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*~年下の男~*

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名無し
16/07/21 17:38(更新日時)

全て私の妄想です(*^^*)

登場人物は実在しません(*^^*)



16/06/20 22:39 追記
大変ご迷惑をおかけしました。

自己満足の世界ではありますが、また再開したいと思っとります

m(__)m

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No.2263317 15/10/07 11:02(スレ作成日時)

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No.151 16/01/22 09:23
名無し 





辺りは静かになった・・・・




『帰るぞ!!』



中学生グループではない
見たことがないお兄ちゃんが
私を(真弓)を優しく抱き上げた



あのお兄ちゃん達とは違う
優しいお姫様抱っこ・・・・


小さい頃
お父さんがしてくれた
あの抱っこに似ていた・・・・


私の腕は
お兄ちゃんの首に
回していた・・・・




『お前、団地に住んでるのか?』

真弓は首を縦に振った。


『とーちゃんとかーちゃんには
言うんだぞ!いいか?』

また、首を縦に振った。



団地近くまで来た時だった。


外灯でお兄ちゃんの顔が
見えた・・・・



(.....あッ!!........傷...........)



助けてくれた
お兄ちゃんの顔は
忘れたが
首に出来ていた傷は
ずっと忘れずにいた・・・・



今日・・・・
聡に会うまで・・・・
ずっと・・・・



(あの時のお兄ちゃん........)


















No.152 16/01/24 09:34
名無し 


『そうか、あんただったのか......なるほどな。それで、俺を.......』


『首の傷を見たとき......,
思い出したの。あの時のお兄ちゃんだって!あの時はありがとうございました。今までお礼も出来ずにごめんなさい』


『いや、いいんだよ。あの頃は俺も色々やらかしてたしな(笑)』


『えッ?!』


『いや、虐待じゃないよ!
喧嘩だよ、喧嘩(笑)』


聡は下を向いて、ふッ!、と笑った


『あの後、親にちゃんと言ったか?』

『ううん。
お母さんは仕事で疲れてて.......
お皿にお惣菜並べて、そしてオヤスミ......と言って寝たと思う....
....お父さんは野球中継を見てたと 思うけど...........』


『・・・・そうか・・・・
あんたも大変だったんだな・・』


『泥だらけで・・・・
足から口から血を流してても
何も言われなかったの......。
幼心にも..........言ってはいけない.....そぅ思ったし.......』


『・・・・』

『今の私があるのは、貴方のおかげよ!ありがとう!』

『そんな・・・・』

聡は照れていた。
人から感謝された事なんてなかった。


(俺、今までちゃんと、ありがとうと言えてたのかな?
境遇のせいにして、悪さばっかしてよぉ.......おまけに人殺しかよッ.......情けねぇな.....俺.......)


聡は走馬灯の様に自分の過去を振り返してみた。










No.153 16/01/26 09:15
名無し 


『今は幸せそうだな!
なんだか嬉しいよ、俺』


『うん、ありがとう.......,
だから・・・・
貴方も生きて・・・・
生き抜いて・・・・
私が与える命を
無駄にしないで欲しい........』


『.......うん.....わかった.....
しかし、不思議な縁だな、俺達
......あんたの所に押し入るなんてよ(笑)』


『そうだね(笑)
包丁を突き付けられた時は覚悟したけど........その後に見た首の傷で不思議と落ち着いたわ(笑)』



『いや、俺もさ、最初っから
変な展開でよ、正直戸惑ったよ(笑)呆気にとられていったというか.........』


『ふふッ♪でしょうね......
でもね、例え人違いであっても、私は貴方を助けようと決めていたの.......貴方を助ける事によって
自分の中で一区切りが出来るというか..........過去を終わらせられるというか..............本当は間違っているのかもしれないんだけど、
今は、私は、貴方を助けたい』


『・・・ありがとう・・・・』


『そうだ!お願いがあるの』

『なんだ?今なら何でも聞いてやるよ(笑)』


『私ね、ライターの仕事してて、つまり、貴方の事書いても良い?』


『えッ?まぢかよ(笑)』

『貴方の事だって判らない様に書くから・・・・』

『・・・・そうだなぁ・・・・
まッ!逃がしてくれるお礼に特別に許可するか!(笑)男前の設定で書いとくれよ(笑)』


『あはははは!
ありがとう♪聡さん』














No.154 16/01/26 09:43
名無し 


もう少しで逃亡から解放される安心感からか、聡の表情は明るかった。




(まもなく三番線に列車が参ります。ご注意下さい)


構内にアナウンスが流れる


終わる・・・・
私の恩返しも・・・・

真弓は思った。



ベンチから立ち上がった聡は



『今まで、ありが・・・・』
そう言いながら手を差し出した瞬間・・・・





『吉田聡だな!
任意同行を求める!
容疑は田中由香里殺害の件!
容疑者吉田聡!
あなたには黙秘権があり・・・』



三番線のプラットホームには
私服警官で溢れ返っている




真弓はぼんやりと
次々と男を取り押さえる様子を
見ていた



男は
あの時の自分に
似ていた




暴れる手足を押さえられ
騒ぐ口を塞がれ
フラッシュバックする私の脳が
警戒音を鳴らしていた






(助けてあげれなかった...........
あと、もう、ちょっとだった
のに...........)



『はぁぁぁぁ........
巧くいかねぇな........
ぁははははははは,...........』





泣きながら笑う私を

心配そうに

女性の警察官は

『もう大丈夫ですよ!』

そっと抱き寄せてくれた・・・・








*~完~*













No.155 16/01/26 09:52
名無し 

今まで読んで下さっていた皆様


ありがとうございました。


老眼の調子もみながら、また

投稿してみたいと思っとります

(*^^*)


その時は宜しくお願いします♪



ありがとうございました(*^^*)












No.156 16/03/02 11:16
名無し 

※~おはようございます~※

また性懲りもなく
ボチボチと綴って
みたいと思っとります(*^^*)

誤字脱字等
御迷惑をおかけしますが
宜しくお願いします(*^^*)

恋愛系の話のつもりです......





No.157 16/03/02 11:17
名無し 



※~口実~※

No.158 16/03/02 11:24
名無し 


私の名前は(四角亜紀)

私が小さい頃に父親は亡くなっている。

今は母と二人、ひっそりと生きている。

四角は父方の姓だ。

離婚した訳ではないからと
ずっと父方の姓を名乗ってきた。


私が25の時だった。


高校を卒業して勤めた会社が
倒産してしまった......


いきなり無職になった.....,



No.159 16/03/02 17:58
名無し 


ガラッ.....

亜紀の部屋の戸が開く。

『ちょっと!
いつまで寝てんの?
お母さん、仕事に行ってくるから。洗濯と夕飯の用意頼んだわよ!』

『・・ハァ~イ・・』
ヌクヌクの布団の中から返事をした。

(ッていうか、ノックくらいしてよね)

無職になって3日目の朝だった。

『じゃ、行ってきます!』

そう言って母は仕事に出掛けた。

(早起きしたって意味無いじゃん。だって私、無職なんだもーん)


そう呟きながら、ベッドから這い出た。


亜紀の部屋は居間を通らないと台所には行けない。

居間のテーブルには朝食が置かれていた。


玉子焼きとおひたし。
欠伸をしながらそれをチラリと目で追いやり、洗濯機のスイッチを押し朝食をとり始めた。


No.160 16/03/02 18:12
名無し 


さて、
仕事探さなきゃなぁ......
ケータイを開いた。


1つ気になる仕事が見つかった。
以前務めていた場所の近くで土地勘がある。同じ事務職だ。

派遣会社に連絡し、明後日の午後面接になった。

慌ててクローゼットを開ける。
リクルートスーツ.....
取っておいて良かった.......
が、試着してみるとお腹回りがきつくなってて焦った。

(たった7年でこんなに太ったの?もぅ、やだぁ.......)

座った途端、ボタン飛ばないかしら(汗)

亜紀はシャワーを浴び、履歴書を買いに行く事にした。


No.161 16/03/02 18:37
名無し 


面接当日。

事務所はすぐに見つかった。
職員は全部で4人。
▽▽支店で本社は博多だった。
なので、社長はここには居ない。

面接は二人居た。
男の人は人事部兼、支店長。
もう一人・・・・
一緒に働くお局風の人。
気が強そうだ。
多分、このお局と気が合う合わないで合否が決まるのでは?・・
そぅ思った。

給料もいい!待遇もいい!
あとは、このお局をクリアできれば・・・・

亜紀は、大人しい性格だから大丈夫だと思っていた。
お局様の言う事をハイハイと素直に聞ける性格だと!!

だが、お局は1度も亜紀の顔を見なかった。
若くて可愛い......それだけで気にいらない様だった。


支店長はチラチラとお局の様子を伺っていた。

『結果は2~3日後に連絡します』と言われて面接は終わった。



(多分.....駄目なんだろうな....)



久しぶりに着たリクルートスーツ。
少し緊張を解したくて商店街を歩いて帰る事にした。



(あ!花屋さんだ!)

店頭にある大きな向日葵が目に飛び込んできた。
思わず近づく。


(ふぅん、色々な向日葵があるんだ,.....何々?.......へぇ~,ジョーカーにソニア??........)



『いらっしゃいませ!』

店の奥から、太くて低い
男の人の声がした。




No.162 16/03/02 18:52
名無し 


声がするほうに、ふと眼を向けると、花屋には似つかわしくない大きな男が居た。
180cmはあるだろうか......
体格も立派な男の人だった。

(まー、確かに....
花屋さんて重労働だけども,.....)

でも、どうひいきめに見ても、
ゴツい!

エプロンが子供用に見える!
ダメッ!!
笑ってはダメょ!!

嗚呼~、手にしてる薔薇がミニ薔薇に見えるぅ~.........クスッ!!!

『いらっしゃいませ!
何かお探しですか?』

やだ....笑ったの....見られた?....


『あ!いえ....特に何も......』


『わかりました。何かありましたらお声を掛けて下さい』


『はい。ありがとうございます』


大きな体が狭い店内を往き来してる。

(森の熊さんみたいだ........)

亜紀は、また笑ってしまった。




No.163 16/03/03 09:59
名無し 

向日葵の次に観葉植物に眼をやる。

彼は私の後から来たお客様の相手をしていた。
どうやらお見舞い用の花束の注文が入ったらしい。

カスミソウ、スイートピー、ガーベラ等を器用に束を作っている。

亜紀はそれを横目で見てギャップに驚いた。

大きな手が右に左にクルクルと回転し、不思議な生き物に見えた。


(森の熊さんは......花.....好きなのかな?....,)








No.164 16/03/03 10:25
名無し 


亜紀は居間のテーブルに飾ろうとテーブルヤシを1つ手に取りレジに向かった。


『ありがとうございます。
726円です.....』

亜紀は千円を財布から出し


『千円お預かりし、274円のお返しです』


近くで聞いた彼の声は、大きな体から出ているとは思えない程、優しく穏やかなトーンだった。


(あッ!.....この声....好きかも,......)


そう思った。

お釣りを貰おうとした時、レジ横の案内が目に止まった。


(バイト募集,.....時給800円
休日.....日曜祝日)
と、書いてある。


亜紀は・・・・
『あの!,........』

とっさに出た言葉。

『はい?』

『あの!働きたいです。
ダメですか?』

一瞬面食らった森の熊さんだったが、

『いや.....水仕事だし、手は荒れますよ?それに力仕事だし、
大丈夫ですか?経験はありますか?』


『あ~、いや、無いです。
力もそんなには.....やっぱ、無理ですよねぇ~.,.......』


『あ!じゃ、花は好きですか?』

『はい。好きです』

『花屋って見た目とは違う、かなり過酷だけど、それでも良かったら採用です。明日からお願いします』



『..,...............えッ?』


『好きなら大丈夫かなぁッて.....
ははッッ!』


『.,....あ!でも、好きと言っても花の名前とかはあんまり......
今も、向日葵の種類が沢山あってビックリしてたとこなんです。
それに.....フラワーアレンジも出来ないし......う~ん、やっぱ止めときます。ごめんなさい.........』


『そうですか.......残念!』

さっきまでの笑顔が消えてしまった。








No.165 16/03/04 09:15
名無し 


(え?いいのかなぁ?)

『あの!やっぱ来ます。
好きな花に囲まれて仕事したいです!』


『ほんと?ありがとう♪
助かります!明日から
お願い出来ますか?』

『え?あ!はい。大丈夫ですが、何でですか?』


『実は母の調子が良くなくて人手が足りないんです。それに、時給も安いしで、なかなか......』

『それは、つまり.......』

『そうです。母が元気になるまでなんです。もしかすると、退院してもすぐに仕事が出来るかどうか、わからない感じなんですが...,.,ハハッ!.....すみません。こちらの都合ばかりの話で........』

大きな体で気の弱いことを言われると、なんだか気の毒になった亜紀。

亜紀は、先程の面接の様子では不採用だと感じていた。

次の仕事が見つかるまでここでバイトをする事に決めた。


森の熊さんは嬉しそうに

『では、明日から宜しくお願いします!そだ、お名前は?.......』

『四角亜紀です。25です。
宜しくお願いします!』

『浦田健人です。こちらこそ宜しくお願いします!あ!健人の健は健康の健です』


見た目と名前が一致した♪

亜紀はまた笑ってしまった。




No.166 16/03/04 11:30
名無し 

亜紀は家に戻り、洗濯物をたたんでいると母親が仕事から帰ってきた。

『ただいまぁ~、はーッッ!
今日も疲れたぁ....』

荷物を玄関にドカッと置いた。

『おかえり~、ねえねえお母さん.....仕事決まったよ!バイトで暫くの間だけど』

『え?そうなの?
後でゆっくり聞かせてよ!
まずは、風呂にビールね!』

『はいはい...沸いてますよ(笑)』



夕飯を一緒に頂いている時に亜紀は(今日の出来事)を話した。

『箸より重い物を持った事がない亜紀に花屋なんて勤まるのかねぇ~(笑)』

『失礼ね!大丈夫よ(笑)』

母親はテーブルに置かれたヤシを見ながら、
『できたらそのまま、その人と結婚でもしてもらいたいもんだね~』

『もぅ~、お母さんたら.....』




TVを観ながら笑う母をみて

(そろそろ結婚して、孫の顔でも見せてあげたいな......健康の健人さんか........)



ふと思い出して、顔が赤くなった。











No.167 16/03/04 20:07
名無し 

翌日......


『おはようございます!
今日から宜しくお願いします!』

『あぁ、おはようございます。
早速で悪いのですが、今、生花市場で仕入れてきたこの花を中に入れて下さい』


健人は車から降ろしている途中だった。

『わかりました』


『あ!これ、使って下さい』
と、軍手を渡された。


亜紀は花の入った段ボール箱を持ち上げた。


『重いなら無理しないで下さい。軽い鉢物をお願いします』

健人は吹き出る汗を拭いながら亜紀に言った。


(タオルや軍手、持ってくれば良かったな......)

自分の準備不足に恥ずかしくなった。思ってた以上に大変そうだと感じた。


『大丈夫そうなので運びます』


亜紀の力でもなんとかなりそうだ。だが、水分を含んだ生花は見た目より重たかった。


夏の暑い季節。
素早く花専用冷蔵庫に入れる。
落ち着いてから水揚げをするらしい。




No.168 16/03/04 20:24
名無し 

生花店で働いた事がなかった亜紀は、つきっきりで健人に色々教えてもらった。


レジの打ち方
掃除
値段
花の名前
etc.....


ラッピングの仕方や花束の作り方を教えてもらっている時、


時々.......
健人さんの手が
私の手に触れ
健人さんの
顔が近づく。


『ここは、こう持って........』


耳元で囁かれる,......

私の大好きなトーン.......


耳が.......くすぐったい......


胸の高鳴りを抑えられない........



勿論下心など、この人には無い。


けど、亜紀は内容が全く入らない程、健人の声に心を奪われた。



(耳、赤くなっていないかな.....?)

亜紀はそんなくだらない事を考えていた。








No.169 16/03/04 20:39
名無し 

バイトを始めてから1ヶ月が過ぎた。


徐々に仕事も覚え、接客にも慣れた頃だった。




『よぅ!健人』


『おー!正人。久しぶりだな♪
最近どーよ?』



『あ?ボチボチだなッッ♪
常連は相変わらずなんだが、新規がなぁ~(笑)なかなか新規の指名が入んなくてよお........今日もさ、常連の女の子の誕生日でよ、店来るッつーから花でも送ろうかと..............』


ふと、亜紀と目が合った。



『あれ?新しいバイトの子か?』

『あぁ、紹介するよ!
四角亜紀さんだ。とりあえず母さんが退院するまで働いて貰うつもりなんだ』


『四角です。宜しくお願いします』


亜紀は頭を下げた。

(チャラそうな男......健人さんの友達なのかな.......)


どう接してよいのか分からない亜紀の回りに居ないタイプで一瞬戸惑った。














No.170 16/03/06 08:20
名無し 


『四角ッて珍しい名前だねぇ~
インパクト強すぎぃ~(笑)』


亜紀は、こんなやり取りには慣れていて、ハハッ...と苦笑い。


『んで、こいつは幼馴染みの正人。ホストだよ!』


『ホストの瑠宇久(ルーク)でーす♪
よろ!亜紀ちゃん。良かったら
遊びに来てよ♪サービスするよー♪』

『あー、は・はい・・』

『可愛いねぇ♪俺の回りに居ないタイプだわッ』

と、名刺を渡された。

(健人さんとは大違いね。華奢な体でチャラい......金髪に香水プンプン.,....苦手なタイプ......)



『てか.......四角ッて....,..どっかで...,........まさかな.......だな.....』

『なんだ?正人、何かあるのか?』


『いや、なんでもねぇ』
意味深な発言を残したまま、話をすり替える正人。



『そだ、健人。適当に1万円程の花束作ってよ♪』


『おぅ、いいぞ!花は何にする?』


『あ?何でもいい♪
つか、知らねえし(笑)』

『ったく!お前はよぉ.....』


健人はカスミソウ、百合、青い薔薇10本、その他諸々を冷蔵庫から取り出しアレンジし始めた。



青い薔薇・・・・

花言葉は神の祝福・・・・


No.171 16/03/07 09:05
名無し 


『ねぇねぇ亜紀ちゃん♪
いくつ?彼氏とかいんの?』


『あのぅ....私仕事中なんで、
すいません』

『いいじゃん!
俺、客だよ?はははは.......』

亜紀はチラリと健人を見た。
真剣に花と向き合っていた。


(こんなチャラい男から贈られる花たちが可哀想.....せめて、健人さんの優しさが受け取る人に伝わりますように,.....)

そう心の中で願った。




『よし!正人、こんなもんで良いか?』


『あ?青い薔薇?なんじゃそりゃ(笑)』

『売れないんだよ、高くて(笑)
だから買ってくれ(笑)』


クスッ♪

亜紀は健人と正人のやり取りに笑ってしまった。


『しゃあねぇな..,...ま!適当にって言ったのも事実だ』

『毎度ありがとうございます』

『おお!そだ、花言葉はなんだ?』


『神の祝福だよ!』

『おお~、それいいね!気に入った。そんじゃ行くかの.......亜紀ちゃん、またね!』

『おいおい俺には?』

『また来る』

『ありがとうございました』

『正人!また来いよ』




『健人さん、正人さんと仲がいいんですね♪』

『そうだな。腐れ縁だな♪
どういう訳か気が合うんだよなぁ.,.....亜紀ちゃん不思議に見えた?』

『はい!かなり.......』


『あははははは♪』

健人は大きな体を揺らし大きな声で笑った。


つられて亜紀も笑った。


(可愛いなぁ.....健人さん♪)

花屋とホストクラブ.......

どちらも一見華やかな世界に見えるが、水面下では過酷な一面がある。そういう意味では同じかも知れない...... そぅ亜紀は思った。
















No.172 16/03/07 09:34
名無し 

~ここはホストクラブ~
正人・・・瑠宇久の職場だ。

キラキラと耀くネオン街.....
各店の入り口にはホスト達の顔写真が飾ってある。

街を往き来する女の子達の目を引く。


正人の店は従業員20人程の小さなクラブだ。

ここのオーナーの好みで全員20代のイケメン揃い。

その中で瑠宇久はNo.4.......
微妙な立ち位置だった。



ホストクラブ・・・・
女性に夢を売る別世界・・・・

棚に並んだ高級なボトルの数々....女の子達はここに来てお気に入りのホストを喜ばす為に羽目を外し、高級シャンパンやコニャックをオーダーする。


これもれっきとした仕事,......
正人はこの仕事に誇りを持っていた。



正人が居るこの店のNo.1は真也。


この日も、お店に来ていた女の子達の半数は真也目当て。
いつもだいたいこんな感じだ。


瑠宇久も負けじと今日が誕生日の女の子と同伴出勤した。





No.173 16/03/08 08:48
名無し 

真也は瑠宇久の隣のテーブルに着いていた。


『毎日僕に逢いに来てくれてありがとう!嬉しいよ♪』

真也は女の子の肩を抱き寄せた。

『だぁってぇ、真也君以外の男に興味無いんだもーん』

『僕、ホストだよ?(笑)』

『いいの、いいの。今だけは私だけの・も・の。フフッ♪』

女の子は真也に抱き付いた。



『真也さん』

『ん?』

『××様、いらっしゃいませ!
真也さん失礼します。指名入りました』

『あ!そう.....
ごめんね、指名入ったから行くね.......』

『えええええ~、真也くぅ~ん』


女の子を置き去りにし素っ気なく去る。これもまた、独り占めしたくなる、ライバル心を煽る作戦だ。



真也を呼びに来た下っ端のホストが代わりに女の子の相手をした。


下っ端にすればこれはチャンス!
接客内容によってこっちになびいてくれれば儲けモンだ!



ホストは女の子のハートを一生懸命くすぐった。





No.174 16/03/08 11:16
名無し 


そんなやり取りを隣で聞いてた瑠宇久。


今、店内に瑠宇久目当てはこの子だけ。


とりあえず健人の店で買った花束を渡し誕生日を祝った。



瑠宇久のサブに入っていたホストが

『誕生日おめでとうございます♪』と音頭をとった。


『××ちゃん、おめでとう♪』

『ありがとう♪瑠宇久ぅ~』


瑠宇久はグラスを両手で持ち、相手のグラスの下半分の位置に合わせ音を鳴らした。


ホストの基本中の基本。
どんなに仲良くなろうと基本は真面目に守る.......それが瑠宇久だった。


その性格が時には邪魔になり、No.4止まりなのかもしれない。


No.175 16/03/09 11:19
名無し 


亜紀のバイト生活は2ヶ月目に突入した。

軽い気持ちで始めたバイトだったが、仕事探しはしていなかった。

健人に会える毎日が幸せだった亜紀。


接客中の健人を目で追ってしまう。

狭い店内で健人を探してしまう。


大きな体の健人はすぐに見つかるが、それでも存在を目で確かめていたかった。



亜紀は配達も任される程になった。
今日は業務提携している美容院の鉢の入れ換え。

カポックにガシュマロの鉢。
車から下ろすのにも一苦労。

『お疲れッッ♪どう?大丈夫だった?』

帰宅した亜紀に聞く健人。


『はい....なんとか(笑)明日の筋肉痛が心配です(笑)』


『ははッ♪若いから大丈夫!
あ、そうだ、手.,.....出して』

『え?なんですか?』


突然、亜紀の手にハンドクリームを塗る健人。


『え?え?』


『今は荒れるコト無いけど。今のうちに皮膚を強くしておくと、冬、楽だから......俺もこれ、塗ってるんだよねぇ』


そう言って健人はマッサージも兼ねて念入りに塗り始めた。

『段々と水も冷たくなるから。
まぁ、頑張って』

『.....はい,..,...』



二人の目線はお互いの手と手。
くすぐったいのと、恥ずかしさと、気持ち良さと.....



亜紀は(このまま時間が止まらないかなぁ)


と、同時に、今の状況に耐えられなくなり

『あの!もぅ、これで,....,』

『あ!そ・そうだね。ハハッ♪
じゃあこれでおしまい!また明日頼みます』


『はい。お疲れ様でした』


亜紀の手は血色の良いピンク色になっていた。

帰り道、何度も何度も薄紅色の空に手をかざし、さっきまでの温もりを名残惜しむように眺めた。


その日を境に、仕事終わりには健人が亜紀の手にクリームを塗るのが日課になった。


(手を触っていたい..,..
クリームなんて口実さ!)


そんな健人の気持ちを知ってか知らずか、亜紀は恥ずかしがってよく断った。








No.176 16/03/10 11:32
名無し 

仕事もほぼ覚えた亜紀は、手が空いてる時には健人と雑談もするようになった。

お互いに父親がいない事や独りっ子あるあるで盛り上がったり.....


ある日の事。


『そういえば健人さんのお母様の調子は如何ですか?』

『それなんだが、明日手術なんだ。付き添いたいから明日は臨時休業するね』

『わかりました。無事終わると良いですね』

『うん!ありがとう』



............『あの......健人さん』

『うん?何?』


『私一人で店、開けます。少しは自信ついたし、売り上げも、少しでもあれば入院費用の足しにもなるし.......どうですか?』


『そお?いいの?じゃ、お願いしよっかな♪』

『はい!頑張ります♪』


『俺さ、亜紀ちゃんが居てくれるだけで心強いよ.....一緒にいて楽しいし、一生懸命で健気で、俺...............
はッ!何言ってんだ!と・ともかく、明日はお願いします』

『はい♪』


(俺.....の続きが聞きたかったなぁ♪.......健人さん、少しでもあなたの助けになりたいです)


不安はあったが、健人を思う気持ちの方が強かった。





翌日。
店のシャッターを開けると、既に花が各位置に置かれてあり、直ぐに営業出来る状態になっていた。

(あれ?健人さん.....仕入れ、早めに行ってもう終わらせたの?)


健人の優しい気遣いに感動した亜紀。



時計をみると開店時間だった。

よし!店を開けよう!


健人さんのお母さん、手術頑張って下さい。
私はここで頑張ります!


そう呟いた。




No.177 16/03/11 09:04
名無し 

朝から1人頑張っていた亜紀。

時計を見ると夕方になろうとしていた。


(手術.....無事終わったのかなぁ)

ふと、気が抜けた時だった。


『ちわー!亜紀ちゃん居る?』


『は、はーい!
いらっしゃいませ~』

『よう!元気かぁ?』

『あ!正人さん。健人さんは今........』


『知ってるよ。だから来たんだよ。んで、あいつは?』

『いえ、まだ......』


『ふぅん、そっかぁ.....』


正人は店内を落ち着かない様子でうろうろしていた。

亜紀は
(幼馴染みという事は健人さんのお母様を知っているという事よね......健人に聞けなかった事......正人なら知っているかも....,.)



『あの.....』

『ん?何?』


『健人さんのお母様は何処が悪いんですか?』

『そっかぁ、亜紀ちゃん知らないんだ。癌だよ.....もう何度目かなぁ......再発を繰り返しててさ.......』


『えッ?』

いつも明るく振る舞っている健人からは想像出来なかった。

『あいつんち、とーちゃんいないじゃん?かーちゃんが花屋を切り盛りして健人を育てたんだよ。ここの花屋はあいつら親子にとって大切な場所なんだよね。無理がたたったのかなぁ......』


『それじゃ、お父様もご病気で?』

『いや、違う。ま、そのうち教えるよ。じゃあ、俺、行くわ』

『あ、はい。健人さんには正人さんが来たこと伝えておきます』


『りょーかい♪んじゃ.......』


ちょっとショックだった。

そんな大切な場所で健人にドキドキしてた自分が恥ずかしくなった。


亜紀は溜め息一つついた。


No.178 16/03/11 09:29
名無し 


『ただいま~、亜紀ちゃん?』


『あ!健人さん。お帰りなさい。たった今、正人さんが........』


『そぅ......あいつ、心配して来てくれたんだ.......』

とても疲れている様子の健人。

亜紀もそれ以上話かけずに下を向いた。

今日1人頑張った事、大切な場所でドキドキしてた事、いろんな感情が入り交じり、亜紀は何も話せなかった。


『亜紀ちゃんも今日はごめんね。大変だっただろ?1人心細かったね?ありがとうね。大丈夫だったかい?』



(こんな時でも私の心配まで......
健人さん..........)


張りつめていた緊張が切れた


健人に抱き付いた。



『え?え?』



はッッ!!!

『ごごご..ごめんなさい......』


恥ずかしくなり下を向いた。



『亜紀ちゃん......ごめん』


そう言って健人は亜紀の顔を両手で挟みキスをした。



健人もまた同じ
張りつめていた緊張が切れた瞬間だった。






No.179 16/03/12 09:01
名無し 





『..........ごめん...ね....』


『......ぃぇ............』

健人もまた、同じ想いだったのか

嬉しくて涙が出そうになった。



『亜紀ちゃんの顔を見たらホッとして........寄りかかりたくなった........ごめんな.....』

亜紀は頭を左右に振った。



沈黙を破る様に

『そだ!手術巧くいったよ』


『そうなの?良かったぁ!
良かったですね♪』

『うん、ありがとう。暇な時間帯は病院に行くから、また店の事宜しくね』

『はい!大丈夫です。いっぱいいっぱい行ってあげて下さい』



最初は声が好きだった。

それがきっかけでバイトを始めた。


今は
全部好き......

大好きです
健人さん......







No.180 16/03/13 07:21
名無し 



『・・・き?
・・・・亜紀?』


『・・・・え?
何?お母さん』

『何ってこっちが聞きたいわよ!どーしたの?ぼーっとして』


『え?あ?....あの、ね...,
今日は1人で店番したから疲れてるのかも......』


『ひとり?』

『そう。お母様の手術の日だったから』

『そぅ.....大変ねぇ....』


亜紀は健人とのキスを思い出していた。


『ねぇ、お母さんも病気になったら、手術には付き添ってね。寂しいからね』


『ちょっとぉ!縁起でもない事、言わないでよ!冗談でも止めてよね』


『あはははは♪ごっめーん』


(まったく!)

ビールでほろ酔いの母。


そぅか.....そぅよね.....
私も母1人子1人。


お母さんのいない生活なんて想像も出来ない。


健人さんも同じなんだね。


早く明日にならないかな♪

急に愛おしくなった。



No.181 16/03/13 09:14
名無し 

翌日。

『おはようございます』

『おはよう!今日も頑張ろうね』

『はい!』


亜紀は健人の口元を見た瞬間、昨日のキスを思い出してしまった。

急に頬が赤くなるのを感じた。

それは健人も同じで、二人ぎこちない朝のスタートとなった。


そして、いつもの様に仕事を終え亜紀が帰宅しようとエプロンを外した時だった。

『亜紀ちゃん、話があるんだけど』


『はい?なんでしょう?』



『.....僕と、付き合って下さい』


『.......え?.....』


『あ!急にごごごめん。忘れて.....お疲れ様でした』

そう言って後ろを向き後片付けを始める健人。


(そんなぁ~........
私、嬉しいのに.......)


『健人さん、私と付き合って下さい。お願いします』
亜紀は手を差し出した。



びっくりした形相で振り返る健人。

『いいの?』

『はい♪私、健人さんじゃなきゃ駄目なんです』


『よかったぁ~』

ヘナヘナと座り込む。


『亜紀ちゃんに振られたら恋心もバイトも失うとこだったよ』


『やだぁ~健人さんったら。
私バイトを決めた理由は健人さんの優しい声だったんですよ♪』


『そうなの?』

『そういう健人さんは私でいいんですか?』


『何言ってんの。即採用したでしょ?それが答え』


座り込んだ姿勢のままで亜紀を見上げニコリと笑った健人。


『可愛いなぁって思ってたんだ。亜紀ちゃんが働きたいって言わなきゃ僕の方から聞こうって思ったくらい(笑)』


『ん?』


『初めての客だし、大きな鞄持ってリクルートスーツ着て変な時間にうろうろしてたし(笑)』


『あー、成る程!よく見てますね(笑)さすが商人!』

『あははは!止めてくれ、あきんどッて』


よく笑う健人さん、大好き♪


(このまま結婚でも・・・・)
母親が言ってた事を思い出し、独り顔を真っ赤にした。


こうして二人は付き合う事にした。










No.182 16/03/14 08:58
名無し 

付き合う事を決めた翌日。

出勤前の正人が店に来た。

『よう!健人。おふくろさん、どうだった?』


正人は電話でも聞ける事を直接健人から聞きたくてやって来た。


『よう!正人。この前は留守で悪かったな。大丈夫だよ!心配かけたな。ありがとうな』


『そか!なら良かった。おー、亜紀ちゃんおはよう♪』

ホストの正人は夕方でも(おはよう)が普通だ。

亜紀も『おはようございます』
そう返した。

『明日くらいにでも集中治療室から出れると思うから。今日も店閉めてから病院行くし、正人が心配してたって言っとくわ』

『あったりめーだろ!俺も健人のかーちゃんには世話になってっからよー』

『ハハッ!そうだな....,』


『そんじゃ、俺、仕事行くわ。亜紀ちゃんまたの♪』



『あ!正人.....』


『あ?』


『あのさ、こんな時にアレだけど、俺達付き合う事にしたから』


健人は亜紀を傍に寄せた。

照れてる亜紀は軽く頭を下げた。

『はぁ?まじ?』

『マジ(笑)』




『ふ~ん.......亜紀ちゃん。
こいつは止めとけ。マザコンだ!
ほんじゃ.....』

『えぇ~、本当ですか?(笑)』

『マジもマジ!だから止めとけ(笑)』

逃げる様に入り口に向かう正人。
その後ろ姿に向かって今度は健人が

『あほか!』
と、吐き捨てた。

『あははははは♪』
亜紀は大笑いした。


『違うからね。ジョークだからね』


心配そうに亜紀に言った。









No.183 16/03/14 09:21
名無し 


正人は店に着いた。

『瑠宇久さん、おはようございます 』


『お~、おはよう。今日も宜しくな』


後輩のホスト達が店内の掃除をしている。

No.4の瑠宇久は、灰皿、グラス、トイレのチェック担当だった。

一番下っ端はトイレ掃除から入る決まりだ。




今日のこの日も、瑠宇久は同伴出勤出来ずにいた。


時刻は17時を回っている。

OL達は仕事は終わってるはず。


瑠宇久は掃除された店内の椅子に座り、片っ端しに登録されている女の子達に連絡した。


『よぉ!××ちゃん!久しぶり♪今日この後どぅ?久しぶりに来ない?俺、そろそろ会いたいんだけどさー、・・・・ダメ?・・・・あぁ、そうなんだ、残念!・・・・あぁ、分かった。てか、また来てくれよな♪
ん!バイバイ!』



玉水!!!


ああああああああああ..........,.















No.184 16/03/15 10:24
名無し 


同じ職場という事は毎日がデートみたいなものだった。

朝から念入りに化粧をする亜紀を母はよくからかった。


『彼氏が出来るとこうも違うのかねぇ~(笑)』


『ち..違うわよ!接客業だから失礼の無いようにしてるだけ!んもぅ、あっち行ってよ』


『はいはい♪......そうだ!いつかは会わせてよね♪どんな人か気になるし』


『分かった分かった!』

最後に口紅をさした。



『じゃ、行ってきま~す♪』


『行ってらっしゃ~い。
恋に仕事に頑張ってねぇ~(笑)』


『ちょっとぉ....!仕事に行けないじゃん』


『あ~(笑)ごめんごめん..,もう言わない』


『.....ヤバい!遅刻遅刻』



亜紀は健人に早く逢いたくて駆け足で駅に向かった。



No.185 16/03/15 17:52
名無し 


季節は夏も終わりに差し掛かろうとしている。


初めてこの店に立ち寄った日には向日葵が目に飛び込んだ。

今全盛期を迎えている花はキンモクセイ、秋桜、クレマチス、ブーゲンビリア・・・・亜紀の好きなトルコキキョウ.....色とりどりの花が咲き誇っている。


季節ごとに咲く花を覚えるのは大変だった。


健人は
『徐々に覚えていけばいいよ
。分からない事は俺に聞いて』

客がいないことを確認すると、亜紀の頬に素早くキスをした。


恥ずかしくて下を向いた亜紀だったが、

(いっぱいキスをしたいなぁ~
いっぱい手を繋ぎたいなぁ~
健人さーん♪)

亜紀からもキスをしようと顔を上げた瞬間.......



『いらっしゃいませ~』
健人は客に挨拶をしていた。


慌てて現実に意識を戻す亜紀だった。





客足が落ち着いた午後。

『そだ!亜紀ちゃん。今日河川敷で花火だね。仕事が終わったら一緒に行かないかい?』

No.186 16/03/16 08:59
名無し 


『え!?....行きたいです。健人さんと一緒に行きたい』

亜紀の心はワクワクした。


『そういえば、デートらしいデートしてなかったね。ごめんね』


『大丈夫です。毎日ここであえたから寂しくなかったですよ♪それに、健人さんお店に病院に忙しそうだったし....朝だって市場行かなきゃ.....』


『明日は日曜日だから大丈夫さ。それに、母ももう自分でなんでも出来るから、今日くらいは...』


『え?え?...じゃぁ.....』


『うん!亜紀ちゃん、デートしよう♪』



『嬉しい~♪ありがとう、健人さん』


『今日は早めに店を閉めようか』

『はい♪』







No.187 16/03/16 09:27
名無し 


いつもより一時間早く閉店し、河川敷に向かった。


8月最後の週末。
学生達も長い夏休みが終わる。
まだ遊び足りないのか、羽目を外している学生の数は凄かった。


(浴衣くらい着たかったなぁ♪)


花火ともう1つの楽しみといえば出店だ。
チョコバナナにリンゴ飴、かき氷にヨーヨー......


(うわぁ♪どれも美味しそう♪)

そんな表情の亜紀を見て健人は

『そういえばお腹空いたね。焼きそばでも食べる?』

『え?』(食べたい!でも、前歯に青海苔でも付いていたら間抜けな顔になるしなぁ~....)

『い・いえ....暑いし、かき氷にしよっかなぁ~♪ァハハ...』

『そぉ?顔にお腹空いたって書いてあるよ』


『え?嘘?』慌てて顔を拭く亜紀。


『あははははは♪冗談だよ!ごめんごめん(笑)』

『やだぁ~、もぅ!!』


『しかし、凄い人の数だね......亜紀ちゃん、手を繋ごう』

『え?』

『しっかり俺の手を握って!』

『はい♪』


手を繋いで初めて歩く。

キスは何度もしているのに.....

場所が変わっただけで
ドキドキが止まらない。



向こうの方でバンバンと音が鳴った。


『行こう!』

健人は亜紀の手を引いた。


まるで未来に向かって走り出すように。















No.188 16/03/17 09:07
名無し 


適当な場所を見つけて二人で座った。

花火はもう始まっていた。





『あ!見た?今の・・・
ハート型だったね~♪』

『見た見た!可愛い~♪
あ!次のは星の形だったよ。
最近の花火って凄ーい!!』


あちらこちらで歓声が上がっている。



『あ!私、これ好き!
柳みたいなこれ♪』

『ああ、これね。そう、そのまんま、柳って名前だよ♪』

『そうなの?』

『似たやつで冠菊っていうのもあ有るけどね。俺はね、通称(ハチ)って言うのが好きなんだよね~♪シュルシュルッッて回転しながらアチコチ飛び回るやつ(笑)』


『へぇ~、健人さん何でも知っているのね♪花に花火に.......凄ーい!!』


『.....昔さ、いつか好きな子と来た時の為に、花火について調べた事あるんだぁ......。ま~、今日の今日まで女の子と来た事無いんだけど(笑)......今日、やっと役にたった♪ハハッ...,.』


『そうだったんですか....お役にたてて良かったです(笑)』



『亜紀ちゃん....』

『はい♪』


健人は花火を見上げたまま

『ほんとは花火なんてどーでもいいんだよ.....本当は.....,亜紀ちゃんともっと一緒に居たかった、亜紀ちゃんの事もっと知りたかった。花火大会なんて只の口実なんだ,..............



好きだ.....亜紀ちゃん』



『私も.........好き....』




花火もそろそろ終わりに近づいた。


色とりどりの打ち上げ花火......


スターマインをみんなが見上げている間、二人はキスをし将来を誓いあった。





No.189 16/03/17 10:05
名無し 

花火大会から1週間が過ぎた。

客足も落ち着いた午後の事。

昼休みを利用して病院に行ってた健人が

『明日、母さんの退院が決まったんだ』

『そうなんですか?
おめでとうございます♪
良かったですね。
無事に退院出来て』

『うん♪ありがとう。それでね、退院後1度店に寄るから会ってやって。母さんと.....』


『えええ~、突然過ぎます。
挨拶、何も考えてません』


『大丈夫だよ!暫く2階で療養するし、会う機会も少ないだろうし.....明日がチャンスなんだよ』

健人の自宅は花屋の2階にある。



『気に入られなかったらどうしよぅ....』


『大丈夫!大丈夫!今から緊張してどうするの(笑)』


『アハッ!ごめんなさい、慣れてなくて(笑)』

『俺も(笑)』


どんなお母様なんだろう......
お父様は居ないって言ってたし。

肝っ玉母さん?!
いやいや、健人さんのお母様だもん、優しい人だよね、きっと...,.






No.190 16/03/17 10:32
名無し 


翌日の午後。

健人は母を連れて帰って来た。



『ただいま!亜紀ちゃんいる?』

『あ!お帰りなさい』


『母さん、この方が亜紀さんだよ。紹介するね!今お付き合いをさせてもらっている亜紀さんだ』


『は・初めまして。亜紀です。宜しくお願いします』


『まぁまぁ、健人の母です。いつも健人から話を聞いております。この度はお世話になりまして..,.』


『いえ、私の方こそ、分からない事だらけで、いつも迷惑掛けて申し訳ありません』


健人の母は、久しぶりに見る店内をいとおしい眼差しで眺める。


『まぁ~、綺麗に掃除が行き届いてて嬉しいわぁ~♪ありがとうね、亜紀さん♪健人1人じゃ不安だったのよ』

『いえ、こんな事しか出来なくてすいません』


楽しそうに話す二人のやり取りを温かく見守る健人。

(この二人なら上手くやっていけそうだな)そう感じていた。




『そういえば.....名字はなんですの?どちら出身の方かしら?』


『四角と申します。漢字の四にかどの角です。私が産まれたのはここですけど........出身は.......』
(....,...そういえば知らない....)


『母さん、珍しい名前だろ?お客さんにも直ぐに覚えて貰えるし、良いことずくめなんだ~』


『やだ!恥ずかしい.....』




『!?・・・・し・しかく?・・・もしかして・・・・お父さんは亡くなっていらっしゃる?』



『え?は・・はい。
でも、どうしてそれを?』



『やっぱり..,.....』
驚きを隠せない表情でそのままよろけた。



『健人.......母さんちょっと疲れたから部屋で休むわ......連れてって頂戴』



そう言って花屋の2階に上がって行った。




No.191 16/03/19 09:26
名無し 


(急にどうしたんだろう.....
亡くなった父と何かあったのかな?)


尋常ではない健人の母の様子に、亜紀は不安になった。



健人の母は部屋に入るや否や、健人の腕を掴み

『あの子だけは止めて頂戴。
お願いだから、ね....』

『ちょっ・ちょっとどうしたんだよ!何があったの?四角という名前に妙に反応してたけど』


『お願いよ....あの子だけは..,.
あの子だけは.....どうしても....,』
懇願する母。



『そういえば、正人も変な事言ってたな.......四角がどうのこうのって........』



『正人君が?.....そぅ.......。
ともかく、頼んだからね。
母さん疲れたから少し休むわ。
......お願いね..,...あの子だけは止めてね』



『う・うん......お休み。ゆっくり休んで!』



健人は母親が眠りについたのを見届けると下に降りた。



『あ!健人さん。お母様大丈夫ですか?』


『..........ん?あぁ、大丈夫さ。疲れただけだと思うよ。それより、気を悪くさせてごめんね』

亜紀は首を左右に振り
『私なら大丈夫ですから』


『ありがとう。なんだか俺も疲れちゃった(笑)このまま店、閉めようか』


『え?あ、はい』

『お疲れさん』
そう言って、健人は後片付けを始めた。

その後ろ姿に向かって

『お疲れ様でした』
そう言えるのが精一杯だった。



健人は
(何故亜紀ちゃんはダメなんだ?)

亜紀が帰ったのも分からない程、考え込んでいた。



No.192 16/03/20 08:50
名無し 


その頃の瑠宇久は・・・・。


営業メールやキャッチに明け暮れていた。
なかなか同伴や指名日のノルマが達成出来ないでいた。



そんな中、No.5の修羅がぐんぐん伸びていた。
歯の浮くような嘘を並べた営業トークは抜群に上手い。
ホストは惚れさせてなんぼ....,


最近、この修羅にお熱の杏子はほぼ毎日来ていた。


杏子はキャバ嬢。
最初は修羅がキャバクラに自腹で通い、逆に杏子をホスト通いに方向転換させるという、惚れさせた修羅の勝ちという立ち位置関係だ。



『ねぇ~、修羅ぁ~♪
いつホスト辞めて私と一緒になってくれるのぉ~』


左手は杏子の腰に
右手は太ももに
そして、唇は杏子の耳元


『貯金あともうちょっとなんだよ...,.お前と一緒になるには安いマンションじゃ格好つかないしさ、お前に贅沢させてやりてぇんだよ♪だからよ.....なぁ、杏子.......今夜も......ボトルいいかなぁ?今月のノルマ達成、厳しくてさ.....』


『えぇ~?...んもぅ、しょうがないなぁ♪じゃぁ.....修羅とぉ、私の為に.......いれちゃおッッかなぁ♪』


『おっ♪やりぃ!じゃピンドンもう1本お願い♪ありがとう、杏子』

杏子のおでこにキスをする。


『あ~ん、修羅~♪愛してるぅぅぅぅ(*''ε`*)』


サブについているホストにピンドンを持ってこさせた。





No.193 16/03/20 09:48
名無し 

(バカな杏子(笑)誰がお前と一緒になるかよッッ(笑)お前から絞り取れるまで取って、取れなくなったらハイッ!さよならだ(笑))


修羅には杏子の他に二人、同じ結婚という匂いを漂わせ貢がせているキャバ嬢がいる。

(お前らも同じ穴のムジナだろ?
ホストとキャバ嬢なんて騙し合いの世界なんだよ!)



修羅はこの世界で生きるのは5年と決めていた。
貯めたお金で地元に戻り、ショットバーを開く夢があった。


(あと2年......時間はねぇ....,.
稼がなくては,.....,.)



だが、杏子だけで売掛金は100万になっている。
回収出来ない場合はホストが立替するのがこの世界のルールだ。


(そろそろこいつも終わりかな)

杏子の肩を抱き頭の中でそんな事を考えている修羅だった。




少しだけ修羅のサブについていた瑠宇久はそんなやり取りを見てて



(あそこまではやりたくねぇな....そりゃ夢を売る世界だけどよ,....)

そう思いながらも仕事と割り切って女の子を甘い世界に気引き込ませるテクニックに羨ましい一面もあった。

No.194 16/03/20 16:22
名無し 



(もうすぐ今年最大のイベント、開店5周年祭がやってくる。この日は何としてもノルマを達成しなければ。店一丸となって盛り上げなければ)

瑠宇久は気合いを入れ、街ゆく女の子達に声を掛けていた時だった。


『あれ?亜紀ちゃん?』



『.......あ!正人さん』

『どうした?まだ仕事の時間ぢゃねッ?』

『そうなんですが.......お母様が退院して来られて.....』


『会ったのか?健人の母親に』


『はい....そしたら名前が、どうのって.....それで.......』


歯切れの悪い亜紀を察知した。

『もしかして、四角で、か?』

『そうだ、正人さんも何か言ってましたよね?うちと何かあったんですか?教えて下さい。何があったんですか?』


(健人は知らねぇんだな........
どーすっかなぁ.......)



『お願いします。嫌です、こんな状態....お店にも慣れたし、健人さんとも.........』


今にも泣き出しそうな亜紀を見て


『そんな顔すんなよ.......
いじめたくなるだろ?』


『.............』
どこまでが冗談で
どこまでが真剣なのか


『おいで!道の真ん中じゃあれだ。サ店でも入ろう』


正人は亜紀の手を取り歩き出した。



(健人も知らない秘密
言っても良いものなのか......)


悩んでいた。












No.195 16/03/21 21:37
名無し 

近くの喫茶店に入った。


『いらっしゃいませ~
あ♪瑠宇久だあ~♪
会いに来てくれたの~?』

『最近店に来ないからさ、寂しくって(笑)』


後ろに居た亜紀と目が合った。


『やだ!女の子連れ?最低!!』

亜紀は瑠宇久の常連らしい店の女の子にジロジロと見られた。

(私、関係無いんだけどな......)
嫌な感じがした。


『んもぅ!!後で行くから迎えに来てよね!』

『わかったから。後で連絡くれ。亜紀ちゃん行こッ!』


店の一番奥に座った。

『あ!俺、コーラね。亜紀ちゃんは何にする?』


『じゃぁ、同じのを下さい』

瑠宇久は女の子を呼び注文する。

と同時に、熱いおしぼりを広げ亜紀に渡した。


『さすがね♪いつでも抜かりは無いのね(笑)』


『あぁ?あー、おしぼりか?
もう板に着いちゃってよ(笑)
仕方ねぇんだわ(笑)』




『それより、教えて下さい。
何故四角と言う名前に反応するのか.......』

何を言われるのかドキドキしながら待った。





まだ迷いはあったが真剣な亜紀を放っておけなかった正人は


『あのさ、健人の父親が亡くなったのは交通事故なんだよ。飲酒運転でさ、その・・・・』


プルプルッ♪と亜紀の電話が鳴った。


『健人さんからだわ。ちょっとごめんなさい。もしもし?.......』

亜紀は一旦店を出た。







No.196 16/03/22 08:14
名無し 


『もしもし?亜紀ちゃん?
今どこ?』


『まだ近くです。正人さんと
喫茶店にいるの』


『正人と?』

『うん。途中でばったり会って』

『そぅなんだ......それより、ごめんな。俺も疲れてて無意識に素っ気なくしちゃって.....気になって電話したんだけど。それとさ、母の事も.......この後も聞いてみるからさ.......』


『うん、ありがとう。私も母に聞いてみる』


『声を聞いて安心した。
気をつけて帰るんだよ.....』

『はい♪また明日ね,..,.』

『うん。また明日......じゃ....』

『お休みなさい。健人さん』

『おやすみ』



亜紀はサ店に戻った。

『ごめんなさい、正人さん』

『亜紀ちゃん、ごめん。
仕事戻んなきゃ。指名入ったんだ。ごめん、また後で,...,....』


そう言って伝票を取り急いで帰って行った。


目の前にはコーラが2つ..,.,....

氷が溶けて、グラスには水滴が落ちていた。
亜紀はその1つにストローをさし、
一口飲んで家路に着いた。





No.197 16/03/22 10:40
名無し 

翌朝、悶々とした状態で出勤した亜紀。


昨日は結局正人からも、飲み会で遅くなった母からも聞けなかった為、あまりよく眠れなかった。


(健人さんから聞かなくちゃ.....)

亜紀は1本早い電車に乗った。



『おはようございます。
健人さん、あの..,.,......,』


『...あ!亜紀ちゃん、おはよう。...,あ・あの・さ、実は..,..
母が今日から出勤する事になったんだ......そ・それで・ね・・あの・・その・・』


目は焦点が定まっていない......
明らかに挙動不審だ....,...



『それって・・・
つまり・・・・』


『ごめん・・・・
だから、もう・・・・
来なくていいよ・・・・』


『なんで?急にどうしたんですか?昨日の電話じゃそんな事...
......』



『ごめん』
下を向いたままの健人。


『ごめんじゃ分かりません。
ちゃんと言ってよ!二人で店もお母様の事も頑張ろうって、花火大会の日に........分かる様に説明して・・・・お願いよ・・・・
健人さん・・・・』


『本当に・・・ご、めん』




『それって・・・・お付き合いも・・・・止めるって事?』


『・・・・それは・・・・』


身体中が震えた。
立っているのがやっとだった。


健人の前で泣きたくなかった。




『分かりました。今まで、ありがとうございました』

亜紀は頭を下げ帰った。


納得いかない。
でも仕方ない。
呆気なく終わった恋。
悔しくて涙でグチャグチャのまま、
今来た道を歩いた。



その一部始終を陰で見ていた健人の母。

その母に向かって健人は

『母さん、これでいい?』


そう言った。





No.198 16/03/23 07:56
名無し 


『ええ、決断してくれてありがとうね。これで父さんも母さんも安心だわ』


安堵する母に健人は複雑な心境だった。




亜紀は健人と一緒に行った河川敷にいた。

初めてデートした場所。
将来を誓いあったのに.......

亜紀は恥ずかしさも忘れ
声を上げ泣いた。





どれくらいの時間が経ったのだろう。
亜紀の携帯に着信。

(?!健人さん....?)

そう思う自分がまだいた。


見ると正人からだった。








No.199 16/03/23 09:46
名無し 

『もしもーし!亜紀ちゃん?
昨日はごめんよぉ~。今日の仕事終わりに話の続きでもどう?』

『・・・・』


『.......あれ?...もしもーし!』

『・・・ま・さと・・さん・』



『あれ?.......もしかして......
泣いてんの?大丈夫?今仕事中だろ?健人は?』



『ヒックッッ....終わっちゃいました。何もかも.....仕事も....ヒックッッ.....恋も.......正人さん、苦しいよぉ.....ま・さと・・さ~ん』


『今どこ?直ぐ行く』



No.200 16/03/24 09:11
名無し 


個室がある24時間営業の居酒屋で待ち合わせをした。


亜紀の方が先に着いた。



『ごめん、遅くなった』

正人が来た。

『うぅん、大丈夫です。
それよりごめんなさい。
忙しいのに.,.....』


『大丈夫だよ。気にしないで!
お腹空かない?何か食べよう』


目が真っ赤の亜紀を直視出来なくて、正人はメニューを広げた。


『じゃぁ、朝定にすっか.....
すいません!朝定2つ』


ずっと下を向いている亜紀に掛ける言葉も見つからない。

自分が言える事.....
それは何があったのか
真実を話す事。


余計なお節介なんだろうが、亜紀を見ているといたたまれなくなった。



食事が運ばれてきた。

『食べよう!元気出ないぞ!』


正人の優しさに
また泣きそうになる,......



涙をぐっとこらえ......



『昨日の続きお願いします』

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