『渡辺さんノート』
『思い出』
そう書かれた箱を開けてみると、小学校や中学校時代の思い出の品がつまっていた。
懐かしい♪
引っ越しの為、押し入れの中の片付けをしていたはずなのに、しばし中断。
卒業前にクラスメイトに書いてもらったサイン帳や、たくさんの写真…
こんな人いたな~
文化祭、楽しかったな~とか…
思い出の品々に、すっかり心を奪われてしまった。
その思い出の箱の中に、私の1番の宝物
『渡辺さんノート』があった。
主のリンです。
素人小説ですが、よろしくお願いします。
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小学校の時の遠足の前日みたいに、ワクワクしてなかなか眠れなかったけど、なんとか寝坊せず8時に用意が間に合った。
外に出ると翔太が待っていた。
「翔太、明けましておめでと。」
「おう。」
なんだよ。おうって(-.-)
「今日のお出掛け、楽しみだね♪」
姉も外に出てきた。
「翔太くん、明けましておめでとう。」
「おめでとうございます。」
お姉ちゃんにはちゃんと挨拶するんだね
(-_-;)
「あ、大介さん来た。」
大介さんのワンボックスが見えた。
大介さんが運転席の窓を開けた。
「明けましておめでとう。
今年もよろしく(^^)v
寒いから早く乗って!」
「大介さん、私ちゃんと宿題終わらせたよ!」
「頑張ったな~。受験生も息抜き必要だから。今日は楽しもう♪」
「うん!」
私達は車に乗り込み、出発した。
車内は大介さんが運転。
お姉ちゃんが助手席で、私と翔太が後ろの席に座った。
「どこに初詣に行くの?」
ウキウキしながら大介さんに聞いた。
「近場だけどね、◆◆神社。
元旦でも、あんまり混んでないから。」
「了解~(^o^)/」
「お前、テンション高いな。」
「まあね。久しぶりのお出掛けだし♪
あ、飴食べる?」
「いらん。」
も~、翔太のヤツ、テンション低いな。
まあ、テンション上がってるところ、あんたり見たことないけどね。
やがて車は神社近くの駐車場に到着した。
神社まで少し歩き、長い長い石段をのぼる。
私は翔太と一緒に歩く時は手をつなぐ。
今日も並んで歩いていたから、自然と手をつないだ。
お姉ちゃんがいるから、ちょっと恥ずかしいけど…
ん?
あれ?
私達の前を歩くお姉ちゃんと大介さん、
手…つないでるんですけど!
(*゜Q゜*)
え?二人付き合ってるの?
驚いていると、
「付き合ってるんじゃないの?」と翔太。
翔太!!(゜ロ゜ノ)ノ
私の心の声が聞こえてるの?
ジロッと翔太を見ると、
「お前の考えてることはだいたい分かる。
単純だしな、麻衣ちゃんは┐('~`;)┌」
「も~(><)」
またバカにされたし。
大介さんだけゼイゼイ言いながら(笑)石段をのぼり終えて、無事お参りした。
「絵馬書こうよ。合格祈願。」
「そうだね!行こう行こう。」
みんなで絵馬が売られている場所へ行くと、絵馬を書く所がすごい混雑してた。
「すごい人だね。」
「俺、あの人混みの中に行きたくないな~」
「ダメ。私は絶対に書く!」
その時、「あれ?大介?絵美ちゃんも。」
一組のカップルがお姉ちゃん達に声をかけた。
「わ~、偶然だね♪」
そして話に花が咲く。
お~い。
「麻衣ごめんね。バイト先の先輩なの。久しぶりだから話はずんじゃって。
先に絵馬の所行ってて。」
はいはい。
「あ、もし迷子になったらいけないから、私の携帯わたしとくよ。」
どーも。
仕方なく、翔太と絵馬のコーナーに行った。
人をかき分けて絵馬を買い、やっと絵馬を書く場所までたどりついた。
「なんて書こうかな~。」
「人が多いんだから、さっさと書けよ。」
「も~分かってるよ。」
無事、高校に受かりますように…
それだけ書いて絵馬をかけておくスペースにかけておいた。
すごい数の絵馬だけど…ちゃんと神様見てくれるかな?
よろしくお願いします。
翔太はもう人混みからぬけ出して、近くに、あった木のベンチに座って休んでいた。
早いな…
「翔太、早いね…」
翔太に駆け寄った時、
「あれ?渡辺麻衣?と、渡辺翔太?」
私達も声をかけられた。
私達をフルネームで呼ぶのは…
声がした方を見ると…やっぱり!
「渡辺先生!」
「お~、やっぱりそうか。こんな所で会うなんて偶然だな~。」
「ほんとだね。先生1人?先生も絵馬書いたの?」
「1人だよ。昼からこの近くで同級生の集まりがあってな、そのついで…っていったら悪いけど。1人初詣。」
「同級生の集まりって、同窓会ですか?」
もしやエマさんも来たりして?
「そんな大きな会じゃないんだけどな。高校時代の仲の良かった連中と…って、なんだ、渡辺麻衣はまた俺の恋愛でも気にしてるのか?(笑)」
「あ、いえ(汗)
そういうわけじゃないんですけど…」
「先生、俺達エマさんと知り合いなんです。」
「え?」
突然翔太が口を開いた。
翔太!今それ言うか?(;o;)
先生はすごく驚いていた。
さっきまでニコニコしていたのに、真面目な表情になった。
「エマと?」
「は、はい。」
「…」
えーい!もう、言ってしまえ!
「この前話した『渡辺さんノート』の話なんですけど…」
「ああ、覚えてるよ。麻衣が作ったノートの話。」
「実は…そのノート持って、先生の家にも行ったんです。
そしたら、その…エマさんが暴力を……」
それ以上は言えなかった。
「そうだったのか…」
「エマさんが先生を騙したって聞きました。だから、その…先生ばっかりが悪いとか思ってるわけじゃくて…。」
「ありがとう。
でも悪いのは俺だから。」
「でも……」
気まずい雰囲気になってしまった。
どうしよう…
「麻衣~お待たせー!」
大介さん達がさきほどのカップルと一緒にやってきた。
よ、よかった…
「高次?」
カップルの男性が先生に声をかけた。
え?何?ここも知り合い?
「佐藤?久しぶりだな!」
??
どういう知り合い?
この佐藤さんって人は、先生の同級生らしい。
先生が言ってた昼からの集まりにも参加するメンバーのひとりだって。
で、バイト先が大介さんやお姉ちゃんと一緒。
佐藤さんはバイトじゃなくて社員さんだそうだ。
ちょっとおでこが広くてメガネをしてて、優しそうな感じの人。
大介さんと雰囲気が似てる。
「じゃあ、また後でな。」
「先生、またね。」
エマさんの話は中途半端な感じで終わっちゃったけど、みんながいるところでするような話じゃないし、気まずかったし…
とりあえず先生とはわかれた。
先生…どう思ったかな?
なんか悪かったな…
お正月からごめん先生…
「麻衣ちゃん、翔太くん。悪いんだけど、これから佐藤さん夫婦を家まで送って行くことになったんだ。■■方面なんだけど…
どっちみち初詣終わったら、■■に行こうと思ってたから、ついでに…。」
大介さんに申し訳なさそうに言われた。
「うん。全然いいよ♪」
カップルじゃなくて夫婦だったのか。
「ごめんな~。今日電車で来たんだけど、結構混んでて大変だったな~って話してたら、大介が乗って行きますか?って、甘い言葉をかけてくれたから(^人^)」
佐藤さんがニカッと笑う。
「私達は全然構いませんよ。ねっ、翔太。」
「うん。」
「ありがとう。」奥さんもお礼を言ってくれた。
神社の石段を降りながら、
「翔太~、車の中で佐藤さんに先生のこと聞いてもいいかな?」
佐藤さんと一緒に車に乗るってことになった時、こっそり「チャンス」って思った。
「別にいいんじゃないの?
でも暴力とか、そういう事は言うなよ。」
「…うん。」
「エマさんのこと、そんなに気になるのか?俺も多少気になるけど…。」
「うん…、まあ。」
沙織が先生のこと好きだからね…
「渡辺沙織関係?」
「え?(汗)」
ニヤリと翔太が私の顔を見て笑う。
気付いてるの?(・_・;
「わかりやすっ」
「え?」
翔太は吹き出しながらスタスタ石段を降りていく。
「ちょ、ちょっと待ってよ~。」
駐車場に着き、6人で車に乗る。
佐藤さんは助手席に乗るかもしれない。
私は慌てて、
「佐藤さん、さっきの渡辺先生のことで聞きたいことがあるんですけど…」
と、佐藤さんに声をかけた。
「さっきの渡辺先生って…渡辺高次のこと?」
「はい。私が行ってる冬期講習の先生なんです。」
「そうか~、アイツ先生なんだな~。
いいよ。高次とは長い付き合いだから。何でも聞いておくれ。」
「ありがとうございます。」
そんなわけで、運転は大介さん。
助手席は奥さん(家までの道案内)
2列目にお姉ちゃん。
(ひとりにしてごめんね)
3列目に佐藤さんと翔太と私が乗った。
何から聞こうかな…
渡辺先生って、数学の授業も分かりやすいし、男子からも女子からも人気がある。
でも、そんないい先生が女の人に暴力をふるうのかな?
翔太のオバチャンが、エマさんがお金を盗もうとしたって言ってたけど…
相当ひどいやり方で盗んだのかな?
「さてさて、何から話そうかな?(^^)」
何を聞こうか悩んでいた私に、佐藤さんの方から声をかけてくれた。
「あの…内緒のことなんですけど、一緒に冬期講習に行ってる友達が、渡辺先生に憧れてるんですよ。
だから、渡辺先生ってどんな人なのかなって気になって…。」
「お~♪やっぱり高次はモテるな~。
学生時代からモテてたよ。」
「じゃあ、今も当然彼女持ちですよね…」
「あ、いやいや。今はいないよ。
夏頃に別れたって聞いたよ。
アイツモテてたけど、一途なヤツでな~。
高校の時から幼なじみだった彼女と、ずっと付き合ってたんだよ。
結婚するって言ってたのに…。」
幼なじみ…
それってエマさんのこと?
「何で別れちゃったんですか?」
「それは知らないんだ。
こっちからも聞けないしな…
でも結婚考えてたのに別れたぐらいだから、何か大きい問題でもあったのかな?
でもアイツ自身には問題ないと思うよ。
ちょっと神経質なとこはあるけど、真面目で思いやりがあるヤツだよ。
実家の両親だっていい人だしな。
何も問題ないよ。」
「佐藤さんは相手の女性のことは知ってるんですか?」
翔太も質問する。
「2、3回会ったことはあるけど、詳しくは知らないな…
きれいな感じの人だったけど。」
それから佐藤さんの家に着くまで、佐藤さんから先生のことをたくさん聞いた。
でも誕生日とか血液型とか女子が喜びそうな情報は少なくて、ほとんどが学生時代のエピソードだった。面白かったけど^^;
佐藤さん夫婦と別れた後は、まず4人でお昼を食べに行った。
その後はボーリング場に行って、みんなでボーリングをした。
久しぶりのボーリング…ストレス発散にちょうどいい!
めちゃめちゃ楽しかった(*≧∀≦*)
そして、帰りの車の中で、ずっと聞きたかったことをやっと聞いた。
「大介さんとお姉ちゃんって、付き合ってるの!?」
二人はクリスマスに付き合い始めたらしい。
毎日のようにメールや電話をしているうちに、お姉ちゃんの方が大介さんを好きになったみたい。
外見的には美女と野獣…(大介さんごめんね)
でも、とっても素敵なカップルだと思う。
私も大介さんのことは大好きだし、お姉ちゃんを幸せにしてくれること間違いなしだ!
渡辺先生とエマさんのことでモヤモヤしてたけど、大介さんとお姉ちゃんの話を聞いて、すごくあったかい気持ちになった。
もう先生とエマさんのことは忘れよう。
私がいくら考えても、過去のことはどうすることもできない。
それから2日後…
朝カレンダーを見て、明日からまた冬期講習が始まるな~って考えてたら、電話がなった。
「もしもし、渡辺ですけど…」
「麻衣?俺。」
「翔太?どうしたの?」
「さっき、渡辺先生から電話があって、先生のアパートに来てくれって言われたんだ。」
「え?なんで?」
「さ~?よく分からんけど、お前もついてこいよ。」
「私も?」
「昼過ぎに出るから。じゃあな。」
「え?ちょっと翔太…」ツー・ツー・ツー
切れてるし(ToT)
私の予定とか聞かないのか?予定ないけどさ。
でも何で呼び出されたんだろ?
私が行っても大丈夫なのかな?
すると再び電話がなる。
…翔太かな?
「もしもし…」
「もしもし。私、○○館の冬期講習の教師をしております渡辺と申しますが…」
渡辺先生!
「渡辺先生ですか?麻衣ですけど…」
「渡辺麻衣か?悪いな突然電話なんかして…。
さっき、渡辺翔太にも電話したんだけど、お前達とちょっと話がしたくてな。
これから予定とかあるか?」
「いえ、ないですけど。」
「悪いけどさ、翔太と一緒に俺のアパートに来てくれないか?
話はすぐ終わるから…。」
「分かりました。」
先生…
話って何だろう?
きっとエマさんのことだよね…
静かに受話器を置いた。
それにしても…
先生わざわざ翔太にも私にも電話かけてきてくれて…律儀だな~。
そしてお昼過ぎ…
翔太と一緒に、チャリで渡辺先生のアパートに向かった。
「先生、最初俺らの家に行こうかって言ってたんだけど、今日ウチ親いるし断ったんだ。
なら、家まで迎えに行くとか言うから、それも断った。
チャリで行ける範囲だし、いいよな?」
先生、そんなこと言ってたんだ…
確かに正月から突然先生が家に来たら、親はビックリするよね(汗)
沙織に言ってないけど…
もし先生のアパートに行ったことを沙織が知ったら…なんか嘘ついてるみたいで気まずいな…
今日帰ったら、沙織に隠さず全部話そう…
酷いことかもしれないけど、もし沙織が先生と付き合うことになって、暴力ふるわれたら…
ボコボコになったエマさんの顔を思い出す。
ダメダメ!
暴力は絶対ダメだ!
先生のアパートに到着した。
夏に来たんだよね、ここ。
なんだかすごい昔のことみたいに感じるな…
少し緊張しながらピンポンを押す。
すぐに玄関のドアが開き、先生が出てきた。
「悪かったな、わざわざ来てもらって…」
「いえ…」
「ま、とにかく寒いから上がってくれ。せまい部屋だけど…」
「お邪魔します…」
ドキドキしながら、翔太と先生の部屋に入った。
玄関を入ってすぐに台所があった。
奥に進むと、こたつやテレビが置いてある部屋。
隣にもうひと部屋あるみたい。寝室かな?
キョロキョロと部屋を見回す。
すごくシンプルな部屋だな。
翔太の部屋もこんな感じだけど…
「あんまり掃除してないから、部屋中見ないでくれよ(^^)
お茶持っていくから、座っててくれ。」
先生が台所から声をかけた。
「あ、ハイ。」
翔太はすでにこたつに入っていた。
私もこたつに入り翔太の横に座った。
「コーヒー…飲めるよな?」
先生がマグカップにコーヒーを入れてきてくれた。
「はい、飲めます。ありがとうございます。」
砂糖とミルクをたっぷり入れて、コーヒーを飲んだ。
先生はブラックだ。大人だな。
「先生、話って何ですか?」
( ; ゜Д゜)
翔太!いきなり本題突入!
「ああ、その…
夏にエマの怪我の手当てをしてくれたのはお前達だったんだな。」
「…はい。」
実際に手当てをしたのは、翔太のオバチャンだけどね。
「今でもエマと付き合いはあるのか?」
先生…
ひょっとしてエマさんに未練があるとか?
「どうしてそんなこと聞くんですか?
もしかして先生…まだエマさんのこと…」
「違う違う(汗)
その…
お前達、何も盗られたりしてない…よな?」
盗られるって?
「知ってると思うけど、俺とエマは家が隣同士で幼なじみなんだ。
高校生の時に付き合い始めて…
でも高校卒業してからエマは就職、俺は大学進学…で、すれ違うことが多くなって、1回別れたんだ。
でも1年もしないうちにまた復活したんだけど…
その別れてた時に、エマ…盗みぐせ?みたいなのがついてしまって…
俺もよく財布から抜かれてたんだよ。」
「え??」
「財布の中身減ってるな~って、すぐ気付いた。
エマが盗ってることも。
でもエマを信じてたし、何も言わなかったんだ…。」
「…」
「…って、生徒に何話してんだか(^^;
お前達も裏切られてないか気になったんだよ。
エマ…
悪いヤツじゃなかったんだけど…」
「お金盗られたから殴ったんですか?
結婚も…やめちゃったんですか?」
「麻衣!」
言い過ぎι(`ロ´)ノって顔をして翔太が私を見た。
…しまった。
「結婚のことまで知ってたのか~。」
「ごめんなさい。
でもね。先生。
あの…正直に言うけど、
私、暴力を受けた女性を見たの初めてで、すごくショックだったんです。
ここまでボコボコに殴るなんて、なんて最低な男なんだろうって思ってました。
でも先生がエマさんの相手だったって知って…
分からなくなってきたんです。
先生は優しくてすごくいい先生なのに…
そんな先生がなぜ暴力をふるったのか…
本当の理由は何なんですか?」
「本当の理由か…」
「言いたくなかったら答えないで下さい。
こんな子ども相手に…、ねえ先生…」
翔太はそう言うけど…
私は聞きたい!
中学生の私が聞くようなことじゃない?
でも興味本位とか、そういうわけでもない。
ただ、真実を聞いて
「やっぱり先生は暴力をふるうような男じゃなかった!」って思いたかったのかな…
恋愛感情はないけど、私も先生が好きだった。
「…お金を盗られたから殴った、結婚をやめた…というのも本当のことだ。」
「先生…」
先生は寂しそうな表情だった。
先生は火傷のあとが残る手を私達に見せながら、
「暴力ふるう男なんて最低なんだよ。
俺も自分が情けなかった…
自分がした最低な行為を忘れないために…」と言った。
先生、もしかして自分で火傷つくったの?
「痛みを忘れないためにな。」
…先生……
先生はそれ以上なにも話してくれなかった。
でも先生が苦しんでいることはすごく伝わってきた。
「ごめん。暗い雰囲気になったな。
お前達が嫌な思いをしてないんならよかった。安心したよ。」
先生は笑ってそう言ったけど…
私達は笑えない。
こんなに先生を苦しめたエマさんが許せなくなった。
それに先生は「本当の理由」は、かくしてる。
「じゃあまた、明日な!
今日はありがとな!気を付けて帰れよ。帰ったら連絡くれな。」
先生は明るくそう言って、電話番号を書いたメモをくれた。
「わかりました。…また明日。」
暗い気持ちで先生と別れた。
スローペースでチャリのペダルを踏む。
やっぱあれ?
エマさんが浮気しててその現場を見た…とか?
…ドラマの見すぎかな?
そんなこと現実にはあり得ないことなのかな?
翔太に話すと、
「俺らが子どもだから言えないんだろ。」
「もっとドロドロした理由なのかな?」
「ドロドロって( ̄▽ ̄;)
それこそテレビの見すぎだろ。」
まあね。
でも…やっぱり真実が知りたい!
「私、エマさんに会いに行きたい。」
「…どうやって?」
エマさんの家は駅から遠くて、車じゃなきゃ行くのが難しい。
「…なんとかして行く。」
「バカ。それにエマさんが実家に住んでるかどうかも分からないだろ。」
「…そうだけど。」
やっぱ無理かな…
ため息をついて、ノロノロとチャリをこいで家まで帰った。
家に着くと、大介さんのワンボックスがとまっていた。
「大介さん来てるのかな?」
なせが急にチャリをこぐスピードが速くなる。
運転席に大介さんの姿が見える。
「大介さん!」
運転席にいた大介さんは私に気付いて窓を開けてくれた。
「麻衣ちゃん、翔太くんも(^^)
二人仲良くお出かけかい?」
「ちょっとね。それより大介さんは?
これからお姉ちゃんとデートなの?」
「ちょっとね(笑)」
「今日はどこに行くの?ドライブ?」
「まだ決めてないけど?」
「麻衣ー(-.-)」
翔太が後ろで私の上着のフードを引っ張る。
「『大介さん、エマさん家まで乗せてって』って顔してるぞ(ーー;)」
あ…(^o^;)
わかる?
「大介さんはエマさんとは関係ないんだからな。
デートの邪魔しちゃダメだろ!」
「それはそうだけど…」
「何やってるの?」
私と翔太がゴチャゴチャ言ってるうちに、いつの間にか姉が私達のそばに来ていた。
「どうしたの?」
姉が心配そうに聞く。
「麻衣ちゃん?
どこか行きたい所でもあるの?」
大介さん(涙)
なんでわかるんですか(T^T)
「まあ、ちょっと…」
チラッと翔太の顔を見ると…
にらんでる(^^;
「いいよ。そんなに遠くじゃなきゃ。
ドライブがてら。ね、絵美ちゃん。」
「大介さんがいいんなら私はかまわないけど…」
「ホント?ありがとう!!!!!!
あ…、翔太も…行く?」
「行きますよ!
デートの邪魔しちゃって、ごめんなさい。」
翔太は私をにらみながら、二人に謝っている。
「いいよ(^^)
で、どこに行きたいの?」
車はエマさんの家に向かって出発した。
車の中で、大介さんとお姉ちゃんに、エマさんと先生のことを話した。
「知らない方がいいこともあるけど…
大丈夫?後悔しない?」
大介さんが真面目な顔で聞いてくる。
大介さんはいつも笑顔で優しい表情をしている。
その大介さんにこんなかたい表情をされると、なんだか怖い。
(私、大介さんに怒られたらきっと怖くて泣いちゃうな。)
でも大丈夫!
後悔は絶対しない。
このまま真実を知らないでモヤモヤしているよりはいいと思う!
そう大介さんに伝えた。
「わかった。」
大介さんはわかってくれたようだった。
エマさんの実家に着いた。
邪魔にならない所に車をとめた。
「俺は絵美ちゃんと車で待ってるから、二人で行っておいで。
エマさん、家にいるといいね。」
「わかった。…じゃあ、行ってくるね。」
翔太と車を降りて、エマさん家の玄関に向かう。
お隣の渡辺先生の実家=おばあちゃん家は、すっごく大きな家だけど、エマさん家は私や翔太の家と同じぐらいの、ごく普通の家。
玄関のドアの前に立ち、ふ~…っと深呼吸してピンポンを押す。
…
エマさん…いるかな?
「はい…」
部屋から声がして、玄関のドアが少し開いた。
あ!!!!
エマさんだ!
「あ、あの!エマさん!
覚えてますか?私、渡辺麻衣です。」
慌ててカミカミで言った(汗)
エマさんは玄関のドアを全部開けて外に出てきた。
トレーナーにジーパン姿のエマさん。
最初は「?」って顔をしてたけど、すぐに思い出してくれて
「あ~!あの時助けてくれた二人だね!
どうしたの??こんなところまできてくれて…?」
そりゃあビックリするよね(;>_<;)
「突然すみません。実はエマさんにききたいことがあって…」
「聞きたいこと?」
「渡辺高次さんのことです。」
「え?」
「あの日…どうして高次さんに殴られたのか教えてもらえませんか?」
「ごめんなさい。お邪魔します…」
エマさんと私達は、大介さんの車に乗り込んだ。
「ごめんね。今、ウチ親いるし、高次の話は家でしたくなくて…」
そんな理由で、大介さんの車の中で話をすることになった。
大介さんとお姉ちゃんは気を使って、車から降りようとしたけど、慌ててエマさんがとめた。
「乗ってて下さい!お邪魔したのは私なんですから…」
「…でも…。」
「いいんです。一緒に聞いてて下さい。
楽しい話じゃありませんけど…」
エマさんは見た目や話をしている感じからは、とても悪そうな人には見えない。
お金を盗むような人には見えない。
しっかりしてそうな雰囲気。
顔も可愛い…というよりは綺麗なタイプ。
渡辺先生とお似合いだよ。
なのに…いったいなぜ?
「聞きたいことって、高次に殴られた理由だよね?」
車内、二列目の席に私達とエマさんが並んで座った。
「…はい…」
「理由は、私が高次を傷付けたから。
…それだけだよ。
私が悪いの。」
エマさんが、サラリと言った。
「渡辺高次さんは、偶然なんですけど私達の塾の先生なんです。
すごくいい先生で…その…暴力をふるうなんて信じられなくて。
それで…殴ってしまった理由が知りたくなったんです。」
改めて、先生と私達との関係をエマさんに説明した。
「そうなんだ。
高次は?殴ったこと何も言ってなかった?」
「…自分を責めてました。」
「…そっか。」
エマさんは俯いて返事をした。
「私さ、高次を裏切ったの。」
「高次から聞いたかもしれないけど、私達付き合ってて、一度別れたの。
私が就職したばかりの時で、社会人一年生…何にもわからなくて。
仕事でミスするし、人間関係も難しくて…
ストレスたまっていつもイライラしてた。
だけど、高次は大学生で毎日が楽しそうだった。
そんな高次の姿もなんだか腹立たしくなって…
私の勝手だけどね、別れちゃったの。」
好きなのにそんな理由で別れちゃったの?
中学生だった私は別れた理由にビックリした。
今だったらエマさんの気持ちわかるんだけど(汗)
そして更に、ここからのエマさんの話はますます理解できない方向へ…
「でも高次と別れたからって、何かが変わるわけでもなくて…
仕事でのストレスはたまるし、話を聞いてくれる人もいない。
なんだか寂しくなっちゃって。
色んな男と適当に遊んじゃうようになって…
パチンコとか…ギャンブルにもはまっちゃって…」
ぱ、パチンコ?
パチンコって、おじさんがするイメージだったから、またまたビックリした。
エマさんに相づちをうつ余裕もないまま、話はどんどん進んでいく。
「何ヶ月かして、高次がもう一度やり直そうって言ってくれたんだけど、私、すごく嬉しくて…
すぐやり直したいって返事したの。
…まだその時遊びで付き合ってた男とも切れてなかったし、ギャンブル好きも直ってなかったのに…」
「エマさん…」
突然の大介さんの声に、エマさんは顔をあげた。
「話の途中で申し訳ないけど、ちょっと中学生には刺激的過ぎる話かな?」
「あ、ごめんなさい。つい…」
「エマさんがその男性と切れてなかったことで、高次さんが怒ったのかな?」
「はい。
それに…二人で貯めてた結婚資金も、その男とギャンブルに全部使ってしまったこともバレてしまって…」
はあー??
「だから、確かに暴力はあったけど、高次は全然悪くないの。
すごく、素敵な人…
後悔してる。
私は本当にバカだったって。
ごめんね。」
…先生。
先生は本当に殴った痛みを忘れないために火傷したの?
傷つけられた痛みを忘れないためじゃなくて?
でもよかった!いや、よくはないけど。
先生はやっぱり最低な人なんかじゃない!
エマさんと別れて、車は静かに出発した。
大介さんもお姉ちゃんも心配そうな顔をしてる。
聞いてホントによかったの?って。
「大介さん、お姉ちゃん、ありがとう!
エマさんの話が聞けてよかったよ。ね、翔太!」
笑顔で大介さんとお姉ちゃんに言った。
「うん。」翔太も頷いている。
「ホントに?
でも高次さん、相当つらかったよね…
もうふっきれたのかな?」
お姉ちゃんが心配そうに言う。
「今、どんな気持ちでいるかは分からないけど…
前に進んでるといいね。
エマさんは就職先が自分に合わなかったのかな?かなりストレスたまってたみたいだね。
確かに社会人と大学生が付き合うのって難しいかもしれないけど。
高次さんと別れた後、周りの男に流されちゃったのがいけなかったね。
ストレスばかりの毎日に癒しを求めて…
それがギャンブル。
ストレス発散も必要だけど、本当に大切なものを見失わないで欲しかったね。」
翌日からまた冬期講習が始まった。
エマさんの話を聞いてショックな気持ちもあったけど、先生が最低な人じゃなかったと確認できて嬉しかったし、なにより沙織の恋を純粋に応援できると思った。
今までは、なんとなくうしろめたいような気持ちがあって、素直に応援できなかったから…
先生、エマさんに未練もなさそうだし。
沙織頑張れー\(*⌒0⌒)b♪
「麻衣…なんかいいことでもあったの?」
「え?」
「顔、ニヤニヤしてるけど…」
沙織が私の鼻を指でツンツンする。
ゲッ(汗)
顔に出てた?
「もしかしてテストの順位良かったとか?」
「…テストは…変わらずです。」
朝、前回のテストの順位を確認する。
はぁ~
また1番頭悪いクラスだよ~
受験のことなんて完全に忘れてたし
(T_T)
渡辺先生は何事もなかったように普通に接してくれた。
エマさんのことは沙織には言いたくなかったし、先生のアパートに行ったことも知られたくなかったので、ホッとした。
再び、宿題やテストに追われる毎日になった。
冬期講習は冬休み期間中だけなので、あと少しで終わり。
1回ぐらい翔太と同じ教室で授業を受けたかった。
その為にはテストで良い点をとって、順位を上げなくちゃ!
受験に合格する為に頑張って勉強してるって思いはなく、単なる意地?みたいなものだったけど、両親は「受験勉強よく頑張ってるな。」と私のことを見直してくれたようだった。
週1回の大介さんの家庭教師もスタートした。
19時から1時間。
テストでわからなかったところを聞いたり、暗記のコツを教えてもらったり、時には無駄話もした。
大介さんは私のよいところを見つけて、いつも誉めてくれる。小さなことでも。
あまり誉められることがなかった私は、なんだか照れくさかったけど、単純だからかな?誉められるとやる気が出てくる。
私はきっと誉められるとのびるタイプなんだな!
そして、冬期講習最終日を迎えた。
沙織が朝からソワソワしている。
渡辺先生に会うのも今日で最後。
先生に携帯番号とメールアドレスを教えてもらうつもりらしい。
いつ聞こうか
どうやって呼び出そうか…
教えてくれるかな?
あー、緊張する~
1日に何回同じこと言うんだよ、とつっこみたくなるぐらい沙織はそんなことばかり言っていた。
今日の沙織の頭の中は渡辺先生一色だな(^^;
バレンタインの日に、いつチョコを渡そうか…と悩んでる女子みたいだ。
夕方…聞くタイミングがつかめないまま、すべての授業が終わってしまった。
「どーしよ…麻衣。
授業終わっちゃったよ(/´△`\)
もう先生に会えないのに…」
沙織が泣きそうな顔で焦ってる。
なんか可愛い♪
「大丈夫!まだチャンスあるよ。先生まだ帰らないと思うし。職員室覗いてみようよ。」
「うん。」
すると私達の教室に翔太が入ってきた。
そう。結局1度も翔太と同じレベルのクラスにはなれませんでした(T_T)
「翔太、どうしたの?」
「渡辺先生が、話があるから麻衣と一緒に待っててくれって。
さっき職員室行ったら渡辺先生、女子にモテてたぞ。」
後半の情報はいらん(怒)
「話って?」
「さあ?でもここで待っとけば先生来るだろ」
話って、もしかしてエマさんのこと?
それだとまずいんですが…
チラッと沙織を見る。
「じゃあ、私も一緒に待ってよ。」
私と沙織は机をはさんで向かい合って座り、翔太は空いた椅子を持って来て、私の隣に座った。
「ねー、翔太くん。先生すっごいモテてた?」
「なんか女子に囲まれてたぞ。」
「えー…、どうしよう麻衣~(>_<)」
「先生、いい先生だもんね。」
そう言いながら、先生の話ってなんだろう?と気になった。
沙織が聞いても大丈夫の話でありますように…と願った。
しばらくして、先生が教室に入ってきた。
楽しそうに話していた沙織の顔が一気に緊張した顔になった。
「悪いな、待たせて!」
先生は空いた椅子を沙織の隣に持ってきて座った。
突然、隣に先生が座ったので、沙織は真っ赤な顔になり、ドキドキ心臓の音が私のところまで聞こえてきそうだった。
「先生、話って何?」翔太が話始める。
「そうそう(^^)
実はな、俺の姪っこの渡辺麻衣の退院が決まったんだよ。」
え!!!!
思いがけない話の内容に少し戸惑ったけど…
退院?
「退院ですか?
病気が治ったってことですか?」
「まだ検査や治療はあるけど検査の結果がよかったんだろうな。」
白血病、治るんだ!
「じゃあ、麻衣ちゃんに会えるんですか?」
「すぐには無理だけどな。お前らも受験があるし…。早くても3月ぐらいかな?
麻衣もお前達に会いたがってるから、会ってやってくれ。」
「もちろんですよ!
遂に麻衣ちゃんに会えるんですね!
嬉しいー(*≧∀≦*)」
「ありがとな。
で、3月ぐらいに麻衣と会えるようになったら、また連絡してもいいか?」
「はい…、あ!」そうだ…
「どうした?」
「じゃあ先生の携帯番号とメールアドレス教えてもらえませんか?」
「いいけど…」
「私と翔太はまだ携帯持ってないんですけど、沙織が携帯持ってるんで、沙織に連絡して下さい。沙織も麻衣ちゃんに会いたいと思うし…。」
「そうか。番号今教えてもいいか?」
と、先生は沙織の方を見た。
沙織は恥ずかしいのか、下を向いてブンブン頷いていた。
これで先生の携帯番号とメールアドレスゲット(^^)v
「じゃあ、また連絡するからな。受験頑張れよ!」
「はい、連絡待ってます(^^)/」
そう言って先生と別れた。
「麻衣~、ありがと!先生の連絡先ゲットできたよ~。」
「やったね(^^)v
3月にまた先生と会えるかもしれないし、私も麻衣ちゃんに会えるのが楽しみだよ(*≧∀≦*)」
「だね!私はそれを目標に受験頑張るよ~。」
「私も!」
テンションが上がった女子二人はキャッキャッと盛り上がっていた。
その横で冷めた翔太は
「動機不純(-_-)」とつぶやいていた。
それから…
冬休みも終わり…
私立高校の受験、公立高校の受験…
…あっという間に終わった。
卒業式も無事に終わった。
受験の結果は…
私と沙織はA高校に。翔太はB高校に。
それぞれ第一希望の高校に合格した。
今まで全然勉強しなかったので、冬期講習と大介さんの家庭教師のおかげで私は合格できたと思ってる。
両親も喜んでくれて嬉しかった。
翔太とは別の高校になっちゃったけど…
どうなるのかな~。
沙織は合格発表の後、ベッタリと手汗をかきながら、渡辺先生にメールをうっていた。
「先生にメール送るの初めてなの(汗)」
私が、渡辺先生に合格発表の報告ぐらいしてもいいんじゃない?、と沙織に言ってから、もう10分メール作成中だ。長い。
「よし!できた!麻衣~文章変じゃないか見てー。ハート使って大丈夫かな?」
はいはい~とメールを見ると、
『先生、お久しぶりです。渡辺沙織です。
お元気ですか?
今日、A高校の合格発表でした。
受かりました!』
真面目!
「だって、相手が先生なんだもん。」
ふくれる沙織を見て、なんだ笑えた(^^)
メール送信。
「ドキドキする~。先生メール読んでくれるかな?」
「読むでしょ(^^)
先生は無視するような人じゃないよ」
「うん。そうだよね。」
先生からすぐに返信はなかった。
多分、仕事中だろうし。
仕事中(塾の先生)は携帯見ないだろうし、また仕事が終わってメール見たら返事がくるよ!
先生からなかなか返事がこないので、沙織は不安そうだった。
「大丈夫だって!
また返事きたら教えてね(*^^*)」
「うん…」
も~、元気ないなぁ(>_<)
先生は絶対無視しないって!
私も携帯を持ったらそんな気持ちになるのかな?
そしてその夜…
家の電話がなった。
私は二階の自分の部屋でくつろぎタイム。
「麻衣~。電話だよ~。」
下から母親が私を呼ぶ。
沙織からかな?
階段を降りてリビングにある電話に出る。
ウチは長電話防止の為、子機の使用は禁止されている。
携帯電話も自分で使用料金が払えるようになるまでは、持たせてくれない。
高校生になったらバイトをして、すぐにでも携帯電話が欲しい。
「もしもし~」
電話に出ると、やっぱり沙織からだった。
「あ、麻衣~?」
そのひとことで、沙織のテンションが上がっているのがわかる。
先生から返信がきたんだな?
「先生から返事きたの?」
「そーなの!さっきメールがきて嬉しくてさ(*≧∀≦*)」
「よかったね!!!!」
なんだか私までテンションが上がる。
いいな~、恋してるな~(//∇//)
「うん(o^・^o)
合格したの誉めてもらっちゃった(*´∇`*)
それでね、渡辺麻衣ちゃんの話になったんだけど、26日麻衣ちゃんの誕生日らしいの。
で、その日誕生日会をするから、都合がよかったら、麻衣達みんなでおいでって。」
「そうなの?
麻衣ちゃんに遂に会えるんだ!」
私、興奮。
「そうなの!麻衣26日空いてる?」
「空いてる空いてる!
そもそも予定のある日がないぐらいだよ(笑)」
「私もだよ(笑)
翔太くんも大丈夫かな?」
「大丈夫にする!」
「ホント?(笑)
じゃあ、先生に26日行けますってメールしとくね。」
「うん。よろしくね(^^)v」
「オッケー。
じゃ、また連絡するね(^^)/」
電話を切り、ひとりドキドキした。
麻衣ちゃん…
どんな子なんだろう。
やっと会えるんだなぁ
誕生日なのか~
誕生日…
(゜ロ゜)誕生日プレゼントいるかな?
よし!
明日、翔太に相談しよう♪
すごく楽しみだった。
そして翌日。
姉に起こされた。
もう春休みなので、朝ダラダラ寝ていた。
「おはよう。よく寝るね~(^^;
これから大介さん来るから。」
姉がカーテンを開ける。
うっ(;o;)まぶしい(>_<)
「ん…、今日デートなの?」
眠い目をこすりながら聞く。
「麻衣に話があるみたいだよ。」
「私に?」
ピンポーン
「ほら、もう来ちゃった。
早く着替えてね!」
「うん。」
姉は玄関へ向かった。
話ってなんだろな?
パジャマから私服に着替えて、顔を洗いに洗面所へ行った。
顔を洗って外に出ると、いつもの大介さんの車がとまっていて、車内には助手席に姉、後ろの席には翔太が座っている姿が見えた。
大介さんが窓を開けて
「おはよう。
乗って乗って~。」
と、声をかけてくれた。
?…お出掛けなのかな?
よくわからないまま車に乗り、車スタート。
「お前休みだからって寝過ぎだろ。」
翔太に言われる。
「今日どこ行くの?」
翔太の言葉は無視して大介さんに聞いた。
「あのね、昨日渡辺麻衣ちゃんのお母さんあら連絡もらったんだ。
26日に麻衣ちゃんの誕生日会をするからって誘われたんだけど…
知ってるかな?」
「昨日渡辺先生経由で聞いたよ。
今日翔太に言おうと思ってた。」
「俺は昨日大介さんから聞いたんだよ。」
そう言いながら、翔太が私に携帯電話を見せた。
「え?それ翔太の?」
「そう。合格祝い。」
「ずるいー(>_<)
てか、私にも番号教えてよー!」
「お前も携帯持ったらな。
お前より先に持ちたいと思ってたから、念願叶ったよ。」
「も~(ーー;)」
「ちょっと見せて見せて!」
翔太から携帯を奪い、まじまじと見つめて色んなボタンを押してみる。
「おいおい(-o-;)勝手に触んなよ!」
「あ…(汗)でね、これから麻衣ちゃんの誕生日プレゼントを選びに行こうかと思って。」
携帯電話に夢中になっている私達に大介さんがひとこと。
誕生日プレゼント!
「そうだった!私も誕生日プレゼントいるかなって思ってたんだよね!」
「うん。
俺らバイトがあって、買いに行ける日が今日しかなくてさ。
突然で悪いけど、今日行くことにしたんだ。ごめんね。」
「いいよ~(^^)/
あ!私の友達も26日一緒に行くんだけど、誘ってみてもいいかな?」
「うん。」
「翔太、携帯貸してよ。沙織に電話するから。」
「いきなりだな(-_-)
長電話するなよ!」
「わかってるって~♪」
沙織の携帯番号は暗記していた。
「もしもし、沙織?麻衣だよー」
「麻衣?遂に携帯買ったんだ~」
「ううん、残念ながら翔太の携帯。
あ、突然なんだけどね、今日予定ある?」
残念なことに、沙織は今日は中学の部活の送別会があるらしく、買い物は無理だった。
「後で私もお金払うから可愛いもの選んでおいて~!よろしくです。」
「了解(^^)/」
ということで、大介さんと姉と翔太と私の4人で、ショッピングモールに行って、プレゼント選びをした。
悩む~(>_<)
めちゃめちゃ悩んで、すごい時間がかかっちゃった。
ショッピングモール内、行ったり来たり…
可愛いらしい服にしようかと思ったけど、服のサイズがわからないし、麻衣ちゃんのイメージもわからない(汗)
結局、キャラクターの置き時計とマグカップにした。
可愛くラッピングしてもらった。
麻衣ちゃん、喜んでくれるかな?
そして、遂に26日!
2日ほど前からそわそわ落ち着かない私。
今時の小学生ってどんな感じなのかな?
どんなことに興味があるんだろう?
何話そう…
色々考えていた。
当日の服装は沙織と相談して、可愛らしい感じのワンピースで行こうと決めた。
一緒に行くのは翔太と沙織と大介さん。
誕生日会の場所は自宅。渡辺均さんの家だ。
みんなで自転車で向かった。
誕生日プレゼントも忘れず持った。
ドキドキして無言になってしまう。
黙ってチャリをこぐ。
すっかり暖かくなって、風が気持ちいい。
サイクリング日和だな♪
でも…大介さんは汗をいっぱいかいていた。(笑)
渡辺均さん家に到着した。
チャリを置き、プレゼントを持って玄関に向かう。
玄関の前でフゥ~と深呼吸をして、ピンポンを押そうとした。
その時、突然ガチャリと玄関のドアが開いた。
中からピンク色のワンピースを着た女の子が出てきた。
私達を見るとにっこり笑顔で
「こんにちは!」
と、挨拶してくれた。
肌の色が透き通るように白く、柔らかそうなふわふわのショートヘアーの女の子。
手には『渡辺さんノート』を持っている。
「こんにちは。麻衣ちゃんかな?」
大介さんが麻衣ちゃんの視線に合わせてしゃがみ、優しく声をかける。
「うん!渡辺麻衣です!」
奥から、麻衣ちゃんのご両親と先生が出てきた。
「いらっしゃいませ~」
「よく来てくれたな!
大介さんもありがとうございます。」
「どうぞ、上がって下さい。」
私達は部屋へ入りリビングに通された。
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