』


『アハッ!ごめんなさい、慣れてなくて(笑)』

『俺も(笑)』


どんなお母様なんだろう......
お父様は居ないって言ってたし。

肝っ玉母さん?!
いやいや、健人さんのお母様だもん、優しい人だよね、きっと...,.






No.190 16/03/17 10:32
名無し 


翌日の午後。

健人は母を連れて帰って来た。



『ただいま!亜紀ちゃんいる?』

『あ!お帰りなさい』


『母さん、この方が亜紀さんだよ。紹介するね!今お付き合いをさせてもらっている亜紀さんだ』


『は・初めまして。亜紀です。宜しくお願いします』


『まぁまぁ、健人の母です。いつも健人から話を聞いております。この度はお世話になりまして..,.』


『いえ、私の方こそ、分からない事だらけで、いつも迷惑掛けて申し訳ありません』


健人の母は、久しぶりに見る店内をいとおしい眼差しで眺める。


『まぁ~、綺麗に掃除が行き届いてて嬉しいわぁ~♪ありがとうね、亜紀さん♪健人1人じゃ不安だったのよ』

『いえ、こんな事しか出来なくてすいません』


楽しそうに話す二人のやり取りを温かく見守る健人。

(この二人なら上手くやっていけそうだな)そう感じていた。




『そういえば.....名字はなんですの?どちら出身の方かしら?』


『四角と申します。漢字の四にかどの角です。私が産まれたのはここですけど........出身は.......』
(....,...そういえば知らない....)


『母さん、珍しい名前だろ?お客さんにも直ぐに覚えて貰えるし、良いことずくめなんだ~』


『やだ!恥ずかしい.....』




『!?・・・・し・しかく?・・・もしかして・・・・お父さんは亡くなっていらっしゃる?』



『え?は・・はい。
でも、どうしてそれを?』



『やっぱり..,.....』
驚きを隠せない表情でそのままよろけた。



『健人.......母さんちょっと疲れたから部屋で休むわ......連れてって頂戴』



そう言って花屋の2階に上がって行った。




No.191 16/03/19 09:26
名無し 


(急にどうしたんだろう.....
亡くなった父と何かあったのかな?)


尋常ではない健人の母の様子に、亜紀は不安になった。



健人の母は部屋に入るや否や、健人の腕を掴み

『あの子だけは止めて頂戴。
お願いだから、ね....』

『ちょっ・ちょっとどうしたんだよ!何があったの?四角という名前に妙に反応してたけど』


『お願いよ....あの子だけは..,.
あの子だけは.....どうしても....,』
懇願する母。



『そういえば、正人も変な事言ってたな.......四角がどうのこうのって........』



『正人君が?.....そぅ.......。
ともかく、頼んだからね。
母さん疲れたから少し休むわ。
......お願いね..,...あの子だけは止めてね』



『う・うん......お休み。ゆっくり休んで!』



健人は母親が眠りについたのを見届けると下に降りた。



『あ!健人さん。お母様大丈夫ですか?』


『..........ん?あぁ、大丈夫さ。疲れただけだと思うよ。それより、気を悪くさせてごめんね』

亜紀は首を左右に振り
『私なら大丈夫ですから』


『ありがとう。なんだか俺も疲れちゃった(笑)このまま店、閉めようか』


『え?あ、はい』

『お疲れさん』
そう言って、健人は後片付けを始めた。

その後ろ姿に向かって

『お疲れ様でした』
そう言えるのが精一杯だった。



健人は
(何故亜紀ちゃんはダメなんだ?)

亜紀が帰ったのも分からない程、考え込んでいた。



No.192 16/03/20 08:50
名無し 


その頃の瑠宇久は・・・・。


営業メールやキャッチに明け暮れていた。
なかなか同伴や指名日のノルマが達成出来ないでいた。



そんな中、No.5の修羅がぐんぐん伸びていた。
歯の浮くような嘘を並べた営業トークは抜群に上手い。
ホストは惚れさせてなんぼ....,


最近、この修羅にお熱の杏子はほぼ毎日来ていた。


杏子はキャバ嬢。
最初は修羅がキャバクラに自腹で通い、逆に杏子をホスト通いに方向転換させるという、惚れさせた修羅の勝ちという立ち位置関係だ。



『ねぇ~、修羅ぁ~♪
いつホスト辞めて私と一緒になってくれるのぉ~』


左手は杏子の腰に
右手は太ももに
そして、唇は杏子の耳元


『貯金あともうちょっとなんだよ...,.お前と一緒になるには安いマンションじゃ格好つかないしさ、お前に贅沢させてやりてぇんだよ♪だからよ.....なぁ、杏子.......今夜も......ボトルいいかなぁ?今月のノルマ達成、厳しくてさ.....』


『えぇ~?...んもぅ、しょうがないなぁ♪じゃぁ.....修羅とぉ、私の為に.......いれちゃおッッかなぁ♪』


『おっ♪やりぃ!じゃピンドンもう1本お願い♪ありがとう、杏子』

杏子のおでこにキスをする。


『あ~ん、修羅~♪愛してるぅぅぅぅ(*''ε`*)』


サブについているホストにピンドンを持ってこさせた。





No.193 16/03/20 09:48
名無し 

(バカな杏子(笑)誰がお前と一緒になるかよッッ(笑)お前から絞り取れるまで取って、取れなくなったらハイッ!さよならだ(笑))


修羅には杏子の他に二人、同じ結婚という匂いを漂わせ貢がせているキャバ嬢がいる。

(お前らも同じ穴のムジナだろ?
ホストとキャバ嬢なんて騙し合いの世界なんだよ!)



修羅はこの世界で生きるのは5年と決めていた。
貯めたお金で地元に戻り、ショットバーを開く夢があった。


(あと2年......時間はねぇ....,.
稼がなくては,.....,.)



だが、杏子だけで売掛金は100万になっている。
回収出来ない場合はホストが立替するのがこの世界のルールだ。


(そろそろこいつも終わりかな)

杏子の肩を抱き頭の中でそんな事を考えている修羅だった。




少しだけ修羅のサブについていた瑠宇久はそんなやり取りを見てて



(あそこまではやりたくねぇな....そりゃ夢を売る世界だけどよ,....)

そう思いながらも仕事と割り切って女の子を甘い世界に気引き込ませるテクニックに羨ましい一面もあった。

No.194 16/03/20 16:22
名無し 



(もうすぐ今年最大のイベント、開店5周年祭がやってくる。この日は何としてもノルマを達成しなければ。店一丸となって盛り上げなければ)

瑠宇久は気合いを入れ、街ゆく女の子達に声を掛けていた時だった。


『あれ?亜紀ちゃん?』



『.......あ!正人さん』

『どうした?まだ仕事の時間ぢゃねッ?』

『そうなんですが.......お母様が退院して来られて.....』


『会ったのか?健人の母親に』


『はい....そしたら名前が、どうのって.....それで.......』


歯切れの悪い亜紀を察知した。

『もしかして、四角で、か?』

『そうだ、正人さんも何か言ってましたよね?うちと何かあったんですか?教えて下さい。何があったんですか?』


(健人は知らねぇんだな........
どーすっかなぁ.......)



『お願いします。嫌です、こんな状態....お店にも慣れたし、健人さんとも.........』


今にも泣き出しそうな亜紀を見て


『そんな顔すんなよ.......
いじめたくなるだろ?』


『.............』
どこまでが冗談で
どこまでが真剣なのか


『おいで!道の真ん中じゃあれだ。サ店でも入ろう』


正人は亜紀の手を取り歩き出した。



(健人も知らない秘密
言っても良いものなのか......)


悩んでいた。












No.195 16/03/21 21:37
名無し 

近くの喫茶店に入った。


『いらっしゃいませ~
あ♪瑠宇久だあ~♪
会いに来てくれたの~?』

『最近店に来ないからさ、寂しくって(笑)』


後ろに居た亜紀と目が合った。


『やだ!女の子連れ?最低!!』

亜紀は瑠宇久の常連らしい店の女の子にジロジロと見られた。

(私、関係無いんだけどな......)
嫌な感じがした。


『んもぅ!!後で行くから迎えに来てよね!』

『わかったから。後で連絡くれ。亜紀ちゃん行こッ!』


店の一番奥に座った。

『あ!俺、コーラね。亜紀ちゃんは何にする?』


『じゃぁ、同じのを下さい』

瑠宇久は女の子を呼び注文する。

と同時に、熱いおしぼりを広げ亜紀に渡した。


『さすがね♪いつでも抜かりは無いのね(笑)』


『あぁ?あー、おしぼりか?
もう板に着いちゃってよ(笑)
仕方ねぇんだわ(笑)』




『それより、教えて下さい。
何故四角と言う名前に反応するのか.......』

何を言われるのかドキドキしながら待った。





まだ迷いはあったが真剣な亜紀を放っておけなかった正人は


『あのさ、健人の父親が亡くなったのは交通事故なんだよ。飲酒運転でさ、その・・・・』


プルプルッ♪と亜紀の電話が鳴った。


『健人さんからだわ。ちょっとごめんなさい。もしもし?.......』

亜紀は一旦店を出た。







No.196 16/03/22 08:14
名無し 


『もしもし?亜紀ちゃん?
今どこ?』


『まだ近くです。正人さんと
喫茶店にいるの』


『正人と?』

『うん。途中でばったり会って』

『そぅなんだ......それより、ごめんな。俺も疲れてて無意識に素っ気なくしちゃって.....気になって電話したんだけど。それとさ、母の事も.......この後も聞いてみるからさ.......』


『うん、ありがとう。私も母に聞いてみる』


『声を聞いて安心した。
気をつけて帰るんだよ.....』

『はい♪また明日ね,..,.』

『うん。また明日......じゃ....』

『お休みなさい。健人さん』

『おやすみ』



亜紀はサ店に戻った。

『ごめんなさい、正人さん』

『亜紀ちゃん、ごめん。
仕事戻んなきゃ。指名入ったんだ。ごめん、また後で,...,....』


そう言って伝票を取り急いで帰って行った。


目の前にはコーラが2つ..,.,....

氷が溶けて、グラスには水滴が落ちていた。
亜紀はその1つにストローをさし、
一口飲んで家路に着いた。





No.197 16/03/22 10:40
名無し 

翌朝、悶々とした状態で出勤した亜紀。


昨日は結局正人からも、飲み会で遅くなった母からも聞けなかった為、あまりよく眠れなかった。


(健人さんから聞かなくちゃ.....)

亜紀は1本早い電車に乗った。



『おはようございます。
健人さん、あの..,.,......,』


『...あ!亜紀ちゃん、おはよう。...,あ・あの・さ、実は..,..
母が今日から出勤する事になったんだ......そ・それで・ね・・あの・・その・・』


目は焦点が定まっていない......
明らかに挙動不審だ....,...



『それって・・・
つまり・・・・』


『ごめん・・・・
だから、もう・・・・
来なくていいよ・・・・』


『なんで?急にどうしたんですか?昨日の電話じゃそんな事...
......』



『ごめん』
下を向いたままの健人。


『ごめんじゃ分かりません。
ちゃんと言ってよ!二人で店もお母様の事も頑張ろうって、花火大会の日に........分かる様に説明して・・・・お願いよ・・・・
健人さん・・・・』


『本当に・・・ご、めん』




『それって・・・・お付き合いも・・・・止めるって事?』


『・・・・それは・・・・』


身体中が震えた。
立っているのがやっとだった。


健人の前で泣きたくなかった。




『分かりました。今まで、ありがとうございました』

亜紀は頭を下げ帰った。


納得いかない。
でも仕方ない。
呆気なく終わった恋。
悔しくて涙でグチャグチャのまま、
今来た道を歩いた。



その一部始終を陰で見ていた健人の母。

その母に向かって健人は

『母さん、これでいい?』


そう言った。





No.198 16/03/23 07:56
名無し 


『ええ、決断してくれてありがとうね。これで父さんも母さんも安心だわ』


安堵する母に健人は複雑な心境だった。




亜紀は健人と一緒に行った河川敷にいた。

初めてデートした場所。
将来を誓いあったのに.......

亜紀は恥ずかしさも忘れ
声を上げ泣いた。





どれくらいの時間が経ったのだろう。
亜紀の携帯に着信。

(?!健人さん....?)

そう思う自分がまだいた。


見ると正人からだった。








No.199 16/03/23 09:46
名無し 

『もしもーし!亜紀ちゃん?
昨日はごめんよぉ~。今日の仕事終わりに話の続きでもどう?』

『・・・・』


『.......あれ?...もしもーし!』

『・・・ま・さと・・さん・』



『あれ?.......もしかして......
泣いてんの?大丈夫?今仕事中だろ?健人は?』



『ヒックッッ....終わっちゃいました。何もかも.....仕事も....ヒックッッ.....恋も.......正人さん、苦しいよぉ.....ま・さと・・さ~ん』


『今どこ?直ぐ行く』



No.200 16/03/24 09:11
名無し 


個室がある24時間営業の居酒屋で待ち合わせをした。


亜紀の方が先に着いた。



『ごめん、遅くなった』

正人が来た。

『うぅん、大丈夫です。
それよりごめんなさい。
忙しいのに.,.....』


『大丈夫だよ。気にしないで!
お腹空かない?何か食べよう』


目が真っ赤の亜紀を直視出来なくて、正人はメニューを広げた。


『じゃぁ、朝定にすっか.....
すいません!朝定2つ』


ずっと下を向いている亜紀に掛ける言葉も見つからない。

自分が言える事.....
それは何があったのか
真実を話す事。


余計なお節介なんだろうが、亜紀を見ているといたたまれなくなった。



食事が運ばれてきた。

『食べよう!元気出ないぞ!』


正人の優しさに
また泣きそうになる,......



涙をぐっとこらえ......



『昨日の続きお願いします』

No.201 16/03/24 10:23
名無し 


正人は手に取った箸を置き


『........そうだったな......
亜紀ちゃんの為にも言うか。
多分俺の推測なんだが.......』



鼓動が激しくなる。


うつむいたままの亜紀は
耳に集中する。



『健人のとーちゃん車で引いたの、亜紀ちゃんのお父さんだと思うよ.......』


『えッッ......?』


『亜紀ちゃんの姓、珍しいじゃん?俺ね、小さい頃だったけど、まぁ、だからかもしんねぇけど、俺の横で親が話しててさ.......
覚えてんのは健人のとーちゃんが飲酒運転の車で死んだ事、そして......四角という変わった姓』


『そんな?!
何かの間違いじゃ........』


『四角って名前、そう無いと思うよ.......真実が知りたかったら親に聞いてみるんだね』



亜紀は物心ついた時には既に父親は居なかった。
写真で見た事はあるけれど、何故居ないとか、気にしたことも母に聞く事もなかった。


(やっぱり母に聞かなくちゃ......
浦田という名前に覚えがないかと)





『それで、健人はなんて言ってるんだ?』


『何も......ごめんを繰り返すばかりで......』



(と言う事は、あいつ、聞いたな)


『ふぅん、んで?亜紀ちゃんはどーしたい訳?』


『私は......わ...たし....は.........』



No.202 16/03/25 08:12
名無し 


(私はどうしたいんだろう.....
今、衝撃的な話を聞いてしまった。真実が知りたい。話はそれからだ)



『一度家に帰ってゆっくり考えたいです』


『亜紀ちゃん、これ親しい奴しか知らない俺の番号。なんかあったらここに電話して。仕事中は出られないけど』


正人は瑠宇久の名刺の裏に番号を書き亜紀に渡した。



『ありがとう。心強いです』

『なに、いいって,.....,.
これも何かの縁だよな』


縁.......
そぅ、不思議な縁......



『せっかくだから食べようぜ』

正人は箸を手に取った。







No.203 16/03/25 08:54
名無し 


正人と別れた後、亜紀は自宅に戻り、母の帰宅を待った。



『ただいま~♪はぁ~、今日も疲れたわ。亜紀?夕飯何?』

家の中は静まり返っている。


『あれ?亜紀?居ないの?』


居間に入ると電気も付けずに亜紀が座っていた。


『亜紀?具合悪いの?』


『お母さん........聞きたい事がある』


『なんだ!元気じゃない。びっくりさせないでよね(笑)』

母親は暗くなった部屋の電気を付け、どっこらしょっと定位置に座った。


『お母さん、お父さんって、何で亡くなったの?』

『・・・ど・どうしたの?き・急に・・なんかあったの?』


『今付き合っている花屋の健人さん、浦田って言うの。この名前に覚えはない?』


『うら・・た?!・あ・・亜紀』




『健人さんのお父さんを引き殺したの、私のお父さんなの?ねえ!どうなの?』



『あ.....亜紀......』


『ねえ!どうなの?本当なの?』




四角という姓を変えずに二人生きてきた。

いつかは話さなくては......
そう思っていた。


そのきっかけがこんな形で訪れるとは予想もしていなかった。









No.204 16/03/25 09:09
名無し 

*~おはようございます~*


スレ本文?に共感ポチッ頂きました。

(押し間違いかもですが)


どなたか存じませんが
ありがとうございました(*^^*)


話の内容は大丈夫でしょうか?

ちゃんと伝わっていたらいいな♪


ただ.......
老眼の進行が目まぐるしく早い為(笑)誤字脱字等、ご迷惑をおかけしますが、引き続き私のろくでもない妄想話に付き合って頂けると有難いです(*^^*)

みくるの皆様♪
良い1日を(*^^*)



No.205 16/03/26 12:28
名無し 


『....亜紀、ごめんね........
四角っていう名前、変えとけば良かったね。そしたらこんな思いせずに済んだのにね......ごめん....本当にごめんね....』


申し訳なさそうに話す母の声色から


『・・・本当なんだ
本当の事だったんだ・・・・』



亜紀の目からポタポタと涙が零れ落ちた。



母は溜め息一つつき、奥深く沈めていた記憶をたどり始めた。



『亜紀の父さんは営業マンだったの。母さんと結婚して、すぐに亜紀も生まれて、毎日遅くまで頑張っていたよ。亜紀の寝顔を見ながら頭を撫でるのが日課になっててね......あの日も......父さんの帰りを待っていたの』


No.206 16/03/27 09:21
名無し 



『あの日も、お得意先との接待中に、お父さんが売った機械の故障の電話が入ってね。謝りに向かう途中の事故だった。......当時、日本はバブル絶頂期だったからね。タクシーがなかなか捕まらなかったらしく......一刻でも早くと思って自分で運転しちゃったんだよ......バカな父さん......少しのアルコールなら大丈夫とでも思ったねかねぇ.......傲りが招いた悲劇だったよ。
..........浦田さんが亡くなって、自分が生きてるのが辛かったんだろうね.......大事な亜紀を置いて.....父さんは......』


これ以上聞きたくなかった亜紀は話を遮る様に立ち上がった。

『亜紀!?』

『もういい....』

自分の部屋に向かった。



亜紀もまた、ショックだった。
こんなきっかけで父の事を知るなんて.......


父を恨んだ
母を恨んだ
生まれてきた自分を恨んだ


でも、もう、どうでもいい。
健人さんから別れを告げられた。


終わった。仕事も恋も.....



ベッドに潜り声を圧し殺し泣いた。




No.207 16/03/27 09:44
名無し 

その頃の瑠宇久は・・・・



馴染みの客を相手に上の空だった。


『ねぇ~♪』

『・・・・』


『ねぇ~瑠宇久~♪今日なんか変だよ?いつもの瑠宇久じゃないよぉ~』



『ん?.....そうかぁ?んなことねぇぞ?久しぶりに会えてドキドキしてんだよ。ほらっ!』

女の子の手を握り、その手を自分の胸に押し当てた。

『な?感じるだろ?(笑)』


『あ~ん♪瑠宇久ぅぅぅぅ~
大好きッッ』


『俺もだよッッ♪』

女の子の体を引き寄せ、耳元で(愛してるよ)と囁き、綺麗にセットされた髪を撫でながら......
目線は遠くを見つめる。

今日はこんなやりとりを何度もしていた。



どの女の子の顔も亜紀に見えてくる。

泣いている亜紀。


(言わなきゃ良かった)


あれから亜紀はどうなっているのか気になっていた。












No.208 16/03/28 09:11
名無し 

瑠宇久は後悔していた。



ホストという仕事に集中出来ず

『ちょっとごめん....』


客を残しトイレに駆け込んだ。
プライベート用の電話を見る為である。



もう何度目だろうか......

亜紀から連絡がないか気になって仕方がない。
こっちからかけてみようか考えたが、時間は深夜を回ろうとしている。

躊躇した.....



サブについていたホストがトイレにやって来た。


『瑠宇久さん、彼女帰るって騒いでますけど』


『えッ?!やばッッ』

『今日の瑠宇久さん、やっぱ変ッすよ?大丈夫ッすか?』


瑠宇久は息を吐き

『わりぃ.....調子出ねぇ.....
はぁ~、やっぱ今日はこのまま帰るわ』


『お・お疲れッッす!』


『後は宜しくな』

そう言い残し店を出た。


(俺としたことが.......
後で謝りのメールしなきゃな......)


No.4の瑠宇久.....

微妙な立ち位置。


それでも無意識に亜紀の事を思い出す瑠宇久だった。







No.209 16/03/28 09:24
名無し 


翌日。


健人もまた、いつもとは違う朝を迎えていた。


時間になっても亜紀が来ない。
ひまわりが咲いた様に(おはようございます)と、満面の笑顔で出勤してた亜紀が来ない。


来る訳無いのに..,...

俺が来なくていいと言ったのに...

健人は頭をブルブルッと振り仕入れの花の水切りを始めた。



退院してきた母が、独りじゃ大変だろうと、今日から手伝うと言ってきたが、退院したばかりだから無理しないで、と体を労った。


正直に言うと、まだ母の言う事を受け入れられないでいる。


出来れば亜紀とやり直したい。

どうやって母を説得しようか

仕事の合間に考えた。




No.210 16/03/29 09:03
名無し 


亜紀が起きたのは正午の少し前だった。


泣き疲れて眠ったのだろう。
瞼が腫れぼったく、スッキリと目を開けられない。

顔を洗い鏡に映る自分の顔を見た。


酷い顔.....


こんな顔じゃ今日は出掛けられないな......


居間に行くと朝食に手紙が添えられていた。母からだった。


『亜紀。おはよう。
昨日はごめんね。
元気になるまで
ゆっくり休んでね。
まだ聞きたい事あったら
何でも聞いてね』


今の私には素直な気持ちで読めない手紙。もぅどうでもいいのに...


プルプルッ♪
正人から着信。



『もしもし,....』

『亜紀ちゃん?』

『はい....』

『おはよう!良く眠れた?』


『....ぃぇ....あまり良くは.....』

『そっか,....大丈夫か?』


『昨日はありがとうござ....い....』


亜紀の目から涙が零れ落ち言葉に詰まった。


(駄目だ....
一度にいろんな事が有りすぎた)

心の整理も出来てないのに
正人の優しい問いかけは
今は辛い......


『亜紀ちゃん、ごめんね。俺、』


『正人さんは何も悪くないです。お願いしたのは私の方で......』


『俺も昨日は眠れなかった。泣いている亜紀ちゃんが頭から離れられなくてさ,......』


涙が止まらない亜紀は話せずにいた。




No.211 16/03/29 09:58
名無し 

『俺の口から言った事、後悔してる』


『そんな....そんな風に思わないで下さい。正人さんは悪くないです』


『でしゃばり過ぎた。ごめん』


『.........そんなこと.....』


『本当にごめん。こんな俺でも力になれる事あったらまた連絡して』


『はい』


『じゃ......』

『......ありがとうございます....』



亜紀の携帯は涙で濡れていた。


正人が悪い訳ではない。
聞いたのは私の方だ。


正人を巻き込んでしまった。

申し訳ない気持ちでいっぱいになった。





その日の夜。


健人から電話がかかってきた。


何の用?
また何を言われるの?


6回目のコールで切れた。


だが、再び健人から電話。


出たくない......,
出たくない.......
ぃゃだ........



でも聞きたい.......
健人さんの気持ちを.......



この耳で........












No.212 16/03/30 09:18
名無し 


『.........はい,.....』


『もしもし亜紀ちゃん?』


『,........はい........』


健人さんの声だ。
私の好きなトーンで.......話す彼。
思わず目を閉じた。



『昨日はごめん。俺、
どうかしてた』

『・・・・』

『母さんがあんな風になった事情、聞いた?』


『......うん..,...』


『.......そっかぁ........』



お互い何も言えない。
言える言葉が見つからない。


数分の沈黙の後、意を決した様に


『亜紀ちゃん。俺、母さんを説得するよ。こんな形で亜紀ちゃんを失いたくない。亜紀ちゃんが居ない花屋は花の無い花屋に感じた。失って初めて分かったよ。だから・・・・だから、俺を信じて待っていて欲しい。必ず迎えに行くから、だから・・・・』


『わた・し・・・』

(逢いたいな....側に居たい.....
健人さんの側に........)
今の私の正直な気持ち。
素直になろう。


『待ってる。うん、私も頑張る』


『あ、ありがとう』
彼の笑顔が見えた気がした。
私も自然と笑顔になった。


『俺も頑張るから。』

『はい♪』

『また明日電話するよ』

『うん。待ってる』


『おやすみ』

『おやすみなさい』



健人は決心が鈍る前に母を説得しようと思い、店を締め2階に上がった。

No.213 16/03/30 10:56
名無し 

『母さん、今いい?話があるんだけど』

『なあに?あの娘の事なら聞く耳持たないわよ?』


『母さん、もう終わった事じゃないか。それに、俺と亜紀ちゃんの事と、父さんが亡くなった事は関係ないよ。お願いだから許してくれないかな?』


『嫌ですよ!なんでよりによってあの家の娘なの?
あなたは家の大事な跡取りですからね。父さんが亡くなって、今頼れるのは貴方だけ。
そんな母さんの言う事が聞けないって言うの?
そんなに付き合いたいって言うなら母さんを捨ててからにして頂戴!!』


『母さん!
誰もそんな事言ってないって!
彼女は関係無い!それだけだよ』


『嗚呼~、もう止めて頂戴。
また具合が悪くなりそうだわ。
女の人なんて沢山居るじゃない。なんで あの父親の娘なの?
嗚呼~汚らわしい...,.,..』



『母さん!.......』



No.214 16/03/31 07:34
名無し 

母の苦労をみて育った。

たった一人で俺を育ててくれた母に感謝してもしきれない。

そんな母を捨てて亜紀を選べない。

だが、亜紀も諦めきれないでいた。



(どうすりゃいいんだ.......
時間をかけるしかないのか.....?
それまで亜紀ちゃんは待っていてくれるのか......?)


母は健人に背を向け布団に入ってしまった。

母の四角家に対する拒絶反応をみて、だんだん自信が無くなっていった。


『おやすみ....』


そう言って部屋を出た。




No.215 16/03/31 08:31
名無し 


亜紀は健人からの電話を切った後、居間でテレビを観ている母の所へ行った。

やり直そうと二人で決めた。
父の事をもっと知りたいと思った。



『お母さん。何故、四角という姓を変えなかったの?』


母はテレビを消し、姿勢を正した。


『お母さんはね、お父さんが大好きだった。
お父さんと結婚して、亜紀も産まれて本当に幸せだった。
それが一変したあの日の夜。
.........今でも覚えているよ。
深夜に鳴り響いた電話.......
警察からだった....お父さんが事故を起こしたってね...,....』


昨日の様子からは想像も出来ない程、落ち着いている亜紀を見て、話を続けた。


『寝てる亜紀を抱いて署に行った。お父さん、震えてて....
.....震えてるお父さんを見て、今度はお母さんが亜紀とお父さんの為に頑張らなくちゃと思ったの。刑務所にも毎月亜紀を連れて面会に行ったよ。覚えてないかい?』


『.........ぅん.........』


『まだ小さかったしね。
3年の刑期を終え出所してきた父さんは20歳位老けて見えたよ
。覇気がないというか......生きる気力も無い感じでね......
出所したあの日、亜紀も連れて浦田さん宅に行ってるんだよ。仏壇に参らせて下さい、ってね』


『私も一緒に?』

『そうだよ、亜紀も一緒に浦田さんちに行ってるんだよ.......
でもね、駄目だった。仏壇参りは出来なかった.......』



(人殺し!!!)


健人の母に浴びせられた言葉。
今も脳裏に焼きついて離れない。
亜紀には言えなかった。





No.216 16/04/01 10:10
名無し 

(私達は....人殺し......)


亜紀の母はハッと意識を戻した。

『....浦田さん宅から戻った日の夜だったよ。お父さんは......,
おとう....さんは.......』


母は口を一文字につむった。


『お母さん、無理なら後でもいいよ』


『........大丈夫。今、言わなきゃね。
あの日の夜、目を離さなきゃ良かった。
そしたらお父さんの自殺を止められたと思うとね.,....
悔やんでも悔やみ切れないよ。
四角という姓、珍しいでしょ?
お父さんの姓だよ........
お父さんがこの世に生きていた証を遺したかったんだよ。
出来れば亜紀にも継いで欲しくてね......それで変えなかったんだよ』



『・・・うん・・・』


『結局、亜紀を苦しめる事になったんだけどね......』



父が自らの命を絶った事で
罪を償ったとはいえない。

結局、健人さんも私も
遺された者達が悲しい思いを
しているだけ。



(何故出会ってしまったの?
遺された私達に何をして欲しいの?
ねぇ、お父さん.......?)





No.217 16/04/02 16:48
名無し 

『 お母さんの気持ち、分かったから。もう大丈夫だよ。
健人さんもね、私と一緒に頑張るって言ってた。今は信じて健人さんを待ってみるつもり。だから、お母さんはもう何も心配しないでいいよ』

『,........やっぱり反対されてたんだね。ごめんね。
お母さん、亜紀も居なくなったらもう、生きて行けないよ.
今まで黙ってて悪かったと思うよ。
でも許してね。誰も悪くないんだ。
みんなそれぞれに十分苦しんだ。不運な事故だったんだよ。
それだけだよ......』


健人と出会い、健人を好きになり、そして父の秘密を知った。

過去がどうであれ健人と二人頑張ると決めた。

(健人さん、どうしてるかなぁ…
逢いたいな......)






No.218 16/04/02 17:05
名無し 


翌日。

正人は出勤前に花屋に寄った。


『よぉ、健人。今忙しいか?』

『おぉ~、正人。いいよ』

健人は入り口にcloseの札を掛け奥へ正人を誘った。


コーヒーを2つ入れ、正人はいつも亜紀が座っていた椅子に腰掛けた。


『なぁ、健人。俺さ.......』


『なんだよ、改まって』


『実はさ、俺の口から喋っちまった』


『....,....そうか........別にいいんだよ。
どのみち誰かが亜紀ちゃんに言わなきゃならなかったし。
あんま気にするなって!』

『悪りぃな......どうしても泣いてる亜紀ちゃんをほっとけなくてさ。
健人。頑張れよ!頑張って二人幸せになれよな!』


『.......ぅ......ぅん......』


『なんだよ、歯切れわりぃな。
健人のかーちゃん、なんて言ってんだ?』


『憎しみの言葉しか出てこないよあの家の女なんか...,.とか、母さんを捨てろ.....とか、さ。
彼女の話をすると母さん具合悪くなるんだ........
もう本当に駄目な気がする.....』




No.219 16/04/04 07:46
名無し 


『お前さ、そんな気弱でどうすんの?(笑)好きなんだろ?』


『俺には母さんを説得する力は
無い。話始めると......本当に具合が悪くなるんだよ』

健人は頭をかかえた。


『まあ、かーちゃんの反対理由も分からいでもないが........
でもよ、何年かかっても説得すりゃいいじゃん!
初めて結婚を意識した女だろ?
離したくないんだろ?』


健人は昨夜の母の様子を思い出していた。
(正人は見てないから簡単に言えるんだよ.......)



『無理なんだって!
いちいちうるせーんだよ!
俺だって考えてんだ!
このまま母さんの言う事を
聞いてりゃいいんだ!
お前の指図なんかいらねぇ』


どうする事も出来ない自分が歯痒くて、そのイライラを正人にぶつけた。



『はッ?....あぁ、そうかい..,..
分かったよ。俺も少なからずお前等の過去に首突っ込んじまったからよ、応援もしたかったけどよ。

分かった。
もう言わねー!邪魔したな.....』



椅子を乱暴に引き正人は出て行った。


No.220 16/04/04 08:10
名無し 

(いちいちうるせぇんだよ.....
俺と亜紀ちゃんの問題なんだ...,
ほっといてくれ.....)


母をとるか,.,....
亜紀をとるか.....

時間をかけ説得する方法は
諦めてしまっていた。





亜紀は健人からの電話を待っていた。
(また明日....)
その言葉を信じて,.....

亜紀は鳴らないケータイを握りしめていた。

(また反対されたのかな?
許してもらえなかったのかな?)


多分、駄目なんだろぅ....な....



母親思いの森の熊さん
優しい健人さんがお母様を
説得なんて出来ないと感じていた


突然左手が震えた。
正人から着信だった。


『もしもし?正人さん?』



『亜紀ちゃん!』

『はい......』



『あいつは....健人はやめとけ
.......あいつは亜紀ちゃんより母親をとったぞ!きっぱり忘れろ!』


No.221 16/04/05 09:07
名無し 

(.....やっぱり....ね)

もう電話はかかってこない

予感が当たってしまった

もういいや.......

本当に、もう.....



『亜紀ちゃん、俺で良かったら話聞くから......1人で抱え込むなよ.......』


『......うん....ありがとう』


『そうだ!今度、水族館でも
行こうよ!俺さ、行った事ないんだよね......俺を連れてってよ(笑)』


『えーッ?女の子と行けばいいじゃないですか....』


『なんだよ(笑)俺と一緒じゃ
嫌だっての?(笑)
友達でも一緒に行ったって別に
いいだろ?』


『本当に水族館行った事無いんですか?信じられないんですけど』


『本当なんだってば(笑)
だから、俺を連れてって(笑)』


考え込まないように
私を元気付けてくれているのだろうか



『そうですね♪
じゃ、一緒に行きましょう!』


『やりぃ♪ヒャッホー!!
ほんじゃ、また連絡する』


『はい。お願いします』




淡い期待感と、この苦しみから解放される安堵感が入り交じる。

泣きたいのに泣けない

正人のせいなのか......


今は何も考えたくない

健人さんの事は特に

何も.....

これ以上......


No.222 16/04/06 09:30
名無し 

正人が女の子とアフターに出かけていた時の事だった。



『ねぇ留宇久~、お寿司でも食べない?』

『いいねぇ~、お前となら何処でもいいぜ♪』

『や~ん( 〃▽〃) ンじぁねぇ~、お寿司屋さんの後は~、何処にしようかな~♪』


『そうだな~、カラオケはどうよ?
狭い部屋で....2人きりになれるよ?』

女の子の腰に手を回した。


『ぁ~ン(///ω///)♪留宇久のエッチ♪....何考えてンのぉ?』

『何って.,.,カラオケに決まってンだろ?(笑)ちょっと!!
何期待してんのさ(笑)あはははは.,....』


『ち・違ーうー(笑)
ンもぅ、留宇久ったら~』


2人いちゃつきながら歩いていた。


前方に健人がフラフラと歩いているのが見えた。


正人はあれから健人の店には行っていない。


(なんでぇ、あいつ......
最近よく見掛けるな......
しかも、酔っ払ってる,.....
,....あっ!!)


健人は通行人とぶつかり、そのまま倒れた。
倒れたまま、訳の分からない事をブツブツ喋っている。


(そぅぃや、いつも酔っ払ってんな......
どうせ思い通りにいかねぇんだろ....,.
自分の気持ちなんて無視しやがってよ.....,
ばっかじゃねぇの?
いい加減、腹くくれよ!)


うじうじと酔っ払う事しか出来ない健人に腹が立ってきた。











No.223 16/04/07 08:01
名無し 


留宇久は女の子に


『ちょっとごめん。先に行っててくれ。あいつに用が出来た』


寝そべってる健人を指差す。


『ェッ?.....あぁ、ぅん。分かった。でも、後から必ず来てよね!』

『おぅ!わりぃな』



正人は健人に近づいた。


『おいッ!』


『£*★●@★◇£%.....』


『何やってんだよ!
しっかりしろやッ!』


『@★¥@¥*§....』


『健人ッ!』


『.........ぁ~、正人だぁ......
ぅひゃひゃひゃ.......』


健人を見下ろしていた正人は屈み健人の胸ぐらを掴んだ。



No.224 16/04/07 09:54
名無し 

『いい加減自分の気持ちに素直になれよッ!』


ヘラヘラ笑っていた健人の表情は次第に無表情になり



『.......俺、もう会わない

......決めたんだ。お前にやるよ』



『ハァッ?!お前今なんて言った?』



『正人が亜紀ちゃんを幸せにしてやってくれ........

俺、知ってんだからな(笑)

お前、亜紀の事好きだろ?(笑)』



『ハァッ?....何言ってんだ?
てめえこそ諦め切れて無いくせによッ!!

呑めない酒ばっか呑みやがって.....お前に落ちぶれる資格すらねぇんだよッ!死にてえのか?』




『..........それもいいかな(笑)
.......俺はもう駄目だ......

なぁ、正人........』


No.225 16/04/07 10:03
名無し 


正人も分かっていた。


こいつに母親を捨てられないって事を......


どうにもならない運命に翻弄される2人が可哀想だった。



なんでこいつの父親なんだよ

なんで亜紀ちゃんの父親なんだよ



正人もまた、どうしてあげる事も出来ず、掴んでいた手を離し、煙草に火を着け、その場を立ち去った。




口実見つけて逢いに行けよ......

小さな嘘でもいいからよ.....

なぁ、健人...,..


No.226 16/04/08 09:16
名無し 


亜紀もあれから電話がない事で気持ちが変化していた。

出会って、好きになって.....
そして父の事を知って......


別れた理由がどうであれ、健人を好きになった事は後悔はしていない。


(今は仕事探さなきゃ......)


求人雑誌をパラパラと捲っていた時だった。

亜紀のケータイが鳴った。


『亜紀ちゃん、おはよう♪元気?』


『あ~、正人さん。お久しぶりです。元気ですよ♪なんだか、ご機嫌ですね(笑)』


『そぅなんスょ(笑)
元気過ぎて亜紀ちゃんと水族館へ行く事を思い出しまして....ハハッ!』


『あぁ~、そうでしたね(笑)
いつにしましょうか.....』


『ん~、そうだなあ........
俺ね、元気過ぎて今日なんかどうかなッて(笑)』


『はい?今から用意したら仕事に間に合いませんよ?』


『そう! 俺ね、今日休み貰った』


『えー?!』

『んで?....どう?』


『分かりました。大丈夫です』

『よっしゃ!!
じゃあさ、俺今からシャワー浴びるから2時に◎◎前で』


『はい♪では、後で.....』




正人はほぼ毎日繁華街で酔っ払ってる健人の話をしようと思っていた。


亜紀ちゃんから連絡してやってくれないか、と。


(また大きなお世話かな......)


それでも健人のあの姿を見てしまうと、どうにかしてやりたくなっていた。


No.227 16/04/10 16:05
名無し 


亜紀は約束の10分前に着いた。

その5分後に正人が来た。


待ち合わせ場所から歩いて10分の所にある水族館に2人で向かった。



正人をチラチラ見る亜紀。


『ん?なんか変か?』


『ごめんなさい(笑)
私服見るのは初めてだなぁッて』


『あぁそうね(笑)いつもホストの
黒服だもんな♪今日は新鮮だろ?ハハッ!』



『そうですね~、何故か幼く見えますね。健人さんと同い年なのに......あッ!....』

胸の奥がチクリと痛んだ。


『ご.ごめんなさい.....』

『何謝ってんの(笑)俺、関係ねぇし......気にすんなって....』


亜紀の頭をポンポンと叩いた。


正人も身長は高い方であるが、体の線が細い。体重は健人の半分に近いだろう。


チャラそうな金髪はニット帽がプラスされて更に若く見えた。



No.228 16/04/11 09:12
名無し 


仕事柄、気配り上手な正人はトークも上手かった。

尽きる事のないネタは時には自虐だったりでしかも面白い。


久しぶりに笑った気がした亜紀だった。


『この前なんかね、久しぶりに来た女の子の名前間違えてさ、もぅ激安おこよ!(笑)』

『え~、間違えるなんて酷いですね、私も怒りますよ(笑)』


『やっぱり?(笑)そん時は、30分前に居た女の子の名前を連呼しちゃってさ、俺もサブに付いてたヤスも気がつかなくて(笑)10分位して女の子が突然帰るッて騒ぎ出してさ.....』


『そ...それで? 』


『じゃあ帰れよ!お前もさ、言えよ。違うって.......まー、悪かったな.....そう言って立ち上がったらよ、慌てててしがみついてきて......ごめんなさ~い.....怒んないでぇぇぇぇ~、ッて........それからはこっちのモンよ(笑)ドンペリ3本いれさせた』

『惚れた方の負けね♪』

体をクネクネさせながらモノマネをする瑠宇久。その女の子には悪いが笑ってしまった。

『けどよ、仕事分はキッチリこの体で払ってっから.....。
言いたくもねぇ歯の浮いたお世辞言わなきゃなんねぇし。
酔ってても呑まなきゃなんねぇし。
ォッ?髪型変えた?似合うよ♪....
とかよ。覚えてねぇッつの.....』


『そうだね。大変だね』

『おー!着いた着いた』


チケット売り場は平日なのに、それなりに人が居た。





No.229 16/04/11 09:33
名無し 


『大人2枚』

窓口で正人はチケットを買ってくれた。
払うと言ったが、誘ったのは俺だからと受け取ってはくれなかった。

『よーし!入ろう。初体験だーッ!』

金髪で長身の男が、無邪気にはしゃぐ姿を見てまた笑ってしまった。


いきなり巨大な水槽が目に飛び込んだ。

『うわぁぁぁぁ........』

2人で口をポカンと開けた。

何万匹という鰯の回遊......
その隙間を右へ左へと気持ち良さそうに泳ぐ魚達に目を奪われる。


水槽から目を離す事が出来ない亜紀に

『ぉぃ!よだれ出てんぞ(笑)』

『ぇッ?....ううううそ.....』

慌ててて口を拭く亜紀。

『あははははは♪腹痛い』

釣られて亜紀も笑った。

『出てないし!!』
グーパンチをお見舞いした。



No.230 16/04/11 09:45
名無し 

*~おはようございます~*


先々週にケータイを水没させてしまいました(T_T)
それからは変な現象が起き始めています。
突然投稿が止まったら修理か機種変です。

しかも、今使っているケータイはAndroidで4年もの.....


本当にそろそろヤバいかもです(T-T)


突然止まったらごめんなさい
(;´_ゝ`)


No.231 16/04/12 08:46
名無し 

続いてクラゲゾーンに差し掛かった。

照明は薄暗い。
ムード満天なゾーンだ。

色とりどりにライトアップされている数々の水槽。


亜紀は、ふと周りを見渡した。

恋人同士と思われる男女が沢山いる。


(私達もそう見られるのかな....?)


今頃になって正人と2人だという事に恥ずかしくなり、ちょっぴり距離を置いた。



置いたのに........


正人が傍に来た。


『........亜紀ちゃん』



No.232 16/04/12 09:05
名無し 


一瞬、ドキッとした。


『....ななななんですか?』


ここは皆良いムード。


『健人に会いに行ってやってくれないかな?』


『ぇッ?』


『あいつ、やけくそになっててさ。ほぼ毎日呑み歩いてるんだ』



『そんな....』


『逢いたいんだろうなって......
向日葵みたいな女の子だって、いつも俺に言ってたよ。
このままでは、あいつ、駄目になっちまう......
だからさ、亜紀ちゃんから会いに行ってやってくれないか?
私と一緒に頑張ってと言ってくれないか?』



正人から突然の水族館の誘い....

この話を伝えたかったのね..,...


『ごめんなさい。
昔の様な気持ちは私にはもう無いです』


正人はため息をつき


『.....そっか.....わかった。

俺の方こそ、ごめんな』





No.233 16/04/12 09:17
名無し 



胸の奥深く鎮めた淡い感情が心臓をチクチクと刺してくる。


痛みで息が苦しくなる。



ふと見上げた水槽のクラゲ.....

ふわりふわりと
自由に気持ち良さそうに
浮かんだり、沈んだり


クラゲに感情なんてあるのかな?

水槽の中から
複雑な感情を持つ人間を
笑ってるのかな........


連絡が無い健人に
会いに行けと言う正人


亜紀はまた泣いてしまった。



『ごめん.....また泣かせてしまったな......ごめん』


亜紀の零れる涙を指で拭った。


そしてそのまま


キスをした........

No.234 16/04/13 08:49
名無し 


(お前、亜紀の事好きだろ?)


ふと、健人の言葉を思い出した。


水族館の演出のせいなのか,....

本当に亜紀の事が好きなのか....


考える前に体が動いた。


重なり合う唇を外した瞬間
目に飛び込んできた泣いている亜紀。


俺は、ずっと、気持ちに嘘をついていたのか?


亜紀を心配するふり
健人を心配するふりは

実は亜紀に会う為の口実だったのか?



友達の彼女だと思ってた。

無意識に気持ちを隠してた。

でも、今は抑える必要もない。



言おう....
亜紀に....




『ずっと好きだった

俺と付き合ってよ......』


No.235 16/04/14 08:51
名無し 


『.........ぇッ?.....』

涙で滲む私の目の前にいる正人


さっきは健人に会いに行って欲しいと言ってた。

そして今は付き合って欲しいと言っている。


クラゲは浮かんで...いる。


私は・・・・

私は・・・・


『ずるい......ずるいです。
こんな時に....正人さん、ずるい』


『ごめんな。でも、多分、俺の本心だと思う』


『そりゃ、正人さんには色々頼ってばかりで悪かったと思います。今日だって......。でも、好きとかそんな感情は今は........』


『俺もさっき気がついた。それにさ、もう健人の事は何も思って無いって言ったじゃん。
とにかく考えてみてよ。俺と付き合う事をさ』


『考えるって....そんな.....』





No.236 16/04/14 09:14
名無し 


本当はまだ気持ちの整理が出来ていない。

(....また明日.....)

健人から最後に聞いた言葉。

その言葉を信じて待っていた私。

今も待っている......?


確かに、健人さんは私が辛い時にはいつも助けてくれた。
私も頼ってしまっていた。

でも、それは健人さんの友達だからだよね?




『それより残りの水族館を楽しもうぜ!行こッ!!』


何事も無かったかの様に振る舞う正人。


いつもの様に正人の軽妙なトークに引き込まれていく。


どこまでが嘘でどこまでが本心なのか、全く読めない正人。


少なくとも私の前では素の正人であって欲しい。


『おッ!!アイスクリームだぁ♪食べようぜ!!亜紀ちゃん何にする?
俺は、バニラね♪』




(少し考えさせて)
と、正人に返事をし、この日は待ち合わせた場所で別れた。











No.237 16/04/14 09:31
名無し 


亜紀はアパート前に着いた。


暗がりに人影が見える。

見覚えのあるシルエットだった.......。


(...えッ!健人さん?どうしてここに?)


健人も亜紀に気がついた。


『亜紀ちゃん』


『どうしてここに?』


照れくさそうに.....

『いつの間にかここに来てた(笑)』


『正人さんから聞いているよ。毎晩出歩いてるんだって?』


久しぶりに会う健人は少しやつれて見えた。




正人のせいなのか分からないが、自然に会話出来るのが不思議だった。







No.238 16/04/15 08:45
名無し 

『正人が?,.....そうか....

何かと正人に会うんだね』


『勘違いしないでね。健人さんを心配してるだけだから』


『....へぇぇ....』


ついさっきまで一緒に居た私達。
変な誤解を招きたくなくて話を反らした。


『そういえばお母様の具合はどう?』


『うん。忙しい時は店の手伝いも出来る様になったよ』


『そうなの?良かった♪このまま元気でいて欲しいわね♪』


『うん......』



No.239 16/04/15 09:24
名無し 


『健人さんもよ!慣れないお酒なんて止めてね。お母様の為にも体には気をつけてね』

『ぅん....』



『ところで、私に何か用なの?』


『.....ぅ....ぅん.....』


歯切れが悪い健人。


アパート前の暗がりで向き合う事さえしない二人......


亜紀は思わず夜空を見上げた。

東の方角で北斗七星が輝いて見えた。


『寒いね....
もうすぐ冬がやって来るね.....』


吐く息で手を暖めた。



『亜紀ちゃん!

俺、もう1回頑張るよ。

亜紀ちゃんの居ない毎日が辛くて仕方ないんだ。

だから....だか...ら.....,』


『......ぇッ?』


『もう一度チャンスをくれないか?』

『.....?!』


『弱い人間なんだよ、俺。
自分でも嫌になるよ。いい加減だし、優柔不断だし.....でも、でももう一度チャンスが欲しい...,.

お願いします!』


亜紀の方を向き頭を下げた。












No.240 16/04/15 09:45
名無し 

ごめんなさい(T-T)

北斗七星を東の方角なんて表現はおかしいですよね(T-T)

よく調べもせず浅はかな投稿をお許し下さい(T-T)

私の投稿はろくでもない妄想話という事で信じませぬ様、お願い致します(T-T)




No.241 16/04/17 07:56
名無し 


ふと、青白く光るクラゲを思い出した。


まだ健人を好きだっていう事を、水槽の中から教えて貰った気がした。



(酒に溺れてまで私への思いを断ち切ろうとした健人さんの気持ちは痛いほど分かったわ........)


だけど
母親思いの健人さん,.......
無理だと思った。


また辛い思いをする元気は亜紀には無かった。



(まずはあなた自身を守って.....

今のあなたには

私を守れない.........)



No.242 16/04/17 08:14
名無し 



『ごめんなさい、健人さん。
私......正人さんと付き合う事にしたの』



『,........ぇッ?!!』


『今日、告白されたの。
はいって、返事をしてきたとこなの。だから、ごめんなさい.....』



『........そっ...か.....
ごめん。分かった。悪かった。
もう....遅いよ、ね。うん、ごめん』



『健人さん。お母様の為にもお酒は止めてね。体に気をつけてね』


『うん!ありがとう。

みっともない所を見せちゃったね。あはっ!

あ!正人と幸せにな!
あいつ良い奴だよ!
俺が保証するよ!


じゃあ..........おやすみ....』


『おやすみなさい』




両手をポケットに突っ込み背中を丸くして帰っていく健人の後ろ姿を

見えなくなるまで見送った。


そのままアパートの前でうずくまり
、ひとり泣いた。






No.243 16/04/17 08:40
名無し 


水族館デートから数日が過ぎたある日、正人から電話がかかった。

喫茶店でバイトしないか?という内容だった。


『この前一緒に行った店、覚えてない?』

『あ~、あのお店ですか?指名入って私を独り残して帰った...



『亜紀ちゃん、勘弁してよ(笑)
仕事だったんだから(笑)』

『あははは♪ごめんなさい。それで?』


『あぁ、1人辞めちゃってね。探してんだわ。亜紀ちゃんどうかな?』



『ん~、ウエイトレスはした事無いからな~、どうしよう.....』


『大丈夫!マスターもママも優しいんだ。俺が保証する!』


『返事、急ぐんですか?』

『まぁ、本音を言うとさ、毎日店で亜紀ちゃんに会いたいなーッて(笑)そんだけ.......で?どうかな?』


『わかりました。宜しくお願いします』


『いいの?やりぃ~♪ほんじゃ、マスターに連絡しとく』

『はい♪お願いします』



正人との電話を切った後


(そういえば、告白の返事をまだしていない.....)


正人から聞かれたら
なんて返事をしよう.....


健人には付き合うと言ってしまった手前、どうしようか悩んだ。












No.244 16/04/18 09:08
名無し 

翌日。

亜紀は喫茶店のマスターと面接をし、明日から始める事になった。


面接が終わった後、正人に電話をした。


『もしもし正人さん?』


『ふぁ~、おはよお~』

『ごめんなさい。まだ寝ていたんですね。後でかけ直します』


『あぁ~、大丈夫大丈夫。そろそろ起きる時間だから。それより、面接はどーだった?』


『はい。明日から出勤する事になりました』


『良かった♪俺、あの店でコーヒーを飲んでから仕事に行くのが日課なんだよね!これで毎日亜紀ちゃんに会えるぞ♪♪』


『ははッッ!最初はお見苦しい所をお見せするかも(笑)』


『それは仕方ないさ。でも、マスターもママも優しいから大丈夫だよ!』


『色々とありがとう、正人さん』


『楽しみが増えたぞー♪気をつけて帰るんだよ!じゃ、明日ね!』


『はい♪』

(明日....かぁ~
健人の明日より確実な正人の明日.....)



それより、電話を切った後、亜紀は考えた。

マスターが言った一言.....



(ここで働いても大丈夫?)



どういう意味なんだろう.....?



幸いなことに、健人の花屋とは業務提携もしていなければ健人が来る事もない場所にある。


救いといえば救いだった。


No.245 16/04/19 09:46
名無し 


亜紀の出勤前は、正人と電話をするのが日課になっていた。

(いってらっしゃい♪頑張って♪)

他愛もない会話が励みになる....


そして、毎日正人は店に来た。


かといって、亜紀とだけ話す訳ではなく、マスターやママと談笑したり、時には亜紀も参加したり。


毎日会えるからと、薦めてくれたこの仕事。


亜紀も段々正人に会うのが楽しみになっていた。


No.246 16/04/19 10:09
名無し 


バイトを始めて2週間後、日課になっている朝の電話で正人に言った。


『前に私に付き合ってと言ったよね?』


『ん?あ~、まだ返事は貰ってないけど?』


『私の何処が好きなの?』


『ん~、そうだなあ......

俺の回りにいないタイプ?

ん~、守ってあげたくなるッつーか、擦れてない君に興味がある.....
ん~、俺 、告白した事ねぇから上手く言えねぇけど.....
それじゃ駄目?(笑)』


ホストが仕事の正人。
意外な発言に笑ってしまった。

本当は気持ちの伝えかたは不器用なのかも,......

喫茶店のマスターと話す姿の中に素の正人を垣間見た。

その姿を見て付き合おうと決めた亜紀だった。



『ホストなんでしょ?(笑)
他に言い様があるでしょうに(笑)』


『ヘヘッッ(笑)んで?どう?俺......』


『うん♪付き合おっか....』


『え?本当に?やったーッッ♪♪
俺、めちゃくちゃ嬉しい♪』


『うん♪私もよ♪毎日お店で見る正人さんに魅かれていったもの』


ここに務めて良かったと思った。



ただ、正人の常連の女の子達と、同伴出勤する時もここへ来る事以外は........。


No.247 16/04/20 09:07
名無し 

そう、瑠宇久は女の子を連れて喫茶店に来る。

ショッピングや食事をした後、お茶をしに店に寄るのだった。


どの女の子も髪は綺麗にセットされ、可愛い洋服を着ている。

全ては瑠宇久に気に入られる様に......


亜紀はというと、ナチュラルメークにTシャツ、エプロン姿。
髪は後ろ1つに束ねた長い黒髪。


腕を組み楽しそうに入店する二人に向かって
(いらっしゃいませ)
と言う。


喫茶店の中では瑠宇久はお客様。


なのに.....


亜紀の目が泳ぐ.....


気になって
気になって

仕方がない......

No.248 16/04/20 09:21
名無し 


正人が知らない女の子の髪を撫でている.....


正人が女の子の耳元に顔を近づけている......


見つめあい...クスクス笑っている.....


無意識にふたりを目で追ってしまう......


胸の辺りがモヤモヤする.....


面接をした時にマスターに言われた言葉をふと思い出した。


(ここで働いても大丈夫?)



酷い顔をしていたのだろう....


カウンター越しにいたマスターに

『大丈夫かい?瑠宇久が好きならここでの仕事は向かないよ?』



再び言われてしまった。


マスターの一言で溜め息をついた。


(正人は瑠宇久というホスト。これが仕事なんだって.....好きとかそんな感情は無いんだって......)



分かっていたつもり。


でも、いざ目の当たりにしたら


辛かった........。



No.249 16/04/21 08:21
名無し 


日課になっている朝の電話で正人に相談した。


『女の子連れの時は他の店じゃ駄目なのかな?仕事だと分かっていても辛いんだけど.........』


『えー?!俺、ずっとあの店なんだよね.....
今更変えろっ言われても無理だよ!嫌なら見なきゃいいじゃん!!』


『そ・それは、そうなんだけど』


『亜紀さぁ、俺の仕事を知っているよね?』


『う・うん......』


『女の子を楽しませるのが俺の仕事!』


『うん....理解している...』


『だったら......

俺が好きなのは亜紀だけなんだって!毎日亜紀の顔を見て仕事に行きたいんだって!

信じてよう~亜紀ちゃ~ん』


『....うん......分かった....,』



納得出来ない.....
でも
自分に言い聞かせた。


亜紀は亜紀で、聞き分けの良い子を演じる事で正人に気に入られ様とした。

No.250 16/04/21 08:33
名無し 



相変わらず瑠宇久は女の子を連れて店に来た。


亜紀の嫉妬心も幾分か落ち着いた頃。


季節は師走。


瑠宇久の務めるホストクラブでは、開店5周年祭とX'masに向けて一層力を入れていた。


そんな時、No.5の修羅が刺されたと一報が入った。






No.251 16/04/22 09:48
名無し 

結婚という匂いをちらつかせ、女の子達に貢がせていた修羅が刺された。

杏子はその内の一人だった。



『もしもし?杏子?』


『修羅~♪どうしたの?今日も修羅に会いに店に行くよ~(//∇//)』


『あのさ、来る時ついでに売り掛け金を少しでもいいからさ、入れてくれないか?』


『えッ?....だって....』


『何がだってだよ!お前が入れたシャンパンのつけ、150万になってんだぞ?』


そう、修羅の売掛金は全部で500万にまで膨れ上がっていた。
少しでも店に入れないと修羅が払う事になる。

修羅は焦っていた。



『だって、二人の将来の為にノルマに協力して欲しいって......

あ...あたしから進んで追加で注文した訳じゃないし』


『はぁ?お前が入れても良いって言っただろが!!』


『ね..ねぇ、修羅~。どのみち将来は一緒になるんだから修羅が払っても同じ事じゃない?』



『はぁ~、お前バカじゃねぇの?金もねぇ女なんかと誰が一緒になるってんだ』

No.252 16/04/23 09:12
名無し 


『......修羅?』


『終わりだ!終わり。分割でもいいから。とにかく20万でもいいから今日持って来い!いいな!』



『ちょ...ちょっと...修...』


『払わなきゃ

実家に押し掛けるからな....

じゃ,....』



『.....今....なんて.....言った?』


電話は既に切れていた。


杏子が初めて売掛金を作った時に身分証明として免許証のコピーを撮られている。


(実家に行かれたら
キャバクラで働いている事を親にばれてしまう......どうしよう......)


修羅に別れを告げられた事より、親にばれる事の方が杏子にとって致命傷だった。

No.253 16/04/23 09:44
名無し 


その日の夜。

既に出勤していた修羅に、杏子からお金を用意したから取りに来てと連絡が入った。



指定された場所で待っていた修羅。


突然.....知らない男に刺された。



けたたましく鳴り響く救急車が到着する頃には、修羅の回りに人だかりが出来ていた 。


うわ言の様に

(杏子に.....刺された....)

と、繰り返し言っていた。



だが、杏子は既に飛んでいた。
(払わずに逃げる事)


実家というキーワードを出したのがいけなかった。
ちょっとの脅しのつもりだったのか......

実際、恐喝まがいの事はしてはいけない。


(調子にのった修羅が悪い)

店で事の一抹を聞いた瑠宇久はそう思った。


と、同時に、ホストという世界が少し怖くなった。


何故なら、瑠宇久もまた、売掛金が100万程あるからだった。




No.254 16/04/25 09:06
名無し254 

12月初めのミーティング。

ホストがそれぞれの今月のノルマを発表した。


亜紀の事で新規顧客獲得に力が抜けていた瑠宇久は№6まで落ちていた。

真也は相変わらず№1.刺された修羅は№3にまで上り詰めていた。


(やばいな...年内に元の位置に戻したい...
それより、売掛金もどうにか回収しないと....)

亜紀の事も大事だったが、今は大金を落としてくれる女を捕まえなければ...。


女の子に刺され、この世界から消えてしまった修羅の心配などしている余裕はない。



修羅の一件はこの業界では既に噂は広まっていた。

もしかすると、今度は俺が消えるかも....

みな、それぞれに不安を抱いていたある日の事。


ふとした事で出会った女性がいた。
大手企業の社長夫人だった。


No.255 16/04/26 09:08
名無し254 

瑠宇久とは付き合いが長い女の子の誕生日にプレゼントしようと、とあるブランド店に来た時だった。

若い女の子に人気のお店で、店内は女性客でいっぱいだった。

前回の同伴出勤前のショッピングでリサーチしていた瑠宇久。
誕生日プレゼントにしては高い買い物だったが、迷わず店のスタッフに
「これのピンクを下さい」とカウンターで告げた。

瑠宇久の右隣りには、店に似つかない上品な女性...。

同時にそのご婦人も、瑠宇久と同じ物が欲しいと言っていた。

店員がバックヤードで確認すると在庫が残り1個しか無く、その一点を前に瑠宇久と夫人の顔を見合わせる。


夫人は自分の娘にあげようと以前から決めていたらしい。

瑠宇久は迷わずその一点を譲った。


(別になんだっていいんだ。ブランドだの、値段だの、そんなのどうでもいい...。
ホストの俺に貢いでくれればそれでいい...。その程度のプレゼントだからな(笑))


そんな事は勿論口に出したりしない...。


感銘を受けた社長夫人は、お礼がしたいと食事に誘ってくれた。


No.256 16/06/20 22:36
名無し 

瑠宇久が譲った理由などつゆ知らず。
すっかり感激している社長夫人。


この辺で美味しいお店をご存じ?と聞いてきた。


奢って貰う理由など無い瑠宇久だったが、とりあえず近くのファミレスを選んだ。


育ちも嫁ぎも由緒正しそうな夫人。
やはり知らないお店だから連れてって欲しいと言ってきた。


(大手チェーン店なのに・・)

瑠宇久は不思議だった。


と、同時にホストの血が騒ぐ......


この夫人を喜ばせたいと思った。


No.257 16/06/20 22:53
名無し 


入店すると夫人は周りをキョロキョロし始めた。


(おいおい....マヂかよ?!
本当に来た事無いんだ.....,)


ランチも終わりにさしかかろうとしている時刻。

すぐに案内係に呼ばれ後ろを付いて行く。


(かっこよくエスコートしたかったが...
ファミレスじゃあ、な(笑))


席に着くなり、メニューを広げ、瑠宇久は夫人に

『どれにしましょうか?』と、聞いた。


『あなたと同じ物をお願いします』

同じものか.....

再度メニューに目を落とす瑠宇久。


ファミレスのメニューなんて何処もたいして変わらない品揃え。



瑠宇久は日替りのランチメニューを2つオーダーした。



メインディッシュはハンバーグ。

夫人の口に合うか瑠宇久は興味津々だった。



No.258 16/06/20 23:08
名無し 


瑠宇久の目の前にいる女性。

50歳前後だろうか.....。

美味しそうにパクパク食べている。


瑠宇久は呆気に囚われた。


本当に美味しそうに食べている。


(腹減ってんのか?)


と、同時に可愛いと思った。


完食した夫人はナプキンで口元を拭きながら


『お肉も柔らかいし、デミグラスソースも美味しかったわ♪素敵なお店を知っていらっしゃるのね♪』


瑠宇久は口に含んだ水を吹き出しそうになった。


(なんなんだ?この人.,....
実に興味深い....)


No.259 16/06/20 23:27
名無し 



食事も終わり、夫人が先程のお礼に払うというので、レジ近くに立っていた瑠宇久。

レジの店員と夫人が何やらひと悶着している。


『あのう、ですから、2人分の支払いをしたいんですけど,.....』


『はい。ですから、1000円になりますが....』


『?!まさか....嘘でしょ?1人500円だなんて...そんな....』


瑠宇久はそんなやり取りを横で聞き、声を上げ笑ってしまった。


店を出てからも


『信じられない....
あのハンバーグが....何かの間違いよ....』


オロオロする夫人がとてもキュートに感じた。
すかさず
『500円でも高い方ですよ?』

『嘘でしょ?嫌だわ..,私ったら.....恥ずかしいわ...』


頬を赤らめる夫人・・
を、いじめたくなった瑠宇久。

『世間知らずとはこの事ですな!あはははは♪』

わざと大きな声で笑う。



黒服の瑠宇久......
金を持っていそうな中年女性.....


行き交う人達の目にどの様に写っているのだろう.......。


『本当に恥ずかしいわ♪うふふ
......そうだわ!私の知らない世界って他にどんなところがあるのかしら?教えて頂けません?』


大きな目をキラキラさせながら瑠宇久の顔を見つめる夫人。






No.260 16/06/20 23:35
名無し 


『他に?.....』


(何処だ?何処を紹介すればいいんだ?何を知りたいんだ?)


ファミレスの前で突っ立ったまま考え込む。


夫人はワクワクした表情で俺の顔をじっと見つめる。


(そうだ!
俺、ホストじゃん!)


『そうだな.....ホストクラブなんてどうです?』



『ほ、すと、くらぶ...?』


『僕の仕事はホストなんです。
良かったらこれから店に来ませんか?精一杯おもてなしさせて頂きます』


No.261 16/06/21 16:22
名無し 


(しめた!上玉だ!)


身に付けている宝飾品、服、全て一流品だ!!

間違いない....
時間と金をもて余している。


夫人をエスコートし、瑠宇久の店へとやって来た。


初日だからと、セット料金で格安にした。


サブとして、指名が取れないでいる3人に頼み、瑠宇久も含め全員で盛り上げた。


最初はなかなか馴染めず、ぎこちなかった夫人だったが、帰る頃にはとても楽しそうにしていた。


(最初は楽しさだけ覚えてくれれば良い.......
狙いは、そのままクラブ通いする事だ.......)



楽しくて、自分を女として扱ってくれる優しい男達.......ホスト......。



No.262 16/06/21 16:34
名無し 



『明日は時間ある?
良かったら一緒に水族館でも行かない?』



瑠宇久は夫人の耳元で囁いた。

夫人はクスクス笑っている。


旦那とだったら絶対に一緒に行かない場所。

若かかりし頃を思い出させる為に誘う。

若い男とデート..,....

女は非現実的な甘い夢をお金で買う。



『番号教えてよ......
今日で終わりなんてやだよ.,...

また会いたいから......

ねぇ、お願いだから......』


まんざらでもなさそうな夫人の表情を見て、瑠宇久は夫人の手を握った。



世間知らずの夫人がホスト狂いになるのに時間はそうかからなかった。






No.263 16/06/21 16:48
名無し 


翌日。
日課になっている朝の電話は、上機嫌な正人だった。


亜紀には言わないが、昨日の夫人と午後から会う約束になっていた。


『正人さん、何か良い事あったの?いつもと声のトーンが違うよ?』


『そうかぁ?なんもねえよ!
亜紀の勘違いだっつーの!』


『そうだ!ねぇ、Christmasは仕事でしょ?その前の日曜日は私の為に空けといてね!最近はデートらしいデートしてないし.....』


『あぁ?わかったわかったって!大丈夫だ!』

『約束よ?』

『あぁ....
そんじゃ、俺、疲れてっから、もう一眠りする。あとで、喫茶店に寄るから..,..』


『うん....あとでね』


『気をつけて行けよ!じゃ....』



電話を切った後、正人はシャワーを浴び出掛けた。


No.264 16/06/22 17:15
名無し 


この夫人は瑠宇久に沢山の贅沢をさせてくれた。

仕事で着るスーツ、洋服、時計、欲しい物は何でも買ってくれた。

夫人の高級外車に乗ってはドライブをし、その後は店にやって来ては高い酒をオーダーする。


この夫人がばらまく金だけでノルマを達成出来そうだ。

ノルマどころではない,....
もしかしたらNo.1になれるんじゃね?


そして、結婚したいとは絶対に言わない.....

楽しければそれでいい。


瑠宇久は夫人に夢中になった。
絶対この女性を離すまいと必死になった。



好きとかそんなんじゃない.....
そんな感情は微塵もない,......

だが、亜紀にとってはおもしろくない存在だ。


亜紀の働く喫茶店にいても、いつも誰かと電話をしている。


(彼の仕事はホスト......
だから、仕方ないのよ.....)



亜紀は何度も自分に言い聞かせた。

信じていいよ...ね....?


No.265 16/06/23 16:32
名無し 


今日はChristmas☆


ホストの正人は仕事だ。


先週の休みには久しぶりに正人とデートした亜紀。

瑠宇久ではない、正人と。

映画を観て食事して、そして約束通りケータイを触らせなかった。

独り占めできて満足した亜紀も、Christmasは仕事をした。



『亜紀ちゃん。注文が入ったから◎◎ビルの3階まで運んで』


『はーい!わかりました』


珈琲ポットを持ち、外に出た時だった。


向こうの路地で正人が見えた。


手を振ろうとした瞬間.......


高級外車の助手席から毛皮に身を包んだ女性が、瑠宇久のエスコートで降りてきた。


その2人は見つめあい、笑い、そしてそのままキスをした。











No.266 16/06/23 16:45
名無し 


亜紀は持っていた珈琲のポットを落としてしまった。

熱い珈琲は黒い水溜まりになり、亜紀の足元で湯気をたてていた。


正人は亜紀に気付かず、そのまま目の前から消えてしまっていた。


(何処行くの?
その人は誰?
なんでキスをするの?)


追いかけたくても追いかけられない。


正人はホスト.....
仕事なの.....
仕方ないの......

呪文のように繰り返し呟いた。



後ろから声がした。


『亜紀ちゃん!』


『え?』

『大丈夫?火傷してない?』

『健人さん?どうしてここに? 』





No.267 16/06/24 19:51
名無し 


『健人さん?どうしてここに?』

『花の注文が入ったから届けにきたところ。それより大丈夫?
火傷してない?』

亜紀の足元を心配そうに見る。


『健人....さ...ん.....』


正人のキス現場.....
突然現れた健人,....


信じられない今の状況に耐えきれず亜紀は両手で顔を覆った。


『道端じゃ邪魔になるから。
ほら!しっかり....マスターにも連絡しないと......』


うんうんと頷く亜紀。


『俺が代わりに連絡してやっから....とりあえず足元をこれで拭いて.....ほらッ』


タオルを渡された。


(そういえばバイト初日もタオルで汗拭きながら健人さんから軍手を渡されたな~)


涙目で懐かしそうにタオルを見つめた。


健人は亜紀の代わりに喫茶店に電話をする。


仕事が出来る状態ではないこと
珈琲ポットを落としたので代わりが必要だという事を告げ、このまま帰る事にした。



家まで送ってくよ


健人は亜紀に言った。












No.268 16/06/25 08:21
名無し 


帰り道、見たいきさつを健人に話した。


『そっか.....亜紀ちゃんにすれば地獄だね......全くあいつは何やってんだか.......』


『ホストの正人さんと付き合うって自分で選んだ道なんだけどね。
でも、どうしても割り切れない自分もいるの』

『当たり前だよ!彼女じゃん。
他の女とのキスシーンを見て喜ぶ奴なんていないよ!』


『私と一緒に居る時より......
楽しそうな正人さんの笑顔が...

一番辛いな....ははッ....』


亜紀はふと、先週のデートを思い出した。


映画中は寝ていた正人。
(確かに私が選んだ恋愛物だった)

ケータイを開くことはなかったけど、誰からの連絡か確認はしていたっけ.......


私が楽しそうかどうかより、ケータイの方に意識を向けていた気がするな~。

(もう駄目かも......)


そう言おうとした時.....

『亜紀ちゃん。俺からも言っとくよ!亜紀ちゃんが大事ならホストなんて辞めろって』


『健人さん』

『俺に偉そうな事言っといて、あいつも亜紀ちゃんを泣かせてんじゃん!あったまくるよ.....
ちょっと懲らしめてやるか!』

指をボキボキと鳴らした。


『あはははは♪健人さんたら

いいのよ。我慢出来なくなったら
別れればいいだけだし.......

健人さんに聞いてもらえただけでも救われたから♪大丈夫♪』


立ち止まる健人。

『そういう俺も.......

亜紀ちゃんを泣かせてるね


ごめんな......』



(そういう私も.....

健人さんから正人さんに

のりかえてるんだよ?)









No.269 16/06/26 19:43
名無し 



健人は優しい。

嫉妬心で心をかき乱される事もない。

相手を追い込む言い方もしない。


ふと、健人を好きだった頃を思い出した。


健人の優しさと正人の優しさは正反対。

正人は仕事で作られた優しさだ。


だから心に響かないんだ。


健人の母を思う優しさは、私にとっては地獄だったけど、それもまた、健人の魅力だったのかもしれない。



アパートまであともう少しの所で


『もう大丈夫だね。ゆっくり休んで明日も頑張って....

じゃ、おやすみ.....』


『え?!』



亜紀はアパートまで送ってもらえると思っていたので、思わず顔を上げた。


もう少し話をしていたい......


うぅん、もっと話がしたい,.....



けど、私は健人から正人にのりかえた女......


『....あ...ありがとう......』


急に表情が沈む亜紀を見て健人は


『亜紀ちゃん。俺、

アパート前で亜紀ちゃんに振られてっからさ(笑)

だから、ここで......』


『.....!』


(そうだった......
私、健人さんを傷つけてた)


自分の事しか考えてなかった。

恥ずかしい.......



『ごめんね。ありがとう。
元気出た!うん♪頑張る!

おやすみなさい、健人さん』



『うん。おやすみ...,.』



そのまま2人は背中合わせになり、振り返る事はしなかった。







No.270 16/06/27 16:47
名無し 


その頃のクラブでは......

亜紀にキス現場を目撃された事を知らない瑠宇久は、夫人の機嫌をとっていた。


Christmasイベントは盛大に行われていた。

フロワの中央にはシャンパンタワー。

夫人はこの店で一番高いロマネ・コンティを2本、ドンペリ2本入れていた。

総額400万円。


瑠宇久は
(俺、今月No.1ぢゃね?)


ホストを始めてから初のNo.1獲得かと思うと、心の高まりを抑える事が出来なかった。


無理な要求もしてこない。

ただ、楽しませるだけでいい。


次はどうやって喜ばそうかと夢中で考える。


(今なら抱いてと言われても、
俺、抱けるな.....)


ドライブ中に聞いた話だが、やはり、社長である旦那は毎日が接待で、帰宅が遅いか、あるいは帰宅しないと言う。

子供達もそれぞれ独立している。




暇と金の使い方が分からないなら俺が教えてあげよう,,.....


忘れていた青春を.......



経験した事のない世界を,.,....


瑠宇久は夫人にのめり込んでいった。



No.271 16/06/28 16:09
名無し 

25日。今日はクリスマスイブ☆


2人の日課になっている朝の電話は、最近は亜紀からかけている。

プルルルッ.....,
(留守番サービスに接続します.... )


拍子抜けしてしまった。
と、同時に昨日のキスを思い出した。

(その人は誰?)


正人に聞いたところで、シラをきるだけだよね.....?


今日は電話はいいや。

また布団に寝転んだ。


大晦日やお正月はどうするのかな?
何も言ってこない......。

キス相手と一緒に過ごすのかな..,...

朝から段々と落ち込んでいく。



ふと、健人を思い出した。

火傷、心配してるかな?
そうだ!昨日、メリークリスマスって言ってない。

連絡してみようか,......。


そう思った時だった。




No.272 16/06/28 16:24
名無し 

※受信※

『☆メリークリスマス☆

昨日、言うの忘れた(笑)
火傷の具合はどうかな?

正人には俺からきつく言っとくから、亜紀ちゃんは何も心配しなくていいからね』



健人からのメールで亜紀の決心がついた。


※送信※

『メリークリスマス☆

私も言うの忘れてました(笑)
火傷は大丈夫です。
タオル、ありがとう♪
洗ってから返しますね♪


それと、正人さんの事はもういいです。

諦めました。喫茶店の仕事も辞めるつもりでいます。気をつかってくれてありがとうございます』


はぁぁぁぁぁ,......,

深い深い溜め息が出た。





No.273 16/06/29 16:50
名無し 


メールを送信してから数分後。

プルルルッ....


ケータイには浦田健人の文字が光って見えた。


(......えっ?電話?)


『.......もしもし?亜紀ちゃん?』

『健人さん.....,....

まだ私の番号を残してくれてたんだ......ありがとう』


とっくに削除されていると思っていた。


『あ・あのさ......』



『はい........』


『あの,......良かったら明日、何処かに行かないか?』


『......えっ?』


『正人も勝手気ままにしているみたいだし、この際、亜紀ちゃんも気晴らしにどうかなと思って...,』


『お店は?明日は平日で生花市場も開いてるんじゃ?』


『明日は母さんが病院なんだ。もともと付き添うつもりで休む予定だったんだけど......。俺、行きたい場所があってさ,........

それで一緒にどうかなって』


『......いいの?

お母様は大丈夫なの?
私なら大丈夫だから。お母様の側に居てあげてよ』


『母さんなら大丈夫!最近は調子がいいんだ♪

それより、正人からは連絡は無いんだろ?』


『......そう.........だね.....』


正人に何も言えないもどかしさは、昔の健人と同じ状況だ。


今の私の気持ち、健人なら分かってくれる。


『.....うん♪行こう!』


亜紀の中で何かが動いた。




No.274 16/07/01 17:10
名無し 


健人が行きたかった場所.....

それは植物園だった。



植物園のエントランスは、ワイヤープランツや南天の実、山茶花で彩られていた。


到着早々、健人のうんちくが始まった。


『山茶花はね、中国語で椿、山茶に由来してるんだよ』


『そうなの?あぁ、そういえば椿に似ているね♪』


『うん!あー、でもそろそろ見頃も終わりかな...,.今からだったら椿の方が咲き誇るよ』


『ふ~ん.....,.

赤に、白に....あッ!見て,....
ピンクもある.........綺麗~......』


『花言葉は.....


困難に打ち勝つ,.......とか.....


ひたむき.......とか、ね』



亜紀の顔をじっと見ながら言った。



まるで自分の気持ちを花言葉で表現するかの様に.......


真剣な顔で見つめられ、顔が赤くなる。


『.....あッ!あれは?
あれは何?』



話を反らした。








No.275 16/07/02 08:19
名無し 

『ん?どれ?....

あぁ~、多分,......ツルウメモドキの実だな』


『へぇ~、健人さん凄ーい!
花火大会の時もそうだったけど、なんでも詳しいんだね』


『ははッ!花火は下心で覚えただけだよ。花や植物は自然に覚えていっただけだし....


花火大会か.......そういえば一緒に見に行ったね.......』


(そう、そこでキスをして、2人は将来を誓いあったんだよ.......)


『あ!柊だよ......柊って赤い実がなるんだ!

そういえば造花には赤い実が付いてる!嫌だわ、私。何にも知らなくて恥ずかしい......』


『はははは♪
そんなもんだよ(笑)俺は仕事だからさ』


広い園内は綺麗に手入れされていた。


行く先々でワクワクした。








No.276 16/07/04 18:02
名無し 


園内を突き進むと温室に行き着いた。

寒い季節にはありがたい。


中に入ると暖かいというより、温かいお風呂場の感じがした。


熱帯雨林ゾーンは生物の多様性に富み、ヤシ類、花木、コーヒーの木、果樹...,パパイヤやマンゴー等の甘い香りが漂っていた。


『ここの温度や湿度の管理って大変そうね.....ちょっとの変化でも枯れたり病気になっちゃいそう.....大変だわぁ』


『そうだね....,でも、大変なのは空調管理する機械だと思うよ』


『やだぁ....それを言っちゃおしめぇよ』


『寅さんかッ!あはははは♪』






No.277 16/07/04 18:19
名無し 


『あ!見て見て!サボテンに花が咲いてる♪可愛い~♪』


『サボテンはね、ポルトガル人がウチワサボテンの樹液を石鹸として使っていた事から、石鹸体(さぼんてい)→サボテンになったらしいよ』


『へぇ~』


『花言葉は.....』


亜紀を見つめる健人。


『燃える心、または、枯れない愛



(花言葉だよね.....

私に言ってるんじゃ無いよね....?)


それでも亜紀はドキドキした。


好きだった記憶が少しずつ蘇った。



温室内にはちょっとしたティーコーナーがあり、休憩も兼ねてそこでハーブティーを頂いた。

No.278 16/07/04 18:37
名無し 


『はーっ、楽しい♪やっぱり植物を見るの好き♪』

ハーブティーを一口飲み、手足を伸ばした亜紀。

『うん♪俺も♪店に無いものを見るの大好きだ』


『癒されるよね.....』


『うん.....』


2人の目の前にはベゴニアやパンジー、葉牡丹が咲き誇っていた。


幸せだった.......


正人の事など何もなかったかの様に、思い出す事も、考える事もなかった。


穏やかな表情の亜紀を見て健人は


『来て良かったね』


『うん♪ありがとう♪』


そう答えた。



(またいつか一緒に来ようね)


そう思っていても
言えない2人だった。


No.279 16/07/05 17:38
名無し 

亜紀と別れた後、健人は正人に電話した。


この時間なら仕事前だろうと思った。


『お前が放ったらかしにしている亜紀ちゃんとデートしてきたぜ♪』


健人はわざと焼きもちを焼かせ、再び亜紀に気持ちを向かせようてした。


『はぁ?なんでお前が亜紀と?
意味わからん』


案の定、引っかかった。



『仕事前だろう?今、1人か?』


『あぁ?お前には関係ねぇだろ』


実を言うと、ついさっきまで夫人と一緒だった正人。
今から喫茶店に向かう途中に健人からの電話。



『なぁ、正人。亜紀ちゃんが可哀想だ。俺の為にもホストを辞めてくれないか?偉そうな事言えた義理じゃないんだが.....』



『そりゃそうだ(笑)母親を選んだお前から言われるのは論外だ!

つうか、勘違いすんな!
俺は仕事をしているだけだ。
亜紀も理解してる』


(なんでお前に言われなきゃならないんだ。関係ねぇだろ!)

段々イライラしてきた正人。



『仕事だけど、内容が内容だろ?

なぁ、正人。ホストを辞めて堅気の仕事にしろよ!俺からも頼む!亜紀ちゃんを幸せにしてやってくれ。俺の分まで幸せになってくれよ』



No.280 16/07/07 23:02
名無し 


一瞬.....気持ちが揺らいだ。


ついさっきまで一緒にいた夫人は、年明けに海外に引っ越すと言ってたからだ。


今の瑠宇久の頼みの綱は夫人だけ。


その夫人が居なくなる。


心にぽっかりと穴があいた感じがしていた時に健人からの電話だった。


だが、素直に考えてみると健人には言えなかった。



(.......亜紀.....)


ふと呟く。



『............健人に返すよ』

『はぁ?お前何言っ.......』


『健人がもう一度亜紀を幸せにしてやれよ』


『亜紀ちゃんは物じゃないんだぞ!なんだよ、それ。それでいいのかよ!亜紀ちゃんよりホストを選ぶのか?そんな終わり方でいいのかよ!』


『........あのさ、健人.....


終わりも何も.....始まりすら無かったと思うよ、俺達


今だから言えるが、亜紀は

俺を通してお前、健人を見てた』



『違う!違う!ちゃんとお前を見てたって!!』


『俺もさ、最初の頃は、早く健人の事を忘れさせてやりたくて、あいつを喜ばせたくて一生懸命だったさ


けど、フッと寂しい表情をするんだよな.......俺と一緒に居ても


遠くを見つめたりしてさ.......



花屋で見たあの笑顔


俺の前では.......無かったんだ』

No.281 16/07/07 23:27
名無し 

『違うって!なぁ、正人、考え直せよ。お前がホストさえ辞めれば亜紀ちゃんだって.....』


『ははッ!ばかな俺でも気が付くってーの!


そういう健人、お前こそ目を覚ませ。まだ好きだから今日も誘ったんだろ?俺なんて、ただの口実だろ?......もう1度......母ちゃんを説得してみろよ!』


(......好き?

........俺はまだ好きなのか?)


そうだ!
今日の植物園デートでわかった。


俺の本当の気持ち!




『ありがとう!正人


やっと本当に大切なものが見えた。



亜紀は俺が貰った』


No.282 16/07/07 23:50
名無し 



『おぉ!頑張れ!俺の分まで幸せになれよ♪』


健人との電話を切った後、喫茶店には向かわず、その場でタバコに火をつけた。



健人と亜紀はもう大丈夫だな


さて、


俺はどうしたものか.......


亜紀も夫人も俺の前から居なくなる。


急に寂しさが込み上げてくる。

寂しさというより虚しさ、か。


自ら選んだホストという道。

仕事に誇りすら持っていた。

今月には憧れ続けていたNo.1になれるだろう,...


目標は達成出来た。

だが、今は


何も残ってはいない。


(.......亜紀.....)


もう一度呟きホストクラブへと向かった。







No.283 16/07/10 07:30
名無し 


正人との電話を切り、すぐに亜紀に電話した。


電話じゃなく、本当は会って話がしたい。


だから.....,



『会いたい....』

そう言った。


正人にはっぱをかけられ今なら言える。

俺には亜紀が必要だと。


『え?健人さん。さっき別れたばかりだよ?どうしたの?』


『今会いたいんだ......


今、会わなかったら.....





本当に駄目だと思う』


No.284 16/07/10 10:30
名無し 


(何が駄目なんだろう)

見当もつかない亜紀だったが、とりあえずアパートの下で待つ事にした。


ふと、見上げた夜空。

今宵も星が綺麗だった。

(今度はプラネタリウムに行こう♪)

誘ってみようかな.,.ははッ!


じっとしていると寒さで手が震えてきた。


吐く息で手を暖めながら、健人と付き合い始めの頃の事を思い出した。


(いろんな事があったなぁ~)


二人の父の事
お母様の病気の事
正人さんの事


(喫茶店も年内で辞めるって言わなきゃ.....)


そう、あの日から休んでいる。

正人のキス現場.....

目撃した時はショックだったけど

まだ、気になる?


ううん、そうでもない♪


こんなに落ち着いていられるのは......


やっぱり健人さんのおかげだなぁ。



でもね、
好きになってはいけないの。

好きになると

また

健人さんが

苦しむだけ。















No.285 16/07/11 20:31
名無し 

『ごめん......遅くなった 』

暗闇の向こうから息せききってやって来た。


『健人さん。大丈夫?
どうしたの?何があったの?』


『あ...きちゃ...ん....

俺、俺に....もう一度チャンスをくれないか?

今度こそ頑張るから


正人に渡したくない


.....だから......もう一度.....』


『.....健人さん』



(いいの?


また、好きになってもいいの?)



『私も、やっぱり


あなたが好き.......』


健人の胸に飛び込んだ。


健人は力強く亜紀の身体を抱き締めた。


『もう逃げないよ......

母さんからも.....亜紀ちゃんからも....,.』



『うん....うん.....』


『本当にごめん.....


情けない俺で.....

いっぱい傷つけて......』



『........うん.......

もう....私を離さないで.....』



『約束する』


そう言って亜紀にキスをした。





No.286 16/07/12 22:26
名無し 

亜紀と別れた後、次は母を説得しようと部屋をノックした。

『母さん、入るよ....

話があるんだけど.......』


『なあに?あの娘の話なら聞く耳持たないわよ!』


『母さん、俺の話も聞い.....』


『父さんを死なせた家の人間なんかを嫁に迎え入れるなんて無理に決まってるでしょ?
お前には母さんの気持ち分かるだろ?』

健人にすがる母。


『母さん......
分かるよ!分かるけどさ....

俺にはやっぱり彼女しかいないんだ!父さんと彼女は関係ないよ!母さんの方こそ分かってよ!』


亜紀とやり直すと2人で決めたんだ!
もう迷わない......
母さんを説得する!

口調が今までと違っていた。


その口調に驚いた母は

『....け..ん..........と』


息子の名前を呼びながら母は胸を押さえ倒れた。








No.287 16/07/16 07:42
名無し 


『?!.....か...あ....さん

大丈夫?母さん..,.返事して!』


そうだ...
今日は検診日だった...


付き添わず.....
植物園へ..,.行ったんだ.....,

(何て事をしちまったんだよ、俺)


ポケットからケータイを取り出し救急車を呼んだ。


そのまま入院となった。




No.288 16/07/16 08:01
名無し 

翌日、主治医に昨日の結果を聞いて分かったこと。


母の癌は転移していた。


長くはないと言われた。



昨日の検診日に付き添えばまだ対処出来たのに。
調子がいいと勝手に決めていた。

気がついてやれなかった。


これ以上手術に耐えられない程弱っている母の体。

今後は痛み止めの治療のみになる。




兄弟がいない俺にとって家族と呼べるのは母だけだ。

母さんが大事に守ってきた花屋も潰す訳にはいかない。


俺がしっかりしなくては.......


だが、亜紀とも約束をしてしまっている。


なんてタイミングが悪いんだろう...



ロビーの長椅子で1人頭を抱えた。


No.289 16/07/16 08:20
名無し 



花屋は亜紀に委せる事にした。

亜紀には辛い思い出しかないだろうが、快く引き受けてくれた。



長くは生きられない母にずっと付き添いたかったからだ。


(亜紀とやり直したい)

倒れたきっかけ..,...
最後になるかもしれない親子の会話がこれか?



言わなきゃ良かったのか?

いや、違う。

言葉を暴力的に使ったからだ。


そんな息子の記憶のままにしておきたくない。


母さんが目を開けた時

最初に目に飛び込むのは

いつでも、俺で有りたい。



No.290 16/07/16 09:15
名無し 


生花市場へ行く以外は病室で過ごした。

その為に個室を選んだ。

市場に行っては買った赤いカーネーション。


花言葉は『母への愛』


毎日病室に飾った。



寝ている事が多くなった母、店は亜紀が守っているとは知らない。



うつらうつらしている母に、



『母さん、ちょっと店の様子を見てくるよ。新しいバイトの子も1人じゃ大変だろうし』




『....あぁ....悪いねぇ、健人

頼んだよ......気をつけてね』

『うん.......』



そう言って亜紀に会っていた。



小さな嘘


大きな嘘


亜紀に会う為の口実




本当は生きてる間に認めてもらいたい。


嘘なんてつきたくは無い。



生きてる間に言わなきゃ.......


亜紀ちゃんと一緒になりたいと













No.291 16/07/18 10:30
名無し 



母が亡くなる3日前の事。


うつらうつらしている母に、


『母さん....

.........母さん.......』



『..........け....ん....と...?』


『ああ.....そうだよ.....俺だよ』


うっすら目を開けた。


『母さん、起こしてごめん。


俺、母さんに言いたい事があるんだ。聞いてくれる?』



母さんは小さく頷き目を閉じた。


『母さん......俺、母さんに嘘ついてた.......


本当は......,.


あの娘と.......亜紀ちゃんと......』



(会っていた........
母さんの大事な店で........)



No.292 16/07/18 10:40
名無し 

俺は今何を言おうとしているんだ!




嘘ついてごめんなさいと言っていない......



産んでくれてありがとうと言っていない......



育ててくれてありがとうと言っていない.......




感謝してもしきれない,.,.....




もっと親孝行したかった......


母さん!




上手く言 えない言葉は嗚咽に変わった。


No.293 16/07/19 17:32
名無し 

『........健人や......』

うっすらと目を開ける母。


『?!...か....あ...さん』


『あなたが幸せになってくれるのなら......

母さんはもう.....何も言わないよ.....

1度ここに連れて来て頂戴.....,

母さんから健人をお願いしますって言うから.......』


最後の力を振り絞る様に言った。


『?!母さん......

本当に?

本当にいいの?

無理しなくていいから』



痩せ細った母の手を握った。



『お前が幸せになってくれれば

それで......,もう......』



『母さん!母さん!


うん、うん。

明日連れて来るから.....』



嬉しそうな最愛の息子を見て、母は安堵し、静かに目を閉じた。



そんな母の表情を見て、健人は、白いシーツが被せてある病院の布団に顔を埋め、また泣いた。


(ありがとう....
ありがとう.....母さん....)




母はそのまま昏睡状態に陥り、2日後帰らぬ人となった。









No.294 16/07/20 16:49
名無し 

息を引き取る前日。


健人は、亜紀と正人を連れ病室に向かった。


朝の回診で、今夜が峠でしょうと言われたからだ。


母の胸に覆い被さっている真っ白い布団は、ゆっくりと上下に動いている。




『母さん、正人と亜紀ちゃんを連れて来たよ』



目は固く閉じられたまま動かない。


でも、きっと、聴こえているはずだ.......



『母さん......
改めて紹介するよ。


僕が今、お付き合いしている四角亜紀さんだ』



健人は亜紀をベッドの側に引き寄せた。




『四角亜紀です。



ふつつか者ですが.......



.......よろ..,...し..........』



声にならなかった。



(義母さん......

父の事、ごめんなさい.....

そして
許してくれてありがとう......

健人さんと一緒にお店を守っていきます


退院したあの日、たった1度だけだったけど、
大好きな花の話をしましたね。

ついこの間の様に思い出します。


もっと話がしたかったです。

義母さん.......)



言葉に出来ない亜紀の気持ちが健人に伝わり、その気持ちに応える様に亜紀の右手をギュッと握った。




No.295 16/07/21 17:38
名無し 

『おばちゃん!正人だよ!

俺と健人は兄弟の様に育ってるから、2人の事は俺に任せてな!


こいつらに何かあったら、俺、すぐに飛んで行くから.......


だから、おばちゃん、安心して』



最後の最後に亜紀を許すと言えた母の表情はとても穏やかに見える。


間に合って良かった、と。



母もまた、参りに来た3人を追い返した事、その日の夜、亜紀の父親が自殺した事をずっと後悔していたのだろう。


だが、一生懸命女手一つで育てた一人息子を取られたくない一心で、反対と言う口実を作っていた。



母の一周忌が済んだ後、二人は結婚した。


母の大切な場所で二人は出会った。


天国の二人の父達が引き合わせてくれたのかもしれない。



口実なんて必要ない


二人は出会う運命だったと...,...





※~完~※

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