『渡辺さんノート』
『思い出』
そう書かれた箱を開けてみると、小学校や中学校時代の思い出の品がつまっていた。
懐かしい♪
引っ越しの為、押し入れの中の片付けをしていたはずなのに、しばし中断。
卒業前にクラスメイトに書いてもらったサイン帳や、たくさんの写真…
こんな人いたな~
文化祭、楽しかったな~とか…
思い出の品々に、すっかり心を奪われてしまった。
その思い出の箱の中に、私の1番の宝物
『渡辺さんノート』があった。
主のリンです。
素人小説ですが、よろしくお願いします。
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主のリンです。
読んで下さった皆様、最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。
最後、年度末で忙しく一気に書けず、間をあけてしまったことが心残りでした。
でも最後まで書けてよかったです。
ありがとうございました。
それから『渡辺さんノート』は私の家で大切にしまわれていた。
そうだ!
転勤先のアパートに引っ越したら、ノートをしまいこまずに、飾っておこう。
その方が麻衣ちゃん喜ぶよね。
「翔太、引っ越し先のアパートに神棚作って、『渡辺さんノート』飾っていい?」
「飾るのはいいけど、神棚作れないぞ(-.-)」
「も~、
すべての出逢いに感謝したいの!」
完
パンジーを植えた日、
麻衣ちゃんが持っていた『渡辺さんノート』をお母さんから渡された。
「このノート、麻衣ちゃんに持ってて欲しいの。」
「え、…でも。」
「麻衣、たくさん友達が欲しくて…
その願いを叶えてくれたのは麻衣ちゃんだし、同姓同名なのもきっと麻衣と出逢う運命だったのよ!」
運命か…
「麻衣も麻衣ちゃんが持っててくれたら嬉しいと思うの。
麻衣のこと…
忘れないであげてくれる?」
「忘れないです!絶対!」
そして麻衣ちゃんのお母さんから『渡辺さんノート』を受け取った。
何度か麻衣ちゃんの家に行って、草むしりをした。
そんな私の様子を見て、麻衣ちゃんが亡くなった後、ボロボロになってしまった麻衣ちゃんのお母さんだったけど、徐々に元気を取り戻していった。
翌年の春には庭に花壇を作って、麻衣ちゃんのお母さんと一緒にパンジーを植えた。
それから、将希が産まれて…
渡辺家は元気を取り戻した!
麻衣ちゃんのお母さんはガーデニングが趣味になり、今の渡辺家の庭はいつ来ても、綺麗だ。
私と麻衣ちゃんが初めて会った日から、約1年後…
麻衣ちゃんは病気が再発してしまい亡くなってしまった。
私は身近な人の死をまだ経験したことがなあったので、すごくショックで麻衣ちゃんがいなくなったことが信じられなかった。
人の死をどう乗り越えるのか分からず、毎日麻衣ちゃんの笑顔を思い出して泣いた。
泣いたってどうにもならない。
だけど泣かずにはいられなかった。
姉が心配してしょっちゅう私の様子を見にきた。
大介さんも心配して何度も家に来てくれた。
翔太は…私と同じ状態だった(汗)
「悲しいけど、受け入れるしかないんじゃないかな?
麻衣ちゃんのこと、忘れないでいてあげようよ。」
大介さんにそう言われて、なんとか立ち直った。
お盆休みに、麻衣ちゃんにお線香あげに行こうと、大介さんと翔太と3人で行った。
麻衣ちゃんの家に着くと、また庭が荒れていた。
麻衣ちゃんの家族のことを考えたら、また涙が出てきた。
3人で草むしりしたな…
姉の家でまったりと過ごし、また次の「渡辺家」へ向かう。
沙織と先生
姉と大介さん
二組の夫婦の出逢いのきっかけを作ってくれた『渡辺さんノート』
このノートを作ってくれた渡辺麻衣ちゃんの家に向かう。
以前と変わらない「渡辺均」という表札。
この家に来るときは、姉の家とは違い妙に緊張する。
大きく深呼吸をしてからピンポンを押す。
すぐに玄関が開き、
「いらっしゃい、お姉ちゃん♪」
ニコニコ笑顔で出迎えてくれたのは、将希。
麻衣ちゃんの弟だ。
小学2年生。
「将希~(^^)元気ー?
お邪魔しるよ♪」
「いいよ!
一緒にゲームやろー」
将希は元気いっぱいだ(*^^*)
いつ来てもスッキリと片付いた部屋。
アロマのいい香り。
優雅なBGM…
あ~、癒される~(*´∇`*)
「ウチの家とは大違いだな。姉妹なのに全然違うな~。
ウチは物であふれかえってるしな~。」
翔太が嫌みを言う。
「も~(>_<)今言わなくてもいいでしょー」
「今言わないでいつ言うんだよ
┐('~`;)┌ 」
も~、イジワル
ま、ホントだから言われても仕方ないけど。
ウチには洋服やら雑誌やら、私の物がたくさんあってごちゃごちゃしている。
こんな姉の家のように癒される空間ではない。
姉を見習わなければ…
沙織やおばあちゃん達と楽しいひとときを過ごし、次の「渡辺家」に向かった。
綺麗な新築のアパート。
可愛らしい手作りの表札
わたなべ
だいすけ
えみ
welcome
この二人も結婚しちゃいました。
ピンポーン
「はーい。」
「お姉ちゃん、麻衣だよ♪」
この家に来るときは、緊張も気遣いもせず気楽に来れる。
落ち込んだり、ストレスがたまるとなぜか来てしまう。
お姉ちゃんや大介さんの顔を見るとホッとするんだよね。
翔太の転勤後は来れなくなってしまうので、姉と大介さんに、文通してとお願いした。
文通なんて古くさいけど、メールより手紙がよかった。
玄関のドアが開き、姉が出てきた。
「どうぞ~、あがって。
今日は何があったの?(笑)」
「何にもないよ^_^;
転勤前の挨拶に来たの。」
「そうなの~?(^^)
翔太くんもどうぞ上がって。」
「お邪魔します。」
高校卒業後、沙織からの猛アタックの末、渡辺先生と沙織は付き合うようになった。
ちょっと年の差はあったけど、沙織のまっすぐな性格に先生も惹かれていって、めでたく二人は結婚したのだった。
結婚する際、先生は自分がもしかしたらまた暴力をふるうかもしれない…と不安になって、沙織と二人で暮らすことに抵抗を感じたらしい。
「じゃあ、おばあちゃん達と同居しようよ!」
と沙織が提案した。
(おばあちゃんと言ってるけど、ホントは義母。)
おばあちゃんの長男である麻衣ちゃんのお父さんの渡辺均さんは、おばあちゃん達と同居する予定はなかったようだったので、先生は次男だけど同居が決定した!
おばあちゃん達、すっごく喜んでた。
家が生き返ったみたいだって。
沙織は今、妊娠8ヶ月。
子どもが生まれたら、ますますにぎやかな渡辺家になるだろう(*^^*)
沙織の家に着きワクワクしながらピンポンを押す。
「は~い。」
「渡辺麻衣でーす。」
「いらっしゃい。」
出てきたのは渡辺先生だ!
「先生~、久しぶり~♪」
「麻衣も翔太も久しぶりだな。」
「麻衣~」
奥から大きなお腹の沙織が出てきた。
「沙織~♪お腹大きくなったね~(^^)」
「早く上がって。麻衣達が来るって言ったらお義母さんも喜んじゃってさ~♪」
翌日の日曜日。
まずデパートで手土産に美味しそうなお菓子をたくさん買って、旦那である翔太の運転する車で、皆の家に出発した。
車の窓を開けると心地よい風が頬にあたる。
麻衣ちゃんと初めて会った時のことを思い出す。
「まずは?
どこから行く?」
「沙織の家かな~。一番遠いし。」
「はいよ。」
車を走らせ沙織の家に向かう。
大きな和風の家。
沙織は結婚して旦那さんの両親と同居している。
一応沙織に連絡してみる。
沙織とはずっと仲が良かったけど、お互い結婚してから、ますます仲が良くなった。
会うのは1~2ヶ月に1回程度だけど。
電話をすると、運よく家にいて出掛ける予定もないと言う。しかも、
「今日は旦那もいるから是非おいで!」
「ほんと?
先生に会うの久しぶりだなあ。」
麻衣ちゃんと会って、もう10年が過ぎたのか…
荷造り中断のまま、私は思い出にひたっていた。
「なんだか昨日のことみたいに思い出すね」
「そうだな~
ほんとに不思議なノートだよな…」
翔太と二人で『渡辺さんノート』を見つめる。
「荷造りはかどらないし、今日はもうやーめた!」
「え?」
「それよりさ、皆に会いに行くの明日にしようよ!」
「はあ?明日~?
いきなり行ってもいないだろ。」
「大丈夫でしょ。明日日曜日だし。
沙織は仕事してないし、お姉ちゃんも専業主婦だし、麻衣ちゃん家にも連絡入れとくし。」
「本気か??
適当だな~(;´Д`)」
それから皆で美味しいお料理を食べて、誕生日ケーキも食べた。満腹。
食後は庭で麻衣ちゃんと皆でバドミントンをして遊んだ。
そういえば庭。
とってもきれいに手入れされてる。
あの荒れた庭は麻衣ちゃん達家族の悲しい心の中の様子だったのかも。
今は笑顔いっぱい。
このきれいで元気な庭は麻衣ちゃんそのものだね!
健康って、本当に有り難いな。
翔太が携帯電話を持ってるのを見て、私も早く欲しいな…と実はちょっとすねていた私…。ホント小さいな(-.-)
麻衣ちゃんvs大介さんのバドミントン…
大介さん下手すぎ(笑)
「大介さん!本気だしてよ(笑)」思わず大介さんに突っ込む。
「えー(汗)本気本気!」
大介さん…まためっちゃ汗かいてますけど(笑)
「大介兄ちゃん、麻衣手加減してあげるよ?」余裕の麻衣ちゃん。
ギャハハ~(o⌒∇⌒o)と私達は大ウケ。
あ~、こんな些細なことで大笑いできるのも幸せなことなんだなぁ。
その後も『渡辺さんノート』を見ながら麻衣ちゃんは喋る喋る…(*^^*)
チラッと周りを見ると、大介さんは麻衣ちゃんの両親と。
翔太はおばあちゃん達と。
沙織はちょっと恥ずかしそうに先生と話していた。
あ!
そうだプレゼント渡さなきゃ。
「麻衣ちゃん、今日お誕生日なんだよね?
今日、呼んでくれたお兄ちゃんやお姉ちゃんからプレゼントがあるよ♪」
「えー!!!!」
「みんな~麻衣ちゃんにプレゼント渡すよ!
はい、お誕生日おめでとう!」
私はみんなに声をかけて、麻衣ちゃんにプレゼントを渡した。
「おめでとう麻衣ちゃん。」
みんなから拍手o(*⌒―⌒*)o
「うわっ!かっわいい(*≧∀≦*)」
麻衣ちゃんはラッピングされたプレゼントを見ただけで大喜びしている。
「ありがとう!
ママー開けてもいい?」
「皆さんすみません、ありがとうございます。」
「ママ!開けるよ。」
「はいはい(^^)何かしらね。」
「何だろう!!!!」
まだ中身見てないのにこんなに喜んでくれて嬉しいな。
「時計だ!コップも入ってる!
可愛いーーo(^o^)o
やったぁ!!!!!!」
早く使いたい!と、麻衣ちゃんは早速マグカップを洗って、ジュースを注いで飲んでいた。
時計も大介さんが電池を入れて時間を合わせてくれた。
時計を合わせる様子をニコニコ見ている麻衣ちゃん(o^-^o)
「時計どこに置こうかな~、机の上かな?
ベットの横がいいかな?
ママ~、どこがいいと思う~?
あ~、可愛い時計嬉しいな(//∇//)」
こんなに喜んでくれて、なんだか私も嬉しくなる(//∇//)
「お姉ちゃん達、ありがとう。時計もコップも大切にするね!」
私はドキドキしていた。
突然麻衣ちゃんが出てきたのでビックリした。
この子が渡辺麻衣ちゃんか…
すっごく可愛い!
活発そうな感じの女の子だ。
リビングにはおじいちゃんとおばあちゃんの姿も…
わー!すごい大集合だ!
リビングのテーブルにはお寿司やサンドイッチなど、美味しそうな料理がならんでいた。
「お姉ちゃんの中で、渡辺麻衣ちゃんは誰ですか?」
麻衣ちゃんがわくわくした顔で聞いてきた。
ちょっと緊張しながら
「はーい。私ですよ~。」と手をあげた。
「お姉ちゃんが?」
麻衣ちゃんが私のところへ来て手を引っ張り、自分の隣に私を座らせた。
「お姉ちゃんありがとう。
私、ずっと会いたかったんだー!
このノートをまわしてくれたのは麻衣と同じ名前のお姉ちゃんだって、ママから聞いて。」
キラキラとした笑顔で視線をそらさず話す麻衣ちゃん。
ちょっと照れるなあ(^^;
渡辺均さん家に到着した。
チャリを置き、プレゼントを持って玄関に向かう。
玄関の前でフゥ~と深呼吸をして、ピンポンを押そうとした。
その時、突然ガチャリと玄関のドアが開いた。
中からピンク色のワンピースを着た女の子が出てきた。
私達を見るとにっこり笑顔で
「こんにちは!」
と、挨拶してくれた。
肌の色が透き通るように白く、柔らかそうなふわふわのショートヘアーの女の子。
手には『渡辺さんノート』を持っている。
「こんにちは。麻衣ちゃんかな?」
大介さんが麻衣ちゃんの視線に合わせてしゃがみ、優しく声をかける。
「うん!渡辺麻衣です!」
奥から、麻衣ちゃんのご両親と先生が出てきた。
「いらっしゃいませ~」
「よく来てくれたな!
大介さんもありがとうございます。」
「どうぞ、上がって下さい。」
私達は部屋へ入りリビングに通された。
そして、遂に26日!
2日ほど前からそわそわ落ち着かない私。
今時の小学生ってどんな感じなのかな?
どんなことに興味があるんだろう?
何話そう…
色々考えていた。
当日の服装は沙織と相談して、可愛らしい感じのワンピースで行こうと決めた。
一緒に行くのは翔太と沙織と大介さん。
誕生日会の場所は自宅。渡辺均さんの家だ。
みんなで自転車で向かった。
誕生日プレゼントも忘れず持った。
ドキドキして無言になってしまう。
黙ってチャリをこぐ。
すっかり暖かくなって、風が気持ちいい。
サイクリング日和だな♪
でも…大介さんは汗をいっぱいかいていた。(笑)
「ちょっと見せて見せて!」
翔太から携帯を奪い、まじまじと見つめて色んなボタンを押してみる。
「おいおい(-o-;)勝手に触んなよ!」
「あ…(汗)でね、これから麻衣ちゃんの誕生日プレゼントを選びに行こうかと思って。」
携帯電話に夢中になっている私達に大介さんがひとこと。
誕生日プレゼント!
「そうだった!私も誕生日プレゼントいるかなって思ってたんだよね!」
「うん。
俺らバイトがあって、買いに行ける日が今日しかなくてさ。
突然で悪いけど、今日行くことにしたんだ。ごめんね。」
「いいよ~(^^)/
あ!私の友達も26日一緒に行くんだけど、誘ってみてもいいかな?」
「うん。」
「翔太、携帯貸してよ。沙織に電話するから。」
「いきなりだな(-_-)
長電話するなよ!」
「わかってるって~♪」
沙織の携帯番号は暗記していた。
「もしもし、沙織?麻衣だよー」
「麻衣?遂に携帯買ったんだ~」
「ううん、残念ながら翔太の携帯。
あ、突然なんだけどね、今日予定ある?」
残念なことに、沙織は今日は中学の部活の送別会があるらしく、買い物は無理だった。
「後で私もお金払うから可愛いもの選んでおいて~!よろしくです。」
「了解(^^)/」
ということで、大介さんと姉と翔太と私の4人で、ショッピングモールに行って、プレゼント選びをした。
悩む~(>_<)
めちゃめちゃ悩んで、すごい時間がかかっちゃった。
ショッピングモール内、行ったり来たり…
可愛いらしい服にしようかと思ったけど、服のサイズがわからないし、麻衣ちゃんのイメージもわからない(汗)
結局、キャラクターの置き時計とマグカップにした。
可愛くラッピングしてもらった。
麻衣ちゃん、喜んでくれるかな?
顔を洗って外に出ると、いつもの大介さんの車がとまっていて、車内には助手席に姉、後ろの席には翔太が座っている姿が見えた。
大介さんが窓を開けて
「おはよう。
乗って乗って~。」
と、声をかけてくれた。
?…お出掛けなのかな?
よくわからないまま車に乗り、車スタート。
「お前休みだからって寝過ぎだろ。」
翔太に言われる。
「今日どこ行くの?」
翔太の言葉は無視して大介さんに聞いた。
「あのね、昨日渡辺麻衣ちゃんのお母さんあら連絡もらったんだ。
26日に麻衣ちゃんの誕生日会をするからって誘われたんだけど…
知ってるかな?」
「昨日渡辺先生経由で聞いたよ。
今日翔太に言おうと思ってた。」
「俺は昨日大介さんから聞いたんだよ。」
そう言いながら、翔太が私に携帯電話を見せた。
「え?それ翔太の?」
「そう。合格祝い。」
「ずるいー(>_<)
てか、私にも番号教えてよー!」
「お前も携帯持ったらな。
お前より先に持ちたいと思ってたから、念願叶ったよ。」
「も~(ーー;)」
そして翌日。
姉に起こされた。
もう春休みなので、朝ダラダラ寝ていた。
「おはよう。よく寝るね~(^^;
これから大介さん来るから。」
姉がカーテンを開ける。
うっ(;o;)まぶしい(>_<)
「ん…、今日デートなの?」
眠い目をこすりながら聞く。
「麻衣に話があるみたいだよ。」
「私に?」
ピンポーン
「ほら、もう来ちゃった。
早く着替えてね!」
「うん。」
姉は玄関へ向かった。
話ってなんだろな?
パジャマから私服に着替えて、顔を洗いに洗面所へ行った。
「よかったね!!!!」
なんだか私までテンションが上がる。
いいな~、恋してるな~(//∇//)
「うん(o^・^o)
合格したの誉めてもらっちゃった(*´∇`*)
それでね、渡辺麻衣ちゃんの話になったんだけど、26日麻衣ちゃんの誕生日らしいの。
で、その日誕生日会をするから、都合がよかったら、麻衣達みんなでおいでって。」
「そうなの?
麻衣ちゃんに遂に会えるんだ!」
私、興奮。
「そうなの!麻衣26日空いてる?」
「空いてる空いてる!
そもそも予定のある日がないぐらいだよ(笑)」
「私もだよ(笑)
翔太くんも大丈夫かな?」
「大丈夫にする!」
「ホント?(笑)
じゃあ、先生に26日行けますってメールしとくね。」
「うん。よろしくね(^^)v」
「オッケー。
じゃ、また連絡するね(^^)/」
電話を切り、ひとりドキドキした。
麻衣ちゃん…
どんな子なんだろう。
やっと会えるんだなぁ
誕生日なのか~
誕生日…
(゜ロ゜)誕生日プレゼントいるかな?
よし!
明日、翔太に相談しよう♪
すごく楽しみだった。
そしてその夜…
家の電話がなった。
私は二階の自分の部屋でくつろぎタイム。
「麻衣~。電話だよ~。」
下から母親が私を呼ぶ。
沙織からかな?
階段を降りてリビングにある電話に出る。
ウチは長電話防止の為、子機の使用は禁止されている。
携帯電話も自分で使用料金が払えるようになるまでは、持たせてくれない。
高校生になったらバイトをして、すぐにでも携帯電話が欲しい。
「もしもし~」
電話に出ると、やっぱり沙織からだった。
「あ、麻衣~?」
そのひとことで、沙織のテンションが上がっているのがわかる。
先生から返信がきたんだな?
「先生から返事きたの?」
「そーなの!さっきメールがきて嬉しくてさ(*≧∀≦*)」
メール送信。
「ドキドキする~。先生メール読んでくれるかな?」
「読むでしょ(^^)
先生は無視するような人じゃないよ」
「うん。そうだよね。」
先生からすぐに返信はなかった。
多分、仕事中だろうし。
仕事中(塾の先生)は携帯見ないだろうし、また仕事が終わってメール見たら返事がくるよ!
先生からなかなか返事がこないので、沙織は不安そうだった。
「大丈夫だって!
また返事きたら教えてね(*^^*)」
「うん…」
も~、元気ないなぁ(>_<)
先生は絶対無視しないって!
私も携帯を持ったらそんな気持ちになるのかな?
それから…
冬休みも終わり…
私立高校の受験、公立高校の受験…
…あっという間に終わった。
卒業式も無事に終わった。
受験の結果は…
私と沙織はA高校に。翔太はB高校に。
それぞれ第一希望の高校に合格した。
今まで全然勉強しなかったので、冬期講習と大介さんの家庭教師のおかげで私は合格できたと思ってる。
両親も喜んでくれて嬉しかった。
翔太とは別の高校になっちゃったけど…
どうなるのかな~。
沙織は合格発表の後、ベッタリと手汗をかきながら、渡辺先生にメールをうっていた。
「先生にメール送るの初めてなの(汗)」
私が、渡辺先生に合格発表の報告ぐらいしてもいいんじゃない?、と沙織に言ってから、もう10分メール作成中だ。長い。
「よし!できた!麻衣~文章変じゃないか見てー。ハート使って大丈夫かな?」
はいはい~とメールを見ると、
『先生、お久しぶりです。渡辺沙織です。
お元気ですか?
今日、A高校の合格発表でした。
受かりました!』
真面目!
「だって、相手が先生なんだもん。」
ふくれる沙織を見て、なんだ笑えた(^^)
「じゃあ、また連絡するからな。受験頑張れよ!」
「はい、連絡待ってます(^^)/」
そう言って先生と別れた。
「麻衣~、ありがと!先生の連絡先ゲットできたよ~。」
「やったね(^^)v
3月にまた先生と会えるかもしれないし、私も麻衣ちゃんに会えるのが楽しみだよ(*≧∀≦*)」
「だね!私はそれを目標に受験頑張るよ~。」
「私も!」
テンションが上がった女子二人はキャッキャッと盛り上がっていた。
その横で冷めた翔太は
「動機不純(-_-)」とつぶやいていた。
「じゃあ、私も一緒に待ってよ。」
私と沙織は机をはさんで向かい合って座り、翔太は空いた椅子を持って来て、私の隣に座った。
「ねー、翔太くん。先生すっごいモテてた?」
「なんか女子に囲まれてたぞ。」
「えー…、どうしよう麻衣~(>_<)」
「先生、いい先生だもんね。」
そう言いながら、先生の話ってなんだろう?と気になった。
沙織が聞いても大丈夫の話でありますように…と願った。
しばらくして、先生が教室に入ってきた。
楽しそうに話していた沙織の顔が一気に緊張した顔になった。
「悪いな、待たせて!」
先生は空いた椅子を沙織の隣に持ってきて座った。
突然、隣に先生が座ったので、沙織は真っ赤な顔になり、ドキドキ心臓の音が私のところまで聞こえてきそうだった。
「先生、話って何?」翔太が話始める。
「そうそう(^^)
実はな、俺の姪っこの渡辺麻衣の退院が決まったんだよ。」
え!!!!
思いがけない話の内容に少し戸惑ったけど…
退院?
「退院ですか?
病気が治ったってことですか?」
「まだ検査や治療はあるけど検査の結果がよかったんだろうな。」
白血病、治るんだ!
「じゃあ、麻衣ちゃんに会えるんですか?」
「すぐには無理だけどな。お前らも受験があるし…。早くても3月ぐらいかな?
麻衣もお前達に会いたがってるから、会ってやってくれ。」
「もちろんですよ!
遂に麻衣ちゃんに会えるんですね!
嬉しいー(*≧∀≦*)」
「ありがとな。
で、3月ぐらいに麻衣と会えるようになったら、また連絡してもいいか?」
「はい…、あ!」そうだ…
「どうした?」
「じゃあ先生の携帯番号とメールアドレス教えてもらえませんか?」
「いいけど…」
「私と翔太はまだ携帯持ってないんですけど、沙織が携帯持ってるんで、沙織に連絡して下さい。沙織も麻衣ちゃんに会いたいと思うし…。」
「そうか。番号今教えてもいいか?」
と、先生は沙織の方を見た。
沙織は恥ずかしいのか、下を向いてブンブン頷いていた。
これで先生の携帯番号とメールアドレスゲット(^^)v
夕方…聞くタイミングがつかめないまま、すべての授業が終わってしまった。
「どーしよ…麻衣。
授業終わっちゃったよ(/´△`\)
もう先生に会えないのに…」
沙織が泣きそうな顔で焦ってる。
なんか可愛い♪
「大丈夫!まだチャンスあるよ。先生まだ帰らないと思うし。職員室覗いてみようよ。」
「うん。」
すると私達の教室に翔太が入ってきた。
そう。結局1度も翔太と同じレベルのクラスにはなれませんでした(T_T)
「翔太、どうしたの?」
「渡辺先生が、話があるから麻衣と一緒に待っててくれって。
さっき職員室行ったら渡辺先生、女子にモテてたぞ。」
後半の情報はいらん(怒)
「話って?」
「さあ?でもここで待っとけば先生来るだろ」
話って、もしかしてエマさんのこと?
それだとまずいんですが…
チラッと沙織を見る。
そして、冬期講習最終日を迎えた。
沙織が朝からソワソワしている。
渡辺先生に会うのも今日で最後。
先生に携帯番号とメールアドレスを教えてもらうつもりらしい。
いつ聞こうか
どうやって呼び出そうか…
教えてくれるかな?
あー、緊張する~
1日に何回同じこと言うんだよ、とつっこみたくなるぐらい沙織はそんなことばかり言っていた。
今日の沙織の頭の中は渡辺先生一色だな(^^;
バレンタインの日に、いつチョコを渡そうか…と悩んでる女子みたいだ。
週1回の大介さんの家庭教師もスタートした。
19時から1時間。
テストでわからなかったところを聞いたり、暗記のコツを教えてもらったり、時には無駄話もした。
大介さんは私のよいところを見つけて、いつも誉めてくれる。小さなことでも。
あまり誉められることがなかった私は、なんだか照れくさかったけど、単純だからかな?誉められるとやる気が出てくる。
私はきっと誉められるとのびるタイプなんだな!
渡辺先生は何事もなかったように普通に接してくれた。
エマさんのことは沙織には言いたくなかったし、先生のアパートに行ったことも知られたくなかったので、ホッとした。
再び、宿題やテストに追われる毎日になった。
冬期講習は冬休み期間中だけなので、あと少しで終わり。
1回ぐらい翔太と同じ教室で授業を受けたかった。
その為にはテストで良い点をとって、順位を上げなくちゃ!
受験に合格する為に頑張って勉強してるって思いはなく、単なる意地?みたいなものだったけど、両親は「受験勉強よく頑張ってるな。」と私のことを見直してくれたようだった。
翌日からまた冬期講習が始まった。
エマさんの話を聞いてショックな気持ちもあったけど、先生が最低な人じゃなかったと確認できて嬉しかったし、なにより沙織の恋を純粋に応援できると思った。
今までは、なんとなくうしろめたいような気持ちがあって、素直に応援できなかったから…
先生、エマさんに未練もなさそうだし。
沙織頑張れー\(*⌒0⌒)b♪
「麻衣…なんかいいことでもあったの?」
「え?」
「顔、ニヤニヤしてるけど…」
沙織が私の鼻を指でツンツンする。
ゲッ(汗)
顔に出てた?
「もしかしてテストの順位良かったとか?」
「…テストは…変わらずです。」
朝、前回のテストの順位を確認する。
はぁ~
また1番頭悪いクラスだよ~
受験のことなんて完全に忘れてたし
(T_T)
でもよかった!いや、よくはないけど。
先生はやっぱり最低な人なんかじゃない!
エマさんと別れて、車は静かに出発した。
大介さんもお姉ちゃんも心配そうな顔をしてる。
聞いてホントによかったの?って。
「大介さん、お姉ちゃん、ありがとう!
エマさんの話が聞けてよかったよ。ね、翔太!」
笑顔で大介さんとお姉ちゃんに言った。
「うん。」翔太も頷いている。
「ホントに?
でも高次さん、相当つらかったよね…
もうふっきれたのかな?」
お姉ちゃんが心配そうに言う。
「今、どんな気持ちでいるかは分からないけど…
前に進んでるといいね。
エマさんは就職先が自分に合わなかったのかな?かなりストレスたまってたみたいだね。
確かに社会人と大学生が付き合うのって難しいかもしれないけど。
高次さんと別れた後、周りの男に流されちゃったのがいけなかったね。
ストレスばかりの毎日に癒しを求めて…
それがギャンブル。
ストレス発散も必要だけど、本当に大切なものを見失わないで欲しかったね。」
「エマさん…」
突然の大介さんの声に、エマさんは顔をあげた。
「話の途中で申し訳ないけど、ちょっと中学生には刺激的過ぎる話かな?」
「あ、ごめんなさい。つい…」
「エマさんがその男性と切れてなかったことで、高次さんが怒ったのかな?」
「はい。
それに…二人で貯めてた結婚資金も、その男とギャンブルに全部使ってしまったこともバレてしまって…」
はあー??
「だから、確かに暴力はあったけど、高次は全然悪くないの。
すごく、素敵な人…
後悔してる。
私は本当にバカだったって。
ごめんね。」
…先生。
先生は本当に殴った痛みを忘れないために火傷したの?
傷つけられた痛みを忘れないためじゃなくて?
「でも高次と別れたからって、何かが変わるわけでもなくて…
仕事でのストレスはたまるし、話を聞いてくれる人もいない。
なんだか寂しくなっちゃって。
色んな男と適当に遊んじゃうようになって…
パチンコとか…ギャンブルにもはまっちゃって…」
ぱ、パチンコ?
パチンコって、おじさんがするイメージだったから、またまたビックリした。
エマさんに相づちをうつ余裕もないまま、話はどんどん進んでいく。
「何ヶ月かして、高次がもう一度やり直そうって言ってくれたんだけど、私、すごく嬉しくて…
すぐやり直したいって返事したの。
…まだその時遊びで付き合ってた男とも切れてなかったし、ギャンブル好きも直ってなかったのに…」
「高次から聞いたかもしれないけど、私達付き合ってて、一度別れたの。
私が就職したばかりの時で、社会人一年生…何にもわからなくて。
仕事でミスするし、人間関係も難しくて…
ストレスたまっていつもイライラしてた。
だけど、高次は大学生で毎日が楽しそうだった。
そんな高次の姿もなんだか腹立たしくなって…
私の勝手だけどね、別れちゃったの。」
好きなのにそんな理由で別れちゃったの?
中学生だった私は別れた理由にビックリした。
今だったらエマさんの気持ちわかるんだけど(汗)
そして更に、ここからのエマさんの話はますます理解できない方向へ…
「聞きたいことって、高次に殴られた理由だよね?」
車内、二列目の席に私達とエマさんが並んで座った。
「…はい…」
「理由は、私が高次を傷付けたから。
…それだけだよ。
私が悪いの。」
エマさんが、サラリと言った。
「渡辺高次さんは、偶然なんですけど私達の塾の先生なんです。
すごくいい先生で…その…暴力をふるうなんて信じられなくて。
それで…殴ってしまった理由が知りたくなったんです。」
改めて、先生と私達との関係をエマさんに説明した。
「そうなんだ。
高次は?殴ったこと何も言ってなかった?」
「…自分を責めてました。」
「…そっか。」
エマさんは俯いて返事をした。
「私さ、高次を裏切ったの。」
「ごめんなさい。お邪魔します…」
エマさんと私達は、大介さんの車に乗り込んだ。
「ごめんね。今、ウチ親いるし、高次の話は家でしたくなくて…」
そんな理由で、大介さんの車の中で話をすることになった。
大介さんとお姉ちゃんは気を使って、車から降りようとしたけど、慌ててエマさんがとめた。
「乗ってて下さい!お邪魔したのは私なんですから…」
「…でも…。」
「いいんです。一緒に聞いてて下さい。
楽しい話じゃありませんけど…」
エマさんは見た目や話をしている感じからは、とても悪そうな人には見えない。
お金を盗むような人には見えない。
しっかりしてそうな雰囲気。
顔も可愛い…というよりは綺麗なタイプ。
渡辺先生とお似合いだよ。
なのに…いったいなぜ?
エマさんの実家に着いた。
邪魔にならない所に車をとめた。
「俺は絵美ちゃんと車で待ってるから、二人で行っておいで。
エマさん、家にいるといいね。」
「わかった。…じゃあ、行ってくるね。」
翔太と車を降りて、エマさん家の玄関に向かう。
お隣の渡辺先生の実家=おばあちゃん家は、すっごく大きな家だけど、エマさん家は私や翔太の家と同じぐらいの、ごく普通の家。
玄関のドアの前に立ち、ふ~…っと深呼吸してピンポンを押す。
…
エマさん…いるかな?
「はい…」
部屋から声がして、玄関のドアが少し開いた。
あ!!!!
エマさんだ!
「あ、あの!エマさん!
覚えてますか?私、渡辺麻衣です。」
慌ててカミカミで言った(汗)
エマさんは玄関のドアを全部開けて外に出てきた。
トレーナーにジーパン姿のエマさん。
最初は「?」って顔をしてたけど、すぐに思い出してくれて
「あ~!あの時助けてくれた二人だね!
どうしたの??こんなところまできてくれて…?」
そりゃあビックリするよね(;>_<;)
「突然すみません。実はエマさんにききたいことがあって…」
「聞きたいこと?」
「渡辺高次さんのことです。」
「え?」
「あの日…どうして高次さんに殴られたのか教えてもらえませんか?」
車はエマさんの家に向かって出発した。
車の中で、大介さんとお姉ちゃんに、エマさんと先生のことを話した。
「知らない方がいいこともあるけど…
大丈夫?後悔しない?」
大介さんが真面目な顔で聞いてくる。
大介さんはいつも笑顔で優しい表情をしている。
その大介さんにこんなかたい表情をされると、なんだか怖い。
(私、大介さんに怒られたらきっと怖くて泣いちゃうな。)
でも大丈夫!
後悔は絶対しない。
このまま真実を知らないでモヤモヤしているよりはいいと思う!
そう大介さんに伝えた。
「わかった。」
大介さんはわかってくれたようだった。
「どうしたの?」
姉が心配そうに聞く。
「麻衣ちゃん?
どこか行きたい所でもあるの?」
大介さん(涙)
なんでわかるんですか(T^T)
「まあ、ちょっと…」
チラッと翔太の顔を見ると…
にらんでる(^^;
「いいよ。そんなに遠くじゃなきゃ。
ドライブがてら。ね、絵美ちゃん。」
「大介さんがいいんなら私はかまわないけど…」
「ホント?ありがとう!!!!!!
あ…、翔太も…行く?」
「行きますよ!
デートの邪魔しちゃって、ごめんなさい。」
翔太は私をにらみながら、二人に謝っている。
「いいよ(^^)
で、どこに行きたいの?」
「麻衣ちゃん、翔太くんも(^^)
二人仲良くお出かけかい?」
「ちょっとね。それより大介さんは?
これからお姉ちゃんとデートなの?」
「ちょっとね(笑)」
「今日はどこに行くの?ドライブ?」
「まだ決めてないけど?」
「麻衣ー(-.-)」
翔太が後ろで私の上着のフードを引っ張る。
「『大介さん、エマさん家まで乗せてって』って顔してるぞ(ーー;)」
あ…(^o^;)
わかる?
「大介さんはエマさんとは関係ないんだからな。
デートの邪魔しちゃダメだろ!」
「それはそうだけど…」
「何やってるの?」
私と翔太がゴチャゴチャ言ってるうちに、いつの間にか姉が私達のそばに来ていた。
でも…やっぱり真実が知りたい!
「私、エマさんに会いに行きたい。」
「…どうやって?」
エマさんの家は駅から遠くて、車じゃなきゃ行くのが難しい。
「…なんとかして行く。」
「バカ。それにエマさんが実家に住んでるかどうかも分からないだろ。」
「…そうだけど。」
やっぱ無理かな…
ため息をついて、ノロノロとチャリをこいで家まで帰った。
家に着くと、大介さんのワンボックスがとまっていた。
「大介さん来てるのかな?」
なせが急にチャリをこぐスピードが速くなる。
運転席に大介さんの姿が見える。
「大介さん!」
運転席にいた大介さんは私に気付いて窓を開けてくれた。
「じゃあまた、明日な!
今日はありがとな!気を付けて帰れよ。帰ったら連絡くれな。」
先生は明るくそう言って、電話番号を書いたメモをくれた。
「わかりました。…また明日。」
暗い気持ちで先生と別れた。
スローペースでチャリのペダルを踏む。
やっぱあれ?
エマさんが浮気しててその現場を見た…とか?
…ドラマの見すぎかな?
そんなこと現実にはあり得ないことなのかな?
翔太に話すと、
「俺らが子どもだから言えないんだろ。」
「もっとドロドロした理由なのかな?」
「ドロドロって( ̄▽ ̄;)
それこそテレビの見すぎだろ。」
まあね。
「…お金を盗られたから殴った、結婚をやめた…というのも本当のことだ。」
「先生…」
先生は寂しそうな表情だった。
先生は火傷のあとが残る手を私達に見せながら、
「暴力ふるう男なんて最低なんだよ。
俺も自分が情けなかった…
自分がした最低な行為を忘れないために…」と言った。
先生、もしかして自分で火傷つくったの?
「痛みを忘れないためにな。」
…先生……
先生はそれ以上なにも話してくれなかった。
でも先生が苦しんでいることはすごく伝わってきた。
「ごめん。暗い雰囲気になったな。
お前達が嫌な思いをしてないんならよかった。安心したよ。」
先生は笑ってそう言ったけど…
私達は笑えない。
こんなに先生を苦しめたエマさんが許せなくなった。
それに先生は「本当の理由」は、かくしてる。
「本当の理由か…」
「言いたくなかったら答えないで下さい。
こんな子ども相手に…、ねえ先生…」
翔太はそう言うけど…
私は聞きたい!
中学生の私が聞くようなことじゃない?
でも興味本位とか、そういうわけでもない。
ただ、真実を聞いて
「やっぱり先生は暴力をふるうような男じゃなかった!」って思いたかったのかな…
恋愛感情はないけど、私も先生が好きだった。
「お金盗られたから殴ったんですか?
結婚も…やめちゃったんですか?」
「麻衣!」
言い過ぎι(`ロ´)ノって顔をして翔太が私を見た。
…しまった。
「結婚のことまで知ってたのか~。」
「ごめんなさい。
でもね。先生。
あの…正直に言うけど、
私、暴力を受けた女性を見たの初めてで、すごくショックだったんです。
ここまでボコボコに殴るなんて、なんて最低な男なんだろうって思ってました。
でも先生がエマさんの相手だったって知って…
分からなくなってきたんです。
先生は優しくてすごくいい先生なのに…
そんな先生がなぜ暴力をふるったのか…
本当の理由は何なんですか?」
盗られるって?
「知ってると思うけど、俺とエマは家が隣同士で幼なじみなんだ。
高校生の時に付き合い始めて…
でも高校卒業してからエマは就職、俺は大学進学…で、すれ違うことが多くなって、1回別れたんだ。
でも1年もしないうちにまた復活したんだけど…
その別れてた時に、エマ…盗みぐせ?みたいなのがついてしまって…
俺もよく財布から抜かれてたんだよ。」
「え??」
「財布の中身減ってるな~って、すぐ気付いた。
エマが盗ってることも。
でもエマを信じてたし、何も言わなかったんだ…。」
「…」
「…って、生徒に何話してんだか(^^;
お前達も裏切られてないか気になったんだよ。
エマ…
悪いヤツじゃなかったんだけど…」
「コーヒー…飲めるよな?」
先生がマグカップにコーヒーを入れてきてくれた。
「はい、飲めます。ありがとうございます。」
砂糖とミルクをたっぷり入れて、コーヒーを飲んだ。
先生はブラックだ。大人だな。
「先生、話って何ですか?」
( ; ゜Д゜)
翔太!いきなり本題突入!
「ああ、その…
夏にエマの怪我の手当てをしてくれたのはお前達だったんだな。」
「…はい。」
実際に手当てをしたのは、翔太のオバチャンだけどね。
「今でもエマと付き合いはあるのか?」
先生…
ひょっとしてエマさんに未練があるとか?
「どうしてそんなこと聞くんですか?
もしかして先生…まだエマさんのこと…」
「違う違う(汗)
その…
お前達、何も盗られたりしてない…よな?」
先生のアパートに到着した。
夏に来たんだよね、ここ。
なんだかすごい昔のことみたいに感じるな…
少し緊張しながらピンポンを押す。
すぐに玄関のドアが開き、先生が出てきた。
「悪かったな、わざわざ来てもらって…」
「いえ…」
「ま、とにかく寒いから上がってくれ。せまい部屋だけど…」
「お邪魔します…」
ドキドキしながら、翔太と先生の部屋に入った。
玄関を入ってすぐに台所があった。
奥に進むと、こたつやテレビが置いてある部屋。
隣にもうひと部屋あるみたい。寝室かな?
キョロキョロと部屋を見回す。
すごくシンプルな部屋だな。
翔太の部屋もこんな感じだけど…
「あんまり掃除してないから、部屋中見ないでくれよ(^^)
お茶持っていくから、座っててくれ。」
先生が台所から声をかけた。
「あ、ハイ。」
翔太はすでにこたつに入っていた。
私もこたつに入り翔太の横に座った。
そしてお昼過ぎ…
翔太と一緒に、チャリで渡辺先生のアパートに向かった。
「先生、最初俺らの家に行こうかって言ってたんだけど、今日ウチ親いるし断ったんだ。
なら、家まで迎えに行くとか言うから、それも断った。
チャリで行ける範囲だし、いいよな?」
先生、そんなこと言ってたんだ…
確かに正月から突然先生が家に来たら、親はビックリするよね(汗)
沙織に言ってないけど…
もし先生のアパートに行ったことを沙織が知ったら…なんか嘘ついてるみたいで気まずいな…
今日帰ったら、沙織に隠さず全部話そう…
酷いことかもしれないけど、もし沙織が先生と付き合うことになって、暴力ふるわれたら…
ボコボコになったエマさんの顔を思い出す。
ダメダメ!
暴力は絶対ダメだ!
すると再び電話がなる。
…翔太かな?
「もしもし…」
「もしもし。私、○○館の冬期講習の教師をしております渡辺と申しますが…」
渡辺先生!
「渡辺先生ですか?麻衣ですけど…」
「渡辺麻衣か?悪いな突然電話なんかして…。
さっき、渡辺翔太にも電話したんだけど、お前達とちょっと話がしたくてな。
これから予定とかあるか?」
「いえ、ないですけど。」
「悪いけどさ、翔太と一緒に俺のアパートに来てくれないか?
話はすぐ終わるから…。」
「分かりました。」
先生…
話って何だろう?
きっとエマさんのことだよね…
静かに受話器を置いた。
それにしても…
先生わざわざ翔太にも私にも電話かけてきてくれて…律儀だな~。
それから2日後…
朝カレンダーを見て、明日からまた冬期講習が始まるな~って考えてたら、電話がなった。
「もしもし、渡辺ですけど…」
「麻衣?俺。」
「翔太?どうしたの?」
「さっき、渡辺先生から電話があって、先生のアパートに来てくれって言われたんだ。」
「え?なんで?」
「さ~?よく分からんけど、お前もついてこいよ。」
「私も?」
「昼過ぎに出るから。じゃあな。」
「え?ちょっと翔太…」ツー・ツー・ツー
切れてるし(ToT)
私の予定とか聞かないのか?予定ないけどさ。
でも何で呼び出されたんだろ?
私が行っても大丈夫なのかな?
二人はクリスマスに付き合い始めたらしい。
毎日のようにメールや電話をしているうちに、お姉ちゃんの方が大介さんを好きになったみたい。
外見的には美女と野獣…(大介さんごめんね)
でも、とっても素敵なカップルだと思う。
私も大介さんのことは大好きだし、お姉ちゃんを幸せにしてくれること間違いなしだ!
渡辺先生とエマさんのことでモヤモヤしてたけど、大介さんとお姉ちゃんの話を聞いて、すごくあったかい気持ちになった。
もう先生とエマさんのことは忘れよう。
私がいくら考えても、過去のことはどうすることもできない。
それから佐藤さんの家に着くまで、佐藤さんから先生のことをたくさん聞いた。
でも誕生日とか血液型とか女子が喜びそうな情報は少なくて、ほとんどが学生時代のエピソードだった。面白かったけど^^;
佐藤さん夫婦と別れた後は、まず4人でお昼を食べに行った。
その後はボーリング場に行って、みんなでボーリングをした。
久しぶりのボーリング…ストレス発散にちょうどいい!
めちゃめちゃ楽しかった(*≧∀≦*)
そして、帰りの車の中で、ずっと聞きたかったことをやっと聞いた。
「大介さんとお姉ちゃんって、付き合ってるの!?」
何から聞こうかな…
渡辺先生って、数学の授業も分かりやすいし、男子からも女子からも人気がある。
でも、そんないい先生が女の人に暴力をふるうのかな?
翔太のオバチャンが、エマさんがお金を盗もうとしたって言ってたけど…
相当ひどいやり方で盗んだのかな?
「さてさて、何から話そうかな?(^^)」
何を聞こうか悩んでいた私に、佐藤さんの方から声をかけてくれた。
「あの…内緒のことなんですけど、一緒に冬期講習に行ってる友達が、渡辺先生に憧れてるんですよ。
だから、渡辺先生ってどんな人なのかなって気になって…。」
「お~♪やっぱり高次はモテるな~。
学生時代からモテてたよ。」
「じゃあ、今も当然彼女持ちですよね…」
「あ、いやいや。今はいないよ。
夏頃に別れたって聞いたよ。
アイツモテてたけど、一途なヤツでな~。
高校の時から幼なじみだった彼女と、ずっと付き合ってたんだよ。
結婚するって言ってたのに…。」
幼なじみ…
それってエマさんのこと?
「何で別れちゃったんですか?」
「それは知らないんだ。
こっちからも聞けないしな…
でも結婚考えてたのに別れたぐらいだから、何か大きい問題でもあったのかな?
でもアイツ自身には問題ないと思うよ。
ちょっと神経質なとこはあるけど、真面目で思いやりがあるヤツだよ。
実家の両親だっていい人だしな。
何も問題ないよ。」
「佐藤さんは相手の女性のことは知ってるんですか?」
翔太も質問する。
「2、3回会ったことはあるけど、詳しくは知らないな…
きれいな感じの人だったけど。」
駐車場に着き、6人で車に乗る。
佐藤さんは助手席に乗るかもしれない。
私は慌てて、
「佐藤さん、さっきの渡辺先生のことで聞きたいことがあるんですけど…」
と、佐藤さんに声をかけた。
「さっきの渡辺先生って…渡辺高次のこと?」
「はい。私が行ってる冬期講習の先生なんです。」
「そうか~、アイツ先生なんだな~。
いいよ。高次とは長い付き合いだから。何でも聞いておくれ。」
「ありがとうございます。」
そんなわけで、運転は大介さん。
助手席は奥さん(家までの道案内)
2列目にお姉ちゃん。
(ひとりにしてごめんね)
3列目に佐藤さんと翔太と私が乗った。
「麻衣ちゃん、翔太くん。悪いんだけど、これから佐藤さん夫婦を家まで送って行くことになったんだ。■■方面なんだけど…
どっちみち初詣終わったら、■■に行こうと思ってたから、ついでに…。」
大介さんに申し訳なさそうに言われた。
「うん。全然いいよ♪」
カップルじゃなくて夫婦だったのか。
「ごめんな~。今日電車で来たんだけど、結構混んでて大変だったな~って話してたら、大介が乗って行きますか?って、甘い言葉をかけてくれたから(^人^)」
佐藤さんがニカッと笑う。
「私達は全然構いませんよ。ねっ、翔太。」
「うん。」
「ありがとう。」奥さんもお礼を言ってくれた。
神社の石段を降りながら、
「翔太~、車の中で佐藤さんに先生のこと聞いてもいいかな?」
佐藤さんと一緒に車に乗るってことになった時、こっそり「チャンス」って思った。
「別にいいんじゃないの?
でも暴力とか、そういう事は言うなよ。」
「…うん。」
「エマさんのこと、そんなに気になるのか?俺も多少気になるけど…。」
「うん…、まあ。」
沙織が先生のこと好きだからね…
「渡辺沙織関係?」
「え?(汗)」
ニヤリと翔太が私の顔を見て笑う。
気付いてるの?(・_・;
「わかりやすっ」
「え?」
翔太は吹き出しながらスタスタ石段を降りていく。
「ちょ、ちょっと待ってよ~。」
この佐藤さんって人は、先生の同級生らしい。
先生が言ってた昼からの集まりにも参加するメンバーのひとりだって。
で、バイト先が大介さんやお姉ちゃんと一緒。
佐藤さんはバイトじゃなくて社員さんだそうだ。
ちょっとおでこが広くてメガネをしてて、優しそうな感じの人。
大介さんと雰囲気が似てる。
「じゃあ、また後でな。」
「先生、またね。」
エマさんの話は中途半端な感じで終わっちゃったけど、みんながいるところでするような話じゃないし、気まずかったし…
とりあえず先生とはわかれた。
先生…どう思ったかな?
なんか悪かったな…
お正月からごめん先生…
先生はすごく驚いていた。
さっきまでニコニコしていたのに、真面目な表情になった。
「エマと?」
「は、はい。」
「…」
えーい!もう、言ってしまえ!
「この前話した『渡辺さんノート』の話なんですけど…」
「ああ、覚えてるよ。麻衣が作ったノートの話。」
「実は…そのノート持って、先生の家にも行ったんです。
そしたら、その…エマさんが暴力を……」
それ以上は言えなかった。
「そうだったのか…」
「エマさんが先生を騙したって聞きました。だから、その…先生ばっかりが悪いとか思ってるわけじゃくて…。」
「ありがとう。
でも悪いのは俺だから。」
「でも……」
気まずい雰囲気になってしまった。
どうしよう…
「麻衣~お待たせー!」
大介さん達がさきほどのカップルと一緒にやってきた。
よ、よかった…
「高次?」
カップルの男性が先生に声をかけた。
え?何?ここも知り合い?
「佐藤?久しぶりだな!」
??
どういう知り合い?
私達をフルネームで呼ぶのは…
声がした方を見ると…やっぱり!
「渡辺先生!」
「お~、やっぱりそうか。こんな所で会うなんて偶然だな~。」
「ほんとだね。先生1人?先生も絵馬書いたの?」
「1人だよ。昼からこの近くで同級生の集まりがあってな、そのついで…っていったら悪いけど。1人初詣。」
「同級生の集まりって、同窓会ですか?」
もしやエマさんも来たりして?
「そんな大きな会じゃないんだけどな。高校時代の仲の良かった連中と…って、なんだ、渡辺麻衣はまた俺の恋愛でも気にしてるのか?(笑)」
「あ、いえ(汗)
そういうわけじゃないんですけど…」
「先生、俺達エマさんと知り合いなんです。」
「え?」
突然翔太が口を開いた。
翔太!今それ言うか?(;o;)
人をかき分けて絵馬を買い、やっと絵馬を書く場所までたどりついた。
「なんて書こうかな~。」
「人が多いんだから、さっさと書けよ。」
「も~分かってるよ。」
無事、高校に受かりますように…
それだけ書いて絵馬をかけておくスペースにかけておいた。
すごい数の絵馬だけど…ちゃんと神様見てくれるかな?
よろしくお願いします。
翔太はもう人混みからぬけ出して、近くに、あった木のベンチに座って休んでいた。
早いな…
「翔太、早いね…」
翔太に駆け寄った時、
「あれ?渡辺麻衣?と、渡辺翔太?」
私達も声をかけられた。
大介さんだけゼイゼイ言いながら(笑)石段をのぼり終えて、無事お参りした。
「絵馬書こうよ。合格祈願。」
「そうだね!行こう行こう。」
みんなで絵馬が売られている場所へ行くと、絵馬を書く所がすごい混雑してた。
「すごい人だね。」
「俺、あの人混みの中に行きたくないな~」
「ダメ。私は絶対に書く!」
その時、「あれ?大介?絵美ちゃんも。」
一組のカップルがお姉ちゃん達に声をかけた。
「わ~、偶然だね♪」
そして話に花が咲く。
お~い。
「麻衣ごめんね。バイト先の先輩なの。久しぶりだから話はずんじゃって。
先に絵馬の所行ってて。」
はいはい。
「あ、もし迷子になったらいけないから、私の携帯わたしとくよ。」
どーも。
仕方なく、翔太と絵馬のコーナーに行った。
車内は大介さんが運転。
お姉ちゃんが助手席で、私と翔太が後ろの席に座った。
「どこに初詣に行くの?」
ウキウキしながら大介さんに聞いた。
「近場だけどね、◆◆神社。
元旦でも、あんまり混んでないから。」
「了解~(^o^)/」
「お前、テンション高いな。」
「まあね。久しぶりのお出掛けだし♪
あ、飴食べる?」
「いらん。」
も~、翔太のヤツ、テンション低いな。
まあ、テンション上がってるところ、あんたり見たことないけどね。
やがて車は神社近くの駐車場に到着した。
神社まで少し歩き、長い長い石段をのぼる。
私は翔太と一緒に歩く時は手をつなぐ。
今日も並んで歩いていたから、自然と手をつないだ。
お姉ちゃんがいるから、ちょっと恥ずかしいけど…
ん?
あれ?
私達の前を歩くお姉ちゃんと大介さん、
手…つないでるんですけど!
(*゜Q゜*)
え?二人付き合ってるの?
驚いていると、
「付き合ってるんじゃないの?」と翔太。
翔太!!(゜ロ゜ノ)ノ
私の心の声が聞こえてるの?
ジロッと翔太を見ると、
「お前の考えてることはだいたい分かる。
単純だしな、麻衣ちゃんは┐('~`;)┌」
「も~(><)」
またバカにされたし。
小学校の時の遠足の前日みたいに、ワクワクしてなかなか眠れなかったけど、なんとか寝坊せず8時に用意が間に合った。
外に出ると翔太が待っていた。
「翔太、明けましておめでと。」
「おう。」
なんだよ。おうって(-.-)
「今日のお出掛け、楽しみだね♪」
姉も外に出てきた。
「翔太くん、明けましておめでとう。」
「おめでとうございます。」
お姉ちゃんにはちゃんと挨拶するんだね
(-_-;)
「あ、大介さん来た。」
大介さんのワンボックスが見えた。
大介さんが運転席の窓を開けた。
「明けましておめでとう。
今年もよろしく(^^)v
寒いから早く乗って!」
「大介さん、私ちゃんと宿題終わらせたよ!」
「頑張ったな~。受験生も息抜き必要だから。今日は楽しもう♪」
「うん!」
私達は車に乗り込み、出発した。
その日は夕方まで大介さんがいてくれたので、苦手科目からとりかかった。
まあ、得意科目ってないんだけど(-o-;)
時間があっという間に過ぎる。
でも冬期講習で毎日宿題をやっているせいか、すらすらと筆が進む。
31日の夕方、すべての宿題が終わった。
すごいじゃん私!
冬休みの学校の宿題はそんなに多くないんだけど、ちゃんと31日までに出来たことが嬉しかった。
姉の部屋にとんでいき、
「お姉ちゃん、私宿題出来たよ!
明日、お出掛けできるよね?
ね、大介さんに電話してよ!」
「麻衣~、ちゃんと出来たんだね!
やれば出来るじゃん(*^^*)
明日は朝8時に大介さんがウチまで迎えに来てくれるから(^^)
寝坊しちゃだめだよ!」
なんだ~、もう決まってたのかぁ~。
でも宿題終わってスッキリ!
明日は楽しめそう♪ワクワク((o(^∇^)o))
「お茶入れてくるね。」
そう言って姉は部屋を出ていった。
私は勉強机で宿題をしてたけど、椅子がひとつしかないので、下に置いてあるテーブルに移動して、大介さんと向かい合わせで座った。
「絵美ちゃんが、麻衣が高校落ちちゃう~って、焦ってたよ(笑)」
「15点のテスト見られたからね
( ̄∇ ̄*)ゞ
でも学校のテストじゃなくて、冬期講習のテストなんだよ。
毎日テストがあるの。今はだいぶ点数上がったんだよ♪」
「すごいじゃん(^^)
じゃ、学校の宿題もチャッチャと終わらせよっ。31日までに全部終わらすよ!
1日は、麻衣ちゃん、絵美ちゃん、翔太くん、そして僕(笑)の4人で出掛けることになってるから頑張って!」
「え?お出掛け?」
「そう!楽しみな予定があった方が宿題頑張れるでしょ?」
「どこ!どこ行くの?(//∇//)」
「まずは初詣!合格祈願!
あとは…どこ行きたい?」
「遊びたいー!」
「了解!じゃ、宿題にとりかかろう!」
わーい!!わーい!!
楽しみだなー(*≧∀≦*)
早く宿題終わらせなきゃ!
休み中も宿題が少し出た。
中学校から出ている宿題…存在すら忘れていて、1ページもやってない(>_<)
休み中は学校の宿題をせっせとやることにした。
「麻衣~。」
自分の部屋で宿題をしていたら、姉が入ってきた。
「家庭教師、決まったよ~。」
家庭教師!?Σ( ̄ロ ̄lll)忘れてた!
「お父さん達にも了解はとってあるから。」
「あ、ありがとう…
でもまだ学校の宿題が終わってなくて…」
「宿題もみてもらったらいいよ。
もう呼んでるし。」
「え?もう??」
「そーだよ。早い方がいいと思って!
15点じゃヤバイから…」
「…あの、どんな人なの?家庭教師の先生…」
すると、姉の後ろから
「こんにちは、麻衣ちゃん!」
と、突然現れた。
「\(゜o゜;)/大介さん?」
突然現れたのは大介さんだった。
「大介さんが家庭教師なの?」
「適任でしょ?」
「年が明けたら週1回お願いしたの。大介さんも学校やバイトがあるからね。」
週1かぁ…
でも大介さんだったらいいや!
さすがに携帯番号やメールアドレスは聞けなかったけど、住所は教えてもらった。
「麻衣、いっぱい聞いてくれてありがとう!
住所教えてもらったから、私先生に年賀状出すよ(^^)」
沙織は嬉しそうだった。
私はやっぱりエマさんのことがひっかかっていて、素直に沙織の恋を応援できなかった。
もし沙織が本気になったとしても25才の大人が中学生を相手にするのかな?という思いもあった。
沙織が悲しい思いをしなければいいんだけどな…
それから、特に変わりないまま年末年始のお休みに入った。
それから、先生の誕生日や血液型など色々聞き出した。
彼女は今はいないみたいだ。
私達はこの冬期講習の学校までチャリで来ているけど、先生もチャリで来ているらしい。
チャリと聞いて、なぜか大介さんの顔が思い浮かんだ。
夏休み、チャリで翔太やトシと一緒にジム行ってたよな~。
汗いっぱいかいて(笑)
そういえば大介さんも年より老けて見えるかも(笑)
頑なに断るのもおかしいので、沙織の恋に協力することにした。
でもどうやって聞けばいいのかな~。
彼女か…
エマさんとまだ続いてるのか、それとも別れたのか…
てか、先生何歳かな?
20代ではなさそう。30代前半…
うーん…
沙織…かなり年上好きなんだな(汗)
そしてある日の昼休み、沙織と一緒に渡辺先生に数学の質問をしに行った。
チャンス!
質問が終わった後聞いてみた。
「先生はどこに住んでるんですか?」
「▲▲駅の近くの**って、アパート。知ってるかな?」
「え?それ、ウチとすごい近くだよ!」
ビックリする沙織。
「一人暮らしですか?それとも彼女と同棲してるとか…?」
更に聞いた。
「渡辺麻衣は彼女の話ばっかりか(笑)
完全な一人暮らしだよ。」
フムフム…
「ところで、先生は何歳ですか?」
「ん?25。」
「25!(*゜Q゜*)」
今度は私がビックリ仰天。
先生…老けてるね(ごめん先生)
「ねぇ、麻衣~。」
「何?」
「私さ~、渡辺先生のこと、いいな~って思ってるんだよね…」
「え??( ; ゜Д゜)」
食べかけた卵焼き、ポロッと落っことした…
「ホ、ホントに?(汗)」
恥ずかしそうに頷く沙織。
いや、ちょっと待って!
ほっぺたピンクにして頷く姿は可愛いけど!
渡辺先生は良い先生かもしれないけど…
暴力ふるうんだって!
でもそんなこと言えない…
「麻衣は渡辺先生のこと、なんとも思ってないでしょ?」
「…うん。」
不信感はちょっと抱いてるけどね。
「先生、どこに住んでるとか…彼女はいるのかとか…
麻衣、先生から聞き出してくれない?」
私が?
住んでるアパートも実家の場所まで知ってるよ(^o^ゞ
「お願い麻衣!」
「私、家庭教師つくかも…」
冬期講習の昼休み、いつものように沙織と教室でお弁当を食べていた。
「家庭教師?なんで?成績下がったの?」
「お姉ちゃんに15点の理科のテスト見られた。」
「はあ~?15点?」
ギャハハ~と沙織が大笑いする。
「なんだ?やけに楽しそうだな。」
振り返ると、渡辺先生(渡辺高次さん)が立っていた。
教室に忘れたプリントを取りに来たらしい。
「麻衣、家庭教師つくかもしれないんです。」
「家庭教師?熱心だな~。」
「私は熱心じゃないんですけど、姉が私の成績を心配して…」
「成績か…、でも渡辺麻衣は成績少しずつ上がってきてるじゃないか。」
「元々が悪すぎですから…(^^;」
「渡辺沙織は数学が得意科目か?」
「はい!」
「得意科目は気を付けろよ。得意科目のテストは、ここで点数とらなきゃ…とプレッシャーあるからな。
問題がわからなくても、焦らず深呼吸しろよ。自信持ってテスト受けろな。」
「はい!」
先生はそう言って教室を出ていった。
この冬期講習にも「渡辺」という名字の生徒が多いので、先生は渡辺さんだけフルネームで呼んでいた。
渡辺先生、私の成績のことも、沙織の得意科目のことも、ちゃんと知ってるんだな。
ウチの中学の担任とは全然違うな…
それから冬期講習では毎日毎日テスト、授業、宿題を頑張った。
私の部屋は返されたテストや宿題のプリントで散らかっていた。
姉が私の部屋を覗いて、
「勉強頑張ってるね。
でもこの部屋じゃ、集中できないでしょ?」
と言って散乱しているプリントを集めてくれた。
「ありがと。」
と、姉にお礼を言いながらも、こんな汚い部屋でも割と集中して、宿題の国語の問題文を読んでいた。
「ちょ、ちょっと!麻衣!なにこれ?」
「え?」
姉を見ると、15点しかとれなかった理科の答案用紙を持って青ざめている。
優秀な姉は多分テストで15点はとったことないだろうし、答案用紙70点以下の点数はあまり見たこともなくて驚いたんだろう。
「あ、それ最初にしたテストでね、全然分からなかったんだf(^^;
今はだいぶ点数上がったから…」
と姉に言いわけする。
ま、未だに翔太と同じレベルのクラスで授業を受けたことはないけどね^_^;
「麻衣…こんなに点数悪いなら、受験ヤバイんじゃない?
私、友達が何人か家庭教師やってるから聞いてみるよ。」
「え?」
家庭教師??いや(汗)いいって!無理だよ!
「家庭教師まではいいよ(汗)」
そう言ったのに、姉は「これから連絡してみる!」と部屋を出ていってしまった。
あの…(T_T)
その日の帰り道、翔太に渡辺高次さんが渡辺麻衣ちゃんのおじさんだったってことを話した。
「じゃあ、渡辺高次さんもあのおばあちゃんの息子だったのか。
エマさん家って、おばあちゃん家の隣だったよな?
高次さんとエマさんって、幼なじみ?」
「(*゜Q゜*)そういえばそうだね。」
「高次さんとエマさん…長い付き合いだったのかな?」
私と翔太みたいに?
「もしさ、私が翔太を騙したら、私のこと殴る?」
「いや。」
翔太~(ToT)ほんとに?
「俺がお前に騙されるなんて有り得ないからな。騙されない自信がある。」
なーんだ(-.-)
でも…
高次さんにも暴力はやめて欲しかったな…
エマさんが悪かったとしても…
渡辺高次さんに簡単に『渡辺さんノート』について説明した。
「麻衣の父親は俺の兄なんだ。
家もそう遠くないから、たまに家に遊びに行ったりして麻衣のこと可愛がってたんだ~
今、麻衣は抗がん剤治療をしてるよ。
お見舞いにもあまり行けないんだけどね…」
麻衣ちゃんの病気の話になって一気に暗くなった…
「おっと、もうすぐ午後の授業が始まるな。」
「先生、また麻衣ちゃんの病状とか教えてもらえませんか?
元気になったら麻衣ちゃんに会いに行きたいし…」
「了解。ただ俺もしょっちゅう連絡とってるわけじゃないから…
また何か分かった時は教えるよ。」
ニコッと微笑んで、渡辺高次さんは教室を出て行った。
「すごい偶然だね…」
「…うん。」
沙織には渡辺麻衣ちゃんのことや大介さんのことは話していたけど、渡辺高次さんのこととエマさんのことは話してなかった。
渡辺高次さんが渡辺麻衣ちゃんのおじさん…
ちょっと複雑な思いだった。
「ハハ…面白いな~、えーっと…何さんだったかな?ごめん。まだ名前覚えてなくて(汗)」
「あ、渡辺です。」
「私も渡辺です。」
「え?二人とも渡辺?俺も渡辺(笑)」
「渡辺って名字多いですよね。」
「そうだな~。じゃ、下の名前も教えてくれ。」
「渡辺沙織です。」
「私は渡辺麻衣です。」
「渡辺麻衣?」
渡辺高次さんは私の名前を聞いて驚いた。
「渡辺麻衣…ですけど?」
「俺の姪と同じ名前だ~。」
「そーなんですか?」
それってまさか『渡辺さんノート』の渡辺麻衣ちゃんじゃないよね?
そんなに世の中狭くないはず…
沙織と顔を見合わせる。
「先生…その渡辺麻衣ちゃんは何歳ですか?」
「ん?小学1年生。」
…
「入院とかしてませんよね?」
「何?お前達麻衣のこと知ってるのか?」
渡辺高次さんは不思議そうに聞いてきた。
親戚でもないのに、中3の私達が小学1年の子とつながりがあるなんて、不思議だよね。
そりゃ、ビックリするよね(汗)
私は世間の狭さに驚いたけど…
約5分後、渡辺高次さんが教室にやって来た。
すぐに私達を見つけて、私達と向かい合わせに座った。
「初日から質問なんて、勉強熱心だな~。
わからないのは、どの問題だ?」
「教科書の30ページのところなんですけど…」
沙織は本当に熱心に質問していた。
私はその間ずーっと渡辺高次さんの手を見ていた。
渡辺高次さんの手の甲には火傷のあとがあった。
でも火傷のあとを見ていたんじゃなくて、あの手でエマさんを殴ったのかな?って、考えてた。
殴るような手には見えないのにな…
「お~い。先生の手になんかついてるか~?」
ギクッ(;゜゜)
視線感じた??
顔は沙織の方を見たまま…渡辺高次さんに指摘された。
「ジロジロ見てすみません。」
「?あれ?
先生、手の甲は火傷のあとですか?」
沙織も先生の火傷に気付いた。
誤解ですよ、先生。
私は火傷のあとをジロジロと見ていたわけじゃありません!
「この火傷はヤカンの湯がかかっちゃったんだよ。」
もしかしてエマさんにかけられたじゃないよね?(*゜Q゜*)
「ケ、ケンカして怒った彼女にかけられたとかですか?」
聞いてしまった(>_<)
「麻衣ったら~。ドラマの見過ぎじゃない?熱湯かける彼女なんていないよ~。
ね、先生。」
少し緊張しながら、沙織と職員室を覗く。
職員室と言っても先生の人数は少ないので、せまい部屋だ。
私達が部屋のドアを開けると、全員の先生と目が合う(-o-;)
「失礼します。
あの…数学でわからないところを聞きたくて…」
沙織が言うと、渡辺高次さんが
「はいはい。すぐ行くから教室で待ってて。」
と、すぐに返事をしてくれた。
ホッとして、沙織と教室に向かう。
職員室は緊張するね(汗)
教室には何人か生徒がいて、勉強している人もいれば、雑談している人もいる。
学校の教室と同じような雰囲気だ。
沙織と席について、教科書を広げた。
沙織と一緒に母親が作ってくれたお弁当を食べる。
「毎日テストって、ちょっと気が重いね…」
「そうだね…、
私さ、5教科の中でひとつでいいから、絶対テストで点数がとれる教科をつくりたいんよ。」
フムフム…
「私は5教科の中だったら、数学が1番好きだから、せっかく冬期講習に来たんだし、数学を頑張りたいんよ~。」
数学か~。
私は無理だな~(T_T)
「で、早速わからないとこを先生に聞きに行きたいんたけど…
1人で行くの恥ずかしいから、麻衣も一緒に来てくれない?」
え?
…いいけど…
渡辺高次さんのところに?
「いいけど…」
「ありがとう麻衣。じゃ、お弁当食べたら行こっ。」
「う、うん。」
そんな冬期講習で、私達はある人に会った。
数学担当の先生。
冬期講習初日はどの教科の先生も簡単に自己紹介をしてくれた。
黒板に書かれた名前…
「渡辺高次」
「数学担当の渡辺高次です。よろしく。」
あっさりした挨拶。
顔もあっさりした感じでさわやか。
生徒にモテそうな雰囲気の先生…
渡辺高次?
…って、渡辺高次さん?
エマさんの彼氏だった渡辺高次さん?
ぐ、偶然(;o;)
その日の昼休み、すぐに翔太のところへ行って話した。
「翔太…数学の先生って、エマさんの彼氏だった渡辺高次さんかな?」
初めてエマさんに会った時、一瞬渡辺高次さんを見たような気がするけど、恐怖で覚えていなかった。
「わからん。ただの同姓同名かも…。」
暴力をふるうような人には見えなかった。
「バカ。暴力をふるいそうな雰囲気の人なんて滅多にいないだろ。」
そりゃあそうだけど…
「麻衣~、お昼食べないの?一緒に食べようよ。」
沙織が誘いにきた。
「あ、うん。」
国語、数学、理科、社会、英語。
毎日大量の宿題が出て、そこから出題される。
翌日にはテストの結果上位10名の名前が貼り出される。
毎日のテストの成績で、クラスが別れる。
上位20名はAクラス。21位~はBクラス…という感じで。
1日の流れは…
朝、入り口で昨日のテストの成績表をもらって、その日のクラスを確認する。
(上位10名は貼り出されるけど、それ以外の人は成績表で順位やクラスを確認できる。)
5教科テスト
昨日のテストが返却されて、答え合わせ。
その後はクラスのレベルに合わせた授業。
1日テスト&授業。家に帰れば宿題。
ひたすら勉強。こんなに必死に勉強したのは初めてかもしれない。
毎日、成績の悪いクラスじゃあ、なんだか恥ずかしい。
ちょっとでも順位をあげたい。
テストで点数とるために、宿題頑張る。
授業も本気で頑張れた。
最初は宿題だけで精一杯で、テストも10点や20点をとっていたけど、だんだんと慣れていって、徐々にテストの点数も上がっていき、毎日のテストが楽しくなった。
テストが面白いと言う翔太の気持ちが少しだけわかった。
そんな成績の悪い私に、両親は冬休みの冬期講習の案内のパンフレットを持ってきた。
しぶしぶ了解し、冬休みは年末年始以外は冬期講習に行くことになった。
翔太に言うと、じゃあ俺も申し込もう!と、なぜか乗り気。
冬期講習ではテストに慣れるために、毎日テストがあるらしい。
私は信じられないけど、翔太はテストが大好きなのだ。
ゲームみたいで面白いって。
沙織にも愚痴ったら、
「ホントに?私もそこの冬期講習行くんだよ!すご~い偶然。
親が勝手に申し込んじゃって。
麻衣が一緒だったら嬉しいよ~♪」
「嘘~!ビックリ。でも嬉しいー
(*≧∀≦*)」
沙織も同じ冬期講習に行く。
なんてラッキーなの(^-^)v
10月には進路について三者面談がある。
「進路について親子で十分に話し合って志望校を決めて下さい。」
大嫌いな担任が言う。
親子で話し合いか…
は~…やだな…(-_-)
「麻衣は…お姉ちゃんが行ったB高校は無理だろうな。せめて、A高校ぐらは行けないか?」
「…」
「麻衣さんは…B高校だとかなり厳しいですね。A高校もレベルが高いですし…
C高校はどうでしょうか?」
「…」
両親との話し合いも、三者面談も、
は~…(-_-)って感じだった。
将来の夢もまだ決まってないし、特に行きたい学科があるわけでもない。
親は少しでもレベルの高い高校へ…
担任は確実に受かる高校をすすめてくる。
も~、何でもいいよ…
とりあえず両親の強い希望で、受験する高校はA高校に決めた。
相当頑張らないと受かりませんよ、と呆れたように担任に言われた。
「翔太は志望校もう決めてるの?」
学校からの帰り道、翔太に聞いてみた。
「決めてるよ。B高校。」
ゲッ(;o;)
めちゃめちゃ頭いいとこじゃん…
絶対翔太とは高校別々だな…
寂しいな…
…?
寂しい?
私、そんなに翔太のことが好きなのかな?
「寂しい?」
翔太がギュッと手をつないだ。
ドキッとして顔があつくなる(-o-;)
「麻衣はまだ志望校決めてないのか?」
「あ、うん。まだ…。」
翔太はニヤニヤしながら、
「ま、麻衣の成績じゃあ俺と同じ高校は無理だろうな(笑)
頑張ってA高校ぐらいか?」
と、おちょくる。
いや、私の成績じゃ、A高校も厳しいだろうな…
翔太…
高校入ったら更にモテるんだろうな…
「俺、浮気しないよ。麻衣ちゃんひとすじ。」
「も~、またバカにしてー」
そして、長い長い夏休みが終わった。
色々あったな~。
中3の夏休み…一生忘れないだろうな。
久しぶりに学校へ行く。
「麻衣~、おはよ!」
真っ黒に日焼けした沙織。
沙織に会うのも久しぶり。
「おはよ!沙織~焼けたね。」
「部活焼けだよ(>_<)
でも夏休みで部活は引退したし、遂に受験だね(*_*)」
受験…
…そうだった。
「10月に三者面談あるらしいよ。」
「嘘!!やだー(>_<)」
はぁぁ…
一気に憂鬱になってきた…
「麻衣は?志望校もう決めてるの?」
「全然。沙織は?」
「A高校かな~。行けたらいいな~。」
A高校か…
レベル高いな。
もうクラスメイトにはなれないかも(汗)
姉が自殺しようとしてたことは両親には内緒。
大量の薬もバレないように少しずつ処分した。
時間帯は違うけど、大介さんがバイトしている飲食店を紹介してもらって、そこでバイトを始めることになった姉。
大介さんにお世話になりっぱなしだな…、と姉は気にしていたけど…
大介さんは世話好き。お世話をするのが趣味なんだよ(*^^*)
姉がバイトに行き始めてホッとした。
ずっと家に引きこもってたら、やっぱり心配だし…
夜は大介さんがメールくれたり、時々電話したりしてるみたい。
「昨日、大介さんにバイトの話を2時間も聞いてもらっちゃった(汗)」
などとよく言っている。
大介さんは聞き上手なんだろうな。姉もギャーギャー話す方じゃないけど…
まったりと喋ってるんだろうな。
癒されてるんだと思う。
姉の表情もだんだんと明るくなってきている。
大介さんのおかげだな~(^^)
「…ズッ 、ズズッ…ズ…」
隣に座っていた姉が鼻をすすり出した。
泣いてる…
きれいな夕陽に感動した?
姉は持っていたハンカチで鼻を押さえながら、
「大介さん、翔太くん、…麻衣、
私の為にありがとう。
…私、どうかしてたよね…
彼には尽くしてるつもりだったんだ…
自分に悪いところなんてないはずなのに、どうして二股かけられたんだろうって、納得出来なかった。
でも…きっと、私のそういう自意識過剰なとこがダメだったんだろうね…
なんかすごく情けなくて、すぐには立ち直れないと思うけど、死ぬなんて考えるのはやめる。」
と話した。
そうだよね~
自信なんて全然なくてもダメだし、ありすぎてもダメだし難しい。
「そうそう、死ぬなんて考えはよくないよ。お姉さん美人だし、またすぐいい人がみつかるよ。
ところでさ、お姉さんは名前はなんていうの?おいくつ?」
「絵美です。19です。」
「なんだ~。名前知らなかったから、お姉さんお姉さんって言ってたけど、俺より年下だったんだ~。」
ほんとだ。
「俺は渡辺大介。ハタチ。」
「名字同じなんですね。」
「そうそう♪
あ、敬語ナシ。麻衣ちゃん達も普通に喋ってくれてるし(^.^)」
それから車に戻って、お姉ちゃんに『渡辺さんノート』の話や渡辺麻衣ちゃんの話をした。
「麻衣ちゃんも治療頑張ってるから、お姉ちゃんも負けないでよね!」
と言ったら、姉は泣きながらうなづいていた。
カーナビを頼りに、◎◎海岸近くにある有名なジェラート屋さんに到着した。
ずっと来てみたかったお店なので、姉には悪いし不謹慎だけど、ちょっとテンションがあがってしまう。
「私は車で待ってるから…」
という姉の手を引っ張り、
「こんなに暑いのに車で待ってたら、熱中症になっちゃうよ!」
と連れていった。
可愛らしいお店の中は、女のお客さんやカップルでいっぱいだった。
色とりどり、様々な種類のジェラートがある。
「お姉ちゃんジェラート食べようよ!
見て~、色んな種類があるよ。」
「私はいいから…
麻衣好きなの食べなよ。」
も~( ̄^ ̄)
「麻衣ちゃんもお姉さんも好きなの頼んでいいよ。今日は大介さんのオゴリ」
大介さん~(*≧∀≦*)
なんてイイ人♪
「大介さんありがとう。
じゃあ~、抹茶とさつまいも下さい~」
店内は混んでいたので、外の海が見える石段のところに座って食べた。
私はさつまいも味のジェラート。
姉には抹茶味。
翔太はレモン味。大介さんはバニラ味。
美味しい~( 〃▽〃)
「お姉ちゃん、めちゃめちゃ美味しいね♪」
「…うん。大介さん、ありがとうございます。」
「いえいえ(*^^*)」
「でも大介さんなんでバニラなの?バニラどこでもあるじゃん。」
「バニラ食べたらその店の美味しさがわかるからさ(笑)」
「えー?そうなの?」
「嘘。ただバニラが好きなだけ。」
「も~。」
「わあ~、レモン酸っぱ(>_<)」
「レモンだから当たり前でしょ。」
そんなことを喋りながら、美味しいジェラートを食べた。
姉の表情はあまり変わらない。
そのうち夕方になり、きれいな夕陽が海にうつる。
「きれいだね…」
こんな場所に恋人同士で来たらロマンチックなんだろうな…
さすがデートスポット。
私達4人を乗せた車は◎◎海岸へ向かった。
8月の終わりの午後。
海水浴で賑わう場所だけど、お盆も過ぎたし、夏休みだけど今日は平日だし…
人、少ないといいのにな~
隣に座ってる姉を見ると、下をむいたままで、ひとことも喋らない。
二股かけられたこと…
そんなにショックだったのかな…
恋愛経験のない私には姉の気持ちがわからない。
もし、翔太に二股かけられたら…
ショックで自殺する?
…そんなことしない。
二股かけられても…
翔太はかっこいいし何でも出来るし、元々私とはつりあってない。
浮気されても仕方ない…
そう思うかな?
姉は自分に自信があったから、すごくショックだったんだろう。
プライドが高いから…
自信がある人ほどショックを受けるんだろうな、きっと。
「大介さん、今日はジムやめてさ~
せっかく車あるしさ…ドライブ連れてってよ。」
翔太が姉の部屋から出てきて大介さんに言う。
「ドライブ?」
「そう。姉ちゃんも連れて。
今、姉ちゃん一人にしたら心配だし。麻衣だけじゃ頼りないし。」
ふん、悪かったね(-.-)
「いいよ♪」
「いいの?大介さん。なんだか悪いよ…」
「いいよ、いいよ。俺も次彼女が出来た時の為に、デートの下見のつもりで行くから
(*^^*)」
「じゃあ、◎◎海岸とかどう?
デートスポットだし、海が見えてロマンチックだよ!
有名なジェラート屋さんもあるし!」
「それ、お前が行きたいだけだろ(-_-)」
「いいでしょ~、もー。」
姉を無理やり部屋から引っ張り出し、大介さんの車に乗せた。
ワンボックスの二列目に姉と私が並んで座る。
翔太は助手席。
いざ出発!
姉が死にたい理由なんて全くわからない。
親には大事にされてるし。
私と姉妹なのが信じられないぐらい美人だしスタイルもいい。
勉強も運動もできる。
友達だって、私よりはたくさんいる。
それなのに…
なんで??
体も健康でこんなに恵まれてるのに…
なんだか腹が立ってきた。
死にたいと言う意味がわからない。
しばらくして、大介さんが私のところへきた。
「お姉さん…自分に自信がなかったんだって。」
「え??」
「いや、そんなわけないよ!
大介さん見たでしょ?お姉ちゃん美人だしスタイルもいいよね。
勉強も運動もできるんだよ?
自信ないわけないよ!」
「…彼氏に二股かけられてたって。」
はあ??
お姉ちゃんに二股?
どんな立派なヤツなんだよ!
てか、二股ぐらいで自殺?
いやいや、有り得ないよ。
「彼氏にフラれて…
何もかもうまくいかなくなったらしいよ。
なんで二股かけられたんだろう、
何がいけなかったんだろう…って考えてるうちに自信がなくなっていって、バイトでもミスが多くなって辞めてしまったって…」
姉は今、まさに大量の風邪薬を飲もうとしているところだった。
間一髪…
私はようやく姉が自殺しようとしていたことに気付いた。
「え?お姉ちゃん…死のうとしたの?なんたで…」
私は訳がわからず…
そんな薬で自殺なんてドラマみたいなこと
を…
でも翔太達がいなかったら、姉の自殺に気づけなかった。
姉は死んでいたかもしれない。
そう思うとゾッとして怖くなった。
姉は…
「麻衣…ごめん。私、もう生きてるのがつらくて…」と泣いた。
急に渡辺麻衣ちゃんのことが頭に浮かんだ。
病気で死と戦ってる人もいれば、自ら死のうとする人もいる…
「バカ!」
私はひとこと怒鳴って部屋を出た。
二人の顔を見るとホッとして涙が出た。
「麻衣ちゃん、お姉さんの具合は?
すぐ病院に行った方がいいなら、俺車で来たからさ。」
大介さんが優しく声をかけてくれた。
「すぐには…大丈夫そう。」
「…お前、泣くなよ~。
姉ちゃん熱は?高いの?」
「…分かんない。」
「でも、調子悪いんだろ?」
「うん。薬をいっぱい買ってて…」
「薬?何の?」
「頭痛薬や風邪薬や胃腸薬や…たくさん。」
…
「置き薬とかではなくて?」
「お姉ちゃんの部屋に置いてあったから違うと思う。」
翔太と大介さんはギョッとして顔を見合わせる…
?
「今、お姉さんは?」
「部屋にいるけど…」
「ちょっとあがるよ。」
翔太はお姉ちゃんの部屋を知ってるので、二階のお姉ちゃんの部屋へ一目散。
大介さんも翔太の後について階段をかけのぼる。
そんなに急病ではなさそうなんだけどな(汗)
私も階段をのぼる。
「なにやってんですか!!」
姉の部屋から翔太の怒鳴り声が聞こえた。
私はビックリして急いで姉の部屋へ行った。
「あ、うん。ちょっとね…」
薬を大量に飲んで自殺するつもり?
一度にこんなに薬を買うなんて…
一番にそう思うのかもしれないけど、その時の私は、麻衣ちゃんが大きな病気だったことで、姉も大きな病気なんじゃないかと心配になり病院へ連れていこうとした。
姉は、寝てれば治るから…と病院に行こうとしない。
こんなに大量に薬を買うなんて、相当体調が悪いんだ!
私はまたひとり焦って、翔太に連絡した。
たまたま翔太と一緒にいた大介さんも、わざわざ車で来てくれた。
成績優秀な姉。
勉強でもしてるのかな?と思っていたけど…
朝、家族で朝ごはんを食べてから、夜に家族で晩ごはんを食べるまで、ずっと部屋にいる。
そんなに勉強ばかりしないよね?さすがに…
何かあったのかな?
聞いてみようかな…
姉妹の仲は悪いわけではないけど、めちゃくちゃ仲良しなわけでもない。
少し緊張しながら姉の部屋のドアをノックして開けた。
「…お姉ちゃん…」
そっと部屋に入る。
「麻衣?ど、どうしたの?」
勉強机に座っていた姉は、慌てて何かをかくした。
「何?」
何か動揺してる?
「何かくしたの?」
「え?別に何でもないよ。ちょっと恥ずかしいから…」
恥ずかしい?
なんだろう?気になるし…
ふと足元にあったごみ箱を見た。
何枚かレシートが捨ててある。
何気なくごみ箱からレシートを拾った。
「ちょっと、麻衣!何してんの?やめてよ。」
姉が立ち上がった瞬間、かくしていたものがチラッと見えた。
ビンや箱…
レシートにも目をやる。
全部薬局のレシート。風邪薬や頭痛薬…色んな薬を買っている。
「お姉ちゃん…調子悪いの?」
渡辺麻衣ちゃんの存在がハッキリしてから、渡辺さん探しは終了していた。
でも本人に会っていないので、私の中ではまだ終わっていない。
宝箱を発見したけど中身が見えないような?もどかしい感じ。
麻衣ちゃんのお母さんからの連絡を待つしかない。
渡辺さん探しが終わってしまってちょっと寂しい。
相変わらず、翔太と大介さんにくっついて図書館に行ったり…
家の掃除や洗濯の手伝いをしたりして夏休みを過ごしていた。
両親は仕事。家には私と姉しかいない。
日中、姉が部屋から出てこない。
そんな時だった。
両親が溺愛する姉に変化がおこった。
短大生である姉も、今は夏休みで毎日バイトに明け暮れていた。
真面目でコツコツ頑張るタイプの姉。
辛抱強い。
両親は姉ばかり可愛いがるので嫌だけど、姉本人に対しての不満はない。
優しい姉。
そんな姉が突然バイトを辞めた。
「もう少し時給が高いところを探したくて…」
「そうなの…
何か欲しいものでもあるの?」
「…そういうわけじゃないんだけど、色んな仕事を経験してみたくて…」
そうかそうかと両親はうなづいていた。
姉のすることに否定はしない。
私も、辞めたんだ~ぐらいにしか思ってなかった。
それからというもの、生と死に関して敏感になっていた。
私だって、いつかは死ぬ。
いつ?どうやって?
病気?事故?
明日、交通事故で死ぬかもしれない。
私だけじゃない。
お父さんやお母さんが死んだら…
私どうやって生きていけばいいの?
寝る前にそんなことを考えて、不安になり悲しくなって眠れないこともあった。
親に反抗したりするのはやめよう。
お母さんの手伝いもしよう。
もし、お母さんが病気で入院…なんてことになったらたちまち困るよ。
夜中に1人焦ってヤバイヤバイと翌日洗濯機の使い方を聞いたり、お母さんのパジャマはどこにしまってあるんだ、と聞いたりした。
私の意味不明な行動に両親も姉もきょとんとしていた。
白血病…
私の勝手なイメージ
治療で髪の毛がぬけてしまう。
治らない病気…
死んでしまう…
身近に白血病になった人はいない。
テレビの中の話って感じ。同姓同名で会ったことはないけど、すごく身近に感じていた渡辺麻衣ちゃんが白血病だったなんて、信じられない。
ピンとこない。
『渡辺さんノート』はお母さんに渡しておいた。麻衣ちゃんが元気になったら連絡するからと、連絡先を交換した。
私も翔太も携帯を持っていないので、緊急のメールは大介さんに送ってもらうようにした。
病院を後にし、おばあちゃん達を家まで送り、また3人の車内。
「お前、白血病って聞いて驚きすぎだよ。」
と、翔太に言われた。
「だって…
なんだか信じられなくて…」
「信じられない、信じたくないのはお母さんが1番だよ。
しっかりしろよな~。」
「…ごめん。」
「ビックリしたよね。
でも白血病だからって、すぐに死ぬとか、そういうわけじゃないだろうから。
みんなで麻衣ちゃんを応援しようよ。」
と、大介さん。
白血病って治るのかな…
ドラマとかだと死んじゃうことが多くない?
「ドラマと一緒にするなボケ。」
…ごめんなさい。
「わざわざ持って来てくれて本当にありがとう。」
お母さんは私達にお礼を言って微笑んだ。
「麻衣はこの4月から小学生で、友達100人作るんだ~って、張り切ってたんだけど…
白血病になってしまって…
病院じゃあ友達作れないって、すごく落ち込んでて…
なんとか麻衣に元気になって欲しくて、麻衣と一緒に友達を作る方法を考えたの。
それがこのノート。
麻衣が作って、私が渡辺さんのお宅のポストに入れたの。
それがこんな風にちゃんと戻ってくるなんて…
麻衣、喜びます!!」
白血病…
「お母さんがポストに入れた最初の渡辺さん家はコイツの家なんですよ。」
…
「なっ!」
翔大にバシッと肩をたたかれて、ハッとした。
「そうなの?」
「あ、ハイ、そうなんです。
あの、実は私、麻衣ちゃんと同姓同名で、渡辺麻衣っていうんです。」
「そうなの?すごい~!」
お母さんはすごく驚いていた。
麻衣にも教えてあげよう!と、嬉しそうだった。
その後も少しお母さんと話したけど、私は上の空…
白血病のことばかり考えていた。
ほっそりとして、きれいな感じのお母さん。
長い髪を後ろでひとつにくくっている。
若そうなお母さんだ。
「麻衣、今日は調子が悪くて…
せっかく来て頂いたのにすみません…」
と、おばあちゃんに謝っている。
「いいのよ。今日は麻衣を元気づけようと思ってきたの。」
おばあちゃんはそう言って、『渡辺さんノート』をお母さんに見せた。
「そのノート!!」
お母さんはノートを見た瞬間、両手を口に当ててビックリしていた。
「おや、知ってたのかい?」
「麻衣に頼まれたんですよ…」
お母さんはおばあちゃんからノートを受け取って、最初のページを確認するように見ている。
「あの子達が持って来てくれたんだよ。」
おばあちゃんがお母さんに私達のことを紹介してくれた。
エレベーターで8階にきた。
1階は受付とかもあったし、たくさんの人でざわざわしていたのに、エレベーターを降りると、とても静かで消毒のにおいがした。
エレベーターを降りてすぐにナースステーションがあって、おばあちゃんが看護婦さんに話をしていた。
ナースステーションの側には、入院している子ども達が遊べる部屋があって、お母さんに付き添われた小さな子が遊んでいた。
そうだよね…
ずっとベッドの上じゃ、退屈だよね。
貸し出しできるのか、棚に絵本やDVDもたくさんあった。
その時、病室の方からひとりの女性がこっちに歩いてきた。
麻衣ちゃんのお母さんかな?
「お義父さん、お義母さん。」
おじいちゃん達に挨拶している。
やっぱりお母さんだな。
私達3人は少し離れた所で、おじいちゃん達と麻衣ちゃんのお母さんとのやりとりを見ていた。
■■病院は大きな病院だ。
駐車場から病院の入り口までが長い。
病院内も広すぎて迷子になりそう。
総合受付?
待ち合いの長椅子にはたくさんの人が座っている。
お年寄りやお母さんに抱っこされた赤ちゃん、怪我をしてる人や、車椅子の人…
こんなに大きな病院に来るのは初めて。
「○○科」と書かれた案内の看板?もたくさんある。
「キョロキョロするなよ。迷子になるぞ。」
翔太に言われてハッとして、おじいちゃんとおばあちゃんの後にピッタリくっついて、エレベーター乗り場まで歩いた。
「悪いわね、乗せてもらって。」
「いいえ~(^-^)」
麻衣ちゃんの入院している病院まで、大介さんの車で行くことになった。
おじいちゃん、おばあちゃんも一緒に乗って。
さすが!ワンボックス(*^^*)
途中、お見舞いの品物を買いにデパートに寄った。
お見舞いといえば…お花?
「麻衣ちゃんは何歳なんですか?
お見舞いはどんなものが喜びますかね…」
と、大介さんがおばあちゃんに聞いている。
「小学1年生なの。
お見舞いは…何がいいかしらね…」
1年生だったのか…
1年生にお花を持って行っても喜ばれないよね(汗)
大介さん、聞いてくれてありがとう。
でも小1の子がどんなことに興味があるのか誰も分からず…
3人で悩んだ結果、クイズの本と、スケッチブックと色鉛筆にした。
おばあちゃん達は、絵本と、麻衣ちゃんのお母さんに差し入れを買っていた。
そして再び、車スタート。
私は麻衣ちゃんが今どんな状態なのかが気になった。
お見舞いに行っても会えないかもしれないって、どういうことなんだろう。
病院へ行けば分かるのかな?
車内では、とてもそんなことを聞ける雰囲気ではなく…
もやもやしたまま病院へ到着した。
「ちょっとごめんね。」
おばあちゃんは『渡辺さんノート 』を持ったまま、玄関までおじいちゃんを出迎えに行った。
…入院か……
病気?それとも怪我かな…
さっきのおばあちゃんの表情から、すぐに退院できるような病気や怪我ではなさそうだ。
入院中、友達がいなくて寂しかったから、『渡辺さんノート』を作ったのかな?
すごい重い病気なのかな…
交通事故で大怪我したとか…
渡辺均さん家の庭…
麻衣ちゃんの看病が大変で、庭の草取りする時間なんてないよね…
麻衣ちゃん、
大丈夫なのかな…
「やあ、いらっしゃい。」
おじいちゃんが部屋に入ってきた。
「お邪魔してます。」
「今、おばあさんから聞いたよ。
このノート、麻衣が作ってたんだなあ。」
おじいちゃんはノートの最初のページを見ながらソファーに座った。
「麻衣のお見舞いに行ってみんか?」
え?
お見舞い?
行ってもいいの?
「行っても大丈夫なんでしょうか?」
大介さんが聞く。
「会えるかどうかは分からないけど、このノートを渡しに行こうか。
麻衣の母親は看病で病院にいるから、麻衣に会えなくても、母親に頼んで帰ろう。」
そうだ…
初めておばあちゃん家に来た時、
『渡辺さんノート』のことは、翔太が簡単に説明してたっけ。
誰がノートを作ったとか言わなかった気がする。
ただ「渡辺さん」が作った、としか言ってない。
「おばあちゃん。このノートの最初のページ見てくれる?」
私はおばあちゃんに『渡辺さんノート』を渡した。
「この間のノートね。」
おばあちゃんもソファーに座り、ノートを見た。
遂に、渡辺麻衣ちゃんに会える!
私はドキドキしていた。
…が、
おばあちゃんの表情が一気に曇った。
また草だらけの庭が思い浮かび、私もドキドキ感が、不安感に変わる。
「多分、このノートを作ったのは孫の麻衣だと思う…
住んでる住所もあってるし…」
「俺さ、おばあちゃんの息子さんの渡辺均さんの家に行ってみたんだ。
そしたら庭に自転車があるのが見えて…
自転車に渡辺麻衣って名前が書いてあったから、ビックリして思わずチャイムならしたんだけど…
渡辺麻衣ちゃんには会えなかったんだ…」
自転車?
あの草だらけの庭に?
翔太…よく見つけたな…
「…」
「このノートを直接麻衣ちゃんに渡したいんだ」
「…麻衣のためにありがとうね。」
「また家に行ったら、麻衣ちゃんに会えるかな?」
「…■■病院…」
え?
「麻衣、入院してるんだよ。」
入院??
■■病院って…
このあたりでは大きい病院だ。
「ただいま~」
おじいちゃんが帰ってきた。
応接間には立派な時計があったり、高そうな絵が飾られていたり…
あ…
写真立てもいくつか置いてあった。
おじいちゃんとおばあちゃんが旅行に行った時のような写真。
息子さんの結婚式の時かな?って写真。
あとは…
おばあちゃんの孫かな?って写真。
1~2才ぐらいかな?
着物姿の小さな女の子の写真。
「ね、翔太。あの写真。もしかして渡辺麻衣ちゃんかな?」
翔太に小声で言う。
「ああ。そうかもな。」
「可愛いね。2才ぐらいかな?」
「3才だろ多分(-.-)
よく写真見てみろよ。」
「え?」
着物姿の写真…
「七五三の時の写真じゃないかな?」
と、大介さん。
あ!
よく見たら千歳飴持ってるし!
「…ほんとだ(^^;」
しかも写真の背景にも見覚えが…
町内にある神社っぽい。
コーヒーのいい香りと共に、おばあちゃんが部屋に入ってきた。
「今ね、おじいさん町内の集まりに行ってて、いないのよ~。
もうすぐ帰ってくると思うんだけど。」
そう言いながら、コーヒーとお菓子を出してくれた。
「ねぇ、おばあちゃん。あの写真の子って、おばあちゃんの孫?」
聞いてみた!
おばあちゃんはニッコリして、
「そうだよ。麻衣っていうの。」
そして…
無事におばあちゃん家に到着。
大介さんは車で待っとくと言ったけど、渡辺麻衣ちゃんの話はしていたし、少し不安な気持ちもあったので、ついてきてもらった。
翔太がピンポンを押す。
「は~い。」
と、玄関が開き、おばあちゃん登場。
「まあ、この間の…
高木さん(エマさん)のお友達の…
渡辺さん、よね(笑)。」
そう、ここにいる全員渡辺さんなんだよ(笑)
にこやかなおばあちゃん。
そういえば、下の名前は教えてなかったような…
「今日はおばあちゃんに聞きたいことがあって来たんだ。」
「聞きたいこと?
なんだろうね…。まあ、中にお入り。」
「お邪魔します。」
「あ、僕はこの子達の保護者代わりの渡辺大介と申します。初めまして。」
大介さんがおばあちゃんに挨拶している。
「まあ、あなたも渡辺なのね。
私は渡辺節子です。よろしくね。ふふ。」
おばあちゃんは節子っていうのか…
私達は応接間に通された。
おばあちゃんは台所へ行って、お茶の用意をしてくれているようだ。
応接間のソファーに3人並んで座った。
車は順調におばあちゃん家に向かう。
渡辺さんが、渡辺さんの車で、渡辺さん家に向かってる…
なんだか不思議で面白い。
翔太がおばあちゃんに聞きたいことって何だろう?
気になるな~
渡辺麻衣ちゃん…
渡辺均さんの子どもで、おばあちゃんの孫ってことだよね?
再び、手入れのされてなかった渡辺均さんの家の庭が思い浮かび、なんとなく嫌な予感がする。
早く~
おばあちゃん家に着いて~
真相が知りたい。
翔太と外に出ると、ファミリータイプのワンボックスカーがとまっていた。
運転席の窓が開き、大介さんが顔を見せた。
「大介さん、今日は車ありがとう。」
翔太がお礼を言う。
「さ~、乗った乗った♪」
「私もお邪魔します…」
「はいよ♪」
私達は大介さんの車に乗り込んだ。
大介さんって、本当に面倒見がいいな。
いつも明るくて元気だ。
決してイケメンではない。(失礼)
ぽっちゃりした体型だったけど、ジムの成果か少ししまってきたと思う。
大介さんのこと、多分30%ぐらいしか知らないと思うけど、私の知る限りの大介さんの性格は120点だ。
優しいだけではどうのこうのと、大介さんをふってしまった彼女は、男を見る目がなかったんだね。
私とは年が離れてるから、恋愛対象にはならないけど、大介さんみたいな人が彼氏だったら、楽しいだろうな~と思う。
私は後ろの席で、大介さんの後ろ頭を見ながら、そんなことを考えていた。
翔太は助手席で、この車誰の?とか聞いていた。
この車は大介さんのお父さんのらしい。
明日の夜に出掛ける用事があって、お父さんに借りていたんだとか。
翔太がお願いして、借りてきてもらったのではなくて、ただタイミングがよかっただけ。
翔太…すごいね(^^;
でも…
私が行った時は、誰もいないような感じだったけど…
「本人に会ったってこと?」
「おばあちゃん家に行かないか?」
「おばあちゃん家?」
「俺も本人に会ったわけじゃないんだ。
おばあちゃんに聞いてみたいことがあって…」
「??でも、おばあちゃん家までどうやって行くの?」
おばあちゃん家は車じゃなきゃ行けない。
「大介さん。車出してくれるって。
今、電話でOKもらったんだ。
これからウチまで迎えに来てくれるんだ…」
「あ!さっきの電話、大介さん?」
「うん。」
段取りいいな…^_^;
プップー
外から車のクラクションの音がした。
翔太が部屋に戻ってきた。
「…麻衣。」
「?」
「エマさん家の隣の家のおばあちゃん達、覚えてる?」
ドキリ。
「覚えてるよ。」
「おばあちゃんの息子が町内にいるって言ってたのも覚えてる?」
ドキドキドキドキ…
「…うん。」
「俺さ、行ったんだ。息子の家。」
「え?」
翔太も?
「前に部活に出た帰りに。
地図帳で場所調べてさ~。
麻衣に内緒で勝手に行ったから黙ってたんだけど…」
手入れのされてなかった庭を思い出し、なんとなく嫌な予感がした。
「それが…どうかしたの?」
「いたんだよ。」
「え??」
「渡辺麻衣。」
え?
「渡辺麻衣ちゃんがいたの?」
翔太はうなづく。
嘘…
そんなある日…
「渡辺さん探し」は、すっかり「渡辺麻衣ちゃん探し」になっていた。
絶対に見つけたい。
今日は翔太の部屋で、地図帳を広げて悩んでいた。
やっぱりまだ行ってない渡辺さん家の子なのかな~
翔太は興味なさそうにしている。
渡辺麻衣ちゃんはいないと思ってるんだろうな。
♪~♪♪~
翔太の家の電話がなる。
翔太は電話に出るために、部屋を出て行った。
…ぽつん。
は~、渡辺麻衣ちゃん…
翔太の言うように単なるイタズラだったのかな…
小学生に聞いても、手がかりさえないし…
自信なくなってきたな~。
『渡辺さんノート』を手に取り見つめる。
そのキスが付き合うってサインだったのか何だったのか、よく分からないけど、それ以来手をつなぐようになった。
トシだけは、私達がずっと付き合ってると思ってるみたい。
多分翔太が告白されて、私が彼女だからと断っていたのを、本気にしてたんだろう。
翔太のことクールだと思ってたけど、けっこう甘えん坊なところもあった。
そのギャップに私は困惑していた。
だけど、その後も翔太との付き合いはなんとなく続き(途中、別れた時もあったけど。) 結婚してしまうんだけど(笑)
結婚しても名字変わらなかったな~。
「麻衣、俺のこと好き?」
「え?(*゜Q゜*)」
マックの一番隅の席。周りには誰もいないけど…
こんな所でそんなこと聞く?
「…」
「じゃあ嫌い?」
「いや、嫌いではないけど…。」
「嫌いの反対は好きだけど。」
「それはそうだけど…」
なんでそんなこと聞くのかな?
もうなくなったオレンジジュースをストローでかきまぜる、
氷がジャラジャラいっている。
「俺は好きだけど。」
え?( ; ゜Д゜)
ジャラジャラしていた手がとまる。
どういう意味?
翔太は私が好きだってこと?
顔が一気にあつくなる。
「俺は好きだけど、ナゲット。」
あ、なーんだ(-o-;)
焦った~
おちょくられてるよ私(T_T)
「も~、からかわないでよね!」
その瞬間…
チュッ
(○_○)!!
翔太にファーストキス奪われた。
私はびっくりして椅子からすべり落ちた。
「俺は付き合ってると思ってるんだけど。麻衣ちゃんと。」
グッ…
食べていたナゲット飲み込んだ!(×_×;)
ゲホゲホッ
「大丈夫か?ナゲットまずいのか?」
違う違う!
急にビックリするようなこと言うから…
ゲホゲホッ
声にならない…
ゲホゲホッ
ふ~…
落ち着いた。
ひとくちジュースを飲む。
「翔太が変なこと言うからビックリして…
苦しかった…」
「変なことないし。」
「…」
「付き合ってるとか言ったじゃん(汗)」
「付き合ってないの?」
「え?付き合ってたの?」
頭の中がごちゃごちゃになってきた。
付き合おうとか、そんな話になったことあったかな?
その日は、大介さんがバイトの時間が早まったそうで、「ごめんな~」と謝りながら、急いで帰って行った。
翔太と二人でチャリで帰る。
さっきの女の子がどこかから見てるんじゃないかとキョロキョロ…周りが気になる。
「大介さん、俺たちに付き合うばっかりでさ、それ以外はバイトだし…夏休み満喫してんのかな?」
「…」
「麻衣さ~ん。」
「え?」
「心ここにあらず。」
「あ、ごめんごめん。
考え事してた。
ていうかさ、告白されて断るのに、私を利用するのはやめてよね!」
「利用?」
「私を彼女だとか言うこと。
そう言えば断りやすいかもしれないけど、私が翔太の彼女なんて、納得するわけないじゃん。」
「なんで?」
「なんでって…
実際は付き合ってないし、それに私と翔太じゃつりあいとれないよ(-_-)」
「体重はお前よりは重いよ(笑)」
「も~ι(`ロ´)ノ体重じゃないよ~。」
「な~、腹へった。マック食って帰らん?」
「…いいけど。」
それからというもの…
変に翔太を意識してしまい、二人きりだと緊張した。
トシや大介さんが一緒だと、大丈夫なんだけどな(-o-;)
今日も図書館で勉強会。
外は朝から蒸し暑いけど、図書館の中は涼しくて快適~♪
私はいつもの席で宿題をしていた。
今日は読書感想文をやろうかな。
本を選びに行こうと立ち上がる。
「あの…」
突然、女の子に声をかけられた。
「はい。」
「あの…今日は渡辺先輩は一緒じゃないんですか?」
渡辺先輩?
「渡辺先輩の彼女さんですよね?」
?
誰かと間違えてる?
「えっと…私も渡辺なんですけど…」
「知ってます!
私、渡辺先輩に告白してふられたんです。あなたのこと彼女だと言ってました。
私、諦めませんから!」
そう言って去って行った。
ぽかーん(・_・;
ひょっとして翔太に告白した女の子?
宣戦布告しにきたわけ?
しかも私が彼女?
も~(- -;)
断るのに私を利用したな(怒)
ゆ、許せん(`Δ´)
こっそりと外に出た。
女の子はもういなかった。
「あ、麻衣ちゃん。
さっき兄ちゃんコクられたんだよ(^^)」
トシが嬉しそうに教えてくれる。
…やっぱり。
「そ、そうなんだ~。」
「あ!大介さん来た~。」
トシはそう言うと、まだ小さい大介さんに大きく手をふる。
え?(・・;)話終わり?
トシ~、告白の結果教えてくれよ~。
チラリと翔太を見ると、目が合った。
慌てて目をそらした。
翔太はニヤニヤしている。
「断りましたけど?」
「別に聞いてないけど( ̄^ ̄)」
「顔にかいてある。」
え??
とっさに顔をさわる。
それを見て、プッと吹き出す翔太。
心の中を見透かされてるみたい。
も~ムカつくなー(`Δ´)
ふ~ん…
広げていた地図帳を閉じ、立ったり座ったり…落ち着かない。
外の様子が気になる…
ま、ホントに告白されたとしても、翔太は断るから大丈夫だけど…
(((・・;)
大丈夫って?
大丈夫って気持ちなんだろう…
翔太に彼女が出来たら困る?
一緒に「渡辺さん探し」も出来なくなるから?
私…翔太が好きなのかな…
そんなわけない!
幼なじみだから、誰かに取られたら寂しいって感じるだけだよね(汗)
そしてお盆も過ぎ、夏休みも後半戦。
『渡辺さんノート』は残り1ページ。
渡辺麻衣ちゃんを見つけて、イタズラじゃなかったことを翔太に証明し、最後のページは翔太に書いてもらおうと思っていた。
それなのに、肝心の渡辺麻衣ちゃんが見つからない…
町内全部の渡辺さん家をまわったわけじゃないけど、まだ行ってない「渡辺さん」は、ウチから遠くてチャリで行ける距離ではない。
どうしよっかな~。
部屋で地図帳を見ながら悩んでいると、外からボソボソと声が聞こえる。
あ、今日はジムの日か~
翔太とトシが外で大介さんを待ってるんだろうと思って、部屋の窓を開けた。
あら?
外にいたのは翔太とトシと…
ウチの中学の制服を着た女の子ふたり…
翔太と話す女の子。
それを少し離れた所で見守る、もうひとりの女の子とトシ。
もしかしたら…
告白?
そのまま静かに窓を閉めた。
大介さんは面倒見が良くて、図書館では、翔太の勉強を見つつも、たまに私の席にも来てくれて、わからないところを教えてくれたりした。
勉強会の後はたまに自販機のジュースをおごってくれることもあった。
教師を目指してるって言ってたけど、ぴったりだな~。
最初は大介さんのこと、タイプじゃないな~なんて思ってたけど、いつのまにか「お兄ちゃん」みたいな感じで、好きになっていた。
今日は勉強会の後、父にもらったお小遣いで大介さんにジュースおごろう♪
午前中は図書館で勉強。
火曜日と金曜日はジム。
それ以外は、「渡辺さん探し」、たまに部活、家族との行事、等々…
かなり有意義な毎日を送っていた。
翔太と大介さんの勉強会に私もくっついて行ったけど、全くついていけず…
私は窓際にある、ゆったりと本を読むコーナーの席で、ぼちぼち夏休みの宿題を進めていった。
ただ宿題をしてるだけなんだけど、朝から図書館に行くなんて、なんか「勉強できる子」みたいな(*^^*)
姉が、図書館で宿題をしている私の姿を見かけたらしく、
(いつも窓際の席でしてるから、外から見えたらしい。)
「麻衣が図書館で真剣に勉強してたよ。えらいね。さすが受験生!」
と、夕飯の時に両親の前で誉めてくれた。
「麻衣、頑張ってるんだな。」
「お姉ちゃんも、よく麻衣を見つけたな~」
と、なぜか姉まで両親に誉められてたけど…
まんざらでもない。
誉められて嬉しい。
「真剣に勉強」ではなくて「嫌々宿題」なんだけどね^_^;
翌朝、父が
「勉強の後、ジュースでも買いなさい(^^)」
と、お小遣いをくれた。
なんてラッキーなの(^o^)v
翌日、
朝から翔太の家に行き、昨日のジムの感想を聞いた。
「楽しかったよ(^^)v
毎週、火曜日と金曜日に行くことになった。
大介さんはすぐバテてたな~(笑)
今日、筋肉痛かも。
大介さんハタチで大学生だって。
しかも◎◎大学!
頭いいんだな~。」
トシが教えてくれた。
◎◎大学!
へぇ~、優秀なんだな。
「今、大学生も夏休みだからな。
明日から、大介さんに勉強教えてもらうんだよ。」
翔太が自慢げに言う。
昨日まで嫌がってたのに、なんだその得意顔は(-.-)
大介さんは火、金曜日以外は昼過ぎからバイトがあるので、午前中に図書館で翔太と勉強会をするらしい。
受験生って言ったから、気を使ってくれてるのかな?
「教師目指してるらしいよ。」
そうなんだ。
私も宿題手伝ってもらおっかな。
今日は初ジムの日。
トシが部活をしているので、ジムは部活後の夕方から。
チャリで大介さんが翔太の家まで迎えに来ることになっている。
家の前の道で翔太とトシと一緒に大介さんを待った。
「ジムで筋肉つけたいわー(^^)」
元気にストレッチしながらトシが言う。
それとは対照的に翔太はまだ憂うつな表情…
「翔太~いいかげん機嫌直しなよ。」
「ふん。」
「タダでジム行けるなんて俺は嬉しいよ♪」
トシはニコニコ。
「…だって怪しいだろ(-.-)」
用心深いヤツ。
「でも、大介さんって何してる人なんだろ?大学生かな?」
「知らね~よ( ̄^ ̄)」
「麻衣ちゃん、俺が色々聞いとくよ。」
「トシ!よろしくね♪」
「お~い(^o^)」
チャリに乗った大介さんがやってきた。
「お待たせ(^^)」
すでにめちゃめちゃ汗をかいていて、ペットボトルのスポーツ飲料を飲んでいる。
はは…_(^^;)ゞ
翔太、潔癖症っぽいところがあるからな…
太った人苦手なのかな(汗)
「初めまして。弟の敏信です。トシって呼んで下さい。」
「お!トシ!よろしくな~。」
か、軽いな~(笑)
翔太はノリ悪いからな(^^;
まあ、いってらっしゃ~い。
「はぁーー」
翔太が大きなため息をつく。
結局、夏休みの間だけ週2回、渡辺大介さんと一緒にジムに行くことになった翔太。
最後には半泣き状態で頼まれた。
「渡辺大介さん、いい人そうだし、ジムで体動かせるんだし、まあいいじゃん。」
「しょせん、他人事だからな(-_-)」
「まあまあ…」
さすがに私がついていくわけにはいかないし、でも渡辺大介さんと二人きりは気まずいということで、急きょ、ひとつ年下の翔太の弟、敏信も一緒に行くことになった。
トシ(敏信)はバスケ部で活躍しているので、ジム通いは素直に喜んでいた。
そう。
翔太はモテる。
囲碁将棋部なんて、ちょっと地味?な部活に入ってるけど、スポーツ万能だし勉強もできる。
顔も整ってる。
でもクールなところというか、しゃべり方もキツイし、近寄りがたいところもある。
そしてなぜか私が公認の彼女?みたいになっているらしい。
それでも、翔太のことを好きな子の噂は聞くし、告白されることもある。
告白されても、翔太はいつも断っているので、彼女はいない。
なんか面倒ならしい。
「とりあえず、痩せたらどうですか?」
翔太は渡辺大介さん相手に困っていた。
「痩せるって、どうやって?」
「ジムに行くとか…」
「ジム…そうだ!君、ジムについてきてくれよ!」
「え?(・・;)」
「近くの☆☆ってジムなら自転車で行けるし。もちろん費用は俺が出す!」
「ちょ、ちょっと待って下さい、俺、受験生なんです!」
そうそう。
忘れてたけど、私達受験生だった。
「そんな長い時間じゃなくていい。
どうしてもアイツを見返してやりたいんだ!
頼むよ。これも何かの縁だと思って!」
ピンポーン
翌日…
渡辺大介さんの部屋のピンポンを押す。
渡辺大介さんの部屋に来る前に、エマさんの彼?の、渡辺高次さんの部屋を見てみた。
すごく静かでカーテンも閉まっていて、留守のようだった。
なんとなくホッとした。
「はい…」
ガチャリと渡辺大介さん家のドアが開いた。
いると思わなかったので、一瞬頭の中が真っ白になってしまった。
たじたじ…
すると翔太が『渡辺さんノート』の説明をしてくれた。
渡辺大介さんは年齢は20代ぐらい。
顔は…う~ん…
私のタイプではない(笑)
ちょっと太ってるけど、優しそうな感じの人だった。
「いいよ。このノートに書けばいいんだね。」
すぐに記入してくれた。
「ところで君たち中学生?カップルなの?」
え?( ̄0 ̄;
「違います、幼なじみなだけです。」
「そう。幼なじみか~。いいね。
俺さ~昨日フラれたんだよね…」
幼なじみ関係ないし(-.-)
「そ、そうなんですか(汗)」
「優しいだけじゃ物足りない、このデブだって…」
デブが原因??
「痩せたらいいんじゃないですか?」
「そうは言ってもね~」
おいおい、中学生に愚痴るなよな~(*_*)
「じゃあ…」
帰ろうとすると突然、
「ちょっと待って!君さ、モテるだろ?
イケメンだし。
モテるコツ、俺にも教えてくれよ!」
「え(汗)別にモテないッス」
焦る翔太(^з^)
「あ、そういえばさ…」
翔太が話し出す。
一瞬ヒヤッとした。
渡辺均さん家行ったのがバレた?
(バレるわけないんだけど(^_^;))
「な、何?」
「エマさんのことで忘れてたけど、エマさんの相手の渡辺さん家の隣のアパートに、もうひとり渡辺さんがいたよな?」
そうだ!
「いたいた!確か渡辺大介さん。」
「明日、日曜日だし行ってみるか?」
「うん。」
エマさん…
今どうしているのかな?
誰かを騙してなきゃいいけど。
ひとりで渡辺均さん家に行ったこと
翔太には内緒にしておいた。
翌日から翔太と一緒に「渡辺さん探し」を再開した。
ご近所の渡辺さん3軒。
沙織の家の近くの渡辺さん1軒。
その他にも地図帳で調べて何軒かの渡辺さん家をまわった。
なんのトラブルもなく、テンポ良く様々な年齢の「渡辺さん」に、ノートに記入してもらうことが出来た。
順調だ♪
今日は私の部屋で地図帳を広げて、次の「渡辺さん」の家探し。
もう何軒もまわったのに、渡辺麻衣ちゃんにはまだたどりつけてない。
『渡辺さんノート』を作った人が、本当にオジサンだったり、単なるイタズラだったりしたらどうしよう…と不安になったけど、はなから『渡辺さんノート』を怪しいと言っていた翔太に、そんな弱気なことは言えず、黙っていた。
翔太も「渡辺麻衣ちゃんなんて見つからないじゃないか~」みたいにからかうこともなかった。
本当は翔太も『渡辺さんノート』を純粋なものだと思っていたのかな?
そして家を出てから約20分後…
渡辺均さん家を見つけた。
住宅街の角っこの家だったから、見つけやすかった。
ただ…
渡辺均さん家。
庭の草がのび放題…
人が住んでる感じがしない。
こんなに草がのびてたら、玄関まで行くのも大変だよ。
物干しはあるけど、こんなにいい天気なのに、何も干してない。
なんだか怖くなった。
ホントにあのお婆ちゃんの息子の家なのかな?
私、間違えたのかも。
…帰ろう。
暑い中、仕方なく来た道を戻った。
チャリに乗り、渡辺均さん家に向かう。
じりじりと暑い…
セミの合唱。
しばらくチャリをこぎ、あまり通ったことのない道に出た。
通学路なのか、小学生の子達がプールバックを持って、学校に向かっている。
地区プールかな?
プール気持ち良さそうだな~(*^^*)
ふと、小学生のプールバックを見ると、
2年1組 ○○… と名前が書いてある。
2年生か…
あ、渡辺麻衣ちゃん、知ってるかな!
3人で楽しそうに喋りながら歩いていた小学生に声をかけた。
「ねえねえ、ぼくたち~」
小学生は立ち止まって振り返る。
「渡辺麻衣ちゃんって子知ってるかな?」
小学生は顔を見合わせ、「知ってる?」「俺知らん」と言い合っている。
知らないか…
結局「知りません。」と言われた。
「どうもありがと。」
他の小学校なのかな…
小学生と別れてまたチャリをこぎ始めた。
翌日。
朝8時に起床。ベッドの上でボ~っとする。
昨日は色んなことがあって疲れたな…
1日がすごく長かった。
エマさん、ちょっとは傷治ったかな…
お婆ちゃん、寂しくしてないかな?
あ!
そうだ…
私はベッドからおりて、町内の電話帳(兼地図帳)を広げた。
同じ町内に住むお婆ちゃんの息子…
名前は、ひとしと言っていた。
渡辺……渡辺均?←ひとしと読むのかな?
前後の名前を見るとこれしかない。
住所を見て地図帳で家を探す。
あった。
けっこう近い。自転車で行ける範囲だ。
どうしよう。
行ってみようかな?
すると外から「麻衣~」と翔太の声がする。
部屋の窓を開けると、制服姿の翔太がいた。
「あれ?今日学校?」
「おう。昨日、じいちゃんと将棋したら、部活やる気になった。」
「囲碁将棋部?」
「そう!ちょっと行ってくる。
だから今日は渡辺さん探しはお休みしとけ。
1人で行くなよ。じゃあな。」
と翔太は学校に行ってしまった。
囲碁将棋部…渋いな。
あ~、
今日は翔太いないのか~。
地図帳の渡辺均さん家を見る。
とりあえず家だけ探しに行ってみよう。
ピンポンは押さず、『渡辺さんノート』も家に置いて行こう。
「エマさん…どうだった?」
翔太が聞いた。
「エマちゃん、彼氏を騙してお金をとろうとしたんだって。」
嘘…
「エマちゃん、ご両親に借金があったみたい。その返済にあてるつもりだったって。
借金返すなら頑張って働くしかない。
盗もうとしたエマちゃんも悪い。
でも暴力もよくない。
これからどうするか、
ご両親とエマちゃんと彼氏で話し合うことになった。」
「…」
「翔太、麻衣ちゃん。
どんな時でも盗みはいけない。
うまく騙せたと思っても、絶対に天罰がくだる。
翔太、
暴力男だけにはなるな!」
オバチャンは真剣だ…
「はい…」
二人揃って返事をした。
万引きがかっこいいとか…
友達騙して喜んだり。
そういうの、学校でもある。
たいしたことじゃないって思ってたけど、大人になってもあるんだな…
それからオバチャンも加わり、一緒に縁側に座ってお茶を飲みながら、世間話をした(笑)
その中で、お婆ちゃん達の息子さんが私達と同じ町内に住んでいることが分かった。
世の中、せまいね~って話で盛り上がった。
16時過ぎ…
そろそろ夕飯の買い物があるので…と失礼した。
お婆ちゃん達は名残惜しそうだった。
息子さん、どうして一緒に暮らしてあげないのかな?
なんだかせつない気持ちで、見送るお婆ちゃん達に手をふった。
和風のデッカイ家だ。表札も立派だ。
翔太がピンポンを押そうとしている。
「え?行くの?」
「待ってる間ヒマだし。ノート書いてもらうだけなら、すぐ終わるだろ。
暴力男は住んでなさそうな家だし。」
ピンポーン
押した(゜ロ゜;
私はあわてて車に戻り『渡辺さんノート』を取ってきた。
「はい?どちらさま?」
出てきたのは、お年寄り。
品のあるお婆ちゃんだった。
翔太が事情を説明している。
「まあ、そうなの。
いいわ、名前書くぐらい。」
快くノートに記入してくれた。
「ありがとうございます。
決してオレオレ詐欺とかではありません(笑)」
おいおい翔太(汗)
そう言ったら余計に怪しくないか(-.-)
でもお婆ちゃんはニコニコ顔。
「お爺さんもいるのよ」と、わざわざ呼んでくれて、お爺ちゃんもノートに書いてくれた。
ほかに家族はいない様子。
こんな大きな家に夫婦二人で住んでるのかな?
お婆ちゃん達は、子どもと話すのは久しぶり、といった感じで、私にはお菓子を持ってきてくれたり、お爺ちゃんは翔太と将棋を始めてしまった(^^;
「お婆ちゃん達は、こんな大きな家にお爺ちゃんと二人で住んでるの?」
「そうなんだよ。いつも二人で寂しいからね、誰か訪ねてきてくれると嬉しいんだよ。」
「息子さんとか…孫はいないの?」
「いるんだけどね、年寄りとは一緒に暮らしたくないみたい。孫は病弱でね、なかなか会えないんだよ。」
「そうなんだ…寂しいね…」
「あんたら何やってんの?」
オバチャンの声がした。
「すみません、ウチの子ども達が迷惑かけて…」
「いいや~、私達が相手してもらってるんだよ。」
エマさん家は私達の町の隣の■■市。
車で20分ぐらい。
オバチャンの車はゆっくり進む。
傷に振動が響かないようにしてるのかな…
お腹もいっぱいだし、車の心地よい揺れ。
眠くなってきちゃったな…
隣に座っている翔太を見ると…寝てる!
自業自得って言ってたのは気になるけど、聞いても教えてもらえないだろうし。
そう思ってウトウトしていたら、あっという間にエマさん家に到着した。
車をとめてエマさんとオバチャンは家の中に入って行った。
私と翔太も車から降りて、家の方を見た。
「翔太~、自業自得ってさ、エマさん何か悪いことしたのかな?」
「浮気…もしくは金を盗んだ。」
「は?」
「母ちゃん、多分説教しに行ったんだろ。」
「なんで?」
「俺の妄想。」
「も~、からかってんの?」
「あ!!」
「何?どしたの!?」
「お前、今『渡辺さんノート』持ってる?」
「車に置いてるけど…」
翔太がエマさん家の隣の家の表札を指差す。
あ、渡辺さんだ。
「ごはん食べたらエマちゃんを家まで車で送って行くからね。」
「え?渡辺高次さん家に?」
私はビックリして立ち上がった。
「違うよ。私の家。
彼のフルネーム知ってるの?」エマさんが言う。
「部屋のドアに名前が貼ってあったから…」
「よく覚えてるね。」
「まあ、たまたまです。」
渡辺高次さんをたずねようとしてた、とは言えなかった。
「でも、こんなに怪我してるのに、家に帰ったら、お母さん達が驚きませんか?」
「驚くと思う。
でも自業自得だから仕方ないの。」
自業自得?
「ま、とにかく送って行く。家までオバチャンもついて行くから。」
ごはんを食べ終えて、エマさん家までオバチャンの車で出発。
邪魔しないからと約束して、私と翔太も後部座席に乗り込んだ。
渡辺高次さんとは恋人なんですか?
どうして殴られたんですか?
これからどうするんですか?
聞いてみたいことがたくさんある。
でも子どもの私が、むやみに聞くのはいけないような気がして、何も聞けなかった。
静かにごはんを食べた。
エマさんは口の中が切れているらしく、少ししか食べれなかった。
ごはんが食べられないほど殴るなんて…
渡辺高次さんに対して腹が立った。
暴力なんて…
テレビの世界だけだと思ってた。
本当にあるんだな…
暴力なんて最低だ(`Δ´)
でも…
オバチャンも何も言わない。
エマさんを慰めることもしない。
私が親と喧嘩して、オバチャンに相談しに来た時には、慰めてくれて優しい言葉をかけてくれたのにな。
私が子どもだからかな?
リビングに行くと、オバチャン特製のデッカイおにぎりが用意されてた。
それと、お味噌汁、卵焼き、野菜炒め。
美味しそう♪
オバチャンのおにぎりは絶妙のにぎり具合で、梅干し入りで美味しいんだ(^^)
女の人も席についている。
さっきより表情が和らいだような気がする。
「高木恵真ちゃん。」
オバチャンが女の人の名前を教えてくれた。
初対面なのに、ちゃん付けで呼ぶところがオバチャンらしい。
「これは息子の翔太。そっちは友達の麻衣ちゃん。」
「あ、どーも。」翔太と一緒に頭を下げた。
エマさんも微笑んでくれた。
「じゃあ、みんなでいただきま~す」
私の家は日中は誰もいない。
翔太の家も両親共働きだけど、オバチャンは平日に1回休みがある。
それが今日だった。
暴力を受けた女の人を、どうしたらいいのか分からなかった。
オバチャンに助けを求めた。
「あらまあ、酷い…」
翔太の家に着くと、オバチャンが女の人の手当てをしてくれた。
「ちょっと、子どもは向こうに行ってなさい。」と部屋を追い出された。
翔太の部屋に行った。
二人共無言だった。
渡辺さん探しが、まさかこんなことになるなんて…
暴力を受けた人を見たのも初めてで…
ショックだった。
すると、翔太が
「人助けできて、よかったじゃん。
もし、渡辺さん探ししてなかったら、あの人どうなってたか。」
そうだよね。
でももし今日私1人で行ってたら…って考えると、ゾッとした。
もう、渡辺さん探し…やめようかな
「今度から、『ノートに記入お願いします。取りに来ますので、記入後はポストに入れておいて下さい。』ってメモつけて、ポストに入れとけよ。」
「え?」
「まだ続けるんだろ?渡辺さん探し」
「あ、うん。」
「翔太ー、麻衣ちゃ~ん、ごはんだよ!」
オバチャンの声が聞こえた。
グゥ…
お腹すいた^_^;
「あの…大丈夫ですか?」
「あ、うん。ごめんね。怖い思いさせて。
叫び声で助かったわ。」
女の人の顔は腫れて、手足にはあざもある。
長い髪で必死に顔をかくそうとしている。
ふと見ると、抜けた髪の毛が服にいっぱいついていた。
髪を引っ張られたり、殴られたり、蹴飛ばされたりしたのかな…
「あの…ウチに来ませんか?
裸足じゃどこにも行けませんよね?
それとも…あの部屋に戻るんですか?」
女の人は泣き出してしまった。
女の人を翔太のチャリの後ろに乗せて、とりあえず翔太の家に行った。
私はビックリして思わず翔太に抱きついた。
部屋の中から顔がボコボコに腫れた女の人が出てきた。
女の人の後ろから男の人が追いかけてくる。
怖い!
私はギュッと目をつむった。
「わーーー」突然、翔太が叫んだ。
え?翔太?
「お前も叫べ!早く!」翔太が小声で言う。
「わーーー!」訳もわからず、ありったけの声で叫んだ。
すると男の人は私達の声に驚いたようで、部屋の中に入って、ドアを閉めてしまった。
ハーー
よかった…
怖かった。私、半べそ。
部屋から出てきた女の人はヨロヨロと道端に座りこんだ。
足元を見ると裸足だった。
翔太と顔を見合せる。
ひょっとして…暴力?
思いきって声をかけた。翔太が。
留守だと残念。だけど、いたらいたで緊張するな…
もしいたら…
最初になんて言おう。
友達集めてます?う~ん(-_-)
悩みながら渡辺高次さん家のピンポンに手を伸ばした瞬間…
ドドド…
部屋から音が聞こえた。
?
何の音だろ。
後ろにいた翔太を見た。
翔太も不思議そうな顔をしていた。
そしてまた、
ドサッ…
奇妙な音がする。
少し怖くなって、翔太のそばに行った。
「翔太…何の音だろ?」
「分からない。部屋で相撲でもしてるのか(汗)
この部屋は怪しいからやめとこ…」
バンッッ
突然、渡辺高次さん家のドアが開いた。
でもこのあと…
一緒に来てくれた翔太に…
私について行ってあげて、と翔太に頼んでくれた沙織に…
大感謝することになる。
「どうしよう…
ピンポン押してみようか?」
私はドキドキしていた。
「せっかく来たんだから押してみたら?
留守かもしれないし。」
「そうだね…」
まずは渡辺大介さん家。
ピンポーン
…
緊張から、手にじっとりと汗をかいている。
…
部屋に人のいる気配はない。
「留守かな?」
「平日の午前中だし、学校か仕事に行ってるんだろ。日曜日に来た方が、会える確率高いんじゃないか?夜には来れないし。」
「そうだね。じゃあ渡辺高次さんもいないかな?」
「さあな。一応行ってみたら?」
渡辺大介さん家はまた日曜日に来るとして、次は渡辺高次さんの家に行った。
アパートについた。
綺麗なアパートが2軒ある。
どんな人が住んでるのかな~
「ワンルームだな。ここは駅も近いし、大学生とか…若い人が住んでるんじゃないか?」
追いついてきた翔太が言う。
「そうなの?」
「そんな感じだろ。」
チャリを邪魔にならない場所に置いて、アパートの周りを歩く。
それぞれのドアに、ちっちゃいけど名前が貼ってある。
ひと部屋ずつ見て歩いた。
おぉ(^〇^)
あったあった!
渡辺大介
渡辺高次
男の人か…
横目で翔太を見る。
「俺がいてよかっただろ(-_-)/~」
…(-o-;)
そして夏休みが始まった。
朝9時。
私はチャリに乗り家を出発した。
夏休みの計画は初日から守れてない。
とりあえず渡辺さん家を探して、家の雰囲気をチェックしよう。
「麻衣~。」
コンビニの横を通った時、声をかけられた。
翔太だった。
「翔太、何?」
「待ち伏せしてた。」
「は?」
「これから渡辺さん探しに行くんだろ?」
「そうだけど。
何で知ってんの?」
「渡辺沙織さんから聞いた。」
「え?沙織から?」
「麻衣1人じゃ心配たから、翔太くんついて行ってあげて~って。
どうせヒマでしょ(笑)って(- -;)」
「そうなんだ。でも大丈夫だよ。」
「バカだな…世の中には変な奴がいるんだよ(;´д`)」
「…」
「お前がしょーもないこと始めるから(-.-)」
「しょーもなくないもん。
私1人でも大丈夫です( ̄皿 ̄」
も~、ムカつくな~
翔太を無視してチャリを走らせたが、チラッと振り替えると、翔太がチャリでついてきている。
ストーカーか(ーー;)
そのまま翔太を無視して、沙織の家の先にあるアパートを目指した。
家にある町内の電話帳を広げた。
『渡辺さん』は20軒以上ある。
ノートの残りはあと10ページほど。
電話帳には町内の地図も載っている。
近所に渡辺さんはウチと翔太の家を除いて3軒。
チャリで15分ぐらいかかる沙織の家の近くにもう一軒。
沙織の家のもう少し先には、アパートがいくつかある。
アパートの住人の名前は載ってないけど、1人ぐらい渡辺さんがいないかな?
地図帳とにらめっこしながら夏休みの計画を立てた。
7時に起きる
午前中は宿題をする。(真面目(笑))
昼ごはんを食べたら、夕方まで渡辺さん探しをする。
〈持ち物〉
・渡辺さんノート
・地図帳
・お茶
実行するのは苦手だけど、計画を立てるのは大好き♪
ワクワクしていた。
翌日から、毎日ではなかったけど、放課後は沙織が部活で忙しいので、基本、昼休みに二人で、渡辺さんを探し歩いた。
沙織はハンドボール部の部長で、後輩にも慕われていたし、目立つ存在だった。
私と違って教師受けも良かった。
私は悪い意味で目立つ存在だった。
全く面識のない渡辺さんでも、私達が「書いてくれますか?」と、ノートを差し出すと、拒否ることなく『渡辺さんノート』に記入してくれた。
1年生…5人
2年生…3人
3年生…5人
先生…2人
昼休みは自由に過ごしているので、顔の知らない渡辺さんを探すのは大変だった。
色んな人に、「渡辺さんか、渡辺くんを見かけませんでしたか?」 と聞いて歩いた。
渡辺さん(又は渡辺くん)を見つけた時は、まるで宝物を発見したみたいに、大喜びした。
「校内の渡辺さん、制覇したね♪」
「うん!ありがとね~沙織、付き合ってくれて。」
「ウチもメッチャ楽しかったよ~。
たから探しみたいで(笑)
あとは…地域の渡辺さん探しかな?」
「うん。地域はちょっと緊張するけど…頑張って探してみるよ。」
もうすぐ夏休み。
私は美術部に所属しているけど幽霊部員。
(姉が美術部だったから入ってみただけ。絵は下手。)
休み中、2回ぐらい顔出しとけばOK
中学最後の夏休み。
渡辺さん探しして思い出つくろう。
沙織は部活があるから無理だけど…
1人で大丈夫かな?
このノートを見た時、
怪しいな、とかイタズラだとか…そういう風には思わなかった。
小学生ぐらいの女の子が、友達を増やしたくて、一生懸命このノートを作ったんだろうなって思った。
だからこそ、絶対に渡辺麻衣ちゃんに会って、証明してみせる!
翌日、『渡辺さんノート』を持って学校に行った。
「沙織~、ちょっとコレ書いてよ!」
昼休み、同じクラスで仲の良い沙織に頼んだ。
「何これ?」
沙織にノートの説明と、昨日の翔太とのやりとりを話した。
「それで意地になってんだ~。
いいよ。協力する!」
「ホント~?ありがと♪
とりあえずね、全クラスまわって校内の渡辺さんに、書いてもらおうと思ってんの。」
「了解(*^^*)
あ、渡辺先生もいるね。」
沙織が校内の渡辺さん探しに付き合ってくれることになった。
クラスは各学年5クラス。
渡辺さん、何人ぐらいいるんだろ~?
「なんだよ、このノート。
珍しく勉強してんのかと思ったら、渡辺さんノート!?」
「今日ポストに入ってたの。
面白いでしょ(*^^*)
そうだ!友達③のページ、翔太が書いてよ♪」
翔太はコーラをひとくち飲んで、溜め息まじりに、「アホか… 」と呟いた。
「お前、怪しいと思わないの?」
?
「何が?」
「友達が欲しいからって、こんなノート作って、家まで持ってくるか?
友達なんて学校で作った方が早いんじゃないか?」
「引っ込み思案な子なんじゃない?」
「しかも、このノート作った本人、お前と同姓同名じゃん。怪しいって。
子どもっぽい字で書いてあるけど、実は正体はオッサンで…
お前のことを知ってて家までこのノート届けて…
お前の行動見て喜んでるかもよ。」
「何それ?バカじゃない?
オッサンがこんなことするわけないじゃん!」
「変態っているからな。」
かちんときた。
「翔太はどんな時もいつもそうだね。
すぐ疑ってバカにする!
このノートは、小学校低学年ぐらいの渡辺麻衣ちゃんが、純粋に友達が欲しくて作ったんだよ!」
翔太は冷めた顔でコーラを飲んでいる。
…なんだよ、無視かよ(怒)
「わかった!
私が証明してみせる!
私が渡辺さんをたくさん探して、このノートをいっぱいにして、最後にこの渡辺麻衣ちゃんにノートを届けるよ!」
『渡辺さんノート』を作ったのはオッサンでもなければ、イタズラでもない!
翔太はコーラを飲み干すと、
「ほどほどに(-.-)ノ」と言って帰って行った。
も~(`ロ´;)ムカつく!
「お前、何学校休んでるんだよ。
てか、チャイム1回でちゃんと出ろよな。
わざわざ家まで来てやったのに。
ほら、コレ。宿題のプリント。」
「(-_-;)…どうも。」
「本当は元気なんだろ?
俺だってな~お前の教育係なんて嫌なんだよ。お前だけ楽しようとすんなよな~。」
そう言うとずかずかと家の中に入り、
「お詫びにお茶くれ。喉乾いた。」だって
も~~( ´△`)
「何か持って行くから、部屋で待ってて。」
私は氷の入ったグラスにコーラを注いで、部屋へ持って行った。
翔太は私の机に置かれていた『渡辺さんノート』を見ていた。
あれこれ考えながら、私は友達②のページを完成させた。
できた~♪
もう夕方になっていた。
ピンポ~~ン
玄関のチャイム音。
…誰だろう。
セールスかな?
出るのが面倒で無視していたら、再びピンポ~~~ン
なんだかふざけた押し方だな。
ウチのチャイムで遊んでんのか?
あっ、ピンポンダッシュ?
玄関まで、そっと歩いた。
すると、
「麻衣~?いないのか~?」
この声は…(-.-)
玄関を開けると、不服そうな顔をした翔太が立っていた。
▲▲町って…
同じ町内だし。
ウチの近所にも何軒か『渡辺さん』がいる。
ウチの二軒先は翔太の家。
このノートを作った子も、近くに住んでるのかな?
ウチのポストにノートを入れに来たわけだし。
それにしても、『渡辺さんノート』なんて面白いこと考えるな~。
次のページでは
友達①
名前 渡辺麻衣
誕生日 3月26日
好きな食べ物 いちご、ヨーグルト
等々、自分自身を紹介していた。
次の友達②は…私か~。
ちょっと書いてみよっかな~。
友達②
名前 渡辺麻衣
誕生日 8月1日
好きな食べ物………ラーメン?
ラーメンじゃ可愛くないかな?
他の人もこのノート見るんだし…
果物…とかの方が女の子らしいかな?
私はこのノートを次の『渡辺さん』に、渡すつもりでいた。
渡辺麻衣!?
私と同姓同名じゃん!
まず、そこに驚いた。
まあ、そんなに珍しい名前でもないしな…
でも妙に親近感わく。
2ページ目
『ルールせつめい
このノートをうけとった人は自己紹介を書く。
①名前
②誕生日
③好きな食べ物……
自己紹介を書いたら、次の渡辺さんをさがして、このノートを渡す。
最後の人は、私のところまでこのノートを届けて下さい。
ヒント…私は○○市▲▲町に住んでいます。』
ノートの表紙には、子どもの字で
『渡辺さんノート』
と書いてある。
渡辺さんノート?
もしかして、不幸の手紙みたいなヤツかな…
恐る恐る、表紙をめくる。
『わたしの名前は渡辺麻衣です。
たくさん友達がほしくて、このノートを作りました。
このノートの友達は渡辺さんげんていです。
渡辺さんあつまれ!』
1ページ目にはそう書いてあった。
昼過ぎに目が覚めた。
…お腹すいた。
台所へ行くと、母親がおかゆを作ってくれていた。
…ホントは元気だからな^^;
おかゆだけじゃ足りない。
ダッシュで近所のコンビニに行って、パンを買ってきた。
よかった…
誰にも会わなくて。
学校休んでるのに、出歩いてて、近所の人にでも会ったら困るからね…
ホッとして玄関のドアを開けようとしたら、玄関脇にあるポストにノートが入っているのが見えた。
なんだろう。
ノートを取って部屋に入った。
「お~い、渡辺麻衣さん、授業サボらないで下さい。
俺がアイツ(担任)に文句言われるんですけど~」
「渡辺麻衣さん~、早退はダメですよ~」
「渡辺麻衣さん~…」
「も~!うるさいな(`Δ´)」
私の教育係になったばかりに、担任から文句を言われるのは申し訳なかったが、翔太に1日の行動を見張られてるようで、うっとうしかった。
もう面倒で学校を休んだ。
仮病だ。
朝、母親に頭が痛いと言って、しんどそうな演技もした。
母親が学校に連絡をしてくれた。
無断で休むと、学校から母親の職場に連絡がくるんじゃないかと心配だった。
私って真面目だな~
そう思いながら、ベッドの上でゴロゴロしていた。
両親は仕事、姉は学校…
静かな家の中、窓からは暖かい日差し
いつの間にか眠っていた。
今から10年前のこと。
ちょっとだけぐれていた、中学3年生の時だった。
この頃から両親は、優秀な姉と私を比較するようになり、
「お前はこうだから、お姉ちゃんのようにこうすればいい。」と、姉と同じことをしていれば間違いないみたいに言われていた。
両親の愛情を感じないわけではないけど、どんな時でも、私の意見は否定されて、姉の真似だけをしろ、と言われることに嫌気が差していた。
おまけに中3の時の担任も最悪で…
ベテランっぽい女の先生だったけど、
生徒のことを全然見てない。生徒が何か問題を起こすと、真実なんて何も分かってないくせに叱りまくる。
優等生は可愛がる。
クラス全体…いや、全校生徒から嫌われていた。
学校に行くのが嫌で、一応学校には行くけど、よく授業はサボっていた。
その最悪な担任にとって、私は最も扱いづらい生徒だったに違いない。
元々、自分の手でぐれた生徒を更正させるなんて面倒なことはしない先生だ。
クラスメイトから、私の『教育係』を作ったのだ。
ただ同じ出席番号だったというだけで、私の教育係に選ばれたのは、
渡辺翔太。
私の幼なじみでもあった。
淡いピンク色のノート。
表紙には幼い可愛らしい字で、『渡辺さんノート』と書いてある。
私は『渡辺さんノート』を手に取り、目を閉じた。
色んな人達の顔が思い浮かぶ…
「なに寝てんだよ。」
旦那の呆れたような声に、ハッと目を開けた。
「要るもの、要らないものをさっさと分けて、早く荷造り終わらせようぜ。」
私の周りには「要るか要らないか分からない物」が散乱していた。
「わかってるよ、も~
要るかどうか悩むんだよ。
でもコレは絶対転勤先まで持って行くよ♪」
旦那に『渡辺さんノート』を見せた。
「うわ、懐かしいな。」
旦那も荷造り中断して、ノートを見る。
「俺ら、転勤でこの町を離れるんだし、もう一度みんなに会いたいな!」
「お~\(^o^)/それいいね!
私もみんなに会いたいよ!
やっぱり、翔太は良いこと言うね~」
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