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Butterfly's memoir~第2章 豪欲~
🐚はじめに…🐚
第1章 階段からの続きのお話になります。
この第2章 豪欲では、題名通り…様々な欲や罠との葛藤と戦いになります…。
この回では、『人を助けること』も勿論関係してきますが『人の恨み』も受けて行きます。
勿論…辛い現実を目にもします。
是非、最後まで読んで頂けたらと思います。
🐚ageha↔松岡一葉🐚
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いつもと変わらない朝…。
母が朝ご飯を作る音とその香り…
コポコポと鳴り砂時計⏳のようにおちるコーヒー…
いつもの変わらない風景の中…優位変わったこと…
それは…私が高校生になったこと。
新しい制服を身に纏い、新しい靴下を履き、新しい靴を出す。
全てが新しい…。
『心機一転』を肌で感じ、心が清々しくなる。
今日から新しい生活…頑張ろう。
中学では外していたお姉さんの蝶のネックレスをつけて、一輝から貰った指輪をつけて胸を踊らせながら部屋を後にした。
いつも通りご飯を食べ、
行ってきます‼
と言い家を出た。
暫く歩いて
『はっ‼』
と気がつく…
『今日から裕子の家には行かないんだ…』
少し寂しくなった。
裕子は今年から高校ではなく予備校に行くことになった。
だから今日からは別々の日々だ。
『裕子…何してるかな❓』
そんなことを考えながら、高校へ向かった。
中学よりは遠いが高校へは歩いていける距離だった為、ゆっくり歩いて行った。
高校へ行く途中、綺麗な川と並木道を通る…
並木道はの木は『桜』🌸
お花見の季節にはよくこの並木道に来ていたがこれからは毎日通る。
今はちょうど満開で…桜の花の香りと心地よい風が気持ちいい。
思わず立ち止まり、景色に見とれる。
『本当に綺麗…』
私の胸はこれからの夢と希望、期待に膨らみ、ドキドキしていた。
暫く見とれていたが、遠くから聞こえる学校のチャイムでふと我に帰り、学校に向かって走り出した。
遅刻ギリギリセーフ💦
初日から遅刻をする所だった。
生徒専用玄関につき1年の下駄箱へ行き自分の名前を探す。
『あった…』
私は急いで下駄箱に靴を突っ込み新しい上履きを履いて教室へ走った。
まだ先生は来ていないようで『ホッと』胸をなで下ろした。
教室へ入るなり、見慣れない風景にビックリした。
それは…
『男が1人もいない』からだった。
そう…
私が入った高校は優位の女子高だった。
共学も考えたのだが、自分なりに色々考えて女子高にした。
一輝がいるから彼氏はいらないと思っていたし、中学生活のことを考えるとなおのこと共学ではない方がいいと思った。
それと…
高校は恋愛ではなく友達との時間を大切にしたかった。
自分の席を探し、静かに座った。
すると、“榎本由美”が話しかけてきた。
覚えてる😃❓
『えっ💦❓誰❓』
正直、全然誰だか分からず
ごめん。どこかで会ったことある❓
と聞いた。
由美は笑いながら
だよね💦分からないよね💦カズハちゃんは全然変わってないからすぐ分かったんだけど😃うちカズハちゃんと同じ幼稚園だったんだよ‼
と言った。
『同じ幼稚園…❓』
…私はあまり良い思い出がなく、正直記憶もかなり曖昧だった為、なんて答えたらいいのか分からなかった。
私がかける言葉に悩んでいると…
私、カズハちゃんに助けて貰ったことがあって、ずっとお礼言いたいと思ってたんだけど、お父さんの転勤で卒園前に引っ越しになっちゃったから中々機会なくて…💦
と言い、幼稚園の頃の話しをし始めた。
私、幼稚園の頃結構おねしょとか酷くて💦その日もトイレに行く途中に漏らしちゃって…。困って泣いてたらカズハちゃんが自分のハンカチで足とか綺麗に拭いてくれて先生呼んできてくれて…みんなにも黙ってくれたんだよね。本当に嬉しくて。カズハちゃんと仲良くなりたいってずっと思ってたんだけどカズハちゃんいつも男の子に囲まれてたから話しかけられなくて。でも、高校が一緒で本当に良かった☺これから宜しくね☺
と言った。
話しを聞いてなんとなく思い出した…。
由美は物静かな子であまり目立たない子だった。
いつも1人でよく中庭でカタツムリと遊んだり、セミの抜け殻を集めたりしていてちょっと変わった子だった。
あまり目立たないけど人の悪口も言わないしイジメもしなかった。
私も由美と仲良くなりたいな…って思っていたけどいつの間にか由美はいなくなっていた。
由美は物静かな感じは変わっていなかったが、外見はとても綺麗になっていた。
私は、由美の話しを聞き、由美に言った。
あっ…思い出した‼私も由美と仲良くなりたいなって思ってたんだよ☺これから宜しくね☺
思い出してくれた❓良かった💨うち影薄かったから思い出してくれるかちょっと心配だった(笑)同じクラスだし、これから宜しくね☺
由美は嬉しそうに答えた。…高校に入って初めての友達ができた。
その日は午前中授業だった為、由美とランチをすることになった。
定番だが、マックに入りハンバーガーを食べた。
ハンバーガーを食べながら由美とは馬鹿話ばかりしていた。
てかカズハは『マック』って言うんだね😃(笑)
え❓なんで❓❓『マック』は『マック』でしょ❓❓
え~❓うちは『マクド』って言うよ😂(笑)
マクドー❓❓マックはマックだべ😂(笑)
こんな話しや、目玉焼きには何をかけるか…など(笑)
ちなみに私は『何でもいける派』でしょうゆでもソースでもマヨネーズでもミックスでもいける。
由美はソースオンリーらしい(笑)
久しぶりに悩みのない学生らしい時間を満喫している自分がいた。
ランチを食べた後はショッピングに出掛けた。
由美も私もファッションや化粧やスキンケアにかなり興味がある所謂『同類』だった為か好みも合った。
この日は服を見た後、○○PLAZAへ行き化粧品や小物を物色し、スキンケアに関して扱いの多いショップへ行った。
そのショップにはいい香りのするシャンプーやボディソープがあり、次々にかおりを試しながら物色した。
私はストロベリーのボディソープとボディバターを買い、由美はココナッツのボディミストを買った。
ショッピングも終わり、街をブラブラしていると…
ねえ‼今暇⁉
と1人の男子学生が話しかけてきた。
見た目は可愛い系で髪は茶髪、女の子が使うようなカチューシャで前髪を上げていた。
初めは無視していたがなかなかしつこく言い寄ってくる。
途中で頭を使ったのか…
ターゲットを由美1人に絞り始めた…
案の定、無視出来ず立ち止まってしまう由美…。
ちょっとだけカラオケ行こうよ‼俺の友達もいるし‼つーか俺の友達めっちゃカッコいいよ‼‼行くしかないって💕
と由美の腕を掴み顔を近づけノリノリで誘い続ける…
『それにしてもちょっと顔近づけすぎじゃない❓…こいつ…チカシイ😒』
そう思った私は必死に由美に向かって目で合図する…
由美もそれに気づき頑張って断っていたが…
強引さに負けて『カラオケだけなら…』とカラオケに行くのを承諾してしまった💨
『ごめん🙏』と目で合図をする由美。
ため息をつく私💨
仕方なく友達が待ってるとかいうカラオケボックスへついて行った。
カラオケボックスへつくと受け付けもせず真っ直ぐ一番奥の部屋へ…。
部屋に入ると1人でソファーに寝ている男がいた。
私達に声をかけてきた男子学生と同じ制服を着ていた。
男子学生がそいつを起こした。
おい‼寝てんなよぉ~‼まじすぐ寝んだから‼
何度か体を揺すられその男は目を覚ました。
その男を見た時、胸がドキドキした…。
その男の名前は“大山春樹゛一輝に少し似ていた。感じも似ていてかなりビックリした。
一輝より少し背は小さかったが背を抜かせばかなり似ている部類だった。
世の中、3人は似た人がいるっていうがこれだけ似ている人は初めて見た。
そして私達に声をかけてきた男は“中島翔太”。
翔太ははっきり言ったらただ単に『軽い奴』だった。
初めての対面にまずは自己紹介をした。
翔太はこのボックスでアルバイトをしているらしく、店長がいない今日は好き勝手できるからと言い、いきなり生ビールを注文した。
私は正直、一輝との付き合いで結構のんでいた。
だからお酒は強くなっていたのでちょっとの量ではあまり酔わない。
私は由美が気になり、由美の耳元で呟いた。
『由美⁉由美はお酒大丈夫なん❓』
ちょっと間を置いて由美も私に耳打ちしてきた。
『ちょっとだけなら。兄ちゃんに飲まされたことあるから大丈夫😉』
私はそれを聞き、とりあえずは大丈夫か💨と思い、促されるまま生ビールで乾杯した。
かなりの量のおつまみや食べ物を頼みテーブル一杯に並んだ。
てか、こんなに大丈夫なん❓私達、あまりお金持ってないよ❓
私がそう言うと翔太は
大丈夫😉俺と春で奢るから😉
と言ってきた。
由美が小さい声で『羽振りいいんだね』と言った。
私も正直、そう思ったが、『バイトしてる』訳だし、一輝みたいに『どちらかの親が金持ちなんだろう』それくらいにしか思わなかった。
お酒が入り、カラオケ、会話共に盛り上がってきた。
席替えをしようということになり、由美の隣には翔太、私の隣には春が座った。
隣で歌っている春を見ながら、
『本当に似てる…』
としみじみしている自分…
私は…
過去体験した同じ過ちを繰り返そうとしていた…
だが…まだこの時はそれに気がつかず、後々『後悔』することになる。
そんなことには気付かずどんどん春に引かれていった。
春は翔太と違い、硬派で口数は少ない。
私はいつも『話し役』の為、春と一緒にいても苦痛だとは感じなかったが、由美はどちらかと言うと『聞き役』の為か『春とは会話が続かない…それに…あの人ちょっと怖い…』と言っていた。
翔太は『聞き役』にも『話し役』にもなれるタイプで場を盛り上げる天才だった。
空気に任せていつも以上にのんでヨロヨロになりながらトイレへ歩く私と由美。
フワフワ浮いているような久しぶりの感覚を楽しんでいた。
トイレへ行き、ご機嫌で笑い上戸になりながら由美が言った。
ね❓うちさー、翔太好きかも…なんか話しやすいし、よく気がつくし優しくない❓❓
ん~😂いい奴かもしれないけどなぁんか軽そうじゃない❓いかにもギャル男って感じだし😂
と返事を返した。
由美は
まぁね💦彼女はいないみたい😃…てか…カズハはもしかして…春❓
と聞いてきた。
私は少し考えてから…
春かぁ…一応…私彼氏いるしなぁ…
と言った。
それを聞いた由美は『普通の遠恋じゃないんだし、身近な恋愛はした方いいよ❗男は一輝さんだけじゃないし❗カズハ可愛いのに一生涯一輝さんだけなんて勿体無いよ❗』と言った。
それを聞いた私の心は少しだけど揺れ初めていた。
そして…また悪魔が囁き始める…
『一輝にバレなければいい…バレるはずがない…』
それに由美の言う通り他の男を知ってもいいんじゃないかとも思った…。
私は一輝しか男を知らない…
一輝は私以外にも女を知っている…
『もしバレたとしても…責められる筋合いはない…』
そう思った瞬間…一輝以外の男はどんな感じなのか興味を持ち始めた。
私はよく学校では経験豊富なように見られた。
付き合った人数も『1人』だと言っても殆どの子は信用しなかった。
外見が派手目だというだけでそう見られ、経験が多いと思われる。
けど…経験が少ない子は何故か恋愛関係の話しにも誘われない。
その為かクラス内ではモテるグループ、とりあえず彼氏持ちのグループ、恋愛経験なしのグループに自然と別れた。
モテるグループは彼氏もいて尚且つ他の男にもモテている外見が良い子
とりあえず彼氏持ちのグループはモテる訳ではないがとりあえず彼氏はいる普通の子
恋愛経験なしのグループはその名称と通り外見も良くない恋愛とはかけ離れたタイプの子
という感じだった。
恋愛経験なしの子は性格は良いし明るい子も沢山いたが男受けは悪かった。
普通に彼氏持ちの子は彼氏にはまりまくりで毎日彼氏と一緒にいる感じに近い。放課後は必ず彼氏とデートな子が多かった。
モテるグループは彼氏のみにはまらずとりあえず男受けはいい為かナンパは勿論、合コンにも休みなしで行くような子の集まりだった。
私と由美はモテるグループに入っていた。
誰がグループ分けをしているのかはさっぱり分からなかったが、自然とそんな感じになっていた。
由美と私は少し酔いを覚ましてからトイレを出た。
部屋へ戻ると…
何やら翔太と春が揉めているのが分かった。
私と由美は部屋に入りにくくて部屋についている小さい窓から中の様子をジッと見ていた。
春はソファーに座っているが翔太はかなり切れていて春の目の前に立ちはだかり春の胸ぐらを掴みながら何かを一生懸命叫んでいた。
次第に翔太の怒りはピークになり…
翔太が春を殴った。
『ヤバイ💦』
そう思った私と由美は急いで部屋へ入り翔太を止めた。
ちょっと‼翔太‼何してんの⁉
翔太の振り上げられた腕を両手で力一杯掴んだ。
由美も『ちょっと落ち着いて💦』と言いながら翔太を宥める。
翔太は『んだょっ💢』と一言吐き捨て私の手を振り払って自分の席へ戻って行った…。
ねぇ💨何があったの❓
無表情の春に静かに聞いた。
春は…
お互い酒入ってんだから。単なる酒の勢い。別に何があった訳じゃないから。
とだけ言った。
私はちらっと翔太を見た。
翔太は『ちげーだろ💢』と言いたいようなオーラが体からメラメラ出ていた…。
暫らく沈黙が続き、音楽だけが部屋に響いていた。
由美の
『私、そろそろ帰らないと。今日の所はみんな帰ろ…』
の一言でみんな無言で席をたった。
部屋を一番始めに出たのは春…伝票を持ち足早に歩いていった。
春は1人で全部支払いをした。
会計は…45000円…
春は驚くことなく支払いをし、そのまま何も言わず外に出て行った。
翔太と由美を待ち、一緒に外へ出たが…春の姿はなかった。
翔太は春の話題には触れず、『今日の埋め合わせは必ずするから』といい由美と携帯番号の交換をし謝りながら帰って行った。
この時私は携帯はまだ持っていなかった為、連絡先を交換する場合は全て由美に任せていた。
この日は由美と2人で黙って帰宅した。
次の日、由美は少し落ち込み気味で学校へ来た。
由美❓どうした❓なんか元気ないじゃん❓
そう話し掛けるといきなり由美は机に伏せて泣き始めてしまった…。
ちょっと💦由美❓どうしたの💦❓
いきなりのことで周りにいた子もビックリして由美に注目した。
何も言わない由美を連れてとりあえず屋上へ行った。
暫く泣いていた為、1時間目はそのままサボった。
ねぇ❓由美💦❓大丈夫❓どうしたの❓
由美が落ち着いてきたのを見計らって聞いてみた。
すると、由美がポツリポツリと話し始めた。
昨日…カズハと別れた後…彼氏からワンコールがあって……かけ直したの……。
何度かけても出なくて…。門限まで…まだ少しだけ…時間があったから…彼氏のアパートに行って見たの………。鍵あけて入ったら…………中学の時の親友と…やってた…。
そこまで話すとまた泣き始めてしまった…。
由美の話しによるとその後かなりの修羅場になったらしく、彼氏とは別れた…ということだった。
帰宅後、その親友から連絡があり、『話し合いたい…』というので逃げるのも勺だし結局、学校が終わった後に話し合いをすることになったらしい。
由美は、勢いから話し合いを受けてしまったけど心細いからついてきて欲しい…と言ってきた。
『由美1人では話し合いは無理だな…』
と判断した私は話し合いに一緒に行くことにした。
因みに…由美の彼氏も来るらしい…。
終始落ち着かない様子の由美を宥めながら、なんとか学校も無事終了し、待ち合わせ場所まで急いだ。
待ち合わせ場所には由美の彼氏と親友がもう来ていた。
なんとも言えないギクシャクした空気の中…ゆっくり話し合いたい…ということからカラオケボックスで話すことになった。
🐚お詫び…🐚
私の物語を読んで頂いている皆様…先程は横レスをしてしまい本当に申し訳ありませんでした。
読んでいる方々に読みやすいように、自レスのみの設定を致しました。
ご感想やご意見はButterfly's memoir感想ご意見版として新たにスレを立てたいと思っています。
今後とも、暖かく見守って頂けたら…と思いますのでどうぞ宜しくお願い致します🙇🐚
横レス本当にすみませんでした🙇
部屋へ入り、私と由美、由美の彼氏と親友に別れて座った。
ソファーへ座ってすぐ、由美の親友の“真理子”が私に話し掛けてきた。
あの、部外者はちょっと困るんですけど。3人で話しさせてもらえませんか❓
私が話しをしようとすると、私を制止して由美が話し始めた。
うちが呼んだんだしあんたに関係なくね❓あんたが偉そうに口出すことじゃないんだよ。
真理子は何も言わず足を組みながら『ハァ…』とため息をつき携帯を弄り始めた。
それを見た由美がキレた…。
つーかあんたから呼び出したくせにろくに話しもしないで携帯なんか弄ってんじゃねーよ‼
そう叫び真理子の携帯を取り上げ思いっきり壁に投げつけた…
『バンッ…カラカラ…』
携帯の電池が外れ携帯がバラバラになった…。
あ゛⁉てめー何してんだゴラッ⁉ふざけてんじゃねーよ⁉‼
真理子が由美に掴みかかり由美を思いっきり殴った…
『バンッ✋』
由美も負けじと殴り返し、真理子と由美の殴り合いになった。
ちょっと‼ちょっとやめなよ‼‼話し合いに来たんでしょ‼殴り合いしに来たんじゃないんだから‼
私は必死に由美と真理子を引き離した…
その様子をビックリしたように眺めているだけの由美の彼氏の“剛”…
引き離した後、平然と観戦している剛に腹が立ち、私は剛に怒鳴りつけた。
ちょっと‼あんた‼元はと言えばあんたが浮気したのが原因でしょ⁉なんとか言ったらどうなのよ‼
いや…つーか…俺、関係ねーし…
剛の言葉に呆れ、
関係なくないでしょ⁉由美と付き合ってる癖に由美の親友とやったんでしょ⁉何が関係ない訳⁉
剛は暫く黙っていたが、『あ゛ーもうまじめんどくせー』と一言吐き捨て、耳を疑うような話しをしてきた…。
つーかさ‼俺、どっちも本気じゃねーし‼俺、別に本命いるし。こいつらがしつけーからやってやっただけなのになんで俺が責められねーといけねぇ訳⁉こんなめんどくせーことになるなら始めからやらなかったつーんだよ‼
まじ、俺、そんなに暇じゃねーし、もう話しねーから‼
勝手にやってろよ‼
そういい、ズカズカと部屋を出て行ってしまった…。
私も由美も真理子も何が起こったのかを理解するまでに時間がかかり…暫く呆然としていた。
何も言わない由美と真理子。
2人共魂が抜けたように体に力が入っていない。
そこに…
終了時間10分前のコールが鳴り、2人共やっと体を動かした。
由美…❓大丈夫❓
ぅん。。。
由美…帰ろうか。
ぅん…。
それだけ会話をすると私は由美だけを連れて会計をし店を出た。
由美は声をあげることなく、涙だけを流してボーっとしながら歩いた…。
私は由美を支えながら家まで送って行った。
次の日…由美は学校には来なかった。
その次の日も…またその次の日も…
何度か由美に電話をかけてみたが…電話には出てくれなかった…。
由美はこの事件の後から学校には全く来なくなった。
『相当ショックだったんだろうな…』
そう思い、『暫くそっとしておこう…』そう思った。
由美が学校を休んでる間、私は携帯を持ち始めた。
とりあえず、由美にはメールで携帯を持ったことを伝えた。
返事は返っては来なかったが、1日に数回は由美にメールを送った。
内容は『元気にしてる❓』や『今、何してた❓』などなるべく簡単な内容にした。
学校の件や彼氏の件は由美の気持ちを複雑にするだけだと思い、色々気にはなったがなるべく出さないようにした。
由美がいなくなった後に仲良くなったのは“美幸”だった。
美幸は優しくて明るくて一緒にいるだけで落ち着いた。
私と美幸は学校帰りに翔太と遊ぶようになった。
この時、翔太はもう春とは付き合っていなかったらしく別の友達をよく連れてきた。
いつも通り学校帰りに翔太グループと待ち合わせし、ご飯を食べに行く途中…
由美を見掛けた…
由美は髪の色は金髪に近い色になり、緩めに巻いていた。
服装もギャル系になり肌の色も黒くなり昔の面影はあまりなかった…。
ただ…由美の携帯についている私と同じストラップ…このストラップは由美の手作りでカラフルなビーズとハイビスカス🎀がたくさんついていた。
そのストラップを見て由美だと確信した。
別に春とは付き合ってる訳ではないし、私は由美とただ話しがしたかった…。
でも、美幸と翔太に『今は止めた方がいい。』と止められ、その日は由美とは話せないままご飯を食べに行った。
由美が『元気だったこと』には安心したが、変わりすぎてしまった姿に何故か気持ちはモヤモヤしたままで…。
ご飯を食べた後、気分が乗らないから…と美幸と翔太、翔太の友達に謝り私は家に帰った。
家に帰った後もモヤモヤしたものはなくならず、由美の姿を思い出せば思い出す程、モヤモヤしたものは増して行った。
私は由美にメールをしてみることにした。
『今日、由美を偶然見たんだけど。由美、変わったね。もう学校は来ないの❓』
と送った。
『どうせ…返事は来ないだろう…』そう思ったけどメールせずにはいられなかった。
寝る時間になり、携帯を見たがやはり由美からの返事はなかった。
『ハァ…』
私はため息をつきながら布団に入った。
『ピリッピリッピリッピリッ…』
夜中に携帯が鳴っているのに気づき目を覚ました。
携帯に目をやると…
それは由美からの電話だった。
はい‼もしもし‼
私は急いで電話に出た。
あっ…もしもし❓カズハ❓由美だけど。今大丈夫❓
うん‼大丈夫‼…由美、最近どうしてたの❓元気❓
由美は私の言葉には返事をせず、
カズハは❓
とだけ聞いてきた。
私の方は相変わらず。最近、美幸と仲良くなって翔太達とよくご飯食べたりしてるよ。
と言った。
そうなんだ💡翔太かぁ…うちは翔太とはもう連絡してないから。翔太は元気❓
うん。いつも通り…。ねぇ❓由美…春と一緒にいたみたいだけど春と付き合ってるの❓
由美はその質問にも答えず…いきなり無言になってしまった。
由美❓何かあるなら言ってね…。相談位しか乗れないけど…。
私は黙ってしまった由美にそう伝えた。
由美は電話ごしで泣いているようだった…。
暫く電話を繋いでいたが、由美の方から『ごめん…また…連絡する』と一言だけいい電話を切ってしまった。
『由美…様子がおかしかった…。どうしたんだろう…』
私は由美の様子が気になった…
それは…
裕子のことを思い出したからだった。
女は男から暴力を受けていたり何かされていたりしてもハッキリとは言わない。
男が怖いから…何かされるから…又は『その男が好きだから』男を庇ったりする。
暴力を振るったり、浮気をしたりする男はそうゆう行為をした後、必ず優しくする…女はそれに騙され、調子を狂わされ、期待をもってしまう…。
裕子と亮の件があってから、私はそうゆう男と付き合っている女の態度にかなり敏感になってしまっていた。
裕子と重ね合わせた時、
『由美は…何かされてるんじゃないか…』
そう思い、この時から春に疑いを持ち始めた。
朝、早速翔太に電話をした。
朝早くごめん。ちょっと翔太に聞きたいことがあるんだけど…。今日2人だけで会えない❓
え❓あぁ別にいいけど。どこに何時❓
…放課後まで待てないんだ…今から○○のファミレスに来れない❓時間的に制服だとまずいから私服で来てほしい。
え❓まじで❓ん~…じゃぁちょっと友達に学校休むって連絡してから行くから。なるべく急いで行くけど、もしあれなら先入ってて。
うん…ごめん。じゃまた後で…。
待ち合わせをして電話を切った。
私は翔太と話し終わった後、すぐに美幸に電話をかけ、『今日は学校休む』と伝え、先生にも伝えてくれるように頼んだ。
美幸はズル休みだと気づいたみたいだったが、『たまには息抜きも必要ね(笑)』などと笑い電話を切った。
この時、
『携帯は便利だな…』
と携帯に感心した(笑)
親にはバレないように私服をカバンにしまい制服のまま家を出た。
そのまま駅に向かい、駅内のトイレで私服に着替えた。
着替えた後、いつもよりも少し濃いめに化粧をし、携帯用のコテで髪を巻きアップにした。
靴もヒールに履き換え、財布と携帯だけを持ち、カバンごと駅のコインロッカーへ入れた。
結構時間がかかってしまい、急いで待ち合わせ場所へ向かった。
待ち合わせ場所に行くと翔太が先に来ていた。
翔太‼ごめん。ちょっと時間かかっちゃった。
俺もさっきついた所だから別にいーよ💡で❓どうしたん❓
……あのさ、春のことなんだけど…
春❓何❓もしかして春のこと好きだとか❓
翔太がにやけながら聞いてきた。
いや。違う。違うけど。…ちょっと…春のこと色々教えて欲しいんだけど…。
翔太は『ハッキリ好きだって言えばいいのにぃ~』などと言いながらも春のことを詳しく教えてくれた。
春はお父さんと2人で住んでいて、お父さんは『ヤクザ』らしい。家庭環境はかなり悪く、中学の時には放火や窃盗、暴行、様々な事件を起こし鑑別に入っている時間の方が長く…今も『保護観察官』所謂『保護司』がついているらしい。
…それを聞いて由美の言葉を思い出した…。
初めて春に会った時、由美は春のことを『怖い』と言った。
私は…ただ単に春が一輝に似ているからと春をいい人だと思い込んだ…。
『似ているからいい人』
…単なる馬鹿な思い込みにすぎないのに春はいい人だと微塵も疑わなかった。。。
一輝の時も同じ…
『お姉さんに似ているから…好き』
…それを思い出した瞬間…自分の本当の気持ちが分からなくなった。
本当の真実も見えなくなってしまった。
『一輝は本当にいい人…❓』
一輝と一緒にいた時間を信じたい…
でも、『お姉さんに似ているから』という思い込みから始まってしまっている分、
『本当に好きなのか…』
すら分からなくなってしまった。
『外見から入る思い込み』は恐ろしい…と気づいたのはこの時だった。
現に『単なる軽い奴』だと思っていた翔太はかなり優しくていい奴で全然軽くはなかった。
『由美の方が私よりもしっかり人を見ていた…』
…でも、そんな由美が何故春と連んでるのかが分からなかった。
翔太の話しによると春にはかなり年上の彼女がいるらしく、由美とは付き合ってはいないとのことだった。
『じゃぁ…あの由美の態度は何…❓』
『なんで…春の話しをさけてるの…❓』
『なんで泣いていたの…❓』
翔太に話しを聞けば何か分かるんじゃないか…と思っていたのに、話しを聞けば聞く程頭の中は混乱した。
『いくら似ていたとしても他人は他人…』
私はそう割り切り、翔太に『私の思っていること』を全て話した。
割り切る前は…正直、春を信じたい気持ちの方が強く、翔太にも思っていることを話そうかどうか迷っていた。
それと…『春に嫌われたくなかった』
だから春に関しては全て綺麗事を並べて春に嫌わないように努めていた…。
外見で『全て』を判断している自分を『未熟』だと思った。
そんな私の話しを翔太は真面目に聞いてくれた。
私が由美との電話の話しをし終わったくらいに翔太が何かを思い出し、私に話してきた。
あっ❗そう言えば、今、春停学中なんだった❗最近関わってないからすっかり忘れてたけど💦
え❓なんで停学になっちゃったの❓
いや💨なんか他校の奴をボコって病院送りにしたらしい💨次なんかやらかせば退学らしいよ💨
そうなんだ…。その事件っていつの話し❓❓
ん~❓ちょっと俺詳しく知らないから春とまぁまぁ仲良い奴に聞いてみるよ💡
翔太はそう言い、電話をかけに行った。
暫くしてから翔太が帰ってきた。
ごめん💡聞いてきた💡春が停学になったのは1ヶ月くらい前で、ボコられた奴は○○高校の“藤木剛”って奴だってさ💡
…“藤木剛”…………………
それは由美の元彼の名前だった…。
『まさか…』
私の頭の中で由美に対して良からぬ思いが渦巻いた。
『まさか…由美が春にやらせた…❓』
…私はそれ以降、事実を知るのが怖くなって黙り込んでしまった。
事実を知ったら…
『私は由美とは友達ではいられなくなる…』
私は、高校に入って初めて出来た大事な友達を失いたくなかった。
でも…
『事実を知りたい』
友達を失いたくないはずなのに、私の気持ちはそれとは逆のことを思っていた。
それと…『由美は関係ない』そう信じたい自分もいた。
話しを聞いた翔太は、
どんなに嫌なことでも知らないよりはマシ。俺も色々聞いてみるから…。また何かあれば何でも言って。分かることなら何でも教えるから。
と言ってくれた。
この日は翔太と由美がいたあたりを暗くなるまでブラブラした。
『もしかしたら由美に会えるかも』と期待もしていた。
けれど…この日は由美には会うことは出来なかった。
その日から…
私の生活は変わった。
学校が終わると友達とは遊ばず真っ直ぐ帰宅し、私服に着替えて足早に街へ行く…
そして…
由美を探す…
そんな日々が1ヶ月位経った頃…
家にある人から電話がかかってきた。
その電話をかけてきた人物…
それは…
裕子だった✨
久しぶり☺元気にしてた☺❓
久しぶりに聞く裕子の声…
うん☺元気☺裕子は❓勉強は順調☺❓
あ~(笑)予備校は辞めたの💡
え❓❓なんで❓なんで辞めちゃったの❓❓
その質問に裕子は少し照れたように答えた。
実は…悠太先輩と結婚したの☺
えー⁉まじで⁉⁉⁉
うん☺それと…
何❓まだ何かあるの⁉⁉⁉
☺それと…今、妊娠5ヵ月なの✨
えー⁉⁉まじで⁉⁉
私はビックリさせられっぱなしで電話中は終始叫びっぱなしだった。
『できちゃった結婚』所謂『でき婚』だった。
裕子は、今までのこともあるしでき婚は親の為にもしたくないと思ったけど、悠太先輩と話し合って産む決心をした。
それと…
『今、凄く幸せだ』
と言って本当に幸せそうにしていた。
私は『今まで嫌な思いを沢山して、苦労してきた分絶対に幸せにならなきゃダメだからね😢』という言葉と
『おめでとう💖』
という言葉をかけた。
裕子は泣きながら喜んでいた。
後で悠太先輩含めて会う約束と、携帯番号を交換して電話を切った。
久しぶりのお目出度い報告に胸が踊った✨
過去の私は赤ちゃんは『怖いもの』でしかなかったけど、裕子からの連絡を貰い、裕子が凄く嬉しそうに幸せそうにしているのを見て
赤ちゃんは『幸せの象徴』かもしれないな…と思えた。
最近はずっと笑えない日々が続いていた為か少しだけ『気分転換』できた。
過去同様…またまた裕子に助けられ、感謝している自分がいた。
裕子と久しぶりに話した次の日からも相変わらず由美を探しに街へ出た。
由美には、メールや電話は毎日していたが、返事が返ってくることも由美が電話に出ることもなかった。
由美の家にも電話をしてみたが、由美の親は
せっかく電話してくれたのに…悪いんだけどもうあの子はうちにはいないんで…
それしか言わなかった。
由美と会うには自力で探すしか道はなく…
それでも私は諦めることなく、毎日、毎日由美を探しに行った。
この日も由美を探しにいつも通り家を出て由美がいそうな場所をブラブラしていた。
途中、お腹が減ったのでミスドに入りご飯を食べていると…
『あれ⁉』
遠目に由美っぽい女の子がチラッと見えた。
その女の子の隣には中年の男の人がいてまるで恋人同士のように腕を組みながら歩いていた。
『え⁉由美じゃないのかな⁉』
隣にいるおじさんを見て由美じゃないかも…とは思ったが、信号が青になり重なっていた人がまばらになり見通しがよくなったところで…
『やっぱり由美だ』
そう確信した…。
私は食べている物もそのままで走って店を出た。
由美を見失わないように…由美に気づかれないように…由美の後をつけた。
由美とその中年の男の人は人気のない路地裏に入って行った。
路地裏の先には人気の無い自転車置き場と線路下の小さいトンネルがあった。
『…由美…こんな所で何を…』
由美を見失わないように目で追った。
暫くすると…
反対側から5人の若い男が歩いて来るのが見えた。
それを黙ってみていると…
男達が由美とその中年の男の人を囲み何やら揉めているようだった。
男の中の1人が中年の男の人の胸ぐらをつかんだと思った瞬間…………
『オ゛ラ゛ッ‼‼』
と言う怒鳴り声と共に中年の男は殴られその場に倒れ込んだ。
倒れ込んだ所に他の男も参戦し殴る蹴るを繰り返し始めた。
すみません‼すみません‼やめて…下さい…ぃ‼許して…下さい‼
中年の男は半泣き状態で謝り続けている。
それを殴る蹴るしながら笑って見ている男達…
すみません‼すみません‼もう…許して下さい‼
中年の男はボロボロにやられながらも土下座をしている…
『…由美は⁉由美も危ない…‼何とか…何とか助けなきゃ‼』
咄嗟にそう思った私は由美を探し始めた。
だが…暗くて視界が悪いのも重なりどうしても由美を確認することが出来ない…
それでも目を凝らして由美を探した…
そんな中、男達は倒れ込んだ中年の男から財布を奪い取り現金やクレカなどを抜き取り始めた。
そこに…
奥から由美が出てきた…
『良かった‼由美…無事だった‼』
胸をホッと撫で下ろしたのも束の間…
…目を疑うような光景が飛び込んできた…。
由美が………
その男達の中の1人から……先程中年の男から奪い取ったお金を………
受け取った………。
お金を受け取った由美は慣れた手つきでお金を数え始めた…。
『嘘……あの…由美が❓…』
私は…ただのその場の勢いで…由美の元に走っていた…。
由美‼由美‼何してんの‼
私は走りながら由美に向かって叫んだ。
ビックリしたように私を見る由美と男達…。
……男達の中に見覚えのある顔……
さっき由美にお金を渡した若い男は……
春だった………
由美の目の前まで走り、由美の腕を掴み泣きながら由美に言った。
由美‼ねぇ由美‼帰ろう‼こんな奴といたらダメだよ‼
由美は私から目を逸らしたまま何も答えてはくれない…。
由美ぃ……お願い…‼
私がそう叫んだ時…
サラリーマンの男の人とエプロンをしたおばさんが
ちょっと‼そこ‼なにしてる‼‼‼
そう言いながら走ってきた…
春達は勢いよく逃げていき、
由美も………
私の手を叩き落とし…お金を持ってにげた…………。
私は由美に叩き落とされた手の感覚を感じながら暫く立ち尽くしていた…。
私は…サラリーマンの男の人に腕をがっしり掴まれ、エプロン姿のおばさんに体を取り押さえられた…。
その後…私はパトカーに乗せられ警察署へ連行された…。
…親や学校の先生も呼ばれ…散々絞られた。
警察の話しを聞きながら気づいた…
由美や春がしたこと…
それは…
『オヤジ狩り』…
私は由美のことだけを伏せて今までのことを全て話した…。
やられた中年の男の人の話しもあり、私は仲間ではないことは証明できたが…
学校から出た処分は…
『無期停学』…
だった…。
落ち込んだまま家へ帰り、自分の部屋へつくなり翔太に電話をかけ、今まであったことと『無期停学』になったことを伝えた。
翔太は私を慰めながらも『春は元々…そうゆう奴』『元々、オヤジ狩りで稼いでるという噂はあった』と言った…。
私は春と初めて会った日のことを思い出した…。
カラオケの会計…45000円…
…春が何故いつもお金をたくさん持っていたのか…
…それが分かった瞬間だった…。
春は『オヤジ狩り』の常習犯だった…。
春は…お金持ちなんかじゃなかった…
単なる『犯罪者』だった。
翔太とは明日会う約束をして電話を切った…。
私は、翔太と電話を切った後…由美に連絡をしようか迷っていた…。
それは…
まだ由美に手を叩き落とされた事実を受け止められなかったから…
私は…涙を流しながら苦しんでいた…。
『由美…由美ぃ…どうして………』
私はこの時初めて…心を許した友達に裏切られた。
過去同級生に裏切られたりイジメられたりされたことはあるが…そんなこととは比べものにならない程ショックだった…。
叩き落とされた手を見ながら…暫く考えた結果…
私は、由美に連絡をすることに決めた。
それは…まだ私の中で納得がいかなかったから。
由美が自ら犯罪をしたとは思えず最後の望みを託し由美にメールを送ることにした…。
これが…
これが最後…。
私のことを『お人好し』と馬鹿にする人もいるかもしれない…
でも…私の心の中を、
『友達を信じたい』…友達の前に…
『『人を信じたい』』…
そんな気持ちが覆い尽くしていた。
いつものようにごまかしのメールではなく、はっきりと自分の気持ちを伝えようと思った。
メールの内容は…
『今日あったことに関して由美に聞きたいことがあります。私は、由美のことを未だに信じたいと思ってる。もし…私のことをまだ友達だと思っているなら…いつでもいいから、連絡下さい。由美からの連絡待ってます。』
…由美が私のことを少しでも…友達だと思ってくれてるなら…
必ず連絡をくれる…
私は祈るようにメールを送信した。
この日から私の生活圏は主に自宅になった。
親も…事件があってから私の行動に敏感になり、私は自由に出掛けることは出来なくなった。
翔太と会う時もマンションから見える範囲…それか私の部屋になった。
由美からは連絡がないまま…
私も無期停学のまま…
夏休みに入った。
夏休みに入ってすぐ、翔太から一本の電話がきた。
あのさ…俺の友達の“康彦”覚えてる❓
康彦❓…あぁ…あのちょっとホスト系の人❓
そうそう(笑)そいつから聞いた情報なんだけど、由美ちゃんが○○のパブで働いてるらしいよ💡
え……それって…確実な情報…❓
多分ね💡康彦自体、先輩につれられてキャバとかクラブとかよく言ってるらしいから。…で、どうする❓会いに行ってみる❓
…ちょっと考えさせて。また連絡する。ありがとう。
電話を切った後…会いに行くべきか…もし、会いに行くとしてもどうやって夜外出するか…
暫く何もせず考えていた。
親は日中でさえ外出は自由にはさせてくれない…
夜間なんてもっと無理…
かと言って…このまま由美をほっとく訳にもしかない…
私は、由美を『見捨てること』はしたくなかった。
由美の自宅に何度か連絡をした時の親の言葉…
『死んだ時にはさすがに連絡くるだろ』
…電話の最中に後ろから聞こえた父親の声。
由美は『見捨てられてる』
私はそう感じた。
だから親は探しもしない。
これじゃ由美がどんどん悪い方向へ引きずり込まれてしまう…。
『誰かが止めなきゃ』
そう思っていた。
考えた末…裕子に協力を求めることにした。
裕子に電話をし、由美のことや今の私の状況を伝えた。
そうゆう訳で…どうしても由美に会いに行って話しだけでもしたいんだ。
そっか。分かった💡じゃぁ…とりあえず今から家電に電話するから。
裕子はそう言い電話を切った。
電話を切ってすぐ家電が鳴った…。
予定通りお母さんが電話に出る。
『あらぁ💡裕子ちゃん❓久しぶりだねぇ…うん…うん…そうなの❓うん…うん…悪いわねぇ…じゃぁカズハにも何か持たせるわね…いいのいいの…じゃぁ今カズハに変わるわね…』
カズハ~❓裕子ちゃんから電話‼
予定通り、裕子と少し会話をし電話を切った。
電話を切ってすぐ母が話してきた。
裕子ちゃんの家で結婚祝いがあるんだって❓そうゆうことはちゃんと言いなさいよぉ💨何も用意してないじゃないっ💨今からちょっと買い物行ってくるから、裕子ちゃんに持って行ってあげなさい。
うん💨ごめん。色々あって言うの忘れてた。今日は裕子の家に泊まりになるから私のご飯はいらないから。
はいはい。裕子ちゃんは身重なんだから迷惑かけないようにね。
うん。分かった。
母と話し終わり自分の部屋へ戻った。
部屋へつくなり裕子にお礼のメールをした。
『裕子、本当にありがとう。今日、用事が済んだら行くからね』
裕子からは
『了解💡友達とちゃんと話しできればいいね💡カズハが来るの待ってるね💡』
だった。
そのメールを見ながら、
『これが最後のチャンスかもしれない…絶対由美と話す…』そう思った。
裕子にメールを送った後に翔太に電話をかけ、『今日、由美に会いに行くから案内して欲しい』と頼んだ。
翔太は『いいよ💡康彦も連れて行くから。』と話し、待ち合わせの約束をして電話を切った。
私は裕子の家に泊まる準備をし、母が買ってきたプレゼントを持って家を出た。
翔太との待ち合わせ場所に行く前に駅のコインロッカーにプレゼントとお泊まりグッズを預けた。
そのまま真っ直ぐ待ち合わせ場所へ着き、翔太と康彦が来るのを待った。
翔太と康彦は待ち合わせ時間よりも10分くらい遅れてきた。
ごめんごめん💦バイトがなかなか終わらなくて💦
そうなんだ。別に大丈夫だよ。…それより…早く由美の所に案内して…。
そう言うと康彦が『じゃぁ…ついてきて』そう話し、繁華街へ歩いていった。
繁華街へ入ると…
ホストがキャッチをしていたり、カラオケボックスの看板やチラシを持った店員が呼び込みをしていたり…私達よりも確実に若いだろう…と思うような子が路上に屯していたり…。
どこを見ても人だらけで昼間のように明るかった。
そんな景色から少し落ち着いた飲み屋街になった位に康彦が立ち止まって『あそこの店だよ』といい指さした…。
店の看板を見て…また落ち込む自分がいた。
『おっぱいパブ』… 通称『オッパブ』…。
『ハァ………』
ため息しか出なかった。
暫く、店の様子を伺っていると、店から何人かの客とスケスケの服を着た女が数人出てきた。
その女達の中に由美はいた。
由美は…前よりも痩せて顔は窶れているように見えた。
私が行こうとすると…
翔太が私の腕を掴み『俺が行く』そう言い店に向かって歩いて言った。
階段を上がろうとしている由美を翔太が呼び止めた…
由美は笑顔で翔太と何かを話しているようだ。
暫くすると…由美が店へ戻って行った。
『やっぱりダメだったのかな…』
そう思った時、
翔太が私達に向かって腕で大きな『○』を作り合図を送ってきた。
それを見て康彦が
多分、由美ちゃんと話しは出来るってことじゃない❓もうちょっと様子見てみよう。
と言った。
私は黙って頷き翔太と店の方をジッと見つめた。
翔太がタバコを2本吸い終わった頃…
由美が私服に着替えて降りてきた。
そのまま翔太に腕組みすると翔太と由美が歩き出した。
カズハちゃん、行くよ。
康彦に急かされながら由美に気付かれないように後を追った。
翔太と由美は店から程近いカラオケボックスへ入って行った。
カラオケボックスに入ってすぐ康彦の携帯にメールが入った。
メールの相手は翔太。
『受付には後で2名来るって伝えてある。俺の名前で部屋取ってあるから💡宜しく』
それを見て私と康彦も店へ入った。
翔太の名前を伝えると『2○5号室になります。』と案内され、私と康彦は2階へ上がって行った。
部屋を覗いて見ると…
由美と翔太が楽しそうに話しをしながら乾杯していた。
カズハちゃん、行くよ。
私は康彦に手を引かれて部屋に入った。
…一瞬にして凍りついたように会話が止まった。
何…これ…❓翔太⁉どうゆうこと⁉
私を見た由美が叫んだ。
翔太は
カズハとちゃんと話すべきだって。由美のせいでこいつ停学にまでなったんだぜ⁉
と少し怒ったような口調で答えた。
それを聞いても由美の怒りは収まらず
ふざけないでよ⁉うちのこと騙しといて‼
そう言うと翔太に先程まで飲んでいたお酒を思いっきりぶっかけた。
つっめてぇ…
翔太がおしぼりで服を拭き始めた。
それを黙って見ていた康彦がキレた。
つーかよ‼元はと言えばてめーがわりぃんだろ⁉人に迷惑ばっかかけといて自分何様だと思ってんのや‼いい加減にしろや‼
それを聞き出て行こうとする由美の腕を掴みソファーに思いっきり投げつけた。
『ドサッ…』
話ししねーなら帰さねーから。
康彦はそう一言いいドアの前に1人用ソファーを移動させどっしりと腰をかけた。
由美はソファーに倒れながら康彦に向かって
てめー‼後で何されても知らねーから。私にはバックがいるんだからね‼
などと叫んでいた。
暫くは由美の興奮も冷めず、怒声が響き渡っていたが、次第に落ち着き始めた。
私は由美が落ち着くまでは一言もはなさず冷静に話しが出来るまで待ち続けた。
やっと由美が落ち着いた頃…私から話しを切り出した。
由美…。落ち着いて聞いて欲しいんだけど。由美…なんでそんなに変わっちゃったの❓何があったの❓
…カズハには関係ない。お節介ならよそでやって。
…お節介なのは自分でも分かってるけど、由美のことどうしてもほっとくこと出来ないんだよ。
だから‼それが余計なお節介だっつってんの‼
由美との話し合いは暫くはこの繰り返しで…なかなか由美の本音を聞くことは出来なかった。
こんな話し合いが続く中、康彦の一言で由美の態度が変わり始めた…。
あのさ、由美ちゃんって俺が何も知らねーとでも思ってる❓
一瞬…ほんの一瞬由美の顔つきが変わったのが分かった。
…はったりこくのもいい加減にしてよね…あんたが私の何を知ってるっつーの❓
康彦はその質問に冷静に答え始めた。
由美ちゃん、何にも知らないんだね。つーかあそこらへんにあるオッパブ合わせた数件の風俗店は俺の兄ちゃんの店なんだよね。だから、由美ちゃんが働き始めた経緯もすぐ調べがつくって訳。由美ちゃんが話さねーなら俺が代わりに経緯話してやってもいーけど❓
『…え⁉まじで⁉』
私は由美よりも先に翔太に聞いていた。
翔太⁉まじなの⁉⁉
翔太は頷きながら『だから康彦は詳しいんだよ(笑)先輩っつーのも兄ちゃんの知り合いで、あそこらへんの情報はなんでも簡単に聞けちゃう訳(笑)』そう笑いながら言った…。
康彦は黙っている由美に話しを続けた。
それと、由美ちゃんが言ってる『バック』つーのも知ってるよ。春樹の父ちゃんでしょ💨❓けど、残念ながら俺の父ちゃんは春樹の父ちゃんより上だよ。俺の父ちゃんに頼んで店辞めさせてやってもいいよ。で、どうする❓
…それを聞いた由美はいきなり泣き始めた…。
この時、私は康彦をマジマジ見ながら世の中、やっぱり『見掛けじゃ分からない』…
それと…
世の中『上には上がいる』ということを改めて実感した。
康彦はただのホスト系の遊び人だと思ってたのに…実際は高校卒業後には夜の店を数軒持つらしく一輝とは違う世界でのお金持ちだった。
暫く由美は泣いていたが、私を見ながらゆっくりと話しを始めた…。
ごめん。カズハ…うち…春と取引したの…。
取引って❓何の取引❓
………うちね、剛がどうしても許せなくて…私の要望を聞く代わりに…私は春に協力をして……毎月お金を払うって…約束したの。ただ、その代わり……お父さんに頼んで…十分な生活と今まで以上の贅沢をさせてくれるって……約束だったの…。
初めは…早くお金を払って…早く終わらせよう…って…思ってたんだけど………段々…贅沢が辞められなくなって…どんどん『欲』が出て…。気付いた時には簡単に手に入るお金と…そのお金欲しさに『欲』が止まらなくなって…。犯罪だって分かってても簡単に…やるようになってた……。カズハは巻き込んじゃ行けないと思って…無視してた…。…本当にごめんなさい…。
由美は話し終わるとまたもの凄い勢いで泣き始めた…。
私は由美の隣に座って静かに聞いた。
由美が払わなければいけないお金って❓後…いくらあるの…❓
由美は小さな声で答えた…。
後……100万くらぃ………。
『ハァ…』
ため息しか出なかった。
ねぇ❓康彦…お金って支払いしなきゃいけないの❓
私は康彦に聞いてみた。
康彦は
『どうゆう話しでその金額になったのかは分からないけど、証書が取られてるならバックレるのは微妙かも。何か証書は書いた❓』
と由美に聞いた。
由美は黙って頷き、ポーチから一枚の紙を出し康彦に渡した。
その紙には
『金銭貸借証書』
と書かれていて、
証書にはこと細かに利子率等が書かれ、『甲』『乙』と言う名称があり、『甲』の部分には春樹の父親の事務所と春樹の父親の名前と印鑑、『乙』には由美の名前と由美の自宅住所と印鑑、連帯保証人の欄には由美のお父さんの名前と印鑑が押してあった…。
康彦は証書全てに目を通すと…一言
やられたな。
と言った。
やられたって❓❓
私が聞くと…
多分、由美ちゃんは春樹に頼み事をする代わりに手間賃を支払うって解釈してたのかもしれないけど、この証書見る限り、由美ちゃんがお金を借りたってことになってる。この証書があれば実際裁判しても由美ちゃんには勝ち目はないよ。…このお父さんのサインと印鑑はどうやって手に入れたの❓
由美はまた小さな声で話し始めた。
家…出て行く時…賃貸契約書と一緒に出して…サインしてもらった…。お父さんは賃貸契約書の一部だと思ってる…。
…康彦は由美の話しを黙って聞いていた。
暫く考えていた康彦がため息混じりで
サインも…印鑑もお父さん本人のって訳か…。
『ハァ…』
この金に関しては利子含めて全額払わなきゃいけないかもな…。
と言った。
それを聞いた私は、
なんで❓そんなの違法じゃん⁉だって騙されたんだよ⁉
と言ったが、
康彦は
いくら騙されたって言ってもこの証書には偽造とかの不正もないし、ちゃんと本人達のサインと印鑑も押してあるし、本来ならこうゆう証書は全てに目を通してからサイン捺印するのが常識なんだよ。由美ちゃんだけのサイン捺印なら未成年との金銭貸借契約だから無効に出来るかもしれなくても由美ちゃんのお父さん本人のサイン捺印が入ってる限り簡単には取り下げは出来ないんだよ。
と言った…。
それに…由美ちゃんはもう学校辞めて社会人として働き始めてるでしょ。しかも…春と最近籍入れたよね❓もう未成年じゃなく…契約とかに関しては大人と同じ扱いになるんだよ。
と続けた…。
『え…籍入れたって…どうゆうこと…学校…やめたって❓…』
私は由美の方を黙って見た…
すると…由美は申し訳なさそうに私に言った…。
カズハ…ごめん…。うち…春の赤ちゃんがお腹にいるの。…妊娠したって分かった時…どうしたらいいのか分からなくて…カズハに電話した…でも…カズハには…どうしても話せなかった…。夏休みに入る一週間前に…学校は退学した…。。。
そう言うとまた涙を流しながら俯いてしまった…。
私は思考回路が停止して、何を話たらいいのか…分からなくなって、黙り込んでしまった。
カズハ…ごめん…‼
そう言い泣きながら謝る由美に振り絞って出た言葉は…
春のことちゃんと好きなの❓好きだから赤ちゃん出来たんだよね❓
だった…。
由美は………
ごめん…。好きで出来たんんじゃない…。お酒の勢いで…。でも…私には…怖くて勇気がなくて…中絶も出来なかった…。お金もかかるし…だから…出来なかった…。
と言った…。
もう…中絶出来ないの❓
と聞くと…
ごめん…。毎日飲んだり遊んだりしてて…赤ちゃんいるのに気がつかなくて…。気付いた時には12週過ぎてた…。12週過ぎると…死亡届け出さないと行けなかったり…お金も倍かかるみたいで…春にそんな金出してられないから黙って産めって…言われた…。
と…。
…振り絞っても…一生懸命考えても…何も言えなくなり…私の口からは次第にため息しか出て来なくなった。
その話を黙って聞いていた翔太が
今日は…帰ろう…。
と静かに言った。
私も由美も頷き、私は由美に聞いた。
今日はどうする…❓春の所に帰る…❓
由美は…
今日は…帰りたくない…本当は…いつも帰りたくなんかない…。
と言った。
私は裕子に事情を話し、今日は裕子の家に泊めてもらうことにした。
康彦とは今後の相談もあった為、番号等を交換して別れた。
店を出る前に、軽く由美の化粧を直し、駅まで行き、荷物を取って、悠太先輩が迎えに来るのを待った。
待っている間に由美とはこんな話をした。
由美、お腹に赤ちゃんいるのに全然分からないね。
うん…。前より痩せた位。けど赤ちゃんは大きくなってたよ。それに、お腹が出て来るのは結構ギリギリにならないとみたい。
そうなんだ(笑)私なんかてっきり赤ちゃんできたらすぐお腹出るもんだと思ってた(笑)
由美もそれを聞いて『私もそう思ってた(笑)』と言って笑った。
私は由美が笑っているのを見て、昔…一緒にランチをした時のことを思い出した。
また由美とこうやって笑いながら話が出来ることを心から喜んでいた。
暫くすると悠太先輩の車が目の前に止まった。
そして、
カズハ‼カズハ😃‼
と大きな声で手を振った。
悠太先輩⤴‼‼
私も悠太先輩に負けないくらい大きな声で叫び悠太先輩の車まで由美の手を引き走った。
悠太先輩‼結婚おめでとう☺⤴
ありがとう☺あっ‼それより(笑)裕子がまだかまだかってうるさいくらいでさ(笑)待ちくたびれてるから早く家行こう(笑)話はまた後で☺
うん☺‼
私と由美は悠太先輩の車に乗り、裕子と悠太先輩の新居に向かった。
悠太先輩と由美の新居は4LDKの庭付き一戸建てだった。
新築でとても綺麗で…。
『ピンポーン…』
ベルを押すと
『ハーイ⤴』
という元気な声が聞こえてきて勢いよくドアがあき、裕子が私に抱き付いてきた(笑)
カズハァー⤴⤴久しぶりぃ😚⤴よく来たね😚⤴会いたかったよぉ⤴
そう言いながら抱き付いてきた裕子は健康的に太っていてお腹もかなり出ていた(笑)
あれぇ⤴裕子⤴太ったんじゃない(笑)❓
意地悪そうに言ったら
(笑)も~😚⤴てか(笑)子豚だよ(笑)子豚(笑)🐷14キロも太っちゃって(笑)
といい大口あけて笑い出した(笑)
14キロ~😂⤴凄いね😂⤴でも可愛い子豚だね🐷(笑)
と笑いながら裕子との久しぶりの再開を楽しんだ。
ほら。2人共、早く中入って下さい☺
と悠太先輩に促され家に入った。
リビングへつくと…
テーブルの上には沢山の美味しそうな料理と飲み物がいっぱい並んでいた。
裕子が私達の為に大きなお腹で作ってくれていた。
裕子😢✨ありがとう😢⤴こんなに沢山😢大変だったでしょ😢✨
全然😃いつもは悠太が作ってくれてるからたまにはね😉あっ💡由美ちゃんがお腹に赤ちゃんいるってさっき悠太から聞いたから、即席だけどお鍋も作っておいた☺食べれるといいんだけど☺…
と由美を見て言った。
由美は、
私、体質のせいなのかつわりがあまりないんで何でも大丈夫です☺
と裕子に話した。
そっか☺なら良かった☺つわりがないなんていいなぁ⤴羨ましい‼
などと話しながら、みんなで裕子が作ってくれた料理を食べた。
ご飯を食べながら、やはり話しは『赤ちゃん』の話題になり盛り上がった☺
裕子は、由美と比べてお腹が随分デカいんだな💦とは思っていたが、裕子のお腹には赤ちゃんが2人…『双子』だった☺⤴
悠太先輩は『一度に2人の父親になれちゃうんだから頑張らねーと⤴』と張り切っていた☺
裕子❓もう性別はわかってるの❓
と聞くと裕子は笑いながら
あー(笑)一気に家の中が男臭くなる感じ(笑)しかも(笑)2人共おチンチンなの(笑)(爆)😂💡
と言い笑った😂
えー😂2人ともおチンチンかぁ😂
と私もつられて笑った😂
由美もその会話を聞いて爆笑していた😂
本当は女の子が欲しかったんだけど…この際、おチンチンでもいっか(笑)と思って(笑)😂
裕子が話す度に笑いが起こった。
楽しい時間はあっという間に過ぎ…
悠太先輩は仕事がある為、先に寝ることになり『後は女の子同士で楽しんで😉裕子、あまり無理するなよ😉』と言い寝室へ上がって行った。
裕子は『チャイ』というインドかどこかの甘くてミルクの入ったいい香りの温かいお茶を作ってくれた。
3人でお茶しながら、話題は由美の今後の話しになった。
裕子は同じ妊婦として由美の体をずっと心配していたようだった。
お茶をしながら裕子は何か言いたそうにしていたが、由美と目があったのをきっかけに…話し始めた。
由美ちゃん、赤ちゃんの為にも、今の仕事は辞めないとダメだよ。由美ちゃんは好きで作ったんじゃなくても赤ちゃんには何の罪もないんだよ。由美ちゃんは…もう親なんだよ…。もう少し、しっかりしなきゃいけないんだよ。弱音なんか吐いたって誰も助けてくれないし、助けてあげられないんだよ。そのお腹の母親は由美ちゃん1人なんだから…。由美ちゃんが頑張って守って頑張って産んであげるしかないんだよ。
裕子が強い口調で由美に言った。
心配だからこそ強い口調になってしまう…裕子の気持ちが痛い程分かった。
由美も…裕子の気持ちは分かっているようだった。
私は由美を暫く見つめていた…。
由美が唇を『キュッ』と噛み締めながら涙ぐんでいる…由美の気持ちも痛い程分かる…だから由美を見ていて余計辛くなった。
『なんでこうなってしまったんだろう…』
人っていつ罠にはまってしまうか分からない…罠にはまったら…逃げられない。
後戻りは出来ないから頑張るしかない。
『後戻り…出来たらいいのに…』
由美の涙が…凄く哀しげに見えて私は思わず話し始めていた。
由美もきっと分かってる…けど体の変化と気持ちがついていかないだけ…。今はそっとしておいてあげたい。裕子の気持ちも痛い程分かるけど…。由美は…支えてくれる人は誰もいないから…ずっと1人だったから…支えがない分、弱くもなっちゃうんだと思う…。裕子には悠太先輩がいるけど、由美には誰もいないから…。由美も1人で精一杯苦しんで…精一杯頑張ってきたんだと思う。
裕子が少し涙目になりながら言った。
分かってる。由美ちゃんの気持ちはちゃんと分かってるよ。私も今まで色々あったから…。でも、由美ちゃんには絶対に負けないで欲しい。諦めないで欲しい。頑張って欲しい…。
それを聞いた由美がか細く涙混じりの声で
ありがとう…それと…ごめんね………。本当に…馬鹿で…ごめん…。
と静かに言い涙を流した。
小さい小さい声で涙混じりでまだまだ頼りないけど、もう由美は大丈夫だって思った。
私が由美を探さなくても、由美はもういなくならない…一度は由美に裏切られたけど、私はもう一度由美を信じることにした。
どんなことをしてしまったとしてもやっぱり由美は私の大事な友達だから…。
この時、私の中でもう1つ新たな決心が固まりつつあった。
明日…由美を家に送ったら……
『春に会おう』
春がどんな奴でももう怖くなかった。
話し終わった後…みんな涙でベチョベチョになりながら、川の字に並んで寝た。
私は真ん中で、由美と裕子と手を繋いで寝た。
裕子も過去一度は命を絶とうとした…けど今は幸せになってる。
『由美もきっと幸せになれる…』
私は由美の為に出来ることは諦めないで全てやってみようと思った。
裕子と由美の寝顔を見ながら、
『友達っていいな』
と思った。
私はもう由美の手も裕子の手も離さないと決めた。
『何があっても私は2人の友達でいよう…2人にどんな変化があっても信じよう』
私は何故か幸せだった。
それと…いつもは、由美からいつ電話がきても起きれるように…と神経を使っていたせいか夜中に何度となく目が覚める日々だったけど、この日は久しぶりに安心して眠ることができた。
次の日…
朝起きると美味しそうな味噌汁の匂いがした。
裕子は先に起きてご飯を作っていてくれた。
最近は…色々あって朝は殆どご飯を抜いていた私は久しぶりにゆっくり朝ご飯を食べた。
由美も…
こんなにゆっくり朝ご飯食べたのは…実家にいた時以来…
と言いながら何か懐かしいものを思い出しながらゆっくり噛み締めているようだった。
『…そうだよね…私達…まだまだ子供だもんね…。』
この時…私達は16才…。この歳で実家に頼ることも帰ることも出来ない由美…。きっと想像以上に無理してきたんだと思う。
『いつか…由美が家族とまた仲良くできますように…』
私はそれまで頑張って由美を支えようと心に決めた。
裕子にお礼を言い、悠太先輩には仕事に行く途中の駅まで送ってもらった。
駅から由美のアパートは歩いても行ける距離だった為、ゆっくり歩いて行くことにした。
久しぶりにゆっくり由美と並んで歩き、ゆっくり話す…
由美は昔の由美に戻っていた。
アパートに行く途中、薬局に寄り髪の色を戻すカラーリング剤を買い、デパートに寄り新しい服を買った。
服は全てマタニティ用…
私…形から入るタチだから…(笑)
と照れ笑いをしながら、話す由美。
そんな由美を見て、本当に諦めないで良かった…と思った。
私も由美に似合いそうな洋服を選び、由美が気に入って見ていた赤ちゃんの産着を由美に黙って買い由美にプレゼントした。
由美は本当に喜んでくれた。
由美のアパートへつき、由美の髪を染め直した。
由美は仕事のことや…春のこと…お金のこと…色々気にしていた。
仕事のことは私から康彦に連絡を入れると言い、他のことはこれからゆっくり考えて行こう…と由美には言った。
私が春に会う…と言ったら心配させてしまうと思ったから由美には話さなかった。
この時、由美の家で今現在の春のことについて由美から少し話しを聞くことが出来た。
学校はもう既に退学しているということ、春は週末に少しだけ由美のアパートに顔を出し、生活費を数万円置いて行くということ、春は前の彼女のマンションへ未だに住んでいるということ…。
由美の話しから、その彼女のマンションの場所も部屋番号も分かった。
私は由美の髪を洗い、買い物へ行き、昼と夜のご飯を作り、仕事の件も含めまた連絡することを約束し由美のアパートを後にした。
由美の家を出てすぐに康彦に電話した。
由美のことを辞めさせてくれるように話しをし、今日の夕方私の家近くで会う約束をし電話を切った。
その後、翔太に電話をし、今から春に会いに行くことを話した。
つーか…1人で行くん❓何あるかわかんねえし俺も行くよ。
と翔太は言ってくれたが、私は春とは2人で話しがしたい、と言い、夕方4時までに私から連絡がなかったら…春のマンションまで人を連れて来てくれるように頼んだ。
翔太は最後まで反対していたが、半ば強引に納得してもらい…私は1人春のマンションに向かった。
春のマンションへつき、エレベーターに乗り込んだ。
春の住んでる階は8階…の803号室…。
8階へつき、一呼吸おいてからベルを押した…。
はい…。
『女の人の声…』
あの…こちらに大山春樹君がいるって聞いてきたんですけど…。春樹君はいますでしょうか…❓
『ガチャ…』
ドアが開き、30代くらいの女の人が出てきた。
その女の人は私のことを上から下まで舐め回すように見ると私に言った。
今、春はいないよ。何の様❓
あの、大事な話しがあるんで、もし、すぐ帰ってくるようであれば待たせて頂きたいんですが…。
…どうぞ。
女の人はそれ以上は何も聞かず部屋にあげてくれた。
部屋に入ると、右側にベビーベットが置いてあり…
小さい小さい赤ちゃんがスヤスヤと寝ていた…。
赤ちゃんから目が離せずジーッと見つめていると…
赤ちゃん好きなの❓
と女の人が聞いてきた。
私は、『赤ちゃんが好き』という訳ではなく、『赤ちゃん』がいたことにびっくりしていただけだったが…
はい…。
と返事をしていた。
それを聞いた女の人が、
その子、先月産まれたばかり。春の子
…………あなた春のことで話しあるって言ってたけど…あいつまた誰かはらましたんでしょ❓違う❓
と聞いてきた…。
『この女の人は全て知ってるんだ…』
そう思い、今までの春のこと、由美のことを全て話した。
女の人は…黙って静かに聞いてくれた。
話し終わったくらいに
『ピンポーン…』
ベルが鳴った…。
春かと思い、少し緊張していると…
大丈夫、春じゃないから。
その女の人はそう一言いい玄関へ歩いて行った。
暫くすると…
1人の男の人があがってきて…私に丁寧にお辞儀をしてきた。
私も深々とお辞儀した。
その男の人は赤ちゃんが寝ているベビーベットの前まで行き…優しい顔で愛おしそうに赤ちゃんの体を『ポンポン』と叩き始めた。
私が不思議そうにその光景を見ていると…
春とは別れるから。だから、安心して。私は近々この部屋出て行くから。
と…話しをしてきた。
え⁉あの…それってどうゆう…
私がそこまで言った時、赤ちゃんをあやしていた男の人が話しをしてきた。
こいつと俺、結婚するんだ。もちろん…この子は俺の子として大事に育てる。こいつは今まで頑張ってきたから。俺がこいつも子供も守ってくって決めたんだ。子供を無事出産したら、春樹とは別れてここも出るって元々決めてたんだよ。
私は黙って聞いていた。女の人も…それ以上は何も言わなかった。
女の人は、春は女にも手あげるような奴だから、話し合いの時は一緒にいてくれる…と言ってくれた。
女の人の名前は香苗さん、香苗さんの彼は湊谷さん。
2人共、凄く優しくて、親身になって色々相談に乗ってくれた。
翔太に
『心強い味方が出来たからもう大丈夫。話し終わったら必ず連絡するから待ってて。』
とメールを打ち春が来るのを待った。
昼1時を過ぎた時…
『ガチャッ…』
玄関が開き、春が入ってきた。
春は赤ちゃんには見向きもせず、私と湊谷さんがいることにも驚きもせず、ソファーに『ドカッ』と座った…。
座るなり赤ちゃんがいるのにタバコを吸い始めた。
それを見た湊谷さんが無言で春のタバコとライターを取り上げ、春が吸ってるタバコを消した…。
春は
『ハァ………』
と深いため息をつき、私に向かって…
何の用❓
と一言いった…。
私は、由美のこと、仕事のこと、お金のこと、今後の生活のこと…全てにおいてどうするのかを聞いた。
春は一瞬面倒臭そうな顔をしながら答えた。
由美のことは籍だって入れてやったし、ガキだって産むことには納得してっし、生活費に関しては毎週由美に渡してる。金の件は、俺の親父との話しになるから俺の一存じゃ決めらんない。金の件で話しあんなら俺の親父に話しつれば❓
と…。
私は、
じゃぁ…春のお父さんに会う。それしか方法ないなら話しする。いつ❓
と春に聞いた。
春は
じゃぁ、明後日。お前の学校近くの大通りまで迎えに行くから。時間は後で連絡する。
と言った。
その後、『由美と赤ちゃんのことをしっかり面倒見て、悲しませるようなことは絶対にしないで』と言い、香苗さんと湊谷さんにお礼を言ってマンションを出た。
マンションを出てすぐ翔太に電話をかけた。
明後日、春のお父さんと話しをすることを話すと翔太は必死に止めてきた。
『けど…もう後戻り出来ないから…やるだけやってみる…』とだけ伝えた。
夕方、康彦にも春のお父さんと話すことを話したが良い反応は帰っては来なかった。
ただ、何かあった時の為に、康彦の方も当たれる場所には当たっておいてくれる…と言ってくれた。
それと…由美の仕事の件はちゃんとお兄さんに話しをしてくれて今までの給料は後で康彦が持ってきてくれることになった。
家に帰宅後…
由美とメールをした。
仕事は無事に辞められたことと、後で康彦が今までの給料を持ってきてくれるから由美に持っていくことだけを伝えた。
由美からは、『安心した。ありがとう。迷惑ばかりかけてごめんね。。。』と返事がきた。
そのメールを見ながら、『明後日…ちゃんと話しつけないと…』と思いながら私は少しの恐怖と…少しの不安と戦っていた。
春の父親がどうゆう人なのか全く知らない分…話し合いの進め方や予想がつかず、頭の中で色々な場合を想定して考えを巡らし続けていた。
春のお父さんに会う当日…。
私は裕子の家に遊びに行くことにし、自宅を出た。
大通りに出ると、春はもう来ていた。
春が乗ってきた車に乗り込み、ある一軒のクラブについた。
外は明るいのに…店の中は夜のように暗く、昼間なのにお客さんがいた。
お客さんはお酒をのみながらカラオケをしたりしていた。
春に
ここで待ってて。
と言われ、カウンターの席へ案内された。
席に座ると着物を来た綺麗な人がお茶を出してくれた。
その人はここのママさんだと自己紹介してくれた。
それと…
私のことは『聞いている』と言い、『悪いことは言わないからこうゆう世界には関わらない方がいい…今すぐ帰った方がいい…』とだけ言いお店の奥に消えて行った。
ママさんが奥に入ってすぐ…春に店の奥の個室に案内された…。
個室へ入ると1人の白髪混じりの細身の男の人がお酒を飲んでいた。
スーツこそ着てはいなかったが身につけている物は高級品ばかりで、どことなく貫禄があり…異様な雰囲気を醸し出していた…。
『多分…これが春のお父さんだな…』
私はなんとなく直感でそう思った。
その男の人は私を見るなり
話しがあるっていうのはお前か❓
と話しかけてきた。
はい。由美の友達の松岡と言います。
…由美の友達か。ここに座れ。
目の前のソファーを指差した。
私は黙って座った。
春に聞いた。金のことで文句があるらしいな。
文句じゃありません…。由美は、お金は借りてません。春に騙されたんです。
息子が何を騙したんだ❓
…由美の頼みを聞く代わりにお金を払うと約束したのは確かです…。でも…由美はお金は一銭も借りてません。
じゃあなんでこれがある❓
…そう言いあの『金銭貸借証書』の紙を出してきた…。
それは…確かに由美が書いた物です。でも…由美はその証書の意味が分からないでサインしてしまったんです。だから…その証書に記載されたお金に関しては由美は一切払う義務はないと思います。
『フハハハハハハ…』
私の話しを聞いた春のお父さんが笑い出した。
その瞬間……
私の胸ぐらを掴み
っんな理由が通るとでも思ってきたか⁉このガキが‼‼‼
と大きな声で叫び私を思いっきり自分の座っている場所まで引きずり込んだ…。
そして…
ぶっ殺されねーとわかんねーか‼
と言い近くにあったガラスの灰皿で私の横のテーブルを思いっきりぶっ叩いた…
『ドカッ……ガチャーン……』
ガラスの灰皿は半分に壊れ、その割られた灰皿を私に突き出しながら
あ゛ゴラッ‼このガキが‼
と怒鳴り散らしながら私のことを壁に向かって投げつけ、また胸ぐらを掴み投げつけを繰り返した…。
『ビリッ…ビリッ…』
投げつけられる度に私の服は音を立てて破れた。
膝は擦りむけ…掴まれた辺りの肌は引っ掻き傷などで赤く腫れ上がり血が滲む…。
腕や手も擦りむけ…次第に肉が見え始めた…。
私が必死に耐えていると、春のお父さんがいきなり手を離し、
逃げ出すなら今だぞ‼警察にでもどこにでもいきてーならいけ。
と言った。
私は…『今逃げ出しても何も変わらない…まだ話しは済んでない…』咄嗟にそう思い…首を横に振りその場を動かなかった。
動かなかった…というより体はボロボロで…何度も何度も引き摺られ壁にぶつけられ…
それを延々と1時間以上やられたことですっかり体力はなくなり動くこともままならない状態だった…。
でも…このまま帰る気はない…だから動けなくても構わなかった…。
オラッ‼さっさと帰れっつってんのがわかんねーか‼
それでも私は首を横に振り続けた。
そんな私を部屋にそのままにし…春のお父さんは出て行った…。
1人部屋に取り残された私は…悔しさと自分の非力さで胸が一杯一杯になった…
私の目からは…勝手に涙が出てきた。
『なんで…あんな奴に…あんな腐った人間にこんなにされなきゃいけないの‼…』
悔しくて悔しくてボロボロになりながら泣き続けた。
暫くすると…
ママさんがおしぼり数本と救急箱と一枚のワンピースを持って部屋に入ってきた。
そして…
だから…言ったのに…
と静かに呟き…私の体の傷の手当てをし始めた…。
すみません……。
私はそれしか言葉が出せず…声を必死に押し殺しながら泣き続けた。
大人の世界や…ヤクザの世界は、子供が考えている程…甘くない。
私はここまでの恐怖と命の危険を今まで感じたことがなかった…
だから…甘い考えを抱き『話せば分かってくれる』そう思っていた。
現実は…そんなに甘い物ではなかった。
痛くて…怖くて…苦しくて…辛くて…。
現実を目の当たりにしてやっと気づく…世の中…綺麗事で片付く程甘くない…
特に…
『お金』に関しては…………。
汚いお金でもお金はお金…。
春のお父さんは『お金に関しては一銭たりともごまかしなく払ってもらう』と言っていた…と後から春に聞いた…。
私は…それを聞き、クラブのママさんに頭を下げた。
『私のことを…ここで雇って下さい…』
と…。
春のお父さんに目をつけられた私が自分で考え下した結論だった。
私は、『春の父親みたいな大人には絶対に負けない』と半分意地にもなっていた。
『あいつには負けない』
ママさんは、事情が分かってる分、すんなり私を雇ってくれた…。
歳はお姉ちゃんの保険証を借り、お姉ちゃんになりすまし働くことにした。
『そんなに金が欲しいなら耳揃えてくれてやる』
春のお父さんに次に会うときは由美共々、縁を切る時…そう心に決め、私は夜の世界に足を踏み入れた。
ママさんと連絡先の交換をし、働き始める日にちについては後日連絡すると約束し店を出た。
ママさんが持って来てくれたワンピースは綺麗なピンク色で丈は少し長めだった為、うまく傷等を隠すことが出来た。
私は、裕子にある頼み事をする為に裕子の家に向かった。
裕子には今まであったことを包み隠さず話し、『暫く…裕子の体調が悪いから裕子の面倒を見る為にたまに裕子の家に泊まること』を親に話すから…話しを合わせて欲しい…と言った。
裕子は快く私の頼みを聞いてくれた…でも…『夜働くことには反対だ』とずっと言っていた…。
『裕子…ごめんね…』
私は、心の中では謝りながら…『夜働くことに関しては考えを曲げる気はない』と強く言い切った…。
何かあったら、すぐにうちに来るんだよ…。
裕子は私にそう言い、手を振って送ってくれた。
その後の夏休み中は学校のこともあり、自宅で大人しく過ごした。
夏休み明けてすぐ学校から呼び出しがあり、母と一緒に学校へ向かった。
停学の解除と共に誓約書を書かされ、その日は帰宅した。
誓約書の内容は…
『次回、何か問題を起こした時は退学又は自主退学の指示を受けること』
だった。
私は次の日から久しぶりに学校へ通うことになった。
勉強に関しては自宅で学習はしていた為、休み明けのテストに関しては今までの順位をほぼ落とすことなく親の条件はクリアすることが出来た。
学校に通い始めて2週間…私が出掛けても親は何も言わず落ち着いてきた。
『そろそろ…ママさんに連絡しよう…』
そう思い始めた頃…
翔太から久しぶりに電話が掛かってきた。
久しぶり💡元気だった❓
うん💡学校にも復帰して落ち着いてきた所…。
そっか💡つーか、さっきうちのバイト先から連絡きたんだけど…春が由美ちゃんと数人の男と制服着た女1人連れて部屋に入ったきりらしい。部屋の窓には内側から上着とかで目隠しされてて中の様子も見れないらしいんだよね。由美ちゃんから何か聞いてる❓
……何も聞いてない…。
私は何か胸騒ぎがして『ちょっと由美に電話してみる‼』そう言い急いで電話を切り由美に電話をかけた。
だが…由美の携帯は何度電話をかけても留守電になった…。
私は翔太に電話して『今からカラオケ行くからすぐに来て‼』とだけ言い、美幸に学校を早退することを伝えてカラオケボックスまで走った。
私がついてすぐ翔太も来た。
どこの部屋⁉
翔太はカウンターへ行き
前に入ったことがある一番奥の部屋だって‼
と言った。
私と翔太は部屋に走って行った。
部屋の中からは…
爆音で音楽が鳴っていてそれは部屋の外まで丸聞こえになっていた。
翔太の電話での話し通り…部屋の窓という窓には内側から目隠しがされ、ドアも隙間なくジャケット等で覆われていた…。
『イヤァァァ…助け…て‼やめて…ぇぇ』
そこには…
数人の男がタバコを吸う中…
女の子が1人…制服を剥ぎ取られ鼻血を流しながら…
2人の男に回されていた…。
『いたぃ…あっ‼やめてぇ…‼んっ…イヤァァァ…ダメぇ…イヤァァァ‼中はやめてぇぇ‼アッんっ』
女の子が必死に抵抗しながらそう叫んだ瞬間…
その女の子に覆い被さり腰を振っていた男が果てた…。
その男が息を荒くしながらこっちをゆっくりと見た…
『春………』
それは…春だった。
春はその女の子の制服で自分のものを拭くと…
なんだ❓お前ら。
と冷めた口調で一言いった。
そんな春を見ながら
『由美…由美は⁉』
由美を探した…。
由美はドア近くのゴミ箱の横で耳を塞いでうずくまっていた…。
由美‼由美‼
私は由美の名前を叫び由美の手を引っ張った…
すると、春が
由美、お前はここにいろ。
とタバコを吸いながら言った…。
由美⁉ダメだよ…由美‼お願いだから、私と行こう…‼由美‼
何度も由美に叫んだ…。
由美は私の手を掴みながら震えていた…。
そんな遣り取りをする中…
制服の女の子は他の男に次々とやられ続けていた…。
『助けてぇー‼‼お願い‼助けて‼‼』
女の子が泣きながら私のことを見て床を張ってくる……
この時…女の子の顔を見て気づいた…。
回されていた子は由美の中学時代の親友の“真理子”だった…。
そんな真理子を見ながら男達は笑いながら引きずり戻しバックからついたり好き放題している…
『とにかく…何とかしなきゃ‼』
私は泣きながら由美に叫んだ。
由美‼早く‼‼
翔太も由美の手を引っ張った。
由美は春を見ながら
春…ごめん…
そう一言いうと私と翔太と走って店の外へ出た…。
翔太は私達を店の外のファミレス内に非難させると…
『店に現状知らせて、警察にも連絡してくる』
と言いまた店に戻って行った。
由美はギュッと目を閉じて涙を流しながら震えていた…。
正直…
私はこの時…また由美に裏切られるんじゃないか…と思ってドキドキした…。
でも『何があっても手を離さない、何があっても信じる…』と心に決めたのを思い出し…必死になっている間にその気持ちが涙になって…気づいた時には由美の手をかなりの力で掴み由美の名前を叫んでいた…。
由美は…春じゃなく私についてきてくれた…。
私は由美の手を握り締めながら涙を流した。
暫くすると…
パトカーが3台来て…
春と男達6人…それと真理子が女の刑事さんに連れられパトカーに乗せられていった…。
私と由美はそれをガラス越しに…目を逸らすことなく…ずっと見つめていた…。
私はその光景を見ながら、昔のことを思い出していた…。
昔…一輝とカラオケへ2人で入り…一輝に告白された時のことだった。
あの時は…カラオケボックスは『安全』だと疑いもしなかった。
この世の中、『安全』な場所なんてない。
と、この時気付いた。
春が連れて行かれ…哀しげにしている由美を1人でアパートに帰す訳には行かなくて…
この日は私の家に連れて帰ることにした。
少なからずアパートよりは私の家の方が『安全』…。
この時の判断は間違いではなかった…と次の日になって痛感することになる…。
次の日…私は学校を休み、人通りが多い昼間の時間を狙い由美の家に着替え等を取りに向かった。
鍵を開けようとした時…
鍵が開いていることに気づく…。
私と由美は恐る恐るドアを開け部屋を覗いた…
由美の部屋は…全てグチャグチャになっていて引き出しという引き出しからは物が散乱し…荒らされていた。
私はそのまま警察へ連絡し…
2時間程の事情聴取を受け、春の件も警察へ伝えた上で暫くは私の家に非難させることになった。
部屋を軽く片付け、必要な物だけをまとめて部屋を後にした。
警察からは鍵を変えるだけではなく、引っ越しをした方がいい…と言われた。
由美はそれを聞いて黙って頷いていたが…そんなお金はもう由美にはなかった。
私は、由美の身の安全の為、暫くは私の家に置き、その間に由美の親と話し合ってくることにした。
由美は嫌がるだろうが身重な由美をあのアパートに帰すことの方が後々何かと危険だし大変だろう…と思った。
それに春が捕まった今、由美の生活費や家賃を払う術がない…。
もし、由美が本当に嫌ならしっかり子供が落ち着いてから自立すればいい…今は子供の為にも実家に身を置くことが一番だと思った。
私は学校に通いながら放課後は毎日由美の実家へ行き、由美の親が話しを聞いてくれるまで粘った。
その甲斐あってか由美のお父さんもお母さんも私の話しを聞き入れてくれるようになった。
ここまで来るのに約3週間かかった。
ただ…話しは聞いてくれるようにはなったが由美に関してはどうなろうが自業自得だと言い、なかなか首を縦には振ってくれなかった。
それでも私は由美のことを必死にお願いし続けた。
またこのお願いする日々が約1ヵ月程続き…
やっと由美のお父さんが由美が帰ることに納得してくれた。
泣きながら喜んでお礼を言う私に由美のお父さんは…
お礼を言いたいのは私達の方だよ…。本当は…由美のことが心配で心配で…。お母さんなんか心配し過ぎて精神的な負担からか…体中に湿疹が出たりして…。由美の話しがあった時…すぐにでも由美のこと引き取りたかった…けど、長い間のこの頑固な性格だけは…どうにもならなくてね…。明日にでも…由美のことを連れて戻ってきて下さい。どうぞ…どうぞ宜しくお願いします…。
と涙組ながら頭を下げた…。
私は由美のお父さんとお母さんを見ながら…
『やっぱり…由美のお父さんとお母さんなんだ…』
って思った。
どんなにどうしようもない子供でも…どんなに問題だらけの子供でも…どんなことをやらかしても…
『大事で大切な子供には変わりない。』
家族って…凄い絆で結ばれてる…。
『もう…由美の帰る場所はある…もう由美は1人なんかじゃない…』
誰よりも由美のことを考えてくれるお父さんとお母さんがいる…
私は由美のお父さんとお母さんに由美のことを支えてくれるように頼み、深々と頭を下げた。
家に帰ってから由美に実家へ帰るように話した。
由美は始めは『嫌だ』と言っていたが、私がお父さんとお母さんのことを話すと…
お母さん…体大丈夫なの…❓お父さんは…❓もう、湿疹は治ったの❓
と涙ぐみながら聞いてきた。
もう、大丈夫だよ。由美が家に帰ってくるからすぐ治るってお母さん涙流しながら笑ってたよ…
それを聞いた由美も涙を流しながら
『カズハ…ありがとう…。うち、明日帰るね…。お母さんの側にいてあげたい。』
と言った。
私は由美のことを抱き締めながら『良かったね』と言った。
この日は由美をゆっくり休ませる為に早めに眠りについた。
次の日、由美は私の親に深々と頭を下げ挨拶をし、由美と2人で由美の実家へ向かった。
家へつくと、由美のお母さんが泣きながら由美を抱き締め声を詰まらせながら
お帰りなさい…由美…
と言った。
ただいま…お母さん…ごめんね…お母さん…
と由美も涙を流しながら小さな声で言った。
私はアパートの契約や片付けの件、解約の手続きのことだけ伝えて静かにその場を後にした。
『後は……後は…お金の件だけ……』
私は自宅に向かいながらママさんに電話をかけた。
明日からでも…大丈夫です。怪我も治りましたから。宜しくお願いします。
分かった。じゃぁ保険証のコピーと、簡単にでいいから履歴書書いて夜7時にお店に来て…。
はい…。宜しくお願いします…。
短い電話だった…。
電話が終わると、コンビニへより履歴書を買い家へ帰宅した。
履歴書を書いた後、あらかじめコピーしておいた保険証を履歴書の封筒に一緒に入れバックにしまった。
明日から自分の知らない世界に入る…
ただ、不思議と不安や怖さはなかった。
春のお父さんにされたことに比べれば全然大したことはなかった。
ただ…学校や家にはバレないようにしなければ…と思い、そっちに神経を使っていた。
次の日、学校が終わり真っ直ぐ帰宅し裕子の家に行くことを伝えて家を出た。
裕子にはメールで『今日から仕事だから、宜しくね』とだけ送った。
7時、5分前に店へつき、ママさんに連絡をした。
連絡をしてすぐ店のドアが開き1人のスーツを着た男の人が出てきた。
男の人の名前は白鳥さん。ボーイさん兼責任者をしている人だった。
履歴書と保険証のコピーを渡し、その後更衣室へ案内された。
8畳程の部屋には貸しドレスと鏡が沢山並んでいた。
その中から真っ白にファーが付き斜めにギャザーと大きなフリル、斜めスリットの深く入ったドレスを白鳥さんは選んで私に渡してきた。
着てみると雰囲気はかなり代わり可愛いさにもセクシーさもあり白鳥さんが選んでくれたドレスが気に入った。
その後、同じビル内にある美容室に案内され、セットとメイクをしてもらった。
準備が終わり店へ戻ると他のキャストが続々と出勤してきていた。
白鳥さんは私をキャストが座っている場所ではなくママ専用の部屋へ連れて行った。
『コンコン…』
カズハちゃん出来ました。
白鳥さんが声をかけると部屋から
分かったゎ。カズハちゃんだけ中入ってちょうだい。
そう言われ私が白鳥さんをチラッと見ると白鳥さんはニコッと笑い『じゃ、頑張ってね』と一言いいその場を去って行った。
失礼します。
ママの部屋に入るととてもいい香りがした。
ママは着物に着替え、メイクの仕上げをしている所だった。
あの…こんばんわ。
私がそう言うと…
(笑)私達の世界じゃ『おはようございます』って挨拶するのよ。
と言い小さな声でクスクス笑った。
うん。カズハちゃんいいわね。そのドレスもよく似合ってる。で、カズハちゃんは源氏名はどうするか考えてきた❓
源氏名…って…❓なんですか❓
(笑)源氏名はお店の中の名前。この世界殆どの子が本名ではやってないのよ。
それを聞いて私は『蘭蝶』(ラン)がいいです。
と即答した。
するとママは
いいわよ。今ちょうどお店にランちゃんはいないから。じゃ、白鳥に頼んで名刺作っておいてもらうから。後で白鳥から受け取ってね。
と言った。
はい。分かりました。
会話が終わると、『今日はホールじゃなくてルームについてもらうから。私のヘルプをして学びなさい。ただ、私は一切何も教えないから見て学びなさい。』そう言い、私を連れて個室へ向かった。
ママの店は接客スペースがホールとVIPルームという個室に分かれている。
私はママに言われホールではなく殆どVIPルームという個室に来るお客様につかされた。
ただ、何度かホールのお客様についたこともあったが、VIPルームに来るお客様の方が落ち着いていて紳士的で優しく、私が分からないことはお客様が何でも教えてくれた。
それに…ホールに来るお客様とは違い高いお酒を沢山入れてくれるし指名もすぐ入れてくれるし、酔って騒いだりもしない。
私はVIPルームのお客様から指名を沢山もらいVIPルームに入り浸りになった。
指名が一度入るとそのお客様が帰るまではお客様の相手をしなければならない為、ホールのお客様につくことは段々となくなっていった。
それに…ホールに来るお客様はあまり指名は入れずフリーと呼ばれるお客様がほぼ占めていた。
VIPルームは一見様お断りだったがホールに関してはそうゆう規定はなく、年齢層もかなり若かった。
VIPルームには私以外にもよく指名をもらっていた“サチ”さんと言う人がいてママの話しによると店のNo.1だということだった。
サチさんは接客の時はニコニコ笑い華やかな笑顔でよく話す気さくな感じに見えたが、接客以外ではあまり表情を変えない無口な人だった。
サチさんと仕事をする回数が増え、段々と日常会話程度なら話せるようになった。
段々と仕事に慣れてきた中、あっという間に1ヶ月が過ぎ、給料日が来た。
給料はママからの手渡しだった。
キャストが順番に呼ばれママが給料を渡していく。
私はサチさんの隣に座った。
サチさんが呼ばれ、私の隣でサチさんが給料を数えている…
『すっごい…一万円の束………』
サチさんのお給料は給料袋3袋分……周りのキャストとは桁違いだった…。
私の方はと言うと…初給料は38万円だった。
ただ…バイトをいくら掛け持ちしてもこの金額には届かないだろう……と思い、この時、もう既に桁違いの給料にはまってしまっている自分がいた。
サチさんは私には普段から笑顔で話しかけてくれるようになり、私もサチさんから学ぶものは沢山あった為、金魚の糞のようにサチさんについて回った。
ただ…サチさんにはライバルが沢山いて度々嫌がらせをされたり、お客様にサチさんの悪口を吹き込んだり…陰湿なイジメは多々あった。
サチさんについて回っている私もよく嫌がらせにあった。
私物が無くなったり、ホールのお客様についた時にはキャスト、お客様両方に無視をされ接客が成り立たない時も度々あった。
ただ、私はそうゆうイジメ自体大したことはないと思うような経験ばかりしていた為、『お金』が貰えればどうでも良かったし、サチさん自体もまるっきり相手にしていなかった。
仕事の方も順調で何度かサチさんのお客様とサチさんとアフターにも行き、またそこでお客様がついたり…と枝別れ方式のように指名は増え、2ヶ月目のお給料は50万に達していた。
春のお父さんに渡すお金は約100万…
『もう1ヵ月働けば…全て終わる…』
そう思い、必死に接客に励んだ。
だが…3ヶ月目に入ってすぐ…いつも通り登校し、いつも通り授業の準備をしていると…いきなり校長室に呼び出された。
『なんだろう…まさか…バレたんじゃ…』
…その…
まさかだった…。
バレた原因は
『他校の生徒からの情報』
とのことだった…。
私は夜仕事をしていることは裕子にしか話していなかった為、見覚えがなく…。
ただ、情報が入った後に先生方の方で調査をしたらしく…いい逃れはできない状態だった…。
親も呼び出され、学校側としては次回の転入に極力影響が少ないように『退学』ではなく『自主退学』の方が良いと思う…と自主退学を進めてきた…。
親は何も言えず…この日は結論を出さないまま親と家に帰った。
家に帰ると母と父に殴られ、『出ていけ』と言われた…。
母は『あんたを殺して私も死にたい』とまで言うようになり…ボロボロだった。
この日は感情が高ぶってしまい話しができる状態ではなかった為、私は自分の部屋へ戻り1人これからのことを考えた。
ただ…こうゆう状況になったからこそ『夜の仕事』は辞める気は全くなかった。
私の出した結論は…
『家を出て1人暮らしをしながらとりあえず高校には通い卒業する』
だった。
勿論親は大反対したが、『授業料も生活費も一切出さなくていい。高校に転入する手続きのみをとってくれればいい。』と言い私も引き下がらなかった。
親は『すぐに無理だと分かり諦めるだろう。そんなことがお前に続く訳がない。やれるもんならやって見せてみろ』と言ってきた。
『勿論…家は用意しない…家を借りるに当たっては保証人にもならない…』と追加条件も出してきた。
私は『それでもいい』と言い、早々に転入する学校を選び始めた。
学校選びの時の私の中での条件はこの時既に決まっていた。
それは1人暮らししている『曾祖母ちゃんの家の近くの学校』だった。
曾祖母ちゃんはまだまだ元気だったが1人暮らしの為、何かと不自由していたし結構な歳だった為、父と母が『今後引き取るか』をよく話しているのを聞いていた。その曾祖母ちゃんと私が一緒に住むと言えば『最終的には絶対反対はしない』と自信があったからだった。
私の歳で賃貸は契約出来ない。
ただ、家は絶対になければ生活なんて無理…色々考えた結果決めたことだった。
曾祖母ちゃんは祖父、祖母とはかなり仲が悪く、一緒には暮らしていなかったし一緒に住む予定すらなかった。
ただ、私は曾祖母ちゃんが大好きだった。
頑固だけど間違ったことは言わず、間違ったこともしない、手もあげない、それにとても精神力のある強い人だった。
『曾祖母ちゃんとなら一緒に住みたい』
ずっとそう思っていたのも事実だった。
私は転入する高校を決め、父と母に伝えた。
転入する高校は曾祖母ちゃんの家から歩いて10分程の女子高で通信科もありかなり充実している学校だった。
親は『どうせすぐに帰ってくるだろう。曾祖母ちゃんと住む件については曾祖母ちゃんが納得するなら私達は口を挟む権利はないから好きにしろ』と言ってきた。
私はすぐに曾祖母ちゃんに連絡をした。
もしもし❓ばあちゃん❓
あ~☺カズハ❓どうしたの❓
あのね…ちょっと事情があってばあちゃん家の近くの○○高校に転校することになったんだけど、ばあちゃん家に住んでもいい❓
それは別に構わないけど、お父さん達はなんて話してるの❓
お父さん達もばあちゃんが納得してくれるならいいって話してる。
そう☺ならいいよ☺おいで☺
うん☺生活費は私がバイトして毎月入れるから‼近々行くと思うから宜しくね‼
はいよ。気をつけてくるんだよ。
曾祖母ちゃんもすんなり納得してくれた。
父と母に話すとため息をつきながらも『自主退学の手続きと転入の手続きだけはとっておく』と言ってくれた。
とりあえず、
『転校の件は無事に進みそうだ…』
そう思った私は次にママに電話をして、『学校に夜仕事をしていることがバレて学校を辞めることになった。暫くの間、ほとぼりが冷めるまでは仕事は休みたい。』
と伝えた。
ママも『店の立場上、そうしてもらった方が有り難い』と言い、暫く仕事は休むことになった。
ママと電話を切った後…もう1つ解決しなければいけない問題があることを思い出し、美幸に電話をかけた。
もしもし❓美幸❓
あっ‼カズハ⁉今日どうしちゃったの⁉何も言わないで帰っちゃって⁉心配したんだから💨
うん。ごめん…あのさ…私、学校辞めることになったんだよね…。
……えっ………
なんで……❓
少し落ち込み気味の美幸に、今までの経緯を話し、その結果学校に仕事の件がバレて退学することになった…と伝えた。
美幸は、『学校を辞めるのは仕方ない…けど…誰がチクったの❓』と聞いてきた…。
そう…私はそれが『誰か』が知りたくて美幸に連絡をしていた。
私の中では他校でしかも在学中でこんなことをする奴…と言えばいくら考えても1人しか浮かんで来なかった。
それは…
由美の中学時代の親友…
『真理子』
だった…。
美幸に連絡したのは美幸は由美と真理子と同中学だったから『真理子のことを色々知っているのではないか…』と思ったからだった。
『転校してもまた同じことをされたんじゃまた退学になってしまう…』
だからこそ転校する前にしっかりと話しをつけたかった。
美幸は真理子には私がいることは内緒で呼び出してくれることを約束してくれた。
時間は明日…学校終了後、夕方4時…。
親とは顔を合わせても話しすらしなくなってしまっていた為、明日、出掛けても何も言ってはこないだろう…と思った。
次の日、家を出ようとする私を横目で見ていた母。
私に気づいているはずなのに案の定何も言っては来なかった。
私は母に何も言わず…無言のまま家を出た。
待ち合わせ場所は学校近くの並木道だった。
少し早くついた為、橋の上から並木道を眺めていた。
『綺麗…もうしばらくこの道を通ることはないんだな…』
学校に通っている時は学校等に夢中で道を通っても景色に目を向けることすら無くなっていた。
『人間はすぐに新しいことに飲み込まれてしまう』
ふと初心に戻った時にやっと周りにある物に気づき心を痛めたり休めたりする。
普段からもっと大事にして気づいていかなければいけないことがあるのに…すぐに『欲』に負けてしまい自分本位になってしまう…。
私は初心を忘れない為にも月に一度は並木道や昔行った公園、木蘭の花のあるタバコ屋に行くことに決めた。
自分を見失わない為にもそれが必要だと思った。
景色を見ている間は真理子のことはすっかり忘れ無心になれた。
景色を見ていると美幸と真理子が歩いてくるのが見えた。
私も美幸と真理子の方へ歩いて行った。
途中から真理子の表情が変わるのが分かった。
真理子が私の目の前についた時には表情は鋭くなり…私のことを凄い目つきで睨んでいた。
美幸は
私、あっちで待ってるね。話しが終わったら…声かけて。
それだけ言い並木道の向こう側へ歩いて行った。
私は真理子に話し始めた。
…聞きたいことがあるんだけど。私のことで何か知ってることある❓あるなら…それを学校に話したりしたことある❓
あるよ。学校退学なったんだってね。けど私が悪いんじゃないよ。あんたの自業自得だよ。
……そう。退学の件はもう諦めてるからいい。それについては文句言うつもりもない。ただ…なんでそんなことしたの…❓
真理子はいきなり凄い形相になり半分悲鳴にも近い声で私に話してきた。
…あんたが悪いんじゃない‼あの時…私のこと置いて逃げたくせに‼由美だけ…助けて…私のことだけ置いて逃げた癖に‼‼‼私…あの時…必死で助けてって…お願いしたのに‼‼無視して…逃げた癖に‼
真理子は…この後は何も言わず…ずっと泣いていた…。
私は…そんな真理子を責める気はもうなくなっていた。
悔しそうに震えながら泣く真理子の気持ちが分かった気がしたから…。
私は真理子みたいに無理やり襲われたことも回されたこともない…けど…真理子の立場になって考えてみた時、恨みの矛先は私に向くことは当たり前だとも思った。
私も助けを求めたのにも関わらず、あの状況で見捨てられたら…きっと真理子と同じようにその子を恨んでいたと思った。
私は…真理子に謝った。
ただ…あの時は…由美と由美の赤ちゃんのことで頭の中は一杯一杯だったことを伝えた。
真理子は由美のことを聞いた時…ビックリした顔をしていた。
真理子は由美の妊娠のことは知らなかった。
この後…真理子と1時間程、今までの由美にあったことも話し、真理子も徐々に落ち着いてきて…許す許さないではなく今回のことはお互い水に流すことになった。
『和解』と言うよりは…由美の親友同士由美の身を案じた結果だったと思う。
真理子にとっても由美は親友だった人で…過去形だとしても真理子には特別な存在には変わりなかった。
話し合いが終わり、私と美幸、真理子の3人でご飯を食べに行き、真理子とは連絡先を交換しわかれた。
真理子は、トラウマを抱えていて、暗い場所やカラオケボックスには行けない体になっていた為、普通にファミレスで食事をした。
真理子とは友達として連絡し合った。
真理子はかなりメールがマメで毎日毎日メールが届いた。
私は引っ越す準備もしながらなるべくこまめに返信した。
少しでも真理子の心の負担を軽くしたかったのもあるし、何より助けてあげられなかった分、自分に出来ることはしてあげよう…と思っていた。
真理子の件があってから…自分には悪気はなくても知らず知らずのうちに『恨みをかってしまっている』ことがあると気づいた…。
『人間付き合いって難しい』
自分の考えや気持ちをしっかりと持ちながらも他人の考えや気持ちも考えて最終的にどうするかを決めなければいけない。
それくらいは当たり前のように出来るようにならなければ自分も傷付き、相手も傷付いて終わる結果に成りかねない…。
私はこの時から
『どんなことでも、物事は慎重に』
ということを心がけ自分の為…それと私に関わる全ての人の為にいくら大変でも慎重によく考えることを欠かさなくなった。
真理子とメールをしながら自分の物を整理した。
部屋を片付けながら気づく…
結構いらないものがある。
自分の部屋の半分以上はゴミ箱行きだった…。
ある程度片付き…
私は最後の最後に机の中の整理を始めた…。
ここには…私の宝物がある…
絶対に忘れてはいけない宝物…
それは…
アゲハ姉ちゃんの遺品…。
机に隠してから5年もの月日が経っていた。
ガムテープを剥がすと…粘着部分はベタベタになっていて…手にベタベタついて剥がすのが大変だった…。
サニタリーバックに入った手帳、財布、タバコケースを出し…懐かしさを噛み締めながら段ボールではなく、いつも持ち歩いているバックに大事にしまった。
次に、ベットの下に隠した日記帳とアルバムを手に取り…また暫く眺めた。
『日記帳…』
私はお姉さんが亡くなってからこの5年…日記帳の中は見ることはなかった。
気にはなったが…私の中で、お姉さんと同じ歳になるまでは見ない…と決めていた。
一輝は『アゲハの気持ちをカズハは知る権利がある…アゲハもそう思ってるはず…見てやって欲しい』と何度か言ってきたが…。
私は何を言われても『お姉さんと同じ歳になるまでは…』とこだわっていた。
それは…
『お姉さんと同じ立場になって、お姉さんの当時の気持ちをリアルに…身近に感じたかったから』
だった。
『幼いうちに見てもきっとお姉さんの気持ち全ては分からないだろう…』
と思ったのも理由の1つだった。
『…後、2年…後2年我慢して、18才になったら見よう』
18才になったらお姉さんに会える、そう思うことにし、楽しみにしていくことに決めていた。
日記帳とアルバムは大事に段ボールにしまった。
片付けが終わり…
部屋を見渡す…
『色々あったなぁ』
今までの出来事が走馬灯のように頭の中を駆け巡った。
『明日、この家を出て曾祖母ちゃんの家に行く…』
そう考えると…少しだけ寂しくなり…ほんの少しだけ…涙が出てきた。
これからの新しい生活の為、強くいようと決めたのに…やっぱり涙を流してしまった。
『強くならなきゃ』
私は涙を拭い、段ボールを持って部屋を出た。
段ボールの数は少なかったが重さはあった為、宅急便で先に送ることにした。
荷物を送った後…母が私に久々に話し掛けてきた。
今日…何が食べたい❓
私は『何でもいい…』
と答えた。
…母に素っ気ない返事をしている…とは分かっていた…。
けれど私の心の中は…
『母の作るものなら何でもいい…母の作った料理なら何でも食べたい…』
そう思っていた。
母は…私の返事に少し悲しそうな顔をしたが、
じゃぁ…買い物に行ってくるね。
と言い買い物に出掛けて行った。
『ごめんね…気のきかない娘で…』
心の中ではそう思っていても…口に出しては言えなかった…。
何故か…最後の最後まで親には素直になれず…。
心とは裏腹に親にはいつも反発し素っ気ない態度をとってしまう…。
母の悲しそうな顔を思い出し、母がいない間に何度も泣いた。
母は、私の好きな料理ばかりを作ってくれた…。
私は母の作ってくれたご飯を食べながら…何か一言でも話せば大声で泣いてしまいそうで…涙をグッと我慢しながら黙々と食べた。
『おいしい』
と一言でもいってあげられたらいいのに…。
『反抗期って…損だ』
とつくづく感じた。
心と言葉や行動は全て逆…。
私は親と接してきた人生の中で反抗期が一番辛くて苦しかった。
きっと親も辛くて苦しかったと思う…。
けど…『心は違う』
と分かってほしい…
『けど…きっと父も母も私の言いたいことは分かってくれていたと思う』
それは…
次の日の朝、母からの手紙を見て思ったことだった。
カズハへ
こんなに早くにカズハが出て行くなんて私もお父さんも思っていなかったです。
でも、カズハは強い子だから、私もお父さんも心配はしてません。
昨日のご飯、カズハがおいしそうに食べてくれて、私は嬉しかったです。
曾祖母ちゃんの家に行ったら私もお父さんもいないからカズハが自分で何でもしなければならないのだから…しっかりね。
子供の頃から私について回って家事するのをよく見ていたし、よく手伝ってくれてたから…カズハなら自分で全部出来るよね。
カズハ頑張ってね。
それと…お父さんから預かったお金、入れておきます。
無駄使いしたらダメだよ。
手紙と一緒に入っていたのは『1万円』だった…。
いつもは…
いつもは…この何倍も手にしているのに…
いつも手にしていたお金とは違い…とても重かった…。
お金にも『価値』がある…
どんな『お金』でも変わらないと思っていた私が初めて大切にしよう…と思ったお金だった。
今…現在もこの時父から貰った『1万円』は使うことなく大事にとってある…。
このお金は『お金』ではなく私の御守りのようなものになっていた。
生涯使わず…きっと大事に持ち続けると思う。
たった『1万円』だけど…私にはどんなものにも変えられない…父の思いが沢山詰まった1万円だった。
『お母さん…お父さん…ありがとう』
手紙と1万円を握り締めながらまた涙を流した。
少しだけ目を赤くした私が曾祖母ちゃんの家についたのは夕方近かった。
曾祖母ちゃんは私を見るなり
よく来たね☺お疲れだったね☺
と言い抱きしめてくれた。
曾祖母ちゃんは昔から出迎える時は両腕広げて抱きしめてくれた。
今も昔も変わらない曾祖母ちゃんにホッと安心する自分がいた。
曾祖母ちゃんの家につき、すぐにお風呂に入った。
いつもはシャワーで済ますが、曾祖母ちゃんがお風呂を沸かしてくれていた為、久しぶりにゆっくりと湯船につかった。
曾祖母ちゃんは温泉の素を入れてくれていて乳白色のお湯と良い香りが疲れを癒やしてくれた。
思わず
『フゥー…』
とため息が出た。
いつもよりゆっくりお風呂に入り、上がると曾祖母ちゃんはお手製の里芋煮やお浸し等を作ってくれていた。
曾祖母ちゃんの料理は丁度良い塩加減で手間暇かけた物が多く、私は曾祖母ちゃんの料理が子供の頃から大好きだった。
久しぶりの曾祖母ちゃんの料理に舌鼓をうちながら全て綺麗に食べた。
曾祖母ちゃんも
誰かとこうやって一緒にご飯を食べるのは本当に久しぶりで☺カズハが来てくれてばあちゃん良かったよ☺
と言ってくれた。
ご飯を食べた後、曾祖母ちゃんの入れてくれた温かいお茶を飲みながらばあちゃんの肩や背中をマッサージしてあげた。
昔と何も変わらない雰囲気が今まで荒んでいた気持ちの片隅を癒やしてくれた。
曾祖母ちゃんの暖かい雰囲気と懐かしい家の香りが私の心を『浄化』してくれているようだった。
次の日、新しく通う学校へ挨拶に行った。
自主退学と転校の理由は『家庭の事情』ということになっていた。
新しい学校では『曾祖母ちゃんと住んでいること』が家庭の事情と深く関わっていると勝手に判断したらしく
『頑張ってね』
と言われた。
否定して自主退学の理由を再度聞かれてもうまい理由が見つからない…と思い、そのまま話しを合わせることにした。
次の日からは通常通り学校へ行き、学校へ行き初めて一週間後からまた夜の仕事を始めた。
何事もなく1ヶ月が経ち…お金は150万たまっていた。
曾祖母ちゃんには毎月10万渡した。
曾祖母ちゃんは
『こんなにくれなくてもいい、カズハも欲しい物があるだろうに…』
と言ってきたが、あくまでも1人暮らしと同等な扱いでやっていきたかった為、
『毎月10万は最低でも必ず渡す』
と曾祖母ちゃんに約束した。
それに…
夜働いた給料は週3~5日勤務するだけでも毎月平均40万は貰えていた。
貯金も十分出来るし、自分の買い物もできる…
だから月10万渡し余った分も私を置いてくれて日々家事をしてくれる手間賃として渡した。
たまに…
15万位渡したこともあったが…
さすがに普通のバイトで毎月この金額は多いと思われている…と思い、やはり毎月10万に戻した。
新しい学校にも落ち着き、仕事も順調、貯金もたまってきた頃…
私は春のお父さんに会うことにした。
春は真理子の事件の後、少年院に入ってしまった為、春のお父さんに会うには康彦に頼るしかなく…
久しぶりに康彦へ連絡をした。
もし❓カズハ⁉元気してたか❓
うん☺色々あって○○高校に転校したけど毎日それなりに順調で落ち着いてる。
そう。いきなり学校退学したっては聞いてたからちょっと心配してたんだけど。それなら良かったよ。で…今日はどうした❓
……あのさ、ちょっと頼みがあって…春のお父さんと会いたいんだ。春は今いないし…康彦に頼むしかなくて…。
…また会うの❓段取り組むこと位はできるけど…やめといた方がいいんじゃない❓
そう言い心配する康彦に『会うのはこれが最後だから』と言い段取りだけ組んでくれるように頼んだ。
康彦は『とりあえず話しはしてみる。日時が詳しく決まったら連絡するよ』と言ってくれた。
春のお父さんには利子含め200万渡すことにしていた。
本当は一円たりとも渡したくはなかったが、たかがその程度のお金のせいで由美や私とあの春家族が繋がってしまっていることがとてつもなく嫌だった。
『弱みを握られてるのと何ら変わりない』
あんな奴に好き勝手やらせるのもとてつもなく嫌だった。
早く終わらせたくて毎日康彦からの連絡を首を長くして待った。
康彦から連絡が来た日の朝…
いつも私よりも早く起きてご飯を作っているはずの曾祖母ちゃんは台所にはいなかった。
心配で曾祖母ちゃんの部屋へ行くと、曾祖母ちゃんは少し具合わるそうに横たわっていた。
ばあちゃん❓大丈夫❓…どこか…具合悪いの❓
曾祖母ちゃんは私の顔を見てニコニコ笑いながら
ちょっと、冷えたみたいでね。大丈夫。すぐよくなるから。
そう言いまた目を閉じてしまった。
私はお粥を作りおしんこを添えお茶を入れておばあちゃんの布団の横においてから学校へ行った。
昼休みに康彦から連絡があり、春のお父さんとは『明日の夜9時に○○の小さなパブ』で会うことになった。
前回春のお父さんに散々やられた件もあり、今回は康彦と康彦のお兄さんもついてきてくれることになった。
私は忙しい中、付いてきてくれる康彦に感謝をしお礼を言った。
康彦とは『夜8時に私の高校近くの駅』で待ち合わせすることになった。
春のお父さんと会う日取りも決まり、スッキリした気持ちで家に帰った。
…家に帰ると、家中真っ暗でシーンと静まり返っていた。
おばあちゃん❓
私はおばあちゃんの名前を呼びながらおばあちゃんの部屋へ行った。
おばあちゃんの布団の隣には私が朝作っておいたお粥が手もつけられずそのまま置いてあった。
お粥もお茶も…スッカリ冷え切っていた。
…おばあちゃん❓大丈夫❓
何度か声をかけ、体を揺すってみると…
…カズハ❓あれ…もう学校終わったの❓…もうそんな時間になってたんだねぇ…。
と弱くか細い声で言った。
学校は終わったよ。ばあちゃん…まだ具合悪いの❓
…ちょっと胸が苦しくてね…。ちょっと寝てればすぐ治るからね…。
そう答えるばあちゃんは本当に具合が悪そうで…とりあえず何か食べさせなきゃ…と思い、朝作ったお粥の乗ったお盆を持ち台所へ向かった。
具合悪い中…食べられる柔らかいもの…
何度が考えたけどレパートリーの少ない私はやはりお粥しか頭に浮かばず…
とりあえずお粥を作り、梅干しを添えて持って行った。
おばあちゃんは梅干しが好きらしく、少しの量だが口に運んでくれた。
おばあちゃん❓私…明日、ちょっと用事があって…少しだけ家留守にするんだけど大丈夫❓
そう聞くと、
大丈夫☺明日にはよくなってるからね☺
と返事をした。
『明日さっと話しを終わらせて早く帰ってこよう…』
私はそう決め、曾祖母ちゃんを寝かせ、残ったお粥を食べ、いつも通りお風呂に入り早めに眠りについた。
次の日の朝…
…やはり曾祖母ちゃんは寝たきりだった。
…ばあちゃん❓明日、私、学校休み取るから…。一緒に病院に行こう…。
…いいのよ。寝てれば治るし…病院代が無駄になるだけよ…。今までも具合悪かったことあったけど寝てれば治ったんだから。大丈夫よ。
そう言う曾祖母ちゃんは…寝てれば治る…とは思えないくらいで誰が見ても具合が悪い…と分かるくらい顔色は悪かった。
…ばあちゃん…お金の心配はしなくていいから。私…明日学校休むからね。ばあちゃん病院連れてく。もう決めたからね。
私はそう伝えると朝ご飯を布団の横に置き学校へ向かった。
学校の先生には放課後に
『曾祖母ちゃんの具合が悪く、明日病院へ連れて行く為、明日は休みます。』
と伝えた。
先生は
『もし容態が悪ければ休む時は電話連絡くれればいいから』と言ってくれた。
先生と話しが済み、また急いで家に帰った。
曾祖母ちゃんの部屋へ行き、ご飯を食べているかチェックした。
少しだけど食べてくれているようで安心した。
私はご飯を片付け、着替えを済まし曾祖母ちゃんの夜ご飯を作り、曾祖母ちゃんの体を拭き着替えさせてから、春のお父さんに渡すお金が入った封筒を持ち足早に家を出た。
駅へ到着し、康彦に連絡をした。
康彦はお兄さんと車できていた為、車に乗せて貰い春のお父さんとの待ち合わせ場所に向かった。
店に入ると春のお父さんはもうきていた。
誰かと思えば。あの女じゃねーか。
春のお父さんは私を見るとそう一言いった。
あの、由美のお金、持ってきました。
私はそう言いバックからお金の入った封筒を出した。
なる程。なら早くよこせ。
春のお父さんは手を差し出してきた。
私はその差し出された手には気にもせず私も手を差し出し、
お金の前に、証書を渡して下さい。
と言った。
春のお父さんは暫く何も言わず私の方をジーッと見ていたが康彦のお兄さんが一歩前に足を踏み出した瞬間…
『ふんっ』
と鼻を鳴らし胸ポケットから証書を出して私に渡してきた。
私は証書を受け取り中身を確認すると春のお父さんに封筒を手渡した。
春のお父さんは奪い取るように封筒を取り上げ、私の目の前で札束を数え始めた。
数え終えたのを確認し、
今後、由美にも私にも一切関わらないで下さい。あなたと私達はこれでもうなんの関わりもありませんから。
そう一言投げつけるように言い店を後にした。
康彦とお兄さんにお礼を言いうと、康彦のお兄さんにご飯を食べに行こう…と誘われた…。
本当はお世話にもなったし、たまに息抜きもしたかった為、行きたかったが、曾祖母ちゃんのことが気になっていた為、後日改めて時間を作ると話し、この日は自宅前まで送ってもらった。
自宅へつき、曾祖母ちゃんの部屋へ真っ直ぐ向かった。
ご飯はほんの少し食べてくれているようだったが…
曾祖母ちゃんは眉間に皺を寄せ、倒れ込むように眠ったままで…私が来たことにも気づかないほどだった…。
私はお粥を片付け、台所でおしんことご飯を勢いよく口の中へ放り込み、そのままお風呂へ入った。
お風呂はシャワーだけにし、寝支度を済ませると自分の布団を抱えて曾祖母ちゃんの部屋へ運び、曾祖母ちゃんの隣で眠りについた。
次の日…
朝早く起きて、だるそうにする曾祖母ちゃんを着替えさせ、自分も軽く着替えてタクシーを呼びそのまま病院へ向かった。
タクシーの中でも曾祖母ちゃんはぐったりしていて私に寄りかかったままだった。
病院についても覚束無い足でヨロヨロと歩いた。
曾祖母ちゃんの診察や検査は夕方近くまでかかり…
曾祖母ちゃんはそのまま入院することになった。
検査の結果は後日改めて…ということだったが、熱と体の衰弱が酷かった為、大事をとっての入院だった。
私は、病院を出てすぐにお母さんとお父さんに曾祖母ちゃんが入院したことと曾祖母ちゃんの様子を伝えた。
明日、お父さん、お母さんがこっちに向かう…との話しをし電話を切った。
今後、どうなるか未定だった為、明日も学校は休み父と母、親戚含めての話し合いに私も参加するこっになった。
次の朝早くに父と母、父方の親戚が集まり、曾祖母ちゃんの家で今後の話し合いがあった。
病院からは入院期間は未定だと言われていた為、そのまま伝えた。
親戚の人から出る言葉は、曾祖母ちゃんの面倒のことやお金のことばかりで…
曾祖母ちゃんの安否を気遣う人は1人もいなかった。
結局…みんな個々の生活がある為、月に何度か交代で世話をしに来るとのことで話し合いは終わってしまった。
お金に関しては曾祖母ちゃんの貯金を調べ、足りないようなら各々少しずつ出し合うということだった…。
『人の命ってこんなもんなんだ』
私は親戚の人達の話し合いを聞きながらずっとそう思っていた…。
親戚の中には私がいるから
『月に一度世話をしに来る必要はないんじゃないか❓』
と言う馬鹿なことを言う人もいた…。
その意見に関してはお父さんが
『カズハは学生だから勉強を優先しなければならない。学生しながら娘に介護は無理だ』
と強く言い切った。
この日は親戚が帰った後、父と母と曾祖母ちゃんの病院へお見舞いに行った。
曾祖母ちゃんは薬と点滴のお蔭か随分と顔色は良くなり、ご飯もちゃんと食べるようになっていた。
おばあちゃんは
『すぐに退院するからね☺』
と言い終始ニコニコしていた。
曾祖母ちゃんの顔を見て私も父も母も安心し、それぞれ家に帰った。
家に入るとまた静まり返り真っ暗だった。
曾祖母ちゃんのいない家は広すぎて…凄く寂しかった…。
『曾祖母ちゃんは長い間、こんなに寂しい生活を1人でしてきたんだ…』
そう思うと涙が出てきた。
広すぎる家に1人…というのが寂しさを増徴させているようだった。
私は…曾祖母ちゃんが入院してからは殆どの時間を自分の部屋で過ごすようになり、家にいる間は自分の部屋に引きこもるようになっていった。
父と母が来た次の日からは通常通り学校へ行き夜は仕事に行った。
変わったことと言えば、曾祖母ちゃんが入院してからは自分の物は一切買わず、お金をなるべく使わないようにしたことくらいだった。
話し合いの場でお金の件が出た時から、何かあった時の為にお金は貯めておこう…と決めていた。
曾祖母ちゃんがいない寂しさを紛らわすかのように…私は夜の仕事に打ち込んだ。
仕事をしてもしても満足出来なくなり、無我夢中で接客に励んだ。
私の精神状態は徐々に悪くなり、いくら稼いでも満足いかなくなり、何に関してかは分からないがいつも切羽詰まった状態になって行った…。
端から見れば…どこかに借金をしていて大変なことになっているんだろう…と見える程の切羽詰まりようだった。
そんな私を心配してくれるサチさんとママ…
でも私にはそんなサチさんとママの声すら聞こえなくなってしまっていた。
学校が終わり、真っ直ぐ病院へ行き、帰宅後夜の仕事へ行くという多忙な日々が続いた。
曾祖母ちゃんが入院してからあっという間に2ヵ月が過ぎた。
曾祖母ちゃんは入院したまま帰ってくることはなく、予定は未定のままだった。
毎日忙しくしていたせいで家のことは疎かになり…家中誇りだらけになっていった。
私は寝る為だけに家に帰宅している感じになってしまっていた。
そんな中…ついに一線を越えてしまう出来事が起こる…。
この日も曾祖母ちゃんの病院へお見舞いに行き洗濯物を持ちいつも通り家に帰宅すると…
家の前に見覚えのある車が止まっていた。
それは康彦のお兄さんの車だった。
私はお兄さんに挨拶をした。
お兄さんは
前に約束したご飯の件、今日でもいいかな❓
と聞いてきた。
この日は夜の店はお休みだった為、即答でOKした。
即答でOKした理由は…ただ単に1人で家にいたくなかったからだった。
私は急いで着替えてお兄さんの車へ乗り込んだ。
お兄さんは康彦同様、優しくて気さくでとても話しやすい感じの人だった。
お兄さんと2人で少し洒落たバーに行き色々話した。
お兄さんには話し易くて自分でもビックリするくらい自分のことを話していた。
お兄さんはそれを相槌をうちながら時には返事も返してくれながらゆっくりと聞いてくれた。
気がつくとお兄さんのことは“竜彦”と呼ぶようになっていた。
バーで私も竜彦もかなり飲み、ほろ酔いのまま車に乗り込んだ。
車に乗り込むと竜彦が真面目な顔をして話をしてきた。
前に会った時からカズハのこと気になってた。今日、カズハに会ってカズハのこと色々知ってカズハのこと本気で好きになった。カズハ…俺と付き合わないか❓
…
私が黙っていると…竜彦はまた話しを始めた。
カズハに付き合ってる奴がいるのは分かってる。別に…別れてくれとは言わないから。それと…俺も毎月お金はカズハにあげることは出来る。カズハが仕事しなくても生活出来る分くらい用意するなんてすぐ出来る。協力させてくれないか❓
『お金』……
その言葉を聞き…私の中で何か凄い執着心が湧き上がり…
私も竜彦と付き合いたい…
…気づいた時には心にもない言葉を口にしていた…。。。
そんな私の胸のうちは知らず喜ぶ竜彦…。
…この後、竜彦と私はホテルへ向かった。
ホテルの部屋につくなり竜彦に強く抱き締められ、キスされた。
この時も…私の頭と心は『お金』のことだけしかない…。
竜彦に服を脱がされブラを取られ…
乳房を揉まれながら乳首を舐められる…
私は『お金』の為に…竜彦が喜ぶように演技でいつも以上に喘ぎ演技で『竜彦が好き』と何度も囁いた…。
あっんっっ…きもちぃぃ…はっ…あんっ…竜彦…大好き……
竜彦も『俺も…まじでカズハが好き…』
と甘く囁きながら私の中に指を入れてきた…。
クチュクチュ………
と音が鳴る…
『凄い濡れてるよ…』
竜彦が私の耳元で囁いた…。
あんっ…アッアッんっ…いやっ…だめっ…あんっ………
演技で…少し嫌がって見たりもした…。
それを見ていた竜彦が
『入れてもいい❓』
と聞いてきた…。
私は…また『お金』の為…と止まらない欲求を抑えながら…
まだ…まだ入れちゃダメ…
そう言い……竜彦のものを口に含んだ…。
『アッ…カズハ…まじいい…』
竜彦は喘ぎながら私の頭を押し付け私の口の奥まで自分のものを押しこんだ。
この時…かなり苦しかったが、竜彦を満足させる為だと割り切り…気づいた時には自分から竜彦のものを奥まで入れ手を使いしごいていた…。
私が竜彦のものを口に含んでいると
彼氏1号と…俺、どっちがでかい…❓
と聞いてきた。
私は迷わず『竜彦の方が大きい…』と返した。
それを聞いた竜彦は私をベッドに寝かせ、私の中に入れてきた…。
久しぶりだから…気持ちいいかな…と思っていたが…その思いとは裏腹に
『全然何も感じなかった』
入れられている感触もしっかりあり…それなりに喘ぎ声も出るが…
一輝とした時とは違い、演技をしながら冷めている自分がいた。
ホテルの天井を見ると…鏡張りになっていて、竜彦に腰を振られている自分と目が合った………
演技をしながら冷めた目でずっと見つめていた…。
竜彦が
『アッ…アッ…俺もういきそう…カズハは…❓』
と聞いてきた為、我に帰り
私も…すぐ…いっちゃいそう……
と答え…竜彦がいくのと合わせ私も演技をしいった不利をした…。
竜彦は、終わった後も私のことをずっと抱き締めていた。
私は最後の最後まで…演技しきった…。
『竜彦…大好きだよ…』
眠りにつく寸前まで…竜彦にキスをされながら竜彦に囁き続けた…。
次の朝…
竜彦から『同棲しないか❓』
と持ち掛けられた…。
竜彦は『本気で私と付き合っていきたい…』と言ってきた。
普通のカップルなら…いくら浮気でも嬉しくて堪らないのだろうが、喜びの眼差しの裏ではまた冷めた自分がいた…。
曾祖母ちゃんのこともあるから…曾祖母ちゃんのことが落ち着いたら一緒に住もうね☺
と約束し、竜彦にキスをした。
竜彦は、何も言わず納得してくれ、私のことを家まで送って行ってくれた。
そして……
帰り際に財布からお金を出し、
入院費の足しにして☺
と言い…30万を渡して帰って行った…。
自分の部屋へつくなり、竜彦からもらったお金を数えてホッとしている自分がいた。
この日から、仕事が終わった後に『竜彦と会う…』と言う予定が1日のスケジュールに加わった。
学校へ行き、病院へ行き、自宅へ戻り、曾祖母ちゃんの洗濯物を洗濯し、仕事へ行き、竜彦に会う…
この日々がまた暫く続いた…。
毎日忙しく過ごしていた頃…
お母さんから一本の電話が来た。
曾祖母ちゃんのことで病院から話しがあるから一緒に来る❓
との内容だった。
私は、即答で『行く』と返事をし、病院に話を聞きに行く日は学校、仕事、竜彦、全て休み予定をあけた。
…この時、『竜彦と会うこと』も私にとっては仕事と同じ扱いになっていた為、竜彦が『会えない…』と落ち込んでいても何とも思わなかった。
病院で話しのある日の当日…
私と母は曾祖母ちゃんのお見舞いをした後に先生の元を訪れた。
先生の話……
それは……
曾祖母ちゃんの病気の説明と…
余命に関しての話しだった…………。
曾祖母ちゃんは末期の癌だった…。
余命は一年…とのことだった………。
曾祖母ちゃんは歳をとっている為、癌の進行自体は遅い…とのことでの余命宣告だった。
曾祖母ちゃんの歳では血管も脆く…手術には耐えられないし、手術しきれない程癌は転移しているから…と………。
入院生活をとるか、最期まで自宅療養をするか…を選択してください…との話しを最後にして話しは終わった…。
母は、私が大変だから…と入院生活をさせようと言ってきたが…。
私は曾祖母ちゃんが家にいた方がいい…とずっと母に訴え続けた。
曾祖母ちゃんがいないあの家に…1人でいることに耐えられなくなってきていた…。
とりあえず…お父さんに相談してみるから…。
と言い母は帰って行った。
私はその夜、父に電話をし、
曾祖母ちゃんの面倒は私がちゃんと見るから…だから自宅療養にしてあげて…。
とずっと…泣きながら頼んだ。
この日は父は結果は出さず、『親戚と話してから折り返す』とだけ言い電話を切った…。
私の心の中は満たされないものだらけになり…父と電話を切った後、1人大声で泣き続けた…。
何をしても満たされない…
何を手に入れても満たされない…
満たされないことだらけの生活に疲れ…
気がつくと私は化粧をし、服を着替え髪をセットし始めていた…。
無心で出かける準備をしてる自分に気づいたが準備をする手は止まらず…
準備ができると
そのまま家を後にした……。
私が向かった場所は…
竜彦に告白された日、初めての食事で訪れたバーだった…。
私はバーにつくとカウンター席に座り、ワインとえびの入った辛めのドレッシングのサラダを頼んだ。
このバーは、一度来た時から料理の美味しさにはまりまた来たいと思っていた。
カップルも多く、通常であれば誰かを誘ってくるようなバーだが…
この時の私はとにかく疲れていて…1人でいたかった。
バーのカウンターには1人の男の人が入っていてこの店の店長だった。
店長は男前でカッコ良くて店長の笑顔と聞き上手な性格に癒された。
『こうゆう人と一緒になれば…幸せなんだろうな…』
そんなことを思いながらお酒を飲み料理を食べながらマッタリと過ごした。
この日から、仕事が終わった後は1人…又は竜彦と一緒にこのバーに行くのが日課になっていった。
バーに通っている間に名前を覚えられ、すっかり常連になった。
『気持ちの休まる場所が出来た…』
私は毎日バーに通った。
竜彦がいる時は終始明るくよく話すようにしていたが、1人の時は…カウンターで静かに飲む…そんな感じだった。
本音は…竜彦といるより…1人で飲む方が落ち着いた…。
こんな日々が続く中…
バーによく来ていたお客さん“弘和”に告白された。
弘和は普通のサラリーマンだったが彼女は長い間いなくて顔もまぁまぁ良かった…。
何をしても満たされない私は弘和とも付き合った…。
ただ…弘和とセックスしても…やはり竜彦の時と同じ…
ドキっともせず、ただひたすらセックスの流れをこなす…
まるで…仕事をしているようだった…。
『全然満たされない…』
私の中で満たされない欲求が溜まり、『欲』は次第に膨れ上がり…悪魔のようになっていった…。
弘和も私の家の状況は知っていた…。
付き合って1ヶ月が経った頃…
弘和が私に1つの封筒を出し話しをしてきた…。
カズハの助けになりたい…。大した額じゃないけど、将来の為に貯めてきたお金から少し下ろしてきた。俺、カズハと将来一緒になりたいと思ってる…。だから、これ、良かったら使って。
そう言い…封筒を差し出した。
その封筒を受け取り中を見ると…
帯で纏められた束が2つと束の半分くらいのお金……
数えてみると…
250万入っていた………
弘和…こんなに…いいの❓
私は…演技をした…。
うん。カズハの力になりたいんだ。俺にはこれくらいしか出来ないから。ただ…これからもっと仕事頑張ってカズハを幸せに出来るように頑張るから‼
そう言い…弘和は私を抱き締めた…。
私は何も考えず…人形やロボットのように弘和を抱き締めた。
弘和を抱き締めながら…心の中で何かが呟いた…。
『今私が弘和にすること…それは弘和が満足するように振る舞うこと…そうすればまたお金を持ってくる…』
…そう…それは悪魔だった…。
悪魔……❓悪魔じゃない……悪魔は…私…。
本当は自分自身が悪魔だと気付いていた…。
それに気づきながらも…『欲』は物凄い勢いで湧き上がり、物凄い勢いで渦巻き…
…自分自身では止めることができなくなってしまっていた。
学校、病院、仕事、竜彦、弘和…この全ての『仕事』を1日に完璧にこなさなければならず、次第に私は痩せて行った。
そんな生活が続き、季節も寒くなってきた頃…
父から連絡があり、『曾祖母ちゃんの一存で自宅療養をすることに決まった』と話しがあった。
曾祖母ちゃんは自分の病を知った上で自ら自宅療養を希望したとのことだった。
私は嬉しさから涙が止まらなくなった。
ひたすら涙を流しながら手帳を見てスケジュール管理をし始めた。
曾祖母ちゃんが帰ってくる日から仕事、竜彦、弘和のスケジュールを減らすことに決めた。
仕事の方は話し合いの結果週3日出勤になり、竜彦と弘和にも『自宅療養』の件を話し週1~2回にデート回数を減らしてもらうことにした。
この頃には竜彦からの毎月のお金や弘和からのお金、夜の仕事の給料で貯金も優に一千万を超えていた。
その為か…この家に来てから初めて『満たされた』気分になれた。
『これだけあれば曾祖母ちゃんを温泉旅行にも連れて行ける…生活の心配もない…』
満たされた気持ちの中、曾祖母ちゃんが帰ってくるまでに家中をピカピカにしようと決め、通帳を引き出しにしまい掃除を始めた。
家が思ったよりも広く、掃除する場所も沢山あった為、全て掃除し終わるまで3日程かかった。
いよいよ…明日は曾祖母ちゃんが帰ってくる日…
楽しみで高鳴る胸を押さえながら眠りについた。
朝起きると…
外は晴れていて日が差し朝から暖かかった。
ご飯を食べ、食器を洗い、着替えて曾祖母ちゃんの布団を綺麗に敷いた。
全て終わった所に…
『ピンポーン…』
ベルが鳴った。
私は急いで玄関へ行きドアを開けた。
母と杖をついた曾祖母ちゃんがニコニコ笑いながら立っていた。
おばあちゃん‼おかえり‼
私はそう元気に言い曾祖母ちゃんの腕をとった。
ただいま☺
そう答える曾祖母ちゃんはとても末期癌とは思えず、とても健康的に見えた。
曾祖母ちゃんが帰ってきて1ヶ月が経った…
曾祖母ちゃんは月に3回は病院に通い、毎日沢山の薬を服用しなければならなかったが前の様に具合が悪くなることはなく順調に平和で平凡な日々が流れた…。
季節は12月になり…
街は🎄クリスマス🎅一色になっていった…
そんな中…一輝から手紙が来た。
『クリスマスは日本に帰るから会おう…』
との内容だった…。
私は一輝に電話をかけ…
『楽しみにしてる』
と伝え、曾祖母ちゃんの家の住所を教えた。
『クリスマスもお正月も…曾祖母ちゃんも一緒…』
私はそう決めていた。
冬休みは…仕事を休み曾祖母ちゃんとずっと一緒にいると決めていた為、夜の仕事は12月20日までして、新年明けてからまた仕事を始めることを予めママには伝えてあった。
竜彦と弘和にも
『おばあちゃんと一緒にいてあげたいから…』
と言い、クリスマスと新年は纏めて後ですることにしていた。
優しい竜彦と弘和は…何も言わず納得してくれた。
私は2人に
『もし…寂しかったら遊んでもいいし他の女の子と過ごしてもいいよ』
と伝えた…。
2人共…
『カズハ以外となんて絶対ない…』
と言い抱き締めてくれた。。。
『ごめんね…。私1人…好きな人と過ごして…』
心の中で……2人に謝った。
この時…私の精神状態は既に落ち着いていて…『欲』自体も薄れ初めていた…。
だから、
『2人共…浮気でもして…私のこと捨ててくれたらいいのに…』
…と本気で思っていた…。
2人を見てると…切なくて…
私の心は罪悪感で溢れ出していた…。
それに……
この時…竜彦も弘和も私が3股していることにはとっくに気付いていた……
なのに…責めることもせず……私に優しくし…私を大事にし続けていた…。
正直……
辛くて…苦しくて…
『限界』だった…。
…何度も別れ話をした…けど…2人共…納得はしてくれなかった……。
『ずっと…このままではいられない…』
そう思いながら…頭が痛くなる程考えながら日々過ごしていた。
『股をかけるのも楽じゃない』
股をかけられても…『それでも構わない…』っていう位真面目な恋愛の場合…遊びでは続かなくなる…。
『遊びなら楽なのに…』
…何度思ったか…分からない…。
股かけてる方も…かけられてる方も…駆け引きが出来ないくらい本気で相手が大切な場合…
どうすればいいんだろう…。。。
竜彦と弘和……2人共私に関わらなければ今頃…私とは違う彼女と純粋な恋愛をして…幸せになっていたかもしれない…。
『なんで出会ってしまったんだろう…』
私は人生で初めて出会ったことに後悔していた…。
竜彦と弘和からは変わらず…毎日私と曾祖母ちゃんの体を労るメールが届いた。
『寒いから体気をつけて』……
『勉強も仕事も絶対無理するな』……
『何かあれば、すぐに連絡しろ。とんでいくから』………
その1つ1つのメールが優しくて…余計心が痛んだ…。
この時…私はあることに気づき…ある…1つの別れを決心していた…。
それは……
『一輝と別れる』こと…。
竜彦と弘和と付き合いが進む中…
『一輝のことは…愛していない…恋愛ではない…』
と気付いてしまった自分がいた。
じゃぁ…一輝への気持ちは❓何故…付き合ったの…❓
…それは…
『…同情…』
一輝に告白された時の言葉………
『アゲハみたいにいなくならないで…』
そう言われたその時から…『恋愛』ではなく『同情』になってしまった…。
でも…一輝と付き合って一輝と初体験をし、一輝と一緒にいれたことは本当に幸せだったし…
『後悔はしていない…』
あの時…途中までは私は一輝に本気で『恋』をしていたから…。
『同情』に変わりさえしなければ…私と一輝の未来も変わっていたかもしれない…
でも…そう気づいた時にはもう遅かった…
クリスマスの日…
私は一輝と別れることにした…。
…一輝に別れを告げる時の言葉……それは…もう準備できていた…。
一輝のこと…傷付けることは間違いない……けど、私なんかのことは…恨んで…嫌いになって…忘れられるくらいの存在に思って欲しかった…
そうして…すんなり別れて欲しかった…
『一輝は…大切で掛け替えのない人』
には変わりないから…。
なるべく、引きずらないように…
それだけを考えた。
12月中旬が過ぎた頃から雪が降り初め…一気に冷え込んだ。
曾祖母ちゃんと2人…暖かいお茶をのみながら
『クリスマスはホワイトクリスマスだね』
と話した…。
曾祖母ちゃんは子供のように目をキラキラさせて
『そうだね』
と言いとても嬉しそうに微笑んだ。
仕事納めの日…竜彦と弘和とも会い、少し早いクリスマスプレゼントを渡した。
竜彦も弘和も年明けに会った時にプレゼントを渡す予定だったらしく
『用意もしてなくて…ごめん…』
と謝っていた。
私はこの時、プレゼントにはこだわりがなかった為、
『気にしなくていい』
と軽く返事をした。
一輝との関係が終わった今…『恋愛』に関して冷めている自分がいた。
『私は…恋愛したことがない』
一輝との出来事が恋愛ではなく『同情』だと気づき恋愛すらしたことがない事実に気付く…。
竜彦も弘和も恋愛ではなく…『取引』に近い付き合い…。
『恋愛』って何なのか…『人を好きになる』ってどうゆうことなのかも分からなくなってしまっていた。
竜彦と弘和とわかれた後…何故かいつも以上に疲れて暗い顔で帰宅した。
家の中へ入ると冬独特のストーブの匂いと暖かさが体を優しく包み込んだ。
『スーッ…フゥー…』
思いっきり深呼吸をした。
『癒される…』
外で何があっても家に帰ると日々の小さなことが私を癒やしてくれた。
リビングに入ると…
曾祖母ちゃんがコタツに入りながらウトウトとうたた寝をしていた。
その風景も私の1つの癒やし……
曾祖母ちゃんに膝掛けをかけながら優しく微笑んでいる自分がいた。
学校も無事冬休みに入り…クリスマスまでの間は毎日曾祖母ちゃんと過ごし、クリスマスツリーを出したり、クリスマス用の食材を買いに行ったり…曾祖母ちゃんと2人笑いながら過ごす平和な日々が過ぎて行った。
クリスマス当日…
私は朝早くに起き、朝ご飯を作りながらクリスマスのお祝いの準備を始めた。
曾祖母ちゃんの体の為、ケーキは砂糖を少なめにしたり…料理は油を控えめにしたり…と全て手作りにした。
朝から初めたのに全ての準備が出来た時には昼もすっかり過ぎ3時になっていた。
曾祖母ちゃんはコタツに入りみかんを食べながら私が料理をしているのをニコニコと見ていた。
夕方5時…
携帯が鳴った…
着信を見ると…
一輝からだった。
もしもし。
あぁ💡カズハ❓俺だけど。今、○○の駅に着いたんだけど、タクシーが酷く混んでてなかなか乗れそうにないんだ。おばあちゃんの家は歩いて行ける距離❓近いなら歩いて行っちゃおうかと思って💡
そんなに混んでるの…❓…タクシーでワンメーターくらいの距離だから、歩ける距離だけど…道が複雑だから住所だけじゃ無理だと思う…。私、今から迎えに行こうか❓
マジ❓なら○○駅のスタバで待ってるから💡じゃあ💡
私は一輝を迎えに行く為に傘を持って家を出た。
駅まで歩く道のりでとうとう…クリスマスが来てしまった……と憂鬱な気持ちになりながらトボトボ歩いた。
スタバに着くと…
荷物を抱えた一輝が笑顔で走ってきて
カズハ‼⤴
と言い私を抱き締めた…。
一輝を抱き締めながらも胸はズキズキと痛んだ。。。
一輝の久しぶりの匂い…ズキズキ痛みながらも毎日一緒にいた頃の幸せな時間を思い出し懐かしさにドキドキしている自分もいて…
かなり複雑な心境だった…。
この日はかなり雪が降っていて、道路は雪と雪が溶け出した水でベチョベチョでかなり歩きにくく、雪も本降りになってきた為、歩くのは途中で断念してタクシーを拾うことにした。
駅前のタクシー乗り場はかなり混んでいたが少し歩いた先のホテル前はあまり混んでいなくてすぐに乗ることが出来た。
どうせタクシー乗るならカズハにわざわざ来てもらわなくても良かっね。ごめんね。
一輝が謝ってきた。
全然。大丈夫。気にしないで。
タクシーの中ではあまり会話は続かない…。
そんな時、ラジオから綺麗な音楽が流れてきた…。
あっ💡これ…俺好きなんだ😃
そうなの❓なんて曲❓
確か、“戦場のメリークリスマス”って曲😃坂本龍一って人のだよ💡
ふ~ん💡綺麗な曲だね…。
私と一輝はうっとりと聞き入った。
ただ…この時私の心の中では純粋に曲を聞いていられる心境ではなく…
『戦場かぁ…確かに…今日は戦場のメリークリスマスだわ……』
とこれから一輝に別れをつげなければいけないことで胸がいっぱいになっていて『戦場』の言葉にも敏感になり益々憂鬱になってしまっていた。
憂鬱な気持ちのまま家へつき…
憂鬱な気持ちのまま…曾祖母ちゃんに一輝を紹介した…
曾祖母ちゃんは一輝に深々とお辞儀をし
これからもカズハのこと宜しくお願いします。カズハはちょっと泣き虫で昔から繊細な子だから……支えてあげて下さい。私がいなくなってもどうぞ…末永く支えてあげて下さい。
と言った……
一輝は…
はい。俺に任せて下さい。それと…おばあちゃんも体には気をつけて長生きして下さい。
と言い…曾祖母ちゃんと握手した…。
…『耐えられない』
私は…
ちょっと…トイレ…
と声を絞り出し、一言いいトイレへ駆け込んだ…。
口に手を当てて…必死に声を押し殺しながら…泣いた。
『もう…嫌だ………。誰か…助けてよ………』
心の中でずっと叫んでいた。
曾祖母ちゃんと一輝のことを大切だと思っていなければこんなに辛くはなかったと思うが…一輝に会ってから…曾祖母ちゃんの言葉を聞いてから…また気持ちが揺らぐ自分がいて…。
『全て』に対して悩み苦しまなければならなかった。
トイレで水を流し…泣きながら…
『クリスマスなのに…』
と小さな声で呟いた。
暫くトイレに閉じこもっていると…
『コンコン…』
カズハ…❓
一輝が来た…
私は急いで涙を拭き両手で思いっきり目の部分を仰いだ。
ごめん。ちょっとお腹冷えたみたいで…。今行くから。
そう…❓大丈夫ならいいけど…。
私は少し時間をおいてからトイレを出た…。
すると……
トイレの外に一輝がいた………。
やっぱり…。カズハ…泣いてたの…❓
…………
一輝は無言の私を抱き寄せて昔のように頭を撫でた……。
涙が出そうになるのを必死で堪えたが………溢れ出す感情には勝てなくて…一輝に抱き締められながら泣いてしまった……。
ごめん…。ちょっと…我慢できなくなった…。曾祖母ちゃん1人待たせるの可哀想だから…行こう…。
私は一輝から静かに離れ…思いっきり冷たい水で顔を洗い流し、曾祖母ちゃんの元へ戻った。
『曾祖母ちゃんには…心配はかけられない…』
曾祖母ちゃんの前では終始笑顔で振る舞った。
一輝も…私の気持ちをわかってくれているかのように…曾祖母ちゃんの前では笑顔でいてくれた…。
曾祖母ちゃんと一輝と私…3人でクリスマスツリーをバックに写真を撮って、料理を食べ、ケーキを食べた。
一輝は曾祖母ちゃんにプレゼントを用意してくれていた。
プレゼントは綺麗なレースがついたピンクのネグリジェだった。
お姫様が着るお洋服みたいだねぇ☺
と言い、曾祖母ちゃんは終始笑顔で本当に楽しそうだった。
夜も遅くなり…曾祖母ちゃんは一輝に貰ったネグリジェを着て眠りについた。
曾祖母ちゃんを起こさないように…静かに部屋を出てリビングへ戻った…。
『一輝に…話さなければ…』
リビングに近づくにつれて…私の表情は一気になくなっていった…。
リビングへ入ると…
一輝がシャンパンを用意してくれていて…2人で乾杯をした…。
そして…
私にプレゼントを渡した…。
プレゼントは…2つ折りの綺麗な写真立てで…写真立てを開けると片面は硝子張りになっていてお菓子の家と小さなサンタ、スノーマン、ジンジャーマンがいて…水が入っていて写真立てを降ると雪が降るようになっていた。
それと…
音楽が鳴った…。
写真立ての電子オルゴールになっていた。
音楽は…
さっき聞いた曲…
『戦場のメリークリスマス』
だった…。
…綺麗……ありがとう…。
私は写真立てを見つめながら…心の中は…悲しみで一杯になっていた…。
それは…嬉しい…と感じることが出来ない自分に悲しくなってしまったんだと思う…。
暫く…写真立てを見つめていた私に一輝が静かに話しをしてきた…。
カズハ…もう1つ…プレゼントがあるんだ。
一輝はそう言い白い小さなケースを出した…。
ケースを開けると…
綺麗な指輪が1つ入っていた…。
カズハが高校卒業したら…18才になったら…俺と結婚して欲しい。カズハと離れ離れなのは…耐えられないんだ。俺についてきて欲しい…。
…『無理だ…こんなの…もう……私には無理……耐えられない』
私はコートも着ず…泣きながら…家を飛び出していた…。
そして…宛もなく必死に走った…。
『ハァハァハァハァ…』
息をきらしながらついたのは川沿いの土手だった…
そのまま1人川にそって力の入らない足でまた宛もなく歩き始めた…
川沿いを涙を流しながらフラフラ歩いていると…
カズハーっ‼カズハーっ‼
と一輝の声がした…
私は逃げた…。
必死になって走った…。
カズハ‼ちょっと待って‼ちょっと待ってって‼‼‼
一輝が叫びながら追ってくる……
来ないで‼ほっといて…‼‼‼
私も叫びながら必死に走った。
おい‼ちょっと待って‼待てってば‼‼‼
お願いだから…もうほっといて……‼‼‼
私も一輝も息を切らしながら走り続け…
待てつってんだろ‼‼‼
という叫び声と共に…一輝が私の腕を掴んだ…。
私は泣きながら一輝を突き飛ばし…
もう…終わり…もう………別れよう…
……と一言いった…。
それを聞いた一輝は…
なんで‼理由は⁉理由を言えよ‼‼
と怒鳴った…。
私が黙っていると…
訳が分かんねーよ‼ちゃんと…説明しろよ‼‼‼
といい私の両腕を力いっぱい掴み…私の体を激しく揺さぶった…。
私は…準備していた言葉を……一輝に言った………。
私…一輝のこと…本当は好きじゃなかった…。一輝と付き合ったのは……『お金』の為…。一輝がお金持ちだったから…だから付き合ったの。『お金』が欲しかったから…だから一輝と付き合って一輝とエッチした…。一輝のことなんて本当は好きなんかじゃない。………それに…今…一輝以外に2人付き合ってる人がいる。その2人も…お金くれるから付き合った…。お金くれたからエッチもした…。………一輝……だから…お願いだから…もう別れて…。もう…一輝は必要なくなったの…。
…………。
一輝は…何も話さなくなり……
周りは…びっくりするくらい静かで…川が流れる音だけが響いていた…。
沈黙が続く中…私は一輝を置いて…家に向かって歩き出した…。
『もう…終わった…』
一輝の横を通り過ぎた時…私の腕を掴み一輝が話しだした…。
カズハ…嘘つくなよ…なんでそんな嘘つくんだよ…
…ごめん…嘘じゃない…。
…っんなこと…いきなり言われて信じられるかよ…今までのことは全部嘘だったっつーのかよ❓
…うん…。
…俺とは…金目当てで付き合ったっつーのかよ…❓
………うん…。
また暫くの沈黙が続き……
その沈黙を破るかのように一輝が思いもかけなかった言葉を口にした…
…じゃぁ……金目当てでいいよ…。カズハが欲しいだけ金やるから。だから、俺と結婚しろ。
………
『何言ってんの……』
私はどう答えたらいいのか分からず…言葉を必死で探していた…
すると…また一輝が口を開いた…
金があればいいんだろ……。なら、金やるから。俺はお前とは別れる気はねーから。
そう投げ捨てるように吐き捨てて…一輝は私を置いて歩いて行った………。
一輝の表情も言葉も今までと違い…冷たく凍りついていた…。
一輝が見えなくなるまで…
私はずっと佇んでいた…
『何を考えたらいいのか分からない…』
…いや…私にはもう既に何も決めることも考えることも許されないんだ…。
『一輝にも…竜彦にも…弘和にも…私の気持ちなんてもう関係ないんだ…』
『私は…本当の人形になってしまった…。』
そんなことを考えながら…力のない足取りで家に向かって歩いた。
家が見え始めた時…一輝がタクシーに乗り込みどこかに走って行くのが見えた…。
『帰ったのか…』
そう思いながら家に入り…自分の部屋に真っ直ぐ行った。
部屋へつき、テーブルの横を見ると、一輝の荷物がそのまま置いてあった。
『帰ったんじゃないんだ…』
そう思いながらフラフラと玄関まで行き鍵だけを開けるとまた部屋へ戻り…
私はそのまま布団に倒れ込んだ…。
ゆさゆさと揺らされる感覚に気づき目を開けるといつの間にか一輝が帰ってきていた…。
ごめん…。寝ちゃってたみたい…。
そう言う私を悲しそうに見つめながら…
一輝は私に札束を差し出した………
……何………❓…
金…欲しいんだろ…。
…いや…いらないよ………
金‼欲しいんだろ‼
…………
一輝はそう叫び無言の私に札束を投げつけた………。。。
一輝……
一輝は私の声を無視し…私を布団に押し倒し…押さえつけた…。
一輝…やめて‼
一輝は…
『金やっただろ』
そう一言…冷たく言い放ち…私の上に覆い被さってきた……。
こんなの…やだよ‼
泣いて訴える私を力尽くで押さえつけ、一輝は私の体を求めた…
涙が…
止まらない…
一輝は…言葉とは逆に…優しく私の体を抱いた…。
時折……
凄く悲しい顔をして…私の涙を自分の手で拭いながら………。
全て終わった後……
ごめん……
そう言い、服を着て…一輝は部屋を出て行った…。
『襲うなら…お金で私を買うなら…最後まで優しくなんてしてほしくなかった……』
私は布団に倒れ込んだまま…ずっと涙を流し続けた…。
この日も…
一輝は私の中で果てた…。
私は…自分の体を…全てを洗い流したくて涙を流しながらシャワーを浴びた…。
シャワーを浴びながら…暫くしゃがみ込んでしまい動けなくなった…。
『一輝をあんな風にしたのは…私のせい…また…自業自得…』
いくら失敗すれば…いくら自業自得だと自分を責め続ければいいんだろう…
『自分がすること…考えることは全て裏目に出る…』
私…子供の頃から全然変わってないじゃん…
私は涙を流しながら呟いた…。
なんとか
立ち上がり…
体を洗い流し、風呂場を出た…。
一輝はまだ部屋にはいなくて、少し気になりリビングへ行った。
リビングの戸を少し開けた時…
頭を抱え込んで肩を震わせている一輝の背中が見えた………。
初めて一輝に抱き締められた時…あんなに大きいと思っていた背中は小さく…小さく見えた…。
『一輝………ごめんね…』
一輝の姿を見ていると悲しくて辛くて…また涙が流れた。
私は…一輝には声をかけることなく部屋に戻り
…布団に横になった…。
だるい……
体のだるさと寒さを感じながら眠りについた…。
朝…目を覚ますと、札束や荒れた部屋は綺麗に片付けられていて…
私の横で一輝が座ったまま…私の手を握り締めて寝ていた…。
私のおでこには冷たいタオルが乗っていた。
一輝…❓一輝❓
私の呼ぶ声に気づき一輝が目を覚ました…。
カズハ…具合…どう❓
…私…どうしたの❓
昨日、部屋に戻ったらカズハの様子がおかしくて、カズハ触ったらめちゃめちゃ熱くて。熱計ったら39℃近く熱あって慌てたよ。
一輝はそう言い私のほっぺに手を当てて優しく微笑んだ。
そして…私にキスをした…。
一輝はキスをした後、少し恥ずかしそうにしながら
ちょっと水変えてくる。おばあちゃんがご飯作ってくれてるから…ご飯も持ってくる。
そう言い部屋を出て行った。
『ずっと…看病してくれてたんだ……』
また…私の頬を涙がゆっくりと流れ落ちていった…。
……純粋な嬉し涙だった……。
この日、一輝とは昨日のことは一言も話すことはなく…
一輝は私の看病をしながら私のことをずっと優しい顔で見つめていた。
この夜、一輝と手を繋ぎながら眠りについた。
…遠い昔…
『一輝は家族同様…何をされても信じるだろう…』
と思ったことがあった…。
それだけは間違いではなかった…。
私達…2人の関係は『恋人』ではなく、なんの名称も付かなくなってしまったけど、私も一輝もそれで良かった。
『恋人』じゃなくても
『家族』じゃなくても
『友達』じゃなくても
大切には変わりない。
男と女の関係ってすんなり割り切れる程簡単ではない。
今まで…色んな出来事があった…
そんな思い出話を一輝としながら眠りについた…
私と一輝は次の日から別々の道を歩き始めた…。
また…いつか会うことを約束して、一輝は私の頭をいつものように撫でて…手を振って帰って行った…。
一輝が帰ってからはまた…曾祖母ちゃんと2人…平和で幸せな日々が流れた…。
大晦日は父、母、姉、妹も来てお節料理や年越しそばを食べ…
除夜の鐘の音を聞き…
元旦は…曾祖母ちゃんを連れて初詣に行った。
私は破魔矢や長寿の御守りを買いまくって曾祖母ちゃんに渡した。
曾祖母ちゃんもみんなも
『買いすぎだよ』
と言い笑っていた。
この時…この年のお正月が
『最後のお正月』
になるとは考えもしなかった…。
お正月が過ぎ…冬休みが明ける少し前…
曾祖母ちゃんは発作を起こし…救急車で病院に運ばれた…。
曾祖母ちゃんはこのまま…また暫く家には帰って来れなくなった…。
発作や痛みが酷く…
曾祖母ちゃんは昏睡状態のまま時が過ぎていった。
目が覚めても小さな曾祖母ちゃんの体中を痛みが襲い…
その痛みを抑える為…モルヒネを使った…
そのせいか………曾祖母ちゃんの記憶は曖昧になり…
私が会いに行っても…私が誰かも分からなくなっていった………。
私からはまた笑顔がなくなり、学校にも行かず自分の部屋に引きこもるようになっていった…。
竜彦や弘和にも会わず…誰の連絡も出ず…次第にご飯も食べなくなり一日中寝ているようになっていった。
そんな私を心配し、母が何度か家にきてご飯を作ってくれたりした。
そして…
曾祖母ちゃんはカズハのこと一番好きなんだからお見舞いに行ってあげて。
と毎回話してきた。
…私は正直…行きたくなかった…。
苦しんでる曾祖母ちゃんを見てるのが辛かったし…何より曾祖母ちゃんが曾祖母ちゃんじゃなくなっていくようで…ショックを受けていたし怖かった…。
分かった…。
そう毎回言いながらもお見舞いには行かない日々が流れた。
2月に入ってからは体調が悪くなり、ご飯も受け付けなくなっていき…トイレに駆け込み吐く日々が続いた…。
3月に入っても体調は悪いままで…寧ろ悪くなっていた。
フラフラになりながらお風呂に入っていた時…
今までにない激痛が体中に走り…私はお風呂場で倒れ込んだ…。
痛みが襲う度に激しく嘔吐した…。
痛みには波があり…痛みが収まっているうちに這うようにお風呂から出て布団へ向かいタオルを巻きつけたまま…倒れ込んだ…。
また…激痛が何度も襲い…私は暴れ狂った…。
何度目かの激痛で…私は気を失ってしまった…。
目を覚ました時には激痛は収まっていた…。
ボーっとしながら体を起こすと………
足元が濡れていて…………冷たかった…………
足元に目をやると………
布団には大量の血が流れ…血塗れになっていた……。
その状態を把握出来ずにいると…また吐き気が襲い…フラフラとトイレへ向かった…。
トイレへ行き便座へ吐き…何かが出る感覚に襲われて便座へ座った…
すると…
『ドボっ』と生理のように何かが出る感覚があった………。
恐る恐る見てみると………
小さな血の塊のようなものが落ちていた………。
『…病院に行かなきゃ…』
自分では何が何だか分からず…夢の中にいるような感覚にいた。
そんな感覚の中、着替えて体についた血を綺麗に拭き夜用のナプキンをズラして2枚貼り、タクシーで病院へ向かった……。
産婦人科での検査が終わり、先生に呼ばれて診察室へ入った。
先生が私に告げたのは…耳を疑うような事実だった…
「検査の結果ですが…流産したのだと思われます。」
『流産』…?
「今日、トイレへ行った時に出た血の塊のような物は恐らく赤ちゃんの入っている胎嚢と言われる袋でしょう…。」
先生にそう言われた時、夢の様な感覚から…現実に引き戻され…
涙が止まらなくなった…
『あれは…あれ…は……赤ちゃんだった…………』
私は顔を覆ったまま…何も話せなくなってしまった………。
「大丈夫ですか…❓」
その先生の言葉にも答えることが出来なくなってしまっていた…。
そんな私を気遣うように…先生が話しを進めた…。
「まだ…子宮の中に残っているものがあるから、次の赤ちゃんの為にも綺麗に出しましょう。」
そう言い…『流産手術』の説明を始めた…。
同意書と手術の説明が書かれた紙を貰い…手術は明後日の朝になった。
手術時間は短く、午前中入院のみで帰れるということと保険が使える為、手術費用は2万円程だということを言われ…この日の診察は終わった………。
私は…駅までゆっくり歩きながら色々考えた…
『一輝に話そうか…裕子に頼ろうか…母や父に話そうか…』
…その結果…
誰にも言わないで…私だけの中に閉まっておくことにした…。
同意書のサインは私以外にもう1人のサインが必要…。
私は……一輝ではなく……父の名前を記載した。
『病院には…誰が父親か分からないことにしよう……』
手術日当日…サインについて何か聞かれないか内心ドキドキしていたが……
先生からは…何も言われなかった…。
麻酔をされ…数を数えながら…意識はなくなり………
気付いた時には病院のベットに寝ていた…。
『終わったんだ…』
そう思った瞬間…涙が溢れ出てきた…。
手術が終わった後、簡単に診察をし、子宮収縮剤と感染予防の為の抗生物質を貰い、また…1人家に帰った…。
布団はまだあの時のまま…血が黒っぽく染みのようになっていた…。
手術の日から…一週間後…
私は布団を買い替えた。
布団を買い替えると……私は曾祖母ちゃんのお見舞いに行く準備を始めた…。
目の前で命が亡くなるのを見て…
『曾祖母ちゃんは…生きてる…今沢山会っておかなければ…きっと後悔する…』
そう思ったからだった。
『『私は…まだこの世に生まれでてもいない小さな小さな命に教えられた…』』
これまで荒んでいた私は、私と一輝の赤ちゃんに救われ…赤ちゃんのおかげで強くなれた…。
私は…小さな小さな命に心から感謝した…。
🐚皆様へ🐚
第2章を最後まで読んで頂きありがとうございました。
続きは
Butterfly's memoir~第3章 命形~
に綴っていきたいと思います。
第3章は題名の通り…
『命』
について深く考えさせられる出来事が多々ある章になります。
悲しい命や嬉しい命…色々な『命』を見ていきます。
どうぞ、最後まで読んで頂きたいと思っておりますので、今後ともどうぞ宜しくお願いします。
第3章からは🐚はじめに…🐚
の挨拶は省かせていただきたいと思います🙇
どうぞ宜しくお願いします🐚
🐚Ageha↔松岡一葉🐚
🐚追記🐚
『Butterfly's memoir』
を読んで頂き有難うございます🙇🐚
この章についてですが…綴り漏れがございました🙇🐚
この章では、『竜彦と弘和』と言う2人の男性が出てきますが、話しの内容以上に約一年間で2人共ボロボロになる程…金銭を要求・授受してきました…。
『第3章~命形~』
にも…後程この2人の男性は登場することになります…。
『豪欲』が招いた『最悪の結果』になってしまったと…思います。
今後も
『第3章~命形~』
に綴っていきたいと思います。
どうぞ宜しくお願い致します🙇🐚
🐚お知らせです🐚
こんばんは🙇🐚
『Butterfly's memoir』
を読んで頂き有り難うございます🙇🐚
新たな小説として、
『木蘭の涙~love is put from{Ageha}.~』
を更新し始めました🙇🐚
鳳蝶と鳳蝶の母の日記を元にした物語になります。
鳳蝶の日記の詳細はこちらの
『木蘭の涙…』
より物語形式でお伝えして行くことにしました。
『Butterfly's memoir』と合わせて是非御覧になってみて下さい🙇🐚
どうぞ宜しくお願い致します🙇🐚
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