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山川弘美の日常

レス316 HIT数 86011 あ+ あ-

モモンガ( PZ9M )
12/05/26 20:38(更新日時)

あたしは今人生最大の崖っぷちだ



外見はめちゃくちゃダサいわけでもないがナイスバディでもない



彼氏は(当然)いないしお洒落でもない





家の中でコタツとマッタリするのが好きで黒色の長い髪は常にでこだし2つ分け




極度の近眼なのでカワイクない細い黒色のフレームの眼鏡をかけて生活をしている




家にいるときは常にピンクのプレイボーイのジャージ


ベランダにキティちゃんのサンダルだってある(しかしヤンキーではない)






ちなみに彼氏いない歴は22年
ときめいた事もない


自他ともに認める『ダサ川ダサ美』である




だってしょーがないよ
キレイになる方法もわかんないしセンスのいい友達もいないんだもん




あたしの回りにはいつも『平凡』『並』『普通』しかいない




このまま平々凡々なOL生活が続いていくかと思われたあたしの毎日を激変させたのは





一本の『眼鏡』だった



しかしこの眼鏡
そんじょそこらにあるヨン様眼鏡とはちょっと違う




『欲しいものが見える』



魔法の眼鏡だったのだ!
(^_^)v




一人で吉牛が食べれちゃう22才のちょいダサOLが魔法の眼鏡を手にしたら…?

No.1158277 08/12/03 15:07(スレ作成日時)

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No.151 09/08/12 20:09
モモンガ ( PZ9M )

『いつも当たり前みたいに飯食ってさ


風呂入ってさ



服着てさ



冷えたビール飲んでさ




枝豆なんかもついてきてさ




眠くなったら布団に倒れ込んどった



それがな、わし当たり前と思うとったん


だってわしだって仕事頑張っとったし



家のために頭下げたり書類書いたり残業しとったもん




でもな




嫁はいつも家の中では穏やかやったし



そんなんケンカもせんかった



でもな、何もまわらんのや嫁がおらんと



飯も風呂も着替えも掃除も買い物も町内の集まりも家計のやりくりもな




嫁がおらんとなんも…


たのしくないんや』




マッキ―は綺麗に手を拭いた後に優しく微笑む奥さんの写真をもう一度見つめた

No.152 09/08/12 20:22
モモンガ ( PZ9M )

『ひろちゃん


わし思うんや



人間さ誰だっていい生活やいい環境で生活したい



いい飯も食いたいし

いい格好もしたいな


だけどな、それは一人じゃあつまらんのや



『お疲れ様』って枝豆もってきてくれて



うちわであおぎながら風呂上がりのわしに笑ってくれた



嫁がいたから




楽しかったんや




着飾ることもせんし


派手でもなかったけど



わしにはもったいない良い嫁さんやった




見た目でも中身でめなく




そのまんまのそいつがいいって




そういう相手にひろちゃんもいつか会うやろうな




ブザイクでも性格が悪くても



ひろちゃんじゃなきゃいかんって男がさ



そしたらわしに紹介してな




きっちり見極め足るわ



わし、こう見えても人を見る目はあるんやで





おかげでいい嫁さんゲットしましたしな』




マッキ―は大切な奥さんの写真をハンカチに巻いていつものセカンバックにしまった




あたしはなんとなくマッキ―の言わんとすることがわかった気がした




見た目や中身や財産や




本当に大切な人に出会ったらそんなのとるに足りない事

No.153 09/08/12 20:46
モモンガ ( PZ9M )

自分を飾ったり変えたりして価値をあげるのは色んな人と出会ったり自分の自信を作り上げる材料に過ぎない





いつかその中から本当に大切な人にあったら



その人がかっこよくなくてもブザイクでもだらしなくても




自分にとって必要なら何もかも受け入れてしまうんだろうなぁ




例えそれがすべてプラスにならなくても





いいなぁ



あたしもいつもジャージでも




いつもすっぴんでも



ご飯うまく作れなくても




笑って話せる誰かに会えるのかな…





『はい牧野ですけど』



マッキ―が机の上の電話をとった



どうやら社内からの電話らしい



時計をみると一時五分前になっていた




あたしはメモ用紙を一枚取ると




(ありがとう(^O^)また明日お昼くるね!山野)




そう書いて持ってきたカバンを持ち席を立った



エレベーターに向かう途中、空を見上げた




幸せだったろうマッキ―の奥さん




今日もがんばり屋の旦那さんは元気ですよ




あたしはそう心の中で呟いた

No.154 09/08/13 03:04
モモンガ ( PZ9M )

席に戻るとパソコンの受信トレイに通知が来ていた




まみちゃんからだ





あたしはチラッと彼女の机を見たが真面目にお仕事をしているようだ




それもそのはず




今日の社長は秘書課にデスクがある




御愁傷様だね

まみちゃん




あたしは受信トレイを開けた



『山ちゃんへ(^_^)v


お疲れ様!さっきはアネキャンパスありがとね♪♪


お礼に山ちゃんにとっておきの情報を教えてあげる♪♪



うちの兄貴は超甘党で密かに『マダムマツダ』のケ―キバイキングに通ってます



多分今日も行くんじゃないかなぁ?



いわゆるスイ―ツ男子なわけ♪♪



山ちゃんもお暇ならいってみたら?



特にメロンショ―トケ―キがお勧めだよ♪♪




健闘を祈る♪まみ』




う―ん…まだ誤解してるなぁ




まぁいいけどさ




てか『マダムマツダ』って何?



知らないんですけど…




文面からするとケ―キ屋さんだよね



う―ん…



まみ兄がバイキングにねぇ…



にわかには信じがたいがすごいよね



想像するだけでゆるんでくる頬をあたしは必死に押さえ込んでいた

No.155 09/08/13 19:35
理子 ( deWHh )

おひさしぶりです。
お体の具合はいかがですか?
何事も無理はしないで下さいね。

楽しみに読ませて頂いています。
ご本になるのを楽しみに待っています😊

No.156 09/08/14 00:59
モモンガ ( PZ9M )

理子さん🌱


お久しぶりです😺


ただいま仕事が終わりました🌱



夏場は解放感もあってかももんがの勤めるス―パーも10代とおぼしき子供たちが今の時間でも沢山入ってきます😹💦



大丈夫かなぁ…



なんて思いながらレジを通すももんがでした🌱




理子さんは夏場の思い出はもう作られましたか?




もう少したったら季節は違いますが山川さんにも何か素敵な思い出を作ってあげたいです🙆🌱




よかったらまた遊びにいらしてくださいね🌱お待ちしています🙇



ももんがより

No.157 09/08/15 17:08
モモンガ ( PZ9M )

『あ―っ…もぅ社長のいるデスクはだるいよね!



お化粧直しもできないしさ




お菓子も食べらんないしさ




マニキュアだって塗り直せないんだよ?信じられる!?』



『まぁまぁ…



社長も社員に混じってラフに動きたいんですよ




うちの社長変わってますしね…』



『そりゃあ河村ちゃんは外回りだしさ



他企業のかっこいいお兄さん達に癒されるからいいよね~



まみも絶対こんどの移動には営業にチャレンジしちゃうんだから』




あたしを間に挟みながらまみちゃんと河村さんがガ―ルズト―クを楽しんでいる



みなさん


こんにちわ山川弘美22歳です




わたくし只今会社を終えてこちらのまみさんの鶴の一声でマダムマツダに潜入いたしております




彼女いわくこれは


コンパの『反省会』なのだそうです




…っかさ何の『反省』なん?



あたしにはさっぱりわからないけどとりあえずは来てみました



『ってか松田さんとかわむらっちどこにあれから行ったの~?』

No.158 09/08/15 17:18
モモンガ ( PZ9M )

『え?松田さん?


ああ…あの人…



松田さんっていうんだ



今初めて聞いたわ



朝あたしの方が先に出たし…連絡も聞かなかったから…』



『え――――っ!?

河村ちゃんもうやっちゃったの



早すぎない?せめて一回は呼吸おこうよ~



おいしいご飯も食べずにやっちゃうなんて河村ちゃんがっつきすぎだよ~



もったいない!』



『そうかしら?



セックスなんてただの余興でしょ?



気にいったらするし
気にいらなかったらしない


付き合っても付き合わなくてもするときはするんだし



そこから始まる出会いもあるんだから



そこまで驚く話しかな?


何もみんな処女でもないでしょう』



そう言った河村さんの言葉を聞いてまみちゃんがあたしを軽く指差した




河村さんもまみちゃんもここがケ―キ屋ってわかってます?



イチゴもフォークからそりゃ落ちるよ




あたしは顔を両方の頬に合わせながら首を静かにふった

No.159 09/08/15 17:33
モモンガ ( PZ9M )

『何?山川さんってまだなの?



えっ


私とそんなにかわらないわよね?』


河村さんが目を丸くしてあたしの顔を覗きこんできた



『まみが21でしょ


山ちゃんが22



河村ちゃんが25だよね?』




『それは今時貴重な存在よね…




こういう話題きわどい?



ごめんね私うまれてずっと女系のミッションスクールで大学まで上がったからこうい話しなんて日常茶飯事なのよ



別になんとも思ってなくてもとりあえずはやっちゃうのよね



今時の言葉で言えば肉食系女子になるのかな?




会話や価値観も大切な事だけど私にはセックスの相性ってのもかなりのウェイトでね


まあまあかなって思うととりあえずはつまんじゃうのよね』



河村さんはチョコレートをフォークで刺すと一口でほうばった



肉食系女子…




たしかに河村さんのイメージだけどリアルすぎてなんだかしんどいなぁ…




外見でもなく中身でもなくとんでもないお題がでたよ



こんなの予定外や~

No.160 09/08/15 17:46
モモンガ ( PZ9M )

河村さんにとってはルパンもチョコレートも同じレベルなのか…



『ちょこっとつまみ食い』




おいしかったらまた食べるけど


そうでもなければまた違うチョコレートを探す…





河村さんあなどれず…



ただの綺麗なお姉さんじゃあないんだね


さすが『悪い子』


普通なあたしには道のりが遠すぎるよ…



『でもさ、山ちゃんも兄貴と朝帰りしたんだよね』



『あらあら、それはそれは…



同僚のお兄さんだしと思って遠慮したんだけど




私も本当はお兄さんの方が好みなのよね



山川さんあなどれないなぁ』




二人が顔を見合わせて幾度となく頷いた



『…で、やったの?』



河村さんが声をひそめる



だからここはケ―キ屋さんだってば




興味津々な二人にあたしは小さく首をふり『あるわけないです』と答えた




『え――?


いい大人が一晩中一緒にいてセックスなし?




何してたのよ山川さん




お兄さんもなんと言うか…



貴重よね…』

No.161 09/08/15 17:59
モモンガ ( PZ9M )

『我が兄貴ながら情けないよね



27にもなってさ…


昔なら多分食っちゃってんだよね



まぁ…昔の何とかで今はだいぶおりこうに…』




『おりこうに…何だ

このお喋り娘…



この空っぽの脳みそにホイップクリームつめたろうか』




まみちゃんの背後から紺色のス―ツにストライプのシャツを着たまみ兄がまみちゃんのこめかみにげんこつをあてながらグリグリしている



『痛い痛い~



もうやめてよ~せっかくの反省会に誘ってあげたのに



そんなんじゃ山ちゃんに嫌われるよ』



『おお山ちゃん



今日はバカな妹に付き合ってくれてありがとな



左から聞いた話は右から流せよ




こいつに関わるとロクな事にゃならん』



あたしは苦笑いを浮かべて注文していたメロンショ―トを口に運んだ



『かわいくないなぁ



ここのケ―キ大好きなくせに~



今日はあたしらのお陰で堂々と食べられるよ?



感謝こそしてもらってもゲンコツもらういわれはないなぁ』



まみちゃんがムスッと口をとがらせている

  • << 164 別に自分の事を攻められている訳じゃないのに うつむいたら涙が出そうだった 別にまみ兄が好きとか気になるとかそんなんじゃないけど 胸の中がムカムカして渦をまいているようだった まみちゃんもムスッとして足をブラブラしている 『山ちゃんごめんな まみが変な事言って… 気ぃ悪くしんといてな? うちの妹頭のねじが少し緩くてさ~ あ、きたきた俺の分 はい、ありがと』 到着したケ―キにやっと、まみ兄の表情が少し緩んだ 何だかもうこの場から逃げたしたいよ 何だか自分の気持ちに説明がつかなかった 『あの…あたし帰ります』 『えっ?なんで?』 まみちゃんとまみ兄が声を揃えた 『ほら~兄貴が怖い顔するからだよ 場の雰囲気悪くする天才なんだから』 『何でだよ お前が頭にくる話題ばっかり降るからだろ 山ちゃんには全然関係ないのに… って… 山ちゃん…どうした? 俺、何か傷つけちゃう事言った… 言ったかな』 あたしは頭を左右に振りながら小さく肩を震わせていた この時の気持ちに説明なんてできないけど 涙があとから止まらなくなっていた

No.162 09/08/15 20:36
モモンガ ( PZ9M )

『う…まぁ嫌いじゃないけど常連ってほどじゃないぞ


ほら…ほかのみんな引いてる感まるわかりなんだけど…



お前何喋ったんだ』



まみ兄とまみちゃんがじゃれている間に河村さんの携帯のバイブが鳴った



『…はい


ええ!?



今更そんな


先方がですか…


…はい、わかりました。すぐ戻ります』

『どうしたんですか?何かトラブルですか…?』



あたしが慌てて河村さんのジャケットを渡すと大きなため息をついた



『うん…詳しくはまだ言えないんだけど



今度うちの会社で扱う新商品のCM撮りでね



クライアントがOK出してた女優さんが事故起こしちゃってね



商品のイメージに合わないからって企画自体を白紙に戻したいって…』



『ええ?だって代打でいいんじゃないの?いるんでしょ控えの人』



まみちゃんも身を前に乗り出した



『う~ん…


気難しい社長でね



構想からOKまでどんだけかかったと思ってんのよ、あのハゲ親父



絶対オシャカになんかしないわよ』




河村さんは最後のチョコレートスポンジを口にほうばると勢いよくコ―ヒ―を飲み干した


『悪いけど行くわね』


河村さんは軽く手をあげて足早に店を後にした

No.163 09/08/15 20:56
モモンガ ( PZ9M )

『かっこいいな~


働く女はああじゃなくっちゃな


まみ、無理だと思うけどお前も見習えよ


あ、すいません俺ホットにメロンショ―トと濃厚ミルクとタルトチョコレート』



…メニューも見てないのに言えてる…



まみ兄はネクタイをゆるませると一番上のボタンをはずしグラスに入った氷水を一気で飲み干した


『はぁ~生き返るなぁ』




『おっさんくさい



そんなんじゃ天国にいる理香さんも鼻で笑ってるよ』



言った瞬間まみ兄の顔が少し曇った



『お~ま~え~は~



喋れんように口の中そこのクリームチ―ズ塗り込んだろか




このお喋り娘が』



『いいじゃん、もう


兄貴が山ちゃんとうまくいったらいいのになぁ~って



まみは応援してんだよ~



だってそうじゃん



この三年で女がらみの朝帰りなんて山ちゃんとだけじゃん?



気に入ってるんなら理香ちゃんに遠慮なんかしなくても…』



『まみ、うるさい



それ以上喋るな



山ちゃんに失礼だぞ



理香と山ちゃんは関係ない



お前も余計な詮索はするな』





まみ兄の少し尖った声が胸に突き刺さった

No.164 09/08/15 21:11
モモンガ ( PZ9M )

>> 161 『我が兄貴ながら情けないよね 27にもなってさ… 昔なら多分食っちゃってんだよね まぁ…昔の何とかで今はだいぶおりこうに…』… 別に自分の事を攻められている訳じゃないのに



うつむいたら涙が出そうだった



別にまみ兄が好きとか気になるとかそんなんじゃないけど



胸の中がムカムカして渦をまいているようだった




まみちゃんもムスッとして足をブラブラしている




『山ちゃんごめんな


まみが変な事言って…

気ぃ悪くしんといてな?



うちの妹頭のねじが少し緩くてさ~




あ、きたきた俺の分


はい、ありがと』




到着したケ―キにやっと、まみ兄の表情が少し緩んだ




何だかもうこの場から逃げたしたいよ



何だか自分の気持ちに説明がつかなかった



『あの…あたし帰ります』


『えっ?なんで?』


まみちゃんとまみ兄が声を揃えた



『ほら~兄貴が怖い顔するからだよ



場の雰囲気悪くする天才なんだから』




『何でだよ



お前が頭にくる話題ばっかり降るからだろ




山ちゃんには全然関係ないのに…



って…



山ちゃん…どうした?



俺、何か傷つけちゃう事言った…



言ったかな』




あたしは頭を左右に振りながら小さく肩を震わせていた



この時の気持ちに説明なんてできないけど



涙があとから止まらなくなっていた

No.165 09/08/15 21:33
モモンガ ( PZ9M )

『山ちゃん



山ちゃん…ちょっとお前も何か言えよ』



まみちゃんはしばらくあたしを見ると



『まみは知らない~


兄貴がわるいんだよ~だ




この罰はここのお会計と山ちゃんを家まで送ることね



いいか



絶対やんなよ』



まみちゃんはまみ兄にビシッと指を刺すと



『さ~て


どの子とデ―トしてこようかなぁ



あ♪帰りは遅くなりま~す



それじゃあ♪』



『おい…お前ちょっ…



あ―あ…



いっちまった…




山ちゃん?
山ちゃんよ~



ごめんなぁ…俺多分どっかで変な事いったんだよな…



うわぁ…



妹の連れは泣かすし


生クリームは食べてるし…




俺、今ぜって―怪しい設定だよな



うわ―


どうしよう』




困った様子でまたまたケ―キを口に運んでいる



あたしは泣きながら


困った顔でケ―キを食べるまみ兄が可笑しくて



つい笑ってしまった


『あ、笑った



今の顔おもしろかった?



リプレイ リプレイ』


『辞めてくださいよ…



ぷっ、みんな見てますよ』




『いいのいいの


今の俺の使命は山ちゃんを笑わせることにつきんの



はい笑って笑って』

No.166 09/08/15 21:46
モモンガ ( PZ9M )

あたし達は何となく和んだ後に



とりあえず店を出ることにした




泣いたことに理由はつけなかったが




まみ兄もそれ以上は聞いてこようとはしなかった




会社からこのマダムマツダまでは地下鉄を乗り継いで来ていたが




帰りはまたしてもまみ兄が送ってくれることになった



『何だか毎回すいません…



しかもしっかり奢ってもらっちゃって…』



『うん?いいのいいの




そんなんは気にしないのよ




お兄さんお金持ちなんだからさ』



車からはまたあの日のスローバラードが流れていた




借金一千万が不意に頭をよぎったが



この話には断じて触れてはならないのだ…




車は会社の前を通りあたしの家の方へと進んでいた




あたし達は無言で特に何を話すわけでもなくしばらくを過ごしていた





まみ兄が思いきったかあたしに話しかけてきた



『さっきの…



まみが言ってた話…



何かまみから聞いた事ある?』



『いいえ…



あ…あの



昔の彼女さん…ですよね



きっと』



『うん…そう…




女々しいんやけどね


三年前まで付き合ってた子がいてね



理香って子…



まぁ…その…


死んじまったんだけどね』

No.167 09/08/16 02:31
モモンガ ( PZ9M )

『詳しく話すとかなり長くなっちゃうから省略ね


…でもバカな妹から間違った情報が伝わってもやだしな




山ちゃんちょっと車停めてもいい?』




まみ兄は車を車線から外して店じまいしているコンビニの前にゆっくり止めた




『山ちゃん何飲む?』



『あ…じゃああたしが出します



さっきの払ってもらっちゃったし



何がいいですか?』


『ん~じゃあブラックで宜しく



あったかいのね』



あたしは少し笑いながら同じものを2つ買った




『はい、どうぞ』



車の硝子越しにプルトップを立てて渡した



まみ兄はそれを受けとると



『懐かしいねぇ…



理香も…



彼女も俺に缶ジュース渡すときに必ずここ立ててくれたなぁ…




気の利く子でね…




俺より3つ年上で



生きてたら今年30かぁ…』



まみ兄の吐いた息が夜の空気に染みたように白く変わっていく



あたしはただ黙ってまみ兄の話に聞き入っていた



気の利いた台詞なんか出てくるわけもなかった

No.168 09/08/16 03:21
モモンガ ( PZ9M )

『今から言う話は俺の独り言ね



改まって人に話した事もないしさ




…正直

まだ三年って気持ちの方が俺ん中ではデカイんだ



ごめんな




えっと…


どっから話そうかな…



うん、とりあえずは俺が大学生んときから通ってた美容院があって



そこの店に移動で入ってきた人が理香



前の彼女ね



ばっさり短い髪でね


身長なんか俺とほとんど変わらないくらいでかくてね



よく笑ういい子だったな…




美人と可愛いの中間みたいな人でね



後輩の面倒もよく見るお節介焼きで




趣味はパン作りと美容関連



とにかくいつも忙しそうにしてたよ




俺が一念発起して告白して…




ありがたい事にうまくいってさ



彼女、夢があってさ



『独立して店を持ちたい』ってずっと頑張ってた




付き合ってちょうど2年が過ぎた頃にさ



海岸の近くのサ―フショップが閉店するって話がでたんだ



一緒に見に行ったら白い外観でこじんまりしてたけど中はデカイプロペラがあったりボードが飾ってあったりしていい雰囲気だったよ

No.169 09/08/16 03:32
モモンガ ( PZ9M )

彼女もそこがすっかり気に入ってね



売り出しは土地と建物込みで3500万



中のインテリアもそのまま使っていいって条件だった



何よりこの話を理香に持ちかけたのは理香の昔からの友達でね



凄く信頼のおける人だからって



溜め込んだ1500万を頭金に理香は契約しようとしたんだ




それが…



アイツら…』




まみ兄の顔がいつの間にか両手の中にうずくまっていた




何があったのか右手の握りこぶしで自分の太ももを叩き出した



鈍い音が何回かした頃に小さなため息をゆっくり吐き出しまた話の続きをしだした




『…アイツらは



理香の金を踏んだくってトンズラしたんだよ



1500万全部持って…



しかもあんな…』


そこまで言うとまみ兄はしばらく固く口をつぐんだ



あたしは隣で黙ってうなずくしかできなかったが




まみ兄の彼女への優しさや想いに対する強さは容易に想像してとれた




『お兄さん



もういいですよ…


そんな辛い話


まだ無理ですよ



あたし…』

No.170 09/08/16 03:42
モモンガ ( PZ9M )

『アイツらはゴミだ



アイツらは理香に…


理香を…



理香を壊したんだ』



それが女の人に対してどんな状態をさしていたのか



バカなあたしにも想像がついた



『壊した』という表現は亡くなった彼女へのお兄さんの未だにある愛情がそう言わせたのだと思う




こんな辛い話



あたしはどう聞いたらいいんだろう…



聞いたあとに



どんな言葉をかけたらいいのだろうか…



『俺がその異変に気が付いたのは翌日だったよ




携帯にも電話にも出ないから心配で店に様子を見に行ったんだ




そしたら店も無断で休んでるって…




慌てて自宅へ飛んでったよ



彼女、独り暮らしでね



俺も鍵をもらったばかりだったんだ



でも…鍵は開いてたよ…




中はいつもと変わらなかったよ




何にも変わらなすぎてわかるまで凄く時間がかかったよ






彼女が寝ていたベッドにもリビングにも


彼女の姿はどこにもなかった

No.171 09/08/16 03:45
モモンガ ( PZ9M )

『アイツらはゴミだ


アイツらは理香に…

理香を…理香を壊したんだ』



それが女の人に対してどんな状態をさしていたのかバカなあたしにも想像がついた



『壊した』という表現は亡くなった彼女へのお兄さんの未だにある愛情がそう言わせたのだと思う




こんな辛い話あたしはどう聞いたらいいんだろう…




聞いたあとにどんな言葉をかけたらいいのだろうか…



『俺がその異変に気が付いたのは翌日だったよ携帯にも電話にも出ないから心配で店に様子を見に行ったんだそしたら店も無断で休んでるって…





慌てて自宅へ飛んでったよ彼女、独り暮らしでね俺も鍵をもらったばかりだったんだでも




…鍵は開いてたよ…中はいつもと変わらなかったよ



何にも変わらなすぎてわかるまで凄く時間がかかったよ




彼女が寝ていたベッドにもリビングにも彼女の姿はどこにもなかった

No.172 09/08/16 20:03
モモンガ ( PZ9M )

部屋中くまなく探したよ



嫌な予感がして…



友達とこれから契約しに行くからって電話があった時に





俺がついて行ってればあんなことには…




あたしはどうする事もできなくて


話を静止しようか聞き続けていいものか迷っていた



『山ちゃんごめんな~


いきなりこんなダ―クな話されてもテンション下がるわな~




だよな~

ごめんごめん


もうやめよっか』




まみ兄は残っていた缶コ―ヒ―に口をつけた




あたしはそれ以上聞くこともせず



まみ兄も話そうとはしなかった




結局…



その彼女がどこで自らの命を絶ったのかはわからなかったが



彼女にも


まみ兄にも




お互いの人生を大きく変えてしまうほどの何かがあった事だけはわかった




まみ兄はあたしの家の前までくるといつもの明るい笑顔でまたなと言った




何だかその笑顔が少し痛くて胸の奥が傷んだんだ

No.173 09/08/17 02:37
モモンガ ( PZ9M )

『しっかし重い~



これが好きな人の弱音とかでさ


あたしがまみ兄を好きな設定なら…


『あたしじゃ駄目ですか…』




みたいなさぁ


ねぇ~昼ドラじゃんこれ




百万が一もありえないけどね』





あたしは湯船につかりながら今日の事を振り返っていた



恋愛免疫力も
男性免疫力もないから



うかつに接近すると『うっ』って反応しちゃうけど

きっとこれは恋ではないはず

ケ―キ屋で涙がでたのも


なんていうか…


頑張ってる自分じゃなんか歯が立たないっていうか…



うまく言えないけどきっと自分に自信なんかないし



劣等感…みたいな気持ちに近いのかな



自分らしく頑張りたいと思ったり



誰かと比較してへこんだり



自信をつけて自分らしくって結構難しいよ




そもそもあたしが他の人より勝るものってあるのか?

No.174 09/08/17 02:52
モモンガ ( PZ9M )

なんだろう…



早寝早起き?




意外に字が綺麗?





料理は作れないけど舌がこえてる?





『伝票の入力が早い!!』



…って地味だよね~



これが早くてもあんまし自画自賛にはなんないよね…』



他の人にないあたしだけの強みかぁ…



そういうのを一個ずつ持つ度に



仕事もプライベートも何か





強い気持ちで向かっていけるのかな




『まぁ、とりあえずは今日もよく頑張った頑張った



あたし



お疲れ様』



ちょっとずつ新しい自分になれるように


自分が好きになれるように…





あたしも頑張ろう!




『神様



マッキ―の奥さんも
まみ兄の彼女も



空では幸せに二人を見てるんですかね




お互い『頑張れ』って伝えられたらいいのにね




風呂場で鼻まで湯船につかりながら今日のあたしはそんなことを考えていた

No.175 09/08/17 09:52
モモンガ ( PZ9M )

翌朝会社に行くとなんだか社内が慌ただしい



社長も若干ご機嫌が悪い



何だ?何だ?


そう思っていると営業の主任が二人部下を引き連れて緊急ミ―ティングを始めた



そのなかには昨日連絡を受けて早く帰った河村さんの姿もあった





『だめだなぁ…暗礁に乗り上げたなこりゃ』


誰かがあたしの後ろで話している



しっかり聞き耳



なんだなんだ




『あれでしょ?来年の春に出す予定の美顔機のモデルが不倫の相手と事故ったってあれ




クライアントの社長の好みがうるさくてなかなか次が難しいみたいだよね



ポスター撮りやらしゅざいやらイベントやらもう時間ないんでしょ?




よっぽどの人材の代打じゃないと新商品自体この世にでないかもね~




あんなにみんな頑張ってたのにね』





みんながその動向を気にしながら作業に取り組んでいる



机を囲む河村さんにも疲労の色が隠せない

  • << 178 『みんなが大変そうなのにすいません あたし何にもできなくて… あ、ちょっと早いけど何かお腹に入れますか?買ってきましょうか?』 『本当?助かる… じゃあ通りにあるサバウェイでアボガドサンドとポテトのセット頼める?』 『ああ、いいですよそれくらい…ちょっと待っててくださいね 財布出しますから』 あたしは自分のカバンから財布を取り出そうと探った 『なんだこれ?』 カバンの底に二枚名刺が落ちていた 一枚はまみ兄のもの 一枚は… 『おった 芸能人… これ飯田みゆうさんの連絡先だ そっか…あたしあの日連絡先もらってたんだっけ…』 そこには所属事務所と名前 名刺の裏にはピンクのキラキラペンで携帯電話の番号が書かれていた ひょっとしてひょっとしたら ひょっとしたりするのかも? 前方には途方にくれる同僚 機嫌の悪そうな社長 これはお役にたてるのかも あたしは通りのサバウェイに向かいつつ手のなかに握りしめた名刺を片手に歩き出した

No.176 09/08/17 17:30
モモンガ ( PZ9M )

詳しく話すとこうだ



来春そうそうに発売される美容美顔機のイメージガ―ルのモデルが事故ったのだ



しかも同席していたのは妻帯者



そう、二人は不倫中だったのだ




しかも彼女のお相手が人気俳優Aだったためマスコミに騒がれてしまった



タ―ゲットだった30-40台の主婦は心中穏やかではないだろう



キャッチコピ―の『今の私からこれからの私へ』が虚しくみえる




こういう場合にはたいてい代打を打つ代わりのモデルやタレントがいるんだけど



今回のクライアントの社長が好みにうるさいのだ



今回はウチとその会社の共同作品になるのでこちら側の一存だけでは何もかも決められない




へたすればこの企画へたるかも…




詳しくはわからないが相手側の社長をうならせる人材を手配するしかないのだが



発売価格やらなんやらもう決まっているならそこにはまっているタレント代はそんなに変更できないのが常だろう



しかも人気のあるタレントなんかは急にはおさえられない

No.177 09/08/17 17:43
モモンガ ( PZ9M )

『ああ…もうどうしたらいいのよ…




あっちもこっちもダメだめってさぁ…




可愛くて明るくて清潔感のある企画にピッタリのこのギャラにあう人~』



机の上にうつ伏せて河村さんがぐったりしている



机の上には何人もの名前とペンで消された後が続いている



『お疲れ様です…



代打むずかしいんですか?




今日はずっと社内なんですね』




あたしがコ―ヒ―の入った紙コップを手渡すと河村さんは弱々しく受け取った



『あ~山川さん…


ありがとう助かる




他のメンバーはモデル事務所をかけまわったりクライアントの社長をコネにいってる




こんな状況だからって甘んじて妥協した人選にするつもりには絶対したくないんだって




あ~どうしよう



この一年みんなで企画から何から何まで力を合わせてようやく発表までこぎつけたのよ




絶対発売中止になんかしたくないのに…』




きのうまでの勢いもト―ンダウンしている




こればっかりはあたしに何かできるわけでもないが何か力になれないか考えてみた

No.178 09/08/17 17:55
モモンガ ( PZ9M )

>> 175 翌朝会社に行くとなんだか社内が慌ただしい 社長も若干ご機嫌が悪い 何だ?何だ? そう思っていると営業の主任が二人部下を引き連… 『みんなが大変そうなのにすいません



あたし何にもできなくて…




あ、ちょっと早いけど何かお腹に入れますか?買ってきましょうか?』





『本当?助かる…


じゃあ通りにあるサバウェイでアボガドサンドとポテトのセット頼める?』



『ああ、いいですよそれくらい…ちょっと待っててくださいね



財布出しますから』



あたしは自分のカバンから財布を取り出そうと探った



『なんだこれ?』




カバンの底に二枚名刺が落ちていた




一枚はまみ兄のもの



一枚は…






『おった




芸能人…



これ飯田みゆうさんの連絡先だ




そっか…あたしあの日連絡先もらってたんだっけ…』



そこには所属事務所と名前




名刺の裏にはピンクのキラキラペンで携帯電話の番号が書かれていた




ひょっとしてひょっとしたら




ひょっとしたりするのかも?





前方には途方にくれる同僚




機嫌の悪そうな社長



これはお役にたてるのかも




あたしは通りのサバウェイに向かいつつ手のなかに握りしめた名刺を片手に歩き出した

  • << 181 『あ、そんな悪いです ちゃんと必要なら買いとりますから言って下さい』 あたしがサンプルを差し返そうとすると店長はにっこり笑って言った 『山川様の綺麗に一つ貢献します もしつけてみて気に入ったらまた来店された時にお買い上げ下さい 今ね、シャンプーやトリ―トメントの新作内覧会に行ってきたんです どんどんいいものは使ってみないとね 僕の趣味は女の子を綺麗にする事ですから なんて…言い過ぎかな』 店長はあたしにサンプルを渡すと照れたように人差し指を鼻に当てた もうカッコいいから止めて~ 惚れてしまうやろ~ みんな何でこんなカッコいいイケメンがあたしみたいな眼鏡OLに話しかけてんのか不思議だろうなぁ 悪いね悪いね あたしはサンプルの蓋をあけて臭いを嗅いでみた 柔らかい甘い匂い… 『ありがとうございます 近々お店の方にもパーマをかけに行かせてもらいます その時はまたお願いしますね』 店長はお待ちしていますねと言い笑顔でレジのカウンターの列へと並んでいった

No.179 09/08/17 20:57
モモンガ ( PZ9M )

トゥルルルルル…


トゥルルルルル…




『七回目の電話もでない…か』






やっぱりガセだよね~



そりゃ…眼鏡はちょっと本物みたいだけど




芸能人が見ず知らずのあたしになんか連絡先を教えるだなんて…




あたしっておめでたいんだやっぱり



『アボガドサンドのセットお待ちのお客様



大変おまたせ致しました~』



平日の昼間ということもあり比較的店内は空いていたがポテトを作る時間があったのであたしは果敢にも名刺の裏の電話番号にかけていた


やっぱり無駄な抵抗だったか…




『おいしそうですね


山川様のお昼ですか?』



きき覚えのある声が頭の上から響いた



『…!あ


店長さん



美容室の…ですよね?』




ダッサイあたしと対照的に今日も店長は綺麗な青色のシャツに白いベスト


それに古い感じのデニムにスニーカー



頭には茶色のハンチング(だっけ)



眩しいくらいの男前です



よく見ると店内のおしゃれな女の子達の視線がチラチラ痛いんですけど(泣)

No.180 09/08/17 21:08
モモンガ ( PZ9M )

『山川様もココよくみえるんですか?



僕も今日はどうしてもサンドイッチ食べたくなってしまって…




山川様…



髪の毛、カサカサですよ


ちゃんとお風呂上がりにトリ―トメントしてますか?』



店長があたしはあたしの左側に座ると頭の上から毛束をもってパラパラと髪質を確認しだした





『冬はね、特に乾燥しやすいんですよ



会社の中にも暖房入ってませんか?



そういうときは洗い流さないトリ―トメントや美容液で保湿しとくといいですよ



あ、良かったらこちら差し上げますよ



洗い流さないトリ―トメントです



うちの試供品なんで悪いですけど…



ちょうど最後の一個です



ハイどうぞ』




店長は持っていたヘアカタログや新商品の入った紙袋からサンプルを一つ取り出すとあたしの目の前に差し出した

No.181 09/08/17 21:23
モモンガ ( PZ9M )

>> 178 『みんなが大変そうなのにすいません あたし何にもできなくて… あ、ちょっと早いけど何かお腹に入れますか?買ってきましょうか?』… 『あ、そんな悪いです



ちゃんと必要なら買いとりますから言って下さい』



あたしがサンプルを差し返そうとすると店長はにっこり笑って言った




『山川様の綺麗に一つ貢献します




もしつけてみて気に入ったらまた来店された時にお買い上げ下さい




今ね、シャンプーやトリ―トメントの新作内覧会に行ってきたんです



どんどんいいものは使ってみないとね



僕の趣味は女の子を綺麗にする事ですから





なんて…言い過ぎかな』



店長はあたしにサンプルを渡すと照れたように人差し指を鼻に当てた




もうカッコいいから止めて~





惚れてしまうやろ~




みんな何でこんなカッコいいイケメンがあたしみたいな眼鏡OLに話しかけてんのか不思議だろうなぁ




悪いね悪いね




あたしはサンプルの蓋をあけて臭いを嗅いでみた




柔らかい甘い匂い…




『ありがとうございます


近々お店の方にもパーマをかけに行かせてもらいます



その時はまたお願いしますね』




店長はお待ちしていますねと言い笑顔でレジのカウンターの列へと並んでいった

No.182 09/08/17 21:40
モモンガ ( PZ9M )

『あ…やばい


ポテトせっかく焼いてもらったのに冷めちゃうや』



店長に頭を下げ店を出ると腕時計の時間はちょうど11時にさしかかる所だった




会社に戻ると相変わらず河村さんは机に伏せって名前を書いた紙とにらめっこしていた




『はいどうぞ



アボガドサンドの到着です


一息付いてくださいね



朝御飯もまだなんですよね』




あたしは河村さんのまわりにいた営業さん達のぶんも熱いコ―ヒ―を入れた



『あっどうも』



みんなホッとした顔でそれを受けとる




ピリピリしていた空気が少しだけ和むような気がした




『それじゃあ、あたし戻りますね』



何度も頭を下げる河村さんに手をふりながら自分の席に戻った

  • << 184 『たなびく長い髪に愛嬌のあるキャラクター… 国民の認知もあり明るくて清潔なイメージ… あたしはあの日公園でみた飯田さんをイメージに重ねて合わせていた 茶色のサラサラのロングヘアに色白の肌 愛嬌のある笑顔に庶民性もある イメージだけなら100点満点 …なんだけどなぁ… こんな時に魔法でも使えたら今すぐこのピンチを救えるのにねぇ 『あっ…』 あたしは眼鏡の存在を思い出した そういえばあの不思議な眼鏡… 右側はお金持ちバロメーターだけど 左側はどんな機能がついてんのかなぁ… ひょっとして魔法やミラクルは起こせないのかなぁ… あたしはカバンの底にあった透明の眼鏡を取り出した 『試してみるか…』 いや… 会社では辞めておこう 万が一えらいことが起きても困るしなぁ あたしは今夜家に帰ったらこの眼鏡の秘密を探ろうともう一度ハンカチでレンズを擦るとカバンの中へと静かに戻した

No.183 09/08/18 20:25
モモンガ ( PZ9M )

>> 182 『はぁ――っ…』



あたしが長いため息をついていると蛭子さん似の福島さんが短く笑った




『らしくないなぁどうしたの山ちゃん』


『あっ、すいません仕事中に……今営業のデスク行ったんですけど何か大変そうで




勿論あたしに何ができるわけでもないんですけどね


でも何か落ち込んでる顔を見たくないっていうか…なんかじっとしてられなくて…』




あたしは山のような書類を選別しながら日付順に入力を始めた




『あぁ…うん僕も聞いたよ何か新商品の企画がこけそうだってね



でもまぁ大丈夫だよ見ててごらん、足かけ一年頑張ってきたチ―ムがこんなところで止まるもんか




営業の神様がきっと味方してくれるよ大丈夫』




『だといいんですけどねぇ…


みんなの健闘を祈るしかないわよね』




小川さんも向かいから口を挟んできた




『聞いた話だとクライアントの社長が凄くこだわりのある人でイメージ先行らしいわ



売り出しが春だから美顔機片手に髪がなびく画


で、優しくて明るくて清潔なイメージ年配からも若者からも好まれる風貌で愛嬌も必要



重視そんなタレントもモデルもすぐにつかまんないわよ、ねぇ』

No.184 09/08/18 20:36
モモンガ ( PZ9M )

>> 182 『あ…やばい ポテトせっかく焼いてもらったのに冷めちゃうや』 店長に頭を下げ店を出ると腕時計の時間はちょうど11時にさしかかる所だ… 『たなびく長い髪に愛嬌のあるキャラクター…



国民の認知もあり明るくて清潔なイメージ…





あたしはあの日公園でみた飯田さんをイメージに重ねて合わせていた




茶色のサラサラのロングヘアに色白の肌


愛嬌のある笑顔に庶民性もある



イメージだけなら100点満点




…なんだけどなぁ…



こんな時に魔法でも使えたら今すぐこのピンチを救えるのにねぇ





『あっ…』




あたしは眼鏡の存在を思い出した




そういえばあの不思議な眼鏡…



右側はお金持ちバロメーターだけど



左側はどんな機能がついてんのかなぁ…



ひょっとして魔法やミラクルは起こせないのかなぁ…




あたしはカバンの底にあった透明の眼鏡を取り出した




『試してみるか…』





いや…




会社では辞めておこう




万が一えらいことが起きても困るしなぁ




あたしは今夜家に帰ったらこの眼鏡の秘密を探ろうともう一度ハンカチでレンズを擦るとカバンの中へと静かに戻した

No.185 09/08/22 21:33
モモンガ ( PZ9M )

つつがなく業務が終了すると小川さんがすっくと立ち上がり福さんに頭を下げている




『お、時間だね


今日もお疲れ様』



細い目を更に細めて福さんは小川さんを労う




できる男は部下に寛大だ



仕事さえきちんとこなしていれば福さんは嫌みなど一言も言わないで小川さんを見送る




『あ…そうそう小川さんこれ娘さんに持っていってあげて』



『プリキュアのノート?


この間は鉛筆セット頂いたばかりじゃないですか…悪いですよ』



『だって僕がこんな可愛いノートで会議に出席できないでしょう?



いいからいいから


ほら、早くしないと娘さんに怒られるよ』



『いつも本当にすいません…


じゃあありがたく頂きますね


また明日』


小川さんは福さんに一礼するとあたしたちにも茶目っ気たっぷりにウインクをして小さく手を降った



しかし福さんは上司の中の上司やなぁ




毎度のことながら感心する




福さんはシンママの小川さんの採用の際もかなり社長と粘って交渉を味方したらしい



それは別に縁故とか事情があるわけでもなかったという

No.186 09/08/22 21:46
モモンガ ( PZ9M )

『福島さん…プリキュアのノートなんてどこで買われるんですか?



前も2つ鉛筆持ってきてましたよね』



右となりの早川さんがゆっくりした口調で福さんに聞いてきた




『ん?あれ?



いつもいく本屋さんでねポイント毎に買い物券がもらえるんだよね



ちまちま集めるのも性分じゃなくてね



小川さんの娘さんにプレゼントしてるの』




福さんは手元にある書類に紐を通しながら優しい顔をしてみせた





小川さんはそっかぁと納得した顔をして机を片付けている



福さんの嘘つきめ



あたし本当は知ってるんだ




福さんはちまちましたことが逆に好きであちこちのポイントカードやら会員証やら細々と集めている




本が好きな福さんがそんなに簡単にポイントを使うとは考えられないなぁ


だって500円で1ポインだよ




500ポイントでやっと500円券もらえるのにそんなにすぐには貯まらないよね?

No.187 09/08/22 22:09
モモンガ ( PZ9M )

福さん自身の体験が小川さんの背中を押す部分が多いんだろうな




福さんもシンママの家庭で育っているから働くお母さんの大変さも



それを待つ子供の気持ちもわかるんだろう…




あたしもちっさいときから自営で家族総出で働いていたのが当たり前でなかなか遊びに連れてってとか




可愛い服がほしいとか言えなかったもんなぁ…



だってお母さんなんかいつも素っぴんで頭なんかもボサボサでさ




割りと綺麗なのにピンで前髪とサイドを止めるだけ




肩くらいのボブは白い三角巾で常に覆われていて




汗だらけで盛り付けしてるお母さんに買い物に行きたいんだけど…なんて言えなかったもん





多分福さんにもそんな経験があるんだろうなぁ…





あたしはいい上司に恵まれてるんだな



福さんありがとう




福さんと目が合うと変わらず優しい笑顔でいた





『お先に失礼します』




早川さんが席を立ち上がりあたしたちに一礼した


『あ、あたしも行くよ


途中まで一緒にいこう』




あたしも慌てて福さんに頭を下げて鞄を持った

No.188 09/08/23 01:20
モモンガ ( PZ9M )

『せっかくだから一緒に下まで行っていい?』


早川さんはちょっと驚いた顔をしたあとに


『はい、もちろん』と可愛く笑った




そりゃあ驚くわな



社内の人間とはそんなに親しくなければ喋りもしないあたしが




同じ課とは言え後輩のこの事はお茶はおろかプライベートを共にするなんて今まではありえなかったからだ




人って髪の毛ひとつで変わるもんだ



しかしこの子はよくみると可愛いな


肩くらいの柔らかい巻き紙に上手なお化粧


ちなみに本日は淡いピンクの白とのストライプのシャツワンピース



それにベージュのジャケットを羽織っている




足元はパンストに茶色のメッシュのキチントしたサンダル



鞄は小さめの新作のボォッテガト―ト


(まみちゃんにあげたアネキャンパスに載っていた)




今時の正しいOLさんの姿だ



見習いたいもんだ




しかし右手にも左手にも指輪はないしいつもそんなに慌てては帰らない




彼氏は…



いないのかな

No.189 09/08/23 01:36
モモンガ ( PZ9M )

あたしが込みだしたエレベーターの奥へと体をおいやられていると不意に早川さんが接近しながら質問してきた


『山川さんの彼氏ってカッコイイですね



あたし、こないだ見たんですよ



夜のデート




髪型が違うから自信はなかったけど会社でみてヤッパリ…って思って…



いいなぁあんな素敵な彼氏


友達紹介してくださいよ』



『えっ…と


あたし…彼氏なんていないよ?



物凄い誤解だから解除しといてね



誰かと見間違ってない?デートなんかする相手いないんだけどな』



『え?あれ彼氏じゃないんですか…?



この間…いつだったかな?


犬の散歩してた時に山川さんが背の高いカッコイイ人と歩いてるの見ましたよ



凄い楽しそうだったから彼氏さんかなって思ってました



うちはちなみに…』



早川さんの説明を聞いたあたしは思わず吹き出してしまった



『違う違う



それは秘書課のまみちゃんのお兄さんだよ



しかもラーメン屋いった後だよ?


彼氏なんて言ったら怒られちゃうよ』



『そうなんですか…


そっかぁ、凄いお似合いなのに



付き合ったりしないんですか?』

No.190 09/08/23 01:48
モモンガ ( PZ9M )

あたしは思わず吹き出してしまった



前の彼女を忘れられずにいて借金が一千万もあるんだよ




喉元まで言葉がでかかったけどそれをぐっと堪えた



『確かにね~



まみちゃんのお兄さんはカッコイイし優しいけど…



あたしじゃ無理無理


ラーメン食べたりケ―キ食べたり散歩したりこたつ入ってまったりしたりさぁ



そんだけだよ』




あたしがそういうとやわら早川さんがあたしの肩をガシッとつかんだ



『山川さん…



それって普通しませんよ?



つかぬことをお聞きしますがそのお兄さんから連絡先は…』



『連絡先?


ああ…またラーメン食べようねって名刺ならもらったけど…』



あたしは鞄の底から2つに折れたまみ兄の名刺を取り出した



早川さんはそれを見ると深いため息をついてあたしに戻した



『山川さん…もったいない…




ニッソン自動車の正社員で営業で背も高くてイケメンで…




あとは何が足りないんですか?』




『チ―ン…一階でございます』




エレベーターが丁度一階に到着した

No.191 09/08/23 02:00
モモンガ ( PZ9M )

『足りないとこ…ってさ普通は好きになってから付き合ったりデートしたりするんじゃないの?



あたしお兄さんに何にも言われてないよ?




誤解だよ誤解



あたしたちはそんなんじゃないもん』




そう言いながら会社の外に出ると案内板の所にしゃがみこんでいる見慣れた男がいた





まみ兄だった



『おっせぇな山ちゃん



もう10分も待ったぞ』




あたしは頭が真っ白になった




だってあたし約束なんかしてないもん



あたしわ慌てて後ろを向くと携帯を確認した




受信トレイに一通




まみちゃんからだ




『ハァイ山ちゃんお元気してる?


昨日はケ―キおいしかったね♪



またみんなで行こうね♪♪



あ、そうそう♪今週の金曜日ねまみの誕生日なの~





まみの誕プレ探しにバカ兄についてってやってくんないかな♪



ついでに誕プレよろしく~♪♪




兄貴には営業ついでに5時きっかりに下で待つようにメールしといたよん♪



山ちゃんどうせ用事ないよね?ひとつ宜しくね♪♪



なるべくティファニーニのアクセサリーで宜しくね♪




まみちゃんより』

No.192 09/08/23 02:11
モモンガ ( PZ9M )

『やられた…』


あたしは携帯をしずかに閉じた



今の今だよ



しかも昨日の今日で



更にあたしまた変な服着てるし…




ティファニーニの場所なんて知らないし




後ろを振り向くとまみ兄と早川さんが何やら話している




何かこうやってみると凄くお似合い




背も高くてパリッとしたス―ツのまみ兄と小さくてクルクル巻き髪の可愛い早川さん…



あたしもあんな風だったら『どうしたのこんなとこで』なんて側にいけるのかな…



またわけのわからない気持ちになってきた



なんなんだろう



この劣等感



『どうした山ちゃん?馬鹿まみの買い物…


行くだろ?』



あたしはちょっと下を向くとまみ兄に言った



『この子、早川さん



あたしのデスクの後輩なんだ



前にねお兄さんの事見てファンになったんだって



悪いけど今日は用事があるから早川さんとプレゼント見てきてくれますか?』



『えっ…?やだちょっと山川さんてば


本人の前で言わないでくださいよ~



しかも誕生日プレゼントって何ですか?』



耳打ちする早川さんにまみちゃんのメールの説明を手短にした

No.193 09/08/23 02:23
モモンガ ( PZ9M )

『ごめんなさい


あたし今日はこんなんだし


髪の毛切りにいく約束してて



まみちゃんから聞いたのもついさっきだから



今日はちょっと…』



何となく顔が見られないあたしにまみ兄がしゃがみこんで顔を見上げた



『山ちゃん


前に俺言ったよね



何かコンプレックス持ってるみたいだけどそんなの関係ないって




髪の毛切るなら待ってるから行っておいでよ



なんからしくないぜ



どうしたんだよ』



『どうしたもこうしたも…




約束なんか最初からしてないし



あたしもいつも暇な訳じゃないんです



今日は早川さんと行ってきてくださいよ



可愛いいし良い子だし



お兄さんにお似合いですよ



凄く…』




あたしはそれだけ言うと二人の横を通りすぎた




もうこの世から消えちゃいたい




なんだか凄い惨めな気持ち…




『山川!待て』



まみ兄の声が後ろから大きくなる



もうほっといてよ


恥ずかしいし!



早歩きをしていたあたしにまみ兄はあっという間に追いついてしまった

No.194 09/08/23 02:36
モモンガ ( PZ9M )

『ちょっと待てって!』



『だから無理なんですってば、今日

あたしは』




そこまで言うとまみ兄が公衆の面前であたしを抱き締めた




広い肩




思ったより太い腕




なんだろう…


いい香り…




じゃなくて!




あたしは腕の中で振りほどきながら小さな声でもがいた



『どういうつもりですか』




まみ兄はあたしを抱いたまま植え込みの側までくるとその場にあたしを座らせた



『…山ちゃん



おしり破れてる』




目を合わさず着ていたジャケットをさっと脱ぐとあたしに渡してきた




あたしは血の気がひく思いでそっとお尻に手をやった




なんなんだ





なんなんだこの裂け目は…



『ありえない…』



小さくうなだれるあたしにまみ兄が言った



『車まわしてくっからちょっと待ってな』




そう言って早川さんの方にかけよって何回か頭を下げていた



そしてそのまま駅の方へと走って行った



パンツ…見えたかな



恥ずかしくて顔があげられない



早川さんが後頭部をツンツンしてくる


『山川さん~』

No.195 09/08/23 02:50
モモンガ ( PZ9M )

『山川さん~



どうしたんですか~

彼氏じゃないなんてウソウソ



めっちゃ優しい彼氏さんじゃないですか



喧嘩中ですか?



『あのまま一人だと不安がるからちょっと一緒にいてやってもらえる?』



だって~


頼まれちゃいましたよ



いい人ですね~



早く仲直りしてラブラブしてくださいよ~



あと2ヶ月もしないうちにクリスマスですよ




山川さん何か可愛いし』




山川さんが隣に座りクスクス笑う




『山川さん



好きなんでしょ




白河さんのお兄さん




違います?』




あたしは目を丸くした




あたしが?




誰を好きだって?






あたしが顔を膝に埋めたまま首を激しく振ると早川さんがあたしの背中を一発叩いてきた



『何、中学生みたいな反応してるんですかぁ




山川さんの顔に『この人が好き』って書いてありますよ?



ひょっとして気づいてないんですか?



自分の気持ちに』




『バタン!』



近くで車のドアを激しくしめる音がした



小走りにこっちに足音がせまる



『あ―


ごめんね…



えっと…早川さん


だっけ』

No.196 09/08/23 03:03
モモンガ ( PZ9M )

『いいですよ約束もないですし



それじゃあこれで失礼します




山川さん


また明日』



早川さんは楽しそうにその場に立ち上がった



あたしは何にも言えずに少し顔を上げて左手を上げた




『じゃあ、あたしはここで』


まみ兄にも同じように頭を下げると何やらまみ兄に耳打ちをした





なんだよもぅ~



本人を飛ばして話を進めないでよ~




まみ兄はその場で何回も頷くと早川さんにてを降っていた




しばらく何にもいわずにいるとまみ兄はあたしを立ち上がらせるとジャケットの袖をウェストで絞りあたしに着させた




『さ、やまちゃん行こうか




まさかそのまま電車で帰れないでしょ?




その可愛い水玉パンツは片道20分の目に耐えられるかな~』



『…見ましたね



もぅ死んじゃいたい』




『おいおい


パンツ見られたくらいで死んでたらとっくに俺の前でもぅ死んでるよ



早く乗りなされ』




そっか…


あたしはもうパンツは二度みられてんだよね




しかもブラも…




あたしまズコズコ歩くとまみ兄の車にゆっくりと乗り込んだ

No.197 09/08/23 06:45
モモンガ ( PZ9M )

まみ兄の車はとりあえず会社近くのショッピングセンターに止められ




まみ兄はあたしにデニム地のワンピースと下に着る黒いスパッツを買ってくれた


『これならスニーカーでも大丈夫でしょ』




そう言ってあたしを店内のトイレまで連れていってくれた



なんだかなぁもぅ




トイレの鏡に映ったあたしはこれ以上なく不細工な顔をしていた




多分早川さんがアホな事を口にしたからヘンに意識してるんだと思う





『明日会社であったら一番ややこしい会社まわしてやるぞ





ホントにもぅ…』




あたしは着替えた服を買い物袋に入れると外で待つまみ兄のもとへと急いだ




まみ兄はベンチの横にある宝飾店のおばさんと何やら話し込んでいた



『山ちゃん着替えた?




さっそくだけどさ



この中から選ぶなら山ちゃんどれにする?』




ガラスのケ―スの箱の上には小さなダイヤモンドのピアスがデザイン毎に3つ置かれていた

No.198 09/08/23 07:03
モモンガ ( PZ9M )

1つはシンプルな一粒タイプ


1つはダイヤモンドに小さな淡水パールが重なったもの



もう1つはダイヤモンドのハ―ト型



あたしは思わず『可愛い』と声を上げてしまった


今まで宝石なんて道を歩いてりゃ幾度と声をかけられましたけど


こんな風に店で選ぶのも楽しいものなんだね



『まみちゃんの誕生日の?』


あたしが聞くとまみ兄が頷いた



『そうそうあいつ何か知らんけどティファニーニのダイヤモンドピアスが欲しいなんて甘えてくるんだけどそんなんは彼氏に買って貰えって話だよな』




でもそう言いながらダイヤのピアスはちゃんと買ってあげちゃうんだよね




『優しいわよねぇ妹さん想い!』



ガラスケ―スの向こうから黒いワンピースを来たおばちゃんがあたしの心を代弁した



『なかなかいないよ?妹の誕生日にプレゼントしてあげるお兄さんなんて



彼女、いい男ゲットしたねあんた幸せになるわよきっと』




横を向くと兄がうんうんうなずいているまぁ否定するのもめんどくさいしいいか…




『そうですよね優しいですよね』



あたしが言うと兄はまんざらでも無さそうにあたしの頭を何回か軽く叩いた

No.199 09/08/23 07:17
モモンガ ( PZ9M )

『ありがとうね~



今度は彼女の誕生日に来てね~ 』




おばさんはニコニコしながら小さなピンクのリボンをかけた白い包みをまみ兄に差し出した



『ありがとね



おばちゃん、また来るわ』




そう言うと兄は何度もお礼を伝えていた



結局まみちゃんの誕生日は彼女が好きなハ―トのダイヤモンドピアスに落ち着いた



『山ちゃんサンキューな




俺一人じゃああいう 店にははいりにくくてさ




助かったよ』



『いえ



あの…あたしこそすいませんでした



この服いくらでしたか?お支払したいんですけど…』



『ん?あぁ、いいよいいよ



それは今日のお駄賃



いいもの見れたしね



目の保養料』



まみ兄はちょっとおどけた態度でいったあとにいつもと同じ優しい笑顔であたしの頭を撫でた



『少しは機嫌治った?




何があったのか知らんけど山ちゃんは笑うに限るぞ





せっかくの可愛い顔が不細工になるぞ』




そう言うとあたしの紙袋を持つと少し前をゆっくり歩いた

  • << 201 『あのっ あの…あの…お兄さん ちょっと待って… あたしそんなに早く歩けないよ…』 あたしは息切れをしながらもまみ兄についていくのがやっとだった まみ兄は四階から一気に一階まで階段をかけ降りると我に帰ったようにあたしの存在に気づいた 『あ…山ちゃん ごめん… ごめんけど…俺帰るわ… また連絡すっから 今日は… あかんわ…』 そういうと深くあたしに頭を下げて肩が寂しそうに 背中は絵に書いたようにしょんぼりしていた さっきのお店のお姉さんと個人的に知り合いだったのかなぁ… ひょっとしたら 今度は前々の彼女だったりして? なんて違うか… なら一体あの人は? あたしがグルグルいらぬことを考えているとさっきの女の人がいまきた階段をかけ降りてきた 『あ… あの…さっきの… 白河さんは…?』 『あ…あの、用事があるからって 今さっき別れたんですが…』 『そう…ですか… わかりました どうもすいませんでした…』 お姉さんはがっくり肩をおとしてしまった

No.200 09/08/24 03:12
モモンガ ( PZ9M )

>> 199 あたしたちはせっかくだからとショッピングセンターの中にある喫茶店でお茶をすることにした



昨日の今日で昔の話はほじくるまいと心に決めていたし


何よりあたしのでか尻のせいでまみ兄に余分なお金を使わせてしまったので何とかして借りを返したかった



『あ…ここは?グリーンカフェだって



なんか外観も可愛いしお茶もおいしそうですよ』




『俺はどこでもいいよ


山ちゃんの好きなとこ入んなさい』



『じゃあ、ここにしますね


すいません二人なんですが』



あたしが声をかけると元気な声で可愛い女の人が振り返った



『いらっしゃいませお二人様です


…か…』



みるみるウエイトレスさんの表情が固まってみえる



?何?


今度はなんなんだ?


あたしが振り替えってまみ兄の方をみるとまみ兄の顔がみるみる険しくなっていった



『山ちゃんごめん


この店はダメだ


行くぞ』


そういうと物凄い力であたしの左手を引っ張っていく



『あっ…あの!!待って下さい白河さん!

あたしの話を聞いて下さい…!』



まみ兄は後ろから訴える彼女の声に耳を傾けようともしない

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