どうして?お母さん…
お母さんはお兄ちゃんと妹だけを連れて家を出て行きました
***************
私、莉梨(リリ)が7歳で両親が離婚。
お母さんはお兄ちゃん妹だけを連れて家を出て行った……。
私は「いらない」と言ったお母さん…。
どうして?お母さん…
ただ知りたい…。
***************
この作品は、子供の時の莉梨の視点で大人になってから莉梨が描いていきます。
場合によっては不快になる可能性がありますが、過激的・暴力的な表現は含みません。
***************
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『 ・ ・ ・ 』
あの日は私と妹の菜奈が卒園式の日だった。
私と菜奈は顔は双子のように似ているけど11ヶ月差の姉妹。
私は4月。菜奈は3月生まれ。
式が終わりお兄ちゃんの帰りを待って、お父さんとお母さんと食事に出掛けた。
私は自分が主役のこの瞬間にはしゃいでいた。
ただ…楽しかった。
神様のくれた最後の
ご褒美の時間…だった。
食事が終わり
車で家の下に着く。
お父さんが
「先に部屋に行きなさい」って
マンションの二階の私の家。
私は階段を上がり部屋に入った。
「あれっ?」
上がって来ていたのは私だけだと気が付いた…。
「みんな、まだかなぁ?」
そんな程度の気持ちで…
二階のベランダから下を覗いた。
「あれ…?」
もうそこには誰も居なかった…。
私は不安になった…
下に見に行こうと慌てて振り返るとお父さんが立っていた。
そして…何事もなかったように言った…。
「直ぐに戻るよ、もう寝なさい」
そして…寝かしつけられた。
私は胸騒ぎが止まらない。
似たような事は何度もあった。
私だけが…
連れて行っては貰えない事…。
なのに…
初めてされた事のように寂しかった。
だって、帰って来ないなんて有り得ないと思ってた…
もう…
帰って来ないのかも知れない…
そんな不安が襲ってきていた…。
朝目覚めて、みんなを探した。
誰も帰って来てない…。
何で……?どうして……?
テーブルに、お父さんから手紙あって
「起きたら会社に来なさい」
って書いてあった。
私は…とてもじゃないけど動けなかった…。
暫くすると…
ガチャ…
玄関が開き…お母さんが入ってきた。
「お母さん!」
私は嬉しくて…叫んだ
ちょっと前の絶望感は一瞬で消えた。
でも直ぐに、お母さんは私が見えていないかのように荷物を纏めてる事に気付いた…。
予想もしない言葉に
私は何も言えず泣きじゃくる…
するとお母さんは苛立ちを隠せず言った。
「 泣くんじゃない!
自分が悲しいからって! 」
見た事のない顔で
お母さんは私を怒鳴りつけた。
……私は必死に涙を堪えた。
「えっ…?」
確かに…聞こえた…
でも…耳には届いても
心は受け止められない……
お母さんが荷物を持ち立ち上がった。
「行かないで!!」
私はすがりつくように泣き叫んだ
そんな私にお母さんは…
また小さく……
そして冷たく言った……。
「こ の 鬼 〰 !!!」
お父さんの叫び声で我に返った…
私が気が付いた時には…
お父さんが見た事もない形相で泣き叫びながら…
お母さんの首を絞めていた……。
初めて見るお父さんの涙……。
激しく抵抗するお母さんが目に写っていた。
「 ………お父さん 」
絞り出し…やっと出た言葉…
お父さんがお母さんの首から手を離す…。
行き場ない悲しみが私を壊したのか…
私はそのまま気を失って…
倒れた……。
遠退く意識の中で私は
「お母さんともう会えない」
そう思っていた。
でも、直ぐに会う事になる。
気を失っていた私は
気が付くと布団に入っていた。
起き上がり、家中歩いた…
お父さんは出掛けていた。
涙が滲む……
声を出して泣いた…
何もかもが分からなかった。
私は……
逃げる場所を必死に探していた。
『 私のお母さん 』
お母さんは誰もが振り返るような特別な美人ではなかったけど
独特な雰囲気を持っていた。
それから…
ご近所さんの社交辞令…
「可愛いお子さま達ね~」
と言われれば、
「そうなんです!本当に可愛いんです!」
…と恥ずかし気もなく答える筋金入りの親バカだったり。
お父さんの事も同様
ラブラブでおしどり夫婦だった。
家はお祖父ちゃんの代から
小さい会社を経営していて…
でも、お祖父ちゃんは私が生まれて間もなく亡くなっていた…
だから、お父さんは跡を継ぎお叔父ちゃんの残した会社で毎日休まず働いて…
会社にお祖母ちゃんは住み、お父さんと共に働いていて、私達家族は隣のマンションに。
だから同居ではないものの、皆 毎日顔を合わせていた。
一生懸命思い出そうとしても私はお母さんに特に誉められたりした記憶がなかった。
でも、たった一度だけ激しく怒られた記憶はあった…。
甘えん坊でママっ子だった菜奈に
いつもお母さんを独占されていた
私はいつも我慢していた。
お姉ちゃんである自覚は常に持っていたから。
ある日、
お母さんの大学時代からの友人の沙恵おばちゃんが遊びに来た。
菜奈は嬉しくて沙恵おばちゃんにベッタリだった。
私はこんなチャンス滅多にない…
だから、
お母さんにくっつき甘えた。
今思えば、
調子に乗りすぎていたと思う…
我慢の爆発でどうかしていた…。
直ぐに…
「やめなさい」
お母さんは私に言った。
でもお母さんはまだ笑っていた…
私がブレーキするには弱い注意だった…。
だから止めなかった。
笑っていたのは沙恵おばちゃんや菜奈がいたからだった。
私は、離れたくなかった……。
もう少しだけ…
そんな気持ちだった。
「いい加減しなさい!
みっともない事しないの!」
お母さんの怒鳴り声が響く……
沙恵おばちゃんも菜奈も
驚いて場は静まりかえっていた…
分かっていたのに…
止めたくなかった…
私は言葉通り
「恥ずかしい事をしてしまった」と思った
たった、これしか私とお母さんの記憶はない…。
…私が気付かなかっただけ…。
楽しい毎日で、
みんな笑っていたから…。
私にだけ
笑いかけてくれていなかった事…
お母さんに捨てられる
あの日まで…
私は…
全然気が付かなかった。
『 お母さんとの別れ… 』
お兄ちゃんと菜奈だけ連れて出て行ったお母さん…
あの日、何をしていたのか…。
帰って来た菜奈と遊んでる時に
「お祖母ちゃんの家に居た」
と教えてくれた。
お兄ちゃんも訳分からず連れて行かれて…いきなり帰る事になったと……。
分からない事だらけ……
だけど私は子供だから全て解決したと思ってた。
この辺りから私は…
私ではなくなっていた…。
悲しみに押しつぶされないように強く 強く…
泣くな…
悲しむな…
求めるな…
強くなるとは、私にはそういう事だった。
私と菜奈の小学校入学式の前日。
朝からお父さんとお母さんが居なかったからお兄ちゃんと2人きりで色々聞いた。
お母さんが夜になると出掛ける事
毎日夜になると、怒鳴りあって2人が喧嘩をしてる事
お兄ちゃんは言った…
「離婚するかも知れない」
お兄ちゃんは何も知らない…。
「離婚」は私にとって…
お兄ちゃんと菜奈との別れを意味していた。
私達は入学式を終えた。
菜奈がニコニコ。
「お外でご飯だって」
菜奈は自分が主役の会に
はしゃいでいた。
何も知らない菜奈だけが
笑っていた。
と思っていた。
でも分かっていないのは私も同じだったと気付く事になる。
車で家の下に着くと
「先に上に上がりなさい」
お父さんが言った。
また私だけか…
抵抗する事なく立ち上がる私…
すると…嫌がる菜奈を
………お父さんが私に頼んだ。
「あれ…?何で……?」
私は菜奈の手を引き上がる。
菜奈は堪らず…
二階のベランダから下を覗く…
「お母さん!!」
菜奈が叫ぶ…
慌てて私が下を覗くと
駅に向かってお母さんが走ってる
「ただ事じゃない」
お母さんの後ろ姿が物語っていた
振り返ると…菜奈が居ない…!?
菜奈はお母さんを追って走り出していた…。
泣き叫びながら…
お兄ちゃんは菜奈を追う…
私も…走って追った。
駅に着き
泣き叫び…
探し続ける菜奈…
でも、お母さんの姿はどこにも見つからない…
私とお兄ちゃんは菜奈を押さえる
私達を見て周りは騒がしくなってきた。
お母さんはもう居ない…
「帰ろう…」
私の言葉に菜奈もお兄ちゃんも無言で歩きだした。
そこにお父さんが来て
「お母さんがぁ!」
と再び泣きじゃくる菜奈を
お父さんが強く抱き締めた。
お兄ちゃんの目には涙が溜まっていた…。
私は涙は出なかった…。
私は既に一度捨てられている…。
まだ捨てられたままだった…。
お母さんは
私だけじゃなく家族を捨てた…
『 お父さんの彼女 』
お母さんの居ない生活が始まった
お兄ちゃんはただでさえ大人しい性格だったのに、部屋に引きこもるようになった。
末っ子で甘やかされて育った菜奈はワガママがエスカレートしていく…。
悲しみ方が分からない私は…
普通に過ごしていた…。
お祖母ちゃんはそんな可哀相な私達だったが、決して甘やかす事はなかった。
「悲しんだらいけない」
そう言わんばかりの教えが毎日続く…。
私はそんなお祖母ちゃんが居心地が良かった。
悲しめない私には、悲しむなと言われる事は難しい事じゃなかったから。
でもお兄ちゃんと菜奈はそんなお祖母ちゃんに強気に反抗した。
お兄ちゃんも菜奈もお母さんの後ろに隠れていた面影などなくなっていた。
そこにお祖母ちゃんの凄さを感じた。
でも結局はお祖母ちゃんに太刀打ち出来ないお兄ちゃんと菜奈…。
行き場のない気持ちは、今まで以上に優しいお父さんに迷わず向かっていた…。
お兄ちゃんと菜奈は悪いのはお父さんだと思っていたから。
菜奈はワガママを言ってお父さんを試していた。
「お母さんは、してくれたよ」
言葉なくても顔がそう言っていた
お父さんは精一杯、菜奈のワガママに答えていた。
お兄ちゃんは反抗期真っ只中。
お父さんを無視と決め込んだようだ。
お兄ちゃんと菜奈はお父さんが悪いと確信していた。
お兄ちゃんと菜奈にとったら、お母さんは良いお母さんだった。
お母さんが居ない日なんて一度もなかった。
いつからかお父さんは夜遊びが始まっていた。
寂しい思いをさせるお父さん…
お兄ちゃんと菜奈がお父さんのせいにするには充分な理由だった。
「お父さんが浮気したからお母さんが出て行った」
だって直ぐにお父さんに彼女が出来たから…。
ある日、お父さんに遊園地に誘われた。
はしゃぐ私と菜奈。
遊園地に着くと綺麗なお姉さんが
「こんにちは」
と現れた。
私は直ぐに「お父さんの彼女だ」と思った。
特に何も考えず仲良くした。
でも菜奈は違った。
敵意のようなものだろう…。
でもお父さんの取り合いなんてものじゃない。
お父さんの彼女に
「お父さんは私の方が好きなの」
そう伝えるだけに過ぎない。
お父さんと彼女に話す隙すら与えなかった。
お父さんから離れず、話し続けていた。
お姉さんがトイレに行った隙に菜奈が口を開く…
「…誰?」
菜奈のお父さんへ事情聴取が始まっていた。
お父さんは菜奈の迫力に嘘ばかり言っていた。
「子供一人に大人が一人いないと乗り物に乗れないから頼んで来て貰ったんだよ…」
でも菜奈はお父さんの有り得ない嘘をまともに信じていた。
そこはやっぱり子供だった。
私は何も聞かなかった。
お母さん離れをした私は限度が分からず、お父さんやお祖母ちゃん離れまでも中途半端に始めていたから。
楽しく時間は終わり
「またね」
と別れた。
『お祖母ちゃんとお母さん』
それから直ぐだった。
お祖母ちゃんが倒れた。
即、入院だった。
お父さんは私達の世話、お祖母ちゃんの世話、仕事…。
もう笑う事はなくなっていた。
誰がどう見ても疲れ切っていた…
ある日学校から帰るとご飯の支度がされていた。
「お母さん来たんだ…」
それは間違いなくお母さんの料理だった。
胸の鼓動が激しくなる…。
私は時間が解決し悲しい思い出は薄れていた…。
私は逃げ道を見つけていたのだ。
「お母さんも辛いんだ」
「本心じゃないかも」
…いつしか自分が都合の良いように解釈するようになっていた。
私なりの逃げ道だった…。
だからこそ、お母さんとの再会は複雑だった。
ガチャ…
振り返ると菜奈を抱いてお母さんが帰ってきた。
お兄ちゃんも一緒に居て笑っていた。
嫌でも甦るあの日の記憶が私の胸を苦しめた。
私が出した答えは精一杯の強がりだった。
「 私は平気 」
お母さんが居なくても問題ない振り…。
お兄ちゃんと菜奈は空白の時間を埋めるようにお母さんに甘えた。
お母さんは次の日も次の日も来た
結局はただの強がりの私…
学校が終わるのが待ち遠おしくて
終わると真っ直ぐ帰っていた。
ある日、菜奈は聞いた…
「お母さん、
ずっとこれから家に来れる?」
お母さんは…
目に涙を浮かべて言った…。
「寂しいよね…ごめんね…」
「寂しいよ…」って泣く菜奈…
お母さんも泣いていた。
菜奈をお母さんは抱き締めた。
お母さんが帰らないといけない時間になると、みんなで車まで見送る。
「また明日ね」
そんな繰り返しが2~3日続いた
そんなある日、お母さんと2人きりの日があった。
動揺し何も話せない私…。
そんな私を気にも止めずお母さんは淡々と夕飯の支度を始めていた
支度が終わるといつもなら帰る時間じゃないのに
「じゃあ、行くから」
お母さんの言葉に私は見送りしようと立ち上がった。
もちろん話す事など浮かばない。
黙って後ろを歩いていた。
…寂しさが襲う。
どうしていつもより早く帰るの?
私しかいないから…?
私がいらないから……?
そんな気持ちが私の表情を曇らしていた。
私を見たお母さんの顔が苛立つ…
その表情に私は体が固まった…。
「…外でそんな顔しないで!」
恐怖で何も言えずに黙る私
お母さんは深いため息をついた。
「お母さんを外で怒らしたりして 嫌な人だと思われるでしょ?」
信じられない言葉…
そんな事すら私のせいだった…。
そして…
倒れてから1週間後…。
お祖母ちゃんは亡くなった…。
小さかった私達はお見舞いすら行かせて貰えなかった。
初めて人の死を目の当たりにした私にはまだ実感が持てなかった。
私が初めて経験したお葬式。
みんなが泣いていた。
私はハンカチを目に当てた……。
涙は出ない……。
お祖母ちゃん……。
親戚やらお祖母ちゃんの友人やらで食事が始まる。
お酒で酔った親戚の叔父ちゃんがお父さんを怒鳴っていた。
「お前が苦労掛けるからだ!
どんなに大変だと思ってる!?」
「私達のせいで……
お祖母ちゃんが死んだんだ」
私は初めて気が付いた。
…悲しみが襲う。
でもやっぱり涙が出なかった…。
でも本当に本当に悲しかったよ、お祖母ちゃん…。
私の持ち物の殆どがお祖母ちゃんが買ってくれた物だった。
幼稚園の制服も小学校のランドセルも一緒に買いに行ってくれたのはお母さんではなくお祖母ちゃんだった。
お祖母ちゃんにいつも言われていた言葉
「莉梨は掴みにくいこんにゃく」
事有るごとに
「またこんにゃくになってる!」
って怒られたな…。
私はまた小さかったからウジウジしてるとかそんな意味だと思っていた。
今なら分かるけど…
なかなか変われなかったよ…。
私は相変らず「掴み所のない女」
お祖母ちゃんの死をきっかけに、私がお母さんを求める気持ちがなくなった。
ここまで育ててくれたのはお母さんじゃなく、お祖母ちゃんだと思ったから。
ありがとう、お祖母ちゃん…。
【莉梨8歳】
『 お父さんとお母さん 』
お祖母ちゃんのお葬式にも顔を出さなかったお母さん。
その後も御飯を作りに来る事もなくなっていた。
お祖母ちゃんの居ない生活の大変さに追われ…
お兄ちゃんも菜奈もお母さんの事を口にする事はなくなっていた。
来たのはお継母さんだった。
そう、遊園地のお姉ちゃん。
ご近所さんの偏見の目にも動じず堂々と私達の家族になった…。
でもお父さんは菜奈に
「家政婦さん」と…相変わらず。
菜奈はもちろん
「うちには家政婦がいるんだ」
言い振らしていた……。
お継母さんのお腹の中には…
お父さんとの赤ちゃんがいたのだ
何だか考えられない状況だった…
でも逆にこの状況が良かった。
お継母さんを家族として…
受け入れるか…そんな以前に
お継母さんのお腹の中の家族に会えるのが楽しみになったから。
お継母さんもまた、思った事を口にする正直な人。
気が強くお兄ちゃんも菜奈も喧嘩が絶えなかったけど、始まったばかりの家族。
何とか楽しくやっていた。
生まれたのは可愛い男の子。
可愛くて可愛くて…
みんな毎日笑顔だった。
そんなある日マンションの電話が鳴った。
出るとお母さんからだった。
「菜奈と来て欲しいの」
急な出来事に黙り込む…
「莉梨お願い!
菜奈1人だとお父さんには見つかっちゃうから
付いて来てくれるだけで良いの」
すがるように頼むお母さん…。
お父さんに悪いな…って
気持ちはもちろんあった。
でもこの時の私は
お母さんに会いたかった…。
何がして欲しい訳じゃない。
まだお母さんを心が求めていた。
「分かった…」
と告げていた。
次の日、隣町での再会が決まった
久々の菜奈に満面の笑みで近づき
菜奈の手を引きながらお母さんは言った。
「お母さんの家に行こう」
お母さんは私には用はない…
直ぐに伝わった…。
菜奈もそれに気付いた。
「莉梨は?」
「待ってるから行って来な」
私がそう言うと菜奈は…
「莉梨が行かないなら
行かないよ行くなら莉梨もだよ」
お母さんと離れて菜奈は変わった
菜奈は仲間外れなんて許さない…
強く、優しい子に育っていた。
結局、3人で向かった。
家に着くと知らないおじちゃんと赤ちゃんが居た。
お母さんにも新しい家族が出来ていたのだ。
お母さんは菜奈に生まれた赤ちゃんを見せたかったんだ…
でも、悲しい顔の菜奈…。
私には何で菜奈が悲しいのか分からなかった。
悲しい顔、何で元気がないの…?
私は見兼ねて言った…。
「菜奈帰る…?」
頷く菜奈…
そんな菜奈を見てお母さんは酷く落ち込んでいた…。
帰りにお母さんは私達に五百円ずつ渡して別れた。
帰り道、私は聞いた…
「どうしたの?」
「私の知らない子のお母さんになって悲しかった」
最初からお母さんの愛を知らない私と、お母さんの愛を充分に感じ育った菜奈。
気が付いてあげれない程、感じる事が致命的に違っていた…。
菜奈…ごめんね…。
落ち込む菜奈の手を引き…
ようやく家に着くと…
「莉梨、こっちに来なさい」
お父さんに呼ばれた。
ただ事じゃないお父さんの雰囲気を感じ取る…。
「 怖 い … 」
もうバレている…
直感だった…。
悪いと分かってる…。
だからこそ、怖かった……。
無言が続く…。
お父さんの悲しみが伝わる…。
堪らず…私が言った。
「ごめんなさい……」
「…嫌な思いしなかったか?」
お父さんの優しさが心に染みて…言葉が出ずただ頷いた。
そして、言葉を絞り出すように…
「まだ…関わるな…
分かったら…もう行って良い」
私は部屋に戻った。
もう二度とこんな事しないと誓った…。
菜奈はその後
「20歳になったら会わせてあげるから」と言われたらしい。
何でバレたかはご近所さんの目撃情報だった。
お父さんの怒りは直ぐにお母さんへ…。
ここから…18歳まで
お母さんとの接触はなくなる。
【莉梨9歳】
『沙恵おばちゃんとの再会』
高校生になった私は近所のスーパーでアルバイトを始めた。
そこでパートで入った沙恵おばちゃんと再会した。
私を発見した沙恵おばちゃんは
「……余りにお母さんに似てるから…、学生時代を思い出しちゃったわよ!!」
本当にビックリしているようで興奮していた。
私はもちろん…
複雑な気持ちだった。
誰かに似てると言われる度に、私は間違いなくお母さんね子供なんだと痛感するから…
沙恵おばちゃんは休憩時間が重なると良くお母さんの話をしてきた
「本当にモテモテでお父さんは
何人ものライバルから勝ち取ったのよぉ!」
「脚が綺麗でスタイルが良くて
すごく目立ってたのよ。
恥ずかしがり屋な部分がクールに見えてね…話し掛けにくい感じ…
でも話すと明るくて、それでイチコロよ!キャップよね~」
そんな話を聞いていると、
「どうでも良い…」
そんな風に思えない自分に戸惑っていた…。
ある日の休憩時間…。
話はとうとうお母さんが出て行ったあの日の話になった。
沙恵おばちゃんは目に涙を浮かべて言った…。
「あの時、莉梨だけは笑顔を絶やさなくてね…
お兄ちゃんや菜奈は私の前で泣いていたのに…
強い子と誰もが思ったのよ…
ある時、莉梨を見たら一点を見つめてボーッとしていたの…
私はそれを見て涙が止まらなかった 」
「お母さんは莉梨は何考えてるか分からないって言って来た事があってね…
あんな状況でも泣かずに強くて子供らしくない所が莉梨はあったのよ…
それ見て少し安心したの」
「何考えてるか分からない」か…。
だから私はいらなかったの……?
「莉梨は小さい時から頭の良い子でね…
周りの事ばかり気にする子だった
今もだね…、変わってないかな…
言いたい事もはっきり言う子だったけど、周りを気遣える優しい子だったよ」
ここでふと思った…。
私…お母さんに似ていたのかな…
それとも、似てきたのかな…。
少し答えが見えた気がした…。
沙恵おばちゃんは暫くお母さんとは連絡は取ってないらしい…。
「あの後、お母さんも苦労はしてたのよ」
って言っていた。
でも沙恵おばちゃんはその話は私にはしなかった。
私も聞いたりしなかった。
『 お母さんからの電話 』
ある日 部屋に居ると、お兄ちゃんが受話器を渡してきた。
「何?誰?」
無言で渡すお兄ちゃん。
「もしもし?」私は言った。
「もしもし…」
…お母さんだった。
一気に心臓が高鳴り手が震えた。
でもそんな自分を悟られたくない私は平静を装った。
「お父さんこの事知ってるの?」
私はあんな思いはもう絶対したくないから直ぐに確認した。
「うん……
お兄ちゃんが頼んでくれたのよ」
お兄ちゃんは
「話くらいさせてあげるべきだ」
私達 妹の為にお父さんに申し入れしたみたい。
「そう…、久しぶり!
…こっちはみんな元気だよ」
「莉梨は相変わらずだね…
お兄ちゃんも菜奈も殆んどしゃべってくれなかったよ…」
落ち込んでそう言うお母さんに私は深い意味などなく言った。
「それは仕方ないんじゃない?
何年経ってると思ってんの?」
「一度だって忘れた事ないよ!」
お母さんは声を荒げて言ってきた
あの時、お母さんは私の言葉に傷ついたのかも知れない…
そんな事はまったく気が付かず、声を荒げたお母さんに私も苛立ったけど
「とにかく私は気にしてない」
もうあの頃の私じゃないと…
冷静に言った。
「莉梨の事は心配してないから」
冷たくそう言うと電話を切った。
何なの!
心が叫ぶ…。
言葉は出なかった…。
電話が終わったと気付いた私にお兄ちゃんが
「話せたか?」
お兄ちゃんの気持ちは無駄に出来ない…
「うん!ありがとう」
悔しさを飲み込んだ…。
それからの私は最悪だった。
やっと消えかけたお母さんの記憶が私を苦しめ出した…。
また少し大人になった私は、お腹を痛めて生んだ子を愛せないという事が有り得ない事だと気付いていた
何で生まれて来たんだろう…。
どうして私だけ……?
そんな事ばかり考えていた。
ずっと逃げていたお母さんとの現実から、この時は逃げられなくなっていた。
あれがいけなかったのか…
これがいけなかったのか…
自分を責めて、どんどん自信がなくなっていった…。
私の苛立ちはたった一人、一番心を開いていた付き合って一年の彼氏、周へと向かっていた
うまくいっていた周との付き合いもおかしくなっていった…。
ひどい言葉を言い続けた。
周は一途で馬鹿で明るいだけが取り柄みたいな男だった。
何を言っても離れない…。
「周は辛くないの?」
私の問いに「バカだなぁ」って
顔で当たり前の様に言った。
「辛いから頑張るんだろ?」
「何で辛いのに頑張るのが当たり前なの?」
私の問いに周はまた、当たり前のように答えた。
「幸せになる為に決まってんだろ
みんな幸せになりたくて生まれて来てるんだから」
「逃げたら辛い所からまた幸せになる為にやり直しだよ!
みんな…やり直すくらいなら幸せになってやる!
って今を頑張るんだろ!」
周と頑張ろう…そう思えた。
私はこの日、ずっと使えなかったお母さんから貰った五百円で周とジュースを買って2人きりのお花見をした。
【莉梨18歳】
『 菜奈の妊娠…結婚 』
私は高校3年の進路相談の時、大学へ行って欲しいお父さんの気持ちは伝わっていた。
だけど既に働く事が大好きだった私はそんな気はなかった。
お父さんは言いたい事たくさん飲み込んで…
「好きにしなさい」
って言ってくれた。
菜奈は大学の進学を決めた。
お互いに高校の卒業を控えたある日…。
菜奈に呼ばれた。
「何?どうした?」
「妊娠した、結婚する」
驚いた…でも驚いたらいけない気がしてしまった。
菜奈は誰よりも普通の家族に憧れていた。
それは私が良く分かっていた。
「おめでとう」
祝福した。
心配はお父さん……
菜奈はお父さんにとって手の掛かる子だった。
だからこそ反対すると確信していた…。
案の定…
大揉めだった…。
菜奈もだが相手も若い。
大事な娘を預ける事が出来なかったんだろう…。
でも菜奈はまさか反対されるとは思わなかったらしい。
いつだって菜奈の味方だった、お父さん…。
菜奈はショックだった。
話し合いの末、
とにかく生む事、結婚が決まった
菜奈は大学を合格していた。
私で見れない夢を菜奈に託していたお父さん…。
菜奈とお父さんは
すれ違っていく…。
私にはどうする事も出来なかった
菜奈はそんな重苦しい空気もあったのか卒業式を終えたら結婚式を前に彼の実家に入ると言い出した
相談された私は
「良いんじゃない?」と言った…
今回の事は、
みんなが反対していた…。
だからこそ、
私は応援したかった…。
寂しかった子供時代…幸せを願うのは当たり前だった。
菜奈が出て行ってから、お父さんは塞ぎ込んでいた…。
私では埋められない…
菜奈の居ない穴は大きかった…。
お酒を飲んでは…菜奈の話を何度もしてきた。
見るに見兼ねて
ある夜、お父さんを2人で食事にと誘った…。
気が付けば私はお父さんと2人で食事なんてなかった…。
それに私とお父さんはお母さんとの事は話す事はなかった。
たった一度も……
絶対に禁句…
暗黙の了解のように……。
特にあの日のあんな事は思い出して話す必要はなかったし、2人の中では何事もなかった事になっていた。
「莉梨も、もう大人だしお母さんに会いたいなら好きにしても良いよ」
お父さんがこんな事を口にするのは、相当参った証拠だった。
「私はないだろ…、お兄ちゃんは分からないけど菜奈も同じだよ」
そう私が言うと嬉しそうに、
「そうか…」って言った。
私は冗談ぽく言った。
「私はお母さんの子じゃない」
「それはない!違うんだよ…」
お父さんは声が震えていた…。
私はお父さんのその姿に慌てて笑って言った
「こんな良く似た他人は居ない」
お父さんも少し笑って頷いた…。
式 当日…。
久々に会う菜奈は妊娠してるのに痩せていた…。
家族みんなが気付いていた…。
式の最後に菜奈はお父さんに手紙を読んだ。
菜奈はお父さんを変わらず思って感謝を伝えた。
家族みんなで号泣の式だった。
そんな感動の式が終わって間もなく…
出産を控えた菜奈は里帰りしてきた。
相変わらず痩せている菜奈…
私は分からなかったけどお父さんは気付いていた。
若い菜奈と彼は結婚後、彼の実家での同居は確定だった
お父さんはそこを強く反対していたのだ。
だからこそ、菜奈と喧嘩する事になった訳…。
お父さんの詠みは的中していて…
お姑さんとの問題
フォローがない彼
頼れる身近な存在が居ない
妊娠でただでさえ不安定な菜奈の気持ちが追い込まれいた。
実家に戻った菜奈は全てのストレスから解放され…無事に可愛い男の子を出産。
菜奈はもう旦那とは限界だった。
更に母となり強くなった菜奈…。
離婚し、1人で育てる道を選択した。
みんな離婚に猛反対した。
私は 「良いんじゃない?」と言った。
両親が二人揃わなくても立派に育ったと思ってる私は、絶対に両親が揃わないとと思う気持ちは当然なかった。
問題は親権問題…。
旦那の家族にとって 「長男の初孫」だった。
長い話し合いで菜奈は親権を勝ち取った。
離婚は成立した。
でも一歳にも満たない子供を1人で育てるのは想像を絶する程、大変だった。
私は出来るだけ力になってあげたくて協力した。
何より菜奈より甥っ子がめちゃくちゃ可愛いかったのだ。
菜奈と甥っ子との二人三脚の生活を精一杯応援した。
【莉梨19歳】
『 菜奈とお母さんの再会 』
ある日、菜奈が
「お母さんに会おうと思う」
と言ってきた。
私はお馴染みの
「良いんじゃない?」って言った
「莉梨も行かない?」申し訳なさそうに言う菜奈に
「行かない」
とキッパリ答えた。
私はこの頃、
大人になり、お継母さんへの感謝の気持ちが大きくなっていた。
他人の私達を育ててくれた。
血は繋がっていないのは分かっている。
でもお継母さんが作ってくれた食事を食べ、洗ってくれた服を着て、掃除をしてくれた家でここまで育ったのだから。
私にとって6年生んで育ててくれたお母さんより、10年以上育ててくれてるお継母さんの方が何より大切だった。
だから会う気にはならなかった。
お母さんと会った菜奈が帰って来た。
「はい、お母さんから預かったの
ネックレスだよ、私も貰った。」
誕生日が近かったからプレゼントだった。
来なかった私には手紙が入っていた。
気が付いたが開ける事無く、ただ受け取った。
「お母さんね…
莉梨とそっくりだったよ」
私は何も聞かなかった。
部屋に戻って、プレゼントを開けた…。
ネックレスは可愛い物だった。
付ける気にはなれずしまい…手紙に手を伸ばした。
もうあの頃のように
ドキドキする気持ちもなくなっていた「無」で読んだ。
(手紙)
莉梨、お誕生日おめでとう。
菜奈を助けてあげてるんだってね
菜奈から聞きました。
感心しましたよ。
莉梨…ごめんね…。
私は手紙を閉じた。
やっぱり、まだ複雑だった…。
次の日、
私は菜奈から話を聞いた。
「お母さんはお父さんが初めての交際相手で結婚して、
世間知らずだったのね
アルバイト先の店長に優しくされ口説かれ、その気になってしまったの
男を選んで皆を捨てたの、
でも直ぐにうまく行かなくなって、お父さんに戻りたいと頼んだけど遅かったの」
お継母さんのお腹に赤ちゃんが居たからだった。
「それで寂しくて直ぐに子供を作った。
そして、その男には捨てられてしまった
本当にバカよねぇ…」
「お父さんは本当に優しくて、なんにも不満なんてなかった…
お母さんがバカだったの…」
そう言って泣いていたみたい。
菜奈はお母さんに会う気になった気持ちを話した。
「母となり、こんなに可愛い我が子を捨てるお母さんの気持ちが分からなかった」
お母さんはその言葉にまた泣いて謝ってきたと。
母になった事のない私だけど、菜奈なりのケジメだったのだと悟った。
後はお兄ちゃんと私の話をして別れたみたい。
色々聞いても、私の心のモヤモヤは取れなかった。
「結局何なんだ」
そんな気持ちだった…。
お母さんも辛かったのかな?
菜奈の話を聞いて少しは同情していた。
私はこの後
お母さんを忘れて生きていた…。
このまま終わりたかった…。
でも悲しみのどん底が待っていた
【莉梨22歳】
『 出会いと別れ 』
私は26歳になり、周とは付き合って10年をまもなく迎えようとしていた。
結婚もせず仕事に没頭していた。
とにかく働いた。
私の喜怒哀楽全てが仕事だった。
周はそんな私を応援する所が批判してきた。
私は分かって貰えない気持ちとこの男に「一生は任せられない」と思って冷めしまっていた。
お父さんは 「男は仕事だ」と言っていて、私もそう思っていたから。
周と別れる事になった。
私は周とは 結婚は考えられなかった…。
お互いに子供過ぎたんだね…。
別れたものの…お互いに曝け出した10年近くの付き合いは切っても切れるものではなかった。
周は何度も復縁を申し出たけど、私は仕事の価値観だけは譲れず…断り続けた。
私はその後、それなりに恋愛はしたがうまく行かなかった。
その内…周は別の子に本気で恋をした…。
「お前以外で初めて本気で好きになった」
誇らしげに話す周に私には出来るのかな?複雑だった。
私は周と別れた後、変わらず仕事に没頭した。
一生1人で居るんだろう…と。
とにかく仕事優先な私は 理解者に恵まれる訳ない。
誇りを持ってやってる私には、 これ程 辛い事はない。
恋も結婚も諦めていた…。
でも、まもなく29歳を迎えるって私に… 運命を変える出会いが訪れる…。
出会いは決して胸を張れるようなものじゃなかったが、私は直ぐに恋に落ちた…。
名前は「小日向 周二」
自己紹介を受けた時…
むせて我に返った……。
驚きで息をするのを忘れていたのだ。
周と全くの同姓同名だった…。
私の生き方、価値観…
これでもかと言う程合致した。
誰にも理解してもらえなかった私を心から理解してくれる人だった
私は「運命」を初めて感じた。
神様がリベンジのチャンスをくれたと確信した。
付き合いはまったく問題なくうまくいっていた。
私は幸せ過ぎて…うかれていた。
自然と結婚を意識していた…。
「来年、籍を入れよう」
周二は私に約束してくれた…。
でも別れは何の前触れもなく…
突然訪れた…。
本当に些細な喧嘩だった…。
気が付けば、たった2ヶ月の恋だった…。
『 お母さんの携帯小説 』
さすがに運命まで感じた人との別れは、心を苦しめた。
別れを選んだのは自分だった。
辛い時に頑張れなかったから。
何かしていないと夜になると周二に連絡したくなる……。
そんな私が見つけたのは携帯小説のサイトだった。
私はかなり夢中になってハマっていった。
特に私はノンフィクションに。
悲しい話は苦手だけど、今は作り物の恋愛小説は私を楽しめませてくれそうにないから…。
ある日、いつものように見ているとある作者に目が止まった…。
旧姓のお母さんと全くの同姓同名だった。
「大坪 梨奈」
まさかね…
有り得ないよね。
でも気になるタイトル…
「私は最愛の子供を捨てました」
開けてみよう…。
その作者のプロフィール…
お母さんは僅か14歳で父、私にとってはお祖父ちゃんを亡くしていて、お祖母ちゃんと二人、暮らしていた…
貧乏だったが力を合わせて暮らしていたって…
沙恵おばちゃんから聞いた事があった。
内容はまさに!だった…。
話のあらすじ…
全てが家で起きた話だった…。
バカ正直なお母さんは包み隠さず全ての真実を書いていた…。
私はお母さんと確信した…。
私は読んだら私とお母さんの真実に近付けるんじゃないか…
何で私だけいらなかったのか…?
お母さんの苦しみ…
気持ちが描かれてる…
私はここに真実を確信し胸が高鳴った…。
私は心を落ち着かせ…
読み始めた…。
作品はノンフィクションと紹介していた。
お母さんの幼少期からお父さんとの出会い…結婚…
知っている話と同じだった。
更に作者をお母さんと確信し私は読み進めていった…。
お兄ちゃんを妊娠…出産…
幸せいっぱいに描かれていた。
そして次は…私の話……。
ねぇ…お母さん…
私はあれから泣いていないよ…。
お母さんは私の事を忘れてしまったの…?
生まれる前はどうだった?
生まれた時はどうだった?
ねぇ…お母さん…
私は生まれてきて良かったの…?
涙が溢れて止まらなかった…
作者へのメッセージボタンを押す
どうして?お母さん…
なんて…聞かないから…
でもね…お母さん…
もしお母さんの時間が戻ったら…
私を産まないで…
次は私を産まないで下さい…。
送信ボタンを押せず…
朝を迎えた………。
何時間も自分が作ったメッセージを見てたら…
私はふと思った…。
「どうして?」って何で聞かなかったのか…
「いらない」と言われた私は6歳
あの日は聞けないのは、さすがに仕方ない…
でもずっと「どうして?」って思っていた…。
私がどんなに嫌な子で思い出したくない程 私を嫌いだとしても…
結局は出て行った人…。
自分に言い聞かせる……。
いつも、逃げ道を探す…。
ただ「この世の終わり」みたいに悲しんでいた……。
私はお母さんに「いらない」と…
言われた6歳のままだった……。
イライラ…してきた……。
お母さんにではない…
自分にだ!!
良い歳して…
お母さんに愛されない位で私は、
すっかり「悲劇のヒロイン」
だった…。
もう……
「誰でも良いから教えてくれ!」
って気持ちだけど…
……お父さんにだけは
聞けないよ………
…携帯に目がいった。
作ったメッセージを消し………
「いるじゃん、ここに…」
1人で呟いた…。
『 私が生まれた病院 』
「どうやって聞き出そう…」
直接聞いても教えて貰えるとは思えない…
絶対に触れてはいけない…
だから、受けとめて生きてきた…
お母さんに何とか近づく事が出来れば…と考えた。
友達になれないかな?
携帯の世界はお互いに顔も見えない。
ある意味バーチャルな世界…
だからこそ逆に誰にも話せない話が出来たりするもの…
でも相手はそんな場所ですら
「嘘」をつく人なのだ。
一筋縄では行かない…。
どう近づこうか…
私が2歳になる前にお祖母ちゃんの家の隣のマンションに引っ越したと聞いた事があった。
でもそこに行って聞いてもな…
ってか…どこかも知らないし。
…生まれた病院!
そこなら、直ぐに動きだせる!
でも…さすがに当時の人は居ないかもな…
私が頼むと…
大事そうに「母子手帳」を出して
書いてくれた…。
発表の当日。
誰もがお母さんの手紙を読む中で私だけお父さん……。
嫌だな…
そんな風に思ってしまっていた。
菜奈のクラスは普通の授業なのに
最悪…って。
手紙の内容は何グラムで生まれて
と始まった事しか覚えてない…
でもクラスがどっと揺れる程、
大爆笑の手紙だった。
不安だった授業参観…
お父さんが救ってくれたんだ…。
卒業まで「莉梨ちゃんのお父さんは面白い人」って言われた。
そんな事を思い出しながら…
実家に向かった。
久々の実家…。
「里帰りですか?」と冷やかすお父さん。
張り切って、私の好きな物を作ってくれるお継母さん。
お兄ちゃんと菜奈とも話した…。
私は、みんなの目を盗んで、母子手帳を鞄にしまった…。
私が生まれた病院は実家の隣の区だった。
病院に着くと…
「日山さん・・・日山莉梨さん」
受付の声にいかにもベテランの看護婦さんが私の名前に反応を示した…!!
私に近づくと…
「莉梨ちゃん?大きくなって…」
…みたいな展開を期待していた。
…もちろん、そんな訳はなく。
私は直ぐに自分がどれだけ甘いか思い知らされた…
私と周二の付き合いはたったの2ヶ月…。
お互いの親、友達も知らない…。
例え告げなくても絶対に耳には入らない。
勝手すぎるかな?
とりあえず…
今は伝えなくても良い!って結論を出した…。
ひとりで頑張れるから…
他にも考えなきゃいけない事が山程あった…。
まずは仕事を辞めなきゃ…。
自分でも驚く程…即決断した…。
もう…仕事の関係を越えた家族のような存在のみんな…。
辞めると決めて…伝えて…。
みんな泣いてくれた…。
私は妊娠は告げず…
遊びにも行かないと決めていた。
それ程、仕事が好きだった…。
中途半端な関わりは私には出来なかった。
今、実家の会社はお父さんと、社長になる為にお兄ちゃんが一緒に働いている。
菜奈は一人息子を抱え、融通のきく実家の会社で働いていた。
何だかんだ何年も働いている菜奈は今、会社になくてはならない存在。
しかし、2年前にめでたく子連れ再婚した。
私は二度も結婚を先越され…そして菜奈は、妊娠…出産を控えていた。
とっくに会社は辞めても良い程、菜奈の生活は安定していた。
でも「親孝行」なんだろう…。
その後も勤めていた。
でも出産したらさすがに会社復帰はしたくない…だろう……。
私がやれば丸く収まる…。
何となく、そんな空気…
正直…私は
「冗談じゃない!」って感じだった。
私は仕事が生き甲斐…
自分を犠牲にする気も全くなかった。
むしろ…
今時、家族経営なんて…
新しい人 雇えば良いだけの話…
そう思って逃げていた…。
でも事情は変わった…。
直ぐに菜奈とのチェンジを告げ
勤めていた会社には、
「実家の会社の都合」
実家には
「勤めていた会社への不満」
と告げた。
実家にも直ぐに話す気はなかった
やる事はたくさんあるから…。
菜奈を妊娠して直ぐに…
お祖父ちゃんが末期ガンで入院していた。
その後、多額の借金を背負っていた事をお父さんは知った…。
お兄ちゃんが生まれた頃…。
お祖父ちゃんとお祖母ちゃんは
騙されたのだ。
お父さんは当時、公務員。
お祖母ちゃんは頭を下げて…
お父さんは実家の会社入ると決めた…。
お母さんはもちろん反対…。
でもお父さんは決意を変えなかった。
妊娠中のお母さんはお兄ちゃんを連れ自分の実家へ…
母子ともに命の危険にさらされていた。
その後、母は無事に回復。
菜奈は…半年入院……。
2 6 0 0㌘で退院した。
お母さんはお兄ちゃんを抱き…
片時も離れなかったと記してあった…。
母になった今…
その時、お母さんはどれだけ辛かっただろうと胸が痛んだ。
菜奈は心配された障害もなく育っている…。
菜奈の普通の成長を願い今喜んでいるのが伝わった。
『 一年半の真実 』
実家で勤めだして直ぐ…
まずは借金の事実を調べた。
確かに…借金はあった。
来月完済になる事が確認出来た…
「お父さん…凄い…」
こんなに借金があったのに私達はまったく何不自由なく育てて貰っていたから…
沢山の封筒…
ひとつを手に取り開けた…
「写真…?」
それを見て手が激しく震えた…
そこにはお父さんと…
お継母さんが写っていた……。
日付は…
‘1978年10月10日’
私がまだお母さんのお腹に居る時だった…。
お父さんはお母さんが私を妊娠中に不倫をしていた……。
私を妊娠中にお父さんは借金だらけの会社を継ぐことに
お母さんは家族を一番に考えて欲しいとお願いし反対
プライドの高いお祖母ちゃんが土下座までして守りたい会社だったから
お父さんはお母さんの反対を押し切り会社を継ぐことに
お父さんはそんなお母さんに罪悪感から色々連れて行こうとしたりプレゼントし
ようとしたり
「そんなお金どこにあるの?」
「借金があるのに楽しむ資格ないのよ」って……
借金をするって感覚がお父さんとお母さんは違っていた…。
月々の支払いさえしていれば、他は変わらず生活したいお父さん。
1日でも早く借金を返して前の生活を取り戻したいお母さん。
「気楽にやろう」と言うお父さんに
「誰のせいでこんな思いしなきゃいけないと思ってるの?」ってお母さん
二人はすれ違って行った
ストレスからお父さんの夜遊びが始まる
その時スナックで勤めていたお継母さんに出会った
当時、お父さんと同じで親による借金の返済に追われお継母さんとは境遇が同じ
だった
以前お継母さんにお父さんのどこが良いの?って聞いたことがあって
「借金を助けてくれたんだよ 世界で一番優しい人だ」って
二人が恋に落ちるのに時間は掛からなかっただろうなと思う
お祖母ちゃんは末期がんで入院中のお祖父ちゃんにつきっきりだった
大きかったお兄ちゃんは病院の保育室で預かってくれる所があったけど、小さい
私は病院には居られなかった…
経済的に厳しい時…どこかに預ける余裕もなく…
父と共に残った…。
お母さんは裏切ったお父さんに会いたくないから
「身体に障るから病院には来ないで下さい」
と言って会いに行く事もなかった…。
お父さんと二人きりの生活が始まった
手が掛からず人見知りもせず、従業員にも懐いていた私。
何事もなく、何とか1ヶ月が経とうとしていた日…
その日は会社がバタバタしていて皆が私から気が反れていた…
………!?
気が付いた時には私が頭から血を流してグッタリしていた…。
ハイハイをするようになっていたから、落ちないように柵をしていたのに…
なのに……階段から落ちていた
病院へ…
オデコの所がざっくり割れていたから、傷が残ってしまうって……
女の子なのに傷物にしてしまったとお父さんは自分を責めた
これからどうしたら良いか分からずもうボロボロだった…。
でも…私は責めたり出来ない…。
お父さんは…
もう私に償っているから…。
今まで…育ててくれた…
お母さんの分まで…
愛してくれたのだから…
子供を…
捨てない人生を選んだ親だけが…
子供に償う…
権利が与えられるんだね…。
…私はお父さんを許します。
- << 144 そうだよね… 『子供を捨てない人生を選んだ者だけが…』 『子供に償う権利がある』 んだよね…。 まだ読んでる途中だけど、母に捨てられ、祖父母に育てられた私が、幼い頃心にしまいこんでいた…大人になっても思い出される当初の気持ち…。 どんな思いを心にしまいこんでいたのか…自分自身でも見つける事のできなかった本当の気持ち…。 今、読んでいる途中の… この時点だけで… ずっと言葉にできなかった同じ思いを、何回見つけた事か……。 その言葉を見つけては、深呼吸をして落ち着かせています…。 続き、一文字一文字…大切に読ませて頂きます…
>> 145
リリちゃん…
本当にありがとう…。
支障なければ、いつでもいいので、
この先訪れるであろう…幸せの喜び、迷い、葛藤、愚痴…など。
…
レイコさん、初めまして。
コメントありがとうございました😄
誰かひとりでも心に響く作品になったのかな?と熱い気持ちが込み上げました。
ファンなんて恥ずかしいですか、本当嬉しかったです…
ありがとうございました😄
- << 151 あ"ーーー瀨瀨瀨 りり様、ご本人様から お返事頂けるなんて… どど、どうしましょう澈 初めて最後まで、読んだケータイ小説が、この小説で… 感想レスなんてした事もなかった私が……… 一方的なファンレター炻のつもりでレスしたものですから…昉昉昉 着レス通知にも、し忘れていて…。 今!!今!! 気付いたんです。 そんな最低な私が、①ファンと名乗るなんて昤 ベランダに走って行って昻 【バカヤロー昤】 って、マジ叫びたい程… 自分にムカついています! りりさーん もったいないお言葉を頂いて、感激してます。 そして… ごめんなさい(>_<)
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