山川弘美の日常
あたしは今人生最大の崖っぷちだ
外見はめちゃくちゃダサいわけでもないがナイスバディでもない
彼氏は(当然)いないしお洒落でもない
家の中でコタツとマッタリするのが好きで黒色の長い髪は常にでこだし2つ分け
極度の近眼なのでカワイクない細い黒色のフレームの眼鏡をかけて生活をしている
家にいるときは常にピンクのプレイボーイのジャージ
ベランダにキティちゃんのサンダルだってある(しかしヤンキーではない)
ちなみに彼氏いない歴は22年
ときめいた事もない
自他ともに認める『ダサ川ダサ美』である
だってしょーがないよ
キレイになる方法もわかんないしセンスのいい友達もいないんだもん
あたしの回りにはいつも『平凡』『並』『普通』しかいない
このまま平々凡々なOL生活が続いていくかと思われたあたしの毎日を激変させたのは
一本の『眼鏡』だった
しかしこの眼鏡
そんじょそこらにあるヨン様眼鏡とはちょっと違う
『欲しいものが見える』
魔法の眼鏡だったのだ!
(^_^)v
一人で吉牛が食べれちゃう22才のちょいダサOLが魔法の眼鏡を手にしたら…?
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あたしは山川弘美
22才のOL事務員
普通に短大まででて
普通に会社に就職をして
普通に会社に通っている
今流行りの『バナナ』ダイエットだってするし
死ぬ気で貯めた500円貯金で憧れの『スカーフ付きコーチバッグ』だって買った
今年の流行りがパープルだってのもコタツの中で見た『QVC』のキャストが何回も教えてくれたから知ってる
でもそんなあたしは万年マイラブプレイボーイで
情けないかなジャージマンなのだ
会社から帰ればこのまま朝まで過ごす
近所のスーパーにだってこのままいくしお気に入りの『服部くん』は今日も爽やかにあたしにお釣りを返してくれる
でも24時間365日いつも一人なんだよね
友達だっているにはいるが正直人間関係がうざったい
あたしにかかせないのはリモコンを押すと直ぐに笑顔で対応しているテレビと身体中暖めてくれる愛するコタツだった
しかしそんな生活を続けてはや三年
まわりの同期は着実に彼氏をゲットして幸せの分だけ巻いてある髪の量が増えていく
あたしは自慢じゃないが生まれてこの方恋人はおろか恋もしたことがない
世の中の仲良しカップルを見るたびに解せない思いで過ごしている
『そばにいられるだけで幸せなのまぁくん!』
『ずっと一緒にいようね!』
そういいながら愛するまぁくんからもらった小さな指輪にため息をつき
『あいつ意外とせこかったなぁ~食事もコースじゃなかったし車も国産だし』
そう言いながら『我が社人気No.1』のOLまみちゃんはゆるくなった巻き髪を手慣れた様子で巻き直すと
『今回はインターネットにすっかな』
と指輪の写真をアップで撮っていた
女って怖い
男の前では『安めぐみ』でも
女の前だと『金髪豚野郎』だ
このギャップを生き抜いていかなくちゃいけないならあたしには心臓の面積が狭すぎる
このまま無難に変わらぬ生活をしていけばいいしあたしには関係のないエリアだ
そう思って会社の女子トイレで隣に居合わせたまみちゃんの押すシャッター音を聞いていると
『ねぇ山川さんて毎日楽しい?』
まみちゃんが指輪の向きを変えながらあたしに話かけてきた
意外だった
まみちゃんは完全に特別なエリアの人であたしと課も違うから挨拶もしないしましては話なんかした 事もない
あたしは咳払いをしながら
『まあまあ楽しいですよ』
無難に答えた
『ふ~ん…そっか!まあまあ楽しいんだね。まみは生きてきて20年しか経ってないけど毎日楽しいよ♪彼氏もたくさんいるし…あ!特定のはいないんだけどね。』
なんなんだ
なんなんだ…
まみちゃん自慢か?
彼氏自慢か?
あたしは突然のまみちゃんとの会話をすぐに切り返す事もできずとりあえずニッコリ笑って前の鏡で髪を整えた
(早くずらかろう。関わることなかれだ)
あたしが手早くクシとピンをしまい始めると
『ねぇ山川さん明日の夜ちょっと空けてもらえないかなぁ』
今度は体の向きを変えてもっていたサマンサタバサのキラキラポーチにカメラをしまいながら話かけてきた
『え…何で?仕事の話?』
あたしが恐る恐る聞くと
『やだなぁ違うよ♪会社帰りに会社の話なんかしてどうするのよ♪山川さんてオモローい!』
『……じゃあ何かな?何か話があるの?』
『えっとね!コンパ!!まみのお兄ちゃんとそのお友達とまみの友達と3対3で』
ねぇ
あたしたち友達じゃないよね?
あたしの記憶が正しければあたしたちは初対面のはず…
しかもなぜあんたとコンパに行かなくちゃならんのか!
ええ!?まみさんよ
あたしは唖然としながらも作り笑い100%で答えた
『ああ…コンパか~残念だけど明日はだめなんだよね、わざわざ誘ってくれたのにごめんなさいね』
『え~!?用事ある人なの~?まみの予想では直行帰宅型間違いなしだったのになぁ』
(はい正解~)
あたしは心の中で親指を立てながらまみちゃんを誉めたけど同時に『直帰型』と見破られた事にじわじわと怒りが込み上げていた
『それにあたしコンパってあんまり得意じゃないし…なんでまたあたしなの?可愛いお友達ならたくさん同じ課にいますよね』
『山川さんて本当にオモロいね~さてはまだまだコンパが何かを知らないな~?コンパとは可愛い子だけで開催しても面白くないんだよ。
良い子・悪い子・普通の子が必要なの♪
ちなみに良い子はまみ♪
悪い子は河村ちゃん
普通な子は山川さん♪
めっちゃ楽しそうじゃない~?
ちなみにお兄はOLに大人気のニッソン自動車勤務だよ♪
悪くはないでしょ?』
いつのまにかまみちゃんはあたしのかなり至近距離まできて目をキラキラさせながら話し込んでいた
『ああ…普通の人材としては適任なんだけどあたしあんまり知らない人と喋れないし…』
『いいよいいよ♪喋りはまみと河村ちゃんに任せて山川さんは…って呼びにくいね♪『山ちゃん』ってよんでもいい?
山ちゃんはさもくもくと会に参加しといてよ♪女の子達は勿論タダだからさ』
誰かこいつをつまみだしてくれ…
しかも『悪い子』河村さんは社内でも1、2を争うセクシーボイスの持ち主でナイスバディの持ち主だが意外に団体行動を好まず一人でいるのが好きなタイプだった
あたしは河村さんについては面識もあったし割と話せる存在だった
しかしそんな河村さんもまみちゃんとコンパに行くとはなぁ…
想像してほしい
化粧もろくにしない黒髪眼鏡のダサいOLが
傍らにクルクル巻き髪の安めぐみ
傍らにセクシーボイスの天海祐希を連れたっていたら?
まぁ…これはあくまで例えであるが
撃沈間違いなしでしょ
そんな会合より
『お電話どんどん込み合ってきています!』の通販番組でも見ながらコタツと丸まっていたい…
そんな妄想をふくらませていると
『山ちゃん…このままだと楽しいお一人様暮らしに突入しちゃうかもよ?
たまには生の男の匂いもかかないと♪』
綺麗にセットし終えた完璧なまみちゃんスマイルでにっこりと笑いを浮かべていた
『あの…でもあたしは』
そこまで言うとまみちゃんの電話がなった
まみちゃんは手でごめんねのポーズをしながら電話に出た
『は~い♪まみです♪あ!お兄ちゃん?うん、明日の人数?今三人目が決まった所だよ!今回の人材は楽しめること間違いなしだよ♪お兄ちゃんもイケメン揃えてよね♪じゃあまたあとでね~♪♪』
まみちゃんは電話を切ると
『ってなわけだからよろしくね♪
明日また場所と時間は連絡するからね』
そう言うとあたしの頭をポンポンとなでながら
『じゃあね山ちゃん♪』
と女子トイレをあとにした
これが昨日の午後5時10分ごろの出来事になる
もうわけがわからない展開だ
しかし本当にわけのわからない展開になるのはそれから四時間後の話である…
それはまた次回のお話です(∋_∈)
どうなる
山川弘美!
どうした?
山川弘美!
まずは家に帰って素敵なプレイボーイのジャージを着てから考えよう…
あたしはフラフラした足取りで暖かいコタツの中を目指した
(続くのだ~)
(T_T)
こんにちわ🙇
人生3作目を楽しんでわくわくしているモモンガです
このお話は頭の中にめちゃくちゃ妄想が渦巻いていて楽しく書けるかな~
と楽しんでいましたが、実は大ニュースがありまして(ドキドキ)
先日書いたきらきらぼしですが
今さっき某出版社様よりお電話を頂きまして(こちらに先日色々問い合わせていたのですが)
『一度原稿に書いたらウチに送ってみませんか?』とお電話がありました
モモンガの人生でこんなことはなかなか起こるもんじゃありません
勿論
書いてみたけどだめだった~
も当然ありえますが…(というかその可能性の方がめちゃくちゃ高いですが)
やるだけやってみようかな…って思いまして最近遅筆になっておりましたがちょっと真面目に原稿用紙に向かうことにしました🙇
なので山川さんのお話は当分お休み致します🌱
書きはじめたばかりでなんなんですがすみません
また落ち着いたらこちらにも顔を出させて頂きます🌱
頑張ってきますね!🙆モモンガより
今日はなんだかめちゃくちゃ疲れた
そして明日まみちゃんとイケメン三人衆とコンパなんて…
いっそ素っぴんにジャージで出勤したろか?
ああああ…
憂鬱すぎる
あたしは食べ残したミカンに顔を押し付けながらいつものコタツの位置で深いため息をついていた
横をちらりと見ると日々使い回している限られた洋服達が無造作につまれていた
『この中で何を着ていったらいいのかわからん…
無難にTシャツにGパンなの…?
結婚式の為に買った一張羅のピンクのワンピース?
それとも就職の時に着たベージュのス―ツ?
誰かあたしんとこにピーコさんを連れてきてよ…
辛口でもいいから教えてほしい。
ええいくそ~
まみちゃんめ~
なんてね
実はまみちゃんのせいじゃないことはちゃんとわかってるよ
あたしが優柔不断なだけ
知ってるさ
はじめまして モモンガ様😊
横レス 失礼致します❗
昨日から 前2作品 続けて 涙しながら読ませて頂きました。
とても素敵なお話でしたね🎆
子育て中の私に 妊娠した日 出産し始めて娘を抱いた日 子供が入院した日 様々な事を思い出しながら 忘れかけていた 大事な想いを もう一度確認する きっかけを下さり ありがとうございます❤
今回の作品は また違ってた感じですね。
更新 楽しみにしてます。がんばって下さいね❗
でもさ
不細工で地味な女は長いものに巻かれて適当に笑って生きるか
派遣の品格のようなバリバリキャリアで一旗あげるか
どっちかしかないと思うんだよね
特にあたしみたいに可もなく不可もなく
中肉中背の普通の不細工は微妙に真ん中で…
髪の毛を染めることも巻くこともできない
そのくせ危機感もあんまりなく
『ま…いっかぁ』を繰り返し発している
そんなんだからだめなんだよね
あたしもガネ―シャ 見習って1980の靴でも磨こうかな…
『考えてたらお腹好いてきた…服部くんに会いに買い物でもいこうかな』
コタツの上にあった食べかけのミカンを口にいれるとそばにあったグレーのコ―トに財布を突っ込み外へと出た
外は夜の10時をまわっていた事もあり静かなものだった
築25念のボロいアパートにもウチと一階に一つしかもう明かりもついてなかった
お年夜は寝るのも早いなぁ…
夜道を歩いて五分くらいで広い通りに出る
いつも会社へ向かう道のりは悲しいかな体に染み付いていて歩く歩幅も一定に
同じスピードで歩いていた
回りには家族連れや腕を組むカップル
携帯をいじりながらiPodを聞くサラリーマンなど以外に人通りは多かった
いつも家に帰ったら めったな事では外に出ないあたしには結構新鮮な光景だ
ス―パーの看板が見えてきた
いつも会社が終わってそのまま直行してるから
今の時間に服部くんがいるかどうか…
あ、服部くんていうのはあたしのお楽しみアイテムでいつも1番レジにいるイケメン大学生なんだけど
風貌がレミオロメンなのにヨン様並の笑顔で親切に応対してくれるから
いつ行っても彼のレジには老いも若きもひしめき合っている
ディズニーランドで言えばプーさんのハニーハント並の人気だ
まぁ行ったことないあたしが言うのもなんだけどね(笑)
そうこう言っているうちに店内についた
この時間でも結構な人だなぁ…
あたしは自慢じゃないが料理は全然できない
故に
納豆やら卵焼きやら卵かけご飯位しかまともにできない
短大を卒業するまで料理上手な祖母と母
それに料理人の父と弟をもち
あたしは鍋どころかフライパンも持たない人生を送っていたからね
目が覚めれば朝食が
昼になったら昼食が
夜に戻れば夜食が
なんて素晴らしい実家時代…
『あ―あ
独り暮らしがしたいなんて言うんじゃなかったなぁ…』
手に握りしめたミカンを見つめながらあたしはため息をついていた
たしかに独り暮らしは気楽だ
すっぴんでパンツ一枚でも
風呂上がりにアイス食べてながらゴロゴロしても
誰も何も言わない
というか見向きもされなくなった
という方が正しいかな?
一通り店内を回りあたしは1番レジに並んだけど残念ながら服部王子はいなかった
『レジ袋はおつけしますか?』
少し小太りのおばさんが微笑んだ
『はい、お願いします…』
肩を落としながら袋に商品を詰め替えてあたしは足早に店を出た
店を出ると何やらヤンキー ちっくな集団が店の入り口でたむろしていた
最近のヤンキーは上下スエットにダウンジャケットなんだね…
てあたしも似たような格好じゃん
あああああああ…何か視線が痛い
やっぱりジャージの下位着がえてこれば良かったかなぁ?
遠まきにみたヤンキーなお兄ちゃんとお姉ちゃん達がやたら盛り上がっている
こんな時にそしらぬ顔で通り過ぎれない山川弘美…
大人なのにごめんね
あたしはくるりと振り替えると今来た道を戻り少し遠回りだが店の反対側の道から帰ることにした
これがあたしの今後の運命を左右することになろうとはこの時まだ知るよしもなかった…
ああ
弱気なあたしのバカ野郎~!!
しばらく通りを歩くとぽつりぽつりと街灯が見えてきた
さっきと違い今歩いている道は駅の裏手になるから人通りはまあまあだけど隣接するコンビニ以外はなんにもない
『夜に通るとなんかこわいな~早く帰ろう…』
さっきス―パーで買ったカフェオレを一口飲むと白い息がまわりに広がった
『ん~いいね~』
足早に歩いていると小さな公園が目についた
日頃公園に入るなんて事もないが入り口にちょうど街灯もあるしゆったりめのベンチもある
『飲む間、ちょっと休憩していこっかな』
買い物袋をばさっと置くとあたしはおもむろに腰をかけた
深いため息をつきながら上を見上げると小さな星がてんてんとしていて何だかちょっといい気持ちになってきた
『しかし今日は寒いなぁ…
帰ったらお風呂わかさなきゃなぁ…』
って別に明日のコンパに期待していて綺麗にするわけじゃないよ
いつもメリットなのにパンテ―ンにしたのも
ついでにトリ―トメントも買っちゃったのもあくまで気分転換だからね
ってあたし
やる気まんまんじゃないですか
一応あたしにだって返信願望はあるよ
なんてっても
腐っても女子だしね
だけど生まれついて我が家はみんなジャージ―ズ
渡る世間は鬼ばかりじゃないけど
実家は地元ではなかなか名の知れた中華料理店で朝から晩までお客さんは絶えない
小さいときから両親も祖父母も店に立っていてあたしと弟はできるだけの事を自分でしていた
料理は弟
掃除や洗濯はあたし
いつも小学生へ行くときにみんなは可愛いウサギやリボンのついたゴムにフリルのついたスカートをはいていたが
朝から母と祖母は仕込みに忙しくてあたしは髪をとかすと祖母の使っていた黒いゴムをさっと結びポニーテール以外の髪型はしなかった
しかも店が職場だからいつもみんな動きやすいようにジャージで過ごす
職場では白い上衣に着替えるけど
学校から帰ってもいつも私服はそんなもんだった
弟は部活でサッカーをしていた事もあり一年の大半はジャージ姿だし
あたしは母に
友達のお誕生日会やみんなで集まって買い物にいく日にも
けしてオシャレをしたいとは言えなかった
『弘美はこれでいいわね?』
いつもそう言って買ってきた新しい服はGパンにTシャツだった
親子揃って買い物にいく時間もなく
授業参観にも万年不参加の我が家で育ったあたしは
青春の大半をもったいなくも家事をもって制してしまった…
その間
オシャレや恋にはとんと無縁で興味もわかなかった
そんなこんなで19歳になったあたしはこのままじゃいけないと短大を出た後に店をついだ弟にすべてを託して
一念発起で独り暮らしをするために実家を出たのであった
しかし社会人デビューしたからといって生活が一変するわけもなかく…
あれから三年
あたしは22歳にもなっていまだ恋もオシャレも知らないままだ
雑誌をみたり
仕事帰りに美容院を覗いたりもしたけど
あんな雑誌から抜け出したみたいな人たちがいる世界にどうしても勇気が出せなくて踏み込めなかった
『かと言ってこのままもなぁ…』
あたしが深いため息をついて空を見上げるとさっきよりも強く星が光っていた
『さっ…帰ろうかな』
あたしは飲みかけのカフェオレをぐいっと飲み干すとベンチの脇にあったゴミ箱に缶を投げた
その時だった
『はっくしゅ―ん!』
公園の中から誰かが大きなくしゃみをした
(え?誰かいるの?)
あたしは姿勢はそのままで目だけを公園の中へと動かした
ぼんやり街灯が光る中
公園のベンチに誰かがうつ伏せて頭を下げている
(こわ~浮浪者かな…早く帰ろう)
そう思い荷物を持ちその場を立ち去ろうとすると
公園の中から誰かが立ち上がった
そのひと影はまっすぐとあたしに向かって歩いてきた
(こわい…どうしよう…走るか?走るか弘美?)
そう思いクルッと背中を向けるとあたしは走り出した
その瞬間
『待って!あの…ティッシュ持ってませんか?』
意外な声にあたしは立ち止まった
女の人だ
後ろを振り替えると鼻の頭を真っ赤にした茶髪の綺麗な女のひとが鼻をすすっていた
『ごめんね驚かせて…鼻が…とまらなくて…ティッシュ持ってないかな…』
あたしはコ―トに入っていたポケットティッシュを彼女に差し出した
『ち―ん!ち―ん!』
後ろを振り返りながら思い切り鼻をかんでいる
綺麗な人は何をやっても嫌みがないなぁ…
黙ってみていると女の人は照れくさそうに笑ってあたしにお礼を言った
『ありがとうね、助かっちゃった』
ティッシュを返そうとした彼女に
『いいですよ
差し上げます、それよりこんな所にいたら危ないですよ?』
そう言うと彼女は何回か頷き『ありがとうね、今…人を待ってて…そうだ、ちょっとだけ一緒に話しない?』
そう言うと彼女はさっきまであたしが座っていたベンチに腰をお
そういうと彼女はさっきまであたしが座っていたベンチに腰をおろした
『あの…あたし』
『まぁまぁ、たまにはこんな出会いもいいじゃない?』
そう言うと白いコ―トの右側から小分けされたチョコレートを取りだしあたしに差し出した
普通なら完全に走り去るシチュエーションなんだけどあたしはなぜかすんなりとチョコレートを受けとると隣に座った
隣に座った女の人は短い前髪に腰まである長い髪を前後に揺らせてチョコレートを楽しそうに剥いていた
横顔は上から照らされる白い街灯の光に浮かび上がって更に白く
そんなにアクセサリーはつけていないのに整った目鼻立ちが美しく女のあたしからみても相当な美人だ
芸能人で言ったら
そうだなぁ…
最近テレビでみた『飯田みゆう』に似てる
年は多分25位だけど最近お笑いやバラエティーに出てくるマルチタレントで女優さんもしている
あたしの隣にいる彼女はすっぴんに眼鏡をしているが完璧に化粧をしたらきっともっと綺麗になるんだろうな
そう思いながらチョコレートを食べていると彼女があたしを見てまじまじと言った
『あなたもったいない。磨けばすごく綺麗になるのに』
『…あの、新手の勧誘ですか?あたしお金とか全然ないですよ』
彼女は吹き出して大笑いした
『あっはっは…
そういうのじゃないのよ、あなたの将来性の話
あなた近い未来に株がかなり上がるから』
『株?トレード?あたし株なんてもってませんよ』
『違うわよ、あなた自身の評価の数値。
今はそうでもないけど直に上がるわ
仕事か恋愛かはわかんないけどね』
美人なお姉さんは頭のネジが少し緩い人なんだろうか…
あたしはちからなく笑うと聞いてみた
『あたしの将来性ってなんなんでしょうか…?あたし自分にそんなものがあるようにとても思えないんですけど…』
するとお姉さんは眼鏡をゆっくりはずしてこう切り出した
『あたしが一年前にいてもすっぴんにそばかすだらけで男友達もいない、万年80キロの眼鏡OLだったって言ったらあなた信じる?』
あたしは黙って首をふった
『でも実は本当なんだな、これが』
お姉さんは手元に外した眼鏡を指でなぞると嬉しそうに息をかけて吹いた
『あたしね、去年の今頃までただの頑張ってる普通のデブだったの
髪の毛も今のあなたとおんなじ真っ黒で
見た目はそんなんだし性格もはっきりしてなくて会社でもいつも地味な存在でね
自分でもこんなはずじゃなかったっていつも思ってた…
でもね
ある日を境に変わる努力をはじめたの
それまでの自分を一変するような発見があったわ
それからしばらくしてほどなく人生を変えるような奇跡が起きたのよ
信じられる?
たった一年で自分が変わるのよ
今まで25年間何も変わらなかったあたしの人生がたった一年間で全て変わったのよ?
生き方も
考え方も
物の見方もね』
そう言うとお姉さんはにっこり笑った
スゴイ
今あたしの目の前にいる色白スレンダー美人が
一年前まで体重80キロのすっぴんOL…
あたしはなめまわすように彼女の足の先から頭の上まで何度も見た
どう見たって体格はあたしと同じ位だし(勿論お姉さんの方が痩せてるけど)
身長だって少し高いくらいだと思う
あたしが160だからいいとこ165位かなぁ…
『あなた…変わりたいと思ったことない?』
『ありますよ。変われるものなら今すぐにでも変わりたいと思います…でも…』
『変わり方がわからない…どう頑張ったらいいのかわからない…違う?』
あたしは黙って頷いた
『努力するっていっても何から頑張ったらいいのかわからない時ってあるよね?そんな時はまずこれ かな、はいどうぞ』
お姉さんはあたしの手にさっき渡した眼鏡を差し出した
『これは…?』
『これはあたしが変わるきっかけになった魔法の眼鏡。あたしも一年前にあなたと同じように悩んでいるときにある人にもらったの。最初はうさんくさいなぁ~って思ったけどね、これも何かの縁だからあなたにあげる。私にはもう必要ないから』
お姉さんは立ち上がるとさっきのス―パーの方角から一台の車に手を降った
クラクションが短く響くと窓が空き、中からいかにもやりてって感じの美人さんが声をかけてきた
『飯田さんごめんなさい、遅れちゃった!押してるらしいから早く乗って!』
不思議なお姉さんは立ち上がると
『今の話は二人の秘密ね。あたし飯田みゆうっていう一応芸能人なんだ良かったら連絡して?』
そう言うとお姉さんはカバンの中から一枚の名刺を取り出した
『松竹梅タレント事務所所属
飯田美優(みゆう)』
あたしが驚いて顔をあげると
『今の話は二人の秘密ね』
軽くウインクをすると後部座席に滑り込んだ
あたしは呆然としながら発進する車を左手に見送るとその場にヘタヘタと座り込んだ
『…本物かよ
びっくりするからこういうのやめてよ~
しかも魔法の眼鏡ってありえないし』
あたしは右手に握りしめていた眼鏡を目の高さまで持ち上げるとまじまじと見つめた
透明のフレームに耳にかける部部にオシャレなデコレーションがついている
右側にピンクのバラと小さなラインスト―ン
左側に薄い紫のバラにラインスト―ン
普通にオシャレな眼鏡にしか見えない…
『魔法の眼鏡ねぇ…』
あたしはかけていた眼鏡をはずし
恐る恐るその眼鏡をかけてみることにした
『よしかけるぞ』
あたしは息をのみ魔法の眼鏡をかけてみた
恐る恐る目を開けるが視界になんら変化はない
意外に度はあっていて不自由はない程度だが
魔法だといわれるほど何も変化はない
『なんだよ~飯田さん~
ギャグはテレビだけにしてよ~
普通のOLをからかわないでよね~
あ~期待して損した』
そう言って眼鏡をはずそうとした時に右側のピンクのバラに手がかかった
『カチッ』
あれ?なんだ?ボタンなのこれ…
そう思いカチカチと押しているとス―パーの方から一人のサラリーマンが歩いてきた
なにげなく見ていると頭の上に何かがみえる
『何?』
あたしは眼鏡をはずして目をこすった
そしてもう一度眼鏡をかけ直した
するとサラリーマンの頭上に325という数字が見えた
『何だこれは…』
あたしは呟きながらサラリーマンをガン見していた
『325』という数字は動かずそのままサラリーマンの頭の上に乗っている
あたしは今まで自分が使っていた眼鏡に差し替えてみた
顔をあげるとサラリーマンだけしか映っていない…
あたしはもう一度魔法の眼鏡をかけてサラリーマンを見た
やっぱりサラリーマンの上には325が乗っている
『325ってなんなんだよ…
なんで数字が見えるの?』
ドキドキする胸を押さえながらあたしら今きた道を戻りもう一度人通りの多い道へと引き返した
大通りに出るとそこには唖然とする光景が広がっていた
道行く人の頭の上には様々な数字が浮かび上がっている
ある人は920
ある人は1059
ある人は125
そしてそれはよく見ると女にはなく男の人の頭の上にしかない
『わけがわからない…なんなんだこれは…』
しばらく人の往来を見ているとあるおじいさんの頭の数字が高速回転で上がり始めた
さっきまで2058だったのが今では2714になっている
よく見ると数字は上がったり下がったり
そのままだったり様々だ
するとおじいさんがかかってきた携帯に足を止めて話し出した
『もしもし…わしだ。…うん、うん!よしよくやった!上がったか。あ~そうか600万の小遣いアップだなぁ』
そう言って豪快に笑いながら歩き出した
あたしは頭の中で電卓を押した
2714…
2058…
差は656
おじいさんは600万の収入が入ったと話していた…
もしかして
もしかしてこれは…
頭の上に年収が乗っているんじゃ!?
もしくは財産!?
あたしは思わず口を押さえて後ろを振り返った
『えらいこっちゃあ…
ひとの財産がわかっちゃうなんて…
この眼鏡があれば貧乏と金持ち一目瞭然じゃん…』
あたしは紫のボタンをもう一度押してみた
すると頭の数字は消え
普通の日常風景に変わった
これが魔法の眼鏡の威力なのか…
『えらいもんもらってまったなぁ…』
そういって眼鏡を触るともう一つのピンクのバラに手がかかった
『…これを押すと何が見えるの?』
息をのみもう一度ボタンに手をかけたが
怖くなり手を引っ込めた
『いかん…
これ以上ファンタジーが起きると頭がおかしくなる…
今日はもう帰ろう…』
既にヤンキーのいなくなったス―パーを横切りフラフラした足取りでこたつの待っアパートへと向かった
今日はもう早めに寝よう
はずした魔法の眼鏡をポケットに入れるとあたしは静かに目を閉じたのだった
みなさまへ🙇💦
すいません
誤字脱字が多くあり読みにくいと思いますがどうぞお許し下さい💦
そして前ページに
『もう一つのピンクのバラにてがかかった』
とありますが
最初に押したのがピンクのバラなので
次に押すのは紫のボタンです🙇💦
書き直そうと思いましたが削除して書き直すとこのスレが消えてしまうかもしれませんから気をつけて下さいねと
前に教えてくださった方がみえたので
今回はこちらにて訂正させてください🙇
申し訳ありませんでした💦
そして
明日から右手を手術しますので当分携帯にはさわれなくなります💦
しばらくこちらはお休み致しますが
またよろしかったらぜひ覗いて下さいね🙆
長文失礼致しました🙇🌱
ももんがより🌱
モモンガさん
おはようございます😊
また来てしまいました💦
今日は手術との事
何も出来ない私ですが手術が成功するように祈っています🙏
更新は回復してからでいいのでゆっくり療養してくださいね🎵
頑張って‼モモンガさん
翌朝いつもより早く目が覚めたあたしはいつも通りに着替え出社の準備をした
どんなに考えたってあたしに変わる要素も変わろうという強い意思もない
一日の付け焼き刃でどんなにオシャレをしたところであたしはまみちゃんにや飯田さんみたいに輝けるわけはないのだ
あたしは一番無難なグレーのアンサンブルにGパンを 合わせて入社の時に買った黒いヒ―ルを履いた
笑われるかもしれないがこれがあたしなりの精一杯なんだからしょうがない
その上からまたまたグレーのコ―トを羽織り家を出た
『さっむ~!』
あたしは両手をポケットに入れて駅までの道をいそいだ
ポケットには魔法の眼鏡が入っていたけど使うときもないだろうと思っていた
だって人の財産なんか見たって喜ぶのはセレブ婚目指してるOLか詐欺師くらいなもんでしょ?
別に見たからってあたしのお金になるわけじゃないしさ
そんな事を考えているうちに駅についた
相変わらず凄い人だ
あたしは押し込まれるように電車の中へと入った
毎朝思うけどあたしと同じ時間に駅に着くOLさんっていつも何時に起きるんだろう…
滑らかな肌に
プルプルの唇
頬には薄いピンク
髪の毛もふわふわのクルクル…
近寄ると気持ちいい臭いもする
ちゃんと朝ごはんとかたべてんのかなぁって位に細いし
何よりオシャレだ
こん位に可愛かったらさぞかし今夜のコンパでも盛り上がるだろうになぁ…
ああ…帰りたくなってきた
あたしは電車の広告の脇についているエチケットミラーを横目で見ながらため息をついた
化粧もうすい
薬用リップしか塗ってない唇
頬は寒くて赤いだけ
髪の毛は真っ黒でいつもの1つ縛り
洋服はいつもグレーか黒かベージュ…
毎日が同じことの繰り返し
それでも何も変わらない自分
変わる勇気も方法もわからない…
片手が電車のゆれでポケットの眼鏡に触れた
『本当にこれで何かが変わるのかな…』
あたしは再び鏡を見た
こんな不細工が笑う日がいつかくるのかな…
睨むように鏡を見ていると後ろから聞き覚えのある声がした
『おはよう、歯にノリでもついてるの?』
顔を声の方に向けると河村さんがク―ルな眼差しであたしの方を見ていた
『あ、おはようございます。朝から会うなんて珍しいですね、河村さんもこっちの方だったんですね』
河村さんは黙ってうなずいた
河村さんは身長が170センチはあろうかという長身でサラッとした艶のある髪が耳の辺りまでかかっている
肌はしっとりしていて化粧も薄づきだが顔の作りが美人仕様なのでそれだけでもういい感じの人だ
襟をたてた白いコ―トしか見えないがエレガンスなタイプだ
『あの…河村さんて今日の飲み会に行くんですよね。あたしも誘われてまして…あの、よろしくお願いします』
『聞いたわ、あなたが来るなんてちょっと意外な感じよね。私も半ば無理やりって所だけど』
そう言うと河村さんは髪を耳にかけ直し少し微笑んだ
会社までは乗り換えなしの4駅
しばし河村さんと仕事の話をして電車は駅に到着した
『さて、今日もがんばらなくちゃね。あたしはこのまま外回りだからまたあとでね。夜に会いましょう』
電車から降りると河村さんは手を小さく降り足早に階段を降りて行った
白い膝丈位のコ―トにベージュのパンツス―ツ
襟元には淡いグリーンのマフラーがかけられていて重たさは感じられなかった
『格好いいなぁ…仕事してますって感じだよね~
良かったぁス―ツ来てこなくて…
かぶってたら致命的だったよね』
あたしは小さく手を降り返しながら会社への道へと進んだ
あたしが勤める会社は大手の三橋電気の子会社で社員若干100名程の規模である
自社ビルではなくいろんな企業が集まっている50階建ての商業ビルの13階
そこにあたしたちのフロアーがある
受け付けに挨拶をしてガ―ドマンに一礼をする
三機あるエレベーターの1つに乗り込み外側に体を向けると景色がみるみる小さくなっていく
いつも通りの順番でエレベーターが止まっていく
『13階でございます』
エレベーターのガイダンスが流れ何人かがあたしと一緒に降りたった
降りてすぐに社名が壁に飾られていて進むと二人の受け付け嬢がにこやかに座っている
ちなみにまみちゃんはここの担当
そして更に奥に進むとガラス張りのフロアが見えるここがあたし達の仕事場だ
ドアをあけるとそこはいくつかの部署に分けられている
広報課
営業一課
営業二課
(ちなみに河村さんは一課)
秘書課
(さっきの受け付けね)
残るはあたしのいる事務局
以上
ちなみに事務局は一番奥の窓際に位置する
手前側は出入りの激しい営業席と商談スペースになっている
中央は左手に秘書課
右手に広報課
奥に参りまして左手は会議室
右手に事務局
それぞれの課にコ―ヒ―メ―カ―と紙コップがあり自由にお茶休憩もトイレも行けるのでうちにはいわゆる給水室はない
わりと移動も自由であたしは仕事に関しては何の不満もいまの所ない
あとお気づきかと思うがうちの会社に社長室はない
社長は毎日好きな場所に座り仕事をする
確か前にテレビで見たけど世界のユニクロの本社もそうなんだってね
規模はまったく違うけど社長室がないというのはとてもいいよね
社員に緊張感も出るし社長も新鮮なんだろうね
ちなみに今日は営業二課に座ってた
みんな頑張ってね~
心の中でガッツポ―ズを取るといつもの自分の席へと腰をかけた
『福島さんおはようございます』
『山川さん今日はまた一段と早いね~』
コ―ヒ―をすすりながら細い目を更に細くして笑っている
これが我が事務局のキャップで福島敏夫(推定50才後半)
いつも消して怒らず穏やかかつ迅速、的確であたしは密かに尊敬している
うちの会社の隠れキ―マンだ
福島さんは社長にも『福様』と呼ばれ一目置かれている人だ
見た目は蛭子さんだけどね
机に乗っていた書類に目を通しながらあたしは軽く笑い
『眠れなくって早くきちゃいましたよ』
そう答えた
福島さんは相変わらずニコニコしながらパソコンを打ち込んでいる
ちなみに事務局は全部で8人
そのうち二班に別れている
あたしのいる班が二班でもう1つのグループが一班
うちにはあたしと福島さん
それと…
『おはよう…ございます…』
『おはよう~早川ちゃん、今日も声にパワーがないねぇ…
一番若いんだから元気だしてね』
福島さんが目が細めて笑った
『あ…はい…すいません…気をつけます…』
あたしの前に福島さん
横には早川りかが座る
早川りかは今年の新入社員
短大卒の20才
見た目はフワフワしてて可愛いのだが天然というか
気が小さいというか…
いつも口の中でむにゃむにゃ言っているタイプ
けしてブリブリではないがたまにイラッとしてしまう
ちなみに珠算、暗算、パソコン、漢検、英会話、速記、電卓全て一級
動作は鈍いができる女である
そして最後は…
『みなさんおはようございます』
慌ただしく席につくといきなりチオビタドリンクを飲み干した
机に置いたカバンからは娘さんが作ったのだろう
可愛い花柄の鶴が飛び出していた
あたしの右斜め前に座ったのが小川春美
二女の母でありシングルマザ―である
『おはようございます、小川さん朝からチオビタですか?
お疲れ様です』
あたしが言うと小川さんはフ―ッと言いながらビンを机に置き
『ちょっとやな事があってね
あんまりムカつくから一駅分走ってきちゃったよ』
額に滲む汗を片手で一払いすると豪快に笑い伝票をまとめだした
小川さんは小学生の双子のママさんでお子さんが幼稚園に通ううちからうちにいるらしい
シングルで働くママは少なくないが働きながらしかも双子を育てるのは並大抵の事じゃないと思う
小川さんは時間五分前には机に滑り込み定時五分後には机に姿はない
まさに風のようにやってきて風のように去る
しかし仕事は正確で時間に厳しい人なのでみんな何も言ったりしない
子供さんに何か起きて仕事を休んだとしてもその次の日は二倍速で仕事をする人だ
そう考えるとうちの班ってあたし意外はみんな出きるんだなぁ~
あたしももう少しがんばんなきゃね~
クリックする手がいつもより早い音を出している
あたし達の仕事は主に伝票の仕訳作業に備品の発注、雑用関連に電話応対だ
一年365日ほぼ毎日同じ仕事を淡々とこなしている
あたしは机の上に積まれた伝票を一枚一枚入力しながらコーヒーを一口飲み隣をチラッとみた
気が小さく声も小さい資格マニアの彼女だがやはり肩にするりと落ちるツヤツヤの巻き髪に今時の可愛いファッションが似合っている
体も華奢だし指先もきれいだなぁ…
あ、ちなみにうちには制服はない
会社名と部署、名前と出入りに使う身分証明が入ったカードを首からぶら下げているだけだ
秘書課の受付二人だけは白いジャケットにバッチをはめているがそれ以外は一律で特に規定はない
『あの…なにか…?』
あたしがはっとすると不安そうに早川さんが顔を覗いていた
『ああ、何でもないよ、ちょこっとボーっとしちゃった。ごめんね』
あたしは姿勢をただし机に向かい直した
いかん、まわりに敏感になりすぎだ
集中しなくちゃね
すると画面の受信トレイに一通メールが届いているのに気がついた
社内報かな?
クリックすると全面丸文字で入力されたまちゃんからの連絡 メールだった
やまちゃんへ♪
(^_^)vいえい!まみだよん~
お元気!?
今日はひとつ宜しくね( ^_^)人(^_^ )
イケメンズ用意万端だよん♪
時間はちょこっと遅くて8時に『味彩』に集合ね♪
まみは終わったらエステ言って髪とネイルしてから行くし河村ちゃんも営業先から直接来るって~
やまちゃん場所わかるよね?
じゃあ8時に現地集合で(≧ω≦)b
楽しみ~♪
じゃあねぇ♪
まみより♪
まて
あたしは行くなんて一言も言ってないぞ…
ってまぁ
行くんだけどね…
あっそうですか…
エステにネイル
うらやましいねぇ
あたしには未知の世界だわ
集合場所はいつも会社で飲み食いしているお馴染みの和食処か
とりあえず安心した~
こじゃれたフランスやらイタリアやらの店ならどうしようもなかったなぁ
なんせ中華しか馴染みがないもんね
その日は気分が落ち着かず何回も席を立ったり座ったりしながら過ごした
気がつくと針は五時を少し回っていて小川さんの姿はもう既になかった
『山川ちゃんお疲れ~今日は用事があるんでこれにて上がりますね~』
目を細めて福島さんが立ち上がり帰り支度をしていた
『あ…お疲れ様です』
あたしは最後の伝票を入力してホチキスで書類を止めた
隣の早川さんもそわそわしながら身なりを整えている
今日は金曜日という事もありいつもよりみんな帰り支度が早い
飲み会やコンパ
習い事に接待…
色んな予定があるんだろうな…
パソコンの電源を消した後
椅子にかけてあったコートに袖を通してフロアを見回した
既にまみちゃんの姿もなくいつもより人の姿もまばらに感じた
おそるべき花金
金曜日って人の気持ちをはやらせるよね
次の日が休みだという解放感…かな
仕事も終わったしとりあえず外にでも行こうかな…
あたしはあてもなく会社の近くをブラブラすることにした
駅の周りはビルが多く建ち並んでいるが少し路地を入れば路面に面して服屋さんや雑貨屋なんかもあるので見ていて飽きない
あたしは最近できた小さな美容室の前を通りかかった
あんまり気にしてなかったがよく見ると店内は木の柱に白や緑の壁、ガラスやビー玉などがアクセントになり光に当たってすごく綺麗だった
店の中は閑散としていて店内では店長らしき男の人が丁寧に鏡を拭いているようだった
こんな所で髪とか切ったらあたしも少しは変わったりするのかな…
というか
男の人に髪なんか触られたら失神するかもね
あたしは1人半笑いになりながらその場を後にしようとした
すると不意に誰かが腕をひっぱった
振り向くとそこにはクリンクリンのくせ毛の金髪に目鼻立ちのしっかりとした絶対あたしより年下だろう男の子が息を切らせながら立っていた
『あの…
あの…すいません
お姉さんお願いがあるんだけど…』
エステの勧誘か
先祖の供養か
外国の絵画か
それとも宝石か
どちらにしてもあんまりうれしくない誘いに違いない
『あ…すいません
あたし急いでるんで』
そういうとあたしは金髪くんの手をそっと払い会釈をして前を向いた
しかし金髪くんは引かなかった
というか泣きそうな声で懇願してきた
『お願いします!
俺に髪の毛切らせて下さい!
カラーもカットも無料です!
お願いします!』
あまりの大声に周りの人たちが一様に振り返った
あたしは慌てるように振り返り頭を下げている彼に頭をあげるように促した
『あの
頭上げて下さい
みんな見てるし…
困ります』
『俺、まだ新人で店でシャンプーしかしたことないんですけど
今カットモデルを探してて…
なかなかみんな初心者の俺にはまかせられないみたいで切らせてくんないんですよ…
朝から声かけてんですけど
何がいけないんだろう…』
金髪くんはクリクリの頭をかきながら口を少し尖らせてすねて見せた
明らかに見た目18か19の金髪頭の男の子に『髪の毛切らせて下さい』ってオフィス街で言われてもなかなか道行くOLは切らせてはくれないだろうなぁ
あたしは顔をあげてまじまじと金髪くんの顔を見た
身長は170位かな
身長の割には肩周りががっしりしている
白い長袖にアーガイルのベストを着て形の良い穴の空いたイマドキのGパンをはいている
オシャレな子だ
あたしは時計をちらっと見た
今は5時と少し回った所
髪を切るくらいの余裕はある
しかしその度胸はなく微妙だ
でもこん高校生みたいな子ならそんなにドキドキもしないかな…
あたしはあんまり困った顔をしている金髪くんが実家の弟とダブってみえて少し笑った
『笑わないでくださいよ~』
困ったように金髪くんも笑う
『…いいですよ
あたしで良かったらどうぞ
髪も長いし切りがいがありますよ多分』
そう言うと
『よっしゃああ』と小さくガッツポーズをしてあたしの手を取りその場を回り始めた
『お姉さん!ありがとう!!
お礼に絶対絶対!
綺麗にしますからね!!』
そう言うとさっき見ていたガラス張りの美容院に向かい
大きく両手で丸を作りその場で跳ねてみせた
鏡を拭いていた店長らしき人が片手を上げて手をふっている
どうやらこの店の従業員みたいだ
『ちょうどこの店なんですよ、どうぞこっちきて下さい』
ご褒美がもらえたワンコみたいに金髪くんはあたしの二歩前を軽快に歩いていた
単純というか
可愛らしいというか…
あたしのまわりにはあんまりいない気持ちが顔にはっきりとでるタイプの子だった
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