Butterfly's memoir~第2章 豪欲~
🐚はじめに…🐚
第1章 階段からの続きのお話になります。
この第2章 豪欲では、題名通り…様々な欲や罠との葛藤と戦いになります…。
この回では、『人を助けること』も勿論関係してきますが『人の恨み』も受けて行きます。
勿論…辛い現実を目にもします。
是非、最後まで読んで頂けたらと思います。
🐚ageha↔松岡一葉🐚
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そんな春を見ながら
『由美…由美は⁉』
由美を探した…。
由美はドア近くのゴミ箱の横で耳を塞いでうずくまっていた…。
由美‼由美‼
私は由美の名前を叫び由美の手を引っ張った…
すると、春が
由美、お前はここにいろ。
とタバコを吸いながら言った…。
由美⁉ダメだよ…由美‼お願いだから、私と行こう…‼由美‼
何度も由美に叫んだ…。
由美は私の手を掴みながら震えていた…。
そんな遣り取りをする中…
制服の女の子は他の男に次々とやられ続けていた…。
『助けてぇー‼‼お願い‼助けて‼‼』
女の子が泣きながら私のことを見て床を張ってくる……
この時…女の子の顔を見て気づいた…。
回されていた子は由美の中学時代の親友の“真理子”だった…。
そんな真理子を見ながら男達は笑いながら引きずり戻しバックからついたり好き放題している…
『とにかく…何とかしなきゃ‼』
私は泣きながら由美に叫んだ。
由美‼早く‼‼
翔太も由美の手を引っ張った。
由美は春を見ながら
春…ごめん…
そう一言いうと私と翔太と走って店の外へ出た…。
翔太は私達を店の外のファミレス内に非難させると…
『店に現状知らせて、警察にも連絡してくる』
と言いまた店に戻って行った。
由美はギュッと目を閉じて涙を流しながら震えていた…。
正直…
私はこの時…また由美に裏切られるんじゃないか…と思ってドキドキした…。
でも『何があっても手を離さない、何があっても信じる…』と心に決めたのを思い出し…必死になっている間にその気持ちが涙になって…気づいた時には由美の手をかなりの力で掴み由美の名前を叫んでいた…。
由美は…春じゃなく私についてきてくれた…。
私は由美の手を握り締めながら涙を流した。
暫くすると…
パトカーが3台来て…
春と男達6人…それと真理子が女の刑事さんに連れられパトカーに乗せられていった…。
私と由美はそれをガラス越しに…目を逸らすことなく…ずっと見つめていた…。
私はその光景を見ながら、昔のことを思い出していた…。
昔…一輝とカラオケへ2人で入り…一輝に告白された時のことだった。
あの時は…カラオケボックスは『安全』だと疑いもしなかった。
この世の中、『安全』な場所なんてない。
と、この時気付いた。
春が連れて行かれ…哀しげにしている由美を1人でアパートに帰す訳には行かなくて…
この日は私の家に連れて帰ることにした。
少なからずアパートよりは私の家の方が『安全』…。
この時の判断は間違いではなかった…と次の日になって痛感することになる…。
次の日…私は学校を休み、人通りが多い昼間の時間を狙い由美の家に着替え等を取りに向かった。
鍵を開けようとした時…
鍵が開いていることに気づく…。
私と由美は恐る恐るドアを開け部屋を覗いた…
由美の部屋は…全てグチャグチャになっていて引き出しという引き出しからは物が散乱し…荒らされていた。
私はそのまま警察へ連絡し…
2時間程の事情聴取を受け、春の件も警察へ伝えた上で暫くは私の家に非難させることになった。
部屋を軽く片付け、必要な物だけをまとめて部屋を後にした。
警察からは鍵を変えるだけではなく、引っ越しをした方がいい…と言われた。
由美はそれを聞いて黙って頷いていたが…そんなお金はもう由美にはなかった。
私は、由美の身の安全の為、暫くは私の家に置き、その間に由美の親と話し合ってくることにした。
由美は嫌がるだろうが身重な由美をあのアパートに帰すことの方が後々何かと危険だし大変だろう…と思った。
それに春が捕まった今、由美の生活費や家賃を払う術がない…。
もし、由美が本当に嫌ならしっかり子供が落ち着いてから自立すればいい…今は子供の為にも実家に身を置くことが一番だと思った。
私は学校に通いながら放課後は毎日由美の実家へ行き、由美の親が話しを聞いてくれるまで粘った。
その甲斐あってか由美のお父さんもお母さんも私の話しを聞き入れてくれるようになった。
ここまで来るのに約3週間かかった。
ただ…話しは聞いてくれるようにはなったが由美に関してはどうなろうが自業自得だと言い、なかなか首を縦には振ってくれなかった。
それでも私は由美のことを必死にお願いし続けた。
またこのお願いする日々が約1ヵ月程続き…
やっと由美のお父さんが由美が帰ることに納得してくれた。
泣きながら喜んでお礼を言う私に由美のお父さんは…
お礼を言いたいのは私達の方だよ…。本当は…由美のことが心配で心配で…。お母さんなんか心配し過ぎて精神的な負担からか…体中に湿疹が出たりして…。由美の話しがあった時…すぐにでも由美のこと引き取りたかった…けど、長い間のこの頑固な性格だけは…どうにもならなくてね…。明日にでも…由美のことを連れて戻ってきて下さい。どうぞ…どうぞ宜しくお願いします…。
と涙組ながら頭を下げた…。
私は由美のお父さんとお母さんを見ながら…
『やっぱり…由美のお父さんとお母さんなんだ…』
って思った。
どんなにどうしようもない子供でも…どんなに問題だらけの子供でも…どんなことをやらかしても…
『大事で大切な子供には変わりない。』
家族って…凄い絆で結ばれてる…。
『もう…由美の帰る場所はある…もう由美は1人なんかじゃない…』
誰よりも由美のことを考えてくれるお父さんとお母さんがいる…
私は由美のお父さんとお母さんに由美のことを支えてくれるように頼み、深々と頭を下げた。
家に帰ってから由美に実家へ帰るように話した。
由美は始めは『嫌だ』と言っていたが、私がお父さんとお母さんのことを話すと…
お母さん…体大丈夫なの…❓お父さんは…❓もう、湿疹は治ったの❓
と涙ぐみながら聞いてきた。
もう、大丈夫だよ。由美が家に帰ってくるからすぐ治るってお母さん涙流しながら笑ってたよ…
それを聞いた由美も涙を流しながら
『カズハ…ありがとう…。うち、明日帰るね…。お母さんの側にいてあげたい。』
と言った。
私は由美のことを抱き締めながら『良かったね』と言った。
この日は由美をゆっくり休ませる為に早めに眠りについた。
次の日、由美は私の親に深々と頭を下げ挨拶をし、由美と2人で由美の実家へ向かった。
家へつくと、由美のお母さんが泣きながら由美を抱き締め声を詰まらせながら
お帰りなさい…由美…
と言った。
ただいま…お母さん…ごめんね…お母さん…
と由美も涙を流しながら小さな声で言った。
私はアパートの契約や片付けの件、解約の手続きのことだけ伝えて静かにその場を後にした。
『後は……後は…お金の件だけ……』
私は自宅に向かいながらママさんに電話をかけた。
明日からでも…大丈夫です。怪我も治りましたから。宜しくお願いします。
分かった。じゃぁ保険証のコピーと、簡単にでいいから履歴書書いて夜7時にお店に来て…。
はい…。宜しくお願いします…。
短い電話だった…。
電話が終わると、コンビニへより履歴書を買い家へ帰宅した。
履歴書を書いた後、あらかじめコピーしておいた保険証を履歴書の封筒に一緒に入れバックにしまった。
明日から自分の知らない世界に入る…
ただ、不思議と不安や怖さはなかった。
春のお父さんにされたことに比べれば全然大したことはなかった。
ただ…学校や家にはバレないようにしなければ…と思い、そっちに神経を使っていた。
次の日、学校が終わり真っ直ぐ帰宅し裕子の家に行くことを伝えて家を出た。
裕子にはメールで『今日から仕事だから、宜しくね』とだけ送った。
7時、5分前に店へつき、ママさんに連絡をした。
連絡をしてすぐ店のドアが開き1人のスーツを着た男の人が出てきた。
男の人の名前は白鳥さん。ボーイさん兼責任者をしている人だった。
履歴書と保険証のコピーを渡し、その後更衣室へ案内された。
8畳程の部屋には貸しドレスと鏡が沢山並んでいた。
その中から真っ白にファーが付き斜めにギャザーと大きなフリル、斜めスリットの深く入ったドレスを白鳥さんは選んで私に渡してきた。
着てみると雰囲気はかなり代わり可愛いさにもセクシーさもあり白鳥さんが選んでくれたドレスが気に入った。
その後、同じビル内にある美容室に案内され、セットとメイクをしてもらった。
準備が終わり店へ戻ると他のキャストが続々と出勤してきていた。
白鳥さんは私をキャストが座っている場所ではなくママ専用の部屋へ連れて行った。
『コンコン…』
カズハちゃん出来ました。
白鳥さんが声をかけると部屋から
分かったゎ。カズハちゃんだけ中入ってちょうだい。
そう言われ私が白鳥さんをチラッと見ると白鳥さんはニコッと笑い『じゃ、頑張ってね』と一言いいその場を去って行った。
失礼します。
ママの部屋に入るととてもいい香りがした。
ママは着物に着替え、メイクの仕上げをしている所だった。
あの…こんばんわ。
私がそう言うと…
(笑)私達の世界じゃ『おはようございます』って挨拶するのよ。
と言い小さな声でクスクス笑った。
うん。カズハちゃんいいわね。そのドレスもよく似合ってる。で、カズハちゃんは源氏名はどうするか考えてきた❓
源氏名…って…❓なんですか❓
(笑)源氏名はお店の中の名前。この世界殆どの子が本名ではやってないのよ。
それを聞いて私は『蘭蝶』(ラン)がいいです。
と即答した。
するとママは
いいわよ。今ちょうどお店にランちゃんはいないから。じゃ、白鳥に頼んで名刺作っておいてもらうから。後で白鳥から受け取ってね。
と言った。
はい。分かりました。
会話が終わると、『今日はホールじゃなくてルームについてもらうから。私のヘルプをして学びなさい。ただ、私は一切何も教えないから見て学びなさい。』そう言い、私を連れて個室へ向かった。
ママの店は接客スペースがホールとVIPルームという個室に分かれている。
私はママに言われホールではなく殆どVIPルームという個室に来るお客様につかされた。
ただ、何度かホールのお客様についたこともあったが、VIPルームに来るお客様の方が落ち着いていて紳士的で優しく、私が分からないことはお客様が何でも教えてくれた。
それに…ホールに来るお客様とは違い高いお酒を沢山入れてくれるし指名もすぐ入れてくれるし、酔って騒いだりもしない。
私はVIPルームのお客様から指名を沢山もらいVIPルームに入り浸りになった。
指名が一度入るとそのお客様が帰るまではお客様の相手をしなければならない為、ホールのお客様につくことは段々となくなっていった。
それに…ホールに来るお客様はあまり指名は入れずフリーと呼ばれるお客様がほぼ占めていた。
VIPルームは一見様お断りだったがホールに関してはそうゆう規定はなく、年齢層もかなり若かった。
VIPルームには私以外にもよく指名をもらっていた“サチ”さんと言う人がいてママの話しによると店のNo.1だということだった。
サチさんは接客の時はニコニコ笑い華やかな笑顔でよく話す気さくな感じに見えたが、接客以外ではあまり表情を変えない無口な人だった。
サチさんと仕事をする回数が増え、段々と日常会話程度なら話せるようになった。
段々と仕事に慣れてきた中、あっという間に1ヶ月が過ぎ、給料日が来た。
給料はママからの手渡しだった。
キャストが順番に呼ばれママが給料を渡していく。
私はサチさんの隣に座った。
サチさんが呼ばれ、私の隣でサチさんが給料を数えている…
『すっごい…一万円の束………』
サチさんのお給料は給料袋3袋分……周りのキャストとは桁違いだった…。
私の方はと言うと…初給料は38万円だった。
ただ…バイトをいくら掛け持ちしてもこの金額には届かないだろう……と思い、この時、もう既に桁違いの給料にはまってしまっている自分がいた。
サチさんは私には普段から笑顔で話しかけてくれるようになり、私もサチさんから学ぶものは沢山あった為、金魚の糞のようにサチさんについて回った。
ただ…サチさんにはライバルが沢山いて度々嫌がらせをされたり、お客様にサチさんの悪口を吹き込んだり…陰湿なイジメは多々あった。
サチさんについて回っている私もよく嫌がらせにあった。
私物が無くなったり、ホールのお客様についた時にはキャスト、お客様両方に無視をされ接客が成り立たない時も度々あった。
ただ、私はそうゆうイジメ自体大したことはないと思うような経験ばかりしていた為、『お金』が貰えればどうでも良かったし、サチさん自体もまるっきり相手にしていなかった。
仕事の方も順調で何度かサチさんのお客様とサチさんとアフターにも行き、またそこでお客様がついたり…と枝別れ方式のように指名は増え、2ヶ月目のお給料は50万に達していた。
春のお父さんに渡すお金は約100万…
『もう1ヵ月働けば…全て終わる…』
そう思い、必死に接客に励んだ。
だが…3ヶ月目に入ってすぐ…いつも通り登校し、いつも通り授業の準備をしていると…いきなり校長室に呼び出された。
『なんだろう…まさか…バレたんじゃ…』
…その…
まさかだった…。
バレた原因は
『他校の生徒からの情報』
とのことだった…。
私は夜仕事をしていることは裕子にしか話していなかった為、見覚えがなく…。
ただ、情報が入った後に先生方の方で調査をしたらしく…いい逃れはできない状態だった…。
親も呼び出され、学校側としては次回の転入に極力影響が少ないように『退学』ではなく『自主退学』の方が良いと思う…と自主退学を進めてきた…。
親は何も言えず…この日は結論を出さないまま親と家に帰った。
家に帰ると母と父に殴られ、『出ていけ』と言われた…。
母は『あんたを殺して私も死にたい』とまで言うようになり…ボロボロだった。
この日は感情が高ぶってしまい話しができる状態ではなかった為、私は自分の部屋へ戻り1人これからのことを考えた。
ただ…こうゆう状況になったからこそ『夜の仕事』は辞める気は全くなかった。
私の出した結論は…
『家を出て1人暮らしをしながらとりあえず高校には通い卒業する』
だった。
勿論親は大反対したが、『授業料も生活費も一切出さなくていい。高校に転入する手続きのみをとってくれればいい。』と言い私も引き下がらなかった。
親は『すぐに無理だと分かり諦めるだろう。そんなことがお前に続く訳がない。やれるもんならやって見せてみろ』と言ってきた。
『勿論…家は用意しない…家を借りるに当たっては保証人にもならない…』と追加条件も出してきた。
私は『それでもいい』と言い、早々に転入する学校を選び始めた。
学校選びの時の私の中での条件はこの時既に決まっていた。
それは1人暮らししている『曾祖母ちゃんの家の近くの学校』だった。
曾祖母ちゃんはまだまだ元気だったが1人暮らしの為、何かと不自由していたし結構な歳だった為、父と母が『今後引き取るか』をよく話しているのを聞いていた。その曾祖母ちゃんと私が一緒に住むと言えば『最終的には絶対反対はしない』と自信があったからだった。
私の歳で賃貸は契約出来ない。
ただ、家は絶対になければ生活なんて無理…色々考えた結果決めたことだった。
曾祖母ちゃんは祖父、祖母とはかなり仲が悪く、一緒には暮らしていなかったし一緒に住む予定すらなかった。
ただ、私は曾祖母ちゃんが大好きだった。
頑固だけど間違ったことは言わず、間違ったこともしない、手もあげない、それにとても精神力のある強い人だった。
『曾祖母ちゃんとなら一緒に住みたい』
ずっとそう思っていたのも事実だった。
私は転入する高校を決め、父と母に伝えた。
転入する高校は曾祖母ちゃんの家から歩いて10分程の女子高で通信科もありかなり充実している学校だった。
親は『どうせすぐに帰ってくるだろう。曾祖母ちゃんと住む件については曾祖母ちゃんが納得するなら私達は口を挟む権利はないから好きにしろ』と言ってきた。
私はすぐに曾祖母ちゃんに連絡をした。
もしもし❓ばあちゃん❓
あ~☺カズハ❓どうしたの❓
あのね…ちょっと事情があってばあちゃん家の近くの○○高校に転校することになったんだけど、ばあちゃん家に住んでもいい❓
それは別に構わないけど、お父さん達はなんて話してるの❓
お父さん達もばあちゃんが納得してくれるならいいって話してる。
そう☺ならいいよ☺おいで☺
うん☺生活費は私がバイトして毎月入れるから‼近々行くと思うから宜しくね‼
はいよ。気をつけてくるんだよ。
曾祖母ちゃんもすんなり納得してくれた。
父と母に話すとため息をつきながらも『自主退学の手続きと転入の手続きだけはとっておく』と言ってくれた。
とりあえず、
『転校の件は無事に進みそうだ…』
そう思った私は次にママに電話をして、『学校に夜仕事をしていることがバレて学校を辞めることになった。暫くの間、ほとぼりが冷めるまでは仕事は休みたい。』
と伝えた。
ママも『店の立場上、そうしてもらった方が有り難い』と言い、暫く仕事は休むことになった。
ママと電話を切った後…もう1つ解決しなければいけない問題があることを思い出し、美幸に電話をかけた。
もしもし❓美幸❓
あっ‼カズハ⁉今日どうしちゃったの⁉何も言わないで帰っちゃって⁉心配したんだから💨
うん。ごめん…あのさ…私、学校辞めることになったんだよね…。
……えっ………
なんで……❓
少し落ち込み気味の美幸に、今までの経緯を話し、その結果学校に仕事の件がバレて退学することになった…と伝えた。
美幸は、『学校を辞めるのは仕方ない…けど…誰がチクったの❓』と聞いてきた…。
そう…私はそれが『誰か』が知りたくて美幸に連絡をしていた。
私の中では他校でしかも在学中でこんなことをする奴…と言えばいくら考えても1人しか浮かんで来なかった。
それは…
由美の中学時代の親友…
『真理子』
だった…。
美幸に連絡したのは美幸は由美と真理子と同中学だったから『真理子のことを色々知っているのではないか…』と思ったからだった。
『転校してもまた同じことをされたんじゃまた退学になってしまう…』
だからこそ転校する前にしっかりと話しをつけたかった。
美幸は真理子には私がいることは内緒で呼び出してくれることを約束してくれた。
時間は明日…学校終了後、夕方4時…。
親とは顔を合わせても話しすらしなくなってしまっていた為、明日、出掛けても何も言ってはこないだろう…と思った。
次の日、家を出ようとする私を横目で見ていた母。
私に気づいているはずなのに案の定何も言っては来なかった。
私は母に何も言わず…無言のまま家を出た。
待ち合わせ場所は学校近くの並木道だった。
少し早くついた為、橋の上から並木道を眺めていた。
『綺麗…もうしばらくこの道を通ることはないんだな…』
学校に通っている時は学校等に夢中で道を通っても景色に目を向けることすら無くなっていた。
『人間はすぐに新しいことに飲み込まれてしまう』
ふと初心に戻った時にやっと周りにある物に気づき心を痛めたり休めたりする。
普段からもっと大事にして気づいていかなければいけないことがあるのに…すぐに『欲』に負けてしまい自分本位になってしまう…。
私は初心を忘れない為にも月に一度は並木道や昔行った公園、木蘭の花のあるタバコ屋に行くことに決めた。
自分を見失わない為にもそれが必要だと思った。
景色を見ている間は真理子のことはすっかり忘れ無心になれた。
景色を見ていると美幸と真理子が歩いてくるのが見えた。
私も美幸と真理子の方へ歩いて行った。
途中から真理子の表情が変わるのが分かった。
真理子が私の目の前についた時には表情は鋭くなり…私のことを凄い目つきで睨んでいた。
美幸は
私、あっちで待ってるね。話しが終わったら…声かけて。
それだけ言い並木道の向こう側へ歩いて行った。
私は真理子に話し始めた。
…聞きたいことがあるんだけど。私のことで何か知ってることある❓あるなら…それを学校に話したりしたことある❓
あるよ。学校退学なったんだってね。けど私が悪いんじゃないよ。あんたの自業自得だよ。
……そう。退学の件はもう諦めてるからいい。それについては文句言うつもりもない。ただ…なんでそんなことしたの…❓
真理子はいきなり凄い形相になり半分悲鳴にも近い声で私に話してきた。
…あんたが悪いんじゃない‼あの時…私のこと置いて逃げたくせに‼由美だけ…助けて…私のことだけ置いて逃げた癖に‼‼‼私…あの時…必死で助けてって…お願いしたのに‼‼無視して…逃げた癖に‼
真理子は…この後は何も言わず…ずっと泣いていた…。
私は…そんな真理子を責める気はもうなくなっていた。
悔しそうに震えながら泣く真理子の気持ちが分かった気がしたから…。
私は真理子みたいに無理やり襲われたことも回されたこともない…けど…真理子の立場になって考えてみた時、恨みの矛先は私に向くことは当たり前だとも思った。
私も助けを求めたのにも関わらず、あの状況で見捨てられたら…きっと真理子と同じようにその子を恨んでいたと思った。
私は…真理子に謝った。
ただ…あの時は…由美と由美の赤ちゃんのことで頭の中は一杯一杯だったことを伝えた。
真理子は由美のことを聞いた時…ビックリした顔をしていた。
真理子は由美の妊娠のことは知らなかった。
この後…真理子と1時間程、今までの由美にあったことも話し、真理子も徐々に落ち着いてきて…許す許さないではなく今回のことはお互い水に流すことになった。
『和解』と言うよりは…由美の親友同士由美の身を案じた結果だったと思う。
真理子にとっても由美は親友だった人で…過去形だとしても真理子には特別な存在には変わりなかった。
話し合いが終わり、私と美幸、真理子の3人でご飯を食べに行き、真理子とは連絡先を交換しわかれた。
真理子は、トラウマを抱えていて、暗い場所やカラオケボックスには行けない体になっていた為、普通にファミレスで食事をした。
真理子とは友達として連絡し合った。
真理子はかなりメールがマメで毎日毎日メールが届いた。
私は引っ越す準備もしながらなるべくこまめに返信した。
少しでも真理子の心の負担を軽くしたかったのもあるし、何より助けてあげられなかった分、自分に出来ることはしてあげよう…と思っていた。
真理子の件があってから…自分には悪気はなくても知らず知らずのうちに『恨みをかってしまっている』ことがあると気づいた…。
『人間付き合いって難しい』
自分の考えや気持ちをしっかりと持ちながらも他人の考えや気持ちも考えて最終的にどうするかを決めなければいけない。
それくらいは当たり前のように出来るようにならなければ自分も傷付き、相手も傷付いて終わる結果に成りかねない…。
私はこの時から
『どんなことでも、物事は慎重に』
ということを心がけ自分の為…それと私に関わる全ての人の為にいくら大変でも慎重によく考えることを欠かさなくなった。
真理子とメールをしながら自分の物を整理した。
部屋を片付けながら気づく…
結構いらないものがある。
自分の部屋の半分以上はゴミ箱行きだった…。
ある程度片付き…
私は最後の最後に机の中の整理を始めた…。
ここには…私の宝物がある…
絶対に忘れてはいけない宝物…
それは…
アゲハ姉ちゃんの遺品…。
机に隠してから5年もの月日が経っていた。
ガムテープを剥がすと…粘着部分はベタベタになっていて…手にベタベタついて剥がすのが大変だった…。
サニタリーバックに入った手帳、財布、タバコケースを出し…懐かしさを噛み締めながら段ボールではなく、いつも持ち歩いているバックに大事にしまった。
次に、ベットの下に隠した日記帳とアルバムを手に取り…また暫く眺めた。
『日記帳…』
私はお姉さんが亡くなってからこの5年…日記帳の中は見ることはなかった。
気にはなったが…私の中で、お姉さんと同じ歳になるまでは見ない…と決めていた。
一輝は『アゲハの気持ちをカズハは知る権利がある…アゲハもそう思ってるはず…見てやって欲しい』と何度か言ってきたが…。
私は何を言われても『お姉さんと同じ歳になるまでは…』とこだわっていた。
それは…
『お姉さんと同じ立場になって、お姉さんの当時の気持ちをリアルに…身近に感じたかったから』
だった。
『幼いうちに見てもきっとお姉さんの気持ち全ては分からないだろう…』
と思ったのも理由の1つだった。
『…後、2年…後2年我慢して、18才になったら見よう』
18才になったらお姉さんに会える、そう思うことにし、楽しみにしていくことに決めていた。
日記帳とアルバムは大事に段ボールにしまった。
片付けが終わり…
部屋を見渡す…
『色々あったなぁ』
今までの出来事が走馬灯のように頭の中を駆け巡った。
『明日、この家を出て曾祖母ちゃんの家に行く…』
そう考えると…少しだけ寂しくなり…ほんの少しだけ…涙が出てきた。
これからの新しい生活の為、強くいようと決めたのに…やっぱり涙を流してしまった。
『強くならなきゃ』
私は涙を拭い、段ボールを持って部屋を出た。
段ボールの数は少なかったが重さはあった為、宅急便で先に送ることにした。
荷物を送った後…母が私に久々に話し掛けてきた。
今日…何が食べたい❓
私は『何でもいい…』
と答えた。
…母に素っ気ない返事をしている…とは分かっていた…。
けれど私の心の中は…
『母の作るものなら何でもいい…母の作った料理なら何でも食べたい…』
そう思っていた。
母は…私の返事に少し悲しそうな顔をしたが、
じゃぁ…買い物に行ってくるね。
と言い買い物に出掛けて行った。
『ごめんね…気のきかない娘で…』
心の中ではそう思っていても…口に出しては言えなかった…。
何故か…最後の最後まで親には素直になれず…。
心とは裏腹に親にはいつも反発し素っ気ない態度をとってしまう…。
母の悲しそうな顔を思い出し、母がいない間に何度も泣いた。
母は、私の好きな料理ばかりを作ってくれた…。
私は母の作ってくれたご飯を食べながら…何か一言でも話せば大声で泣いてしまいそうで…涙をグッと我慢しながら黙々と食べた。
『おいしい』
と一言でもいってあげられたらいいのに…。
『反抗期って…損だ』
とつくづく感じた。
心と言葉や行動は全て逆…。
私は親と接してきた人生の中で反抗期が一番辛くて苦しかった。
きっと親も辛くて苦しかったと思う…。
けど…『心は違う』
と分かってほしい…
『けど…きっと父も母も私の言いたいことは分かってくれていたと思う』
それは…
次の日の朝、母からの手紙を見て思ったことだった。
カズハへ
こんなに早くにカズハが出て行くなんて私もお父さんも思っていなかったです。
でも、カズハは強い子だから、私もお父さんも心配はしてません。
昨日のご飯、カズハがおいしそうに食べてくれて、私は嬉しかったです。
曾祖母ちゃんの家に行ったら私もお父さんもいないからカズハが自分で何でもしなければならないのだから…しっかりね。
子供の頃から私について回って家事するのをよく見ていたし、よく手伝ってくれてたから…カズハなら自分で全部出来るよね。
カズハ頑張ってね。
それと…お父さんから預かったお金、入れておきます。
無駄使いしたらダメだよ。
手紙と一緒に入っていたのは『1万円』だった…。
いつもは…
いつもは…この何倍も手にしているのに…
いつも手にしていたお金とは違い…とても重かった…。
お金にも『価値』がある…
どんな『お金』でも変わらないと思っていた私が初めて大切にしよう…と思ったお金だった。
今…現在もこの時父から貰った『1万円』は使うことなく大事にとってある…。
このお金は『お金』ではなく私の御守りのようなものになっていた。
生涯使わず…きっと大事に持ち続けると思う。
たった『1万円』だけど…私にはどんなものにも変えられない…父の思いが沢山詰まった1万円だった。
『お母さん…お父さん…ありがとう』
手紙と1万円を握り締めながらまた涙を流した。
少しだけ目を赤くした私が曾祖母ちゃんの家についたのは夕方近かった。
曾祖母ちゃんは私を見るなり
よく来たね☺お疲れだったね☺
と言い抱きしめてくれた。
曾祖母ちゃんは昔から出迎える時は両腕広げて抱きしめてくれた。
今も昔も変わらない曾祖母ちゃんにホッと安心する自分がいた。
曾祖母ちゃんの家につき、すぐにお風呂に入った。
いつもはシャワーで済ますが、曾祖母ちゃんがお風呂を沸かしてくれていた為、久しぶりにゆっくりと湯船につかった。
曾祖母ちゃんは温泉の素を入れてくれていて乳白色のお湯と良い香りが疲れを癒やしてくれた。
思わず
『フゥー…』
とため息が出た。
いつもよりゆっくりお風呂に入り、上がると曾祖母ちゃんはお手製の里芋煮やお浸し等を作ってくれていた。
曾祖母ちゃんの料理は丁度良い塩加減で手間暇かけた物が多く、私は曾祖母ちゃんの料理が子供の頃から大好きだった。
久しぶりの曾祖母ちゃんの料理に舌鼓をうちながら全て綺麗に食べた。
曾祖母ちゃんも
誰かとこうやって一緒にご飯を食べるのは本当に久しぶりで☺カズハが来てくれてばあちゃん良かったよ☺
と言ってくれた。
ご飯を食べた後、曾祖母ちゃんの入れてくれた温かいお茶を飲みながらばあちゃんの肩や背中をマッサージしてあげた。
昔と何も変わらない雰囲気が今まで荒んでいた気持ちの片隅を癒やしてくれた。
曾祖母ちゃんの暖かい雰囲気と懐かしい家の香りが私の心を『浄化』してくれているようだった。
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🌊鯨の唄🌊②4レス 112HIT 小説好きさん
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人間合格👤🙆,,,?11レス 124HIT 永遠の3歳
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酉肉威張ってマスク禁止令1レス 125HIT 小説家さん
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今を生きる意味78レス 510HIT 旅人さん
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黄金勇者ゴルドラン外伝 永遠に冒険を求めて25レス 950HIT 匿名さん
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🌊鯨の唄🌊②
母鯨とともに… 北から南に旅をつづけながら… …(小説好きさん0)
4レス 112HIT 小説好きさん -
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人間合格👤🙆,,,?
皆キョトンとしていたが、自我を取り戻すと、わあっと歓声が上がった。 …(永遠の3歳)
11レス 124HIT 永遠の3歳 -
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酉肉威張ってマスク禁止令
了解致しました!(小説好きさん1)
1レス 125HIT 小説家さん -
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おっさんエッセイ劇場です✨🙋🎶❤。
ロシア敗戦濃厚劇場です✨🙋。 ロシアは軍服、防弾チョッキは支給す…(檄❗王道劇場です)
57レス 1392HIT 檄❗王道劇場です -
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今を生きる意味
迫田さんと中村さんは川中運送へ向かった。 野原祐也に会うことができた…(旅人さん0)
78レス 510HIT 旅人さん
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コンビニ店員、怖い
それは昨日の話 自分は小腹空いたなぁとコンビニに行っておにぎりを選んだ、選んだ具材はツナ おにぎ…
30レス 693HIT 張俊 (10代 男性 ) -
ディズニーの写真見せたら
この前女友達とディズニーに行って来ました。 気になる男友達にこんなLINEをしました。ランドで撮っ…
42レス 1277HIT 片思い中さん (30代 女性 ) -
ピアノが弾けるは天才
楽譜貰っても読めない、それに音色は美しい 自分はドレミファソラシドの鍵盤も分からん なぜ弾けるの
19レス 452HIT おしゃべり好きさん -
既読ついてもう10日返事なし
彼から返事がこなくなって10日になりました。 最後に会った日に送って、1週間後に電話と返事欲しい旨…
23レス 612HIT 一途な恋心さん (20代 女性 ) -
娘がビスコ坊やに似てると言われました
5歳の娘が四代目のビスコ坊やそっくりだと言われてショックです。 これと似てるって言った方も悪意…
18レス 499HIT 匿名さん -
一人ぼっちになったシングル母
シングルマザーです。 昨年の春、上の子が就職で家を出て独り立ちし、この春下の子も就職で家を出ました…
12レス 285HIT 匿名さん - もっと見る